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2/25〜2/29の更新はお休みしました。
2008/02/22
お題「ふと気が付けば20年2.1%とか」
春の陽気になるのは結構なのですが、なるならなったでまた寒波とかいうのは全力で却下させて頂きたく存じます。
○スティープニングですかそうですか
昨日は前日昼の株価指数下げが一体全体なんだったのという上昇をしました(と思ったら今日は米国が下げて帰って来ましたのでまたまたアレでございますが)が、一方で債券は先物とか下落しまして一時137円割れ(年初来安値よん)とかやっておりました。こりゃまた下げやがってという所ですが、ふと気が付けば10年が1.5%近くまで来るし、20年は2.1%に乗せるし、5年も1%が見えてくるしという素敵な展開。
・・・・えーっと、長いところのこの位置って何せ先物が年初来安値とかですので昨年末の位置じゃねえのとか思いますと、これがまた大納会の水準になっているじゃああーりませんか。
12月29日 2月21日
30年27回 2.275% 2.345%
20年99回 2.030% 2.110%
10年289回 1.500% 1.485%
5年69回 1.005% 0.965%
2年264回 0.705% 0.595%
(昨日の数字は2年のみ265回)
で、平均株価は15300円とかあったんですよねえ(遠い目)。昨日の平均株価は13700円弱ですわな。うーん。
利下げへの思惑は(さすがに一時の2年金利が政策金利よりも低いという利下げ前夜のような状況からは冷静になりましたけれども)依然としてない訳ではないという状態。従いまして2年とかの短い所の金利が威勢良く下がっている状態なのですけれども、良く見りゃ長めの所は変らずだったり上昇だったりしてまして、少なくとも政策金利水準が向こう1年は据え置きでしょうもしかしたら利下げという状況かつ株価水準は全然下のままという有様で、長期金利がしらっと下がらん(どころか超長期上昇)している状況なんですよね。
うーむ、こういうのって普段あたくしどものような三下が、「株安を受けて金利が低下しました!」「利下げ期待で金利が低下しました!」などと相場を見ないエライ人に適当な後講釈をでっちあげじゃなかった詳しい相場解説をご進講申し上げる際に間違って気が付かれると説明に困りますわなあという所でございまする(^^)。
えーっと、無理矢理後講釈すると、米国の相次ぐ利下げで米国の政策金利は実質ゼロ金利あるいはマイナス金利状態になり、戻し減税等の財政出動による効果が出てくるということで、低金利引っ張って経済を吹かす攻撃ですからこれはイールドカーブが立つ方向(現に立ってますわな)に作用。で、主要国のイールドカーブがシンクロしやすい(んな訳はないのですが、何故かそういう事を言うと尤もらしいのと、大真面目に日米のカーブ形状を比較して云々とかでポジション取る勇者がいるので・・・・)とか、日本に関しても金利正常化路線は当面棚上げ状態なので、米国のような措置はないけど、基本的には低金利引っ張って景気を吹かす方向になっているでしょうということで、日本のカーブも立つんですよというお話をするっきゃないでしょうな。
これだと説明が長いので3行で説明しろと言われそう(笑)。
まーしかし良く立ちましたねえという所っすけど、次の執行部になって金融政策のスタンスがどうなるか見えない状況では米国のカーブに引っ張られるという根拠レスにも程がある展開になるんですかねえという感じで。
○Q&A集が出ましたが・・・・・
「金融商品取引法の疑問に答えます」の公表について
http://www.fsa.go.jp/policy/br/20080221.html
ということで、質疑応答集はこちら。
http://www.fsa.go.jp/policy/br/20080221.pdf
でまあ読んだんですけどね、例えば最初の質疑応答の所なんですけど・・・・・・(一部機種依存文字あります)
『<質問@>証券会社・金融機関は、高齢者に対してリスクの高い商品を販売・勧誘してはいけないこととなったと聞きますが、本当ですか。』
で、説明の最初にある適合性の原則の部分割愛しまして
『2.したがって、証券会社・金融機関が(顧客の知識や経験等に関係なく)
・一律に高齢者にはリスクの高い商品を販売しない
・一律に高齢者には一度目の訪問では販売しない
・一律に高齢者には親族の同席がなければ販売しない
などの対応をとることは、必ずしも制度の趣旨に合いません。』
『3.いずれにせよ、それぞれの顧客の状況に応じた、きめ細かで柔軟な販売・勧誘が行われることが、利用者、証券会社・金融機関の両方にとって望ましいことと考えられます。』
・・・・・・・(-_-メ)
いやあのその顧客の状況をどうやって判断したから知識や経験があるという結論になるのかって言う部分って金融機関が自分達で判断しても検査で「その判断方法はおかしい」と言われてしまえばその時点で終了な訳ですので、それなら一律にストップしておけば問題ない(販売しないことによる機会損失と金融商品取引法違反で処分を食らう機会損失じゃあ天秤にも載らないっす)という判断をしたくなっちゃいますわな。うーむ・・・・・とは言え、形式要件を明示した場合に却って形骸化する惧れもありますのでこれまた難しい話なのですけど・・・・・・・
まー今後の運用で段々とこなれていくしかないとは思うのですけれども、ちょうどまあ建築基準法改正と同じような時期にぶつかって間が悪かったですなあとしか申し上げようがないです。
