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2009/11/30

お題「FOMC議事要旨を読みつつ雑感」

魁皇関の「年6場所8勝7敗」大記録(^^)には素直に驚き。

さてドル安(ドバイがどうのこうのでユーロがその後下がっているようでございますけどね)進行で原因にFOMC議事要旨と言われてたりするので、シロートですけど微妙にその辺のネタでも。

そのまあ問題のFOMC議事要旨はこちら。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20091104.htm

○秩序だったドル安云々の所ですけど

事実上のドル安容認だとか言われている部分は第32パラグラフにございまして、その部分を引用致しましょう。

『Stronger foreign economic activity, especially in Asia, as well as the partial reversal this year of the dollar's appreciation during the latter part of 2008, was providing support to U.S. exports. Participants noted that the recent fall in the foreign exchange value of the dollar had been orderly and appeared to reflect an unwinding of safe-haven demand in light of the recovery in financial market conditions this year, but that any tendency for dollar depreciation to intensify or to put significant upward pressure on inflation would bear close watching.』

ということで、最近のorderlyおよびドル資産逃避の巻き戻しに伴うドル安は金融市場の改善のサポートになっているという話はしているのですけれども、but以下にありますように、さらなるドル安は顕著なインフレ上昇圧力に繋がると仰せです(最後の一文割愛)。

んでもって次のパラグラフでもドル安によるインフレ拡大のリスクについて話をしている委員がいるという部分がございます。

『However, some participants noted that the recent rise in the prices of oil and other commodities, as well as increases in import prices stemming from the decline in the foreign exchange value of the dollar, could boost inflation pressures.』

ということで、このFOMC議事要旨のここら辺をネタにしてドル安ヒャッハーと言ってドル売りをするのはちとさすがに調子に乗り過ぎではないかという感は致します。ドル安のやり過ぎでインフレ爆裂となるのはどう見ても米国的には洒落にならんでしょうし。やり過ぎるとカウンターが飛んでくるんでしょうな。


○つーかこれってBOEの方がよっぽど露骨な発言をしてるのですが

先日ご紹介しましたけど、BOEは最近「ポンド安が景気回復をサポート」という指摘を堂々と行っているのですが、別にそれ自体はポンド売りのネタにされなかった次第でありまして、ドル安に関して言及したとは言え、ドル安が進行し過ぎるとインフレ圧力という指摘をして一応ヘッジを入れているのにヒャッハー扱いになるのは微妙に変は変。

ちなみにBOE云々はこちらの第2パラグラフの最後の辺りです、念の為。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/inflationreport/irspnote111109.pdf

ただまあ米国の場合はそれまでが「緩和政策を割と早く終了させるのではないか」というような思惑もあった(そもそもその観測が変なのだが)ので、そのイメージがここもとの連銀幹部発言などで見事に消えるという動きになったからこそのドル安ヒャッハーというのはございますので、そこら辺を勘案しないといかんのですが、まあFOMCでドル安容認だからどうのこうのというのはちと調子に乗り過ぎだと思う。

というか、金利の引き上げ順序って米国→欧州→英国→日本というのがコンセンサスになっているので、金利差でドル売り円買いだというのはそりゃちょっと微妙でして、実質金利差がどうのこうのというような話まで持って来ると話としてはそうですなというのが厭債害債さんの所にありますので(といきなり人のふんどし)ご確認ありたし。
http://ensaigaisai.at.webry.info/200911/article_10.html

で、確かトリシェもユーロ水準の経済に与える影響に関する発言をしていたと思うのですが、英国にしろ米国にしろ欧州にしろそれなりに為替に対して(さすがに具体的水準の話はしませんけど、今回ご紹介してるみたいな為替の経済に与える影響の話をしてますわな)発言をしているのですが、一方で日銀は為替介入権限が無いからということでその手の発言は控えてます(というか金融政策を為替に割り当てたくないから発言しないんじゃないかと思われますが、実際は為替ぶれた時に金融政策動く事多かったりするんですけどね)し、政府は先週末にやっと何か言ってましたが、それまでは何かのんびりとした発言ばっかで、どうも為替に関してやられっ放しという感じで甚だ遺憾とは思うのであります。

まあそんな感じで日本があまり為替の話をしない辺りとか、そもそも市場がドル安をやりたがっている所だったので、ドル安円高にする丁度良いネタにされたという感じでしょ。先週ドル円がぶっ飛んだ時間って東京の昼休みとか朝8時半過ぎとか如何にも仕掛けをしてます的なタイミングでしたしね。


○金融政策の出口云々

ところで話は変わりまして、第4パラグラフでは出口政策がどうのこうのという話をしているのですが、そこでは相変わらず豪快な論議が。

『As part of the Committee's strategy for eventual exit from the period of extraordinary policy accommodation, several participants thought that asset sales could be a useful tool to reduce the size of the Federal Reserve's balance sheet and lower the level of reserve balances, either prior to or concurrently with increasing the policy rate.』

利上げと同時またはそれに先行して資産売却を行うべし言う人が複数いるとはおそロシア。

『In their view, such sales would help reinforce the effectiveness of paying interest on excess reserves as an instrument for firming policy at the appropriate time and would help quicken the restoration of a balance sheet composition in which Treasury securities were the predominant asset.』

さすがに売るのは財務省証券のようですが、それにしても利上げ前にトレジャリー売却とかちょっと無茶だと思うのですけど・・・・と思ったらさすがに反対意見も。

『Other participants had reservations about asset sales--especially in advance of a decision to raise policy interest rates--and noted that such sales might elicit sharp increases in longer-term interest rates that could undermine attainment of the Committee's goals. Furthermore, they believed that other reserve management tools such as reverse RPs and term deposits would likely be sufficient to implement an appropriate exit strategy and that assets could be allowed to run off over time, reflecting prepayments and the maturation of issues.』

つーことで、財務省証券を売却したら長期金利が爆騰してエライコッチャになるという話をしていまして、他の手段(RPsはリバースレポだと思うのですが、term depositsって何でしたっけ?MMF向けの資金吸収の話かしら?)で代替できるからそれはやらん方が良いという話ですな。

ただまあ財務省証券売却攻撃を未だに言う人がいるのはちと如何なものかという感じですけれども、さっき引用して第33パラグラフの中でこんな話をしている人もいるんですな。インフレリスクが長期的な視点では上の方にあるという話をしている意見から引用します。

『But others felt that risks were tilted to the upside over a longer horizon, because of the possibility that inflation expectations could rise as a result of the public's concerns about extraordinary monetary policy stimulus and large federal budget deficits.』

異例な金融緩和政策と財政の大幅な拡大で一般のインフレ期待が上昇する可能性が長期的に見るとあるとな。

『Moreover, these participants noted that banks might seek to reduce appreciably their excess reserves as the economy improves by purchasing securities or by easing credit standards and expanding their lending substantially. Such a development, if not offset by Federal Reserve actions, could give additional impetus to spending and, potentially, to actual and expected inflation. 』

というような話をしている人がいるので、そんな話になるという事なのでしょうな。


○米国の金融環境も二局化とな

第27パラグラフで金融環境の話をしています。政策的インプリケーションがどうのこうのというよりは、日本と同じですなあと思ったので引用するの巻。

金融環境は改善しているのですけれども、銀行貸出は特に商業向けローンが不良債権化し続けている事もあって貸出態度が厳しくなっているという話の後に二極化の話が。

『Participants noted that the dichotomy between significant easing of conditions in capital markets and continuing tight conditions in the banking sector implied that financing conditions differed for large and small firms.』

『Large firms with access to debt and equity markets for financing had relatively little difficulty in obtaining credit and in many cases also had high levels of retained earnings with which to fund their operations and investment. In contrast, smaller firms, which tend to be more dependent on commercial banks for financing, reportedly faced substantial constraints in their access to credit. Limited credit availability, along with weak aggregate demand, was viewed as likely to restrain hiring at small businesses, which are normally a source of employment growth in recoveries.』

ということで、銀行貸出態度の厳しさが続く中だと、金融市場に直接アクセスできない企業業績の回復が遅れるでしょうという認識を示しています。ただまあ示すだけでじゃあ何をするという話は特に無い(というか手の打ちようがないというか)のですけれども、そこは敢えて突っ込まないのが良いのかもしれませんね。


○時間が無くなったのでその他FOMCネタメモ

あと読んでて思った事を箇条書きに(明日ネタが無かったら続くかもしれないけど)。

・景気回復をしても雇用環境は良くならないという見通しを示す
・で、雇用環境が悪い件に関しては見通し的に良くないという点と、消費の回復が遅れるという点について懸念と結構しつこく言及
・商業不動産の下振れリスク問題に関しては銀行経営にも繋がるので絶賛警戒
・その話も繰り返して言及されている。住宅価格の底打ち傾向に対して商業用不動産の先行き見通しは厳しい

で、厭債害債さんのエントリーでありました向こう2年間緩和でしょという部分を引用します。第34パラグラフから。

『Still, most members projected that over the next couple of years, the unemployment rate would remain quite elevated and the level of inflation would remain below rates consistent over the longer run with the Federal Reserve's objectives.』

この部分は前回までの議事要旨には無かったものでして、まあ経済見通しだから上振れしたらさっくり反故になるものですけれども、こうやってやや市場の期待をオーバーライドするような時間軸のようなものを見せるような形でわざわざ出してくるのは「ほっほー」という感じではございます。

ということで経済見通しに関する所は全然ご紹介できなくて正直スマンカッタ。











2009/11/27

お題「各種大ネタをスルーして昨日の続き」

ドバイワールドと聞くと競馬のレースが最初に連想されるあたくしはアホですかそうですか。

#何かモーサテ様があまり「円高が大変だ」という話をしない所に却っていやーなものを感じるのですけれども気のせいかな?

FOMC議事要旨とか、その前の先週のバーナンキ講演とか(バーナンキ講演は実はせっせと読んだのですけど)、まー目先相場のネタになっているものがゴロゴロあるのですが、その辺は華麗にスルー(週末の宿題)して昨日の続きから。

○なおも昨日の訂正

付利ネタでまたまた変な事書いていたようですので訂正。昨日は当座預金付利の外側に資産管理系の信託銀行という話をしたのですれども、実際には資産管理系の信託銀行もほんのちょっとですけれども所要準備があるらしいので、全く付利されないような書き方したのはまたまた間違い。間違いばかり書いてどうもすいませんm(__)m

まあここで言いたかったのは信託勘定(と生損保)は付利の外側にいるという話だったので資産管理専業信託の話は余計でした。また詳しくは勉強したいと思いますが、最早別のレベルの勉強になりますので成果物は特にお出ししないような気がします(汗)。


○山口副総裁講演から、マクロプルーデンスと金融機関の課題と

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko0911f.pdf

まずはマクロプルーデンスの部分から。

『今回の国際金融危機の本質は、信用バブルの生成と崩壊と言ってよいと思います。その原因について、これまで様々なことが指摘されてきましたが、私がとくに指摘したいのは次の3点です。』

んでもって最初の2つは良好なマクロ環境の継続によるリスクテイクの過剰と金融機関行動の行き過ぎという話ですがそこはスルーしまして3点目に注目したあたくし。

『第3に、危機に先立つ信用バブルの生成に対して、米欧の政策当局や監督当局の対応が遅れ気味であったこともまた、危機を増幅した可能性を否定できません。』

ほほー。

『その一つの理由は、保険会社やモノライン、ヘッジファンドなどのいわゆるシャドーバンキングが拡大し、リスクの所在と規模を、政策当局や監督当局が的確に把握することが難しくなったことです。これが、最近の海外における規制・監督体制見直しの一つの背景ともなっています。』

今後の展開を考える上で、このあたりの規制監督の動きが投資家行動にどのような影響を与えるのか(どうせ貪欲系の人達はまたその規制をすり抜ける悪知恵を編み出すのですけど、それがまた変な所に変な歪みやバブルを発生させる訳でして)という事には注意をせにゃあなあと思うのであります。

『また、金融政策面について言えば、信用バブルの抑制に関連して、中央銀行の間でも資産価格への対応のあり方を含め考え方が整理されていなかったことが挙げられます。』

FEDビュー批判キタコレ。

『すなわち、「金融政策は資産価格には割り当てられるべきでなく、バブルが崩壊した後に積極的な金融緩和を行うことによって対応すべき」との立場もあれば、「バブル崩壊後に発生する経済への悪影響の大きさを考えると、金融政策はバブルの発生を回避することに努めるべき」との立場もありました。要すれば、マクロのプルーデンスを如何に確保していくかに関して、各国中央銀行間で、コンセンサスが形成されていなかったということです。』

『今回の金融危機を踏まえ、中央銀行の間では、マクロプルーデンスの観点に立ち、実体経済と金融システムの連関を視野に入れて、金融システム全体を分析、評価することの重要性が共通に認識されるようになっています。金融政策面における資産価格への対応のあり方についても、今後議論がさらに深められていくものと思います。』

どう見てもFEDビュー敗れたりとの発言です本当にカムサハムニダ。

・・・・でですね、本当にFEDビュー敗れたりというコンセンサスなのかという点については、そうじゃなさそうにも思える次第で、目先のFRBの低金利長期化表明を見てると資産価格上昇って何でしたっけという感じも受けるのであります次第ですな。まー本当にコンセンサスがBISビューと言われる系列で揃ってくるという話になると、フォワードルッキング的な緩和終了という流れが生まれやすくなるという話になって、主要国中銀のインフレ抑制的なバイアスが従来よりも掛かりやすくなる(日本の場合はインフレどころの騒ぎでは無いので別に変わらんのですが)のかなあとも思います(けどFRB見てるとそうでもなさそうですけどね)。


んでもって金融機関経営の課題に関して。

『以下では、日本銀行が年2回作成・公表している『金融システムレポート』の中の分析結果も踏まえながら、わが国金融機関経営の特徴と課題について、お話しします。』

ということで、まあ金融システムレポートは熟読すべきだと思います。前半にあります現状認識の部分はこれまた華麗にスルーしちゃいまして、我が国金融機関経営の課題の部分から引用します。


『第1の課題は、金融機関の収益性の低さです。』

・・・・またどこかの金融担当大臣が聞いたら湯気を立てそうな話を(^^)。

で、我が国の金融機関の収益が低い水準にとどまっているという説明をした後、その原因はどこにあるかという事についてこのように。

『こうした低収益の最大の理由は、資金利益の低さです。』

いやもう全てそこに帰着という感じっすよね。まー皆様既にご承知かと思いますけど具体的にはこんな感じで。

『資金利益の構成要素の一つである預貸利鞘(貸出金利と預金金利の差)について過去20年間の推移をみると、米銀の平均が5〜6%であるのに対し、わが国金融機関は平均2%弱にとどまります。このようなわが国金融機関の低利鞘の背景には、多くの金融機関が、長期安定的な取引関係の獲得を目指して、比較的同質の商業銀行業務を展開しつつ、基本的には金利競争に終始してきていることが挙げられます。』

そうは言ってもそもそも規制金利の上に店舗規制とか規制ガチガチ時代が長かった(何せあたくしが社会人になった頃も堂々の規制金利に出店規制でしたからねえ、って歳がばれますかそうですか)んですから銀行のせいだけにされても困るんですけど正直言って。

という愚痴は兎も角として、ここおよびこの先の説明で華麗にスルーされていますけれども、公的金融の存在というのがこれまた貸出利鞘を圧迫するのでありまして、「リスクに見合った貸出金利」などというのは絵に描いた餅にも程がある状況が続いているのでございますわな(って話は金融システムレポートでもその辺りに対する指摘があったりするようですけれども)。こんな中でゆうちょ銀行が貸出業務に本格的に突撃とかいう話になってしまうと益々預貸利鞘の縮小に拍車がかかるでござるの巻となりそうな気がするんですよね。

『要すれば、金融機関ごとのビジネスモデルの違いが殆ど観察されないということです。貸出市場を分析してみると、わが国では、市場規模の大きい地域ほど、多くの金融機関が参入し、競争が激化する傾向がみられます。これに対して、米国市場では、市場規模と市場の集中度の間に有意な相関はみられず、金融機関の間で一定の棲み分けが生まれている可能性が示唆されています。何故このような棲み分けができているのか、理由は明確ではありませんが、不毛な金利競争を避けることが可能となっていることは確かです。』

まあそう言い切られるとその通りなのですけれども、じゃあ金融機関どうしろと言われると過剰ともいえるサービスを強いられる上に公的金融などが不毛な金利競争に割って入って来るわ、銀行が儲けるのはケシカラン批判みたいなのは厳然としてあるわ(まあ過去の行いに問題があった点もあるからそこはある程度言われるの仕方ない面はあるけど)と、「いやそうおっしゃられましても」という感じがするのは否めませんっすけどね。

ただまあ日銀がそういう問題意識を持っていても、今の金融担当大臣様があれでございますので、中々そーゆー風には行かないのではないかと思いますし、金融機関監督という点で日銀と政府の齟齬が生じたりしてくるのはあまり良い話ではなさそうな気もしますがその辺どうなんでしょうかねえ。


で、もう一つの問題は持ち合いね。

『第2の課題は、収益が信用コストの増減や株価の騰落によって振れやすいことです。』

『とくに、先に述べたようにコアとなる収益が低水準にとどまるもとでは、一旦信用コストや株式減損が膨らむと、期間収益が直ちに赤字に陥る惧れが出てきます。実際、過去20年間における信用コストと株式関係純損失を合計してみると、コア業務純益を上回る規模に達した年が8年にも及んでいます。』

『このうち信用コストは、不良資産処理の完了とともに、水準が大分低下しましたが、2008年度は景気の悪化を受けて、再び増加に転じました。また、金融機関の政策投資株保有は、大手行では、2000年代初めの不良資産処理の過程でその残高をほぼ半減させたあと、その後はほぼ横這いが続いています。これは、金融機関と企業の株式持合い慣行が今なお継続していることを示唆すると同時に、現在の株式保有残高は、依然として金融機関収益の大きな変動要因であることを示しています。』

株式持合い問題キタコレ。

『これらの課題の克服は決して容易ではありませんが、金融機関には、わが国経済の活力を維持し、さらに向上させていくためにも、是非これを一つのチャレンジの機会と捉え、取り組みを強化していただきたいと思います。』

要するに「持ち合い株減らせやゴルァ!」と仰せなのですが、そうは言いましても我が国の状況としまして営業政策上の大問題として、株式を持たないと取引基盤の拡大が困難とかいうような話が厳然として存在する訳でありまして、そりゃまあ日銀様的には持ち合い株なんぞ減らせやという話だと思いますけれども、それがホイホイ出来るのであれば誰も苦労はしないのでありまして、そこまでの問題意識を持っているのであれば、(まあ情けない話ではありますが)制度的に金融機関(およびその子会社等)はトレーディング目的以外での株式保有を禁止する位の荒業を使って、そもそも論として持ち合いというものが存在しない位の意識改革を行わないとどうにもならんという感は致します。

ということで、問題点としての「資金収益の低さ」「株式持合い」というのはもうその通りとしか言いようがないのですが、日本経済の風土に根差した問題でもありますので、指摘するのは簡単なのですがじゃあどうするのよとなるとこれまた難しい話です。

まあ後の方でも似たような点の指摘が相次いでいるのでして、引用だけしておきますね。

『株式保有リスクの管理に関連して言えば、政策投資株を実際にどの程度保有し合うかは基本的に企業と金融機関のビジネス戦略に委ねられるものです。しかし、現在のわが国金融機関全体の株式リスク量は自己資本との対比でみて引き続き高水準にあり、このことを踏まえれば、個別の金融機関経営の健全性にとっても、またわが国金融システムの安定性にとっても、株式リスク量を着実に削減していくことが重要な課題であることは間違いありません。』

いやまあそれはそうなのですが先ほど申し上げた通りでして(汗)。

『わが国における金融機関経営上の問題の一つは、預金基盤を維持するためのコストと収益が見合っているかどうかという点です。24時間稼動し続けるATMなど、リテール金融には特有のコストアップ要因が伴います。その一方で、ミニマム・バランスを下回る決済性預金に対して手数料を取ることについては、顧客の理解が必ずしも得られる状況ではありません。コストと収益をどのようにバランスさせるかは、大きな経営判断ですが、金融機関として採算割れに陥る可能性だけは回避する必要があると思います。』

んな事言ったって採算割れ防ぐとか言ったら数万や数十万の預金って悉く採算割れている訳でして(ちなみに銀行の窓口で振り込みとかされるとこれまたあの手数料でも普通に大赤字のはずです。ATMだと良く判らんけど)、まあどうにもならんがなという感じですけれども。

というか採算取ろうとしだしたら金融担当大臣が(苦笑)。

『わが国の住宅ローンは、今回の金融危機にあっても着実に増加を続けています。ただ、問題はその採算性です。。私どもの分析によれば、わが国金融機関の住宅ローンの採算性は、競争激化を背景に、近年一貫して悪化しています。因みに、2003年度と2007年度に組成された住宅ローンについて、全融資期間を通じた採算性を現在価値ベースで比較してみると、この間に約6パーセント・ポイント悪化した計算となります。今後、貸し倒れ率が大きく上昇するようなことがあれば、一気に収益が悪化する可能性もなしとしません。住宅ローンの採算性についても、十分慎重に吟味していく必要があるように思います。』

・・・・・涙

ということで、まあ後半の金融機関経営の課題に関しては、「そりゃまあ仰る事はその通りですけれども、それが出来りゃ苦労せんのよ」という指摘が多うございまして、微妙にこうアレな部分があるのもさることながら、ここもとの金融担当大臣様のご意向とはだいぶ方向性が違う話になっている所にも微妙なものを感じる所はございますです、はい。

まーそれはともかくとして、ここで述べられている話の中でその気になると何とかなりそうな話は「持ち合い株式の削減」という所かと思います。このテーマが具体化してきた場合、金融機関の投資行動にも変化が起きる可能性がありますし、そもそも株式市場に与えるインパクトという面もあると思いますので、今後の流れをこっそりヲチしたいと存じます次第。


○その他少々

・人のふんどしですが

為替市場に関する厭債害債さんの考察
http://ensaigaisai.at.webry.info/200911/article_9.html

いつもながら勉強になります。まあ何か昨日のドル円とか昼休み時間にヒャッハー状態になって叩かれていた感じでして、まあ当局を試しに行く展開とか久々に見せられるのもナツカシヤという感じっすけどね。

為替がぶれるとまたまた日銀への期待も高まるの巻という所で、さてどうなるのでしょうという所です。

本石町日記さん
http://hongokucho.exblog.jp/12394340/

色々とネタありですが一々「ほほー」という感じ。あとCPオペに関するペーパーへのあたくしが書いたいちゃもんは今月10日と11日に書いているのでその辺をご参照ありたし。



・宿題リスト

積み残しの宿題が結構ありまして、BOEの議事要旨とかFOMC議事要旨とかもそうですが、昨日公表された30日の決定会合議事要旨も今日はスルーしちゃいましてどうもすいません。あと金融システムレポートもね。










2009/11/26

お題「昨日の訂正と続き/マクロプルーデンスとか(メモのみ、明日に続く)」

せっかく体を冬モードにしたのにまた暖かくなるんじゃねえゴルァ!!

