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2009/03/31
お題「さて期末です」
と言っても基本的に受渡ベースでは木曜金曜で期末は終わっているのですけどね!
#「債券は買いが集まりました」で米債10年2糸甘で3か月TB前日比変わらずとか一体全体どういう市況ニュースなのかさっぱり判らんのですが>モーサテ(多分下がって上がったとかなんでしょうけど・・・)
○6営業日連続で補完供給が出ている件など
昨日も補完供給オペが実施されました。いやまあ補完供給自体は別にどうのこうのという話ではないのですけど、同じ銘柄で延々と補完供給オペが連続するのが何とも味わいがあります。
今回の補完供給オペですが、対象が10年249と267なんですけど、23日からスタートして段々落札額が増えてきて、金曜は510億円になりやがりましてオイオイとか思っていたら昨日は375億円になってちょっとだけホッとしましたねという感じでありますが、さて今日の14時の補完供給タイムはどうなるのやらとワクワクテカテカ(^^)。
えーっとですね、連日同じ銘柄で補完供給ってのは先物と当限の受渡最割安銘柄が変な挙動があったときに2日だか3日ほどあった気がする(気がするだけで確認してないのですいません)のですが、こんなに延々と引っ張るのは珍しい。いやまあ引っ張るのは制度上引っ張れるので別にそれが良いとか悪いとか言う話ではないのですが、期末前のSCレポでオフザランの銘柄なんて瞬間的にレポが締まるのって普通だと思うのですけれども、今回の補完供給が23日からスタートで25日からロットが増えましたとか、もう露骨に「レポ信託からの期末越え不可の委託玉のロールの手当てしてませんでしたでござるの巻」というのも珍しいですねという所でして。
まー制度あるから利用するのは別に良いのですけど、こうも見事な利用を見せられますと、お年寄りのあたくしと致しましては「いやあの普通こういうの期末越え事前に確保しないのかなあ」とかつい思ってしまうのですけれども、その発想って変じゃないですよねえ。
この現象ってまあ局地的な話なので、この事象を拡大するのは拡大にも程があるのですけれども、何かこーゆー露骨な「だって補完供給あるから良いじゃん」的な動きを見せられますと、前々からの日銀様的懸案でありますところの「フェイル慣行の定着」って話に対しましても投資家的には二の足を踏みたくなっちゃうんじゃねえのという所で。特にペナルティーとかが無くて、おまけにフェイル食らって資金が残ったって出し先がろくすっぽないし金利は低いしでは、フェイルになった時の各種処理の事務コストの方が掛かりますし、うっかり決算越え(大体の銀行や年金だと3月末ですわな)でもしようものならもっと面倒な話になるので勘弁って所になるでしょうな。
まあね、上記現象でそこまで話を膨らますのは話の飛躍なんですけれども、まあ今日は変なバッドフェイルとか出ないで下さいねと思うのですよ。そんなのあるとまたフェイル慣行の定着とか絵に描いた餅になっちゃう訳でして、特に決済に係る部分っていうのは「制度上大丈夫だから良いじゃん」で開き直る参加者が何人も出てくると円滑に回らなくなるものだと思いますので・・・・・
○今更ですが3月17日の白川総裁記者会見
劣後ローン供与の施策を出したときの会見でどうもすいません。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0903c.pdf
質疑応答は基本的に「何でまたこのタイミングで」とか「で、この制度って政府の資本注入とどういう使い分けになるの」とかいう話で終始するのでありますが、正直言って白川総裁の答弁も相当歯切れが悪く、何となくまあ本件措置から微妙に(自主規制)な感じが致しますです。
まあ唐突感は拭えない施策でしたけどね。
・どうみてもやっつけです本当にありがとうございました
これは中々性格のよろしい質問で(^^)。
『(問) 今の質問と重なりますが、メガバンクなどの資本状況をみると、TierIの余力から考えて、劣後ローンを欲しているところがあるのか、あまりないのではないかと理解しています。おそらく地銀などが対象に入っているのではないかと思うのですが、総裁は、この程度の必要性があるといった手応えをお持ちになった上で、設計されたのかというのがまず一点です。(以下割愛)』
この質問ですけど、どのくらい性格が良いかと言いますと、先般企業金融特別オペの実施をアナウンスした時(昨年12月の定例会合)には「3兆円くらい」とか思いっきり具体的な数字を出して見てるほうは「おいおい」という感じだったというのが質問者の念頭にあったと思うのですよね。で、それに対して今回のやや唐突&微妙に中途半端感が見える施策に対して「で、この1兆円の積算根拠は」というのを聞いて「施策の事前の練り具合」を見たかったのではないかとか思うのですけど。
#って深読みのしすぎかな(^^)
で、その答え。
『(答) まず前者についてですが、銀行は、金融機能強化法の活用により、TierTにカウントされる資本の調達が可能になります。日本銀行は、TierUにカウントされる劣後債務の調達を可能とする措置を検討することとしたわけですが、今ご質問にあった通り、各行によってTierUの追加調達の余地は異なります。ただ、銀行により程度の差はありますが、TierU算入の余地は残されており、資本基盤の維持を図るうえで、TierUも相応の効果を発揮すると考えています。』
具体的数値が来ません(^^)。
『私どもは、この制度が最優先されるのではなく、再三申し上げている通り、民間金融機関が自力で市場から調達することが大原則であると考えています。ただ、先程申し上げた通り、「合成の誤謬」が働き得るわけですから、全体としてはさほど心配する必要はないと思ったとしても、経済金融情勢、資本の情勢に緊張感があるため、私どもとしてはこうした手段、選択肢を揃えておくことに大きな意味があると考えました。』
いやまあこれはセーフティーネットで入れないで済むのなら入れないというのは勿論理屈ではあるのですけれども、何か微妙に「まあ作っておきました」感のある発言でして、それを何でまたあの時期にねじ込むように入れたのかがワケワカランという所でございます。何か話が報道されたのも変なタイミングだったし・・・・・
・ちなみに一応こういう建て付けなんでしょうけどね
その前の質問でこんな話をしてます。
『(問)(前半割愛)もしこれ(引用者注:政府の枠組みではなく日銀の枠組みを利用するメリット)が無いとすると、銀行保有株の買取りと同様、政府が二十兆円、日本銀行が一兆円をそれぞれ用意したが、これまでに一億円くらいしか利用されていないように、ニーズが無いことをやっているということが起こり得ると思います。今回の一兆円についても、どこまで利用されるという見通しを持っておられるのでしょうか。枠組みを用意したが全く利用されないことも有り得るとなると、どこまで意義があるかという疑問があります。』
説明が長いので適当に割愛しつつ・・・・
『(答) (政府の現行枠組みの説明部分割愛)それから、政府がもしTierUに対して資本注入すれば、という主旨のご質問がありましたが、私ども自身は、先程申し上げた政策目的や日本銀行の財務基盤等を考慮して一兆円という金額を決定しました。この制度は、まだ実際にスタートしているわけではありませんからどの程度利用されるかわかりませんが、仮にこの制度が非常に使われることになった場合、政府が更に法律を改正してTierUも対象にすることを排除しているわけではありません。』
まあ緊急で政府が間に合わないリスクがあるから日銀が作ったよというのであればそれはそれで判るのですが・・・・・
『今回の決定は、現在の法律の下、また、厳しい経済金融情勢に直面している中で、中央銀行としてどのように金融システムの安定あるいは持続的な成長経路の復帰に貢献できるかを真摯に考えた結果だということです。どの程度利用されるかということですが、これは先程申し上げました通り、まだスタートしていませんから、それをお話するには時期尚早だと思います。』
勝手に妄想を逞しくすれば、この時点では今(って2週間しか違いませんが)よりもたぶん政府のヘロヘロ状態は大きかった(支持率とかね)ので、政府が金融機能強化法を再改正するという時間およびそれに係る国会対応とか考えたら日銀がとりあえず作っておけという話だったのではないかと思うのですが、まあそうは言えませんから説明の歯切れが悪くなるのかねえとか思う次第。
だって全般的な説明見てると「いや別に危機でどうしようもない訳では無い」という話をしつつも、「政府の金融機能強化法だけだと足りない」(じゃなかったらこんな施策打たないでしょ)という説明になっているので、話が何か微妙にアレになっているのであります。
『ただし、再開した株式の買取りについて、利用金額が現状少額にとどまっているからこの措置に意味がないという主旨のご発言と受け取りましたが、私どもはそのように考えていません。何度も申し上げているとおり、この措置は安全弁として用意しているものです。』
これはその通りですけど、CP買入が札割れというのとこちらに応募が無いのはちとまた話のレベルが違うと思われますけどね。
『先程、現在日本銀行は最後の貸し手として個別金融機関への貸出を行っていないと申し上げましたが、以前には、最後の貸し手という中央銀行に備わった機能を実行してきました。現状、最後の貸し手として貸出を行っていないからこの制度に意味が無いとはどなたも思わないと思います。むしろ、最後の貸し手の機能を使わない状態というのは、それだけ金融システムも相対的に健全な状態を維持しているわけです。ですから、安全弁という性格上、金額の多寡だけでは判断できないということを是非ご理解頂きたいと思っています。』
まあ上手くまとめましたね(^^)。で、さっき引用した質問に続くの巻でした。
・バブル発生がどうしたこうした
とまあそんな感じで微妙感の漂う会見の中で白川総裁の主張がはっきり出た質疑が会見要旨の最後にございました。本当の質問と答えはやたら長くて、質疑応答1本で1ページ半くらいあるのですが、まあ端折りまして。
『(問) (主要部分思いっきり割愛)さらに、(引用者注:今回の銀行に対する劣後ローン供与の措置によって)銀行が発行している社債などに日銀による暗黙の保証が付いているように連想され、ある種のクレジットバブルのような状況が発生してしまう可能性が考えられるのですが、どのようにお考えでしょうか。』
で、その答え部分。
『(答)(これまた主要部分思いっきり割愛)それからクレジットバブル発生の可能性についてですが、これは金融システム面の施策に限ったことではないと思います。過去十数年の世界経済全体の運営を振り返ってみますと、バブル崩壊後の色々な対応が結果として次のバブルを生んでしまっているのではないか、という反省、問題意識があるわけです。結局は、何事も行き過ぎてはいけないということであり、今回のこの措置については、日本銀行の劣後ローンに過度によりかかることがないように制度設計をしたいと先程申し上げました。こうした点についても十分配慮した設計、運営にしていきたいと思っています。』
「バブル崩壊後の色々な対応が結果として次のバブルを生んでしまっているのではないか」というのはまあ確かにそういう面は否めないんですけど、何か経済成長していくってのは本質的にそういうもんなんじゃないかとも思いますし、まあ難しい論点なんでしょうが、とりあえず白川総裁は「BISビュー」「FRBビュー」で言えばゴリゴリの「BISビュー」のお方ですねというのが伝わってくる発言ではありました。
#ではまあ来期もよろしくお願いいたします
2009/03/30
お題「週初なのでちと虫干しネタ系で」
森田健作圧勝っすね、すげえええ。
○3月金融経済月報から
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0903.pdf(3月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0902.pdf(2月)
経済の基本的な所で変化があるのは生産の先行き部分でして、普段あまり見ない金融面の方が変化しているという感じです。
・基本的な経済の部分で変化があったのは生産の先行き
『以上の需要動向を背景に、生産は減少を続けるとみられるが、在庫調整圧力が減衰するにつれて、生産の減少テンポも次第に緩やかになっていくと予想される。』(3月)
『以上の需要動向と在庫調整圧力の高まりを背景に、生産は減少を続けるとみられる。』(2月)
ということで、在庫調整圧力が軽くなってくる点について言及しています。その他に関しては先月とまるっきり同じ表現が続いているので引用は割愛しますです。「景気は大幅に悪化」「先行きは当面悪化を続ける」というのは変化なしということですね。
・物価も基本的に同じ見通し
現状判断部分は企業物価のベクトルがちょっと変わり、消費者物価の水準表現がちょっと変わったのですが、まあ事実関係の話なのであまり気にしなくていいかな。一応引用。
『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落を主因に、3か月前比でみて下落を続けている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きなどを反映して、ゼロ%まで低下している。』(3月)
『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落を主因に、3か月前比でみて大幅に下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きなどを反映して、プラス幅がゼロ%近くまで縮小している。』(2月)
先行きに関しては、国内企業物価に関して国際商品市況の影響が緩和されるという点に言及しています。消費者物価は変化なしです。
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況下落の影響が残り、製品需給の緩和も続くもとで、当面、下落を続けるとみられる。』(3月)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落や製品需給の緩和などを背景に、当面、下落を続けるとみられる。』(2月)
ということで。
・金融環境で気になったのは・・・・・
金融環境で最初に気になったのは語順だったりします(^^)。
『金融面をみると、わが国の株価は、米欧の株価の動きにつれて下落した後、最近は前月を上回る水準にまで上昇している。為替は、対ドル相場でみて、円安になっている。この間、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は、引き続き0.1%前後で推移している。ターム物金利や長期国債金利も、横ばい圏内の動きを続けている。』(3月)
『金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は、0.1%前後で推移している。もっとも、国債レポ市場金利は振れやすい動きとなっているほか、ターム物の銀行間金利は高止まりを続けている。この間、円の対ドル相場および株価は前月と比べ下落しているが、長期国債金利は前月と概ね同じ水準となっている。』(2月)
いやまあどうでもいいんですけど、前回は短期金融市場の話が先に来て、後から株価の話とか来たのですが、今回は株価と為替の話が先に来ているのはどんな意味があるのかなあとか思ってみたりして。
まあそれはともかく、金融政策の最近の柱になっております企業金融環境に関する部分はこのような認識になっています。
『企業の資金調達コストは、政策金利引き下げの波及やCP発行市場の改善を受けて、昨年末に比べ低下している。』(3月)
『信用スプレッドは多くの先で拡がった状態が続いているものの、政策金利の引き下げなどから、資金調達コストは昨年末頃に比べれば低下しているものとみられる。』(2月)
「低下しているものと見られる」が「低下している」と改善していますな。
『企業の資金調達動向をみると、CP・社債の発行はひところに比べ回復してきているうえ、銀行貸出は大企業向けを中心に高い伸びを続けている。』(3月)
『企業の資金調達動向をみると、各種の政策対応もあって、CP発行には一部に改善の動きがみられるうえ、銀行貸出は大企業向けを中心に高い伸びを続けている。』(2月)
銀行貸出は変わらないですけど、CPや社債の発行が回復となってますな。まあそのあたりは改善しましたよという話で。CPに関しては既にこの時点で結構な阿片窟状態になってる(今はもう完璧な阿片窟ですなあ)ような気がするのですが、それに関しては月報本文で何かこんな書き方になっているのが微妙に如何な物かと思うのですが。
『昨年末にかけて高騰したCP発行金利は、1月に低下した後は横ばい圏内の動きとなっている。』(3月月報本文14ページより)
・・・えーっと、CP発行金利がドカンと下がったのは2月の最終週からだと思うのですけれども横ばい圏内ですかそうですか。何だかなあ(なお巻末の図表にはCP金利のレートとかは特にございませんです)って感じなんですけど。
○この前利下げした時のBOE議事要旨からちょっとだけ
こんなのが出てたのでちと斜め読み。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2009/mpc0903.pdf
このときって議事要旨12ページにありますように、
『44 The Governor invited the Committee to vote on the proposition that
Bank Rate should be reduced by 50 basis points to 0.5%. The Committee voted
unanimously in favour of the proposition.』
つーことで利下げをして、金融資産買入プログラムの実施も決定したのですが。
『45 The Governor invited the Committee to vote on the proposition that:
The Bank of England should finance £75 billion of asset purchases by the
creation of central bank reserves. The Bank should seek to make these purchases
within the next three months. The scale and timing of purchases would be
reviewed at each MPC meeting.
Purchases of private sector assets under the Asset Purchase Facility should
now be financed using central bank reserves rather than Treasury Bills.
The Committee noted that, in so far as purchases of private sector assets
fell short of the £75 billion target, the Bank of England would buy gilts
to fulfil the overall quantity of purchases.
The Committee voted unanimously in favour of the proposition.』
この時の利下げ論議で「利下げの良い点悪い点」って論点があったのですな。本文7ページから8ページになるんですけど、クソ長いので途中で段落切ります。本当は全部が1段落で書いてあります。
『27 The Committee agreed that further monetary easing was required to
meet the inflation target, and first discussed whether there should be
any additional cuts in Bank Rate.』
ということで利下げに関する議論。
『Some arguments were identified for making no further rate reductions.
Although the current extremely low level of Bank Rate was providing a substantial
stimulus to the economy, the transmission of any further rate cuts through
to activity and inflation was likely to be significantly impaired.』
『In particular, the Committee remained concerned that a further reduction
could have some adverse impacts on the economy, given its effects on the
profits that banks and building societies were able to make through the
spread between their deposit and lending rates.』
「追加の利下げは経済に対して反対のインパクトを与える可能性がある」って指摘がほっほーという感じですが、銀行等の収益に悪影響を与えるという論点でして、長短金利差が無くなって来ると銀行などの金融機関もそうですが、債券運用も苦しくなりますな。
『Deposit rates could not be reduced much further, and if these institutions
were contractually obliged to pass on cuts in Bank Rate to some of their
borrowers, that would squeeze their profits further, and potentially reduce
lending capacity.』
で、次の論点もほほーであります。
『In addition, a sustained period of very low interest rates could impair
the functioning of money markets, creating difficulties in the future,
when interest rates needed to rise.』
低金利が継続すると短期金融市場が一家離散状態になって次の利上げの際に色々と問題が生じると仰せで。緩和状態を継続しつつも一家離散状態にならない程度の金利環境が必要という指摘みたいですな。
でもまあ利下げしたわけですが、そこの論点も中々。議事要旨8ページ目から。
『28 However, there were also arguments in favour of making a further reduction
in Bank Rate. First, a cut in interest rates would still have some effects
in boosting nominal spending and inflation, for example through the usual
exchange rate and asset price channels.』
為替市場や資産価格を経由する効果によって消費や物価の上昇に寄与と。
『Second, a lower level of Bank Rate should increase the effectiveness
of the further measures which were likely to be needed to ease the stance
of monetary policy. Those measures would lead to an increase in the supply
of money in the economy. A lower level of Bank Rate would raise the incentive
for investors to find alternative assets to hold, rather than keeping the
additional money in bank deposits.』
アナウンスメント効果みたいな話をしてますが、後半で思いっきりいわゆる「ポートフォリオリバランス効果」みたいな話をしてます。ただまあ金融機関のポートフォリオリバランスではなくて「銀行に預金しておくより有利だということで別の資産を持つようになる」って書いているから非金融セクター(ってか個人ですかね)の投資を喚起するという話。
日本だと「金利が下がると個人預金者が困る」という恐怖の理論がありますので、このようなことを堂々書くとメディア様総叩きになってしまうでしょうね!英国裏山鹿。
『Third, concerns about the impact of a low Bank Rate on lending capacity
were best met by policy initiatives to stabilise the financial system.』
金融システム安定化ですかにゃ。
・・・・ということで、この辺の論点を見てますと、各国の金融政策における論点が似て来てますなあという気がするのでありまする。という話をしたかったのでありまして(^^)。
2009/03/27
お題「山口副総裁会見」
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0903e.pdf
またまたメインの話題は長期国債買入なんですけどね(^^)。
○景気が良くない中で長期金利が上昇したら・・・・
こんな質問が。
『(問)2点お伺いします。1点目は、先程、白川総裁が国会のご答弁で新発の国債を引き受けるつもりは一切ないということを発言されており、理由は歯止めがかからなくなるとハイパーインフレを起こすということでした。現在日銀は色々な政策を採っていますが、もし、将来的にまだ景気が良くないのに長期金利が上がり始めるということがあった場合に、どのように対処されるのでしょうか。その時にはJGB
を買う以外に何か方法があるのでしょうか、というのが1点です。(2点目以下割愛)』
まず長期国債の引受に関して。
『新発の国債を引き受けるつもりがあるのかということですが、総裁が国会でどのように答えたのか正確に分かりませんが、日本銀行としては、財政法5条で禁止されている措置でもあり、新発の国債を引き受けるといった考えは持っていないということです。』
ハイパーインフレ云々の部分が怪しいので微妙に回避行動な答えですな(^^)。
『長期金利が上がった場合にどうするのかというご質問ですが、これは難しい問題を含んでいると思います。』
そらそうよ。
『景気が悪いにもかかわらず、長期金利が上がるという事態を想定したご質問だと思いますが、通常、長期金利が上昇していく状態というのは、先行きの景気に対する認識が改善していく、あるいは先行きの物価が上昇する可能性が高まっていく、といった見方を反映して起こるものだと思います。』
いや多分質問の意図は「財政のサステイナビリティへの懸念で長期金利が上昇した場合どうするのか」という話だと思いますが・・・・まあ続き。
『仮に景気が良くなっていくという状況であれば、そのようなことが起きたとしても、私どもはマーケットの判断を尊重していくことになると思います。また、物価が上がるということについては、その上がり方が重要な点であると思います。私どもが物価が安定していると判断できる範囲であれば、長期金利が上昇したとしても、マーケットの判断を受け止めていくということになります。』
いやまあそんな場合は問題無いのですが。
『景気が悪い中で長期金利が上がるような状態をどう考えるかということですが、私どもとしては、そういう事態は基本的には想定し難いと考えていますが、長期金利の動向については引き続き注視していきたいと思います。』
ということでサラリと逃げておりますが、それこそバーナンキのFRBが長期国債買入を行うロジックが「信用市場の環境緩和」という蒟蒻問答成分がだいぶ入ったモノでありまして、実質的には財政ファイナンスして長期金利支えるといわんばかりの行動ですんで、結構重いテーマじゃねえのと思うのですが。
日本に関しても、普通に考えるとここから国債大増発で、特に短期国債(国庫短期証券)に今の所増発が来てるのですが、既にレートが下がりにくくなっている(丁度今は期末の資金が余剰になって買いが来てレート低下してますが)有様で、まあいずれ長期ゾーンに振る時にどこかで市場がプギャーと言い出さないかと。
ま、国債発行して調達した分に関してはいずれ民間に還流してくるので、最終的にはその資金が国債購入に回らざるを得なくなるかどうかが問題になるとは思いますので、景気が悪くて財政赤字懸念で長期金利上昇ってのは資金が海外流出しない限りは継続的な話じゃあないとか何となく思うのですけれども、まだ良く頭が整理できないので言ってみただけでござるの巻。
とりあえず今回の山口副総裁会見ではこのあたりの論点をスルーということで。
○財政ファイナンスに関して
『(問) 先般、国債の買入れ増額を決定会合で決めた時のことですが、総裁は記者会見で、しきりに「財政ファイナンスではない」ということを強調されていたと思います。一方、市場では、長期金利の上昇を抑える、債券相場の下支え要因という受け止め方があるのも事実です。結局、国債を買うことについて、財政ファイナンスとそうではない国債の買入れを区別できるものなのか、副総裁の見解をお伺いしたいというのが1
点目です。(2点目は後ほど引用)』
『(答) 私どもが長期国債を買うことについて、財政ファイナンスを目的とするものか、あるいは流動性供給のためのものか識別困難ではないか、というのが第1のご質問の趣旨かと思います。私どもは、その点をはっきりさせるために、銀行券ルールというものを設け、長期国債の買入れを行っているわけです。銀行券ルールを逸脱しない範囲での買入れが、まさに財政ファイナンスと認識されない長期国債へのオペレーションだと考えています。』
ということで銀行券ルールの説明になるのですが。
『なぜ銀行券ルールに拘るのかについてですが、銀行券ルールについては2つの意義があると思っています。』
「なぜ銀行券ルールに拘るのか」って所に「いやあうちの社長がやたら拘るんですよねえ」みたいなニュアンスを勝手に感じたのはあたくしだけですかそうですか(^^)。
『1つは、円滑な金融市場調節を確保するということであり、この基本的な考え方は、日本銀行のバランスシートにおいて、長期の負債である銀行券――日本銀行にとってお札は負債になります――に対して、長期の資産である長期国債を割り当て、準備預金や短期的に変動する負債に対しては、短期の資金供給手段を割り当てるというものです。これによって、短期的な資金需給の振れに対してきめ細かな対応が可能となり、円滑な金融市場調節ができるというのが、銀行券ルールの意義の1つです。』
たぶん技術的にはこの点に尽きると思いますけどね。長期国債の売切を短期の資金需給の変化に応じてホイホイ実施できれば無問題なんでしょうが、確かにまあそれは技術的に難しそう(長期金利がランコルゲしそうだから金融調節は出来ても、金利市場が不安定になるのでは金融調節の最終的な目的が達成できない)ですにゃ。
