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2009/12/30

お題「虫干しネタ/FEDのタームデポジットファシリティ」

今日の全日立会というのはマジで勘弁して欲しいですな。まるっきり気分が出ないし、何が悲しゅうて東証1部売買代金1兆円そこそこの日に毎日店を開けてないといかんのよと株屋さんは思うのでは無いでしょうか。

ということで、大納会を昨日にするか、半ドン復活キボンヌであります。まあ大発会の全日立会はまだ勘弁するけどね。

#それから先物オプションの最終が今日になったのも実に遺憾としか申し上げようがありませんなあ


○これまた虫干しネタですが金融経済月報

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0912.pdf(12月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0911.pdf(11月)

と言っても例によって概要部分だけなのですが。

・まず結論を言えば見通しを下げて金融環境を上げると

概要部分を11月と比較しますと、総じて見ますと先行き見通しの項目別展開を若干引き下げて、一方で金融環境に関しては引き上げちゅう感じだと思います。以下比較を。

・現状認識部分

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(12月)

というのは先月と変わりません。

『輸出や生産は増加を続けている。企業の業況感は、製造業大企業を中心に、緩やかに改善している。設備投資は下げ止まりつつある。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。この間、公共投資は頭打ちとなりつつあり、住宅投資は減少している。』(12月)

『公共投資が振れを伴いつつも増加を続けているほか、輸出や生産も増加を続けている。設備投資は、厳しい収益状況などを背景に減少を続けてきたが、最近では下げ止まりつつある。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。この間、住宅投資は減少している。』(11月)

今回は壮大に手抜きバージョンでいきなり項目別展開部分を全部引用した状態で並べましたが、やはりいきなり並べると比較しにくもんですな(おいおい)。で、結論なんですが、今回は公共投資に関して引き下げを行っているというのは昨日ご紹介した声明文比較にある通りですが、あと違っているのは企業の収益状況に関する部分であります。つまり11月は「厳しい収益状況」とあった所が、12月は収益状況に関する文言が外されて、短観を受けた「業況感の改善」の文言が入っています。ということで、まあ差引チャラという感じになるんですかね。


・先行き見通し部分

『先行きについては、景気は持ち直しを続けるが、当面そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。』(12月)

これまた11月と同じ。で、項目別展開をすると(さっきは語順とかが微妙に変わっているので面倒になって全部引用しましたが^^)。

『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。』(12月)

『すなわち、輸出や生産は、海外経済の改善が続くことなどから、増加を続けるとみられる』(11月)

海外経済の改善については変化してませんが、増加ペースに関しては引き下げとなりまして増加「基調」とお馴染みのヘッジクローズが入ったでござるの巻。

『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続く中にあっても、当面、各種対策の効果などから、耐久消費財を中心に持ち直しの動きが続く可能性が高い。一方、設備投資は、収益がなお低水準で、設備過剰感も強いもとで、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。』(12月)

個人消費と設備投資は変わらず。

『この間、公共投資は、次第に減少していくとみられる。』(12月)
『この間、公共投資は、徐々に頭打ちになっていくとみられる。』(11月)

公共投資は引き続き引き下げと。

ということで、先行き見通しはやや下げとなっていますが、まあ「増加ペースが緩やか」というのと、公共投資に関してはそうは言っても政府与党の匙加減で何とかなる話ですから、まあ下げと言ってもそんなにメタメタな下げでも無いんジャマイカという感じですかね。

・物価は特に変化なし

現状認識部分。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響などから、幾分弱含んでいる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、下落している。』(12月)

11月は「足もとは幾分弱含んでいる」となっていただけで後は同じです。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の強含みが押し上げに働くものの、製品需給緩和の影響が続くことから、当面、弱含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、前年における石油製品価格高騰の反動の影響が薄れていくにしたがい、下落幅が縮小すると予想される。』(12月)

11月には「年末頃にかけて」という文言がありましたが、既に年末頃なのでそこの文言が外れただけで後は同じと。


・金融環境

金融環境のマーケットデータ部分はパス。金融環境に関する部分をば。

『わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』(12月)

という全体観は変わっていませんが、内訳をみると何となく改善っぽい感じが。

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、幾分低下している。』(12月)
『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、低水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(11月)

新オペの効果ですかそうですか(^^)。タイボーが下がったという事っすかこれは???

『実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果はなお減殺されているものの、その度合いは和らぎ始めている。』(12月)

『ただし、実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果は減殺されていると考えられる。』(11月)

緩和効果が効きだしているということですね、わかります(・∀・)

『資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、なお厳しいとする先が多いものの、改善している。CP・社債市場では、低格付社債を除き、良好な発行環境が続いている。』(12月)

『資金需要面では、企業の運転資金需要、設備資金需要とも後退しているほか、一部に、これまで積み上げてきた手許資金取り崩しの動きもみられている。』(12月)

とまあこの辺は前月と同じです。

『以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は、前年における著増の反動もあって伸びが低下している。社債の残高は前年を上回っている一方、CPの残高は減少している。』(12月)

『以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は、伸びが鈍化している。社債の残高は前年を上回っている一方、CPの残高は減少している。』(11月)

銀行貸出の伸びが鈍化から低下になっていますが、一方でその理由は去年の今頃伸びた反動ですという話をしてますな。

『こうした中、企業の資金繰りをみると、中小企業を中心になお厳しいとする先が多いものの、改善の動きが続いている。この間、マネーストックは、前年比3%台前半の伸びとなっている。』(12月)

というのも同じということですが、金融環境に関する部分は認識をしらっと改善させているのが中々チャーミングでございます。つまり企業金融臨時措置を解除方向にしているけれども問題は無いという事を言いたいというのは大変に良く判りました(^^)。そこで「何と言う予定調和な現状認識」などとツッコムのは無粋ですので注意しましょう(・Д・)



○FEDのタームデポジットファシリティ導入へ・・・ということで雑考なのだが

リリースはこれ
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20091228a.htm

『The Federal Reserve Board on Monday proposed amendments to Regulation D (Reserve Requirements of Depository Institutions) that would enable the establishment of a term deposit facility.』

今回はレギュレーションDとかいうのが改正されてタームデポジットファシリティ(要するに定期預金方式による資金吸収オペですな)が出来るようになりましたと。

『Under the proposal, the Federal Reserve Banks would offer interest-bearing term deposits to eligible institutions through an auction mechanism. Term deposits would be one of several tools that the Federal Reserve could employ to drain reserves to support the effective implementation of monetary policy. 』

資金吸収手段の一環として導入しますとな。

『This proposal is one component of a process of prudent planning on the part of the Federal Reserve and has no implications for monetary policy decisions in the near term.』

つーことで、これは前から計画している話の一環であって、別にこれを入れたからと言って直ぐに金融引き締めをする訳じゃないんだからね!という事ですが、米国財務省におかれましては期末(飴公の期末です)前に堂々国債入札を連発すると言う貫禄のKY振りを発揮したせいか、一昨日の2年入札がダメダメで今日も何か2年のレートが上昇して1.1%に接近しているので、後付けで「FRBの新しい資金吸収手段検討も材料に」とか言う人達も出ていそうな悪寒。

『Public comments will be accepted on the proposal for 30 days after publication in the Federal Register, which is expected shortly. The Federal Register notice is attached.』

パブコメ絶賛募集中ということで、その添付されているPDFはこちら。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/monetary20091228a1.pdf

テクニカルタームというか最早事務用語が満載なので書いてある単語の意味は分かるのですが、細かい事務的な話は良く判らんが、金融調節と言う観点から見た場合に気になったのはこちらの3ページ部分にある基本的な内容の紹介部分に関して。

『Introduction and Basic Structure.

The Federal Reserve has addressed the financial market turmoil of the past two years in part by greatly expanding its balance sheet and by supplying an unprecedented volume of reserves to the banking system. Term deposits could be part of the Federal Reserve’s tool kit to drain reserves, if necessary, and thus support the implementation of monetary policy.』

という最初の所はさっきのリリースにあった全体観の話と同じなのですが、次のパラグラフを見た時にちょっと引っ掛かったのよね。

『Term deposits would be distinct from balances held by eligible institutions in their master accounts. Term deposits could not be withdrawn prior to maturity, would not satisfy required reserve balances or contractual clearing balances, and would not be available to clear payments or cover daylight or overnight overdrafts. Term deposits would, however, be eligible to collateralize discount window advances.』

タームデポジットファシリティが期限前払い出し不可なのは当たり前として、法定準備預金に算定されないとか、日中やオーバーナイトのオーバードラフト(一時的なFEDによる当座貸越型の流動性供与)の担保にならないというのも分かるのですけれども、連銀貸出(ディスカウントウィンドウ)の担保には適格というのはちょっと調節的にどうよと思うのであります。

この先にどういうオークション形式を取るのか事務的にどうするのかという話とかがありまして、一応その辺も読んだには読んだのですが、まあちゃんと読めてるかどうかの自信は無いので間違っていたらゴメンナサイというのを最初にご理解頂いて以下のあたくしの違和感を読んで頂きたいのですけど・・・

もしこの資金吸収レートが連銀貸出よりも高くなってしまいますと、担保適格であるということであれば吸収した資金が連銀貸出で再び出てしまうというトンチキな事態になる(ディスカウントウィンドウは制度的に言えば適格担保持ってきたら連銀としては受けざるを得ない筈)ので、このファシリティの金利はディスカウントウィンドウの金利よりも低くならないとワークしないという話になりますわな。

となりますと、それこそ一生懸命資金吸収しようとするとどこかで「札割れ」問題が生じるんじゃねえのってえ気がする次第で、これって本当に資金吸収ツールとしてワークするのかと言えば、通常ベースでの吸収に関してはまあ無問題だと思いますが、積み上がったバランスシートの縮小を目指すという意味での渾身の吸収という道具としては尻抜けになりそうな予感もせんでもないですなという事で。

あと、まあどうでも良い話かもしれませんけれども、預金ファシリティでの吸収となりますと、連銀のバランスシート的には預金が振り替わるだけの話になるので、統計上のマネーの数字は減らないですなとか、連銀のバランスシートも実際には減りませんなあとかいうのも有りまして、さてその場合に(今でも「連銀のバランスシート拡大でインフレがどうのこうの」という論者がうじゃうじゃいる状況なのに)「バランスシートが縮小していない」という認識になって連銀が意図している効果が発揮できない可能性もあるんじゃねえのという気はせんでもない(多分それは杞憂になるはずだが)。

まあ別に吸収手段はこれだけじゃないので、色々と組み合わせますよってえ話になると思うのですが、どうも最終的には最終兵器長期財務省証券売却攻撃になりそうな予感が思いっきり漂ってきた今日この頃でありまする。


なお、日銀が資金吸収を行う手段としては売出手形と国債売現先と短期国債売却がございますが、最も一般的に使われる(最近はなんちゃって量的緩和を実施中ということのせいか吸収オペはやってませんけど)日銀売出手形は担保不適格扱いになっております。念の為。

(追記@2010年1月3日)
その1:このネタ東短リサーチの加藤さんが思いっきり29日にレポートで解説していました。本職のレポートとモロ被りであたくしの知能程度がバレてしまって恥ずかしい(大汗)。
その2:ちなみに売出手形は担保不適格なのですが、譲渡は可能ですのでファンディングが全くできない訳ではありません。


○年末の挨拶

・・・・・年末の挨拶も糞も大納会は全日立会だわ、3が日が土日に掛かって単なる4連休だわ来週は月曜から業務開始だわという大変に素敵な年末年始でございますが、まあ全然気分も出ませんが今年も駄文にお付き合い頂きまして誠に恐縮至極でありました。来年も一つよろしくお願いしたく(何を?)存じますのでございます。しかし9月が5連休で年末が4連休ってナンジャソリャという感じですわな。

では良い年をお迎えください。来年も儲かりますように♪








2009/12/29

お題「虫干しネタシリーズです」

まあ年末進行ということで勘弁なのですが、どうも今年は年末気分が出ないうちに年末がやってきますね。しかも4連休で直ぐに年始はフルに1週間ですしorz

ということで今更シリーズで11月の決定会合議事要旨から。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g091120.pdf

○結構12月の布石はあったのね

というのを今になって認識しても相場的にはまあアレなのですが、なるほどそういう流れになっちょるのねというのは確認しておくべきものかと思うのれす。

まずは景気の先行きに関する政策委員の議論の辺りから(本文7ページ、PDFファイル9ページから)。

『先行きについて、委員は、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高いとの見方で一致した。』

というのは良いのですが・・・・

『多くの委員は、展望レポートでも指摘しているとおり、当面、米欧におけるバランスシート調整や国内での雇用・賃金面での調整圧力が残存すると述べた。これらの委員は、内外における各種需要刺激策の効果や在庫調整の影響が減衰するとみられるため、わが国のGDP成長率や生産の伸び率は、来年度前半にかけて一時的に鈍化する可能性があるとの見方を示した。何人かの委員は、民間エコノミストの来年度の成長率見通しも、10 月の展望レポートの見通しとほぼ同じであり、来年度前半にかけて、景気のモメンタムが一時的に弱まる可能性については、日本銀行も民間も同様の見方をしていると指摘した。』

つまり先行き下振れになるのはメインシナリオ状態と言う事ですな。で、その先で株式市場という名の先行指標に対する議論が行われています。あんまり株価の話がどどーんと出てくるというのもケースとしては多くは無いのですが、この頃は平均株価が絶賛下落して20日時点で9,500円割れとかやっていたのでそういう話になったのでしょうと思うのですが、これが泣ける。

『多くの委員は、景気や企業業績の改善などを背景に、先進国や新興国の株価は上昇基調にある一方で、日本株だけが弱めの動きを続けていると指摘した。』

さいですな。

『これについて、何人かの委員は、日本経済や日本企業の成長戦略と中長期的な成長力に対する市場の見方がなにがしか影響しているのではないかと述べた。別の委員は、日本企業が今後、新興国需要をうまく取り込めていけるかどうかに対する市場の懸念を反映している可能性があると述べた。』

・・・・・orz

『もっとも、ある委員は、株価は短期的には大きく変動するものであり、こうした動きから経済のファンダメンタルズを読み取ることには注意を要すると指摘した。別の委員は、バブル経済崩壊後の日本株もある程度の上昇はみられたとして、バランスシート調整が続いている米欧については、株価上昇の持続性について留意する必要があると述べた。』

という指摘もありますが、何かこう「どうして日本株だけ弱いのよ」というくらーい議論をしていたのではないかと行間から漂ってくるのはあたくしの勝手読みですかそうですか(^^)。


○だったら別に時限措置の将来の解除までコミットする必要があったのかと

結局新型オペを入れたのですから同じになったとも言えますけどそれは兎も角として、本文9ページから始まる当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要部分から。

『前回会合で決定した各種時限措置の取り扱いについて、多くの委員は、前回会合以降、金融市場は落ち着いた状態が続いているとの見方を示した。これらの委員は、@ 対外公表文で「金融市場の状況変化に即応した、最も効果的な金融調節手法を採用する」と記述しているとおり、日本銀行は、金融市場の状況が変化すれば、それに応じて迅速に対応するという姿勢を堅持していること、A 各種時限措置を継続することによって市場機能を阻害するなどの副作用もみられることなどを、今後とも対外的にしっかりと説明していく必要があると述べた。』(機種依存文字は原文ママで勘弁)

という事なんすけど、んだったら別に企業金融オペの「3月の終了」というのを一々明言する必要があったのかというのは今でも不思議であります。期限が来れば自然消滅なのですから、単純に「3か月延長」と言っておいてCPと社債(社債についてはどうかという気もしましたけど)買入だけ廃止すれば、まあ方向として特別措置廃止なんですねという流れで市場も先読みしたんじゃねえのかという気がします。

『何人かの委員は、前回の会合において、各種時限措置の見直しが、直ちにマクロの金融緩和措置の変更につながるものではないことを明確にする趣旨から、「当面、現在の低金利水準を維持するとともに、金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給を通じて、きわめて緩和的な金融環境を維持していく」方針を示したと述べた。これらの委員は、こうした考え方については、現在も全く変わりはないと付け加えた。』

つまり「需要を十分に満たす潤沢な資金供給」というのは単に景気付けの文言みたいなもんでして(^^)、実はこの辺り(つまり10月会合)辺りから、日銀の公表文が「ヤマダ電機の安売りチラシ状態」(by切込隊長)化していったという事が読みとれます。

つーかね、結局10月にこの措置を実施して「物価見通しも景気見通しも良く無い中で何でわざわざ臨時措置を解除したのか」という点について、金融市場の中の人たちですら「???」という感じ(そんなに大騒ぎして急ぐ話だったのかよって意味ね)だったのでありまして、そりゃまあ他市場やら政治方面やら一般メディア方面からは益々日銀の理屈が訳判らんという話になって、結局の所追加緩和圧力になったんじゃないっすかという気はします。

とは申しましても(コロコロ変わりますなあ>自分)、まあどうせ追加緩和に追いこまれるのだったら外せるものは先に外して置きたい、特に企業のクレジットリスクを中央銀行が直接持つのは宜しく無い、という理屈もまあ判らんでも無いのですけれども、やはり政策の流れとして「臨時措置解除」→「追加緩和決定」というのは美しく無いというか迷走しているように見えてしまう訳でして、兵力を小出しにして個別撃破されているような印象が強いっすな。やはり順序は逆であった方が美しかったというか結果として出口が速くなったのではないかと思うのでありますが。


○デフレという文言がどうのこうの

その次の部分から。

『委員は、物価に関する情勢判断の情報発信の仕方を巡って議論を行った。』

さいですか。

『ある委員は、展望レポートで2011 年度まで物価下落が続くという見通しを示したあと、予想されたとおり、「デフレ」に関する議論が高まってきたと述べた。』

『多くの委員は、これまで日本銀行が説明してきたとおり、「デフレ」という言葉が使われる場合には、財・サービス価格の持続的な下落、厳しい景気の状況、資産価格の下落など、様々な定義で用いられており、論者によって異なるため、日本銀行が「デフレ」という言葉を使用する時は、細心の注意を払う必要があるとの見方を示した。』

というのはいつもの話ですが。

『もっとも、何人かの委員は、こうした説明は正しいものの、このような言い方をすることによって、日本銀行は「デフレ」という言葉をあえて避けているとの印象を与えている可能性があると述べた。』

可能性があるじゃなくて避けているもんだと思ってましたが何か?

『その上で、ある委員は、「持続的な物価下落」を「デフレ」と定義するのであれば、そうした物価動向の評価は、日本銀行が展望レポートで示した見方と異なっていないという点を対外的にも説明していく必要があると述べた。』

という話をしてたのですが、この会合後の総裁会見では政府のデフレ宣言に対する質問で、白川総裁はまたこの話をしていたんですよね。

『(導入部分割愛)デフレには様々な定義があるので、こうした物価の状況をどのような言葉で表現するかについては、当然論者によって異なり得る性格のものだと思います。いずれにせよ、「緩やかなデフレ状況にある」との今回の政府の見解は、「持続的な物価下落」という定義に基づいたものであり、そうした物価動向の評価という点では、以前から日本銀行が展望レポートで示している考え方と異なっていないと思います。(以下割愛)』(11月20日白川総裁定例会見より)

この時も「政府と日銀の物価認識は同じ」と言いながら「デフレには様々な定義がある」とか言わんでも良い話をして折角の話をする傍から自分で否定してしまう所が残念な所だった訳ですな(^^)。で、その後30日の講演で急にデフレ問題に対応する為の基本的な考え方がどうのこうのという話を始めたと思ったら12月1日の臨時決定会合になったという流れだった次第ですな。後から読むとこれはこれで味わいのある文書となっております。

で、次の指摘はどっからどう見ても政府の「対策も無いのにデフレ宣言だけ実施」というアホウにも程があるデフレ宣言に対する嫌味ですな。

『また、別の委員は、「デフレ」について情報発信する際には、それ自体がマインドに悪影響を与えることのないよう留意する必要があると付け加えた。』(強調は引用者が勝手に行っております^^)

どう見ても菅直人副総理への悪態です本当にありがとうございました(^^)。



○またまた市場雑談

市場雑談と言いつつGCレートの話ばかりでどうもすいません。

えーっと、昨日はスポ末でしたけれども、スポネの国債買現先が4兆円オファーとなりました。前日(先週金曜日)に0.15%とやや高い所からスタートした末初のGCですが、まあ金曜の時点で高い所から始まったお蔭で資金を出す人も出た結果15から14へと低下しとったのですけれども、オペ結果は10まで流れまして、まあ暫くは出し手も粘っていたようですが、結局13時にも末越えのオペが実施されましたし、最終的には末初GCは0.105%レベルまで低下したみたいでめでたしめでたし。

と言いたいところなのですが、昨日は末初のレートは下がったのですが、トモネ(29日〜30日)やレギュラー翌日物(4日〜5日)のレートは下げ渋りでござるの巻という感じで、何かまあ末初の所だけピンポイントで資金供給(今の時点で月末の当座預金残高予想が20兆円乗せで、今日トムスタートで供給したら更に増える)をしても、そこの部分だけはレートが下がりますが、却って末初のショートファンディングが溜まるのでGCレートが安定しないと思うんですがどうなんでしょうかね。

まあ足元が下げ切らないからなのか、投資家の買いがちょっと弱めになっているのか(その複合技かなとも思いますが)短国3か月物が0.125%オファーと先週の入札の最低落札価格よりも安い状態が継続しているという地味に残念な状態になっています。いやまあ11月時点(新オペ導入前)での3か月TBの利回りって大体0.15%前後で推移していた(その前はもうちょっと低かったのですが、GCレートが下がらなくなってから0.15%レベルに上昇してます)ので、そこから見たら下がったちゃあ下がったのでありますが、先に下がった(12割れまでやったのはちょっとフライングの自業自得の面はありますが)後でじりじりと上昇というのは絵として美しさに欠けますなという感じではございます。

だからどうしたと言われると困りますが。





2009/12/28

お題「いまさらですが決定会合関連/市場メモ」

○決定会合声明文比較

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091218.pdf(12月18日)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091201.pdf(12月1日)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091120.pdf(11月20日)

3つ一気に比較すると話がややこしいのですが、基本的には定例会合同士で比較しますので11月と今回の比較になります。

・なのですがディレクティブに関して

今回のディレクティブはあっさり味。

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致(注1))。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.1%前後で推移するよう促す。』(12月18日)

12月1日は新オペ導入だったのでその関連の話が長いのだ・

『1.日本銀行は、本日、臨時の政策委員会・金融政策決定会合を開催し、新しい資金供給手段の導入によって、やや長めの金利のさらなる低下を促すことを通じ、金融緩和の一段の強化を図ることとした。』

『3.日本銀行は、きわめて低い金利でやや長めの資金を十分潤沢に供給することにより、現在の強力な金融緩和を一段と浸透させ、短期金融市場における長めの金利のさらなる低下を促すことが、現在、金融面から景気回復を支援する最も効果的な手段であると判断した。このため、以下の通り、新しい資金供給手段を導入することを決定した(全員一致(注1))。』

『4.次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針については、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.1%前後で推移するよう促す」ことを決定した(全員一致(注2))。』(12月1日)

ということで、実際問題としてはディレクティブそのものは12月1日の臨時決定会合と変化は無いのですが、そうなりますと12月1日の決定内容がややこしいという事になる次第でして、12月1日の決定では「ターム物金利(とは書いてませんが、やや長めの金利とは基本的にターム物金利の筈)の一段の低下を促す」という話をしているのですが、ディレクティブそのものは「無担保コール翌日物を0.1%前後で推移」という事で変わらんという状態。

で、ターム物金利誘導ならGCレートの低位安定を促さないといけないのですが、無担保コール翌日物を0.10%近辺で推移させつつGCレートが上に振れないようにするというのはテクニカルに難しい話というのはここの所申し上げている通りですので、今後の調節方針に関してはもう少し練った方が市場が調節方針判らんという話をせんで済むと思うのですけれども。


・でもって景気認識

以降は11月定例会合との比較です。

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(今回)

というのは11月と同じです。で、個別項目ですけれども。

『すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国の回復などを背景に、輸出や生産は増加を続けている。』(今回)

『すなわち、公共投資が振れを伴いつつも増加を続けているほか、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国の回復などを背景に、輸出や生産も増加を続けている。』(11月)

ということで、公共投資はどこに行ったのという話ですが、公共投資は後ろの方に移ってしまい、判断を引き下げております。

『企業の業況感は、製造業大企業を中心に、緩やかに改善している。設備投資は下げ止まりつつある。』(今回)

『設備投資は、厳しい収益状況などを背景に減少を続けてきたが、最近では下げ止まりつつある。』(11月)

企業の業況感は短観に関する所ですので今回だけ入るのですが、設備投資も「下げ止まり」で基本的な所は変わりません。また「減少を続けてきたが」というのがしらっと抜けています。

『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は頭打ちとなりつつある。』(今回)

個人消費は前回と同じで、公共投資は先ほど申し上げたように下方修正。ということで、今回は公共投資を下方修正した以外は基本的に変化なしというのが現状認識部分です。


・先行き見通しは見事に同じ

『先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、石油製品価格などの影響が薄れていくため、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(今回)

というのは11月と見事にまったく同じ文言です。まあ毎回同じって感じですが。


・リスク要因にドバイネタのような物が

リスク要因の所ですが、基本的にこれも同じなのですけれども・・・・

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済情勢など上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。』(今回)

と言う所は11月と同じなのですが、今回はこの一文が入りました。

『また、当面は、国際金融面での動きなどが、企業マインド等を通じて実体経済活動に悪影響を及ぼすリスクについても、引き続き注意する必要がある。』(今回)

これが新しく入った部分でして、ドバイネタを意識しているのと、今後またどこかで地雷が火を吹くリスクについて改めて指摘したという事のようで。

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

というのも11月と同じです。


・最後の部分が当然ながら今回長いのですが

今回の会合では中長期的な物価安定の理解の明確化というのが出たので、そこの説明がうだうだと入っているのが今回の声明文の仕様になっております。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(今回)

『金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく方針である。日本銀行としては、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰していくことを粘り強く支援していく考えである。』(11月)

ということで、一応今回は色々と文言はついているのですけれども、良く良く見れば「所信表明」みたいな文言ですなという感じです。しかも物価安定の理解の説明の最後にはこのような文言がしらっと。

『今回の世界的な金融危機の経験を踏まえ、物価安定のもとでの持続的成長を実現するうえでは、資産価格や信用量の動向など金融面での不均衡の蓄積も含めたリスク要因を幅広く点検していく必要があるとの認識が、各国においても拡がっている。日本銀行としては、上記の「理解」を念頭に置いた上で、様々なリスク要因にも十分注意を払いつつ、2つの「柱」(注3)による点検を行い、適切な金融政策運営に努めていく方針である。』(今回)

・・・・つまり緩和政策長期化のリスクですね、わかります。

物価安定の理解でも最後にこの趣旨の「リスク点検の重要性」ってのがありましたが、そちらでは「上記の「理解」を念頭に、金融面での不均衡の蓄積も含めた様々なリスク要因も点検」とさらっと流している所をきっちりと説明している次第でありまして、先般のマクロプルーデンスに関する白川総裁の講演でもありましたように、まあ白川総裁的にはこの「リスク点検の重要性」に関する拘りがありそうに見えますわな、というのが先々は金融政策に関する市場の見方に影響を与えそうな気がします。まあCPIが反転してきた時の話ですから目先は特に問題無いと思いますけどね。

という所で手抜き引用大会でした。


○末初GCレートとか

金曜はレギュラーが月末渡でしたが、ここもと月末越えの資金供給が少なめで推移してショートファンディングが溜まっている影響と、火曜の新発3か月TB入札が業者の持ちになって在庫が重い関係で、朝から足元GCが高めで推移というか資金出しサイドが動かないでござるの巻状態。スポネの国債買現先は2兆5千億円に増額されましたけれども、ショートファンディングが溜まっているせいで足切り0.12の平均0.127に上昇(前日は0.110/0.11)しちゃいまして、まあしょーがねーなという感じです。

