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2008/07/31

お題「最近の金融調節に関する良い解説です」

ということで昨日予告いたしましたレポートのご紹介。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0807c.htm
サブプライム問題に端を発した短期金融市場の動揺と中央銀行の対応

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0807c.pdf
(本文はPDFで53ページあります)

○準備預金は金融調節円滑化の為にございまする

調節の具体的な話の前に最初のところなんで。毎度お馴染みのお話ですけれども。

『中央銀行の金融市場調節(以下「金融調節」)手段は、各国の調節目標、金融市場の状況、歴史的な経緯などによって詳細が異なるが、大括りに整理すると、準備預金の積立制度、オペレーション(公開市場操作。以下「オペ」)、スタンディング・ファシリティ(「常設ファシリティ」とも呼ばれる)、の3 つから構成されている。』

ということで、準備預金制度なんですけど。

『まず、準備預金の積立制度のもと、金融機関は、一定の期間に一定の残高を中央銀行に準備預金として積み立てる必要がある。金融機関の決済資金需要は日々変動するが、この仕組みによって、比較的安定した準備需要が創出される。そのうえで、中央銀行は、オペを通じて準備需要に対するマクロ的な資金過不足(財政および銀行券要因による中央銀行当座預金の変動)の調整を行い、政策金利と整合的な水準に市場金利(一般には翌日物金利)を誘導する。』

まあ実務やってると当たり前以外の何物でもないのですが、冷静に思い出してみますと、準備預金制度ってあたくし高校の授業では「市中銀行の支払準備を持たせる」「準備預金率操作で金融緩和/引き締めを行う」という話しか教わってませんでしたな。ま、あたくしが教わってたのって昭和時代でございますから全然参考になりませんが。


ところで余談なんですけど、6月に出てた解説レポートでは金融調節を『金融市場調節』って言ってたんですが、今回はまた『金融調節』に戻したのは何ででっしゃろ。

で、もう一つ最近脚光を浴びているのがスタンディング・ファシリティ。

『スタンディング・ファシリティは、金融機関からの申込みに応じて、予め定めた金利で短期の資金貸出や預金受入を受動的に行うものである。これにより、金利変動の大きい時にはその上限や下限を画し、また、そうしたファシリティが普段から利用可能であることを市場参加者に認識させることを通じて、オペによる金利誘導を補う役割を担っている。』

本レポートに後で詳しい説明がありますが、常設ファシリティによって短期市場金利(基本的には翌日物金利)の回廊を形成させることができますよということでござんす。


○昨今の欧米において直面した金融調節上の課題

本文3ページ目あたりから。

『第1は、金融政策上の誘導目標としている翌日物金利のボラティリティの高まりである。』

『第2は、タームプレミアム(1週間、1か月といったターム物金利と翌日物金利との乖離幅)の拡大である。』

という話は昨日ご紹介したワーキングペーパーシリーズ(の英語版)の中にもありましたよね。ボラが上昇すると流動性プレミアムが高まり、更にボラが上昇するという相互作用によって金融調節が難しくなるという問題。

『第3は、短期金融市場の動揺のクロスボーダーでの波及である。』

これも先日ご紹介したワーキングペーパーシリーズの中にありましたな。

『第4は、有担保の資金取引市場の著しい機能低下である。』

これどういうことかというと・・・・

『一般に、無担保での与信には慎重であっても、有担保であればカウンターパーティ・リスクを強く意識せずに取引することができる。しかし、米国レポ市場では、2007年夏以降、特に2008年2〜3月にかけて、MBS(モーゲージ債)担保のレポレートが急上昇し、国債担保のレポレートとの格差が拡大した。これは、質への逃避傾向の強まりから、安全資産である国債の選好が強まった一方、MBS は価格下落、すなわち担保価額が下落するリスクが意識されたためである。レポ取引では、通常、そうしたリスクに備えてヘアカットやマージンコールといった仕組みが組み込まれているが、担保の価格下落が急激な場合には、こうした仕組みでは必ずしも保全されないことがあり得る。』

特に米国だとレポ市場がやたら発達してるようなのですが、有担保と申しましても相手がコケた場合には色々と不具合が生じるんですよね。フェイル上等の国なのでレポの相手方が突然飛ぶことによって資金繰りと玉繰りがいきなりエライコッチャになる訳ではないと思いますが、その担保価値の下落もさることながら、取引再構築コストってのを意識すると相手が少々お危ないとなりますと、取引する勇者も減りますがなという所なのではないかと思うのですよ。

『第5は、貸出スタンディング・ファシリティの利用に対する金融機関の「抵抗感」の強さである。』

『信用不安の強い市場環境の下では、中央銀行の貸出ファシリティを利用したことが明るみに出ると「資金繰りに窮している」という評判が立つ惧れがあり、金融機関がそうしたリスクを警戒するためである。冒頭みたように、貸出ファシリティは、本来、市場金利の上昇時にその上限を画し、金利誘導を行いやすくすることを目的とした金融調節上の仕組みであるが、信用不安の強い局面では、必ずしも所期の役割を十分に果たさない場合があることが明らかになった(貸出ファシリティの利用に対する抵抗感の問題は、一般に「stigma」と呼ばれる)。』

この問題ですけど、後のほうで解説があって最近は利用されてますねって話になってますが、日本の場合でも金融不安ネタというか銀行経営ネタが残っている間って期末にロンバートに行かないでそれより高い市場調達をしてた人がいたりしたという事例もありまして、日本では最近思いっきりご利用されている(というかロンバートを背に寝転ぶ人が続出してるのでございますが)のですけど、いざ金融不安とかなった時に今のような状況が続いてくれるのかというのは一抹の不安も。


○各国金融機関の対応の概観ですが

本文7ページ目以降。

『第1に、即日スタートの翌日物オペの活用が、頻度・規模の両面で増加した。』

特に欧州では即日スタートのオペとか従来殆ど無かったので、これが増加したのは大きな変化なのですが、ちょっとだけ気になるのは(本論と全然関係ないですが)日本で最近即日スタートオペがあまり行われないようなオペレーションになっているのはこの意識が根底にあるんじゃないのかなというところです。どうも翌日以降のオペで調節を完了させようとする結果、四半期末要因とかでレポとかの金利が上昇している時に放置してそこそこ上昇してから供給を急に打ち出し、期末越えてレート下がっているのに今度は供給オペがロールされて今度は低下にダメ押しするというような微妙な調節になってるんじゃないのかなあとか思うのですよ。

・・・・などと書いたんですが、上記の話の意味って超ごく一部の関係者しか何がなにやらですね、どうもすいません。


『第2に、オペ期間の長期化、柔軟化が図られた。』

『タームプレミアムの拡大に対応したものと考えられるが、FRB やECB、BOE は、ターム物金利を誘導目標としていないことから、特定の水準を念頭に置いてタームプレミアムを引き下げることを企図したものではないとみられる。しかし、ターム物金利の不安定さや、その背後にある金融機関の調達不安を放置することは、翌日物金利の誘導を難しくする可能性があるほか、広範な金融市場の機能低下にも繋がり得る。』

これまたワーキングペーパーで述べられていた論点でございますな。で、その説明の中で、実はタームの供給を行った場合は吸収手段も必要になりますというお話も。

『なお、長めのターム物オペによる資金供給残高を増やした分は、何らかの形で資金吸収を行わないと、ごく短期の資金が余剰状態になり、翌日物金利が必要以上に低下するなど、市場金利の誘導に支障が生じる。』

積み最終直前に大供給を行った為に吸収オペを実施した日銀の動きはごく正常なものだったのですが、馬鹿報道やら馬鹿アナリストやらが大騒ぎした為に日銀ボコボコに言われたのは記憶に新しいかと存じますが。

『このため、各国中央銀行とも、より短い期間の資金供給オペや保有国債の減額、資金吸収オペの実施などを通じて、ある程度の期間を均してみれば「リザーブ・ニュートラル」となるよう努めており、オペの長期化や増額の公表に際しては、見合いの資金吸収を行う予定である旨も併せて説明している。』

ま、他の中銀がその説明をしても何も言われないのに日銀が言うと何故か叩く人が出てくるのはご同情申し上げますけど、まー何か意味が無いものを有るように説明するような誰とは申しませんが前の総裁みたいな事やってたのの反動ってのもあるんでしょとは思いますので全面的に日銀カワイソスとも言い難いあたくしがいるのです。

『第3 に、ECB、スイス国民銀行(SNB)は、自国・地域のオペ適格担保を見合いに、外貨であるドルの資金供給オペを実施し、FRBは、為替スワップにより、ECB、SNBに対して必要となる当該ドル資金を供給した。』

『第4 に、オペの適格担保範囲が拡大された。』

『第5 に、貸出ファシリティの利用を促すための様々な対応が講じられた。』

『最後に、FRB では、資金供給の対象先についても拡充が図られた。』

ということで並べたのですが、外貨資金繰り支援以外の話って実は日銀が金融危機対応以降色々と作りこんできた機能てんこ盛りという感じでありまして、この辺りに関して日銀は先端を行ってたりするのでございますわな。先端だから別に米国や欧州みたいに色々と施策を打ち出す必要が無いのですが、それも無策とか言われるのはちょっとねえという感じでございます。

で、具体的に何がどうなったのよという話ですが、それはまあ本文を読んでいただきたく存じます(というかこれ以上やってたらキリが無い)次第。きっちり纏まっているので丁度良い整理になると思います。













2008/07/30

お題「本当は大ネタレポートが出てるのですが」

出たのが昨日の夕方近くでして、本業など(笑)が忙しくて読んでる時間がNEEEEE!だったので(斜め読みはしましたけど)敢えてスルー。

モノはこちら↓
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0807c.htm
サブプライム問題に端を発した短期金融市場の動揺と中央銀行の対応

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0807c.pdf
(本文はPDFで53ページあります)

図表が多くて本文部分は21ページですが、ざっと読んだ所ではあたくし的には面白いと思うのですけど、面白いだけに消化してからご紹介しますです、はい。

#本石町日記さんがエントリーをあげてますのでご覧ありたし


○相場雑感メモ

・CPレート落ち着く

昨日はスポ末でして、今月スタートCPの発行はほぼ出尽くしたのですけれども、今週に入ってレートの方は落ち着きの気配。昨日もレートは基本的に横ばいで、上位発行体の期末越えではレートがやや低下するものもございましたなという結果に。運用したい人の月末残高調整ニーズもありますので、月末スタートは(最終的には銀行CPディーラーの懐具合に左右されるのですが)運用したい人の残高調整圧力で低下するケースがままあるのですが、先月に関してはその低下が見られずでした。今月に関してはそのあたりが通常ペースに戻った感じですので、まあ落ち着きましたねという結果。

FB3か月は0.58%オファーとかやってます(今日も入札あり)が、期内物が0.555%あたりという感じでして、期末越えのプレミアムはこんなもんちゃあこんなもんかも知れませんが、CPのレートに関しても昨日の動きを見てますと期末越えの高格付け銘柄に人気があった感じでして、期末越えのプレミアムがやや潰れに行く感じが漂うの巻でもあるのでございました。

ということで、運用したい人も多い(というかレートの上昇で運用したい人が出てきたのかもしれませんが)ようで、今月中盤から妙にじり高モードで推移していたCPレートも落ち着く感じになったですねという所で。


・メリルのなんちゃら

正直よく判らんのですが、本当の本当に抜本的処理になるなら結構なお話ですし、どっかの国のどっかの金融システムの事例のように、小出しの損失処理ならいつか来た道になるんでしょ。という内容の評価に関してはあたくし判断いたしかねますが(こら)、一応書いてみるテストなのれす。


○日銀の調節手法は世界一と

昨日ご紹介したちょっと前の日銀レビュー・シリーズですが、英語版があってそれが面白いというご指摘を頂きまして(と入れ知恵であることをばらすあたくし)、英語版を何となく読んでみたら確かにこれは・・・・

http://www.boj.or.jp/en/type/ronbun/rev/rev08e02.htm
Cross-currency transmission of money market tensions

http://www.boj.or.jp/en/type/ronbun/rev/data/rev08e02.pdf
(本文はPDFで11ページです)

で、この文章の流れが日本語版と違う(図表の順序が全然違います)のは何でよとか思いましたがまあそれは兎も角として、昨日ご紹介した日本語版であたくしが自賛部分が入ってますなとか申しあげた所なんですけど、英語版では図表入りのボックス扱いになってまして、対外的には「金融調節の技術を駆使した日銀大勝利(ウルトラ超訳ですので念の為^^)」と内弁慶ならぬ外弁慶モードなので、折角ですからご紹介するの巻なのです。その前に昨日ご紹介した部分を再掲するとこうなります。

『円の資金市場で、ショックの影響が抑制されるようになったのは、@邦銀のサブプライム関連商品に対するエクスポージャーが比較的小規模であり、その分だけ資金調達環境の不確実性の拡大も抑制されていたことに加え、A日本銀行が長めの期間の資金供給オペを含め、積極的かつきめ細かい金融調節を実施し、翌日物金利を誘導目標水準近傍に保つなど市場安定に努めたことも、何がしか寄与している可能性が考えられる。』

で、英文7ページ目のBoxって所なんですけどね。

Box: Intraday volatility of overnight interest rates and central banks' market operations

『Intraday volatility of overnight rates reflects the magnitude of financial institutions' liquidity gap and the degree of fine-tuning of central banks' market operations. The larger the financial institutions' liquidity gap, the higher the intraday volatility of overnight interest rates. Meanwhile, the more inclined central banks are to fill liquidity gaps in the market, the lower the intraday volatility of interest rates.』

ということで、無担コールとかフェドファンドの日中値動きに関する考察をしてまして、まあ例によって中身読んでねという話になるのですが、この日中ボラが上昇すると如何なる悪影響があるかという説明がございまして、まあそうですかねというところでそんなに違和感なし。

『Intraday volatility of overnight interest rates may affect the liquidity premium on term funding. If the intraday volatility of overnight rates gets high, banks become concerned about their daily funding and are inclined to raise more funds from term funding markets, which leads to an increase in liquidity premium. In contrast, if the intraday volatility of overnight rates remains low, banks feel secure about their daily funding and are less inclined to raise funds from term funding markets, which reduces the liquidity premium.』

日中ボラが上昇すると流動性リスクプレミアムが意識され、ターム物のレートなどにもえいきょうを与えるというお話で、まーどっちがどっちなのよというのはありますが、これはまあ相互に影響を与えているという(毎度おなじみのファジーな)お話になるんでしょうかね。図表でもそんな感じの絵が。

で、さっきご紹介(というか再掲)した日本語の部分ですけど、英文ではこんな説明になっております。

『On the other hand, intraday volatility of the call rates in Japan's overnight market has remained low. This is probably because there is relatively little uncertainty about Japanese banks' funding environment due to their limited exposure to subprime-related products. In addition, by actively providing liquidity using a variety of operational tools and by extending the average term of providing operations ? e.g. the Bank of Japan started providing fundscovering calendar and fiscal year-end, earlier than in previous years - (Box Figure 2), the Bank of Japan has stabilized the overnight rates at around the target level in order to prevent the intraday liquidity gap from widening.』

となってまして、(引用しませんが)日銀がサブプライム問題による金融市場の混乱に対応した形で、昨年の9月から12月に掛けて90日以上のタームのオペレーションの比率を増やすことによってターム物レートの落ち着きを図ったというグラフが示されています。

・・・・・えーっと、折角なんですから日本版でもこーゆーの説明すれば良いのにとか思うんですが、ツンデレ属性があるのか何だか知りませんが(違)国内向けでは出さないのね。とか思ってたら最初にご紹介したレポートが出てきましたので、まあ日銀の調節は世界一ってのをそっちでご確認下さい(^^)。














2008/07/29

お題「日銀レビューシリーズより:資金需給逼迫のメカニズム」

米国様ではIMFが何か言いやがったらいきなり金融株大下げとか実に香ばしい。そういやどこかの国でも似たような事がありましたが、あたくし当時「好き勝手ケチつける連中に出してる拠出金なんぞ引き上げれば良いのに」などと不謹慎なことを思ったですなあ(^^)。

ま、国内に関しては昨日の超閑散振りには参りましたな。何と言う国内要因材料の無さよという所ですか。

という話は兎も角として、ちと前の日銀レビューシリーズより。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev08j05.htm
主要通貨市場における資金需給逼迫の波及メカニズム

○Libor-OISのスプレッド推移の分析ですな

まあそれに着眼して分析するのは左様ですなと思います。最初の2ページの辺り。

『2007年8月以降、主要通貨の短期金融市場では、ターム物を中心に、資金需給の逼迫した状況が続いている。クレジットリスクや流動性リスクに対するプレミアムの拡大を映じて、銀行間取引レートであるLibor と翌日物金利スワップ(OIS)レートのスプレッドは急速に拡大し、現在も高水準で推移している。そして、日米欧のLibor-OIS スプレッドの推移について、以下の2つの特徴が見出せる。』

で、何でこのスプレッドを見るかという話ですが、

『銀行間取引の指標金利であるLibor は、基本的には、対象期間中の政策金利の見通しに、クレジットリスクや流動性リスクに対するプレミアムを上乗せした水準に決まる。クレジットリスクが勘案されるのは、Libor が無担保の銀行間貸出にかかる指標レートだからである。』

なのですが、まあついこの前まではLibor自体がほとんどリスクフリーレートみたいな金利になってました(超昔の話になりますが、金先のリファレンスがTiborになったのはLiborが実際の市場金利と全然違うので現物ポジションのヘッジにならなくなったとか背景にあったような記憶が)りしてましたわなというツッコミはあるのですが。

ちなみになお脱線すると、Tiborって本当にその金利で例えば銀行CPとかCDとか発行するんかいなと言えば(そりゃまあ出しの金利と取りの金利にスプレッドがあるのも勘案しないといけませんが)んなこたあねえ次第で、銀行様の貸出金利がどうのこうのとかマーケットとちょっと関係が薄いオトナの事情も働いているらしかったりするようで(^^)、まあ日銀レビューでいう分析に必ずしも乗らない部分があったりするのよね。

などと言い出すと分析にならないので、まあこういう感じになっております。

『資金の貸し手は、借り手のデフォルトリスクを、提示レートに織り込む。また、流動性リスクが勘案されるのは、資金繰りに関する不確実性が高まると、金融機関において、手許資金を厚めに保持するインセンティブが働くためである。すなわち、短期金融市場でストレスが強まると、金融機関は市場でのターム物資金調達が困難化する。こうした局面では、ターム物調達の前傾化や資金放出の慎重化を通じて、金融機関の流動性ポジションを維持する動きが広範化するため、Libor に上昇圧力がかかることになる。』

LiborとTiborのスプレッドがやたらついていた時代の事を勘案しても判るように、まあこの話自体は仰るとおりでございます。


『一方、OIS は、一定期間の翌日物金利(O/N 物)と固定金利を交換する金利スワップ取引であり、その取引レートは、基本的には、対象期間の政策金利の見通しのみを反映する。すなわち、OIS取引は、元本の交換が発生しないため、クレジットリスクや流動性リスクに対するプレミアムが極めて限定的である。このため、Libor-OISスプレッドは、クレジットリスクと流動性リスクのプレミアムの指標として捉えることができる。』

ちとツッコミたい気もしますが、スプレッドに関しての結論はまあ概ねそんな感じでざっくり理解するという感じで宜しいのではないかと存じます。まーLibor自体も先般の騒動で実は鉛筆なめなめだったりするのねというのが白日の下に晒されちゃいましたが、他にまともなものも無いですから、これはこれで宜しいのでは。

ところで、このLibor-OIS スプレッドのお話ですが、水野審議委員も先日の講演でこの点に触れてましたが、まーこのスプレッドが開いたままだというのは短期金融市場にストレスが掛かっているというのはまさにその通りですので、そーゆー意味でこのスプレッドを見るのは参考としては良い話かと存じますです、はい。



○スプレッドの要因分解

2ページ目以降のお話ね。

『図表2 は、一定の仮定に基づき、Libor-OIS スプレッド(3 か月)を、クレジットリスク要因と流動性リスク要因に分解したものである。クレジット要因は、Libor のパネル行のCDS プレミアムから推計し、流動性要因は、Libor-OIS スプレッドと推計したクレジット要因の残差として定義した。』

だそうで、脚注見ますとBOEが同様の分析してるそうですが、さすがにそこまでフォロー不能(というかやる気がないだけですが)でございますが、『期間5年のCDS プレミアムから3か月物のクレジット要因を推計した。』ってのそうなのかねという感じはせんでもないのですけど。社債スプレッドと短期支払能力に対する認識に関しては関連性は強いには強いのですが、また別のロジックが働く(だから短期と長期の格付けって別立てになってるんでしょ)ような気もしますが、社債スプレッドとCDSプレミアムはまた関連強いがどこかで別問題だったりするので。

などと言い出すとキリがないですけど、そのプレミアムの数値が細かく動いたからどうこうという分析をしてるのではなくて、もっと大きな目での分析をしている話が本稿の流れでして、別にその要因を全て厳密にやるのでは無い話なのでこれはこれでそんな感じなんでしょう。



○で、その結果ですけど

『Libor-OIS スプレッドの変動の大部分は、クレジット要因ではなく、流動性要因によって規定されている。すなわち、短期金融市場での資金需給の逼迫がグローバルに波及する過程では、クレジット要因よりも、流動性要因が重要な影響を及ぼしていると考えられる。』

という違和感の無い結果に。で、市場がどういう状態の時にどうなっていたかという分析をした結果は・・・・・

『市場の混乱前は、統計的に有意な因果性は検出されず、各市場のスプレッドは、概ね独立して推移していたことが確認できる。これは、平常時には、クレジットリスク・プレミアムは極めて限定的であり、また、流動性プレミアムも各通貨独自の要因で規定されており、中央銀行の金融調節によって制御されており、中央銀行の金融調節によって制御されていることを示している。一方、市場混乱後の期間についてみると、@ドル(USD)からユーロ(EUR)と円(JPY)へ、Aユーロ(EUR)から円(JPY)へ、の方向に有意な因果性が確認できる。』

『一方向の因果性は、流動性プレミアムの波及によってもたらされたと考えられる。これは、「ドル資金市場における需給逼迫が、流動性プレミアムの拡大をもたらし、各国の資金市場に波及した」という市場参加者の大方の見方とも整合的である。』

まあそうですね。そのメカニズムはどうなのよという話もありますが、基本的にその通りですねという話なので割愛。



○スプレッドの分析その2

スプレッドの水準に加えまして、そのボラが高まってますねという部分を分析するのが後半部分で4ページ目後半以降になります。

『最近のLibor-OIS スプレッドは、水準のみならず、分散も大幅に上昇している。流動性プレミアムの観点からみると、スプレッドの分散拡大は、@ファンディング・ショックの大きさの拡大、A同ショックが市場間で波及・増幅するメカニズムの変化、によってもたらされたと整理することができる。』