『もう1つは――繰り返しになりますが――、銀行券ルールが、長期国債の買入れが国債価格の買い支えや財政ファイナンスを目的とするものではないという趣旨を明確にするという役割も同時に果たしているということだと思っています。従って、私どもが、銀行券ルールに即して長期国債の買入れ増額を図るという趣旨を明確にすることによって、そのこと自体が国債価格の買い支えや財政ファイナンスを狙ったものではないことを明らかにできると認識しています。』
つまり、何か別の上手い理屈を考えればヨロシという気が思いっきりするのですが、別の質問でこんな話が。
『(問) 今の長期国債の買入れに関連してですが、先程日銀券ルールを逸脱しない範囲での買入れが、財政ファイナンスと認識されないオペだと発言されましたが、将来もしこの銀行券ルールを逸脱して日銀が国債買入れをしなければならないような状況に立ち入った時には、これはすなわち財政ファイナンスとみなしてよいのか、というのがまず1点です。(以下後で引用)』
『(答) 先ほど、銀行券ルールは、長期国債の買入れが財政ファイナンスを目的とするものではないという趣旨を明確にするための効果を持つ、ということを申し上げました。しかし、形式的な論理としていえば、逆に銀行券ルールを逸脱したからといって、直ちに財政ファイナンスを意図するものとなるということではないと思います。』
そらそうですが、あまりにも総裁が銀行券ルールをやいのやいの言うと、逆に財政ファイナンスが意識されてしまうという悪い展開になってしまいますがなと思いますので、白川総裁に組み込まれているらしい「急にスイッチが入ったので」仕様の改善をお願い致したく。
『そうした形式論はともかく、私どもとしては、財政ファイナンスとみなされることがないように、銀行券ルールを尊重し、長期国債のオペレーションをしっかりと行っていきたいと考えています。』
で、この質問の2番目も中々な突っ込み。
『(質問の前振り部分割愛)今後さらに金融市場の安定確保が必要になった場合、やはり柱になるのは、この長期国債の買入れオペではないかと思うのです。ただ、今後、金融市場の安定確保のために、長期国債の買入れをもっと増やさなければならないような状況になることも有り得ると思うのですが、この銀行券ルールにぶち当たるかもしれません。その時にぎりぎりの判断としてどうするのかについて、今の段階ではなかなか答え難いと思うのですが、銀行券ルールという制約がある下で、長期国債の買入れオペの増額が必要になるかもしれないという状況が起こった時の基本的な考えをお聞かせ頂けますでしょうか。』
結局の所はこの質問にあるように「金融市場の安定確保」という理屈で押してくるのでしょうかねえとも思われる次第でありまして。
『これから先の金融政策というのは、長い目でみると色々な対応が必要になるかと思いますが、本日私がスピーチで申し上げたのは、当面という断りを付けたうえでの話であり、そうした中で、金融市場の安定確保と企業金融の円滑化支援が中心的なものになると申し上げたわけです。私は、金融市場の安定確保のために長期国債の買い増しが必要になり、それが結果的に銀行券ルールを超えるかたちでの買い増しとなるという事態を想定しているわけではありません。』
まあ何にせよ「端から想定しない」というのは如何な物かと思いますが、これはまあさっき引用した「悪い長期金利上昇」に対する応答と同じで、「まあその質問はちょっとまだ触れないで下さいな」というある意味センシティブなお題なのですかねえという感じがしました、まあ「当面」というのを言ってますので、総裁よりは柔軟な気もします(というか総裁の頑なさが凄いのですが)。
○量的緩和政策に対する評価
さっき引用した質問のうち(2点目は後ほど引用)って奴の続きです。
『もう1点は、これに関連して、バンク・オブ・イングランドは、英国債の買入れを量的緩和だと言っているようですが、日銀は、2001
年から2006 年まで行った当座預金の残高を目標にする量的緩和政策について、金融システム不安を緩和する以外の効果は限定的だったという評価をされているようですが、そもそも何を期待し、なぜ上手くいかなかったのか、特になぜ上手くいかなかったかについて改めてご説明頂きたいと思います。』
説明はだいぶ長いのですが。
『また、私どもが2006 年まで行っていた量的緩和政策がなぜ上手くいかなかったのか、というご質問についてですが、私どもは、2001
年に量的緩和を導入する際に、未踏の領域に入る金融政策であり、どのような効果を持つかについては、その時々において確かめながら政策運営を行って参りたいということを述べた次第です。私どもとしては、仮に景気を持ち上げる効果を十分持ち得なかったとしても、それをもってその政策が必ずしも上手くいかなかったということではないと思っております。』
そらそうよ。
『もう少し詳しく説明致しますと、日本銀行が行った量的緩和政策は、大きく言うと2つの要素から成り立っていると思います。1つは、準備預金――流動性といってよいのですが――を大量に金融機関に供給することによって、オーバーナイト物の政策金利を限りなくゼロに近づけていくということです。それからもう1つは、こうした緩和政策を、消費者物価指数が安定的にゼロ%以上になるまで継続するという約束をした――これは時間軸効果と呼ばれたものですが――ということです。』
しらっと当座預金残高の目標を引き上げたという肝心の「量」の話をここで言わないで金利の話になっているのは次の説明で言及しているような分析になっているからだと思いますけれども、読みながらだと気にならない(次に量の話が来るので、ここの所で量の話をスルーしているのが気にならない)けど、こうやって段落分けして引用してると気になっちゃいますね。
『この2つの要素によって行われた政策の効果についてですが、私どもは、量を拡大すること自体によって景気を拡大する効果を持ち得たという明確な証拠を今のところ持ち合わせていません。ただし、当時の日本の金融システムは非常に不安定な状況が続き、銀行間の資金取引も円滑性に欠ける状況にありました。こうした下では、日本銀行が大量の流動性を供給することが金融機関に安心感を与え、結果として、金融システム不安を多少なりとも抑える効果を持ったことは事実だと思っています。』
りそな救済に絡んで量を拡大したのはご案内の通り(って若人は知らんのか)ですが、実は金融システム不安がどっか行っても量を出しっぱなしだったという事実もありますけどね。
『2つ目の要素として申し上げた時間軸効果の結果として、長めの金利を低位で安定させることができました。当時、企業等は、過剰な設備投資や雇用、債務を抱えながら、それらを調整することに一生懸命であったわけですが、長めの金利の低位安定を保つことで、そうした企業の血が滲むような努力を後押ししたという面で効果があったと思っています。』
まあ最後は長期金利バブっちゃいましたけどね。
『私どもは、日銀の量的緩和政策を今申し上げたようなかたちで整理しており、一方的に上手くいかなかった政策であったと認識している訳ではありません。』
という整理になっているのですな。当時は長期国債買入を拡大しない中だったので、現在の欧米や日本での政策とはまた違う話になって何とも微妙ではありますが。
#と、引用増量大会で恐縮でした。
2009/03/26
お題「山口副総裁講演から少々」
長期国債の買入実施したけど5年入札が悪くて10年のトレジャリーは8毛甘で終了ですか・・・・・・ほっほーなるほどなるほど(ニヤニヤ)
ということで山口副総裁講演。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0903d.pdf
講演よりも輪番および銀行券ルールに関する記者会見の方が面白そうなのですが、そっちに関しては会見要旨が出てから内容を確認するのが吉かと思いますのでとりあえず講演から。
まず勝手にまとめると「景気に関する見方が厳しい」という所ではなかろうかと思います。で、景気に関する所を読んでみますです。
○世界経済に関して
まあ勿論の事ですが「状況は厳しい」という話なのですが、大恐慌との比較論をしている中で、基本的には「大恐慌とは状況が異なる」としながらも、警戒感を強めていますな。
『しかしながら、「金融と実体経済の負の相乗作用」がまさに進行している中、金融システム安定化に向けた現在の取り組みだけで十分といえるのか、有効需要の不足を具体的にどのような形で補っていくのか、大幅に悪化している実体経済活動との比較でみて金融環境は十分緩和的といえるのか、更には、自国産業の過剰な支援など保護主義的な動きが再燃することはないか、といった点は、引き続き十分に注意していく必要があると思います。。月並みではありますが、重要なことは、過去と比較すること自体ではなく、そこから得られた教訓を踏まえつつ、今日的な視点を持って現状を冷静に分析し、過大にも過小にも評価しない姿勢を堅持することだと考えています。』
『そのうえで申し上げると、今回の金融危機と景気悪化は、過去数年に亘り、広範に蓄積された様々な不均衡を調整する過程であるだけに、当面は、厳しい状況が続く可能性が高いと思っています。世界経済が回復するためには、米欧の金融システムが安定化し、金融面からの実体経済の下押し圧力が低下するとともに、資産価格や生産、過剰設備等の調整が進み、総需要回復への展望が拓けてくることが必要になります。』
先日は野田審議委員がこの過程に関して「循環的なものではなくて構造的なものであると認識すべき」と指摘しています。山口副総裁の今回の講演でも構造面の回復が重要と言うニュアンスが出ているかなあと思いました。
『しかしながら、米欧の金融システム不安は燻り続けており、不良債権の抜本的な処理に向けた取り組みは、緒についたばかりです。また、主要国の各種経済指標を見ても、現時点で目立った改善は見られず、各国の財政・金融政策についても、その効果が十分に発揮されるまでにはなお時間を要すると思われます。』
『日本銀行では、2009 年度後半以降、国際金融市場が落ち着きを取り戻し、海外経済が減速局面を脱することを想定していますが、以上のような世界経済の現状を踏まえると、こうしたシナリオについての不確実性は非常に大きいと言わざるを得ないと考えています。』
まあこの辺は日銀のメインの見解なのですが、段々見方が厳しくなって来てますなあという感じではございます。
○日本経済の先行きに関して
『景気・物価の先行きについては、日本銀行では、中心的な見通しとして、2009
年度後半以降、国際金融資本市場が落ち着きを取り戻し、海外経済が減速局面を脱するにつれ、わが国経済も持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿を想定しています。ただし、こうしたシナリオに関する不確実性は高く、また、リスク要因も存在します。』
ということでリスク要因なのですが・・・・・
『例えば、わが国の生産は、当面は減少を続けるものの、在庫調整圧力が減衰するにつれて、その減少テンポも次第に緩やかになると見込まれます。従って、わが国の生産が回復し、ひいては経済全体が回復するかどうかの重要なポイントは、こうした調整が進捗した後、最終需要が速やかに立ち上がってくるかどうかです。この点、先ほど申し上げたとおり、世界経済の回復についての不確実性が非常に高い状況にある下で、輸出の持ち直しにどの程度期待できるかといったあたりにもリスクが存在していると考えています。』
どう見ても外需がそう簡単に回復するとは思えませんなあというのが多分エコノミストな方々の基本的なコンセンサスだと見られますので、そう考えるとやっぱダメじゃんという感じがしてまいりますな。
『こうした輸出の動向を含め、仮に最終需要の回復が大きく遅れたり、小幅に止まるようであれば、企業の中長期的な成長期待が低下し、設備や雇用の調整圧力が高まることを通じて、国内民間需要が一層下振れるリスクがあると考えています。』
国内民間需要は落ちていて輸出が戻らないとなると、需給ギャップ埋めるのは財政だと思うのですが、そこの対策が遅れた場合には設備や雇用の調整圧力が高まりって話はリスクシナリオというより有り得そうな話にも思えますがどうなんでしょうかね。
『また、物価に関しても、景気の下振れリスクが顕現化し、物価上昇率が長期間に亘ってマイナスを続けるような状況となれば、企業や家計の中長期的なインフレ予想が下振れるリスクがあると考えています。』
・・・・ってデフレスパイラル???
という感じでリスク要因満載という感じで。
○金融環境なんですけどちょっと気になる点が
最初の所なんですけどね。
『次に、最近の金融環境についてご説明します。一言で申し上げれば、わが国の金融環境は、リーマン・ブラザーズ破綻以降、厳しい状態が続いています。本日は特に、皆様にとって最も係わりが深いと思われる企業金融の動向を中心にご説明したいと思います。』
ということでさらっと書いてあるのですけど、従来の日銀の説明だと政策金利に関して緩和的な状況という話をしつつ、企業金融などの環境が11月以降厳しくなってきているという話になっていたのですが、ここでは「金融環境は厳しい」という話になっておりまして、「緩和」という文言が居なくなっているのでして、ちょっとそこは気になりました。
企業金融に関する環境認識なんですけどね。
『昨年末にかけて高騰したCP発行金利が年明け以降低下しているほか、銀行貸出金利も、短期プライムレートの引き下げなどからやや低下しています。しかしながら、信用スプレッドはむしろ拡大ないし高止まりを続けており、政策金利の引き下げ効果は、その分減殺された状態にあるといえます。』(今回の山口副総裁講演)
例えば、12月の利下げ&企業金融措置公表後の白川総裁の講演では、『金融政策の緩和効果が十分に波及するように、日本銀行は企業金融を支援するための様々な措置を講じています。』というように緩和という話をしてますし、今月の金融経済月報でもコールレートに関しては『コールレートはきわめて低い水準にあるが、大幅に悪化している実体経済活動との比較でみると、緩和度合いは低下している。』というように緩和度合いがどうのこうのという話をしているのですが、今回の講演では「緩和」という文言が微妙に無いように見える所で。
もうちょっと後で政策金利の話をしているのですが、そこではこんな表現で。
『日本銀行では、政策金利である無担保コールレート・オーバーナイト物の誘導目標を0.5%から0.1%まで引き下げました。また、資金供給手段の工夫等によってターム物金利への働きかけを強めており、この結果、ターム物金利は、年度末に向けた資金需要が高まるこの時期においても、年初に比べ、幾分低下した水準で推移しています。』
という話はしているのですが、緩和的な状態という話はしてないのがちょっと気になる次第ですが、まあよくよく考えてみれば、物価の先行きに関して今回の講演でも、
『消費者物価の前年比は、(途中割愛)1月の前年比プラス幅はゼロ%まで縮小しました。今後は、厳しい経済情勢に伴う需給バランスの悪化も加わって、前年比マイナスになっていくと予想しています。』
と言ってるのですから、そりゃまあ政策金利も緩和的とは言いがたくなってるわなというところではないかと思います。
○当面は金融市場安定化と企業金融の円滑化を・・・と言ってますが
『日本銀行についていえば、次の3つの柱に基づく政策運営を行っています。1つは、金利の引き下げであり、2つめは、金融市場安定化のための積極的な資金供給であり、3つめは、個別の金融市場への働きかけなどによる企業金融の円滑化です。』
ということで、金融政策に関しては例の「3つの柱」というので説明しまして、今回はこのようにまとめております。
『もっとも、先ほど申し上げたように、わが国の経済・金融情勢は引き続き厳しい状況が続くと見込まれます。金融政策面からの対応という観点からは、当面、第2の柱である金融市場の安定化策と、第3の柱である企業金融の円滑化策を中心に据えながら対応していくことになると思われます。いずれにしても、日本銀行としては、金融市場や企業金融の動向を丹念に点検しつつ、予断を持つことなく、必要な施策を果断に実施
していきたいと考えています。』
ここで輪番増額はというと2つ目の柱になる「金融市場安定化策」という文脈になると思いますのですが、何故か会見では日銀券ルールの話で妙に突っ込まれて妙に頑なっぽかったのが気になるというか先々の事を考えると懸念されるところです。銀行券ルールって別に太古の昔からあったルールとかでも無いですし、そもそも調節の技術上の問題からしたら長国アウトライトオペを財務省がやってる流動性供給入札チックにやって上手いこと「実体ベースでは長期国債売切オペなんだけど何となくオブラートに包んでインパクトを軽減する」みたいな売りオペが実施できれば銀行券ルールをそんなに頑張って墨守せんでもいいだろとは思いますけどねえ。
と言う話はまた会見要旨を見てから。
2009/03/25
お題「米国の話とか期末の話とか少々」
苗場プリンスホテルが季節営業になるんですか。宿泊したことは残念ながら無いですけど、絶賛大混雑の苗場スキー場(行くまでの関越も大混雑とか^^)とかテラナツカシス。今はリフト待ちで何十分とか有り得ませんもんねえ。
○米国の施策に関して雑感
どこぞのテレビ番組の雑な説明を真に受けて(いやまあ多分違うだろと思ったので判断保留したのですが^^)昨日は感想を書きましたが、内容を読みつつ内容を解説したレポートを何本か読んで大体の所は把握しました(つもりです)。
共同声明文はこちら。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20090323b.htm
昨日某テレビ番組見ててこんな事書きましたが・・・・
>「FDICが殆どやられを持つから買取価格が高くなるでしょう」というモーサテコメンテーターのコメントが恐らく大興奮状態の米国市場の本音的反応だと思うのですけれども、ちょっとそれは単純というか希望的観測のような気もせんでもない。
・・・・最初にやられるのはエクイティの出資者なので、買取価格がまあ普通だった場合には、エクイティの部分に負担が掛かる(ただしその部分は民間出資者とTARPが折半)話(買った物を転売または回収したらエクイティ以上にやられた時にFDICのローンが毀損する)ですし、そもそも総資産とエクイティのレバレッジ比率は常に7倍ではなくて「通常は7倍よりも小さくなる」という話ですので、昨日テレビで見てた米国コメンテーターさんの反応(=市場が最初にどう解釈してどう反応したのかを正直に伝えているんでしょうね)はちょっと希望的解釈成分が強く入ってたような気がする。
で、まあお恥ずかしい話ですが、このスキームがワークするのかしないのかという話は土地勘がございませんえんですので、各種レポートを色々並べて読んだり知ってそうな人に聞いたりする訳ですが、「買取価格が低下しすぎるリスク」と「特に極端に投資家に有利なスキームでも無い(まあ有利は有利みたいですけど)」という所がリスクみたいですな。
しかしこういう件で共同声明文が出るというのはイイハナシダナーという所でして、一方で損失負担に対する政府とのアコードも無い(いやまあ有るのかもしれませんが世の中には出てきませんわな)日本って何なのよという感じですな。いやまあ政権が持つか判らん状態でアコードのもって行き場が無いというのもある(今までの民主党クオリティだと何かいきなり過去の流れを全部ひっくり返しそうなのがおそロシアなので)のは判りますけど、米国ウラヤマシスですな。
ところで、本石町日記さんが早速この懸念を。
http://hongokucho.exblog.jp/10580731/
スキームを見ますと、エクイティ部分全損あるいはそれ以上の損失覚悟で高値落札(ローンの場合、証券の場合は運用会社が運営するので話は別になる)すれば、不良債権の飛ばしというよりは不良債権の政府への押し付けが可能みたいな感じですね。
例えば(計算するのが面倒なので)レバレッジが5倍のケースとして考えましょうか。
ある銀行の持ってる不良ローン債権プールのてめえの評価額が80で今売りに行くと20で、まあ正直に評価すると50だけど市況が改善したらもうちょっと戻るでしょというモノだと考えますと、本来は50からちょっと上近辺で買取価格が決まるので、銀行はマークダウンする代わりに損失30弱が出て確定って話になるのでしょう(それでも売りに行ったらもっと損が出るので良い話)。
そこでイカサマ競落スキームで80で落札させてしまえばエクイティ部分が16なので64以下で売る(または回収する)場合にはエクイティ全損になりますが、民間の出資はエクイティ部分の半分になりますので8でありまして、裏でごにょごにょやれば本来30弱のやられになる所がやられが8で済むという素敵なスキームになるという話ですかね。と思いました。残りのエクイティはTARPが出しますし、ローン(正確にはローン部分はファンドの債権でFDICが保証する)はFDICが持つのでウハウハと。
・・・・と成らないような仕組みがどこにあるのかというと、これはまあ具体的な運用スキームを作る際に判明するでしょうし、そこのあたりが余りにもノーズロだとやはり大変な事になるでしょうという話かなあと。
なお、スキームの説明はまあ各種レポートを読んでちょ(書くと長いしあたくしも内容理解するのに時間が掛かりましたですよ、アセアセ)。
○2月決定会合議事要旨からちょっとだけ(たぶん後日に続く)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090219.pdf
正直色々忙しくて斜め読みしかしてない(米国の勉強に時間掛かりすぎ、汗)ので話は明日に続くと思う。ということで『[.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』部分のお話を少々。
・ターム物金利誘導に関して
『委員は、やや長めの金利に働きかける方法について議論を行った。』
『何人かの委員は、スプレッド貸出等の基準金利として用いられるTI BORは、@
実際の取引レートではなく、そのベースとなっている無担保ターム物の取引量が少ないこと、A
クレジットリスクをオペで直接コントロールすることは難しいことを踏まえると、これに直接働きかけていくことは難しいとの見方を示した。』
そこで窓口指導ですよ(そんなものはもう存在しませんので念の為^^)。
『複数の委員は、1月から開始した企業金融支援特別オペは、当初の見込みを上回る約4
兆円の資金供給を既に行うなど、企業の資金調達環境の改善に効果を発揮していると指摘した。何人かの委員は、このオペを更に活用するとともに、日々の金融調節において、引き続き市場機能を活かしながら、必要に応じて長めのオペを実施するなどにより、ターム物金利に働きかけていくことが重要であると指摘した。』
だから20日にいきなり4か月(2月24日スタート6月15日エンドの共通担保全店オペ8000億円)のオペを打ち込んだんですね、判ります(^^)。
#でもその一発だけ4か月物だったというのが実にアレなのですが
『こうした検討を踏まえて、委員は、企業金融支援特別オペを強化するとともに、既存の流動性供給手段を活用することにより、ターム物金利の低下を全般に促していくことが適当であるとの認識を共有した。』
まあ実際問題としては、長いタームをバンバン打つよりは、共通担保オペの担保事情を考えますと2週間から6週間程度のオペをコンスタントに厚めに打つ(このコンスタントというのが重要という話は後ほどざっくりと)ようにしておいてGCレートを押さえておけばターム金利もそう上昇しないというのはあるかと。ただしクレジットスプレッドに関してはそれだけではどもならんので。
『そこで、委員は、企業金融支援特別オペの強化・延長について具体的な検討を行った。委員は、@
資金供給期間を長期化させて3 か月に統一すること、A 実施頻度を週1 回ペースに引き上げることが適当であるとの認識を共有した。実施期限について、委員は、9
月末まで延長することが適当であるとの見方で一致した。また、複数の委員は、年度末にかけての金融調節について、金融市場は神経質な動きを続けており、これまで同様、金融機関の資金繰りや市場の動向に目を配りながら、肌理細かく行っていく必要があると付け加えた。』
ということで、企業特オペを強化したらどうも閾値を越えてしまったようで、この後1週間でCPレートの一部が官民逆転し、その2週間後には見事な阿片窟状態になってしまった(現在も阿片窟状態なので、一般人が近寄れない雰囲気になっておりますな、苦笑)のはご案内の通り。
・社債オペに関して
まあ何で導入したかというのは声明文にあるとおりなので、須田さんの反対理由をみてみましょ。
『買入れの実施について、一人の委員は、@ 発行額が過去に比べ特に減少しているとはいえず、対国債スプレッドも全体としてみれば大幅には拡大していないなど、企業金融全体の逼迫に繋がるほど社債市場の機能は低下していないこと、A
残存期間1 年以内の社債の買入れが企業金融円滑化に与える効果は限定的と思われることから、実施の必要性に関する条件を満たしているとはいえないとの認識を示した。』
うーむ、これも決定会合の公表文書に出てたか(汗)。まあその後の講演でもあるように、須田さん的には「やるなら効果のあるように」って主張をしているみたいなので、解釈が微妙な気がする。
それはそれとして財務省がこんな話を。
『金融市場調節方針に関する議案の提出の後、財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。
(途中割愛)
・最近の金融市場の動向をみると、3月期末越えに向けた不安心理の高まりから資金を抱え込む動きがみられるなど、不確実性が高い状況にある。こうした点を踏まえ、日本銀行におかれては、更に積極的な資金供給を行い、金融面から経済を下支えして頂きたい。また、日本銀行の行う各種措置が一層効果的なものになるよう、情報発信についても、一段と工夫して頂きたい。社債の買入れについては、更なる拡充策を検討して頂きたい。』
ほほう、社債買入の拡充策を検討して頂きたいとな。この辺は財務省も損失負担に関するアコードをきちんと結ぶという話をせんといかんのではないかという気は思いっきりする次第でございまする。英国にしても米国にしても、中銀はマネーの供給で損失負担部分は政府がケツ持ち(中銀が買取を行うケースでも損は政府が持つという形になっている)するという分担がちゃんと出来てると思いますので。
まあ政治情勢がこんな感じだから何とも財務省としても動きにくいのは判りますけれども、日銀にお願いするのも良いけど、一方でターム物金利が下がらない事に寄与する(苦笑)3か月TBの大増発とかへの配慮も願いたい(まあ税収とか資金繰りの問題でしょうがないのは判りますけど)ものであります。
○ところでGCレートやらオペ金利がしらっと上昇してるのですが
今月は23日に国債大量償還に伴う資金需給のデコボコがありまして、そのあたりでGCレートが上昇しやすくなるおそれがありました。で、そういうときには前日(=19日)の所から厚めに資金をだしておかないといかんのですが、GC資金出し手の大手銀行が不足地合いの中なのに特にオペを厚めに打つ気配もなく、おまけに当座預金残高がつみあがっているからなのか23日のオファーからスポネの現先削ってみたり(その前に23日スタートでは増やしたのですが)、手前スタート末越えの共通担保の打ち込みが足りなかったりとしていたせいで、GCレートは上昇の巻。
で、その結果昨日の共通担保1週間(正確には9日物)オペは平均0.200%に上昇しちゃいまして、何か折角ここまで厚めの資金供給でGCレートを0.1%台前半に押さえ込んでいたのに残念無念としか言い様がございません。
超過準備付利をバックに潤沢に資金供給をするから心配ないぜって感じでややショートファンディングが溜まりやすく、また23以降(特に25以降)はGCの売り(資金調達)もテクニカルに増えやすい中なのに、ここで上昇させちゃうというのは市場的には「ああやっぱりまたこれですか」と成ってしまう訳でして、「やっぱりオペが潤沢に行われないから足元は安定しないのか」と期待形成が元に戻ってしまいますとタームのリスクプレミアムが上昇する事になり、ターム物金利が上昇しやすくなるので、そういう点で残念なオペなのですよ。うーむ。
当座預金残高がたくさんありましても、GCレートという点ではあまり数が多くないGC資金の大量ロット放出者の所の資金が不足地合いであればレートは上昇しやすくなるのでまあオペレーションも難しいとは思いますけど、応札落札状況を見ればたぶんどこが足りないとか判ると思われますので、そのあたりをよりきめ細かく把握したオペレーションをお願いしたいと思う所です。いやまあレート上昇してもシャーナイナイというのなら良いのですが、そういう話になってないと思いますので・・・・・
あと、資金需給のデコボコがあるときにオペの足をそこにそろえるのは調節上仕方ない面はあるのですが、オペの足が揃いますと当然ながらその先の所で資金需要が高まりやすくなるので、ある程度コンスタントなタームのオペがあると資金繰りが安定しやすくなり、レートの変な跳ね上がり(まあ上がったと言ってもGCで0.2ちょっと切る位ですけれども)が起きにくくなると思います。
#と、超マニアな話で誠に恐縮でした
2009/03/24
お題「輪番増額に関してもう少々」
○米国株が威勢よく上昇とな
えーっと正直内容が微妙に良く判らないので判断はパスなのですけれども、日本の2002年とか2003年の騒動の時にはりそな国有化して他もダメなら国有化というのをやらかしましたけれども、現実に国有化したり資本注入した所には財政資金が出ましたが、それはあくまで優先株などでの資本性の資金投入。しかも現実に出た財政資金って実際に突っ込んだ部分で、50兆円の財政資金って言っても実は「見せ金」の部分が多かったっすよね。
で、米国の場合ですけれども、バットバンクで不良債権を購入するのですが、金融安定化資金に加えて今度はFDICがノンリコローンを組みますって話ですから、現実にFDICから財政資金が湯水のように出て行くというお話で、ワークした時に金融機関の不良資産は助かりますけれども、政府に全部付け替えという話で財政が持つのか(だから対ユーロでドルが下がるのでしょ)と思うのですけど。
「FDICが殆どやられを持つから買取価格が高くなるでしょう」というモーサテコメンテーターのコメントが恐らく大興奮状態の米国市場の本音的反応だと思うのですけれども、ちょっとそれは単純というか希望的観測のような気もせんでもない。「実勢より高く買い取る」=「金融機関への掴み金」になる事くらいはさすがにプリオン入り牛肉の食いすぎ米国国民にもバレると思うのですが、AIG問題で既にエライコッチャになっているのに政治的に持つのかねと(大体妥当な価格と思われるところで買って金融機関が困らないのならば良いのですが・・・・)思うのですが。日本の場合何だかんだ言ってコイズミ様が実施したのでオッケーオッケーという感じでしらっと大政策転換が通りましたけど・・・・・
まあどちらにしても中身がうまいこと回るといいですね(棒読み)という所ですが、推移を見守りつつ、結局財政に付け回しスキームであれば、その場合どうなるのかは日本の例と対比しながら考えていくしかないですなという所で。
○輪番増額話の続きと言うか補足
今回の日銀による輪番増額、昨日は総裁記者会見の引用をしましたけれども、現象面としてまあ他にもポイントがあると思うので少々。
・今回の輪番増額は利下げなどを含まない単独措置
前回の輪番増額は12月19日の利下げという金融緩和措置と同時に実施(このときは他の質的緩和措置も実施してましたが)してまして、その前の輪番増額は速水総裁の時に遡りますが、この時は当座預金残高目標の引き上げという量的緩和措置拡大に伴っておりました。
然るに、今回の輪番増額はそういう点での明示的な目標数値の変更を伴う金融緩和措置を伴わないものでありまして、従来のロジックからちょっと違う輪番増額になっているという話ですわな。
ということでとりあえずあたくしの知能で考えられますのは(1)輪番を金融調節上の話に再び下げる、(2)明示的な形を伴わなず有耶無耶に量的緩和をする、というののどっちかあるいは合わせ技というようなことなんですかねえとか思う次第。まあ(2)なのかなあとも思いますが。