○その他少々
・新銀行東京(人のふんどしですが)
昨日ご紹介したvon_yosukeyanさんのスラド日記ですけど、昨年度の決算に関して解説したエントリーのご紹介をうっかりしておりましたので追加いたしますです。
http://slashdot.jp/~von_yosukeyan/journal/405024
>ここまで巨額な損失を生んだ要因は、言うまでもないが間違った融資審査方法による資産(貸し出し)を急ぎすぎた点だ。融資先企業の財務状態をスコアリングモデルで倒産確率を算出して融資を行う新銀行の与信システムが全く機能していなかったにも関わらず、丸2年間全く見直しを行わすに、ただ漫然と不良債権が積み上がるのを看過していたのは、もはや犯罪と言っても差し支えの無い官僚的怠慢である。(上記URLより引用)
いやあそういえばスコアリングモデルで事業向け無担保ローンって一時すんげえ流行しましたよねえ。あれを忠実に実行したらこの有様でございまして、何と申しますか現場的発想の斜め上から理屈だけは綺麗に纏まっているプランを実行するとこうなるっちゅうことの見本みたいなもんですわな。でもその見本に税金が・・・・・
・良く判らんのだがまさか手ぶらじゃないですよね
ニュース(というかモーサテ)で見たのですが記事が見当たらないので脳内記憶ベースですが、金融担当大臣様および経済閣僚ご一行様が金融業界団体に対して3月決算期末向けに中小企業への資金繰り対策ということで円滑な融資をという要望をしたそうで。
いやまあ別にそれはそれでよいのですけれども、それを手ぶら(政府は何もしないという意味)でご要望っていうのは只の金融業界に対する圧力というか民業介入にも程があるのですが、その辺どうなってるのでしょうかねえという気がしたのでメモメモ。
・ところでお知らせ
諸般の事情によりまして来週は駄文の更新をサボらさせて頂きとう存じますです。たぶん3月になってから今日の総裁講演とか来週の水野審議委員の講演(挨拶)とか日銀新執行部人事(幾らなんでも来週には原案でるでしょ)とかを追いつかせる所存でございますので材料だらけなのにサボるの勿体無いのですが・・・・・・・・
2008/02/21
お題「1月会合議事要旨/その他いくつか」
まずは1月の決定会合議事要旨。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g080122.pdf
○株価がドカンと下げていることに関して
決定会合やっている時はまさしく一番下げやがっていた時でございまして(話は全然違いますが、このときの緊急利下げを米国祝日明けじゃなくてその前にやって置けよとか、昨年末の追加資金供給だってFF下げの翌日にやるなよなとか、FRBの施策が微妙に変なテンポなのは何なんでしょと思うのですけど)、さてそれに関してどんなお話になるのかなという所を拝見。
『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』以降で政策委員会での討議がどうなったのよというのが出ています。
『ただし、委員は、国際金融市場はなお不安定な状態が続いているほか、原油をはじめとする国際商品市況の高騰や米国の下振れリスクが高まっているなど世界経済の不確実性が増していることから、国際金融市場や世界経済の動向を引き続き注視する必要があるとの見方で一致した。』
引き続き注視ですかそうですか。
『また、多くの委員は、株式市場では、米欧金融機関の追加損失懸念や米国の弱めの経済指標を受けて、年末以降、世界的に大幅な下落が続いていると述べた。更に、何人かの委員は、モノライン保証会社の格下げによって、その保証債券の信用力が低下し、金融機関収益、株価などに影響する可能性があると指摘した。』
『多くの委員は、市場は米欧金融機関の追加損失に対する警戒感を緩めておらず、金融機関の資本政策の帰趨が注目されるとの見解を示した。こうした議論を経て、委員は、国際金融市場全体としては、不安定な状態が続いているとの認識で一致した。』
ということで現状認識及び先行きはまだまだ不透明という話でございますのは当然ちゃあ当然ですが、ではまあこれがどう影響するのかという議論でして、株価がどうのこうのという話が出ているのはこのあたりでございました。
・米国経済の家計部門について
『複数の委員は、ガソリン高や株価下落などもあって消費者マインドが低調であり、これが今後の消費に影響する可能性があると述べた。』
・日本経済の個人消費について
『大方の委員が、石油関連製品や食料品価格の上昇などから、消費者マインドが慎重化していることを指摘し、これが、株価下落による影響とともに消費支出に与える影響を注意深くみていく必要があると述べた。』
同じ話でございますが、個人消費のマインド悪化に影響するというお話ですな。で、まあ他の部分ではその話が出てこない次第でして、かつてのように株価下落が信用不安の非金融部門への波及を招き、金融面がタイトになるという話にはなっておりませんようで。特に日本の場合ですけど・・・・
『わが国の金融面について、委員は、引き続き緩和的な金融環境が維持されているとの認識を共有した。複数の委員は、国際金融市場の不安定性の国内金融環境への影響は、引き続き限定的だと述べた。ある委員は、C
P ・社債市場では、下位格付先では発行スプレッドがやや拡大しているが、全体としては緩和的な状態にあると述べた。また、その委員は、金融機関の貸出態度も、引き続き緩和的な状態が続いていると述べた。』
米国の場合は必ずしもそうは行かないようで。