ということで、何でそんな分析をするかと言うと・・・・・

『中央銀行にとって、金融機関によるリスクの再仲介やデレバレッジの動きは少なくても短期的には外生的なものであり、それらに伴って発生したファンディング・ショックの大きさを直接制御することはできない。しかし、柔軟かつ積極的な金融調節を行うことによって、金融機関を取り巻く市場環境の不確実性を軽減し、外生ショックの増幅度合いを抑制することは可能かもしれない。』

ということで、まあ最後の結論の所にもそんな話があるのですけどね。

で、まあ正直言って数回読んだが何でそうなるのかよく判らなかった(あほです)のですが、分析結果はこうなっているようで。

『1点目は、どの通貨のスプレッドにおいても、ショック要因の説明力が相応に大きい点である。そして、サブプライムローン問題の震源地であるドル資金市場(USD)のショック要因が他の2市場に比べ大きいことは、因果性テストや分散分解の結果と整合的である。』

『2点目は、ドル(USD)とユーロ(EUR)の資金市場では、ショック要因以上に、パラメータ要因の説明力が高い点である。このことは、2007年8月以降、資金調達環境に対する不確実性が強く意識される下で、いったんファンディング・ショックが発生すると、ショックの影響が大きく増幅され、市場間に波及していったことを示している。』

『3点目は、ドルやユーロの資金市場とは逆に、円市場ではパラメータ要因がマイナス方向に寄与している点である。このことは、円の資金市場では、2007年8月以降、ファンディング・ショックに対して、むしろ、スプレッドの拡大が抑制される傾向が強まったことを示している。』

ということだそうです。そうなんですか。で、その理由の考察に一部自賛入ってますな(^^)。

『円の資金市場で、ショックの影響が抑制されるようになったのは、@邦銀のサブプライム関連商品に対するエクスポージャーが比較的小規模であり、その分だけ資金調達環境の不確実性の拡大も抑制されていたことに加え、A日本銀行が長めの期間の資金供給オペを含め、積極的かつきめ細かい金融調節を実施し、翌日物金利を誘導目標水準近傍に保つなど市場安定に努めたことも、何がしか寄与している可能性が考えられる。』

・・・・・(^^)

で、まあこの次に為替スワップのドル転コストの分析があるのですが、益々苦手な世界に突入するので結論だけ端折ると・・・

『サブプライムローン問題によって市場が混乱する前までは、ドル資金市場の需給が、為替スワップによるドル転コストに対して強い影響力を有していたが、2007年8月に混乱してからは、逆に、為替スワップ市場の需給がドル資金市場のターム物金利に影響を及ぼすようになった。この逆方向の因果性は、為替スワップ市場の流動性低下に起因したものと考えられる。』

ということで、その流動性低下によりショックアブソーバーの機能が弱まり他市場への資金需給逼迫の連鎖がおきやすくなってますというお話になるようなのですが、鶏が先か卵が先かみたいなもんで相互にリンクした話なんでしょうねと言ってみるテスト。

で、途中をなお思い切り端折って最後の部分は全く同意でございます。でも分析方法って難しいですよね。市場の構造というか仕組みって時の流れというか何と言うか場面場面で違ってくるので、別の時に同じデータを使った分析が効くのかという話になると、それがまた難しい話のような気がします。どういう手法を使うのかという基本的な発想は同じなので、その時どきで最もよく市場の状況を表すデータを取ってこないといけないのでしょう。その辺は金融市場局だけに良く見てると思いますが。

『今後、様々な角度から、流動性供給策の効果に対する実証分析を蓄積していくことは、中央銀行の金融調節の遂行においても、また、金融市場のダイナミクスを理解していくうえでも重要な課題といえよう。』


#端折り引用でスイマセンが、具体的にはレポートの現物読んで下さいね












2008/07/28

お題「水野審議委員記者会見:景気に極めて慎重」

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0807b.pdf

今回の会見(講演でもそうでしたが)では水野審議委員の「個人的な見解として」というフレーズ付きで景気などに関する慎重な発言が目立ちました。

○下振れリスク重視です

物価の上振れリスクと景気の下振れリスクのどちらを重視するかという質問に対して。先般白川総裁は同じ質問でどちらも重要でイーブンみたいな話をしてましたが・・・・

『先日、内外情勢調査会で総裁にも質問されていた点ですが、どちらを優先すべきかという問題ではなく、どちらも重要であるという話だと思います。ただ、その中で個人的見解としては、民間内需の下振れリスクがエネルギー・原材料価格の高騰によって高まっている局面だと思っています。』

ということで個人的見解としては景気下振れリスクですと。

『物価の上昇については、いわゆる賃金の上昇を伴いながらのスタグフレーションになっていくという1970 年代のような状況にはないと考えます。個人的には、今は景気の下振れの方をやや意識しながら政策運営を行っていくのが適切ではないかなと思っています。それが何対何という話は、私はしませんが、気持ちとしては、民間需要の下振れリスクが現在高まっていて、順番としては、企業部門から家計部門、とりわけ個人消費に下振れ懸念が高まっている状況にあると考えています。』

具体的には物価上昇が2次的効果に入らない状況の下で、物価上振れを懸念するよりは民需下振れリスクを懸念する方が現実的でしょというお話なんでしょうね。


○6月会合の利上げ云々発言は水野さんではないようで

6月の決定会合で成長パスに復帰することがある程度確認できたら利上げパスに戻るべきという発言があったのですが、水野さんの発言かと思って質問したらしくその条件に質問が。

『議事要旨について、誰がどのような発言をしたかというのは、私が答える立場にありませんし、それは皆さんの推測にお任せします。どういう状況になれば実際に政策対応できるか、正直言ってはっきりわかりません。わかりませんというのは3番目の質問とも絡みますけど、日本経済を覆っている外的な要因、「霧」と私は本日挨拶要旨の中で申し上げていますが、この「霧」がさらに深まる可能性も十分ある訳です。』

と、思いっきり成長パスへの復帰に対して懐疑的。具体的には・・・

『例えば、米国経済の減速懸念が金融と経済の負のフィードバックで強まっていく可能性もあります。それから原材料価格も、このところ原油価格が若干落ち着きを取り戻したようにみえていますけれども、これでもうピークアウトしたかと言えば判断が早い訳です。原油価格が上がった後の各種のデータも、見極めるには少なすぎるという状況ですから、どのような状況になったら政策がどうなるかという議論は、まだ仮定の話だからということではなく、あまりにデータが少なすぎるということになると思います。』


○アジア諸国の経済に対する懸念

外需に関してアジア経済をポイントに懸念しています。

『3点目の「霧」についての話を端的に言えば、日本経済が2002年の1月から緩やかながら拡大してきた訳ですが、最大の貢献が輸出、外需であり、輸出に主導された回復であった訳です。その中で経済のグローバル化に上手く乗れた企業が中心になって景気を引っ張ってきた、しかも地域的には中国を含めた東アジア地域向けが中心でありました。最近でこそロシアや中東産油国もありますけれども、アジア諸国がインフレなき物価安定を維持しながら持続的な拡大を続けることが実現できるかが問題となります。』

ということで、講演の中でアジア経済のインフレがどうのこうのという話がありましたが、このアジア経済のインフレというのは物価上振れ懸念というよりは景気下振れ懸念の一環だということですね。

『トラックレコード(過去のデータ)があるとは言い難い諸国でありますから、この点について個人的には特に気にしています。外需が基本的に景気を引っ張っていく構図が崩れてしまうと、日本経済の回復の絵は描きにくいだろうな、というのが私の基本的な景気の見方でありますので、この「霧」ということをどのように日本経済に結びつけるかというのは、まさにその点に尽きると思います。』

ということでこちらでも個人的に気にしていますと。で、別の質疑でもアジア経済に関して特に懸念している旨の発言があります。景気回復パスが展望レポートの平均的な評価よりも後ずれするという話の中で。

『私自身は、本日の講演要旨の中で一つプレイアップして書いたところですが、東アジア経済がインフレを上手く抑制して、ソフトランディングできるかどうかについてはやや懐疑的であるという点です。公式見解では敢えてプレイアップしてないところでありますが、私はそこに非常に注目しています。』

ほうほうなるほど。

『なぜならば、日本経済は輸出主導型の回復をしてきて、これに非常に貢献してきたのが東アジア、中国であり、どうしてもそれらの国の動向に対する懸念がある訳です。日本銀行としてはコンセンサスというよりも、こういうパスを基本的には考えているという言い方をしています。基本的には考えていても、それに対して蓋然性が高いシナリオがメインシナリオであるとすると、サブシナリオをそれぞれのボードメンバーが持っている訳で、私がそれぞれがどうだという立場ではありませんが、個人的には、何が後ずれさせるかと言えば、東アジア経済のインフレ抑制が上手くいかないケースだという説明でよろしいでしょうか。』

講演でありましたように、東アジア経済は原材料価格の上昇はモロに交易条件の悪化になるので、そこにインフレが加わると経済大失速となってしまい、輸出に悪影響となるでしょうという話ですね。繰り返しになりますが、東南アジアのインフレ懸念と水野さんが言う時は、景気に対する懸念と見ればよいのでしょうな。


○景気回復は後ずれの見通しを

景気動向指数の景気基準日付ベースで見ると景気後退局面に入った可能性があるという講演での発言に対して質問がありまして、それに対する水野さんの説明。

『これは、景気基準判定上、判明するのはまだ先の話でありますし、コンポジットインデックスをより重視する政府の姿勢からしますと、景気後退に入るかどうかという判断は、日本銀行が予測を持って表明していく立場にはありませんが、そういうことを言われても仕方がないのかなという話であります。』

『その理由を敢えて言えば、生産が1‐3 月期のマイナスの後、4‐6 月期に続き7‐9 月期も横這いか、若干のマイナスとなる可能性を否定できなくなってきている訳です。そういうことを考えますと、景気後退が認定される可能性はあるのですが、同時に強調していきたいのは、深い景気後退になる、あるいは景気が底割れしていくような状況になるかというと、企業が在庫、設備、雇用の3つの過剰問題を解決した中では、そういう状況は今のところ起き難いのではないかとみています。』

後退の可能性はあるが底割れはしないという見通しではございますが。

『ただ、景気回復のパスに回帰するまでのタイムラグが以前想定していたより、あるいは日本銀行が公式に言っているよりも、後ずれする可能性はあると、意識していかなければならないと個人的には思っております。』

で、別の質問でボードメンバーのコンセンサスよりも弱いのかというのがありましてそれに対して。

『正直言って、ボードメンバー間のコンセンサスは、あるようでないと思います。この前の表現をみますと、「その後次第に緩やかな成長径路に復していく」という表現自体に、多少慎重なトーンが入っています。中間評価レビュー、あるいは金融経済月報等で出しているトーンからしても同じです。未だに景気判断は、若干ですが下方修正を7月もしているということですから、その辺からも既に足許から慎重化している訳で、単純平行移動すれば後ろにずれるということがまず1点目です。』

2点目は先ほど紹介した東アジア経済の懸念です。では具体的な回復への時期に関しての質問ですが。

『私は、2008年度と2009年度の数字が、2008年度よりも2009年度が高いかどうかについては自信がありません。なぜならば、米国の経済、それから東アジア経済、それから米国の不良債権問題であるサブプライム住宅ローンから始まったクレジット市場の問題、この問題すべて、1年前あるいは半年前に、市場あるいは日本銀行が考えたよりも問題はより複雑化してきているからです。原油価格もまだ楽観視できないということになってきますと、私は潜在成長率に戻っていくことに関する自信を若干低下させたとすると、2008年、2009年の成長率が逆転することは十分有り得ると考えているということでお答えしたいと思います。』


○米国経済に関して

講演の方ではご紹介をスルーしちゃいましたので、米国経済に関してコメントしている部分を引用します。

『米国経済の話ですが、ステージが少し変わってきたのだろうと思います。米国の住宅価格が下げ止まってないことを考えれば、問題の本質は不良債権問題だと思っています。不良債権問題ということは、住宅価格が下げ止まっていない、もう少し丁寧に言いますと、大手銀行の問題から、米国の普通の商業銀行、コマーシャルベースの地方銀行のいわゆる典型的な不良債権処理の問題に段々移っていくということです。』

『サブプライム住宅ローンのほか、いわゆる各種の個人向けローンも延滞率が上がってきています。それから、商業用不動産向けの貸出も引当てが必要になることが想像に難くない状況です。それから企業向けの融資についても、景気が悪ければ当然引当てが増えてくる訳ですから、状況としては、大手銀行が、増資をしながら――資本増強もなかなか環境が厳しくなってはいるのですが――不良債権処理を進めてきた状況から、今後は収益力が弱い地方銀行が、未だ住宅価格が下げ止まったというには程遠い状況の中で、不良債権処理を進めるという非常に大変な状況になるだろうと思います。』

住宅バブルの崩壊で商業銀行の不良債権問題となると、日本と同じような話になる訳ですが、その間に資産価格の下落が続くと大変だというのはこれまた日本に実例ありということですね。

『只今の質問については、講演要旨の11 ページ目以降に該当しますが、「米国の投資銀行では対応が進みつつあるが、今後は米国の地銀など商業銀行の経営環境は厳しくなりそうだ」と書かせていただきました。金融システムを揺るがすような個別の金融機関の問題は無くなってくる可能性はありますが、ただ地方銀行の不良債権処理については、先程言いましたように、収益力の観点から言いまして、時間を掛けながら処理をしていくことにならざるを得ないと思います。』

『公的なサポートをするにしても、金融システムを揺るがすようなところに関しては、公的な関与、公的なサポートは出てくると思いますが、それがなかなか期待しにくいところもあると思います。そういう意味では、米国経済が厳しくなるかどうかの問題だけでなく、不良債権問題がいつ終わるのかという話からしますと、日本の経験では、結局1997年、1998年に大手の証券会社の破綻に日本銀行は特融を出した訳ですが、その後、不良債権問題に何年掛かったかということを考えれば、1年、2年で済む訳ではなくて、米国経済が潜在成長率に復するタイミングも、先程の日本経済と同じように、後ずれするリスクの方が高まっているということであります。』

ということで、講演要旨の引用をスルーした分こちらで勘弁ということで。











2008/07/25

お題「水野審議委員講演、景気にぶっち切りで弱気と」

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0807b.htm

題名は『複雑化する世界の金融経済情勢とその政策対応』ってことでして、まあ一行で要するにとすれば「政策委員会の平均よりも景気の先行きに弱気ですね」という所なのですが、例によって紙に落とすと13ページとかになりますので、じっくり読むのも吉かと存じます。

○要するに原材料価格上昇の悪影響ですね

冒頭の経済・物価情勢に関する説明ですが、国内の景気動向に関して端的な指摘がございます。

『一言で言えば、エネルギー・原材料価格高が、企業収益、個人消費でダウンサイドに、CPIコアでアップサイドにもたらしたインパクトは、「展望レポート(2008年4月)」をまとめた4月末時点では想定できなかったほど厳しいものになっています。』

で、従来より水野審議委員は原材料価格上昇によるCPI上昇は交易条件の悪化や実質所得の低下を通じて経済に負の影響を与えるという見解ですので、要するに景気には想定以上に悪い影響が来てますというお話ですね。で、この先は色々と水野さんの見たてが続きますが、基本的に経済状況の話が続くせいか、長い割には読みやすいので(^^)、皆様に置かれましても是非。


○短観の分析

短観の業況判断DIそのものにはサプライズは無いですが、他の部分で注目すべき点が3つということで。

『注目点の第一は、価格転嫁の進捗度合い、すなわち、販売価格判断DIの動向でした。企業業績が悪化している主因は、エネルギー・原材料コストの増加を簡単に価格転嫁できないことにあります。しかし、今回の短観をみると、大企業のみならず、中小企業でも製造業で販売価格判断DIの上昇超が明確になっています。販売価格の引き上げの動きが若干とはいえ広がり始めた可能性を示唆しています。ちなみに、こうした動きは、春先以降の消費者物価の前年比上昇率上昇と整合的です。』

ただ価格判断DIが改善したことが企業業績の改善に繋がるかというとそれは微妙ですね(個人消費が底堅くないので価格上昇即売り上げ増にならない)という説明が続くのですが、引用してるとキリがない(水野審議委員講演の仕様です)ので講演要旨読んでくださいね。と手抜き。

『注目点の第二は、エネルギー・原材料価格高騰による業績悪化にもかかわらず、企業が設備投資を増加させるかどうかでした。全規模・全産業のソフトウェアを含み土地投資額を除く2008年度の設備投資計画は前年度比+3.5%と前回調査比+3.9ptの上方修正となりました。中小企業・全産業の修正率も+7.1%と2007年6月調査の同+5.8%と遜色のない上方修正となりました。大企業の設備投資計画をみると、製造業は前年度比+8.0%、非製造業は同+6.2%といずれも昨年度実績(それぞれ同+5.2%、同+1.2%)よりも高い伸びとなっています。』

こちらの数字は先行きがあまり悪化しないという前提になっているのではという指摘と、07年度計画が後寄せになっている部分もあるのではという指摘がございまして、この数値自体は悪くないけど、先行きの下方修正の可能性があるのではという話になっています。

『注目点の第三は、在庫判断DIや設備・雇用判断DIに調整圧力が生じていないかということです。全規模・全産業の在庫判断DIは3月調査に比べ概ね横ばいの結果となったほか、同設備・雇用判断DIも前回調査に比べ幾分不足感が縮小しましたが、水準でみれば過剰感のない状態または不足超で推移しています。ただ、足許の雇用者数の上昇率の鈍化は、労働市場の潮目の変化を示唆している可能性があります。』

これはあたくしが毎回チェックしてました雇用判断DI部分の話が一部重なっていますにゃ(^^)。下向きになってきた感じがするのはどうもあたくしも気になってましたです。


○物価に関して

『国内企業物価が前年同月比+6%を超えるのは時間の問題と見込まれます。』
『コアCPIは、小売段階での値上げの広がりから、秋には同+2.5%程度まで上昇すると私は予想しています。』

ということですが、米国型コアに関しては

『ただ、企業間の価格転嫁の進捗は、財については進んでいますが、企業向けサービス価格をみると、サービスについてはあまり進んでいません。CPIはサービスの占めるウエイトが高いので、賃金上昇率の弱さを考えると、やはり米国型のコアCPIの前年比上昇率の上昇テンポは緩やかにとどまると予想されます。』

として、

『なお、このような物価の上昇によって、個人消費の下振れリスクが懸念されます。実際、4月・5月の個人消費関連指標は、家電販売を除き、弱いものが目立ちます。外食産業売上高や全国百貨店売上高の弱さは、家計の生活防衛意識の高まりを示唆しています。』

と結論付けていますので、やはりまあ先行き警戒ですねという所です。


○米国経済に関してですが

米国経済に関しては、特に現下の金融システム問題に関して詳しく見立てをしていまして、こちらに関しても引用と言いたいのですが、これこそやってるとキリがなくなるので(後日またネタにするかもしれませんが)、結論の所だけ(でも長い)とりあえず。

『こうした背景(引用者追記:金融問題発生の背景)の大半はまだ解消されていないため、金融システムの安定にはまだ時間を要すると思います。また、以下の理由から、「サブプライム問題が最悪期を脱した」と言い切るだけの根拠も乏しいように思われます。』

『第一に、米国の住宅価格は下げ止っておらず、住宅ローンを原資産とする証券化商品市場の動揺が終焉する目処がたっていません。また、サブプライム住宅ローン証券化商品や再証券化商品(ABS CDO)などの発行市場はほぼ停止状態にあります。』

つまり住宅価格が下げ止まらないと話にならんというのは本邦の事例を勘案するとその通りでございますわな。

『第二に、欧米の中央銀行によるかなり踏み込んだ流動性供給策にもかかわらず、インターバンク市場の緊張感は持続しているほか、ABCPの発行残高は減少傾向が持続しています。』

『第三に、欧米大手金融機関ではCDO関連の損失処理は進捗しましたが、レバレッジ・ローンの売却・損失処理は道半ばです。大手格付会社は、欧米投資銀行の信用格付を引き下げています。その背景を窺うと、(1)トップラインの収益見通しの悪化、(2)短期金融市場やレポ市場の流動性低下に脆弱な資金調達構造(注:商業銀行のコア預金のような安定した資金調達手段がない)があります。』

引用しなかった所にあるのですが、OIS-LIBORスプレッドとか見るとよろしアルなのです(まだご紹介してない日銀レビューシリーズに市場データからこの辺りを分析したペーパーがございますのです。近日中にご紹介予定)。

『第四に、米国の投資銀行では対応が進みつつあるが、今後は商業用不動産価格の下落、住宅ローンの焦付きに対応した伝統的な不良債権問題が顕現化し、投資銀行に比べて収益力が劣る米国の地銀など商業銀行の経営環境は厳しくなりそうです。』

商業銀行への波及と。

『第五に、5月ぐらいまでは米国大手金融機関の増資は比較的順調に行われてきましたが、6月以降は増資が消化不良を起こす事例が増えてきました。金融機関は増資の限界を意識せざるをえず、バランスシートの圧縮をさらに進めており、クレジット市場ではデレバレッジの本格化への懸念が強まってきました。』

『第六に、裏付け資産の価格が安定している証券化商品・企業向けローン、レバレッジ・ローンを底値で購入する投資家が出てきましたが、このような distressed assets の買い手は、まだPEファンドやごく一部のソブリン・ウエルス・ファンドに限られ、機関投資家は、GSE債など暗黙の政府保証が期待できる金融商品や裏付け資産が管理しやすいABSのうちAAA格のものを購入する、にとどまっています。』

『最後に、米国大手銀行の融資姿勢の厳しさは、前回の景気後退局面を大きく上回っています。信用収縮がいわゆる「景気と金融の負のフィードバック」を発生させるリスクが高まってきました。すなわち、クレジットの質の劣化が信用収縮圧力を強め、米国の景気回復が遅れるリスクが高まってきました。また、これは、クレジット市場では、CMBSのスプレッド拡大、低調なハイイールド債の新規発行という形で顕在化してきました。住宅価格の下落テンポの大きさという点では、イギリスも米国と遜色がないため、金融市場の一部では、イギリスの金融システム不安を安定化させるため、最終的に何らかの公的関与が必要であるとの見方も出てきました。』

問題の長期化によって参加者の体力が全般的に低下し、実体経済への波及も思いっきり懸念されるというところですか、まーあとはこの問題解決へのスピード感でして、スピードが遅いと延々と塹壕戦が続いて皆疲弊みたいになって悲惨なことになりかねませんね。