短国買入も弱かったですし、ショートタームのオペも実施されましたが、末初のGCは結局0.15%〜0.14%という感じだったようで、まあ通常ベースから言えばそんなに上がりませんでしたという事なのかもしれませんが、何せ「やや長めの金利のさらなる低下を促す」という状態になっているので、そうホイホイと足元のレートが上昇されても困る訳です。金利水準が低いので、ちょっと前のようにコールが0.25%だ0.50%だという時と比べて足元が1bp上がった下がったというのは物凄い大きな話だというのは最近の3か月TB入札水準がそれこそ0.5bp以内の世界でああでもないこうでもないとやっている事からもお判りになる通り(つまり1bpどころか0.5bp上がった下がったで大問題)と存じます。

つーことで、末初のGCがさっくり0.15%レベルとかに上昇しやがった(今日はもうちょっと下がると思いますが)訳でして、ターム物金利を押さえ付ける話はどうなってるんだかという悪態の一つもつきたくなるのですが、ディレクティブにやや無理があるのが大きな原因なので、調節どうのこうのよりも調節方針をもうちょっとはっきりさせないと市場が戸惑う場面がまた出てくるんじゃないですかねとは思います。

とは言いましても、じゃあGCレート(東京レポレートのS/N取引レート)を誘導するって言うのも変な話(あれは別にトレーダブルではないリファレンスレートであって、無担保コール翌日物のように実際の取引レートまんまじゃないから誘導目標に置くのに微妙に違和感がある(SNBみたいにLIBORレートを置く所もあるのでやってやれない話ではないけれども、従来の流れからするとちょっと仕組みが違いますなという感じが)ので・・・)ですし、まあこんな感じでファジーなまま進んで行くのでは無かろうかという感じは致しますです、はい。

#以上またまたマニアネタでした







2009/12/25

お題「白川総裁講演2つから」

何か他のネタもあるのですが、後から来た方を先に出していくという宿題積み残しパターンになっているような気がするのは気のせいでございます。

んでまずは22日の総裁会見から少々。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko0912c.pdf

お題は『マクロ・プルーデンスと中央銀行』ということですので、白川総裁のお得意のネタで目先の金融緩和だの時間軸だのというお話ではありません。んでもってミクロプルーデンスとマクロプルーデンスの話がメインなのでその辺から少々。

○金融システムの安定化の為のマクロプルーデンス

本文5p(PDFファイルの6p、以下同様)の『ミクロ・プルーデンスだけで問題は解決するか?』って辺りから。

『今回のグローバル金融危機は、以下で述べる理由から、こうしたミクロ・プルーデンスに基づく規制・監督だけでは、金融システムの安定を実現し、さらには、金融システム安定の究極の目的である経済の持続的成長に貢献することは難しいことを示しているように思います。』

ということで論点が2つ。

『第1の理由は、マクロの経済・金融との関係を抜きには、最適な自己資本や流動性の水準は決まらないということです。』

『金融システムの安定だけを絶対視すると、必要な自己資本や流動性の量を著しく高めざるを得ませんが、レバレッジにせよ、資産・負債の満期構成のミスマッチにせよ、それ自体は金融機関に期待される本来的な役割です。金融機関は、一定の資本を元手に、短期の負債で資金を調達し、長期の資産で運用することによって、金融仲介機能を発揮するとともに、流動性や決済サービスを提供するという付加価値を生み出しています。そうした金融機能が適切に発揮されなくなると、経済の成長は図れません。』

ということで、これまた話としては難しい所なのですが、金融としての決済インフラ機能の部分と、いわゆるリテール商業銀行部門と、投資銀行部門とトレーディング部門ってのが混然一体化しちゃっていると、どこからどこまでを保護されるべきものであるのかというのが難しくなる(だから英国の金融機関賞与重課税みたいな話にも繋がると思う)と思う次第でありまして、本当に狭義な話をすれば決済インフラだけ保護すりゃ良い気もしますし、でも多分金融仲介機能という点で言えば決済インフラのみの保護では不十分な気もします(全部保護すると「負けたら公的救済」と言ってレバレッジ掛けて突っ込むアホウが出てくる)し、まーどうすべきかというのは永遠の課題なのかもしれませんね。

#預貸業務だって「1000万円までの預金を受け付けていますので全額預金保険でカバーされているのがミソです」という売り文句をいう人がいる位ですので、単純に商業銀行部門に保護の網を掛ければ済むという問題でもなさそうな気がする

『勿論、実際には、100%の自己資本比率を求めることはない訳ですが、このことが示すように、実は、従来からの規制・監督も、金融システムと実体経済の関係、あるいは金融システム相互の関係について、何らかのマクロ的な判断を行っていると言えます。ただ、そうしたマクロの視点をより体系的に行う努力は、十分ではなかったように思います。』

なるほど。

『第2の理由は、金融機関のインセンティブは、マクロの要因によっても大きく影響されるということです。この点で思い出されるのは、「音楽が鳴っているときは、誰もがダンスを踊る」という、サブプライム・ローン問題が表面化する前に、米国の大手金融機関経営者が発した有名な言葉です。』

『もし将来、あの当時と同じような良好な経済環境、すなわち、高成長、低インフレ、低金利、市場の低ボラティリティーという状態が長く続いた場合、金融機関経営者や投資家は、今度は違った経営戦略や投資戦略を選択するでしょうか。また、もし自分自身は違った戦略を選択するとしても、競争相手は、どのような戦略を選択すると予想されるでしょうか。』

断言できますが、必ず踊るアホウが出て来て、そのアホウが儲かるのを見て次々とアホウが集まりハーメルンの笛吹き男状態になるのは間違いないです。

『そのように考えると、誰かがリスクをとることになります。』

と、白川総裁も予想ですが(^^)。

『結局、金融システムを全体として捉えた場合のリスクは、ミクロ・レベルのインセンティブだけでなく、マクロの金融・経済環境というインセンティブにも大きな影響を受けることになります。このように考えると、金融システムの安定を確保するためには、個々の金融機関の健全性を確保していくというミクロ・プルーデンスと金融システム全体のリスクに注意するというマクロ・プルーデンスの両方のアプローチが必要です。』

で、そのマクロプルーデンスがどうなのよという話ですが、まあこのネタは折に触れて総裁講演などで示されているので、引用すると多分以前の重複(つーかさっきのも前に見た事あるのだが、汗)になりますので、マクロプルーデンスの視点という所からは最初の『横断的なリスクの視点』部分を引用するでござるの巻。

『第1の「横断的なリスクの視点」とは、ある時点における金融システム全体のリスクの評価軸ですが、そこで強く意識されているのは、各金融機関のポートフォリオや各商品のリスクの相互連関です。』

どういうことかと言いますと、

『金融機関が特定の業種へ与信や投資を集中すると、その金融機関は大きなリスクを抱えることになります。不動産に対する与信集中はその古典的な例ですが、同じことは金融システム全体についても言えます。しかし、仮に個々の金融機関単位でみた場合、特定業種へのエクスポージャーの集中がなくても、多くの金融機関が同じようなポジションをとっている場合、金融システム全体としては、大きなリスクを抱えていることになります。』

さいですな。

『特定のエクスポージャー、例えば、不動産の価値に影響するショックが発生すると、各金融機関が一斉にそのエクスポージャーを圧縮しようとしますが、皆が同じような行動をとろうとすると、エクスポージャーを圧縮すること自体が難しくなります。その過程では、資産の市場流動性や資金流動性が著しく低下し、そのことが損失をさらに拡大させます。こうした一種の群衆行動現象は、“crowded trade”という言葉で呼ばれており、様々な原因によって発生します。』

と、ここまではふむふむという感じですが、その後がちょっと微妙に味わいがある。

『典型的には、経済の先行きに対する見方が同一化することによって生じますが、リスク管理手法の同一化傾向によっても促進されます。金融技術が高度化すると、リスク管理も複雑化していきます。そうなると、リスク管理手法を自ら開発する資源を持たない金融機関では、他の金融機関で開発されたリスク管理手法を採用するインセンティブが高まります。こうした状態が一般化すると、銀行間で資産エクスポージャーの内容が似てくるのみならず、取引のタイミングが同期化することによって、市場の振幅が激しくなります。』

・・・・それは全くその通りで、それこそ大昔のプログラムトレード批判から言われている事なのでありますが、一方で監督当局が「標準的なリスク管理手法」のようなものを推奨するという流れもこれまたある訳でして、その点に関して白川総裁がどのような見解をお持ちになっているのかを小一時間お伺いしたいものであります。

その後の『時系列的なリスクの視点』というのは「目先の安定と将来の安定のトレードオフ」といういつもの話になるので以下割愛。


続きまして昨日の経団連での講演。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko0912d.pdf

○景気認識は厳しい

まあ相手が経団連ということもあって、あまり威勢のよい話にはならないのが空気を読んでる所です。この前どっかの経済団体で話をしていた時にも「下振れリスク警戒」満載だったと思いますし(^^)。

最初の部分で世界経済の話を。

『世界的な信用バブルの崩壊の影響が残存する下で、先行きを巡る不確実性はなお高い状況にあり、世界経済が持続可能な新たな成長経路、いわゆる「ニューノーマル」(New Normal)へ移行するためには多くの課題が残っています。』

と思いっきり言ってますが、現状認識に関してはこんな感じのようで。

『世界経済が本年春先から持ち直し始めた主因は、このうち、第2の要因であるパニック的な金融・経済活動の収縮が沈静化に向かったことです。実際、各国中央銀行による流動性供給や政府による金融システム対策により、国際金融資本市場は、昨年の今頃とは様変わりとなり、かなり落ち着きを取り戻しています。』

『しかし、同時に、第1 の要因として挙げたバランスシート調整圧力が米欧経済に重く残存していることも、明らかになってきました。このため、先進国の回復の鈍さと新興国・資源国の上振れというコントラストが顕著になってきています。』

ということで、最近はすっかり米国の金融市場が雇用回復傾向ヒャッハー状態になっている(ように傍からは見える)という感じですが、バランスシート調整が終わったわけではない(でもまたバブルを発生させちゃうと薬物依存症の禁断症状回復の如くあっさりヒャッハーとなってしまうという論点はあるのですがそれは兎も角)ので警戒レベルは高いまま、というのが白川総裁がイメージとして持っているのかと思います。従って今後についても・・・・

『世界経済の先行きについては、新興国経済の高成長に加え、先進国経済の持ち直しもあって、全体として回復基調を維持するとみられますが、こうした見通しを巡る不確実性はなお高いと判断しています。リスク要因は上下両方向に存在しています。』

『米欧におけるバランスシート調整の帰趨や、政策効果が徐々に薄れていくことの影響などが、主要な下振れ要因として挙げられます。一方、新興国経済の強さは上振れ要因のひとつですが、先進国からの資本流入が継続した場合、流入先経済の過熱とその後の落ち込みを招くことになりかねない点には留意が必要です。』

これって結局新興国の上振れって言っても過熱して落ち込むのだから結局は下振れリスクじゃあーりませんか。

『また、先般のいわゆるドバイ・ショックは、幸い沈静化に向かっているとはいえ、国際金融面でのリスク要因にはなお注意が怠れないことを改めて印象付けました。』

さいですな。


んでもって日本経済ですけれども、先行き見通しに関してはやはり先行き厳しいと。

『もっとも、経済活動の水準はなお低く、改善の動きも政策効果に支えられた部分が大きく、自律的回復力はなお弱いと判断しています。』

『景気の先行きについては、設備・雇用面の調整圧力が残存する2010 年度半ば頃までは、持ち直しのペースは緩やかなものに止まる見通しです。とりわけ、内外における各種政策効果が減衰するとみられる来年春先前後には、景気の勢いが一時的に鈍る可能性もあります。そうした傾向は、経済が公共投資に依存している側面が大きい地方経済において、より強く現れると考えられます。』

ということで、財政政策効果を剥落させてる中なので中々厳しいということっすな。

『もっとも、そこで回復の動きが途切れてしまうといった可能性は大きくないと考えられます。』

ほほう。

『これは、わが国を含む先進国が、経済の回復がしっかりとしたものとなるまで、景気刺激策を継続する方針にあるほか、新興国の内需に自律的な強さが存在するためです。しかし、いずれにせよ、今後の回復の道のりは決して平坦ではないと認識しており、予断を持つことなく経済の姿を点検していく方針です。』

つまり、それらの話がコケルとコケルという話ですね、分かります。

んでもって物価に関してですけれども、これまた物価下落圧力が続くという話なのはいつも通りであります、一応引用しておきます。

『今後は、前年の石油価格高騰の影響が薄れてくるため、来年初にかけて、下落幅は−1%程度まで縮小するとみられます。問題は、その先です。先ほど申し述べたような景気見通しを前提とすると、マクロ的な需給バランスの改善に伴い、物価の下落幅は徐々に縮小していく方向にあります。しかし、経済の持ち直しテンポが緩やかなものに止まるとすれば、物価下落圧力もある程度長期間に亘って残存するとみざるを得ません。』

ということで、現在の金融緩和モードはある程度長期間に亘って継続されるとみざるを得ませんということですな(^^)。


○残りは宿題で勘弁ですが為替の話

で、この講演なのですが、実は本文8p(PDFファイル9p)以降の話が興味持って読めた話で、ここまでは実は前振りみたいなもんだったのですが、諸般の事情(嘘です、単なる寝坊)により本日はそこまで間に合わなかったので宿題で勘弁して下さいませ。

最初の所だけ引用(明日以降また紹介しますが)しますね。

『それでは、金融システムが相対的に頑健性を維持したにもかかわらず、わが国の経済活動の落ち込みが大きかったことの背景をどのように考えるべきでしょうか。ここに、今後の日本経済の姿を考える上での重要なポイントがあると思います。』

『経済活動の大きな落ち込みは、需要項目では輸出において顕著に現れました。これをもって「外需依存による脆弱性」と解釈し、「外需依存から内需主導への抜本的な転換が必要」とする見方も聞かれますが、私はそうした見方には与していません。』

ほうほう。

『なぜなら、そもそも日本の輸出依存度は10%台半ばと、米国と比べやや高いものの、約40%のドイツ、20%台後半のイギリスやフランスをはじめとする欧州の先進国と比べるとはっきりと低く、事実として先進国の中で外需依存傾向が強いとは言えないからです。わが国の経済活動の落ち込みが大きかったことの背景としては、むしろ、世界的金融危機前後におけるわが国の製造業を取り巻く急激な環境変化に着目すべきです。具体的には、以下の3点が重要と考えられます。』

で、その先は後日改めて引用しますが、その中で『大幅な円安の反動が出たこと』という指摘は傾注って感じでして、まあ何だかんだと言ってもここもとの金融政策のトリガーやら目線が為替市場に向かっているという事を反映した話なのではないかと思う次第でございます。


○市場雑談

GCレートが上昇しているのだが。

何かね、GCでファンディングする人(つまり債券ディーラーつまり証券会社ね)の年末越えファンディングのニーズに対して期末越えのオペがロットも少ないですし、安定的にも打たれない(新型オペは安定的に打たれていますが、あれは1回に百億円台前半しか取れないので大手ディーラーで兆円規模のファンディングニーズがある中では焼け石に水状態)というのが効いて来たか、昨日もGCレートは上昇。

いやまあ上昇って言ったって別に0.15とかに上がっている訳では無いのですが、金利水準がここまで低下して、ついでに短期のイールドカーブが思いっきり潰れている中(ターム物を下げると言ってるんだから潰れるのだが)では1bpの上昇も結構甚大な問題でありまして、GCレートが10と11の間でベッタリというのと12や13近くまで上昇する事もあるというのは物凄く大きな違いだという話になるんですな。つまり、絶賛大発行される3か月TBのレートが0.12位で安定するのか、0.14位まで楽勝で上昇しちゃうのかというようなレベルのお話で、長期金利のスケールからすると細かい話にも程があるかもしれませんけど、結構重要な点じゃネーノという所です。

ま、この点に関しては昨日も申し上げましたが、「ターム物金利の低下」という事を考えた場合にはGCレートを見ていく必要があるのですが、そのGC取引は先日付で実施されるものなので、足元のコールの調整(ディレクティブそのものはコール誘導!)をしながら先日付で行われる取引の調整をするというのはちょっと無理がある(GCとコールがタイムラグを伴って反応するから)と思うのであります。

まあディレクティブをもうちょっと工夫した方が調節やりやすくなるんじゃネーノと思うのですけれどもどうでしょ、ってまあ中の人は色々検討しているとは思いますが今日もまた書くのでありました。





2009/12/24

お題「総裁会見続き/市場雑談」

火曜日に権丈先生のお名前を思いっきり打ち間違いしてしまいまして誠に申し訳ございませんでした。

○総裁会見の続きから少々

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0912d.pdf

火曜日にご紹介しなかったのですが、最後の方で中々良い質疑応答がございますので引用大会。正直言って判り切った同じ質問する質問者は排除してこういうツッコミの応酬を見せて欲しいもんだと思います。BOEみたいに質問者名と所属を出せば良いんジャマイカとも思うのですけれどもね。

要旨11ページ目から13ページ目の辺りの質疑応答が今回は中々秀逸でございましたので熟知すべし。

『(問) 先程、「物価安定の理解」の表現を一段と明確化したことにより、金利形成にも相応な影響があると話されましたが、「物価安定の理解」の実質を変えたわけではないとも話されました。つまり、日銀が実質的に何も変えていないにも拘わらず、金利形成に影響があると期待しているということは、市場や国民、政府は日銀の考えに対して誤解があり、誤解が解けることによって金利形成に影響があるという論理だと思います。』

こりゃ仰る通りですな。で、質問はなお続く。

『エコノミストを対象とした私どもの調査によれば、早くても11 年度後半にならなければ政策金利の利上げはないとの予想ですが、総裁は、政策金利の引上げ予想時期が後ずれすることを期待しているのでしょうか。市場が誤解しているとするならば、そういうことになるかと思いますが、そういうことを期待されているのか伺います。』

私どもってえことはブルームバーグさんか日経さんか通信社さんっすか(^^)。

『(答) 将来の政策の変更時期については、今後の経済・物価・金融の情勢によって決まるので、中央銀行の総裁として、このタイミングでなければいけないという考えを予め持つのは非常に危険なことだと思います。その意味では、これは原理原則の問題として、常に予断を持つことなく考えていくことであると思っています。』

そりゃまあそうですが。

『また、「誤解」という言葉はやや強い言葉かもしれませんが、必ずしも正確に伝わっていない面があるとすれば、正確に伝える努力を常にしていく必要があると思います。』

つまりどういう事かと言いますと・・・・

『それから、市場関係者には実に色々な方々がおり、必ずしもすべてを代表する包括的な「ザ・市場関係者」がいるわけではないと、私自身は常に感じています。』

「ザ・市場関係者」というのはツボってしまいました(^^)。

『例えば、中央銀行の政策を最もウォッチしているのは、短期金融市場の関係者です。金融調節に関する色々な議論は、短期金融市場を見ている人にとっては周知の情報であっても、外縁部の市場、つまり債券市場、株式市場あるいは外為市場と拡がっていくほど、日本銀行の金融政策について十分に理解されていないと感じることがあります。』

確かにその通りでございます。つまりここまでの所で分かりますように、今回の明確化というのは「大事なことなので繰り返しました」という以上の積極的な意味は政策インプリケーション的にはございませんという事になろうかと思います。まあはっきり言っちゃえば為替市場向けの説明と、政府やメディア向けの説明ですよってえ事でしょ。

『これは日本銀行に限らず、FRBをみてもそうです。今、FRBが議会あるいはマーケットやエコノミストとの関係で苦労している1つは、中央銀行のバランスシートが拡張していることが直ちにインフレにつながるわけではないことを説明することです。私どもからすれば、その説明は非常によく分かるものですが、短期市場の関係者にはある程度理解されても、それ以外のマーケットの関係者にはなかなか理解されていません。』

マーケット以外モナー。

『私は、マーケットの良さは、多様な見解がある、多様な人がいるということであり、包括的な「ザ・マーケット」があるという市場観があると考えること自体が必ずしも適切ではないと思っています。』

まあ最後はおまけですけれども、「ザ・マーケット」もツボに入っちゃいました(^^)。


で、その次の質問。多分同じ人でしょ。

『(問) 少なくとも債券市場は、日銀の政策をかなり理解しているプロの集まりだと思います。今回の「物価安定の理解」の明確化が金利形成にも影響があることを期待されているということは、彼らがやはり日銀の政策を誤解しており、その誤解が解かれることによって金利がより下がるということを期待しているのではないかと思います。つまり債券市場のプロたちも、日銀の政策について、より早い時期での超金融緩和からの脱却を期待している、というように誤解していたとお考えなのでしょうか。』

いやまあそう仰いますが、債券市場で短期全然理解してない人とか結構多いですし、何とかストの皆様でも結構無茶な説明を見かける事は多いっすけどね。なお質問は続く。

『今。今回の措置について、白川総裁が実質的に何も変わっていないとおっしゃっている一方で、金利形成に相応の影響があると期待されているということは、やはり彼らプロも誤解していたということになるのではないでしょうか。』

つまり実際はコミットメントの強化のようなものではないかという質問ですね。これは中々。


『(答) 債券市場の専門家の方も含めて、私自身は色々な人の意見にできるだけ目を通すようにしています。』

・・・・さすがは趣味がセントラルバンキングのお方だけの事はございます。

『その上で、政策金利について色々な見方があるということはもちろん認識しています。政策金利というのは最終的に経済がどのように展開するかということで決まってくるわけです。それは中央銀行自身の政策によっても変わりますし、それから中央銀行が直接コントロールできない様々な外的ショックによっても影響を受けるわけです。そうしたものの結果として、政策金利の経路が最終的に決まってくるわけですから、今私が、市場参加者の特定の見通しについて正しいとか正しくないと申し上げることは、そもそも適切ではないと思っています。』

ということで、まあ話としては微妙に避けたような印象ですが、まあここのニュアンスからすれば「日銀はそう簡単に利上げモードにはなりませんのでもうちょっと金利下がってちょ」という話になると思いますが、その金利がどのゾーン位まで下げられるのかと言えば、展望レポートで示されている見通しの範囲での政策金利見通しが強く影響するゾーンまでという事になるんじゃないでしょうかねえ。よー知らんが。


あと、特オペの効果に関する質問もありましたので、その答えを引用します。

『(答) 固定金利方式の共通担保資金供給オペは、毎週1回オファーすることとしており、これまでに2回実施しましたが、それぞれ8,000 億円のオファー額を大幅に上回る積極的な応札がありました。このオペは、実質ゼロ金利といえるきわめて低い金利水準で、期間3か月の資金を潤沢かつ安定的に供給することを通じて、短期金融市場における長めの金利の低下を促すことを狙いとして導入した措置です。』

実質ゼロ金利とはまた「超低金利」みたいなアレでございますな(^^)。

『オペの導入を決定した後、短期国債レートや銀行間取引金利などの長めの金利が一段と低下しています。また市場の心理も一頃に比べ若干落ち着きを取り戻していると思います。従って、新しいオペは、既にそれなりの効果を発揮しているとみられます。』

ふーん、ただまあ通常のオペ運営も大事なんですよね〜♪ということでオペ雑談に話は続く。


○市場雑談というかオペなどの雑談

ご存じのように絶賛年末進行モードの短期市場ちゃんですけれども、オペが何とも微妙なのがGC市場的に微妙なテイストを醸し出しているようですな。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of091221.htm(月曜のオペ)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of091222.htm(火曜のオペ)

オペのスタート日とエンド日に注目して頂きたいのですが、いつもの国債買現先は兎も角として、共通担保の方なんですけど、月曜は28日にエンドの来るオペを打って30日〜1月4日という末初の翌日物オペを実施という不思議ちゃんなオペの打ち方。

ギリギリまで来るとまた話は別ですが、今時分だと丁度年末越えのターム物でファンディングをしたくなる所(最後の最後まで引っ張れば何とかなるのは分かっていても、流動性リスクやオペレーショナルリスクまで相応に勘案すれば、ファンディングの全部を超ショートファンディング一本勝負というのはイクナイ)でありまして、そういう中でわざわざ「年末ちょっと手前までの資金供給」と「末初だけの資金供給」をするというのは何と言うか「ショートファンディングの勧め」にしか見えない訳でして、オペレーションとして不思議ちゃんな感じがするのであります。

ターム物金利を安定させるという観点からすると、無担保コール翌日物だけではなく、GCレートを安定化させる必要がある(3か月の実質的な市場指標金利のTB3か月もの(TIBORは鉛筆なめなめレート)はGCレートが不安定だと安定化しない)と思われる次第でして、そのGCレートを落ち着かせるという観点からすると、GCとかオペとかでのファンディングをショートファンディングに傾かせない方が良い(特定のモノ日とかで需給がちょっと偏在しただけでGCレートが不安定化するリスクが高まるから)と存じます次第なんですが・・・・

で、火曜日もこれまた2本のオペのうち1本は29日エンドと言う事で、これまた年末越えのターム資金は取らんでヨロシという事なのかと(1月5日エンドの方はまあ良いとしても)不思議ちゃんモードが継続しているのでありまする。

まー何度か申し上げておりますが、ある程度の安定したロットでターム物の供給を継続的に打っておいて、足元のショートファンディングを軽くするように持って行けば足元のGCレートも自然に低位安定するので、スポネの買現先を出したりひっこめたりというようなややこしいオペレーション(とりあえず21日抜けた所でちょっと減らしている感じはしますな。まあ良く言えばきめ細かいのですけれども・・・)をしなくてもレートが低位安定すると存じますが、どうも今のオペレーションを見ていると「コールレート0.1%」「GCの跳ね上がり防止」「ターム金利の引き下げ」のどこにポイントがあるのかが微妙で、この3つを同時に追うのはテクニカル的には中々ムツカシイ面があろうかと思います。まあ3つともやると言っている話なのでこれはどこを重視するのかをちゃんと政策委員会である程度の方向性を決める(その結果を公表するかどうかは兎も角として)べきではないかと・・・


というまたマニアネタですいません。

そういや火曜の年内最後の短期国債入札ですが、結果はまあこんなもんちゃあこんなもんですけれども、市場推計の落札結果によりますとほぼ見事に業者に嵌ってしまい(毎度お馴染みの不明玉が3000億ちょっとしか無いというのは3か月TBでは驚異的な少なさ)この年末(外資系さんにおかれましては期末というおまけもある)の中で在庫たくさんとは実に味わい深い結果になったと存じます(-_-メ)。何で投資家が買わなかったんでしょ。よー判らん。


○俺様用備忘メモなので以下はどうでも良いです

というかそもそもこれ自体が俺様備忘メモなんですけどね(汗)。

・金融経済月報と声明文

についてまだスルーしているので忘れないようにしないと。

・白川総裁講演

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0912c.htm
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko0912c.pdf

お題が『マクロ・プルーデンスと中央銀行』なのでまあ内容は予想通りという感じでしたが、これって実は証券アナリスト協会でだいぶ前に告知されていたお題でして、火曜の朝の某テレビ番組で為替系の人達が「総裁講演で追加緩和に関する発言が出るかどうかも注目です」とか言ってるのはまあ何と申しますか実にチャーミングでございましたな。

http://www.saa.or.jp/seminar/index.html

[2009年12月21日] 12月22日の日本銀行白川総裁の講演「マクロプルーデンスと中央銀行」は、会場が大変混雑することが予想されます。場合によっては、立ち見やロビーでの音声のみの聴講となることもありますので、予めご了承ください。

・・・と思いっきりお題が最初から告知されていた訳ですな(^^)。








2009/12/22

お題「総裁会見とかその他雑談少々」

WBSなんぞ見る訳は無いあたくしですが、モーサテによりますと「デフレが更に進んだ場合には積極的に追加緩和を行う」とかなんとかいう趣旨の事を白川総裁が仰せになったそうですが、そんなの別に「デフレと闘う姿勢」とかじゃなくて中央銀行として至極当たり前のことなんですけどねえ。