○超過準備付利じゃなくて「だいたい所要準備以外付利」でした(大汗)

まずは昨日の訂正。

昨日あたくし超過準備付利に関して「準備預金非対象は関係ないですから」というような嘘八百を書いてしましましたのでここに謹んで訂正するとともに謝罪いたしますが賠償はしません。

補完当座預金制度の概要をご覧くださいませ。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/mok0810f.pdf

・日本銀行が受入れる当座預金および準備預り金(注)のうち、いわゆる「超過準備」(準備預金制度に基づく所要準備を超える金額)に利息を付す。(注)準備預金制度の適用対象となる先のうち、日本銀行と当座預金取引のない先から受入れる預り金。

・ 対象先は、@準備預金制度対象先、または、A準備預金制度対象先以外の日本銀行当座預金取引先の中で預貯金取扱金融機関、証券会社、証券金融会社もしくは短資会社である先。

(上記URLから、機種依存文字は原文ママで勘弁)

えーっとですな、つまり証券会社や短資会社などは準備預金非対象ですけれども付利されますという話ですな。良く考えたら証券や短資がコールやGCを10bp以下で叩き投げている動きって見たこと無いのですから冷静に考えたら当たり前なのですけれども、超過準備付利という言葉に自分で騙されてしまいました。アホでどうもすいませんm(__)m

で、その付利の外側にいる人って誰なのよという話ですが、預貯金取扱じゃない金融機関で証券と短資と証券金融以外って誰なのよと考えると、資産管理専業の信託銀行(日本マスタートラスト信託銀行など)とかって話ですわな。(追記:ここの部分微妙に不正確でして、資産管理系の信託銀行もほんのちょっとですけれども所要準備がございます。まあここで言いたかったのは信託勘定は付利の外側にいるという話だったので余計でした。また詳しくは勉強したいと思いますが、最早別のレベルの勉強になりますので成果物は特にお出ししないような気がします^^)

#なお、あたくし不勉強にしていわゆる信託勘定の資金って信託さんの中でどういう処理されているのかを正確に理解していない(決済する時に日銀ネットDVPを使っている筈なのだから信託勘定用の口座って勘定分離されていそうな気がするのですがどうなんでしょ、教えてエライ人!)のでありまして、信託勘定の資金は付利対象外なんだろうなあとは思うのですが、その辺がどういう動きになっているのかは何となくしか判っておりませんので詳しくは勉強させていただきたく存じます。

つまりですな、「超過準備付利」はまあその通りなのですが、実態からすると「所要準備以外に付利」という方が何となく判り易いのかなあという感じでございます(つーか補完当座制度が出た時にそういう理解してたのに書き物してる時に勢いで間違えた次第です)けれども、コール市場の出し手という観点からしますと、この補完当座預金制度の外側にいるのは日銀当座預金取引対象外の生損保、投信&年金(他人勘定)と言った所になるのでしょう(あとゆうちょ銀行以外の政府系金融機関も入りそうだがどうなんでしょ)。

と、考えますと、なんちゃって量的緩和でコールが誘導下限を下回るという懸念はたぶん杞憂(米国におけるGSEみたいなのは存在しないと思われるので)ということで、まーなんちゃって量的緩和そのものはやろうと思えば出来るような気もするし出来ないような気もします。

#あんまりやると札割れしそう。0.1%で札を切らなければ札割れしないけど

と、呟きました通りでして、このなんちゃって量的緩和の問題は、その金利付きイカサマ量的緩和を拡大するとどこかで札割れ問題が生じそうな気がします。まあTBを鬼のように大量発行しているので、それを短国買入で吸い上げれば相当部分まではインチキ緩和ができそうですけれども、札割れ問題が生じたら資金供給オペの札を0.1%以下まで認める破目になりそうでありまして、それをやると堂々の金融機関への利子補給ですな(^^)。

ということで、昨日の訂正でありました。


○昨日の続きをもう少し

昨日思いついたネタをパッと書いた(ら間違えを書いたのですが)のですが、もうちょっと考えてみる。

昨日書きました追加緩和ネタは輪番拡大とやや明示的なコミットメント設定となんちゃって量的緩和でしたが、輪番はとりあえずスルーして明示的なコミットメント設定となんちゃって量的緩和についてもうちょっと雑考。

時間軸という意味で言えば既に金融市場的には展望レポートで示された物価見通しからどう見ても低金利長期化です本当にありがとうございました状態になっているので何を今更コミットメントの追加という感じでもあります。つまりですな、時間軸効果は低金利継続期待でイールドカーブ全体が安定するという話なのですけれども、市場の期待以上に低金利政策を実施するという事を明示するようなコミットメントを設定した場合(そうじゃなきゃコミットメントの意味が無い)に何が起こるかと考えますと、当然ながらコミットメントの存在によって将来において「景気をふかす」という効果が期待されますので、期待インフレ率が上昇して「設定された時間軸よりも先にある長期金利」は上昇しても何らおかしくないというおそロシアな話になりますがな。

となりますと、現在主要国の中央銀行が行っている時間軸みたいな政策っていうのは、まあそこまでやっている訳では無くて、市場の景気物価見通しに対して特に大きく変わる事の無い見通しを出して、それによって時間軸を何となく作らせているというような流れなんじゃねえのって思うのでありまする。


で、なんちゃって量的緩和ですけれども、これは昨日も今日も書いたように、金利付き量的緩和実施しても金が金融市場の中でグルグル回っているだけだとあまり意味無い話ですし、金融不安などの流動性制約が軽くなっていても景気がうんこだったら別に銀行はホイホイ貸出を増やさないでしょうし、そもそもそんな時は企業などの資金需要が無い(不良債権確実のような資金需要はあるでしょうけど)ですからやりようが無し。

ただまあ(昨日も書きましたが)鰯の頭も信心からと申しますので、鰯の頭であっても皆が篤く信仰すればそれはご神体になってもおかしくは無いという論点からすると、なんちゃって量的緩和で経済全体のマインドあるいは期待を変化させるという効果があるかもしれませんし、技術的に見てまあ単なるなんちゃって政策でも頭から否定して良いのかというとこれまた難しい問題ではなかろうかと思うのであります。

勿論、「民営化したらし全てが薔薇色」というようなインチキ説明で押し通した結果「民営化したら薔薇色になるどころか不便になったじぇねえか」となって変なバックラッシュが起きてしまうようなケース(これは特定の事案を念頭に置いた訳ではございませんので念の為申し添えます^^)もありまして、鰯の頭が所詮鰯の頭だったとなるとその後がエライコッチャになるという面もありますのでこれまた難しい話でございますわな。

まあこの辺りを綺麗に言えば「金融政策における期待形成とは何ぞや」という話になるのかと思うのですけれども、中々奥の深い問題を含んでいるような気がします。そのうちまた関連雑談を垂れ流すでしょう。


○マクロプルーデンスとか(予告編)

前段をうだうだ書いていたら時間が無くなったので予告編だけ。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko0911f.pdf
金融危機後のわが国金融機関の経営課題

山口副総裁の講演でして、今日はこのネタの筈だったのですが、訂正ネタ書いているうちに話が長くなってしまいましてどうもすいません。

ということで、まあネタとしましては(1)マクロプルーデンスと金融政策、(2)金融機関経営の問題、となるのですが・・・・・

(1)に関しては、政策インプリケーションとして「ふーん」と思ったのは資産価格に対する金融政策の割り当て問題に関する山口副総裁のお話だったりするのですが、引用その他は明日で勘弁。

(2)に関しては本当の事を言うと(相変わらず持ち越しネタになっている)FSR(金融システムレポート)を読む必要もあるのですけれども、要するに問題としては「株式保有が多すぎ」というのと「収益性が低い」というネタがあるのですけど、どちらも亀井大先生が最近言う話の逆を行く指摘なので、何というか実にこう金融機関の先行きに対して落涙を禁じえないという所でございましょう。引用(ry



○またこのネタか

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20091125-OYT1T00697.htm
無利子非課税国債、亀井金融相「導入検討を」

『無利子非課税国債は、将来への不安を持つ高齢者らが必要以上に貯蓄している金融資産を国の財政資金として有効利用する構想だ。』(上記URLより)

またこのネタかよと脱力するのですが・・・・・

(1)そもそも高齢者の貯蓄はそこにもあるように金融資産になっている訳でして、その金融資産は国債の形で還流しているじゃねえかと小一時間

(2)タンス預金だったらどうよという話もあるが、タンス預金が国債で還流したら銀行券残高が減ってシニョリッジが減るというか日銀の国債購入余力が減るじゃねえかと小一時間

(3)大体からして「財政資金として有効利用」って言ったって将来はどこかで償還するもんで、所詮は借金じゃねえかと小一時間

(4)今フツーに国債発行しても10年モノで精々1.4%とかで調達できるのに将来の相続税収入を放棄し、コストをかけて(新たに発行するとなれば当然手間暇も掛かるし)まで発行する意味があるのかと小一時間


・・・・というネタはこの手の構想が出るたびに皆さんが指摘するので何を今更ではございますが、どうもトサカに来たので書かずにはいられませんなのでありました。









2009/11/25

お題「丁寧に説明してるんですけどねえ・・・・総裁会見/その他少々」

ということで総裁会見をメインに。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0911c.pdf

○今回は随分と丁寧に説明しているのですが・・・・

最初の部分は総裁からの説明になるので基本的に声明文の説明になるのですけど、その次からの質疑応答では総裁かなーり丁寧に説明しています。で、丁寧に説明しているのですが報道の具合は毎度おなじみの状況だわ、閣僚から出てくる発言は全然白川さんの説明を聞いてないわ(いやまあさすがに財務省の中の人とかは状況を理解していると思うのですが)という状況に泣くしか無いという所です。

ま、俊ちゃんと毎度比較して話をしていますけど、本来的に言えば、白川さん的な説明がきちんと伝わる方があるべき姿だとは思うのですけれども、残念ながらメディアにも政治家様などにも全然伝わらない(あるいは伝わっても政治的にお得なので真意を微妙に歪めて解釈するとかね)ので当然ながら一般的にはもっと伝わらないという有様になるので、俊ちゃん的なハッタリ緩和でハッタリ説明をしないといけないという負のスパイラル状態。

ニュースで報道されているベースと総裁会見を比較しますと、報道が説明の趣旨をミスリードするような端折り方をしているのが判ると思うのですけれどもどうなんでしょうかね。

・・・・と言うと発言全部引用しないとマズーな気がするが、そんな事をしていると無限引用になるのでそこは適当に(汗)。


○低金利政策を比較的長期間継続しますと

冒頭の質問は声明文にあった文言が後ろに行った件についてで、それに対しては粘り強く現在の政策を続けると仰せです。

『まず、結論から申し上げると、政策運営のスタンスに変更は全くありません。少し技術的な質問ですので、多少技術的なお答えになると思いますが、前回の会合では、CP・社債買入れなど各種時限措置の取り扱いの見直しを決定・公表しました。その際、時限措置の見直しが、直ちにマクロの金融緩和措置の変更につながるものではないことを明確にする趣旨から、「当面、現在の低金利水準を維持するとともに、金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給を通じて、きわめて緩和的な金融環境を維持していく」方針を示しました。こうした考え方については、今も全く変わりありません。』

つまり、前回文言を置いたのは特別措置解除が金利の出口政策のスタートと捉えられないようにする為に敢えて加えたという理由だという話ですな。

んでまあ悪態を軽く申し上げますと、説明上そーゆー文言を加えたというのは判るのですが、本来的に言えば展望レポートの見通しが出ている時点で例の文言は言わずもがなであって、金融市場的には「わざわざ言わずもがなの文言が入るとは何か他の意味(=より明示的な時間軸政策の導入への布石とか)があるんじゃないか」と思ってしまいますので、何つーかその辺りに関してはもうちょっと前回説明して欲しかった(露骨に説明するなら「これは金融市場向けの文言ではなくてメディアや一般向けの念押しですよ」って所ですが)なあと思います。

『これまでも、毎回の公表文では、経済・物価情勢の評価を2つの柱に基づいて整理するとともに、先行きの金融政策運営の考え方を示しています。今回は、時限措置の取り扱いといった案件がない中で、本日の公表文では、従来同様の発表方式を踏襲し、先行きの金融政策運営方針として、「きわめて緩和的な金融環境を維持していく」とともに、「わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰していくことを粘り強く支援していく」ことを示しました。こうした考えも、展望レポート公表時から変わっていません。』

ということで、以降も「粘り強く緩和を続ける」という話が続く次第でありまして、決定会合やってる中で「まだ出口戦略をとるのは少し早い」とか不勉強の極みのような寝言をおっしゃるどこぞのお遍路に対してはあたくし的には(自粛)じゃなかろかルンバ♪としか申し上げようがございませんですな。つーかスタッフ(がいるのかどうか知らんが)は何をやってるんだよ。


○継続的な物価下落状況は認めていますがな

次の質問が政府デフレ宣言に関するお話。で、これもまた全部引用するでござるの巻。

『わが国の物価動向をみると、出発点となる本年度前半までの需要の落ち込みがきわめて大きかっただけに、物価下落圧力がかなり長い期間残存する可能性が大きいと判断しています。このことは、前回の展望レポートでも申し上げた通りです。デフレには様々な定義があるので、こうした物価の状況をどのような言葉で表現するかについては、当然論者によって異なり得る性格のものだと思います。いずれにせよ、「緩やかなデフレ状況にある」との今回の政府の見解は、「持続的な物価下落」という定義に基づいたものであり、そうした物価動向の評価という点では、以前から日本銀行が展望レポートで示している考え方と異なっていないと思います。』

ということで、継続的な物価下落状況および今後の下落圧力に関しては日銀が既に示していると説明。まあその通りとしか申し上げようが無いのですけれども、報道される時には「政府の見解と違いは無い」という所よりも「デフレの定義がどうのこうの」という方がメインになってしまうのでありまして(そりゃまー報道する方としてはそっちの方が読者の目を引きつけますからねえ)、まあシャーナイなあとは思いますけど。

で、その続き。

『物価の変動の原因をどう考えるかということですが、物価は短期的には様々な要因で変動しますが、持続的に物価が下落するということは、マクロ的な需給バランスが緩和していること、言い換えれば需要の弱さの結果として生じる現象だと思います。したがって、そうした状況を改善するためには、結果ではなく根本的な原因に働きかける、つまり設備投資や個人消費といった最終需要が自律的に拡大する環境を整えることが不可欠であり、家計の将来の安心感や企業の成長期待を確保することが最も大事な課題であると認識しています。こうしたことを意識しながら、政府、中央銀行といった政策当局と民間経済主体がともに努力していくことが必要であると考えています。』

いやもう仰る通りだと思うのですが、こういう発言はろくすっぽ報道されない所が泣けるのですけど。

『この点、日本銀行としては、企業や家計の経済活動を金融面から支えるために、きわめて緩和的な金融環境を維持し、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰していくことを今後とも粘り強く支援していく方針です。』

ここでも金融緩和継続の話を「粘り強く」実施という発言をしてまして、最初と2番目の質疑で連続して同じことを強調していますので、会見場から帰ってきた人が最初に出したベースと思われる報道(共同とか時事とかブルームバーグとかの第一報)では政府との差異よりも、「粘り強く緩和政策を続ける」という報道っぷりだったんですよね。

それがまあ通信社から新聞社に回ったり、新聞社の中でもデスクだのを経過する間に「政府との差異」の方がメインに近くなってくるのは報道機関の仕様なんでしょうかね。ということで、東京新聞が「日銀、金融緩和に慎重」とかいう見出しを大々的に出しているのはナンジャソリャという感じ(追加緩和に慎重なら話は判るが)ですが、まあ政府との対立って話にした方がメディア的にオイシイなんですかねえ。


○流動性を出しても金融システムから金が流れなければという話(だと思う)

その後もデフレの定義がどうのこうのという話が延々と続くのですけれども、基本的な部分は先ほど引用した事で尽きているので、途中を全部飛ばして(まあ説明が丁寧なので読んだ方が吉かと思いますけど)量的緩和政策や時間軸効果の評価および今後の導入可能性に対する質問に対する答えを引用。これがまた長いのですけど・・・・

『デフレ一般についての考え方は先程申し上げたので、政策に関する質問としてお答えします。この文脈でよく行われている議論は、中央銀行がもっと流動性を供給したり、もっとバランスシートを拡大したりすればデフレは収まるのではないか、という点だと思います。そうした議論についてどのように考えているかを説明することが、ご質問に対するお答えになると思います。』

『まず、日本銀行は金融機関に対して潤沢に流動性を供給していますし、そうした姿勢で臨んでいます。そうした日本銀行の政策の効果あるいは成果というものは、直接的には金融市場の安定度で計られると思います。この点、この1年間で各国中央銀行のバランスシートが拡大しましたが、欧米と日本を比較してみると、確かに日本の金融市場は不安定化したものの、欧米に比べれば遥かに安定していたと思います。この面で、日本銀行が金融市場・金融機関に対して潤沢に流動性を供給するということが効果をあげていると判断しています。』

どうせ説明するなら各国中央銀行のバランスシート拡大は結果としてはマネー供給にもなったけれども、そもそもの趣旨は金融仲介機能の回復の為に実施したものなので、金融仲介機能の毀損度合いが比較的少なかった日本のバランスシート拡大は少なかったという話をした方が宜しいのではないかと思いますがそれは兎も角その続き。

『それから、流動性あるいはマネーという点では、金融機関の持っている流動性だけではなく、最終的に企業あるいは個人がどの程度流動性を持っているか、あるいはどの程度借入れができるかが重要だと思います。この点でまず、後者の貸出──企業・個人からみれば借入になりますが──の数字をみると、欧米では、リーマン破綻以降、銀行貸出、特に銀行による企業向け貸出の伸び率が急激に低下し、足許ではマイナスになっているわけで、この1年間の伸び率低下は大変なものであったと思います。それと比べた場合、わが国における銀行貸出あるいは銀行による企業向け貸出をみると、昨年のリーマン破綻以降、伸び率はむしろ高まっています。今年初めをピークに伸び率は徐々に下がっていますし、この後も伸び率は下がると思いますが、この1年の変化をみると、貸出(借入)という面では、欧米に比べて日本の方が遥かに状況はよかったと思います。これは日本銀行による流動性供給によるものだけではありませんが、流動性供給の出発点における不安を断ち切ったことがやはり1つの要因であったと思います。』

うーむ、何か説明が微妙な気がする、言いたい事は判るけど。

『それから、企業あるいは個人が保有する預金、つまりマネーサプライですが、マネーサプライが名目GDPに対してどの程度の比率にあるかをみると、元々日本は欧米対比高いわけですが、この1 年間の変化という面でみても、この比率の上昇は欧米に比べて決して小さくなく、むしろ若干大きいと感じています。もちろん、日本銀行自身がこれで完全であるとか十分であると言っているつもりはありませんが、流動性を潤沢に供給するという姿勢を現実に示して供給することにより、経済が落ち込むことを防ぐのだと思います。』

と、マネーサプライも出しているという話をしています。で、その次が今回の会見で一番目立った発言ね。

『今申し上げたことは、経済全体が大きな流動性制約に直面している場合、流動性を供給することが物価の下落を防ぐ上で大きな効果があるということです。ただし、流動性制約が原因となって投資が行われないといった経済状況ではない場合、つまり需要自体が不足しているという時には、流動性を供給するだけでは物価は上昇しないと思います。』

流動性制約での物価下落を防ぐ効果はあるけれども、そもそも需要が無いような景気が悪い中で物価を上げようと思っても流動性を出すだけでは上昇させる効果は乏しいという話をしているようで。

『この点については、今回の米国の経験をみても分かると思います。中央銀行が供給した超過準備額の対GDP比率をみると、日本の量的緩和政策の時には5.8%であったのに対し、現在のFRBでは6%台だと思います。』

『要するに、日本の量的緩和政策時でも現在のFRBでも超過準備という形で同じように流動性を供給していますが、それ自体によって物価を更に押し上げていく効果は乏しく、流動性制約が経済活動を縛る状況ではない局面では、流動性供給には物価を上昇させる力はないということです。』

『これは流動性供給が物価に対して影響が無いということではなく、流動性制約がネックになっている時には物価の下落を防ぐ上で意味があっても、そうでない時にその効果は限られているということを示しているように思います。』

マネーの需要が無い所にマネーを出してもそれは金融機関の中をぐるぐると回るだけなので実体経済に働きかける力に乏しいという説明でございますな。

ただ、これを突き詰めていくとゼロ金利制約に引っ掛かると金融政策無効って話になってしまいそうでそれで良いのかという気もするんですけど・・・・

『今、量の話を申し上げましたが、いずれにしても、日本銀行は現在の低い金利水準を維持していくということを既に発表しており、これを通じて経済活動を支援していくという姿勢には変わりありません。』

最後にここでも低金利政策継続の話をしてますな。しつこく繰り変えすの巻。


ということで、一つの答えを途中割愛しないで引用する攻撃をしたらアホのように長くなったので今日はこの辺で。


以下雑談系。

○雑談少々

・やはり宣言しただけで何もしないとな

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-12600620091124
デフレ対応には金融政策の役割が大事=藤井財務相

『[東京 24日 ロイター] 藤井裕久財務相は24日の閣議後の会見で、政府が11月月例経済報告においてデフレ宣言を行ったことに関連し、物価は金融の問題であり、金融の役割が大事と述べ、日銀の金融政策対応に期待感を示した。同時に現在の需要不足への政策対応として財政は主たる役割ではないと語った。』

昨日の前場株が下がったのはこのやる気なし発言のせいではないかという話もある位でございまして(本当かどうかは知らん)、デフレ宣言をしましたが政府は別に何もしませんとか言う国の株式に投資しようという人はそりゃいませんわなと思うのですけど・・・・・

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-12609220091124
焦点:デフレ宣言しても政府の具体策見えず

『[東京 24日 ロイター]  政府が20日にデフレを宣言し、金融市場ではその対応策に注目が集まっているが、鳩山由紀夫政権の閣僚からは具体策が出ないばかりか、日銀に対応を丸投げするかのような発言も飛び出し、様々な思惑が交錯している。』

まあこの記事にある通りでしょ、と思います。


・では何かやりますかという話ですが

じゃあ日銀が何やりますかという話に関しては、あまり予断を持って決め打ちしても仕方ないのですけれども、幾つかの選択肢について考えてみますと・・・・

(1)輪番拡大

→まあ話としては一般的に一番判り易いのですけれども、輪番拡大しても長期金利が下がるかと言うとこれまた微妙。というか米国で「長期国債の大規模買入を実施したら長期金利が上昇したでござるの巻」という壮大なネタを実施したばかりでありますので、長期金利押し下げ効果のようなモノは期待しにくい所かと(なのに何か今日モーサテに出てたコメンテーターは「日銀が長期国債買入を増やして金利を下げて、日米の金利を逆転させてどうのこうの」とか訳の判らん事を言ってましたな)。

やるなら長短のバランスを微妙にいじりながら拡大というのはあるかも知れませんけど。どうせ国債が大量増発されるので資金需給上国債の買入は増やす必要が出てくるでしょうけど、目先は短期国債(国庫短期証券)で増発して来るでしょうから、単に短期の資金供給が増えるだけでしょうな。


(2)なんちゃって量的緩和

→さっき引用した会見要旨にありますように、流動性出しても金融システムから外に金が出ないと意味が無いのですが、そうは言っても外野がうるさいですし、鰯の頭も信心からという言葉もありますので(^^)、なんちゃって量的緩和を実施という手はあるんじゃないかと思います。

ただし、現在の付利のように「超過準備」だけ付利していますと準備預金制度の外側にいる人達がコールでぶん投げを行って誘導目標を維持できない可能性がありますので、誘導目標を維持しつつなんちゃって量的緩和を実施する場合は超過準備じゃなくて当座預金(あるいは準備預金以外の当座預金)に付利すると吉ではないかと思いますが、半分ポジショントークも入っていますので念の為付け加えておきます。(この部分思いっきり勘違いしていましたので、翌日訂正しております。どうもすいません)

まあそんな事したら国庫納付金の問題も起きそうですし、大体からして流動性制約が特にある訳でも無い中で金利付き量的緩和(のようなもの)を実施する意味がどこにあるのか良く判らん。

で、現執行部は福井の俊ちゃん時代のように「意味があるかどうかは兎も角まあやっちまえ」と30兆円積み上げるタイプでは無いので、そーゆー類のやったふり政策というのはよーやらんだろうなあとは思います。


(3)それなりの時間軸

→展望レポートで既に示しているようなもんなので何を今更という所なのですけれども、やや明示的な時間軸という話はあるのかもしれません。ただ、コミットメント入れた結果出口で妙に苦労したというのがあるので、出来るだけその手の明示的コミットメントは入れたくないんだろうなあとは想像できる所でございます。


・・・・と3つ思いついたものを並べてみましたが、結局のところ全部直ぐに実行しそうもないものばかりが並んでしましましたな。どうもすいません。










2009/11/24

お題「決定会合あれこれ」

政府と日銀の関係に関して土曜の朝刊比較をしようと思って朝毎読に日経産経東京と朝刊6紙揃えて見ましたが、読むには読んだのですが文字起こし面倒になって途中で挫折しました(汗)

という根性無しな話は兎も角として今回の決定会合は金融市場的には比較的順当な結果なのですが、メディアネタ的には政府と日銀が対立的でどうのこうのという話になりましたわな。

○まずは声明文

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091120.pdf

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.1%前後で推移するよう促す。』

ということで、前回の声明文であった微妙な文言は後ろに回りました。

『5.金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく方針である。日本銀行としては、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰していくことを粘り強く支援していく考えである。』

まあ変に頭に付け続けるとそこの文言をいじったらどうしたこうしたという意味合いが出来てしまうので、それを避けるために後ろに持って行き、ついでに「当面の間」の文言も外していますわな。

ちなみにこれを英語版で見るとこうなります(^^)。

http://www.boj.or.jp/en/type/release/adhoc09/k091120.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/en/type/release/adhoc09/k091030.pdf(前回)

『5. In the conduct of monetary policy, the Bank will aim to maintain the extremely accommodative financial environment. The Bank will provide steady support for Japan's economy to return to a sustainable growth path with price stability.』(今回)

『1. Monetary policy The Bank will maintain the extremely accommodative financial environment for some time by holding interest rates at their current low levels and providing ample funds sufficient to meet demand in financial markets.』(前回)

for some timeが抜けているのと、providing ample funds云々というのが抜けておりますので、まあガイジンさん的には何かインプリケーションを感じちゃうのかもしれませんな。実際には声明文原文は日本語優先になる筈ですけど時々英文を読むとこれはこれで面白いので今回は引用です。


んでもって、まあ結果が出た時に債券先物とかそれまでの威勢良い上昇から失速したのですが、下がって逆に「えー、そんなに何か期待してたのかよー」という感じでして、実際問題として今回の会合で何か緩和策が出るという期待を真面目にしてた人は皆無の筈ですので、単に週末前にロングの手仕舞いが起きただけだとは思いますが、ちょっと意外感があるという感じでした。



○足元は上方修正ですが展望レポート通りなのではないかと

今度の比較対象は10月14日の公表文になります。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091120.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091014.pdf(前回)

・総合判断

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(今回)

『わが国の景気は持ち直しつつある。』(前回)

持ち直しつつから持ち直しと表現を変えていますが、色々とヘッジクローズが入っているという所が差引という感じっすな。そもそも展望レポートのメインシナリオ通りですと徐々に回復するのですから、足元強い経済指標が多かったという事を勘案するとここで表現が前進しても実際問題としてはおかしくは無かったですわな。ただまあ政府が意味不明のデフレ宣言をした(悪態は後ほど)中で表現上方修正という空気の読まなさ振りに痺れますが。

で、ここのヘッジクローズにある「各種対策の効果」というのは事実その通りですが、その各種対策に水差し野郎となっているのが現政権の施策だったりするので、巧まざる悪態になっていると読むのは意地が悪いですかそうですか。


・個別展開:公共投資、輸出、生産、設備投資

『すなわち、公共投資が振れを伴いつつも増加を続けているほか、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国の回復などを背景に、輸出や生産も増加を続けている。設備投資は、厳しい収益状況などを背景に減少を続けてきたが、最近では下げ止まりつつある。』(今回)

『すなわち、公共投資が増加を続けているほか、内外の在庫調整の進捗や海外経済の持ち直し、とりわけ新興国の回復などを背景に、輸出や生産も増加を続けている。そうしたもとで、企業の景況感は、製造業大企業を中心に、改善の動きがみられる。設備投資は、厳しい収益状況などを背景に減少を続けているが、減少ペースは緩やかになってきている。』(前回)

公共投資を下げて海外経済を上げています。設備投資は下げ止まりつつあるなので若干ですけど上方修正ですかな。


・個人消費

『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。』(今回)

『一方、個人消費は、各種対策の効果などから一部に持ち直しの動きが続いているものの、厳しい雇用・所得環境が続く中で、全体としては弱めの動きとなっている。』(前回)

個人消費を持ち直しに上方修正していますが、それは各種対策の効果でGDP(ただし実質)が強かったという実績による話で、そこら辺の対策効果が切れるとはてどうなるのやら。


・物価、金融

『この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、下落している。』(今回)

前回分はめんどいので引用しません。と言いますのは、前回と違うのは最後の下落の部分が「下落幅が拡大」だったのが変わっただけでありますので、まあここはスルーで良かろうという感じです。


○先行き見通しは上げてるんだか下げてるんだか訳判らん

『先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。』(今回)

『2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待が大きく変化しない中、海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、わが国経済は持ち直していくと考えられる。』(前回)