○インフレ圧力に関して

今回の資源、エネルギー、穀物価格上昇の背景に関しての水野さんの見立てですが。

『今回の資源・エネルギー、穀物価格の高騰の背景としては、年金マネーの流入や投機的な動きといった「金融要因」、あるいは、原油の採掘・精製能力増強に向けた投資不足など「供給制約の要因」、そして「地政学的な要因」もあると思いますが、個人的には、その主因は、好調な新興成長国の経済という「需要サイドの要因」とみています。中国やインドなどエネルギーを大量かつ非効率に消費する経済の台頭、米国の金融緩和効果の新興成長国への波及などを背景とした実需の強さは、資源・穀物インフレのボトムラインにあります。資源・穀物価格の高騰は、「バブル説」や「投機説」だけで説明するには無理があると思います。』

その理由。

『新興成長国の景気は減速し、需給ギャップは縮小するものの、インフレ圧力が
抑制されるほどの減速ではないため、資源・穀物の需要はなかなか減退しそうにないこと。』
『コモディティー価格が上昇しても、全体的に在庫水準は非常に低いこと。』
『価値保存手段には適していない農産物価格も上昇していること。』
『先物市場がなく金融取引の影響を受けない鉄鉱石の価格も上昇していること。』

ほうほうなるほど。で、その後に『一部新興成長国のインフレ圧力上昇の背景には、FRBによる積極的な金融緩和策が影響していると思います』という指摘があってその後の説明も興味深いのですがこれまた端折りまして結論部分にワープ。

『私個人としては、世界経済を安定させるには、原油価格の安定が不可欠と判断しており、(1)石油消費国における戦略的原油備蓄の一部取り崩し、(2)増産に前向きな産油国の姿勢、(3)年金マネーによるコモディティー投資の縮小、など複合的な取り組みが重要です。言い換えると、金融政策だけで世界的なインフレ圧力を抑制しようとしても限界があると判断しています。』

どうもそんな感じなんでしょうかね。


○金融政策に関してはまあどうみても現状維持

これは折にふれて日銀から言われています(先般の白川総裁会見でもありました)話ですが改めて引用しておきますね。

『一般論として、エネルギー・原材料価格の高騰という「相対価格の変化」による物価上昇圧力は、金融政策で止めることはできません。一方、エネルギー・原材料価格の高騰が、企業や家計のインフレ予想を押し上げることによって賃金・物価がさらに上昇する二次的効果(second-round effect)が発生した場合、金融引き締めによって歯止めをかける必要があります。現在のわが国をみると、賃金の伸び率は前年比+1%前後と落ち着いており、二次的効果が発生しているわけではありません。』

それどころか雇用関連が少々怪しくなってますから。まあさすがに昨今の日銀による情報発信によってCPI数値が上昇するから即利上げというような事を想定する人はかなり駆逐されたと思いますが。で、先行きに関して引き続き実質購買力の低下による家計部門の動向を懸念すると共に、こんな指摘をしています。

『金融市場では、もっぱら国際金融資本市場の動向や米国経済の先行きに焦点が当たっていますが、個人的には、むしろ新興成長国の景気・物価の先行きを懸念しています。すなわち、(1)新興成長国が適切なマクロ経済政策運営によってインフレ圧力を抑制できるか、あるいは、(2)金融引き締めが不十分なまま、インフレ率の上昇に伴う実質所得の下押しが新興国の減速を想定以上のものとし、その結果、今年度下期〜来年度にかけてわが国の輸出を想定以上に減速させるのか、という点です。仮に、東アジアを中心とした新興成長国の景気が失速した場合、わが国の景気見通しを下方修正する必要が出てきます。』

と思ったら昨日出てた輸出関連の経済指標が宜しくなかった筈。しかも東南アジア向け。

『わが国経済は資源国への所得移転、すなわち、交易条件の悪化によって企業収益と家計の実質購買力が抑制され、民間内需の下振れ懸念が強まっています。一方、東アジア諸国の大半も資源輸入国であるため、景気減速感がみえます。東アジア諸国では、インフレ加速が大きな社会問題となっており、成長をある程度犠牲にしてもインフレ圧力を抑制する金融政策運営を迫られる国が増えてきます。仮に、新興成長国の景気減速を受けて、資源・穀物価格の急騰に歯止めがかかるならば、わが国の民間内需の下振れリスクは若干後退しますが、東アジア諸国及び中東産油国向け輸出が減速に転じる公算が高いため、やはり注意深くみていく必要があると思います。』

で、日本経済の「霧」は晴れませんねという話になります。

『わが国経済を覆う「霧」という意味では、(1)「サブプライム問題」に端を発した欧米クレジット市場や株式市場の混乱、(2)エネルギー・原材料価格高を背景とした民間内需の下振れ圧力、という従来から日本銀行が指摘してきたものに加え、個人的には、(3)東アジアの新興成長国におけるインフレ圧力の高まり、という「新たな霧」も発生していると判断しています。』

『このように、わが国経済を覆う霧は当面晴れそうにありません。現在は、物価の安定を通じて持続的な成長に貢献するという金融政策の目的を達成する上で、金融政策決定会合で「現状維持」を決定することに積極的な意味があると思います。』

何故積極的な意味があるかというと、金融環境そのものは緩和的であるので、緩和的な金融環境が景気に対しては支え(というか押し上げというか)の効果がありまっせということなのでしょうね。

『日本銀行は昨年3月以来の当面の金融市場調節方針として、「現状維持」を続けていますが、金融環境は総じて緩和的であるとの判断は変えていません。(中間割愛)わが国経済の潜在成長率の水準を考えると、いつまでも0.5%という政策金利を継続することの副作用についても、常に念頭におきながら、適切な金融政策運営を毎回毎回の金融政策決定会合で議論していると理解していただけると幸いです。』

ということで、今の金融環境は緩和的という説明が最後にちょっと入るのですが、記者会見のヘッドライン見た感じでもまあ景気に関する下振れ警戒感は相当なものですので、利上げどころの騒ぎではないですな。

#だいぶ端折ったのですが、それでもテキストで13kbもあるがな・・・・

















2008/07/24

お題「小ネタ雑談で恐縮至極」

燃料高で採算合わないから減便したいという航空会社の話に地元が反対する心情はまあ一応理解できますが、何で関西空港会社が文句言うのか理解に苦しむのですが。

金融機関もよく収益上げろといわれながら公共性がどうのこうのとか言われますが、何かと大変ですなあと思うのでありました(苦笑)。

それは兎も角として、今日は(も)小ネタ雑談で恐縮なのです。


○FBは平穏な入札といえば平穏でしたが

昨日はいつのものように3か月物のFB入札が実施されまして、平均0.5816%の足きり0.5844%でございました。先週の3か月は平均0.5803%の足きり0.5828%(その前の週は0.59%台)でしたので気持ち上昇した程度で平穏平穏。

なのですけど、落札結果発表後から平均落札で出合いがあったあとに結局足きり水準も出合ってたみたいで、引けは0.5825%オファーの0.585%ビットで特に盛り上がりもなく(というかやや盛り下がり)の結果。一方でFBゾーンに関しては、期内償還物のニーズがやたら確りしているようで、9月償還物が概ね0.55%台という水準で推移。2wから3w程度の共通担保オペが足きり0.53%(なので札入れたければ0.54%)で推移して、足もとのGCが0.52−53%辺りで推移している(と思ったけど)という状況ではありますので、こんなもんちゃあこんなもんなのですが、期末越えの微妙な感じとは少々温度差がある感じ。

で、この前もお話したと思いますが、CPレートに関しては相変わらず微妙に下がりにくい状況になっていて、ほぼ最上位クラスに相当するネームの発行体さんの出す1mあたりも堂々0.6%台半ば近くでの推移と、FBとの利回り差が割と開いた状況が継続中。

などという状態をつらつら考えますと、足もとの資金には余剰感があるものの、その金というのはあくまでも待機資金みたいな性格で、短いFB(とGC)にしかニーズが来ないのねって状況は継続してるのでしょうな。FBの短い所だったら金作りに売りに行っても別に大きく食らうことも無いですし、オペに突っ込んで金を作る事もできるし、僅かとは言え一応足元からは鞘抜けてるしという所なんでしょうかね。


まー目先日本の金融政策が動くとは誰も思っていませんので、OISのカーブとか見事にフラットしていますし、足もとの需給だけでしか動かんという状況は継続しますし、その足もとの需給って正直ワケワカラン大手バンクさんの資金繰り要因とか為替市場での円転コスト要因とかで動くので、中々気合が入らない相場ですなあ。今の状況からすると足もと余剰ですが、また期末越えとかの話が出てくると盛り上がるでしょうから、そこまでは自然体自然体っと。そういえば余談ですけど、この前どっかのレポートで「年末越えを含む期間のOISレートは高くなるべきなので裁定機会がある」とかいう馬さん鹿さんな文書を読んだのですが、OISの価格は何をリファレンスにしているかを思い出し、そのリファレンスレートが年末越えの所でどういう数値になっているのかを検証してからレポート書けよこの(自粛)と思ったのはここだけの話でございます(^^)。


○ほうほう

例によって日銀レビューシリーズ。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev08j04.htm
決算からみた銀行経営の現状と課題

本文はこちら(PDFです)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev08j04.pdf

今回は文章部分がやや多めです(ってもそもそも全部で7ページしかないですけどね)ので全部紹介してると長くなるのでまあ読んで下さいませという所ですが。ほうほうと思いながらちと引用。

『2. 収益性の現状評価』って部分ですが、小見出しの名前が
(1)基礎的な収益力の伸び悩み
(2)低迷する貸出ビジネスの採算
(3)金融市況に左右される非資金利益

ということで、まあ課題てんこ盛りですねって感じになっております。また(引用すると長くなるので中身読んでね)貸出利鞘に関して大手行と地域金融機関の間に差が出てきており、その差は貸出金利の引き上げが出来ているかどうかの差で説明されるっていう部分に関しては、以前より指摘されていました地域景気の伸び悩みというか苦戦状況が反映されたものでもあるのでしょうなと思うのでありました。

それから、基礎的な収益力に関する部分では思いっきりこのように書かれておりまして、いやまあそうでしょうねとは思います。

『当期純利益の増減要因をみると、本業収益であるコア業務純益の寄与が小さいなかで、信用コストや有価証券関連損益の動きに大きく左右されてきたことがわかる』

まーこれに関しては商業銀行と投資銀行(「投資銀行宣言」とか言ってるの大手のごく一部ですけど)を一緒くたにして分析するのもアレではございますが、貸出が低迷する中で有価証券運用に突っ込まざるを得ない状況というのはこれまたありますので、分析の結果でも大手行と地域金融機関で比較的似たような傾向になっていますわな。


で、その現状分析を基にして『3. 経営基盤の安定性の現状評価』という部分がありまして、『次に、信用コスト上昇に対する耐久力、自己資本ポジションの頑健さという2 つの視点から、銀行の経営基盤の安定性に評価を加える。』というのが結論部分になるのですが、その小見出しは以下の通り。

(1)信用コスト上昇への耐久力も一部に脆弱さ
(2)自己資本の質の向上が課題

まあ中身は読んでつかーせという所ですが、その後のまとめにもあるのですが、基礎的収益力の改善と財務基盤の強化(優先出資証券や劣後債などによる調達が依然として相応にある部分を改善すべきという話)が課題ですという割と冷静っちゅうか厳しめちゅうか。例によって『ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。』とありますが、まあそんな感じで分析してますねという感じですね。




○その他日銀公表文書関連で

・ワクワクテカテカしつつ待つべし

ってのを昨日書くつもりで忘れてました(汗)。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/un0807c.htm
金融政策決定会合議事録等の公表日時について

ということで、平成10年1月から6月までの議事録が来週水曜日に絶賛大公開でございますよ。とは言いましてもあたくしこの時期まだ日銀ヲチは趣味の域ではなかったもんで(旧法時代は金融調節予想を趣味にしてましたが、笑)読むのに一苦労しそうな悪寒(^^)。

・あとで読みたいけど・・・・・

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/bis0807b.htm
バーゼル銀行監督委員会による市中協議文書「トレーディング勘定における追加的リスクにかかる自己資本の算出のためのガイドライン」及び「バーゼルIIにおけるマーケット・リスクの枠組みに対する改訂案」の公表について

あたくしの本職はリスマネではありませんので、さすがにこれまで読んでられましぇんが、この手の規制によってポジションの取り方に影響がでるような場合というのもありまして、それが妙な具合でマーケットを歪ませる事は多々ございますのでして。

リスクアセット算出における格付け至上主義がCDOやCPODのような「格付けが高いけど利回りが結構」という魔法の商品のニーズを後押しした(今は無きナントカ公社債何ちゃらという雑誌でCPOD特集みたいなのやった時には、「これを買わない奴はアホウ」と言わんばかりの論調でしたなあと記憶してますが^^)ようなもんですな。

ということで誰かがレポート出すのを待つか(何と言う手抜き)。













2008/07/23

お題「6月決定会合議事要旨より/その他いくつか」

昨日は債券先物が延々と止まって実にアレでございましたが、まずは決定会合議事要旨から。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g080613.pdf

○6月時点で下振れ意識相当高まる

まあ当然ちゃあ当然ですが、『金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の部分での検討状況を見ますと、やたらめったら下振れリスクをみております。

・輸出

『委員は、世界経済が下振れリスクを抱えている状況だけに、今後ともきめ細かく輸出動向をみていく必要があるとの見解で一致した。』

・設備投資

『多くの委員は、第1 四半期の法人季報での企業業績が前年比減収・減益となっていることにみられるように、交易条件の悪化の影響が明確になっており、先行きの設備投資のモメンタムが弱まっているとコメントした。そのうちの何人かの委員は、収益が厳しい状況にある中小企業を含め、企業の設備投資スタンスについて、来月初公表の6 月短観などで確認していきたいと付け加えた。』

で、短観の設備投資は中小企業がイマイチで大企業は思ったほど悪くなかったですねという話でしたっけ。

・個人消費

『ある委員は、最近の物価上昇が家計の実質購買力を低下させていると指摘した。また、別の委員は、それに加えて、物価上昇が消費者コンフィデンスを低下させていることや、企業収益の減少によって雇用・所得環境への影響が懸念されることも含め、先行きの消費動向については慎重にみていく必要があると述べた。』

・住宅投資

『ある委員は、不動産業者への金融機関の融資姿勢の慎重化、マンション在庫の増加などが、住宅投資の回復にどのような影響を与えるか留意が必要であるとの見方を示した。別の委員は、建設資材価格の上昇が不動産業者の採算を悪化させており、特に地方において深刻な声が聞かれている、と述べた。』

というような感じで、下振れの話はうじゃうじゃある(雇用・所得環境と生産はこの時点ではそんなに下振れの話は出てない)のですが、上振れの話はまあございませんな。


○物価上昇と金融政策

同じく『金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』部分でグローバルな物価環境に関する議論が行われています。

『ある委員は、新興国を中心に資源制約を上回る超過需要が発生していることが、エネルギー・原材料価格高の基本的な背景にあるとしたうえで、それらの国における政策対応が適切になされなければ、グローバルなインフレ圧力は高まることになるとの見方を示した。』

『複数の委員は、グローバルな物価上昇に対して、金利の上昇が追いついていない可能性を指摘した。このうちのある委員は、その背景の一つとして、米ドルに対して固定的な為替相場制を採用している国について、米国の金利引き下げが影響を及ぼしていると述べた。』

とは言えドルペッグがいきなり外れるとなると今度は基軸通貨の枠組み問題になりかねないんで、まあ米国の政策運営は大変ですなあと言ってみるテスト。

『何人かの委員は、新興国におけるエネルギーや穀物の価格に関する補助金等の措置が、市場メカニズムを歪めているとの見方を示した。』

で、以下は例によって2次的な物価上昇の話で、結論は『ユーロエリアや新興国における賃金上昇圧力の高まりを注視していきたいと述べた』となっているのでした。


その後にある『当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』部分ではじゃあ日本ではどうなのよという話を当然ながら行っておりまして・・・・

『わが国経済について、何人かの委員は、国際商品市況が高騰を続ける中で、景気については下振れ方向、物価については上振れ方向で、それぞれリスクが高まっているとの見方を示した。複数の委員は、需要が旺盛で賃金上昇圧力が強い国と異なり、わが国の現在の局面においては物価面のリスクよりも景気の下振れリスクを重視すべきであると述べた。』

実に当然の話になっておりますわな。


○しらっと利上げ話も

ということで、議論の論調は基本的に景気の下振れリスクを強く意識した内容なのですが、その下振れリスクが払拭された場合(どういうパスで払拭されるのかさっぱり見えてこないのが実にアレな環境なのですが・・・・・・)にはどうなるかという話もしらっと指摘されております。さっき引用した部分においても新興国やらユーロエリアのように物価上昇と賃金上昇のスパイラル傾向が見られる場合に利上げがどうのこうのという話がありましたが、『当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』部分でもこんな話が。

『ある委員は、世界的なインフレ傾向が強まる中で、わが国もそれと無縁であることはなく、インフレ予想が高まることを未然に防ぐ観点から、物価安定のもとでの持続的な成長パスを辿っていることにある程度の確信を得られれば、漸進的かつ早めに政策対応する必要があると述べた。』

この「ある委員」って誰でしょ。須田さんですかねえ。

ということで決定会合議事要旨関連はこんな感じです。



○またシステム障害か

昨日は東証がシステム障害。呼び値の変更をした株式が無事で先物オプション関連がシステム障害ってのも訳ワカメでしたが、何でも聞いた話ではそもそも板情報の配信が一部で障害が起きてるのに前場の取引を始めてしまい、その後結局板情報の配信障害を理由に取引止めたらしいですな。

・・・・・何っつーかね、債券先物のシステム変更もそうなんですけれども、最近の東証って勝手な「ユーザーニーズ」を脳内で作っているのか、それとも一部の人の話をホイホイ聞いてるのか知りませんけど、ちょっとやってることどうなのよという感じです。まさか上場企業になるから公共性より収益ですよって意識改革が(ry


○これは見事な火消しですね(棒読み)

15日の渡辺大臣様の会見
http://www.fsa.go.jp/common/conference/minister/2008b/20080715.html

『日本の金融機関もGSE(政府支援機関)債を大量に持っております。また、GSE債はアジア勢、なかんずく日中の官民で持っている部分がかなりあるわけです。したがって、この問題は対岸の火事というわけにはまいりません。我々としても、警戒水準を高くしてこの問題は注視をしてまいりたいと考えております。』(赤字強調は引用者による^^)

『ディスクロージャー(開示)が非常に求められることであろうかと思います。我々もきちんと警戒水準を高くしてウォッチをしてまいります。』(赤字強調は引用者による^^)

『私のところの(金融市場)戦略チームで調べましたところ、これはアメリカの財務省の方の資料でしょうか、GSE債といっても別にファニーメイ、ジニーメイ(連邦政府抵当金庫)だけではありませんが、GSE債のアジアの保有額が大体8,000億ドル位でしょうか、(具体的数値部分引用割愛)したがって、日中で非常に多くのGSE債を抱えているという現実があるわけでありますから、これはもう他人事ではないということであります。』(赤字強調は引用者による^^)

とまあそんな質疑応答(の答え部分の一部を引用してますが)があったのですが、昨日の会見では(まだ金融庁のサイトにはアップされていないのでロイターのニュースから)・・・・・・

昨日の記者会見記事(ロイター)
http://jp.reuters.com/article/foreignExchNews/idJPnTK013799520080722

『渡辺喜美金融担当相は22日、閣議後の会見で、米国の連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)(FNM.N: 株価, 企業情報, レポート)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)(FRE.N: 株価, 企業情報, レポート)など政府系住宅金融機関(GSE)の発行する債券を日本の金融機関が大量に保有していることに関連し、「GSE債を売るのはある意味で、自分で自分の首を絞める行動になる」との見方を示した。』

いやあこれは随分と迅速な火消しですなあ(棒読み)。

『GSE債は米国当局が支援策を打ち出したことから「債券そのものはきちんと保護されるというのが、この(市場の)世界の一般的な評価なので、その点は安心をしていいだろう」とした。ただ「金融当局として、民間金融機関に(GSE債を)売れとか売るなというつもりはない」と語った。』

15日は「対岸の火事」などとまるで対岸である所の米国様が火事であるかの様なコメントをしていた人がいたようですが(−−)。

『金融庁は、日本の金融機関のGSE債の保有状況を調査しているが、渡辺金融担当相は「エージェンシー債とモーゲージ債の保有の全体像がより明確になることが必要だ」との観点で調査していると強調し「こうした債券を保有することがまずいということではない」と指摘した。』

保有の全体像が明確になることが必要でも、売却するなとはこれまた蒟蒻問答もビックリの禅問答でございますな。

ちなみに、全然違いますが、債券先物が止まってるのおおごとなのに大臣様『デリバティブの売買システムに障害が発生したと聞いている。現物取引、立会外取引は可能なので、一番大きなところの障害は生じていない』ってどう見ても東証の舌先三寸釈明に担がれてますよ〜っと。


○このあたりの理屈が良く判らないのですが(超雑談ネタ)

http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/080722/wlf0807222349004-n1.htm
年金機構、処分者は不採用 厚労省、自民案丸のみ

年金問題に関しては社会保険庁ナンジャソリャという話も多いのですが、この部分に関しては何か釈然としない感がするんですが。

『機構に移行できず、再就職先も見つからない職員は、民間企業の解雇にあたる「分限免職」となる。』

この再就職先っていうのは無関係の民間企業という意味じゃなくて厚生労働省の関連部門での再就職という事のようですので、一種の配置転換にあたると思われるのですがまあそれは兎も角。

えーっとですね、処分は処分で一回行っている訳でして、その時点で片をつけているという理屈になると思うんですよね。で、まあその後の昇進やら配置やらに差が付くのはある程度仕方ないのと思うのですけれども、過去に処分があったことを理由に解雇処分をするのって2重の処分というか後からまた処分みたいな感じがするんですよね。昇進が遅れるとか配転を食らうとかいうのと解雇では中身が全然違う話だと思うんですけど、こういうのってアリなんですか(民間企業じゃないからそもそも微妙ですよね)、教えてエロイ人。(7月27日追記:過去の処分が妥当かという話はあるにせよ、これを民間企業がやったら普通に不当労働行為ですよねということで、分限免職は避けられるみたいですね、まあ当たり前か)