ま、為替市場が反応してるから日銀的には願ったり叶ったりなので、「お前ら追加緩和期待でドル買ってるけど、ドル高円安になったらそもそも追加緩和が無くなるんだぞ為替市場プギャー」などと無粋な事を言ってはいけないのがお約束というものです。

#まあ日経がやっと「景気は気なんだから威勢の良い話をした方が良い」と気がついたのであれば大慶でございますけどね

それは兎も角総裁会見。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0912d.pdf

○新たなコミットメントはございませんが

冒頭の説明部分を引用すると長くなるので割愛しますが、最初の説明は景気認識にかかわる部分ざますので、本当は声明文比較を昨日やっておけばよかったのですが、そこは休み明けにやるということで勘弁。で、景気認識もリスク認識も特に変化無いですよという話をしてたりしますが、その次の質疑から。

『(問) 物価のマイナスの値は許容しないという本日の発表を受け、金融市場では事実上の時間軸政策ではないかといった受け止め方も浮上しています。こうした受け止め方に対する総裁の認識を教えて下さい。』

なんつーか事実上の時間軸政策は既に債券市場でも短期金融市場でも認識してたと思うのですけど(価格形成見たらどう見てもそうでしょ)まあいっか。

『(答) 今回の「物価安定の理解」の明確化は、日本銀行としては、ゼロ%以下のマイナスの値は許容していないこと、委員の大勢は1%程度を中心と考えているということを、より明確な言葉で表現することにより、物価の安定に関する日本銀行の考え方の一層の浸透を図る措置です。』

・・・・つまり、「ここは大事なことなので繰り返して言います」ということですね(^^)。

『従って、先行きの金融政策運営について何らかのコミットメントを行うという意味での時間軸政策とは異なります。』

足元のCPIにはコミットせずという事ですわな。

『ただし、展望レポートで示している経済・物価の先行きの見通しや、毎回の決定会合後に公表している金融政策運営方針とともに、物価安定に関する日本銀行の考え方が一層浸透することは、いわばこれら全体として金融市場における金利形成にも相応の影響があると考えられます。』

これね、後の方でも同じ話をしているのですけれども、これまた昨日申し上げたように、「わたくしたちの言う事を皆さんがきちんと理解すれば金利は低位安定するんですよ」という話をしているというこってすな。

『今のご質問については、これを広い意味で時間軸的な効果と呼ぶのであれば、そうした効果はあると思います。ただし、そうしたことを積極的に狙っているのではなく、先程申し上げた枠組み全体として効果があるということを申し上げたいと思います。』

殆ど禅問答の世界ですが(^^)、ここを蒟蒻問答状態となっているあたくしが勝手に解釈しますと・・・

「今の金融政策の枠組みは、足元の特定の指標にコミットするとか、市場の期待をオーバーライドするような形での金融政策枠組みではありません。では、現在はどのような枠組みかと申しますと、展望レポートと中間レビューで先行きの日銀の景気物価見通しを示す事によって先行きの金融政策に対するある程度の予見性を高めるという形になっております。従いまして、現在本行が出している景気物価見通しを勘案すれば、当面緩和的な政策を継続することは明言しなくてもご理解頂ける筈ですので、結果として市場金利は低位安定するでしょう」(以上、総裁発言じゃなくてあたくしの脳内解釈です、為念)

というような感じだと思いますが、蒟蒻問答の可能性もありますので内容のご判断は自己責任でお願いします・・・・って書いたらその後の質疑で実は「もう少し丁寧に説明して下さい」というのがあるのはここだけの話です(最初読んだ時に読み飛ばしてたよorz)。

つーことで、その先の質疑を読めば(会見5ページ目あたり)禅問答の続きが書いてあるのですけれども、まあそれをもうちょっとあたくし的に書き換えたのがさっきの脳内解釈ですが、そちらの丁寧な説明シリーズから最後の部分だけ引用しておくだよ。

『今ご質問にあったかつての時間軸政策は、消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上となるまで量的緩和政策を続ける、というかたちで公表しました。今回は、もちろんそれとは異なります。量的緩和政策を採用した時と現在とでは、日本銀行の政策運営を巡る環境、手段、枠組みが随分違っているにもかかわらず、従来と同じ議論がなされていると感じます。』

さすがに金利市場の参加者の多くは従来と同じ議論はしてねえと思いますが、確かにまあ能天気に昔の時間軸と同じような話をしている人はいるかもね。まあ金利市場以外の人達は思いっきりそう(昨日たまたまネタにしたどこぞの銀行の為替レポートとかありましたが、金融政策の具体的な枠組みとかを碌に勉強しないで堂々金融政策に関して論じてる何とかストのレポートって結構多いのよね)だったりしますし、ということでしょう。


○元々デフレ容認はしてませんけど

『(問) 従来の「0〜2%程度」という表現では何が問題だったのでしょうか。』

『(答) 従来は「0〜2%程度の範囲内にあり、委員毎の中心値は、大勢として、1%程度となっている」と表現していました。こうした「物価安定の理解」の表現の仕方について、私ども自身の理解とは別に、時として、日本銀行がマイナス領域を容認している、あるいはデフレを容認しているとの声が一部にあったことは事実です。私ども自身の理解とは異なる、こうした誤解があるのであれば、その誤解は解いた方がよいということです。何か実質を変えたということではありません。ただ、私どもが考えていることを正確に伝えるために、改めてこの表現を点検したということです。』

ということで、マイナスは容認していない云々というのは、こちらにありますように『何か実質を変えたということではありません』なのでありまして、中長期的なマイナスインフレは容認してませんがなという話ですわなという事で、やはり「大事なことなので繰り返します」という事でしょうな。

ま、元々この「理解」は量的緩和解除の時に出した枠組みの一環なので、そういう点で言えば導入当初に別にマイナスがどうのこうのという点はあまり話題にならなかったような気がする(下限ゼロは低いだろというような話はありましたけどね、あたくしの過去の駄文読んでるとそんな事書いてたなあ(遠い目))。



○足元にはコミットしてないです+中長期的とは+リスク点検の重要性とは

それでもこういう質問がしつこく出てくるのがメディアクオリティ。

『(問) 発表文の添付資料で、「物価安定の理解」の明確化のポイントとして、「ゼロ%以下のマイナスの値は許容していない」という表現をとっています。許容しないとすれば、デフレ、つまり物価がマイナスの時は緩和政策を続けるというアクションがその結果として出てくると思います。許容していないという認識や決意と、実際の政策行動とはどういう関係にあるのかをご説明下さい。』

んーとね、それこそ極端な話ですけれども、目先マイナスでも何らかの要因で将来的に物凄い勢いで物価が上昇しそうだという事が明白だったら緩和政策を続けない可能性もあるって事が「中長期的な」物価安定の理解ですよって事ですし、何らかの特殊要因で物価指数が下がっていても将来的に(以下同文)ってことじゃないですか、という事になるのではないかと。では総裁はどう説明しているかと言いますと・・・・・

『(答) 「中長期的な物価安定の理解」というのは、まさに書いてある通り、「中長期的な」ものです。物価安定が日本銀行の金融政策の目的である以上、物価安定を数値的に定義し、イメージを示していくということです。そして、実際の金融政策運営は、そうした物価安定の状態に関する理解を前提としつつ、将来の見通しに基づいて運営していくわけです。』

『金融政策を運営する時には、先程2つの柱ということを申し上げました。物価を通じて点検する面、これはもちろん大事なことです。一方で、2000年代半ば以降、今回の危機に至るプロセスを振り返ってみると、各国とも物価は安定していた、むしろ物価上昇率が低下していくディスインフレという局面が続いていたわけです。物価は大事ですが、物価だけを見ているともっと大きな経済全体の不均衡を見失ってしまうことがあり得ます。従って、足許の物価からストレートに金融政策の運営が決まってくるというものではないことが、今回の危機を通じて一段と明らかになったと感じます。』

というのは例のポンチ絵の最後の方にある「リスク点検の重要性」ってえ奴でございますわな。これまた昔と同じ話をしらっと行っているのですな。

『そして、いわゆるインフレーション・ターゲティングを採用している国、あるいは採用していない国も含めて、物価安定の状態を考える際に対応する時期として、各国の中央銀行がどういう表現をしているのかを改めて確認してみますと、どの中央銀行も「中長期」ということを非常に強調しています。』

中長期の定義キタコレ。

『例えば、欧州中央銀行は、中期(medium-term)という言葉を使っています。米国は、中長期の最終的に望ましい状態に対応する見通しを発表していますが、その期間は、大体5〜6年というかたちで出しています。英国は、妥当な期間(within reasonable time period)と書いています。いずれにせよ、多くの中央銀行に共通していることは、物価安定はもちろん大事なのですが、しかし物価安定だけ、足許の物価だけをみて、短期的に政策運営することは適切ではないということです。』

ということで、足元にコミットしている訳ではないという話をしているのですけれども、これだけ説明している傍から次にこんな質問が飛んでくるのがメディアクオリティ。

『(問) 先程、国民にも分かりやすいメッセージを発するべきだとおっしゃっていたことに関連してお聞きします。今回、「物価安定の理解」の表現を変えましたが、逆に、国民にとっては、CPI(消費者物価指数)に目標を設けて時間軸を導入した方がより分かりやすいのではとも考えられます。総裁は、今回の明確化について、時間軸的な効果もあるとおっしゃっていますが、あえて政策として時間軸を導入しない理由について、もう少し分かりやすく教えて下さい。つまり、先程、日銀の政策のやり方が色々変わってきているので、以前導入したようなCPI前年比の目標を設けることはなくていいのではとおっしゃっていましたが、なぜ今は導入しなくても日銀は正確な情報発信ができるのでしょうか。』

・・・・・まずはメディアの皆様におかれましては、とりあえず変な思い込みに凝り固まる前に日銀の公表文書を百万回読んでから質問とかしやがれと思うのでありますが。あっしが白川総裁の席にいたら「お前ら何回同じ質問するんだよ頭の中に入っているのは糠味噌かよ」とか言いたくなりそうですな(−−)。

回答は引用するとただの重複なので割愛。政策インプリケーションにならない質問の重複は程々にしていただきたいですな。


○量の拡大と金利の引き下げと

こういう質問は良いですな。

『(問) 「ゼロ%以下のマイナスの値は許容していない」ということを踏まえ、今後は、12 月1日に導入を決定した新しいオペ等を打っていくことになると思いますが、これが物価に働きかける効果についてお聞きします。金融システムが不安定な時には物価の下落を食い止める効果はあるが、金融システムが安定している時には効果が限られるという説明をこれまでしてきたと思うのですが、これまでの説明と今回の措置がもたらす物価に働きかける効果について説明して下さい。』

『(答) 量を潤沢に出していくということは、ご質問にもあったように金融システムが不安定な状況にある時には金融システムの安定を確保する上で有効な方策であると思います。過去のデフレの歴史を振り返ってみますと、金融システムが不安定化し金融が収縮するという状況になった時にデフレが深刻化するわけですから、金融が収縮しないように量を出していくことには意味があると思います。』

『ただし、そのように量を出して金融システムが安定したもとで、量を出すことで経済が刺激できるかというと、その効果は非常に限定的であると思っています。これは、前回のわが国の量的緩和の時の経験でもそうですし、今回、わが国の経験を踏まえて各国が色々な政策を採っている中で、各国の中央銀行関係者の評価を聞くと、もちろん全員が一致しているわけではありませんが、量それ自体で景気を刺激する効果は限定的であるとしています。』

で、それだけだとメディアがうるさいので錦の御旗にバーナンキを(^^)。

『FRB議長は「これは信用緩和をやっていく上での結果に過ぎない」という言い方をしています。』

『ただし、いずれにしても、私どもとしては量について制約がないようにしておきたいと思っています。』

と、ここまでを読みますと、まあ金融市場にストレスが掛かるという場合とか(あと個人的に可能性があるとすればバランスシート拡大によって短期のオペでの繰り回しがあまりにも忙しくなった場合かなあ、普通に無さそうですけど)の場合には輪番拡大の線もあるという話でしょうね、と思います。

『一方、新しい固定金利型のオペについてですが、これを通じてやや長めの金利に働きかけていくことになります。もちろん、既に金利水準は非常に低いし、どの指標までみるかで若干違いはありますが、わが国の短期金利全体の水準は世界で最も低い状況ですから、さらなる金利低下の効果が非常に大きいのかといった疑問もあるかと思います。しかし、中央銀行としてどのような貢献ができるかを考えた場合には、1つのルートとして考えていくべきだと思っています。』

ということですので、まあ次の緩和は金利ルートになるのが本線でしょうという話(昨日も書いたけど)になるかと存じますです。

#もうちょっと後ろの方に面白い表現があったりするんだが、時間と量の都合上後日に回すということで勘弁。べ、別にネタ切れを展望して温存した訳じゃないんだからね!


ここまでお付き合い頂きまして恐縮ですが最後におまけの雑談。


○雑談ですが・・・・

・マニフェスト詐欺関連

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091221-00000602-san-bus_all
暫定税率“衣替え”で維持、子ども手当は所得制限なし 首相が表明

どう見ても政権公約詐欺です本当にカムサハムニダ。

で、まあ政権公約詐欺は予想通りの展開ですけれども、この辺りの話に関しては最近またまた切れ味抜群の権丈先生の仰る通りと存じます。

http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/korunakare272.pdf
制約条件と接点さえ持たない政策が羅列された冊子はマニフェストとは言わないんだよ

とか、

http://kenjoh.com/
の12月21日の所にある

『まぁ、僕の言う専門情報に司る職業人が、確信犯的にウソをつく場合には、素人は簡単に騙されるんだけどね。だから、専門情報に司る人には強い倫理規制が要求されるんだけど、最近の政界はなんでもありだな。専門情報が支配的な世界では、倫理規制を無視した者が勝つから、必然、悪貨が良貨を駆逐する状態になる。』

>専門情報に司る人には強い倫理規制が要求される

というのはまったくもって仰る通りだと存じます、と勝手に人のふんどしでどうもすいません。


・でもまあ自民党もこのテイタラク

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=ao6aFRMhDnWo
自民・後藤田氏:消費者金融への資金供給を提案−「業界擁護でない」

・・・・・何を言ってるんだこいつは。提案する前に業界関係者と債務者と株主などの所へ全国行脚して土下座して詫びた上に足蹴にされた後に西方浄土にでも旅立つか鳴門海峡で鱶の餌にでもなるべきだと思いますけど。

まあ記事の中でもこのようなコメントがあるのは当たり前ですわな。

『専門家からは、「債務者が困る状況を作り上げたのは上限金利の引き下げに伴って審査に通らない人が出たからだ。今ごろ何を言っているのか」(シティグループ証券の津田武寛アナリスト)との驚きの声も出ている』(上記URLより)


でも、自民党はその後藤田氏を金融の専門家として扱っているようです。

http://www.jimin.jp/jimin/yakuin/yakuin-3.html

『財務金融部会長 後藤田 正純』

・・・・もうね、何のギャグかと。まあマニフェスト詐欺もそうですけれども、平気でこういう事出来るのが政治家クオリティだとしたら、「政治主導」なんて百害あって一利無しなんじゃないですかねえ・・・・









2009/12/21

お題「ネタがまた出るとはこれまたビックリ」

ということで決定会合ですが。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091218.pdf(結果)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0912c.pdf(物価安定の理解明確化)

○まずは市場メモ

当然ながら結果の方じゃなくて『「中長期的な物価安定の理解」の明確化』に市場は反応するでござるの巻。イメージとして浮かぶのは2003年に実施された「量的緩和コミットメントの強化」みたいな所にもなる(と書いてて気がついたのですが、あれからもう6年経っているのか・・・古参兵的にはつい最近だったような気がする)し、まあ当然ながらベンダーに出る「ゼロ以下のマイナスの物価を許容しない」というのがキャッチーなのでありまして、そりゃまあ債券市場は上昇しますわな。

ただ、相場上昇した所で相応に戻り売りみたいなのも出たようですし、良く良く見ると今回は何かコミットメントを入れたとか物価安定の理解の内容を変化させたというものでも無いんじゃネーノという見方も段々広がってきたのか、踏み上げみたいに上昇した分は剥落するでござるの巻。

引け後の会見では毎度お馴染みのように白川総裁が「基本的な見方は変わらない」とかついいつもの正確かつ丁寧な説明をするもんだから瞬間先物は10銭位下げていたりしましたが、まあ別に内容で売るというのも変な話なので、売りも続かずという所で結局先物140円台でござるの巻っていう感じだったのかなと思いまする。勝手な妄想で書いたので実際の所はよー知らんが。


ではまあ今日は例の「理解明確化」に関してあれこれ雑感をば。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0912c.pdf


○物価安定の理解明確化リリースに俊ちゃん路線の香り

前回の臨時会合では切込隊長から『最近、日銀がヤマダ電機の特売みたいな物言いを増やしている件について』と評されましたが(^^)、今回のリリースのポンチ絵も中々こう良い感じのテイストを漂わせているのであります。前回の特売チラシでは「新しい資金供給手段」(=実は手段としては従来通りだし、指値オペも既に企業金融オペで実施済み)、「超低金利」というのがキャッチーな売り文句でございましたが(^^)、今回の宣伝文句はやはり「ゼロ%以下のマイナスの値は許容していない」でありましょう(^^)。

まあ確かに報道されている総裁記者会見でもありますように、「日銀はマイナスインフレを容認している」というトンチキな話が人口に膾炙しているとゆーのも事実でございまして、まーそういう意味からも「そうじゃねえよ」という説明はどっかでしておかないといけませんなあという事もあったんで今回作ってみましたよ、という点では意味はある話なのですけれども・・・・・

ただね、この説明自体はそもそもこの「理解」導入の時点で話している事の繰り返しに過ぎないのでありまして、今回何らかの金融緩和に関する政策発動を行っている訳ではないのでありまして、つまりそれは「これは大事ですから繰り返して言います」と同じ話に過ぎないというのがまず原理的な話であります。まあ上で書いたようなマイナスインフレ許容的な解釈が結構あるのと、「ゼロ以下許容しない」がキャッチーだった事から市場や世間様が反応して良かったですねという感じです。

つまり、まあ別に詐欺でも何でも無いですけれども、良く言えば「見せ方を工夫した」んですけど、悪く言えば「大した話でも無い事を強調する福井俊彦的ペテン路線」が前回の臨時会合以来の仕様になりつつあるのですかねえという感がして、中々味わい深いものを感じるのでありました(^^)。


○でも俊ちゃんになるのはムツカシイ

詳しくは今日の会見要旨出てからなので明日のネタになりますが・・・・

総裁会見での白川さんは、「広い意味での時間軸的政策」(的ってのがミソですけどね^^)とか「物価安定の理解が浸透すれば金利形成が変わって来る」とか良い感じで良い話もしているのですが、先ほども市場メモ部分で書いたように「従来の見方を変えた訳ではない」というような発言をしちゃうのがチャーミングな所でして、量的緩和政策をやっている時には大狸と化して緩和の狸芝居(芝居の出来が良かったので猿芝居とは言わない^^)を打ち続けていた福井の俊ちゃん(ただし、解除モードのスイッチが入ってからのジャガーチェンジ振りも凄かったですが)になりきれない所が白川総裁クオリティ。

ま、詳しくは明日のネタですけれども、「物価安定の理解が浸透すれば云々」というのは「わたくしどもの申し上げていることを皆様がちゃんと理解していただけれれば金利はきちんと低位安定するんですよ」と言っているのでありまして、元々この話って金利の世界の人達向けというよりは、金融政策の枠組みとかの内容をちゃんと理解していないで好き勝手なる俺様解釈をして勝手に動いてくれる他市場とか、やるやる詐欺で口だけは達者な政治方面へのアピールなのでしょうと思ってましたけど、何気に金利市場ももっと反応しやがれってえ事かもしれませんな。

#超脱線するんですけど、先日どこぞの為替レポート(の最初に書いてあった要約だけですが)見てたら「日銀は新オペ導入後にコールレートを恒常的に0.1%を割り込むような調節を行っておらず、姿勢の明確化が求められる」とかいう説明があったんですけれども、それはお前ディレクティブ違反だっつーのという感じでして、ちゃんとした銀行が出しているのにそれかよという所に落涙を禁じ得ない所です。別に何を言うのかってのはそりゃまあ自由ですけれども、基本的なこと位押さえてくれよと思うのであります。

会見関連は明日に続き、さっきの明確化に話を戻しましょ。


○物価安定の理解は中長期的な理解でありまして・・・

まずですな、これって「『中長期的』な物価安定の理解」であるんですな。即ち、今回明確化したと堂々リリースされたのは「日本銀行は中長期的にマイナスインフレは容認していない」って事ですが、そんなの当たり前の話でして、中長期的に持続的な物価下落を容認する中央銀行はいませんわなということっすよね。

しかもこれって中長期的な話でありまして、足元で「〜による特殊要因の反動による物価の一時的な下落」の結果としてのマイナス値を許容するかしないかというのとは別ですがな、という事にもありますわな。日銀的な理屈からするとたぶん。

しかもこの明確化なんですけれども、よくよく見ますと最後の部分に『リスク点検の重要性』というチャーミングな箇所がございます。曰く、

『上記の「理解」を念頭に、金融面での不均衡の蓄積も含めた様々なリスク要因も点検』

どう見ても低金利政策長期化懸念です本当にありがとうございました・・・って読んじゃいますけれども、そもそもこの「中長期的な物価安定の理解」というのは明確化のリリース文書にもありますように、2006年の量的緩和解除の時に最初に出たのでして・・・・・
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/mpo0603a.htm

まあこの時ってあたくしウダウダと書き物をした覚えがありますので、2006年3月10日と13日に書いた駄文とか、当時の総裁会見とかをご参照ありたし。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0603a.htm
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisaku05-02.html#seisaku060313
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisaku05-02.html#seisaku060310

ま、今回はさすがに低金利政策長期化リスクを想像させる箇所を下の方に追いやっているのは配慮を感じますが、その部分もちゃんと残しているのは、(元々今回「理解」に関して何の変更も無いのですから当たり前ですが)これまたチャーミングな所でございます(^^)。

それから「中心1%」っていうのに多分いい感じで騙されると思うのですけれども(2006年の駄文でも書いてますけど)、中長期的な物価安定の理解が1%であるという事は即ち、「1%水準のインフレならば金融政策は中立的で良い」という話でもある訳でして、金融政策が効いてくるのにタイムラグがあるからフォワードルッキングがどうしたこうしたという話を持ち出しますと、CPIが0.5%程度でも堂々「超緩和政策の解除であって引き締めでもなく、依然として緩和的」とか言いながら政策金利を引き上げることは大いに可能であります(つーか前はそうやって利上げした)し、上限2%ってえ事は「2%を超えるインフレなら金融政策は引き締め的に」って随分タカ派だなおいおいって言う話でもあるんですけどね。

ま、足元物価が絶賛マイナス推移だからどうでもいい話ですけど、その辺りを忘れると物価が戻ってきた時に勘違いする元になるので注意しましょう(^^)。



○で、時間軸かという話ですが・・・・

まず原理原則的な話をすると、これは「中長期的な理解」であって足元にコミットしていないという点では時間軸ではございません。

ただし、展望レポートで既に示されているように、2011年度まで物価の見通しがマイナス推移していると言う事は、即ちどこをどう考えても日銀様におかれましては、2011年度の半ば(本当はもうちょっと先の話だとと思いますが、政策のタイムラグを考えたフォワードルッキングとやらを考えて上り最速^^で考える)までは緩和的な金融環境を継続していかないと話にならんと(今のところは)考えているという事になりますので、そもそも論からして時間軸効果のようなものは前からあるにはあるという事になります。

まあこの明確化がどうのこうのというよりは、実際問題として行っている指値オペの方が徐々に効いてきて、ターム物金利が押さえ付けられていくというルートの方が時間軸効果の結果としての中長期金利低位安定には効いてくると思いますが、より長い所になりますと、財政がどうのこうのとか米国などの長期金利動向とかに振らされるという事になるんでしょうかね、よー知らんが。


○追加緩和はあるのかどうかの私見

まー今回は「外向けアピール」ということでありまして、本石町日記さんの所で『気まぐれな政権とある程度付き合う金融施策運営は…』というエントリーがあるような感じだと思います。
http://hongokucho.exblog.jp/12521075/

ただし、展望レポートにありますように、2011年度までのマイナスインフレが展望されるという話で、2年先までマイナスと言っているのを中長期的ではないとはさすがに言えないでしょ、という事を勘案しますと、緩和的な金融政策をより強化しないといけないんじゃないのというのが理屈としてはある訳でして(まあ展望レポートを出した後の12月1日に緩和の強化をしましたよ!とは言い訳として出来るとは思いますけどね^^)、今後に関してはやはり理屈をキリキリと詰めますと何か緩和強化をせにゃならんという事になるかと思います。

で、例によって緩和強化は金利ルートの話になるというのが従来路線で行った場合の方向性になるのですが、0.1をゼロにするよりはターム物の引き下げ方向で、新型オペのオファー額を拡大するとか、期間を3か月から6か月にするとか(最終型は1年ですか)、まあ基本的には金利ルート。輪番拡大は、前回のロジックが流動性対策だったことからして、金融市場が何か変調になってきたとかいうような場合には発動されそうですが、そうじゃない場合はバランスシート拡大に伴う技術的な対応という理屈じゃないと中々出てこなさそうな気はします。よー知らんがの。


#結局書いているうちにグダグダになってしまってどうもすいません










2009/12/18

お題「年末進行なので雑談で勘弁(謎)」

「投機筋のポジション動向に注目」というのを「ポジショントークに注目」と空耳してしまったあたくしorz

○市場雑談

・2年国債入札プギャー

昨日の2年新発国債入札。ここもと何だかよー知らんのですが中短期結構な堅調ですなあという感じでしたが、前場の引けが0.175/0.180で入札を迎えまして、落札結果はこの有様。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/nyusatu/2009/resul061.htm

平均0.178%で足切りが0.189%と堂々の流れっぷりでございまして、第U非価格入札もこんな感じ。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/nyusatu/2009/resul061a.htm

503億円しか入ってませんので、まあ伸びも無しという所なのでしょう(その割に日本相互証券の引けが妙に強かった(あっしの勘違いじゃなければ)のが訳判らんのですけど)けれども、まあ冷静に考えてみますと、ベースレートが0.10%なのですから、2年債が0.16%とかいう所まで強くするということは、絶賛量的緩和ゼロ金利時代の2年債に換算したら0.06%とゆー事になる訳でして、利下げ期待でもなければこの水準を買うのはちょっとねえって感じがしますわな。

まーキャッシュ潰し(というかキャッシュ代替というか)でとりあえず国債買っておきますかという感じですと、本当は短国を買うのでしょうけれども、何せ3か月で0.12%にちょっと毛が生えたようなレートで、足元0.10%で計算したら(ファンディングが必要な業者だと足元0.10%にならないっすけどね)2bpしか無いというレートですから、そらまあ2年くらいまでは買いますがなというのはありますけれども、やはりベースレートから5bpだの6bpだのという話になると何ぼ何でもバッファーが無さ過ぎという話になると思うのですが。とは言え、別にベースレートが上がるという話は目先1年くらいまで楽勝で無さそうな感じですし、ベースレートが0.1%を切るという期待が無い話ではないので、まー何かの拍子に強くなる事もありでしょうけど。

話は脱線しますけど、5年って只今0.5%を割っているのですけれども、ベースレート0.1%と言う事を考えると、量的緩和の時の0.4%割れという中々素敵な水準にいるんだなあと思うのであります。まあ利下げがどうのこうの(以下同文)。


・新オペの打ち方が微妙な件について

水曜日に新オペ2発目が打たれたのですけれども、今回はスタートが(前回と同様に)スポットスタートの12月18日でして、足が3月16日の火曜日。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of091216.htm

火曜日なので残念ながら短国の償還にぶつかっていないのですが、今度も足は火曜日になってます。ただし、スタートが1回目のオペと違って金曜日になっておりまして、「ふーん」という感じです。