『金融面について、何人かの委員は、金融機関の与信姿勢がタイト化している点に触れ、これが実体経済に影響する可能性に注意する必要があると述べた。』
ふむふむ。結局のところこの辺がどうなるかなんでしょうかね。
○国内物価上昇をどう位置づけるかの話リターンズ
『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』部分。
『また、これに関連して、原油価格をはじめとする国際商品市況の高騰によって国内物価が上昇することを、政策運営上、どう位置付けるかについて、前回に引き続き議論が行われた。』
でまあ随分と色々な意見が出ているのでありますが。
『何人かの委員は、現在の世界的な物価上昇圧力の高まりは、供給ショックという面もあるが、新興国の成長という需要要因も働いていることから、これらがそれぞれどの程度寄与していると判断するかが重要だとの認識を示した。』
でもそのプラス側は貿易統計に出てくるんじゃないでしょうかという気もするんですけど。うむむ。
『この点について、一人の委員は、日本にとっては、交易条件悪化による所得流出と世界需要の拡大に伴う輸出増加という、プラスとマイナスの双方の要因があり、これらがどの程度、経済・物価の先行きに影響するか、を評価することがポイントとなると述べた。』
と思ったらそういう話になってました(汗)。
『一人の委員は、足もとの物価上昇は国際商品市況の高騰による部分と需給ギャップの需要超過が続いてきたことの影響が浸透し始めた部分との双方によるところがあると述べた。』
そうなんすか。
『このほか、ある委員は、足もとの物価上昇が、企業や家計のインフレ期待を高め、将来の物価見通しに影響するか、丹念に点検していくことが重要だとコメントした。』
これについては次に議論が出てまして・・・・・
『この点について、何人かの委員は、サーベイ調査では、民間経済主体のインフレ期待が変化しつつあるように窺え、こうした動きについて、今後十分注意を払っていくべきであると述べた。』
『一方、一人の委員は、サーベイ調査に示された家計の物価先行き見通しは、ごく足もとの物価の変化に強く左右されて高めとなっている可能性があるので、現時点では、インフレ期待を通じた物価上昇のリスクは大きくないのではないか、との見方を示した。』
あたくしは後者の「一人の委員」さんに賛成ですな。サーベイ調査だって生活商品の値上げ攻撃の前&税源移譲+定率減税廃止で住民税大幅増加攻撃の後くらいに確かいきなり下がりやがったと記憶しておりまして、いやまあ賃金でもちゃんと上昇しないと持続的なインフレ期待にはならんと思われるんすけど。
とまあそんな感じであっさりと。もうちょっと突っ込む点があれば続きは明日ですが、何せこのときって12月の月報を全然下げなかったこともあり、あんまり前回と大きく変わった話がでてないように見えますもんで。。。。。
以下その他の話。
○FB3か月入札
えー、昨日久しぶりにFB入札に関して能書きを垂れたらいきなり3か月FB入札の平均落札が0.56%台に上昇(それまで延々と0.55%台だったんですよね)しやがりまして、ふと見れば4月頭に償還がくるFBの引けが0.57%(前日が0.555%)とかになってやがります。これじゃあ四季報見て怪推奨銘柄を並べて全部撃墜するどこぞの禿先生じゃないですか(涙)。
何か妙に足元が重くなりましたが、何がどうしてそうなってるんだか。
○新銀行東京
昨日の東京新聞夕刊ですとこんな感じ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2008022002089088.html
えーっと、記事によりますとこのような寝言を仰せになっている人がいるようですが、寝言は寝てから仰せになられた方が吉かと存じます。
『記者会見した経営トップの津島隆一代表執行役は「経営悪化の背景に非常識な経営実態があった」と説明。その上で「旧経営陣の責任追及を法的なものも含めて進めていく」と旧経営陣の責任を明確化させる姿勢を強調した。さらに「再建が軌道に乗るまでは現経営体制を続ける」と述べた。』(上記URLより)
なるほどなるほど。全ては旧経営陣のせいですかそうですか。でも設立当初の仁司代表を招聘したのって皆様方ではございませんでしたでしょうかねえという感は致します次第で、こりゃまあ仁司さんも(そりゃまあ経営者としての責任はありますけど)法的な責任追及とかそこまで言われるかというか、都庁官僚と都知事の責任逃れにも程があるとしか申し上げようがございませんわな。
で、新銀行ウォッチャーと言えばvon_yosukeyanさんということで、昨年の1月と11月に新銀行東京に関するエントリーがございますのでご参考になるかと存じます次第。
http://slashdot.jp/~von_yosukeyan/journal/389849
http://slashdot.jp/~von_yosukeyan/journal/422183
厭債害債さんのエントリーもございます。下は新しいリストラ案に
関する話なのでこれまたなるほどと。
http://ensaigaisai.at.webry.info/200802/article_5.html
http://ensaigaisai.at.webry.info/200802/article_8.html
と、最後は人のふんどしなのでした(汗)。
2008/02/20
お題「総裁記者会見続きとか」