2008/07/22

お題「白川総裁講演」

決定会合議事要旨とかネタはいくつかあるのですが、この講演も量が多いので・・・・・

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0807a.pdf

最初に例によって経済状況の説明とか先行きのメインシナリオとリスクシナリオなどの話がありますがその辺はいつもどおりなのでスルーしまして。

○世界的インフレ圧力に関して

4ページ目から。

『国際商品市況の高騰の原因としては、新興国や資源国の高成長により需要が大幅に増加していること、供給能力が需要の増加に見合って増加していないことの影響が大きいと思います。これに加えて、投機的ないし金融的な要因も指摘されています。現実の国際商品市況の上昇には様々な要因が影響していると考えられますが、2002 年以降の趨勢的な上昇の基本的な原因は、需給バランスというファンダメンタルな要因であると考えています。』

で、90年代から最近までの状況として、

『振り返ってみますと、1990 年代以降2000 年代前半にかけての先進国経済は、計画経済諸国や新興国が市場経済に参入した結果、インフレ率が徐々に低下し、国により時期により違いはあるものの、「高成長、低インフレ、低金利」という良好な経済環境を享受してきました。』

となっていたものの、最近になってインフレが世界的に高進しているという説明をしています。で、その続き。

『このように、世界的にインフレが高進していることを踏まえますと、これまで数年間の世界経済の高い成長率は持続可能なものではなかったのではないか、マクロ経済政策面での対応が十分ではなかったのではないか、という問題に突き当たります。』

ほほう。

『実際、これまで、世界全体として金融環境がきわめて緩和的であったことは、しばしば、世界的な金余りとか、貯蓄過剰といった言葉で形容されてきました。しかし、本年入り後、特に数ヶ月前から、金融政策の運営を従来に比べより引き締め方向に移す国が増えています。今後、世界の国々がマクロ経済政策の面で適切なコントロールを行い、物価の安定のもとで持続可能な成長を達成できるかどうかということは、さきほど述べたような日本経済の見通しが実現する上でも、重要な前提となりますが、どの国も難しい課題に直面しています。』

ということで、これはタカ登場かと思わせますが、現状認識および見通しの中では延々と例によって「でも日本ではインフレ高進コースじゃないですよね」という話になるので、当面の金融政策に関するインプリケーションはございませんなという話でして。


○先行き物価のポイント

3点ですな。毎回のお話に出てますが、今回は箇条書き状態でまとまっている感じがします。

『第1の国内の需給バランスは、現在、ほぼバランスした状態にあります。先ほど述べた経済の見通しを前提としますと、先行きも概ね同様の状態が続くと考えられます。したがって、この面からは、物価上昇率を大きく押し上げたり、押し下げる力が働く可能性は高くないと考えられます。』

『第2の輸入物価については、これまでも、エネルギー・原材料価格高と、それに伴う価格転嫁の動きが、国内企業物価、消費者物価に大きな影響を及ぼしてきており、先行きも、引き続き、影響を与えると考えられます。』

『第3のインフレ予想は、インフレ率を左右する重要な要素ですが、特に、エネルギー・原材料価格の高騰が、企業や家計のインフレ予想を押し上げることによって賃金・物価が一層上昇する二次的効果( second-round effect)が発生するかどうかが大きな鍵を握ります。(途中割愛)この点については、現在までのところ、わが国の賃金の伸び率は前年比1%前後と落ち着いており、他のデータと併せて考えると、二次的効果が発生している訳ではないと思います。』

ということで、従来どおりの話ですけれども、日本の物価上昇はそんなに心配ないぜというのが結論になる訳ですわな。


○当面の金融政策

当面は現状を維持しつつ様子見なのですが、それは兎も角として、

『その際、特に重要となるのは、エネルギー・原材料価格の上昇という、いわゆる供給ショックに対して、金融政策運営面でどう対応すべきか、という問題についての考え方です。この点については、かつての石油ショックの経験なども踏まえ、先進国中央銀行間で共有されているオーソドックスな考え方があります。』

ということで、

『この考え方は、第1に、供給要因に基づく輸入コストの一時的な上昇に対しては、金利引き上げで抑え込むことは適切ではない、第2に、インフレ予想の上昇などを通じて二次的効果が発生する惧れがある場合には、金利引き上げで対応すべきである、というものです。』

では現状はどうかと言いますと・・・・

『しかし、これまでの商品市況の上昇は、長期にわたって続いてきているだけに、これを「一時的」と考えるわけにはいきません。また、これが、供給要因だけでもたらされているわけではなく、世界的な需要の増加という要因が強く働いていることも、さきほど詳しく述べたとおりです。』

国際的にはそういう事なので引き締めを行う国も出ているという話になるのでしょう。では現状の国内に関してどうかと言いますと。

『このようにみてくると、結局、輸入コスト上昇の下での金融政策運営という点では、判断のポイントは3つに集約されます。第1に、原材料価格の高騰に伴う所得流出による内需の減少と、新興国・資源国を中心とする世界経済の強さを背景とした輸出の増加という2つの異なる方向の力が、日本の景気に及ぼす影響をどうみるか、第2に、そうした景気情勢が物価に与える影響をどう評価するか、第3に、国際商品市況の上昇やその下での現実の物価上昇が、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動をどう変化させるか、ということです。』

で、交易条件の悪化による景気への悪影響によってどう見ても物価上昇の二次的効果が発生するとは思えないという展開でありますので、現状は今の政策を維持しておくという結論になるようですね。


○情報発信に関していくつか

今回の講演なのですが、後半部分が情報発信に関する話になっておりまして、こちらでも「ほほー」という部分がいくつかございまして、まずは金融政策決めうち攻撃の効果に関して。

『第3は、中央銀行の行動原理、金融政策運営の考え方をどのように説明するかという課題です。この点では、次回の金融政策決定会合での政策金利の変更を予め市場に織り込ませることが透明性の高い金融政策であるという議論がなされることがありますが、決してそうではありません。』

ECBの決め打ちアナウンスは透明性が高くないですかそうですか。

『予め先行きの政策金利の水準を事実上公表することは、公表後の経済情勢の変化を無視することを意味します。重要なことは、中央銀行の基本的な行動原理をその時々の経済情勢に即して説明することであると思います。』

で、この話がインフレ目標値に関するお話に繋がるのでありまして・・・

『このことは、いわゆる目標インフレ率についての議論にも当てはまります。日本は近年、緩やかながら消費者物価の下落を経験しました。当時、物価下落の原因は何であれ、望ましいと考える目標インフレ率の達成に向けて、あらゆる金融政策手段を動員すべきという議論が行われました。一方、現在は物価上昇に対し、金融政策運営上は、エネルギー・原材料価格上昇の影響を除去して考えるべきという議論が行われています。』

『物価の下落にしても上昇にしてもメカニズムは複雑ですが、中央銀行にとっては、基調的な物価動向を判断し、その上で、長い目でみた物価の安定を通じて持続的な経済成長を実現することが変わらぬ目的です。このことが十分に理解されない場合には、目標インフレ率という数字だけが一人歩きし、物価安定の下での持続的成長の達成という所期の目的達成は難しくなります。』

インフレ目標値に関しては数字の一人歩きが起きるとよろしくないので、それに変わって物価安定の理解とかリスクバランスチャートとかで説明してますというお話ですな。先のほうになるのですが、今回変更した公表方式の中での見通し計数とリスクバランスチャートの4半期公表の話をした後で改めて説明してます。

『なお、ここで申し上げなければならないことは、計数やチャートは、あくまで展望レポートや毎回の公表文の記述を補完する参考としての位置づけであるということです。金融政策判断の根拠となる経済予測がひとつかふたつの数字に集約できるのであれば楽ですが、勿論、どの中央銀行をみても、そのようなことはありません。』

ということで、経済物価情勢に関する定量的な評価よりも定性的な評価をよく見てくださいという結論になるのでありました。従ってインフレ目標値の導入に関しては消極的ですなという事でしょう。













2008/07/18

お題「先行き見通しにヘッジクローズてんこ盛り」

野茂投手現役引退ですか。お疲れ様でした。

まずは金融経済月報から。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0807.pdf

基本的見解部分にあたる所をもうちょっと見ておきましょう。最初の【基本的見解】が【概要】に代わっておりますが、書きっぷりは従来の基本的見解と同様です。

○現状判断で下げたのは個人消費、住宅投資、生産

他の部分も含めて比較します。

・輸出、企業収益、設備投資

『輸出は、足もと鈍化しつつも増加基調を続けている。企業収益は、交易条件の悪化等を背景に減少しており、企業の業況感も引き続き慎重化している。そうしたもとで、設備投資は増勢が鈍化している。』(7月)

『輸出は、足もと幾分鈍化しつつも増加を続けている。企業収益は、交易条件の悪化等を背景にこのところ減少している。そうしたもとで、設備投資は増勢が鈍化している。』(6月)

業況感は短観を受けて加えられたものですね。で、強いて言えば企業収益の所の説明も下がっているのでして、企業収益が「ここのところ減少」が「減少」と「ここのところ」が外れているのは、企業収益の減少というか交易条件の悪化による影響が「ここのところ」状態ではなくなったって事なので、まあこれも下げたと言えば下げた格好かと。


・雇用者所得、個人消費

『雇用者所得は緩やかに増加しているが、石油製品や食料品などの価格上昇が続く中で、個人消費はこのところやや伸び悩んでいる。』(7月)

『個人消費は、雇用者所得の緩やかな増加を背景に、底堅く推移している。』(6月)

個人ベースの実質購買力の低下によって個人消費の判断を引き下げております。ということで足もとの物価上昇が即座に利上げ判断に繋がるわけではないと。


・住宅投資

『また、住宅投資は回復の動きが一巡している。』(7月)
『この間、住宅投資は緩やかに回復している。』(6月)

住宅投資の予想自体は6月の段階で「回復の動きが一巡」という風になっていた(後でご紹介します)ので、まあ見通しどおりは見通しどおりですけど、改正建築基準法に関連して落ち込んだ分がV字回復という素敵なシナリオも以前はありましたが、まあそこまで行かずに残念無念。


・生産

『以上のような内外需要のもと、生産はこのところやや弱めの動きとなっている。』(7月)
『以上のような内外需要のもと、生産は横ばい圏内の動きとなっている。』(6月)

ちーん。ナムナム。


○先行き見通しには「傾向」だの「基調」だのが入り・・・・

・輸出

『輸出は、海外経済が減速しつつも拡大するもとで、増加基調を続けていくとみられる。』(7月)
『輸出は、海外経済が減速しつつも拡大するもとで、増加を続けていくとみられる。』(6月)

「基調」というお馴染みの文言(ヘッジクローズとも言う)が入りました!


・企業収益と雇用者所得

『企業収益は、当面減少を続けるが、エネルギー・原材料価格の上昇が緩やかになるにつれて、増益基調に復すると予想される。また、雇用者所得は緩やかな増加傾向をたどるとみられる。』(7月)

『企業収益は、当面減少を続けるが、エネルギー・原材料価格の上昇が緩やかになるにつれて、増益基調に復すると予想される。また、雇用者所得は緩やかな増加を続けるとみられる。』(6月)

企業収益は変わりませんが、雇用者所得にも「傾向」というヘッジクローズが(-_-メ)。

・設備投資、個人消費、住宅投資など

『そうしたもとで、国内民間需要は、当面やや伸び悩みつつも、その後は次第に底堅さを増していく可能性が高い。この間、公共投資は減少傾向で推移すると考えられる。』(7月)

『そうしたもとで、設備投資や個人消費は底堅く推移する可能性が高い。一方一方、住宅投資は、回復の動きが徐々に一巡していくと予想される。また、公共投資は、減少傾向で推移すると考えられる。』(6月)

国内民間需要の見通しもちょっとヘッジクローズ入りになっていますわな。

・生産

『以上の需要動向全体を踏まえると、生産は、当面横ばい圏内で推移するが、その後増加基調に復していくとみられる。』(7月)

『以上の需要動向全体を踏まえると、生産は、当面横ばい圏内で推移するが、その後増加していくとみられる。』(6月)

ここも「増加していく」が「増加「基調」に「復していく」」とヘッジクローズ入ってますわな。


・・・・という訳で、ヘッジクローズてんこ盛りの先行き見通しなのでありました。物価関連部分は割愛しますが、先行き見通しの中で『消費者物価の前年比は、経済全体の需給が概ねバランスした状態で推移するもとで』ってなってるんですけど、成長率見通しを下げてそこの部分変わってないのってそれで良いのですかという気もせんでもない。


○その他余談

・CPレート上昇一服

ここの所CPの発行が償還よりも多い日々が続いておりまして、需給がやや緩和気味に推移しているCPでございますが、今週は日々徐々に発行レートが需給動向を受けて上昇してたんですよね。

いつもですとこの時期は6月の資金需要期(納税と賞与という決算資金需要)を抜けてCPがめでたく償還されて需給がタイト気味に推移するというイメージがあったのですが、ここもとのCP発行が減らないどころかちょっと増えているのは、やはり原材料価格上昇などに伴う所要運転資金の増加に起因するんじゃないのかなとか思ったりもするのでありますが。

ただまあ今週の為替動向によって円転が効いておりまして、そのお金はGCやらFBなどの国債方面には向かっておりまして、GCレートなどは絶賛低下しておりましたので、GCやFBとCPの動きが逆になっているのが一部方面では微妙に話題になってました。

ただまあさすがに連日ジャンジャン上昇するというのもアレでしたということで、昨日に関しては上昇一服の香りが致しますが、さてどうなることやら。CPの発行推移に関しては暫く注目かもしれませんです。


・エージェンシー債って普通持ってるだろうよ

今朝のニュースでも話題になってますが、もう外貨関係の部門ではヒアリングだの取材だのがうるせえの何のという状態のようで、関係部門の方々には深くご同情申し上げます。同じ話を何であちら様やそちら様やこちら様にしなきゃいかんのよと。

実態問題としてどうなのかという話は例によって厭債害債さんのエントリーとか、本石町日記さんのエントリーを参照されたいのでありますが。

http://ensaigaisai.at.webry.info/200807/article_9.html(害債さんところ)
http://hongokucho.exblog.jp/9081324/(本石町日記さんところ)

で、保身的ヒアリング(本石町日記さんの用語を借りますね^^)がうるさくなると「じゃあもう持たねえよ」とかいうインセンティブが働きかねませんので(インデックス運用ならそんなことはないですけど)それこそ笑い話的展開を読みながら笑いが微妙に引きつるあたくしがいるのでありました(-_-メ)。

でもまあ報道的には絶好の燃料投下ネタみたいなので、誰とは言わないけど「エージェンシー債を持っている状況が怖い話だ」みたいな煽りをかます外野さんが出てくるのよね。FED適格担保なんですけどねえ・・・・どこぞの野球監督さんのコメント(?)じゃないけど、(自粛)じゃなかろかルンバ♪とか歌いたい気分ですな。












2008/07/17

お題「総裁会見とか」

空売り規制に為替介入発言と良い感じでヤケクソになって参りましたな。日本の時にはあんなに文句垂れてたのにね、ゲラゲラゲラ。

さて、日銀から出ているものが3つあって、もう内容盛りだくさんという感じなのですよ。

総裁記者会見
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0807a.pdf

金融経済月報
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0807.pdf

日銀レビュー・シリーズ(主要通貨市場における資金需給逼迫の波及メカニズム)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev08j05.htm

全部をじっくり読みきれなかったのでとりあえずは総裁記者会見なのですが、これがまた18ページもあるのよね。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0807a.pdf

○スタグフレーション入りはしてません

スタグフレーション入りしてるのではないかという質問に対して。

『結論を先取りして言いますと、スタグフレーションの局面に入ったとは判断していません。繰り返しになりますが、わが国の景気はさらに減速していますが、先行きについては当面減速が続くものの、その後次第に緩やかな成長経路に復していくとみています。物価面では、消費者物価は当面上昇率がやや高まるとみられますが、その後は、原材料価格高の押し上げ効果が縮小することから、徐々に低下していくと予想されます。』

『このように、わが国経済は、引き続き、物価安定の下で持続的な成長を続ける可能性が相対的に高いと考えており、スタグフレーションの局面に入ったとは判断していません。ただ、こうした見通しには不確実性が大きいということは、先程申し上げた通りであり、従って景気の下振れリスクと物価の上振れリスクの双方に注意が必要な局面になっていると考えています。』

ということで、決定会合後に出た文書の焼き直し説明になりますけれども、目先の減速はあくまでも目先という事になっています。


○今度は利下げ質問ですか

ついこの前までは会見で「物価上昇だが利上げを何故しないのか」という質問が飛んでたのに今度は利下げ質問。まあ質問する人は沢山いるので別に同じ人が質問してる訳ではないと思いますが(^^)。

『(問) 今回は政策金利据置きという判断でしたが、展望レポートの中間評価あるいはその論理をみると、今回利下げをしなかった判断を読み取れませんでした。今回利下げをしないという判断、あるいはそうした提案がなかったのは、日銀としてあるいは政策委員会の議論の中ではインフレを警戒しているためということでしょうか。それとも、現在の誘導レートが十分刺激的だから利下げをするには及ばないということなのでしょうか。(以下割愛)』

でその答えだが長いので段落分けするだよ。

『(答) まず金融政策の判断ですが、各国は自らの置かれた経済・物価情勢に即して判断を行っています。日本銀行の判断は先ほど申し上げたとおりですが、もう一度申し上げますと、金融政策の判断は、金融政策の効果の波及にはかなり長いタイムラグあるということを十分踏まえる必要があります。ラグの長さについては色々な考え方がありますが、一般的には大体1年半から2年程度ということになります。』

と、まあここまで来た所で次の流れが想像できると思いますが。

『従って、先行き1年半から2年程度の経済の姿、物価の姿を展望しながら今の政策金利の水準を考えていくということになります。そういう観点で景気の姿をみてみますと、足許はさらに減速をしており、暫くこの局面が続きますが、その後は徐々に緩やかな成長経路に復していくという判断です。一方、物価については、先行き上がっていきますが、その後はまた低下していくということです。』

ということでフォワードルッキングになるのですな。でも質問者(割愛した部分ですが)も指摘してたんですが、今年度1%台前半の成長だと目先駄目なのに利下げしないのは何故という話にもなるわけですし、そもそもそも目先を下げた結果として今があるのですから、先行きの話を元に政策判断変わらずというのも何かどうなのよという気がするのでありますが。

『この景気の姿、および物価の姿を想定すると、現在ここで金利水準を調整する必要はないということであります。ただ、繰り返しになりますが、景気についても物価についても、それぞれ方向の異なるリスクがありますので、そのことは十分に認識したうえで、毎回私どもが想定した経済・物価の経路に変化がないかどうか、これを点検しながら金融政策を運営していきたいというのが本日の決定であります。』

毎回見通しが下がってますが政策は変わってませんな。いやはや。


○交易条件の悪化具合と雇用者所得の伸び具合がポイントですね

景気判断において、設備投資と個人消費を鈍化傾向ということで下方修正した背景についての質問に対して。

『今回から金融政策決定会合後の文章の公表方法が変わり、明日金融経済月報の全文を公表します。こちらのほうにはご質問の需要項目も含めてもう少し丁寧に書いてありますが、とりあえず本日の時点でお答えしますと、足許景気がさらに減速していることの一番大きな原因は、交易条件の更なる悪化です。』

ということで月報ちゃんと読まないといけないのですが(^^)。

『交易条件が悪化しますと、企業収益は圧迫されるということになります。今回の短観でもそうした姿が出ていました。その結果、設備投資にも影響が出てくるということであり、特に大企業製造業は比較的堅調ですが中小企業あるいは非製造業には設備投資の増勢鈍化の傾向がより明確に出てきているという感じがします。』

『個人消費のほうは、雇用者所得の伸びと交易条件の悪化による購買力の低下という2つの要因があると思いますが、この両方の要因から個人消費の伸びは増勢が鈍化と言いますか、伸び悩んでいるという感じがします。それらについては明日の月報で詳しく説明します。』


また、別の質問で物価の上振れリスクに関して質問があったのですが。

『仮に現在の物価上昇を考えてみますと、明確に要因分解できるわけではありませんが、こうした国際商品市況の高騰による直接的な上昇の部分というのがかなり大きいと判断しています。逆に言いますと、セカンド・ラウンド・エフェクト(二次的効果)──つまり輸入コストの上昇により物価が上がった結果、先々の予想インフレ率も上がり、それが賃金の設定を始めとした色々な賃金・物価形成に組み込まれていき、さらに物価が上がっていくという効果──が起きているかというと、現在のところそうしたものは起きていないように見えます。』

ということで、物価上昇に関して現状はあくまでも国際商品市況の影響による直接的な影響が大きく、2次的な物価上昇傾向には至らないという判断になっています。

別の質問でインフレ予想あるいは期待インフレ率をどう測っていくのかというものがありまして、これに対して、日銀が実施するアンケート調査のようなもの、エコノミストの予想、物価連動債(BEI)などの例を並べたあとで、賃金動向を相対的に(今回の会見の質問にもありましたが、この「相対的」って言葉白川さん好きみたいですね)信頼できる指標として挙げています。

『また、相対的に信頼できる指標として、賃金の動き、あるいは賃金の設定態度というものが挙げられます。これは、企業と労働者双方が先行きの物価を想定しながら交渉していくわけですから、インフレ予想というものが間接的に反映されている可能性はもちろんあるわけです。ただ、この指標にも色々な限界がありますから、賃金の動きをみていれば必ずわかるというものではありません。』

2次的な物価上昇にも結びつくものですので、賃金動向を注視ということになるのでしょうか。


○やっぱりこの質問でたか・・・・

GSEの株式なら兎も角、債券に関してそんなに大騒ぎする必要があるとは全く思えないんですけどね。

『(問) 先ほど話題に出た米国政府系住宅金融機関(GSE)についてですが、この政府系住宅金融機関の発行する債券を各国中央銀行が外貨準備等のために相当程度保有しているという指摘があります。日本銀行の現状はどうでしょうか。また、その影響は何か考えられるのでしょうか。』

『(答) 日本銀行は、外貨資産の運用に当たりましては、中央銀行資産としての性格に鑑みまして、高度な安全性と流動性を確保することを目的としています。(途中割愛)米国政府系住宅金融機関債一般についてですが、今回米国当局は、非常に重要な機関であるとしてはっきりと支援の姿勢を示したと思います。市況は日々変動するものですが、昨日のニューヨークの市場をみると、政府系住宅金融機関債の信用スプレッドは若干縮小したと理解しています。』

そうなんですよね。そりゃまあ瞬間的に時価評価で食らう部分があるかもしれませんし、遠い先のことまで大丈夫かって言われたら何とも言えませんけれども、とりあえず現状でGSEの債券をコカすという選択肢は米国にはない(株は別ですよ)と考える方が順当で、鉦や太鼓を打ち鳴らして大騒ぎするほうがよっぽど騒動の自己実現になる惧れがあるんじゃねえのという感じでございまして、騒いでる人におかれましては何だかなあって感じなのですけどね。