21日は4半期恒例の国債償還に伴い、余剰日になるということでスタートを避けたのかと思ったのですが、昨日は昨日で21日スタートのスポネ買現先を絶賛増額するわ3月足の共通担保全店を打って来るわという事で、普通に供給を拡大(した結果21日の当座預金残高は結構な積み上がりをしますが、4半期の国債償還日は資金が偏在しやすいので積み上げておかないと足元金利が変に上昇するリスクがあるので、これはこれで通常のオペレーション)しておりましたので、わざわざ指値オペのスタートを前回と別の曜日にする意味が良くワカランチ会長でございます。

いやまあ資金需給とか諸々の需給を見たかったとか、水曜のGC推移などを見て昨日になって21日の残高をもっと積み上げないといかんがねという話になったからという事なのかも知れませんけれども、何かとーっても微妙な所まで計算してオペを打っているんだろうなあというのは判るのですが、その細かさによって却って足元を抑えたいのか無理には抑えないのかというような所が受け手の短期金融市場的に解釈しにくいという状態になっているのではなかろうかと思料される所でございます。

ま、とりあえず昨日はスポネ買現先は増額する(増額した割に足切りが0.10まで下がらなかったのがあたくし的にはビックリでしたけど)わ、微妙な共通担保オペを打つわ(この時期業者の在庫ファンディング的な観点からすると、3か月というような長いのよりは年末越えてちょっとした所(1月12日の週)に足が来る年末越えのオペを打った方がオイシイ)ということで、当座預金残高を積み上げてレートも下がるでしょオペレーションになっておりますので、まあ年末に向けて当座預金残高積み上げモードになっているにはなっていると思いますけど。

#積み上がりが進捗した年明けの調節スタンスがまた注目されそうですが


・市場雑談と違うけど追加緩和観測雑談

何か一昨日はこんな微妙な記事がロイターに。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-12963520091216
日銀が追加ショックの影響見極め、下振れ認識の段階で新たな対応辞さず

下振れ認識したら新たな対応をするのは当たり前の話で、対応辞さずとかいうのは「犬が西向きゃ尾は東」と言ってるのと話のラベルは同じようなもんなのですので、こういう見た目だけはキャッチーだけど意味が無いヘッドラインで記事を書くんじゃねえと思うのでありますけどそれは兎も角。

次の一手が何ですかという話に関して、どうも債券系(短期村じゃなくて、と言う意味ね)の人からは「輪番拡大」という話がよく聞かれたりするのですけれども、流れから言ったら「新オペの拡大」が普通じゃネーノと思うのでございますが、何でそう債券の人は輪番が好きなのでしょうかねえという感じでございまする。

つまりですな、輪番増やしたから長期金利が下がるかと言えば、そりゃまあ債券市場が期待する以上の拡大をすればその時は反応すると思いますけれども、それが持続できるかという点に関しては既に(何度も申し上げていますが)バーナンキ大先生が今年の3月〜5月に身を切って壮大なネタを披露して下さった次第なのでありまして、やったからどうなのよという感じは思いっきりするのであります(マネタリーベースがうんたらかんたらという論点での話だったらまた別なのですがそこは敢えてスルー)。

それよりも新オペの額を増やして当座預金残高を積み上げてなんちゃって量的緩和拡大とか、新オペの期間を3か月から6か月に伸ばしてターム物金利を益々落ち着かせてしまうとかの方が、イールドカーブの起点のレートが下がるという点からして中長期金利に働きかけるというネタとしては(日銀的に、ですけれども^^)話としてしやすいという事になるのではないかと思うのですけれどもどうでしょうかね。

#つーか米国が出口だのという話になると円高が一服するのでそんなに追加緩和圧力が掛からなくなってくると思う。結局米国次第だったりするのですが



○なおも雑談系のクリップ

今日はどうも雑談ダラダラ系で申し訳ありませんが。

・ちとショートノーティスですな

金融庁様が昨日こんなリリースを
http://www.fsa.go.jp/news/21/syouken/20091217-3.html
金融・資本市場に係る制度整備についての骨子(案)の公表及び同骨子(案)に係る御意見の募集について

ちょっと中身を斜め読みしたのですが、清算機関への取引集中義務化とかネタとして滅茶苦茶重いものが入っているように見えます。国債取引のJGBCCへの集中というのは多分信託(受託)の制度とのフリクション(別に商売上どうのこうのという話では無くて法的な問題として)が起きる話じゃねえのという気が物凄くするのですけれども・・・・・

『2.御意見の提出期限
平成21年12月28日(月)正午 必着
(郵送の場合も平成21年12月28日必着)』

・・・・・ちょっと時間が無さ過ぎ。まあ中身は結構重い話なのですが、フロントの人は決済関連に興味が無い人が多いのが誠に遺憾と思う次第ながらも、興味を持たれた方が吉かと存じます。


・何じゃこりゃ

http://news.finance.yahoo.co.jp/detail/20091217-00000953-reu-bus_all
デリバティブ規制法案、通常国会に提出ありえる=亀井金融担当相

まー亀井さんのことですから最終的には穏当な落ち着きどころになるのでしょうけれども・・・・

『亀井担当相は「善良な投資家がバブルに踊って不測の事態に陥らないよう、デリバティブ商品、先物などを含め、世界的にルールというか、間違った過熱をしないように(規制を強化する)との空気になっている」と説明。』

それならばまずは排出権取引というデリバティブを可及的速やかに廃止されるというのは如何でしょうか。あ、それよりもくりっ(以下悪態につき自主規制^^)。


・バーゼルキタコレ

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/bis0912a.htm
バーゼル銀行監督委員会による銀行セクターの強靭性を強化するための市中協議文書の公表について

・・・・後で読む(汗)











2009/12/17

お題「FOMCとか虫干しネタとか」

「10年債は利上げへの警戒感から売られましたが、2年債は暫くゼロ金利が続く事を確認したことから買われました」とは奥が深すぎて、頭の悪いあたくしは何を言っているのか全く判らないのですが・・・・・>モーサテの市場後講釈

○FOMC声明文

寝起きで読んでるので雑にも程があるのは勘弁。詳しくはまた読んでみたりしたく存じますが。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20091216a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20091104a.htm(前回)

今回はパラグラフ数まで違うということで、比較斜め読みが少々しんどいのですが(汗)、まあちょっとだけ比較。

・雇用の悪化が和らいでいるとな

第1パラグラフ(景気認識)の最初の部分から

『Information received since the Federal Open Market Committee met in November suggests that economic activity has continued to pick up and that the deterioration in the labor market is abating. 』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in September suggests that economic activity has continued to pick up. 』(前回)

見りゃわかるように回復傾向が継続というのに加え、労働市場の悪化が和らいでいるというお話が。雇用の最大化というのはFRBの目的の一つ(もう一つは物価の安定)でありますので、雇用に関する文言でこういうのが出ているのはまあ政策インプリケーション皆無とは言えないでしょうな。そもそもあの雇用統計の数字って本当にアレで良いのかとかいうツッコミをしたくなりますけどねえ。


・各需要項目に関して

『The housing sector has shown some signs of improvement over recent months. Household spending appears to be expanding at a moderate rate, though it remains constrained by a weak labor market, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit. Businesses are still cutting back on fixed investment, though at a slower pace, and remain reluctant to add to payrolls; they continue to make progress in bringing inventory stocks into better alignment with sales. 』(今回)

『Activity in the housing sector has increased over recent months. Household spending appears to be expanding but remains constrained by ongoing job losses, sluggish income growth, lower housing wealth, and tight credit. Businesses are still cutting back on fixed investment and staffing, though at a slower pace; they continue to make progress in bringing inventory stocks into better alignment with sales.』(前回)

企業の方は同じ文章になっていますが、住宅セクターと個人消費支出に関する文言は改善されていますな。ただまあこちらでは労働市場に関しては「a weak labor market, modest income growth」という認識を示していますので、あくまでも「悪化が和らいだ」という程度の認識である、という事で、そう簡単にホイホイと利上げモードになるかというと、それには雇用関連の持ち直し傾向の定着が明確になってこないと厳しいんじゃないかという所なんでしょうかね。よー知らんが。


・金融環境に関して

『 Financial market conditions have become more supportive of economic growth.』(今回)

『Conditions in financial markets were roughly unchanged, on balance, over the intermeeting period. 』(前回)

何気に改善してねえか。


・第1パラグラフのまとめ部分

『Although economic activity is likely to remain weak for a time, the Committee anticipates that policy actions to stabilize financial markets and institutions, fiscal and monetary stimulus, and market forces will contribute to a strengthening of economic growth and a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability.』(今回)

『Although economic activity is likely to remain weak for a time, the Committee anticipates that policy actions to stabilize financial markets and institutions, fiscal and monetary stimulus, and market forces will support a strengthening of economic growth and a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability.』(前回)

今回「contribute to a strengthening」となってる部分が前回は「support a strengthening」となっているのは前進しているように見えますが。


・インフレに関しては前回と同じ

第2パラグラフは毎度毎度同じ文言を続けているので引用だけ。

『With substantial resource slack likely to continue to dampen cost pressures and with longer-term inflation expectations stable, the Committee expects that inflation will remain subdued for some time. 』(今回)


・例の文言は同じですが

んで第3パラグラフ。

『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period.』(今回)

・・・・でありまして、FOMC前になると飛ばし記事を書くのが得意な某赤い新聞だったと思うのですが、そちらが「FOMCで緩和継続に関する文言が変更になる」と相変わらずの飛ばし報道してたようですが、まあプギャーという感じですな。でも、今回って前回までその前にあったこの一文が削除されています。

『In these circumstances, the Federal Reserve will continue to employ a wide range of tools to promote economic recovery and to preserve price stability.』(前回)

この文言削除というのは、「ここまで実行してきた各種非伝統的政策は今後使わないですよ」ってえ話と読もうと思えば読めるのであります。まー確かに今回は各種流動性供給プログラムを止める話をしてますから、その辺は整合性を取っただけなのかも知れませんけど。


・でまあ色んな流動性供給プログラムを止めると

『To provide support to mortgage lending and housing markets and to improve overall conditions in private credit markets, the Federal Reserve is in the process of purchasing $1.25 trillion of agency mortgage-backed securities and about $175 billion of agency debt. In order to promote a smooth transition in markets, the Committee is gradually slowing the pace of these purchases, and it anticipates that these transactions will be executed by the end of the first quarter of 2010. 』(今回)

以下その手の話が続くのでありますが、

『The Committee will continue to evaluate the timing and overall amounts of its purchases of securities in light of the evolving economic outlook and conditions in financial markets. 』(今回)

という文言を入れつつ(これは前回と同じ)、第4パラグラフでは具体的にどの措置がどうなるという話をしてます。その冒頭だけ引用。

『In light of ongoing improvements in the functioning of financial markets, the Committee and the Board of Governors anticipate that most of the Federal Reserve’s special liquidity facilities will expire on February 1, 2010, consistent with the Federal Reserve’s announcement of June 25, 2009. 』(今回)

以下その内容説明をしていますが、最後にしっかりこの一文を入れているのはFOMCの仕様ではありますが、まあ何かあった時のヘッジは万全。

『The Federal Reserve is prepared to modify these plans if necessary to support financial stability and economic growth.』(今回)

という所で寝起き斜め読みをしましたが、肝心な所を読み飛ばしていた場合は謝罪は致しますが賠償はしません。というかポイントあったら教えて下さいお願いしますお願いします。



○ところでバーナンキ先生のFAQ続き

この前の続きです
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20091207a.htm
Frequently Asked Questions

1.Where is the economy headed?
2.What has the Federal Reserve been doing to support the economy and the financial system?
3.Will the Federal Reserve's actions lead to higher inflation down the road?
4.How can we avoid a similar crisis in the future?

FAQの2番部分を引用しましたけど、今日は3番の所を。

『The scope and scale of our actions, however, while necessary and helpful in my view, have left some uneasy. In all, our asset purchases and lending have caused the Federal Reserve's balance sheet to more than double, from less than $900 billion before the crisis began to about $2.2 trillion today. Unprecedented balance sheet expansion and near-zero overnight interest rates raise our third frequently asked question: Will the Federal Reserve's actions to combat the crisis lead to higher inflation down the road?』

ということで、FAQの2番の説明をしている時は非伝統的政策に関して「市場仲介機能の回復」目的のポイントの話のみ(=量的拡大のマネタリー効果に関する説明が皆無^^)だったのですが、ここでは「ゼロ金利政策とバランスシートの異例な拡大によるインフレリスクや如何?」という話題になっておりますな。

『The answer is no; the Federal Reserve is committed to keeping inflation low and will be able to do so.』

そらまあYesだったら大変な話になりますから(^^)。で、何でインフレ抑制できるかという話が続く。

『In the near term, elevated unemployment and stable inflation expectations should keep inflation subdued, and indeed, inflation could move lower from here. However, as the recovery strengthens, the time will come when it is appropriate to begin withdrawing the unprecedented monetary stimulus that is helping to support economic activity.』

『For that reason, we have been giving careful thought to our exit strategy. We are confident that we have all the tools necessary to withdraw monetary stimulus in a timely and effective way.』


ということで、こちらでは「異例の金融緩和」という文言があるのですが、これがバランスシートの量の話なのか金利の話なのかは曖昧なのですが、この先を読んでみた感じですと、どうもゼロ金利政策とバランスシートの両方の話をしているようです

『Indeed, our balance sheet is already beginning to adjust, because improving financial conditions are leading to substantially reduced use of our lending facilities. The balance sheet will also shrink over time as the mortgage-backed securities and other assets we hold mature or are prepaid. However, even if our balance sheet stays large for a while, we will be able to raise our target short-term interest rate--which is the rate at which banks lend to each other overnight--and thus tighten financial conditions appropriately.』

ということで、各種流動性供給プログラムに関しては市場の回復に伴い規模が減っており、その結果バランスシートの縮小が始まっているという話と、バランスシートが大きい中でも利上げは可能と言う話をしていますわな。

『Operationally, an important tool for adjusting the stance of monetary policy will be the authority, granted to us by the Congress last year, to pay banks interest on balances they hold at the Federal Reserve. When the time comes to raise short-term interest rates and thereby tighten policy, we can do so by raising the rate that we offer banks on their balances with us. Banks will be unwilling to make overnight loans to each other at a rate lower than the rate that they can earn risk-free from the Fed, and so the interest rate we pay on banks' balances will tend to set a floor below our target overnight loan rate and other short-term interest rates.』

ということで、まあ当座預金だか超過準備だかの付利制度を使えば、バランスシートがまだ大きいうちでも利上げは可能ですという話を技術的な面も含めて説明しています。

いやまあそれはそうなのですが、利上げを継続していく中でそれまでに購入した資産をそのまま持っていた場合には、保有資産の逆ザヤ状態とかが発生するかもしれませんわなという点は華麗にスルーしてますな。いやまあそれはそれで良いんですけどね♪

『Additional upward pressure on short-term interest rates can be achieved by measures to reduce the supply of funds that banks have available to lend to each other. We have a number of tools to accomplish this. For example, through the use of a short-term funding method known as reverse repurchase agreements, we can act directly to reduce the quantity of reserves held by the banking system. By paying a slightly higher rate of interest, we could induce banks to lock up their balances in longer-term accounts with us, making those balances unavailable for lending in the overnight market. And, if necessary, we always have the option of reducing the size of our balance sheet by selling some of our securities holdings on the open market.』

リバースレポを使って吸収するという話はまあ良いとして、資産売却に関してはさすがに大技に過ぎるという認識になっているようで、最後の一文にあるように、And, if necessary, we always have the option of reducing the size of our balance sheet by selling some of our securities holdings on the open market.という言い方で政策手段としては最終兵器扱いになっているっぽいのでちょっと安心。

で、この部分の最後のパラグラフが何気に良いネタ。

『As always, the most difficult challenge for the Federal Open Market Committee will not be devising the technical means of unwinding monetary stimulus.』

テクニカルには困難ではない(キリッ)というのがホンマカイナという気もするのですが、まあそれはそれとしまして。

『Rather, it will be the challenge that faces central banks in every economic recovery, which is correctly judging the best time to tighten policy.』

適切な引き締めのタイミングが難しいと。

『Because monetary policy affects the economy with a lag, we will need to base our decision on our best forecast of how the economy will develop.』

引き締めのタイミングはフォワードルッキングで、と仰っているように読めますが(^^)。

『As I said a few moments ago, we currently expect inflation to remain subdued for some time. It is also reassuring that longer-term inflation expectations appear stable. Nevertheless, we will keep a close eye on inflation risks and will do whatever is necessary to meet our mandate to foster both price stability and maximum employment.』

まあこの部分の質問が「インフレ抑制」というお題だったからというのもあるのかも知れませんけど、この辺りの説明って「へー」と思うのでありました。


#市場雑談ネタは時間が無くなったのでスルー。調節は引き続き注目というかツッコミネタっす。












2009/12/16

お題「今更の虫干しネタ&各種雑談」

さあ米国PPIで盛り上がって参りました!!!!!

ところで悪態ですけどね、44兆円を守っても特会を全力で使い込んだら国債需給的には守らないのと同じなんですけど、まあ(自粛)に付ける薬無しなのは兎も角、さすがにその辺に関する市場の評価が「どうせこいつらその場凌ぎで調子良い事言うだけでしょ」となりつつある気がします。

あと、「先送りの方針を決定しました!!!」というのが「無責任な事は出来ないから先送りする」という不可思議理屈によるものだそうで、実に画期的にも程がありますが、リアル業務で言い出したら、普通にてめー首吊って(自主規制)と罵倒されるレベルではないかと存じますがどうなんでしょうかねえ


○今更ですが10月30日の決定会合議事要旨

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g091030.pdf

各種措置の解除を行ったと思ったら1か月後には別の新オペ実施でござるの巻となった訳ですが、まあ「どうしても個別企業直接のクレジットは取らない」(買入じゃなくて通常の資金供給オペ担保だったら一義的には金融機関向けのクレジットになるから)という意思が強いというのであれば、CPやら社債の買入とターム物金利誘導が入れ替えになったという事なんでしょうけれども、市場機能がどうのこうのという論点から言えば普通に前者の方が市場機能重視だと思うのですけどねえ・・・・


・景気見通しは(もう1か月半前の話ですから)観賞用です

という話は兎も角、1か月半前の景気見通し部分はまあ政策インプリケーションというよりは観賞用として読みますと、新興国経済に関する話の所などが「ほほー」という感じっすか。

『また、多くの委員は、新興国・資源国経済の動向と世界各国で取り組んでいる各種政策の今後の展開は、密接に結びついた問題であるとの認識を示した。この点について何人かの委員は、新興国・資源国において採られている大規模な景気刺激策と、先進国の緩和的な金融政策による新興国・資源国に対する資金流入が相俟って、新興国・資源国経済が上振れる可能性を指摘した。これらの委員は、新興国・資源国経済が過熱に至った場合、資源価格が上昇する可能性が高いため、わが国にとっては交易条件の悪化からかえって景気の下振れリスクとなる可能性もある点についても付言した。』

途中まで景気の良い話なのですが、最後に景気下振れリスクになっているのがチャーミングですな。まあ輸出は伸びるけど交易条件悪化になるかも知れませんなあというお話のようで。

で、この先に企業の中期的な成長期待に関する論議があるのですが、そのくだりを読んでいて今となっては落涙を禁じ得なかったのはこの部分。

『一方、別のある委員は、今後新政権による新たな政策対応が奏功すれば、成長期待が上振れる可能性もあるとの見方を示した。』

・・・・いやもう残念としか申し上げようがございません。


・CPと社債買入解除に関して

でもってですな、買入解除、特オペ延長して終了という決定をした『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の部分ですけれどもまあ何と申しますか。

『C P ・社債の買入れについては、多くの委員が、C P ・社債市場の発行環境が低格付社債を除き良好なものとなっているほか、応札額もごく僅かないしはゼロとなっており、市場機能回復という所期の目的は十分達成されているとの見方を示した。』

使われていないのなら取りあえずバックストップで残しておくという話をしていた西村副総裁を小一時間問い詰めたいのですけれども。

『何人かの委員は、特にC P 市場において、日銀のC P 買入れの存在を前提とした価格形成によって、C P 発行レートのばらつきが縮小するなどの副作用も無視し得なくなっていると指摘した。』

えーっと、それは買入じゃなくて特オペ前提の方だと思います。

『こうした議論を踏まえ、大方の委員は、C P ・社債買入れの扱いについては、予定通り、現行期限の12 月末をもって完了することが適当との認識を示した。』

別に10月に決定せんでもよかろうとは思うのですが・・・・

『ただし、ある委員は、社債買入れは、将来の不確実性に備える安全弁として機能しているだけでなく、市場に特段歪みをもたらしていないと指摘した上で、格付けの引き下げが懸念されている状況にあっては、社債買入れを延長することが適当との意見を述べた。』

どう見ても水野審議委員(当時)です本当にありがとうございました。実際問題として言うと、格下げもどんどん進行すると買入の対象から外れてしまうという罠もあるのですけど、まあその個別具体的な話では無く、市場環境がどうのこうのという話をしてるんでしょうな。


・特オペの「半年後の解除」に関して

まあこの辺りの理屈が香ばしめなのは何度か申し上げた通りですけれども。

『何人かの委員は、金融市場が安定し、共通担保オペの落札金利が特別オペ金利の0.1%とほぼ同水準に低下する中で、両オペの効果の差は小さくなっており、特別オペも所期の目的は、かなり達成されたと評価していると述べた。』

それは特オペの力で共通担保が下がっていたともいえるので、非常に微妙ではなかろうかと思われますけど、まあ何度も書いた話なのでそこはスルー。

『ただし、これらの委員も、年度末に向け、金融市場の安定確保に万全を期す必要があることを踏まえ、年度末までは特別オペの実施が適当であるとの見解を示した。こうした議論を経て、委員は、特別オペの期限を2010 年3月まで延長することが適当との認識で一致した。』

さいざんすか。

『更に、委員は、4 月以降のオペの運用についても検討を行った。何人かの委員は、同オペの影響として、高格付けC P の発行レートが短国レートを下回る「官民逆転現象」等の副作用がみられることを指摘した。』

まあここまではその通りですが、官民逆転なんぞ半年くらいずーっと継続していたのでありまして、ここでその副作用をことさら強調するのは(前から指摘してた人はまあいますけど)結論先にありきの香りがプンプン。

『また、何人かの委員は、こうした特別オペの副作用も踏まえ、特別オペと共通担保オペの効果の差が小さくなったもとでは、より担保範囲が広く、市場の資金需要に応じてオペの期間を弾力的に変えられる共通担保オペを利用することが、金融市場の安定を確保し、企業金融の円滑化を支援していく上で、より望ましいとの意見を述べた。』

ここの理屈はちょっと変。市場の資金需給に応じてオペを増やしたり減らしたりして、出来上がりの資金供給額を一定水準にするというのがまあオペレーションの基本みたいな感じなんですけど、金融市場の安定という観点、つまり市場金利のボラを下げて低位安定させるという目的があるのであれば(無いのなら話は別ですので念の為)、オペレーションを伸縮させるのではなく、ある程度予見可能な形で同じ量の資金供給をロールして行くという動きが必要になるんですよね。

つまりですな、短期市場的に言えば、というかGC市場的な話をしますと、資金の主要な出し手が偏在している上に、金利水準がこの状態で市場取引が活発ではないという状況なので、各種モノ日になると参加者の資金ポジションが偏在する傾向が益々顕著になっている訳でありまして、結局の所日銀の資金供給オペがないと国債ディーラーの安定的な在庫ファンディングが難しいという状況になっておる訳ですわな。そうなりますと、資金供給オペを弾力的にいじるのではなく、ある程度のロットのオペをロール前提で安定的に同じ額で供給する方がファンディングの予見可能性および安定性が高まるので、結果としてGCレートが低位安定するという事になり、ターム物金利の低位安定化に繋がるという話になる訳ですな。

それで足元余り過ぎるという場合は吸収オペのツイストをすれば良いですし、今の状況だったら付利金利制約もあるので、別に引かなくても良いでしょという話になるかもしれません(ただし付利金利制約の無い生損保&投信年金があるので運営上はツイストをした方が良いのでしょうけれども)。


と、本当は後の相場雑談で書こうと思った事を書いてしまいましたが、議事要旨に戻りまして。


『その上で、大方の委員は、措置の完了とその後の調節運営を予め示すことで、市場の予見可能性を高め、先行きの安心感を醸成することになるとの見方で一致した。』

訳判りません><;

『もっとも、この点について、一人の委員は、将来同オペを完了することを現時点で表明することは、金融市場を不安定化させるリスクを伴うほか、金融緩和を維持するという本行の姿勢の分かりやすさが損なわれるおそれもあるとの意見を述べた。』

どう見ても水(以下同文)。で、案の定姿勢の分りやすさが損なわれた結果として追加緩和しやがれの大合唱になってあのザマになったのですな。ナムナム。

『この間、別の一人の委員は、先行き、再び必要と判断されるような場合には、特別オペを再び活用することも含め、機動的かつ弾力的に対応することが適当であると述べ、他の委員も賛意を示した。』

だったら最初から停止を明言する必要があったのか(何も決めなければ自動停止なのですから)と小一時間。


・政府からの発言

財務省のこの発言は仰る通りだと思います。

『各国中央銀行の非伝統的措置の取り扱いが注目される中で、日銀の意図や考え方が正確に伝わるよう、時限措置の取り扱いにかかる判断と、展望レポートに示される経済・物価動向についての慎重な見通しとの整合性について分かりやすくご説明頂きたい。』

一方で内閣府のこの発言ってどう見てもアリバイ発言でしょ。

『日本銀行及び政府が政策運営を行っていく上では、経済情勢や金融情勢についての緊密な意見交換が重要であり、政府としては、日本銀行法第4条の規定を踏まえ、政府と日銀の協議の場を設けることを提案したい。』

って提案してる政府の方が全然この協議の日程が設定できないというギャグとしか思えないような流れになっているのはご案内の通りかと存じます。結局12月3日だかなんだかに首相と日銀執行部の会談が実施されただけですよね。内閣府は何やってんだかって所ですな。



○市場雑談

段々ベンダー報道に悪態成分が高まって参りました。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=ay7wt2sttgUw

いやまあ当座預金残高見込み数値(オペのスタートとエンドは額面ベース、資金需給日足予想は東京短資公表ベースであたくしめが手元集計して他の人の結果とも確認はしましたけど、あくまでも俺様見込みなのでその点お含みおきを)を出しますと、オペ後の数字で今日も明日も当座預金残高は14兆円台に乗る筈なので、当座預金残高的に言えばそんなに引いているオペレーションじゃないのですけれども、やはり調節スタンスが分かりにくいという話は出てくるわなと。

つまりですな、先週木曜と金曜の足元余っているのに追い打ちを掛けるような資金供給姿勢というのがある意味余計なのでありまして、そこで妙に厚めチックな供給を実施したのに、積み初日スタートになる月曜の国債買現先を減額ロールするのが結局意図はどこなのよという話になる原因だと思うのですよね。

ちょうど先週金曜の無担保コール翌日物加重平均が0.091%になった後の月曜というのもありまして、あれだけ足元出せば積み最終近い週末のコールが下がるのは仕様だと思うのですけれども、まあ月曜に国債買現先を減額ロールしたのが「コール加重平均が0.1%割れになったので引いたのか?」という思惑を生む事になって、益々「スタンスが読めませんなあ」となるんだと思います。

確かにまあディレクティブが曖昧(ディレクティブそのものはコール0.10%ですけれども、ターム物金利の引き下げというのがある)でして、足元コールの0.10%割れをあまりしないようにする(本当は平均で0.10%近辺だったら無問題の筈だから、別に1日や2日0.10割れていても良いと思うのですけど・・・)のか、ターム物を下げようとしているのかが良く判らん、というか、先週の木曜金曜のオペを見ていると後者に見えるし、今週の月曜のオペを見ていると前者に見えるという結果になる訳でして、まあ読めませんなというのが上記URLの悪態成分の入った記事になるのではないかと思います。

#あ、ちなみに申し上げておきますが、上記URL先の記事とあたくしは一切関係ありませんので念の為(^^)

ということで、GCレートを振らさせないで安定させたかったら、オペを予見可能性の高い形である程度のロットを資金需給にかかわらず同額ロールして行くのが一番効くと思うのですという話はさっき書きました通りでございます。まあご検討賜ると有難く存じますけどね。


○悪態書こうと思ったら時間が無いのでクリップだけ

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=a_m0Sz5Aw2Bo
政府:新規国債発行額は「約44兆円以内」に抑制−基本方針

なんかもうツッコミどころが多いのですけど・・・・

『12月15日(ブルームバーグ):政府は15日午前の閣議で、2010年度予算編成の基本方針を決定し、新規国債発行額について前政権が編成した09年度1次補正後の国債発行額である「約44兆円以内に抑えるものとする」と明記した。また、デフレ克服に向け日銀と一体で強力かつ総合的に取り組むほか、特別会計の聖域なき見直しを断行することや税外収入を最大限活用することも盛り込んだ。』

「日銀と一体」ってあのですな、この前日銀が追加緩和措置を実施してボールは政府の方にあるんですけど、まだこの期に及んで「日銀〜♪お願いだよ〜(野比のび太風に)」ってこいつら馬鹿じゃなかろかルンバ♪って感じっすな。

どうも閣僚の皆様の発言を見ておりますと、閣僚レベルで「現在ボールは政府にある」という事を認識しているのは亀井大臣だけなんじゃねえのって思われる所がもう情けないとしか。まあ何でも人にやれやれ言って自分は何もしないで、何でもかんでも人のせいっていうアホウのお付き合いさぜるを得ない日銀には同情いたしたく存じますが、って良く考えたら国民全員がアホウの付き合いをしてるのか。まあ国民的には選挙で勝たせた自業自得なのですけどね!