国内方面はまあ相変わらず材料ねえええええという感じでまったりと推移。店頭で売買が来るといきなりその方向に動くの巻って感じですのでアレでございましたが、さて今日は米債絶賛大下落の金価格上昇と来やがりましたので・・・・・
昨日は引用でやたら長くなっちゃいまして失礼しましたですが、総裁会見の続きから。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0802d.pdf
○物価が上がったから緩和効果が高まるかという話
『(問) 先ほどの物価に関する質問とも関係しますが、CPIが表面上0.8%と上昇する中で政策金利が同水準を続けているということは、緩和効果が強まっているという認識でよいのでしょうか。』
てな質問がございまして、福井総裁の答えはこうなってます。
『(答) 経済の実勢と金利水準の比較はなかなか難しく、現実の成長率、今ご指摘の現実の物価指数を一方に置き、一方で現在の0.5%という政策金利と比較してどうかということになりますと、CPIの前年比がゼロ近傍から0.8%に上がってきたということは、計算上、緩和効果はより強まっていると言えると思います。』
と、計算上の話をした後に次の話が。
『ただ、本来は期待インフレ率、企業の実質収益率との対比でみて金利水準はどうかということを計算しなくてはなりません。この点は、色々な前提を置かなければ計算できませんが、CPIの前年比がゼロ近傍にあった時点から0.8%まで上がってきた僅かここ数か月の間に、実質的な緩和度合いが、今ご指摘の計算方法ほどに急速に増しているとは言えないのではないでしょうか。』
ほほう。これはまた慎重なお話で。
『いずれにせよかなり緩和された状態が続いているということだけは明確に言えると思います。』
まあ最後に結局この話になるんですけど・・・・・うむむ。
まあ文脈的には「コストプッシュで物価が上昇する中で金利が一定だと緩和方向になるというのはちとまあ話に無理があるでしょう」と言ってるようには見えるので、これまたややトーンダウンですかいなという感じ。
○利上げの効果に関して
『(問) 前回の政策変更いわゆる利上げから約1年が経過しましたが、この1年間に金融市場、金融機関経営あるいは実体経済において、どのような政策効果というか利上げ効果があったと分析・評価されているのか、ご見解をお伺いします。』
『(答) 世界経済全体との緊密な連関のもとで日本経済が動いていますので、政策効果というものを抽出してみることは非常に難しいわけであります。世界経済全体は米国を中心に大きな調整の過程を経つつあり、そしてグローバルな金融資本市場でも――リスク再評価と言っていますが――大きな調整の過程を経つつあります。日本経済も、実体経済面あるいは金融面から、前もって想定した以上のリスク要因の高まりという大きな環境変化の中に置かれてきたと思います。』
『しかし、日本銀行の金融政策は、かなり先々まで読み取りながら、緩やかではあっても日本経済が持続的な成長軌道にしっかり乗り続けるように、そして物価安定の基礎を決して損なわないように意識し、できる限り持続的な成長を図りながら物価安定の基盤をより強固にしていくという方向性をしっかり見据えて量的緩和脱却後の金利の設定を行い続けています。金融政策決定会合はこのところ変更なしということが多いわけですが、変更なしということは、変更しないことが最適だという判断を毎回行ってきたわけです。』
・・・・・・何が何だかさっぱり判りません(><;
さっき(と言っても質問順ではこっちが先ですけど)現在の状況は緩和的という話をしてるので、水準に関する見方はあるようなのですけれども、効果の分析は他の要因もあるので難しいとはこれは何と言うか。いやまあ単純に割り切れる話ではないと言いたいのでしょうけれども。
と悪態つきましたけど、夏からの個人消費伸び悩みって税源移譲と定率減税廃止がマトモに効いているでしょうし、建築基準法の問題とか、そっちの政策効果をスルーして何でも日銀日銀というのもどうかとは思いますけどね。
で、途中の流動性のところを飛ばしまして。
『結果として、現在、多少経済は減速していますが──これには建築基準法改正という内部的なショックも一枚加わっていますが──、生産・所得・支出の好循環のメカニズムは基本的には損なわれることなく、先行きに上手くつなげていける可能性を十分残して、政策運営が行われているところです。これから一層の努力が必要だと思いますが、十分先行きにつながりのある金融政策運営ができているのではないかと思っております。』
何か任期終了を意識した発言でまあちょっと感慨もわくのですが、「可能性を十分残して」とか「十分先行きにつながりのある」というのがちょっとこれまたトーンダウンですなあという感じで。次の人にバトンタッチする時期も近くなってきたのであまり決め打ちをしない方が後任がやりやすかろうというのもあるでしょうけれども。
ということで、最後に来て思いっきりトーンダウンした総裁会見でございました。
○以下小ネタ世間話ですが
・今日も0.55%−0.56%ですかねえ
さて本日は3か月FBの入札。ここの所延々と0.55%と0.56%の間で推移している3か月FBでございますが、日本相互証券の引け利回りなんぞを拝見しますと、4月7日償還のFB492回から後ろの銘柄は延々と0.550%か0.555%の引けという大変に素敵なイールドカーブが形成されております(−−)。
という訳で、このカーブ状況ではネタなしにも程があるのですが、これが動くのは当分先の話になるんでしょうなあとしか申し上げようがございません。
・妙な反対理由を持ち出してきました!