#ということで時間と量の関係上本日はこの辺で勘弁。









2008/07/16

お題「決定会合あれこれ」

結果自体はまあ予想通りでございまして、相場的には米国様次第なんですけどね。しかし地方の銀行コカして中小金融機関の取り付け騒ぎに破綻懸念絶賛大拡大ってのはこれまた既視感が。

○公表方法が色々変更に

決定会合の結果
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k080715.pdf

公表方法の変更に関して
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k080715b.pdf

ということで、まあ要するに四半期ごとに公表してた展望レポートのレビューを毎回公表しますので、金融経済月報の基本的見解ってのは公表が無くなり(そりゃまあそうなるでしょう)本文公表のみになるので月報は実質的に1日遅れになりますって話が市場でポジション張る人的には一番大きなところですが、まあ分析する人的には展望レポートの見通し期間延長と、見通し数値とリスクバランスチャートの四半期ごとリバイス(従来は半年毎)も面白いところであります。

で、初回だから仕方ない部分もありますが少々苦言なんですけど、今回は決定会合の結果公表時刻から日銀のサイトでのアップ時刻まで10分近くラグがあったんですよね。まあ今回に限らずここの所決定会合の結果公表時刻からサイトにアップされる時間のラグが少々長いのは気にしてたんですけれども、結果自体がまあどうでも良かったのでスルーしておったんですが・・・・・

今回以降は決定会合の公表文書に実質的には従来の金融経済月報基本的見解と同じ位置づけになるものが入る訳でありまして、場中に公表されることでもありますので正確な公表文書を読みたいのですな。然るに公表文書がサイトにアップされるのに10分とか掛かっちゃいますと、それこそどこかの情報ベンダーがフカシヘッドラインを打ち込んだ時にそれが飛ばしヘッドラインなのかちゃんとしたヘッドラインなのか確認できませんので困るんですよね。

いやまあ最終的には文書出すからちゃんと理解されるだろうとかいう理屈も判らんのではないのですが、最近で言えば(暫く前ですが)西村審議委員(当時)の会見だかなんだかの発言が思いっきり誤解されて市場が大動きとか、時と場合によってはトンデモないことになりますのでして、場中に公表される文書であることも鑑みまして、公表文書は極力早く(同時が理想ですが1、2分程度のラグが希望)日銀ホームページへのアップをお願いします。いやマジで。


○大勢見通しが潜在成長率を下回ると

で、こちら。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k080715.pdf

今年度実質GDP見通しが+1.5%から+1.2%に下がっていますが、日銀が従来言ってたのは潜在成長率が概ね1%台半ば辺りとかいう話だった筈ですので、今年度は「潜在成長率を下回る成長」になるというお話。09年度が+1.7%から+1.5%に下がっていまして、来年度になってようやく潜在成長率並みの成長に復帰しますよという見通しになっているのですな。こりゃまあ利上げどころの騒ぎ(をしている人はいませんが)じゃ有りませんね。

で、金融経済月報基本的見解に代わる部分ではこうなってますと。

・景気の先行き判断

『先行きは、当面減速が続くものの、その後次第に緩やかな成長経路に復していくと予想される。』

でも来年度でやっと潜在成長率並みということは、「緩やかな成長経路」というよりは「景気の腰折れや悪化までの見通しには至らない」程度のお話じゃないですかという気が致しますがどうなんすかね。


○月報に相当する部分を拝読

比較するのは前月の金融経済月報基本的見解。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0806.htm

・現状判断

『わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高を背景に、設備投資や個人消費の伸びが鈍化するなど、さらに減速している。』(7月)
『わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高の影響などから、減速している。』(6月)

個別展開部分がなくなっていますので、今回は個別展開の中で判断を下げた部分が逆に判りやすくなってるという解釈で良いのでしょうか。まあ結局月報全文を読まないといかん気がしますが、ここを見ますと判断を下げたのは設備投資を個人消費ですね。


・先行き判断

『先行きは、当面減速が続くものの、その後次第に緩やかな成長経路に復していくと予想される。』(7月)
『景気の先行きについては、当面減速が続くものの、その後緩やかな成長経路をたどると予想される。』(6月)

目先が潜在成長率以下で来年度にようやく潜在成長率に届く位という見通しなので先行き判断も下がっていますわなという所です。「次第に」ってのが入ってるのと、「緩やかな成長経路をたどる」から「緩やかな成長経路に復していく」というのはどっちも判断下げておりますわなという所です。「この先で復す」ということは今は成長経路にはありませんというのを(1.2%見通しなんだから当然ですけれども)認めてるんでしょ。


・物価に関して

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品や食料品の価格上昇などから、足許+1%台半ばとなっている。先行きは、当面上昇率がやや高まった後、徐々に低下していくと予想される。』(7月)

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品や食料品の価格上昇などを背景に、+1%程度となっている。(途中割愛)消費者物価の前年比は、経済全体の需給が概ねバランスした状態で推移するもとで、石油製品や食料品の価格上昇などから、プラスを続けていくと予想される。』(6月)

要するに見通しは上げたんでしょうが、経済が成長経路をたどらない中での物価上昇なので先行きに関しては需要の減退によって物価上昇は収まるでしょうという見通しになっているようです、と理解して良いんですよね。


・この文章は何?

で、この部分の最後にはこんな一文が。

『このように、わが国経済は、物価安定の下で持続的な成長を続ける可能性が相対的に高い。』(7月)

相対的ってなんじゃらほいと思うのですが、(欧米と比較した相対感だと思いますが)これは4月の展望レポートの基本的見解と比較するのでしょうかねえ。よーわからん。

『先行き2007年度から2008年度を展望すると、生産・所得・支出の好循環メカニズムが維持されるもとで、息の長い拡大を続けると予想される。成長率の水準は、2007年度、2008年度とも、潜在成長率を幾分上回る2%程度で推移する可能性が高い。』(4月展望レポート)

ちなみに、

『4月の「展望レポート」で示した見通しに比べると、2008 年度を中心に、成長率は幾分下振れる一方、物価は、国内企業物価・消費者物価(除く生鮮食品)とも上振れると予想される。』(7月)

というのは次のパラグラフに入ってましたんで・・・・


○リスク要因の点検

これはまあ予想通りですね。

『リスク要因をみると、国際金融資本市場は不安定な状態が続いている。また、米国経済など世界経済には下振れリスクがある。国内民間需要については、国際商品市況の高騰に伴う所得形成の弱まりから下振れるリスクがある。このように、景気の面では下振れリスクに注意する必要がある。』

海外、国内とも下ぶれリスク。交易条件の悪化と金融市場の混乱があいかわらず続いていることが要因と。

『物価面では、世界的にインフレ圧力が一段と高まっている。わが国の物価については、エネルギー・原材料価格の動向に加え、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動の変化など、上振れリスクに注意が必要である。』

総裁会見のヘッドラインを見ますと、国内におけるインフレ期待(懸念)の拡大を見るのは個人所得というか賃金動向の推移に注意する必要があるというような話になってました(ような気がする)のですが、そうなりますと交易条件の悪化やら企業収益の悪化やらという要因の有る中で賃金がどうにも上がりにくいという話が根底にあるので、さっきの物価見通しのように今の上昇は持続的な上昇に繋がるのはちょっとねえって話になるんでしょうね。

『この間、景気の下振れリスクが薄れる場合には、緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクが高まると考えられる。』

・・・・・いやまあそれは目先厳しいでしょ。


とまあそんな感じでございます。ところで本石町日記さんの最新エントリーに巨大な釣り針がある(『手がけた金融政策を勝ち負け論(引き締めが勝ち、緩和が負け)で見ると』って所)のですが・・・・釣られないようにしよ。














2008/07/15

お題「柄にも無く米国ネタで」

モーサテでコメントしてるどこぞの禿が世の中の終わりみたいな話を延々としてたのですが、今日のポイントが「大陰線」で「パニック的下げがないと底打ちしない」みたいな話をしてるのには思わず「オマエガナー」と突っ込んでしまいました(^^)。

まあ米国ネタで動くもんで柄にも無く米国ネタを。

○日曜の夕方攻撃リターンズ

昨日の朝方に財務長官声明とFRBの声明が出やがったのですが、日曜の夕方攻撃と言えばベアスターンズ救済の時状態ですかそうですかという事で。月曜にFNMAのFHLMCの短期債入札があったのですから、まあその前に強力火消しをしないといけませんなあという所だった訳ですが。

財務省のページ
http://www.ustreas.gov/
財務長官の声明
http://www.ustreas.gov/press/releases/hp1079.htm


FEDの声明
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/other/20080713a.htm

んでまあ財務長官声明なんですけどね、

『First, as a liquidity backstop, the plan includes a temporary increase in the line of credit the GSEs have with Treasury. Treasury would determine the terms and conditions for accessing the line of credit and the amount to be drawn.』

『Second, to ensure the GSEs have access to sufficient capital to continue to serve their mission, the plan includes temporary authority for Treasury to purchase equity in either of the two GSEs if needed.』

ということで2番目で財務省がFNMAとかFHLMCの株式を購入して資本不足を解消させるという可能性について言及しているのは、まあ国有化へのステップというか何と言うか。まあここの部分を字面どおりに読みますと、たぶん日本で言えば「特別公的管理」スキームじゃなくて資本ドカドカ注入スキーム(なので破たん扱いではない)って感じがイメージされる話ですが、資本不足の度合いにもよっては既存株式大希薄化して実質国有化みたいなスキームになる可能性もあるんでしょうか。債券投資的にはそのへん正直どうでも良くてちゃんと元利金帰ってくれば良いのですけれども、株式投資的にはどの位の資本不足かという読み筋が重要になりますな。

『Use of either the line of credit or the equity investment would carry terms and conditions necessary to protect the taxpayer.』

政治的にこう言わざるを得ないのは判りますが、最後の所で納税者保護とか言ってるところが腰がいい感じで引けてやがるなあという気がしたのですが、実際問題としては公的管理も辞さずまで腹が据わっているのかどうかですよね。逐一この流れみてるわけでもないので何とも言えませんけれども。日本の場合は最後はその辺(納税者負担)を微妙にスルーして進めちゃいましたけどね(^^)。

『Third, to protect the financial system from systemic risk going forward, the plan strengthens the GSE regulatory reform legislation currently moving through Congress by giving the Federal Reserve a consultative role in the new GSE regulator's process for setting capital requirements and other prudential standards.』

GSEの規制強化をしますってのはまあそりゃそうでしょ。

『I look forward to working closely with the Congressional leaders to enact this legislation as soon as possible, as one complete package.』

まあ最後の部分は時候の挨拶みたいなもんで、とっとと成立するように頑張りましょって
話ですが、まあそりゃとっとと成立するでしょ夏休み前に。




FEDの声明も一応引用(引用だけ)。

『The Board of Governors of the Federal Reserve System announced Sunday that it has granted the Federal Reserve Bank of New York the authority to lend to Fannie Mae and Freddie Mac should such lending prove necessary. Any lending would be at the primary credit rate and collateralized by U.S. government and federal agency securities.』

『This authorization is intended to supplement the Treasury's existing lending authority and to help ensure the ability of Fannie Mae and Freddie Mac to promote the availability of home mortgage credit during a period of stress in financial markets.』

FNMAとかFHLMCの発行する債券は適格になるんでしょうかとふと思ったのですが、まあそういう話はあまり詳しくないあたくしが突っ込んでも誤解するだけなのでこのあたりの担保政策に関しては真面目に勉強したいと思うのであります。

しかしまあ担保政策が重要な世界になって参りましたが、これこそ日銀が得意とする世界(まあ成熟経済の国ではあんまりそういうノウハウが活用されない方が良いような気もするが)でありますね。うーむ。



○ほほうペイオフ

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-32731620080714
焦点:米インディマックが業務停止、さらなる米銀破たんの公算=アナリスト

『FDICのベアー総裁は13日、「すべての金融機関預金者は、自身の付保預金が安全であることを理解するべきだ。あなた方が預金している金融機関がFDICの管理下に置かれる可能性は極めて小さい。仮にそうなったとしても、自身の付保預金へのアクセスが事実上中断されることはない」と語った。さらに「いずれの預金者も付保預金のわずかたりとも失ったことはない。この国の圧倒的多数の金融機関は安全かつ健全だ」と強調した。』

まあこっちも話題になってましたが、要するに付保されていない部分に関してはカット必至ということですね、わかります。ペイオフですかそうですか。

・・・・まあこっちのネタで米国で中小金融機関株式が売られたというのは違和感が全然ございません。これもまあどこかで見た光景(日本はペイオフしませんでしたけど)ですな。


○脊髄反射的「調査」は勘弁して欲しいのですが

あたくしの耳ベースの話なので勘違いでしたら誠に申し訳ありません。と最初に謝っておいてから少々悪態をば(^^)。

今日の日経新聞に載っているようなのですが(まだネット版には反映されておらず、モーサテのお話ベース)、今回の騒動を受けて金融庁様におかれましては「おまえらのFNMAとかFHLMCの債券保有状況をとっとと報告しやがれ」という「緊急調査」をするそうですね。

・・・・・えーっとあのですね、債券に関しましては米国当局様が少なくとも短期的にはどうにかするという姿勢を出したのですし、それ以前の問題と致しまして3月末の決算財務諸表をご提出したばっかだと思いますが。

現場労務者的に申し上げさせていただきますと、その手の「緊急ご報告」資料作成で手を取られることによって肝心の情勢推移ウォッチに掛けられる労力が落ちる(よほどの巨大組織でもない限り結局そういうものは現場に何らかの作業が降って来る)んでありまして、管理する人たちのお立場的に「俺はちゃんと管理してるんだぜ凄いだろ」ってアピールしたいのは判りますが、あんたらの自己満足的「管理」によって肝心の現場の労力を削ぐのは本末転倒にも程が有るというものでございまして、勘弁していただきたいものだと思います。

大体からしてBIS関連とかで金融機関は6月末のリスク資産とかも報告するんですから、このタイミングでそんな脊髄反射のような「緊急調査」というのはちと何とかならんのかと思いますがねえ。何のための四半期決算なんだよという気がするんですよね。長官様も今回の施策について評価してるんですし・・・・・
http://business.nikkeibp.co.jp/article/reuters/20080714/165333/











2008/07/14

お題「米国どうなるんでしょ/相場雑談など」

週末は暑かったですねえ。

○これはまたありがちなネタが

金曜の市場ですけれども、後場になって急に債券先物は下がるわ株価指数先物は上がるわの巻で、何のこっちゃと思えば「ニューヨークタイムズ紙でファニーメイとフレディーマックが国有化される方向」っていうようなお話で、まあ記事の方もNYTの電子版に掲載されてました。

で、10年で5甘とかまで叩かれたのですけれども、冷静に考えると別に米国政府様が何か言った訳ではない話ですし、記事の中でも「これは結局納税者負担ですが」みたいな部分もあり、やや柔らかい話じゃんということからその後は戻って10年2甘程度までさっくりと回復の巻(引けも2甘)。

ま、米債はきちんと反応してたようで(というか金曜の相場って要するに米債が最初に反応したのではないかと思われますが)東京の18時半ごろのデータを見ますと米国10年が前日引け比で5毛甘、2年が8甘となってましたんで、これはまあそんなところかなあという感じです。

で、週末にかけて両社の救済策に関する報道が色々と出ているようですが、財務長官が国有化否定したり、一方で税金投入不可避の報道が出てみたりと、もう思いっきり日本の騒動の再来みたいになってまして誠に香ばしいものを感じる今日この頃でございます。日本は世界から散々っぱらから馬鹿にされてましたけど、まあおまいらも変わらないですなあという所ですわな。


当初はサブプライム商品買った所がエライコッチャみたいな話になってましたが、住宅金融証券化商品の保証をしているところがエライコッチャという話になりますと、かつてのメイン寄せみたいな感じになって問題が集約されて来るので、そこを何とかすればよいみたいな話になってそれはそれで問題解決には便利なのかも知れませんねえとかのんびりした事を思うのですけど、ど〜なんでしょうかね。

まあいずれにせよ政策的に何かの手当てをして機能自体は残さないとどうにもならんでしょうからどうにかするんでしょうとは思いますけど、展開が日本と似たところもあり、違う所もありということでほうほうなるほどという感じですな。証券化商品がメイン寄せ現象みたいになってきたのは面白いですねえとか思うんですけど、勘違いしてるかな>あたくし

ちょっと所ではなく気になっているのは、何か一連の動きの中でバーナンキ議長の発言の注目度が上がっているような気がすることでして、まあベアスターンズの時に実質特融みたいなの打ち込んだから仕方無いのかも知れませんが、住宅金融2社問題でも何かアクションさせられるとかなり出すとそれはどうなのよという感も。一応財政が動くのが本来の筋(いやまあ達観しちゃえば最終的にどっちでも同じなんですけれども・・・・)なんで、金融政策当局にプルーデンス大活躍を求める流れはちょっとどうなのかなって気がしますです、はい。


○CPのレートが中々下がらない件について

金曜はスポットが15日でCPの発行がそこそこ。で、その発行レートですが、レギュラー16日スタートのGCレートとかはお約束のように低下してるというのにこっちのレートは横ばいから若干の上昇気配。

中々下がらないのはだいたい需給問題であることは(というかCPの場合基本的に需給が殆どですが)間違いないのですけれども、ここもとちょっと発行が増えてる感じでありまして、資金調達の多様化を図っている動きなのか、それとも資金の効率化によって両建てが圧縮された分だけCPなどでの超短期的な資金に対するニーズが高まったのかという所なのかと思いますが、まあ一頃需給がやたらと良くて何でもかんでもFBにレート接近してたことを思うと正常化してますねって感じではないかと思います。

CPの発行が増えているのが企業の前向き資金需要が旺盛になっているせいとは到底思えない状況でございますので、まあ単に超短期資金の出入りをCPによって補うという動きが出て来たんですかねとか思うのですけれども、手元流動性が何気に圧迫されているんだったら、それは少々やーな感じではございますわな。どうなんでしょ。


○さて決定会合ですが

展望レポートの中間評価で物価を上げて景気を下げるのはもうどう考えても決定的だと思われますが、あたくし的には金融経済月報の判断どうするのかなあというのも気になります。まあどうせ『わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高の影響などから、減速している。』『景気の先行きについては、当面減速が続くものの、その後緩やかな成長経路をたどると予想される。』(6月の金融経済月報より)となるのでしょうけれども、今月は何か先行き見通しでもう一つくらいヘッジクローズ入らないかなあとワクワクテカテカして待っております(^^)。

また、リスク要因に関しては亀崎審議委員の先般の講演および記者会見にありましたように、徐々に物価の上向きと景気の下向きのリスクが拡大しているという認識のようですので、この部分をどう表現するのかも注目しております次第。まあ昨今の宣伝活動によりまして(^^)、物価の見通しを上げたので日銀は利上げに積極的とか思われる事も市場的には無くなりました(何でも日銀が悪いという事にしたい一連の方々に置かれましては相変わらず物価見通しの上げは日銀利上げの地均しに見えるのかも知れませんけど)ので、安心して(?)物価見通しを上方修正することになるんでしょうな。


○おまけ

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/un0807b.htm
「日本銀行本店の窓口サービスに関するアンケート」の結果について

ふ〜んという感じですが。昔お使いで国債の本券(歳がバレますが)を受領しに行った時に入った天井がやたら高いドームになっていたところ(本館なんでしたっけ)の窓口、真冬に行ったら寒かったですねえ(そりゃまあ天井がドーム状態なんだから当たり前ですが)。おねいさんの対応は良かったですね。

なお、オペのお使いとかには年がら年じゅう行ってましたが、国債入札のお使いは行った事がありませんのでまだまだあたくしもそう威張れた(別に威張ってはいませんが^^)もんではございませんであります、ってネタ振りしても若い衆にはポカーンなんだろうなあ。













2008/07/11

お題「いまさら金融士ネタほじくり返してみるの巻」

何だ、イラン情勢ネタで原油価格上昇してるじゃんと思いつつ、今更感のある金融士ネタですが、その前に雑感を2つほど。

○まあどこかで見た光景ですな(米国の金融問題)

ここもとの米国金融不安ネタですけど、ここのところの展開って「どっかから信用不安の見方が出る」→「当事者や当局から火消し発言が出る」の連続になっておりまして、もう何だか日本の時と同じ話。ちったあマシなのは資本増強の話が海外から実弾で打ち込まれるという所なのかもしれませんが、制度をいじって(というかいじらないで)資本は潤沢で増資の必要ありませんって火消しは筋の悪い火消しだと思われますなあ。

日本だって繰延税金資産みたいに制度いじって何か変な資本増強したりしてましたが、実弾を伴わない資本増強は所詮数字だけの話(持ち合い型の資本増強というオソロシスなものもありましたが)でございましょうと思うのですけど、米国必死だなという感じです。まあ日本の時に散々っぱら酷い目にあって、ガイジン様やり放題代にこちとら日々実に嫌な思いをしてたのでどうにもこうにも米国プギャーという気持ちが沸き起こるのが人徳の至らざる所であります。

まあ制度を厳格化したりしなかったりすると資本が足りたり足りなかったりというような議論は意味ねえ筈ですが、それにまた一喜一憂というのは実に微笑ましいものであります。パターンが日本と同じにも程があります(^^)。


○予定調和のような展開について(GCレポとか短期レートとか)

積み最終にかかるあたりになってGCレポレートが上昇。昨日のレギュラーネクスト取引は60に接近しやがったようなのですが、もう何か最近の動きって予定調和というか何と言うか、あまりにもお約束どおりにイベントになると跳ねるの巻でして、まあ要は資金の大口出し手先生が積み進捗を金利水準見ながら機動的に操作とかちゃんとやってるんかいなと甚だ疑問を感じざるを得ない動きをしてるんでしょと言いたくなる展開。

期末もそうなんですが、先日実施された共通担保オペの期末越えとか全然期末プレミアム(どころか途中のレート上昇も)を意識しないレートでの決着になってましたように、4半期末毎にイベント発生モードになるのですが、途中延々と「今回はイベント無いんじゃねえのか」と思わせるような展開が続いた後、最後の最後にいきなりお祭り状態になって跳ねるとか、もう何という機械的な動きなのよと思うのであります。

となりますと、レート形成的にどうなるのよと申しますと、まあそこまで極端にレートに反映してはいないと思いますが、実際問題として償還再投資の事を考えますと、4半期初に償還が来るものに投資してもイマイチ割が合わないぞ(4期末イベント通過するとレートがいきなり低下するので再投資の環境が悪い)となり、逆にお祭りになってそうな9月後半(末だと遅すぎ)足のものはニーズありますなあという話になるんじゃねえのとか思うのです。それがレートに反映してくればそれはそれで今度は10月足でも良いんじゃねえのとなるので、それこそ市場の価格形成っぽくなって良いのですが(^^)。

