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2008/11/28
お題「素敵なオペレート/利下げ会合の議事要旨をちょっとだけ」
もう利下げから1か月経ったのですか(驚)。
○税揚げ前の月末とは言え・・・・
昨日もまたまたレートが上昇しておりまして、ここまで来ると投資家(大手銀行)による催促相場状態になって来てますなあという感じがヒシヒシと。備忘の為にクリップ。
オペの金利ですけれども、スポット(1日)スタートの国債買現先1週間物は0.486/0.48で前日の0.463/0.45からまたまた上昇(火曜は0.434/0.43ね)となってしまいました。税揚げ後もレート高止まりするんですねという認識もあるでしょうが、ここもとTBFBなどの短い所で売りが嵩んでいるようなので(12月償還の銘柄では引けが0.50%を越えたものが・・・・)、在庫ファイナンスも大変ですねという感じでしょうか。
で、その後にゲゲンピョだったのはトム(月末の28日)スタートの共通担保本店供給オペでして、月末スタートの12月15日エンドの共通担保オペの落札レートは平均落札レートが何とロンバート越えとなって(そりゃまあ12月償還のFBが0.52とか言い出してるんだから当たり前なのですが)しまい、レートは0.501/0.49で按分は11.5%でございました。ロンバートレートより上ってナンジャソリャという状況であります。
月末は3月決算企業の予定納税対応の資金ニーズがあるのですが、ここもとCPの発行が滞っていた所でしたので、こりゃまあ銀行借り入れ(大手企業だからコミットメントラインのご利用でしょうなあ)が絶賛大殺到して、ファンディングの圧力が高まったという所なのではないかと勝手に想像致しますが、それにしてもロンバート越えとは素敵にも程があります。
そんな感じですから、GCのレギュラースタートで0.52%だとか訳判らん動きになっちゃいましたが、ロンバートに行けば0.50%だというのにそこまで特攻するというのも何ともという感じ。TIBORフィクシングレートも絶賛上昇していまして、こいつは市場でマークするもんじゃなくてリファレンス銀行が鉛筆なめてつけるレートでありますので、こいつはまあ大手銀行さんついに政策催促、というか督促状態になって来たかと、おらワクワクしてきたぞって感じです。
ということで、オペレートの話をしながら書きましたけど、TIBOR3か月ものは日本円3か月で0.86833%と前日から1bpちょい上昇の巻となり、利下げ直前の31日(フィクシングは11時ですので^^)の高値0.88917%に益々接近の巻。毎日良い感じでリファレンスバンク様がレートを上昇させておられるようで、実に素敵な展開になっております。今日高値(というか最高レート)を抜いたらもう笑ってしまうしかありません。
CPはスポットが1日なのですが、納税やら年末資金対応などもあるのか昨日はやたら沢山発行が。久々のメーカーネームとかもありましたが、電力などの公益系最高位格付け銘柄群を除けば微妙にレート上昇。まあ大型発行が多かったので仕方ない面はありますけど、やはりレート上昇かってな感じです。二極化のもう片側さんはこの状況だと益々大変かと。ご同情申し上げます・・・
FBは先ほど申し上げたとおりの惨状ですが、来月は休みの関係もあって発行が前倒しで行われるわ、3か月物の発行額が4兆8千億円に増えるわという状態で大丈夫かいなという所ですな。もうちょっと長いところだと1年半とかのゾーンがメタメタみたいな感じですね。新発2年国債はまあ無難ではあったのですが、カーブ上で1年から1年半くらいまでが一番甘い(もっと甘いのは1か月以内ですけれども^^)とかどういう事やという感じです。あまり想像したくない「換金売り」という言葉が頭にチラチラと・・・・
○ということでこれが市場機能の結果でございます
とまあ素敵な市場の展開ではございますが、昨日ご紹介したオペ懇でのご発言によりますと、市場機能を生かすというのが白川総裁様のスタンスであられるそうでございますので、総裁様のお考えの通りに市場にお任せしたらこんな状態になっちゃいましたという事です(-_-メ)。
即ち、後ほどご紹介しますが、利下げ決定会合において反対意見を出した水野審議委員の指摘していた『C
P ・社債市場の機能低下等を踏まえると、利下げの効果が実体経済に波及するメカニズムがはっきりしない』というのが具現化している訳ですな。市場の目詰まりを放置して利下げをしても効果が出ないというのは、かつての金融システム不安の時にも経験がございましたが、今般の場合は金融システム不安のような状態になっていないのにこの有様というのがタチ悪いという感じですね。
ま、それは兎も角として、何か火曜のオペ懇以降益々市場が大反乱状態になってきております(ように見える)のは、昨日ご紹介した白川総裁のスピーチの「市場機能」連呼に対してオペ先の皆様がカチンと来たからとか妄想するのは妄想にも程がありますかそうですか(^^)。
とにかく、潤沢な流動性を供給とか言ってる割にはやってる事が後手後手に回っているのが問題を悪化させているのでして、例えばCP現先オペに関して言えば、10月14日に積極活用とか言い出したのに、その後の実施は月末までに2回しかないという状態で、それじゃあ積極活用じゃないでしょという認識になる訳ですわな。10月14日の会合後から普通に毎週オペ実行してたらもう少しCPディーラーも安心して引受が出来、今のように間接金融への大々的なシフトが起きて銀行金無し状態にならずに済んだのではないかと(まあ実際どうだったかは再現できませんから判りませんが)思うと、全く持って危機感の欠如にも程があるという所でございます。
と、連日の悪態恐縮至極。
○利下げ会合議事要旨(今日はイントロで恐縮)
悪態つきで時間がなくなったので(笑)、今日は「各委員の反対理由」を鑑賞致しましょう。下記URLの15枚目(本文13ページ)から。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g081031.pdf
25bp下げの人たちから(機種依存文字は原文ママなので勘弁)。
・須田さん
『須田委員は、@ これまでの政策変更時とは異なる引き下げ幅にする点について、市場機能を阻害するという理由だけでは説明が難しいこと、A
今後、金利の変更幅について不確実性を高めるおそれがあることから、反対した。』
「市場機能を阻害するという理由だけでは説明が難しい」に拍手です(^^)。
・中村さん
『中村委員は、引き下げ幅が0.25%でも市場機能の維持は可能であるため、これまで同様、0.25%
刻みで政策変更を行うことが適当とみられることから、反対した。』
付利開始後の無担保コールレートの推移を見れば中村さんが指摘する「引き下げ幅が0.25%でも市場機能の維持は可能」というのが全く正しい事は明白でございます(^^)。
・亀崎さん
『亀崎委員は、政策金利の引き下げに際しては、経済のダウンサイドリスクの顕現化を未然に抑え、成長を下支えするという毅然とした姿勢を市場や経済主体に示すことが肝要だが、引き下げ幅を0.2%
という小刻みなものとした場合、政策の出し惜しみや更なる引き下げの余地ありといった印象を与えてしまう可能性があることから、反対した。』
・・・・(;∀;)何と言う良い指摘。
「政策金利の引き下げに際しては、経済のダウンサイドリスクの顕現化を未然に抑え、成長を下支えするという毅然とした姿勢を市場や経済主体に示すことが肝要」
「政策の出し惜しみ」
と言った辺りに、こりゃまあ相当揉めたんでしょうなあというのが伝わります。この会の議事録は恐らく2019年の半ばになると公表されると思われますので、その議事録を読むのが今から楽しみでございます。
では、従来より審議委員中一番景気認識が厳しかった筈なのに据え置きを主張した水野さんはどういう論拠だったのかというのを見ましょう。
・水野さん
『水野委員は、@ 現下の政策課題は政策金利引き下げよりも、C P ・G C
レポ市場等の現状を踏まえた資金の目詰まり対策であること、A 景気が一層悪化した場合の対応について更に議論が必要であること、B
C P ・社債市場の機能低下等を踏まえると、利下げの効果が実体経済に波及するメカニズムがはっきりしないこと、C
追加利下げ期待からコールレートに低下圧力がかかり、金融市場調節上、潤沢な流動性供給が却って難しくなるリスクがあること、D
全員一致で現状維持を決定した会合から時間が経っていないことから、反対した。』
なるほど。1と3に関しては現在起きている事態がまさに水野さんが懸念した事の具現化でございまして、折角利下げしているのに利下げ効果はインターバンクの無担保コール金利およびその周辺に留まり、オープンやらTIBORやらの金利にその効果が十分に発揮されていないという状態。つまり、資金の目詰まりを解消してからでないと利下げ効果が出ないのだから、まず先に議論すべきは流動性対策ですよというのは同意でございます。
2は端折りすぎで良く判らんです。景気が更に悪化した時に下手に付利があるとゼロ金利に出来ないから反対と言う話なのかしら??4も端折られててよく判らんのですが、大量に供給して吸収をしないという事をすると、レートが低下しちゃうので「0.30%の誘導目標」というのと、「当座預金付利で供給拡大」というのが両立しないって話ですかな???
5にはワロタ。前回会合からの変化って株が下がって為替が円高に振れた以外に何かフォワードルッキング(笑)な指標とかありましたっけという所ですか。
その他の論議内容についてはまた後日ということで。
2008/11/27
お題「市場見ながら今日も悪態/前面に原則論が出ているのはどうかなあ」
諸般の事情により金融経済月報は後回しでござる。
○またまた短い市場雑談に悪態成分が入っております(^^)
昨日もまたまたGCレート上昇して0.50%近辺みたいですね。
税揚げ要因ちゅうのはあるのですけれども、単にそれだけではなくて、そもそも市場がその手の金利上昇ネタにナーバスになっている状況において、金利上昇しやすいネタの税揚げに対して供給オペがほぼ自然体だったのも「あらやっぱりそうですね」という感じでレート上昇要因になったようで。
まあ準備預金の積み進捗が進み気味なのであまりバカスカ供給できないというのもあるのでしょうが、それって要するに「通常モード運営」の状態ですわなという事でして、何かこう年末越えに関してちと神経質になっている状況においてはちとどうなのかなあとは思うのですが、ディレクティブどおりに運営するとなればこうなっちゃうのよね。残念。
という事で、資金足りません感が強い中でオペの金利はターム物がしっかり上昇しまして共通担保本店の27日スタート4日エンドという税揚げ越えは0.488/0.48と前日の1週間ものが0.453/0.45だった所から華麗に上昇してロンバート金利にまたまた接近。そりゃGCが0.50に上昇するわ3か月新発FBの入札がコケるわなという所でありまして、FB新発の落札利回りは足きりベースで0.49%に乗せてしまいまして(さすがに引けは0.475−48みたいですが)これまたロンバート接近でござるの巻となってしまいました。
どうも12月償還とか1月償還のFBも売りが出ているようで(単に入れ替えなのか換金なのか知りませんが、換金だったら嫌ですねえ)このあたりの引け値は軒並み0.48だの0.49だのとこれまたロンバート接近レートになっております。
ということで、まあ市場の中の人たちが何となく不安に思っていたように、1週間掛けて下がったレートは元に戻るの巻になりました。
・・・・・17日に当座預金(超過準備)付利を行うと潤沢な資金供給ができるようになるというお話はどこに行ったのでありましょうか、それと10月14日の公表文の中にはこんなのもありましたが、年末越えのオペレーションも別に普通の自然体でしか打ってないように見えますけれども、あれは何だったんでしょうかねえ・・・・
『3.年末越え資金の積極的な供給
年末越えのターム物オペを早期に開始することにより、年末越え資金を積極的に供給する。』(10月14日の公表文から)
結局の所ですね、最初から別にジャンジャン威勢よく供給する意思がなくて、単に(絶賛シュリンクしてる)無担保コールのレートと準備預金の積み進捗を見ながら自然体で運営してろという状態なのであれば、最初から「付利で潤沢な供給」とか「年末越え資金供給の積極化」とか余計な事は言わなければ良いのでして、変にそんな事を言うから市場が期待して「潤沢な供給はいつですか」となってしまい、結局失望ということになっちゃうのではないかと思います。今の状況って(無担保コール市場は知らんが)主にオープン市場が日銀の調節姿勢に対して懐疑的になってるのではないかという懸念がありまして、日銀の為に惜しむ者でございまする。
・・・・うーむ、今日も毒出し毒出し♪
○どう見てもゼロ回答です本当にありがとうございました(はオーバーですが)
25日に金融調節に関する懇談会っちゅうのがあって、そこで白川総裁が講演ちゅうか挨拶をしたそうな。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0811e.htm
・ゼロ金利政策はやりたくないということですね、わかります
(量的緩和政策解除と市場機能の回復)という素敵な小見出しに続く部分。
『量的緩和政策を採用していた時期に、その市場インフラは大きく縮小しました。長年にわたるゼロ金利からの脱却は、一旦縮小した市場インフラを再構築するプロセスでもありました。短期金融市場における取引は徐々に活発化し、資金の出し手から取り手へ市場を通じて効率的に資金が融通されるようになっていきました。当初はやや振れが大きかったコール市場やレポ市場の金利も、徐々に円滑に形成されるようになり、市場間の裁定取引なども次第に活発に行われるようになりました。ただし、そうした状態になるには、かなりの時間とコストがかかったことも事実です。』
もうちょっと手前にも説明があって、ゼロ金利長期化で市場のインフラがどういう具合に喪失したかって話をしてるのですが、まあいつもの話なので割愛しておきましたです。で、これは最近やたら白川総裁が「市場機能」と連呼する根底にあるのは「ゼロ金利政策はやりたくありません」というご意思があると理解すれば宜しいという事ですね、わかります。
ちなみにもうちょっと先に『3.金融市場における市場機能の重要性』というもっと素敵な小見出しのコーナーがありまして、そちらではこのようなお話を。
『短期金融市場あるいはより広く金融市場の機能は一旦損なわれると、これを回復するためには多大な時間とコストを要します。ゼロ金利から脱却する際にも、与信枠、資金繰りセクションの人員やノウハウなど、一旦大きく縮小された市場インフラを再構築するために、長い時間と市場参加者の皆様の多大な労力を要したことは、ご記憶に新しいところだと思います。このような市場インフラを維持していくためには、たとえ市場機能が低下している中にあっても、できるだけ市場を通じた取引を促進し、市場機能の復元力を温存していく努力が大切だと考えています。』
その結果レポ金利が貸出ファシリティに張り付き、CPや社債市場では二極化拡大状態になっておりますが、それは市場機能が働いているから良いということですね!
・量的緩和政策は金利ターゲットが困難になるとな
で、さっきの続きに戻ります。
『現在の金融市場の機能低下は世界的な現象ですが、米欧では、この問題がより顕著に現れています。(欧米の中銀の対応を説明した部分割愛)。このような(引用者追記:欧米中銀の)対応は、目の前の「火事」を消すために不可欠なことではありますが、いくつかの困難な問題に直面しています。例えば、大量の資金供給の結果、米欧のオーバーナイト物の金利には下押し圧力がかかり、誘導目標金利から下方に乖離しています。金利誘導力を回復するため、FRBでは10月から準備預金に対する付利を開始しました。さらに、市場機能をある程度犠牲にしてでも金利誘導力を高めるため、付利金利を誘導目標金利と同水準にまで引上げましたが、FF金利は依然誘導目標を大きく下回った状況が続いています。このように、米欧では、市場機能が大きく低下した下で、金融調節は技術的な困難に直面しています。』
えーっと悪態割愛(^^)。
・まだそれを仰せですか
その続きが(わが国の状況)というコーナーなのですが、まずは現状認識部分を特にコメント入れずに引用しておきますね。
『短期金融市場では、コール市場でカウンターパーティ・リスク意識の強まりを背景に取引が減少しているほか、レポ市場でもコール市場との裁定が働かず、レートが高止まりやすくなっています。債券市場では、市場流動性の低下からイールドカーブの歪みが目立っています。為替スワップ市場でも、長めのターム物取引を中心に流動性が著しく低下しています。さらに最近では、投資家のリスク回避姿勢の強まりからCPや社債の発行見送りの動きが広がるなど市場での資金調達環境が悪化しています。』
リスク回避ちゅうよりはリスクマネーの減少による部分が大きいと思うのですが。まあそれはそれとしてその次。
『こうした状況を踏まえ、日本銀行は、各種のオペ手段を動員して市場への資金供給を行っています。同時に、オーバーナイトの無担保コールレートを誘導目標金利水準の近傍に誘導するために資金吸収オペレーションを並行して行っています。』
同時に〜以下が無かったらぶち切れる所ですが(笑)。
『11月積み期からは、これを補強し、金融市場の逼迫する年末、年度末に向けて積極的に資金供給を行うために、時限措置として補完当座預金制度を導入したところです。』
・・・・その説明はいい加減止めた方が良いのではないでしょうか。現実問題として補完当座預金制度の金利まで無担保コール市場の金利が低下するような動きって全然無いですよね、この積み期間に入って。
・どう見てもオープン市場放置です本当に(ry
『中央銀行としてはこうした仕組みを活用してコールレートの目標水準への誘導を図ることは重要ですが、同時に、短期金融市場においてその時々の市場における需給の状況や取引当事者の信用度を反映した金利形成が自由に行われるという意味での市場機能を極力温存する努力も必要だと考えています。こうした観点から、短期金融市場で多様な取引主体が資金取引を行い、その結果として成立する加重平均金利が誘導目標近傍となるよう、金融調節を行っています。』
極力温存した結果がオープン市場の惨状ですけれどもそれは是だと。
『それと同時に、リーマン・ブラザーズの破綻以降も、日本銀行が必要以上に市場を代替することをできるだけ避け、市場で成立し得る取引はできるだけ市場で成立するようにするという基本的な考え方に立って、金融調節を運営しています。』
つまりCP買取やら株式購入などはやりたくありませんというのが基本的な考え方と。
『補完当座預金制度における付利金利と誘導目標金利のスプレッドを0.2%としたのは、コールレートが誘導目標から過度に乖離して低下することを抑制するとともに、この範囲で自由な金利形成が行われる余地を残したいと考えたことによるものです。』
だからその説明はいい加減(以下同文)。
・市場機能の重要性でこういう話をしてるのに・・・・
『3.金融市場における市場機能の重要性』の中から。
『第3は、金融政策の波及メカニズムの確保という点です。オーバーナイト金利を起点とする金融政策の効果は、様々なタームの取引や市場間の裁定といった市場取引を通じて、金融市場全体、さらには実体経済へと波及していきます。自由な金利形成が行われる市場からは、金融政策の運営上有益な情報も発信されます。したがって、市場機能が維持されていることは、金融政策が効果を発揮する上で重要な前提条件です。』
えーっと、現状ではその経路が変調を来たしているのですけれども・・・・・何か現状に対する危機感があるのかないのか良く判らんですなあ。コマッタモンデ。
・最後に何となくやる気らしきものはあるのですが
『4.中央銀行に求められるバランス』って所なんですけれどもね。
『以上のように、中央銀行は金融市場の機能が十分に発揮されることを重視し、そうした観点から、金融市場への直接的な介入は極力避けるとともに、取引に当っては中立性の維持に努めています。しかし、一方で、現実に金融市場の機能が低下している場合、あるいは経済状態が厳しくなる場合には、中立性を多少犠牲にしても中央銀行自身が市場にかなり強い形で介入するという複雑な二面性を有しています。』
現在の状況を鑑みますと、こっちを先に発言したほうが良いと思うのですけれども、順序として後になっている時点でまあそういう事なんでしょうねと思ってしまいます。まずは現状では原理原則が先にありますよと。まあ途中を割愛して最後の部分。
『いずれのケースでも、中央銀行が過度に民間の市場取引に関与すれば、市場のもつ本来の機能が阻害され、結果として市場機能をさらに低下させてしまうという悪循環に陥る惧れがあります。しかし、現実に市場機能が低下した場合には、市場がさらに不安定化し経済状態が悪化することを防ぐ必要があります。その意味で、中央銀行には経済や金融市場の動向を丹念に点検した上で、注意深いバランスが求められますが、その責任を適切に果たしていきたいと思っています。』
で、現状はのんびりと原則論を唱えている場合じゃないように思えますけれどもねえ・・・・
・・・・うーむ、今日も毒出し毒出し♪
2008/11/26
お題「総裁会見とか市場雑感とか」
ところで、前回0.25%を主張した審議委員3名様は今回0.05%の利下げを提案しなかったのかな(^^)。なんちて。
まずは総裁会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0811c.pdf
○総じてやる気無し無し感が伝わって参りますが
以下引用するのですけれども、今回の総裁会見のトーンは全般的にやる気無し感が。正直申し上げて10月14日の決定会合のステートメントは何だったんですかと小一時間問い詰めたいのですが。
で、会見の最初に「日本はデフレ入りに差し掛かっているのではないか」というのがあったのですが、それに対してこういう話をして、蒟蒻問答状態になっております。
『デフレという言葉を用いたご質問ですが、デフレについて議論する場合、最初にどのような定義で議論するかを明らかにしたほうがいいと思います。デフレという言葉は、少なくとも3通りの意味で使われてきたと理解しています。』
で、以下蒟蒻問答状態なので全面的に割愛(-_-メ)。
○追加利下げは様々な問題ですかそうですか
ブルームバーグが総裁会見記事の見出しにここのフレーズを使ってまして(笑)、結果としてどうなるかというと、記事内容が徐々に追加されることもあって「追加的な利下げは様々な問題が生じる可能性=白川総裁(2)」という感じでヘッドラインが(3)以降何度も出るという状態になって、誠に気分が宜しくありませんな(−−)。
ま、これは別にブルームバーグがどうのこうのというよりは、今回見事なゼロ回答をしやがってどーゆーことやという市場の雰囲気が記者さんにも伝わっている結果、このフレーズが印象に残ったということで宜しいのではないでしょうか(^^)。「景気が更に下押ししたら日銀の政策余地はあるのか」という質問に対して。
『(前半割愛、というか後ほど引用)ご質問は、金利水準がこれだけ低い中でどのような施策があり得るのか、という趣旨と理解した上でお答えします。短期金融市場の円滑な機能の確保という観点から考えますと、極めて低い金利水準のもとでは、追加的に金利を引き下げることで様々な問題が生じる可能性があります。』
・・・・・・(゜д゜)
『特に、現在のように金融市場の機能低下が問題となっている状況では、この点に関する配慮は一段と重要になってくると思います。先行き具体的にどのような政策対応を採っていくかは、今申し上げた留意点も踏まえつつ、その時々の経済・物価情勢や金融市場動向を踏まえて適切に判断していくという方針であります。(以下割愛)』
金融市場の機能低下が問題とかいうなら何で超過準備付利というフロア金利を設定したのか意味が全く判らんのですけれども。付利しないで誘導目標0.25%ロンバート0.50%でええんちゃいますか。
そもそもですな、金融市場の機能低下がどうのこうのと言いますけれども、その機能低下要因は金利制約問題なのではなく、資本制約問題、と書くと話が壮大ですが、要するに「リスクアセットが持てないよ」という状態になっていることなので、金利水準がどうのこうのという話ではないでしょと思うのであります。従いまして、「金利を下げると市場機能が低下して」というような理屈は現下の情勢では屁理屈に過ぎないのではないでしょうかねえ。
ちなみに、リスクアセット持てなくなっているのは国内の株価下落などの要因による銀行の体力低下もそうですけれども、金融市場に裁定取引などで参加していた業者や海外投資家(投機家?)のリスク許容度低下というかガイジンさんの撤退状態というのもありますので、マーケット全体としてのリスクマネーの減少は顕著ですよねと思う所でござる。
まあこういう屁理屈を持ち出した時点でやる気がねえというのは良く判りまして、そーゆー姿勢を嫌気してTIBORは昨日も上昇するわ金先は下落するわという所でしょう。
○のんびりやってたら年末間に合わないんですけれども
今引用した質疑応答の最初の部分ですけどね。
『私どもは、先行きの金融経済情勢が一段と悪化した場合に中央銀行としてどのような対応が採りうるのかということについて、常に幅広く検討を行っております。本日の会合において、年末、年度末に向けた企業金融の円滑化に資する措置を検討するよう指示したというのもその表れであります。』
えーっと、次回の通常会合で措置公表しても年末に間に合わないのですけれども、その状態のどこがどう「その表れであります」なのか小一時間問い詰めたいのでありますが。いやまあさすがにインターミーティングやるとは思うのですけれどもね、今日は既に債券売買のレギュラー受渡が12月1日ですし、スポットが月末ですけれどもねえ。
で、まあ別の質疑で当座預金付利の点検状況について質問があったのですけれどもね。
『ご質問の通り当座預金付利はまだ始まったばかりですので、評価をするにはまだ時間が足りないという感じがします。現在、金融市場局では、金融機関の当座預金積み上げの動きについて非常に丹念に分析をしています。若干の変化があるかなという気がしていますが、現時点で評価するにはデータと申しますか時間が足りないので時間を頂けますでしょうか。次回の会合でご質問頂ければお答えしたいと思います。』
ということは、こちらの点検が終わらないので次の施策はまだしませんとでも言いたいのでしょうかねえと嫌味の一つでも言いたくなります。何というのんびり状態なんでしょうかねえ。
○量的緩和と市場機能という話
量的緩和政策や時間軸に絡めた質問に対しての答えで、量的緩和と市場機能に関する部分の総裁のお話。
『(冒頭割愛)その上で、まず、量的緩和政策と市場機能の関係についてお答えします。量的緩和政策の効果についての一般的な分析評価については、これまで日本銀行も色々なかたちで申し上げてきましたので本日ここで詳しくは申し上げませんが、金融システム不安が非常に高いときに金融機関の流動性需要に応えるかたちで潤沢な資金供給を行ったことで、金融システムの安定に貢献したと思っています。逆に言うと、金融システム不安が後退した後もなお流動性を潤沢に供給しようとすると、逆に金融市場の機能が低下し、金融機関が本当に必要な時に市場から資金調達をできなくなる事態が生じます。(以下割愛)』
・・・・・だから現状の短期金融市場とか債券市場の問題は資本制約でありますので、確かに金融システム不安と言われる状態では無いかもしれませんけれども、じゃあ各金融機関の資本が潤沢でリスクマネーがふんだんにある状況かと言われると全然そんな事無いでしょと申し上げたく存じますが。
金融システム不安が無いから追加施策は必要ないんですね、わかります(-_-メ)。
○これは良い質問
『(問) 10月末に利下げをしまして、その後翌日物金利は0.3%に下がったのですが、所謂短期市場のターム物金利、例えばTIBOR
の3か月物をみると利下げ以降ずっと金利が上昇しておりまして、利下げ効果というか金融緩和効果が十分出ていないと思えるのですが、その理由についてどのようにお考えでしょうか。それから、今後の金融調節方針においてターム物金利にどのように配慮するのかお聞かせ下さい。』
記者様あたくしの駄文の読者様ですかというのは自意識過剰ですかそうですか(^^)。
『(答) 今ご質問のあった、オーバーナイトの金利は下がったにも関わらず、ターム物金利が十分に下がらない、場合によっては逆に上がってしまうという現象は、欧米の中央銀行が昨年来、特に今年になってから正に直面している難しい問題であります。』
さあ話を逸らしてきましたよ!!