持ち直しのペースが緩やかという話になっていますな。まあこれも展望レポート通りではありますが、今回はそれを受けまして先行きの持ち直し角度を下げたという感じになるのでしょうな。


『物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、石油製品価格などの影響が薄れていくため、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(今回)

『物価面では、消費者物価の前年比は、当面、現状程度で推移したあと、中長期的なインフレ予想が安定的に推移するとの想定のもと、石油製品価格などの影響が薄れていくため、下落幅を縮小していくと考えられる。こうした動きが持続すれば、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられる。もっとも、海外経済や国際金融資本市場の動向など、見通しを巡る不確実性は大きい。』(前回)

ということで物価はまあ良いとして、ここの所の表現も微妙に変わっているのと、不確実性の話が無くなっている所が相俟って、結局上げてるのだか下げているのだかよー判らんという感じですにゃ。

ま、方向性としての回復の角度は下がったけれども、下振れのリスクは下がったという感じではないかと思います。


○リスク要因は上方修正ですが展望レポートの流れです

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済情勢など上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、新興国の回復といった上振れ要因はあるが、国際的な金融経済情勢、企業の中長期的な成長期待の動向など、景気の下振れリスクが高い状況が続いている。』(前回)

これなんですけど、ついうっかりしてて展望レポートの細かい話をするのを忘れておりましたが、実は展望レポートで「あらら」と思ったのはリスク要因に関する話でして、特に物価なんぞは上振れ要因のオンパレードになっていたのですよ。で、そのあたりを継続したような感じで、今回はリスク要因が下振れ一辺倒からだいぶ修正されてますなという所です。ただし、修正されたのは展望レポートからですので念の為。

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

『物価面では、景気の下振れリスクの顕在化、中長期的なインフレ予想の下振れなど、物価上昇率が想定以上に低下する可能性がある。』(前回)

物価上振れに関して共同がヘッドライン打ってましたが、ここの上振れ部分は展望レポートに示されていましたので慌ててヘッドラインを打つ話でも無く。


ということで、技術的な意味で言えばまあ仰る通りな声明文(月報は今日)でございますが、政府との連携という点で言えば間が悪いという所に実に香ばしいものを感じる決定会合でございました。


○んでもって会見とか一般紙の報道

会見では当然ながら政府との認識の差がどうのこうのという質問が多かったようですけれども、そちらでは白川総裁は「粘り強く低金利を維持」というような発言が多かったので、時事共同ブルームバーグともヘッドラインは「粘り強く低金利を維持」という感じだったのですが、やはり朝刊になったらこんな記事になっておりました。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2009112102000052.html
日銀、金融緩和に慎重

声明文では「きわめて緩和的な金融環境を維持していく方針」と言っているのですが、案の定この書かれっぷりに涙が出る訳ですが、ハッタリが効く福井の俊ちゃん系じゃないとまーこう書かれるわなという感じです。

ただまあ今回(一々引用しませんが)各紙社説では銀と共に政府に関しても何かやれという話が多かったのはまだマシかなという感じです。日銀に関する注文はやはり輪番拡大が具体的に出てましたわな。

http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009112001000694.html
金融政策だけでは限界 物価上昇で、日銀総裁

まあそりゃそうなんですが、もうちょっとモノの言いようがあるとは思うのでございまして、結局報道される時には木で鼻をくくったようなヘッドラインが報道されてしまう(共同のこれは記事中で説明してる部分があるからまだマシで、一般紙はこの発言を更に端折るから)のでして、まあ折角緩和的環境維持の話をしても一般世間様的にはどうもポイント下げちゃいますよね。

とは言え、どう説明するのかが難しい訳で、「物価を上昇させる「だけ」ではなく、それは国民の厚生という意味でプラスになる物価上昇とは何ぞや」という話になるというのが白川総裁の言いたい事だと思われるのですけど、じゃあどうやって説明するのかはよー判らん。

#単に物価上昇させるだけならどこぞの将軍様にお願いすれば宜しいがなと

とは言いましても、まあ少なくとも金融市場的には日銀が低金利を継続し、金利政策での出口に到達するのは主要国でもどう見ても最後でしょという認識は共有されている状態だと思いますので、対マーケットという点で言えばまあどうでもヨロシという事なんでしょうかね。まああまり波風立てない方が良いとは思いますけど。

詳しくは会見要旨を見てから。


○宣言するだけで対策無しとな

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aPALU.NUYbHc
政府:「緩やかなデフレ」認定、3年5カ月ぶり−月例報告(Update2)

『また、菅経財相は月例会議後の会見で、「景気全体は持ち直しにあるが、デフレの状況は一時的というより、今後も気を付けないとしばらく続く」との認識を表明。その上で、デフレ状況を脱却するために「日銀との政策的な協調、金融面からのフォローを期待する」と述べ、金融政策による景気下支えを求めた。』

『また、物価下落と景気悪化が循環的に起こるデフレスパイラルの可能性については「そう大きくはないと思っている」との見方を示した。』

って日銀は2011年度までCPIマイナス予想既に出しているのですが何をいまさらという感じですし、わざわざ宣言したら普通は対策が出るはずなのですけれども、対策は何も無しですかそうですか。しかもデフレスパイラルの可能性は大きく無いのであれば日銀と言ってる事同じなんですけど・・・・

『日銀に求める具体的な政策については「一言で言うと、まだ出口戦略をとるのは少し早いというか、もう少し今の形を続けていただいた方が良いのではないかというメッセージとして受け止めてもらっている」と指摘。』

出口戦略なんぞ元々全然考えていないですし、展望レポートであの見通しが出たということは相当の期間現在の金利政策が引き上げになる可能性は無いと普通は読み取れますし、日銀もそういう話をとっくの昔からしているのに、何を言っておられるのでしょうか。お遍路にでも行って少し勉強でもされた方が宜しいのではないでしょうか。

・・・というか、何か聞きかじった事を物凄い勢いで自慢するような痛さを感じるのでありますが、そういや自民党でもSWF設置だの東京金融街構想だの後ろに(笑)を付けないと論評のしようが無い痛い人達がいましたので、どうも金融関連というのにはそのような魔力(??)があるのでしょうかねえ。

と思ったら鳩山首相が力強い発言を(嘘)。

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aOl7VnkXMnhk
鳩山首相:需給ギャップを埋めてデフレからの脱却目指す

『11月20日(ブルームバーグ):鳩山由紀夫首相は20日夕、政府が11月の月例経済報告で日本経済が「緩やかなデフレ状況にある」と認定したことについて問われ、需給ギャップを埋めてデフレから脱却する政策を取ることが必要との考えを示した。首相官邸で記者団に語った。』

補正予算を40兆円くらい打ってくれるんですね、わかります。

・・・だとオモロイのですが、さっきの方のURLによりますとこういう話のようで。

『鳩山由紀夫首相は同日夕、月例経済報告でのデフレ認定について、現在の緩やかなデフレは需給ギャップから来ているとの認識を示した上で、デフレからの脱却にはコンクリートを使う「昔風の経済政策」ではなく、エコカーやエコポイント、太陽パネルを装着するための住宅リフォームなどの「賢い経済対策が求められている」
と述べた。 』

それで需給ギャップが埋まるとお思いで???

以上悪態でございました(^^)










2009/11/20

お題「非伝統的政策に関するレポート(その2)/決定会合とか審議委員内定とか」

まずは昨日の続きから。白塚さんのペーパーはこちらです。
http://www.imes.boj.or.jp/japanese/jdps/2009/09-J-22.pdf
わが国の量的緩和政策の経験:中央銀行バランスシートの規模と構成を巡る再検証

○政策コミットメントに関して

本文12ページ(PDFファイルの15ページ)の『(3)非正統的な金融政策とゼロ金利下での政策コミットメント』から。

いわゆる時間軸効果に関する論考でありまして、今次危機においては明示的なコミットメントを実施している中央銀行は少ないという点を指摘しつつ、このようにまとめています。本文13ページから。

『こうしたなか、今次危機においては、上述のとおり、多くの中央銀行が将来の金融政策経路に対して明示的なコミットメントを行うことなく、非正統的な政策手段を採用している。むろん、中央銀行が金融仲介機能の低下や流動性リスクの増大に対処するためにバランスシートを拡大させている状況では、景気に対して下押し圧力が作用しているため、金融政策は、政策金利を引き下げ、金融緩和を行う方向に運営されると考えられる。特に、中央銀行バランスシートの大規模な拡大が必要される場合、金融システム面からの極めて大きな負のショックが加わっており、政策金利の水準自体は、必然的に極めて低い水準に維持されると考えられる。』

確かにそうですな。

『このため、非正統的な金融政策が必要とされるような金融・経済情勢では、同時に、政策金利を極めて低い水準にまで低下させ、そうした低い水準の政策金利をある程度の期間維持する必要性が高い。その意味で、非正統的な金融政策をゼロ金利下での政策コミットメントと完全に独立した政策措置と考えることは適切ではないと考えられる。』

バランスシート政策を実施するような状況であればそもそも金利操作をしている場合ではないので、非伝統的政策が続くと予想される/続くことが判明している間はそれがコミットメントの代替になりますよというお話ですわな。で、その続きの説明にもありますように、非伝統的政策の実施はそもそも金利操作による効果が何らかの事情(超過準備需要拡大や市場機能低下)で減殺されているからなのですからね。

『今次危機に対する中央銀行の政策対応は、純粋な意味での金融政策のゼロ金利制約下における自然な延長ではなく、金融市場の機能不全を是正するための緊急措置としての色彩が強いことも事実である。この点、今次金融危機における中央銀行の役割は、市場型金融仲介が拡大するもとで、伝統的な最後の貸し手としての対象範囲を拡大させ、銀行以外の金融機関に対する資金流動性の供給やクレジット商品や関連する市場の市場流動性の回復等に踏み込んでいった点に大きな特徴があると考えられる。』

ちょっと話が脱線するかもしれませんが、逆に考えますと、特に市場流動性などに問題が無い様な状況下における単純な「時間軸政策」がどこまで景気に対して有効なのかという話も結構難しい気がするのですよね。時間軸効果のキモっていうのは上記URL引用部分のちょっと前にもありますように、『中央銀行は、短期金利をほぼゼロに維持する期間について明確なコミットメントを行うことで、市場の期待形成に影響を及ぼすことができる。また、このコミットメント期間を信認のある形で長期化することができれば、長期金利を低下させることができる。』(本文12ページより)という所にあるのですが、時間軸効果を狙って明確なコミットメントを行った結果として市場が将来のインフレ率期待を高めてしまうと却って長期金利が上昇するという面もありますから、景気見通しがダメダメな状況下における時間軸政策というのは景気が立ちあがりかけた所でどうワークするのかが微妙かと思う所であります。

今次危機における米国の対応では、長期財務省証券の大々的な買入を行った訳ですが、その間に長期金利は1%程度(アナウンスした瞬間に下げた所から計算したら1.5%程度)上昇しちゃいまして、まあそれは時間軸政策とは別の話ですが、期待に働き掛ける政策っていうのも机の上で考えると美しい話ですけど、実際にワークさせるとこれがまた難しい部分もあるという感はするのであります。

で、その米国ですけど、最近はほぼ明確に時間軸効果狙いに舵を切ったように見えますよね。何か低金利政策継続的な話を連発している訳ですが、じゃあそれで長期金利が下がるかというと、そりゃまあ下がってはいますけれども、依然として3%台前半にいる訳でして、その間に2年の金利はいい感じで低下して今朝だと0.7%切りそうな勢いのようで、短い所に効果発揮でござるの巻という感じですな。つまり、日本みたいに名目の成長期待がろくすっぽ無い状況だと時間軸効果って長期金利まで効いた感じがしましたけど、普通の場合だとやはり時間軸で引っ張れるのはせいぜい2年とかの(債券市場的に言えば)中期というよりは短期に近い程度までの金利で、より長い金利まで効果を出そうとするのは難しいのかも知れず、まーその辺りに関しては米国がある意味身を切って実践中という所なのではないかと愚考される次第なのであります。


○実践を巡る論点

ということで昨日申し上げた最後の部分でして、本文14ページから始まりますけれども、最初の部分をスルーして15ページの『(2)バランスシートの恒久的な拡大と物価水準』から。

『中央銀行バランスシートの拡大は、一時的な政策対応であるが、バランスシート拡大の長期的な部分は、物価水準について長期的な影響をもたしうる。』

ということで、これには脚注が実は付いていまして、そこでは財政とのセットに関する論考を紹介していますので念の為。

『この点について、Auerbach and Obstfeld [2005]は、財政政策面での経路を通じた中央銀行バランスシート拡大効果を検討している。中央銀行の大規模な長期国債買入れによって、マネタリーベースが恒久的に増加したと認識すると、民間部門は、政府債務に対する金利支払いが将来にわたって減少すると予想するため、民間の税負担も減少すると予想する。この場合、マネタリーベースを恒久的に増加させたまま、プラスの金利と整合的な状況に復帰するためには、大幅なインフレが必要とされることになる。』

で、本文に戻りますと。

『極めて大規模なバランスシートの拡大は、一時的に経済へのショックに対応するために、許容されるとしても、一般物価水準への悪影響を回避するためには、中長期的に持続可能な水準に抑制される必要がある。そうした観点からは、中央銀行バランスシートの拡大が政府債務のマネタイゼーションにつながるではないかという懸念を未然に阻止し、国債流通市場の不安定化を阻止していく必要がある。』

ということで、日銀の長期国債買入に関する銀行券ルールの説明をしていますけれども、まあその辺りはご案内の通りなので引用割愛します。

んでもって最後の部分が『(3)出口戦略におけるバランスシート縮小』と言うお題で微妙にチャーミングな話が。本文16ページより。

『中央銀行がバランスシートを縮小させる必要に迫られるケースとして、金融システムが健全な状態を取り戻したことを反映し、超過準備需要が減退した中で、バランスシートの資産サイドに、なお大規模な非正統的な資産が残存している状況を考える。特に、非正統的な金融資産の満期が長い場合には、そうした状況が長期化し、固定化される可能性も考えられる。』

どう見てもFRBのケースです本当にありがとうございました。

『もっとも、中央銀行は、準備預金への付利に加え、リバースレポ等の資金吸収のためのオペ手段を使って金融市場における過剰な流動性を吸収し、バランスシートの大きさをコントロールしつつ、機能を回復した金融市場で、非正統的な金融資産を徐々に売却していくことができると考えられる。』

で、脚注には

『Bernanke [2009c]は、非正統的政策からの出口戦略において、準備預金への付利に、リバースレポ、定期預金手段の創設、保有債券の売却といった資金吸収手段を併用することで、スムーズなバランスシート規模の縮小が可能であると主張している。Fed のバランスシート縮小に向けての金融調節に関する議論については、Dudley [2009]も参照。』

とございますが、普通に考えまして長期国債の売却でも怪しげな気がするのに、非正統的な金融資産の売却とか出来るのかは極めて怪しいと思われますけれども、その辺りを「と考えられる」「と主張している」でサラッと流している所に微妙な悪態成分を感じたのはあたくしだけですかそうですか(^^)。

んでまあスタグフレーションに陥って金利引き上げを余儀なくされた場合にもっと大変じゃねえのという話もしているように見えますが、そこの引用は割愛と致します。


○あと補足

昨日に続いて引用をすっ飛ばしてしまいましたが、昨日も申し上げましたように、本文6ページ以降にあります『(2)量的緩和政策の効果』の部分は熟知すべしと存じますので念の為申し添えます、引用してるとキリが無いから引用しませんが。


ということで白塚さんのペーパーに関するネタはこんな所で。以下別の雑談を。


○水野審議委員の後任に宮尾龍蔵先生というネタから微妙に話が拡散します

まあ色々と雑感を。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-12549020091119
http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt37/20091119AT2C1900Y19112009.html

水野さんの後任だったら証券系の人になるのかと思ったのですが、どマクロの先生で金融政策に関しても詳しいというお方ですので、実質的には西村さんの後任みたいなイメージですね。日経の記事にもありますように、まあマクロ分析に関しては大変に優れた方のようで、オーソドックス(というか無難というか)な方で良かったですねという感じですか。

というのは良いのですが、国立大学(とは今は言わないのでしたっけ?)の先生というのはそうホイホイと簡単に辞める訳にはいかないようで、来年の3月以降の就任という事でしたら西村さんの(前の)任期が来年4月なんだから水野さんの後任じゃなくて西村さんの後任にしとけば良いじゃんと思うのですけど(証券系だったら指名されたらホイホイ就任するでしょ^^)、そうなりますと12月から来年3月までは欠員2名とかいう豪快な話になってしまう次第で、民主党は何考えとるんじゃヴォケという感じでございます。

#そもそも欠員が出たのも民主党が池尾先生の就任に反対したからですし

んでもって欠員話は兎も角として、依然として海外の金融システムは怪しげな部分もありそうですし、日本でも金融株とか絶賛下落(希薄化のせいですけど)してるとか、必ずしも平時モードでは無いという状況において金融市場の細けぇ話にも詳しい水野さんの後任がどマクロの学者先生というのも微妙にアレな所がございまして、いやまあ世の中が平常モードでしたら学者さんだらけでも問題ないのかも知れませんけれども、こーゆー状況においてはちょっと不安感も。というか目先2名欠員ですが。

何でそーゆー話をするかと申しますと、またも人のふんどしですが本石町日記さんがちょうどNRIの「金融市場パネル」のエントリーをしていたからでして。

http://hongokucho.exblog.jp/12343005/
「金融市場パネル」より、討議の簡単な紹介=徐々にマニアック化

ちなみに議事概要はNRIのサイトにございます。
http://www.nri.co.jp/opinion/r_report/pdf/200910kinyushijo.pdf

宮尾先生の発言じゃないからまあ別なのですけれども、本石町日記さんが紹介した中での最後の部分は別の意味で唸ってしまいましたんですよね。

『福田氏:

・日銀による企業金融支援特別オペについては、今となっては、本当に企業金融を「支援」しているとは思えないし、金融機関にとっては、このオペがなくなっても、プレミアムを払えばロンバート貸出を利用できる。

→かなりマニアック。正直、福田先生からこの意見が聞かれるとは予想外であった。 』

本石町日記さんはマニアックということで誉めてるんだか誉めてないんだかよく判らんのですが(^^)、福田先生のこの指摘は(議事概要でも同じ書き方でしたけど実際の所はどういう文脈で話していたのか良く判らんのですが、一応文字通りに受け止めますと)あたくし的には「何ちゅう乱暴な」というイメージの方が先に立ちますわな。

つまりですな、確かに「金が取れるか取れないかで生きるか死ぬか」というような状態だったら0.1%でも0.3%でも細けぇこたあいいんだよ!となりますけれども、短期市場ちゅうのはそれこそGCが0.13で3MTBが0.155で1YTBが0.185でというような細かい世界で勝負している訳でして、0.1%と0.3%というのはとんでもない違いなのですけど、ここに出てくる書き方だとその辺への肌感覚が全然ないんですねという風にしか読み取れなくて残念感が先に立つんですけどね。

まあそれ以外の問題として考えますと、ロンバートを毎日ロールするのと特オペに参加するのとでは事務的な手間暇も調達した資金の流動性問題も全然違いますというようなこれまた先生様的には細けえことかもしれませんけど、実際問題として政策を回す時に実務的な論点は(まあ本職の政策担当でも市場参加者でも無い人にそんなことまで理解しろというのも無茶なのは承知してますけれども)非常に重要なのでありまして、その辺への斟酌が無いとワークするものもワークしなくなると思うのであります。

まあちょっとイチャモン成分が強いっすけど何かそんな事を思ったのでありました。まー宮尾先生はこれからそういう細かい所も是非ご理解を深めて頂きたく存じます。

あと、色々と反対意見を言う水野さんが抜けてしまうのは政策委員会が(ヲチャー的に)つまらなくなる懸念が思いっきりするのでありまして、ここは民間出身の中村さんと亀崎さん、割と反対意見が出たりする銀行出身の野田さんに期待致したいと存じます(^^)。
















2009/11/19

お題「中銀のバランスシートを使った政策に関するレポート(その1)」

これは大変に良いレポート(というかディスカッションペーパー)なので興味のある方は100回熟読すべきであると存じます。

http://www.imes.boj.or.jp/japanese/jdps/2009/09-J-22.pdf
わが国の量的緩和政策の経験:中央銀行バランスシートの規模と構成を巡る再検証

金融研究所のディスカッションペーパーシリーズで、今回は白塚さんが書いたものですが、日本の量的緩和政策および最近の主要国のバランスシート政策に関しての考察となっておりまして、論点整理としてクリアに整理されているので、ざっと読むのも良いですが、熟読すると(まだ100回は読んでませんが3回ほどは^^)なお吉かと存じます。

本当は全部読めという感じですけれども(^^)、まあ一応引用はしてよろしいようですので、かいつまんで引用させて頂きたく存じます次第、といいつつお題で(その1)とありますように、このネタで明日も引っ張ろうという魂胆が(^^)、いやマジで重要な論点が並んでいてポイントらしき所を引用するだけで結構な量になるんですけどね。


○非伝統的金融政策とバランスシートの資産、負債サイド

本文6ページ目(PDFファイルでは4ページ目、以下同様)に資産バブル崩壊後の金融対応としての非伝統的政策を中央銀行のバランスシートの規模と構成という要素に分解しています。

『こうした非正統的な金融政策は、理論的には、中央銀行バランスシートの規模と構成という2 つの要素に分解できる。非正統的政策の第1 の要素は、「狭義の量的緩和」として、バランスシートの構成を維持しつつ、その規模を拡大させることに相当する。また、第2 の要素は、「狭義の信用緩和」として、バランスシートの規模を一定に保ちながら、正統的資産を非正統的資産に入れ替えることで、その構成を変化させることに相当する。』

んでそりゃ何ぞやという事ですが、後で出てきますが、狭義の量的緩和というのは具体的には国債買入を拡大するとか、日本がかつて実施した当座預金ターゲットのような方策で、狭義の信用緩和というのはリスク資産の買入による政策で、バーナンキ議長が信用緩和と言っている(最近信用緩和言わなくなりましたが)政策という聖地になります。

『金融危機のもとで、中央銀行バランスシートの資産サイド・負債サイドはいずれも、金融システムにおけるショックに対処するために、非常に重要な役割を果たしている。資産サイドは、クレジット商品の買切りなどを通じて、民間金融仲介を代替する機能を担っている。また、負債サイドは、特に超過準備の拡大を通じ、短期金融市場における資金流動性リスクに対するバッファーとして機能している。さらに、金融仲介の機能不全は、金融機関の資金流動性リスク、そしてその結果としての超過準備需要の拡大と密接に関連しているため、中央銀行バランスシートの資産・負債サイドは、お互いに密接な関係がある。』

ってどういう事ですかという話は本文9ページ以降の『(1)非正統的な金融政策の分類学』という所に詳しい説明が。

『主要国の中央銀行が非正統的な政策手段の範囲を拡大させるに連れ、Fedの政策対応は、バランスシートの資産サイドをより重視していることが強調されている。例えば、Bernanke[2009a]は、クレジット市場を支援するFedのアプローチを、最初に信用緩和と呼び、日本銀行が2001〜06 年にかけて実施した量的緩和政策との概念的な相違を指摘した。彼は、信用緩和を通じた刺激効果は、機能不全に陥った米国のクレジット市場に向けて策定された貸出プログラムと証券買入プログラムの組合せに強く依存しているとした。』

で、さきほど引用した非伝統的政策の分類の説明のあと、ゼロ金利制約下におけるバーナンキらのかつてのバランスシート政策効果に関する考察を紹介しています。同じく本文9ページ以降です。

『Bernanke and Reinhart[2004]は、上述した非正統的な金融政策の分類を使い、短期金利が極めて低くなったとき、あるいはゼロとなったときの金融政策の戦略を概観している。彼らは、中央銀行バランスシートの構成と規模を変更する効果に加え、短期金利の将来経路に関する市場の期待に影響を与える効果を検討している。その際、中央銀行バランスシートの構成と規模の変化に伴うポートフォリオリバランス効果に主として注目している。』

『投資家が短期政府証券と長期国債を不完全代替であるとみなしていれば、中央銀行は、保有資産構成を短期政府証券から長期国債にシフトさせることで、タームプレミアムやイールドカーブ全体に影響を与えることができる。同様に、中央銀行は、マネタリーベースが他の金融資産と不完全代替であれば、マネタリーベースを拡大させることで、マネー以外の金融資産の価格や金利に影響を及ぼすことができる。』

という2004年の考察がある訳ですが、実際にそうなるのかと言うとこれがあまりワークしなかったですという話は引用ワープしてしまった本文6ページ以降の『(2)量的緩和政策の効果』の所にございますので、詳しくはそちらによって熟知すべしです。と言いつつちょっとだけ脱線しますと、最後の方に出口政策の策定ポイントの話もあるのですけれども、そちらにも少々悪態成分が入っているように見えますが、この部分ってしらっとバーナンキ議長に対する悪態成分が入っているように見えますがどうなんでしょう(^^)。

で話を戻しますと、現在の政策もこのポートフォリオリバランス効果とは別の役割を勘案しつつ行われていますわなという説明がその次に。

『しかしながら、今次金融経済危機への政策対応においては、中央銀行バランスシートの資産・負債サイドはいずれも、ポートフォリオリバランス効果と異なる役割を担っている。』

つまりどういう事かと言いますと。

『資産サイドは、例えば、クレジット商品の買い切りなどを通じて、民間金融仲介の代替として機能する。他方、負債サイドは、特に超過準備の拡大を通じ、短期金融市場における資金流動性リスクのバッファーとして機能する。さらに、金融仲介の機能不全は、金融機関の資金流動性リスクと密接に関連し、超過準備の需要を高めることにつながるため、資産・負債サイドは、お互いに密接に結び付いている。』

ということで、先ほど引用した冒頭まとめ部分の説明になっておりますが、「具体的な特定資産の購入(狭義の信用緩和)」が「市場機能の代替」として機能し、「超過準備の拡大(狭義の量的緩和)」が資金流動性リスクのバッファーとして機能という整理になりますが、狭義の信用緩和をしないと行けない状況というのは即ち金融市場が機能不全に陥っているという事ですから、当然ながら資金流動性リスクも高まっている訳で、特定資産の買入によって超過準備が拡大した場合にそれを引くかというと引く必要は無いという場合もあるので、そこを厳密に分けるのが意味あるのかというと微妙になるので、そのあたりのパッケージとして「広義の量的緩和」という説明をしていますがそこの引用は割愛しまして次に。