でもまあどうせ9月末も6月末と同じで9月の頭あたりには「今月期末月でしたっけ」というような展開になってたのが急に誰かが大口で資金供給オペをガメ出してレート上昇ってなるんでしょうねという事で。

やっぱ参加者のメガ化で市場が一方方向になりやすいってのは困ったもんだわと思う今日この頃(前からそう思ってますが)なのでありました。


というような雑談は兎も角、次の雑談は金融士ネタ(−−)。

○やっぱりやる気満々なのかなあ・・・・・とほほのほ

東京金融街構想というのが出た辺りから「こいつら大丈夫か」と思わせる構想を打ち出す人が横行する金融関連の政治からのご提言の連発ではございまして、SWFとか勘弁してくれと思うのですが、より勘弁して欲しい金融士の話。

4月の末に打ち込まれて業界の大爆笑を買った「金融士」構想でございますが、業界の大爆笑を買ったことを意識してか渡辺大臣は5月9日の会見(5月20日の駄文でネタにしました)ではややトーンダウンしてこんな話をしてました。

『答) 資格を作ることを決め打ちしているわけでは全くございません。金融専門人材を養成するにはどうしたらいいだろうか、という問題提起をしているところです。懇談会においては、民間資格も含めて議論をしていただいたわけです。このような金融専門人材、なかんずくコンプライアンス関係に詳しい人たちがいろいろな分野に散らばって配置されていれば、コンプライアンス感覚の共有が相当できるようになると思います。発行会社にも証券会社にも自主規制機関にも、また監督当局にもそのような人材が散らばっていることによって、いわば生態系の秩序が維持されるようになると思います。そうすると行政のコストは肥大化せずに済むようになるわけです。』

この生態系の秩序って何じゃらほいとしか言いようが無いのですけれども、どうせ誰かの入れ知恵あわわわわ。

で、他の事調べてて国会会議録みてたんですが、5月29日の参議院財政金融委員会(直リンのアドレスが良く判らなかったのでリンク割愛します、すいません)で金融士ネタの質疑応答をしておったのですな。なお、発言番号25〜28部分になりますのでご覧になるかたはそのあたりを見てね。

『○大久保勉君(前半割愛)続きまして、いわゆる金融庁の職員の資質の向上ということがベター・レギュレーションでうたわれております。これに関連して質問をしたいと思いますが、金融庁や証券監視等委員会の検査官の質の向上は私は非常に重要だと思います。金商法ができて、実際にそれをいわゆるつかさどっていく現場といいますのは、検査官の質だと思っております。そこで、十分な金融知識を持った金融庁の職員、さらには銀行員、証券マン、さらには企業財務関係者の育成が日本の金融界の課題だと思っております。そこで、金融庁は、現在、金融士の資格制度を早急に創設すべきだということを考えていると聞いております。この金融士というのはどのような要件で選ばれるのか、また金融士はどういう仕事をするのか、この点に関して金融庁に質問をしたいと思います。』

釣り質問じゃないのでしたら大変に頭痛がするのですけれども・・・・と思いながらどこかでこんな話聞いたことあるなと思ったら、本石町日記さんのところでネタになってた「大機小機」の論調じゃんと思うあたくしなのでした。「さらには企業財務関係者の育成」ってあたりを見て思っただけなんですけどね(^^)。
http://hongokucho.exblog.jp/8719781/

『○国務大臣(渡辺喜美君) 日本に残念ながら金融専門人材が至る所に配置されているという状況にはまだなっていないと考えております。こういった金融専門人材が、共通のセンス、コンプライアンス感覚を持って、監督当局にも発行会社にも証券会社にも自主規制機関にも散らばって配置されていますと、世の中の生態系の秩序というものは非常に良好に保たれていくのではないでしょうか。そうした観点から、金融専門人材に関する研究会を設けまして、仮称でございますが、金融士といった資格の創設を含む基本的なコンセプト案をまとめたところでございます。(ということで以下例の金融士構想の話と同じなので大体割愛)仮称、金融士といった資格は、金融専門知識の習得の目標あるいは一定の能力水準のシグナルとして機能することが考えられます。公的セクターと民間セクター双方に幅広く人材が育成、確保されることで我が国金融の競争力の強化に資するものと考えております。』

とまあさっき引用した会見にもある「世の中の生態系の秩序」が出て参りました。どうも渡辺先生に置かれましてはこの表現がお気に入りなのでしょうが、正直何を言いたいのかが全く判らない表現でございまして、頼むから日本語はわかりやすくお願いしたく存じますと思うのであります。しかし「一定の能力水準のシグナル」って言われましても証券アナリストだってシグナリングの役に(自主規制)。

で、この提案はマジなのかギャグなのか判らないのですが。

『○大久保勉君 一つ、これは提案なんですが、金融大臣に質問したいんですが、金融士の資格を持った検査官にはいわゆる専門職として適切な俸給表を適用するとか、また、国税職員が退職後税理士の資格を持って活躍できるように、金融士の資格を持ったらそれなりに社会で活躍できるような仕事をつくったらどうかと思います。このことで検査官の質が向上し、また金融界の質も向上していくと思います。こういった提案ですが、どうお考えでありますか。』

本気で言ってるならこの先生証券会社に勤めてた時のことすっかり忘却してるようで、記憶方面に何らかの不具合があるのではないかと大変に心配でございます。

『○国務大臣(渡辺喜美君) そういう御議論は大いにあり得ると思いますので、今後検討してまいりたいと考えます。』

どう見てもやる気満々です。本当にありがとうございました。











2008/07/10

お題「相場雑談など」

あらまNY株式大下げ。

○相変わらず先物周りのカーブが妙な件

別に今日に始まった話じゃないんですけど、相変わらず気になるので・・・・・

昨日の引け値ベースで見ますと10年265、6回(2014年12月償還)から10年277〜9回(2016年3月償還)の引け単利がだいたい1.29%あたりで並んでいるのであります。イールドカーブを引くとこのあたり大体横になってしまう訳ですな。で、もっと細かく見ると先物チーペストの273回ゾーン(272、3回)の所が手前の270、1回の所とインバート(逆イールド)した状態になっておりますわな。

3月の大閉店相場の時に5年カレントとチーペストがインバートして、ついでに言えばチーペストとその手前が壮絶にインバートしたという事例がありましたが、今回の場合ポジションの巻き戻しでそうなったという訳ではなさそうな所が侘び寂びを感じさせるものでございまして(何のこっちゃ)、まあ先物限月交代絡みでいきなり変な動きがあった余波とか、どうも260回台後半の需給が良くないのでその影響で6年半位が後ろに対して安いままになってしまっているのかという所らしいのですけれども、一体全体どうなっているのやら。

めんどくさいから単利ベースで(この辺の銘柄のクーポンは大体似た所にいるので単利比較で勘弁)比較しちゃいますけれども、よーするにこのゾーンってロールダウンを全然しないカーブ形成になっている次第でして、例えば同じ1.4クーポンで比較すれば10年275回(2015年12月償還)が1.295%の引けで10年266回(2014年12月償還)が1.285%の引けと、1年持っててロールダウン1bpしか無いの巻。キャリーしか入って来ないという素敵なカーブ(最早カーブではないが)ではございます。

・・・・という状況続いてるのって先物限月交代あたりからでございましたっけ。あたくしもここの形状を常にチェックしてた訳じゃなかったりするので(汗)妙になっているの何時ごろかと言われますとご教示賜りたいのでありますが、普通だったらこーゆーカーブ形状ってのはカーブの歪みを裁定する動きが登場して是正されるもんだったのですけれども、相場が上がっても下がってもあんまり是正される雰囲気が漂ってこない(どころか相場が上昇してまたインバートとかになってるし)というのはどういう事じゃろって感じです。

要は市場の中で裁定取引みたいなのをやる参加者が相変わらず弱っていて、価格形成が需給要因で歪みやすい状態が継続しているという事の証左なのでしょうねえと思うのですが、市場参加者の元気が戻って裁定取引みたいなのが復活してくるかどうかを見るバロメーターには丁度良いのかなあと思いながらちょくちょくこのゾーンをヲチしたいと思います。


○肝心な論点が抜けてるような

昨日ご紹介したBISのレポート(の要約の日本語訳)ネタですが。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/bis0807a.htm
の3番目。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/data/bis0807a3.pdf
「証券化格付:何が問題だったのか、そしてどのような対処が可能か?」

序論にこんな話が。

『これらの動きは、投資家のリスク管理が格付に過度に依存していることや、その他のリスク管理上の問題も浮かび上がらせた。最近の市場の混乱から得られる教訓の一つは、投資家がリスク管理やストレス・テストの体制を見直し、証券化商品と伝統的な企業債券のリスク特性上の重要な違いをより適切に反映させる必要がある、ということである。さらに、投資やリスク管理のプロセス、また規制において、格付が重要な役割を果たしている中にあって、今回の混乱は、格付機関による複雑な金融商品のリスク評価の有効性にも疑問を呈した形となった。』

>投資家のリスク管理が格付に過度に依存していること

なんつーかね、それはそうなんですけれども、バーゼルUで格付け別リスクウェイトがどうのこうのとかいう制度を作ったおまいらがどの口でそれを言うかという気は物凄くするのですが。

そもそも論をすると、この手の規制当局の規制ってのはどうやっても完璧なものは出来ないってのはあるのですけれども、仮置きする前提があまりにも脳内お花畑になっていると、制度の隙間をついた「とてもお得な商品」が発生してプライシングがおかしくなる事を助長するのでありますわな。日本で言えば「アウトトライヤー規制に全然引っ掛からない魔法の商品」として15年変動利付国債が持て囃された時代が有った訳ですが、無駄にニーズを集めすぎて(集まったのには他の要因も有りましたが)後で悲惨なことになったのは記憶に新しい所。

この事案の場合、アウトライヤー規制における標準的な金利ショックを「全ゾーンのイールドが100bp上昇した場合」という現実問題として有り得ない設定をしていたことによって15年変動利付国債がバーゼルUのアウトライヤー規制上ではノーリスク商品になってしまったというお話ですけれども、証券化商品に関連するもんだって格付けによるリスク管理という話をガシガシやっちゃったから「高格付けでも高利回り」という商品(CPODの話を最初に聞いた時にはなんじゃそりゃと思いましたよあたくしも>害債さま)が横行するインセンティブが生じた訳で。

#話は違うが「中小企業向け貸付のリスクウェイトが分散効いているので低くなる」というバーゼルUの理屈もワケワカラン

まとめではこうなってるんですけどね。

『これらのインプットを踏まえ、このレポートは4つの教訓を提示している。すなわち、@信用格付情報は投資家のデュー・デリジェンスの代替ではなく、それをサポートすべきものであること、A格付機関は証券化格付の前提となる情報の提供を充実させるべきこと、B証券化格付の主要なリスク要因についてはより多くの情報が必要なこと、C格付機関はシステム全体に関わるリスクを考慮すべきこと、である。これらの教訓を踏まえ、問題への対応と証券化商品の格付に対する投資家の信頼向上に向けて、いくつかの具体的な提言を行っている。』

規制当局の行動につきましてもご考察を頂けると幸いです(って実は中でそういう話があるのかもしれませんで、ちゃんと考察してるのでしたら悪態ついてゴメンナサイですが)。



○イランのミサイル試射ってなんだったの

これは俺様備忘メモ。

昨日の市場なんですけどね、取引時間中にそれまで威勢の良かった株式市場が失速して何じゃ何じゃという話になっておったんですけど、為替が円高ドル安にぶれまして、ドルに何か材料でもとか思ったら「イラン、中長距離地対地ミサイル9発を試射=国営テレビ」ってヘッドラインがありやがりまして(当然ですが英語のヘッドラインが最初でして、あたくしが見たので一番早いのは13:27のロイター英語版でした)、どうもこれを受けて為替が動いてアジア株全般が動いたみたいですね。

・・・・と、昨日の相場を見てたら思ったんですが、何かその後の欧州株は上昇してるし、今日になったら相場後講釈でもその話が無い(利食いに押されたことになっている)のですが、この話ってどうなってるのでしょうか。ただの通常演習をネタにして大騒ぎして釣られたって事なのかしらん。










2008/07/09

お題「オペレーションに関連するお話を少々」

米国市場は毎日大変ですなあ(棒読み)。

○BISのレポートですがどう見ても本邦経験済みです

こんなのがありましてですな。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/bis0807a.htm
BISグローバル金融システム委員会(CGFS)報告書の公表について

報告書の要旨を日銀が仮訳してたんで取りあえず斜め読みしとった訳ですが、2本目の「Central bank operations in response to the market turmoil(市場の混乱に対する中央銀行のオペレーション)」って奴でも(PDF3ページ)。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/data/bis0807a2.pdf

『米国のサブプライム・モーゲージ市場の危機によって引き起こされた2007 年のクレジット市場の混乱は、金融機関のバランスシートに圧力を与え、資金の調達制約やカウンターパーティリスクを強く認識させる事態を引き起こした。これはかなりの期間にわたり短期金融市場に不確実性をもたらしたほか、主な通貨のタームもののスプレッドを拡大させることとなった。』

最初の部分を日本の金融混乱に置き換えても全く同じ話でございまして(^^)、この期に及んで何を研究しとるんじゃと今更感も致しますが、まあやらないよりは良いことです。で、どういう問題が生じるかという部分はスルーして結論部分を。

『報告書は今次経験から引き出される結論と並び、以下の7 つの提言を纏めた。』

ということで提言があるのですが、色々と雑感が湧き上がって参りましたのでその辺をダラダラと(汗)。

『1. 金融市場におけるストレスが強まる際には、中央銀行準備に対する需要が不規則に変動する、または、中央銀行による異例の資金供給が行われる結果、政策ターゲット金利の制御が難しくなる。金融調節の枠組みはこうした事態に対応できなければならない。』

日本の場合は最後にはゼロ金利政策だの量的緩和政策だのを打ち込んでしまいましたので金利ターゲットの制御そのものは関係なかったんですが、どちらかというと問題は次の2.に相当する部分になるのかとは思います。

『2. インターバンク市場の機能が低下する際には、中央銀行準備がそれを必要とする市場参加者に十分行き渡らず、市場の緊張が一段と高まることがある。こうした状況の下で準備を市場のすみずみまで行き渡らせるためには、オペの対象先を広くし、多様な資産をオペの担保として活用できなければならない。』

日本の場合は「いわゆるCDオペ」の実施などもございましたが、要は担保政策をどうするのかという部分が非常に重要ですよねというお話。オペの期間ってのも重要だと思いますけど。ま、何と言いましても共通担保オペ最強ということでございます。

『3. 金融市場の大きな混乱が生じ、流動性が枯渇した場合には、金融政策の効果的な伝播と金融システムの安定性が阻害される可能性。そうした状況の下で中央銀行は、単なる準備需要の増減、または、準備の偏在への対応を超えた金融仲介に乗り出す用意が必要。』

1.+2.みたいな話ですか。

『4. グローバルな流動性融通機能が低下する可能性を踏まえ、中央銀行は対応を準備しておく必要。国際的に活動する金融機関の外貨調達が困難になる場合には、中央銀行間のスワップ取極を利用して母国中央銀行が外貨を調達することで、当該金融機関に外貨を供給することができる。海外にある資産を担保として中央銀行が自国通貨を貸し出すことも選択肢。』

ということですが、所謂ジャパンプレミアムがどうしたという時には他の主要国の中央銀行様は協力してくれてましたっけとか思うと、ちょっと釈然としないところはあるんですけどね。日本だけ海外からふんだくられっぱなしじゃねえのかと。

ま、それは兎も角、外貨資金繰りがキモになるのは仰せの通りで、まあ海外が儲からない(儲けられない?)とかいうのもありましたが、海外から絶賛大撤退の巻になったのはファンディング大変でそれどころではないというのもあったでしょう。資金繰りは大事だよと。

『5. 金融市場のストレスが高まった状況の下では、中央銀行の行動に対する誤解は重大な結果をもたらす可能性。これを踏まえ、中央銀行にとっては一段と丁寧な市場・プレスとの対話が必要。』

日本の場合は(確かにまあ過去の実績が悪影響を与えている面が多分にありますが)日銀と言えば何でもかんでも金融引き締めをしたがるという前提の元で理解が行われて報道されるとか、日銀への批判論調が組み立てられるというのが困ったもんでございます。市場関係者の筈なのに「日銀のオペレーションがヘタクソだから中国株が暴落した」と無茶な論理を言い出す人とかもいる位ですから(って覚えてますか?)オソロシス。

『6. 金融市場のストレスが高まる際には、中央銀行の貸出ファシリティの利用に伴う悪評により、そうしたファシリティの有効性が低下する可能性。中央銀行は、悪評を緩和するため、関係者による制度の理解を高めるよう努力すると同時に、ファシリティのデザイン上工夫の余地がないか検討すべき。』

これね、日本でも金融機関の中にお危ない所があるだの何だのと言われている時には期末のロンバート利用を避けて高いファンディングをしてたと思われる動きがあった筈(だいぶ記憶が怪しいですが、あたくしの過去のログをたどると見つかると思います^^)です。ロンバート使うと日銀からの借り入れ扱いになっちゃってバランスシートに出てくるのを避けるために市場調達するの巻って話でございますな。

ということで、まあ期末みたいなバランスシートどうのこうのというタイミングでも貸出ファシリティが円滑に機能するかどうかってのも重要な論点になろうかと思います。現在の日本だと期末にロンバート使うこと自体は屁でもなさそうですが、それは金融機関経営に対する問題が市場のネタになっていない(のでインターバンクでの信用収縮は観察されない)という面も寄与してる可能性もありまして。工夫という面では貸出ファシリティと通常のオペレーションを勘定科目上同じになるようにする(とバランスに出てきてもどっちなのか判らないですから^^)というのはどうなんでしょ、と書いてて良く考えたら各国の貸出ファシリティって勘定科目上の処理どうなるのでしょという話を調べていないことに気が付くトンマなあたくし。

えーっと、今は共通担保オペレーションもロンバートも勘定科目上は一緒の扱いになるんでしたっけ(さっきの話の時は手形オペとかの時代だったのでロンバートを受けるとモロに勘定科目上判ってしまうのでありました)。どっちも日本銀行による貸付ですよね。
共通担保オペの基本要綱(http://www.boj.or.jp/type/law/ope/yoryo33.htm
ロンバートの基本要綱(http://www.boj.or.jp/type/law/ope/yoryo20.htm

『7. 中央銀行が市場の機能不全に対して行動を取ると期待されれば、市場参加者の慎重に流動性を管理しようとするインセンティブを弱めるといったモラルハザードを生む可能性がある。中央銀行は流動性を供給するに当たってはコスト・ベネフィットを推し量るべきである。』

これはまー仰せの通りでして、米国様の場合でも「グリーンスパンなら、グリーンスパンならきっと何とかしてくれる!(AA略)」状態になってた節がある時代もありましたなあ(遠い目)というのもありましたし。


○先日の訂正をば(これもオペがらみ)

オペがらみの話と言えば、先日国債の流動性供給入札に関してうだうだと書き物を致しました部分にどう見ても事実誤認部分がありましたので謹んで訂正させていただきとう存じます。過去ログも忘れないように訂正しないといけませんね(でも過去ログは平日いじってるヒマが無いので休日にでも)。

http://www.boj.or.jp/type/law/ope/yoryo30.htm
補完供給を目的として行う国債の買戻条件付売却基本要領

『1.趣旨
この基本要領は、金融調節の一層の円滑化を図るとともに、国債および資金決済の円滑確保にも資するとの観点から、本行が保有する国債を市場参加者に対して一時的かつ補完的に供給することを目的として行う国債の買戻条件付売却を実施するために必要な基本的事項を定める。』

『5.売却の決定
売却は、売却対象となる国債の流動性が著しく低下していることが懸念される場合において、その影響が市場全体に波及する惧れがあるなど、本行が金融市場の情勢等を勘案して適当と認めるときに実施する。』

ということで、まあ趣旨的にはスクイーズによって、あるいは自然災害等において国債決済が円滑に進まない場合に補完供給行うという趣旨でありますので、イールドカーブ云々とか書いたのは筆の滑りです。どうもすいませんm(__)m

「売却対象となる国債の流動性が著しく低下していることが懸念される場合において、その影響が市場全体に波及する惧れがある」っていうのは、この制度導入の頃って先物のチーペストの玉締めに関する思惑で先物やらチーペストの需給がおかしくなったりする事案が起きてた頃でもありますので、先物のチーペスト絡みの需給も意識してるんでしょうかなっていう感は致しますが。

ちなみにチーペストのスクイーズ騒動って近い過去だと#161、#163事件と#192事件が著名、って全然近くないですかそうですか(^^)。


それよりもっとアホウな事実誤認はこちらにありました(超大汗)。

http://www.boj.or.jp/type/exp/ope/opetori11.htm
国債売現先(国債補完供給)の取引概要

『(2)実施要件
○  金融市場の情勢等を勘案して入札の実施を決定します。
○  当面の間、具体的には、以下の2つの場合に実施する予定です。
(a) 原則として、1銘柄につき3先以上から入札の実施の希望を受けた場合
(b) 災害や大規模なシステム障害の発生時等、金融市場の情勢等を踏まえ、日本銀行が必要と認める場合』

えーっと、先日は2社とか書いてしまいましたが、3社の間違いでした。自分でやったことないもんだから(言い訳)いつの間にか記憶がおかしくなって理解しておりました。平にご容赦をm(__)m

ということで、記憶に頼ってだけではなく、ちゃんと根拠となる元文書にあたるという動きはいつでも大事ですねという事でして、通常のお仕事にも通じるお話(業務に関連する法令諸規則をきちんと確認するとか)であると思うので自戒を込めて。










2008/07/08

お題「さくらレポートも下方修正」

どう見ても利上げどころの騒ぎではありません本当にありがとうございました。

・・・と書いてしまうとそれで終了なのですが、それではあたくしのネタになりませんのでまあ少々ご紹介。

概要はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0807.htm

本文はこちら(PDFで51ページありますので注意)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki0807.pdf

○また今回もほぼ全地域で下方修正とな

今回ほぼ全地域で下方修正してる訳ですが、前回4月のさくらレポートでも実は8地域で下方修正。前々回の1月は5地域で下方修正してるのですな。てな感じで、この際2回分を推移をみると落涙を禁じ得なくなります。ということで、1月判断→4月判断→7月判断という流れを見てみましょう。