『TIBOR あるいはLIBOR、それからオーバーナイトの金利と政策目標金利との乖離度合いは、他国に比べて日本では非常に小さいと思います。』
それは他国(というか欧米主要国)の乖離が金融システム不安で異常になっているからなのであって、それと「金融システム不安が無い」という日本を比較するして小さいというのはインチキ説明ではないでしょうか。(金融システム不安云々に関しては後で言及してますけどね)それにベースレートの水準が違うので差分比較したら小さいのも当たり前ですが。
『大まかに申しあげますと、その乖離は小さいながらも十分な引き下げ効果が出てこないという面が若干あると思います。これは、中央銀行の間でいつも議論しているテーマですが、欧米では、金融機関の資本制約、あるいは流動性に対する懸念が原因であるという仮説が言われています。日本の場合については、十分な答えを持ち合わせておりませんが、いずれにせよ、中央銀行ができることは、オーバーナイトの政策金利の誘導についての考え方を丁寧に説明していくことであり、流動性の不安を解消するように資金を供給していくことだと思います。』
はあはあそうですか。問題は無担保コールじゃないんですけどねえ。
『日本銀行は、この面で色々な手段を講じております。』
・・・・・・(゜д゜)
『ターム物のレートと政策金利の乖離が小さいのは、おそらく日本銀行が潤沢に資金供給を行っている、あるいは非常にきめ細かな資金調節の枠組みを持ち、そのもとで調節を行っているからだと思いますが、それでも若干の変化が出ているのだろうと思います。』
・・・・・・(゜д゜)あのまあ単に屁理屈並べてるだけだと思うのですが、リアルにこの認識だとちと困るんですけど・・・・・
とまあそんな感じで、本日は悪態を連発させていただきましたが、その他の話題としてはリスク管理の問題とか金融機関保有株式の買取問題とか、金融システム問題の質問とか毒出しをしなくて良い話題(^^)もあったのですが長くなるので全部スルーの方向で(こらこら)。
○市場雑談ですが
昨日のレギュラーGCは月末月初になるのですが、レギュラーの翌日物GCは上昇しやがって0.48%とかの水準。国債買現先の27日スタート12月4日エンドの落札レートがしらっと1つ上昇したですなとか思ってたら午後の共通担保本店26日スタート12月5日エンドが1兆円のオファーに対して応札5兆とかになりやがりまして、落札レートは2つ上昇の巻と地合い悪化してるのでまあそんなもんちゃあそんなもんなのでしょうが。
まあ何ですな、足元もきっちり売手即日で引いているので全般的に金やっぱ足りないじゃないですかという所で、月初の税揚げ抜けるまでは地合いが回復しないのかねとか思うのですが、とりあえず昨日の現象面を見ますと、「折角1週間掛けて低下したGCレートが1日で戻りましたね」という感じでしょうか。もうちょっと正確に申し上げますと、金曜の時点でレギュラーのGCが0.42−43%あたりの水準に反転上昇となっていましたので、同ペースで供給してたらレートが上昇するんでしょうねという感じでしたから1日で戻ったというよりは金曜の助走によって月曜見事にジャンプという所でしょうか。さて今日はどういう調節をしてくるのやら(ニヤニヤ)。
それはそれとして、CPレートの見事な二極化とかどっかの情報ベンダーでもネタになってましたが、TIBORも中々香ばしい展開に。TIBORの日本円3か月ですけれども、利下げ直前の10月31日に全銀協発表のレートが0.88917%と最近では最高水準だったのですけれども、まあ当然ながら同日の利下げを受けて11月4日には0.79083%と10bp弱(利下げ幅が20bpなのに10bp弱という時点でアレなのですけれどもそれはさておいて)低下したのですが、ここもと徐々に上昇でござるの巻になってまして、昨日はとうとう0.84750%となってしまいました。何と利下げ20bpに対して低下幅4bpの巻と。いやはやコマッタモンデス。
○その他余談とか宿題とか
・金融経済月報
本当は読んでたのですが、時間と量の関係上明日にします。金融環境に関してようやく緩和度合いが弱まっているという認識が出たりして、内容的には下方修正ちっくになっていますね。それから「緩やかな成長経路に復する」が抜けたのもやっと抜きやがりましたなという感じです。
・民主党が何か出すとか
時事メインのニュースで見ただけですが、「日銀は金融機関に資本注入すべし」という微妙に訳の判らん施策が出るみたいですが、金融機関の資本を持つと思いっきり利益相反の問題が起きると思うのですが、いやまあ統合政府と言う面では同じですけれども、それなら金融安定化法案の修正に努力したほうが良いと思いますがどうなんでしょ。
てか、そうやって打つ手が後手に回って出し渋りしてるから段々筋の悪い話を要求されるんだと何度やれば判るのかと小一時間ですな。
2008/11/25
お題「何というゼロ回答(決定会合結果)」
何か出るかと思ったのですが、これは何ということ。また期待空振りになってしまいましてどうもすいませんm(__)m
これが決定会合結果ですな。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k081121.pdf
○まずはステートメント:経済見通しがイマイチ下がってません
利下げする前の10月8日公表のステートメントと比較するの巻で。
『わが国の景気は、既往のエネルギー・原材料価格高の影響や輸出の減少などから停滞色が強まっており、当面、こうした状態が続く可能性が高い。』(今回)
『わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高の影響や輸出の増勢鈍化が続いていることなどから停滞しており、当面、海外経済の減速が明確化するもとで、こうした状態が続く可能性が高い。』(10月8日)
「停滞しており」→「停滞色が強まっており」っていう変化をさせた意味がイマイチ判らん。たぶん「強まっている」だから表現的には今回の方が停滞観を強めていますという事なのでしょうが、普通に言い切っている前者の方がヘッジクローズ入りじゃない分だけ「停滞」がすんなり入ってくる感じもする。ま、何はともあれ、後退やら悪化という表現が入っていないのは・・・・
物価の話はまあ織り込み済みだと思いますのでスルーして先行きの話ですけれども、今回はしらっと先行きのこの分を割愛しているように見えます。
『先行きについては不確実性が大きいものの、やや長い目でみれば、エネルギー・原材料価格高の影響が薄れ、海外経済も減速局面を脱するにつれて、次第に緩やかな成長経路に復していくと予想される。』(10月8日)
ええっと、この10月8日まであった部分が今回は見当たらないでござるの巻となっておりまして、ええもうこの部分に関する文章は今日公表の本文を読めですかそうですかという所です。辛うじてこれは残ってますが。
『先行きについては、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく可能性が相対的に高いと判断される。』(今回)
ちなみに利下げ前の10月8日ではこの通り。
『このように、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定の下での持続的な成長経路に復していくとみられる。』(10月8日)
ヘッジクローズが入りましたね。「可能性が相対的に高いと判断される」というのはこれはこれは。会議資料で使いたくなりますね(^^)。
○ステートメントつづき:リスク要因
リスク要因に関しては文章の利下げ前と比較して量が減っております(^^)。ということはヘッジクローズが減っているという事を意味する訳で・・・・・
『リスク要因をみると、米欧の金融情勢や世界経済の動向次第では、わが国の景気が更に下振れるリスクがあることに注意する必要がある。』(今回)
『リスク要因をみると、米欧の金融機関の破綻などを背景に国際金融資本市場の緊張が強まっており、また、世界経済には下振れリスクがある。国内民間需要については、これまでの交易条件の悪化を反映した所得形成の弱まりから下振れるリスクがある。設備・雇用面での調整圧力を抱えていないとはいえ、景気の下振れリスクには注意が必要である。』(10月8日)
利下げ前は細々と書いてあった部分が割愛されているのは、本文での表現が下向きになったことを反映しているのではないかと思いますが、内容に関しては今日公表の本文をみたいです。
『また、金融機関の貸出姿勢や社債・CP市場の動向など金融環境が一層厳しさを増す場合には、金融面から実体経済への下押し圧力が高まる可能性がある。』(今回)
今回新しく出た項目です。これに関しては既にだいぶエライコッチャになっているところですので、まあちゃんと入っているのはホッとしましたが。
物価に関しての上振れリスクを下げています。
『物価面では、上振れリスクは以前と比べ小さくなっている一方、景気の下振れリスクが顕在化した場合や国際商品市況が更に下落した場合には、物価上昇率が一段と低下する可能性もある。』(今回)
『物価面では、世界的に高い物価上昇率が続いている。わが国の物価については、エネルギー・原材料価格の動向に加え、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動の変化など、上振れリスクに注意が必要である。』(10月8日)
誠に結構。そして今回やっと削ったのは従来までのこの表現。
『この間、景気の下振れリスクが薄れる場合には、緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクが高まると考えられる。』(10月8日)
今回の表の部分からこれが削除されましたな。結構結構。
○で、肝心の流動性対策がゼロ回答とはどういうことや
ステートメントの4番目にその手の話が。
『また、上記の金融環境を踏まえ、企業金融の円滑化に資する観点から、当面、CP現先オペを一層活用していく。さらに、同様の観点から、民間企業債務の適格担保としての取扱いや民間企業債務を担保とする資金供給面の工夫について速やかに検討を行い、その結果を決定会合に報告するよう、議長より執行部に対し、指示がなされた。』
・・・・・CP現先オペですけれども、一層活用もクソも既に毎週実施していて札割れ(直近は札割れしませんでしたが)する勢いでやってるせいで落札レートが毎度毎度やたら低いのですけれども、そのオペを「一層活用」とは何をどう一層活用するのか全く意味が判らん。少なくともちゃんとオペ結果とかフォローしている市場の人からすると「ナンジャソリャ」状態になると思うのですが、もしかしてこれはあの「ぶぶ漬けでも食べていかれますか」なのでしょうか。
で、「民間企業債務の適格担保としての取扱いや民間企業債務を担保とする資金供給面の工夫について速やかに検討を行い」ってのもこれまたワケワカメなのでありまして、そもそも民間企業債務は適格担保になっているものが多々ある訳でございまして(そうじゃなかったらCPオペとか存在しません)、担保基準の緩和でもするのでしょうか位しか思い浮かびませんなあ。
まあそういうことで、一応検討する話は出ていますが、こちら(でも市場の中の人でも)で申し上げておりますが、年末まで日数無い状態で市場は二極化状態になっているという状況なのでして、今更のんびりした「指示」出してる場合じゃないと思うのですよね。正直日銀がこんなスタンスですと、年末と年度末この調子で大丈夫なのかという感じになるでしょうから、まあ資金の抱え込み傾向は益々強まるでしょうな。困ったもんであります。
てかね、会見(については今日の公表見てからですが)のヘッドラインでもどこぞの情報ベンダーでは「追加利下げは弊害大きい」みたいな題名を打ち込まれたりしていましたように、今回の公表内容って「白川総裁(または執行部)のゼロ回答」的な印象が強いものでありまして(金先が決定会合後に下落したのは無縁ではあるまい)、この状況でそんな状態でよいのかと小一時間ですな。
利下げはしない、なお書きはしない、CP買入などはやらない、株は買わないと、まあやらないのオンパレードですが、どうせ何かやらざるを得ない状況なのですし、状況が悪化して追い込まれて実施するとなるとより筋悪の政策をうたざるを得ないことになるんですから、それよりもほらあれ、フォワードルッキングで先手先手に対策打った方がよろしいんじゃないですかねえと思います。
○ちなみに10年前にはこんなのが
10年前にこんな施策があったと人から指摘をしてもらいました。
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako01/k981113a.htm
これを見ますと、2番がほほーと思うのでありますけどね。
『2.企業金融支援のための臨時貸出制度の創設
年末・年度末にかけて、金融機関の企業向け貸出を資金繰り面から支援していく趣旨から、企業向け貸出が季節的に増加する10〜12月期における金融機関の貸出増加額の一定割合(50%)を対象に、リファイナンスのための日銀貸出制度を新たに設ける。その際、担保は国債のほか、日本銀行が適格と認める民間企業債務(手形<含むCP>、社債、証書貸付債権)とし、原則として、担保価額の50%以上は、民間企業債務を差し入れることを条件とする。』(上記URLの1998年11月13日公表文書より)
ここを見ますと判るように、本件は「リファイナンスの貸出制度」でして、企業金融を増やしたらその半分の資金繰りは面倒みますよ(ただし有担保)というお話ですね。
えーっと、この時期ですけれども、問題になっていたのは金融機関の資本不足よりも、資金繰りの問題の方が大きかったので、こーゆー施策になった(実際問題としてあまりワークしなかったのではという記憶が微かにありますが)と思うのですけれども、現在の場合は98年と違って全体的に見れば金があるのに世の中に資金が回ってこないというのが問題なのですね。
即ち、金融機関(銀行とか証券)のリスク許容度が低下してしまった為に金の回りが悪くなり、金の回りが悪いから金融機関も企業もいざという時の為に資金を抱え込もうとする為により一層金の回りが悪くなるという状態なのでして、まあそこを止めるにはリスク許容度回復(というか要するに持てるCPなどの枠が足りないという状態)が必要なので現先オペだけじゃ不足だと思いますけど・・・・・
#というか、状況違うのだから10年前みたいな施策だすのは勘弁
2008/11/21
お題「さて決定会合/市場雑談/山口副総裁の国会答弁から」
ビッグ3の雇用は大事(まあレイオフはしてるでしょうけど)だよレガシーコストは減らさないよでもそれじゃあ救済できないよねって米国様大騒ぎですけれども、日本が大変な話になっている時に賃下げしろ人減らせ退職金給付を見直せダメ企業は潰せとか言ってたその口が何を言うとか思うのですが、日本コケても米国はコケないが、米国コケると日本も含めてそこらじゅうコケるというのもこれまた悲しい事実なのですね。
○さて決定会合
決定会合にぶつけるように素敵な株安円高進行でございますが、まあ目先のそれはそれとして、ダメダメGDPも出たことですし、金融経済月報に関しては下方修正は必至かと存じます。で、あたくし的に勝手に注目しているのは金融環境に関する認識がどうなるのよという話。
即ち、前回の決定会合およびその前における日銀の公式見解は、0.5%の政策金利水準の下でも金融環境は緩和的という認識で、利下げは緩和的な金融環境を更に緩和させるという文脈で実施していたのですよね。でまあその後も良くない経済指標が出てきて経済状況の悪化が確認されている中で金融環境の「緩和的」な度合いは相対的に低下している筈ですよね。この辺に関しては毎度毎度「緩和的な金融環境」ということになっているのですが、本当に緩和的なのだったら「緩和的な金融環境」をもう何年もやっているのに景気がこの有様とはどういうことよという気がせんでもない次第で。
と、書いてるうちに話が微妙に壮大になっちゃいましたが(汗)、まあ何はともあれですな、10月末に利下げをした中で各種要因が複合してという所なのでしょうが、長期金利は下がらない(ここ2日でやっと1.5%の呪縛から離れてきましたが)わ、CPレートはピカピカ優良銘柄(電力ガスなど)以外は下がらない上に却って上昇してる所はあるわ、昨日のブルームバーグニュースでも指摘されてましたが、TIBOR3か月もののレートは一旦低下したけど足元で上昇基調になっているわ(これはさすがに利下げ前よりも低いですけどね)となってまして、一方で景気も資産価格もこの有様ですから金融環境は悪化しているとしか思えないのですけれども、まだ本当に緩和的な金融環境なのでしょうか(そりゃまあ正式文書で中々それを引っ込めるのも(ホイホイ変更して褒められるよりも叩かれる傾向にありますし)少々ムツカシヤとというのはわからんでもないですが・・・・)という検討は当然ながら決定会合でも行われていると存じますけど、そのあたりの見解をお伺いしたいものだと思います。というか誰か会見で質問してちょ。
という金融環境な訳でして、実は前回の決定会合でも当座預金付利がどうのこうのという前に流動性強化策を打っていただきますと良かったのですけれども、まあ今回はその辺りでどのような話が出るのかも注目したいです。ただまあこれは施策一つ一つ検討していくのも手間掛かりそうな話(担保掛け目変えるとか昔やったABCP買取復活くらいなら大した事はないと思いますが)で、前回会合でその手の話が全然出てない(もしかしたら議事の席上では話が出ていたのかもしれませんが、総裁会見などではそんな雰囲気は見られませんでしたよね)ので、昨日今日(というか実質今日)の会合でどの位の物がでるのか注目したいです。勝手な妄想は一昨日書きましたのでまあそんな感じで。
○市場雑感
10年が1.5%に吸い寄せられるように云々と昨日書いたら超長期国債入札順調に株式市場絶賛下落で10年1.4%台前半に入るとかどんなヘタクソだよとか思うのですけれども(大汗)、何気にGCレポのロンバート張り付き状態とかいうアホウな状況が改善されたのも効いているのではないかと思うあたくし。ただまあ日銀オペによって支えられているという状況には変わりない上に、株価がなおも下落しそうで「リスク許容度」って奴が低下しやがりそうな悪寒もするので、これでまた今日株安で債券伸びないとかやられると気持ち悪いことこの上なしであります。
まあ毎度毎度申し上げてるCPも二極化というか三極化という感じで、レートの絶賛低下するピカピカ銘柄様に対して、レートが下がらない企業様に発行そのものが何かもうエライコッチャな企業様とかいう感じになっているのはちょっとねえという所です。その結果ローンが伸びて需要が上がるのでTIBOR上昇ってお話でして、昨日読んだブルームバーグの記事はまあ現象を端的に良く纏まっていると思うので一読推奨。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aMEYu9jxwpSg
まーこっちも局地的な話ですけれども、無担保コール取引の最高取引レートが今週になってしらっと上昇しております。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_m.htm
上記URLの日付のところをポチポチ押していただきますと判るのですが、今週になって取引最高レートが60台から70台に上昇。積み期間が変わって調達意欲が高まるとかいう面が無いわけでは無いとおもいますけれども、どっちかといえば環境の悪化とか、別に60台の無担ださなくても売出手形に入れたほうがいいじゃんとかいう動きなような気がするのでありまして、CPオペ(そういや昨日は札割れしませんでしたね)の実施で益々格差拡大社会のCP市場と似たような文脈なのかもしれませんね。
○量的緩和政策の効果に関する質疑(国会コーナー)
11月11日の参議院財政金融委員会から
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0105/170/17011110060002a.html
後半3分の1あたりでして、椎名一保委員に対する山口副総裁の答弁から。
『あと、九〇年代の経験をどのように世界に向けて発信していくかというお尋ねでありますが、先ほど財務大臣の方からもお話があったところでありますけれども、私どもも十年余りの間、非常に苦労に苦労を重ねてきたところあるわけでありますが、私どもの政策運営としては、やはり先ほども御指摘のありましたように、ゼロ金利政策を導入し、一時期は量的緩和政策を導入するというような形で対応してきたわけであります。そういう特に量的緩和政策というようなことについてはどういう意味を持ったかについて、実は明快な答えがまだ出ているということではありません。』
ほほう。
『ただ、私どもなりの理解ということで申し上げると、やはり量を大量に供給する中で極端にゼロ金利を追求していくという状況になったわけでありますが、そういう中ではやはり金融システム不安、それを背景とする金融市場での金融機関間のお金のやり取りが難しくなるという状況に対しては、これは有効打になったんではないかというように思っております。したがって、そういう意味で、量的緩和というのは、量を供給することで、金融システム不安を抱える世の中においてはそれなりの市場安定化効果を持ったんではないかというふうに私自身は認識しています。』
では日本は現在金融システム不安が無いので量的緩和はあまり関係ないということですね、判ります(-_-)。
『ただ、じゃ、量自身が直ちに景気を押し上げる効果を持ったのかどうか、これについてはいろいろと議論が分かれるところだろうと思っております。私どものこれまでの勉強の成果によると、実はそれについて明快な答えが出ているということではありません。そういうことであるんですが、量的緩和ということについてはもう一つ、私ども、時間軸を利かせるというような対応も取ったわけであります。これは、量的緩和という金融緩和政策を長く続けるということを世の中に明らかにすることによって長めの金利をより低いところで安定させると、そういった効果をねらったものであったわけでありますが、そのこと自体はやはり経済に対して何らかの浮揚力を持ったということはあるんではないかというふうに思っています。』
時間軸効果の話ですかそうですか。何かこれに関する報道を見たときには(市場は特に何の反応もしてませんでしたけど)量的緩和効果について副総裁が評価した答弁をしているみたいな感じでしたが、実際の答弁を読みますと評価しているのはあくまでも過去の話と時間軸の話ですなあ。
『いずれにしても、今申し上げたような形で量的緩和を実施したり、あるいはゼロ金利を追求するというようなことの中で、経済に対していろんな意味でのプラス効果というのはあったようには理解しております。』
ということで、何か「あったようには理解しております」ってどうも乗り気ではなさそう感が物凄く漂ってくるのはあたくしの気のせいですかそうですか(^^)。
と、ちょっとこのニュース出たときから気にはしてたのでクリップしてみました。
2008/11/20
お題「超与太話で適合性の原則という話でも」
まあいつも雑談小ネタなのですが。
○これはさすがに適合性の原則・・・・
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081119-OYT1T00366.htm?from=navr
駒大、デリバティブ取引で154億円損失