○バランスシートをどう拡大させるのかは金融システムの状況次第

続きになります本文10ページの『(2)中央銀行バランスシートの規模と構成に関する決定要因』という所から。

『上記の非正統的な金融政策の分類に示されたように、中央銀行は、非正統的な金融政策を、バランスシートの規模と構成を変化させることで実行している。この場合、必要とされる規模と構成の変化は、経済情勢、特に金融システムの情勢に大きく左右される。』

『例えば、金融仲介の機能不全ではなく、資金流動性リスクに対する懸念が高まり、超過準備に対する需要が増加したことから、バランスシートの規模拡大が生じているのであれば、通常の金融市場調節によって、そうしたバランスシートの拡大に対処できると考えられる。この場合、日本銀行による量的緩和政策期のように、通常の金融市場調節においても、満期を延長していくことが考えられる(図5)。これは、金融市場調節の対象とする金融商品の種類の面ではなく、満期の面で、ある種の信用緩和を行っているとみることもできる。』

なるほど、満期の面である種の信用緩和とは言いえて妙ですな。

『逆に、超過準備需要ではなく、金融仲介の機能不全が中央銀行のバランスシート規模の拡大の拡大を促しているのであれば、非正統的な金融資産の購入を拡大させる必要があるため、この資産サイドの拡大に見合った形で、何らかの中央銀行負債を増加させる必要が生じることになる。』

ということで、ここまで来ると次は日米の比較の話が出てくる訳ですな。

『図 10は、日本銀行とFedのバランスシートを示している。このグラフからは、負債サイドの拡大は、日本銀行、Fedとも、主として超過準備の増加によってもたらされており、平時において、最大の負債項目となっている通貨は、相対的に安定的に推移していることがわかる。』

で、その図10というのは本文31ページにありますので熟知すべし。

『これに対し、資産サイドの拡大要因は、両者の間で顕著な違いがみられる。日本銀行は、国債とその他の伝統的資産が増加している。Fedは、短期貸出だけでなく、為替スワップ、クレジット商品やエイジェンシー債、エイジェンシーMBSなどの買入れが拡大している。つまり、日本銀行とFedは、流動性リスクに対処する超過準備需要の増加を、異なる種類の金融資産を購入することで対応しているとみることができる。』

当然ながらその違いは金融市場などの構造の違いによるものですという話が続きます。まあ皆様既にご案内の通りとは存じますが引用。

『購入対象となる金融資産の違いは、各国経済の金融構造の違いと密接に関係している。図11は、日米の金融構造の違いを示しており、わが国は銀行中心の金融システムである一方、米国は市場型の金融システムであることがわかる。米国の金融システム、特に、サブプライム住宅ローンに密接に関連していたクレジット市場は、深刻な機能低下に見舞われている。これに対応するため、Fed は、クレジット市場や関連する市場に積極的に介入する信用緩和手段をとり、機能不全に陥った民間の金融仲介を、Fed のバランスシートを使って、一時的に肩代わりしている。さらに、こうしたクレジット市場の機能不全は、金融機関の資金流動性リスクとも密接に関連しており、結果として、バランスシートの負債サイドに大規模な超過準備が積み上げられている。』

つーことですな。


○以下予告編とガイダンス(^^)

今回は引用をすっ飛ばしてしまいましたが、本文6ページ以降にあります『(2)量的緩和政策の効果』の部分は当時の市場の中にいた人的にはまー体感的にはご案内の通りかと存じますが、どういう整理が行われてどういう考察が行われているかという点に関しては中銀がどう考えるのかという事の理解にも繋がりますので熟知すべしと存じます。当時の市場の中にいなかった方はその前の『2.日本銀行による量的緩和政策』という所、つまり4ページ目から熟知すべしと思いますので念の為。

さて、この先ですけれども、今後の金融政策に関する考察にもなりますネタであります「政策コミットメント」に関する論点が本文12ページ以降に整理されていまして、まあおまえ何で今日そこを引用しないというツッコミに関してはまあここまでで結構な量があったから勘弁ということでご容赦頂きたく(^^)。

で、その後に本文14ページ目から『4.若干の考察』として『上述した非正統的な金融政策に関する理解を踏まえ、本節では、非正統的な金融政策の実践を巡る論点について、やや掘り下げて検討する。』として4ページほどの考察があるのですが、この考察がまた味わい深いので、明日はその辺りもご紹介させていただきたく存じます。


以下本件と関係ない雑談雑感。

○妙に輪番増額予想が増えていますが

MPC直前になると出てくるブルームバーグの日銀サーベイ。

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aiK6yVhoYmT0
政府のデフレ宣言で高まる日銀への圧力−国債買い入れ増額の可能性も

微妙な面子も混在しているサーベイ(まー立場上ムリですけど本石町日記さんをサーベイに入れておけと^^)なのですがまあそれは兎も角として、何か輪番増額の話が増えているのは「ふーん」という感じ。いやまああっしも昨日「追加緩和と言われて最初に思いつくのが輪番ですけどねえ」と申し上げた次第ですので、まあ最初に考えたらそうなったってえ所なのでしょう。

ただまあ長期国債買入増額という案件に関しては、既に米国様におかれまして巨大な長期財務省証券の買入を実行したら長期金利が1%上昇したでござるの巻というファンタスティックな政策効果を実演してしまったという事案もこれありということでございまして(^^)、流れ的には明示的なコミットメントの無い仄めかし時間軸というか何というかというのが政策としてはあるのかねえという風に思える次第で、まー出るとしたらそっち方面じゃないでしょうか。
まー輪番増額に関してはタマ的にはど〜せまた後日出てくるであろう国債発行絶賛大増発ネタと絡めて債券市場が不安定になる所で切る方が(それじゃ財政マネタイズじゃんというツッコミはさておきまして^^)よかろうとは直感的に思うのですがどうっすかね。

これが福井の俊ちゃんが総裁だとすると話は全然別で、政治力100インチキ力100を誇る俊ちゃんであれば、なんちゃって緩和政策を果断(?)に実行!ということになると思いますけどね・・・・










2009/11/18

お題「ニュースやら相場の雑感ばかりで恐縮至極」

ここもとの経済指標をみるとローゼンの対策が当を得ていたというのが良く判りますが、その話を全くと言って良いほどテレビは報道しませんね

○さあ日銀にケツ持ち攻撃がやって参りました!

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-12500120091117
月例に「デフレ懸念」盛り込みへ、金融政策への期待感も

デフレ宣言って何じゃそりゃと思ってたら実はデフレ懸念織り込みという話だったようですが、昨日最初にニュースのヘッドラインとして出ていたのは記事中にある菅さんのこの辺のコメント部分。

『その上でデフレへの対応で、菅副総理は「デフレ的傾向がこれ以上強まらないよう日銀とも意思疎通をきちんととっていきたい」と述べると同時に、日銀の金融政策に関して「金融緩和の現状を変えることはまだしないとのニュアンスを受け止めている」と緩和政策継続を表明している日銀の姿勢に理解を示した。』(上記URLより)

という辺り(「日銀とも意思疎通をきちんととっていきたい」ってな所ですな)が最初にヘッドラインに出てまして、まあそれ自体で相場がどうのこうのという事では無いですけど、上記記事全体を読めばお判りのように、ニュースから受けるトーンは「そら来た日銀のせい攻撃」という感じで、早速政治圧力が来ましたねえというのがニュースを見た市場的な反応じゃねーのという感じですがどうでしょう。

#実際は峰崎さんなどが提唱している定期会合の話と変化は無いと思いますが

つまり、こういうことですわな。記事にありますけど。

『政府内では「半歩か一歩かは別にして、デフレ懸念の判断を進めなければならないとの認識に至った」(関係者)とされ、「デフレ懸念」の文言盛り込みによって日銀に政策対応を促す狙いも見え隠れする。』(上記URLより)

・・・・だから言わんこっちゃ無いという感じでして、何も利用実績僅少だから別に残しておいても実害の無いCP社債買入(社債はまだ買入あります)の解除とか、特オペの「期限延長をして解除も明言」というような(単に延長だけすりゃいいのに)事をぶち上げて政府サイドに「付け入るスキを与える」必要も無かったのにとは思います。>にちぎん

ただし、亀井さんみたいな攻撃じゃないので、菅さんのケースだと臨時措置の解除云々と関係なく「日銀にケツ持ち攻撃」が来た可能性はオオアリクイでございますので(^^)、別に関係ないじゃんという異論は認める(^^)。

まーそれはそれとして、毎度おなじみの「はいはい日銀のせい日銀のせい」という困った時のケツ持ち攻撃がもうおっぱじまりやがりましたかという感じでありまして、あたくし的な感想としては「おーおー政府の梯子外し攻撃が来たよ」という感じで受け止めるのであります。で、自民党政権と違って民主党政権の場合は人民裁判上等という大変に素敵な人達の集まりでございますので、どんな圧力を掛けてくるのか楽しく見守って行きたいと存じます。

しかし緩和って何するんじゃという感じですけど、利下げはなかろうと思うので、そういう中でシロートに判り易い(けどあまり問題が起きそうにない^^)緩和政策って何でしょうかねという所でして、まあ輪番増やしつつ長短の比率をいじってあまり長期の買入が増えすぎないようにするのがインチキ的な緩和した振り攻撃になるかなと思いますが(おいおい)、あんまりイメージが湧きませんなあ。昨年の今頃とは違いまして、今回緩和でどうのこうのという事をするんでしたら「見かけが派手だけど張り子の虎」系のまあ端的に言えば30兆円攻撃みたいな施策の方が無難(昨年は逆で、見かけはいいから市場の資金の回りを何とかしてくれ状態でしたからねえ)なんでしょうな。緩和が足りないという方には怒られそうですが(^^)。

#つまり、輪番の短期部分を短国買入に振りかえるみたいな見た目が地味なモノは切るカードじゃないでしょという事ね

なお、亀井発言に続いての菅さんの発言のため、「政府の日銀への圧力キタコレ」ということになったでござるの巻というのを認識したのかどうか知りませんが、後から菅さんちょっと火消しっぽい発言をしてますね。

http://jp.reuters.com/article/domesticJPNews/idJPJAPAN-12504320091117
デフレ懸念発言、日銀との認識の差を否定=菅国家戦略相

・・・・ところで、その記事の2ページ目にエコポイントの継続がどうのこうのという話がありますが、無駄だのバラマキだの言って批判していたのはどこのどなたでしたでちゅかねえ。


○決意表明はいいから(ry

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aj4lDbjfWVu0
藤井財務相:何とか国債の増発を抑える−来年度予算編成

はいはい決意表明決意表明。

前も書いた気がしますけど、国債発行が増えるという話をネタにしても、相場なんちゅうのはまあエエカゲンなものでありまして、買い材料にする時は「国債発行を増やすのは経済状況が悪いからである」とか言って買い材料にしますし、売り材料にする時は「財政の維持可能性がどうのこうの」「需給悪化がどうのこうの」というような事を言い出すのが市場の仕様であります。ついでに言えば先週債券市場が買われている所でどこぞの経済クオリティーペーパー(笑)が「事業仕訳(に示された財政規律堅持姿勢)を好感して国債が買われる」という後講釈を連日垂れ流しておりまして、市場参加者の腰を大いに砕いてくれたかと存じます(−−)。

結局のところ、国債の増発を抑えるったって物理的に金が無いものは無いのでありまして、見た目の国債増発を抑えても特別会計とかに皺寄せをして、どうせ見た目操作をするだけの話でしょとゆーのは基本的には市場ちゃんは織り込みのでありまして、変にインチキをしようとする方が市場的には「何じゃそりゃ」状態になるんじゃネーノと思うのですけどねえ。

大体からして財務大臣がそういう表明している傍から別の話がボロボロと出て来るという時点でどうかと思うのだが。


○これは酷い

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091117-OYT1T00930.htm
日銀総裁人事に民主・西岡氏、反省の弁

『西岡氏は、「純粋に武藤さんがいい、悪いという前に、政治状況があった」と述べ、当時の自公政権と対決するのが主眼であったと説明した。そのうえで「(財政運営と金融行政を分ける)『財金分離』を理由に武藤さんがはねられたのは、今でもおかしいと思っている」と語った。』(上記URLより)

・・・・・何かね、おまいら全員揃って桜島か阿蘇山の噴火口に飛び込んで頂けると誠に有難く存じますと思うのですけど。


なんつーか、政治権力を獲得する為にはペテンでもインチキでも良いから兎に角受けを取れば良いっていうのは困ったもんだというか情けないというか、正直言って小選挙区制度って日本には向かないんじゃネーノとまで思う(中選挙区でいいじゃん)のですが、冷静に考えてみれば、そもそもこの手のペテン的手法でアピールするというのは小泉劇場から始まっている訳であります(郵政民営化で何でもかんでも良くなりますの説明は酷かったですわなあ)ので、民主党は単にそれを正しく継承しているだけなんですけどね。


○悪態ばかりでは何なので市場雑談

昨日は1年TBの入札でしたが、まあ0.19%割れ水準での決着。先週の頭の時点では0.20%乗せもという感じでしたが、ご案内の債券絶賛買い攻撃によりまして地合いが好転するわ2年カレントは0.25%を割り込むわ(昨日は大体0.24%、引けは235でしたけど)という大変に素敵な展開になったので、まあ2年が0.2台前半で3か月が0.15%からちょっと乗った所にいるという状況であれば、1年が0.2というのは無理があるのでこんなもんでしょ。

で、今日は3か月TBで明日は2か月TBの入札がある訳ですが、GCレートも普通に0.13%で安定してますし、共通担保や現先オペの金利も何でもかんでも足切り0.13%という感じになっていまして安定してますので、普通にそこから線を引っ張ってきて3か月で0.15%台のどこかとかいう話になるんでしょ。波乱無し波乱無し。

#そのうち増発攻撃が来ると思うのですが、いつ来るのか良く判らん

んでもって昨日の輪番では1年未満の方がひさびさに甘めの結果(まあ1年以上の所もちょっと甘かったが)になっていましたな。いやまあ何か色々とインプリケーションがあるような気がしますが敢えてその辺は割愛。

先々の問題としては短国がここからどの位増発されるのかという話やら、目先では12月20日(21日)の大量償還越えのオペが足りなくならないかという(ここもと毎度毎度そこのオペが足りなくなる)話がネタになるんでしょうな。金融政策決定会合は特にネタにはならなさそうですが、月報の表現はどうなるのかなあという所で。

#長期金利低下のニュースが日経の記事になってしまいましたな(ニヤニヤ)。











2009/11/17

お題「相場も戻っててーしたネタも無えのだが」

まずは総裁講演。お題は「バランスシート調整と世界経済」。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko0911e.pdf

○バランスシート調整に関しては厳しい見方を

バランスシート調整は当面続いて厳しいですよという話はいつものように行っておりまして、まーその辺りは割愛しますけれども、日米のバブル崩壊比較に関しては(微妙にピンポイントで引用しにくいので勝手にまとめると)こんな感じのようで。

・日米の過剰レバレッジの規模はGDP対比でみた場合ほぼ同程度
・バランスシート調整を行う部門は日本では企業部門だったが、米国では家計部門となっている点が違う
・政策対応に関しては、利下げ開始は日米とも同じような時期(不動産価格のピークから1年後)だったが、金利の下げ速度は米国の方が速い。
・ただし、不良債権問題が証券市場価格として出る米国と貸出債権の劣化として出る日本では不良債権問題の顕在化速度が違う
・金融機関への公的資金注入規模は日本の方が大きかったが、速度では米国の方が速い
・ただし、米国の場合は依然として不動産価格下落やローン債権の劣化が続いている点は注意が必要

つー感じですな。結局のところ結構厳しい見方をしているという感じでございますけど。


○日銀は別に「利上げで個人消費活性化」とか主張してませんがな

という話の続きで政策対応に関して。

『政策対応に関する第2のポイントは、金融政策の有効性の評価です。日本の経験が示すように、バランスシート調整下の経済では、金利引き下げという金融緩和の効果は大きく低下します。もちろん、このことは、金融緩和政策が効果を発揮しないという意味ではありません。金融緩和は、過剰債務を抱えていない主体の支出やリスクテイクを促し、マクロの支出・所得を下支えします。また、利払いの減少を通じて、債務削減を進める効果があるほか、資産価格を下支えし、バランスシートの修復を速める効果も期待できます。』

というのはまあ普通の話ですけど。

『バランスシート調整下での金融政策運営の観点から、日米間での特徴的な違いのひとつは、経済主体間の所得移転効果です。』

ほほう。

『経済全体では、当然のことながら、過剰債務を抱えた主体に対応して、過剰貯蓄を抱えた主体が存在します。』

さよですな。

『日本では、利下げにより、膨大な資産を保有する家計部門から、過剰債務を抱えた企業部門へ大規模な所得移転が発生しました。所得分配という点だけからみると、家計の利子所得の減少を通じて消費が何がしか抑制されるという面はありましたが、バランスシート調整の主体が企業部門であっただけに、利下げは、調整の進捗を円滑にし、経済活動全体を下支えすることで、最終的には家計部門の雇用者所得を、ひいては日本経済をしっかりと守る効果があったと判断しています。』

まあ日銀総裁が普通にこう言うのは当たり前なんですけど、国会に呼び出されて「利下げによって家計の利子所得が幾ら減ったか計算しろ」とか言う馬鹿議員の相手をしただけで「日銀は利上げで家計所得サポートというトンデモ主張をしている」とか批判する向きが結構見受けられるのは残念としか申し上げようが無いので、まあ引用させて頂きました次第。


○バランスシート調整も経済構造の違いで違ってきますというお話

んじゃ米国はどうかと申しますと。

『一方、米国は、日本と異なり対外純債務国ですから、利下げにより、海外の債権者に対する利払いが減少する結果、海外部門から米国内への所得移転が発生します。つまり、米国の場合は、利下げによって自国に有利な所得移転が発生し、この面ではバランスシート調整の進捗には有利な立場にあると言えます。もっとも、低金利の継続には、潜在的リスクもあります。低金利の継続で先行きの予想物価上昇率が高まったり、ドル安予想が生まれたりして、長期金利が大きく上昇するようなことがあると、財政負担が増加し、政府のバランスシート調整という別の問題が生じる可能性があります。』

ここの所が微妙に良く判らんのですけど、イメージしているのは景気回復を伴わない長期金利上昇という話なのでしょうか?米国に関しても現下のリスクはインフレよりもデフレであって、別に予想物価上昇率が高まったりドル安予想が生まれる分にはバランスシート調整の進捗が進みやすくなるような気がするんですが、まああんまり低金利万歳の話ばかりするのはDNAが騒いで落ち着かないのでどっかに過熱警戒という文言を入れたくなるのではないかというのは邪推ですかそうですか(^^)。

で、その続き。

『バランスシート調整の主体の違いは、所得移転効果以外にも、調整過程に重要な差異を生みます。日本の場合、企業部門がバランスシート調整の主体でしたから、世界経済の高成長を背景とした輸出の増加によって、経済全体のバランスシート調整が進捗しました。』

ただし今回は違いますよと。

『今回は、先進国が程度の差こそあれバランスシート調整の影響を受けていることから、前回日本が享受したような輸出の大幅な増加という追い風には期待しにくい面があります。加えて、今回、米国では、過去に比べ、雇用者所得が大きく減少しています。このことは、企業収益の回復にはプラスですが、家計のバランスシート調整を遅らせることも同時に意味します。』

まあ新興国が何とか引っ張ってますけど、主要国の金融政策当局が出してくる景気先行き見通しを見ると、回復のドライブがどこもかしこも「輸出が伸びると良いですね」状態になっているのが泣ける次第。

『そう申し上げた上で、急いで付け加える必要があるのは、米国の経済構造には、バランスシート調整を早期に進捗させる要素もあるという点です。必要とされるバランスシート調整の規模は、長期的な均衡成長率──潜在成長率と言っても良いですが──、と比べて、経済の抱える供給能力が過剰かどうかによっても左右されます。成長期待が高ければ、バランスシート調整の圧力は小さくなります。』

じゃあ日本はダメじゃんという悲しい話になりますが、その先は予想通りの話の展開になっております。

『この点、米国は、何よりも経済構造が柔軟であるのは大きな強みです。労働や資本が生産性の低いセクターから高いセクターに素早く移動すれば、経済全体の生産性の伸びが維持されやすくなります。一方、日本では、少子高齢化から生産年齢人口の伸びが低下する中で、労働や資本の移動が相対的に少なく、そのことも一因となって経済全体の生産性の伸びが徐々に低下しました。その結果、バブル崩壊後の潜在成長率が低下し、バランスシート調整はその分長引くことになりました。』

それは残念なのですが、何か構造改革をしましょう的な香りが漂ってくる流れなのが微妙な感じもするのであります。つーか政策対応の話よりも構造問題の話の方が後半多くなっていますな。

ということで、散々引用しておいて目先の金融政策に対するインプリケーションは特にございませんなという結論になりましたが(おいおい)、とりあえず主要国の今般のバランスシート調整に関しては先行きの見方を相当厳しいものとしているというのは間違いなさそうだというのは把握しました。


以下別の話題、というか悪態。

○何つーか言葉遊びとかは良いから早い所結果を寄こせ結果を

「言い訳はいいから結果はどうした!」とか書いていると過去の記憶が蘇って参りまして冷汗三斗なのでございますが(−−;)

相変わらず政権の皆さまにおかれましては色々とご活躍のようで・・・・

・後から言うなら議決延期請求しろよ

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-12445620091113
日銀は数字の奥にあるものを見る力が少し弱い=亀井担当相

えーっと、あたくしの駄文をお読みになっておられます皆様におかれましては、あたくしがCP社債買入解除は「別に使われてないのだから弊害も特に無い訳で、解除する事も無いじゃん」と申し上げておりました(ついでに言えば特オペの「解除前提の延長」も黙って延長だけで良いじゃんと思いますが)から亀井さんがCP社債買入解除に反対するのはまあ判るんですけどね。

でも、市場の片隅でくだ巻いているようなチンピラゴロツキのあたくしとは亀井大先生は立場が違う訳でございまして、後出しじゃんけんのように後から文句言わないで、内閣府担当大臣なのですから議決延期請求すりゃ良いじゃんと思う訳ですよ。閣議で否決されたら連立離脱したら参議院で何でもかんでもひっくり返せるでしょ(ニヤニヤ)。

そーゆー時にはスルーしながら後から言うのってただのアリバイ工作にしか見えないのでありまして、実に残念なお話ではございます。で、それが英語ニュースになるとトーンが異様に強くなるのが日本初の英語ニュースの仕様でございます(ロイターは特にその傾向が強いが、ブルームバーグも似たようなもんです)。

http://www.reuters.com/article/rbssFinancialServices%20-%20Diversified/idUST14742720091113
UPDATE 1-Japan's Kamei snubs BOJ over economic analysis

TOKYO, Nov 13 (Reuters) - Japanese banking minister Shizuka Kamei, a frequent critic of the Bank of Japan, said on Friday that the central bank seemed a little weak at analysing the economic conditions behind statistics.(以下略)

いやはや何とも・・・・


・宣言するのは良いから何をするのよ何を

昨日の昼ごろ出ていたニュースですが、金利市場は全然反応してませんでした(^^)。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aAtXxNrJElTU
政府:「デフレ」を宣言へ、11月の月例経済報告に記述も−日経

まあデフレ宣言も糞も物価が下がっていますと言う意味ではとっくの昔に下がっているのでありますから、債券市場ちゃん的には「何を今更」感が拭えませんが、そもそも内閣府って「デフレ脱却宣言」してましたっけという華麗なツッコミも出来るくらいに少なくとも国内金利市場的にはどうでもよい話だったりします。

#既に展望レポートで泣ける物価見通しが出てますしねえ

だから宣言するのは良いのだが、じゃあそれに対して経済対策はどうするのかと小一時間問い詰めたいのでありますが、訳の判らん人民裁判パフォーマンスは良いから予算を出せ予算をと思う次第。

・・・・と思っていたら引け後にはこんなニュースが。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aqn2_eCvpXHw
今年度税収37兆−38兆円程度に大幅減−新規国債50兆円超確実に

なるほど、税収が減った事をネタにして長期金利が上昇すると政権が叩かれる要因になるので、デフレ宣言をして長期金利上昇をしないようにしたいという事ですね、わかります。

#おまえは悪意でモノを見過ぎという異論は認める(^^)


・もうね、アホかと馬鹿かと

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a3QvfNNYpHLU
直嶋経産相がGDP数値を漏洩−「市場理解乏しい」の声も(Update2)

何つーかさ、何でこれでデージンの首が飛ばないのと思うのですが、そう言えば昔もこんな感じでポロリをしてた人がいましたなあ。全く持ってケシカランのでありますけど。


・ちょっと前のネタですけど文革ですかそうですかという話

話題になっていたから皆様ご存じかとは思いますけどこの際クリップ。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20091113k0000m040079000c.html

『仙谷由人行政刷新担当相は、来年度予算の圧縮を目指す「事業仕分け」について「これまで一切見えなかった予算編成プロセスのかなりの部分が見えることで、政治の文化大革命が始まった」と意義を強調。』

・・・・文化大革命だから人民裁判なんですね、それからこんな感じで批判してるあたくしは「実権派」という事でリンチ対象にあわわわわ。










2009/11/16

お題「量的緩和政策に関するBOEの説明」

観月ありさがササエさんって中々良いキャストでしたな(^^)。

○またBOEネタで:量的緩和政策はクレジットの需要サイド政策とな

先般インフレーションレポートが出ておりまして、関連URLはこちら。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/inflationreport/irlatest.htm

んでインフレーションレポートの本文を読まないでキング総裁の会見とQ&Aを読んで判った気になるのはあまり宜しくないのですが(汗)、あたくしの処理能力の設定上こーゆー手抜きバージョンで。

最初に総裁が説明をしている部分(3ページなので中々結構)
http://www.bankofengland.co.uk/publications/inflationreport/irspnote111109.pdf

質疑応答(質問者の名前が全部出ています。こっちは超長いので実は全部読んでない)
http://www.bankofengland.co.uk/publications/inflationreport/conf091111.pdf