『菅副総理は「来年度もまだリーマン・ショックに端を発した問題を完全にクリアできていない状況だ。他の国と比べデフレ状況で厳しい」と述べ、「少なくとも来年度の予算については、財政によって、より効率的・有効な形で需要を喚起する、あるいは知恵を出すことによって需要を出す」とその必要性を強調した。』

来年度予算って執行されるまであと何か月あるんだよ・・・・つーか需要の穴埋めもさることながら、成長戦略が無くて単にばらまくだけの政策にしか見えないのですけれどもこの前の対策とやらも。コマッタモンデ。

しかし一番腰が砕けたのはこれでしょ。

『さらに「民主党と立場の違う方からも話を聞いて参考にしたい」と述べ、16日に元経済財政相の竹中平蔵慶応大学教授を招き、話を聞く予定であることを明らかにした。』

・・・・・??????∫dx

折角ですからその場に亀井先生の同席キボンヌ(^^)。








2009/12/15

お題「短観とか雑談とか」

ドバイネタで瞬間為替と債券先物と株式指数先物がぶれたのは正直ビックリしました。まあ月曜なので板が薄かったからだと思いますけどね。

○毎度の短観与太分析

ということでまずは短観を毎度の趣味的チェック。ちゃんとした分析は本職の方のレポートを読んでちょ。

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka0912.pdf

・業況判断DIの達成度合い

9月調査時点での先行き見通しがどのくらい達成出来ているかという話。前回は6月までの改善傾向がストップと言う感じになって残念感漂う内容でしたがはて今回は・・・・


        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業  ▲33→▲21     ▲24→▲18
製造業中堅企業 ▲40→▲35     ▲30→▲31
製造業中小企業 ▲52→▲44     ▲40→▲42

非製造業大企業  ▲24→▲17    ▲22→▲19
非製造業中堅企業 ▲30→▲28    ▲29→▲33
非製造業中小企業 ▲39→▲40    ▲35→▲41

えーっと、まず目立つのは大企業以外の先行き見通しが改善ではなくなっている事。9月時点では非製造業の大企業以外が横で他は改善という感じでしたが(非製造業の中堅以下というのは最遅行指数ですわな)、今回は製造業の大企業以外が横ばい(若干下)で改善方向になっているのは大企業だけとなり、非製造業の大企業以外は悪化方向ですかそうですか。

でもって、もうひとつというか元々あたくしが見てた推移ですけれども、9月に予想されていたDI数値が達成されているかという点で言えば、製造業大企業で未達となってまして、製造業の中堅中小や非製造業の中小では予測以上にマイナス縮小となっていますけれども、まあこう並べてみると3か月前の予測ほど改善してませんねという感じです。

ただまあ9月調査時点からこの3か月でグダグダ政権のグダグダ政策(というか政策全部先送りだわな。五星紅旗様の会見だけは手早く実施するのにね〜)のもと、株価(はまあここへきて持ち直しましたけど)や為替市場が誠に遺憾になり、先日の景気ウォッチャー調査は大変に華麗な落ち込みを示すという状況下で、まあこんなもんで済んでいるのが目出度いという感じは致します。


・雇用判断DI

こちらも9月になった時点でそこまでの持ち直し傾向が非製造業を中心に早くも頭打ちになってしまいましたねえという感じになっておりました。まあ製造業は比較的マシはマシだったのですが。

        (9月時点)      (12月時点)
         現状→12月予測   現状→3月予測
製造業大企業  +26→+18     +21→+18
製造業中堅企業 +32→+25     +26→+23
製造業中小企業 +35→+27     +29→+27

非製造業大企業  +11→+7     +8→+7
非製造業中堅企業 +10→+7     +9→+9
非製造業中小企業 +12→+9     +9→+10


製造業の雇用判断DIの改善が9月に予測した程には進んでいませんけれども、まあ方向として改善しているのは改善しているという形でござんして、何か先行き真っ暗的な報道が多いのですが、ここの数値の傾向だけ見ていると雇用環境が極端に悪化しているように見えないのがアレですな。まあ雇用調整じゃなくて給与支給ベースで調整しているからという事なのかも知れません。ついでに言えば先行きの雇用人員判断DIも改善方向になっているのは中々心強い話ではあります。

正直ちょっとこのあたりの数値は足元の金融市場動向と報道ベースの話に思いっきり振らされるあたくし的には(開き直ってどーする)「そんなに落ち込まないのね」と新鮮に思ったのでありました。


・証券業の業況判断(堂々の長期時系列^^)

今回も長期時系列を更新。サブプライム爆発前でありますところの2007年6月調査分からのを更新。

        現状→次回予測
(6月時点) +34→+52
(9月時点) ▲30→+23     
(12月時点)▲26→+4       
(3月時点) ▲55→▲15
(6月時点) ▲45→0
(9月時点) ▲70→▲44
(12月時点)▲70→▲59
(3月時点) ▲76→▲68
(6月時点) ▲29→▲21
(9月時点) ▲4→+4
(12月時点)▲28→▲8

半年前にはこんな事を書きました。

『・・・・良く見ると、次回予測が前回同様に、足元の数字とあまり大差が無いのでござんすな。ということは、願望成分入れまくって外すのが仕様となっている証券業DIクオリティを勘案すると、株式市場は当面堅調推移というのが結論になる。とまあこういう話になるのであります、ゲラゲラ。』

で、その後は平均株価10000円キープだったのですけれども、9月短観の数値を見た時にはこのような事を書きました。

『で、今回ですが、どうも先行きがプラス数値になっているのが気になる。数字的には8の改善に留まるのですけど、マイナスがプラスってのが・・・・』

うーむ、案の定の結果でありまして、「プラスに改善です!!(キリッ)」と証券業の皆様に置かれましては喜んでいたらご覧のような結果になるのでありましたという正に様式美の世界としか申し上げようがありません。

で、今回ですが、先行き見通しが20ポイントの改善になっているということで、物凄い勢いで願望成分が入っておりますので、まあ向こう3か月の株式市場はどう見ても頭打ち(下手したら下落)です本当にありがとうございましたという事が示されるのでありまして、残念感爆発な証券業の業況判断DIでございます。

しかしまあ何ですな、書いてて情けなくなってくるのですが、証券業の業況判断DIが株式市場の逆指標として役立つとか、何か一般ピープルの皆様が聞いたら呆れそうな話ではございますが。


で、企業金融関連に関してはまあ例の措置は終了しちゃったので正直あまり興味が無くなっておりますが一応今回はアップデート。


・資金繰り判断DI

前回は2極化状態爆裂でした。

      (9月時点) (12月時点)
大企業    +6     +6
中堅企業   ▲6     ▲3
中小企業  ▲18     ▲16

相変わらず2極化。微かに改善しているだけですね。


・貸出態度判断DI

      (9月時点) (12月時点)
大企業    ▲4     ▲1
中堅企業   ▲6     ▲5
中小企業   ▲12    ▲11

相変わらず2極化。大企業だけちょっとだけ改善ですか。


借入金利水準判断とCPの発行環境判断はあまり当てにならないので割愛。


以上与太分析ですが、本当の分析は本職の人のレポートをご参照ありたし。



○GC漫談

昨日のオペではスポネの国債買現先を2兆5000億円から1兆8000億円に減額。まあ減額したのが効いたのかどうかが微妙なのですけれども(減額しても厚い筈なんだが)、どうもGCの資金出しサイドが頭数少ない(市場の価格形成という観点からすると、自動的に資金を出してくる人はあまり影響ない)上にこの人達が結構なロットで出したりひっこめたりする(兆円の世界で)のですが、この人達が何か知らんが足元じゃぶじゃぶで足元は出すのに、先の方(T+3とか)を出したがらなくて、レギュラーの所とかのGCレートがまたまた上昇。一方でT+1とかは先週の時点で14日と15日は金がじゃぶじゃぶなの判っている筈なのに昨日になって資金がまた出てくるでござるの巻。

まあ一応の後付け理由としては「日銀の次の積み期間の調節スタンスを読みたい」という話で、従来そんな調節スタンスがどうしたこうしたというような話は出る余地は無かったのですが、例の「広義の量的緩和」という奴が実施されてからというもの、ディレクティブそのものは変化ないですけれども、「ターム物金利を引き下げる」とか曖昧な発言が総裁様から出ている事もありまして、じゃあそのターム物金利とは何ぞやとか、引き下げるとはどの辺まで引き下げるかとか、まあその辺が微妙に訳判らんという事なのですよね。

つまり、3か月固定超低金利(^^)の資金供給オペを実施していると言う事は3か月のTB金利までバッチリ0.10%という超低金利(^^)に下げるのか、それとも(元々3か月のTB金利は0.15%近辺だったから)現在の3か月TB金利の0.12〜0.13%という水準で満足してるのかってえ所が読めないという事でしょう。もしもう一発TBの金利を下げようとするのであれば、GCでのファンディングが常に0.105〜0.11あたり、オペでの資金は0.10だと按分掛かる事もあるけど0.11だったら必要分入るっていう状況が定着しないとさすがに(業者のファンディングコストを勘案すると)3か月TB金利を0.12%以下で定着させるのは無理でしょうと思いますけど、さてその辺のスタンスは如何に。

先週の木曜実施の新オペおよび木曜と金曜のオペだけ見てると「渾身の緩め調節で金利を押し下げますよ」っぽい雰囲気もあるのですが、それ以外の所では「まあ緩めは緩めですけれども、徐々にやっていきましょ」という感じのオペで、緩め調節しながらも無理には押し下げないという感じでして、正直どっちのスタンスなのかよー判らんという感じですな。

ま、現状では「札を開けてみないと幾ら打ちこまれるのか判らん」という特オペが生きているので調節が難しいという面と、そもそもGC市場に関しては大口の資金出し手さんの動きも何ちゅうか不可思議(あまり細々書くのもちとアレですので割愛しますが、まあ需給曲線という言葉が通用しないと申しますか)なので、GCマーケットの妙な特殊性というのもありまして、まあ調節も細かくやろうとすると難しいですわなとは思うのでありました。

#何が何だか判らない話で恐縮至極







2009/12/14

お題「新オペに続いて威勢の良い資金供給/バーナンキ議長のFAQ」

グタグタにも程がある民主党政権の支持率が相変わらず高い訳だが、まあ自民党が空気になってるから仕方無いんですかねえ。

○これはまた威勢の良い資金供給・・・ですが

金曜のオペレーション。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of091211.htm

下の3本が威勢の良い供給という感じです。積み最終日を前に足元の積み進捗が進んでおり、運用資金がある所なのですが、そこで積み最終に向けて供給を打ちこむという攻撃。オペの結果15日の当座預金残高が15兆円近傍になるという供給でして、15日は年金払いによる資金余剰日ですが金繰り読みにくくなる日という状況を意識して当座預金残高を厚めにする攻撃。

ということで、結果ですが。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba091211.htm

今月は15日と21日に大きな財政払い超があって、そこを跨ぐ28日エンドの資金供給とかニーズがありますなあという感じですが、その28日エンドの本店オペが足切り0.11%ですけれども、期間4か月で期末を跨ぐ共通担保全店オペの足切りが堂々0.10%(按分は1割以下なのでまあ実質は0.11%ですけど)となりました。まあオペ打った時点でこれはレート低かろうとは思いましたが、期末越えのオペ金利が10まで入りましたっていうことで一応ネタにはなるんでしょうかね。

まー今回のオペですけれども、大変に意地の悪い分析をすると、積み最終近くな上に6/12月利払いのクーポンGCが飛んでいるタイミングなので元々GCの資金取りサイドが薄くなっているという所を狙って「新オペ実施」→「翌日に厚めのオペ実施」というコンボをぶち込んで参りましたという事ですので、まータイミングは良く練られていると思います。

そもそもですな、木曜の新オペ実施のタイミングで打ちこんだ共通担保全店オペがアレでありまして、クーポンGCを0.13%あたりで飛ばした後に11日スタート21日エンドの供給を打ちこむという時点で、「レートを下げちゃろ」という所。クーポンGCの資金取りニーズが終わってからオペ打つとか中々素敵な攻撃で、そらレート下がるわな(その前に打ってたオペはクソ長いオペか21日前に落ちるオペのどちらかしかなくてクーポンGCのニーズに合わない)という感じではありまして、供給打つ気があるのならクーポンGC終わる前に打てばと思うんですけどね。


しかしまあ何と申しますか、「新オペ実施」→「翌日に厚めのオペ実施」という流れがどうも毎度お馴染みのパターン、即ち「新しいオペを実施した効果でこのようにレートが低下しました!(キリッ)」って言いたいが為のオペレーションという香りがプンプンと漂って来るように思えるのは性格の悪いあたくしの仕様のようなもんであります。

去年もそういや適格担保の緩和を行ったらその緩和が開始になるまで何故かオペの供給がケチり気味であったりというような怪しげなオペレーションが行われていたという事案もございましたし、おまけにこの前は「昨年CP現先オペを実施したらCP発行レートが23bp下がりました!(キリッ)」というお洒落なペーパーが出てて悪態を軽くつかせていただきました(11月10日の駄文ご参照)けれども、もしかして今回も「新オペを実施したらターム物金利が早速低下しました!!!(キリッ)」って事をやりたいからタイミング狙っていたんですかねえとニヤニヤしながら思うあたくしの性格には問題がありますですかそうですか。


○バーナンキ議長講演から

この前斜め読みした奴ですが。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20091207a.htm
Frequently Asked Questions

んでもってその質問は以下の4つ。

1.Where is the economy headed?
2.What has the Federal Reserve been doing to support the economy and the financial system?
3.Will the Federal Reserve's actions lead to higher inflation down the road?
4.How can we avoid a similar crisis in the future?


経済状況に関しては確かにまあ厳しい見方をしているのですが、基調そのものは回復という話をしてて、問題は銀行の貸出態度がタイトである事が続いていることと、雇用市場が依然として回復するのに時間が少々掛かりそうな状態で消費やら投資が活発化するような自律的回復はには時間を要するというような話をしています。正直言ってあの講演が出た日に米国債やら為替市場があんなに派手にする程の悲観論でも無いと思いますけどそっちの引用はスルーしまして、2番目の質問に関して。

『The Federal Reserve has been, and still is, doing a great deal to foster financial stability and to spur recovery in jobs and economic activity. Notably, we began the process of easing monetary policy in September 2007, shortly after the crisis began. By mid-December 2008, our target rate was effectively as low as it could go--within a range of 0 to 1/4 percent, compared with 5-1/4 percent before the crisis--and we have maintained that very low rate for the past year.』

とは政策金利引き下げのお話。

『Our efforts to support the economy have gone well beyond conventional monetary policy, however. I have already alluded to the Federal Reserve's close cooperation with the Treasury, the Federal Deposit Insurance Corporation (FDIC), and other domestic and foreign authorities in a concerted and ultimately successful effort to stabilize the global banking system, which verged on collapse following the extraordinary events of September and October 2008.』

で、非伝統的政策を色々と実施しましたという話をしておりまして、以下はんじゃ何でそのような非伝統的政策を行うかという話をしていますが、まずは一般的な説明として、金融仲介機能の回復を行うという話をしています。最初の打ちは一般的な話とMMFとかCP市場とか中銀とのドルスワップの話。

『We subsequently took strong measures, independently or in conjunction with other agencies, to help normalize key financial institutions and credit markets disrupted by the crisis. Among these were the money market mutual fund industry, in which large numbers of American households, businesses, and municipalities make short-term investments; and the commercial paper market, which many firms tap to finance their day-to-day operations. We also established and subsequently expanded special arrangements with other central banks to provide dollars to global funding markets, as we found that disruptions in dollar-based markets abroad were spilling over to our own markets. 』

で、その後の施策についても具体的にどのような市場に突っ込んだか話をしているのですけれども、まあこちらでも市場機能というか信用仲介機能の回復が主眼という話をしています。

『More recently, we have played an important part in helping to re-start the markets for asset-backed securities that finance auto loans, credit card loans, small business loans, student loans, loans to finance commercial real estate, and other types of credit. By working to revive these markets, which allow banks to tap the broader securities markets to finance their lending, we have helped banks make room on their balance sheets for new credit to households and businesses.』

で、その次にモーゲージ債と財務省証券の買入の話をしていますが、どうもここの文章を読んでおりますと、その目的は「金利の引き下げ」にあるようですな。

『In addition, we have supported the overall functioning of private credit markets and helped to lower interest rates on bonds, mortgages, and other loans by purchasing unprecedented volumes of mortgage-related securities and Treasury debt.』

モーゲージ債に関してはFEDがマーケットメーカー状態になってしまう事によってスプレッドの圧縮には成功したようですけれども、ベースレートの方の米国長期債金利に関しては下がるどころか上昇するという素敵な結果になったのは皆様ご存じの通りでございますけどね(^^)。

『In all of these efforts, our objective has not been to support specific financial institutions or markets for their own sake. Rather, recognizing that a healthy economy requires well-functioning financial markets, we have moved always with the single aim of promoting economic recovery and economic opportunity. In that respect, our means and goals have been fully consistent with the traditional functions of a central bank and with the mandate given to the Federal Reserve by the Congress to promote price stability and maximum employment.』

ということで、非伝統的政策というのは、特定の市場やら特定の参加者の救済の為に実施しているのではなく、市場機能回復を図ることによって利下げという伝統的政策の効果を発揮させるために行うものであって、これは本来のFRBの使命に合致するものである、というお話ですな。

で、この先は銀行監督に関する話(SCAPとか)になりますので引用割愛しますけれども、ここまでの説明の中で判るのは、非伝統的政策に関して「市場機能の回復」という点を政策の効果として置いている事でありまして(モーゲージ債と財務省証券の買入は金利の引き下げという話なのでちょっと別の筋になりますが)、FRBのバランスシート拡大の量的な面についてはあくまでも市場機能回復(や金利引き下げ)を行った結果として生じた、とは言ってませんけど、話の筋からすればそういう事になるちゅう事ですわな。

なお、3番目の質問で「FEDのバランスシート拡大が過大なインフレを起こすのではないか」という質問に対しての答えを行っていますので、まあバランスシート拡大がどうのこうのという話もしてはいますけれども、今日引用した部分での説明を見ますと、まあ元からバーナンキ議長をはじめとしてFEDのエライ人は「FEDのバランスシート政策はかつての日銀の量的緩和のような負債サイドに注目した政策(=当座預金残高の数値目標型)ではありません」と説明していましたけれども、今般の非伝統的政策に関してはマネーサプライがどうのこうのという話は表に出てこない形での説明を継続してますなという所で。

#このネタまだ続くかもしれません








2009/12/11

お題「新オペ登場で雑談を引っ張ってみる」

という無理矢理企画にチャレンジの巻(^^)。

○正確には共通担保資金供給固定金利方式ね

火曜日にこんなのがこっそり日銀のサイトに出てまして(いやまあ要綱とかはオペ参加先には周知されてるのでこっそりでも何でもないですけど)、新オペそろそろクルーという感じでしたが、昨日オペ実施でござるの巻。

共通担保オペの取引概要
http://www.boj.or.jp/type/exp/ope/opetori12.htm

昨日のオペオファー(最後にご注目)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of091210.htm

で、その結果(最後にご注目)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba091210.htm

本店方式での実施となりまして、予定通り8000億円のオファーが行われました。期間はスポットスタートの12月14日でエンドは来年の3月9日。落札結果は応札65680億円で按分比率が12.2%となりました。1社当たりの応札限度額が2000億円だったので、満額応札した人の落札は244億円となりました。


○おお!6兆円も応札が!という訳でもありませんので念の為(^^)

でもってメディア的には応札が「8倍以上もありました!」という話になるのは明明白白でございますが、それをもって「8倍もにニーズがあるのだからもっと増やせ」とか言い出す人が出てきそうなので先に釘を差しておきますと(^^)、この入札方式だと「どうせ他にも応札する人がいるだろうから満額入れとくか」という人がわらわら出てきてもおかしく無いのと、その満額そのものが2000億円ということで額的にそんなに多い訳でもないので何か間違って入っても別に無問題という所もあったと思いますので(^^)、応札そのものはうじゃうじゃ入る可能性はある訳ですな。

このオペはサービスレートになりますので金額無制限でオペを打ったら当然ながら出来上がりの落札額は普通に考えて8000億円を超えると思うので、ニーズそのものは当然ながらあるのですけれども、「応札額が多い」=「ニーズが死ぬほどある」というのは必ずしも正しく無い(按分狙いで札が多くなる可能性がある)のですな。その逆で「ニーズが無ければ応札も減る」というのは正しいのですけどね。

かつて量的緩和30兆円時代の短期国債入札では入札参加各社がこぞって応札で機械的に入力できる上限額を按分狙いで応札するというようなお洒落な事案がございました。まああれは極端ですけど、そういうケースもあるので「8倍も応札があったからもっとオペを増やすべき」とか言うのはオペの技術的な話を理解していない事を自ら告白するようなもんなのでご注意ありたしと言う事で(^^)。

#いやまあこのオペそのものは当然ながらニーズはある筈なのでそういう意味で増額したら喜ぶ人は多いと思いますけれども、その根拠に昨日の応札額を持ち出すのはピンボケという趣旨ですから念の為


○つーか按分もうちょっと少ないのかとオモタ

んでもってその応札6兆5000億円ですけれども、実際の短期村的な印象としては「おおこれは思ったより入ってラッキー」という感じなのでは無かろうかと思料。

つまりですな、全店オペ方式での実施ですので、現在ですと161先が対象になるのでありまして、普通に考えて債券ディーラー業務をやっている業者と短資会社はこのオペに入れる気満々でしょうし、まあ大どころの銀行さんもまたオペに入れる気満々でしょと思ってましたのが、サービスレート何だから他にももう少し札が入るのかなあって感じだったんじゃないでしょうか。

2000億円を30社ちょっとで入れたら6兆円ちょいという計算になりますので、証券と短資と銀行さんの大きい所が堂々参加したものの、オペ先の皆さんがこぞって参加という図でも無かったんですねという所であります。まー元々資金が余剰になっていて超過準備を積んでいるような人がわざわざ手間暇掛けてオペで資金を取りにいかんわなという事もありますし、2000億とか応札して実はどどーんと入ってしまったとかなると担保繰りが大変な事になるという人もいるでしょうから、そうそう皆さん揃って満額応札というようなトンチキな事にはならなかったという常識的な結果に落ち着いたのでありました。


○スタート日は月曜だけどエンド日が火曜とな

今回のオペですが、オペのスタート日は来週月曜なのですけれども、エンド日は3月9日なので火曜日に相成ります。このオペはロールされるのが前提ですから今度ロールされる時には3月5日金曜日にオファーされるのですなというのは判ったのですが、このスタートとエンドって単純に資金需給を見たとか言う事なのでしょうか。

というのはですな、今回のオペが月曜スタートだったので、もし今後実施されるオペも毎週月曜スタートでという事になりますと、新発TB3か月物を発行日からオペに突っ込めるという業者歓喜の展開になるので、「おお!これは凄い!」と一瞬ヌカ喜びしたのですが(^^)、良く良く見たらエンドが9日(国庫短期証券71回の償還日は8日であります)なので、このロールの時には新発TBの発行日にオペのスタートが当たりませんなあという感じで(ま、共通担保ですからキニシナイという説もありますけど)、そこまでの露骨プレーは避けたという事でしょうか、ニヤニヤ。

これ毎回月曜スタート月曜エンドとかにしてくれると「3か月国庫短期証券の発行償還にぶつけて新型オペの足をそろえる」ということになって下さいますので、日銀から猛虎魂じゃなかった財務省魂を感じるという所だったんですが残念無念(何が?)。


○短期村の外の反応が知りたい

・・・・と思ったのですが、債券町での反応は「ああ実施されましたかそうですか」ちゅう感じだったのでツマランチ会長なのですけれども、何せ今回の措置の前後では「為替市場の動向」というのが総裁の口から出ていた位ですので、まあ為替市場様がどういう反応してるのかが知りたいのですけど・・・・どうなんでしょうかね???

#ああ実施されましたかそうですか、で終了してそうな気がするが(汗)


○まあそれはそれとして

ということで雑談のネタはあっという間に尽きてしまいまして、甚だ遺憾でございますが(とほほ)、要するにこのオペが従来の共通担保やら特オペからの単なる乗り替わりに過ぎないと結局の所(昨日うだうだ申し上げたように)足元のGCレートなどはそう簡単にベタベタにはならず、従って3か月TBやら2年とかの金利もベタベタになりませんわなという事になるのでありまして、本来的な注目点はこの新オペ分が従来の供給にオンされるのかどうかちゅう話ですわな。

という観点からここもとの調節を見ておりますと、まあ数字上の当座預金残高やら準備預金残高がそんなにドカドカ増えている訳でもないのですけれども、最近のパターンだと積み最終に向けて積みの進捗を調整するような感じでやや引き気味に運営してきてたのですが、一昨日や昨日のオペを見てますと「ここでの供給は行うか行わないかどうでしょうね」ってえ所でほぼ供給を行っていまして、積み最終に向けての進捗調整を行うような感じが見られないので、まあそういう点では変なレートの跳ね上がりをさせないような配慮はあるんじゃネーノという感じです。

ただまあ資金供給を押し売りの如く打ちこんで来る訳でもないですから、そーゆー点で言えば超足元レートを強引に抑え込んで来るようなオペでも無いという所でして、昨日も申し上げたように間合いが微妙な状況がまだ続いているという感じなんでしょ。

まあ次の積み期間は年末年始(ただし今年の年末年始は休みが4日しかないのでそんなに長く無い)がありますので、まあどういうオペレーションをしてくるのか、年末だから普通に多めに出してくると思うのですが、その出し方が上記のように「上昇抑制気味モード」なのか「押さえ付けモード」なのかはオペを見ていくしかないですわな。「ターム物金利の低下を促す」というのはまあ確かに押さえ付けるとは言ってませんけど、ああ言われると押さえ付けオペを想像したくなるので、先週の短国入札はフィーバーしちゃったという所でしょう。資金需給的にあの時期は威勢よくオペを打ってもトン調節というプレーが可能であった事も日銀的には美味しかったという感じでしょうか。その為にわざわざ臨時会合の日を調整してたら凄いですけれども、まあさすがにそこまでは無いかな?