まあ皆様ご案内の通りのニュースですけれども、報道の書き出しがどこでも『世界的な金融不安の影響により』(上記URLより)となっています。本件に関しては朝日新聞の報道の方をみますと、直接の原因は確かに金融危機に端を発した相場変動ですけれども、どうみても運用のやり方がおかしいというか度し難い愚かな行為の結果という感じが伝わって参ります。朝日新聞の記事から。
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200811180350.html
駒大、資産運用損失154億円 キャンパス担保で穴埋め
『大学の説明によると、問題のデリバティブ取引は、主に金利などを交換する「金利スワップ」と「通貨スワップ」の2種で、昨年度、外資系金融機関2社と契約したという。契約額は、日本円で約100億円だった。』
・・・・・・(゜д゜)
えーっと元本以上飛ばしているのですが、何をどうするとそのような器用なプレイができるのかって要するにレバレッジを派手に掛けていたんでしょうけれども。
『少子化で学費などの収入減が見込まれるため、「実のある資産運用をするべきだ」と始めたという。経理担当者が窓口となり、大学理事会も了承した。
』
「アメリカではハーバード大学がどうのこうの」などと経済メディアを中心に鐘や太鼓で宣伝した結果、どシロートが乗せられてご登場の図という見事な鴨生成装置にも程がありまして、落涙を禁じえないのですけれども、まあ本件の論点は「適合性の原則」ちゅう話でしょうな。ということであたくしなりの雑感を。
まずですね、資産運用でリスクものに突っ込むというのはど〜ゆ〜事かと申しますと、個人にしても法人にしてもそこは同じなのですが、てめえの人生あるいは事業に関連するリスクを軽減させる為に行うというのが基本でしょと思う次第。即ち、個人だとしたら稼いだ金を現預金にしておくだけでなく、株買ってみたり家買ってみたりというのは物価や資産の長期的な上昇に対するヘッジでもあったりする訳ですし、輸出企業が為替予約するのは販売代金を円建てで確定させる事によって為替差損食らうリスクをヘッジするというお話でしょ。
となりますと、この大学の場合何がリスクかというのは上記記事にもあるように、「少子化で学費などの収入減が見込まれる」という話ですから、基本的にそれをヘッジするためにどういう運用をすべきかっていうのが議論のスタートになる筈。そうなると金利スワップや通貨スワップしかもレバレッジ付きなどというのはどう見ても本業のヘッジにならないですからやる意味はただの博打(しかもレバレッジ効いてるってあーた・・・・)しかございませんので、「実のある資産運用」とかもうアホかと馬鹿かと。
じゃあどうすれば良かったかといわれますと難しいのですが、「少子高齢化」のヘッジをするのですから、「経済が少子高齢化した場合に益の出るポジション」を組むという話になるのですから(そうじゃない時は本業がウハウハなので投資でちょっと食らってもウハウハの本業がカバーするでしょ^^)普通に長期国債でも超長期国債でも良いですけど、その手の成熟経済対応物件を単純に運用しておけば良いんでねえのと思うのですけれども。
なお、「それだと利益が少なくて意味が無い」というのはそもそも論として本業が儲かっていない(学校法人だから儲かるとかいう表現はあまり穏当じゃないですが、苦笑)という問題が発生しているのですから、運用で頭を悩ます前に本業のスクラップアンドビルトを行うのが先決であろうかと思いまする。
でもまあこの手の商品って持ってこられるスキームって基本的にそーゆー事情を斟酌して持ってくるなんちゅう例が中々無い次第でして、「2年VS20年の金利スワップ何倍版」(イールドカーブがスティープすると儲かるが逆に行くと死亡)とか単に目先の出来栄えが良い商品を売って回るアホウに買うアホウがいて何だかなあとか思った(超昔にそんなこと書いたこともあった気がしますが)などという事例は枚挙にいとまなしという所でございまする。
で、今般の事例ですけれども、こりゃどっからどう見ても売る側は相手がやってる運用が根本的に勘違いしている上に、過大なリスク背負わせて背水の陣の鉄砲バクチ打たせてるの気が付くでしょ普通に顧客の財産状況とか把握してたらと思う次第でして、こりゃ売った側は顧客に対する商品販売上の「適合性の原則」を遵守していると主張するの無理があるんじゃないですかねえと思う次第。てか監督官庁様におかれましては、こういう事案をよく精査して悪質営業員および悪質販売業者がその過程で見つかれば厳罰でじゃんじゃんしょっ引くべきであろうかと思いますけれどもどうでしょうかねえ。これさすがに野放しはどうかと思いますよ。
○引き続き相場雑感
長い所に関しては10年1.5%に吸い寄せられるようになっている今日この頃でございまして、正直何でこんなに長期金利が下がらない(上がりもしないが)のか訳判らんのですが、その点は先般ご紹介したPD懇とか今日のネタにするの忘れましたが投資家懇談会あたりでも議論になってましたわな。理由はいくつかでっち上げられるのですが、何が決定打なのか良く判りませんえんです。何となく体感的には債券お取扱業者の短期のファンディング部分が安定していない所なのではないかとは思うのですが。
でまあその短い所ですが、さすがに連日のオペ攻撃が効いているんだろうなあという感じでGCレートが手前で低下してますが、19日(昨日)の当日スタート翌日エンドのT+0のO/NのGCに関してはドルオペ担保の前残確保ニーズ部分があって資金運用じゃない部分もあると思われるのですが、まあそれはそれとしても、足元に近い所についてはだいぶ低下して良かったですねという感じ。
とは申しましても、別にレギュラーなどの渡しの所でリアルマネーのGCバイヤーが増えているという話でもなさそうなので、目線は下がったけれども市場が活発になってどうのこうのというのでは無いイメージですか。今やってるツイスト供給お疲れ様としか言いようが無いですが、このツイストオペの手をちょっと抜くと「1週間掛けて低下したレートが1日で上昇」の図になるのは必定という感じでございます(リアルマネーの出し手が戻っている訳ではないから)ので、まあ精々ツイスト&シャウトという所で頑張っていただきたいものであります(と完全にひとごとモード^^)。
気になるのはCPなんですけどね、GCとか下がってるしCP買現先が札割れする勢いで打ち込まれているのですが、その恩恵が来ているのは今の所は惜しくも電力会社様などに代表されますピカピカの高格付け銘柄に限定ちゅう感じでありまして、嫌われ系の銘柄に関しては逆の感じ。まあ月曜にあったように、高格付けでも沢山取りに行こうとするとレートを引き上げないといけないという感じなのですけれどもね。金融環境という観点からしますと、ど〜もこの辺りは気になる次第。と申しますか、やっと11月下旬になったばかりでこの状況だと年末どうすんのよという感はするのですけどもねえ。ピカピカ系の銘柄に関してはSB発行も復帰してきたのは明るい話ですけどね。
○おまいらヒマじゃの
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/un0811d.htm
『「にちぎん☆NIGHT」のうち、12月24日(水)〜26日(金)に開催する市民講座(講座番号2〜4)につきましては、申込受付を終了いたしました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。』
・・・・・おまいらヒマじゃの。クリスマスイブとかクリスマスとかに講座実施とかどんな罰ゲームだよと思ったのですけれども(笑)。
2008/11/19
お題「オペやら決定会合やら諸々の雑感」
といえば聞こえが良いですが、要するに世間話雑談です(汗)。
○オペなどの雑感
昨日も引き続きスポットスタートの国債買現先を2本立てでロールオーバ。スポネが2兆円の同額で1週間ものが1兆6000億円でこれまた増額。落札レートに関してはスポネが0.415/0.40と前日とほぼ同水準(足きりの按分が下がっているのは20日スタートだからでしょう)で1週間ものが0.436/0.43と足きりは変わらずで平均レートが低下してますので、まあレート的には落ち着いているんでしょう。
で、午後は午後でお約束の売手即日2本立てに共通担保オペがトムスタートの本店オペ1週間ものにスポットスタートの2月エンドという供給が行われまして、ドル供給オペ(1ヶ月もののロール)も含めますと昨日は都合オペ7本実施。スポットが17日になった所から1日のオペ本数を見ますと、13日木曜から7本、6本、5本、7本となっている訳ですが、その前ってどうでしたっけと11月頭から並べますと、11月4日から6本、6本、5本、3本、4本、2本、2本となっておりまして、まーこれは何だかんだと申しましても「17日の超過準備付利に合わせてオペを沢山打つようになってきましたね」という感じになっておりますわな。いやはや何ともという感じですが。
まあ元々ツイストやったらオペ本数増えるのは当然なのですけれども、やろうと思えばもっと早くから出来たツイストをここまで引っ張ったメリットが良く判らん所だというのは昨日ご紹介したPD懇における「レポ市場の金利高止まりと流動性低下が債券市場に悪影響を与えている」という指摘にあった通りかと存じます、といつもの悪態。
しかし何ですな、昨日あちこちのコメントとか見てたのですけれども、債券市場の解説の中で「17日からの付利で日銀が無担保コール金利の低下を容認するのではという期待が空振りに」というような話が多うございましたのは中々オモロイものを感じましたですよ。金融政策のロジックからすれば、ディレクティブの変更無しで低下容認というのは有り得ないのでして、そんな観測が出る自体がアホウなのですけれども、こと金融政策話になりますと、某海外著名レポートのような無茶苦茶な言説に乗って動いてしまうのが債券市場クオリティなのは従来から観測されておりましたが、主にそのネタに騙されて右往左往するのは日本事情に詳しくない毛唐の皆さんだと思ってたのですが、今回はどう見ても純ドメでこの思惑盛り上がりをやっていたのが理解に苦しむ所です。
政策決定会合でディレクティブの変更があるという思惑なら兎も角、月曜火曜のオペレーションで低下容認が無かったから失望とかアホちゃいますかと存じますけれども、相変わらず金融政策に関する認識ってのは日銀直下の隣あたりにあります国内債券市場ですらこんなもんなのねという所でしょう。
・・・・と申しますかですな、そもそも論として問題なのは、超過準備に対する付利への説明がペテンである所にある訳でして、そのペテンな部分に関しましては11月6日にご紹介した総裁講演への突っ込みの中で当座預金付利に関する説明部分で書いておりますのでそれをご参照ありたしでございます。
まあ要するに「大量供給を可能にするために付利を行った」という説明な訳ですが、もともと売出手形という万能吸収手段があることから、別に大量供給そのものはとっくの昔に可能だった次第でして、付利によって大量供給可能みたいなペテン説明をする上に、実際のオペレーションが17日スタートで露骨に新規実行とかするから、説明とオペレーションが相乗効果を生みましてそーゆー変な思惑が浮上したでござるの巻になってしまったとしか申し上げようがございません。
ということで、まあ金融政策の説明、即ち市場との対話にどう見ても失敗しています本当にカムサハムニダという所では無かったかと存じますが如何でしょうか。
付利するならもっと金利が高い水準で行うなら「積み最終などで金利が0まで低下するのを防ぐ」という意味はあると思いますが、0.30%の0.10%とかいうレベルで意味あるのかよという感じですわな。だから先日の決定会合前に「利下げするなら付利は金利正常化方向になってからでいいじゃん」とか申し上げたと思うのですが・・・・・・
「FRBはどうなの」とツッコミが来るかもしれませんが、あれは「コントロール不能状態になっている」というのが正しい表現で、本来は金融政策の枠組みが既に金利政策ではない状態になっている次第で、そこの説明をスルーしているFEDもインチキにも程がございます。
それから、オペとは関係ないですが、昨日はスポット20日でCP発行が高格付け物中心に大型発行が目立ち、そこそこレートが上昇したものが散見される次第。GCレポ取引のレートが若干落ち着いたとは言え、中々こっちまで回ってきませんわな、というかそもそもGC取引自体日銀オペじゃない資金の出し手(即ちリアルマネー)が乏しいままという状況は相変わらずでござるの巻なんですかねえという感じです。
今日の3か月FBは運用資産としてはリスクアセットじゃないですし、担保だ何だと使い勝手も良いですので、まー入札そのものはそんなに変な事にはならんでしょうと思いますが、CPの目線が昨日の結果で上がってしまうと月末に掛けてのCPレートがちと気になりますなという所です。
○決定会合雑感
明日から決定会合。まあ当初あたくしは先日の会合で展望レポートの見通しを下げてきて、GDPがお約束どおり悪かったこともありますので今週の会合で利下げまたは短観見て12月会合で利下げとかもあるでと思ってたのですが、本来10月末の会合で出て欲しかった流動性強化策が実はまだ出ていないという状況ですので、まあ今回はその手の話が何か出てくれるでしょうと期待してますがどうでしょうかねえ。
正直言ってペテン説明とかマッチポンプオペ(あ、言っちゃった)とかはどうでも良いので、地味でも実効性のある事をやって頂きたいと思うのでして、そーゆーのの地味な積み重ねが市場との対話とやらを改善させることに繋がるのではないかと思いますがねえ、とまた悪態恐縮。
じゃあどんなの出るかと言われますとこれまたよー判らんのですけれども、基本的には適格担保の拡大が銀行のファンディング支援でして、オープン市場への直接支援としてはCPオペの拡充、というか買切オペ導入が(実効性ある内容ならば)かなり効くと思うのですが、山口副総裁の就任会見ではCP買切に関して否定的(現状は現先オペで対応可能と発言してました、10月29日の駄文をご参照ください)だったのが気に掛かるところです。実施しても施策段階で信管外し攻撃が出そうで(ABCPとABSの買切がそうでしたからねえ)。
なお書き変更はどうなのと言われるのですが、まあやる気があるなら今回やるのでしょうが、なお書き変更って「年末越え」とか言って時限的なものにしようとしても、年末越えが過ぎれば年度末越えが出てくるという感じでその後が続くのでありまして(^^)、実質的な利下げという話に結局なってしまいますから、実質2週間前に利下げしたばっかで、おまけに超過準備付利開始してから実質1週間とかいう状況ですからちょっとねという感じです。恐らくなお書き変更してくると市場は追加利下げを織り込んで日銀を追い込みに行くことが想像されます。何せ前回の利下げは追い込み大勝利の図と(いやまあ日銀的にはそうじゃないと言うでしょうが、普通に見て追い込み大勝利でしょ)なってましたから、まあ次も追い込みに行くんでしょという感じです。
単に大量供給することだけ考えたら、12月の年末挟みの積み期間だけ超過準備0.3%(でも0.25%でもいいけど)付利して超ナローコリドーにする代わりに、一切合財日銀が面倒見ますよとやった方が「量」だけはでますな。レートが下がらないけど(苦笑)。
とまあそんなところで今日は雑談で恐縮でした。
2008/11/18
お題「小ネタ少々で勘弁」
○17日のオペレーション関連
実施したオペは以下の通り。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of081117.htm
でもって結果は以下の通り。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba081117.htm
積み初日(正確には日曜が初日ですけど)でコールの取りも確りだったのでコールでうりゃうりゃと下をやって調節姿勢を確かめるというような形にならなかったみたいで少々つまらない展開でしたが、売出手形即日を連発で実行し、しかも1発目は午後の定例オペの前に打ち込んでいますので「意図的に低下放置はしませんですよ」というのは把握できました。
・・・・のですが、情報ベンダーなど見てたら「当座預金付利によって大量の資金供給云々」という講釈をする人がいたり、ヘッドラインがモロにそうなっていたりするのには何だかなあ感が致しますわな。しつこく悪態を申し上げておりますように、「こういう形式の資金供給は別に当座預金付利の有無とは関係なく、やろうと思えば出来たこと」でありまして、当座預金付利と絡めて説明するのは原因と結果を取り違えておりますわな。
実際問題としては、「従来はオープン市場金利の上昇を放置していたのですが、漸くそれに対応したオペレーションを実施するようになったので金利が低下した」となるのでして、そもそも論として昨日の時点でみてリーマン前の状態からしたらGCって10bp(昨日の時点でT+3のオーバーナイトGCレポは45bpくらいのようです)程度しか下がっとらんのでして(以下悪態自粛^^)。
まるで当座預金付利によって金利が低下したかのような解釈が残ってしまうのは、明らかに因果関係がおかしい次第でして、こういう変な誤解の積み重ねって結局のところ金融政策とか短期市場に関する誤解(無理解)を育てるだけであって、最終的には金融政策の効果とかにも良い話ではないと思うので、今回の当座預金付利と利下げがセットになった時のペテンの香りが大変にするような説明(および如何にもそれに沿ったオペレーション)というのは自分で自分の首を絞めると思うのですけどねえ>日銀
まあ今まで上昇放置してたのを抑制(って言っても精々GC0.4台前半くらいが御の字だと思いますが)するオペをしたのはしないよりはマシなんですけどね。
#なお、ちゃんと判っている人は当座預金付利が原因という講釈はしていないで、「日銀が先日付オペを積極化したから」という説明になってますので、そーゆー意味では良いリトマス試験紙(^^)
○PD懇でも苦情殺到でしたかそうですか(^^)
先週金曜のPD懇。
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/c201114.htm
物国と変国の減額とか、全体的な増発とかの話が基本なのですが、何だかんだと言っても全体的に市中消化が増えそうな状況なので結構あっちこっち増やさないといけないみたいですな。という話に関しましては本職の方々が色々書いてると思いますので華麗にスルー致しまして(おいおい)、直近の市場動向に関しての発言から。
最初の人。
『最近の問題点は、レポマーケットの金利が高止まり、流動性が落ちていることではないか。結果として、マーケットの中での物のやり取りが困難になっており、リスクプレミアムも生じている。国債を担保に金をやり取りするため、信用リスクが無いように思われるが、取引としてはリスクを感じざるを得ないというのが現場の印象のようで、そこが落ち着くような方策を執ることが当局として一番に考えるべき点ではないか。それができれば、過度なリスクプレミアムは次第に剥落していくと思う。国債の発行増はマーケットのネタとしては分かりやすいが、長期金利が高止まりしている一番の理由はレポマーケットにあると思う。』
3番目の人。
『現状の長期金利がなかなか下がらないという点に関しては、短期のファンディングコストが安定しないというのが理由の1つである。市場自体の流動性が低下していることで値動きが荒くなっており、ボラティリティの高さに対するリスクプレミアムが要求されている。来年までを見通して考えた場合、ここまでの状況から考えると、中央銀行がある程度、流動性供給や信用仲介機能を補完していく状況がしばらく続いていくと思う。(以下割愛)』
4番目の人。
『株価が下がっても国債金利がなかなか下がず、むしろ上がる局面もあることが今の一つの象徴であろう。外部環境に比べて、金利が高止まりしている。その背景には、国債の需給の問題があり、問題の根源としてはGCレポレートが無担保コール翌日物レートに比べて高すぎることが挙げられる。日本銀行もその点を認識して、来週から準備預金への付利が開始されると理解している。しかし、短期市場の構造が大きく変化した中では、そもそも金融政策のターゲットをGCレポレートにするという考え方もあろう。かつては、都銀中心にマネーポジションだったものが、今では全てローンポジションになっており、資金供給オペに応える8割位は証券会社ではないか。今回は一時的な要因で証券会社の資金調達が難しいため金利が上昇している面はあるが、その結果、国債イールドカーブの発射台が上がってしまっている。これにより金融緩和効果が限定されるのであれば、改善を図るべきだと考えている。』
・・・・ということで、このコーナー5人の発言が出ているのですが、5人中3人がレポ市場の金利高止まりに対して苦言を呈するの巻。金曜の時点ではご案内の通り木曜からの供給攻撃で市場が少しマシになりましたが、その前には一時「50出してもGCが売れませんが」みたいな状態になって市場は止まりブローカーはヒマという素敵な流れになってましたんで、そらまあ苦言は出ますわなという感じです。
あと、5番目の人はレポ市場には直接言及しませんでしたけれども、日銀の保有国債償還に関して短期国債での再乗換に関して言及してまして(別のコーナーでもこの方と同じか別の人か判りませんが指摘してます)、日銀の対応に関しても債券市場に対する目配りをもっとすべきであるという話になっておりました。
○西村審議委員の講演(というか挨拶)
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0811d.pdf
本文4ページですので。
信用不安問題に関連して、ドル資金市場の話を延々としているのですけれども、こと東京市場に関して言えばドル資金より円資金の方が問題になっておりまして、いやあの国際協調も大事なのですが、足元のお掃除もちゃんとやっていただきたいものですねとか悪態を。
で。その結論部分からですけど。
『国際金融資本市場の動揺をもたらした「信頼の低下」の背景には、世界的に緩和的な金融環境と世界的な低インフレ、高成長が長期にわたって持続する中で、金融、実体経済両面での行き過ぎが生じ、世界的に様々な不均衡が蓄積されてきたことが重要な要因の1つとして指摘できます。現在は、その様々な不均衡の調整過程にあり、G7後、各国政府や中央銀行は矢継ぎ早に様々な対応を採っていますが、その調整には時間がかかるものと思われます。このため、金融市場や金融システムの深い混乱を避けながら、次なる発展への基盤を整えていくしかありません。その際の課題としては、今申し上げた対応策に加え、以下の3つの対応を進めていくことが必要です。』
緩和長期化がバブルの原因ですかそうですか。
『第1は、様々な不均衡が生じないよう、各国ともそれぞれの経済・物価情勢に応じて、適切なマクロ経済政策を行うことです。第2は、金融機関が金融商品の適切な評価やリスク管理などを行うインセンティブが働くメカニズムを構築することです。この点、今年春に国際金融資本市場の動揺を受けて公表された金融安定化フォーラムの提言を、着実に実行していくことが求められます。それに加え、中央銀行や監督当局は、個別金融機関のリスクだけでなく、金融システムに内在するリスクを明らかにすることによって、金融機関の自主的な取り組みを促していくことも必要です。第3に、市場・決済インフラの整備を続けることです。こうしたインフラの整備は、金融危機に伴う混乱の拡大を制御することにつながります。』