で、総裁の説明部分からまずは。

最初の部分は景気に関する話をしていまして、引用は割愛しまして、あたくしのイカサマ英語力によって勝手に超意訳しますと・・・・

・生産は回復の動きを示す指標もあるが、戻りは鈍くまだ下がる可能性も
・英国経済はバランスシート調整の途上である
・銀行セクターは異常なレベルのハイレバレッジを縮小する途上である
・将来の不確実性に対して企業や家計は貯蓄を積み上げて消費も抑制される
・英国ポンドの下落はバランスシート調整プロセスを助ける(つまり輸出頼み)

・・・ってしらっとポンド安の効果の話をしていまして、介入は実際にしていないけど為替ルートの効果を持ち出しているのがチャーミング。

で、次の第3パラグラフが量的緩和政策の説明です。

『The role of the MPC is to set monetary policy to keep overall money spending on a path consistent with meeting the 2% target in the medium term. After the introduction of inflation targeting in the UK, annual growth of money spending was always close to 5%. But over the past year it has fallen by almost 5%, meaning that it is around 10% below its previous trend.』

ということで最近はマネーの増加が増えるどころか減っていると仰せのようです。

『That is a measure of the monetary squeeze on the economy, and it has opened up a margin of spare capacity that will continue to bear down on inflation looking ahead.』

マネーの縮小と生産設備の過剰状態がインフレ抑制をしておられるとな。

『In response, the MPC cut Bank Rate almost to zero and initiated an unprecedented programme of asset purchases, which was further extended last week.』

まーどうでも良いですけど、BOE様におかれましては0.5%まで下げた所でalmost to zeroと仰せでございますが、日本では1995年9月以来ずっと0.5%以下の政策金利なのが泣けます。で、ここからが説明。

『Those purchases are aimed at injecting additional money directly into the economy. Investors will look to use some of this money to diversify into assets that have a higher return. And that in turn will boost the prices of those assets, reducing yields and the cost to companies of raising funds in financial markets.』

マネーを経済にぶち込む事による効果の経路に関しては、いわゆるポートフォリオリバランス効果によって資産価格の上昇や金利の低下が起こり、企業の資金調達環境が緩和されるという判ったような判らないような説明を。

『Ultimately, that will help stimulate spending, smooth the necessary rebalancing of the economy, and keep inflation close to the target.』

んでそれによって消費を刺激してインフレをターゲット(2%)に制御するとな。


で、需要サイドどうのこうのという話は質疑応答の部分にそんな話がございます。質疑応答のURLの7ページ目(ファイルのページも同じ)からなのですが、Daily Mail紙のSam Fleming記者の質問に対する説明にこんなんがございます。ちなみに質問は、たぶん(英語力がアレですいません)「銀行の貸出が今後も伸びない(減る)とレポートでは言及していますが、それは量的緩和政策がワークしていない事を意味しているのではないか。プライベートセクターの資産買入に踏みこんだ方が効果があるのではないか」みたいな質問だと思います。

で、その答えは「量的緩和はクレジットに関する需要サイド政策である」という話でありまして・・・・

『No, I think there's a misunderstanding here between money on the one hand and credit on the other. They're not the same. Quantitative easing is designed to try and stimulate the demand side of the economy; I'll come back in a minute to private sector purchases. But the bulk of quantitative easing is designed to inject money directly into the economy.』

ほほー

『The people who receive money in exchange for the assets that we buy will then diversify their portfolios, and that will lead to a range of impacts on other asset prices of a wide range of financial assets that will stimulate both spending and lower the cost of company finance.』

『So that's the broad mechanism, and that's to do with the demand side. The weakness of the banking sector is on the supply side - supply side of credit. And there are structural problems in the banking sector there because they are trying to deleverage their balance sheets, and that means there's a very strong incentive not to extend lending unless it appears highly profitable. And as I said, banks are finding it expensive to raise money themselves at this stage.』

銀行は現在バランスシート調整の途上であることから、量的緩和そのものが直接に銀行の貸出が増えたりする訳ではないという事を仰せのようです。

『That means that any monetary stimulus of whatever kind, whether conventional or unconventional, is likely to be facing a head wind in the form of the weakness in the banking sector. That doesn't mean to say that quantitative easing isn't working. It is. But it means that we've perhaps have had to do more than we would have done had the banking sector been working effectively, in order to try to stimulate demand in the economy.』

従って銀行の貸出が伸びない事即ち量的緩和がワークしていない事だという訳ではないという何というかもう判ったような判らんようなカオスな説明でございますな。じゃあ供給サイドって何よ?という話がその次に。

『As far as private sector purchases are concerned, this was done with a different objective. We weren't trying to inject a certain amount of money into the economy; we were trying to take a limited number of steps in order to improve the functioning of certain private sector credit markets.』

特定の民間資産購入プログラムを実施するのが資金の供給サイド政策とな。

『And to that extent, that part of the operation was aimed at the supply side. We've picked out the markets that we think it's possible for a central bank to intervene in in a generic way, without making judgements about which companies or sectors of the economy merit support.』

つーことで、特定資産の購入を行う事は、特定市場の機能回復の為に実施ということで、これは資金の供給サイド政策であるという話を仰せのようでございまする。まあ理屈として言いたい事は判るのですけれども、だから何なのよという感じもして、何となく言葉遊びチックな感じはするんですけど。

で、この答えまだ延々と続く(実は延々と3ページ位続く)のですが、後は割愛しまして、余談的に特定資産買入に関するデメリットの話の部分を引用。

『Now of course it would be possible for someone to say - well, buy lots of other private assets, in which case I think I would simply say - well, which assets and on what terms? And I think that, if it comes to buying private sector assets which discriminate among companies and among sectors of the economy - there may well be very good reasons for doing that.』

『There is no good reason for the Central Bank to do that; that is a decision which ought to be taken by elected politicians because it's putting taxpayers' money at risk, and that is not something which the central Bank should aim to do.』

これは日銀が資産買入に関して示した考え方をもうちょっと詳しく説明した感じですな(^^)。


ところで先ほどの説明に戻りますが、英国のインフレ見通しに関する話がその後に続きますが、引用しているとキリが無いのであたくしのインチキ訳を申しますと・・・・

・インフレは最近ボラタイル
・原油価格の上下や、VATの一時的な減税の影響などによるもの
・金融政策ではその手の短期的変動に関しては影響を与えにくい(ので知らんがなと言いたいのでしょう)
・中期的には経済の余剰(多分生産だけではないバランスシート調整も含め)があってインフレは抑制されている

ってな感じだと思います。で、その後はファンチャートの説明になりまして最後にまとめがございますが、そちらでも先ほどのあたくしが何となく訳したように、回復やらバランスシート調整やらはまだまだ途上だという話をしてまして、まあ基本的には当面も現在の政策を続けると言っているように見えます。

最後の最後の所を引用しますが、まあ確かにこれ見たら当面資産買入も続くと読めますな。

『We have, however, only just started along the road to recovery and the adjustment to balance sheets still has much further to run. Monetary policy cannot ? and should not seek to ? prevent that adjustment. But by acting to keep inflation on track to meet the 2% target, monetary policy can facilitate a smoother path of adjustment towards the rebalancing of the UK economy. And it was for that reason that the Committee extended last week its programme of asset purchases.』


○4か月物資金供給実施とはこれまた何の風の吹きまわし

金曜のオペ。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of091113.htm

3月12日エンドの全店オペ1兆円実施。木曜に2か月ちょいの本店オペをやっていた訳ですが、まーここもと相変わらずタームのオペが少ないですわなあと思っておった所で珍しくも長いオペを実施。

まー何ですな、先般の決定会合の結果として出てきた公表文には『当面、現在の低金利水準を維持するとともに、金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給を通じて、きわめて緩和的な金融環境を維持していく。』という文言がわざわざ最初に入ったので、一応翌日の駄文では「今日のオペに一応注目」とか申し上げておりましたが、まあ予想通り(苦笑)にオペが別に潤沢でも無く長いタームも打たずという毎度おなじみのオペを淡々と実施しておりましたなあとか申し上げたと存じます。

ただまあ今回あんまりその辺が騒ぎにならなかったのは、去年の「出す出す詐欺」(詳しくは昨年の10月から11月に掛けて散々書いてありますからそっちを読んで味噌)ですっかりその辺に対する耐性が参加者に出来てしまったという事だったのではないかと勝手に愚考する次第でありまして(−−)、翌週に決定会合を控えるというこの時期に何の風の吹きまわしか4か月物資金供給とはこれまた微妙な(^^)。まあ一応公表文にあんな事書いてあるから公約(?)実施という所なのでしょうけどね。額も1兆円でここもとのタームオペの8000とか6000とかよりも多い感じにしてますし。









2009/11/13

お題「武藤さんが講演をしてましたな/市場雑談」

おお13日の金曜日orz

○「上げ100日下げ3日」ならぬ・・・・

昨日はご案内のように大変確りちゃんの相場でしたが、まー朝から10年が強くて前場はちゃっかり高値で終了するも、後場は更に上昇とな。入札結果が出た時にいきなり上昇するのではなく、13時位から上昇とかいう展開も実にセクシーな相場上昇っぷりで、10年債は2週間半掛けて上昇した金利を3日(というか大体2日)で戻すというお洒落な展開でございましたです、はい。

よく「上げ100日下げ3日」などという相場のご教訓がございますけど、ありゃ要するに「ロングが徐々に溜まって行って最後に弾けるので下がる時は一気に死亡」という相場の動きを表現したものですけど、最近の国内債券市場に関しては「買いたい弱気」の人がわらわらといるせいなのか「ちんたら下がっていきなり戻る」という逆の動きになるのが仕様のようですな。ちょうど8月にも10年1.45%ちょっと乗せまで金利上昇したらいきなり戻ったでござるの巻というのがありましたが、まー良い感じで似たような動きということですな。

そーいやまあろくすっぽ動かん市場ですけれども、超短い所だと短国も動き的には最近は似たよーな事をしてたりしまして、こちらの場合は基本的にはあんまり動かないのですけれども、何らかの事情(というか買い手が減った場合)に毎週の入札で落札結果が出たらセカンダリーで平均オファーという事になって、そのまま平均オファーがダラダラ続きますと「まあ入札で慌てて買わなくても良いじゃん」となりますわな。で、そーなりますと「じゃあ入札で行かなくても」となり、徐々に入札のレベルが切り下がって来るでござるの巻となって来るんですな。ただし、金利上昇するって言いましても当然どっかで買いは入るのですから、どこかのレベルでドカンと買いが入っていきなり戻るというのがここもとの3か月TB入札クオリティという感じですな。

と言いつつ水曜の入札は新発は踏みあがりましたが、既発に広範囲に買いが入った感じでは無かった気が。でもCPレートが大手リースさんで3か月0.15%レベルまで上昇してたのがここ2日でまた下がって来たということは、まあこの辺りのマインドセットも水曜の入札で改善したんじゃないのかなと思われる次第でありまする。


○武藤前副総裁の中々結構な講演

JPプレスってもう開設1周年だったんですかそうですか。早いもんですなあ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2131

良く見ると中々いい話が続いておりますな(^^)。

『武藤氏は「われわれの経験では一度巨額の財政出動を行うと、単年度で終わることはない。何度かやらないと政策的にもたない。2010年前半の日本のGDPは四半期ベースでマイナスになる可能性も否定できない」と懸念を示した。物価に関しても、「需給ギャップがどれぐらい続くかがポイントになる。2010〜11年、さらに先までCPI(消費者物価指数)のマイナスが続くかもしれない」と述べ、デフレ長期化のリスクを指摘した。』

ということで、まー上記URL先(全部で6ページ)読んでつかあせという所ですが、あたくしとしては俺様備忘録でもありますので引用させて頂きとう存じます。

んでもってまずは2ページ目から引用。

『私は(日銀副総裁を務めていた)2003年頃、米連邦準備制度理事会(FRB)の幹部に「日本の経験から見ても、現在の米国の住宅市況はバブルそのものだ」と指摘したことがある。ところが、FRBは「日本の土地バブルは投機から始まったが、米国は実需に基づく値上がりだ」と(反論し)、バブル論には耳を傾けてくれなかった。』

(;∀;)イイハナシダナー

んでもって、かつての日本も米国も初動動作が遅れて損失拡大を招いたという話をしていますが、日本の処理が遅れた件に関してもいい感じでコメント。

『ここで日本の金融破綻処理を振り返ってみると、1995〜96年の住宅金融専門会社(住専)破綻に際し、6850億円の公的資金を注入するために一国会を丸々使う大議論になった。金融機関への税金投入に対し、国民に強い抵抗があった。その上、住専が預金を取り扱わないノンバンクであり、国民の問題として認識されづらかった。その後、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行の破綻で何兆円もの税金を投入したことを考えれば、なぜ6850億円であれほどの大騒ぎをしたのか。日本にとって、金融破綻処理がノンバンクから始まったのは非常に不幸なことだった。』

そして住専国会を住専国会にしたのは・・・いやまあいいですけどね。

『米国は2008年のブッシュ政権下で金融安定化法が成立し、7000億ドル規模の公的資金注入を決定した。そして、それは自動車メーカーであるゼネラル・モーターズ(GM)にまで投じられることになった。信用秩序を維持して預金者を保護するという大義があるからこそ、金融機関への税金投入は正当化される。産業救済のための税金投入は同じ理屈で説明し難いが、米国にとって最も重要な産業であるGMの救済は一種の政治的な決断だった。』

『米政府がGMを救済した途端、日本でも産業界に公的資金を入れるムードが高まった。住専にあれほどのアレルギー反応を示した1990年代の感覚ではとても考えられないことだ。リーマン・ショックが起こった際、「日本のバブル崩壊の経験を米国に活かすべきだ」という議論が行われた時期もあったが、結局のところ日本の政策は米国の後追いをしているだけかもしれない。』

(;∀;)イイハナシダナー

というか、何かこう辛口の指摘連発という感じですな。「金融問題を政局にするのはケシカラン」から始まって、「公的資金投入は信用秩序維持と一般預金者保護の為に行う」という指摘は、昨今の何でもかんでも公的資金で救済みたいな話をするどっかの誰かさんへの批判を暗に行っているように見えまして、誠にイイハナシダナーな講演。

んでまあ経済見通しに関しては厳しい見方が示されていますわな。

『日本経済に関しては、米国向け輸出の回復がカギを握る。「内需主導による景気回復」という理想論は何十年も言われ続け、結局は実現していない。次の景気回復も外需主導にならざるを得ず、米景気の動向は1つのポイントだ。』

>何十年も言われ続け、結局は実現していない
>何十年も言われ続け、結局は実現していない
>何十年も言われ続け、結局は実現していない

・・・・何という身も蓋もない指摘(^^)。

『米国の個人消費は良い数字、悪い数字が入り乱れているし、失業率は10%を超えて当面は高止まりが続くだろう。米経済は順調な回復が想定されるものの、リスクがないわけではない。』

さいですな。

『日本は(麻生太郎)前政権が2009年4月に15兆円の大規模補正予算を編成した。基本的に財政出動には単年度のワンショット効果しかなく、出動効果が剥落すると逆にマイナス成長になってしまう。我々の経験では、一度巨額の財政出動を行うと単年度で終わることはない。何度かやらないと、政策的には持たない。もちろん実体経済がよくなれば別だが、それが良くない中で政策的な下支えをすることで今の成長がある。2010年前半の日本のGDPは、四半期ベースでマイナスになる可能性も否定できない。』

『もう1つはデフレ問題だ。消費者物価指数(CPI)は2008年に原油価格高騰で2%を超えていたが、その後は反転してマイナス圏に突入した。エネルギー価格と生鮮食品を除いた「コア・コア」CPIもマイナス圏にあり、デフレ的状況を示している。需給ギャップがどれぐらい続くかがポイントになるが、2010〜11年、さらに先までCPIのマイナスが続く可能性がある。』

まあ厳しい見方ですわな。

『メインシナリオとしては、日本経済は少しずつ改善に向かっていると思う。「二番底」という表現は大げさなので避けたいが、しかし必ずしも順調な回復ということにはならないだろう。2010年前半の成長率が実際にマイナスとなれば、さらなる財政出動や金融政策といった議論が巻き起こる可能性もある。』

ということで、まあそう簡単に行きませんと言う見通しですが、金利市場の中の人達の見方も比較的似たようなもんだと思います。「財政破綻ヒャッハー」シナリオはまた別の次元の話ではございますけど。

んでもって最後のページに質疑応答があるのですが、これがまた味わい深い。

『――鳩山政権の政策運営をどう見るか。』

『武藤氏 政権交代から100日の「ハネムーン期間」は温かい目で見守りたい。ケチの付けどころは色々あるかもしれないが、これまでの政権も何もかもが理想的に行われてきたわけではない。』

つまり101日目からは厳しくケチを付ける訳ですね、判ります(違)。

『民主党は政権を取って初めて色々なことに遭遇し、意思決定をしていく時期にある。2010年度予算編成を通じて、財政赤字や社会保障政策などについて総合的にどのように考えているのかを示すことになる。予算は総合戦だ。そこで何か不足があれば、批判をするなり、対案を提示するなりしていけばよい。また、情報を収集・整理し、政治家が政策判断をするための材料を提供するシンクタンクとしての中央省庁の機能は、どの国においても不可欠な機能だ。役人を活かすか否かは、政治のやりよう次第。もうちょっとうまく連携プレーが図れるといい。今のままでは、十分な連携プレーとは言い得ない。』

全然温かい目じゃねえっす武藤さん(^^)。


『――日銀がインフレターゲット(物価目標)を導入することで、デフレ脱却は可能になるか。』

『武藤氏 世界的に見ると、インフレターゲットの導入はハイパーインフレーションの修正がその目的だった。デフレ脱却のためにターゲットを導入した国はない。金融政策は引き締めは得意なのだけれど、緩和方向には大きな効果を発揮しづらい。それは、むしろ財政政策の役割になる。インフレターゲットは一定の状況下では有効な政策かもしれないが、常に正しい政策とは言えない。』

ハイパーだと大げさな気もしますが、高インフレの是正の為にというのはさいでござんすな。まあこれ質問する方も(単に記事の都合上簡略化しているのだとは思いますが)アレでして、導入するだけで特に何もしなかったらそりゃ脱却はできない訳ですから(宣言するだけで勝手に脱却出来るなら誰も苦労はせんし、どこぞのマービンキング総裁が毎度毎度財務大臣宛に詫び状書かんで済みますわな)、本当はどういう質問したのかなという興味は少々。

>金融政策は引き締めは得意なのだけれど、緩和方向には大きな効果を発揮しづらい。それは、むしろ財政政策の役割になる。

というか金融政策と財政政策が方向性を一緒にした時に効果が出るんでしょうなって思いますが、金融政策は実体経済への波及に掛かる時間が少々ございますので、物価指数のような遅行指標に対して1点張りのターゲットを設定して厳格運営するという話になると、引き締めにしても緩和にしてもやり過ぎになる(効果が出るのに時間が掛かるので、結果を確認してから政策終了させると終了させる頃にはやり過ぎになっているつー事で)のではという悪感もしますな。

#だから最近のBOEなんかもその辺はまあファジーに運営しているのでしょうけれども

ま、そもそもインフレターゲット言う人も厳格に適用しろというような極端なお話をする人はさすがに見受けられませんので、微妙な質疑応答のようではございますけどね。

なお、JBプレスに載っている方には説明用のグラフとかもあってオモロイので、ここまでお読みになった方はそっちのサイトもご覧下さいませなのです。












2009/11/12

お題「今日も小ネタ雑談でございまして」

気温が乱高下するだけでやたら疲れますわな。

○これは中々

昨日出てた日銀レビューですが。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j15.pdf
世界的な金融危機の波及とグローバルな銀行活動
―― 既存研究からのインプリケーション ――

ということで冒頭から引用するでござるの巻。

『サブプライム・ローン問題の発覚を契機とした米国発の金融ショックは、その影響を増幅させながら世界各国に急激に波及し、世界的な金融危機を引き起こした。このような世界的な危機の拡大は、金融混乱前の信用拡張期において、技術革新や規制緩和、並びに世界的な低金利環境を背景として、国境を越えた利回り追求が盛んに行われてきたことと密接に関係している。特に、国際的に活動する銀行は、その活動範囲を地理的にも業容においても拡大させながら、世界的な信用拡張を牽引してきたが、その結果、一度金融ショックが発生すると、その増幅と波及のチャネルと化してしまった。』

『主要国銀行部門の国境を越えた銀行活動の姿を、国際決済銀行(BIS)の国際資金取引統計で確認すると、80 年代半ば以降、各地域向けの対外債権は、米国の景気後退や新興国での通貨危機がみられた局面で、地域によらず大きく縮小している(図表1)。特に今回の金融混乱前後では、2002 年以降のユーロ圏や英国向けを中心とした大幅な資金取引拡大と2007 年後半以降の世界的な資金収縮という、近年にない大きな振幅がみられている。このことは、金融ショック自体の大きさを表しているとともに、今回の危機とグローバルな銀行活動とが深く関わっていることを反映している。』

ということで、金融危機の背景から、危機が発生した時の波及経路に関する説明を実際に今般の金融危機で起きた事象を踏まえながら説明していまして、でまあ題名にありますように、その説明をする際に先行する研究も紹介しつつ行うという内容。あたくしのようなシロートには中々ありがたい内容でございます。

で、その内容をご紹介しようかとも思ったのですが、これがまたどこをどう切り取るかが難しいので、まあ本文にあたっていただきとう存じます次第ですが(汗)、それだけではしょーがないので、小見出しを引用してみましょう。

『金融危機の背景:直接的な契機、増幅要因、波及経路』

『銀行活動の拡がりと金融危機の増幅メカニズム』
『(1)グローバルな資金仲介と流動性不足のドミノ倒し』
『(2) 資産変換を通じたリスクの拡大とデレバレッジ・サイクル』
『(3) 情報の非対称性の深刻化と情報生産機能の低下』

『銀行セクターを経由した危機の波及経路』
『(1)直接的な波及経路:海外支店の所在国や取引相手国への波及』
『(2)間接的な波及経路:コモンレンダー効果』
『(3)群集行動による危機の拡がり』

ということでイメージつかめますでしょうか(ってつかめないか^^)。後半の銀行セクターを経由した危機の波及経路に関する説明に関しては、先般出ていました日銀レビュー『国際金融ネットワークからみた世界的な金融危機』が視覚的に判り易い説明をしていましてシロートのあたくしにも大変に興味深かったのですが、今回はそのまとめ版&発展版という感じなのでしょうかね(^^)。ちなみに先般の日銀レビューはこちら。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j09.pdf

んでまあまとめから引用。

『危機の経験を振り返りつつ、既存研究の示唆を踏まえると、銀行の活動範囲が地理的にも業容においても拡大するにつれて、銀行本来の機能に内在するリスクやメカニズムが危機の増幅につながっていたと理解できる。銀行の活動領域の拡大にともなって、その経済機能がどう変化していくのか、今後、一層の研究成果が待たれている。』

ということで、将来どうせまた発生するであろう何かのバブル(世界でこれだけ金融緩和してたらどーせ発生するでしょ、とあたしゃ思うが)崩壊による金融システム問題発生の悪影響を抑える為には、まあマクロプルーデンスの考えが大事ですねという話になるんでしょうな。

『今回の世界的な金融危機を契機に、政策当局も市場参加者も、より頑健な市場の構築を目指していく必要に迫られているが、こうした国際的な銀行活動の拡がりとそれがもたらす構造変化についても、一層理解を深めていくべきと思われる。その際には、ここで紹介した過去の経験事例を踏まえつつも、新たな伝播メカニズムや経路を常に探求していくことも重要である。』

んでまあマクロプルーデンスの観点は一国だけで終わるものではなく、恐らくは国際展開する金融機関活動の拡大に対応して各国の中銀やら監督当局が相互連携しながら行わないといけませんという話になるのですけれども、まー今般の金融危機対応見てますと各国それぞれお家の事情で色々とやらかしてる部分もありましたなあ(金融政策面では良く協調してましたけど)という事もありますし、最近の金融機関の自己資本問題に関しても何か各国自分の事情に都合の良いポジショントークが多いですなあという感じもしますし、まあ道は遠そうですな。


○長期金利上昇ネタを書いたら長期金利が下がったでござるの巻

昨日は雑談で一般紙も1.485%のネタ振りしてますなあとか書いたと存じますけど、昨日は何か知らんが結構力強く相場が戻って10年新発1.425%の引けでござるの巻。ネタに使ったら相場反転とゆーことで、相変わらずのドラめもんクオリティでございますが(汗)、何もあーた今日5年入札があるのに昨日相場戻らんでもと思いつつも、良く見たら昨日は長期超長期が戻っている(5年が引っ張った訳ではない)のでまあいっかという事で。

財政ネタで引っ張るのさすがに水準的に良い所まで来たから終了なのか、またそのうちどっかのタイミングでやるのかはよー知らんですけど、まあ特オペ関連問題、FOMC、財政ネタと目先の買わない理由が徐々に潰れて参りました(いやまあ財政ネタは全然片付いてはいないのですけど)という感じになるんですかね。よー知らんが。

#景気ウォッチャーも下がりましたしねえ

しかしまあ昨日も長期金利上昇に関して政府高官発言が出ていた訳ですが、

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK032894120091111
長期金利が趨勢的に上がらないよう注意しなければならない=古川内閣府副大臣

まーそうは言いましても今年は1.5%台半ばまでやっている訳でして、ここもと金利上昇したと言っても「民主党政権で財政健全化維持期待」が剥落して売られた部分があってもまだ年初来の安値(金利の上限)を抜けている訳でもない訳でして、そーゆー話は10年1.8%にでも上昇してから(1.8というのは特に根拠なくテキトーに出した数字)慌てて頂きたい次第でして、市場との対話も大事なのですが、一々市場に反応してその場凌ぎみたいな事を言わない方が良いと思いますけどね。まあ見物人としては一々こうやって反応させる方がお笑い劇場として楽しめますけどね。


○あと昨日の補足とか雑談とか

昨日は輪番の話をしたのですが、書いててかなーり舌足らずでしたな。えーっと先月のレビューで「2年以内が半分程度」と申しましたが、ここもと数か月は実は買入長期国債のうち、残存2年以内が半分以上というのが続いていたのでありまして、10月は相場が粛々と下がった影響なのか買入国債がやや中長期シフトしましたねえという話でした。