「日銀は財務省の天下り総裁に反発しているに違いない!私たちが日銀を救うヒーローだ!」と勘違いしたのかどうか知りませんが、大々的に武藤副総裁の日銀総裁就任への反対論をぶち上げて引っ込みが付かなくなっているミンス党様におかれましては、とうとう「低金利政策jの弊害がどうのこうの」とか「日銀の国債買入が多すぎ」とか言い出したようですわな。あちこちで報道されていますので引用しませんが(と手抜き)。
いやはやとしか申し上げようが無いのですけれども、なるほど昨日引用した長期国債買入に関して妙に変な質問が出て、それに対してやたら実務的に丁寧な話をしていたのはそのせいだったんですねと思った次第でありまして、昨日の質問者に悪態ついたのは大変失礼致しましたすいませんすいませんm(__)m
もう見苦しいにも程があるので何とかして下さいお願いします。
・排出権取引ねえ
CO2の排出権が取引されるって話はどうもこうあたくし頭と根性が悪いせいか理解致しかねる次第でありまして、折角排出減らしてもそれを売って他の場所でその分CO2排出されたら結局のところCO2の総排出量が減らねえええええとか単純に思っちゃったり(多分それはあたくしの理解不足だと思うけど)、CO2の排出権取引が環境に寄与するという理屈ってそれ期末に予算消化の為に道路ほじくりかえすのとどこがどう違うのか良く判らんとか、ええあたくしの頭が固いせいなんですけどね。
とか何とか思っていたら、害債さんのエントリーにいつもの事ながら敬服するあたくしなのであります。
http://ensaigaisai.at.webry.info/200802/article_6.html
>こういった環境を金に変えるという最近の流れに接してワタクシの脳裏に浮かんだのは「免罪符」という言葉。
まさに「免罪符」・・・・・・
2008/02/19
お題「最後に来てやたら慎重姿勢になりましたなあ」
総裁会見は慎重さが目立ったんですが、そもそも論として市場の方は1月の絶賛株下げによって利下げ織り込みを思いっきり先走った事もありまして、福井総裁が慎重な発言をしても「ふ〜ん」ってなもんでございます。
どっちかと言いますと米国様の利下げ効果とか、何か国内株もさすがに一旦底を打った感じもする(とあたくしは思うわけだが。あーたトヨタ自動車なんて5000円割れから昨日は6200円とかですよ)のでありまして。
今回の総裁会見は質疑応答の応答の方がやたら長くて引用しにくいでありますよorz
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0802d.pdf
○中小企業が悪化している話
質疑の最初の方をちょっと飛ばしまして真ん中辺りから。
『最近のアンケート調査等を見ますと、中小企業の業況判断が少し後退し、収益の見通しが少し悪くなっているという状況にあることは、十分に認識しています。(理由に関する部分は皆さんご存知なので割愛)それにとどまらず、中小企業、中でも規模の小さな企業において、ボーナスの支払いなど賃金への企業所得の還元が従前の予想より弱めに出ているようです。これらは、家計部門の主体、すなわち消費者の心理に多少悪い影響を及ぼしていると受け止めています。』
中小企業の悪化が賃金に波及して消費に悪影響を与えるという話をきっちりとしておりますな。
『私どもは、マクロ経済の判断を行っていく場合の一番の軸は、生産・所得・支出の循環メカニズムであると言っておりますが、所得の部分、つまり生産が伸びた時に企業所得がどのように形成されるかという部分において、中小企業にプロフィット・スクイーズ(利潤圧縮)が起きていることに注目しています。』
『そこからさらに家計部門へ還元する過程において、中小企業の方が大企業に比べて鈍いということも認識しています。これらが消費者マインドに翳りをもたらす一つの要因となっているとすれば、生産・所得・支出の循環メカニズムにおける最終段階、つまり支出の段階にも影響が及んでいるとみられます。』
どう見てもメカニズム変調です。本当にありがとうございました。
『従って、生産・所得・支出の好循環メカニズムは基本的に維持されているが、足許ではそのメカニズムが若干弱まっていると認識しており、今後ショックをうまく吸収しながら再びリズム感をもう少し良くしていく方向に、うまく運営していかなくてはならないと認識しています。』
基本的に維持されているがと言いながらこの慎重姿勢。いやあの退任近くなって今更感はあるのですけど、まあ最後の最後までもう好循環ですよ金利調整ですよというよりはまだマシか。
○デカップリング論を否定
ポールソン財務長官のデカップリング否定発言に関して。