・いわゆる銀行券ルールとの関係とか輪番の位置づけとか
以前(2008年2月5日ですな)にも雑談を書いたと思います(下のURL
の2008年2月5日のところをご覧いただければと存じます)けれども。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugeneral07-02.html
そもそも論を言えば償還乗り換えルールが変わったところで輪番は「成長通貨の供給」というよりは「期間の長い資金供給オペ」に化けておりまして(償還乗換で永遠に長期国債が残る形ではなくなったので)、銀行券ルールとの関係というのもこれまた位置づけを考え直した方が良いのではというのは別にあたくしだけではなくて本職の方が指摘してたと思うのですよね。(償還乗り換えルールの件に関しては本石町日記さんの過去エントリーhttp://hongokucho.exblog.jp/6761421/もご参照ください)
そう考えますと、今般白川総裁がやたらめったら銀行券ルールに拘って「自分の在任中は見直さない」という勢いで発言したのは余計な発言にも程があると思うのですが、まあ言っちまったもんはしょうがないので、今後の輪番をどうするのかという話もまた難しくなったかもねえとは思います。
つまり、輪番は本来的には「期間の長い資金供給オペ」という昔のFRBのクーポンパスみたいな金融調節上のオペの一環という位置付けであるのが然るべき姿であって、そういう意味では必要に応じて増やしたり減らしたりできれば一番ややこしくないのですけれども、元々が輪番にやたら意味を持たせてしまっている上に、海外でも「長期国債買入プログラム」みたいなのをおっぱじめてしまったので、ここで位置付けを軽くするという訳には行かないのが困ったもんでございましょうなという所で。
まあホイホイ増やした後に必要が無くなったらホイホイ減らす(極端な場合は売切をする)のが出来れば簡単にホイホイ増額できるのでしょうが、これだけ位置付けがエラソーになってしまいますと、そういう訳にも行かない(もともとが輪番減額しにくい状態だったのに更に昨今の状況ではということですな)ので色々難しいでしょうなと。
財政マネタイズの思惑とかそういう話を全部無視して、というのも相当乱暴な話ですけど、単純に金融調節の技術上の問題だけで言えば、いわゆる銀行券ルールって、保有長期国債を市場でホイホイ普通に売却できれば別にまあそんなに墨守せんでも良い話なのですが、この行為が恐らく洋の東西を問わず難しい(やたらとマーケットインパクトがある。FEDだって短期国債のアウトライトはやってたけど(売りもこの前散々やりました)長期は従来あまり手を出してなかったと思う)ので、中央銀行の保有する長期資産(=長期国債ですな)は長期負債(=銀行券ですな)見合いで持っておけという話になると思いますので、やはりまあどこかでロジックの建て直しをした方が良いと思いますがね。
・しかし白川さん何でそう断言するのやら
昨日ご紹介したように、会見ではすっかり「もう輪番を増やしませんがな」という「やりたくないけどやりました」みたいな発言をする白川総裁なのですけれども、12月の輪番増額時の会見で白川総裁はこのように発言してましたわな。会見要旨の9ページ目にありますが。
『こうした少し長い先の姿を想定しながら、銀行券の範囲に収まる買入れ額はどの程度か、バランスシートの資産サイドの期間の構成という面でバランスがとれているか、などを勘案し、2,000
億円の増額を決定しました。当面、この2,000 億円を増額することは考えていません。』(12月19日の総裁記者会見より)
えーっと、1.2兆円から1.4兆円に増額した時に「少し長い先の姿を想定」して「当面は増額しません」と言ってたのですが、3か月で前言が無かったことになるとは実に素晴らしいフォワードルッキングですね(棒読み)というところでありまして、折角輪番増額と言う措置を実施しても総裁が「でもボクはやりたくないんだよ」と駄々をこねて政策効果(というかアナウンスメント効果)を減殺させるとかもうアホかと馬鹿かと。
ま、一応今回の会見でも最後の方では(昨日引用しましたが)こう言ってまして、「これ以上増やさないというのはあくまでも今日の時点での話」みたいな事も言ってますけど、どう見てもその前に散々「ボクやりたくないもん」発言が続いてますので、「増やしません」が全面に出ているのがコマッタモンです。
『私が本日申し上げていることは、本日議論に参加した政策委員会メンバーの意見を踏まえて発言しているということであります。』(3月18日の総裁記者会見より)
最後にやっとこう言ってますけど、その前に延々と増額しませんいわゆる銀行券ルールは変更しませんとか言ってる訳でして、まあそういう意味では12月に引き続き今回も全否定でござるの巻という事ですわな。
・・・・・でもまあ12月に「当面増やさない」と発言して舌の根も乾かぬ内に輪番増額しかも月4000億円ですから、実際に圧力が無かったとしても部外者的には「ああ白川さんは圧力が掛かると簡単に前言を翻すのね」という印象を与えて非常に宜しくない訳でして、昨日も引用しました質問を再度引用しますが、まあこういうことでしょと思います。
『(問) (前半割愛)2番目に、仮に白川総裁ご自身かあるいは4年後の他の総裁かわかりませんが、将来この上限ルールを見直すということになると、大きな信認の失墜につながることにはならないのでしょうか。(以下割愛)』
ということで、白川総裁は将来どうなるか判らないことであっても、急にスイッチが入ってしまった場合、妙に力強く断言する変な仕様は早急に改善されることを願いたいものです。「総裁発言の信認」問題を賭けるべき所は別にあるのではないかと存じますが・・・・・・
以上雑感で恐縮でございました。
2009/03/23
お題「FRBの長期国債買入続き/やたら輪番の質問ばかりですな」
○FRBの長期国債買入ですけど・・・・(だいぶ人のふんどし)
木曜日はFOMCの公表文を読んで「何で信用市場対策の一環で長期国債を買うのじゃろ」と???状態だったのですが、その後人と話をしてたらもう一つ別の論点があることに気が付きました。
と申しますのは、従来のFRBの質的緩和政策ってえのは、基本的なスタンスとして「信用不安によって市場の機能が不全になっているところ(各種クレジット市場)にFEDが梃入れすることによって市場の機能を回復させる」(=事によって信用市場を緩和させる)という理屈で行われていた訳ですわな。ところが、今回の措置というのは長期国債市場への介入なのですけれども、ご案内の通り米国長期国債市場はdisfunctionalどころか思いっきり機能している市場なのでして、その点から言いますと「何でこのタイミングで実施するの」という感じは致します。
従来のロジックである「to help improve conditions in private credit markets」というのを継承したままで今回の措置実施という事であれば、本来は長期国債市場が何らかの市場機能阻害によって長期金利が無駄に上昇しているという背景が有ったらという話になると思うのですけれども、米国10年国債で3%程度に上昇していたとは言え、別にそんなに問題あるような状況でもないと思うので、まあ他にオトナの事情でもあったのかと考えたくなりますな(^^)。
前回長期国債買入を実施すべしとして採決で反対したリッチモンド連銀のラッカー総裁は長期国債買入を「マネタリーベースの拡大」という正攻法で主張したのですが、今回マネタリーベースの話が出ないまま長期国債買入実施(しかも期間を切ってドカンと購入という不思議な施策)というのはどうもしっくり来ませんわなという事で。
んでまあオトナの事情と言えば「財政マネタイゼーション」という発想なのか米ドルが下落しているのが素直な反応なんですかねえと本石町日記さんの所を見ながら思うのでありました。
http://hongokucho.exblog.jp/10563811/
あと、a-kunさんのところも論点整理に大変有効でありまする。
http://d.hatena.ne.jp/a-kun/
a-kunさんが指摘していますが、たぶんバーナンキのFRBは金融政策の本音と建前を使い分けているような気が色々と考えているうちにしてして来ました。ただしa-kunさんが言うように、その裏表を使い分ける動機があまり無いのがまたワケワカランですよね。制度上議会の承認を必要としな中央銀行が財政部門の領域に突っ込んで行くのが議会制民主主義国家としてどうよという深刻なツッコミが来るのを気にしてるのかなあという位しか今のところは思い浮かばないですけれども・・・・でもちと違うようにも思えますし・・・・・・
まあこれで「ドル安で長期金利上昇」とか「財政マネタイゼーションで長期金利上昇」って話になった時にどうするのかを見たい(あまり世界の為には良い話ではなさそうですが・・・)のですよね。「マネタリーベース拡大の為に長期国債購入する」というロジックなら別に長期金利が上昇してもシャーナイナイで済みますが、「信用市場の緩和の為に長期国債購入する」と言い出した以上、金利がうっかり上昇(とりあえず最初に突っ込んだのが10年3%乗せですと)した時にはまた突っ込みに行く必要があるという結構問題含みの政策ロジックではないかと・・・・・・
○輪番の話ばっかの総裁記者会見(3月18日の分)
後入先出法で恐縮至極。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0903d.pdf
今回の会見を簡単にまとめますと・・・・
「輪番増額は財政ファイナンスですか」「いえ違います」
「輪番増額は長期金利上昇抑制ですか」「いえ違います」
「いわゆる銀行券ルールは見直しますか」「私の代では見直す予定ないです」
の3行で終了するのですが、それで終了させるのも忍びないのでちょっとだけ引用を。
・財政ファイナンスに非ず
『(問) 長期国債の買入れ増額についてですが、このタイミングで増額を行った理由をお聞かせ下さい。また、景気刺激のために財政支出を拡大させるという方向で議論が進んでいますが、こうした議論と今回の買入れ増額との関係についてご説明頂けますでしょうか。』
『(答) 今回の長期国債買入れの増額は、年度明け後も金融市場の安定を確保するために、引き続き積極的な資金供給を行っていくことが重要との判断の下、長期の資金供給手段を一層活用し、円滑な金融調節を行っていくことを目的としたものです。このように、今回の措置は、これまでの増額と同様、あくまでも金融調節上の必要性に基づいて行うものであり、今後の国債増発への対応といったことを念頭に置いて実施するものではありません。』
まあ立場としてはそう言うしか無いでしょう(ニヤニヤ)。でもまあ短期国債(国庫短期証券)は増発の結果レートは下がらんですし、そんな事言ってるうちに経済対策がどどーんと出たら長期国債も増発必至ですしねえ・・・・・
・長期金利の下支えに関して
『(問) 今回、国債の買入れを月額1.4 兆円から1.8 兆円に増やしましたが、この増額分4千億円という数字はマーケットではかなり大きいと認められているのではないかと思います。この4千億円の意味合いについてまず教えて頂きたいというのが1点目の質問です。また、財政ファイナンス的な話と裏表になってしまうかもしれませんが、長めの金利に働きかけて長期金利を安定化させ、それによって景気を下支えしたいといったような意図はあるのかどうかという点について教えて頂きたいと思います。』
『(答) 4千億円については、これまで何回かお答えしたことの繰り返しであり、そっけない返事になりますが、先ほどの答えに尽きていると思います。』
これは調節技術上の問題という話で4千億円ということになっています。
『2つ目の長期金利の水準に影響を与えていくことを意識しているかということについてですが、そうした意識はありません。例えば、10
年物の金利を考えた場合、先行き10 年間経済がどの程度成長するか、物価がどの程度上がるかということに基本的に依存し、加えて、成長率や物価上昇率の予想についての不確実性が上乗せされるわけです。もちろん市場ですから、日々いろいろな材料で上がったり下がったりするわけですが、結局、均してみると先程申し上げた要因で長期金利の水準は決まってくると思います。』
という説明の後このように言ってまして。
『もし日本銀行が物価の安定を目指した金融政策ではなく、それ以外の目的に焦点を絞った金融政策を運営していくことになりますと、日本銀行がそのような観点でオペを運営しているのではないか、といった目でみられ、先ほど申し上げたような不確実性に伴うプレミアムを上げてしまうことになってしまいます。おそらく、長期金利にとってはむしろマイナス材料となり、長期金利が上がってしまうことになると思います。』
ということで、財政マネタイゼーションだの長期金利ターゲットだのを言い出さないのは有効という話なのですが、その晩にFRBがやんちゃな政策を実施しているのがチャーミング。で、その後は言わずもがなというか何というか。
『考えてみますと、この10 年近く日本の国債発行残高は非常に増えてきたわけですが、それでも日本の長期金利は安定してきたわけです。その安定はどこから来ているかと言えば、自分たちが言うのもどうかと思いますが、日本銀行の政策運営に対する信頼が維持されていることも影響していると思っています。』
あのーそれはただ単に日本が経済成長しなかったから長期金利が低位安定していただけじゃないかと思うのですが・・・・・
・銀行券ルールに関して
『(問) 長期国債の買入れを月に1.8 兆円、年間で21.6 兆円まで増額するということは、長期国債の残高については日本銀行券の発行残高を上限にするという、いわゆる銀行券ルールの限界に近いところまできていると思われますが、この辺りの認識をお聞かせ下さい。また、仮に今後さらに買入れ額の増額を求められるようなことになった場合、この銀行券ルールの見直しについて検討する可能性があるのかどうかについてもお聞かせ下さい。』
この質問、要旨の3ページにありまして、答えがやたらめったら長いので全部引用してると大変なことになりますので、説明部分は割愛(いつもと同じく「長期国債を買いすぎると調節上長期国債の売切オペを打ち込まないといけなくなって、長期国債市場に変な影響を与える」という話です)しますが、答えの最後の方を引用。
『次に、銀行券ルールを見直す可能性はあるかということについてですが、銀行券ルールを見直すことは全く考えておりません。銀行券ルールの意義としては2つ挙げられます。第1は、円滑な金融市場調節を確保することで、これは先程申し上げたことです。第2は、銀行券ルールは、長期国債の買入れが国債価格の買い支えや財政ファイナンスを目的とするものではないという趣旨を明確にするという役割も果たしています。従って、銀行券ルールを見直すという考えはありません。』
で、これは中々嫌な質問。
『(問) (前半割愛)2番目に、仮に白川総裁ご自身かあるいは4年後の他の総裁かわかりませんが、将来この上限ルールを見直すということになると、大きな信認の失墜につながることにはならないのでしょうか。(以下割愛)』
この質問は実は3点とも輪番というか銀行券ルールに関する質問なのですが、技術的な説明を引き続き行った後最後にこのようなコメントが。
『それから銀行券ルールについてですが、どの政策もそうですが、その時の政策委員会のメンバーが決めていくものですので、4年後にどのようになるかは、もちろんその時のメンバーが決めていくということです。私が本日申し上げていることは、本日議論に参加した政策委員会メンバーの意見を踏まえて発言しているということであります。』
本日ですかそうですか(^^)。
あと、長期金利が上昇して評価損が出た時どうするのかという質問があったのですけれども、そこでは長期国債買入に関しては問題ない(信用リスクの管理は必要だが国債の金利リスクを気にする必要は無い)と明言しています。
『先程の他の記者の方の質問に対してもお答えしましたが、こうした意味でも、国債買入れオペに本質的にリスクがあると思っているわけではありません。』
まあそんな所で輪番大会でありました。
2009/03/19
お題「輪番増額とかFRBの長期国債買入とか」
微妙に色々ネタがありますが・・・・
今朝一番泣いたのは公共放送ニュースで「FRB 異例の長期国債購入へ」と見出しを出し「中央銀行である米国FRBが長期国債の買入を行なうことは異例の政策です」と紹介している事でして、従来から長期国債買ってた日銀の立場は(苦笑)。
○輪番増額
今回の日銀決定内容。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090318.pdf
既に増額のニュースが出てた(のも如何なものかと思いますが)輪番がいきなり月4000億円増額されたのはちょっとビックリだったので債券先物は威勢よく反応しましたが、超長期とか妙に重くて長いところも微妙に引っ張られたのか終わってみればまた10年1.3%でございましたが、中短期の3年とかのオフザランの10年長国に買いもあったようですにゃ。各種レポート見てるとスティープ要因という解釈なのでふーんという感じです。
で、4000億円増額の理由をテキトーに考えてみたのですが、(1)事前に増額が報道されてしまったので2000億だとパッとしないから増やしてみました、(2)多めに出して打ち止め感が出ると良いなあ、(3)輪番のゾーンわけを細かく行ってしまったので2000億円の増額だと比例配分で割り振るのが難しいんですよ、などなど考えたのですけれども(^^)、まあ一応いつもよりも威勢よく増額したのは結構でしたなあ(棒読み)というところで。
ちなみに輪番増額による年限別割り振りの比率はほぼ変わらないようにバランスさせています。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0903a.pdf
で、今回の公表文ですけれども、まずは輪番増額の理屈。
『2.金融市場における年度末越えの資金調達は概ね目処がつきつつあるが、年度明け後も、後述するような厳しい金融経済情勢を背景に、市場の緊張が続く可能性が高い。このような状況下、日本銀行は、金融市場の安定を確保するため、引き続き、積極的な資金供給を行っていくことが重要であると判断した。こうした観点から、長期の資金供給手段を一層活用し、円滑な金融調節を行っていくため、長期国債の買入れを以下の通り増額することとした。』
市場の緊張ですかそうですか、ふーん。まあ金融調節で長めの資金を出しますよという話ですが、これによって短期のオペレーションを徐々に減らされますと困ります(短国の増発が見えているので)、そっちはそっちで継続的に実施して欲しいものです(が、また23日の余剰日を前に資金供給を絞ったからGCレートがこの大事な時に上昇してるんですけど、何回同じことやってるんだか・・・・)。趣旨は金融市場の緊張緩和の為という何となく緩和チックな怪しげな話なのは前回と同じっすね。
○景気判断は基本変わらず
それから、経済情勢に関する説明とかですが、基本的な判断部分は前回の公表文と思いっきり同じです、一部違うところがあるのですが、まずは引用。
『3.わが国の経済情勢をみると、海外経済の悪化により輸出が大幅に減少していることに加え、企業収益や家計の雇用・所得環境が悪化する中で、内需も弱まっている。金融環境をみると、CP・社債市場の発行環境は改善しているものの、全体としては厳しい状態が続いている。これらを背景に、わが国の景気は大幅に悪化しており、当面、悪化を続ける可能性が高い。』
ということですが、今回は金融環境のところで「CP・社債市場の発行環境は改善しているものの」という文言が入ったのが変化したところですが、現状認識は2月に示した厳しい状況と同じです(じゃないと緩和しませんわな)。
で、物価の見通しとかリスク要因とかの話は前回と全く同じです。最後の所にちょっと面白い表現がありましたのでそいつを紹介。
『日本銀行は、金融政策面からわが国経済を支えるため、昨年秋以降これまでの間、政策金利の引き下げ、金融市場の安定確保、企業金融円滑化の支援という3つの柱を中心に、様々な措置を実施してきた。』
似たような文脈は前回もあったのですが、今回は堂々3つの柱という言い方をして、元々時限措置だった企業金融円滑化措置が堂々の柱に昇格したでござるの巻になっちゃいましたね。
・・・・ということはどっかで絶賛開店中の阿片窟相場は継続するんですかねえ。いやまあ政策目的だから仕方ないけど、官民逆転現象という状態が長期化しちゃいますと最終投資家が離散してしまいまして、それが暫く続くと投資家の方でもちゃんと売買(というかCPの場合買切ですが)することができる人が段々減って来るので阿片が切れた時に「振り向けば投資家不在」という素敵な事態になり兼ねませんがその辺り白川総裁如何お考えでしょうか(苦笑)。
○というわけで
今回は何か事前に微妙に話が出るという毎度のパターンはどないかならんのかと思う(事前に出ないほうがサプライズ効果が出るじゃろと思いますし)のもありますが、輪番増額に関して物凄い勢いでメディア(というかどこぞの経済新聞)が食いついてもう観光釣堀園の魚状態だったようですにゃ。
えーっと、財政マネタイゼーションで長期国債買入ってロジックにするとそれは普通に金利上昇要因になるのですが、何で質疑応答で話をそっちに持って行こうとするのかねと。
まあこの辺をご覧になると吉かと。
http://hongokucho.exblog.jp/10536209/
○FRBのリリースを寝起きで読んで見ましょう
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20090318a.htm
BOEの長期国債買入に日銀の輪番予想以上に増額とありましたので、やるやる詐欺もやっと腰を上げたようで結構ですなあ。ということで今回は注目の長期国債買入増額に係る部分を、っても一文ですが。
『Moreover, to help improve conditions in private credit markets, the Committee
decided to purchase up to $300 billion of longer-term Treasury securities
over the next six months.』
長期国債買入の目的は「マネタリーベースの拡大」ではなくて、「クレジット市場の環境を改善(=緩和でしょうな)する」というロジックで展開されていますので、「ヘリコプター・ベンの面目躍如」とか講釈してた某モーサテの米国コメンテーター様は声明文をよく読めと思うのですが(苦笑)、まあ市場の解釈も微妙に勝手解釈をしているんでしょうかねえ。
でですな、この「クレジット市場の環境を緩和」という理由で長期国債を買うというのは要するに「長期金利の水準そのものを下げることによって環境を緩和する」という露骨な市場介入のロジックだと思うのですが、はてさてこれって継続的に効くのかねえというのはどうなんでしょ。確かにドカンと買いますという話だからその時は需給改善でレート低下するのですが、「財政マネタイゼーション」とか言われ出したら債券市場にとって良い話ではないですし、今回の措置だって継続されたら別ですけど、6か月間限定の買入ですからその期間切れたらどうすんのよという話とか。
普通に「マネタリーベースを拡大」というロジックで押さないで「長期金利に介入」というちょっと無理筋っぽいロジックで攻めてくるFRBの今後に注目という感じでございますな。
ちなみに、今回は長期国債買入だけではなくて、モーゲージ担保証券の買入を増加させていますので、そっち方面のサポート強化もしていますわな。
『To provide greater support to mortgage lending and housing markets, the
Committee decided today to increase the size of the Federal Reserve’s
balance sheet further by purchasing up to an additional $750 billion of
agency mortgage-backed securities, bringing its total purchases of these
securities to up to $1.25 trillion this year, and to increase its purchases
of agency debt this year by up to $100 billion to a total of up to $200
billion.』
しかししつこく繰り返しますが、「長期金利を下げる」というロジックで長期国債買入をするというのは、小国の債券市場なら兎も角として、世界的に通用するハードカレンシーかつ基軸通貨国の債券市場でやるというのはかなりのチャレンジャーな企画だと思うのですけどね。今後の展開をニヤニヤしながら眺めていきたいと思います。
○ネタ備忘録(メモです)
書きたいのですが内容纏まらないとか、書いてる暇の無いまま新しいネタが飛んでくるとかありますので。
・国債市場懇談会と投資家懇談会(継続案件)
・off-the-runの10年国債のSCレポが期末越えで絶賛大逼迫しとるのですが、そもそも期末は投資家のレポが減るの判ってるのに最近の若人レポ担当は事前に2mSCが0.2%台とかの時に借りておいたりしないのかと小一時間問い詰めたい件について(どうせおまいら日銀補完供給に駆け込むんじゃろ)
・JASDAQの社長が「政府はETFを買い取れ」とか言い出すとはお前は本当に取引所の社長かと小一時間問い詰めたい件について(しかも自民党の部会では柳澤さんが「ETF買取は如何な物か」とか発言して実質駄目だしされてるし、プギャー)
・17日の白川総裁会見に関して
・BOEのMPC議事要旨読み込み
ま、3連休あるからじっくり考えるか(と言って考えないのがあたくしクオリティ、汗)。
2009/03/18
お題「あらま劣後ローン購入/産経新聞さん・・・・」
朝6時の公共放送ニュース、最初から順に「野焼きで4人死亡」「春闘きょう一斉回答」「全日空ストライキ」「税制関連法案」と来たのはまあ良いんですけど、次が「スペースシャトルで朝の体操の音楽を流しました」ですよ。その次が気象情報でした(その次は関東地方では千葉県知事選挙政見放送^^)ので、結局日銀の劣後ローン購入の話は最初のヘッドラインニュースに出ずというとっても素敵な結果に。あっはっはははは。
○劣後ローン購入(というか貸出というか)ですかそうですか
#そういや大昔「レッツ碁」という月刊囲碁誌が日本棋院から出てましたな。どうでもいい上に一部の人しか判らん話で恐縮(笑)
日銀の公表文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/fsky0903a.pdf
例によって例の如くプルーデンス政策ということで通常の政策委員会で決定だったのですが、金融政策決定会合の合間に政策委員会ってナンノコッチャという感じです(大昔に金融機関の株式購入を行った時には決定会合終了後に通常の政策委員会を実施しました)。
まあ唐突に新聞に話が出て、昨日は公共放送ニュースなんぞにも出やがりまして、何だかな感はあったのですが、結局大手銀行に劣後ローン貸出ですかそうですかという感じ。何か政府のサポートもないまま特攻モードで大丈夫か日銀という話ですし、そもそも当座取引先の与信をとるのは特融レベルの話(そういや特融が大規模に飛んだことありましたねえ)になるので、結構チャレンジャーな話だと思います。
しかしそういうチャレンジャーな話なのにメディアの扱いの低さが泣けるとしか言いようが無いですな。いやまあ出し先が国際統一基準銀行限定という微妙な所もあるんでしょうが。
『日本銀行による金融機関向け劣後特約付貸付の供与について』
『1. わが国金融機関は、昨年秋以降における、CP・社債市場の機能低下等に伴なう企業金融の逼迫のもとでも、貸出の増加を通じて金融仲介機能を相応に維持してきた。しかしながら、国際金融資本市場における緊張の持続や内外経済環境の悪化を背景に、有価証券関係損失や信用コストが増加するなど、金融機関経営全般に悪影響が及んできている。』
『2. 今後、国内外の金融資本市場の緊張がさらに強まり、個々の金融機関が、先行きの株価の下落等に対する懸念から自己資本制約を強く意識する場合には、円滑な金融仲介機能の維持に支障が生じる可能性がある。また、国内景気悪化の影響とも相俟って、金融機関の経営体力が低下し、金融システムの安定性に影響が及ぶ可能性もある。』
というご認識のようですが、実務的に期末に間に合いそうもないタイミング&大手銀行が個人向け劣後債などで資本調達をやった直後というこのタイミングというのに微妙な間の悪さを感じるんですが、まあオトナの事情とかあるんでしょうな。で、3番飛ばして4番目。
『4. 日本銀行による今回の措置は、厳しい経済金融情勢の下でもわが国の金融機関が十分な自己資本基盤を維持し得る手段を整えることにより、円滑な金融仲介機能を確保するとともに、これを通じて金融システムの安定を図ることを目的とするものである。本枠組みの検討に当たっては、中央銀行による資本性資金の供与が極めて異例の措置であることに配意するとともに、本措置が金融機関自身による市場調達や金融機能強化法に基づく資本調達と相俟って、金融機関の自己資本基盤強化に資するものとなるよう留意していく。』
金融機能強化法を皆さんもっと使えということですかそうですか(苦笑)。
ということで後は端折って(別紙)を見ると、
『2.対象金融機関
本件貸付を希望する自己資本比率規制上の国際統一基準行(銀行)で、日本銀行が適当と認めた先』
とございますので大手銀行対象。まあミクロ的にはこれにより自己資本が強化されるので貸出等の余力が増すという話になりますから効果はあるんでしょうけれどもねえ(マクロ的に意味あるのかいというとどうも)という感じです。
○で、何だかなあなのですけどね
なんでそう思うかと申しますと、従来日銀がCP買入だの社債買入だのの話をする中で「政府との連携で」云々というまあぶっちゃけ政府保証とかつける米英スキームをもっと政府サイドに検討して欲しいという話をしてた訳ですよね。それなのにいきなり途中をすっとばして劣後ローン供給とか日銀特融レベルの話を日銀が単騎大突撃でござるという図になっている訳でして、何と言う踏み込みという感じではあります。まあ大手行にしか出さないという腰の引け方が「踏み込んでるのか踏み込んでないのかワケワカラン」感があって益々こう味わいの深いものがあるのですが。
これで前回増額した時に「当面はこの額」と言ってた輪番を増額したら従来の発言と話がまた違いますなあということですな。いやまあ輪番増額自体は調節のテクニカルな面では増やした方が良さそうなのですが、前回の白川総裁の発言を見ているだけにいきなり増額だと「はあそうですか(棒読み)」という所でしょうか。
#白川さん何でもかんでもマジメに対応しないで福井の俊ちゃんのインチキ応対話法を参考にすべきではないかと思うのですけどねえ
まあ政府サイドが政局のグタグタ状態によって如何ともし難いという状態にある(今更80人からご意見拝聴とか何やってるんだかという感じですわ)ので日銀単騎大突撃という話になるのかも知れませんが、何だかねという所でございます。
で、この辺の状況に関する感想は本石町日記さんが判りやすく総括していますのでこのエントリー(とリンク先)をお読み頂きたく存じますです、はい。
http://hongokucho.exblog.jp/10530053/
まさに「ポンポコリン」とは言い得て妙ですね(^^)。
○これはツッコミ所が多い「日曜経済講座」ですね
どうもツッコミ所が多いと思ったら産経新聞のあの人でした。
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/090315/fnc0903151021001-n1.htm
このURLって実は1から3まであるのですけど、何か物凄いツッコミ所満載で頭がクラクラします。産経新聞大丈夫か???