第1に「それぞれの経済・物価情勢に応じて」としらっと書いてありますので、当然ながら協調利下げじゃないですよと言いたい訳ですね、わかります。
#てな訳で今日は(も)引用水増しですいませんでした
2008/11/17
お題「中村審議委員講演など/超過準備付利開始」
ということで金曜日スルーした分も加えまして。
講演
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0811c.htm
記者会見
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0811b.pdf
まずは講演から。
○やっぱり第1の柱、第2の柱ってのは判らんですなあ
景気認識に関する部分もいろいろと読んだ方がよいのかもしれませんが、展望レポートやら白川総裁の会見など散々見てちとあたくし的にお腹一杯なのですいませんが敢えてスルーしまして、金融政策運営とか10月31日の利下げに関する説明の辺りを中心に見てまいりましょう。
『3.「10月展望レポート」における経済・物価情勢の評価と今後の金融政策運営』って部分の最後の辺りから、その次の『4.10月31日における金融政策の変更』の頭の部分から。
『以上のような現状認識、および見通しを踏まえた先行きの金融政策運営としては、これまでと同様、経済・物価の見通しとその蓋然性、リスク要因を丹念に点検しながら、それらに応じて適切に政策運営を行うという基本方針を維持した上で、当面、経済の下振れリスクに注意を払う必要があると判断しました。また、適切な金融市場調節を行うことで、金融市場の安定確保に万全を期していく方針です。』
とまあそういうことで引き続き利下げ後も下振れ警戒なのですが。
『10月31日の金融政策決定会合では、金融の一段の緩和を決定しました。それまでも政策金利の水準は0.5%と極めて低く、緩和的な金融環境を通じて民間需要を下支えしてきました。しかしながら、金融環境をより緩和的なものとし、経済活動をさらに支援することが必要との判断から、11月の金融政策決定会合までの当面の金融政策として、政策金利を0.2%引き下げ、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.3%前後で推移するよう促す」ことを決定しました。』
前の続きから読んでおりますと、「0.5%という政策金利水準は極めて低い」という認識の中で下振れリスクを意識して利下げしましたというようにも見えるのでありますが、そうなると何か「第2の柱で利下げ」っぽいイメージにも見えてくる所がオソロシス。相変わらずこの「第1の柱」「第2の柱」ってのの区分けが良く判らんですよねと思いました。
かつてBISのレポートで「追加利上げは第2の柱」っていうのが出て局地的に話題になりましたが、どうもこの「第1」「第2」っていざ説明する時になんか訳判らん状態になりますのでして、この区分けって却って説明がグタグタになる元のような気が致します。別に柱2本とかにしなくて良いんじゃねえのと思うのですけれども・・・・・・・
○では何で今回利下げしたかですが
『こうした決定の背景には、10月6、7日の会合以降に公表されたデータ等から読み取られる経済・物価情勢に大きな変化があったことが挙げられます。すなわち、(1)米欧の金融危機に端を発する世界経済の調整が一層厳しさを増してきたこと、(2)わが国の実体経済の回復時期の後退懸念及び下振れリスクが高まったこと、(3)世界経済の減速などによるエネルギー・原材料価格の低下や為替の円高により物価の上振れリスクが低下したこと等、がありました。』
ということでこの点に関しては質疑応答でツッコミがございましたので後ほど。
『実体経済面では、世界的な金融危機が、実体経済との負の相乗作用により世界経済を減速させ、ひいてはわが国経済が長期的な調整局面入りする瀬戸際にあるとも考えられるなど、景気の下振れリスクが一段と高まっています。』
これ見ても第2の柱っぽいんですよね。まあそれはともかく。
『例えば、10月6、7日の会合以降、先ほど申し上げたように、米国では、従来からの住宅市場の低迷に加え、個人消費や生産の弱さ、消費者マインドの著しい悪化が確認されました。わが国でも経済を牽引してきた輸出および生産の7〜9月の動向が明らかとなり、いずれも弱い動きであったことが確認されました。また、10月展望レポートを作成する作業の過程で検証した中期的な経済見通しも、経済が持続可能な成長経路に復していく時期がこれまでよりも後ずれしていることに加え、下振れリスクがより大きいことが確認されました。』
ということで、展望レポートの書きっぷりが若干変わったのですが、でも「より長い目で見たら持続可能な成長経路に復活」というのは変わらないというのだとやっぱり「第2の柱」利下げになっちゃうのかなあ。んでまあ金融市場に関する話ですが、前半の国際金融市場の話を端折りまして引用。
『こうした海外市場の混乱は、これまで海外に比べて相対的に安定していたわが国金融資本市場にも波及し始めており、10月以降の株価下落率は主要先進国の中で最大となったほか、日経平均株価がバブル崩壊後の最安値を更新しました。また、為替市場では円高となり、特に対ユーロでは急激に増価し、輸出企業の業績悪化に繋がっています。』
左様でございます。
『また、わが国の企業金融面においても、投資家が運用に対して極めて慎重になっていることから、CPを含め資本市場からの調達環境が悪化し、銀行借入への依存度が高まっています。同時に、先行きの景気や業績に対する危惧もあって、金融機関の融資姿勢は慎重化しており、これまでの緩和的な金融環境に変化が窺われます。』
・・・・・えーっとあのそのオペレーション、いやまあいいです。
ということで記者会見に参ります。
○何で協調利下げしなかったのかという質問
さっきの続きということで最後の質疑から先に参ります。10月6、7日に決定しないで何で半月遅れたのですかという質問に対しての答え。
『(答) まず、今回のケースは協調利下げという訳ではございません。白川総裁が申し上げているとおり、各国が協調して金融政策をやっていくことは必要ですが、同時期に利下げを行うということではなくて、それぞれの国の経済とか物価情勢に対応して最適な金融政策を実施するということですので、今回の利下げについても、協調利下げという観点からのアクションではないということはご理解いただきたいと思います。』
と、まず最初に断りまして。
『その上で、先ほどの講演では、10 月31 日に金融政策を変更するまでの間にどういうことがあったかという事実関係を申し上げたまでです。すなわち、この間において公表された日本経済に関する統計データ等をみますと、これまで日本経済を牽引してきた輸出が頭打ち傾向になったという数字が出ましたほか、生産についても3四半期連続マイナスという数字が出てきました。また、金融市場では、為替や株価が大きく乱高下したということも事実かと思います。このように、先ほど説明しましたのは、これらの理由によって利下げをしたという意味ではなく、この間の事実関係を述べているまででありまして、金融政策決定会合における議論の過程は議事要旨をみていただくしかないということでございます。』
何か判ったような判らんようなお話ですけれども、結局何だったんでしょうかねえ(棒読み)。まあ背景がうっすら伝わりますかなという所でしょうか(−−)。
○追加措置に関して
今後の追加措置に関してどう思いますかという質問が2つ飛んで来ましたが、それに対する中村審議委員の答えになります。
『一般論で申し上げると、景気が大幅に落ち込んだ場合は、中央銀行として常に対応を検討しなければならない訳で、具体的にどのような措置を講じるかは、その時々の経済・物価情勢や金融市場の動向を踏まえて総合的に判断していくということになると思います。ただし、極めて低い金利水準の下では、短期金融市場の円滑な機能確保という観点から、様々な問題が生じる可能性が高い訳であり、先行きの金融政策運営に当たっては、これらの点も踏まえて適切に判断していかなければならないと思います。(以下割愛)』
ということで追加利下げに関してはとりあえず否定的ですかね。ということで別の回答を見るとその辺きっちり説明しています。株価とか為替をからめて質問が来た所に対して。
『(答) 10 月31 日に利下げを決定した訳ですけれども、ご存知のとおり、金融政策が実体経済に波及して実効性が上がってくるまでには、相当な長い時間がかかる訳であります。また、利下げを決定した時の認識と、今の認識が大きく変わっているかと言われますと、――
確か、10 月27 日は、2003 年4 月28 日のバブル崩壊後の最安値の株価レベルを割っていたと思いますが――
金融市場とか株式市場の状況はそんなに変わっていません。金融政策は、別に株価対策でやっている訳ではありませんし、今、直ちにアクションを取らなければいけない状態とは思いません。先般の金融政策変更の実効性の浸透を見守っていきたいと思います。』
「金融政策は、別に株価対策でやっている訳ではありません」ってのはその通りでございますわな(^^)。まあとりあえず利下げ直後で追加利下げの話になるのだったらじゃあ最初からもっと下げて置けよという話になりますから、これはまーこんなもんなんでしょう。引用割愛しましたが、景気下振れに関する話は多いので、まあ別にだから金輪際追加措置取らんというもんでもないとは思いますけどね。
○えーっとそれはどうかと思いますが
『(問) 補完当座預金制度の付利の問題ですけれども、メリットについては、公表当日、日銀からよく説明を受けましたが、デメリットがあるのではないかという指摘も市場関係者の中にはあります。付利のデメリットについては、何か認識をお持ちでしょうか。』
『(答) 基本的には、短期コール市場をむしろ活性化していくために行ったことですから、その機能を損なうということは考えておりません。実際、現在の適用利率0.1%よりコール市場の方が高い水準となっており、今の水準であれば機能を損なうことはないと思います。今回の導入に当たっては、その点についてかなり配慮しました。』
既にこの付利にぶつける形で(本来付利が無くても実施出来た筈の)ツイストオペらしきものが実施されるという有様。で、まあそのツイスト実施前に問題が起きてなければよいのですが、先週前半にはオペ不足の結果GCがロンバートの0.50%でも売れない(=資金調達出来ない)状態になって市場が非常に困った状態になってしまったんですよね。
ええまあそれは付利実施前の事象ですから付利が市場機能を損なってませんけどね(棒読み)。
○どうでも良いが物は言いよう
講演に戻りまして、その冒頭部分でこんな話を。
『私が昨年4月に審議委員に就任しました頃は、世界経済は5%前後の安定的な成長を持続し、物価も安定、金融も緩和的で為替も円安傾向で推移し、米国のサブプライム住宅ローン問題の懸念を除けば、先行きもインフレなき成長が展望できるとの一般的な見通しでした。』
というのはまあ良いとして。
『ところが、昨年8月以降に状況は一変し、米国を震源とする金融市場の混乱の影響が実体経済にも波及した結果、足許の経済環境はまさに様変わりです。先行きの不確実性も極めて高く、大変厳しい状況となり、日本銀行も先月31日に、7年7か月振りの政策金利の引き下げに踏み切りました。また、米欧の主要な中央銀行も追加の利下げを行っています。』
「7年7か月振りの政策金利の引き下げ」って言われると・・・・(苦笑)。前回の利上げから計算したら1年8か月なんですけど、いやまあいいです。それ言い出したらFRBとかECBとかもっと凄まじい豹変振りなのですが、別にこーゆー時にわざわざ長いほうの時間を出さんでもよかろうにとちょっと微苦笑しちゃいました。
ここまで中村審議委員講演関連でした。
○さて超過準備付利ですが
金曜はまあお約束どおりに国債買現先のロール分がオーバーナイトで2兆円の1週間もので1兆円の実行。レートは若干マシになりましたが、午後の共通担保オペがロールをちょっと増額したのはまあ結構でございました。
ただまあ金曜も申し上げましたが、別にツイストそのものは前から出来る話の上、ちょっと上に書きましたように、先週前半にGCを0.50%でも売れないという市場死亡状態を放置していたという事がありますので、そっちの印象が強くて中々安心できませんなあという感じなんでしょう。調子に乗ってレートが下がるとオペ切られるんじゃないかという(いつでも切れるようにオーバーナイトで繋いでるんでしょという発想も起きる)思いもあり、まーあんまり安心できませんわなという感じでありまする。下がったとか言っても平均0.45とか(除くスポネ)ですし、オペも基本的に足が短いのでショートファンディングが溜まりやすいですから、ちょっと供給が減るとレートがいきなり跳ねるという構造は変化無いんですよね。
しかしまあ金曜は債券市場の方が勝手に盛り上がってたみたいで、2年とか堅調そのものになった次第。もう超過準備付利金利水準に向けて足元レートが下がるとか変な盛り上がりで何かんがえとんじゃと思うのですけれども、これ恐ろしい事に10月31日の利下げがどう見ても「周囲から追い込まれた」観が強いので、市場的には「また日銀を追い込んでやりましょ」って雰囲気になりたがるんでしょうかなと思うのでありました。
しかもわざわざ17日スタートにぶつけてツイストオペを実施した事によって債券市場に妙な思惑を呼びまくって大盛り上がりになっているというのもありまして、いやまあディレクティブ違反も辞さずというのであれば結構ですけれども、そんな意図も無いのにわざわざ17日にぶつけた結果、市場が意図してない「日銀の意図」を勝手に読んでしまい、勝手な反応するとかいうのはちょっと何だかねえ感が拭えませんわなという所です。
ということで、さて今日はまずコールどの辺からスタートするのかが楽しみなのですけれども、最初から0.2%とかで始まると面白いものが見られそうなので、そういう流れで是非お願い致したく。
金曜までエライ勢いで色々書いたのに何故今日はあっさり味かと申しますと、それは既に本石町日記さんのところで説明がきっちりと行われているからなのですな。必読。
http://hongokucho.exblog.jp/9870382/
あたくしの予想は2番です。本来は1番で然るべきなのですがね。
しかしまあ何ですな、インターバンクが落ち着いていると言う事で、オープンのレート上昇をまあ放置しておいて、いきなり17日の付利にツイストぶつけて市場が安定化とか言われましてもそれはマッチ・・・いやまあいいです。
2008/11/14
お題「17日スタートのオペ」
先にオペの話を、と思ったらそっちの話が長くなって中村審議委員の講演まで手が回りませんでした。ごみんなさいごみんなさい。
○国債買現先スポネ2兆円ねえ
昨日はスポットが超過準備付利となる新しい積み期間になる17日でしたが、9時半からオペ3丁。17日にエンドの来るCP買現先のロールが6000億円とまた札割れしそうな額かつ微妙に半端なエンドで打たれたのですが、それはそれとして国債買現先が2発でして、1週間ものが1兆6000億円にオーバーナイトが2兆円の打ち込み。
オーバーナイトの2兆円というのが新規実行で「ほほ〜」という感じでしたが、1週間ものはそもそも落ち分の同額ロールなのでして、「過去最大の現先オペ」とかヘッドラインを打つ情報ベンダーは見事に日銀に釣られていますので、期落ちのロールと新規実行の区別を良く考えましょうね。
と申しますのはですな、昨日のオペ結果から考えて、どう見ても今日も国債買現先はオーバーナイト分の2兆円もロールしないといけませんから、1週間ものの期落ち分も含めると今日は3兆打ってやっとチャラとなります(多分3兆円だと足りないのでは)ので、3兆円の国債買現先実行がオファーされて「連日の大量供給」とかいうのはミスリードにも程があるという話ですな。
などと話が逸れましたが、この合計3兆6千億円に対して応札が合計で約4兆9000億円あって、スポネ(スポットスタートの翌日物)はテール流れて0.43%まで入ったものの、平均はスポネで0.477でウィークが0.474(ウィークの足きりは0.46%)と、まあ結局足りないところは足りないので、応札限度のかなりの部分まで必殺の札で行ってるのですなあという感じ。T+2の金がやっぱきつくなってました(今週に入ってGCがオファーだらけになってましたし)ねえという感じ。
午後も共通担保オペ実行されてましたが、じゃあGCレートが下がったかと言いますと、T+0とかの辺りは最後余った人が0.3台出したりしてたみたいですが、まあ結局46−47位みたいでして、長期ゾーンを中心にやってる債券市場の中の人たち的には妙な期待がある(後述)節があったりなかったりするらしいですが、短い所&特にオープン市場の皆様におかれましては、もう散々出す出す(自粛^^)の煮え湯を飲まされて居ますので、まあ今日以降来週一杯くらいまでオペ状況を見ないと安心して(?)GCレート下がるっちゅう訳にも行かんでしょうねえという感じじゃないっすかねえ。ということで次の小見出しに続く。
○こういうツイスト別に付利と関係なく出来るのですが・・・・・
んでまあ昨日は例によってほぼ15時に売手即日6000億円で足元の余剰分を引いておりました。実際問題として運用をしないといけない立場で当日余剰資金を抱えている人はそんな時間のオペまで待ってられませんので先程申し上げたようにT+0のGCが0.3台とかになるのですけれども、まあ来週もそんな感じで足元に余剰感が出た場合には即日オペで資金を引くという動きは普通に考えれば継続するものと思料されます。
・・・・えーっとですな、かねてから先の資金というかオープンの資金がタイトでGCレートやらCPレートなどが上昇してますよという話は別に場末のあたくしの駄文を持ち出すまでもなく、短期市場のそこら中で指摘されてまして、とにかく資金が動かんのでツイストオペ打って「オープン足りない、インター(の邦銀)余ってる」状況を緩和して下さいなという指摘はあったと思うのですが、10月になってから9月末対策で多めに出てた資金がさっさと引かれてオープン金利上昇してもシャーナイナイ!って感じのオペだったのですが、付利開始の17日にぶつけてツイストオペですかねという感はあたくし物凄い勢いであるのですけれどもね。
と申しますのは、売出手形(と売現先)という資金吸収手段がある日銀は当座預金付利問題と関係なく「まず先に供給オペをバシバシ打っておいて足元資金を引く」というのは可能で、これは付利金利の有無とは関係ないお話。今までもやろうと思えば出来た筈なのですが、当座預金付利という「新しい日銀の施策」にぶつける形で急にツイストオペらしきものを開始というのは(以下勢いで書いた部分読み直して激しく自主規制^^)。
ま、ツイストやらないよりはやる方が良いのですけどね。
○ということで短期の人はともかくとして長いところでは変な思惑が
ここもと言われているらしいのですけれども、「当座預金(超過準備)付利開始によって資金供給が強化(されてレートの低下云々)」ってのが特に債券方面で流布されていまして、短期ゾーンをやっている担当の現場労務者の席には「そうなんですか」という照会多数というのが各社の光景のようで誠に心が温まるものがございます(-_-メ)。
・・・・・・残念ながらそれは制度とかの面を考えれば有り得ません。まあ昨日みたいなツイストは当面打ち続けられると思いますが、売出手形で吸収してオーバーナイト金利をコントロールする事が可能な日銀のケースでレート低下放置を意図的にやる(積み最終とか期末年末みたいに完全に調節できない場合は仕方ないですので念のため)というのは、金利ターゲットで金融政策を実施しているという建付になっている現状では調節担当部署の越権行為になっちゃいますよね。政策委員会で決定された事項を調節担当部署の判断で勝手に逸脱しちゃうんですから。
従いまして、「当座預金付利で供給が強化されてコールレート低下」とかいうのは理屈として無いのですが、どうも変な期待をしている向きがある中でまさしく17日スタートでツイストオペ開始したもんだから期待がちょっと高まってしまった気がするんですけれども。なんちゅうかこれも10月末利下げに当座預金(超過準備)付利をつけて、おまけに市場機能がどうのこうのとか訳判らん話(金利のフロア設定、潤沢な資金供給、市場機能の重視、って3つのお題は同時に満たせないと思いますけど・・・・)をするもんだから、変に債券市場が期待しちゃいまして、もうこれはコミュニケーションギャップとしか申し上げようが無いというのはちと辛口すぎですかそうですか。
もしね、現状のディレクティブのままで資金供給ガンガン出してフロア金利をガンガンつけるのを容認っていうのだったら、そもそも論として最初から0.10%まで利下げしとけよという話だし、その方がサプライズでアナウンスメント効果あったでしょという話になる訳で、「なお書き」が入っていない状態で大量供給によりコールレート低下期待とかそれはどうなのかと。
ちなみに、ツイスト強化すればGCレートとかには低下の期待がありますが、そもそもこのGCレートがロンバート近辺で張り付きの巻だったのですから、低下もクソも元のレートが高杉晋作であって、まあそりゃ今よりは下がりますけれども、もうちょっと前にコールが50でGCが55あたり、3か月FBが0.60割ってた時から考えると何だかねって感じです。
○なお書き修正雑考
まあディレクティブの中に「年末に向けた資金需要を鑑み潤沢な資金供給を行う場合、目標水準を一時的に下回る事も有り得る」というような「なお書き」修正が行われるというのは年末対策で有り得る話。
ちなみに、12月の通常決定会合が19日でして、19日に決定されても翌日は22日でして、22日のスポットは25日ですしT+3は26日ですので、既に年末越えの資金繰りという観点からは遅いですがなという事になりますので、まあ通常会合でやるなら来週末の方がよろしかろうと思いますが、付利開始直後でオペレーション打ってどういう市場反応するのかが見えてこない内になお書き修正ってのもバタバタ感がしますわなという感じ。というかそれなら10月31日になお書き入れとけよという所で、年末向けの流動性強化策を臨時決定会合で行い、ついでになお書き修正ちゅうのも有るのかもですね。
そういやFRBの場合はこれが見事にFF金利誘導できてない状態になっているのですけれども、本来はこういうときは「金利目標には拘らずに流動性を大強化する」と宣言すべきだと思うんですけどね、余談ですけど。
#ということで中村審議委員の講演が見事にスルーされました
一応URLおいときますね。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0811c.htm
内容的には元々中村さんは景気に対して厳しい見方をしている人ですので、そういう点ではハト派色が濃い内容に。0.3%の利下げのところに関する説明部分はまあ決まった事なので白川総裁が先日講演していた苦しいロジックを同じように展開していますけれども(苦笑)。週明けに会見とセットで参ります。
2008/11/13
お題「久々に国会会議録でも」
またまたモーサテが悲観一色になってまいりましたな。
#しかし北浜楽観砲がピンポイント過ぎてオソロシス
最近の国会出席ネタで会議録が出ているのは衆議院財務金融委員会と山口副総裁の所信表明聴取した参議院財政金融委員会なのですが、まずは民主党で、というか与野党揃ってみてもツッコミの正確さと筋の通り方がちゃんとしている民主党小沢鋭仁委員の登場する10月24日の衆議院財務金融委員会から参ります。