つまり(昨日の繰り返しになりますが)、ベアスティープ系の金利上昇をした場合って、今の方法での買入を行っていると、1年超10年以内の買入部分でより長い部分が入るので、買入国債の足が長くなり、将来買入残高そのものが増えやすくなりますなあという所です。遠い将来は短期オペに食い込んで来るとオシャレな事になってくるんでしょうけれども・・・という話だったんですな。

そこで気がついたのですが、輪番に残存1年以内というカテゴリーがあって、これが無い場合ってそれこそ悪い金利上昇になった時にいきなり買入国債の足が長くなり過ぎない安全装置っぽい機能もあるのかねって感じで、これ考えた人中々良く考えてますなあと改めて感心しちゃいました。


あと雑談なんですがね。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091111/stt0911111808014-n1.htm
亀井氏吠える 外国人や市場原理主義者を入れるな! 行政刷新会議の人選で国民新党が批判

あたくしはこのニュースでフェルドマンさんがどうのこうのではなく、「行政刷新会議の事業仕分けメンバーに政府の経済財政諮問会議の元メンバーが含まれていた」というネタに反応しちゃいました。

・・・・えーっと、伊藤隆敏さんの日銀副総裁就任に反対した時って表向きは何が何だか良く判らん理由で反対してましたけど(ちなみに民主党の反対理由はこの通り→http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/169/0001/16903130001009a.html)経済財政諮問会議のメンバーで云々ってのがありませんでしたっけえええええ????
(なお、共産党は明確に「経済財政諮問会議のメンバーだから反対」と言ってました。→http://www.t-ichida.gr.jp/html/menu2/2008/20080313130710.html

日銀総裁人事のあの大騒動は一体全体何だったんでしょうかねえ。









2009/11/11

お題「雑談大会で恐縮です」

この1か月くらい結構読み応えのあるペーパーちゃんが日銀やら他の中銀やらから出ているので、本当はじっくり読みたいのですけれども、どうも目の前の事を追うのに忙しいと駄目ですなあ。

○今更ですが先月の国債買入実績

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0910.htm

今更感爆裂ですが、今回は増加額面18408億円(あたくしの手元集計ベースなので間違ってたら御免ありたし)に対して残存2年までで8973億円。大体相場が下げ気味になって来ると輪番オペの性格上中長期ゾーンが入り易くなるという傾向がございまして、買入総額の半分弱が残存2年超になったのは5月以来(四半期は償還があるので単純計算するの微妙ですが)と相成りました。

輪番で相場買い支え出来るかと言うとFRBの長期国債絶賛買入で長期金利が10年財務省証券ベースで1%以上上昇(買入アナウンスした時に0.5%低下したので、印象としては1.5%上昇したという感じですが^^)したという大変素敵な実績もこれありという事でございますが、日銀の輪番オペに関しては相場下げ基調になればなるほど長い所が入り易くなる設計ですけど、別にそれで相場の下げが止められるかというとそれはまた別問題という事になるでしょうなという当たり前の雑感を思いつつも、良く考えたら金利上昇傾向になってきた場合に買入国債のデュレーションが伸びるのですから、悪い金利上昇みたいになっちゃった場合って日銀の短期オペにも皺寄せが来る時も来るのかなあなんて雑感をふと思いました。

だからどうしたと言われると別にそれ以上の感想はありませんが。


○そろそろ決意表明がスルーされている感がせんでもない

一般の各紙でも話題になっています国内長期金利上昇。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20091110-OYT1T00913.htm
長期金利上昇、一時1.485%…5か月ぶり高水準

『藤井財務相は10日の閣議後の記者会見で、長期金利が上昇していることについて、「危惧している。国債市場の信認を失うということは、日本の国益を損なうことになる」との懸念を示した。藤井財務相は、国債増発懸念が金利上昇の背景にあるとの指摘に対して、「そう思う。それに対する是正は何としてもしないといけない」と強調。2010年度予算編成で国債発行抑制のために歳出削減を徹底する考えを示した。』(上記URL記事より)

まあ昨日は40年国債入札はそこそこ順調だったみたいですし(その割には強かったのは中短期だったりするけど)戻っている訳ですが、別にまあ藤井さんやこーゆー話をしたから安心感がっていう流れになってくれるかというと微妙な気がする。

勿論市場コンセンサスとあたくしの脳内コンセンサスが違う可能性も高い(というかあたしゃひねくれているので脳内の考えが市場の考えとどの位乖離しているかいつも悩む)ので話半分で聞いて頂きたく存じますけど、予算編成の規模が拡大して最終的に国債に皺寄せが来るでしょという話に関しては、既に債券市場的には「決意表明はどうでもいいから予算編成そのものを出せ」というような感じになっているのではないかと愚考。

つまりですな(前も同じ話しましたけど)、国債発行がどーしたこーしたという論点に関する債券市場的な流れとしては、選挙がまだ始まる前だけどどう見ても任期満了までの衆院選では政権交代でしょうという状況だった頃は「民主党政権になったらバラマキになりそう」だったのが、いざ選挙が近づいてくると急に「財政規律が大事」という話が山のように民主党幹部から出てきて「ああ良かったね」という話になった訳ですな。

で、いざ政権取ってみたら当初は財政規律の話をしてたのに、そのうち概算要求は拡大するわ無駄の削減とやらも麻生政権時代の補正執行停止以外の話が具体的に出てこないわ、その一方で税収は予想通り落ち込むというのにあちこちの閣僚などからは致し方なし的な発言が出てくるわと素敵なカオス状態になっている訳でありまして、そーゆー意味で言えば「一旦期待させておいて裏切りました」というのが現在のステージになっている訳ですよね。

んでもって、そーゆー状況になりますと当然ながら何か言っても「それは大変立派な決意表明ですねえ(棒読み)」という反応をする人がドンドン増えて来る次第でありまして、しまいには「そりゃまあ来年度は繰り回しやら数字の操作で44兆円に出来ても結局再来年はダメでしょ」というような話になって来るんじゃネーノと思うのでありまして、まー変に出来もしない事を「努力する」だの「宣言する」だの言うとその場は凌げるけど、結局出来ないのだったら「信用を無くす」と言う事によって後で払わされるツケが倍返し3倍返しになって返って来るのでありまして、下手なその場凌ぎは却って自分の首を絞める事になると思うのですけどねえ。

ということで、藤井財務大臣におかれましては、下手な気休め発言はすればするほど発言の信用を落とす事に繋がりかねない事をご認識頂きまして、予算案そのものでお答えをするという事でお願いいたしたく存じます。

#書いてて自分のドブ板営業時代を思い出して目から汗が・・・・


○昨日のレポート関連なんすけどね

昨日は日銀WPに微妙に悪態をついてみた訳ですが、毎度毎度思うのはこの手の分析をする時の元データの取り方に違和感があるという話でして、別に本件だけにケチつけている訳ではないので念の為。

昨日ご紹介した
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp09j09.pdf
でOISの代わりに3か月TB使わないのはどうしてという話をしましたが、良く良く見たら本文16ページの脚注にこんな記述がございました。

『CP 発行市場の金利スプレッドについては、ベースレートをOIS 金利ではなく代替的な運用資産である3 か月物TB の利回りを用いることも考えられる。しかし、分析の対象とする1998年11 月以降のデータをみると、3 か月物TB の利回りは、需給要因などからCP 発行レートを頻繁に上回っており、運用のベースレートとして必ずしも適合的ではない。また、対象期間の大半に短期金利がゼロ金利近傍で推移していたため、短期資金の調達・運用のベースレートの乖離は僅少であったと考えられる。これらの点を勘案し、本稿ではCP の発行レートのベースレートとしてOIS 金利を採用する。』

まあそりゃ判るのですが、98年と08年では市場環境も国債発行環境も(そもそもCPの発行制度も)違いますので、無理に両方同じ数字で分析するよりは、「その当時の価格形成上一番ベースレートとして適正な数値は何ですか」という所から話をするしか無いと実務的な面からは思うのであります。

それこそ大昔(90年代前半)だったら3か月金利の指標レートって新発CD3か月物金利だったんですし、もっと大昔(銀行の国債フルディーリング前)だったら長期金利の指標レートって加入者利付電電債の流通利回りだったんですし(っていうのは話が古すぎですが)、まあ分析としては比較するのに元データソースが違ったら比較のしようが無いというのはお気持ちとして良く判るのですが、市場というのは実験室じゃないんだから仕方ないじゃんという事で(例えば化学実験でどのファクターが反応に効果があるかを見たければ当然ながら他の条件同一でパラメーターを1個だけ動かして比較実験しますけど)、その辺は「より実態に即したパラメータを探す」っていうのも大事なんじゃないかなあって思うのです。ええまあ無知無教養なあたくしの妄言ではございますけどね。

んでもって、日銀の分析でやたらOISやらユーロ円金先などのオフバランス取引の数値を使いたがるのは仕様のようなのですけれども、短期市場って基本が資金取引ですし、金融政策の効果がどうのこうのという話っていうのは実際の資金取引に反映されてナンボの世界でもありますので、ベースのレートをオフバランス取引に置くのもどうなのかなという感じがします。債券先物みたいにオフバランス取引が現物市場とリンクしているのなら兎も角、OISにしても金先にしても実際の資金取引のヘッジに本当に使われているかというと、実際に資金取引をしている人達のツールではない(なんちゃってヘッジとか、ヘッジしましたと言いながらトレーディングする口実に使う人はいると思いますが)と思いますし、短期は長期債市場以上に市場分断が顕著でもありますので、使い方次第だとは思うのですけど、使い方によっては現場実務労務者的に「???」な分析になり兼ねないと思いまする。

などと分析がどうのこうのと言われてもトンチンカンなあたくしが申し上げるのも僭越というのは重々承知しておりますが呟いてみました。


#雑談大会で恐縮でした








2009/11/10

お題「前提の仮定が多いとは言えその結果は微妙ではないかと」

債券市場が久々の安値(と言っても10年1.4%台後半ですが)になっているというのに、何故か債券市場ではなくて日銀ワーキングペーパーに盛大につられてみるでござるの巻。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp09j09.htm
企業金融の円滑化に向けたCPオペの効果の識別
― 金融危機下の資金供給オペレーションに関する一考察 ―

本論はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp09j09.pdf

でね、実は同じ方々が先日「期越えオペの効果の識別」ってWP出してまして、何かツッコミどころがありそうなものの数学に関してはハクション大魔王なあたくしはややこしい式を並べられると読むのが面倒なのでスルーしてたんですが、今回はその第2弾でして、期越えオペに関してはこちらです。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp09j07.htm
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp09j07.pdf


そんでもって、期越えオペの効果に関する話は置いときまして、最初のURLにあります「要旨」って所を見るとどうも釣り針があるようなので食いついてしまったあたくし。改めてURLをば。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp09j09.htm

そこの要旨なんですけどね・・・・

『識別の結果、(中略)(2)2008年秋から2009年春にかけての局面をみると、CP買現先オペの積極的活用とCP買入れオペは、実施直後に大きな効果を発揮し、その後は効果が減衰したこと』

・・・・・????

と思いまして、早速本文を読んでみますと(改めてURLを置きます)、
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp09j09.pdf
最初の部分にもうちょっと詳しい纏めがございまして、そこの分析結果部分にこのような話が書いてあります。

『結果をみると、まず、2008 年10 月に開始されたCP 買現先オペの積極的活用は、同月に23bps の押し下げ効果を発揮した(ただし、その後の効果は、12 月を除いて限界的なものに止まった)』


○ということで釣られてみますが

推論の前提の部分を全部スルーして結論を読んでどうのこうのと申し上げるのも何なのですが、昨年のCP買現先オペの積極的活用がどうのこうのという結論部分を見ましょうなのです。本文25ページ(PDFファイルで26ページ)目から。

『表1 は、2008 年秋から2009 年春にかけての局面を対象にCP オペの効果を識別した結果を整理したものである。具体的には、前節で導出した(11)式、(12)式、(13)式を用いてCP 買現先オペ、CP 買入れオペ、特別オペそれぞれの効果をCP 発行市場において「オペが行われた後に実現した金利」と「オペが行われなかった場合に形成されていたであろう金利」の差として識別している。なお、CP 買現先オペの落札レートに対応するベースレートはOIS 金利(3 か月物)を、CP 買入れオペに対応するベースレートは下限利回りを、それぞれ用いた。』

ということで、肝心の表は引用しないので(コピペするのが七面倒)申し訳ございませんが、それによりますと10月はCP買現先オペの積極的活用の効果によって、CPレートは0.23%押し下げられた結果0.74%となりましたというお話になっております。でもって何故か11月はその効果が無くなってしまい、CPレートは押し下げ効果無く1.20%になりましたという事だそうで。

・・・・まずですな、その結果が当時の市場の記憶がまだ鮮明なあたくしとしては直感的に微妙なのでありまして、まあ当時の駄文を1ヶ月分斜め読みでもして頂ければ誠に幸いなのですが、当時は「CP現先オペの積極活用とか言ってたのにオペ1回打ってしまいかよ!」(正確にはオペ活用のアナウンスが10月14日、オペ1発目が16日で2発目が30日でした)と悪態をついて回っていたのでありまして、はてそんな効果あったかよという感じがするのですな。

んでもって当時のノートを見ますと、この時期ってリーマンが飛んだ影響でオープン市場などのレートが軒並み上昇するわ、欧米金融危機で連日株価が大暴落するわ(10月6日〜10日は日経2000円近く下落)という動きで、10日はこの世の終わりみたいな市況になりやがってエライコッチャになっておりましたんですわな。で、13日になってEUがインターバンク取引の保護だの特別指値無限大オペの実施だのというような火消し大対策が出たという流れがあったんですわな。

んでもって日本はこの時ちょうどRTGSのハイブリッド移行もあって運用資金の出が悪かったのですが、週明け14日は海外でのインターバンクの落ち着きもあって資金が出てきてFBには買いが入ってレートが一気に低下(3か月で7毛強、2か月で10.5毛強)となったものの、CPレートは下がらずとその日のメモにしっかり記載されているのがチャーミング。株価急落と市場取引の縮小の影響からCP主要ディーラーの大手銀行のリスク許容度が低下し、現先レートが高止まりした事が原因だと思います。

でもって実際にはオペ3000億打ちこみを行った16日なんですけどね、3000億円のオペ実施で多分満額(は1500億円)とか入れた人がいて在庫が少しは軽くなったのか翌日は現先レートが低下して、CPのレートも下がった(17日は電力さんが3か月0.87%近辺(市場推計)で発行)のですが、その後の動きを子細に(ただしあたくしの手控えノートに依存するのは勘弁)改めて見ますと、その翌週にはGCレポレートや現先レートがまた上昇し出して、翌週にはとある電力会社さんが3か月CPを連日で大量発行してレートが0.9%台に上昇し、かつ2日目のレートは1日目のレートの上のまで堂々ご発行(一気に0.94%(市場推計)まで上昇)するという衝撃の展開になって、その後もレートは上昇して、22日の3か月CPレートは軒並み1%超えになるわCP現先レートは0.7%台になるわと素敵な展開になりましたわな。

で、そのレートは翌週低下したのですが、これは利下げ観測が急速に浮上した事が効いていて、電力さんのレートは良い感じで低下したのですけれども、他の発行体さんのレートはそんなに下がらず、それよりも期間を長くして高めでもロット確保する動きとかあって、体感的なレートはあんまり下がらなかったと思いますです、はい。

でもって、まあ分析にもありますように、11月は利下げを実施した筈なのにGCレポレートは高止まるわCPレートは上昇するわTIBORは上昇するわという涙の出るような展開になり、「利下げよりも流動性対策をやりやがれ」と連日物凄い勢いで悪態をついていたのは昨年11月の駄文にあります通り。


・・・・ということで、延々と当時の状況につきまして書き連ねてみましたけれども、昨年10月に実施したCP買い現先オペの効果があったのかと言えば瞬間は在庫が軽くなるという効果があったと思いますが、それはまあ一瞬の効果(翌日のレート低下)しかございませんで、それ以外のファクターの方が残念ながら強すぎだと思われます。

大体からしてですな、10月はオペ積極活用って言ったって3000億円の買い現先を1回打っただけ(30日にはやっと4000億円のオペを実施しましたが、30日に実施しても10月には寄与しない)でありまして、それが23bpもレートを下げるというのは幾らなんでも政策効果の過大推計になっているとしか申し上げようが無いです。

それに、そんなに効くのであったら、11月になってから毎週CP買現先を実施しているのですから、より効果があって然るべきなのですが、11月は効果減衰しましたという結果が出た時点で、それはちょっと仮定を強く置き過ぎではないかという話にならんのかなあと思う次第。


○まあこの手の定量的分析は難しいですわな

ということで、昨年10月の部分だけピックアップして悪態をつくという少々意地の悪いプレーに出てしまいましたが、まああの当時は「利下げは良いから流動性を」とそこらじゅうでブーブー言ってた人達が多い中でございまして、その当時の記憶がさすがに(健忘症が多いのが金融市場の仕様ですけど)残っている当時市場の中にいた人的に申し上げるとどう見ても巨大釣り針に見えたCP買現先の「積極活用の効果23bp」に華麗に釣られてみましたのです。

本論の最後にもありますように、仮定が色々とあった結果としてこうなりましたよというのがあるんですけど、WPとしてこういうの出ちゃうと、後世になった時に如何にも本当に絶大効果が出たような話になっちちゃうのではないかと存じまして、一応釣られてみましたという事にしておいて下さいませ。で、最後の部分から。

『もっとも、本稿のモデルが多くの強い仮定に依拠しているため、結果の解釈に注意が必要であることも事実である。こうした留意事項の第一としては、本稿の分析が、CP オペとCP 発行市場との関係のみに注目した部分均衡分析であることがあげられる。このため、代替資産や他の市場との関連は考慮できていない。』

という感じであと5つほど留意点があるのですが、結果として出てきた数値に関して入口の部分の数値がどうも違和感あるという時点で、ここで述べられている第4の留意点にはちょっと???感が。

『第四に、本稿のアプローチは、金融市場の機能が低下した下での企業金融の円滑化に向けたCP オペを対象としており、平時の金融調節手段としてのCP オペの効果を評価できるものではない。このため、日本銀行の政策対応などもあって、金融市場の機能が改善しCP オペの役割が平時に復した状況では、別の視点からの分析が必要である。』

さっきの表1の分析結果なんですけど、どっちかというと2009年になってからの効果分析結果の方が市場にいる者としての体感に近い結果になっておりまして、そういう点を考えると実はこのアプローチって市場がグチャグチャになっている時である所の昨年10月から12月の分析には向かなくて、ある程度市場の色々な不安というかパニック的状況が改善された今年になってからの分析に向いているのではないでしょうかと、浅学非才ながら思うのであります。

つまりですな、市場がエライコッチャになっている時というのは、色々なものが非線形というか不連続に動くのでありまして、その非線形あるいは不連続な動きが玉突きのようにあちこちに影響を与えていくという流れになるので、定量的なアプローチで分析するというのは難しいんじゃないかと思うのですよ。別にエライコッチャじゃなくても同じなんですが、市場のテーマがいきなり変わってしまうのってのも同じなんじゃないかな?と思うのでして、何でも連続的な動きでどうのこうのという話を高尚な数式付きで聞かされると、どうも現場叩き上げ的には違和感がございますわなという話かと。

ところで申し忘れましたが、3か月のベースレート使うんだったら参加者超限定(しかも昨年10月以降とか参加者がカウンターパーティーリスク取れていたのかねという気がする)OISじゃなくて、短期国債を使った方が宜しいのではないかと思いますがその場合どんな結果が出るのかな?







2009/11/09

お題「虫干しネタ少々」

金融政策関連で今すぐ動く話は一応一段落(日本に関しては)なのですが、講演だの何だのが色々と積み残しになっているので、俺様メモとしてはフォローしておく必要がありますので・・・・

#米国経済成長期待とか何でそんなに楽観できるのでしょう・・・

まずは先週水曜の白川総裁講演から。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko0911c.pdf

○新興国経済に関して

世界経済に関する話ですが、不良資産の償却問題がどうのこうのという話は毎度おなじみでございますが、今回は新興国経済の好調さに関する考察にスペースを割いている所がいつもと違う話。そういや先日ご紹介したBOEのMPC声明文でも新興国経済の成長が景気への好材料として指摘されていましたわな。

本文3ページ(PDFでは4ページ)目の『先進国と新興国の関係』って小見出し部分から。

『これまでご説明してきたバランスシート調整は、主として米欧先進国の問題です。新興国や資源国の経済は、今回は基本的にこうした問題を抱えていなかったと言って良いと思います。そこで、次に世界経済を理解する上での2つ目のポイントとして、先進国と新興国の景気回復ペースの違いと両者の関係について、お話します。』

つーことで現状に関しての話がありますが、新興国は要するに、

『こうした急性症状の解消とともに、新興国・資源国の経済は、本年春先頃の予想を超えて急速に回復しています。本年第2四半期の実質GDPは、韓国、台湾、ブラジルなど多くの国で高い成長率を記録しました。中国やインドについては、今さら言うまでもないことですが、再び高い成長を取り戻しています。先行きについても、高めの成長を維持するとみられます。』

ということですが、その理由に関して。

『新興国の景気回復には、いくつかの理由があります。第1に、生活水準向上に伴う消費活動の活発化や社会インフラ整備の必要性など、もともと内需の基調が強いことが挙げられます。中国が典型例ですが、こうした国々は、潜在的に、高めの成長を実現していく力を持っていると考えられます。』

『第2に、新興国においても、今回の危機に対応するため、積極的な景気対策を実施したことが挙げられます。新興国の場合、先進国と異なり、バランスシート調整の問題を抱えていないうえ、もともと潜在的な需要が旺盛であるため、その分、財政刺激の乗数効果も大きなものとなったと考えられます。』

新興国は経済が成熟していないので潜在成長率が高く(だから変な証券化商品に金を突っ込む事もなく信用バブル崩壊のいかれも軽微だったということなんですかね)財政などでのテコ入れをすると思いっきり効くとな。

『第3に、先進国における金融緩和策の効果が新興国経済にも及んでいることが挙げられます。最近、市場参加者の間では、「ドル・キャリー」という言葉がよく使われています。かつて「円・キャリー」が話題となった時期がありましたが、今回は、どの先進国でも低金利政策を採用している中、最も厚みのあるドル市場で調達された資金が新興国に再び流入し、リスクをとり始めています。』

なるほどと思いつつ、あたくしふと思ったのですが、国際資本移動が益々活発になって来ると、金融緩和をしたは良いけどそのマネーがより高成長の国を求めて資金移動しちゃって自分の所じゃなくて別の所に金融緩和を輸出するでござるの巻とかなるって話ですかの。日本だとホームバイアス強いと思いますけど、まー確かに日本円と全然関係ない人達が「円建てローンで借入をしたら為替で破綻したでござるの巻」とか海外でやってましたわなと思う(ちなみに日本の金利がまだ高かった時代に「豪ドル建てローン」なんぞを突っ込んだら後で大変な事になったでござるの巻というのもありましたけどね)のでありまして。いやまあ本件とは別の話ですけど。

『さらに、多くの新興国では、ドルとペッグした固定的な為替政策を採用していますので、この面からも、金融緩和効果が働いていると思われます。こうした動きは、信用供与の増加や資産価格の上昇などを通じて、新興国の金融環境を大きく改善させ、経済の回復を後押ししています。』

固定みたいな為替政策をしていると外貨で金が突っ込まれると結果として国内で金融緩和要因になりますというお話ですわな。

『このように、現在、世界には、バランスシート調整の影響を強く受けている先進国と、世界経済の成長エンジンとなりつつある新興国・資源国という2つのグループが存在します。先ほどご説明したとおり、両者の景気回復ペースの差は、先進国から新興国への資金流入を促し、これが、当面、新興国の景気押し上げに寄与すると思われます。しかし、こうした状況が長く続き過ぎると、新興国経済の過熱や金融の混乱をもたらし、その後の景気の落ち込みを招く可能性があります。』

まあいつまでも続きはしませんわなという事で。と考えるとブラジルがトービン税を導入するのしないのという話も過熱防止の観点からすると良いブレーキなのかもしれず、一気逆流になるならやっぱりダメじゃんなのかもしれず、まー微妙なんでしょうな。


○先行きリスクはバランス

どさくさに紛れて途中までしかやっていない展望レポートのまとめネタをする前にこっちのご紹介をするのも何ですが、展望レポートでも指摘されていました「先行きリスクはバランス」という話に関して。

国内景気動向に関してですが、

『次に景気の先行きについてお話します。日本銀行では、先週末に「展望レポート」を公表し、2011 年度までの見通しを示しました。』

んでまあ中心的な見通しに関しては既にご案内の話なのでスルーしまして、

『ただし、こうした見通しについては様々な不確実性があります。最も気になるのは、米欧におけるバランスシート調整の帰趨と、新興国・資源国経済の動向です。この他にも、わが国企業の中長期的な成長期待の動向といった下振れリスクもあります。』

という事ですが、展望レポートではその辺微妙な書き方をしていると言うか、「下振れリスクを意識して」という文言を削除して対応(敢えてバランスとか書かないで)しているのですが、こちらの講演ではリスクはバランス方向と思いっきり発言していますな。

『ただ、新興国・資源国が引き続き高めの成長を維持する可能性が高いことを踏まえると、専ら下振れリスクを意識していた春先までの状況と比べれば、リスクはバランスする方向に向かっているように思います。』

ほほー。


○物価下落に関して

物価動向に関する話がその後にございます。物価上昇率が弱い状態が続くという見通しとなっていますが・・・・という所からさてどうしますかというお話になるのですが、要するに「デフレスパイラルじゃないから警戒しながらもとりあえずはよかろう」という話。で、持ち出されるのは2000年台前半の話になります。

『ここで参考になるのは、2000 年代前半におけるわが国の経験です。当時もデフレの議論が盛んでしたが、結果的には、物価の緩やかな下落が続く下で、景気は回復に向かいました。すなわち、消費者物価の前年比は、1998 年度から2004 年度までの7年間、若干のマイナスとなり、累積ベースでは3%弱の下落を記録しました。一方、景気は、物価下落にもかかわらず、2002 年度から2007 年度にかけて回復を続けました。』

さいでございます。

『このことは、デフレの影響を懸念する立場からはパズルでしたが、なぜこうした状況が生じたのか、ということについては、海外の政策当局者やエコノミストの間でも関心が持たれています。』