『現代の日本人は消費よりも貯蓄に励む。これでは国全体の内需が振るわない。1990年代のバブル崩壊不況時、政府は赤字国債を大量発行して貯蓄を吸い上げ、巨額の公共投資に踏み切ったが、無駄な道路工事ばかりが目についた。民間事業を興す波及効果は乏しい半面で、国の借金はにっちもさっちもいかないほど積み上がった。』
えーっと、どこをどう突っ込んで良いのか悩むくらいの話ですが、国債発行して貯蓄を吸い上げたのではなくて、国債の大量発行によって民間が資金余剰になったというのが因果関係としては正しいのではないかと。しかも公共投資が「無駄な道路工事」の一言で片付けるとか何か乱暴な・・・と思いますがまあ良いとしてその次がまた。
『不況脱出の答えはおカネの発行だった。日銀が「量的緩和」政策をとって円を大量発行すると、円安という神風が吹き、輸出主導で景気が回復した。』
・・・・・・(゜д゜)
えーっと為替市場への介入を行い、その時に量的緩和政策を取っていて当座預金残高目標の積み上げを同時に行っていたから介入分が不胎化されずにベースマネーが数字上増えたという因果関係なのですが。というか「円を大量発行」って別に輪転機回して日銀券撒いてる訳じゃないのですが・・・・・
で、その先にある2番目以降の説明も無茶というか豪快というかなのですが。
『米国の民間金融機関が創出したこの信用マネーは、住宅価格が全米各地で下がり始めた途端に、蜃気楼(しんきろう)のごとく一挙に消滅した。これが「100年に1度の危機」の実相である。モノや飲食などのサービスに支出する財源がなくなったのだから需要も消滅、米国の新車販売台数は前年比で40%以上も減った。』
『危機は信用の消滅により引き起こされたのだから、景気の回復のためには、とにかくマネーを大量に新規供給するしかない。米国はオバマ政権も米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長もそれを知っている。』
何かマネタリーベースの話とレバレッジの話がゴッチャになっているようですが大丈夫でしょうか。あとそれから現在の各国の対応では、信用危機問題は単純にマネタリーベースを増やせば解決するような単純な話ではなく、個別の金融市場に手を突っ込む信用緩和を行うというのが世界的な対応なんですけど。
『オバマ政権は赤字国債を発行して財源をつくり、金融機関や自動車メーカーを救済する一方で、FRBがドルを大量発行して市場に供給している。』
いやあのそういう単純な話じゃないのですけど・・・・というか、さっき日本のかつての財政政策に対して「財政赤字がつみあがっただけで効果が無かった」って話をしてるのに、オバマの赤字国債はよい赤字国債って何と言うダブスタな説明。
で、3番目(一々URLを書きませんが)を見るとまた何だかな状態。
『財務省など各省はこの機に乗じて天下り先の政府系金融機関による融資拡大に奔走し、「焼け太り」を狙う。』
何と言う「何でもかんでもコミンテルンの陰謀」的な発想。というか米国の政府が民間救済するのは良いのに日本が政府系金融機関の融資拡大をするのが何故問題なの????
『日銀は政府系の日本政策投資銀行の後を追いながら小出しに企業の短期債務証書「コマーシャルペーパー(CP)」を買い、銀行保有株の買い上げに踏み切ったが、肝心の市場の評価を得られない。』
CP買入および企業金融特別オペの政策効果が出過ぎて官民逆転までレート低下してますが何か????市場動向見てますかあ?????
『米国と足並みをそろえて、政府・日銀が一体となってふんだんにマネーを民間に供給する。この簡明な政策をなぜ決断し、実行できないのか。危機はマネーにより引き起こされたという認識に乏しいからだろう。』
政府系金融機関が融資を拡大するのはダメなのに政府は民間にマネーを供給しろとはどんな判じ物なのでしょうか???
・・・・と、テキトーに突っ込んでみましたが、何かもうこれがそこらの読者投稿とかならまだしも、「日曜経済講座」って名前で堂々講義をしておられる所が産経新聞大丈夫かというところでございますな。
○メモメモ(個人備忘録)
とか書いているうちに時間も無くなりましたが、微妙に積み残しネタをここにメモ。
・国債市場懇談会と投資家懇談会の間で微妙に意見が食い違うところが中々味わい深いものがある件について
・長期AAどころかA格企業まで官民逆転になってきている阿片窟市場について
・期末お得意のカレント爆発で10年カレントが半年前の償還と単利が並んでしまった件について(書く頃には逆転してたらまた涙目な展開ですわなあ)
2009/03/17
お題「SNBの金融政策ステートメント/CP市場が何とも・・・」
その前に少々。
○日銀の銀行への資本増強策
今朝の公共放送が「日銀が検討」って言ってるので検討してるのでしょ。
で、その施策なんですけど、日銀って基本的に当座預金取引先の債券とか担保に取らんという所なのにいきなり資本参加とはこれまた豪快な施策でございますねえとは思いますが、プルーデンス政策でやるんでしょうな。
ま、銀行としては方針がいきなり180度変わってしまう金融庁からやいのやいの言われて散々だったという思いがあるでしょうから、金融庁よりも日銀の資本の方がまだ心理的には受け入れ易いのかも知れませんが、どっちにしても資本入れられたら金融庁様が出てきて色々言われるのは必定ですから「入れずに済ませられるのなら入れない」という銀行のスタンスは変わらんのではないかと愚考。
やるなら強制注入するのが必要だと思いますが、それに加えまして、ついこの前まで貸出の自己査定が甘いだのなんだの言ってたと思ったら今度は貸し渋り監視とか方針が首尾一貫しない監督方針(そのため銀行はやりようが無くて困る訳で、言うとおりに全部やってたら振り回されるだけですもんね)を何とかすることがキモだと思いますけどね。
さて、ちょっと出遅れましたが、まずはスイス中銀の先般の金融政策決定に関してステートメントを読んでみましたという話をば。
http://www.snb.ch/en/mmr/reference/pre_20090312/source/pre_20090312.en.pdf
○為替介入と質的(信用)緩和の合わせ技とな
Swiss National Bank takes decisive action to forcefully relax monetary conditions
というお題の声明文の冒頭部分第1パラグラフから。
The economic situation has deteriorated sharply since last December, and
there is a risk of negative inflation over the next three years. Decisive
action is thus called for, to forcefully relax monetary conditions. Against
this background, the Swiss National Bank (SNB) is making another interest
rate cut and acting to prevent any further appreciation of the Swiss franc
against the euro. To this end, it will increase liquidity substantially
by engaging in additional repo operations, buying Swiss franc bonds issued
by private sector borrowers and purchasing foreign currency on the foreign
exchange markets.
ということで、景気の悪化と共に「risk of negative inflation」を防ぐという面を強調しております。で、その為に「another
interest rate cut」つまり追加利下げと、「acting to prevent any further
appreciation of the Swiss franc against the euro」という事で対ユーロにおけるスイスフラン高を防止するのが目的とな。
で、その為に「buying Swiss franc bonds issued by private sector borrowers」ということで「民間セクターが発行した」スイスフラン建債券を対象にする新たなレポオペを実施する(これが買い入れなのかレポオペなのかここでは微妙な書き方ですけれども、後段で購入する話があるので購入なんですかな)することと、「purchasing
foreign currency on the foreign exchange markets」ということで外国為替市場で為替介入をしますよという話。
第3パラグラフより。
With these exceptional measures, the SNB is helping to cushion the effects
of the economic and financial crisis, with the aim of limiting the risk
of deflation. The SNB has a mandate to ensure price stability, while taking
economic developments into account. This objective encompasses the prevention
of both deflation and inflation. In carrying out its mandate, the National
Bank will ? as it has in the past ? base its decisions on an inflation
forecast.
経済と金融危機を緩和して、デフレのリスクを軽減する目的での実施で、インフレとデフレを防止すると仰せのようですな。んでまあその後に目先の経済見通しの話があるのですが、2009年の前年比の物価上昇率に関して第5パラグラフで『Average
annual inflation will amount to ?0.5% in 2009. With the measures decided
today, the SNB is forecasting average annual inflation for the following
two years of virtually zero.』と見通しを出しています。
で、途中をすっ飛ばして第9パラグラフから。
Changes in monetary and financial conditions
The SNB lowered the Libor target range decisively by 225 basis points over
the course of the fourth quarter of last year. This monetary policy impetus
will continue to feed through progressively to the economy. Short-term
interest rates have dropped, and the interest rate curve has steepened.
However, capital market risk premia have risen substantially since the
collapse of Lehman Brothers, hampering the transmission of monetary policy
stimuli. This is prompting the SNB to purchase Swiss franc bonds issued
by private sector borrowers in order to bring about a relaxation of conditions
on the capital markets.
ということで、最後の文にありますように、民間債務の買入によって資本市場の環境を緩和させる(つまり信用リスクプレミアムの過大な拡大を抑制するということでしょうか)ことを企図していますと。
The value of the Swiss franc has increased substantially since the beginning
of the financial crisis in August 2007. This currency development has gained
momentum since the National Bank's last assessment in December. Under the
present circumstances, this represents an inappropriate tightening of monetary
conditions. In view of this development, the SNB has decided to purchase
foreign currency on the foreign exchange market, to prevent any further
appreciation of the Swiss franc against the euro.
ということで、為替市場におけるスイスフラン高が継続しており、「monetary
conditions」がタイトになっているという認識の下、為替市場への介入をしますよという話。
あまりあたくし詳しくないのですけど、EUの周辺で別通貨を使っている小国は対ユーロの為替市場動向がモロに経済に効いて来るようでして、そういう意味ではスイスもそうですけれども、北欧諸国とかでも金融政策当局は為替市場動向を重視しているという事ですので、こう正面切って為替介入をして来るのはまた別でしょうが、為替自体は日本で考えるより以上に重要なファクターみたいですね(というか日本も何だかんだ言って為替で金融政策振らされますが)。
While M1 and M2 are registering strong growth rates, that of M3 remains
moderate. In contrast, the monetary base almost doubled in one year. This
development reflected the SNB’s efforts to provide the interbank market
with sufficient liquidity ? as a response to the huge increase in the demand
for liquidity brought about by the prevailing climate of uncertainty. If
this demand had not been satisfied, the result would have been an undesirable
rise in interest rates.
んでまあ流動性需要が高いのでSNBは流動性供給を大量に行っており、望ましくない金利上昇を防いでおりますと。
・・・とまあそういうことで、報道では「量的緩和」みたいな話もありましたが、この文を読んでいますと、メインは為替介入と利下げ(3か月Liborの誘導レンジを0〜1%→0〜0.75%に変更)で社債などの買入がそれに付随するというところでしょうか。
経済見通しの所とかは引用すると長くなるので割愛です。
○CP市場が阿片窟状態です
昨日は2か月TBの入札がありました。
・・・・えー、ちょうど先週末の国債市場懇(PD懇ね)で4月以降3か月TBを増発しますああそれからそんだけだと足りないからまだ短国を増発しますという財務省の話がありましたことがどの位影響してるのか知りませんが、2か月イラネ状態になって前場の引けが0.280/0.285に対して落札水準は0.2864/0.2921と足きり水準が貫禄の0.29%乗せ。
まあ今日の3か月はちったあマシでしょうけれども、先週の頭には0.23%くらいまで低下してこれは・・・と思わせてくれましたが、結局またまた0.2%台後半という頭の重めな展開ではございますわなという感じで、GCが低いところで張り付いているからこれで済んでますけど、今後の増発大丈夫かよという気はするのでした。
さて、そんな市場環境ではありますが、新発CPの環境と言えば企業収益の悪化だの短期国債の増発によるリスクフリーレートのサガランチ会長状態などのような外界の環境とはまるで関係なく、もう色んなものが短国よりもレート低いという一大官民逆転現象ですが、これは官民逆転というよりは単にCPレートが勝手にトリップしているだけという感じ。しかもどうも日銀のオペ適格と思われるものばっかりレート低下ということで、もうオペ効きすぎで阿片窟状態になっておりますわな。外界と関係なくトリップ状態になっている所なんかもまさに阿片窟。
企業金融オペの新設をCP買入方針の公表によって12月会合以降CPレートは派手派手に低下したものの、1月後半の格下げラッシュの時にCPレートって一旦上昇しやがったのですが、このときは業績が急速に悪化して格付けに下方圧力が強そうな銘柄のレートが上昇したのですけれども、このときにも何か「格付けが下げられそうだ」という形式的な判断で動いてますなあ観(苦笑)はあったのですが、オペ適格かどうかで適格モノのレートがどんどん潰れていくとか何と言うオペ効果という感じではあります。
いやまあ政策目的が達成されていると言えばその通りなんですけどね。
・・・・ま、今から出口の話をしてもしょうがないというか気が早すぎですけれども、ここまでやらかしてしまいますと、出口の時に物凄い逆回転が起きる懸念がありまして(というか既に短国よりも低いCPとか投資家が離散傾向なのですけれども)、大丈夫かいなと気にするのは気が早すぎですかそうですか。
まさに大門先生大勝利という事ですな(違)。
2009/03/16
お題「決済システムレポートから」
保有有価証券の評価替え抜きベースで黒字確保宣言ってどっかの国で散々聞いた「不良債権処理は峠を越えた」を・・・いやまあいいです。
#しかしAIGの幹部報酬とか見てると「当時の」邦銀経営者って・・・・
○決済システム関連のレポート
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0903a.htm
リーマン・ブラザーズ証券の破綻がわが国決済システムにもたらした教訓
本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0903a.pdf
(PDFで34ページ組です)
んでまあ内容はリーマン破綻に伴う決済の混乱度合いの分析と今後の課題に関してでして、まあその手の話に興味のある人は読んでおくべき(というかもう読んでるでしょ^^)かと存じます。で話を終わりにしてしまうと駄文のネタになりませんので(汗)、少々愚意見をば。
全体感としては本文19ページにあります、
『以上の整理を踏まえると、今回の破綻では、相応の市場プレゼンスを有していたリーマン証券の資金・証券の支払が全て予定どおりに履行されない中にあっても、清算機関の設立やそのリスク管理策の整備をはじめとする決済リスク削減策が一定の機能を発揮したことにより、決済面での混乱が金融システム全体に長期に亘って幅広く波及する事態は回避できたといえる。』
ということでして、関係者の皆様お疲れ様でしたという所なのですけれども、まあ微妙に愚考してみます。
・まあ正直言ってタイミングと相場動向に助けられた面もあり
本文17ページの上場デリバティブ取引の処理に関する説明部分から。
『東証・JSCC、金融取および大証では、リーマン証券による再生手続開始の申立等を受けて、業務方法書の定めに基づき、同社を当時者とする新規取引と債務引受の停止措置を講じるとともに、同社が保有している建玉の処理に着手した。』
『リーマン証券が破綻した時点で保有していた建玉のうち、顧客からの委託分については、他の清算参加者への建玉移管または反対売買のいずれかにより処理が実行された。また、同社の自己保有分については、反対売買により処理された。このような対応を経て、まず、金融取が9
月22 日に同社の保有建玉の処理を全て終えたのに続き、25 日にはJSCC、30 日には大証において、それぞれ処理が完了した。』
ってまあさっくりと書いているのですが、リーマン破綻がメジャーSQおよび債券先物限月交代の直後だったからこれセーフだったのでして、委託建玉の処理に数日掛ける余裕があったんですよね。いやまあ初のケースだから仕方ない面は多々あったのでキツイ事は言いたかあねえですが、業務停止命令発出直後って信用取引(は上場デリバティブじゃないですが)の反対売買もできないとかいうお洒落な状態になって、先物も当初どう手続きするのか見事に硬直状態になって、それはもうエライコッチャだったようで何とも。
#限月交代やらSQ直後で、中間決算まで2週間というケツがあったのも逆に処理が迅速化された要因だったりするような気がせんでも無いですね
で、本文20ページの今後の課題に関する分析部分にはこれまたさらりと書いてますが重要な点が(^^)。
『また、今回、全体として決済面での大きな混乱を回避することができた背景には、リーマン証券による決済不履行の規模が、各清算機関のリスク管理の枠組み等によって比較的迅速に対応できる範囲に収まった面があることも否定できない。実際、一部の清算機関では、既に、より大きな決済規模の市場参加者が破綻した場合であっても決済履行の安定性を確保できるよう、リスク管理策の強化を指向する動きがみられている。』
『更に、決済不履行に起因する損失(再構築コスト等)への対応についてみると、各清算機関では、前述したように、いずれの先でも、リーマン証券から事前に徴求していた担保でカバーすることができ、他の清算参加者に負担を求める事態は生じなかった。一方で、今回の破綻対応の経験等を踏まえると、現行のロスシェア・ルール
―とりわけ、清算参加者からの担保徴求のあり方― について合理性を向上させる余地がないかといった点を改めて検証してみる余地があると考えられる。』
ということでして、その下に脚注とグラフがあるのですが、その脚注が重要
だったりします(^^)。
『今回の破綻では、各清算機関がリーマン証券との決済に関してポジションの解消や再構築を行っていた間、国債・株式市況は相対的に落ち着いており、これが損失額を抑制した面がある。清算機関では、その後市況のボラティリティが大幅に上がった局面を含め、清算参加者から徴求している担保の所要額が「通常の市場環境下での価格変動リスク」を適切にカバーする仕組みとなっているか改めて検証してみることが適当と考えられる。』
例えば新発国債をリーマン証券から購入した投資家ですけれども、業務停止命令が発出された直後に市場は大爆発して先物で高値3円高とかやらかしてくれたのですが、その後連日相場は下落してくれたので、例えば5年新発国債は18日木曜日に入札時の平均落札価格より値下がりし、取引のキャンセルを行って再構築しても大きな損益が発生しなかったという状況になりまして、お蔭で取引が無事キャンセルできたというのもある訳で、これが16日その日にいきなりキャンセルですとか言っても大踏まれしている中で誰がキャンセルに応じるんですかという状態な訳ですよ。
ということなので、レポやらフェイルに関する部分はまあ良いとしても、実はアウトライト取引に関する部分については市場動向で助かった面が多々あるものかと存じますです、はい。
えーっとですね、それからもう一つはツッコミなのですが、本文21ページにある市場動向のグラフなんですけどね、「リーマン証券の破綻」って線を引いている日って値動きからして16日の引け値の所に引いているのですけれども、実務的な問題というか分析という面で言えば、16日には既にリーマン証券は業務停止状態だったのでして、取引回復の為の損益計算の出発点は「破綻直前」の価格である筈(日々値洗いという前提)でして、破綻したのが出て債券先物や株式市場がぶっ飛んだ直後からの数字と比較するような線の引き方をしない方が宜しいかと思いますです、はい。