#ということでひたすら局地的な雑談でどうもすいません








2009/12/10

お題「年末進行につき世間話モードが続く(汗)」

年末進行というのは言い訳ですけどね(おい)。

○3か月TB入札などについて

昨日は超適当に「0.12%に毛が生えたくらい」と申し上げましたが、入札の結果は0.1246%/0.1272%ということで、正直あたくしのドタ勘はもうちょっと強めかと思ってたのですが「ふーん」という感じでした。で、先週のちょっと頑張っちゃった入札は0.1169%/0.1192%だったので、今回はレートが上昇しちゃいましたでござるという話になりますわな。

いやまあ緩和策が出る前の入札が0.1538%/0.1546%となっていますので、そこから見たら堂々の3bpレート低下なのでちゃんと追加緩和による効果が金利に出ているのですけれども、今回の追加緩和政策をぶち込んだ時に白川総裁が「ターム物金利の引き下げ」を謳ったという事もございまして、あたくし的に気になるのは、「日銀ちゃんはどこまでここのレートを押し下げて来る積もりで考えてるのかな」という所でございます。

つまり、先週0.11台まで下がったのはご愛嬌ではありますけれども、それはそれとして昨日はそこから見たらレートが上昇しましたという現状も現状としてございます訳で、市場機能とか知らんがな状態で強引に0.10%ベタベタになるようなオペレーションを行って市場の価格形成機能をとりあえず3か月の所までは虐殺しちゃうのか、そうは言ってもそこの機能のようなものは(既にだいぶ虫の息状態ではありますが)とりあえず死なない程度に残しつつも市場を誘導していくのか、どっちのスタンスなのかによってレートがベタベタになってくるタイミングが微妙にずれるので、短期市場的にはそのタイミングの差がポジションを作るのに大事(10年金利とかのスケールから考えたら誤差の世界ですが、汗)でして、まあ今の所はその間合いを測りかねているという所でしょう。


しかしまあ何ですな、昨日の入札は0.1246/0.1272だったんですけど、その0.1272の所って按分0.5353%っていうことで入っていないに等しいのですけれども、落札結果出た瞬間にセカンダリーで平均オファーになるのはちょっとまあアレでございますな。いやまあ流れた入札とか平均が強すぎた入札というのなら判るんですが、ごく普通の落札結果と思われるのに平均オファーとかになっちゃいますとこれまた投資家が段々プライマリーで行かなくなってきて、入札前の札の集まりが悪くなるので益々セカンダリーが重めになるという悪循環になって、自分の首を絞める流れなんじゃネーノと思うのですが余計なお節介ですかそうですか。


○GCは安定とな

ここもとのオペでは当座預金残高をいつもの積み最終だと最終日に向けて引き気味にしてくるのに対して、今回の積み期に関しては最終に向けて特に引いてくる感じも無く推移しておりまして、先週末あたりに何か7日渡しの所で妙な挙動をしやがったGCレートは日銀の供給がどういう勢いで増えてくるのかに関しては手探り状態ではありつつも、ま、レート形成そのものは取りあえず0.11%近辺(105-11か11-115かという感じですかね)で再び落ち着いてきたようでこれまた結構な話。

ただまあ繰り返しになりますが、今回の追加緩和策って「指値オペ実施」というのが本当のキモで「10兆円」というのはそのオペのオファー額の話なんで、当座預金残高がどのくらい増えるのかという話はこれまた微妙であります。まあ元々今回の措置は白川総裁が会見で言ったように「ターム物金利を低めに誘導する」という物だと考えた場合、その低め誘導を「どのターム物まで」「どの位のレートで」誘導するのか、またその方法は強引にベタベタになるようにするのかという所は今回は(目標を当座預金残高にしていないのだから当たり前ですが)公式にアナウンスされる訳でも無いので、その辺りに関するスタンスがどうなのかはオペレーションの打ち方で判断して行くしかないという事になりますわな。

まあGCを0.10まで下げちゃうとGCで資金を出している主要プレーヤーである所の大手銀行さんが「じゃあ0.1%のブタ積み」という動きに出る(ゼロ金利量的緩和時代だとブタ積みは本当にブタ積みだったので、いわゆる「キャッシュ潰し」に対するインセンティブは当時と今とでは違って出てくる筈です)ので、GCでファンディングが必要な人がいるうちはそうならないでしょうし、日銀のオペで全員のファンディングが賄えてGC市場で金取らなくても良いとなるかと言うと、まあそういう事は起きるのでしょうけれども、そうは言っても全部が全部オペ頼みでファンディングというのは問題含みでもあるので、市場でのファンディングのニーズが死滅する事は無いでしょう、と思いたい(あれ?)です。


○まあいずれにせよ

とりあえずターム物金利を下げるという点では3MTBのレートを2bpから3bp下げる事には下げたのですけれども、まー何だかんだと言いましても3か月TBは1回当たりの発行量も莫大ですし、短期ゾーンのターム物金利と言う意味では一番の指標的存在(流動性も高いし)になる訳でして、イールドカーブ全体に与える影響も何気にあるのではないかと思う(過大評価かなあ?)のでありまして、日銀様におかれましては白川総裁が堂々強調した「ターム物金利を低めに推移するよう促す」という「低め」がどんなイメージなのかを拝見したいものです。

まあ本当にベタベタになるようにしていくと、3か月TBの金利もそれこそ0.10%に毛が生えた程度のレートになって、その後ろもそこに影響されてもうちょっと低下という話になるのですが(2年とかはまあその辺結構織り込んでますけど、3か月位までが本当に0.10ベタベタになったらもうちょっと下がるでしょう)、その辺がどの位までやらかすのかは今後の流れに注目という感じですかね。



○その他余談

というか最初から余談ですけど(汗)。

・何か良く判らんが読んでて面白そう

http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/pi/hed2005d.pdf
企業物価指数「デジタルカメラ」に関するヘドニック回帰式(再推計結果)

ヘドニック回帰式がどうのこうのという話はあたくしおつむが宜しくありませんので良く判らんのですが(−−)、何か色々と性能比較している所が「良く判らないけど何かワクワク」って感じですな(あほ)。


・昨日と一昨日の日経新聞「経済教室」は中々

一昨日が池尾先生で昨日が一橋大学の渡辺先生でしたが、どちらも興味深く読みました。ただこの経済教室って見てて思うのですが、見出しに出ている言葉に微妙に違和感がある事が多くて、例えば昨日の渡辺先生のですと、大見出しの「物価の反応の鈍さ注視を」というのは良いのですけれども、「数量調整の役割重要」というのはそういう趣旨じゃないように読めたんですけど、「数量調整の役割が重要」なのではなくて、マクロ調整の中で物価調整の前に数量調整が来るから物価調整が遅行しやすくて、「価格の実質硬直性仮説」が起きているのではないかという話ではなかろうかと。

で、もうひとつの小見出し「市場の緩和予想、定着急げ」というのは市場からするととっくの昔に定着してますが何か??という感じを受けるのですけれども、良く良く中身をみると、金融緩和の継続をより強くアナウンスして「企業や家計の物価予想」に積極的に働きかける施策が必要となっているのでして、見出しを誰が作っているのか知らんのですが、微妙に中身とのミスマッチが起きてやせんかと思うのでありました。

いやまあどうでもいいツッコミですけどね。

それから、池尾先生の説明は思いっきり日銀っぽかったというと悪態みたいですが(^^)、調節の技術的な面や実務的な面もきっちりフォローした内容となっておりまして、現場労務者的には違和感の無い説明になっておりました。細かいこと良くご存じですな。


・44兆が早速反故になりそうな件

つーか、普天間基地問題でもそうですし、もう何が何だかというか、麻生政権だったら首相と閣僚の首が何回飛んでいるのかという位の無茶苦茶振りに最早悪態どころか絶望しか感じないのですが、財政問題でユーロシステム域内の国のソブリン格付けに格下げアクションが掛かっているタイミングでいきなりそういう話をするとは相変わらずのハイセンス振りに敬服するしかございません。

まあ悪態書いててもしょーがないので備忘メモですけど。


・そういえばこんな大事なのを忘れてた

臨時措置解除という会合の議事要旨のネタを忘れてました(汗)。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g091030.pdf

・・・・が時間が無いので後日(おいおい)。









2009/12/09

お題「小ネタ雑談で恐縮至極」

某モーサテを見たらムーシャ神が「来年はアメリカ4%成長」という恐ろしいお告げを・・・・勘弁して下さい><;

○国債投資家懇談会から・・・というよりただのあたくしの雑談

http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/b211207.htm

増発の話はまあPD懇と同じなのですが、来年度に国債発行を減額する場合にどこを減らすのかという話がPD懇の時とだいぶ違うのが目立ちました。PD懇でもまあ20年とかを減らしたらというような意見など色々とあったのですが、議事要旨の全体的なトーンは基本的には短期ゾーンを減らして借換債の増加負担を何とか軽くすべきという感じになっていたので結構対照的だなあと思ったんですがどうなんでしょ。

まあ一々引用しませんけど、割と減額に関する意見が多かったのが10年債って所で、後は5年とか物国変国とかいう話が多く、まあ投資家需要とかここもとの増発によるバランス変化という点からするとそうですかねという感じではございます。

然るに、PD懇の方では「借換債発行負担の増加を軽減」という観点の意見が妙に多かった(いつもの調子だと「日銀の追加緩和もあるので短期ゾーンは消化余地ある」という話のオンパレードでも良さそうなもんですが)のって、業者から見た場合に、国債入札が段々と市場で一発で捌けない状態になって来ており、将来的にそうホイホイと増発されていくと入札そのものがリスクになって来る勢いになっているというような所をさすがに看過できない状態になっているという認識が広がっているのではなかろうか、と想像するのでありまする。

いやまあそれってあたくしが勝手に妄想しておる(受け売り成分もありますけ^^)話でして、実際問題としてどうなのかはあたくしのようなチンピラゴロツキではなくて大業者様のご意見をお伺いするべき話なんですけど(じゃあ書くなというツッコミは却下^^)、何だかんだと言いましても最近の中長期国債の入札って入札前に結構調整してみたりとか、入札が結構流れてみたり(昨日もまあ予想通り(?)流れたという感じですか)という場合が多く、入札でニーズ爆発ショートカバー大会というのも月に1回位あったりしますけれども、入札そのものがちょっと重いかなあと。基本的に金利が上昇する局面でもないですし、日銀の金融緩和に関してはどう見ても時間軸です本当にありがとうございましたという感じな中でこのテイタラクというのに、プライマリーディーラとして最前線にいる人達の方がより一層にアレな物を感じている為に、いつもと逆っぽい議事要旨(=PD懇の方がポジショントーク成分が高いのが仕様なのですが今回は逆の印象)になったのかな。

というのは全てあたくしの脳内妄想によるものですので内容が本当か脳内虚構なのかは保証の限りではございません(言い訳^^)。


○んでもって投資家懇の続きで相場見通しに関する部分から

まあ基本的には金利はレンジで下手したら低下リスクというのがコンセンサスですが、こちらでも(PD懇の議事要旨では相場見通しに関する話が掲載されていませんが)財政に関する要望が。

『(前半割愛)むしろ長い目で見た場合、今後、景気の足取りがややしっかりしてくる中で、金融政策の出口戦略が探られる、あるいはインフレ圧力が具体的に出てくるといった中では、財政プレミアムといったものもマーケットのセンチメントに影響を与えると思う。そういった意味ではマーケットというのは、やはり期待に対してオープンなシステムであるので、そういったものに対する配慮は非常に重要ではないかと考えている。』

『先月我々もちょっと冷っとした場面があったが、発行量が非常に多くなっているので、おそらくすぐに顕在化することはないと思われるが、日本の貯蓄が段々減っていくと、当然そのリスクプレミアムを織り込んでいく局面が可能性としてあるのではないか。したがって、市場との対話を是非続けていっていただきたいということが一つと、もう一つは、政府として、やはり財政再建プランをきちんと作って理解を得ていくことが大事であると考えている。』

ということで、他にもありましたけれども、さすがにここもとの国債増発攻撃に関しては、それがどう見ても単年度の一時的増発では済まない勢いになっている事も鑑みて、ズブズブ状態でのバラマキ的な財政拡大に関しては勘弁してくれ(とは角が立つのでよー言いませんが)という声が増えとるという感じですな。

参加者的な懐勘定という点で言えば正直言って別に長期金利が上昇したってそれはそれで困らないのですけれども、そうは言ってもこういう場所で話をする場合って一応日本国が困る事になったらマズーでしょという論点での話はするもんだと思いますので、まあ財政規律がどうのこうのって話をしているのですよね。よく「金利が上昇すると(保有債券が値下がりするから)債券の投資家は困る」という講釈を聞くのですけれども、実際問題としては金利が低下している時の方がしんどい(金利の世界では「再投資リスク」という概念がございましてですな・・・)のでありまして、いきなり一夜で2%とか金利が上昇すれば別ですけど、のんびりと金利が上昇する分には特に困らない筈なんですよね(困るのは発行当局)。シロートの方向け余談ですけど。

まあそんな雑感ですが、要するにお前は何が言いたいのかと申しますと、最前線のマーケットメーカーさんが国債発行額の重さにリスクを感じて来てるんじゃなかろーかということでありました(^^)。


○11月30日の総裁会見から小ネタとご教訓

名古屋での講演の後の会見ですが、翌日に例の臨時決定会合が招集されたという後付けの結果からみるとこれはこれで趣きがある内容です(^^)。

例えばこの辺。

『(問) 政府の中からは、日本銀行に一段の金融面での対策を求める声が強まってきていますが、それに対しては、日本銀行としてどのように対応していこうと思っているのでしょうか。』

『(答) 日本銀行としては、経済・物価情勢あるいは金融情勢を丹念に点検し、常に予断を持つことなく、中央銀行として、もっとも適切な金融政策を運営することに尽きます。我々としては、常にそうした姿勢で臨んでいくということが大事だと思っています。』

ほっほー。

『(問) 金融経済懇談会における質疑の中で、円高について、金融緩和を粘り強く進めることが為替の面でも影響をもたらすといったご説明があったと思いますが、金融緩和を粘り強く進めることが為替に影響を及ぼすメカニズムについて、もう少し詳しく教えて下さい。』

『(答) 為替市場について、中央銀行の総裁として事細かにコメントすることは、様々な市場の憶測を呼びますので差し控えたいと思います。その上で金融経済懇談会で申し上げた点について説明すると、日本銀行は、現在の極めて低い金利を維持することを既に発表しています。そうした政策方針が正確に理解されれば、それは為替市場にも相応の影響が及ぶであろうとの趣旨で申し上げたものです。』

月曜日に虫干しと称して1日の総裁会見をご紹介した時にも同じような発言があったと思いますが、いつもだと最初の部分だけで終了する所を、この時には「低金利を継続するのだから為替の円高攻撃すんじゃねえヴォケ」という(?)部分が加わっているのでありまして、まあいつもと違う話をいきなり始めた時には何かありますなという法則が炸裂したでござるの巻、と後講釈では言えるのでありますが、後講釈で言っても相場様に勝たない後付け講釈に1ミリも価値無しというのが市場的な仕様でございますので、こーゆー事を今更うだうだ講釈してもしょーがないのですけどね(自爆)。

ま、それ以前の問題で、この会見要旨がリリースされた頃には既に臨時会合のアナウンスがされていたので精読してもアフターフェスティバルにも程がある(まあここの「低金利維持」というくだりを見れば、時間軸強化またはターム物誘導が本線ではないかという想像が出来るというのはあるけどね)というものですけれども、次回に向けて良く覚えておきましょう。たぶん忘却するけど(^^)。


しかしまあ政府の発言に対しては何か苦々しいものは感じているんでしょうなというのはこの辺の質疑を見ると思うのでした。

『(問) 本日、平野官房長官が、日本銀行が量的緩和の判断をしようとしているかを含めて意見交換するといった趣旨の発言をされていますが、年末、年度末の資金供給を考えた場合に首相との意見交換の場ではそうしたことも話題になるのでしょうか。(以下割愛)』

『(答) まず前者の点ですが、現在、日本銀行は潤沢に資金を供給し、金融市場の安定に努めています。もちろん、金融市場は生き物でありますから、金融市場の安定を確保するためにどういうやり方が一番いいのかということは常に考えていきたいと思っています。いずれにせよ、日本銀行は今潤沢に資金を供給する姿勢にあるということです。(以下割愛)』

ということで、量的緩和量的緩和とやかましいので翌日の決定後の会見で「広い意味での量的緩和」という話をしていた訳ですな。バーナンキ議長は(最近その辺の定義論争をすっかり行わなくなりましたが)各種の緩和策を実施する段階で「FRBの行っているのは日本の実施した量的緩和とは違う信用緩和政策である」という話をかなーり熱心にしておられまして、どこでどういう知恵をつけたのか知りませんけど政府のエライ人が量的緩和量的緩和というのに対しては何だかなあという感じだったんじゃないでしょうかね。


○相場雑談

・超長期が微妙にヘロヘロな件について

先週の月曜(先月末)から見た場合、当たり前ですが中短期の金利は下がりまして(2年とか5年とかは4〜5bpの金利低下)、その間に10年の金利もちと低下(カレントの銘柄が変わっているので見た目上昇してるけど、同じ銘柄で見たら1.5bpの低下)しとるのですが、20年以降の金利は素敵に上昇したでござるの巻となっておりますわな。

いやまあ入札前だから何となく調整というのもあるのですが、それよりは別の要因でしょと思う訳でして、これがまあ何となく毎度お馴染みの民主党政権リスクプレミアムなのか、それとも「金融緩和+財政拡張」のコンボによる金利上昇なのかは例によって例のごとく分析不能なのですけれども、まあ後者だったら政策効果の具現化を早速市場が織り込みに行きましたですねというお話ですな。

さてどっちなんでしょうかね。10年までは堅調ですからただのリスクプレミアムのような悪寒もするのですけど(汗)。

・GCレートとか短国のレートとか

1日の決定会合結果によって2日に実施された3MTBの入札は平均どころか足切りまで0.12%割れをやらかすというお洒落な結果になりましたが、当座預金残高がいきなり1日で10兆増える訳でもなく(まあ徐々には増えてますけど)調子に乗って強くなった分が剥落したりして楽しい動きになってましたが、昨日のオペレートはスポネ現先も11足切りまで下がって来て、まあとりあえず瞬間的にオモシロ展開になったのは落ち着いた感じですね。

という中で3MTB入札なのでありまして、まあ普通に12にちょっと毛が生えた位になるのでしょうかねえという所ですが(正直あてずっぽう)、超足元の資金とターム物への運用ニーズとのバランスがどの辺にあるのかが何となく見えてきそうな入札かなあ(と言われても何が何やら判らんと言われそうですが)と思います。







2009/12/08

お題「ポジショントークっぽくないPD懇/その他」

まずはPD懇から。
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/c211204.htm

どうでも良いのですが、今回の議事要旨は個別意見の紹介の頭に「・」みたいなのがついてないので読みにくい上に、普通にIEで表示したのをA4の紙に印刷しようとすると右余白が足りなくて肝心の所が読めないので改善キボンヌ(右余白が足りないのはいつもの事なのですが、通常は1文字程度しか切れないのに今回のは3文字程度切れるので文章として読めない)なのであります。


○ポジショントークを爆裂させている場合でも無いという事ですな

今回のPD懇はこの時期ですので国債発行計画絡みのお話・・・なのですけれども、今回の特色としては皆さんの意見が物の見事に揃っていることと、いつもだと割と目先が良ければいいやっぽい意見具申が散見されるのが仕様となっている(議事要旨を見てるとその中でも一貫してべき論でぶれてない人もいるものと思われますが)のですけれども、さすがにここもとの国債絶賛発行に関してプライマリーディラーとしてもあまり能天気な話をしている訳にもいかないという雰囲気になっているのではないかという感じの意見が。

2次補正に関する増発と、来年度の国債発行計画に関する意見の概要ということでまず最初の人の意見を引用します。

『2次補正に伴う増発に関しては、需給を加味すると、利付債で対応可能であると思われるのは30年債であり、来年3月に6,000億円を1回追加できるのではないか。後は、T-Billで対応するのが望ましい。』

『来年度については不確定要素が多いが、基本的には、各年限とも、本年11月からの増額後の発行額を来年度も維持した上で、30年債を年8回まで増やせばよいのではないかと考えている。それでも足りない場合は、増額できるのは5年債で1回あたり1,000億円程度、その次に2年債で対応可能ではないか。逆に減額できる場合は、国債管理政策上、短い年限から削っていくことが望ましいため、T-Bill の1年物や6ヶ月物を減額する。(物連と変国に関する部分割愛)』

と言う意見なのですが、これがまた見事な事に今回は参加各社の意見が大筋ではほぼ揃っている(発行余地の部分で長期にウェイトが掛かっている人もいるのでその点では一様ではありません、念の為)次第でして、「来年度もし減額ができるのであれば短期国債を削るべき」という意見が大勢というのには「ほほー」と思うのでした。

つまりですな、量的緩和みたいなもんをこれから日銀が開始するという状況でありますので、普通に考えて短期国債の消化余力はアホのように高まる筈だというのはPD懇に出席されている各社様は先刻ご承知なのでありまして、今までのノリですと「日銀の追加緩和によって中短期ゾーンの国債の消化余力は更に高まる」とかいう話が出ても全然不思議じゃないのですが、そういう目先の話よりも短期ゾーンを削る話が主体になっている(あと発行額がバランス的に多い20年の減額も)のが多いというのはどーゆー事かと言いますと、当然のごとく・・・

『一方、減額が可能な場合は、将来的な借換の負担などからT-Billや2年債を優先するのがよいと思う。』(これは最初の人とは別の人ね)

という事で、さすがに借換債がジャンジャン増えてくるのは如何なものかというPD懇参加者の意識が高まっているという話では無かろうかと思ったのでありました。あまり暢気な話をしている場合でも無いって所ですかね。

あと、ちょっと上で引用した人の意見(本当は長いのだが)の中でこんな部分がありまして、まーこの点にはとっても同意です。

『国債管理政策はここまで非常にうまく機能していることを強く自信をもって訴えていくべきだと強調したい。これまで「サプライズなき増発」を実行してきており、特に、4月の補正や11月からの増発で、T-Bill6ヶ月物や前倒債の活用を温存し、今回の2次補正でうまく活用できることは非常に有効であると思う。来年度についても同様の方向性でやっていければ、ある程度の発行量になっても市場にショックを与えず、金利のボラティリティの低下や発行コストの低下に繋がっていくのではないかと考えている。』

しんどい中上手く繰り回していますなあと思うのですけれども、肝心の発行が何かこうダラダラというかズブズブという感じで増え続けるという状況なのが大変に頭が痛い所でしょう。国債管理政策という戦術面は恐ろしいほど優秀なのですけれども、財政政策そのものという大戦略がどう見ても場当たりモードです本当にありがとうございましたという所が実に残念ですわな。いやまあ出すなら出すでも良いのですけど、出した後に成長戦略があって将来的には出した分がきっちり戻るから無問題というような図が無いままにズブズブと財政が出るというのはちょっと何だかねという感じですもんね。



○流動性供給入札と買入消却

流動性供給入札と買入消却に関する話には何気に良い話が転がっていました。

『流動性供給入札は、現状維持で良いと思う。ただ、位置付けの議論においては、流動性供給入札だけを取り上げるより、そもそも国債市場の流動性が低い理由を考える必要があり、レポ市場の機能向上という点で、全投資家に強制することは難しいとしても、大口投資家が纏まって保有した銘柄などがレポ市場に供給されるような働き掛けも必要ではないか。同様の観点では、発行時の銘柄統合の取り扱いのほか、3年債や7年債のような新年限を導入するより現状の方が良いという考え方もあるなど、大きな枠組みの中で議論する必要があるのではないか。』

ということで、「大口投資家が纏まって保有した銘柄などがレポ市場に供給されるような働き掛けも必要ではないか」という点に関しては禿げあがる程同意なのでございます。と言いましても現状ではまず他人勘定でのSCレポ(資金運用目的でのGCは普通に行われていますが)がほぼワークしていない状況だったりするので、その人達の玉をSC市場に出せるような仕組みづくりを行う(のはこの金利状況だと初期投資のコストに合わないという所で話が無限ループするんですけどね)とか、まあ色々とレポ市場の厚みと広がりが求められる所でありますわなと存じます。

ところで、買入消却と言えば物価連動と変動国債ですが、市場実態としてはその通りなので市場の中の人的に読んでいると軽く読み流してしまいますが、冷静に考えるとこれは落涙を禁じ得ない意見(^^)。

『買入消却については、物価連動債、15年変動債ともにあまり大きく数字を動かすべきではない。物価連動債については、市中残高に比べて当局の買入額が大きくなっているが、市場において実需の買いは無いため、買入消却が減額されると市場が不安定になるおそれがある。また、15年変動債についても、あまり極端に減らさない方がよいと思う。物価連動債の買入消却が減額された場合に、15年変動債の減額のペースも速まると思った投資家が、売り急ぐことも十分考えられるので、慎重に対応してほしい。どちらかというと、15年変動債は減額しないほうがよいと考えている。』

>物価連動債については(略)市場において実需の買いは無いため
>物価連動債については(略)市場において実需の買いは無いため
>物価連動債については(略)市場において実需の買いは無いため

その通りなのですけどね(><;


ところで、昨日見た時には最近の国債市場に関する議論があった筈なのですが、今朝見たらその部分が無くなっている気がするのですが、何かあたくしの勘違いでございましょうか???