ということで1930年代との比較のお話。

『この点では、デフレが大きな問題となった1930 年代の世界経済との違いがヒントを与えてくれるかも知れません。1930 年代の世界経済では、2000年代初頭の日本と異なり、累積で20%以上、国によっては、30%以上の激しい物価下落が生じました。また、1930 年代には、相次ぐ銀行破綻に対して有効な対策が打てず、金融システムが極めて不安定化し、このため、資金の手当てがつかなくなった企業が自社の製品を投げ売りするといった事態が発生ました。』

『一方、わが国の場合には、困難な問題に直面しましたが、日本銀行の潤沢な流動性供給などにより、金融システムの不安定化は何とか回避することに成功しました。』

『そのようなことを念頭に置きながら今回の局面についてみると、わが国の金融システムは総じて安定していますし、累積的な物価下落という面では、9月の消費者物価の水準は、ちょうど石油製品価格の高騰が始まる前の2007年8月の水準に戻っている状況です。企業や家計の中長期的な予想物価上昇率も、これまでのところは、各種アンケート調査や長期金利の動向などからみて安定していると考えられます。こうしたことから、日本銀行では、現在のところ、物価下落が起点となって景気を下押しする可能性は小さいと考えています。』

しらっと「9月の消費者物価の水準は、ちょうど石油製品価格の高騰が始まる前の2007年8月の水準に戻っている状況です」と「ここまでは石油価格製品高騰部分の剥落ですよ」とアピールするのがチャーミングですが(^^)、まあ大体今後もこんな感じでの説明をしつつ景気が2番底だの腰折れだのとならないのを祈るという所なのでしょうかにゃ。

勿論その後には「先行きをちゃんと警戒しながら見ていきますよ」という話もしていますけど。

『もちろん、景気と同様、物価の見通しについても不確実性があります。先ほど申し上げたように、わが国の物価は、石油製品価格の高騰を主因に、昨年夏にプラス2%台半ばまで上昇し、今年は、その反動で2%を超える下落となっています。日本銀行だけでなく、国際機関やエコノミストを含め、数年前に、こうした物価の変動を予想した人はほとんどいませんでした。このように、経済の転換局面における物価の予測精度は決して高くないのが現実です。それだけに、私どもとしては、先行きの見通しについて予断を持つことなく、常に、入手可能なあらゆるデータを丹念に点検していく姿勢が大事だと思っています。』

しらっと「経済の転換局面における物価の予測精度は決して高くない」というまあ結果としてはそうでしたねという話を入れて「物価指標ターゲット一点張り政策は難しいですよ」と言外にアピールするのがこれまたチャーミング。

で、その後には金融政策の話がありまして、「非伝統的政策の縮小に伴う中央銀行のバランスシート縮小は必ずしも金融引き締めではない」とか「金融政策だけではなく日本経済の基本的な成長力を高める政策が必要」などという話もあるのですが、その辺は華麗にスルー。


以下余談。

○ロイターの記事を見ながらちょっと余談

ネタは毎度おなじみ亀井静香大先生。

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities2/idJPnTK034724620091106
UPDATE1: 日銀の楽観的な見方があるが、なかなかそうはいかない=亀井金融担当相

「下振れリスクを警戒する」とか「日銀は直接中小企業金融対策を行えないので円滑化法案を作成した」とか位に寸止めしておけば良いのにまた亀井センセイはそういう事を言い出す訳で、それって政府経済見通しとの整合性という観点からすると閣内不一致ってことにならないっすかねえ。まあいいけど。

それからですな、民主党の皆さまにおかれましては、確か日銀が0.25%から0.5%への利上げを行うという話をする時に当時の自民党幹事長あたりが強い調子で文句を垂れた時に「日銀に対する政治干渉」とか言って物凄い勢いで批判しておられたと理解しておりますが、党どころか内閣の一員が日銀の見方を「楽観的」と発言する事に関しては干渉ではないと仰せですかそうですか。選挙で勝つまでは自分たちも実際に出来ないような好き勝手な事を言って批判をして良いとは素敵なお話ですね。

まあ要するに、財金分離だの政治干渉がどうのこうのだのといって自公政権を批判していたのは「俺にやらせろ」という事だったという事で、何度かネタに引っ張って恐縮至極ですが、2年前に本石町日記さんが指摘していた事が卓見であったという話ですな。

http://hongokucho.exblog.jp/6974947/
民主党はワンボイス主義を=金融政策論議で考える党戦略

最後の方にございますが・・・・

『特に、日銀を与党に抑圧された存在とみなす戦略は、仮に与党になれば日銀を抑圧するのが見え見えで、薄っぺらな感じである。』(本石町さんの上記エントリーより)


ところで、このニュースが英文に掛かるともっと素敵なヘッドラインになります。

http://www.reuters.com/article/companyNewsAndPR/idUSTKF10672520091106
Japan's Kamei: doesn't share BOJ's economic view

これはまた刺激的な。「政府と日銀で経済認識が共有できていない」というヘッドラインになっておりますけど・・・・・そこまでは亀井センセイと言えども発言してないとは思います(が、実際の委員会質疑を見ていないので何とも言えないですな)けどロイターそれで良いのか??










2009/11/06

お題「解除の前の回の決定会合議事要旨など」

ネタが色々出てきて全然追いつきません><

○議事要旨の前にBOE

http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2009/081.htm

Bank of England Maintains Bank Rate at 0.5% and Increases Size of Asset Purchase Programme by £25 Billion to £200 Billion

しかし良く考えたら量的緩和拡大というのも変な表現で、買入額を累計して計算していくから拡大でござるというのは上げ底の香りがせんでも無い。まあ今まで買ってないから残高ベースは増える一方でございますから残高ベースも増えてますと言えばそれまでなのですけれども、この辺りって出口の時に理屈をどう折り合いをつけるのでしょうかねえとも。残高がどうのこうのという話をしだすと、じゃあリバースレポは引き締めなのかとか、もっと極端な話をしだすと預金常設ファシリティは実は引き締め手段なのかとか調節の話と金融政策の話がややこしく錯綜して、また「日銀理論に洗脳された」とかいうネタになるので敢えて深入りせず。

『The world economy has shown signs of recovery, with a number of emerging market economies experiencing a strong rebound in growth, although global activity as a whole remains significantly depressed. Asset prices have risen internationally since the spring, reflecting both the gradual improvement in the economic climate and accommodative monetary policies. And banks’ funding conditions have improved, though financial conditions remain fragile.』

金融環境が脆弱とかいう辺りの認識は英国だけじゃなくて米国も実はそうでしょと思うのですけれども、どうも飴公の皆様におかれましては能天気なマインドセットが仕様となっておられるようですな。まあどうでもいいけど。

んでもって物価に関してはインフレレポートも出てくるのですが、中期的に見たら現在の0.5%という政策金利は適切だという話が声明文にあるように見えました。

ECBはトリシェのスピーチ読む時間が無いので華麗にスルー(汗)。


○で、決定会合議事要旨

10月の第1回ですから3週間前の会合議事要旨。今回は次の決定会合までの日数が少なく、しかも1日会合なのにちゃんと議事要旨の承認をしてくれているので素早い議事要旨公表ってイメージで大変に良い話。

議事要旨の承認が決定会合の決議事項になっているのでどーしても議事要旨が出るまで時間が掛かるのですけど、通常の政策委員会での決議事項とかにならんもんですかね(法改正しないと無理でしたよね)とは思うのでありますが。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g091014.pdf

まずは『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から少々。

・バランスシート調整に時間が掛かるかどうかに関して

海外の金融経済情勢に関する議論の中で読んでて「ほほー」と思ったのは
このくだり。

『なお、バランスシート問題が米欧経済に及ぼす影響に関して、複数の委員は、毎回の景気循環の展開は異なるものであること、バランスシート調整が進むペースは当該国の人口増加率などで規定される中長期的な成長期待によっても異なりうることを踏まえると、必ずしも日本の経験を直接に当てはめられるわけではない点には、留意が必要であると述べた。』

その理屈はそうかも知れませんが、先行きリスクを考えた場合には、(欧州や英国は兎も角として)米国の中の人達が見ているバランスシート調整の影響を連中が過小評価してるんじゃないかと思うので、バランスシート調整の影響を軽視した米国の動きが(連中的な)思わぬ大失速で日本にも下振れ要因が突如発生という方がオソロシスのような気がするんで、見通しの絵を描くときには厳し目に見た方が良さげに思えるのですがどうなんしょ。

ま、米国経済に関してはこのような話をしてますので、先行きは慎重に見ているのでしょうけれども・・・・

『また、先行きについても、多くの委員が、雇用・所得環境の厳しさ、家計や金融機関のバランスシート調整圧力などを踏まえると、政策効果剥落後の回復力については慎重にみておく必要があると述べた。』


・金融面の動向について

CPの状況は良いという話で一致していたようですが、社債は微妙とな。

『社債について、委員は、本年度上期の発行金額が既往最高水準となるなど、発行環境は良好であると述べた。複数の委員は、特にA 格以上の社債では、当初予定よりも増額発行される案件やマーケティングレンジの下限で発行される案件が増加している点を指摘した。』

さよですな。

『ただし、ある委員は、このところ社債市場では、投資家が格下げリスクに敏感になっており、流通スプレッドも幾分拡大気味であると述べ、こうした動きの持続性や拡がりの有無を見極める必要があるとの見解を示した。』

社債買入解除に反対したのは水野審議委員でしたからこれも水野さんですな。

『低格付社債の発行が低調に推移している点について、多くの委員は、企業の収益環境の厳しさやこれに伴う信用リスクの高まりに加え、わが国の社債市場特有の要因も作用していると述べた。これらの委員は、そうした要因として、低格付企業における社債発行ニーズの低さ、社債発行金利を大きく下回る金融機関の貸出金利の設定、わが国における低格付社債を投資対象とする投資家層の薄さなどを挙げた。こうした議論を踏まえ、多くの委員は、低格付社債発行の低調さを金融環境の厳しさの表れと解釈することは、必ずしも妥当ではないとの見方を示した。』

・・・・うーむ、ここは色々と議論の余地がある所で何ともという感じなのですけれども、社債市場のイメージって(あくまでもあたくしのイメージね)ちょっと環境が悪化するとあっという間に味噌も糞も売られるか、素敵に二極化するかというような極端な動きになり、環境が良いとそれこそ最近のCP市場のように(短国との逆転は置いといて^^)銘柄間格差が見事なまでに潰れに行く(まあCP市場の銘柄間格差の潰れっぷりは極端過ぎですが)でござるの巻と、まー極端なんですよね。

ま、現状ではやはり二極化チックな展開になっているのですけどね。


・で、臨時措置の扱いに関して

ってまあその次の回で結論は出ちゃったのですが、どういう話をしていたのかはヲチするべきでございまして(^^)。

CP・社債買入に関してはさっき引用した所ともろ被りなので引用割愛して、特別オペに関する話。

『また、企業金融支援特別オペについて、何人かの委員は、ターム物金利の低下や、市場の流動性プレミアムの低下などの効果が出ていると指摘した。複数の委員は、高格付C P 発行レートと短国レートとの逆転現象が続いているなど、オペの効果が強く出過ぎている面もあると指摘した。ある委員は、効果の裏側には、円滑な価格形成など市場本来の機能を阻害する面もあり、効果と副作用のバランスを踏まえながら必要性の判断を行うことが適当であると付け加えた。』

まあそれはそうなんですが、逆転現象なんぞ延々と続いているのでありまして、以前そのネタが振られた時の「ターム物金利の安定化」の論点はいつの間にやら何処へという気がせんでもないのですが。

『各種臨時措置の効果に関して、通常のオペ手段による代替可能性を巡っても議論が行われた。多くの委員は、通常のオペ手段である共通担保資金供給オペと企業金融支援特別オペの金利差が縮小していることを指摘し、企業金融支援特別オペの担保が共通担保オペの担保範囲に含まれている以上、両オペの違いは縮小してきていると述べた。』

それは因果関係を逆にした話ではないかと思われるのですが。

『更に、何人かの委員は、民間債務の担保を管理するコストやターム設定が固定的である点を考慮すると、両者の差は実質的にはより小さくなっていると付け加えた。』

何という強引な理屈。

『もっとも、複数の委員は、予め決まったタイミングで、担保範囲内では無制限に資金調達できる企業金融支援特別オペがもたらす安心感を他の手段で代替できるのかどうかは、企業が年度末にかけての資金繰りになお不安感を拭い切れないでいるだけに、慎重な点検が必要であると述べた。』

と思ったら普通の指摘がありました。解除方向で話をしている人の理屈が強引に見えるのですが・・・・

『この間、複数の委員は、昨年度末までの金融市場の緊張度が高い状況とは異なり、金融市場が安定し、市場機能が大幅に改善したもとでは、臨時措置の取り扱いは、出口戦略というより、金融調節手段の選択にかかる技術的な問題という色彩が徐々に濃くなってきているのではないかとの見方を示した。』

出ました技術論(−−)

しかしこの間の議論でバックストップの重要性の話はどこに行ったのでしょうかという気がするのですが・・・・・


・何でまとめて判断したのかという話

『各種臨時措置の取り扱いを決定する方法・時期についても議論が行われた。まず、取り扱いの判断の仕方について、何人かの委員は、各種臨時措置は、相互に補完しながら効果を発揮してきた面もあることを意識しつつ、個別の措置毎に行うことが適当との認識を示した。』

結論としてはそうなりましたな。

『次に、措置の取り扱いの決定時期について、委員は、次のような論点を指摘した。第1 に、仮に特定の措置の縮減を先行して決定すると、他のオペの取り扱いを巡って思惑を呼ぶ惧れがあること、第2 に、措置の取り扱いを取りまとめて公表することで、日本銀行の金融政策運営に関する考え方をまとまった形で示すことができること、第3 に、年末越えおよび年度末越えの取引の状況を更に見極めるとともに、やや長い目で企業金融の状況を点検した上で判断するのが望ましいこと、の3 点である。』

しらっと読み流しそうですが、良く見ると第1の所で「仮に特定の措置の縮減を先行して決定」という既に解除する気満々の前提が入っているのがチャーミング。

普通に考えますと、先行して決定されるものは「延長」であって「解除」ではないと思うのでありまして、「一部の措置だけ延長決定、後の措置は延長するかどうか様子見」という風になった時に判断先送りになった措置に関して解除を市場が織り込みに行くというのは判るのですけど、その理屈は何か訳判らん、というか解除やる気満々なのが良くわかる論点整理でございますことという感じでございます。


・前回声明文のディレクティブに前置きみたいな文言が入った経緯

『金融政策運営上の情報発信についても議論が行われた。第1 に、多くの委員は、臨時措置の取り扱い如何に関わらず、緩和的な金融環境を粘り強く確保していくという日本銀行の基本的な政策運営方針は変わらないという点を、丁寧に情報発信することが最も重要であると述べた。』

ということで前置きがわざわざ入った(にしてはその後のオペは相変わらずの自然体というかやや窮屈めに推移しているのですけれども)という事でしょうけれども、まあ次回出てくる30日の議事要旨も見たいと思います。


・政府からの出席者の発言が長いですな(^^)

14日に出席したのは財務省から大串政務官、内閣府から津村政務官ですが、お二人とも発言が長かったと思われますな(^^)。全部引用してるとやや長いのでちょっとだけ引用。

大串さん

『また、日本銀行の経済・物価・金融情勢に対する認識や金融政策運営の考え方について、国民や市場に分かり易く説明することに引き続き配慮して頂きたい。』

下振れリスクを意識しながら臨時措置を解除する事をちゃんと説明しろということですね、わかります(^^)。

津村さん

『日本銀行におかれては、デフレのリスクにも十分留意しつつ、引き続き、金融政策の面から、景気を下支えされることを期待している。企業の経営環境や資金繰りが引き続き厳しい状況にある中、企業金融に目詰まりが生じないよう、市場の動向を丁寧に点検し、適切に対応されることを期待する。』

なにげに厳しいツッコミをしているように見えます。そんな中でこの次の会合で堂々の臨時措置解除だったのですが、はてさてどうだったのでしょうかね。

で、お二方とも「日本銀行と常に連絡を密にし、十分な意思疎通を図る」という趣旨の話をしていたのも(政権発足直後だからというのもありますが)ほほーという感じですな。







2009/11/05

お題「急にネタ満載状態で追いつきません><」

展望レポートの精読とか言ってるうちに講演は3本出るわ月初のいつものは出るわともうエライコッチャでございます。

#「2010年まで金融引き締めは無いとの見方から債券は売られました」とは奥が深すぎる講釈で眠い頭も引き締め政策ですな>どこぞの番組


○寝起きでFOMCステートメント

FOMCステートメント。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20091104a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20090923a.htm(前回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in September suggests that economic activity has continued to pick up.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in August suggests that economic activity has picked up following its severe downturn. 』(前回)

ということで、景気認識は「改善が継続しています」ということですな。以下前回と比較してると長くなりすぎるので今回の1パラ目を引用。なお寝起きでドメドメ人間のあたくしが読んでいますので解釈無保証(いつものことですが)。

『Conditions in financial markets were roughly unchanged, on balance, over the intermeeting period. 』

金融環境は変化なくバランスとしてまして、前回は「更に改善」となっていたので、一旦認識を落ち着かせたという事ですかねえ。

『Activity in the housing sector has increased over recent months. Household spending appears to be expanding but remains constrained by ongoing job losses, sluggish income growth, lower housing wealth, and tight credit. Businesses are still cutting back on fixed investment and staffing, though at a slower pace; they continue to make progress in bringing inventory stocks into better alignment with sales.』

消費支出に関する表現がstabilizingからexpandingに上方修正され、企業部門の雇用削減および設備投資に関してthough at a slower paceという文言が入っていまして、このあたりは上方修正ですね。

『Although economic activity is likely to remain weak for a time, the Committee anticipates that policy actions to stabilize financial markets and institutions, fiscal and monetary stimulus, and market forces will support a strengthening of economic growth and a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability. 』

ここは前回と全く同じ文言です。では第2パラグラフ。

『With substantial resource slack likely to continue to dampen cost pressures and with longer-term inflation expectations stable, the Committee expects that inflation will remain subdued for some time.』

これまた同じでして、インフレ圧力に関しては当面の間抑制されるという文言は前回と全く同じです。んじゃ第3パラグラフ。

『In these circumstances, the Federal Reserve will continue to employ a wide range of tools to promote economic recovery and to preserve price stability.』

ここも変わらずですな。

『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period. 』(今回)

『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period.』(前回)

見りゃわかりますが、今回該当する文言が長くなっている訳でして、continues to anticipate anticipate that economic conditionsの内容説明が入っている訳ですな。んでそれがlow rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectationsとなっておりますとな。

ここの政策インプリケーションに関しては本職の方が解釈して下さるかと思いますが、別にこの文言入れる必要無いでしょという当たり前の話(インフレやらインフレ期待が抑制されないとなったり、資源の稼働(企業セクターの投資やら雇用やらですかね)が良くなったりしたらそりゃあーた利上げでしょ)ではありますが、まあその当たり前の文言をわざわざ入れるというのは当然ながら意味がある筈でして、その点に関しては暫く後に出てくる議事要旨を見たい所であります。

まあインフレに関する文言に何らかの変化が出てきたらもうエライコッチャという話になるんでしょう。失業率はどうせ遅行指標ですから、スタンス変化はインフレに関する見方に出てくるのではないかと思いますけど、正直FEDヲチは本職ではない(というかそもそも日銀ヲチも本職じゃなくて趣味ですが^^)のでよーわからん。

『To provide support to mortgage lending and housing markets and to improve overall conditions in private credit markets, the Federal Reserve will purchase a total of $1.25 trillion of agency mortgage-backed securities and about $175 billion of agency debt. 』

エージェンシー債の買入額がしらっと$25bil減っているのですが。

『The amount of agency debt purchases, while somewhat less than the previously announced maximum of $200 billion, is consistent with the recent path of purchases and reflects the limited availability of agency debt.』

その言い訳ですな。買入やっても応札が少ないんでしたっけ?

『In order to promote a smooth transition in markets, the Committee will gradually slow the pace of its purchases of both agency debt and agency mortgage-backed securities and anticipates that these transactions will be executed by the end of the first quarter of 2010.』

前回と語順が微妙に変わってますが基本的に同じ話。で、前回は財務省証券買入終了の話をしてますがそれは目出度く(?)終了しましたのでその部分無くなっております。

『The Committee will continue to evaluate the timing and overall amounts of its purchases of securities in light of the evolving economic outlook and conditions in financial markets. The Federal Reserve is monitoring the size and composition of its balance sheet and will make adjustments to its credit and liquidity programs as warranted.』

この文言はつくづく魔法の文言でして、まあ増やすにも減らすにも使えるので市場が勝手にご解釈してくださいっていう感じで素晴らしい文学作品(^^)。前回と同じ表現です。

あとは採決の部分なので割愛します。


○講演が山のようだが西村副総裁講演からちょっとだけ

本当は展望レポートのリスクバランスの話とか、総裁講演とかも面白いのでありますが、FOMCステートメント読んでいたら時間がだいぶ経過しやがったので、西村副総裁講演から一発ネタを。

http://www.boj.or.jp/en/type/press/koen07/data/ko0911a.pdf
英文ですが3ページしかありませんのでご安心ください(^^)。

お題は「Unconventional Policies against Fear of “Unknown Unknowns”」ってえことで、最近の中銀ワードが両方出ているといういつもながら西村副総裁の講演(特に英語の場合)はキャッチーな表現が出ますなと感心。

でもって、読んでて「それはそうだがこの前の講演はなんだったんだ」と一人でツッコミを入れてたのは本文2ページ(ファイルの3ページ)目の『Looking Ahead: No Free Umbrella against Plain Old Rain』って小見出しから先の所。何か難しいのですが、「雨が明白に止んだら無料の傘は取り上げますがな」と言ってるんでしょうかね。

『Clearly, central banks’ provision of catastrophe insurance measures has worked quite well, together with various governmental measures of similar characteristics. Immediate dangers have subsided, though we are still facing a possibly bumpy adjustment process after the collapse of the “credit bubble”.』

クレジットバブルの調整圧力はまだ残るものの、当面の危機的状況は中銀の危機対応政策(がUnconventional Policiesなのですが)によって抑制されましたですというのはまあさよですな。

『In order to look ahead, the following two points should be kept in mind.』

ほうほうそれでそれで?

『First, these catastrophe-insurance measures are in fact “free” insurance. Beneficiaries of these measures do not pay fair, or, in many cases, any premium for these hedges. Rather, central banks and governments implemented these measures against the “unusual and exigent” circumstances of contagious confidence erosion.』

『Thus, the measures were to be temporary. A permanent provision of such free put-like options obviously distorts the market mechanism and prompts undesirable risk taking or “moral hazard.” To put it differently, free shelters should be provided against a hurricane, but there should be no free umbrella against plain old rain.』

中銀が行った危機対応の対策は(危機対応お助けプランなのですから当たり前なのですが)言うならば「無料保険」みたいなものなので危機が去っても置いて置くのはモラルハザードやフリーランチが置きますとな。

『Second, central banks’ ability of providing “catastrophe insurance” is not unlimited and depends crucially on market participants’ confidence in them. Some measures taken by central banks impose financial and possibly reputational risks on themselves. An option provider should make sure that it would not seriously undermine its capital base.』

中銀が無制限にお助け政策をする弊害として中銀の信認問題の話をしているような気がします。

『That being said, unconventional, catastrophe insurance-like measures should be explicitly temporary and for some measures “self-fading” as market conditions improve. Currently, we see in fact some measures winding down in the US and other places, including Japan, and some other measures, such as the U.S. Treasury’s Guarantee Program for Money Market Funds, to have expired. The wind-down shall be carefully arranged, in some cases step by step, to avoid possible transitional problems as much as possible.』

危機対応は明らかに一時的であるべきだと。日米もそれを実践中ですという話もしているようで。

『Finally, I would like to add that as the immediate threat subsides and the hurricane shelters are removed, nobody assumes that that is the end of public efforts to rebuild the devastated community. This is exactly the same for central banks’ unconventional measures. Although the balance sheets of central banks may be reduced when these unconventional measures are faded out, this is not a sign of a change in the stance of central banks. Rather, this is the sign that central banks can now use conventional means more effectively to pursue current monetary policy.』

中銀のバランスシートが縮小しているのは危機対応モードの非伝統的政策から脱却していくサインであり、現在の金融政策(というのですから緩和的な金融政策という事を言いたいのでしょう)がより効果的になっていく事を意味する。という話で締めていますので、「非伝統的政策脱却は出口政策ではなく、環境が改善して金融緩和効果が出やすくなっている状態になっているサインだよ」といわゆる出口政策と非伝統的政策からの脱却を分けるという話をしています。

・・・・えーっと、いやまあこの話自体はそれはそれで筋の通った話なのでありますが(タイミングとして今なのかという部分は措くとしてね)、副総裁この前のブエノスアイレスでの講演はありゃ一体全体何だったんですかいなというお話になるのでありまして・・・・いやまあいいです。







2009/11/04

お題「総裁会見とその他少々」

東京の最高気温は月曜が10毛強で今日は7毛甘ですかそうですか。

本当は総裁会見と展望レポートの続きをネタにする予定だったのですが、何か知らんが豪快に寝坊したので総裁会見引用大会で勘弁。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0911a.pdf

○特オペを延長して解除の件に関して

まあ当然ながら今回の会見は「特オペの扱いについて」と展望レポートにおける2011年度の部分に対する質問が集中している訳ですが、まあその辺りから。

時限措置解除と出口政策の関係についての質問から。

『一方、金融政策については、今回の展望レポートでも繰り返し強調していますが、先行きの経済の姿について、本格的に成長軌道に復帰していくまでにはもうしばらく時間がかかるということを踏まえ、現在のきわめて緩和的な金融環境を維持する、そのことを通じてしっかりと日本経済を粘り強く支えていくことです。従って、「出口政策」という言葉を、金融政策の出口ということでお使いになっているのであれば、今は、現在の金融緩和を粘り強く続けていくということです。』

ということで出口政策ではありませんと言う事を強調してます。まーそれだから声明文の冒頭になんちゃって時間軸みたいな文言を入れてみましたという事なのでしょうけれども。

で、月曜に書きそこなったですけど、「3か月延長して半年後の解除を明言」というような相場張る位だったら延長しないで解除しちゃった方がスッキリしてるじゃんと思ったら同じツッコミをしている人がいました。

『(問) 特別支援オペについて「延長した上で完了する」という点についてですが、現時点で来年3月末をもって完了するという判断がある上で、なお延長した理由を教えて下さい。』

(;∀;)イイシツモンダナー

『(答) 先程申し上げた通り、金融環境については、厳しさを残しつつも改善の動きは拡がっていますが、年度末を意識した場合、なお万全の態勢を組んだ方が良いということで今回延長しました。同時に、来年4月以降は特別オペを完了し、共通担保資金供給オペ等、従来からあるオペで資金を潤沢に供給する態勢に移行することを今の時点で明らかにしておくことによって、市場での様々な不確実性が生まれることを防げると思います。その意味で、万全を期すこと、それから円滑な移行を考えると、今回の決定が最適であると考えています。』

延長する理屈は判るのですが、何で半年も先の事をコミットするのが市場の不確実性を防ぐのかが判らん。経済情勢(というか本件だと金融環境だけど)次第でもしかしたら延長だけど、そんなに危機的な状況じゃないんだったら解除っていうのなら別にコミットする必要無いじゃんと思いますが。

というか、それこそ金融政策だとインフレターゲットみたいな明示的なコミットメント出すの好まない癖にこーゆー事ではコミットメントとは如何なものかと小一時間問い詰めようと思ったらその先で質疑が(^^)。

『(問) 3月に完了することを今決める理由を、「円滑に」と総裁はおっしゃいましたが、半年先のことをなぜ今決める必要があるかについて、もう少し分かりやすくご説明願います』

『(答) 金融市場の参加者は常に、様々な経済が将来どのように動いていくのか、あるいは政策当局者がどのように行動するのかということを予測しながら行動しているわけです。前者の経済自体の不確実性は、直接中央銀行がコントロールできるわけではありませんが、後者は中央銀行自身によって決まってくるものです。ある日突然発表を行うと、市場参加者に混乱が生じます。従って、ある程度の期間をおいて移行した方が、市場が混乱しないということです。』

経済自体のコントロールは全部出来る訳じゃないけどもこの手の措置に関しては日銀の完全コントロールだからという話。まあこう来るとは思いましたが、そんなこと言い出したら政策金利の変更とかも同じ話になるじゃネーノという意味で、正直インチキの香りが漂ってくる説明ではありますわな。そして益々怪しげな説明が続く。

『実は、海外の中央銀行は、昨年秋以降導入した様々な異例の措置を少しずつ元に戻しているわけですが、私どももそれと同じように行っています。』

ほうほうそれでそれで?