『ポールソン長官とは、世界経済について何回も議論しています。私は神話という言葉を聞いたわけではないのですが、ポールソン長官と共有している考え方は、グローバル化が進展していくもとでの世界経済あるいは各国の経済というのは、相互連関を強めながら大きな経済の原動力を作っていくということです。相互連関を強めながら、ということがポイントですから、各国で生じた現象は様々なルートを通じて、例えば輸出入などの取引や国際的な金融資本市場の動きなどを通じて、他国経済とお互いに影響を与え合いながら前進していくということです。よって、経済の完全なデカップリングということは、定義上あり得ないのではないかと思っています。』
んでまあ具体的にはどうなのかという話ですが。
『ただ、あくまでも程度問題として考えた場合、世界経済の成長を牽引する力を持つのは米国および先進諸国だけという状況から、エマージング諸国などを含むかたちに多極化していますので、米国経済の動向が世界経済全体に与える影響は相対的に小さくなりつつあるということは言えると思います。』
途中端折りまして、
『しかし一方で、サブプライム住宅ローン問題に端を発した国際金融資本市場の動揺が続く中で、米国における経済・金融の調整がわが国経済に全く無縁で済むかというと、そうではなく、株式市場などは非常に大きなマグニチュードで影響を受けていますし、それ以外の面でも当初の予想を上回る影響が出てきていることは否めないと思います。』
『従って、米国におけるダウンサイドリスクが顕現化すればするほど、他国への影響の心配が高まっていくと考えておいた方がいいと思います。貿易等を通じた直接的なショックの度合いはかつてに比べて少し薄まっていると思いますが、先行きをみていく上で、デカップリングを当然の前提とするのは少し甘い考え方ではないかと思います。』
ということで、こちらでも慎重姿勢でございます(^^)。何かこう強気発言に終始して日経平均2万円ですよと言ってたどこかの誰かさんが急に弱気発言するとか、どこぞの禿先生が落ち短発言するとか、まあそんなものを感じたのは単に強気なあたくしの勘違いですかそうですか(^^)。
○日本のインフレリスクは小さい
まあこの点は前から言ってますけど。
『日本においても、基本的な構図は同じですが、今は改正建築基準法の影響などもあって、一時的に日本の成長は、ぎりぎり潜在成長能力並みかあるいは少し下回るペースに落ちていますので、需給要因から物価を押し上げる力が欧米に比べると少し弱い状況にあります。(略)引き続き周辺諸国に対する競争力確保、あるいは向上ということを考えると、固定費抑制が一つの大きなルートになるため、最終価格への転嫁度合いを最小にしながら経済全体の仕組みが動き、その結果、インフレリスクは欧米に比べて小さく、インフレ期待が急激に誘発されるリスクも比較的低い状況にあると思います。』
『いずれにしても、ダウンサイドリスクに対しては、経済情勢判断上、比較的一方向に計算しやすいものです。一方、エネルギーコスト、原材料価格、あるいは食料品価格の上昇については、インフレサイドの要素がある一方、原油その他一次産品の産出国でない先進工業国にとっては所得を持っていかれる側として、相対価格の変化、交易条件の変化を通じた所得移転に伴う景気押し下げの要素もありますので、これら二つの異なる方向のベクトルの間に立って、正しい判断をしていかなければなりません。その時にインフレ圧力がどのくらい強いかは、国・地域によってかなりの違いが存在し得ますが、日本の場合目下のところインフレリスクは比較的小さい状況で推移していると思います。』
つまり足元の数値は利上げ判断に向うようなものではないというお話でございますな。何かそういう話をここもと福井総裁は繰り返している筈なのですけれども、それがちゃんと世の中に伝わっているのかがやや疑問があるのでございますけど。
グリーンスパン方式は良いとは思わないのですが、バイアスの掛かった報道で真意がちゃんと伝わっているのか疑問がございますという状況も何だかなあと思います(いやまあ丁寧に会見要旨とか議事要旨とかのやや日銀文学の入りにくい物を読んでいればある程度の部分までは読めるはずなんですが。日銀文学の方はちょっとアレですけど^^)次第なのでございまして。
○CPIとGDPデフレーターのお話
『今月以降公表される消費者物価指数(CPI)もおそらく同じことが言えると思いますが、このところ、ガソリン等石油関連製品と食料品の価格の上昇が主因となってCPIの上昇幅にやや加速度がついているという状況です。これまでの原油価格あるいは国際的な商品市況の状況からみると、しばらく国内のCPIを押し上げる要因になると思います。』
『エネルギーにしても原材料にしても、わが国にとっては先ず輸入価格の上昇となって現れますが、GDPにおける外需は輸出から輸入を差し引いたものですので、輸入価格の上昇はGDPデフレーターにとってマイナス要因になるわけです。こうした状況では、CPIが上昇している、イコール、GDPデフレーターが下がっていることになるため、これらを別々にとらえて単純にインフレとかデフレという言葉で表現してはならないと思います。』