衆議院財務金融委員会10月24日実施分。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009517020081024001.htm
○小沢鋭仁さんのツッコミは見てて大変結構という話
後半4分の3くらいのところで小沢さん登場。
『○小沢(鋭)委員 民主党の小沢鋭仁でございます。幾つか中川大臣並びに日銀総裁に御質問したいと思います。まず、景気及び物価の見通しについて、中川大臣及び総裁からお答えをいただきたいと思いますが、お答えいただく前に、簡単に私の認識をまず申し上げておきたいと思います。(その部分まで引用すると長くなるので割愛)』
で、中川大臣と白川総裁の答弁の後に筋良く突っ込んで来るのでした。
『○小沢(鋭)委員 総裁、一点確認をしたいんですが、今、総裁の説明の中で、昨年末から減速を始め、こういう話がありましたが、ことしの二月に私は福井総裁ともこの場で議論をして申し上げてあるんですけれども、そのときは日銀は、依然として緩やかな回復基調にある、メーンシナリオはそうだと。それはおかしいと私は申し上げましたけれども、そのときはそういう答弁だったんですが、変わったんですか、認識は。』
『○白川参考人 景気につきましても物価についても、見通し、これは我々最大限いろいろな情報を集めまして予測を行っておりますけれども、しかし、経済の先行きを一〇〇%正確に予測することは残念ながらできません。したがいまして、我々がいつも心がけていますことは、まず相対的に蓋然性の高い見通しがどういうものであるか、それから、その見通しに対して上振れ方向、下振れ方向、どういうリスクがあるかということを常に認識する、その上で、その都度その都度入ってくる情報に照らして点検をしていく、その段階でもし変更をすべきであれば、そこはちゅうちょなく変更していくというふうにしております。』
『今、我々の標準的な見通しですけれども、これは、この春以降、逐次見通しを下方修正して、景気については下方修正を行っております。一方、物価については、これは上方修正を行っております。私としては、経済、物価の変化に合わせて常に予断を持つことなく見通しを変えていく、しかし、その時点その時点では最大限努力をしていくという姿勢が非常に大事であるというふうに思っています。』
『○小沢(鋭)委員 総裁、蓋然的な見通しと、それから下振れ、上振れのリスクを云々という話ですが、変わったんですよ、一言で言うと。そこはきちっとお認めにならないと、あれだけ私は二月の時点で日銀に警告を発したんですから、幾らここで議論したって何にも役に立たないじゃないですか、こんなことばかり言っていたら。ということをまず申し上げておきたいと思います。』
『中川大臣がいなくなっちゃったので、そうしますと、では、まず日銀の方の話で申し上げたいと思いますけれども、要するに、危機の認識というのが余りにも希薄であったので、ですから政策がおくれてきているわけですよ。お手元に配らせていただいた表の中で、「景気と金融政策」という表を皆さんにもお配りさせてもらいました。これは亀井委員が先ほどお配りしたものとほとんど同じなんですが、私の方は先行指数が若干入っている、二本になっている、こういう話だけなんですけれども、これを見れば、明らかなことは、金融引き締めからいわゆる先行指数は一気に落ちて、そして一致指数も落ち始めている、こういう話なんですよ。』
『だから、私が冒頭申し上げたように、ここはもう金融政策の失敗だということだと私はこれで思っているんですけれども、これに対しては、この表の意味する私の申し上げていることに対しては、日銀はどのような意見をお持ちですか。』
・・・・まあこういう感じで突っ込まれると白川総裁も答えるのタジタジという形でございました。以下引用してるとキリが無いので割愛しますが、景気見通しが外れましたねという方向で突っ込んで、回復見通しが外れたのだから利下げをすべきという突っ込みをすると切り返しにくいと思われます。質疑応答が中々厳しいので一読推奨。
ただね、さすがにこの席で白川総裁はそういう話をしないですけれども、日銀の利上げだけじゃなくて、その間に「景気が回復したので」と言って定率減税を撤廃したことを初めとして財政政策が結構な引き締め方向に動いた点に関してのツッコミもあって然るべきだと思うのですよね。財政引き締め路線をそのままにして金融緩和したって緩和効果減殺にも程があるでしょと思う次第で。
○こういう突っ込みをするとこういう返しをされるという見本を少々(^^)
・マンデルフレミングのモデルを出してきた場合
まあ良いツッコミをする小沢さんですが、最後の方にマンデルフレミング効果を出して突っ込むのは切り返しの余地を与えるので残念な所です。
『○白川参考人 お答えいたします。今先生の御質問の中にございましたマンデル・フレミングのモデル、理論でございますけれども、これは多くの仮定に基づく単純なモデルではありますけれども、金融財政政策の効果について有益な示唆を与える理論の一つであるというふうに思っております。私も学生時代に、このマンデルの理論は勉強いたしました。ただ、その有効性につきましてはさまざまな状況に応じて変わり得るという点についても同時に留意が必要であるというふうに思っております。』
『変動相場制のもとでは、これは多少教科書的な話で恐縮でございますけれども、金融政策の効果は大きいというその考え方は、例えば、金利引き下げを行いますと、為替レートが円安になり輸出が増加する、したがって景気がよくなるという理論でございます。しかし、実際の為替レートの動きを見ますと、もちろん金利差は一つの要因ではございますけれども、いろいろな要因によって動いております。足元は、確かに今、国際金融市場の混乱を受けまして円相場は円高方向に振れておりますけれども、しかし、大きな流れで見てみますと、量的緩和中と量的緩和をやめた後を比べますと、むしろやめた後の方が円安傾向が強まっているということであります。』
『そういう意味で、私は、このマンデル・フレミングの理論、もちろん有用な理論の一つだというふうには思っておりますけれども、我々政策当局者は、特定の理論なりあるいはモデルに依拠せず、しかし、もちろん、金融政策はさまざまなルートを通じて経済、物価に幅広く影響を及ぼす極めて重要な政策であるというふうに認識し、自覚しております。(以下割愛)』
・協調利下げしなかったから円高になった(これは亀井善太郎委員の質問)
自民党の亀井善太郎委員が先頭バッターで質問しているのですが、その中から。
『○亀井(善)委員(前半割愛)そういう中で、まさに足元の金融政策について申し上げれば、十月の八日、欧米の中央銀行六行で協調利下げというものがございました。この協調利下げ、日銀は参加をされませんでした。この後どうなったかといえば、円高、株安であります。我が国はやはり輸出産業が日本全体を引っ張っていく、機関車論とまでは言いませんけれども、そういう国であります。本当は内需を拡大していかなければという、ここはまた別の議論でありますけれども、そういう中で円高というものがこの国にとって当面マイナスの大きな作用になってしまう、これはもう白川総裁に私が改めて申し上げるまでもないことであります。ただ、実態としては、ここの協調利下げに加わらなかったことで円高、株安が起きている。』
『これからの経済政策は、世界恐慌との闘いであります。世界恐慌との闘いにおいて、私はやはり国際協調というものがこれからのキーワードだと思っています。これは財政政策においてもそうですし、特に金融政策においては絶対に国際協調はしていかなければいけない。そういう中で、金利差が生まれれば、当然そこはマーケットが見て、これは円を買っていいんだ、円高だ、こういう形になるわけでございます。(以下割愛)』
亀井さんは他にも色々と突っ込んでおりまして、そっちでは筋の良い方向からの突っ込みもあるんですけど、こういう短期的な話をからめると切り返しの余地が発生するので残念な所(^^)。
『○白川参考人 お答えいたします。金融政策の運営に当たりましては、その政策効果の波及のタイムラグを考えながら、各国の経済、物価情勢に照らして、それぞれが有効と判断する政策を実行していくことが適当であるというのが各国中央銀行に共通した理解であるというふうにまず考えております。今月八日に欧米中央銀行は同時に政策金利の引き下げを行いましたが、これは今述べました理解に立ったものだというふうに私は考えております。』
と、こういわれますわな。ちなみにその後を少々。
『(途中割愛)日本銀行でございますけれども、今先生御指摘のとおり、このように非常に世界の金融市場が混乱しているときには国際的な協調が大事だ、私はその点について全く同じ認識に立っております。各国の中央銀行は密接に意思疎通、意見交換を行っておりまして、私自身も、電話会議も含めて頻繁にそうした意思疎通を図っております。日本銀行も、実は、この協調利下げというものには参加しませんでしたけれども、しかし、あの共同声明自体については、これは私はぜひ参加すべきであるというふうに判断して、現に参加をしております。』
『今みたいな状況のもとで何が一番大事であるかといいますと、金融市場の安定を確保すること、これが最も大事なことでございます。その意味で日本銀行は何ができるのかということを常に考えておりまして、これはやや専門的な話になりますけれども、国債のレポ市場の流動性改善のための措置、企業金融円滑化のためのCP現先オペの積極化、それからドル資金供給オペの拡充など、早期に対応可能な対応策をとってきております。これは、今の日本の経済情勢あるいは金融市場の動向を踏まえますと、流動性の供給を通じまして金融市場の安定を確保することが中央銀行にとって最も重要な責務であるというふうに判断したものでございます。』
『先行きの金融政策の運営でございますけれども、私は就任以来、予断を持つことなく虚心坦懐に経済、物価情勢を見て、その上で中長期的な経済の安定を図る観点から何が正しいのかということを常に真摯に考えていきたいというふうに思っております。そういう意味で、経済、物価の見通しとその蓋然性、上下両方向のリスク要因を丹念に点検しながら、それらに応じまして機動的に金融政策運営を行っていく方針でございます。それから、何よりも国際金融資本市場がこういうふうに今混乱をしておりますので、この安定確保に万全を期していきたいというふうに考えております。』
ということで、まあ10月24日の時点では翌週末(31日ね)の決定会合での利下げはメインのネタではなくて、この時点では当座預金付利を始めとする流動性対策を打って展望レポート見通しを下げるという流れがメインのネタだったんでしょうなと思わせてくれるところでありまする。
○しかし民主党ちゅうのもオモロイところで
10月29日の衆議院財務金融委員会で民主党の古本伸一郎委員がこんな話を。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009517020081029002.htm
会議録の真ん中あたりになります。古本さん質疑応答の最後の方。
『○古本委員(前半割愛)お配りしている資料の二十をごらんいただきたいと思うんですが、実はこれは、かねてから日銀がおっしゃっておられる利子所得の推移なんです。結局、一九九一年、これからずっと低金利の時代に入ってきましたので、九一年をゼロと置いた場合の、いわゆる得べかりしといいますか、逸失金利、これは、高齢者世帯を初め預金のある皆様に約三百六十兆円の金利を銀行は払わなくて済んだ、いわゆるお年寄りの皆様の預金金利はスズメの涙しかつかなかった、こういう話をよく与野党を超えていろいろな先生方がおっしゃっています。』
それかねてから日銀が言ってるんじゃなくて、かねてから民主党が質問するから作った資料だと思うのですが(苦笑)。で、ここで終わればいつもの民主党クオリティですが、実はこの先がメインの話(^^)。
『一方で、日銀がつくってくださって、けさやっと間に合ったのでちょっとお配りはできなかったんですが、企業部門を見ますと、今度は逆に低金利のおかげで設備投資ができ、そして物をつくり、そしてそれをまたそこの従業員、家族に労働分配できる、こういうメカニズムでいいますと、実は支払い利息は逆に助かっているんです。当然です。さらに、住宅ローンを抱えておられるいわゆる働き盛りのサラリーマン家庭あるいは家を建てた方によれば、これは低金利のおかげで随分助かっているんです。』
『そこを差し引きますと、実はネットで見ますと、九一年をゼロと置いた場合、ちょっと僕が読み上げますけれども、二百七十三兆円の金利を国民の財布に金融機関が払わなかったという議論がある一方で、企業部門では二百九十六兆円金利が助かった、こういう話があるんです。』
おお!これは!
『これに加えて、大臣、公債費ということでいけば、国としてはどのぐらい助かったんですか。では、一言で言ってください。何兆円助かったんですか。』
この質問に関しては財務省主計局次長の真砂靖さんが答弁しています。
『○真砂政府参考人 国債費のお尋ねでございますが、その時々の金融政策が国債の金利にどのような影響を与えるかということは、なかなか推計が困難でございますので正確な推計はできませんけれども、先生の御指摘の九一年とそれから二〇〇六年を比べるということで、既発債を含めた各年度における表面利率の加重平均が、先生がおっしゃった一九九一年度で六・一%、それから二〇〇六年度で一・四%ということで低下しておりますので、仮に、相当大胆な仮定ではございますけれども、平成三年、つまり一九九一年の金利がずっと続いたということにいたしますと、十八年度の利払い費は三十二兆になります。実際の決算は七兆円でございますので、その差は二十五兆円上回るということでございまして、これを一九九一年からの累積でいきますと、百七十兆円というような計算にはなります。』
でもって古本委員はこの答弁を受けてこのように発言。
『○古本委員 つまり、大臣は金利については口出しできないとおっしゃいましたけれども、百七十兆円から助かっているじゃないですか。そういうことなんですよ。つまり、今、本当に手を打つならば、これはもうはっきり言って、量的緩和、さらには金利の引き下げ、ゼロ、マイナスも含めてお金を供給するしかないと思うんです。だからきょうは聞かせていただきました。(以下別の話なので割愛)』
・・・・・・低金利政策を長期化させたからケシカランとか言って武藤副総裁の総裁就任を拒否した政党の中の人の発言とは到底思えませんが(^^)、まあ利上げで利子所得増やして家計にプラスとかいう無茶苦茶理論を言う人がいると思えば、こういう話が出てきたりもするというのがオモロイちゃあオモロイですね。
#ま、それ言い出したら自民党の中でも利上げで利子所得とかいう話をする人がいた記憶があるのでどっちもどっちなんですけれどもね(苦笑)。
ということで、国会会議録のコピペ大会(またの名をネタ切れの手抜き)で大増量して甚だ恐縮至極でございました。
2008/11/12
お題「市場メモとかその他少々」
退職金自主返納とか給付金受給を高額所得者自主的辞退とか、立法府の構成員でもある行政府の長が法律的続きを何だと思ってるのかと小一時間問い詰めたいですが。
○何か連日同じネタですが
昨日もまたまたオペ金利上昇。共通担保オペのレートが平均0.485%の足きり0.48%となりましてま〜そうですか今日も48ですかとか思ったのですが、良く見ればこのオペは2か月ロングで1月29日の足という期間の長いもの。似たような期間の全店オペは先週木曜に実施されたのですけれども、このオペは平均0.477%の足きり0.46%なんで、イメージ1つ半位上昇したでござるの巻。というかロンバートに益々接近しているのですけれども・・・・・
ということで、GCも殆どロンバートみたいですし、10月14日にわざわざ臨時会合開いて積極的な流動性供給をするとか言ってたのは何だったのでしょうかと小一時間な訳ですが、まあこの状況とっくに理解した上でのこのオペレーションなのですから、まあこれは所与として考えないといけませんなあという感じですわな。ショートファンディングは溜まるわオペ残減少でオープン市場では逼迫感強いわで、この調子が続くと年末越えのCPレートはどうもうまく無さそうという感じですかね、金融環境という観点からすると困ったもんです。
んな訳で本日は3か月FBの入札が。3か月だと一応先行きの利下げ期待も加味されるでしょうし、年末越えのドルオペ担保とかのニーズもあるでしょうからまだそれなりに何とかなるのかとは思いますが、既に昨日の引けが3か月既発債0.445%とか素敵な状態に。おまけに年内償還だと0.47だの0.48だのとかもっと素敵な状態になっておりますので、0.45%で止まってくれる感じがしませんが大丈夫でしょうか。いやまあ0.50%でとりあえず止まるのは鉄板も鉄板なのでまあ良いんですけど。
ところで、16日から例の超過準備付利が開始になるので、17日スタートのところからは「超過準備付利」→「資金供給オペの強化」→「レート低下してウマー」という観測もあるようですが、資金供給オペの強化をやるならとっくの昔にやっている筈でございますので、一応期待はするけどあまり当てにはしてませんって感じじゃねえのかなあと思うのですけれども。
これが付利金利が25bpとかでフロアにガンガンぶつかってもディレクティブで示されている誘導目標から大して乖離しませんよというのであれば急にジャンジャン供給オペが増えるのもアリだと思いますが、付利金利とディレクティブの間に20bpありますので、フロアガンガンという訳にはいかんでしょ。何せ先日の利下げ幅が20pで25bpか20bpかで議論してた位なのですから、5bpなら兎も角、20bpで「細けぇ事はいいんだよ!」と言うわけにはいかないという理屈になりますわな。
#いやこれでいきなりガンガン供給してコールが0.10%まで低下するのに吸収オペ実施しないとかだったら笑うしかないのですが
ま、17日スタートのところからいきなりツイストオペ強化とかしたらそれはそれで「今までやらないで超過準備付利から急に始めるとは何でちゅかねえ」としか申し上げようがございませんが。
○FEDの誘導目標が実際のFFレートと乖離しまくっている件
本石町日記さんの所から、というか市場の中の人だと東短リサーチの加藤さんのレポート読んでると思うのでそっちを参考にすればと思うのですけれども。
http://hongokucho.exblog.jp/9848959/
こちらのエントリーはあまりにもマニアックすぎてコメントがついてない(今朝の時点で)のですが、このエントリーは重要な論点を含んでいるお話かと存じまして。エントリーの最後の所に本石町さんが、『まあ、FEDとしては無理に誘導目標維持するよりも、流動性供給を優先するのに精一杯なのだろうと思われる。』と指摘していますが、現実問題として連銀当座預金に付利する前にもFFレートがガンガン下がって誘導目標どころの騒ぎじゃなかったのですが、付利水準をFF誘導目標に上げても結局同じ状況。
・・・・ってなりますと、じゃあFOMCで「FF誘導金利目標はなんぼ」とか決定しているのはありゃ何なんですかというお話でして、金利ターゲットを実質的に放棄しているのに金利ターゲットをしてる振りして、実際にやっているのは流動性大供給の緩和という状態。それならちゃんと「金利ターゲットは当面放棄」とか「流動性拡大で目標を設定」とかアナウンスした方が政策の整合性が取れると思うのですけれども、その辺を見事にスルーしてなし崩しで政策の枠組み変更ってのは中央銀行としてどうなんでしょ(目先はそれでもいいけど将来の金利誘導で困らんかという話ね)と存じますが。いやまあ米国様では火がボーボー燃えているからそれどころの騒ぎじゃないってのも判りますけれども・・・・・
などと思うのですが、それだけ火事場状態なんですねえという事で。
○超昔のネタで申し訳ありませんが
埋蔵金は国債償還どころかきっちり費消する話になってしまったのでこのネタ自体が昔々の話になっちゃいましたが(超大汗)、9月14日と17日に書いたお話の補足をば、って2か月も経過(しかも17日には「続きは明日」と申し上げておりまして・・・・)してしまいまして、リーマン破綻以降のドサクサですっかり流してしまい田中先生には大変失礼致しておりました。
いわゆる埋蔵金を国債償還に充てる場合に、市中国債の買入を行うのと日銀や政府部門が保有する国債を買入消却するのと、市中から買入する場合って、(前提条件として政府部門から買入を行った場合に発生した余力で国債発行が減るかこれらの部門の国債保有がその分増えるかのどちらかになるというのがありますが)ざっくり考えると同じ話なので、いわゆる高橋埋蔵金案で殊更に市中国債の買入に拘るのはどうですかねという風に申し上げた次第であります。
では全く意味が無いかというとそんなことは無く、埋蔵金吐き出しによって出てくるフローというのは基本的に短期国債とか日銀売現先のような短期資産でありまして、その短期資産に対して買入消却が行われる国債は中長期国債になる筈ですので(例えば先日ご紹介した日銀の保有銘柄増減を見ると、先月は5年50回債(2010年12月償還)と5年56回債(2011年3月償還)が減っているので恐らくこれが買入消却されたのでしょう)、相対的に低金利の短期資産と高金利の長期負債を落とすことになるので、その点では意味がある話だと思います。政府部門での資産負債構成の改善というお話になっちゃいますが。
それをより広げると、日銀や政府部門が保有する国債の買入消却よりは、市中からの買入を行って、かつそれをできるだけ長期のゾーンからの買入を行う方が効果はある(短い期間の国債を買入償却するのだったらそれこそただの両建て落としですから)という話になると思いますので、そう考えますと高橋先生の「政府部門よりは市中国債の買入」というのは同意でありますが、それを堂々「景気対策」と言われるとそれはちょっと言いすぎ(キャッチーさを重視して内容が大げさになるのが高橋先生の仕様みたいですけれども)なのでは無いかなというのを前面に出しすぎたかなあと思ってます。
2008/11/11
お題「前のネタで残ってたのを整理/市場雑感」
○10月7日の決定会合議事要旨から(続き)
先日は金融政策運営に関する部分だけで終了しちゃいましたので、念のため経済情勢とか金融情勢とかの部分を。
・下振れリスク満載
景気先行きの要因分解をしますとこれがまた見事に下振れ満載。
(輸出)
基本的な見通しは横ばい圏内なのですが・・・・
『ある委員は、短観の今年度輸出計画の伸びが鈍化しており、先行きを従来よりも慎重にみていく必要があると述べた。何人かの委員は、自動車関連の輸出が減少していることに言及し、その動向は国内の生産や雇用に大きな影響を及ぼすため、今後の動きを注視する必要があると述べた。』
という感じで下を見る向きが増えるの巻。こんな調子で各項目が続くのでございます。
(設備投資)
こちらは明るめの話と暗めの話が両方ございますが、後付けになりますけれども昨日の機械受注を見ておりますと強気にはなれまへんなあ。
『ある委員は、大企業の一部では省資源・省エネルギー関連などの投資意欲は根強いと述べた。また、何人かの委員は、資本ストックの過剰感はみられていないと指摘した。』
『一方、何人かの委員は、自動車や電気機械で投資先送りの動きがみられており、今後、設備投資計画が下方修正される可能性があると述べた。また、ある委員は、海外景気の下振れリスクが顕現化した場合には、内外経済に関する企業の期待成長率が下振れ、設備の過剰感が生じるリスクには注意する必要があるとの認識を示した。』