・今後の課題に関してですけど・・・・・
んでまあ今後の課題なのですが、今後の課題に関しては微妙に日銀毎度お馴染みのべき論になっているのでして、いやまあべき論は結構なのですが、世の中は日銀当座預金取引先みたいに全部対応可能な人たちだけではないという点に関して、もうちょっとご理解を賜りたいものえだると思う次第で。
本文27ページから。
『ロ.清算機関のカバレッジ拡充
(国債取引に関する清算参加者の拡大)
現在、レポ市場における一部の主要参加者はJGBCC に参加しておらず、そうしたこともあり、JGBCC
を介した国債DVP 決済のシェアは全体の4 割程度に止まっている。JGBCC による決済不履行リスクの遮断機能の意義は、今回の経験を通じて、JGBCC
に参加している先をはじめ多くの市場参加者によって改めて確認されたところである。国債決済全体の安定性を一層高め、破綻時におけるレポ市場の機能低下をできる限り抑制していく観点から、JGBCC
には、イ.で述べた機能向上に加え、制度参加者の拡大に向けて、個々の事情やニーズに十分に配慮しながら、可能な範囲で工夫していく取り組みが求められる。』
そらそうなのですが、JGBCC相手だとフェイルされた時の文句の持って行きように困るという実務的問題コレ有りでして、フェイルに関する各種事務的な面倒を回避しようとしたら相手を選んで相対で取引した方が投資家的に楽という話もある訳で、清算参加者を投資家に拡大という話をする為には課題があるでしょうなあ。
『ハ.市場全体として取り組むべき課題:国債決済サイクルの短縮
市場参加者の破綻に伴って顕現する決済リスクについては、イ.(清算機関におけるCCP
機能の向上)とロ.(清算機関のカバレッジ拡充)で掲げた課題が実現すれば、相当程度に抑制を図ることが可能になると考えられる。加えて、決済規模が突出して大きい国債取引については、決済サイクルを短縮することができれば、清算機関を軸とする上述の取り組みを補完・促進し、市場全体における決済リスクの更なる抑制を効果的に実現することが可能になると考えられる。』また、決済リスクの抑制がこのようにして図られることで、国債を予定どおり受取れないリスクに敏感なわが国最終投資家等の運用スタンスを多少なりとも緩和し、破綻時における市場流動性の維持に寄与する効果も期待できる。今後、市場関係者においては、今回の経験の検証を踏まえつつ、国債決済サイクルの短縮を目指して検討を推進していくことが適当と考えられる。』
出たな国債決済T+1話。いやまあ仰ることは一面において全く仰せの通りで国債決済期間の短縮ができれば良いのは判っているのですが、決済期間の短縮をするにはそれに対する事務管理負担をどうするかって話がありますのよ。
日銀当座預金取引をバカスカやってる大手銀行とか証券会社とかですと、当然ながら債券ポジションの日中モニタリングとか普通にやっていると思いますけれども、投資家サイドになりますと、そもそもそんな頻繁な売買を前提としていない建付けになっている事情もあり、そこまで管理が進んでいないという所だって平気であるんですよね。どうも日銀はこの手の話に投資家をあまり呼ばない傾向があるようで、(まあ取引先じゃなかったりしたら仕方ないけど)大手証券とか大手銀行なら出来る話をそのまま全部スタンダードで持って来るのもちと何だかなあ感はございます、はい。
何か上記の部分でも「国債を予定どおり受取れないリスクに敏感なわが国最終投資家等の運用スタンスを多少なりとも緩和し」って如何にもフェイルを容認しない最終投資家が愚昧で遅れていると言わんばかりの書きっぷりな所に敏感に反応するのは敏感すぎですかそうですか。いやまあフェイル容認しないのは確かにどうかとは思いますけどね(^^)。
話は横ですけど、本文20ページにはこんな記述がありましてですな・・・・
『また、市場取引の動向に目を転じると、国債レポ市場では、リーマン証券による国債の引渡不履行や市場参加者間での連鎖フェイルが前例のない規模に上ったことにより、最終投資家の運用スタンスが萎縮し、市場流動性の低下が惹き起こされる結果となった。』
「萎縮」って言葉のニュアンスがどうも何か投資家のスタンス後退が悪いような気がするのは反応しすぎですかそうですか。だってあーた間もなく中間期末決算があるのにフェイルだの約定事後取り消しだのに巻き込まれたら最悪だから取引を絞り込むの当たり前じゃないですか・・・・・・確かに萎縮なんですけど(苦笑)、ここは「極めて慎重になり」と表現して頂きたく存じます(^^)。
いやまあそういう意味で書いたのではないとは思うのですが、こーゆー微妙な言葉使いに一々反応しちゃうあたくしもあたくしだったりします(滝汗)。
#他のネタもあったのですがこいつが意外に長くなったので明日にでも
2009/03/13
お題「引き続き国会ネタで」
13日の金曜日ですが、スイス中銀為替介入とはこれ如何に。
で、昨日は本石町日記さんとネタもろかぶりで誠に恐縮至極。
http://hongokucho.exblog.jp/10489480/
で、今日もまあその続きでも(^^)、ということで3月3日の参議院財政金融委員会会議録から。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0105/171/17103030060005a.html
○どうも皮肉が通じなかったようで(苦笑)
冒頭は民主党の尾立源幸委員による質疑なんですが、財政投融資特別会計の準備金繰り入れに関する法案に関する部分から引用。
最初はいわゆる埋蔵金に関しての論点整理をしていていい感じで話が進んでいるのですけれども、何故か話が微妙に変な方向に進み徐々に怪しげな質疑になっております。
『○尾立源幸君 改めて、なぜ必要になったかというのは、財源としてどうしても使いたいと思ったからということなんですか。そのなぜというところをもう一回。』
『○国務大臣(与謝野馨君) そもそも二次補正を作るときに、赤字国債は出したくないと、こういう前提をつくって二次補正を作ろうと。そこの最初の出発点のときにその原則を決めてしまったためにそういうことになったわけでございます。』
『○尾立源幸君 じゃ、赤字国債のそのたがをはめなければこういう措置も必要なかったかもしれないということですよね。それで、ここで明らかになったことは、特別会計の資金の中には一時的であれ使える資金があったと、これが今まで御主張されていた与謝野大臣とは違うことが明らかになったということだと私は思っております。それはそういう理解でよろしいでしょうか。』
『○国務大臣(与謝野馨君) 党内からは、与謝野は使うお金がないと言ったけれどもあったじゃないかといって御指摘を受けておりますが、私としては、使えるお金は元々あって、それにはストックからストックへという原則が存在していたんだというふうに御説明しています。』
まあこの辺までは普通の質疑応答だったのですが、最後の方に来て段々様子が怪しくなって参ります(笑)。
『○尾立源幸君 それでもう一点、そういうことで使えるお金があったということなんですけれども、その次、金利変動準備金が二〇〇八年、政府によって一〇%から五%に引き下げられておる、これは御承知のとおりかと思います。シミュレーションを行っていらっしゃるそうで、モンテカルロ・シミュレーションという難しいのをやっていらっしゃるそうなんですけれども、この一〇%を五%に引き下げるために、五%であればそんなにリスク変動はないと、金利変動のリスクはないということだったということでございますが、さらに、与謝野大臣は二月の二十四日の衆議院財務委員会で、そんな高いレベル、準備率でなくても、将来のリスクには十分対応できると述べていらっしゃいます。パーセンテージについては明言をされてないようなんですけど、これはどのような根拠で五%でなくてもいいとおっしゃっているのか、教えていただきたいと思います。』
ということで政府参考人が説明しようとすると・・・・
『○政府参考人(佐々木豊成君) 金利変動準備金の千分の五十に引き下げましたときの考え方につきまして、まず……』
『○尾立源幸君 それは要らないです。』
『○政府参考人(佐々木豊成君) 要らないんですか。』
『○尾立源幸君 それは要らないです。そんなことは聞いていない。』
政府参考人が(゚Д゚;) となっている姿が彷彿とします。んでまあその後1000分の35にした話を佐々木政府参考人がしてますので政府参考人として出席して良かったですねという所ですが(笑)、益々話の方はエスカレートしてきます。
『○尾立源幸君 この議論はずっと、大臣、やってきておりまして、既にもう大久保委員なんかからも指摘がありますように、ALMしっかりやっておるので、ほとんど金利変動リスクというのはないということが分かっておるわけなんです。しかしながら、あのような答弁をなされ、しかも自分たちが作ったルールを破ったらああいう言い方をされる。もうこの際いっそほとんどゼロにして、何か起こったときは、一時的に一般会計に貸しているわけですから、何かあったときは一般会計で面倒を見ると、こういう選択も考えられるんじゃないですか。この埋蔵金論争じゃなくて金利変動準備金論争みたいなのがまた起こっておりまして、その時々によって都合のいいようにルールを変える、これが官僚のやり方でございます。大臣、どう思われます。』
で、与謝野さんの返しにワロタ。
『○国務大臣(与謝野馨君) 仮に財投が赤字になりますと、一般会計から補てんしなきゃいけないという事態が発生します。ですから、そのときに皆様方が財投の赤字垂れ流しという批判をされないということがはっきり分かるのであれば、ゼロのところまで使い切って私はいいと思っております。ただし、それはしっかりしたお約束をいただいて、そのときには批判しないよということを言っていただかないと、なかなかそこまでは申し上げられないと。』
しかし皮肉が通じないのがミンスクオリティ。
『○尾立源幸君 是非この場で合意をして、私たちの手に財布をいただいたときにそれを実行させていただきたいと思っております。(以下別の話題なので割愛)』
・・・・・・・何と言う次代へのツケ回し宣言(-_-メ)必要以上に準備金取り崩したらそれは赤字国債発行とまともに同じじゃろうがと思うのだが。
なお、尾立さんはこの質疑の中で「百年に一度の事態だからどんどん使え」みたいな話をしておりまして、昨日ご紹介した大門さんの「百年に一度という言葉で思考停止するのは如何なものか」という指摘が見事にぶち差さっております(^^)。
○日本振興銀行ネタ
またまや大門先生で恐縮ですが(^^)、日本振興銀行に関するツッコミをしておりまして、午前の質疑でもっとややこしい話をしているのでその辺も興味深く読んだのですが、午後の質疑(昨日引用した部分のちょっと前)にこんなのがあってニヤニヤ。
『○大門実紀史君 (前半割愛)もう一つは、ある企業の役員をやっている国会議員がその企業のビジネスモデル、あるいはその企業がやっているマーケットですね、それをそのために国会で質問をするというのは、考えてみれば、オリックスの宮内さんが規制改革会議でいろいろ発言をされてあのかんぽの宿の問題で大問題になりましたけれども、ましてや国会議員が会社の役員をやっていて、自分の企業あるいはその産業といいますかマーケットのために質問を繰り返すというのは、ある意味じゃ、もう私は大変危ないことじゃないかなと、献金をもらって質問する以上に、ストレートに問題があることじゃないかなというふうに思いますが、一般論で結構なんですが、政治家としての与謝野さんのお考えを聞きたいと思います。』
『○国務大臣(与謝野馨君) 国会議員が閣僚等のポストに就いていないときに企業の役員をやっているということは、これは許されることだと思いますが、立場を利用して国会で質問をすると、しかも自分の企業のために質問をするということがあるとすれば、それはやっぱり企業の規定に関して責任を問われかねないことであると思いますし、それ以前に、やはり政治家としての廉潔性を保持するためにも、自分の企業にかかわるようなことについて質問をするということは厳に差し控えるべきだと私は思っております。』
『○大門実紀史君 ありがとうございます。実は、取り上げてきました日本振興銀行ですね、この社外取締役議長、その日本振興銀行設立にも、木村剛さんと一緒にかかわられた自民党の衆議院議員がおられます。平将明さんという方ですけれども、まだ若い方なので、一年生議員なので、これ指導してほしいという立場で、余り名前は言いたくなかったんですけれども、申し上げますけれども、国会質問を度々なさっております。(以下平さんの質問内容部分割愛)私は非常に危ないところで質問を繰り返されているなというふうに思います。本当に、まだ四十一歳で若い方でございますし、国会議員になったばかりかな、だから余り国会議員の節度というか、まだよくお分かりになっていないのかも分かりません。そういう点で、自民党の中でよく指導もされた方がいいと思いますが、いかがでしょうか。』
○国務大臣(与謝野馨君) 日本振興銀行、個別の銀行のビジネスモデルについて、その是非を私がここで表明するわけにはまいりませんけれども、いろいろな誤解を生ずるような発言というのは国会議員は慎まなければならないというのは先生の御指摘のとおりだと私は思っております。』
(;∀;)イイハナシダナー
○余談ですがこれは酷い
昨日は国会に白川総裁が出席しましてこんな話を。
http://jp.reuters.com/article/domesticFunds/idJPnTK025662420090312
財政ファイナンス目的の長期国債買い入れは長期金利に悪影響=白川日銀総裁
2009年 03月 12日 17:09 JST
[東京 12日 ロイター] 白川方明日銀総裁は12日の参院予算委員会で、景気悪化や株価下落傾向のもとで日銀は長期国債の買入オペ増額により財政政策に貢献すべきではないかとの考え方について「長期国債の買い入れオペの考え方は銀行券の発行残高に見合った長期安定的な資金を円滑に供給するという金融調節の必要に基いて実施するもの。そうした必要性や先行きの日本銀行の資産や負債の状況を踏まえて実施している」との基本方針を示した。その上で「金融調節の必要性から離れて、財政ファイナンスを目的として長期国債を買い入れると、それ自体が日本の長期金利に悪影響を与える」と述べ、財政政策支援のための長期国債買い入れに否定的な考えを示した。(上記URLより、以下割愛)
そりゃまあ中央銀行が財政赤字ファイナンスを真正面から謳って国債買い入れをおっぱじめたら財政破綻と悪性インフレへの懸念で長期金利が上昇しますわなというごく普通の話をしている筈なのですが、その話をこういう記事に仕立て上げる新聞社の頭の中身を激しく疑わざるを得ません。
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090312/biz0903121606009-n1.htm
国債買い入れは金利に悪影響 日銀総裁
2009.3.12 16:04
日銀の白川方明総裁は12日の参院予算委員会で、長期国債買い入れについて「金融調節の必要性から離れて、財政ファイナンス(資金供給)を目的として長期国債を買い入れると長期金利に悪影響を与える」と指摘した。(上記URLより、以下割愛)
「財政ファイナンス目的」という肝心の部分は抜けてる(追記:記事の見出しの事です)わ、財政ファイナンスを「資金供給」と書くわ。そりゃまあ行為は資金供給かもしれないけど、基本的に「赤字補填」という話であり、資金供給と書くと通常のオペレーションによる資金供給を話がごっちゃになるでしょうがなと。
ま、産経は中々いい感じで論点がズレてるというかトンデモ成分の入った論説をする変な編集委員さんがいるみたいですから、日銀陰謀論で悪意のある書き方になるのかもしれませんけどね。
長期国債買入増額はマネタリーベースの拡大目的でやる(最近のFRBだと長期金利を下げるという目的を打ち出したものの買入はまだやってませんわな)というのが原則でしょという所で、大久保さんの質問も何だかなという感じですが。
ではでは♪
2009/03/12
お題「日本共産党に資本主義を説教されたでござるの巻」
一方、自民党ではこんな動きをしている訳ですが、
http://www.asahi.com/politics/update/0311/TKY200903110247.html
・・・・この「無利子国債が景気刺激策になる」という理屈が全然判らないのですけど。そもそも世の中で相続税を多額に払う人って物凄く少ないので、勘違いして買う人はいると思うけど、恩恵そのものは超極一部だし、相続財産で捕捉されないようにしてるタンス預金の類がこっちに流れるとか安易な気が。それよりも他の金融資産からこっちに流れたら「官から民へ」の小泉改革(苦笑)に逆行しませんかねえ。
マジで無利子国債の件は景気刺激になる理由が判らないので教えてエロイ人という所ですけど、それ以前の問題として、この議連会長さんって1年前とかには誰に吹き込まれたのか知りませんけど、「政府系ファンドの設立を!」とか言いまくっておりました(しかも原資は外為特会やら公的年金!)が、ご提言どおりに実行していたら今頃どうなっていたかの検証とか反省とかした方が宜しいのではないかと。まあ政治家センセイの感覚はよーわかりませんけど、一般ピープルのあたくしとしては恥ずかしさの余り肥溜に頭から飛び込んで3日3晩反省する位のレベルだと思うんですけどねえ・・・・・
と、マクラの悪態が長くなりましたが、市場経済や資本主義を説教する共産党議員というシュールというか徳田球一委員長時代だったら除名モン(かどうか知らんが)じゃないかというような光景が展開された3月3日の参議院財政金融委員会から。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0105/171/17103030060005a.html
この日はお題が幾つかあって午前と午後に質疑が行われたようでして、日本共産党の大門実紀史委員の質疑タイムは珍しくも3回もあったのですけれども、例の質疑は2回目の質疑となりまして、上記URLの真ん中から気持ち下くらいの所から始まります。では引用を(^^)。
○小手先の株価対策よりも重要なものがあるでしょうと
2回目質疑の前半は別の話(実はそれもオモロイ)でして、後半が株価対策などの例のお話になるのです。
『○大門実紀史君 それでは、次のテーマの株価対策について質問いたします。
二十四日にTOPIXが一時バブル後最安値と。今日も大変な安値になっていますけれども。とにかく日経平均、二十六年ぶりぐらいの安値でずっと今うろついているというところでございます。それもあってでしょうか、与謝野大臣は、今回、株買取りの法案が審議されておりますけれども、さらに、公的資金で市場から株等々を買い上げる案などを与党に、自民党に検討してほしいという要請をされたということが、新聞報道ですけれども、されております。その辺、そういう要請されているんでしょうか。』
で、この次に出てくる与謝野大臣の答弁も秀逸だと思います。
『○国務大臣(与謝野馨君) 株価対策というのは言葉で言うのは実に簡単なんでございますけれども、株価というのはやはり経済や企業業績を反映したものであって、それに人工的に手を加えていいかという基本的な問題があります。それからもう一方では、やはり株価が急落することによって起きるいろいろな経済的な現象、こういうものを未然に防ぐ社会的な価値があるかどうかという判断がもう一方であると私は思っております。』
『株価が急落をいたしますと、金融機関及び生保等の経営に重大な影響を与えますし、一般の大中小すべての企業に対する経営を何らかの形で圧迫をする、またそのことによって雇用が不安定になるという全体がつながっている問題でございます。したがいまして、株価をどう支えるかというのは、一般的な経済の原則のほかに、日本の経済が一体今どういう状況にあるかということに対する深い情勢判断、洞察の下で行うべきことであると思います。』
『ただし、これもふだんからきちんと緊急時にはどう対応することが可能かという、そのことはやはり検討をしておかなければならないと思っておりまして、先般、柳澤議員にお目にかかって、政府の方ではなかなかできないので与党の方でそういうことも図上演習として御検討いただきたいということをお願いしたところでございます。』
そして大門先生の質問というか意見がまた宜しいのであります(^^)。
『○大門実紀史君 大臣が前段に言われたことは非常に私は重要だと思うんですけれども。確かに株が下落するといろんな影響が出て、いろんな事態が起きていますよね、雇用にまで影響するというのはそのとおりでございまして、私は何もやらなくていいとかという意味で言っているんじゃないんですが、株を公的資金で支えるとかこういうことは、本当に気を付けないとちょっと飛びはねた議論がすぐ出るんですけれども、よくよく考えなきゃならないんじゃないかなと思っております。』
「本当に気を付けないとちょっと飛びはねた議論がすぐ出るんですけれども」って言い得て妙ですよね。
『小手先でいろいろやっても、結局元に戻ってしまうと。それは、やっぱり株というのは実体経済の反映、鏡でございますから、何かやらなきゃといって焦っちゃって、もう一喜一憂して、今日下がった、何かやらなきゃと、もう右往左往してしまうのは気持ちとしては分からなくありませんが、政治こそどんと構えて、本来の対策を打たないといつまでたっても逆に政治が翻弄されるということにもなりかねないんじゃないかなというふうに思っています。』
何と言う正論(^^)。
『特に、この間株価の、私もこの間ずっと見ているんですけれども、動きをですね。ついこの間までは、大体海外投資家が引いているわけですね。これ大体、日本株というのはまだ利益が出ていましたから、日本株を売って利益を確定するために、日本株で稼ぐために売っていたと。ところが、この前のGDPの発表以来、今度は日本経済がもうひどいと、ストレートに日本株売りがやられていると。』
ちゃんと見てますよね。
『こういうふうに見ますと、結局やっぱり一番大事なのは、一番今回落ちているのは、昨日はアメリカのAIGの影響ありますけれども、全体で株価が下落しているのは、どうしても実体経済、日本のGDP、これが落ちたせいだと思うわけですね。そうすると、まずそれを引き上げると、あるいはそれが引き上がるであろうと人々が思ってくれる政策を打ち出すことが一番大事で、余り右往左往して小手先の何やったらいいかということではないんではないかと思いますけれども、もう一言、いかがでしょうか。』
で、与謝野大臣の答弁。
『○国務大臣(与謝野馨君) 人間も耐えかねる激痛に対して、一時的な鎮痛ということは必要な場合はあるわけです。しかし、薬物による鎮痛に依存するというのは、決して健康を取り戻すゆえんではないと。経済ももちろん同じことでして、耐え難い激痛に対しては政策的な配慮は必要だとしても、やはり本来の健全な経済を取り戻す、このことを忘れていろいろな対策を講ずるというのは、私は正しくないと思っております。』
これが共産党と政府の質疑応答というのがシュールなのですが(^^)、さてちょっと飛ばして例のそもそも論に入るのであります。
○大門先生の市場機能論の秀逸さにしびれる憧れるううううっと(^^)
で、柳澤伯夫衆議院議員との質疑(自民党はどう考えているのかという質問があったので)があったのですがそこは割愛しまして、その流れで大門先生のそもそも論が実にしびれるので段落分けしながら引用致したく。
『○大門実紀史君 私、もうこの場では余り細かい議論入りたくないんですけれども、ちょっとそもそも論としてお聞きしたいんですけど、公的セクターが株式市場、CPでも社債でもいいんですけれども、そこに介入するということそのものが、市場経済の中においてはそのものが自己矛盾を起こすわけですよね。』
いやもう仰るとおり。
『もう今日の日経新聞一面読んでいても、何を愚かなことを言っているのかなと思ったんですけどね。まあさっきもありましたけど、何か社債、CP、借換えでいくと二十兆円ぐらいの穴埋めをしなきゃいけないと、だから政府が今言っている規模だと金額が少ないと、こんなことを言っているわけですね。』
・・・・「何を愚かなこと」にしびれる憧れるう!