北海道
やや弱めの動きとなっている→やや弱めの動きが続いている→弱めの動きとなっている

東北
全体としてみれば、緩やかな回復を続けている→足踏み感がみられている→足踏み感がみられている

北陸
一部で弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している→減速している→減速感が幾分増している

関東甲信越
緩やかな拡大基調にある→やや減速している→減速している

東海
緩やかに拡大している→緩やかな拡大基調にあるが、その速度は足もと鈍化している→引き続き高水準にあるが、足もとは減速がはっきりしてきている

近畿
緩やかに拡大している→一部に減速の動きがみられるが、基調としては緩やかに拡大している→減速している

中国
全体として回復を続けている→一部に弱さがうかがわれるものの、全体として回復を続けている→全体としては緩やかな回復を続けているが、そのテンポは、このところ鈍化している

四国
緩やかながら持ち直しの動きが続いている→持ち直しの動きがやや弱まっている→横ばい圏内の動きとなっている

九州・沖縄
緩やかな回復を続けている→回復に足踏みがみられる→足踏み感が強まっている

(ここまで前回および今回のさくらレポートより引用)

とまあ引用が少々長くなって恐縮ですが、一見して「持ち直し」とか「回復」とか「拡大」という前向きベクトルの表現がどんどん減っているというのが特徴的でございまして、「足踏み感が強まっている」とか「減速感が幾分増している」とか何という日本語表現と思う表現が並んできているという状況。

一応足踏みだの減速だのというのは拡大基調の中で一服していますという文脈として使っている筈ですので(そうですよね?)、これはこれで「基調は拡大だが今のところちょっと踊り場」みたいな話ではあると思われますが、それにしてもトーンダウン継続にも程がある状態ではございます。

何せ今回は「回復」「拡大」的な表現があるのが「高水準にある」の東海と、「全体としては緩やかな回復を続けている」の中国だけでして、半年前(1月判断)では北海道以外に「回復」「持ち直し」「拡大」の表現がズラリと並んでいたことを勘案しますと、これはもう落涙ですよ先生という所かと存じます。



○項目別展開

・個人消費

『消費は、関東甲信越、東海、九州・沖縄で、「底堅く推移」と判断しているが、その他の地域では「弱めの動き」がみられるとの報告が目立ってきている。(内容割愛)前回報告との比較では、すべての地域がやや下方修正した。』

全ての地域キタコレ。前回は北海道、東北、北陸、東海がやや下方修正されたのですけど、今回は全地域ですかそうですか。

・設備投資

『設備投資は、交易条件の悪化等により企業収益が減少していることなどを背景に、「増勢が鈍化している」ないしは「高水準ながら横ばいとなっている」といった報告が目立っている。前回報告との比較では、中国が下方修正したほか、近畿、四国がやや下方修正した。』

交易条件の悪化ですなあ。で、こちらですが、前回やや下方修正したのが北陸、関東甲信越、東海、近畿、四国でしたので、近畿と四国が連敗ですな。そんな感じなんですかね。一応元々のベースが高めの判断ですけど、先行きどうなのよという所で。

・生産

『生産は、北海道、東北、関東甲信越、九州・沖縄で、「横ばい圏内の動き」と判断している。この間、北陸、東海、近畿が「増加テンポが緩やかになっている」ないしは「足もとはやや弱めの動き」などと判断している一方、中国、四国では「総じてみれば引き続き高水準」ないしは「緩やかに増加している」と判断している。(内容割愛)前回報告との比較では、北海道、北陸、東海、近畿、中国がやや下方修正した。』

生産は前回の判断時点で北海道がなんと上方修正だったのですが(と言っても北海道の場合は元々が元々ですが)、東海が下方修正、東北、関東甲信越、近畿、中国、九州・沖縄がやや下方修正だったので、東海地域の生産って、元々がこちらは高水準だったと思われますが、ブレーキ掛かってきちゃいましたねってお話になるんでしょうか。うーむ。

・雇用・所得環境

『雇用・所得環境をみると、雇用情勢については、北海道、東北、北陸、関東甲信越、四国、九州・沖縄で、「やや弱めの動き」ないしは「改善に足踏み」、「横ばい圏内の動き」などと判断している。一方、東海、近畿では、「雇用者数は緩やかに増加しているが、有効求人倍率はこのところ幾分低下」などと判断しているほか、中国では、「有効求人倍率が引き続き高めの水準を保っている」と判断しており、地域差がみられる。』

『雇用者所得は、関東甲信越、東海が、「緩やかな増加」ないしは「改善」と判断しているほか、北海道、東北が、賃金引き上げに抑制的な動きがみられるなどとしつつも、「一部に持ち直しの兆し」ないしは「緩やかな改善を続けている」と判断している。この間、北陸、近畿、中国、四国、九州・沖縄が、「前年並み」ないしは「横ばい圏内で推移」と判断している。』

相変わらず地域差が大きいのですけれども、関東甲信越と東海の雇用者所得は引き続き結構な状態という解釈で宜しいのでしょうな。益々地域差拡大っぽい感じですよね。

『前回報告との比較では、雇用情勢については、北海道、関東甲信越、近畿、四国、九州・沖縄がやや下方修正したほか、所得面については、東北、近畿、四国、九州・沖縄がやや下方修正、北海道がやや上方修正した。』


○毎度おなじみ「地域の視点」

今回のお題は『最近の企業の設備投資動向 』でありまして、もうリードの部分を見ただけであんまり明るくないですなあというお話が。

『最近の企業の設備投資は、交易条件の悪化による企業収益の減少や先行きの需要に対する不透明感の高まりを背景に、増勢が鈍化している。こうした中で、企業の規模や業種等の違いによる投資スタンスの「ばらつき」が一段と鮮明化している。』

内容は本文に詳しいのがありますが、まあ要するに大企業ではそれなりに前向きだったり高度化だったりという部分への投資はコンスタントに行われているけど、中小企業では投資を抑制してますなあというショボーンという感じのお話。

この「地域の視点」というのはその時点での注目トピックスみたいな感じで展開されますので、このお題を見るとその時点での雰囲気が思い出されるので、展開してみましょう(前回もやったけど^^)。

『最近の企業の設備投資動向 』(今回)

『1.グローバル需要の取り込みに向けた企業の対応について── 中堅・中小製造業や非製造業の動きを中心に
2.地域からみた最近の雇用・賃金情勢について』(2008年4月)

『原材料価格上昇のもとでの企業の対応── 最終消費者に近い「川下」段階にある地場企業を中心に』
(2008年1月)

『1.最近の企業立地の動向と立地戦略の特徴点
 2.北海道農業の現状と新たな取り組み』(2007年10月)

『中小企業の収益動向と支出行動の特徴点』(2007年7月)

『1.各地域からみた最近の雇用・賃金情勢について
 2.近年の東京における高額消費市場の特徴――海外ブランドや外資系ホテルの動向を中心に』(2007年4月)

『各地域からみた最近の住宅投資動向について』(2007年1月)

・・・・・何と言っても2007年4月のお題でしょう(^^)。とか言って高額消費市場って最近どうなんでしょうかねえ。あたくしにはトンと縁の無い(そういやあたしゃ円も無いですが^^)話ではありますが。


○総裁挨拶から

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/siten0807.htm

『(1)わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高の影響などから、減速している。輸出は、足もと幾分鈍化しつつも増加を続けている。企業収益は、交易条件の悪化等を背景にこのところ減少している。そうしたもとで、設備投資は増勢が鈍化している。個人消費は、雇用者所得の緩やかな増加を背景に、底堅く推移している。生産は、横ばい圏内の動きとなっている。景気の先行きについては、当面減速が続くものの、その後緩やかな成長経路をたどると予想される。』

というのは金融経済月報などで示されているお話ですが、さくらレポートを見ますと成長だの拡大だのという景気の良い文言は見事にどこぞへ引っ込んでおりまして、今回も下方修正ということでありますので・・・・・・

ま、こりゃ展望レポート中間レビューはどう見ても景気下方修正です。本当にカムサハムニダ。で、物価は上方修正間違いなしですが、景気の下方修正とセットで見れば結局両方ともネガティブな話でありますので利上げどころの騒ぎではありませんなあという結論になるんでしょうね。

#引用で増量企画になりまして恐縮至極でございます。







2008/07/07

お題「月曜なので雑談」

というか最近は金融政策ネタが国内債券相場のネタから外れてしまいましたのでこれというネタがないのですけれどもね(汗)。

○生活者意識アンケート

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki0807.pdf

一般紙でも話題になってましたけど、要するに景気が悪化する中で物価が上昇してますよという話ですわな。アンケート詳細は16ページ以降。質問と回答部分は引用でして、()内は前回調査(3か月前に実施)の数値です。

・景況感

Q1. 1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。

1 良くなった1.7 ( 2.4 )
2 変わらない28.8 ( 37.1 )
3 悪くなった69.0 ( 60.1 )

Q2.Q1のご回答について、そのようにお考えになるのは、主にどのようなことからですか。【2つまでの複数回答】

1 マスコミ報道を通じて35.0 ( 30.1 )
2 景気関連指標、経済統計をみて13.5 ( 13.9 )
3 勤め先や自分の店の経営状況から35.1 ( 34.5 )
4 自分や家族の収入の状況から46.0 ( 47.7 )
5 商店街、繁華街などの混み具合をみて21.2 ( 23.7 )
6 その他6.6 ( 6.3 )

ということで、まあお約束のような結果になっておりますが、メディアの報道は大事ですので、あまりアホウな報道は勘弁していただきたく存じます。


・しかしこれは如何なものかと

Q4. 1年後の景気は、今と比べてどうなると思いますか。

1 良くなる2.2 ( 3.6 )
2 変わらない36.9 ( 48.5 )
3 悪くなる60.5 ( 47.3 )

この3か月で先行き悪化見通しが一気に増えましたな。実際問題としてハードデータそこまで悪化してるのかというと少々疑問はあるのですが、世の中の気分というのはオソロシスでございますので注意したいものであります。で、その如何なものかというのはこの次の質問に対する回答。

Q5. 景気の状況を考えたとき、現在の金利水準をどのようにお考えになりますか。
1 金利が低すぎる53.3 ( 55.7 )
2 適当な水準である28.8 ( 28.1 )
3 金利が高すぎる14.0 ( 11.6 )

えーっと、景気の状況が悪くてこれから悪くなると思うのでしたら金利水準が低すぎるという答えが過半数になるのはどういうことなのよと言いたくなります。これこそ「マスコミ報道を通じて」の弊害キタコレという所になるのでしょう。まあ元々の金利が低かったという流れからのバイアスが効いてるから低すぎるというのが多いのはある面仕方ない所もありますが、これだけ悪化見通しが増えているのに「金利が低すぎる」が全然減らないというのは、高校で政経(今の科目名何というのか知りませんが)ちゃんと勉強したんかいなと。


・これはこれは

Q10-1.Q9の支出のうち、あなたの世帯では、生活費や教育費などの日常的な支出をどうしていますか。

1 増やしている12.2 ( 11.6 )
2 変えていない48.0 ( 48.8 )
3 減らしている37.6 ( 37.8 )

景気が下がっているのに支出が増えている人と減っている人(ってアンケートだからリアルの増減はこれとは別なんでしょうけどね、脳内で節約してても何故か貯金が増えないのはよくある話でして^^)の構成比が変わっていないのは生活用品価格の上昇を反映してるのかなと思ってみたり。


Q10-2. それでは、趣味やレジャーなど選択的な支出をどうしていますか。
1 増やしている3.4 ( 4.0 )
2 変えていない32.4 ( 32.8 )
3 減らしている62.7 ( 62.3 )

(;∀;)イイハナシダナーっていやまあ良い話じゃないんですけどね。そりゃまあ日銀短観で「飲食店・宿泊」のDIが▲3→▲11と悪化するわなという事で。


Q11. 今後1年間、あなたの世帯では支出をどうされますか。
1 増やす3.8 ( 4.1 )
2 変えない36.2 ( 37.6 )
3 減らす58.7 ( 57.3 )

支出を減らすですかそうですか。


・で、物価なのですが

Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と   思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値:+10.2 ( +7.6 )
中央値:+10.0 ( +5.0 )

Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と   思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値:+9.0 ( +7.6 )
中央値:+7.0 ( +5.0 )

中央値と平均値の定義はアンケートの本文(19ページにあります)をご覧いただくと致しまして10%とは大きくきましたなこりゃという感じでございます。どさくさに紛れていろんなものが余計に値上げされている印象は近所のスーパーを御用達にしている(汗)あたくしでも思う所でございますので、こんな数字が出てくるのかなとかとか。とはいえ、何という上昇バイアスという感じですけど。そんなにポンポン物の値段上げられるかいなと。

と申しますのは、さっきございました支出を今後どうするという質問に対する答えなんですけど、支出を減らすって答え(単に節約しますって言ってるだけのような気がしますが^^)が多いという状況があるわけで、この予想を全部真に受けますと、平均的な考えとしては、「物価が10%上昇してるのに支出減らす」という実質的に生活を1割以上切り下げをしますっていう壮絶な節約大会になるのでございまして、物価上昇すると選択的な支出に皺寄せが行くのか、高額品が売れなくなって中国産また大ヒットとなるのか、まあそんな感じになるって事でしょう。

とか考えますと、冷静に考えればこのアンケート調査の回答者も全体の回答の整合性まで考えて回答している訳でもない(というかそんなの一々考えて回答する人はよーおらんでしょうが、笑)のでして、回答の一部を切りとって大々的に報道するのも如何なものかという話になるような気が致します。


というわけで、生活者意識アンケートですが、要するにマインドがだいぶ宜しくないというのは極めてよく判る内容でございました。


○これは必見

またも人のふんどしなんですけど、SWFの件に関して厭債害債さんが論点の一つ一つを丁寧に撃破したエントリーをアップされています。全くおっしゃるとおりでございますし、コメント欄の中の人が指摘するように、最近の日経の論調がどうみてもSWF推進になっている(金曜にご紹介したように、朝日と読売はまだ懐疑的な部分があるようですけれども毎日は容認寄りですわな)のがどうもオソロシスですよね。

こんな馬鹿構想普通に考えて自民党がまともだったら途中でストップがかかるはずだと思うのですが、この構想推進してるのが何せ前金融担当大臣って所が頭痛のする所であります(この人現職にあったときにも「東京金融街構想」というどっかの不動産会社や外資金融に吹き込まれたとしか思えない馬鹿構想をぶち上げて市場の失笑を買っていましたが・・・)。現職大臣の「金融士構想」もそうですけど、金融担当大臣ってイロモノポストじゃないんですけど勘弁して下さい。

ということで、例の構想のどこがどうおかしいのかという厭債害債さんのエントリーは良く読むべしなのでありまする。ま、金融関係者じゃない人に読んでいただきたいと思うのでありますけどね。
http://ensaigaisai.at.webry.info/200807/article_3.html

全部同意なのですが、特にこのくだりは全く仰るとおりです。

『10兆円というのは半端な金額じゃないですよ。ここまでやろうとしているのだったら「だめだったら解散」はないでしょう。5年後はどうせ議員じゃないとか考えてませんか?無責任ですよ。』

『だめだったら今提案しているPTの人間が私財をなげうって弁償するんでしょう?少なくとも議員年金は返上でしょう?なんだか金持ちの坊ちゃんが外資系の運用会社の口車に乗せられて調子に乗っているだけと感じるのはワタクシだけ?』

あたくしは「商家のボンクラ跡取りが出入りの悪徳商人に騙されて身上潰す」という図を想像しました(^^)。で、別に身上潰すのがてめえの身上なら勝手に潰してろなのですが、潰す身上が人様(というか国民)の虎の子であるという所がもうフザケルナでありますが、運用で穴が開いたら推進されている議員様の私財全部と議員様の生命保険あたりで補填していただくという気合でもあるのでしたら是非推進していただきとう存じます。というかそのくらい大事なもんだと思うのに「10兆円くらいなら大した額でもない」と言わんばかりの話の進み方はあまりにも浅薄かつ無責任ですわな。








2008/07/04

お題「SWFネタからその関連ネタでも」

北禿先生がボログで雇用統計の予想以上の悪化懸念とか言ったもんだから雇用統計が下振れせずに済みました。次は落ち短でも投げが良策でもお願いします。

で、雇用統計とかECB理事会とかネタにしようと思ったら思いっきり普通の結果にも程がある内容だったもんで書く程のことなし。とりあえずトリシェ日和ったですなあっはっはというところですか。

○わざわざ別組織にする必要があるのですか

http://jp.reuters.com/article/forexNews/idJPJAPAN-32563020080703
日本版SWFの設立を提言、公的年金を10兆円規模で=自民検討チーム

『提言によると、公的年金を運用する日本版SWFは100%政府出資で設立。ポートフォリオは、国内債券67%で、残る33%を無制限。これはGPIFとほぼ同じ運用比率。目標利回りはGPIFと同等の3.2%近辺とした。投資期間5年間で、実績が出なければ解散する。』

ということのようですが、それなら別にGPIFの中で別部隊を作ってそこの部分だけ法手当てでもして運用の縛りを緩くするようにしたって同じ事じゃねえのかと思うのですが、わざわざ手間隙掛けて別の組織体を作る理由がさっぱりわからん。というか別部隊作らんでもどっかに委託すりゃ良いだけじゃねえの。

『自民党の検討チームは、人材の専門性などでGPIFの運用に問題があると指摘。大部分がパッシブ運用しかできない制約があるほか、世界の主要な年金基金はプロに運用を任せているとして、日本の公的年金についてもより高い運用実績を確保するため、プロに運用させる日本SWFの設立を提言した。』

そもそもこの部分の認識が無茶苦茶(詳しくは厭債害債さんのところに暫く前にございましたので^^)であって、またどうせ年金運用の委託をゲットしてウマーとか狙ってるどこぞのバカチン共の入れ知恵にそのまま乗ってるだけでしょと思いますが、そーゆー話がノンストップで進行しちゃう(誰か止めないのかよ)ところが困ったもんだというか政治の劣化というか。小選挙区比例代表ってのもう止めたらと思いますよ。

しかしロイターの記事見ててこりゃ何じゃと思ったのはこの部分。

『公的年金の利回り向上策をめぐっては、経済財政諮問会議のグローバル化改革専門調査会(会長:伊藤隆敏・東大大学院教授、経済財政諮問会議民間議員)が5月23日に報告書を発表した。GPIFに専門家を採用して、運用の効率化と収益の最大化を図るべきとする報告をまとめている。』

『諸外国の公的年金基金の過去5年間の平均収益率をみると、ノルウェー(積立金額36.2兆円)が6.9%、スウェーデン(同14.6兆円)が7.5%、カナダ(同12.9兆円)が10.4%。これに対して、約150兆円の積立金を運用する日本は3.5%にとどまっている。』

この5年間の金利水準も株価水準も全てスルーしたこの書きっぷりは思いっきり無意味だというのは金融関係者なら普通に判る話でありますが、何とこの記述は専門家向けの情報ベンダーで配信されている記事にも同じように書かれてましたんですよ。どう見ても無茶苦茶なお話を記事で堂々記載するという神経は如何なものかとしか申し上げようが無いのでして、こんなの業務中に(ちなみに情報ベンダーで配信されたのは昼頃)見せられたら強烈に脱力するんで勘弁して下さい。というかそういう記事を流すから契約(以下悪態が禿しくなるので自主規制^^)。あ、何とか調査会の報告書に書いてあったのをそのまま報道したという言い訳は言い訳になりませんよロイターさん。


○年金運用が赤字ですねえというニュースの報道っぷり

今朝の一般紙では昨年度の年金運用は食らっちゃいましたねというお話が各紙にあったようです。で、新聞じゃなくてネット版で見るのが誠に恐縮ですが、各紙の比較をしてみましょう(ただし一部の全国紙のみです)。

・YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080703-OYT1T00915.htm?from=top
年金運用が5兆円の赤字、サブプライム直撃で…07年度

『積立金の運用主体は「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」。厚生労働相から委託を受け、厚生年金と国民年金を合わせた積立金約150兆円のうち、現在約90兆円を市場で運用している。運用方法は、約6割が国内債券、約3割が国内・外国株式だ。』

『07年度は、第1四半期(4〜6月)こそ2兆3752億円の黒字だったが、サブプライムローン問題が表面化して以降、第2、第3四半期でそれぞれ1兆6328億円、1兆5348億円の赤字となり、第4四半期でさらに赤字幅が拡大した。

『運用益の一部は年金給付に回るが、06年度末の累積黒字から今回の赤字を引いても7兆円程度の黒字があるため、GPIF関係者は「今のところ、年金財政全体に大きな影響は与えない」としている。GPIFはこの実績を4日に公表する。』

『積立金の運用をめぐってはこれまで、年金給付に回す額を増やそうと、より高い利回りと運用益確保を目指す声が相次いでいた。株式での運用割合の引き上げや、GPIFの組織体制見直しによる運用能力の強化などが代表的な意見だ。』

『しかし今回、株式市場の低迷を受けた巨額の赤字が明らかになったことで、リスクの高い株式の比重を増やすことへの慎重論と、組織強化を求める積極論の双方が強まることが予想される。』

ということで(最初のほうの引用割愛してますが)、まあ過去の累積収益の話もしてますし、どういう運用してるかという話をしてるのでこんなもんかなという感じです。で、SWFどうのこうのに関する話については上記の通りでありまして、『しかし今回、株式市場の低迷を受けた巨額の赤字が明らかになったことで、リスクの高い株式の比重を増やすことへの慎重論と、組織強化を求める積極論の双方が強まることが予想される。』というのはそうですねえという所です。


・asahi.com(朝日新聞)
http://www.asahi.com/business/update/0703/TKY200807030497.html

SWF関連のところはこんな記述に。

『公的年金の運用を巡っては、経済財政諮問会議の民間議員や自民党のプロジェクトチームが、民間の投資専門家を登用してより高い収益を目指すことを提案している。だが、運用成績の悪化を受け「より安全度の高い運用を」という慎重論も出てきそうだ。 』

ふむふむなるほど。で、運用状況に関する説明は中々結構。

『積立金は01年度から本格的な市場運用が始まり、07年度は積立金約150兆円のうち91.3兆円を運用した。リスクを下げるために分散投資しており、内訳は国内債券56.9兆円、国内株式13.8兆円、外国債券9.7兆円、外国株式10.9兆円。株式市場でも市場平均並みの収益を目指す堅実な運用を基本とする。』

『07年度の市場の動きを示す基準指標(ベンチマーク)は、日本の株式市場は約3割のマイナスで、外国株式も円高の影響もあってマイナス17%だった。国内債券は3.4%のプラスだったが、同法人は「02年度のITバブル崩壊時に匹敵する国内・外国株式の大幅なマイナスを補いきれなかった」としている。マイナス6.4%の運用利回りは、02年度のマイナス8.46%に次ぐ低さだ。』

ちゃんとベンチマークの騰落について説明している(何となくGPIFの説明をそのまま口伝しているような香りもしますが^^)のは報道としてのバランスが取れていると思います。

『同法人によれば、運用資産に占める株式の比率が公的年金よりも高い民間の企業年金の07年度運用実績はマイナス9.7%、大手生保各社の団体年金も13〜16%のマイナスとなっている。一方で、積立金運用の累積収益は7.4兆円とプラスを維持。年金財政に大きな影響を与える運用利回りと賃金上昇率の差(実質運用利回り)も、01年度以降の平均では2.66%と目標の1.1%を上回っており、同法人は「当面の年金財政への影響は限定的」としている。だが、運用環境の悪化が長期間続けば、将来の年金の給付水準低下につながる可能性もある。』

何か益々GPIFの説明の口伝っぽいですけど(笑)、まあ徒に不安を煽るような記事になっていないのは結構じゃないでしょうか。


・毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/today/news/20080704k0000m010148000c.html

この説明は酷い。

『年金積立金の運用は厚生労働省の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が手がけているが、自民党内には政府系ファンドを創設し、年金資金10兆円を高利回りで運用させる提言もある。GPIFの赤字運用が続けばそうした構想が具体化する可能性もある。』

読売、朝日の説明と思いっきり真逆なのですが、そもそもこの記事書いてる記者さん「高利回りで運用させる提言」っていう「高利回り」の意味が判ってないでしょと思うんですが。

で、どのような市場環境のもとで運用の結果どのように赤字になったのかという説明はろくすっぽなくて、辛うじてましなのは最後に『これまでの単年度の市場運用損は、02年度の2兆6000億円が最大。ただ、06年度末時点の累積収支は約13兆円のプラスとなっており、07年度末の累積収支は7兆円台の黒字を維持している。』となっている部分くらいですかねえと言う感じ。

・NIKKEI NET(日経新聞)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/

・・・・どうもネット記事の更新が遅いようで、朝6時の時点では載ってませんでした。


ということで、日経はおいとくとして(本当はSWF推進の片棒を担いでいる香りが非常に漂う日経の記事も見たいのですが)他の3紙を見ますと、記事内容的には朝日>読売>>>>>毎日と言ったあたくし的な評価になりますけどどうでしょうか。



○人のふんどしコーナー:専門家は転職するなということですね!