で、1か月たった現状では後者の認識するリスクが徐々に具現化という感じっすかねえ。
(生産)
『ある委員は、8 月の生産指数が大幅なマイナスとなったほか、予測指数も弱めとなっており、生産調整が急速に進みつつあると述べた。別の委員は、出荷と在庫のバランスが悪化しており、先行き、在庫調整圧力が強まる可能性には注意する必要があると述べた。』
という所で、下振れへの懸念は企業部門の方が先に来る(個人に来るのは後ですから当然ですが)の巻という感じでしょうか。その他の項目はまああまり委員の先行き見通しに意見の相違は無さそうなのですが、雇用の所を見ますと中々アレな表現が。
(雇用・所得)
『ある委員は、企業の支出抑制の動きが名目賃金の伸び率低下をもたらしていると述べた。別の委員は、非正規雇用比率が上昇しているため、雇用の調整は過去の景気の停滞局面に比べ、容易かつ速やかに行われる可能性があると指摘した。』
これって書きっぷりが企業ベースになっているから読みながらあまり深刻にならんのですが、良く考えると「名目賃金は伸びませんなあ」に加えて「非正規雇用が物凄い勢いで削減されるんじゃないでしょうか」という話をしているので何気に寒さが増すのでありました。
とまあそんな感じで経済情勢の見通しに関しては下振れリスク満開という感じなので、政府の経済対策とぶつからなければ展望レポートで見通しを大幅に下げて今月の会合で25bp利下げという感じだったのかなあとか思うのですけれども(とちょっと外れた言い訳を)。
・金融情勢に関して
まあこの時点でもリーマン破綻などを受けて状況は悪化してたのですが、10月になってからは海外の悪化が国内のオープン市場の金利形成に波及したの図だったりします。
執行部の報告から。
『金融環境は、総じて緩和的な状態が続いているが、中小・零細企業や一部の業種で資金繰りが悪化している先がみられる。(途中割愛)ただし、中小・零細企業では、資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先が増えている。一部の業種では、起債環境の悪化や金融機関の貸出態度慎重化から、資金調達環境が悪化している。また、9
月中旬以降、C P ・社債の信用スプレッドは拡大し、社債発行が減少している。(以下割愛)』
委員会の検討から。
『わが国の金融環境について、委員は、総じて緩和的な状態が続いているが、中小・零細企業や一部の業種で資金繰りが悪化している先がみられるとの認識を共有した。複数の委員は、日本のクレジット市場は、米欧に比べ落ち着いているものの、信用スプレッドの拡大や起債の延期など、国際金融市場の緊張の高まりが国内にも影響を及ぼしていると述べた。また、何人かの委員は、建設・不動産業や中小企業に対する金融機関の貸出態度が慎重化しており、注意してみていく必要があるとの認識を示した。』
でまあ金融環境という点で言えばやはりこちらの状況を(以下いつもの話^^)。
ということで備忘引用メモでございました。
○31日の総裁会見ですけど・・・・・(利下げの決定関連)
31日の総裁会見なんでもっと昔の話ですが(汗)。
『(問) 2点教えて下さい。1点目は、10 月7 日の決定会合後の会見で、金利を下げた方がよいとの提案はなかったとおっしゃっていましたが、金利引下げや金融緩和などの議論があったのはいつ頃の会合の中でしょうか。2点目は、毎回の会合で色々と考えながら判断しているとおっしゃっていましたが、総裁の頭の中で金利引下げが選択肢として浮かんできたのはいつ頃でしょうか。』
『(答) 10 月7 日の決定会合の議事要旨は数日後に公表されますので、詳しくはそれを見て頂きたいと思います。もちろん、それぞれの委員の頭の中では色々な可能性を考えているのでしょうが、具体的な政策の提案として金利引下げと言われた方はいませんでした。』
確かに全然そんな雰囲気無しですわな。しかも現在の金利は低い水準にあるという話がちょこちょこ出てますし、金融環境は緩和的という話はちょこちょこ出てますし・・・・・流動性供給対策を検討云々という話が一部の委員からちょっとでている位で、この流動性供給対策ってどっちかというとオペ手段の拡充とかの話でしょうからね。
『金利の引下げというか金利の変更というのは、1か0かの世界ではなく、ある程度連続して考え方が変化していきながら、ある段階で引下げや引上げというかたちであらわれる性格のものですから、いつと特定するのはなかなか難しいと思います。』
提案する前に「利下げも検討課題に入るのでは」というような意見って出ないのでしょうかとちと疑問が。まあその「検討課題に入るのでは」ってのが議事要旨に出ちゃうとその時の市場状況によってはセンセーショナルになるから載せないって事もあるのかもしれませんが、今回の公表時点では既に白黒ついてる利下げ話ですので掲載配慮する事も無しという事で、まあ10月7日の時点では利下げの話まで行ってなかったということでございましょ。株や為替がぶっ飛んだのはその後ですからね。
『私自身の中でいつか、ということについてももちろん特定できませんが、私はいつも直前まで色々な情報を集めた上で判断を固めつつ決めていますので、そういう意味では直前ということになります。』
どう見ても政治的プレッシャーです。本当にありがとうございました。
更にその後厳しいツッコミが(^^)。
『(問) もう一度、ここ数日を振り返りたいのですが、27 日に山口副総裁が就任し、この会見の場で日本の金利水準は十分低く緩和的であるという話をされ、翌日に与謝野大臣から、「利下げは国際協調の証しを立てるという意味では大事である」旨の発言がありました。与謝野大臣の発言の前までは、審議委員の方も含めて利下げには慎重というか、否定的な意見が多かったと思うのですが、急にそこを境に何か変わったような印象を持っています。総裁ご自身、その後色々と与党や政府から期待感というか、経済対策との整合性も含めて色々な声が出る中で、政治的なプレッシャーというか圧力を感じることはなかったのでしょうか。それと、それは何がしか各委員の判断に影響を与えたとは言えないでしょうか。』
中々厳しいツッコミでして、この質問および利下げ翌朝の日経新聞記事で書いてあった経緯っぽい話を総合して勝手に勘案しますと、与謝野大臣が「国際協調」という名目で「協調」を打ち出すことによって「政府も大型経済対策出すので政府と日銀の政策パッケージでいきましょうねえ」という(以下激しく自主規制)。
『(答) 結論から申しますと、政治的なプレッシャーを感じたということは全くありません。(途中延々と説明が続く)他の委員の頭の中や感情の動きというのは私が云々する話ではありませんが、自分の経験に照らして、政治的なプレッシャーがあって、それでこの際金利を引き下げようと判断した人は一人もいないと断言できます。』
最初と最後でこう発言し、その間の説明がやたらめったら長くなって言い訳っぽさ爆発です(長いので割愛したけど読むと何だかねえ感満載です^^)わなという所です。どう見ても政治的プレッシャーです。本当にありがとうございました。
#ま、経済対策とパッケージの体裁になったのは良かったと思いますけどね
○市場メモ
もう何か毎日同じ話になりますが、昨日は国債買現先オペの足きりレートが貫禄の上昇でついに0.48%に。毎回1wkをロールしてる感じなのですが、金曜には0.477/0.47だったのが昨日は0.480/0.48と48一本値でレートじり高。まあ要するに円資金の供給オペが不足している訳でして、ドル資金供給の国際的枠組みも大事なのですが、足元の庭もちゃんとお掃除していただきとう存じます。GCはロンバート近くに張り付いてますし、昨日はCP発行レートが上昇している所もあったり、年内償還物のFBも売り物気味だったり、ついでに2年カレントは堂々の0.60%接近とか、20bp利下げしておいてGCだの2年国債だのは15bpしか下がらんのかよという残念な状態。
てか何か(5年国債入札の影響で中短期が甘い可能性はあるのですが)月曜になって雰囲気が悪化している感があるのがちょっと何だかねという感じです。
#ということで虫干しネタですいません
2008/11/10
お題「月曜につき世間話で勘弁」
ど〜せ何もないと思って週末過ごしちゃいましたので市場モードへのマインドセットに時間が掛かりますなあ。寒いし。
○市場メモ雑談
まあ長いところは先週木曜金曜と先物が妙に暴れておりましたが、先物の暴れは最早その暴れてる本人しか訳判らんでしょという状況かと存じますので何がなにやらという感じです。
で、短い所なんですけれども、相変わらずGCレートや現先レートが高止まりしているようでして、昨日も0.4%台後半ちゅうか0.5%に接近するでござるの巻の模様。というか昨日実施された1週間ものの国債買現先なんですが、落札レートの方は平均0.475%の足きり0.47%となりました。ちなみに国債買現先なのですが、日経新聞の例の利下げ記事が出た所(29日)で実施された10/31スタート11/10エンドの国債買現先が0.499/0.41でありまして、何の事はない利下げ前の方が足きり低かったというテイタラク。さすがに平均は下がってますけどね(^^)。
まあそんなこんなで微妙に足元のオープンの金利が高止まりしているのですけれども、無担保コールは逆に上がりにくい状況継続という有様ですので、そりゃまあ調節も大変と言う感じで、金曜もコールが30−28位の所でしっかり売出手形即日で引いていたりという感じで、インターの金利は下がり気味なのでしょうかねというイメージであります。
まあTIBORがあまり下がらなかったりとかもそうですけれども、オープンの金利が利下げ幅ほど下がらないので、利下げ期待で素敵に盛り上がっていた3か月FBから中短期ゾーンあたりまでのレートのボトムがまさにその31日当日という所が実に残念な所でございまする。
○日銀の保有国債関連
10月末現在。
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0810.htm
利付国債の元利金取扱手数料が素敵に引き下げとなった影響で、引値の数値が普通になったことから、例の期近債が派手に打ち込まれるというアホウな事態は緩和されたように思えますが、そもそも10月末なので償還がそんなにこないという問題もあって、実際は今月末の数字も合わせて確認しないとうまくありません。
とは申しましても、長期国債買入の筈なのですけれども相変わらずの短期国債買入状態になっているのは変わらんという感じ。残存1年以内(2009年9月償還まで)の銘柄残高の前月比増分がざっと計算したら6000億円ちょっととなっていまして、輪番オペの実行額が大体12000億円ですのでその半分は1年以内の債券が打ち込まれていますの図。
輪番オペに関しては運営方法を少し見直した方が良さげな感じなのですけれども、やたらこの額自体に意味があるような話になってしまっているので、見直しをした場合に実態問題とは別に勘違いした変な思惑を呼ぶ可能性が高いので実に難しいですよね。冷静に考えると中長期国債の買入って他の主要国ではただの資金供給オペレーションの一環で行われていて、日銀みたいに政策的インプリケーションがある(ような雰囲気を醸し出している)という所ってあんまり無いと思うのですが。
○的を外した批判はどうかと思うのですが
暫く前に話題になってたみたいなのですけどね。
http://tamurah.iza.ne.jp/blog/entry/779827/
0.3%への利下げってのが何とも訳判らん結果でしたので、今回の結果にセコさがあるのは同意なのですが、批判する流れが無茶苦茶だと逆に突っ込まれてしまう良い(悪い)例でございますな。
まあ前半で書いている何のソースも裏づけ内容もない『「幻の緊急声明」事件』っていうのも批判する筋として如何な物かと思われますが、その後の説明がもうグダグダで何のこっちゃと。上記URLより引用しますが。
『今回の0.2%利下げは何を意図するのか。もとより、金利水準は「超低金利」である。わずかに下がっても、実体経済への刺激効果に乏しい。信用収縮とデフ
レ懸念でいつ一部金融機関が破綻してもおかしくない今、日銀に求められるのは、緊急措置としての「量的緩和」のはずである。ところが、日銀の意図はあいまいだ。』
既にこの時点で怪しげな香りを発しております。
『日銀は日銀券を刷って市場に流し込む。この上限を大幅に引き上げるのが量的緩和なのだが、そうするとコール市場では資金があまり、短期金利は下落を続け、究極的には金利ゼロになる。日銀はそうなると短期金融市場を操作できなくなるので嫌う。』
「日銀券を刷って市場に流し込む」っていう説明がもうどこをどう突っ込んで良いのかという感じですが(日銀券は金融機関からの引き出しが無いと出ませんし、「刷って流し込む」って何も無いところにいきなり撒くわけでもありませんし・・・・)、それが量的緩和とか言われましても困るのですが、「そうなると短期金融市場を操作できなくなるので嫌う」のではなくて金利を誘導目標にしているのだから操作出来なかったら金融政策の枠組み自体が回らないでしょという話だと思うんだが。
別にマネーサプライみたいなものを誘導目標にしてコントロールすることだって実際問題として米国でボルカーだかの時に実行されたと思うので、操作変数は必ずしも金利である必要は無いのですが、ボルカー時代は市場金利がアホほど乱高下した弊害の方が大きかったので、それ以降は金利操作が中心になった(日本で当座預金残高目標という量的緩和をやりましたけどね)筈なんですけれども・・・・・・
『従来の0.25%の利下げ幅を拒否したのは、もう一度利下げすればゼロになるからだ。ご丁寧なことに、銀行の日銀への当座預金に金利を付け、短期市場金利がそれ以下にならないようにした。日銀は量的緩和に歯止めをかけゼロ金利を避ける、というのが今回の利下げの真相なのである。とすれば、日銀は自身の利害を優先して危機対策という大局を見ない、狡(こす)いやり方ではないか。』
あれ?ちょっと前の方で「金利を下げても効果に乏しい」って話をしてたのに、何で「ゼロ金利にしないのがケシカラン」になっているのでしょうか。それに、当座預金付利を行うことによって「金利付き量的緩和」(それ自体はインチキだとあたくしは思いますがそれは兎も角)が実施できるというのが今回の措置のキモなのですから、こちらの執筆子の仰せになる「金利引き下げよりも量的緩和」に一番適うのが「当座預金付利」なんですけれどもねえ。
ということで、今回の利下げに関して何だかなあというのは同じ思いはございますけれども、批判の筋があまりにも宜しくないのは如何なものかと思いますけれども、(何か前にも紹介したかもしれませんが)このお方はどうも調べ物をあんまりしないで煽り批判装置が作動するのが仕様のようですな。
参考文献→http://obiekt.seesaa.net/article/49298967.html
○ところで日銀のサイトがリニューアルされてましたが
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/maint0811a.htm
日本銀行ホームページの改善について
前回大々的にリニューアルした時にはリンク切れが多発してごく一部の利用者が文句を垂れまくっておりましたが、今回はちゃんとこんな説明があるのはちょっとだけ好感。
(注)同修正に伴い、以下のとおりURLが変更されます。
<新設> 「統計」一覧表:http://www.boj.or.jp/theme/stat/index.htm
<削除> 一覧表に集約された統計の見出しページ
http://www.boj.or.jp/theme/research/stat/index.htm
http://www.boj.or.jp/theme/research/stat/boj/index.htm
http://www.boj.or.jp/theme/research/stat/money/index.htm
http://www.boj.or.jp/theme/research/stat/dl/index.htm
http://www.boj.or.jp/theme/research/stat/market/index.htm
http://www.boj.or.jp/theme/research/stat/set/index.htm
http://www.boj.or.jp/theme/research/stat/pi/index.htm
http://www.boj.or.jp/theme/research/stat/zaisei/index.htm
http://www.boj.or.jp/theme/research/stat/bop/index.htm
http://www.boj.or.jp/theme/research/stat/bis/index.htm
なのですけれども、どうせなら削除したページには「こちらに行ってください」というご案内を入れて欲しいのではございますけれども。ちなみにあたくしのブックマークする中にも上記リストにあるこんなのがありますが、残念な結果が出てくるのであります。使い勝手はまた使ってから感想を。
http://www.boj.or.jp/theme/research/stat/boj/index.htm
2008/11/07
お題「決定会合議事要旨から少々/また市場メモ」
北禿先生の大楽観砲があまりにも的確すぎで恐るべしとしか申し上げようがないです。新たな「ドカーン!ドカーン!」砲撃こええええええ。
決定会合議事要旨が2本出ていましたが。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g080929.pdf(9月29日臨時会合)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g081007.pdf(10月6、7日会合)
臨時会合の方はパスして、10月6、7日の会合の方を少々で。少々と申しますのは、既にこの会合の時の相場レベルって過去のもの状態になっていますからあまりこの時点でどうのこうの言っても仕方ないですねという面がありますんで。
ちなみに、10月6日、7日時点での状況っていうのはどういう時だったかというのを手元の帳面で確認すると、この直前にスッタモンダした米国の金融安定化法案が可決。欧州に華麗に飛び火して公的資金注入だのアイスランドが破綻寸前だのという頃で、ダウが1万割って日経平均は1万円接近でドル円は前週の105円から100円割れに接近という状況なので、それを踏まえつつ読まないといかんです(じゃないと違和感が出るから)。
○金融政策運営に関する検討部分
まずは『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』を読まないといかんですな。ということでそこから。
決定会合での公表文で思いっきり下方修正されていたのはご案内の通りですが、その点に関しては、第1の柱の点検部分でこんな感じで。
『こうした見通し(引用者追記:やや長い目でみれば成長経路に復するって奴ね)を巡る不確実性は増大している、との認識で一致した。。多くの委員は、アンケート調査やミクロ情報は景気の停滞感が強まっていることを示していると述べた。また、このうちの何人かの委員は、持続的な成長経路に復していくタイミングは不確実性が高く、従来に比べ後ずれしていると付け加えた。』
まあこの時点ではこんな感じですかな。
で、第2の柱の部分ですが・・・・・
『実体経済面では、委員は、@ 米欧の金融機関の破綻などを背景に、国際金融資本市場の緊張が強まっていること、A
米国経済の停滞や欧州・アジアの景気減速の明確化など、世界経済には下振れリスクがあること、B
国内民間需要については、これまでの交易条件の悪化を反映した所得形成の弱まりから下振れるリスクがあること、を指摘した。』
とまあどう見ても下振れリスクの話ばっかなのですが、その後の方ではこんな指摘も。
『この間、複数の委員は、景気の下振れリスクが薄れる場合には、緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクが高まるとの認識を示した。』
こりゃまたお約束ですが、次回の会合(先日の会合)でこの「複数の委員」がどの位減っているのかとか気になりますな(^^)。
『これに関連し、ある委員は、実質短期金利と潜在成長率の関係など、様々な観点から金利水準の妥当性を点検し続ける必要があると述べた。』
これはどういう観点なのかしらんという所ですが、この辺りって基本的に推計が入る話だからあまりゴリゴリと詰めて論じても出てきた数字が妥当なのですかというのは疑問符がつきそうなのですけれども。
物価の上振れ部分は割愛して、『先行きの金融政策の運営』部分から。
『ある委員は、潤沢な流動性供給という観点から、金融調節手段の拡充に向けて検討する必要があるとの見方を示した。』
と言う指摘がございましたが、まあこの時点って既に期末越えで潤沢に出されていた資金が徐々に吸収される(正確に言えば期越えで打った資金供給オペをちゃっかり減額ロールしたりロールしなかったりという方法を使い、露骨な吸収をする訳ではない)段階にあって、足もとのGCレートが上昇しやがっている段階。この後株価急落をする中でGCレポレートがロンバートより高いとかいう無茶な状況になって、インターバンク対比でのオープン金利上昇が顕著になったんですな。
ま、調節手段の拡充もそうなんですが、このあたりでもツイストオペの活用とかもうちょっと議論できていればという感じです。
なお、この翌日に欧米の協調利下げが打ち込まれまして、その際に日銀は「当座預金付利の検討」などという話をしたら、そんな場合ではなく利下げに追い込まれたでござるの巻になったので、先般のブサイクな利下げになったというのはご案内の通り。
・・・・ということで、この時点での会合では下振れリスク意識は全開でしたけれども、利下げ議論は無く、流動性供給の話がちょっと出ていました位ですが、まあこの後の市場の急展開というのもあるので、何も無かったのに君子豹変ですねえというイヤミを言うのは止めておきますね(^^)。市場だって10月の頭の時点では「展望レポートでどの位下振れさせてくるか」程度の認識でしたからね(あたくし的には展望レポートで利下げ観測がテーマになるかもしれないな位のイメージでしたけど)。
他の部分はちょっと宿題にさせてちょ。
○市場メモ(ただし超足元市場)
・CP現先オペ実施
・・・・なのは良いのですが、いきなり6000億とかなんちゅう増額。こりゃ札集まるのかいな(月末発行分のABCPとか先月末にやったオペでそれなりに吸収してるでしょ)と思ったらお約束の札われ。
えーっと、オペの積極活用ってのはある程度予測可能な安定感をもって実施(輪番みたいに)されるのが積極活用なのでありまして、今回札割れしたからやっぱりニーズ無いでしょそれ見たことかとか言われても困るのであります。大体このくらいの頻度でCPオペがあるからCP引受をしても現先でファンディングできるなという感じで市場の引受余力が高まるのでありまして、いつあるのか判らないオペをあてにしてポジショニングする訳にも参りませんのですよね。
・共通担保とか国債買現先とかFBとか
いやはや、相変わらずショートタームのレートが高くて、共通担保のショートタームは足きり貫禄の0.49%継続で、国債買現先も足きり上昇して0.47%の足きりになっちゃいましたね。