『じゃ、まあ何でもいいんです、株でもCPでも社債でもいいんですけれども、仮に十兆円つぎ込んで効果なかった、二十兆円つぎ込んだら効果が出た、支えられた、引き上げられたと。この瞬間に市場経済のメカニズムといいますか、機能を公的セクターが崩しちゃったわけですよね。ということですね。仮にしばらく行ってまた下がったときにどう思うかというと、また公的セクターがやってくれるだろうと。こんなことを思うのは市場経済とは言えないわけですよね。』
政府日銀にクレクレ言うのが当然とか思っている市場関係者は恥じ入るべきかと、ってあたくしも当然とまでは言わないけどクレクレな意見は言いますからちょっとアセアセではございまする(^^)。
『だから、この間、アメリカも対策打って、織り込み済みで株が一時上がってまた下がると、こんなことばっかり繰り返しているわけですよ。日本だってそうなわけですよね。』
『今、大臣が言われたように、いざというときのために用意しておくんだと、これではマーケットが納得しないと日経新聞は言っているわけですね。実際に幾ら入れたかだと。こんなことにどんどん巻き込まれていったら市場経済じゃなくなるし、資本主義じゃなくなってしまうと。まあ私が言うのも変ですけど、何かおかしな話になってくるんじゃないかなと思うわけでございますよね。』
ここ読んでて「まあ私が言うのも変ですけど」で盛大に吹いたのはここだけの話(^^)。
『だから、もうそのそもそもの、この日経新聞も言っているんですよ。こういう言い方はよくあるんですよね、市場の機能を壊さない程度に、機能を壊さない程度に介入すべきだと。こういう議論があるんですけど、効果が出たときは機能を壊しちゃっているわけですよね、市場の機能を、メカニズムを。これは非常に大事な議論を私していると思うんですけれども。これが基本にあるから、私は慌ててばたばたと手を打つようなことをしないで、もっと実体経済そのものをどうしたら、人々が、上がっていくなと、良くなっていくなと思うような対策を重視すべきだというふうに思うわけでございます。(最後の柳澤議員への質問部分割愛)』
ということで、日本共産党に資本主義や市場経済を説かれ、日経新聞がたしなめられたでござるの巻という大変に心の洗われるひとコマでありました。つまり市場経済に関する見識は赤旗>日経ということですな(それは違う^^)。
○これも良い指摘かと
ということで、大門委員の2回目の質疑は大体終了なのですが、3回目の質疑は麻生総理大臣が出席の下で実施されまして、その質疑の後で法案の委員会採決が行われました。ということで3回目の大門委員の質疑は上記URLの最後の最後の方になります。目の子で勘定してスクロールバーの最後8分の1くらいあたりから始まりますが、その質疑の一部を引用。麻生総理大臣に対する質問です。
『○大門実紀史君 (定額給付金の件に関する部分割愛)株価対策の質問をしたいと思いますが、大変民主党さんには申し訳ないんですけど、民主党さんの方はもっとやれということで、私の方はやるなという、そういうやり取りで申し訳ないんですけれども、申し訳ないというか、答弁もいろいろ変えなきゃいけないというのがあると思うんですが。』
ワロタ。
『私は、先ほど柳澤元金融大臣と与謝野大臣にお聞きしたんですけれども、本来余り、何といいますか、市場経済、特に株価、株のマーケットに公的セクター、公的資金とかで介入するべきではないと。これは守るべきものであって、守るべき原則であって、百年に一度だから何でもありと、この何でもありというのはちょっと危ないなと思います。』
なるほど。で、その次の指摘も良い点ではないかと思いましたです。
『それと、ついでに言えば、百年に一度という言葉が何か検証もなく飛び交っておりますね。日本って何でいつもこうなるんだろうと。七、八年前でいきますと構造改革という言葉が独り歩きをして、もうみんなが賛成と、やらなきゃいけないと。規制緩和もそうでしたね。国会では我が党は私なんか竹中さんと最初から議論いたしましたけど、みんなが一つの言葉にのまれてしまうと。この百年に一度という話もちょっと危ないなと思っているんです。だから何でもありと。まあ一々言葉じりをとらえちゃいけませんが、と思いますが、固定観念払って何でもやれと。』
『私は、そうじゃなくて、こういうときこそ守るべきしっかりしたルールを守りながら、しかし大変な事態ですからやるべきことを思い切ってやると、やるべきところは思い切ってやると。しかし、株の問題とか個別企業のCPとか社債とか、こういうものについては本当によく考えて対応すべきだと思うんですけれども、ちょっと総理、その辺の基本的なお考え、いかがでしょうか。』
「みんなが一つの言葉にのまれてしまう」というのと「こういうときこそ守るべきしっかりしたルールを守りながら、しかし大変な事態ですからやるべきことを思い切ってやる」って所にとても感心しちゃいましたのでクリップしましたです。
まあアレですな、民主党はてめえのところのしょうもねえ質疑時間を大門先生と佐々木先生(は衆議院の財務金融委員会のベテランです)に大量に譲渡すべきではないかと思われます(苦笑)。
以上、国会会議録まる引用という手抜き攻撃で恐縮でありました。
2009/03/11
お題「市場メモとかその他雑談」
希望的な話に飛びついて急騰ですかそうですか>海外株式
#米国10年また3%乗せですか・・・・
○あんまり市場メモでも無いのですが
昨日は3か月TBの入札がござんしたが、あたくしが0.23%台とか申し上げたら全然そんな水準じゃなくて、平均落札で0.2492%の足きり0.2528%と先週末の勢いはどこへやらという結果で、まあ普通の落札結果(何をもって普通と言うのかと突っ込まれると困りますが)になりましてどうもすいませんでした。
資金供給は相変わらず潤沢(国債買い現先オペとか微妙に減っててやや絞り気味感もありますが)で足元のGCレートとかも0.11とか12とかで安定しておりますのですが、その割には短期国債の利回りって下がりそうで下がりませんねという感が致しまして、あたくし的には不思議ちゃんな展開ではありますです、はい。まあやはり1回に5.1兆円の発行は重たいという事なのかもしれませんな。入札一発で捌けるロットではないので入札の度にレート調整して、その入札が何せ毎週あるので威勢よくレート低下しにくいって事なのかなあと単なる需給要因だけに落とし込んで考えるの巻。入札に関しては年末年始や大型連休がらみでたまに端境期があるとその間にモノ不足になってレート低下(年初なんかそうでした)するというのもあるので、まあ単純な需給要因という面もあるかいなと。
一方で(しつこいですが)CPレートは相変わらずの展開みたいで、電力会社さん位ならまだ判るのですけれども、大手メーカーさんなんかでも相変わらず官民逆転レートという展開になってまして、企業金融支援オペ効果おそロシアという所です。まあそれはそれで良い(のかどうか知らんが)のですけど、日本政策金融公庫が次にCP発行する場合でも普通に考えると短期国債に2bpとか3bpとか乗った利回りで発行されるものと思われます(+3bpが前回の足きり水準)ので、日本政策投資銀行のCP買入が何と逆鞘銘柄続出という楽しい展開になりかねませんなあというのが味わいの深い所でございます。
ま、予算達成と違うのですから、別に買入の額が増えなくても良かろうにとは思うのですが、どうせ買入額が少ないと「何やってるんだ」と政治やらメディアやらが五月蝿く文句垂れさんになるでしょうから、そーゆー点では政策投資銀行さんも中々大変な所ではないかと存じますです。日銀の社債買入に関する各種報道を見ても思うのですけれども、札割れ(=政策投資銀行のCP買入に引き直せば買入額が伸びないって所で)する=効果が出ていないというような理屈によりまして、買入実績を上げる為にレートを下げるか、格付けを下げるかとか言われだしそうで、まあ碌なもんじゃねえなという風景が目に浮かんで参ります。ナムナム。
ま、CP買入+企業金融支援オペのコンボに関しては大門実紀史先生(早く会議録見たいのですが、まだアップされてないみたい)のご指摘どおりの展開になっているあたりは実に香ばしいですな。市場機能論はあまり表に出さない方が良いのではないですかねえ(^^)>白川総裁
#なお、既にご存知だとは思いますが、大門先生の指摘というのは本石町日記さんのhttp://hongokucho.exblog.jp/10448907/です(^^)
○集中検査ですかそうですか
<金融庁>貸し渋り集中検査 大手行・地銀対象に
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090310-00000128-mai-bus_all
上記URLより。
『金融庁は10日、貸し渋り・貸しはがし防止のため、金融機関の融資態度を調べる集中検査を4月から実施すると発表した。メガバンクを含む大手行や借り手からの苦情の多い地銀などが対象。具体的には、企業の期末越えの資金繰りや住宅ローンなどの個人向け融資に適切に応じているかを厳しく調べ、貸し渋りなどにつながる融資・審査体制の不備が認められれば、業務改善命令など行政処分に踏み切る方針だ。』
(;∀;)イイハナシダナー・・・・・と言いたいところではありますが、何だかなあ感も強いのでありましてですね、ついちょっと前には信用リスク管理をちゃんとやってるかとか自己査定が甘くないかとかご指導しておられたのではないかという件がこれまた常々引用してますがbewaadさんの昨年8月末のエントリー(http://d.hatena.ne.jp/bewaad/20080830/p1)にございますけれども、今度は一転して貸し渋り集中検査で、どうせこの文脈だと「何でこの案件を謝絶したのか」とかが突っ込みネタになるんでしょうな。
えーっとですな、貸出にしてもシンジケートローンにしてもそうなのですけれども、デイトレーダーの株式売買じゃないんですからそうホイホイとポジションをドテンドテンひっくり返す訳には行かないのですよ。そんなスタンスで融資されても融資される企業さんだって全然安定できない調達になるから却って困るというか迷惑でしょう。それから社債投資にしたってある程度の規模の銀行だったらポートを動かした時のマーケットインパクトって結構あるのでこれまたそんなに派手に動けませんがなと思うのですが、そうホイホイと検査スタンス変えられても困るとしか申し上げようが無いのですけれども。
#大体からして各行に対して同じように集中ご指導したら動きが増幅されて大変なことになると思うのですが。もうちょっと自主性を重んじた方が・・・・
ま、方針がドテンドテンするのは上、即ち政治レベルの方の問題であり、別に金融庁の一存でドテンドテンしているわけは無いのですけれども、何かこうbewaadさんのエントリーで引用されている金融庁大森企画課長のコラムからはエライ人のご意向が現場に落とし込まれるプロセスで更に増幅されている感じが伝わりますし、コメント欄見てると金融庁だけの話ではなさそうですけれども、まあこの「貸し渋りケシカラン検査」のスタンスが景気回復した瞬間にドテンとならないことを祈るだけであります。
○武藤前副総裁のブルームバーグ講演とかちょっとクリップ
ちょっとクリップ
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=ax9xQwt2OB_w
武藤総裁、伊藤隆敏&白川方明副総裁の組み合わせなら、政府などの詰めを行う武藤さん、学会や一般に向けて政策の説明をする伊藤さんに、海外中銀との連携をする白川さんっていう強力布陣だった(いや別に今の組み合わせが悪いとか言ってる訳では無いので念の為)と思うと民主党のアホウな反対は実に残念無念だったとしか言いようが無いのですがそれは兎も角上記URLより。
『武藤氏は政府など当局による株式の買い入れについて「株価を引き上げる効果が本当にあるのか、そう簡単ではない。あまりに特異な株式市場をつくってしまい、政府当局の意向によって日本の株が変わるというふうになったとき、投資場所としての評判を非常に落としてしまう。株は市場に任せるのが非常に重要だ」と述べた。』
と指摘しながらも、
『武藤氏は「ただし、米国が極端なことになったときのルールは平常時と同じルールで考えないという意味で、時価評価も場合によっては再考するかもしれないというレベルまで来た段階であれば、株の下支えのための株式買取機構の発動や、あるいは日銀が株を買うということは政策として十分価値がある」と語った。』
という事のようです。先般の山口副総裁のブルームバーグインタビューでは
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aHClL4ERJprE
『3月6日(ブルームバーグ):日銀の山口広秀副総裁はブルームバーグ・ニュースのインタビューで、年度末に向け企業金融が一段と厳しくなる事態も否定できないため、日銀としてさらに踏み込んだ対応があり得るか検討した上で「必要があれば行動していく」と述べ、情勢次第で追加的な企業金融支援策を打ち出す用意があることを明らかにした。』
ってな話をしてまして、何かやるのかいなとも思わないことも無い程度には考えています(でも今からやって3月期末に間に合うわけでは無いので、変に慌てて詰めの甘いおバカな施策取られても良くないので、じっくり詰めて企業決算が出る5月以降の有効施策にした方が良いと思う)けれども、政府との連携をきっちりやって行かないで日銀だけ独走する格好になっても効果が減殺されるようにも思えますので、はてさてどうなるのやらという所でございますか。
一応クリップだけという事で。
2009/03/10
お題「引き続き市場メモ/虫干しネタ大会」
○市場メモですが
昨日もまたまたCPレート低下。流れは先日来お話している状態なのですが、恒常的に平準的な発行を行っているその他金融系な発行体さんの3か月モノの発行レートが0.4%割れとかいう素敵な低下を。先週の月曜が0.6%とかで、その前の週の月曜が0.8%割れ水準だったので、この2週間でレートが半値になるという華麗な展開。
・・・・・いやもう何と言うか。
一方本日は3か月TBの入札があるのですが、こちらもレートはやや低下チックな感じ。昨日は売り出て0.23%とかやってましたけど、まあ入札前の調整でしょという感じで。今月は国債の償還もありますし、その分のキャッシュを何かで潰すとなった場合に短期国債はそこそこニーズ出るんじゃないですかねというところで。
CPレートの低下というかコモディティー化したクレジットスプレッド潰し状態はご愛嬌ですけれども、それをスルーした場合、まあ現状の足元の安定は本来「誘導目標=付利金利」となった時点でこういう資金供給になって然るべきでしたから、こんなもんちゃあこんなもんなんでしょうね。ここの金利状況が2年から中期とかに中々波及しないのが微妙に不思議なんですけどね。
以下虫干しネタシリーズ。
○須田さんの講演(引っ張ってすいません)、政府紙幣に関連して
連日引用している須田審議委員講演ですが本文19ページ目から政府紙幣の話になります。
『最近、財政政策の資金源としてのシニョレッジに期待する声が聞かれています。例えば、「政府紙幣」の議論はその一例とみることができます。』
ということで政府紙幣の話ですが。
『「政府紙幣」の発行は、その仕組み如何によって、「国債の市中発行」か、あるいは「無利息永久国債の日銀引受け」の、いずれかと実質的に同じになります。後者の場合、前節の議論でいえば、財政赤字を民間からのファイナンスに依存するのではなく、結局、日本銀行が国債を引き受けることによって、その分中銀マネーの供給を増やすことと同じになります。こうした国債の日銀引受は、財政規律上の問題から財政プレミアムを拡大させたり、日本銀行の財務の健全性に対する疑念を通じて、通貨に対する信認を害するおそれがあります。』
まあそれはそうなんですけど、多分実際問題的には次の論点の方が微妙にスルーされている問題ではなかろうかと。
『時間を通じたシニョレッジの使い方に関する問題もあります。物価の安定と、長期的なシニョレッジを最大化するインフレ率が一致するとは限りません。政府が、中央銀行が望ましいと考える安定的なインフレ率から実際のインフレ率を乖離させ、シニョレッジを変化させることは可能です。しかし、図表4でみたように、長期的にはシニョレッジの増加には限界があります。』
『したがって、財政赤字をシニョレッジによってファイナンスするということは、結局、シニョレッジを前借りするということにほかなりません。政府が先取りしてしまう分だけ、中銀マネーの供給の見返りとして得られる、将来国庫に納付されるシニョレッジが減少することになります。』
ということで、将来のシニョレッジが減少という話をしてますけど、まあもうちょっと身も蓋も無い言い方をすれば将来の収入を先食いしているという話ですから、それって国債発行に関して「次世代にツケ回しをするな」とか言って麻生さんの財政拡張路線にケチつける政治家さんが同じ口で政府紙幣とか言うのかねとか不思議な所ですなということで。正面切って国債発行で景気対策で良いじゃんと思いますけどね。
#そもそも政府紙幣が1回こっきりで終わる訳無くてその後打ち出の小槌の如く何十年も先のシニョレッジまで使うことになるでしょっていう話は昨日榊原元財務官がブルームバーグニュースのインタビューで指摘してた気がする。
○もっと前のネタですが野田審議委員の講演
2月26日の話で恐縮ですが(汗)
講演
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0902b.htm
会見
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0902e.pdf
内容的には金融政策の話よりも景気の話が多くて、ポイントとしては(銀行出身者らしく)欧米の金融問題に関して構造的な見地から論じている所でありまして、それは即ち現在の景気のゲロゲロさん状態が単なる循環的な回復では回復しきれないという厳しい見方に繋がるかと思います。
・欧米を中心とした金融商品不良債権問題
講演の最初(マクラを除く)が『それでは、まず今回の大不況の震源地である米国を中心に、海外経済からお話ししたいと思います。』となってまして、最初の小見出しが『(1)回復への重石となる「不均衡」の存在』というのが構造的な問題に関する指摘となっていますねという所です。従来の海外経済成長の逆回転がグローバルな不均衡の拡大の巻戻しによるという話をしていまして・・・・
『こうした不均衡は、グローバルな経常収支の不均衡の拡大によって支えられていたという側面があります。すなわち、かつて経常収支の赤字の積み上がりから1997年のアジア通貨危機を経験した東アジア諸国をはじめとする新興国は、その後経常収支を黒字化させ、外貨準備を積み上げてきました。この新興国やわが国の貯蓄余剰が米国の経常収支の赤字をファイナンスし、その過剰消費を支えてきたのです。このような不均衡が巨大化し、持続不可能な水準に至り、今まさに調整が進んでいるところであるという大きな流れを認識する必要があります。これは、米国経済をはじめとする世界経済の先行きを展望するうえでも重要です。』
ということで不均衡の内容ですが。
『グローバルな不均衡は様々な尺度によって測ることができますが、まず、米国の家計部門における金融負債残高を可処分所得対比でみると、住宅ローン借入れの急増を背景に、2000年前後から急速に上昇していることがわかります。次に、世界の銀行の対外債権残高の世界GDP比をみると、2002年頃から、国際資金取引および市場流動性が実体経済の拡大テンポに比べ大きく膨張していったことが読み取れます。また、米欧の住宅価格の推移をみると、(1)2007年頃までのグローバルな信用拡張期において大幅に上昇し、その上昇幅は1980年代後半の日本のバブル期の住宅地価の上昇幅よりも大きかったこと、(2)その後、下落したとはいえ、まだ下げ余地を大きく残している可能性が高いことがわかります。』
『今回の世界的な不況は、単なる景気循環ではなく、グローバルな構造調整として捉えておくことが適当と考えています。かつて日本の企業や金融機関は90年代にバランスシート調整を余儀なくされ、その克服に長期の時間を要しました。その経験を踏まえれば、様々な不均衡の調整の進み具合を確認することは、不況の長さや深さ、あるいは回復の時期を見極めるうえで重要と考えています。』
というのが基本認識でして、即ち景気の先行きに関しては構造問題になるのでまあ厳しい見方になりますわなというのが基本線です。
で、バランスシート問題をどうするかという話ですが、これは日本の例を引きながら説明してます。まあ当然ちゃあ当然のことを指摘していますが、念のため引用。
『1998年以降の邦銀に対する資本注入による金融システム安定化へのプロセス――私も当時その渦中に身を投じていましたが――を踏まえれば、米欧の金融機関におけるバランスシートの問題を根本的に解決するためには、(1)厳格な資産査定による損失額の把握や(2)不良債権の処理、という重要課題を克服し、そのうえで(3)明らかになった資本の不足を追加的調達により補填することがまずもって必要になります。その意味では、米政府が、不良資産買取りのための官民共同の投資ファンドの設立等の対策を盛り込んだ新たな金融安定化策7を今月10日に発表し、資産査定を厳格に行うことを含め、メニューを揃え、示したことは前進です。しかしながら、新たな官民投資ファンドというスキームの導入が不良債権の買取り価格をどう決めるのかという難問解決にどう繋がるのか不透明であり、具体策が示されるまでにはまだ時間がかかりそうです。また、買取金額の規模が、推計される不良債権規模に比して小さいといった厳しい評価や失望の声も聞かれています。』
ということで、講演では指摘してませんが、今の米国のお助けスキーム発動ってどうみても(3)から最初に入っているから兵力の逐次投入になっているので203高地絶賛銃剣突撃全部撃退され状態になっとるんでしょうというのも皆様既にご案内の通りですな。
『実効面の課題で特に重要なものは、不良資産買取り価格の決定方法ですが、価格が高ければ買取りを行う政府等の負担が大きくなる一方、価格が低ければ金融機関からの不良資産の分離が進まず、関係者が合意できる価格――公正価格――をみつけることは本来的に確かに容易ではありません。90年代の日本も、不良債権の分離――破綻金融機関以外からの買取り――は、この公正価格設定の困難さから実質的には捗々しくなかったことを思い起こす必要があります。』
だから毎年のように「不良債権処理は峠を越えた」と言いながら翌年になると同じような不良債権要処理額が出てくるという悲しい展開だったのですが。
『現在の米欧の金融機関の不良資産には、価格評価が困難とされる証券化商品が多く含まれているため、価格決定の実作業は90年代の日本よりも難易度が高いとも言えます。とはいえ、この点については、根拠法である「緊急経済安定化法」が成立した昨年10月当時からissueであっただけに、市場の失望は大きいものでした。これらの点を含む実効面の課題が今後どのように解決され、不良資産の処理がどのようなペースで進んでいくのか、引き続き注目してみていく必要があります。』
先行きは厳しいということですね、わかります。
・国内景気に関しても当然厳しい見方で
国内景気が悪化してますという話をしてまして、背景の説明と先行き見通しを。
『この悪化の主因は、先程ご説明したグローバルな構造調整を背景とした海外経済の減速です。わが国が目立って大きい景気後退を余儀なくされたのは、日本経済の2002年度以降の回復・拡大がグローバル需要の増加を背景とする輸出の伸びに大きく依存していたことにあります。2007年度までの間、輸出は約8割も増加し、その間の経済成長への累積寄与度は純輸出が個人消費や設備投資の増加を上回っています。』
『グローバル需要の増加に伴い、また円安環境という追い風を受けたことによって、輸出が大幅に増加し、それとともに、輸出型製造業を中心に設備投資も拡大し、それらが起点となった「好循環」が発生していましたが、グローバル需要の急減に伴い、こうした循環は突然大きく「逆回転」を始めたということであります。加えて、先程来触れているグローバルな不均衡の調整過程にあって、為替が大きく円高に振れたことも、海外の最終需要の落ち込みを増幅するかたちで、わが国の輸出にマイナスに作用していると考えられます。』
ということで構造問題が影響を与えるという話に加えまして・・・・
『昨秋以降は、後でも申し上げる企業金融の引き締まりも景気に悪影響を与えています。先行きについても、企業の収益や資金調達環境が悪化し、家計の雇用・所得環境も厳しさを増す下で、国内民間需要は更に弱まっていく可能性が高いうえ、海外経済の一段の減速を背景に、輸出は減少すると見込まれるため、当面、厳しさを増す可能性が高いとみています。』
という厳しい見方をしていまして、展望レポートの下方修正をした話の最後にこのように付け加えております。
『リスク・バランス・チャートをみると、2008〜2009年度の実質GDPの確率分布は中央値の左方向が膨らんでおり、政策委員が全体としてダウンサイド・リスクをより強く意識していることがわかります。現にこの中間評価から1か月余りしか経っていませんが、利用可能となったデータからは足もとまでさらに下振れて推移していると私は判断しています。』
と、更に悪化しているという見立て。
・何気にデフレ懸念???
その次に物価面の話をしているのですが、ちょっと気になる記述が。
『今後の物価について重要なことは、(1)このところの急速な需給バランスの悪化が、物価形成のダイナミクスにどの程度の影響を与えるか、(2)急速な物価下落が、物価上昇期には比較的しっかりとアンカーされていた中長期的なインフレ期待に対してどう作用するかを丹念に見極めていくことです。目先数四半期の物価関連指標から目が離せないと考えています。』
>急速な物価下落が(略)中長期的なインフレ期待に対してどう作用するか
>急速な物価下落が(略)中長期的なインフレ期待に対してどう作用するか
>急速な物価下落が(略)中長期的なインフレ期待に対してどう作用するか
これは・・・・デフレスパイラル懸念ですかねえ・・・・・
・金融政策に関して
金融政策に関する話はまあ基本的には皆さんと同じ話をしているので引用を手抜きしますけれども、最後の所では重要な指摘をしています。『企業金融円滑化と市場機能とのバランスの重要性』って所ね。
『以上ご説明したとおり、リーマン・ブラザーズの破綻後、矢継ぎ早に政策対応を決定し、実行しました。私が重視している点は、緩和的な金融環境を維持し、日本経済を下支えするために、最適の政策を選択することです。これまでお話した通り、中央銀行が個別金融市場に介入せざるを得ない局面ですが、その介入が強過ぎると、現在はそれなりに正常に機能している市場が、中央銀行の買入れ自体によって、その機能を低下させるという本末転倒な結果をもたらしかねません。』
そらそうです。
『その意味で、買入れの金額が大きいほど、また金利が低いほど、効果があるとは私は考えておりません。例えば、CPや社債の買入れでは、下限利回りを設定した入札方式を採用していますが、この下限利回りは、市場機能が著しく低下している状況では市場金利に比べ有利な一方、平常時に比べれば不利となるよう設定しています。これにより、市場機能が回復してくれば、入札が自然に減少していく仕組みとなっています。企業金融にかかるクレジット商品の買入れに当たっては、あくまでも市場機能の回復を目指しつつ、企業金融の円滑化という効果を最大限に引き出すとのコンセプトを私は強く意識しています。』
ということで札割れ上等なのですけれども、何か札割れすると悪みたいな話をする各位におかれましては何考えてるんだかという感はしますが。
記者会見では別の話ですが、「ターム物金利を政策の目標、ターゲットにするということの可能性、是非についてお聞きしたいと思います。」って質問がありまして、それに対する野田審議委員のお話を引用します。
『政策金利、誘導目標金利を何にするかということについて、基本的には大きく2つの要件が必要であると思っています。一つは、目標にする市場金利が、私どもの政策等を反映させられるものなのか、反映されるものとして存在しているかどうかということです。もう一つは、誘導目標金利とするからには誘導可能か、――表現が適切かどうかはわかりませんが――コントローラブルなものかどうか、という点であります。そうしてみると、少なくともこれまで私が考えてきたことによると、ターム物金利に働きかける必要性はあると認識しつつも、無担保コールレート・オーバーナイト物に代わるものがあるのかどうか、という点について自信は持てていません。』
ま、これもまたそらそうよという感じでして、目標とするのはいいけどコントローラブルじゃないものを目標にして良いのかという話ですわな。超時空要塞ヒデヨシじゃないのですからそう何でもかんでもコントロールできる訳では無いのでして・・・・・
#虫干し引用大会恐縮至極
2009/03/09
お題「短期国債利回りも低下/須田審議委員講演、シニョリッジの論点整理」
英国4大銀行のうち2行目も国有化ですか。マルクス大勝利(違)。
○金利低下が絶賛波及(ただし超短い所のみ)
金曜の短い所ですけどね、CPのレートとかも相変わらず「レートがついているものを潰しに行く」という動きになっているのですけれども、それはそれとして格付け的に考えるとそのレートは無いでしょというようなレートのつき方をしている新発モノとかが散見されます次第でして、何と申しますか「オペ対象になるかどうか」とか「買入(日銀とか政策投資銀行とか)対象になるかどうか」という観点でコモディティー化したような状態になっているモノと、普通に短期国債などと信用リスクを勘案した価格形成になっているモノとに分かれて来てるようでして、何と言うか以前の動きと全く様変わりでござるの巻にはその豹変振りに少々呆然。
とは言え、オペ自体は前からあった訳でして、ここへ来て急に勢い付いた買い買い祭りになっているのは、オペの進捗でモノが減って来たという事だけではなく、期末に向けた資金需要の関係もあって、「期末マジやべえっす」という認識の下にCP発行体さんなどが資金を予備的な部分も含めて確保に入り、一方で金融機関の方も資金の放出を抑制しという動きだったのですが、その資金調達も一巡して予備的に確保した資金が余って来た上に日銀の資金供給も潤沢になったので、金融機関の方も資金が余るという図になったという需給面がここへ来て一気に変化(イメージ的には今月の頭から)したという所かと。
まーそーゆーことで気が付けば短期市場に資金調達サイドが居なくなった位の勢いでして、昨日は短期国債の金利も低下して3か月もののカレントの引けが0.225%とかに低下(水曜の入札時点から4bp位低下)しとるのですが、0.225%も思いっきりビットサイドみたいでして、これはまたレートが低下しましたという感じです。TIBORもようやく低下気味みたいでして、とりあえず期末の資金需要大変だ大変だモードはとりあえず短期市場的にはどう見ても終了です本当にありがとうございました。
クレジット面に関しては次の決算発表祭り位にはちと冷静になってコモディティー状態な部分はちったあ是正されて然るべきかとは思うのですけれども(それこそ市場機能がうんたらかんたらでしょ^^)、まあ期末モードに関しては早くも終戦という所でそれはそれで結構なお話でもあるかと存じます。
○須田審議委員講演、シニョレッジの論点整理
野田審議委員の講演(おサボり中の奴)とか山口副総裁のブルームバーグ(ちなみに普通に発音するとブルンバーグなのですが、会社が自分で「ブルームバーグ」と言ってる以上それを尊重するのだ^^)単独インタビュー記事(えーっと今更追加で何やるのですか山口さん??)とかあるのですが、その辺はまたまた後回しにして。