いつものように厭債害債さんのところから。
http://ensaigaisai.at.webry.info/200807/article_2.html

『処分理由のひとつにあげられている「採用後間もない職員に対する情報の中枢部門への配属」という点が問題となるのであれば、専門家の中途採用などありえない、ということになる。本当にそれでいいのか?たとえばクレジットの専門家を中途採用しても即座に審査部門やM&Aに配属してはいけないということか?では誰がそういう案件を担当するのか?』

えええええ!そりゃ困りますなあとか思ってエントリーの中にある処分内容のリンクを見たんですが。
http://www.fsa.go.jp/news/20/syouken/20080703-4.html
えーっと・・・・

@社内の情報管理態勢に全く問題がなかったとは言えないこと

・職員の職業倫理に関する研修の実効性等の問題
・コードネームの使用の不徹底、ホワイトボードの記載方法の不統一
・採用後間もない職員に対する情報の中枢部門への配属

(機種依存文字を使用してますが原文ママなので勘弁してね)

ということですので、害債さんご指摘のように、そんな部門に外部採用の人をいきなり登用したら駄目だって事ですね!トレーディングのフロント業務とか運用のファンドマネージャーとか持っての他ですよね!

というか部長だの執行役員だのって情報の中枢部門になると思うのですが、そういう所にも採用後間もなく配属しちゃいけないということですね!


○イールドカーブがリスクリバーサルみたいになっている件について

というのを書こうと思ったら時間切れになったので割愛なのですが、昨日の引値表を見ておりますと、10年265回(2014年12月償還)から10年276回(2015年12月償還)まで1.38%近傍でレートが並んでいるんですけど、これってどんなイールドカーブだよという感じでございますな。いやはや何ともワケワカランのですが、考察に関してはまた今度。








2008/07/03

お題「チョー相場雑感です」

原油高オソロシス・・・・・・

○先月の輪番

6月末現在の日銀保有銘柄別残高が公表されました。
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0806.htm
5月末はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0805.htm

でまあざっくり計算した訳ですが(あたくしが適当にエクセルと電卓で計算したものなので本人はちゃんと計算している積もりですけど内容無保証でお願いします)、6月に増加した銘柄(減少した銘柄があるけど、これは買入消却に応じた分でしょう)の増分を全部たすと1兆500億円ちょっととかになりますので、残りの1400億円程度は輪番で買入した途端に償還になったのですね。

とは言いましても、買った銘柄殆ど全部期近債というワンダホーな状態からはマシになって良かったですね(棒読み)というところでございましょうか。でもまあ短いものばかり入るのは相変わらずでありまして、残存2年超(2009年6月償還以降)銘柄が入っているのが5年57回以降と10年230回以降でして、まともな(?)長期ゾーンで言えば10年263回(2014年9月償還)以降の1817億円で、さっきの230回と5年債を合わせて2375億円と相成ります。輪番1回分(にもならんが)という感じですな。

・・・・・まあ結局2年ゾーン以下が入っていますねという状況でございますのであんまり状況が改善されてるとも思えないのでありますが、利回り競争入札やってるとどうも仕方ない部分でございますし、もう一つはあたくしのイメージになっちゃいますが、2年以下というのは2年中期国債というものがございますので、後ろのゾーンに比べて国債の残存量が多いので外したい人も多くなるという所でありまして、「長期に安定した資金供給を行う」という輪番オペの趣旨と現状が必ずしも合致してませんなあと思うのは相変わらずなのですな。

せめて1年以内に関しては短国買入に包含して(短国買入で買った分は償還乗換を行わなくても良いと思われ)、その分機動的にオペ実施するようにした方が吉なのではないかと存じますです。


○SCレポが微妙に変ですなあという話とか

以下尚も超相場雑談。

いやまあ知り合いさんと電話とかでうだうだ話しながら「どうもこう色々と相場が変ですねえ」というネタに花が咲くのでありますが、話をすればするほど現在の相場が複雑骨折みたいな状態になっていて、まあアッチャコッチャ変なのですが、さてどこに原因があるのかよと思うとこれまた複雑な話ですねえというネタなのです。

ということを色々とお喋りしながら考えたものをメモにしているのが以下の部分でありますので、正直とりとめがないのは勘弁。

SCレポが各年限カレント中心に突如急低下(=需給が締まる)したり戻ったりという現象が頻発するそうで。いやまあ以前は無かったかと言えば無いわけでは無いのですが、2年269回(前月の新発2年)なんかは先日アホほどSCレポが逼迫してマイナス10%だか何だかお付けになられる事態もあったようですわな。大フェイルになった日もあるそうでレポ担当者の皆様に置かれましてはご愁傷様ですとしか申し上げようがございませんが。

10年カレントでも暫く前にとんでも無いマイナスレートが発生してましたけど、10年だとまあBPVもありますし相場自体も動きますから、対顧でマーケットメークしてて食らったとしても取り返すチャンスあると思うのですが、2年でそんなの食らったらどう見ても再起不能です本当にカムサハムニダという所で誠に痛惜の念に耐えません。

というかスクイーズとかしてマーケットの流動性を落とすと結局てめえの首を絞めるんだからくだらねえ玉締めとかするんじゃねえよバカチンがと思う次第で、唯一神マタヨシによって地獄の火の中に投げ込まれるべきものであると存じますがまあそれは兎も角。

そんな感じで急にSCレポが締まったり緩んだりとかとなり(特にカレントには補完供給も流動性供給入札も無いし)、うっかりレポレートがマイナスに突入するといきなりアホほどレートが低下するわフェイルリスクは高まるわとなりますと、業者としては自衛策の一環としてやばそうな銘柄は当日フェイル食らった時の対策でSC放出を自主規制することになるので益々「急にレポが逼迫したので」になり易いとなるんでしょうね。

で、GCはGCでこれまた「急に資金繰りが変わったので」ってな感じでいきなりレートがドカンと動いたりしやがる(6月末も結局レギュラーとかスポットで72だの73だのやらかしてたみたいですし)訳でして、そうなりますと現物の対顧マーケットメーカーが両建てポジション持っているときのポジション保有で思わぬコスト(GCSCスプレッドですが)がかかるリスクがあり、よーポジション持ちませんなあという話に繋がり易い話に。

ちょっと前までのJGB現物の対顧売買なんぞはいろんな銘柄でロングショートをたくさん持ってて、飛んでくる売買を自分のポジション具合を見ながら、例えばポジションの利食いになるような売買が顧客から飛んできたら良いレートを出して売買を決める(業者間で利食いするよりも顧客売買で利食いした方がこっちも顧客もハッピーでしょ)とかやりながら走っていたと思うのですが、両建て持ってるとコスト掛かるってんじゃあそうも行かんですな。

勿論オファービットが開いているのはそれ以外の要因もたくさんあってどこをどうほぐすと問題が解決するかって話になるとよく判らんのでありますけど、こういうところにも市場がシュリンクしている原因(このあたり鶏が先なのか卵が先なのか微妙なのですけど)があるのかなあとか思うのでありました。

SCレポレートがちょっとした動き一発で乱高下しなくなる為には、投資家がもっとホイホイSCレポを出せばよい話なのですが、事務上の問題だの制度上の問題などあって実質的に出せない人は相変わらず多いですし、そもそもSCレポレートをヲチしてタイミングよく玉を放出するなどというような気の利いた動きをする人はまあ皆無に近いでしょうし(それにバイサイドがレポ取引をするというとだいたいGCの資金運用ですわな)、レポレートがマイナスだからと言われてもオーバーナイトで10億出すの事務マンドクセとか言って出さない(小さい10億でも積み上げれば大きい収益になるというような発想にはならんのよね。入った10億円の処理に困るというのもあるけど)とか、まあ実務上の障害は多いのですよ。

それから、まあそれ以前の問題として事実上フェイル罷りならんという仕切りになっていたり、制度設計がフェイルだのSCレポ(現金担保の貸し債)を想定してない古い時代のまま変わってない所があるとか、まあそんなフェイルだのSCレポだのに関する制度上の問題は相変わらずなんでして、まあ困ったもんですなあという所で。あ、あたくしは無力参加者なので「困ったもんですなあじゃなくてお前が動けよ」というツッコミは無しの方向でよろしくお願い申し上げますm(__)m

と、ここまで書いたら時間が無くなったので、他にもこの手で別のお題があったのですがまた後日。読んでて何の話だか良く判らんがなというお方が多いと存じますが、とりあえず書いた備忘録ということでご勘弁頂きたくm(__)m







2008/07/02

お題「さて短観でしたが」

家庭のCO2削減義務付けるくらいエコロジーに熱心ならオリンピック招致で浪費されるCO2を全面的に削減した方がよろしいのではないでしょうか>どっかの知事様

#ま、その前に新銀行(以下悪態)

などという悪態は兎も角日銀短観。

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka0806.pdf

○相場は妙に下がって反応しやがりました

大企業製造業のDI+5ってのは元々のコンセンサスとそんなに違わなかったのですが、直前になってコンセンサスが段々下がって来まして、マイナス予想を出す人とかまでいましたし、相場の流れが6月16日の週から行き過ぎた分も含めて金利低下基調でやってきた事もありましたので、ちょいと肩透かしで金利上昇の巻。ユーロ圏のインフレネタでECBの利上げ一発で済まないかもというネタが浮上したのもタイミング的には金利低下モードに水を差すのに使えたネタかも知れませんですなあという感じでして。

まあ特に金融機関の中の人たちはここもと景気の悪い話に囲まれておりましたので(汗)、どっちかと言えば景気が悪いという話になるとちょっとメタメタに悪いんじゃねえのという連想になりやすいのもありまして、景気に目が行くという話になった時にはどうも悪いですねって事になりやすいのが最近の仕様でもございまする。

すげえ悪いとか思ってたらそんなでも無かったという程度で別に良い数字ではないのですけどね。


○まずは例によって前回見通しの達成度合いを見ますと

            (3月時点)      (6月時点)
           現状→6月予測   現状→9月予測
製造業大企業   +11→+7    +5→+4
製造業中堅企業  +5→▲1     ▲2→▲5
製造業中小企業  ▲6→▲9    ▲10→▲15

非製造業大企業  +12→+13    +10→+8
非製造業中堅企業 ▲3→▲6      ▲5→▲10
非製造業中小企業 ▲15→▲21    ▲20→▲27

こうやって並べてみるとやっぱダメじゃんという感じですわな。事前に悪いのを期待しすぎたから「予想比上振れ」って話になっていますけど、まあ3月時点での想定よりも若干悪化しています(非製造業の中堅中小を除く)し、そもそも3月時点よりもベクトルは下を向いてますしという状況で、別に良い話ではない。

それとですね、この「前回予測DIの達成度合い」なんですけど、半年前の12月短観では9月予測を達成してまして、3月になってから達成度合いがどう見ても未達です本当にありがとうございましたとなったんですな。でまあ今回は3月の想定より悪化してますけど、これまた前回と同じ理屈になりますが、原材料価格上昇だの何だのと言う中でこの程度で済んでいるというのかどうかですよね。


○雇用判断DIが悪化方向に

これは気になったんですが。

            (3月時点)      (6月時点)
           現状→6月予測   現状→9月予測
製造業大企業   ▲7→▲7       ▲5→▲5
製造業中堅企業  ▲7→▲8     ▲3→▲5
製造業中小企業  ▲3→▲3     +3→0

非製造業大企業  ▲18→▲19    ▲14→▲17
非製造業中堅企業 ▲14→▲17    ▲8→▲13
非製造業中小企業 ▲9→▲9     ▲6→▲6

こちらの数字は「過剰」−「不足」の数値になりますので、マイナスがでかいほど人手不足ということですが、今回は全体的に不足感が減少。12月調査までは毎度毎度不足感が拡大すると言う実に威勢の良いDIだったのですが、3月調査で不足感拡大が一服して横ばいになったところでしたので、今回横ばいから下向きトレンドになったのかどうかについては次の調査を益々注目したくなってきました。


○証券業の業況判断

こればかりは毎度笑いながら見ておりますが、ちょっと長期(?)時系列で今回は見てみましょう。去年の6月調査から並べると・・・・

        現状→次回予測
(6月時点) +34→+52
(9月時点) ▲30→+23
(12月時点)▲26→+4
(3月時点) ▲55→▲15
(6月時点) ▲45→0

毎度毎度先行き楽観予想を出して全てにおいて達成しないという極めて香ばしい業況判断なのですが、今回は前回対比好転して良かったですねえ(棒読み)といったところかと。


○その他

本職の人が注目する設備投資に関してはちゃんと時系列を追っていませんのでパス。シロートが見てもすぐわかる「想定為替レート」でありますが、3月の109円21銭から今回は102円74銭になっていまして、年度が替わって想定為替レートも一気に厳しくしてきましたですねという所です。逆に言えばそういう環境下でもDIプラスなんで一気腰折れっていう流れでも無いんでしょうかね、と思いたいところでございまする。

あと、これまた真面目に見てるわけではないのですが、業況判断の業種別を見てましたら、前回対比業況判断DIがだいたい悪化する中で、大企業製造業においては「木材・木製品」「非鉄金属」「食料品」「金属製品」「精密機械」が前回対比好転してまして、金属製品とか精密機械は良く判らんのですが、木材・木製品とか非鉄金属とか食料品とかは価格転嫁が進んできて一息ついたのかなあとかこれまたシロート感想ですが思ったのでありました。一方で絶賛悪化した(15以上悪化)のが「鉄鋼」「造船・重機等」「自動車」というのはまあそうなんでしょうねというところで。


ということで何気に本業も多忙なもんで今日は短観ヲチで勘弁して下さいませなのであります。手抜きでどうもすいませんm(__)m

なお、読み物は本石町日記さんとこの一万田総裁シリーズで是非。昔の国会論戦は何とちゃんとしていたことなのでしょうと思うのですけれども。今の論戦読んでても絶望しか沸いてこないのですよね。











2008/07/01

お題「短観前ですがやはり雑談小ネタでして」

値上げ値上げというお話が多いですなあ。

○何でこのタイミングで格上げ??

昨日市場参加者の間に「?」が百個くらい飛び交ったのはMoody’s様の日本国債格上げ。
http://www.moodys.co.jp/pages/HomePage.aspx

プレスリリース読もうと思ったら会員登録(無料ではありますが)が必要とか抜かしやがるので読んでおりませんが、財政再建という面で言えば税収は落ち込みそうだわ、ポピュリズム政治の進展に伴い歳出拡大圧力は高まるわという状況にしか見えないのですが、何がどういう理由でこのタイミングで格上げになるのでしょうかねえ。格付け会社様のロジックが1ミリも理解できませんです。

まあとりあえずA1とかいうふざけた格付けからAa3になったようですが、まーこのニュース聞いた時にあたくし最初思ったのは、「証券化商品関連で格付け会社に批判が高まり、規制論議も高まっているので日本政府のご機嫌をとっておこうと言うオトナの判断が働いたんですねえ」なのですが、性格に問題がありますかねえあたくし(^^)。



○ところでドル安とインフレ阻止は

6月4日にバーナンキ先生がドル高発言をして一連の発言からドル高になったり利上げ懸念が出たりのはご案内の通りでございますが(例えば次のリンクなんぞを)、(http://www.gci-klug.jp/fxreport/2008/06/04/002950.php)昨日はロンドン時間にドル円で105円を瞬間割り込みやがりまして、いやあのバーナンキ先生の為替コメント前の水準に接近しましたなあとか思った次第であります。今朝はNYで106円前半まで戻っているので、ドル円的には面目保ってますけど、ユーロドルは1.5750近辺みたいですし、原油価格はご案内の通りの有様(6月頭は120ドル台)となっておられます。

いやまあ何なんですけどね、財務長官がドル高ドル高言うのは夏になると蝉がミンミン言うようなもんでどうでも良いのでありますが、中央銀行総裁様が為替に対して言及するというのは(どこぞに速水優という人がいましたがアレは例外)ちょっとイレギュラーなお話でありまして、「そこまで言うならドル高維持とインフレ抑制の為に景気の悪化も辞さずで利上げしてくるんじゃねえか」くらいのリスクを見に行くのは当然なのでありまして、まあFF先物で年内2回利上げとかを織り込みに行く勢いになった次第な訳ですな。

ところがその薬が効きすぎたという事でリークっぽい書かせ記事が出たり火消し発言が出たりという動きになってしまいまして、今日に至るという流れ。いやまあドル高発言が効き過ぎたってのが正直な所なのかもしれませんけれども、結局火消しして為替水準が元に戻っているのであれば発言なんぞしなかった方が良かったという感もするのでありまして。

バーナンキ先生就任直後もちょっとやらかしてましたけど、こーゆーのやると発言が軽くなっちゃうんですよね。特に今回は為替にわざわざ言及したのにいつの間にかそれがフェイドアウトってのはどうなのよと思うんですけど・・・・・


○これまた虫干しネタ

5月のネタで恐縮ですが。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev08j02.htm

本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev08j02.pdf

ヘッジファンドのレバレッジに関する考察なので欧米のデータに基づくお話なのですけれども、まあここの部分はヘッジファンドだけではない話かなあとか。金融機関が証券化商品(シニア部分ですけど)に投資するのも実はある種のレバレッジだったんじゃないのかねえとか結果論の後知恵としては思うのですけれども。

『近年、ヘッジファンドは、機関投資家からの資金の流入によって運用すべき資金が膨らむ一方、クレジット・スプレッドの縮小、市場ボラティリティの低下等に伴って、裁定取引等により超過収益(いわゆる「α」)を稼得する機会が減少する事態に直面していた。このため、ヘッジファンドの間では、広い意味での「レバレッジ」を拡大することでパフォーマンスの維持・向上を図る動きがあったものとみられる。また、投資家としても、レバレッジに関する規制の厳しい金融機関から、運用戦略に関する自由度の高いヘッジファンド等に資金をシフトすることで、レバレッジ拡大による運用収益の底上げを図っていた側面もあったと考えられる。』

ということで、そのレバレッジ動向を『借入れ・信用取引を通じたレバレッジの動向』、『証券化市場等におけるレバレッジとヘッジファンド』という切り口でデータ分析をしております。データ分析自体は本文(全部で6ページで図表だらけなので斜め読みするだけならまあ早い)をご覧いただければと。

んでまあ分析部分を全部すっ飛ばしてまとめを見るのですが。

『ヘッジファンドは、近年、金融機関とのレポ取引等による資金調達を増加させていたほか、証券化商品を含むクレジット市場において相応のプレゼンスを有し、最終投資家がレバレッジ拡大を通じてリターン底上げを図るチャネルの一つとして機能していたとみられる。その結果、再証券化商品等を含めた広義のレバレッジ拡大プロセスにも寄与したと考えられる。』

『レバレッジの利用自体は資本効率を高める側面もあり、レバレッジの積み上がりを一概に不適切と断じることは出来ない。もっとも、レバレッジを利用して投資を行う主体(ヘッジファンド等)の資金調達が不安定な場合には、(1)運用資産の劣化、(2)与信を行う側の資本制約、(3)担保価格のボラティリティの上昇といった要因が複合的に作用することにより、大規模な「レバレッジの巻き戻し」が発生するリスクがあることを認識する必要がある。』(機種依存文字を(1)とかに改変しました)

まあ左様でございますな。で、リスク管理上の留意点という話になっておるのですけれども。

『最近の市場の混乱の背景の一つとして、高水準のレバレッジとその巻き戻しがあったことを踏まえると、いずれの立場からも、ヘッジファンド等によるレバレッジの状況を適切にモニターする取り組みを続けることが重要と言える。特に、金融機関内でも、プライム・ブローカレッジ部門やヘッジファンド運営部門(子会社を含む)に、レバレッジの水準をコントロールする十分なインセンティブが与えられているかという点も含めて、適切なガバナンスを確保することが必要と考えられる。』

自分の傘下のところならそれはその通りなのですが、人様の所だと中々そういうわけにも参らず。と申しますか、その辺どこら辺まで理解して投資してるんだかっていう気は思いっきりするんですけど、サブプライムでの素敵な捕まりっぷりから致しますと。その辺りをきちんとモニタリングしだすと委託元のレバレッジ規制との絡みはどうなるのかとか、そっちの方も難しいお話になりますなあということで、一歩間違えると全部規制という金融庁スキームになり兼ねません諸刃の剣ですなあと。

図表とかデータがたくさんある(本文少なめ)なのであっさり読むことはできますのでどうぞ。