先月末の辺りではかなり資金が全体的にタイトでして、現在はそこまでのタイト感は無くてやや緩和されているみたいなのですが、そうは言ってもタイトはタイトでして、その間にショートタームで打ってるオペをしらっと減額ロールしてオペ残高も減っているのでありまして、何かもしかしてインターバンク金利が下がりやすいのでオープン市場をタイトにしてバランスでも取りに行ってるのではないかと言いたくなるような状況で誠に困ったもんです。
結果として、GCが0.50%に接近した状態で下がらないので、それよりも低いレートのネガティブキャリー銘柄でありますところのFBレートは昨日もやや上昇気味で、水曜に入札が行われたFB3か月ものは昨日の引けで0.44%と誰も得しない展開に。残念無念。
・CP新発
さすがに利下げしたのに全然下がらないじゃあ変という事で買いも来てまして、昨日は10日スタートなので発行もそこそこでしたが、レートの方は高格付け中心に低下。いわゆるその他金融でも少しは下がっている所もありますので、こちらはまずまず。レートが落ち着いて発行が増えて来て・・・という循環で市場の厚みがもとに戻ってくれると良いのですけれども、株価が下がるとまたよろしくないのよねえ。
と、市場メモで恐縮でした。
2008/11/06
お題「総裁講演/市場メモ」
オバマ氏から微妙な細川・・・いやまあいいです。
で、まずはきさらぎ会での白川総裁講演から。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0811a.pdf
○リーマンの法的整理が問題ですね、わかります
最初が金融危機問題の話でして、(国際金融資本市場の動向と各国当局の対応)ってところから。
『ここで現在の金融危機の問題についてお話します。この問題は、証券化商品の価格下落とこの市場の機能不全から、証券化商品を組成していた経済主体等の資金調達の困難化という形でまず表面化しました。その後、市場では悲観論の高まりとその後退という波を繰り返しながら、事態は徐々に悪化していきましたが、9月半ばにリーマン・ブラザーズが破綻して以降、米欧を中心に国際金融資本市場全体の緊張は一挙に高まりました。』
全く左様でございます。
『わが国の1997年以降の金融危機では、三洋証券の破綻に伴うインターバンク市場でのデフォルト発生が引き金となって、取引相手にかかるリスク、すなわちカウンターパーティ・リスクへの警戒感が一挙に高まり、取引先の選別や市場収縮の動きが本格化しました。今回の金融危機では、不幸なことに、リーマン・ブラザーズの破綻を引き金に、全く同じことがグローバルな規模で発生し、特に米欧市場を中心に、カウンターパーティ・リスクが強く意識される状況となりました。』
ポールソンとバーナンキの対応に問題があったということですね、わかります(^^)。
『信頼関係が崩れた市場の姿は悲惨です。金融機関が資金を無担保で貸し借りする短期金融市場では取引が極端に細り、資金を貸す場合でもオーバーナイト物に限定するような事態、言い換えると、市場流動性がほぼ枯渇するような事態に陥りました。この結果、金融機関や投資家の間では資本不足に加え、流動性調達への不安が全面的に拡がり、融資基準、投資基準が厳格化しました。こうした事態を放置すると、事態はさらに悪化します。』
全くその通りでございます。で、途中を端折りまして、じゃあ政策当局はどういう対応をしているかのポイントを3点にまとめています。
『第1は、金融市場の安定を確保するために、積極的な流動性供給を行うことです。各国中央銀行とも大量の流動性を供給していますが、ドル資金については、日本銀行を含む各国中央銀行が、国際協調のもとで資金供給を行う枠組みを導入し、各国市場でドルを大量に供給しています。』
ドル資金は判ったが円資金・・・いやいいです。
『ただし、中央銀行による流動性供給は、システミック・リスクの発生を防ぎ、金融市場の安定を確保するためには必要不可欠ですが、金融システム問題を根本的に解決する手段ではありません。あくまでも、抜本策が採られるまでの間、時間を買う措置であることは十分認識しておく必要があります。』
もしかして、日本の金融市場は安定していて、システミックリスクというような問題は無いから別に資金供給をそこまでやらんでもとかいう事なのでしょうかとか穿ってしまいたくなる今日この頃。
『第2は、金融機関の債務に対する包括的な保証の実施です。金融システム不安は、一定の臨界点を超えると、預金者や投資家の不安が一気に高まる傾向があり、これを放置すると、預金者等の間の不安が増幅し、収拾不可能な混乱に陥る惧れがあります。このため、欧米をはじめとする各国政府が相次いで預金保険の保護対象の大幅な拡充や金融機関債務への保証の付与といった措置を打ち出しました。』
『第3は、公的資金を用いて金融機関が抱える不良資産の買取りや資本注入を行うための枠組みの整備です。金融システム問題は本質的に資本の不足の問題である以上、不足する自己資本額を確定し、不足分を補填する必要があります。しかし、日本の経験が示すように、金融と実体経済の負の相乗作用が働くもとでは、不良資産額や不足する自己資本の大きさをリアルタイムで正確に把握することは極めて困難です。その意味で、金融システムの安定を確保するためには誰かがマクロ的な意味で資本不足の状況について判断を下さなければなりませんが、その主体としては公的当局しかありません。公的当局は、先行きの負の相乗作用の可能性を十分に織り込んだ上で、必要と判断すれば、思い切った金額で公的資本を注入することを決定しなければなりません。』
と、まあ丁度良く纏まっていたので長くなっちゃいましたが引用しましたです。
○「上振れ・下振れ要因」と「リスク要因」の違いは??
これ本当は展望レポートと定例会見を読んだ所で気が付かないといけない話なので申し訳ないのですけれども・・・・m(__)m
日本経済の現状やら見通しに関する所ですが、その中で読んでてへーと思ったのは『(2)経済・物価見通しの不確実性』って部分です。
『以上をまとめると、日本経済は、当面停滞色の強い状態を続けた後、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復するというのが、相対的に蓋然性が高いと判断する見通しです。しかし、この見通しを巡る不確実性は極めて高い状況にあります。』
で、その先にリスク要因の説明があるのですが。
『第1の、そして最大のリスク要因は、米欧の金融危機の行方です。米欧における金融と実体経済の負の相乗作用がさらに強まれば、米欧の実体経済が下振れたり、回復がさらに遅れる可能性も考えられます。その影響が新興国経済にも影響し、世界経済が全体として下振れた場合には、わが国にとっては、輸出が減少するばかりでなく、企業のグローバルな需要増加への期待に変化が生じることを通じて、設備投資が下振れる可能性もあります。』
『第2に、エネルギー・原材料価格は、中期的には新興国を中心とする需要の拡大によって緩やかに上昇する、と想定していますが、この点にも不確実性があります。現在の反落傾向は、わが国としては交易条件の改善を意味しますが、これが主に世界経済の下振れを反映した動きだとすれば、同時に輸出の減少を示唆することになる、という点も念頭に置かなくてはなりません。他方、国際商品市況が再び急上昇するようなことがあれば、世界的には、インフレ圧力が高まり、その後で経済が下振れる可能性があり、日本にとっては、現在の景気停滞を招いている構図が一段と鮮明化する可能性があります。』
『第3に、今後、国際金融資本市場の緊張や米欧の金融危機が日本の金融市場や金融機関に与える影響が拡大すれば、日本でも金融環境の緩和度合いが後退し、実体経済への下押し圧力が強まる可能性も考えられます。』
『物価面でも、上下両方向の不確実性があります。結論的に言うと、今回、物価上昇率は低下するという見通しを示しましたが、物価上昇率がこの見通し対比で上振れるリスクは、従来に比べると、小さくなっていると考えられます。』
ということで、リスク要因の話が全部下振れという華麗な話になっていますが、これはこれで展望レポートの第2の柱でもこういう話になっていましたので違っていないといえば違っていないのですけれども、上記の第1、第2の部分って実は展望レポートの中で言えば『(上振れ・下振れ要因)』という部分の説明にも重なる部分があるのですよね。
で、その展望レポートの『(上振れ・下振れ要因)』の中にはこんな記述がしらっとあるのですよね。従来は第2の柱に入ってた奴ですが。
『一方、やや長い目でみた場合には、成長率が徐々に高まっていく中で、緩和的な金融環境が続く場合、金融・経済活動や物価の振幅が大きくなるリスクには、引き続き留意する必要がある。』(10月展望レポートより)
・・・・・えーっと、今回の講演ではこの点言及無しですかそうですか(^^)。
何だかこのあたりって展望レポートの書きっぷりも微妙に前と違いますし、(上振れ・下振れ要因)と第2の柱の点検ってどこがどう違ってくるのかなんだか良く判らないですなあと思ってみたりするのれす。
○当座預金付利の話
0.3%への利下げと当座預金(超過準備)付利の話についても色々と説明しているのですが・・・・・
『具体的には、臨時の措置として、日本銀行当座預金に付利を行う「補完当座預金制度」と呼ばれる制度の導入を決定し、その上で、今回、当座預金への付利水準を0.1%としました。この制度のもとで、日本銀行は金融機関が日本銀行に保有する当座預金――厳密に言いますと、超過準備――に対して金利を支払うことになりますが、金融機関はこの金利以下ではコール市場で資金運用を行うインセンティブがなくなるため、適用金利は、市場金利の下限を画す機能を果たします。今回の制度の導入によって、日本銀行は、コールレートが大きく振れることを回避しつつ、積極的な資金供給を円滑に行うことが出来るようになりました。』
またそういうペテンな説明を。じゃあ日銀の普段の運営って実際のコールレートがディレクティブから派手にぶれても放置してるのか(FRBはあんまり気にしていないですよね)と小一時間。売手を打って(昨日は売現先即日なんぞも打ってましたが^^)じゃんじゃん吸収してるじゃん。
通常ベースでディレクティブを逸脱して良しという運営してるのなら上記の説明もなるほどという話になりますが、そこを華麗にスルーしてこういう話されても調節担当がどっち(大量供給するのかディレクティブ守るのか)にしたら良いか判らなくて涙目になるだけ(明示されているのがディレクティブである以上ディレクティブを守る方向になるのが担当部署としての正しい行動になる筈ですけどね^^)だと思いますが・・・・・
『今回、政策金利引き下げ幅と当座預金への付利水準をいくらとすべきかについては、随分議論が行われました。この点をご説明するためには、金融緩和政策の効果は、金融市場を通じて波及していく、という基本を確認しておく必要があります。』
という御認識でしたら、オープン市場の金利がリーマン破綻以降ですが、特に10月以降華麗に上昇した点に関しての解釈如何。
ちと途中割愛しまして・・・・
『短期金融市場の機能が維持されること、言い換えると、市場参加者同士の資金の流れを確保することは、金融政策が効果を発揮する上で極めて重要な前提条件となります。この点、特に、わが国のように、既に政策金利が0.5%と極めて低くなっていた状態で、さらに金利水準を大幅に引き下げた場合、金利収入が様々な取引費用をカバーできなくなる結果、金融市場での取引が細り、市場流動性が低下する可能性があります。言い換えますと、金利水準の低下が持つ金融緩和効果だけでなく、金利の引き下げが金融市場の機能を阻害し、かえって資金の流れを悪くする可能性についても十分配慮する必要があります。』
えーっと、そうしますとコリドー設定したのは何でですかという話になるんですけれども。先般の会見でもやたらと「市場機能」に関して言及しているのですが、それはたぶんブーメランになるのではないかと誠に残念に思います。
で、その後の方で0.3%と0.1%の理由について説明してまして、その先では日銀の採った施策に関しての説明がありますが、CPオペの積極活用とかまたまたご冗談を(-_-メ)。んで、ロンバートが下がってコリドーが狭くなったのですが、その点に関しましては・・・・
『今回の基準貸付利率引き下げにより、オーバーナイト金利の上昇がこれまでよりも限定され、市場の安定化が図られることになります。』
はあそうですか・・・・・
○BISビューですね、わかります
最後のまとめが『金融危機の教訓』なのですけれども、もう小見出しに『(2)金融危機の発生とその拡大の未然の防止』ってある時点でどう見てもBISビューです本当にありがとうございましたというところですな。
『こうした経験を踏まえると、金融政策の適切な運営は、極めて重要です。物価の安定は中央銀行の金融政策の目標であり非常に重要ですが、物価の安定が消費者物価指数の前年比を常に一定の狭い範囲に収めることと理解されると、近年の様々な経験が示すように、経済の大きな変動をもたらし、結果として、中長期的には物価安定自体を損なう惧れがあります。』
『金融危機の発生・拡大を防止する上で大事なポイントの第2は、マクロ・プルーデンスという言葉で呼ばれる視点の重要性です。』
で、その視点とはこういうことです。
『金融システムの安定を確保するためには、金融機関自身が適切なリスク管理を行う必要がありますが、その際、個別のリスクだけでなく、金融システムの中にいかなるリスクが内在しているのかというマクロの視点も求められます。』
ということで、まあ未然防止がビューですねという所かと読みました。
#以下市場メモ
○オペ金利高止まりとか
昨日の資金供給オペなんですけどね、共通担保本店供給が2本立てで実施されたのですが、5日ものが0.492/0.49で14日ものが0.494/0.49という結果で華麗にロンバートに接近、というかロンバートで札入れている人もいますねというお話でして、利下げの話が出る前の共通担保供給のショートタームって0.65%近辺のレベルだったので、早速利下げ効果が減殺されてるでござるの巻。
そんな訳で、利下げ当日は0.37%なんぞまで盛り上がっていた(それはたぶん盛り上がりすぎでしたが)FB3か月は昨日の新発0.435%の引けとなったり、短いFBとかも0.4%台に上昇してみたりと言う感じで、まあこれはこんなもんちゃあこんなもんですけれども、なんだかねという所で。
CPレートに関してはさすがに高格付け物から順にレートが低下しているようですけれども、イマイチ選好されにくいネームさんの所に回ってくるのはもうちょっとだけ時間が必要かもですね。さすがに足元対比での差が大きいと見て買いも戻ってきたようですので、それは一安心なんですけど・・・・・
という状態でして、インターバンクは下がり気味なのに対してオープンの金利がこのテイタラクというのもなんでしょうかねえとしか申し上げようがないですなあ。
#今日もまた引用で水増し攻撃恐縮至極
2008/11/05
お題「総裁会見/流動性強化策を打たないから・・・・」
まずは総裁会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0811a.pdf
○最初から案の定のツッコミが
総裁の説明の後に最初に飛んできた質問が案の定ですわな。
『(問)これまで日本銀行は、今の金融環境は十分緩和的であると一貫して主張してきましたし、効果は限定的ではないかという意見も多かったと思います。ところが本日0.3%への引下げということで驚いています。今日の措置がもたらす具体的な金融緩和効果のイメージについてご説明下さい。併せて、なぜ0.25%でなく0.3%となったのか、どのような議論だったのか、お聞かせ下さい。』
例によって答えが長いのですが、質問後半部分に関するところを引用致します。
『金融緩和効果を上げていくことだけに焦点を合わせれば、金利引下げ幅を大きくするという考え方も出てくると思いますが、一方で、金利引下げ幅を大きくしますと、短期金融市場を中心に金融市場の機能に悪影響が及ぶ可能性があるため、両者はトレードオフの関係にあると言えます。この2つの関係を意識した上で、最適な組合せはどのようなものかを考えた結果、調節目標の金利を0.3%とし、その上下に0.2%ずつのスプレッドを設定して、金利の事実上の上限・下限を画するという体系が最も望ましいと判断したわけであります。』
だったら0.25%にして上限0.5%下限0%で宜しいかと存じますけれども、当座預金付利先にありきですかそうですか。いやあの利下げするんだったら別にやらんでもよかろうと思ったのですけどねえ・・・・・
○んでまあ金利水準が低いという話も出るのでして
別の角度から0.25%か0.30%かの質問が。
『(問) 詳しくお話いただけないかもしれませんが、0.25%の引下げが必要と判断した方々の理由を教えて頂きたいのが1点と、糊しろという言い方が正しいのかどうかわかりませんが、さらに2回ほどゼロ金利になるまで利下げを実施できる余地を残しておこうという考え方が総裁の中にあったのかどうかを教えて下さい。』
『(答) 引下げ幅が0.25%であるべきか0.2%であるべきかということですが、その差は0.05%です。スプレッドもそれに見合って設定しますので、いずれにせよ小さな差の中での違いです。先程、金利引下げ幅と金融市場機能の2つの要素があると申し上げましたが、どちらの要素をより重視するか、あるいは市場機能への影響度合いはどの程度かを定量的には把握できませんので、これまでのマーケットの観察に基づいて、どの程度のスプレッドであれば市場機能に影響が出るかという点でわずかな認識の差です。』
だったら0.25%(以下同文^^)。市場機能に配慮するという話を出して0.30%の理由を説明してるのですけれども、だったらコリドアが狭くならない「0.25%利下げで当預付利無し」の方がどう見ても妥当だと思うので、この説明はまあ苦しいですわなあ。
んで、その後半部分ですけれども。
『それから質問の後段の方ですが、金利水準は引下げ後0.3%という非常に低い水準となります。まず申し上げなければならないことは、金融政策については、経済・物価情勢を点検して、その上で日本銀行の持っている政策手段に照らして何が一番望ましいかということをその都度判断していくということが大原則であるということです。現在、極めて低い金利水準ですが、そのもとでは短期金融市場の円滑な機能の確保という観点から様々な問題が生じる可能性が高いと思います。特に、現在のように金融市場の機能低下が問題となっている状況のもとでは、この点に対する配慮は一層重要になっていると思います。これは金融市場についての私の判断であり、経済状況についての判断ももちろんあります。こうしたことを全て考えた上で、中央銀行としてどのような対応が望ましいかということをその都度判断していくということだと思います。』
金利水準が低いという話が何度も出ている所がにゃんともですのう。
○市場に追い込まれましたねってツッコミ
今回は質疑応答が全体的に長く、強力に端折っておりますので、まあおヒマな時に会見要旨はお読みになると吉かと存じますが、こんな厳しいツッコミも。
『(問) (前半割愛)それから、先程のマーケットとの対話にも関係するのですが、総裁の著書を拝読したところ、アラン・ブラインダー氏の意見を引用し、中央銀行がマーケットのご機嫌取りになると自分の尻尾を追う犬になってしまうということを引合いに出して、ご自身も、市場参加者の判断に沿って行動すると中央銀行の主体的な判断を放棄することになるとおっしゃっています。私は、今回はこのケースになってしまったのではないかという気がするのですが、その点についても教えて下さい。』
この答えですが割愛した質問前半の方が長いのですがそれも割愛して(汗)。
『それから、ブラインダーの本から引用した市場に対する見方ですが、私も含め多くの中央銀行の人は市場に対して非常に複雑な感情を抱いているわけです。私自身は市場を非常に大事にしたいと思っている人間の1人です。先程市場の機能についてややしつこく申し上げたのも、市場の機能を大事にしたい、市場の価格発見機能を大事にしたいという思いが非常に強いということです。』
それは大変恐れ入ります(棒読み)。
『しかしながら、市場は時として──いつもではなく時として──行き過ぎが生じてしまうのも過去の経験が示す通りです。その典型はバブルであったり、バブル崩壊後に極端に心理が萎縮するということであったりします。そのような時に、中央銀行が市場の動きに100%追随すると、これは中央銀行が本来果たすべき仕事、つまり中長期的な経済の安定という観点から金融政策を行ったり最後の貸し手という機能を果たしたりすることを放棄してしまうことになります。その意味で、100%市場に追随するわけではないということも考えておく必要があると思います。この両者の微妙なさじ加減ともいうものが、金融政策に限らず中央銀行の仕事として非常に大事であると個人的に思っています。』
まあでも今回は市場にも追い込まれてしまいましたよね。今度も追い込みに行きますよたぶん。その時の運営は本石町日記さんが指摘しているように余程腹を括って向かわないと。
○やはりそうでしたか
昨日展望レポートご紹介している時にあたくしが指摘したことは既に会見で指摘されていましたね(^^)。
『(問) 今回の決定会合でステートメントと展望レポートが出たかたちとなっていますが、ステートメントでは景気回復が姿を消したように思えます。一方で、展望レポートでは、景気が回復する姿について書いてあります。両極端というか、非常に色彩の違う形となっていますが、両者に役割分担のようなものがあるのか、どうしてこのようになったのか教えて下さい。』
『(答) 展望レポートは、もともと先行き少し長い期間の経済の見通しを示していくことに目的があります。2008
年度、2009 年度、および2010 年度の見通しを出していくということです。金融政策を運営していく時には、もちろん金融政策のラグを考えて、先を考えているわけですが、金融政策変更後のステートメントとしてはもう少しコンパクトな文章を出していく必要があるということで、あのようなステートメントになったわけです。両者の間で齟齬があるわけではなく、全く同じ思想のもと、今回の政策変更に焦点を当てて、あのようなステートメントになりました。』
あまりにも予想通りの答えにワロタ。
○低金利とバブルについて
この質問はまあオモロイ。
『(問) 今回の金融危機についてですが、全体にあるのは、やはりカネ余りの状態ではないかと思います。各国の投資家は、基本的には低金利の円で調達して、高金利で運用するという投資行動がかなり目立ったわけですが、日本の低金利の状態が今回の信用バブルに果たした役割について、総裁はどのように分析されているかお聞かせ下さい。』
んでまあ答えが例によって長いので、途中を割愛しながら引用しますね。
『(答)(前段部分割愛) 信用バブルは低金利だけで起こったとは思いませんが、こうした低金利が長期間続くという予想、感覚なしには、ここまで大きくならなかったと思います。そういう意味では一つの要因であったと思います。日本の低金利というわけではなくて、世界全体の低金利環境の持続というものが世界的ないわゆる信用バブルを生む一つの要因になったという話です。』
で、日本と海外の比較に話が行きまして・・・・