なるほど。数字に出てくる現象の背景が重要と言う事であります。で、将来はどうなるかという話ですが、何かよく見ると留保条件がつきまくりで、将来的な物価上昇を展望する話してますけど、こりゃまあ願望でございますな(^^)。
『物価については、この先原油等の一次産品の市況がどうなるかわかりませんが、仮にこれ以上あまり上がらないとの前提に立てば、原油や食料品等の価格高騰といったCPIの押し上げ要因はいずれ減衰していくと思います。しかし、経済が潜在成長能力ないしそれを若干上回る軌道に再び戻って安定的に成長していくことになれば、今度は需給要因が徐々に物価の押し上げ要因になると思います。それが先々インフレ的な動きにならないか十分注意しながら、経済を運営していく必要があります。』
やっとここで以前の福井総裁が出ているのですが、実はこの前段で『足許の経済は少し減速していますが、先々このショックをうまく吸収していけば、改めて潜在成長能力近傍の成長軌道に復していくと思います。』と言ってるところが泣かせてくれるところでして、そこまでの話で延々と先行き警戒をしている訳ですので、それを併せますと誠に残念な事に「今警戒しているものが解決したら需要が復活して物価が上がるかもしれませんなあ」という話になりますわな。ここだけ切リとるとまあタカ派発言に見えますが、そこまでの話の流れからすると将来の願望ですな願望。
○輪番オペに関して
長期国債の買入は現状を考えたら増額はあっても減額は有りえませんのですが、何故か長期国債買入を減額しないのかというトンマな質問をするメディアがいるんですけど、あのそのちょっと勉強した方が良いんじゃないでしょうか。長期国債買入の増額余地に関しては複数の人からレポート出てますって。一応質問者は5年とか10年とかって話をしてますが、そこまで先になったらそもそも経済のあり方がどうなってるのかだって判らんって。
この質問に対する説明はやたら長いですし、まあ皆様先刻ご承知のお話ではございますが、整理するのにちょうど良い説明ですので最後の部分を除いて長々と引用します。別にまあ整理しなくてもという皆様におかれましては、この先長くて、ついでにこれが最後なので本日はこれまでという事で(^^)。
では参ります。
『長期国債の買入れという政策手段は、中央銀行にとって必ずしも例外的とは言えません。短期国債と長期国債との適切な組み合わせで、政策金利をきちんと実現していくために必要な市場資金の需給調節を行っていますが、各国ともそれぞれの事情に合わせて、各政策手段をうまく組み合わせて、政策目標を達成していこうとしています。もっとも、期間の長い資産を買い入れる場合には、いわゆる底溜まり的に流動性を供給していく手段になると思います。』
これは輪番話をしたときに紹介した日銀のペーパーにあるとおり。
『かつて、成長通貨の増加に見合った範囲内で長期国債を買入れるという考え方は、そのようなことに由来しています。5年以上前、金融が危機的な状況にあった時に日本銀行が長期国債の買入れ額をかなり大幅に増やしましたが、その時期でも「銀行券の発行残高の範囲内」といったしっかりとした上限を設けています。「銀行券の発行残高の範囲内」ということは、成長通貨の増加額ではなく成長通貨の供給残高の制限でありますが、これは既存の成長通貨の供給の範囲内という概念の延長線上にあるもので、それからはみ出たものではないと思います。』
この部分は読んでて「ほほー」と思った所。まあ福井総裁になってからは長期国債買入をいじってないので何なんですけど、この部分って買入長期国債の償還乗換方式変更とも絡む論点のような気がするのですけれども、ちょっと頭を整理できてないのでほほーと思ったとだけ書くアルよ。
『もっとも、現在の買入れ額が比較的大きいということは認めますが、同時にペイオフ解禁後、既にかなりの期間が経過し、金融システムも相対的に安定し、経済も落ち着いた成長軌道に乗ってきているといった状況にある中、銀行券の発行残高あるいは伸び率はまだかなり高い状況で推移しており、銀行券の伸び率が目先急激に下がる可能性もなく、なかなか動かない状況ですので、銀行券の発行残高対比では、日本銀行の長期国債買入れ残高は、かなり余裕を残した状況で推移しています。』
さっき申し上げたとおりで、輪番は増額余地ありますし、逆にここで減額なんぞされますと短期の資金供給オペに負担がより一層かかると思うのですが。
『期間の長い長期国債を買っているのは間違いありませんが、実際に買入れている長期国債のデュレーション(残存期間)にはかなり幅があり、日本銀行の保有長期国債の平均残存期間は、想像されるよりはかなり短い状況になっています。』
これはオペのテクニカル要因に起因するという話も以前致しました。