○バーナンキ講演ですが

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20091207a.htm
今回の講演のお題が『Frequently Asked Questions』というのはチャーミング(^^)。

えーっと、まあ当然ながら全部読める訳ではないのですが、某モーサテが「バーナンキは雇用環境は脆弱と発言」と連呼するのでそのくだりを引用。『Where Is the Economy Headed?』ってえ所のケツの方が該当する部分だと思われます。

『On the other hand, the economy confronts some formidable headwinds that seem likely to keep the pace of expansion moderate. Despite the general improvement in financial conditions, credit remains tight for many borrowers, particularly bank-dependent borrowers such as households and small businesses.』

『And the job market, though no longer contracting at the pace we saw in 2008 and earlier this year, remains weak.』

『Household spending is unlikely to grow rapidly when people remain worried about job security and have limited access to credit.』

ということで、fragileなら判るが、remain weakで脆弱ってニュアンスになるの???って気はする。まあFRB的にはこんな段階で変に早期利上げ観測が出てくるのは困るという状況だというのは判るが、そんなに強いニュアンスかいなと。まあsome formidable headwindsってのに反応したんだと思いますが。

つーかですな、on the other handってえ位ですから、その前にメインシナリオの話があって、そっちでは景気は回復ですよという話をしているのですけど。その前のパラグラフから。

『A number of factors support the view that the recovery will continue next year. Importantly, financial conditions continue to improve: Corporations are having relatively little difficulty raising funds in the bond and stock markets, stock prices and other asset values have recovered significantly from their lows, and a variety of indicators suggest that fears of systemic collapse have receded substantially. Monetary and fiscal policies are supportive. And I have already mentioned what appear to be improving conditions in housing, consumer expenditure, business investment, and global economic activity.』

つまり、シナリオとしては回復だけれども、回復のペースを阻害するsome formidable headwindsって話をしてるとは思うので、そんなに極端な反応をするもんでも無いとは思いますけどどうなんでしょ。

ただ、物凄い勢いで斜め読みした感じでは、インフレ期待は中長期的に抑制されてるとかいう話もあり、景気見通しに関する部分に関しては利上げの雰囲気を1ミリも出さないようにしているのは把握しました。

他の部分も面白そうなので暇があったら読んでみます。












2009/12/07

お題「すっ飛ばしたネタとか市場雑談とか」

米国雇用統計キタコレ。

○先に市場雑談

1日の総裁会見ネタがクソ長くなるので市場雑談。

金曜は7日の部分のGCレートが何か急に上昇。朝方からちょっと手前が上がりそうな雰囲気だったのですが、資金供給オペの金利がスポネで足切り0.11になってふーんと思ってたら、13時のオペの前にトモネを売る人とかいたので???という感じでオペの流れを見てたら、トムスタートショートタームの本店オペが足切り0.12になってトムスタートショートタームの全店オペが足切り0.13になってしまったでござるの巻。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba091204.htm

まあスポットスタートの3か月物の全店オペは普通に0.11足切りで平均も0.111だったので別にどうしたという訳でも無いのでしょうけれども、まあ1日の金融政策決定会合結果を受けて2日には金利がいきなり追加供給拡大効果を全部織り込みに行くようなレート形成をやらかしていましたけれども、現実問題として供給がいきなり10兆円増える訳でもないのですから、全部織り込みに行くようなレート形成で3か月短期国債の入札までやらかしたのはちょっとフライング気味というか調子に乗り過ぎだったという感じだったんでしょう。

現実に市場全員が金イラネ状態になる前にGCが0.105とか冷静に考えるとブタ積みとどっちが得か判らんレートまでやってしまったので、金の出が逆に悪くなってしまったのか、それとも水曜に金利下げてジャンジャンやったのが、もっと勢いよく当座預金残高が積みあがって行く事を想定した動きで、実際の当座預金残高の積み上げがさほどでもない(朝公表される本日の準備預金残高見込み額ベースでの準備預金残高が4日で9.2兆円でして、まあここもとの8兆円台ペースからは多いものの、そんなに急に量が出ている訳ではない)ので空振りモードになってちと冷静になったという事なのか、まあよー知らんけど。

以上市場メモでした。


○1日の総裁記者会見から

追加緩和策を決定した臨時政策決定会合後の会見から。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0912b.pdf

まあいつものパターンですが、それまでああでもないこうでもないとうじうじしてた白川さんが急に大盤振る舞いモードという感じです。この落差が何とも味わい深いのでありますが(^^)。


○いつもより威勢の良い話

最初の説明の所で。

『以上のような情勢判断を踏まえ、日本銀行としては、新しい資金供給手段を導入し、実質ゼロ金利といえるきわめて低い一律固定の金利で、3か月というやや長めの資金を十分潤沢かつ安定的に供給することとしました。資金供給の規模は、当面10 兆円程度を目途にしています。こうした措置により、現在のきわめて低い金利を維持するという姿勢を明確に示し、現在の強力な金融緩和を一段と浸透させることを通じて、短期金融市場における長めの金利のさらなる低下を促すことが、現在、金融面から景気回復を支援する最も効果的な手段であると判断しました。』

「実質ゼロ金利」「長めの(短期)金利のさらなる低下を促す」とは今までの白川さんにしては威勢の良いお話でございまして、まあここまで言うなら新型オペ(でも何でもなく只の指値方式共通担保なのですけれどもまあ兎も角)分の10兆円(ただし3か月間の累積)分は引かないという理解でよろしゅうございますでしょうか、ニヤニヤ。

まー余談になりますが、こうやって供給して行き、当座預金残高が拡大して行きますと、どこかのタイミングで市場の中にファンディングが必要な人がいなくなると思われます。今回は前回の量的緩和政策と違って当座預金付利があるので、都銀がブタ積み上等とか言い出して0.105を切る(というか事務コストを勘案すると出しの0.11じゃないと怪しい気がするが)GCを出さないとか言っても取りがいなくなると、当座預金付利制度の外側にいる人達(投信とか年金とか生損保とか)の短期資金の出しだけになるという暫く前の米国におけるGSE状態になるんでしょうな。

まあ前回の量的緩和政策と違って短期国債を買い捲くらないと当座預金残高が積み上げられないという状況でも無く、おまけに短期国債の発行量が半端無く増えていますので、どこのタイミングで上記の現象になるのかは微妙な気がしますけど、まーその前に短期国債のイールドカーブが潰れていくという感じになるでしょうな。しかも当座預金残高が積み上げられるとその分だけ短期国債の市中消化能力が高まるという財務省もウハウハの展開になるので、超地味なのですが、これって国債増発に対する凶悪なフォロー材料でもあるのですよね〜♪

ま、都銀さんがブタ積み上等モードになるまでは少々時間が掛かる(たぶん部門間での調整が必要になるから)のでその間は普通に105とかでもGCを出してくると思うのですが、冷静に事務コストを考えると10のブタ積みと105のGCを毎日ロールするのとではブタ積みの方がお得(ただしブタ積みは積み期間の途中で付利金利が下げられると涙目の展開になるリスクがある)という動きになってくるとどうなるんでしょうかね。まああまり見たくは無いのですが、どう見ても近未来のシナリオ。


という余談は兎も角として、会見の続きで量的緩和の話とか為替の話とか。

『このように、量が制約となって金融機関行動が制約されることがない状況をしっかり作り出すと言う意味では、広い意味での量的緩和だと考えています。先ほど質問者は「量的な緩和効果」と述べられましたが、繰り返して言えば、量が制約とならない状況を作る、量が制約となって金融機関行動が制約されるという状況を作らせないと言う意味でいえば、これは広い意味での量的緩和と言ってよいと考えています。』

大事なことなので2回言いました。「量的緩和」♪

『為替相場それ自体についてコメントは申し上げないということはいつも申し上げているとおりです。それから、金融政策は様々な経済・物価・金融情勢をみて、最終的に物価安定のもとでの持続的な成長を目的として行うものですから、為替相場それ自体をターゲットにして運営していくというわけではありません。』

っていうのは為替に関する質問に対する答えなのですが、いつもだとここで終了する所がこの時はその続きがあるのが中々。

『そのうえでご質問についてお答えすると、日本銀行はかねてよりきわめて低い金利を維持するということを景気情勢判断とともに示しています。私どもからすればその意思は十分に伝えているつもりですが、もし、なお十分に伝わっていないとすれば、改めてこうした方針が理解されることにより、少し長い時間をかけて市場にも相応の影響を及ぼしていくと考えています。』

低金利を維持するから為替の円高傾向は止まるべきであると仰せです♪



○急に態度が変わりましたねというツッコミ

しかしまあこれはいい感じで嫌らしい質問ですな。

『(問)2点伺います。まず、10 月30 日に、社債・CPの買入れによる資金供給を、12 月をもって止めることを決定したにもかかわらず、今回、それを復活するようなことを決めているように感じます。これは迷走のようにみえるのですが、10 月30 日の引締め方向での決定が誤りであったと認めるのか伺います。次に、11 月30 日の名古屋での講演で、総裁は「緩やかなデフレにある」と述べていますが、その10 日前の11 月20 日には「デフレには様々な定義がある」と述べています。日本銀行は、この10 日間にデフレの定義についてどのように考えたのか、デフレを今どのように定義しているのか、定義を決めていないのかお聞きします。』

指値の共通担保オペ導入って要するに特オペの共通担保バージョン(の変形)でありまして、こんなことなら10月に終了決めなくても良かったのではないかというツッコミが前半の部分ですな。いやまあどうせ何かしないと行けなくなるので、この際民間債務買入関連のような措置を共通担保オペのような通常ベースの措置にリプレースした方が日銀的に美しいという話だったのかもしれませんけど、もうちょっとこっそりとフェードアウトできたという気はしますし、そうやってたらドタバタ感は出なかったと思いますがね。

『(答) まず、最初の質問ですが、「迷走」であるとはまったく考えていません。金融緩和効果を上げていくうえで、最も適切な方法を追求しているということです。少し具体的に申し上げると、各種時限措置の取扱いについては、金融市場の安定を確保し、それを通じて企業金融の円滑化を支援していくという点では、金融市場の状況変化に即応した、最も効果的な金融調節方法を採用することが、いつも必要であると思っています。』

で、臨時措置に関する意義の説明と市場の歪みについて延々と説明があるのですがそこは華麗にスルーしまして(^^)。

『今回の決定はマクロの金融緩和政策の効果を強化するために、共通担保資金供給オペを一層活用していくものであり、時限措置の取扱いを決定した際の基本的な考え方に沿った、一貫して整合的なものであると思っています。』

まあ物は言いようですな。

『デフレについての質問ですが、10 月末に公表した経済・物価情勢の展望レポートおよびその後11 月に実施した金融政策決定会合でも、日本銀行の物価に関する判断は全然変わっていません。下落幅は縮小するが物価の下落が暫く続くという判断を、一貫して示しています。名古屋の講演では「緩やかな物価下落が続く」というデフレの定義に従って、現在がデフレの状態にあるということを申し上げたわけです。そこに違いがあるというわけではなく、日本銀行の考えている判断を、より誤解のない正確な形で伝える努力を、常に行っているということです。』

まあ物は言(ry


○つまり展望レポートの見通しは「デフレが続く」ですな

んでデフレの話が出たのでその後もデフレの定義がどうのこうのという質問が続くのでした。いやまあメディア的にはそういう話ってオイシイのでしょうけれども、正直言ってそこの定義論争はこれ以上突っ込んでも政策的なインプリケーションに繋がらない話なので、金融市場的にはどうでも良い話になるんですけどね。

『(問) デフレの定義はどのように考えているのでしょうか。』

『(答) デフレの定義について、人々が様々な定義を使っていますから、私自身が、こういう定義を使ってはいけないと言う立場にあるわけではありません。ただ、コミュニケーション上、「緩やかな物価下落」という形でデフレを議論することが多いということですと、その定義に従ってコミュニケーションすることが金融政策上も望ましいと思っています。』


○政治の圧力がどうしたこうした

『(問) この2週間くらい、政府の官房長官や大臣から、量的緩和という言葉を何度も使っての催促が雄弁に語られていました。本日のこのタイミングですと、政治的な圧力、風圧を感じての結果ではないかと思いますが、いかがでしょうか。(以下割愛)』

『(答) 日本銀行の金融政策は、経済全体に対して少し長い目で見ると大変大きな影響を与えていく、それだけ責任の大きい仕事であると思っています。従って、金融政策に対して、政府も含めて色々な方が様々な考え、思いを持つことは当然だと思います。日本銀行法の下でも、政府と日本銀行が円滑な意思疎通を図っていくうえで様々な枠組みが用意されています。日本銀行としては、政府や様々な方々の意見も十分に理解した上で、しかし法律の規定に従って、物価安定の下での経済の持続的成長の実現という目的をしっかり達成していきたいと考えています。従って、それを「風圧」と捉えるのではなく、日本銀行の責任がそれだけ重いと捉え、その上で最終的に日本銀行がしっかり判断していくことであると思っています。』

いやまあ何と言いますかという感じの答えであります。

これまた余談というかあたくしの悪態になりますけど、自民党政権時代も確かに金融政策がどうのこうのという発言をしたり、「俺様の言う事を聞かないなら日銀法改正すべきだ」という趣旨としか取れない無茶な発言をする人はいたのですけれども、それはあくまでも党の人間という立場にある時の発言であって、政府の要職に就いている人達はそんな発言はしておりませんでしたわな。然るに民主党政権においては党の人(つまり小沢さん)はそういう話を全然しないのに、政府の要職についている人間が競うように金融政策に注文をつける発言を行い、日銀の決定が行われた後はもう勝ち誇ったような発言が連発という下品にも程がある状態。お前ら「金融政策に政治が干渉するのはケシカラン」とか言ってたのは何だったのかと小一時間問い詰めたいので、後日忘れないようにこの間誰が何を言ってたのかを備忘メモ残しておく所存。



○今回は量的緩和だけど本当は金利誘導だよという話

で、金利の方が実際問題としては市場の価格形成に対する効果はでかいと思うのですけれども、まあその辺に関する話。さっきの質問の続きからですが。

『(問)(前半割愛)また、量的緩和という言葉で、我々はかつての当座預金をどう積んでいくかという政策を考えますが、あえて今回の措置としたことについて説明して下さい。』

『(答)量的緩和について、全ての経済用語がそうですが、事実として様々な定義があります。FRBのバランスシートは随分拡張していますが、バーナンキ議長やFRBは、これを量的緩和ではないと言っています。それに対し、いやこれは量的緩和であると言っているエコノミストもいます。そのように、様々な定義が使われています。ただ、現在FRBが否定している「量的緩和」、つまり当座預金にターゲットを設けて量を拡大していくという意味での政策である量的緩和について、FRBは当座預金の量は経済を刺激していくうえでの結果に過ぎないという立場を明らかにしています。』

それはそうです。

『私自身、今、量的緩和についての理論的論争をしたいのではなく、いずれにせよ量というものを日本銀行は十分に出す用意はあり、もし、金融機関が日銀のオペに応じてさらに量を調達したいということであれば、どんどん調達をして下さい、そのための枠組みはしっかり用意しています、ということです。』

でもってこれだけだと判じ物のような話でして、その後も質疑応答が続くのですけれども、一々引用してるとクソ長くなるので、金融市場的に見た場合にはよーするにこういう話だよという部分を引用。

『今回、0.1%という金利で3か月物の資金を供給する姿勢をしっかり示すことは、2つの意味で効果があると思っています。第1に、日本銀行が現在の低金利を続けていくことを通じて景気を支えていくという姿勢は、繰り返し申し上げてはいますが、なお十分には浸透していない面があるという指摘もあります。十分に理解されていないケースがあるとすれば、今回、固定金利、3か月のオペを出すことは、その姿勢を明確に伝えることを通じて金利に対して影響があると思います。第2に、3か月の資金を出すことにより、需給的な効果で長めの金利を下げていくということです。これはこれだけで大きな効果があるというわけではありませんが、2つの効果が相俟って金利を下げていく効果を期待しています。』

ということで、金利ターゲットだという話が1つでして、もう一つの「姿勢を浸透させる」というのは時間軸とかと勘違いしそうですが必ずしもそういう話ではなくって、最初の方で引用した為替市場を意識した話だというのが、露骨にはそういう言い方になっていませんが、さっきの部分と総合すると理解できるかと思います。

#結構端折ったつもりですがかなり長くなってしまいました。ECBの会見はパス










2009/12/04

お題「須田審議委員も微妙に下振れの話をしてましたな/その他」

前日に固定金利オペの打ちこみがあったので注目度は低かったのですが、須田審議委員の講演と会見要旨からサラサラと。須田さんの講演は長いので読むほうもアレなのですが、まあ今回は割とポイントを絞っているのでそのポイントから少々という感じで。

講演要旨
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko0912a.pdf

会見要旨
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0912c.pdf


○短期的には下振れですかそうですか

前半が景気に関する話で、後半が金融政策に関する話なんですけど、そのうち景気に関する最初の方は景気の現状と見通しに関するメインシナリオ部分となります。んでもって、メインシナリオに関しては大体展望レポートや執行部の方々が講演でお話をする内容と似たようなもんですので華麗にスルーの所存(長くなるから手抜きという説はあるが^^)。

で、7ページに『(4)リスク要因』というのがありまして、こんな話を。

『日本銀行が見通し期間としている2011年度までを通してみますと、新興国や資源国が高い成長を続けるとともに、国際金融資本市場が脆弱性を残しつつも、改善の動きを続けていることもあって、私としましては、経済・物価ともリスクはバランスする方向にあるとみています。ただし、短期的には、このところの国際金融面での動きや、為替市場の不安定化などが、企業や家計のマインドの悪化などを通じて、経済活動に悪影響を及ぼすリスクが高まっているように窺われます。』

『10月の展望レポートには、現在意識しておくべきリスク要因が取り纏められていますので、ここでそれらを全て挙げることは致しませんが、以下では、その中でも、私が特に留意している点について述べておきたいと思います。』

ということで、短期的な下振れリスクの話をしているのですが、その次にいきなりこういう小見出しが出てくる所が須田さんクオリティ。

『(拡張的なマクロ経済政策に関するリスク)』

・・・・なんつーか今まさに景気悪化とデフレ防止で拡張的な経済政策を実施している所で何と言う様式美の世界。

ま、須田さんは従来から拡張的な金融政策の長期化による資源配分の歪みとかに対して懸念をしてまして、先般の企業金融措置解除(しかし特オペ廃止して共通担保の特オペ実施とはという気がしますが^^)に関しても積極的な発言をしていたので、そーゆー意味では従来の須田さんのスタンスとの整合性は取れておりますな。

『最初に、拡張的なマクロ経済政策に関するリスクです。各国で講じられている拡張的なマクロ経済政策には、想定以上に各国の実体経済を押し上げる上振れリスクと、過熱をもたらした後、大きな反動が生じる下振れリスクがあります。』

それはもうちょっと後の話ではないかと思うのですが・・・と思ったら。

『最近では、特に新興国や資源国において、後者のリスクが高まりつつあるように思われます。』

ということで、何か無理矢理感もあるのですけれども、拡張的なマクロ経済政策の長期化に対するリスクを下振れリスクに結びつけるという荒業で従来の須田さんスタンスを維持という感じが漂って参ります。で、途中を飛ばして。

『また、財政規律への疑念による長期金利の上振れリスクにも、引き続き警戒が必要です。中央銀行による安易なマネタイゼーションは、かえって財政規律への疑念を助長することになります。』

まあさいですな。んでもって物価に関するリスクですが。

『次に、物価に関するリスクです。物価についても上下両方向にリスクがあります。少し長い目でみれば、グローバルな金融緩和が続くもとで、再び商品市場に資金が流入し、一次産品価格の高騰を通じてインフレ率が想定以上に上振れてしまうリスクに、引き続き留意が必要です。』

と、(講演要旨では)4行で上振れの方は終了。まあ我が国では原油価格がアホのように上昇して、その前にベースの景気が良かった時でも+2.5%とかにしかならなかったですからね。あたくし的には米国の方がヤバイ気がするんですけど。

そんでもって、下振れの方が延々と24行を費やして説明となっており、どう見ても下振れ意識です本当にありがとうございました。

『一方、目先については、このところの急速な円高が実体経済に与える影響も含め、内外経済が下振れ、それに伴ってインフレ予想が下振れてしまうリスクを、意識しておく必要があります。その際、今後の賃金動向が重要な鍵を握っているように思われます。』

ほほう。

『最近、わが国の失業率が他の先進国ほど悪化しない代わりに、賃金の下落幅が相対的に大きいことを捉えて、日本では人件費の圧縮を雇用の削減よりも賃金の引き下げによって行う傾向が強いと、改めて指摘されています。特に近年では、雇用調整助成金などの政策効果もありますので、そうした傾向が一層強まっている可能性があります。このような特徴は、賃金を維持する代わりに雇用を大胆にカットして、労働生産性を急回復させている米国とは対照的です。』

『賃金を調整して雇用を維持する日本の場合、雇用不安を通じたコンフィデンスの急激な悪化を防止するという利点がある反面、サービス価格等の下押しを通じて物価に下落圧力として作用するリスクがあります。』

つまり日本の場合は落ち込みそのものは小さくても長く引っ張るということですね。

『今のところ、賃金の下落は、時間給の引き下げというより、労働時間の短縮を中心に行われていることや、ウエイトの高い家賃が比較的安定して推移していることから、サービス価格は目立って下落しているわけではありませんが(図表4)、所定内の時間当り賃金にまで調整が及ぶようなことになれば、サービス価格の一段の下落に繋がることにもなりかねません。』

以下割愛しますが、当面は雇用関係の指標に注目しつつ物価下落がデフレスパイラルに繋がらないかどうか注意するというスタンスなんでしょうな、という話がその次の『デフレについて』というコーナー。


○デフレに関して

『以上のような、インフレ予想の下振れは、物価のさらなる下振れに繋がるリスクを高めることになります。先ほど、「デフレ」に関する報道が最近増えていることを紹介しましたが、ここで、デフレという言葉について少し考えてみたいと思います。まず、デフレを教科書的に定義するならば、「一般物価の持続的な下落」となります。この定義に従えば、現在、デフレとみることができます。その場合、金融政策上は、物価の動きをどの統計でみるのか、デフレの原因は何なのか、という点が重要なポイントになります。』

やっと皆さんデフレというようになりましたなあ(しみじみ)。展望レポートで数値はとっくの昔に出していて、ただそれをデフレ呼ばわりしなかったという事なんで、展望レポートなどの発信を細々見ている金融市場の中の人的には既にそれは織り込んでいて、ポイントは「デフレというからには何か出てくるでしょう」という所だったのですが、何せ白川総裁が月曜の講演でハト派っぽい話をしたと思ったらいきなり緩和して、それと同時に「デフレ」と言い出すというセット販売だったので、はてさて今後はどうなるのってえ感じですな。

で、統計数値の話はスルーしまして。

『また、デフレの原因につきましては、@資源価格など輸入物価の変動、A経済全体の需給バランスの悪化、B生産性の向上、などが指摘できます。現在の持続的な物価下落は、昨年の資源価格高騰の反動による影響が主因とみられますが、先述の大きなスラックを踏まえますと、経済全体の需給バランスの悪化も影響を及ぼしていると考えられます。』

統計上の反動で数字が下がった分は兎も角、トレンドとして下がっている部分の方が問題なのでは無かろうかと存じますが、と思ったらその話が次に。

『一般にも、今回の物価下落局面では、単に物価が持続的に下落しているという現象面だけを捉えるのではなく、供給に比べ需要が不足していることと併せて、デフレを議論していることが多いように窺われます。今後は、資源価格高騰の反動による影響が薄れていく一方、むしろ経済全体の需給バランス悪化の影響の方が相対的に大きくなっていく可能性があります。』

今後じゃなくて既にそうなのではないかという気がするのだが。いやまあ数字上では反動減の方がでかいのでしょうけれどもね。

『そうした中、物価下落が想定以上に長引くようなことがあれば、物価下落が起点となって消費を先送りさせたり、企業業績を悪化させることなどによって実体経済を下振れさせ、それがインフレ予想の下振れを伴いながら、相乗的にさらなる物価の下振れに繋がるという、いわゆるデフレスパイラルのリスクが高まることになります。』

ということで、リスクについてのお話は下を見ている感はあるのですが、従来の流れもあって微妙にリスク認識が甘めな気がします。ただまあ甘めではあっても今回はそれなりにリスク認識を下方向に引き上げているので、須田さんちょっとハト寄りになったかねという感じです。


○後半は今日はスルーします

金融政策運営に関する話がその次にありまして、特オペ廃止に関する微妙にアレな説明とかもあるのですが、今日はスルー(後日でネタ採用予定)。それから後半が『3.中央銀行のバランスシートと金融政策』というお題でありまして、まーお話としては先日ご紹介した白塚さんのワーキングペーパーからバランスシート政策に関する話をコンパクトにまとめたような感じなのです。まー相変わらず中央銀行のバランスシート規模がどうのこうのという議論が多いようですが、白塚さんのWP読むのがめんどい方はこちらを読んで味噌という所ですな。

で、あと記者会見なのですけれども、前日の臨時政策決定会合の余波なのかどうか知らんが、金融政策に関する質問については質問がずれている感じで、あまり話が噛み合っておらず、読んでてあまり面白くなかった(不協和音ぶりを見るという意味では面白いですけど)です。


以下その他少々。

○上げ相場だけに短い所がドカドカ入っているのですが・・・・・

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0911.htm
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高
(2009年11月30日現在)

今回ですが、あたくしが手元集計した(ので正確性は保証致しませんが)ところ、残存2年以内の増加額が12797億円となりまして、久々に短い所がドカドカ入って来ましたでござるの巻。

まあ11月は基本的に上昇相場でしたから、短い方が入り易いというのはあったのですけれども、暫くの間割と2年以内の買入が減っていたのでほほーという感じでございます。そしてもう一つほほーと思ったのは今月償還を迎える5年42回と43回の増加額がそれぞれ3061億円と3142億円と思いっきり集中している事でありまして、これはまあ輪番期近債打ちこみ攻撃リターンズという事でございますわな。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba091203.htm

昨日の輪番オペ残存1年以内も平均落札が6.5毛甘というようなトンチキな結果になっておりますので、引き続き輪番を期近債のゴミ箱として利用されておられるような雰囲気がプンプン伝わって参ります。


○ECBですが

http://www.ecb.int/press/pressconf/2009/html/is091203.en.html
http://www.ecb.int/press/pr/date/2009/html/pr091203_1.en.html

読んでいる暇はあまり無かったので今日はスルーしますが、報道ベースを見ますと長めオペ系を削減ということですかそうですか、よー知らんが。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aj5mDEprxGr8













2009/12/03

お題「引き続き今回の臨時会合関連で主に市場雑感で恐縮」

色々とすっ飛ばしたネタは後日小出しにして参ります。頭の中では何となく整理してるのですが、いざ書くとなるとまだそこまで・・・・なんですけど、書くと頭の整理に結構役立つんですよね(^^)。

○短期ゾーンのレートが早速低下しやがったでござるの巻

今般のオペの効果に関してあたくし昨日は「まあ少々時間を掛けて短い所のレートがベタベタ下がって来る」と申し上げたのですが、昨日はあっさりとレートが色々と低下致しまして、まあ初日は順調な滑り出しとなりました。

昨日実施された資金供給オペは軒並み0.10%足切りまで低下(ここのところのターム物資金供給オペは概ね足切り0.13%)致しまして、GCレートも0.11%近辺(多分最後は0.105-0.11)に低下(ここもとは0.15近辺で推移)しましたという流れになりました。で、昨日入札が実施された3か月TBは前場引け時点で0.12%が業者間で買われまして、こりゃ12割れですなと言ってたら案の定平均と足切りが0.1169%/0.1192%となりまして、0.12%を割り込む結果(ここもとは0.15%ちょっと乗せ位での推移)と、きっちりとレートが低下しました。

んでもってTIBORはリファレンスバンクが空気を読んで呈示レートを下げたようで(^^)こちらもご案内の通りレートが2つくらい下がりまして、朝方は前日引け後の流れでユーロ円金先では4甘だの叩いていたのですが、その辺りの動きを見てあっさり味で昨日の引けまで戻っているのがチャーミング。

ちなみに、前日の引け時点では5bpレートが低下するんじゃねえのかという勢いで債券市場方面の短めの所が盛り上がっておりましたので、2年ゾーンの引けとかは1毛甘になっているのですが、水準的には0.175%(2年287回のBB引値)と、月曜日には1年ゾーンの金利水準だった所までさっくり低下しているので、これまた水準感としてはいい感じだと思うのですけどね。

・・・・ということで、時間を掛けて低下するでしょとか申し上げましたが、2年くらいまでの金利がさっくり低下というお洒落な結果になりましてどうもすいませ、って謝罪はしますが賠償は受け付けませんので悪しからず(^^)。


○怪我の功名と資金需給タイミングの合わせ技でしたが

昨日の資金供給オペオファー一覧

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of091202.htm

即日で共通担保1兆円打ちこみということで、早速メディアが飛びつくでござるの巻。これは一例。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091202-00000513-san-bus_all

『決定翌日から1兆円規模の供給を行うことで、政府と一体となり、デフレ克服に当たる姿勢を鮮明にした。』(上記URLより)

えーっとですな、昨日は朝の時点でノーオペですと当座預金残高が前日比1兆円ほど減る見込みだったので、実際問題としてはこの即日供給って普通の供給っちゃあ普通の供給だったんですな。まあ札の集まり具合から勘案すると1兆円出さなくても大丈夫だったかも知れませんけどね。

では何で昨日はそういう資金需給になったかと申しますと、一昨日の13時に実施された2日スタートの資金供給オペがこのような素敵な結果になっていたからです(下の2本が該当する)。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba091201.htm

そこに『応札レート(貸付利率)0.09%以下は不採用としました。』ってありますように、金融緩和政策が出ると思われる決定会合を前にして、まあ別に金もいらねえから間違って利下げでもあったりするとコトなので10bpよりも下で応札しようという人達が続出して、昨日は2日スタートの共通担保オペが合計で1兆円ほど未達になった訳ですな。

ということで、昨日の即日1兆円はその穴埋めでありまして、それが何より証拠には昨日の当座預金残高特に増えておりませんえんなのれす。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jx091202.htm