ところで某公共放送が「日銀の社債買入効果は限定的」というニュースをやっててどこぞのアホウが浅ましさ爆発のクレクレコメントをしてましたけれども、開始して1回ぽっちしかも事務不慣れ状態の中でやった入札を見て対象範囲もっと拡大(しかもアホウのコメントは期間も延ばせ格付けも下げろとか浅ましさ大爆発でした)しろとか須田さんの反対理由がどう見ても大正解です本当にカムサハムニダという所ですが、山口さんの「期末に向けて更に企業金融対策」云々ってまさか早速対象範囲拡大とか考えてるのかね????という感じです。
#やる気満々なら兎も角、そうでないのなら市場を期待させて自分らが追い込まれるだけなんで言わずもがなだと思うけど・・・・・・
前置きの余計な話が長くなりましたが、須田審議委員講演の続き。
講演
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0903a.pdf
講演本文14ページ目の「金融政策とシニョレッジ」という辺りからです。
・シニョレッジの前に金融政策を巡る論点
思い切った手を打つのはいいけど、どんなことするのという論点に関する整理を最初に行っていますのでその辺から。
『ただ、思い切った対応と言っても、政策金利に低下余地が限られる中で、どのような選択肢があり得るのでしょうか。最近、欧米の中央銀行の間では、
@ 準備預金や貨幣供給量などの量的指標を政策目標にするのかしないのか、
A 資産サイドについては、機能不全に陥ったクレジット市場に介入して機能回復に働きかけるのか、あるいは長期国債など民間の資源配分に極力中立的な資産の購入に重きをおくのか、
B 異例の措置からの退出をどのように想定しておくのか、
といったことについて、積極的に議論が行われています。』(機種依存文字は原文ママ)
で、その論点に関して須田さんの説明です。論点の整理に便利なので引用。
『@の量的指標につきましては、適当な指標の選択が難しいことや、日本の経験等に照らして有効な政策となり得るのかという問題が指摘される一方、量的指標によるターゲットなしでは市場との対話が円滑にできないという、コミュニケーション上の問題も意識されています。』
確かにそうですな。
『Aにつきましては、クレジット商品の購入に軸足が置かれるもとで、購入資産の価格変動リスクやクレジットリスクに伴う損失発生問題をどうクリアしていくのか、個別市場への介入をどの程度許容するのかなどが、論点となっています。また、英国では、中銀マネー(銀行券および準備預金)を国債の購入によって供給することが検討されているほか(英国の中央銀行であるBOE
の金融政策委員会<MPC>の議事要旨<09 年2 月>)、米国では、1月27-28
日のFOMC で、ラッカー・リッチモンド連銀総裁が、民間のクレジットフローに歪みをもたらさず、悪いインセンティブ効果を最小化できる国債購入によりマネー供給量を拡大した方が、クレジット・プログラムより望ましいとして、現在の政策に反対票を投じています。』
英国はこの講演後にまあ予定通りの実施に。英国の場合はクレジット関連市場が米国のそれとは違うとか、CP買入プログラム(ただし政府のケツ持ちスキームつき)とかありますな。米国のラッカーリッチモンド連銀総裁の「長期国債の買入はマネタリーベース拡大だろうがゴルァ!」票決に関しては先般御紹介したとおりです。
『Bの出口戦略に関しましては、中銀関係者をはじめ、その重要性を指摘する声が少なくありません。出口戦略について早すぎる言及は、政策の効果を損ねる可能性もありますが、中央銀行としての考え方を明らかにしておくことは、信認の維持に繋がると思われます。上で紹介したBOEでも、2
月MPCの議事録をみると、国債管理政策に言及しており、出口戦略を意識していることを示唆しています。』
確かに出口出口言うのもどうかと思いますが、一度やると財政クレクレ状態になるのはまるでナントカ族議員に陳情するの図みたいな絵ですわな(苦笑)。でまあ金融政策が財政政策に踏み込むような図ですなあという話から、シニョレッジの話になるのです。
・シニョレッジに関して
講演本文16ページから。
『まず、シニョレッジを定義しておきます。概念上、通貨の発行額そのものをシニョレッジと捉える考え方と、発行した通貨から得られる収益をシニョレッジと捉える考え方の二つがあります。発行した通貨から得られる収益とは、通貨発行権に由来する収益であって、無利子の負債を負う形で通貨を発行し、その見合いに取得した金融資産から獲得する利益を意味します。』
『発行した通貨を運用することによって得られるシニョレッジは、幾つかの前提を置けば、先ほど申し上げた通貨の発行額そのものをシニョレッジと捉える場合と、結局は同じことになります。通貨発行の見合いで得た取得資産からは将来にわたって収益が期待でき、その収益の現在価値を同じ収益率を用いて割り引きますと1となります。このように将来までを展望すると、通貨発行益は発行額と同等とみることができます。つまり、一万円券を発行すればそれがそのまま発行益となるということです。』
ということで財政政策とシニョレッジの話になります。
『最初に全体像を把握するために、政府と中央銀行の二部門からなる統合政府があると仮定します。それぞれの部門は独立に政策を行います。財政政策は政府が掌っており、財政赤字は国債の発行によってファイナンスされます。中央銀行の目的は物価の安定であり、そのために中銀マネー(銀行券と準備預金)を供給しますが、それは国債買入か対民間信用を通じて行なわれます。』
『簡単化のために、さしあたり対民間信用は考えないとしますと、この二つの関係から、統合政府でみれば、財政赤字は民間保有の国債残高増加か中銀マネー残高の増加によってファイナンスされることがわかります。この関係式は常に成立しますので、実質化してこの関係式を将来にわたって積み上げると、
民間保有国債残高÷物価水準=財政余剰の割引現在価値(実質ベース)+中銀マネー残高の変化の割引現在価値(実質ベース)
と整理できます。すなわち、統合政府は、民間から借りたお金の返済を、財政の余剰か中銀マネーの供給という二つのルートを通じて行わなければなりません。その後者が、中銀マネーから得られる収益であるシニョレッジの割引現在価値(実質ベース)です。』
脚注に『@財政赤字=国債発行増と、A対政府信用増(国債買切りオペ)=中銀マネー増の2
式から、B財政余剰+民間保有国債増+中銀マネー増=0 の関係が導けます。』ってのがありますので念の為。
で、マネーを増やせばシニョレッジがどんどん増えるのかというと、ここで実質ベースのお話をしているので、話が実質ベースの話になっておりまして・・・・というのが微妙に読んでて何なのですが引用します。
『先ほど申し上げた恒等式からも明らかなように、シニョレッジは基本的に政府一般会計へ移転されますから、それが借金の返済の財源の一つになります。ただし、中銀マネーを増加させればさせるほど、実質ベースでみたシニョレッジが増加するわけではないことに注意が必要です。(中略)ここからは、実質ベースのシニョレッジはある一定のインフレ率で最大となることが分かります。この理由は、中銀マネーの供給を増やしインフレ率を高めていけば、マネー1
単位の購買力、つまり実質ベースでみたシニョレッジが低下するからです。』
で、政府紙幣の話になるのですが、延々と引用しすぎたのでまた明日送りでどうもすいません。どうも論点が色々あって長いですな(^^)。
2009/03/06
お題「市場雑談が続く/須田審議委員講演と会見から」
急騰したり急落したり忙しいのう忙しいのう。
○色々と金利低下が波及とな(短い所に限る)
昨日もまたまたCP金利低下。と言ってもまあさすがに短期国債よりも低くなっているのはこれ以上低下するのも余地があまり無いですけど、レートがそれなりについているものを潰しに行く格好が続いているの巻。ただし銘柄によっては全然潰れに行かないものもある所が泣けるのですがね(汗)。
まあCPレート低下の背景はCP買入に現先に企業特オペという3発攻撃が効いているという所でしょうが、これらの施策を打ち込んだ当初には無かった動きとしてはCP回りの資金の出が良くなったというところで、これはオペ効果がやっと効いて来たという所に、大手銀行の資本増強策が効いて資本制約が軽くなったとかいうのもあるのかしら(後者は勝手な妄想)とか思ってますです、はい。
また、最近の「安定的な」厚めの資金供給オペも効果出てる感じでして、GCレポ市場への資金の出し手の大手銀行さんがここもと恒常的に資金絶賛出し方向となっていましてGCレポレートがこれまた安定的に低下して0.10とか11とか12とか素敵なレートで推移しているようで、これまたレート低下というか低位安定要因で、オペの金利は低めだわ、末初の共通担保(何でまたこんな早い時期に全店共担??という感じですが)オペの金利は0.260%(平均、足きりは0.25%)とこれまたちゃっかり低めの水準だわと、まあこちらも1月後半から実施している「やればできる子な厚め資金供給」姿勢が安定的だという認識が漸く共有された効果が出ているというもんでしょう。
ま、そんなこんなで、各種(というか企業金融関連)資金供給策と、潤沢な資金供給がここへ来て効果を発揮という事でよろしいのではないかと思います。
・・・・一方で短期国債が何か置いてけぼりっぽい感じで、一昨日は3か月TBが0.27%近くと官民逆転レートという寂しい状況でありまして、昨日は昨日で6か月TBも入札時点では平均0.27%の足きり0.274%という感じでしたが、さすがにオペ金利の低下とか見て反応してきたのか短い所からレートが低下してきた感じでして、昨日は前日の新発3か月TBが0.25%に低下(1.5毛強い)となっておりまして、この動きが継続して短国利回りが低下するのかはよーわからんざますが・・・何せ発行多いですから。
以上ただのメモでした。以下昨日の続き。
○須田審議委員講演と会見から(やはり終わらないのでなお後日に続く)
講演
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0903a.pdf
会見
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0903a.pdf
・社債買入に関する論点
講演本文の11ページあたりから社債買入に関する話があるのですが、最初の部分は以前日銀が公表した「基本的な考え方」の説明でして、まあその論点も重要なのですが引用すると長くなるのでスルーして本文12ページ目あたりから。
『このように、日本銀行では、買入れに対する基本的な考え方や留意点を明らかにしています。ただし、購入に踏み切る・踏み切らないに関する明確な基準を設けているわけではありません。設けられないと言った方が正しいかもしれません。そのため、市場の求めに応じて購入額が膨らんでしまう危険性を孕んでいます。また、スタンフォード大学のテイラー教授が、monetary
policyとindustrial policyを掛け合わせて“mondustrial policy”と揶揄し、懸念しているように、中央銀行が個別の市場に介入しすぎると、経済の資源配分を歪めてしまうことにも繋がりかねません。したがって、特に、入口と出口の運用が重要になります。』
それは仰る通りです。
『入口については、上で指摘しました必要性の条件、すなわち、市場機能の著しい低下が発生し、企業金融全体の逼迫に繋がっていないか、日本銀行の使命に照らし買入れが必要と認められるかについて、慎重に検討するということです。一旦買入れに踏み切りますと、どこまでなら買入れ対象として認められるのか等、線引きが困難な中で、対象範囲が拡大していく誘引が働くことに十分留意する必要があります。』
社債買入に関する市場(全員ではありませんので念の為^^)のクレクレ攻撃がまさにそれを具現化したものでありますな(滝汗)。
『一方、出口につきましては、実施期限を設定するとか、市場機能が著しい低下と言えなくなった際に、市場に混乱を引き起こさずスムースに退出できる工夫などが必要です。また、それを事前にアナウンスしておくことも重要だと考えます。』
この点で言えば落札レートの下限金利が存在しているのが一つの工夫かと思います。まあ中々現下の経済状況で出口というのも難しい面がありますが。
・で、社債買入に反対した理由
『さて、日本銀行では、CP 買入れと社債買入れオペを順次導入しましたが、私はCP
買入れオペには賛成しましたが、社債買入れオペに関しては反対票を投じました。以下ではその理由について簡単に整理しておきたいと思います。』
『まず、CP 買入れオペにつきましては、
@ カウンターパーティ・リスクが過度に意識され、企業の運転資金の調達手段として定着していたCP
市場の機能が、極端に低下していたこと、
A 同じく市場機能が低下していた社債の代替手段としての起債ニーズが高まっていたこと、
等から買入れ実施の必要性を満たしており、導入しない場合のリスクの方が高いと判断し、賛成致しました。』
(機種依存文字は原文ママで勘弁)
『一方、社債買入れオペの導入に対しては、以下の理由により、反対しました。
@ 社債の発行額をやや長い時系列でみると、足もとが過去と比較して特に極端に減っているわけではないこと。
A CP や貸出による代替もあり、社債市場の機能低下が企業金融全体を逼迫させるような状況には至っていないこと。
B 日本銀行では、企業金融支援特別オペやCP 買入れなど、既に十分な措置を講じていること。
C 残存1年以内の社債買入れでは、企業金融の円滑化に与える効果が限定的と言わざるを得ないこと。
すなわち、現在の社債市場につきましては、買入れ実施の必要性を満たしているとは言えないというのが、現時点での私の判断です。』
まあ社債買入時期尚早と申し上げていましたあたくしの見立てと3番目までは変わりませんですな。4番目はあたくしは「そもそも論として社債市場はCP市場と成り立ちが全然違うので、業者の社債(あれ報道でなんで「銀行が保有する社債を買入」とかミスリードするのかねと思うのだがそれは兎も角)を買入する効果はCP買入とは全然違うのでコストと効果を天秤に掛けたときに全然間尺に合わない(からやらない方が良い)という主張が基本ですけどね。
会見でも同じ説明をしています(会見要旨の3ページ目)が、繰り返しになるので引用は致しません。
・シニョリッジ関連(後日に続きますが)
えーっと、本当はこの次はシニョリッジの説明部分とそれに関連する会見での質疑応答の話が論点整理に役立つのでご紹介する所なのですが、今日もまた時間切れになってしまいやがりまして(ええすいません寒いと寝起きが悪いもんで^^)、会見の方からの引用を先に致しとう存じます。
こんな質問から話が始まってますが。
『(問) 2点お伺いします。(前半割愛)もう1つは、委員が社債の買入れに反対したことに象徴的に表れているように、委員は企業金融については保守的というか非常に慎重な姿勢をとっていると思います。そうした中で、「通常の政策ルールを逸脱するほどの思い切った政策」とは、民間のリスク資産を買い取ることでないとすれば、国債について思い切ったことをやるということでしょうか。挨拶要旨にある「中央銀行の強い意思」が市場に十分に伝わっているとも思えませんので、もう少し踏み込んでお話頂けないでしょうか。』
『(答)(前半割愛) 2つ目の「思い切った政策」については、今回、シニョレッジ、つまり通貨発行益の立場から説明しています。基本的な考え方は懇談会の挨拶要旨の最後の方に述べていますが、日本銀行は独立性を付与された中央銀行として、しっかり中銀マネーを長期的にコントロールしていくことが、物価安定の下での持続的な成長に資するために重要ということです。しかしながら、その中銀マネーを供給することから得られるシニョレッジをどのように活用していくかについては、政府と中央銀行の間で議論を深めていく必要があると思います。もちろん、「思い切った政策」というのは、その時の経済状況や物価状況、金融資本市場状況にもよりますから、今、決めつけるわけにはいきませんが、私自身がこれから先どのような政策を行うべきか考える際、シニョレッジを政府と中央銀行とでどのように国民のために活用していけばよいのかということの方向性がみえてこないと、日本銀行独自で思い切った政策を行うということは困難ではないかと判断しています。』
・・・・ということは、その辺に関してはやはり国民的な合意が必要だという話で日銀が独走する訳には行かないでしょという見解なのかなと思ったら次に微妙にアレな質問が。
『(問) 政府と日本銀行の間でシニョレッジをどう活用するかを議論するという点ですが、もう少し噛み砕いて言うと、日銀がリスク資産を購入して損失が出た場合に、政府が補償するあるいは補填するということをおっしゃっているのでしょうか。』
・・・・・?????
『(答) それは違います。シニョレッジはもともと国民のものであり、日本銀行自身がシニョレッジを使ってしまう、つまり、価格変動リスクあるいはクレジットリスクがあるものを保有することで先行きロスの可能性を秘めた政策を採ることは、本来、国民に帰属すべき納付金が減ってしまう可能性があることになります。』
ということでその先が本論であたくしもまあ似たようなこと考えてましたので敢えて段落を分けてご紹介してみましょう。
『民主主義社会の中にあって、日本銀行が独自にそうした政策を採用していいのかという思いがあります。政府の補償云々ではなくて、日本銀行がマネーを発行して獲得した資産の収益を、どの程度日本銀行が独自の判断で使って良いかということに関して、ある程度、国民間の合意が必要だということが私の基本的な考え方です。』
ということですよね。
・やるときはやる派
思い切った施策云々の流れで次にこんな質問が。
『(問) 今後の金融政策について、ゼロ金利政策や量的緩和政策の導入も視野に入っているのでしょうか。今日の懇談会の挨拶要旨の中でも、海外では量的緩和についての色々な議論がなされているとありますが、国内でも再び導入するということに関しての考えをお聞かせください。』
『(答) 本日の懇談会で海外の金融政策の話をしましたが、ゼロ金利政策や量的緩和政策といった政策については、その効果と副作用をしっかりと勘案しながら、その時々の経済情勢次第では採用するといったことも否定はできないと考えています。(途中割愛)現時点では、そうした政策が必要とは判断していませんが、先行きについては、経済状況次第といえますので、何とも言えません。』
『(問) ゼロ金利政策や量的緩和政策を採用することが否定できないというのは、日本についてもという理解でよいですか。』
『(答) 日本と海外とでは金融経済状況が異なるので何とも言えないということです。現時点ではそうした政策による効果があるとは思っていませんので、今の状況ではそうした政策の採用は私の頭の中にはありません。しかしながら、先行きについては、そのときの金融経済情勢がどのような状況になっているのかわかりません。このため、先行きの政策について、何事も排除するということは望ましくないことから、はっきりとは言えないというお答えしかできないと思います。』
『(問) 先程のお答えは、量的緩和政策についてということでしょうか。』
『(答) 量的緩和政策もゼロ金利政策もということです。(以下割愛というか続く)』
とは言ってますけど、こういう言及も同じ答えの中で来てますのでまあ全面的にやる気満々なのでもなさそうですけどね。
『また、FRBはゼロ金利政策と言われ、日本はそうではないと言われますが、今日の懇談会の挨拶要旨でもお示ししたように、現在、政策金利が最も低いのは日本です。そうした状況下でさらに政策金利を引き下げていくことは、政策の効果と副作用を考えたときに副作用の方が大きいと判断しています。いずれにしても、現時点ではそうした政策は選択の範囲にありません。』
まあ基本的に「やるなら効果があるように」というのが須田さんの基本的な考え方としてあるように見えます。やった振りしたナンチャッテ政策とかハッタリかましてやるやる詐欺みたいな政策は好まないという所なんでしょうね。
2009/03/05
お題「市場雑談/須田審議委員講演の予告メモ(汗)」
中川昭一先生に続いて小沢一郎先生が身を捨ててドル円を二人で10円ほど持って行かれました。1銭も使わずにこのパワーはまさに壮烈な殉国の義挙(大嘘^^)。
○社債買入オペが札割れした件について
昨日は社債買入オペが実施されました。1500億円の買入予定に対しまして応札が449億円に留まりまして、平均落札利回り較差は0.760%でしたが、札割れだけに較差0.000%まで落札となりまして、0.000の札入れた人ウハウハの巻(なのかな??)という感じですか。
そもそも論として、買入対象になる&買入レートの下限以上の流通利回りとなっている銘柄で業者の在庫を全部総ざらえしても1500億円とかあるとは到底思えませんので、初回入札で事務面の対応どうするのかとか考えると投資家からの持込もそんなに無かっただろうなあとか勘案すると札割れするんでしょうねという予想でしたので、結果出たときには「ああやっぱり」という感じだったようですな。
今回の結果から逆算すると、「月に1回1500億円」というよりは「500億円を月3回」とか「750億円を月2回」とかにした方が良い(入れるほうにしても頻度が大目の方が多分やりやすいと思うのだが)ような気もしてきましたが、何せ初回で手探りの所もありますので、はてさてどうしたもんかという所でしょうか。
あと、投資家の札入れさせたければ(ただし投資家が札入れて玉外しても同じものを買いに行くとは到底思えんですが・・・・)オファーから受渡までの日数をもうちょっと長くする(T+5とかT+6とか)という日銀様の考える決済期間短縮に逆行する方法も手かも知れませんな。
ま、このオペ自体はCP買入と同様にセーフティーネットなモノでありますので、札割れをしたのが悪いとか言うのは話の筋がおかしく、本来これが使われなくても社債市場がちゃんとワークしているのが望ましいというのであります。「札割れするから社債買入の対象を拡大しろ」とかいうのは政策の意義を考えていない本末転倒議論というかただのクレクレ発言でありまして、もう何と申しますか浅ましい話で。
ええまあそりゃ自分の所にのみ国家様から利益便益が供与されるのはウハウハなお話ですけれども、そーゆーのを臆面も無く言って(個人的な場で個人的に発言をするなら兎も角、会社の名前で堂々リサーチレポートとか出てくると・・・・)全然浅ましいとか思わないという根性は残念ながらあたくし持ち合わせておりませんのが実に残念な所であります(苦笑)。
ま、実施面での工夫の余地はあるんじゃねえのという所ですが。
○CPレートが相変わらず官民逆転モード
昨日は3か月TB(従来のTBがまだ残っているのでTDBとか言うらしいのですが、口に出して言いにくいし、そもそもTDBって言えば帝国データバンクさんですし、まあTBで通します)の入札が実施されました。
・・・えーっと、結果は平均落札でほぼ0.27%(ちょっと割れていました。ちなみに引けは0.265%)ということで、先週の入札とほぼ同水準でしたが、その一方で昨日発行されたCPレートも低下傾向継続という感じで、ついこの前まで0.80%レベル(期越え3か月物)で推移していた大手その他金融系さんのレートが堂々0.5%台とか連日の低下なのですが、長期でAA格レベルの大手メーカーさんの発行する銘柄の3か月ものが0.25%そこそこのレベルとかになってまして、短期国債並びだったり短期国債よりレートが低かったりという有様もまた継続。
というか、何かここ数日の動きは「勢いづいた買い」という感じでありまして、そりゃまあ企業特オペでファンディングコストが違うというのはあります(昨日申し上げた通り)からそのファンディングの差異だけ見ればレートがそうなっても良いのかもしれませんが、ファンディングコストが同じ人(つまり普通に運用資産として買う人)からすれば、絶対水準の比較で信用コストや流動性リスクを勘案して比較する話になりますので、こりゃまあCPよりはTBの方が良いですわということになるんでしょうな、と思います。
何かね、企業の信用リスク状況が先の量的緩和時代じゃないのですからそこまでやらかすのもちょっとねえというか、その前に全然買って無かったのはナンナノヨ(資本制約が軽くなったとかいう要因があるんじゃないかってのは何となく判るけどねえ・・・・)という感じでもあります。まあ金利が低下してるのは低下してるのですから、この低下というのが短期金利全般に波及すると良いですね(棒読み)という感じではありますが・・・・・・・
と、ここまで書いたら結構な時間になったので須田さんの講演は引用予定箇所のご紹介というワケワカラン攻撃で勘弁。
○須田審議委員のやたら長い講演(予告編^^)
須田審議委員の講演、PDF見たらやたらメモリがあるので、図表の山かと思ったら何と講演本文が23ページもあるという代物。久々なのは判りますがちょっと多過ぎですがな(^^)。
でまあ本当は今日延々と引用する積りだった講演のどの辺読みましょかという話で勘弁。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0903a.pdf
前半には景気見通しの話もありまして、まあ暗い見通しなのですけど、リスク要因のあたり(本文8ページ)はよく見ておくという感じですな。
で、今回読んでてほほーというのは当然ながら金融政策に関する部分でありまして、社債買い入れに関する話とか、リスク資産買い入れに関する話の部分と、シニョレッジに関する話の部分が今回の読みどころではないかと思われます。
ということで読むのは本文11ページというか12ページから13ページ(社債買い入れおよびリスク資産買い入れに関する話)と、本文16ページから20ページのシニョレッジに関する話の部分になるかと思います。で、社債買い入れに反対した理由も書いてありますので読んでみる(というか明日ご紹介しますが)と吉かと存じます。講演や会見ヘッドラインだけ見てると須田さんあまり積極派に見えないかもしれないですけど、よくよく見ると結構積極派というか「やるとなったらやる派」という感じかと思います。
本文14ページにこんな件があるのもそういう所かなという感じで。
『先ほど、経済・物価情勢の先行きに対する下振れリスクについて述べましたが、ある程度そうしたリスクが顕在化すれば、機動的で柔軟な対応を採ることも必要です。その際、不確実性が高いもとでは、「いざとなれば、通常の政策ルールを逸脱するほどの思い切った策を打つ」という中央銀行の強い意思を表明しておき、そのことについて市場の信頼を得ておくことが、社会的な調整コストを結果的に少なくするという観点から重要です。つまり機動的と言いながらも、ある程度リスクが顕在化するのを確認しながら、対応するときは思い切って対応するということです。』
やるときはやりますよ派ですな(^^)。以下明日に続くという事で勘弁。
2009/03/04
お題「虫干しネタが残ってますがその他の市場関連メモ」
虫干しネタを片付ける前に今日は須田さんの講演でしたっけ(汗)。
○CPレートが低下してる件に関して
昨日もまたまたCPレート低下したみたいでございますな。で、そのレート低下なんですが、さすがに0.2%だのなんだのというようなモノは低下の限界みたいなところに接近してますが、それよりも従来やや高止まりしていて、まあ恐らく日銀のCP買入の限度まで買入が来ているような銘柄さんのところでの低下という感じ。あたくしがおサボリする前に0.8%とかの水準だったネームの所で月曜には0.6%台前半とかだったのですが、昨日は堂々0.6%割れというような感じになっているようで、まあいい感じで低下しています。
・・・・まあ高格付け銘柄群のレートが低下してそれが全体に波及しているっていうのは判るのですが、一方で先週来の金利低下では、それまで「やや長めになって次の決算開示を跨ぎそうな期間になるとレートが微妙に上昇する」というような実に微妙な(苦笑)レート形成がされつつあった絶賛業績悪化中の高格付け銘柄群のレート形成から、その信用プレミアムのタームストラクチャーが潰れている感も無きにしも有らずのような気が(もうちょっとマジメに見ないといけないのですが、おサボリ後のお仕事フォローで全部の相場チェックまで手が回らないという本末転倒にも程がある今日この頃なもんで、汗)するのれす。
CPに関しては買入に加えて企業金融特別オペで年末までは0.10%のファンディングの催行確約(って旅行じゃないって)されておりますので、そこに目をつけてしまえばまあ確かにタームストラクチャーなんぞ知らんがなという意見も有りっちゃあ有りなのですけれども、一方で現実問題として企業の信用リスクそれ自体は業績がこの有様で経済状況がこの有様なので悪化傾向である事は否めないと思うんですよね。その点を考えると信用コストのタームストラクチャーまで潰しに行くような動きが出てくるのは企業金融特別オペの効果とは言え、ちと効果出過ぎで白川総裁お得意の「市場機能」的に言えば「市場の価格発見機能を阻害」っていう方向に出ている可能性も無きにしも非ずという仮説をちょっと置いて市場動向を見ようかなと思いましたです、はい。
とは言いましても、現在の外部環境および市場状況で何の支えも無く市場の価格発見機能をフルに発揮されますと発見せんでもええモノを発見しまして録でも無いことになりますので(^^)、これはこれでそーゆーもんなのかもしれませんね。ま、結論は企業金融特別オペレーションおそロシアという所でしょうか(^^)。
なお、念の為申し上げますが、おサボリしてひょいと戻ってきてこの2日の動きを見て脊髄反応で申し上げている面がございますので、全然この辺りの認識勘違いしてるかもしれませんからその辺はお含み置き願いたく存じます。まあ市場の現象の背景事情を理解するための思考実験の一つの仮置き説のスタートとして考えて頂ければ幸いでございます。
○日銀保有国債に関して
毎度お馴染みのこれ
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0902.htm
例によってあたくしの手元でエクセルとか使ってちょこちょこ集計したベースなので違ってたらごみんなさいごみんなさいなのですが、一応結果に関して・・・・と申しましてもゾーニング効果で1年以内が4607億円増えてるとか変動利付が1001億円増えてるとか当たり前の結果が出ておりまして、それはまあどうでも良いのですけど、今回は残存1年以上2年以内の債券に関して見ますと・・・・・
あたくしの集計ベースですと1年〜2年のところで前月比の残高が5922億円増加となってまして、輪番ゾーニングしたのでちったあマシになったとは言え、やはり10年ゾーンあたりまでの部分では相対的に短い所が打ち込まれる傾向はカワランチ会長というのはシャーナイナイな所なのでしょう。
それでもまあ1年以内がバカスカ打ち込まれる状態と比較すれば随分マシになったという所で、今後日銀の保有国債が買っても買っても全然増えないというお洒落な状況が徐々に緩和されるものと思われます。
○日銀受入担保残高に関してメモ
今回はこれもちょっと見るのである。
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/col/col0902.pdf
細かい項目が沢山あるのですが、政策目的という点で言えばやはり企業向けの証書貸付債権あたりを見るのが吉かと存じましてその数値を1月の数値と比較してみた。
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/col/col0901.pdf
・・・・・ほほう。額面ベースでこの1か月で1兆5千億円(残存残高ベースでは1兆3千億円弱)増えているとな。企業金融支援特別オペレーションがワークしているちゅう事なのでしょうか。というかここだけで額面ベースで3兆3千億円集まるとは当初想像以上であって誠に結構なお話。最初の時点で見込み強気過ぎじゃないのとか悪態ついてどうもすいませんでした。
短期社債(電子CP)も増えてます(残高の額面で2月末で2兆1千億円)し、企業支援特別オペレーション改めておそロシア。
2009/03/03
お題「虫干しネタと市場雑談」
米国市場がようやく盛り上がって参りました!!