『例えば、FRBは長期国債の買入れを3月に発表し、この施策を10 月末に終了するということを数か月前に発表しました。それから来年の3月にMBSなどの買入れについて終了するということを先月発表しました。いずれもある程度の助走期間をおいた方が円滑に移行するという判断であり、どの中央銀行も同じように判断し行動しているということです。』

というと日銀と同じ事をしているように見えますが、FRBの場合は停止する云々を公表するに際して「必要なら復活」という形にしていますし、しかも停止そのものはスッパリ停止しているのですが、特別オペの場合は「オペは停止します」「共通担保に移行します」という不思議な説明をしている(後で申し上げる事象から勘案すると、実際問題として共通担保に移行するのではなく、単に通常のオペの中に有耶無耶のうちに巻き込まれるだけと見ます)ので、この辺りもちょっと違うような気がします。大体からしましてFRBの場合は景気見通しを結構上げているという背景もある中であって日銀の景気見通しとは違いはせんかねとも思いますし・・・・

で、その後の質疑では共通担保の方が特オペよりもフレキシブルという話(まあそういう不思議質問をする人がいるのでそう答えたのでしょうが)をしています。

『共通担保オペと特別オペの違いを考えた場合、特別オペは、金利を0.1%に固定して金額無制限で供給しているほか、期間を3か月と限定しています。このような方式は、リーマン破綻以降のように金融市場が極端に収縮している時には非常に効果的であったと思います。ただし、現在のように金融市場の混乱が解消した後は、中央銀行が資金を潤沢に供給する上で、担保にしても、期間設定にしてもある程度伸縮的に選べる方が一般的には対応力が高いと思います。』

それはオペ的にはフレキシブルという話であって、資金を取るサイドから見たらどう見ても低金利指値の無制限オペの方がアリガタヤなのですが・・・

『そのように申し上げた上で、これまで行ってきた特別オペの残高もあるほか、2つのオペ(引用者追記:共通担保と特別オペね)にほとんど差はないとはいえ、円滑な移行、特に年度末を意識して万全を期すということは、中央銀行として期待される安全運転だと思います。』

特オペと共通担保にほとんど差は無いとは恐れ入りますが、まあそれは兎も角として安全運転するなら何で買入は外したのかと小一時間。

で、最後の方にもう一度こんな質問が。

『(問) 特別オペについてですが、先程円滑な移行という話がありましたが、来年1月または2月辺りまで結論を待つことをお考えになったのでしょうか。また、なぜ待つことができないのでしょうか。それから、来年になって金融情勢などに変調があった場合、終了することを取り止めることはあり得るのでしょうか。』

で、この答えが何故かやたら長い(のですが、話している事は上記で引用した話と基本的に同じ)ので、後半の質問に対応する部分だけ引用。

『それから2つ目の質問についてです。今回の特別オペ等の時限措置に限りませんが、中央銀行の目的、使命は何かというと、金融市場、金融システムの安定を実現して、経済の持続的な成長を図っていくということであり、そのために、例えば「最後の貸し手」という機能もあるわけです。その時々の金融市場をみて、もし仮に金融市場が再び大きく動揺することが将来起きるという場合に、今回私どもが導入したような措置を再び実施しないということを言っているわけではありません。それは中央銀行として当然のことで、危機が起きた時に中央銀行が適切に対応するというのは、いつの時代でも中央銀行にとって最も大事なことです。その意味で、今申し上げた私どもの基本的な構えと先程申し上げた今回の措置に到る考え方は非常に整合的なものと考えています。』

前半もやたら長いのですけど、この部分だけでもこの長さ。えーっと金融環境が改善しているというのは月報などでも示されているのでありまして、情勢が改善しているのであれば臨時措置解除というのは自明なのですから、そーゆー意味で言えば今すっぱり解除するならするで、そうじゃないならシンプルに延長してその後の情勢を見れば良いという話だと思うのですけどね。それに何かあったら復活するのは当然というなら何でそっちは説明に載って無いのかにゃあ。

ま、説明がやたら長いというのは(自分の書き物の時もそうですけれども^^)死ぬほど難しいとかややこしい話をする場合じゃなければ、概ね「説明が苦しい」からであるというのが背景にあるのかと存じますが(^^)。



○展望レポートに関連して:物価に関して

まずは物価の見通しに関する当然のツッコミとして、3年物価下落なら追加緩和はしないのでしょうかという当たり前な質問から。

『(答) 今回の展望レポートでは、2011 年度まで物価下落圧力が続く見通しになっています。こうした物価情勢を「デフレ」という言葉で呼ぶかどうかは、論ずる人の定義如何によりますから、その問題にここでは入るつもりはありませんが、大切なことは、わが国の経済が中長期的にみて物価安定のもとでの持続的成長経路に向かっているのかどうかという判断です。この点では、わが国経済は持ち直しを続け、消費者物価上昇率は下落幅が徐々に縮小していく姿を想定しています。こうした動きが持続していくことにより、日本経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路に復していく展望が拓けると考えています。』

という話は展望レポートの中でもわざわざ説明をしているでござるの巻となっておりまして、物価下落が景気悪化につながらなければ、まあそこはという話になっていまして、次の質問で更にツッコミを受けた時にこういう回答をしています。

『なお、もう一点、物価と景気の関係について付言すると、ご質問のあったこと(引用者追記:2011年度見通しでCPI▲0.4%なのに実質GDPが+2.1%という大きめの数字になっている事)と同じ現象が、実は2002、2003 年以降の景気回復でも起きたわけです。つまり、消費者物価上昇率がマイナスの中で、2002、2003 年から景気は回復方向に向かったということです。その意味でも、物価と景気の関係については、様々な可能性を念頭に置きながら点検していきたいと考えています。』

ちなみに、先に引用した回答の続きでは、「回復していく中で低金利を継続すると緩和効果が強まりますよ」というどっかで聞いた事のある理屈が出ております。

『それから、金融政策については、先程粘り強く続けると申し上げました。例えば、昨年の秋、今年の春、それから今回という3つの時点を比較してみると、同じ金利水準であっても、この間に成長率は少しずつ上がってきています。つまり同じ金利であっても、それが持つ刺激効果が少しずつ高まっていますし、社債・CP等の信用スプレッドをみても、確実に小さくなってきています。それから、いわゆる資金のアベイラビリティ(調達可能性)も格段に高まっているので、同じ金利水準のもとでも実は金融緩和の力が強まっているわけです。いずれにせよ、粘り強く取り組んでいきたいと考えています。』

社債などの信用スプレッドがどうしたこうしたという話はまあ良いとしましても、「同じ金利水準であっても、この間に成長率は少しずつ上がってきています」って言いましてもこの間に物価が少しずつ下がってきていると思うのですがあのその・・・・


○展望レポートに関連して:潜在成長率のお話

潜在成長率が随分低いですね云々という質問(他にも色々とありましたが)に関する答えなんですけどね。

『「潜在成長率」という語感からして、これが半年間で下がるというのは何となく不自然だと感じるかもしれません。これは、先程申し上げたように、潜在成長率を数値として表そうとすると、ある一定の前提を置かなければならないためです。1か月ほど前に日銀レビューで、潜在成長率の計算手法についていくつか公表しました。その冒頭に書いていますが、例えばマラソン選手がマラソンをする時、その人の本来の実力と、その時の調子を分解することはなかなか難しいわけです。』

すいません日銀レビュー斜め読みしかしてませんでした。後で読みます。

『経済についても本来の実力とその日、あるいはその年の調子をどう分解するかということには色々な方法があります。現在のように経済が大きく変動している時は──これは日本経済だけでなく世界経済全体がそうですが──、潜在成長率の推計値については、相当幅をもってみる必要があると思います。』

ということで説明が続くのですが、どうもあたくしは頭が悪いせいか、結局潜在成長率で需給ギャップがどうのこうのという話をする時っていうのは需給ギャップの推計も難しいし、潜在成長率の推計も難しいから、世の中では重視しているけど、決め打ち的に使うのはあまり宜しくないのではないでしょうか、という話をしているように読めました。詳しくは会見要旨を
ごらんください(って超手抜き)。


会見はまあそんな所で。以下市場メモ。


○ところで月曜のオペレーションは・・・・・

11月2日のオペレーション
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of091102.htm

スポネの国債買現先が2000億円増えただけで共通担保の期間も特に長くはございませんで、どう見てもスタンスに変化はありません本当に(ry

てな訳で、ディレクティブの頭にあった文言は何だったんでしょうかねという気がするのですが、まあ過去の実績から勘案するとどうせこうなるでしょうねというイメージでしたのであまり驚きませんです。

特オペ解除が近くなってくる所で特オペのオファー頻度が減ってその分共通担保に一部化けるのではないかと思いますので、逆に言えば例によって例のごとく、そこまでの「溜め」を作るために目先の供給は最近暫くのスタンスが継続されるのではないかと思料されまする。

まー特オペ後の共通担保も1回位は3か月の全店オペとかを実施するのでしょうけれども、そうそう何度もロールするかも微妙かな、と思います。






2009/11/02

お題「決定会合レビュー」

決定会合終了時間が早かった事にちょっとビックリしました。

#あらまCIT破産申請ですか、事前調整型みたいですが

決定会合結果
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091030.pdf

展望レポート
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0910a.pdf


○特オペ廃止と時間軸のようなものがセットみたいになっちゃいましたが

『1.当面の金融政策運営

当面、現在の低金利水準を維持するとともに、金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給を通じて、きわめて緩和的な金融環境を維持していく。

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針については、以下のとおりとする。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.1%前後で推移するよう促す。』

まず最初にここを見て「???」と思ったので過去の決定会合結果の声明文をクリッククリックしたのですが、政策金利の前にこんな文章はございませんでして、今回はわざわざこの文章を入れましたというのが時間軸っぽい表現。

日銀用語の「当面」というのは少々長いスパン(次回やその次の会合という訳ではない)になる筈ですので、まあそーゆー意味では時間軸を何となく示したという事になるんですが、良く良く考えてみれば皆様ご案内の展望レポートで2011年度の消費者物価指数見通しが前年比マイナス継続という見通しが出ているのですから、展望レポートそのものが時間軸であって、市場の中の人的に言えばわざわざこのような文章を出す必要は無い筈なんですよね。

で、出す必要があったのかよー判らん文章をわざわざ今回付けたのは当然ながら付ける事に意味を持たせたという事でしょうけれども、素直に解釈をしますと「今回の企業金融特別措置の解除は利上げにつながる出口政策ではありません」というのを一般ピープルにも判り易くする為にこの文章をわざわざ付けましたと言う事になりますわな。

で、もうちょっと嫌らしい解釈をすれば、当然ながら「これって要するに企業金融特別措置解除とのバーターですよね」という意地の悪い解釈になる次第でございまして、(以前より再三再四申し上げているように)そんなに事を大きくしないでも解除できたんじゃないかと思われる企業金融特別措置の解除のバーターで使うカードとしては勿体なかったのではないかと思われます、って本石町日記さんと同じ話ですが。


ただし、この時間軸みたいな文言ですけれども、特に何かコミットメントをしているのかと言えば別にまあそういう訳でも無いですし、そもそも展望レポートがあの状況でしたら景気が超越的に上振れしないと出口がどうしたこうしたという話になる訳ありませんので、特にこれで強烈に日銀の手足が縛られるという話にはならないと思いますが、良く良く考えたらこの文言が次回以降も継続してディレクティブの頭に付くと考えると、そこの文言をいじるとその度に政策インプリケーション発生となりますので、却って先々にノイズ発生の余地を作ってしまったような気もせんでもないのが気になります。次回しらっと外しちゃったらまあ話は別ですが。

あと注目なのは今日以降のオペでありまして、ディレクティブにわざわざ『金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給』と入れているのですから、それ相応のオペが実施されるのかどうかもこっそりと注目しておきたいです。と申し上げておりますが、実はここの文言も何となく微妙な所でありまして、そもそも「金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給」っていうのは超過準備付利導入時の目的でもありまして、その超過準備付利制度が継続されるのですから、これまた一々付ける必要があるのかというと市場の中の人達の論理としては「何を今更」という話でございまして、これまた一般ピープルへのアピールなんでしょう。

大体からして昨年の今頃も「潤沢な供給」だの「CP現先オペの積極活用」だの言いながら大して潤沢供給も積極活用もしてなかった(当時の悪態をご参照ください)という前科があるので、今日以降のオペが果たしてどうなのかはニヤニヤしながら推移を待つという感じでしょうか。まー思いっきり極端に言えば、「金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給」って数字上だけで言えば今だって超過準備が常にあるような状態になっているのですから金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給ちゃあその通りとも言える次第でありまして(^^)、正直この文言に対してオペがどう出るのかはちょっと気にしたい所でもあります。

つまり、まあディレクティブの前半部分の新たに出た文言っていうのは、金利市場の中の人的に言えば、本来別に言うまでも無く自明の事なのですけれども、それをわざわざ言いだしたのは一般ピープルというか他市場とかマスコミとか政府方面とかの「微妙に知っているので却って変に誤解しそうな人達」向けへのアピールなのかなあって感じで、下手に「日本の出口政策」とか言い出して他市場が暴れたりするのを押さえたいというのが狙いなんじゃないかなあという感じです。

まあそうだから金利市場の中の人的には「自明の事をわざわざ書くのはどーしてじゃろ」という文言(しかもコミットメント無し)が入る事になったんでしょうねというのがあたくし的な一応の結論にしておきますが、先ほども申し上げましたように、今後はここの文言をいじるとノイズ(あるいは政策意図丸出しモード^^)になっちゃいますねという点は今後気になる所でございます。



○何も半年後の解除を今決めなくてもよかろうに・・・・

『2.各種時限措置の取り扱い(注2)

日本銀行では、昨年秋以降、金融市場の極端な収縮に対応するため、CP・社債の買入れなど中央銀行として異例の対応を含め、各種の時限措置を導入した。最近のわが国の金融環境をみると、厳しさを残しつつも、CP・社債市場をはじめ改善の動きが拡がっている。今後とも、金融市場の安定を確保し、それを通じて企業金融の円滑化を支援していく上では、金融市場の状況変化に即応した、最も効果的な金融調節手法を採用することが必要である。日本銀行は、こうした考え方に基づき、各種時限措置の取り扱いを以下のとおりとすることとした。』

ということで、CP社債買入が12月末で廃止はまあそうなりますかちゅう感じでしたけれども、特別オペの「延長するけど解除」は少々驚き桃の木。
『(1)企業金融支援特別オペ

企業金融支援特別オペについては、年度末に向け、金融市場の安定確保に万全を期すため、その実施期限を来年3月末まで延長した上で完了する。4月以降は、より広範な担保を利用できる共通担保オペ等の金融調節手段を活用して潤沢な資金供給を行う態勢に移行する。』

まあそう来るだろうと思いつつも如何な物かと思ったのは、特オペの解除を技術論で対応した事でありまして、本来この解除に関しても(CP・社債買入解除と同様に)「導入時の本来の意義・目的を達成したので解除」というロジックを持ち出して、それに対して現状が本当に解除に値する状況なのかという議論をして欲しかったと思う次第。本オペに関しては「指値・無制限」という所に特徴があるので、その部分に対する考察をもうちょっと掘り下げて欲しかったなあというのが、まあ政策ロジック的な印象。

で、もう一丁のより実際問題的なツッコミ所は、「何も半年後の事を今決めなくても良いでしょうに」という話。今回の特オペ解除が技術論で進んでおりまして、しかも上記の文言中にも(FOMCの声明文みたいに)「様子が変わったらやっぱり完了しない」というような部分が無いとなりますと、向こう半年間で景気2番底懸念とかなったらどーするのやらという懸念はある訳です。(まあしらっと延長するにしても最初に言う事無いと思うのですが)

そもそもですな、3か月延長を決めたとしても自動継続する訳では無くて、そのまま期限が来たら自動消滅になるのですから、何も好き好んで解除を今からコミットして変に手足を縛る必要は無いと思う次第でして、わざわざ変な相場張っちゃいましたねとしか申し上げようがございません。まーそんな相場張るリスク取ってでも解除したかったというのが伝わって来る特オペに関する決定なのでありました。

で、水野委員はこれに反対ですけれども、社債買入解除にも反対しているのですから、反対理由は「終了条件をつけての延長ではなく、単純に3か月延長すべき」という事なのはまあ明白でしょうな。



○CP・社債の買入解除は正攻法

『(2)CP・社債買入れ

CP・社債買入れについては、CP・社債の発行環境が大幅に好転し、CP・社債市場の機能回復という所期の目的を達成したことを踏まえ、予定通り、本年12 月末をもって措置を完了する。』

CP買入に関しては4打席連続応札無しという素敵な状態になっておりますのでまあそうでしょうなという感じですが、水野委員が反対する社債に関して言えば微妙な気がせんでもないですが、まーそこは他の政策委員の皆様がそのように判断したという事ですから。

まあこれは正攻法なので、その判断が正しいかどうかは別にして直球勝負。



○適格要件の緩和は1年延長とな

『(3)担保要件の緩和措置

民間企業債務およびABCP の担保要件の緩和措置については、引き続き、企業金融の円滑化を支援する上で重要な役割を果たしていることを踏まえ、その実施期限を、来年12 月末まで延長する。』

まあ利上げするような環境になるまでこのまま放置プレイになるのでしょう。一々議論するのがめんどいから1年延長したと見た(^^)。



○超過準備付利制度の常設ファシリティ化はどうするんでしょ

『(4)補完当座預金制度

補完当座預金制度は、金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給を行いつつ、円滑な金融市場調節を実施する観点から、その実施期限を、当分の間延長する。』

本来的に言えば、預金ファシリティって別に潤沢な資金供給がどうのこうのという話ではなく、実際は短期市場金利の下限を設定して調節をやりやすくする為の措置なのですが、補完当座預金制度という事で導入の目的が「潤沢な資金供給を行う」という一般的な預金ファシリティとちと違う物を付与されてしまっているので何か微妙は微妙なんですよね。でも、将来的な事を考えれば、この制度を普通の預金ファシリティとして常設化して、ロンバート(常設貸出ファシリティ)と超過準備付利(常設預金ファシリティ)で政策金利との回廊を作った方が金融調節的には美しい(し運営しやすい)と思いますので、その辺を見越して「当分の間延長」となったんでしょうなあと思います。常設化する場合の理屈をどう捻り出すのかが見ものですが。



○展望レポートですが

『(経済情勢の見通し)』の先行き見通しに関して。

『先行き2009 年度後半から2011 年度を展望すると、わが国経済は、他の先進国と同様、世界経済の動向に引き続き大きく左右される展開を辿る可能性が高い。現在、わが国の景気は持ち直しつつあり、2009 年度後半は、海外経済の改善と経済対策の効果を背景に、景気は持ち直していくとみられる。2010 年度もこの傾向は維持されるものの、世界経済の回復のペースが緩やかなものに止まるとみられること、国内においても需要刺激策の効果が減衰する中で、雇用・賃金面の調整圧力が残存することなどから、年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースも緩やかなものとなる可能性が高い。』

『その後は、米欧におけるバランスシート調整が相応に進捗するとともに、わが国においても、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられる。このため、2011 年度には、わが国の成長率は、潜在成長率を明確に上回るペースまで高まる見通しである。』

ということで、だいぶ願望レポートっぽい感じがしますが、まあこんな感じでございますなと思いつつ、ふと脚注をみると素敵な文言が。

『最近時点のわが国の潜在成長率を利用可能なデータで推計すると、大幅な景気悪化により、資本ストックの伸び率が低下していることなどを反映し、従来推定されていた水準よりも低下しているとみられる。見通し期間中の潜在成長率については、一定の手法で推定すると、2009 年4月の展望レポート時点の「1%前後」から低下し、「0%台半ば」と計算される。もっとも、経済が大きく変動している現状では、こうした推計について、相当幅をもってみる必要がある。』

潜在成長率を下げて来ましたか。道理で2010年度の消費者物価見通しが▲0.4%と意外に低くなかった訳ですわという感じでありまして(^^)、何か潜在成長率を下げて先行きの見通しを少しでも良さそうにしましょうって気がするのはきっとそれはあたくしの性格が悪いからそう見えているだけですよね!!


で、項目別展開の所は当然ながら先行きの回復もイマイチ感漂う内容になっていますけれども、その辺を華麗にスルーして金融環境の部分を。

『わが国の金融環境をみると、CP・社債の発行環境が大幅に好転しているほか、金融機関の貸出態度の厳しさが後退し始めるなど、改善の動きが拡がっている。先行きについても、米欧に比べわが国金融システムの頑健性が維持される中、金融機関の貸出態度など、企業の資金調達を巡る情勢は引き続き改善していくものとみられる。』

ということで、まあ買入解除という話になるのですが、普通に来年度も低金利継続ですなあという本音が出ている部分を引用。

『2010 年度以降は、企業の資金調達環境の改善に加え、企業収益の回復を背景に低金利の持つ景気刺激効果が強まり、こうした金融環境全般の改善が、民間需要の自律的な回復を後押しすると期待される。』

どう見ても時間軸です本当にありがとうございました。


○2つの柱による点検

リスク要因の所もあるのですが、引用してると長くなりすぎるので華麗にスルーして2つの柱の所に。

『まず、第1の柱、すなわち先行き2011 年度までの経済・物価情勢について、相対的に蓋然性が高いと判断される見通しについて点検する。上述した通り、わが国経済は持ち直しを続けていくと考えられる。また、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、2009 年度後半以降、下落幅が徐々に縮小していくと見込まれる。こうした動きが持続すれば、日本経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路に復していく展望が拓けると考えられる。』

さて4月はどう書いてあったでしょうか。

『まず、第1の柱、すなわち先行き2010 年度までの経済・物価情勢について、相対的に蓋然性が高いと判断される見通しについて点検する。上述した通り、わが国経済は、当面、悪化が続くが、次第に下げ止まりに向かい、2009 年度後半以降、成長率が緩やかに持ち直す姿が想定される。また、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、2009 年度半ばまでにやや大きく下落した後、2009 年度後半以降は、下落幅が徐々に縮小していくと見込まれる。こうした動きが持続すれば、日本経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けると考えられる。』(本年4月の展望レポート)

基本的なストーリーは4月の延長になっていて、悪化が止まって持ち直しという話にはなっているのですが、微妙にチャーミングなのは、4月の展望レポートでは『成長率が緩やかに持ち直す』という話をしていたのですが、今回はそこから「成長率」という文言が外れている事ですな。まあ潜在成長率を下げてそこはチャラにしているのですけど(ニヤニヤ)。


『次に、第2の柱、すなわち、より長期的な視点も踏まえつつ、金融政策運営の観点から重視すべきリスクを点検する。景気については、新興国・資源国の経済情勢など、上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある。一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』

で、前回4月はどうでしたかと言いますと。

『次に、第2の柱、すなわち、より長期的な視点も踏まえつつ、金融政策運営の観点から重視すべきリスクを点検する。景気については、国際的な金融経済情勢、中長期的な成長期待の動向、わが国の金融環境など、景気の下振れリスクが高い状況が続いていることに注意する必要がある。物価面では、景気の下振れリスクの顕現化、中長期的なインフレ予想の下振れなど、物価上昇率が想定以上に低下する可能性がある。一方、中長期的には、世界経済が回復する過程において、現在の極めて景気刺激的な政策が維持された場合、一次産品価格が予想以上に上振れることなどにより、わが国の物価上昇率が想定以上に上昇する可能性もある。』(本年4月の展望レポート)

下振れリスク強調姿勢だったのが、やや強調度合いが下がったという感じですわな。で、その後の部分でもそうなのですが、4月の展望レポートにあった「当面は、景気・物価の下振れリスクを意識する必要がある。」という文言がちゃっかり削除されておりますので、メインシナリオの見通しそのものは「上昇角度は全然さっぱり」というのが1年延びたという感じではありますけれども、下振れリスクに関する言及が軽くなっている所を総合的に勘案すると、さてどうなんでしょうという気もします。まあ基本的に展望レポートの内容そのものは当初言われていたようにぱっとしませんなというのはその通りではございますけれども。