んでもって、その後9時半にはスポネの買現先がいきなり2兆5000億円なんぞに増額されてこれまた「おお!」というような数字なのですが、うち1兆円は即日オペのロール分ですし、まあ(詳しく計算してませんが)4日の資金需給的にはこれだけ打っても自然体オペだったりするようですので、惜しくも数字の豪華さほどの豪華オペでは無かったでござるの巻。

オペに関しての精密さは天下無双モードの金融市場局調節担当課でありますので、資金需給的に一発でどどーんとオペが打てるようなタイミングを利用し、ついでに1日のオペ未達も存分に利用して、見た目インパクトのあるオペ打ちこみに昨日は成功しましたねってえ所ですな。

・・・・と、持ち上げてるんだか落としてるんだか判らん話をしていますけれども(^^)、昨日は当日ベースの当座預金残高が前日比増えない資金需給であったにも関わらず、オペレーションの見た目が参加者の心理に影響を与えてくれたのか、GC市場あたりでは「急に資金が出たので」状態になりまして(つまりここもと出し渋っていたのか本当に出さないでいたのか知らんが、GCで微妙に資金の出が渋めだったのが一転して)GCレートが低下(まあ昨日の時点で決定会合結果公表後には12くらいになっていましたが)して0.105-0.11辺りに低下したでござるの巻になりましたし、TIBORも何か知らんが2つも下がりましたし、誠に結構なアナウンスメント効果(口の悪い言い方をすればプラシーボ効果)となりましたですな、はい。


○ということでハッタリも重要ということですかな

まあ綺麗に言えば「市場の期待を安定化させる」ということになるのですけれども、自然体オペであっても見せ方さえ上手ければ、最初の効果が出る訳でして、その後はバンドワゴン効果というか自己実現というか、まあそういう流れが発生して勝手に市場が誘導されるという事もアリエールというのを実演したのが昨日の相場。

つまり、どこぞの福井の俊ちゃんのように輪番を1円も増やさないで短期オペだけで堂々の当座預金残高目標30兆円を実施しても、意味があるような顔をしていると意味があったのか無かったのか良く判らんけど、結果としては効果があったかのような事も起こる訳でして、この辺りの匙加減っていうのは本当に難しいというか永遠の課題になるんでしょうね。

結局のところ、金融市場にしたって実体経済にしたって、「マインド」「期待」という訳のわからんものを相手にしなきゃいけませんし、鰯の頭も信心だったり、本当は重要な変化なのにその時は誰も気がつかないとか、まーいろんなケースがあるので難しいですなあと改めて思った一昨日昨日の市場雑感なのでした。



○まあターム物金利押し下げならGCを低位安定させましょうね

でまた話を戻すと、GCも下がってTBも下がってということで、ターム物金利はさっくりと低下してくれたのですけれども、小見出しの通りでありまして、短国とかのレートってGCが不安定だったり高止まりしてたりすると毎週5.7兆円の豪快な発行がある3か月TB(そのほかに2、6、12か月のTBがありますし)の流通市場における証券ディーラーの在庫保有コストが上昇しちゃいまして、結果として一番流動性のある短期ゾーンのターム物金利であるところの3か月TB金利がサガランチ会長になるのはご案内の通り。

つーことでですな、今後のオペはGCを低位安定させるのが重要ですねという事になるので、3か月の新型オペ単体だと足元のGCが安定するのか微妙な所ですが、今の市場環境だとショートファンディングに傾いている部分にしっかりスポネ現先オペで供給を行いつつ、タームのオペの金利が足切り0.10%で安定するようにしておくと、徐々にショートファンディングも軽くなってきて益々レートが安定するという図になりそうですな。

まあ後はオペの規模をあまり減らさない形で当座預金残高が徐々に増えるようにする(あんまり派手に増やさなくても良い話だと思う)ような感じで行って、普通のオペでも0.10%というのが定着してくるとそんなに無理無理な供給をしなくてもターム物金利は自然体で落ち着くような気がしますけど、気のせいかもしれませんので念の為(^^)。


ところで、話はまたまたワープするのですが、「日米の短期金利差がどうのこうの」と言って円LIBOOR3か月金利と米ドルLIBOR3か月金利の比較をして「金利差が逆転してるから円高ドル安」という話って最近妙に良く言われるのですが、そもそもLIBOR金利自体が資金取引という観点からするとバーチャルにも程がある金利で、別にそのレートで調達運用できるかというとそんなこたあ無いという話ですので、ドルキャリーがどうのこうのというのも変な話ですわな。まあこれもまた鰯の頭も信心から状態なのでしょうけれども・・・・



○総裁会見とか須田さんの講演とか(詳しくは明日)

という市場雑感を書いているうちに時間が無くなったのと、昨日は市況をおっかけつつあちこちの書き物を読んだりしてるだけで精一杯(というか全部読めてない)でしたので、まあURLだけ置いておきますね。

白川総裁会見
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0912b.pdf

須田審議委員講演
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko0912a.pdf

白川総裁の会見では本石町日記さんが指摘していたように、量的緩和とかターム物金利の引き下げだのという話が出ておりましたし、今回もまた説明が大変に丁寧。で、従来の「説明は丁寧だけど身も蓋もない言い方」よりは踏みこんだ言い方になっていますねという感じ。

あと、為替市場に関する話というのは従来はひたすら避けて通っていましたけど、今回は円高傾向に関する懸念成分も入っていまして、まあ主要国と言われる国で中央銀行が為替でどうのこうのするのはよーやらんというのがこれまでのお作法っぽかった(だからSNBの為替介入攻撃は評判悪かった)のですが、最近は為替に関する中銀のエライ人の言及も増えているのですから、コメントするのもヨロシという感じですかね。


あと、須田さんの講演は超斜め読みしかしてませんけど、従来よりも結構ハト寄りになったような気がせんでもない、気のせいかもしれないので精読したらこの部分変わるかもしれません、悪しからず。

#水野審議委員5年間お疲れさまでした♪






2009/12/02

お題「臨時決定会合あれこれ」

今朝の公共放送ニュースで早速「日銀に一段の対応求める声も」と出ていてニヤニヤ。

#ところでドル安で商品価格上昇して株式市場ヒャッハーとかやってる米国はインフレ懸念でやっぱり早期引き締め復活のリスク無視なのか??


○決定内容どうのこうのの前にもうアホかと馬鹿かと

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0912a.htm
金融政策決定会合の臨時招集について

これがリリースされたのが午前11時1分くらいでして、そのリリースのタイミングが絶望的に悪いのがもうアホかと馬鹿かという次第。10年国債入札の前場引けに緩和決定が予想される決定会合の臨時召集のリリースというのは酷過ぎですわな。

まあそれだけで債券市場の中の人はご理解頂けると存じますが、中の人じゃない方にも判るようにご説明いたしますと・・・・・

http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/nyusatu/2009/offer056.htm

こちらにありますように、昨日は10年国債の入札が2.2兆円実施されまして、この入札の締め切り時間が正午なのですな。で、国債入札というのは、投資家が直接入札に参加する分もありますが、基本的には証券会社などが顧客需要やら何やらを勘案して「今回の入札はいくら落札するか」って感じで正午直前に札を入れて、落札(ただし入札だから読みを外して空振りになったり入り過ぎたりする事もあります)して、ある程度在庫を抱えつつ顧客(機関投資家)の売買(というか買いたい)ニーズに対応するという図式なんですな。

んでもって、当然ながら落札するということは(普通の場合)在庫を持つという事になるのですが、在庫を持つということはその商品在庫価格の変動リスクを抱える事になるので、落札直後に販売できる分は兎も角として、在庫抱えて走る分はある程度ヘッジを入れておかないといかん訳ですな。

で、入札が正午に実施ということは、前場の引け時点では証券会社としてはある程度(別に落札予定全額である必要は更々無いので念の為)は入札に対応するヘッジをしておかないと困る(短期国債みたいにヘッジ要らずのモノもありますが)ので、つまり前場の引け時点でマーケットは一方的にショートポジションに傾いているのですな。入札によってそのショートがカバーされてロングになるのですけど。

・・・ということでお判りかと存じますが、前場の債券先物取引が終了した11時になってノコノコこのようなリリースを行うと、ショートに傾いている所に買い材料を投入した事になるのですから、国債入札を高い値段の所で買い戻して、ドテンロングになってしまうという悲惨以外の何物でもない状況に追い込まれる(実際そうなった)のでありまして、プライマリーディーラー虐殺大会になってしまった訳ですな。

しかもショートが溜まっている中で買い材料をぶつけられ、そこでマーケットの気配が無い(売買やって無い時間ですから)中でカバーをしないといけないという状態ですから、通常の取引時間でこの材料をぶつけられた時よりも値が飛びやすくなりますし、入札が高くなってしまうので購入予定の投資家も涙目という状態になってしまい、まあ市場参加者の評判の悪い事悪い事。

普通に考えてこのリリースは寄り前、遅くとも10時位までには行って長期国債入札までに価格に織り込ませるべきでありまして、10年国債入札という国内債券市場での大イベントがある日の前場引け後にリリースとか市場に喧嘩を売ってるとしか思えないタイミングであります。

いやまあショート溜まった所で臨時会合のアナウンスして長期国債入札の金利を下げて金利低下を演出するという所まで狙って実施したのであれば、ある意味大したもんですので、その辺何考えてたのかは存じませんが、日銀のリリースによって虐殺状態になってしまった業者としては・・・・

「市場との対話」とか言ってるけどそんなものよりも「政治との対話」の方が重要なんでしょ、という認識になってしまった次第でございまして、まあ政策委員会の皆さまに置かれましては、当面「市場との対話」という文言を口にしない方が無難であると思われますのでご忠告させて頂きます。


つーことで、特に金利系の何とかストの皆様も当然ながらトレーダーが虐殺(特に虐殺度合いが厳しいのは大量落札をする大手業者になりますわな)されているのを横で見ながらお仕事をしておりますので、昨日の決定に関する各社さんの解説レポートをちょっとだけ拝読しましたが、まあ罵倒成分が結構入ったレポートが多く、大変な相場だったなあと思わせてくれましたです、はい。


・・・・しまった、政策じゃない話で延々と書いてしまった(汗)。



○輪番増やすより今回のターム物誘導の方が金利には効くと思います

んでまあ決定会合実施の報道から色々な人の「今日は何が実施される」の予想が飛び交って、当日の午後の市場は最後の方には5bp位金利が下がるのを織り込むような勢いになっておりましたし、債券系の人は輪番拡大の予想とか、果ては外債購入とかの観測をする人もいたようでございましたが、結果はターム物誘導。

声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091201.pdf

わけわからん参考図表
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0912b.pdf

共通担保オペの指値方式という形になりましたという話
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0912a.pdf

で、この指値オペですけれども、会見によれば毎週8000億円のロットで0.1%の指値で実施となりますが、当然の如くオペ参加者は全員サービスレートの資金が欲しいとなりますから、オペ参加者の多くでその8000億円を分けるという事になりますわな。つまり結果としてはオペ参加者で均等に割り振られるので本店オペだったとしても1回1社辺り160億円の供給となるんですな。

8月27日現在の本店オペ先リスト(50社)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mos0908d.pdf

8月27日現在の全店オペ先リスト(159社)この後増えてます
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mos0908e.pdf

つーことで、まあこのオペそのものでは市場インパクトのある大手参加者が一回のオペで必要となるロットが全然確保できない事が予想されるのですけれども、あとは運用がどうなるかという話でありますな。

つまり、このオペで供給されるトータル10兆円(になるのだからたぶん連休とか無視すると13週間物で実施されるんでしょ)の供給が従来の共通担保オペのリプレースで実施されるのであれば、大手参加者的には「ロットが全然確保できないオペが残高ベースで10兆円増えてその分通常のオペが減りやがった」という話になるので、特にオイシイ話でも無いどころか却って困る位の話になりかねませんが、この10兆円が通常ベースの供給に乗っかって(3か月後には)当座預金残高が20兆円台前半になるというのであれば、まあ足元の資金が潤沢になるから足元のGCレポなどのレートも下がり易くなって、結果としてターム物のオペレートとかも下がると言う事になるでしょう。

その場合、まあドタ勘ですけどGCレートが0.11%あたりに張り付き、3か月TBが0.12位になって、1年ゾーンが0.14位になるというような感じになるんですかね。んでもってこのオペ自体は当分続くようでありますので、現在の政策金利が続くと言う前提であれば、そのあたりのレートがベタベタになって来ると2年とか3年辺りまでのレートも徐々に下がるのではないか・・・と言いたいのですが、昨日の債券市場では、大引けの時点では5bpくらいレートが下がるんじゃないか位の勢いで中短期ゾーンの価格形成をしていましたので(^^)、昨日の引けはあれはあれで2年くらいまで今回の政策効果を全部織り込んでしまったようなレートになっておりましたのはご愛嬌。


まあどうせ輪番を拡大してなんちゃって量的緩和をしても金利が下がるかと言えば何ちゃって量的緩和の部分で足元のGCがちと下がるかもしれないですねえという程度の話で、瞬間的な反応はともかくとして各種の金利が本当に下がるのかという事を考えますと、輪番拡大よりはターム物誘導の方が効くと思います。ただまあ一般ウケしないですし、ターム物誘導そのものも効いてくるのに少々時間が掛かる(1か月位かな?)のではないかと考えられます。

と、これだけ書きましたが、指値で実施した分、通常の競争入札分を減らしたりするとろくすっぽ意味がございませんので、その辺は運用次第だと大事な事なので繰り返して申し上げておきます。



○とりあえず10兆円に食いつきがあって良かったですね(棒読み)

昨日のネットでのニュース見てたら10兆円の文字がそこかしこにございまして、「10兆円の供給」ってわざわざ言って良かったですねという感じでしたが、何せ昨日の臨時会合に関してはタイミングが極悪であった事が証券会社の総スカンを食らっておりましたので、今朝になったら早速公共放送がこの有様。

http://www3.nhk.or.jp/news/t10014137781000.html
日銀に一段の対応求める声も

(;∀;)イイハナシダナー

まあ今回の公表文は本石町日記さんもこのように解説していますが(^^)、
http://hongokucho.exblog.jp/12425002/
『今日のステートメント、量的&緩和感を必死で醸し出そうとする言葉がちりばめられ、日銀文学的に読んでいて凄い疲れるのだが…。』

あたくしもさっき付けたURLの2つ目に軽くツッコミ(^^)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0912b.pdf

そこの『●新しい資金供給手段の概要』って所にこのような記載が。

『金利:超低金利・固定(0.1%)』

>超低金利
>超低金利
>超低金利

・・・・飲んでた紅茶を噴いたので謝罪と賠(ry

0.1%固定と書けば良い話だと思いますが何と言う涙ぐましいアピール・・・


んでまあ本石町日記さんの所で解説がありますので、それをご参考にという感じですが(手抜き)、一応まあ今回はさすがに量を出しそうな雰囲気だけは醸し出しているので、去年のいつぞやのような「出す出す詐欺」にならないようにして頂きとう存じます。まあ当座預金残高が増えるのを容認すると、結果として非不胎化介入のようなものが起きる事も(って財務省が介入しないと話が始まりませんが)あるかも知れませんですね。

というのは、一応総裁会見で「ターム物金利を下げる」「広義の量的緩和」(って白塚さんのレポートでの定義ですな)って話をしている事を真に受けて書いておるものでありまして、これが全部出す出す詐欺だと話は全然違ってくるので、結局のところ運用次第となるかと存じます。








2009/12/01

お題「今回の講演は結構ハト的な感じですけど・・・」

つーことで議事要旨とか月報とかスルーして総裁講演から。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0911g.htm

○景気見通しも今回は弱めのトーンに

『日本経済の現状と先行き』から。

『ただし、民間需要の増加は、各種対策の効果によって支えられている面が大きいと判断しています。このため、日本銀行では、わが国経済は持ち直しているものの、民間需要の自律的回復力はなお弱いと判断しています。』

と現状について言及した上で、先行きに関してはこれまた慎重。

『先行きについても、2010年度半ば頃までは、雇用・賃金面での調整圧力の残存などから、持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高いとみられます。』

で、この後が今回微妙に弱めの話になります。

『景気の現状や先行きを一言で表現しようとする場合、どのような言葉が最も相応しいかは、コミュニケーション上、常に頭を悩ます問題です。只今申し上げた「緩やかな持ち直し」という表現は、景気が悪化する局面ではなくなったものの、経済活動の水準はなお低く、先行きの回復テンポも平坦とはならないだろうという慎重な判断も込めて使っています。実際、来年春先前後には、内外の景気刺激策の効果の減衰に伴い、景気の勢いが一時的に鈍る可能性も否定できません。』

つまり良くないと。

『しかし、日本を含め先進国の当局が景気をサポートする姿勢を堅持していること、新興国の成長力が強いことなどを踏まえると、内外の景気回復の動きが途切れてしまう可能性は大きくないとみています。その後、来年度後半以降には、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及し、わが国の成長率が徐々に高まっていくという姿を想定しています。このような見方の背後にある世界経済の見通し自体は他の先進国の中央銀行と基本的に同様のものであり、日本銀行独自のものではありませんが、こうした見通しは不確実性が大きいことも認識しています。』

つまり外需頼みな上にうっかりどこかの中銀(ってFRBが第一候補ですが)が超低金利政策の是正とかおっぱじめ出すと終了という事でございますな(^^)。

『この点では、このところの急速な円高が回復途上の企業マインドに与えている影響、さらには先週末以降の国際金融面での動きが金融市場に影響を及ぼす可能性にも十分注意を払っています。中央銀行としては、何よりも予断を持つことなく経済の姿を点検していく姿勢が大事だと思っています。』

円高への言及キタコレ。


○デフレの話

その続きで物価の見通しに関して。

『先週発表された10月の消費者物価前年比は−2.2%と幾分縮小し、今後も前年の石油価格高騰の影響が薄れるため、来年初にかけて−1%程度まで縮小する可能性が高いと予想されます。問題はその先です。マクロ的な需給バランスの改善に伴い、下落幅は徐々に縮小していくと見込まれますが、経済の持ち直しテンポが緩やかなものに止まるとすれば、物価の下落圧力もある程度長期間にわたって残る可能性が大きいとみられます。』

ってまあ展望レポートに書いてあるのですけどね。

『このため、日本銀行は、10月末に公表した展望レポートの中で、物価について、下落幅を徐々に縮小させつつも、下落が2011年度まで続く可能性が高いという厳しい見通しを公表しました。政府は、先日、「持続的な物価下落という意味において緩やかなデフレ状況にある」との見解を示しましたが、10月末に示した日本銀行の物価に関する判断は、こうした政府の見解と同じ認識に立つものです。』

まあさよですな。で、その先に『5.デフレ問題への対応』というコーナーを用意してるのは、まあいつもの白川節だと「デフレというのは言葉の定義の問題がありましてうにゃうにゃ」という話になるのですけれども、今回はその余計な話をしないですんなりデフレ問題への対応という話になっているのはコミュニケーション的というかやかましい外野というか他市場というか、まあそういう人向けには結構なお話じゃないっすかねえ。

『ここで、政策運営との関連で、デフレ問題に対処する上での基本的な考え方について申し述べたいと思います。日本銀行は、日本経済が持続的な物価の下落状態、つまりデフレと呼ばれる状態から脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するという課題達成のために、先ほど申し述べたように、中央銀行として最大限の努力を行ってきましたし、今後もその方針を堅持することを明らかにしています。』

まあいつも余計なヘッジクローズを入れて話を台無しにする白川さんにしてはよろしゅうございますな。とは言いましても、その後はいつものそもそも論になってしまうのですけれども。

『まず、持続的な物価下落の根本には、経済全体の供給能力に比べて需要が弱いという基本的な要因が存在しています。今回の物価下落でも、その出発点は昨年秋以降の金融・経済活動の急速な収縮であり、その結果、需給バランスは大きく悪化しました。こうした状況を是正するには、設備投資や個人消費といった最終需要が持続的に拡大するような環境を整えることが必要です。』

『言い換えれば、政策運営面では、家計が将来の生活への安心感を持ち、企業も将来の成長に対する期待を持てるようにすることが重要です。同時に、企業サイドでも、米欧における行き過ぎたブームの再来はない以上、新しい時代の消費者ニーズに即した供給体制に転換していく経営努力が不可欠です。』

ということでまたそもそも論になるんですけど、そうは言いましてもじゃあ何をすんのかと言われましてもねえという所なんでしょうな。

『このように、デフレ問題に対応するためには、政策当局、民間経済主体それぞれによる粘り強い取り組みが必要であり、どうしてもある程度時間を要することになります。その間、物価の下落が原因となって経済活動に悪影響を及ぼし、これが更に物価の下落を引き起こすような事態、つまり、景気と物価の悪循環を引き起こさないようにすることも大事です。』

ということで、デフレスパイラル阻止という話で、その為には金融システムの安定化という話をしていますので、そーゆー意味で言えば次の緩和は金融システムの安定性確保の為にどうのこうのとか言う話を(理屈の上では)するんですかね。

『歴史を振り返りますと、物価の下落が経済活動の収縮を招き、景気と物価の悪循環をもたらした事例のほとんどは、銀行倒産などにより金融システムが著しく不安定化した時期、まさに金融が収縮していた時期に生じています。』

つーことですな。


○会見はヘッドライン見た時には微妙だったのですが

で、総裁会見の方なんですけど、ニュースベンダーのヘッドラインを見た時には何かまたいつもの「それは白川さんとして筋が通った話だが庭先論に見えてしまうので言い方を考えた方が良いのでは」的な感じだったのですが、後になって会見記事を見るとそうでもないという不思議ちゃんな会見ですね。

一問一答@ロイター日本語版
http://jp.reuters.com/article/economicIndicatorsAndComments/idJPnTK035341820091130

会見記事@ブルームバーグ
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=am3B0.YRf54I

以下ロイターのニュースから引用します。

『──先ほど、金融市場が再び混乱すれば、果敢に行動すると言っていたが、国債買い入れ増額も選択肢に入るのか。その際に障害になるかもしれない銀行券ルールがあるが、それに抵触する可能性をどう考えるか。為替介入は行われていないが、日銀として、市場介入ではないが、外債購入が選択肢になるのか。』

『「一問目だが、先ほど言ったことに尽きている。日銀としては、その時々の金融経済情勢を踏まえて、最適の政策を常に考えていく。ふたつめだが、障害との発言があったが、我々自身は資金を潤沢に供給していく、そのためにどういうふうな調節の枠組みが最も適切かを常に考えている。それを将来にわたって考えている。その障害は、日銀が定めている障害ではなく、中央銀行に課せられた使命である円滑な金融調節を行っていくうえで最適なやり方を追及していくということ。何か、それ以外に障害があるということではない。中央銀行の使命遂行ということに照らして判断をしていくということ。3つめの為替介入だが、介入は政府の責任でなされるもので、日銀がコメントすることは適切でない。為替市場介入の代わりとして外債購入を考えたらどうかとの質問であるなら、それは日銀法で、為替レートの誘導ということでの外貨の買い入れは、政府が行うと法律に書いてあるので、日銀としては法律にしたがって行動する」』

ということで特に変な話をしてる訳ではないのですが、「介入は政府の責任」みたいなヘッドラインが打たれていたので、ヘッドライン打つ側としては「政府と日銀の不協和音」という図式がオイシイというのは相変わらずの展開になっているのかなあと思われます。まあ政府(というか対策も無しにデフレ宣言だけするどっかのカイワレお遍路)がマジメにやっとんのかゴルァという状態なのがよろしく無い訳ですが。

調節上の技術的な話に限定してしまえば、いわゆる銀行券ルールに関してはまあ数年のスパンで何となくそうなってりゃ良いって話で、必要な時にホイホイ売却しても無問題(とFOMCの一部様では仰せですが)というのであればもっと柔軟に増やしたり減らしたりできるのでしょうが、まあ普通に債券市場でそれをやると金利が素敵に乱高下するリスクがでかいのはたぶんちゃんとした債券市場のある国では共通の事象かと思われます(実際にやってみないと判らんけど)ので、何かタガを嵌めておかないとという程度の話っぽいのですけどね。そもそもまだ余裕ありますし。


『──鳩山総理との会談について、官房長官が量的緩和含めて意見交換すると言っているが。これも話題になるのか。ドバイショックが与える日本の金融システムへの影響どうみるか。』


『「前者だが、日銀は現在、潤沢に資金供給しており、金融市場の安定に努めている。金融市場は生き物なので、市場の安定確保のためにどういうやり方がよいかは、常に考えていきたいと思う。今、日銀は量的に潤沢に資金を供給する姿勢にある。(ドバイの件は引用割愛)』

この件につきましてはいつもの対政府悪態コーナーに続く(^^)。


○いつものように悪態コーナー

何だかねという感じなんですけど。

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnTK035287220091130
UPDATE1: 首相と日銀総裁の会談、経済認識・量的緩和を含めた意見交換=官房長官
2009年 11月 30日 12:13 JST

『[東京 30日 ロイター] 平野博文官房長官は30日午前の会見で、鳩山由紀夫首相と白川方明日銀総裁が近く会談することを正式に認めた上で、会談内容について、経済認識の違いや日銀の量的緩和政策に対する見解を含めての意見交換になると指摘した。』

・・・・量的緩和政策を求めるとの事ですが、既に資金供給そのものは実施している訳でして、金利付きなんちゃって量的緩和政策でも実行しろとでも言うのでございましょうか。それは実行しても目くらましにしか成らないのですけれども、(量を増やしても短期金融市場と日銀当座預金の中で金がグルグル回っているだけでは量単体での効果は大してというか殆ど無いでしょ)政府様におかれましてはその程度のご認識でいらっしゃるのでございましょうかと。

分かってて言ってるんだか単に不勉強なのか存じませんが、こーゆーの見せられますと金融市場的には脱力モードになるんですけど、まあ金融政策の細かい話に詳しく無い人は別なんですかね、よー知らんが。まあ政府が日銀にマルナゲータ状態という風に見えている内はどうにもこうにもという感じでございます。

#どうしても日銀に国債買入増やして欲しけりゃ政府がジャンジャン国債発行すれば資金需給上国債買入(目先は長期国債じゃなくて短期国債になるかもしれないけど)は増やさざるを得なくなると思いますがどうっすか(^^)


これもまたツッコミどころ満載の記事。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091129-OYT1T00669.htm
「埋蔵金」で税外収入10兆円目標…行政刷新相

以下上記記事より引用

 仙谷行政刷新相は29日のテレビ朝日の番組で、2010年度予算編成について、「埋蔵金をどこまで掘り出してくるかだ。目標値は10兆円だ」と述べ、埋蔵金と呼ばれる特別会計の剰余金を取り崩すなどにより、10兆円規模の税外収入を確保する必要があるとする考えを明らかにした。

 10年度の税収が38兆円前後と想定される中、政府の方針通りに新規国債発行を44兆円以下に抑制しながら92兆円前後の予算を確保するには、10兆円程度の税外収入が必要となる計算だ。(以下引用割愛)

(2009年11月29日20時30分 読売新聞)

・・・・・えーっとですね、色々と突っ込みたくなるのですが、まず第1に埋蔵金の収入は1回使ったらそれでオシマイですので、単年度の補正予算で一発物の対策を打つというのに使うのは結構ですけれども、本予算という複数年に渡って継続する種類のモノに使って翌々年度以降どうするつもりなのかという話がありますわな。

それに、10兆円という数字が出てますが、その分って別に現金で金庫に寝ている訳でも甕の中に入っている訳でもなく、もし基金のような形で持っているのであれば国債などを購入してたり日銀の対政府現先になっていたりすると思うのでありまして、まあ対政府現先は良いですけど、国債購入している分を召し上げて財源にしたら国債需給という意味では結局同じ話。

ということで、どう見ても来年度は一般会計分を特別会計にツケ回しをして表面上ヤリクリするだけの話ですなあというのが見え見えなのですけれども、何で相変わらずこの話になるんだかという所でありまする。