#未集金(勝手に変換された^^)元FRB理事がお友達さんを支援でもしたいのか吼えているようですが、「とりあえずお前が言うな」以外の感想はございま千円。
モーサテ(というか日本メディア)って何でこう米国の話ばかりなのよと思いますが、欧州の方がいい感じで引火してる筈なのだが・・・
○市場雑談から
昨日はCP買入ついに札割れでござるの巻。しかも昨日は応札が967億円ということで買入予定の3000億円に全然届かないですという華麗な結果となりましたので、1か月もので0.30%で1か月越えもので0.40%での買入と相成りました。いやはや素敵な状況。
そもそもあたくしがおサボリしている前回の買入時点でまあ見事な展開になっておりまして、先週木曜のCP買入で3925億円の応札だわ落札最低較差が0.001%までぶち流れるわという結果になっておりましたわな。現象面としてはCPレート低下の方が先なのでしょうが、まあ相乗効果で先週一気にCPのレートが楽しく低下して、特に高い格付けの銘柄は軒並み日銀の買入レート以下の水準に下がってしまい、電力会社さんあたりの発行するCPは短国利回りを下回るという華麗な展開になって「官民逆転」などといわれる始末。
まあそりゃ最悪でも日銀の買入に打ち込めば投げられる(ただし一杯になった銘柄は入れられませんが)というは安心はあるわ、企業特別オペで0.10%でファンディングがつくという保証はあるわという事で官民逆転しても別におかしくは無いのですが、それにしても一気に低下したもんで。厚めの資金供給とかも効いているんじゃないのかなあとか色々と思うのですが、まだおサボリ時期の動きがイマイチ良く判っていないのでその辺はオミット。
まーそんな次第でCP買入が札割れとなったのですが、これはこれで市場の金利に低下効果(どう見ても買入限度を超えたと思われる銘柄であってもレートの方は他に引っ張られて華麗に低下しています)はあるわ、下支え効果はあるわというのが出て、市場が回復した(というか回復しすぎのような気もしますが・・・・・^^)という結果でありますので、政策効果が出て大変に結構だったと思います。
そのうち入れていた銘柄の期日が来ればまた買入余地の出る銘柄も出てくるので、期末越えで継続になった分に関してはまた札も入って来るでしょうし、今度は初回の出来上がり1%などというようなレートよりは下がるんじゃねえのとも思えます(実は違ったらそれはそれで笑えますが)ので、その点でもまあ効果継続ちゅうところでしょう。
これで「札割れになったことでもあるのでもっと買入範囲を拡大しろ」とかいうのは話としては短絡的というか筋の悪い話で、予算達成じゃないのですから、こーゆーセーフティーネットは使われないのに政策効果が発揮される(今回だったらCP市場の活性化)のが一番良い話なのでありまして、「札割れで誠に結構」という話だと思います。
まあ話は脱線しますが、「日銀はBBB以下も買え」とか「何でもかんでも買え」とかやたらクレクレ発言というかポジショントークをする市場関係者も多いのですが、そーゆー人たちは当然ながら「利益誘導政治反対」とか「無駄な道路は作るな」みたいな事は恥ずかしくて言わないですよね♪
ところで、昨日は無担保コール翌日物の加重平均が0.10%割っていたのですけれども、よくよく見たらスポットベースで月末月初の所を抜けてから急にスポットベースの国債買現先を増額するという訳の判らんプレーをやっているんですね。最近のデジタルというか機械的にしか資金の出し入れをしてこない市場の大口参加者動向を鑑みれば、月末の末初をレートが上昇しても延々と出し渋った挙句に、スポ末越えたらレートが下がっても急に資金が出てくるのとか簡単に予想つくと思うので、そんなに下げたいのならもっと前に買現先増額してスポ末抜けたら元に戻すんじゃねえのと思うのですが・・・・なんかワケワカラン。
#最後のはわかる人にわかってもらえればの独り言です
○2月金融経済月報
虫干しネタシリーズ。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0902.pdf(2月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0901.pdf(1月)
例によって概要の比較なのですけれども、今回はあまり変わらなかったりするのですよね。
・現状判断部分
『わが国の景気は大幅に悪化している。』
という総括判断は変化なしでして、各項目別展開を見ますと・・・・
『輸出は大幅に減少している。企業収益の悪化幅は拡大しており、設備投資も大幅に減少している。個人消費は、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、弱まっている。また、住宅投資を新設住宅着工戸数でみると、再び減少している。この間、公共投資は低調に推移している。以上のような内外需要を反映し、生産の減少幅はさらに拡大している。』(2月)
『輸出は大幅に減少している。企業収益は悪化を続けており、設備投資も大幅に減少している。個人消費は、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、弱まっている。また、住宅投資を新設住宅着工戸数でみると、再び減少している。この間、公共投資は低調に推移している。以上のような内外需要を反映し、生産の減少幅はさらに拡大している。』(1月)
ということで、企業収益の部分が「悪化幅は拡大」と更に判断を下げた以外は1月のゲロゲロ判断を維持しているということで更にゲロゲロに。
・先行き判断部分
『景気は、当面、悪化を続ける可能性が高い。』
これまた変化なしで、各項目別展開はこうなっています。
『すなわち、輸出は、海外経済の減速や為替円高を背景に、減少を続けるとみられる。国内民間需要も、企業の収益や資金調達環境が悪化し、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、さらに弱まっていく可能性が高い。この間、公共投資は低調に推移すると考えられる。以上の需要動向と在庫調整圧力の高まりを背景に、生産は減少を続けるとみられる。』
で、1月の引用が無いのは何でかと申しますと、これがまた華麗に全部同じなのでありまして、引用すると同じ文章を並べるだけなので割愛しました。ということで先行き見通しも暗いままということで。
・物価に関して
『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落を主因に、3か月前比でみて大幅に下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きなどを反映して、プラス幅がゼロ%近くまで縮小している。』
これは現状判断部分ですが、これは1月対比で見れば「プラス幅がゼロ%近くまで縮小している」ってところが変わっているのですが、まあこれは現象面の話なのであまり気にしないでよい話。
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落や製品需給の緩和などを背景に、当面、下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きに加え、経済全体の需給バランスの悪化などを背景に、マイナスになっていくと予想される。』
需給バランスの悪化に関する記述は変化なしです。1月対比での変化は「さらに低下し」の文言が消えたことですので、まあマイナスになってもドンドンマイナスが拡大してデフレスパイラルになるという話ではないですよという事を言いたいんだと思います。細かい話ですけどね。
・金融面
『金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は、0.1%前後で推移している。もっとも、国債レポ市場金利は振れやすい動きとなっているほか、ターム物の銀行間金利は高止まりを続けている。この間、円の対ドル相場および株価は前月と比べ下落しているが、長期国債金利は前月と概ね同じ水準となっている。』(2月)
『金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は、日本銀行による誘導目標の変更以降、0.1%前後で推移している。こうした政策金利の引き下げや年末資金需要の一服もあって、国債レポ市場金利は低下しているほか、各種の政策対応を背景に、高騰していたCP金利も年末以降幾分低下した。もっとも、ターム物の銀行間金利は高止まりを続けている。この間、株価は前月と比べ下落しているが、円の対ドル相場および長期国債金利は前月と概ね同じ水準となっている。』(1月)
まあ正直レポが振れやすいのはオペがアレだったのが原因で、ちゃんと厚めの資金供給を当座預金付利を背景に行えばレポ金利は落ち着いて来ると思うのですけれど。
『わが国の金融環境は、厳しい状態が続いている。』(2月)
『わが国の金融環境は、厳しさが増している。』(1月)
厳しさの悪化は止まりましたと。
『コールレートはきわめて低い水準にあるが、大幅に悪化している実体経済活動との比較でみると、緩和度合いは低下している。信用スプレッドは多くの先で拡がった状態が続いているものの、政策金利の引き下げなどから、資金調達コストは昨年末頃に比べれば低下しているものとみられる。』
『企業の資金調達動向をみると、各種の政策対応もあって、CP発行には一部に改善の動きがみられるうえ、銀行貸出は大企業向けを中心に高い伸びを続けている。しかし、そうしたもとでも、下位格付先のCP・社債発行は前年割れを続けているほか、中小企業を中心に資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先が増加している。この間、マネーストックは、前年比2%程度で推移している。』(2月)
長いので途中で段落わけしちゃいましたが、1月の当該部分はこんな感じ。
『コールレートはきわめて低い水準にあるが、大幅に悪化している実体経済活動との比較でみると、緩和度合いは低下している。企業の資金調達コストは、政策金利の引き下げなどから貸出金利は幾分低下したものの、CP・社債の信用スプレッドは拡大した状態が続いているため、全体としては、横ばい圏内で推移している。』
『CP・社債の発行残高は、投資家の選別姿勢が厳しい状態が続く中、前年水準を下回っている。銀行貸出は、企業の手許資金積み増しの動きの広がりやCP・社債発行からの振り替わりを受けて、大企業向けを中心に伸びを高めているものの、資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先が増えている。この間、マネーストックは、前年比2%程度で推移している。』(1月)
ということでして、CP市場の改善はされているものの、下位格付け企業や中小企業に関しては金融環境は厳しい状態が続いているという認識になっております。まあ銀行貸出が伸びている状況ではTIBORは下がらんわなという感じですよね。量的緩和時代みたいに企業の手元資金が豊富だったら別ですが、今は借入需要旺盛なので、むざむざ貸出基準金利のTIBORを下げわせんわなという所ですな。
ではでは♪
2009/03/02
お題「休み中のネタの上に引用大増量(当社比2倍)で恐縮ですが」
ども。ご無沙汰でございます(汗)。
ということで虫干し大会で総裁記者会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0902d.pdf
○現在の政策の宣伝コーナー
2番目の質疑(3ページ目)位からの政策の説明ですが、欧米の中銀と比較して別に日銀がやっていない訳では無いという話をしていて泣けます。欧州は兎も角として、米国に関しては正直よく言えば「見せ方が上手い」のですが、悪く言えば「今までのFRBの名声にタダ乗りしてる」ちゅう感じがするのでありまして(財政とのタイアップは良くやってると思いますが、それに関して「やれやれ」と言うだけで中々実質的に動かない(動けない)日本が米国と比較されるのはちょっと酷でねえかいなと思う)、まあここらで宣伝しないとちゅうのは判らんでもない。
『改めて整理してみますと、政策金利である無担保コールレート・オーバーナイト物については、昨年秋の0.5%から、現在は0.1%まで引き下げられています。この結果、よく「ゼロ金利」と形容されている米国でのオーバーナイト金利の水準は、現状0.2%程度ですが、日本のオーバーナイト金利は0.1%で推移しています。』
さよですな。
『それから、短期金利の中でターム物と呼ばれる少し長い期間の金利ですが、やや高止まりをみせているとはいえ、米欧に比べると十分低い水準です。ちなみに、いわゆるLIBOR
と呼ばれる市場金利の直近の水準をみると、円が0.63%、ドルが1.25%、ユーロが1.90%です。このように、まず短期金利の世界において日本銀行は非常に低い金利を実現しているということです。』
それはその通り。
『それから金融市場の安定と企業金融の円滑化を図るため、様々な措置を講じています。金融市場の安定に関しては、米ドル資金供給オペを各国と協調して実施しているほか、現在、欧州あるいは米国では実施していない長期国債の買入れオペも利用しながら、潤沢な資金供給を行っています。これは意外に認識されていない事実でありますが、FRBもECBも現在、長期国債買入れオペは行っていません。日本銀行は長期国債買入れオペを行っており、先般、この増額も図ったところです。』
ということで長期国債買入を行なっていることも宣伝してますが、まあこれはその通りなのですけれども諸刃の剣でもあります。と申しますのは、FRBの長期国債買入ってマネタリーベースの増大の為に実施するのではなく(ただしそういうロジックで実施すべしとリッチモンド連銀ラッカー総裁は票を入れたのですけど)、長期金利を下げて貸出金利関連のベースになるリスクフリーレートを下げて貸出市場の緩和を図るという(中銀が長期金利を直接操作しようとするというのはちょっと所では無く無理筋の香りがしますが・・・)ロジックになっているので、そーゆー意味では長期国債買入のロジックが違いまして、現象面だけを捉えて宣伝するのもどうかという気がします。
ま、これが(おサボり中の資料を読んでないのでアレですが)白川総裁における良い意味での福井俊彦的ハッタリのカマシの始まりならば良い話なのかもしれませんけど(^^)。
『また、企業金融の円滑化に関しては、企業金融支援特別オペ、さらにはCP買入れの実施など、中央銀行として異例の措置を含めて様々な対応を行ってきています。(中間割愛)、今述べたような日本銀行の対応や政府の施策等の効果もあって、例えばCP・社債のスプレッドは、リーマン・ブラザーズ破綻以前に比べると高いものの、米欧に比べると低くなっています。また米欧で伸び率が急速に低下している銀行貸出も、わが国では足許上昇しています。』
スプレッドの件はまあその通りかもしれませんけど、銀行貸出の上昇は直接金融市場の縮小によるものと売上減による所要運転資金需要の増加じゃねえのとか思うのですけれども、それも宣伝材料に使ってまして、まあ今回の会見要旨を見て最初に思ったのは先ほども申し上げましたような良い感じでのハッタリが効いているところでしょうか。
『このように、日本銀行は、政策金利の低下余地が限られる中で、金融面から実体経済を下支えしていくために、様々な工夫をしながら金融市場の安定確保と企業金融の円滑化に努めています。今後とも、わが国の経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰していくために、中央銀行として最大限の貢献を行っていくという気持ちで政策に臨んでいきたいと思っています。』
やる気が本当にあるのかは兎も角として、やる気ありそうな発言をしてるのは宜しいのではないかと思料。
○社債買入に関して
社債買入導入の背景や狙いについての質問から。
『最近の社債市場をみますと、信用スプレッドの拡大傾向が続いているほか、格付の低い銘柄の発行が困難な状態が続くなど、市場機能が著しく低下した状態にあります。こうした社債市場の機能不全は、企業金融全体の逼迫につながっていくと思っています。日本銀行ではこのような状況を改善するため、1月の金融政策決定会合において、残存期間1年以内の社債の買入れについて検討することにしましたが、本日、こうした検討の結果を踏まえ、来月上旬から買入れを開始することになりました。』
ほうほう。
『この日本銀行による社債の買入れは、証券会社や投資家による社債の売買を促進し、社債市場の機能改善を後押しする効果や、金融機関の貸出余力が拡大する効果を通じて、企業金融の円滑化に寄与すると考えています。』
さて本当にそうなりますかねえというと微妙な気が。まあ証券会社様におかれましては本制度導入の趣旨に鑑みまして、流通市場でのマーケットメーカーとしての役割を認識して動いて頂きたいものでありまして、何でもかんでも「えービットをこれから探して参りますので暫くお待ちください」というのはマーケットメーカーとは言わんでしょとやや悪態を(^^)。
○短国買入に関して
短期国債買入を増やすのかどうかという質問から。
『まず、短期国債の買入れ(国庫短期証券買入)についてですが、本日の発表文の2ページの第5パラグラフに「日本銀行は、昨年秋以降、政策金利の引き下げや積極的な流動性供給に加え」と書いてあるとおり、昨年秋以降、積極的な流動性供給を行っています。その際これまでの流動性供給手段の活用と併せて、金融市場の安定確保と企業金融の円滑化に努めていくという趣旨の文章があります。これは、短期国債の買入れを増額するということを決めたわけではなく、要は、短期国債の市場も含めて様々な短期金融市場の状況をみて、金融市場の安定を確保する上で必要な措置を講じていくということであります。』
・・・・要するに必要があれば増やすという事ですね、わかります(^^)。
というか、まあ先ほど引用した決意表明らしき部分も含めまして、今回の会見では何か従来よりはやる気感があるような物言いになっているなあという感じです。
○当座預金付利に関して
同じ質問で当座預金付利の継続をする理由に関して質問がありました。
『2つ目の当座預金の付利についてですが、(割愛)これは積極的な資金供給を行うための措置であります。仮に当座預金付利制度がないと、無担保コールレート・オーバーナイト物の金利がゼロに張付いてしまい、その結果、短期金融市場の機能が阻害されてしまいます。しかし、当座預金に付利されると、当座預金の金利を誘導目標金利に合わせつつ、積極的に流動性供給を行うことができるというメリットがあります。そういう意味で、現在の状況のもとでは、金融機関、市場参加者に積極的に流動性を供給するために、この制度があった方が望ましいわけです。』
ま、そういうオペをやりだしたのつい最近なんですけどね(爆)。
『売出手形との関係ですが、もちろん売出手形によって資金吸収はできますが、当座預金への付利で達成できることが売出手形ではできないという面もあります。(技術的な説明は以前も引用したので割愛)そのようなことを考えますと、売出手形は、これはこれで非常に便利な手段ですが、売出手形と当座預金付利制度を併せて使った方が良いということであります。ちなみに、欧州の中央銀行は、当座預金付利制度を持ち、併せて日本銀行でいうところの売出手形に近い制度を持っているなど、多くの中央銀行で両者を併用しているということであります。』
売出手形は基本的にまあ現状だとそんなに使わないんでしょ。とおサボリ中のオペ結果も確認しないで書いてしまうの巻。
○この質問は出ると思いました
よい質問ですので質問から引用。
『(問) これまでの数か月をみていると、例えば今回の社債について言えば、前回決定会合の時に社債の買切りについて検討しますよというアナウンスがあり、今回決定しました。このようにアナウンスがあってその後決定というプロセスが採られていたというのはマーケットとの対話という観点もあると思うのですが、今回は宿題めいたものが出ていないように見受けられます。これは緊急的にやらなければならないことは一応やり尽くしたということを意味するのか、それとも打つ手が無くなったということであるのか、その辺のところをお聞かせ下さい。』
『(答) 社債の買入れということは中央銀行として極めて異例の措置でありますので、そもそも社債の買入れを行うということについて色々な意味で実務的に詳しく知る必要があります。総論的に政策論を議論する時には詳しい実務的知識が無くても大丈夫ですが、実際にオペを行うということになると具体的な業務になってくるわけです。そのため、社債市場の細かな実務も含めて知る必要がありますし、市場参加者の意見も収集する必要があります。そうしたことから検討の時間を要したということです。』
ふーん。
『今回、検討の指示という形で出していないから、もう政策手段が尽きてこの後何も出てこないというわけではありません。いつも申し上げていますが、現在の厳しい経済・金融の情勢に照らして、中央銀行として何ができるのか、どのような政策対応が望ましいのか、これを常に考えております。』
ということでして、まあやる気はありそうな発言になっています。で、続いてこういう質疑が。
『(問) 政策の発表のやり方の転換を考えているとか、そういうこととは違うのですか。』
『(答) そういうこととは関係ありません。』
検討指示の後ひっくり返るという例も出しておいた方が今後の為には良いのではないかと思うのですけどね(苦笑)。
○社債買入に関して追加で質問が
社債買入に関する質問で、マーケットの要望の話が出てました。
『(問) 先ほど社債市場の現状についてお話がありましたが、マーケットでは、今回決められたA格よりもっと下のところを買って欲しいとか、残存年限についてもっと長いものも買って欲しいという声があります。(以下割愛)』
最近のマーケットはちょっとポジションが苦しくなると直ぐにあれを買えだのその発行を減らせだの文句垂れ小僧と化しておりまして中々大変ですなあという感じですが(--)。
『(答) 前回、CPの買入れも含めた企業金融にかかる金融商品の買入れについての基本的な考え方を公表致しました。(途中思いっきり割愛)一方、民間部門の個別先の信用リスクを直接負担することによって損失が発生する可能性がありますが、この損失発生の可能性は、格付、信用度を下げるほど、また期間を長くするほど大きくなっていくという関係にあります。中央銀行が損失を被った時に、すなわち損失を計上した時に、第一義的には中央銀行の財務基盤に影響するわけですが、それと同時に中央銀行に対する広い意味での国民の信認にも影響することになります。(以下割愛)』
という話をしているのですが、実際問題というか実務上の問題として、CP市場と社債市場では引受ディーラーあるいは引受業者の市場における位置づけが全然違う(従ってCP買入で現れたような素晴らしい効果が社債買入で出るとは到底思えなないですから、社債買入はコストの割には報われない政策ですよという話ね)という論点に関しての説明が無いのは少々遺憾な所でございます。まあ今般の措置を導入するに当たって色々とお調べになっているのでその点に関しては重々ご承知の上で「期間の論点」だけの話をしているのだとは思いますが、この部分に関しては重要だと思いますけどね。
○TIBORとかLIBORとか
これも良い質問。
『(問) 先ほど白川総裁は、企業金融について、実際に企業が調達する資金の金利低下を促したいとおっしゃいました。2001
年から2006 年の間の量的緩和とゼロ金利の時代は、日銀の金融緩和に対してインターバンクのターム物金利が0.1%であったと思いますが、昨年の10
月と12 月に政策金利を下げたものの、現状3 ヵ月物金利は、LIBOR が0.6%、TIBOR
が0.7%となっています。総裁は、市場機能の維持という点から、ゼロ金利にすることに反対されていますが、現状は、0.1%に維持することによって、反対に、市場における資源配分が歪み、日銀の金融緩和が伝わっていないような気がします。こうしたメカニズムについてどのように思われますか。』
『(答) ただ今、TIBOR やLIBOR について言及がありましたが、TIBOR の水準がどのような要因を反映して決まっているかについて考える必要があると思います。概念的に整理をすると3つあると思います。1つめは、金融機関が認識する流動性リスク、2つめは金融機関が資金を放出する先に対する信用リスク、3つめが金融機関が認識する企業の信用リスクです。これら3つのリスクが背後にあって、TIBOR
あるいはLIBOR の金利水準が決まってくると思います。』
『現在、どのような要因でTIBOR が高止まっているのかということを考えますと、金融機関の間で金融機関の信用リスクについて非常な警戒感があるとは認識していません。金融機関の流動性リスクと金融機関が認識する企業の信用リスクというものが高止まりにつながっているのだろうと思っています。』
というのと企業の資金需要が量的緩和時代よりも旺盛だというのがあると思いますが。
『(途中割愛)日本に限らず、他の国ではよりそうですが、こうした信用リスクにかかる部分は、中央銀行のオペレーションだけで変えられるというものではなく、基本的には、経済の状況を反映したうえでそのような信用リスクの評価につながっていると思います。従って、中央銀行がオーバーナイトの金利を下げることによってたちどころにTIBOR
などの金利が下がってくるわけではないと思います。(以下割愛)』
まあそりゃそうですな。
○色んな措置を延長したことに関して
『(問) 3点お願いします。まず、今回延長された色々な措置については、なぜ半年の延長なのでしょうか。異例の措置といわれていることを半年間延長するというのは、半年くらいこうした異常な経済状態が続くとみているのでしょうか。(以下割愛)』
『(答) 1点目については、現在、企業金融を巡る状況は大変に厳しいと思っています。現在の経済の厳しさ、および足許の金融市場の動向を考えると、残念ながら暫くこの状況が続くと思います。もちろん、後から振り返って、向こう半年のうちに大きく改善するということがあるかもしれませんが、今は企業にとっても金融機関にとっても不確実性が非常に高いわけですので、この不確実性を取り除く、少しでも軽減するということが大事だと思います。その上で、異例の措置ではありますが、さらに半年間延長するという基本的な考え方で臨みました。』
という認識で、月報の概要部分(明日にでも)は実のところ1月と2月でそんなに大きく動かしていないのですが、会見のニュアンスは今回の方がより厳しめになっている感じがします。
○量的緩和政策との比較に絡んで論点整理
引用ばかりで長くなって恐縮ですが最後に量的緩和政策との比較の質問が。
『(問) (最初割愛)市場では、かつてのように当座預金残高の目標があるかどうかは別にして、事実上の量的緩和といえるのではないかという声もあります。この点についてどのようにお考えでしょうか。もし違うというのであればどの点が違うのでしょうか。FRBでは、信用緩和──クレジット・イージング──という政策を採っているということをバーナンキ議長が明らかにしています。これと現在の日銀の政策には似た部分がかなりあると思うのですが、どのような点が違うのかについて教えて下さい。』
『(答) 現在の日本銀行の金融政策を一言でどういう言葉で表現できるのかについてですが、これは一言でなかなか表現しにくいように感じます。今、米国についてはクレジット・イージングという言葉を使われましたが、確かに米国の金融政策のある側面はクレジット・イージングですが、全体がクレジット・イージング一色に染まっているかというと必ずしもそういうわけでもなく、一言で表現するのがやはり難しい、そういった経済の情勢に現在陥っているという感じがします。』
左様でございますな。で、日銀の政策に関して論点整理をしてます。
『日本銀行の政策については色々な概念整理が可能かと思いますが、私自身は3つの柱から成っていると思っています。1つ目は政策金利を引き下げることで、現在0.1%まで引き下げています。2つ目は金融市場の安定を維持することです。これには必ずしも狭義の金融政策だけではなく、最後の貸し手として資金供給することや通常のオペレーションでも潤沢に資金供給していくことが含まれます。3つ目は、CP市場がその典型ですが、金融市場の機能が低下し企業金融が全体として逼迫を来しているときに、その金融市場に対して中央銀行が働きかけていくという政策であり、これについては確かにクレジット・イージング(信用緩和)という言葉がより近い感じがします。』
なるほど、そういう切り分けですね。
『量的緩和との違いですが、その答えは多分、量的緩和をどのような政策と定義するかに依存していると思います。かつて日本銀行が採用した政策、あるいはそれとイコールのものですが、海外の色々な学者の方が提案した量的緩和というのは、当座預金の残高なりマネタリーベースを増やすことによって経済活動が刺激されていくというものです。そのように考える場合には、当座預金残高なりマネタリーベースの残高に目標を設定し、それを実現していくように政策を展開していくのが、純粋な意味での量的緩和であると思います。その意味では現在、FRBも日本銀行も量的緩和は採用していないと思います。』
これもその通りです。先ほども申し上げましたが、FRBが絶賛やるやる詐欺中の長期国債買入ですけれども、そのロジックはマネタリーベースの拡大ではないのですよね。
『一方、先程申し上げた第2、第3の柱を実現していくには、中央銀行はオペレーションで量を供給するわけですから、結果として当座預金の残高が増えるという面はもちろんあります。その点をとれば確かに量は増えているわけですが、その思想は、先程申し上げたような意味で異なっていると思います。』
という事になろうかと思います。
#ということで久々なので張り切って(??)引用大会になってしまいました。どうもすいません。