『日本の場合、確かに名目金利水準は低いのですが、同時に物価上昇率も低かったわけですから、実質金利自体は表面金利ほど低いわけではありませんでした。海外は、名目金利は高いが物価上昇率も高く、実質金利はやはり低いということで、世界的に実質金利水準が低いという状況が長期に亘って続いたということだと思います。』
日本は別に実質金利低くなかったでしょというのは禿げ同ですな。
『そういう意味で、日本の金利政策が世界の信用バブルの原因だったという見方には賛成しませんが、しかし日本も含めて、世界的な低金利の持続ということがそうしたことに繋がっていくということを、今回の金融危機は示していると思います。』
と、「名目金利が低いので世界にバブルを撒いた」的なプロパガンダには否定的な見解でして、それはまあもっと宣伝していただきとう存じます。
#他にも幾つかあるのですが、時間と量の関係上こんなところで。
○流動性強化策を打ってないのですけれども・・・・・(市場メモ)
総裁会見の冒頭ではこんな一節がございました。
『以上の情勢判断を踏まえ、政策金利を引き下げるとともに、金融調節面での対応力を強化することを通じて、緩和的な金融環境の確保を図ることが必要と判断しました。』
上のほうでも何回か出てましたけれども、市場機能の確保がど〜のこ〜のという話が出ている割にはじゃあ実際のレート形成ってどうよという論点が現場労務者的には出てくるのですな。
昨日はGCレポの金利が堂々0.48%近辺の展開となっていまして、そんなレートでもあった事からロンバート貸出も増加(0.50%で取れるんだから当然ですわな)となっております。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jx081104.htm
「貸出」の欄を拝見しますと、9600億円ほど落ちる積りだったら新規実行の方が多くて、貸出が前日比10800億円増えましたとう貫禄の信用機構局大忙しの展開。ロンバート残高2兆円ですかそうですか。
まあ利下げ観測出る前にもGCレポ取引が0.65%を超えて0.6%台後半で推移していましたから、フルスライドで下がったらこんなもんちゃあこんなもんなのですが、コリドアが狭くなったのでロンバートに早速ぶち当たったでござるの巻となっております所に落涙を禁じ得ません。本来もうちょっとコールとの差が無い方が普通だと思うのですが、カウンターパーティーリスクへの意識が高まって水準が変わる中でもオペレーションは特に強化されるでも無くという状態ですからまあこんな感じになってしまう訳ですな。
いやまあこれが別に「オペは特に強化しませんけどね〜えっへっへ」というのであればそれはそれで良いのですが、欧米に合わせて臨時政策委員会実施して「流動性供給を強化する」と言ったのにこれっていうのは「やるやる詐欺」なんじゃないですかねえと思うんですが。CPレートだって昨日は公益系の最も格上とされる銘柄あたりは低下してましたけれども、同じa-1格でもややネーム的にはレートにハンデ付き易い銘柄群ですと、レートがろくすっぽ下がらないという悲しい展開でして、これ一体全体何の利下げだったのよと言いたくなる人もいるでしょうな。
まあ一応FBとかのレートで言えば20bpの利下げフルスライドで下がっている(というか金曜はそれ以上に威勢よく下がっていましたが^^)のですけれども、そもそもの発射台の時点で「これじゃ実質利上げになってるよ〜><」って状態になっているので、イマイチ感が拭えないのであります。その上、今般の措置によって(まあ当たり前ですが)資金の回りが体感的には悪化しているというイメージ(イメージだけの話ですので念のため)でして、流動性供給の強化を年末越えまでに何か打った方がよっぽど緩和効果あると思うのですけどね。
○ちと昨日の訂正
超過準備への付利のレートに関してですが・・・・・
良く考えたら所要準備が幾らですかっていう数値は積み期間の計数確定まで判明しないのでして、半月後積み方式なのでそもそも論として積み期間前半の所要準備額ってのは暫定値なので、適用レートを途中で変更というのは技術的に問題があるのでした。ご指摘多謝であります。
#引用で大増量恐縮であります。
2008/11/04
お題「決定会合あれこれ(続き)」
30bpになったのはあれですよほら、「世界のBOJ」。
○付利金利がちゃんとフロアになるのかという論点
ちなみに、この超過準備付利って次回の積み期間から開始になりますので、今日のフロアは0%になります。お間違えの無いようにお願いします。と言ってもたぶん普通のオペが行われるだけだと思いますよん。で、その超過準備付利に関して少々気になったのが1点。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/mok0810g.pdf
こちらの4ページ目を読んでて「???」というのがございます。
『4.適用利率
(1)本行が金融市場調節方針において誘導目標として定める無担保コールレート(オーバーナイト物)の水準から本行が別に定める数値を差し引いた利率とする。
(2)5.に定める積み期間の期中に(1)による利率に変更が生じた場合には、当該期中の最も低い利率とする。』
で、次の項を読みますとこうなっています。
『5.利息の計算方法
対象先ごとに、準備預金制度に関する法律第7条第3項に規定する1月間(以下、この期間を「積み期間」という。)の毎日の終業時における当座預金または準備預り金の残高を合計し、その合計金額から、当該積み期間の起算日の属する月における当該対象先の法定準備預金額(準備預金制度に関する法律第2条第2項に定める法定準備預金額をいう。)に当該積み期間の日数を乗じて得た積数を控除し、その金額(零を下回る場合を除く。)に、4.に定める適用利率を乗じたうえ、365で除して算出するものとする。』
ということですので、積み期間中に政策金利が変更になった場合はその間の一番低い利回りが当該期間に渡って適用されるというお話と読めます。
するってえと、積み期間途中の決定会合で誘導目標金利の引き下げが行われた場合はそこまでの超過準備積み分の付利金利が空しく引き下げになる(ただし政策金利引き上げになっても上がりません)という仕組みになっている訳でありまして、そーゆー意味では途中で利下げ観測が物凄い勢いで盛り上がった場合にこのフロア0.1%というのが役立たずになる可能性もあろうかと。
たぶん途中で金利変更になった場合に付利金利を変更した場合に、利息計算が大変だから簡便な方法にしたのではないかと勝手に想像するのでございますが、次に利下げ(ゼロ金利なのか0.1%なのか知りませんが)という話になったら「スプレッド0.2%」を真に受けて考えれば普通にフロアゼロになっちゃいますから、「利下げがある」という話が出てきた瞬間にこの超過準備付利が役立たずになる悪寒が。
と思って今後の決定会合の日程を見たら、大体積み期間の頭の方に組んでいるので大丈夫かなとか思ったら、最後に4月7日ってのがございまして、どう見てもこれが爆弾です本当にカムサハムニダという所ですな。これはきっと4月7日会合で利下げ追い込まれフラグが立ったのか、それともその前に利下げ追い込まれフラグが立ったのかという所でしょう(^^)。
○展望レポート(基本的見解)から
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0810a.pdf
今回の展望レポート(基本的見解)は(経済情勢の見通し)に入る前にこのような文章が入っています。
『2008 年度から2010 年度にかけてのわが国の経済・物価を取り巻く環境を展望すると、国際的な金融情勢の展開やその実体経済への影響、国際商品市況の動向など、著しく不確実性が高まっている。こうした状況下では、先行きの経済・物価動向を見通すに当たって、中心的な見通しの蓋然性が、これまでに比べて高くないことを踏まえ、リスク要因を注意深く点検することが従来以上に重要である。以下、この点を十分に踏まえた上で、経済・物価情勢を検討することとする。』
ということで、中心的な見通しの蓋然性が高くないですというのを最初にわざわざ謳っていまして、これがまた次の所にあるのですが、よく見りゃ中心的な見通しって1年くらい後ずれしてるシナリオに読めるのですけれどもですが・・・・ということで(経済情勢の見通し)の見通し部分ですけど。
『先行き2008 年度後半から2010 年度を展望すると、2009 年度半ば頃までは、停滞色が強い状態が続くと見込まれる。すなわち、既往の交易条件悪化の影響などから、国内民間需要は弱めに推移する可能性が高い。輸出についても、海外経済の減速や為替円高を背景に、弱めの動きとなるとみられる。その後、エネルギー・原材料価格高の影響が薄れ、海外経済も減速局面を脱するにつれて、成長率が徐々に高まっていく姿が想定されるが、その時期は2009
年度半ば以降となる可能性が高い。2008 年度、2009 年度の成長率は、年度平均でみると、それぞれ0%程度、0%台半ばで推移した後、2010
年度の成長率は潜在成長率並みになると考えられる。』(今回の展望レポートによる見通し)
これが前回4月の展望レポートではこういう記述になっていました。
『先行き2008 年度から2009 年度を展望すると、概ね潜在成長率並みの緩やかな成長を続ける可能性が高い。すなわち、2008
年度前半は、住宅投資が次第に回復に向かうものの、米国を中心とした海外経済の減速やエネルギー・原材料価格高の影響などから、景気は減速を続けるとみられる。その後は、海外経済が次第に減速局面を脱し、エネルギー・原材料価格高の影響が薄れてくるとみられるため、成長率は徐々に高まっていく可能性が高いと考えられる。その結果、2008
年度の成長率は前回見通し対比で下振れ、1%台半ば程度になるとみられる。また、2009
年度の成長率は1%台後半程度になると考えられる』(4月の展望レポートより)
・・・・・となりますと、これって回復見通しを後ズレにしていて、足元の見通しは当然ながら下がっているので、そりゃまあ見通しを下げてはいるのですけれども、「2010年度は潜在成長率並み」という回復シナリオになっているのが(日銀のことだからある程度来るとは思ってましたが)ふ〜んという感じです。即ち、回復シナリオそのものは相変わらず捨てていないという事ですので、金融政策のタイムラグという話からして、ここから更に利下げだ量的緩和だ(金利付きの量的緩和はなんちゃって緩和で、本当の量的緩和はゼロ金利とセットでしょ)という話になるのはこのシナリオの「先は回復」というのを引っ込めてくる必要があろうかなと思います。
で、もっと微妙なのは(金融政策運営)の「2つの柱」の部分でして・・・・
『まず、第1の柱、すなわち先行き2010 年度までの経済・物価情勢について、相対的に蓋然性が高いと判断される見通しについて点検する。上述した通り、わが国経済は、2009
年度半ば以降、潜在成長率に向かって成長率が徐々に高まっていく姿が想定されるが、当面は、停滞色が強い状態が続くと見込まれる。また、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、当面は、2%台半ばの水準から徐々に低下し、2009
年度に0%前後となった後、2010 年度には0%台前半になるとみられる。このように、わが国経済は、やや長い目で見れば、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく可能性が相対的に高いと判断される。』(今回の展望レポートですな)
ということで、持続的な成長経路に復していく可能性が相対的に高いということなのですが、ではそういう見通しなのに何で利下げしたんですかという疑問が少々ございますのですが。と思って4月の展望レポートの当該部分を拝見しますとこんな感じ。
『まず、第1の柱、すなわち先行き2009 年度までの経済・物価情勢について最も蓋然性が高いと判断される見通しについて、政策金利に関して市場金利に織り込まれている金利観を参考にしつつ点検する。上述した通り、わが国経済は、当面減速するが、見通し期間全体では、概ね潜在成長率並みで推移するとみられる。また、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、均してみれば1%程度で推移する可能性が高い。こうした動きは、「中長期的な物価安定の理解」に概ね沿ったものと評価できる。このように、わが国経済は、物価安定のもとでの持続的な成長を実現していく可能性が高いと判断される。』(これは4月の展望レポートです)
4月にあった『政策金利に関して市場金利に織り込まれている金利観を参考にしつつ点検』というのが外れたのは今回利下げしたからですねとか思うとその芸の細かさに感心しますが(苦笑)。「持続的な成長実現」じゃなくて「成長経路に復する」だから正常化がどうのこうのという話は「復する」となってからのご相談だというのは把握しました。
でも何か決定会合の声明文と微妙にニュアンスが違う気がするのはどうしてなのかなあと思ってみたり。
『3.現在、世界経済は、2000 年代央の数年にわたって蓄積された様々な不均衡の調整局面を迎えており、当分の間、厳しい経済情勢が続く可能性が高い。こうした世界経済の動向を背景に、日本経済の回復に向けた条件が整うには相応の時間を要するとみられる。日本銀行としては、今後とも、緩和的な金融環境の確保を通じて、物価安定の下での持続的成長経路への復帰に向け、最大限の貢献を行っていく方針である。』(決定会合声明文より)
これと展望レポートでの見通しやら第1の柱やらの文章を見ますと、何か微妙にニュアンスが違いますわなと思うのれす。声明文での話と展望レポートの話は対象としている時間の長さが違いますって答えが返ってくるのでしょうが、利下げした声明文に対して展望レポートのこの辺のニュアンスの相違がちと気になったのでありまする。
他に気が付いたらまた書きますかもしれません。
2008/11/01(土曜特別便)
お題「どうみてもブサイクな利下げ関連(超過準備付利と利下げ幅に関連して)」
いやはや、何というずっこけ茶番利下げなんでしょ。まあ思いつくままにテキトーに指摘しておきますね。
#連休初日、こんな良い天気なのに何やってんだか(^^)
で、今回出てたリリースはこのあたりです。
・金融政策変更の声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k081031.pdf
・補完当座預金制度の導入(超過準備付利)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/mok0810f.pdf
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/mok0810g.pdf
(上が制度概要、下が導入に関する説明)
・展望レポート(基本的見解)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0810a.pdf
○大型(かどうか知らんが)経済対策とセットなのは良かったですが
アホウ新聞のリーク記事らしきものでスタートした今回の利下げ云々でございますが、国際協調の枠組みもさることながら、今回は前日に政府が真水5兆円という一応規模はそれなりの景気対策(でも消費税増税を言い出したらダメでしょ。「対策要らないから増税すんな」ってなるだけだと思いますが・・・・という点でローゼンに絶望した!)を打ち込んだ為に、「財政政策と金融政策が協力して景気対策」という格好になったので、それはまあそれで形としては美しくなったので結構でございました。あたくし的には「金融緩和するなら財政も出さないと」って申し上げていたクチなのでその点は中々(・・・でも増税発言は最悪)。
#てめえのところでは恒久的措置だった筈の定率減税を廃止して財政引き締めやっておいて「利上げするなら日銀法改正」とか発言だけは威勢の良いどこぞの誰かさんとはテイストが違いますな。
でもまあ日経新聞(あら)の記事が出ちまった事から、日銀は結局追い込まれて利下げしましたねって言うのは何ともいただけない話でありまして、日銀の金融政策を予測する為には何を持って判断すれば良いかって議論になる訳ですよね。物価の安定って期待に働きかける要素がそれなりに大きく寄与する筈なんですが、その期待を安定化させる為に政策委員会での議論とその公表があり、展望レポートなどの情報発信がありという話だと思うのですが、今般はその流れを全部無視という話になる訳でして、「期待の安定」という観点からすると今回の流れは大いに退行したものであり、日経新聞はしょせん中外商業新報であり、経済のクオリティーペーパーとしての意識は持ち合わせてませんですなと存じますがね。
従いまして、別にECBみたいに公式に中央銀行が事前アナウンスをしている訳でもなく、市場が勝手に織り込みに行った状況だというのに「市場がこれだけ織り込んだのだから利下げしないのは市場との対話と言う面でおかしい」とか言っている人が結構存在してたのですけれども、その理屈は明らかにおかしい訳で、市場が勝手に追い込んで恫喝したら中央銀行はその通りに動くと思われるほうがどうみても間違っておりますわな。市場の中の人ほどそういう発言してる人が多くて、相変わらずマーケットというのはポジショントーク野郎の集まりですなあと思った次第。え、お前も市場参加者だろって?いやまあそれはそうなんですけどね。
○要するに執行部は付利をしたかったと
賛成4で反対4、しかも賛成4のうち3票は執行部の票ですので、審議委員の5名中4名までもが反対するという今回の結果。
当初は据え置き4かと思ったのですが、会見によれば0.25%への引き下げというスッキリした提案が3票に、据え置きというこれはこれである種イヤミな票と思われますが(^^)、要するにこの4名は「付利するなら据え置き、0.25%に下げるなら付利なんぞややこしいことはするんじゃねえ」という筋論での反対なのではないかとあたくしは勝手に推測致しました。
(追記@11/01 12:15)日経新聞の報道によりますと、「現状維持を主張したのは水野審議委員」だそうです。水野審議委員は政策委員の中で一番景気に弱気で金融緩和に積極的と見られますので、従来からの政策ロジックの継続性で反対したのか、それともマジで「付利するなら据え置きやがれ」というイヤミなのかという所ではないかと推察。ちなみに審議委員5名の金融政策に関する現状の見解は、ハト派の順に水野さん>野田さん>亀崎さん>中村さん>>>須田さんくらいのイメージなんですけど、0.25%を主張した須田、中村、亀崎の3氏は「下げるなら中途半端なことしないでスッキリ下げろよ」って事だったのでしょう。(更に追記@11/01 17:05)日経本紙読んだら「水野審議委員と思われる人」が現状維持主張となっていて確証が取れませんので、上記追記部分取り消します。
山口副総裁は先週頭の就任会見でやたら「流動性」を強調してましたし、白川総裁は昨日の記者会見(アップされたらよく読みたいです、一応ベンダーの記事などでは読みましたが)では「今回の利下げを決断したのは直前になって判断」というような発言をしていましたので、まあこの状況から推測しますと、元々今回の会合では以前ぶち上げた「当座預金の付利」に関する話が先にあったのですが、まあオトナの事情(苦笑)によって利下げすることになりましたと。で、どうしても付利をぶつけたいもんだからこんな不格好な結果になってしまいましたと。
どう見ても付利なんぞ後の話でも良いと思うのですが、当座預金付利でインチキ量的緩和というのを先にぶち上げたのを引っ込めたく無いという小役人的発想が先に立った決定としか申し上げようがございませんで、実に残念と言うか絶望な0.30%なのでございます。
○肝心の流動性対策が全然出てませんが
それどころか、コリドー設定で(設定しなくても0.25%の政策金利に下がゼロでロンバートが0.50%だったら50のコリドーではありますが)流動性対策という観点からすると問題は悪化しているのであります。短期市場的に言えば何のための決定会合だったのか意味わからん。
・・・・と申しますのは、こんなナローコリドー(上下0.4%)を設定しますと、コリドーの無い時点と比較した場合、資金の取り手は直ぐにロンバートに駆け込みますし、資金の出し手はコリドー下限でも別にいいやってブタ積みが増えますし、要するに短期金融市場における資金の巡りが悪くなるだけなのですよね、ということでして、付利してコリドー作るよりも前にやるべき事があるでしょうという事です。
で、あたくし以前から延々と申し上げていたと思いますが、足元の金融市場の問題点っていうのは、「資金が円滑に回っていない」という所にありまして、その結果として例えばCPの発行金利がやたら高くなってしまったり、GCレートがやや高い状態が続き安定もしないので債券市場の参加者(業者)がポジションを持ちにくくなり、結果として債券市場の不安定化に繋がるとか起きているわけです。
特に切実な問題としては「相対的に流動性の低いモノのファンディング」という所でありまして、それこそ物価連動国債(いやまあ日銀適格ではあるのですが、普通にGCの担保にするのはかなり厳しい)に始まりまして、最近増えてるらしいCPの代わりに出て行くローン(これもまあ相手によっては担保になりますけど)とか、勿論その他色々とある訳ですが、こいつらの問題ってのは当初は仕組みモノとか在庫豊富な外資系の話だったと思うのですけれども、最近は国内勢でも影響でてる訳で(だから債券やらCPの市場が不安定化する)、金融環境の改善するなら流動性対策やる方が効くんですけどね。
という一般的悪態に続きまして決定内容に関して。
○執行部は来年の4月まで追加利下げしたくないのですかねえ(苦笑)
まずこのブサイクな0.3%という金利に超過準備付利がセットになっておりますけれども、内容としてはこうなっております。(決定会合の結果公表文書より)
『(3)補完当座預金制度の導入(全員一致)
金融市場の安定を確保する観点から、年末、年度末に向け、積極的な資金供給を一層円滑に行い得るよう、日本銀行当座預金のうち所要準備額を超える金額について利息を付す措置を臨時に導入し、11月積み期から来年3月積み期までの間、実施することとする。適用利率は、0.1%とする。』
ということで、来年の3月積み期が終了するのが4月15日でして、金融政策決定会合は4月6、7日と28日に実施されますので、来年度頭の展望レポートまでは利下げしたくないという意思ですかそうですかってなもんです。だって次に利下げしたらどう見たって適用利率0%ですよね。何のためにわざわざ実施するのでちゅかねえ(笑)。
#しかも今回の「臨時措置」というのも訳判らん
今回わざわざ0.3%金利に超過準備付利がセットになっているのは、「これ以上利下げはしたくないです」って事あるいは「次に利下げしてもゼロ金利じゃないですよ(まあ順当に考えれば0.10%に下がるんでしょ)」という意思表示という風に見えてしまう訳でありまして、引け後の会見で「反対のうち3票は0.25%への引き下げ」というので瞬間債券相場とか金先とか好感してましたが、その後ヘロヘロになったのは「執行部の方が下げる気無いのならダメじゃん」という理解を市場がしたからだと思われます。
経済情勢的に考えて、別に来年の1−3あたりに向けて追加利下げ必要な場面がやってきてもおかしくないという状況だと思うのですが、さてどうなることやらという感じではあります。
と、ここまで作ったところで続きは明日か明後日か休み明けに。