『さらに言えば、国庫の収支状況をみますと、政府において、買入消却措置がここしばらくの間、かなりの規模で行われており、日本銀行の保有国債も買入消却の対象となりました。これによって日本銀行のポートフォリオに入っている長期国債の残高はさらに減っています。直近では、日本銀行の全資産に対する保有ポートフォリオの長期国債残高の比率は、FRBのそれよりも低い状況です。よって、今の状況は、日本銀行が何か無理したために非常に極端な状態になっており、日本銀行のバランスシートに偏りがあり過ぎて金融調節上何か不便を感じたり、弾力的な金融調節が出来ずに支障があるということには、全くなっておりません。』
ということでございます。んでまあ先々の話として銀行券の伸びが低下すると見ているので、その場合は必要があれば調整(そこだけを切り取ってヘッドラインを打たれたようですが)することもあるかもという話はしてますけれども、それはあくまでも銀行券が伸びなくなったらという話でありますので、現状はどう考えても輪番を減らす話にはなりませんですな。
というわけで、最後輪番の所の引用が長くなっちゃいまして恐縮至極。
2008/02/18
お題「ヘッジクローズてんこ盛りの金融経済月報」
財務次官経験者なので、5年間日銀副総裁を務めた実績があっても絶対ダメとかいうのならお前の政党の代表は自民党の幹事長で事実上党を掌握してませんでしたっけと申し上げたくなるのですけど、聞く耳持たんでしょうな。>ミンス
良かれと思ってトンチンカンな動きというか努力の方向が完全に間違っているっていう人って周囲にいると正直大迷惑でして・・・
それは兎も角、今回の月報はネタになってくれて助かりました(^^)。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0802.htm(2月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0801.htm(1月)
○今回はまあ下がったわけですが
後でご紹介しますが、今回は先行き見通しにヘッジクローズ入りまくりの巻。いやまあヘッジクローズ入るのは違和感ないのですが、1月に全然下げないで今回下げるというのにはあたくし的には違和感が。
いやまあ確かに12月と1月の間だとハードデータが全然揃ってませんでしたので、下げようが無いというのもそのとおりなのかもしれませんけど、どうも市場の周囲でおこぼれを拾っておりますあたくしと致しましては、株価という先走り反応するものに影響されちゃう面が強いせいか、1月に全然アセスメント下がらないで2月に下げるっていうのがナンノコッチャ感は致します。
ま、あたくしの場合は市場コンセンサス比景気に対して強気(株価戻ればマインド戻って消費だって戻るでしょ&皆さん大デフレ+大リストラ時代の記憶引っ張りすぎ&米国がこれだけ利下げしてるし、まだ利下げするのに効かない訳は無いという根拠レスな根拠です、為念)なあたくしと致しましては、最近ようやくモーサテなんかでも「もうダメですおしまいです」みたいな論調が多くなり、日銀も下げたとはこれはそろそろ陰の極に近づいたかなとか思うのは楽観ですかそうですか。
まあもう一回株価がアホほど下がると急に慌てるのがあたくしの仕様なのですけどね(汗)。
○現状認識不変、先行き見通しにヘッジクローズ満載
『わが国の景気は、住宅投資の落ち込みなどから減速しているとみられるが、基調としては緩やかに拡大している。』
という基本的な部分は変化ございませんですわな。引用するのもめんどいので引用しませんが、問題は先行き見通しでございますな。
『景気の先行きについては、当面減速するものの、その後緩やかな拡大を続けるとみられる。』
という器用な先行き見通しの基本部分に変化はないのですが、中身にヘッジクローズが入っております。
・ヘッジクローズその1
『すなわち、輸出は、海外経済が減速しつつも拡大するもとで、増加を続けていくとみられる。』(2月)
『すなわち、輸出は、海外経済が全体として拡大するもとで、増加を続けていくとみられる。』(1月)
もともとは「海外経済が拡大」だったのが「全体として」が入り、今回は「減速しつつ」と入るという器用なヘッジクローズに変化しております(^^)。いやあのその「減速しつつ拡大」ってそりゃまたややこしい話で。ということで海外経済の先行き見通しを下げました。
・ヘッジクローズその2
『また、設備投資や個人消費も、総じて高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を背景に、増加基調をたどる可能性が高い。』(2月)
『また、設備投資や個人消費も、高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を背景に、増加基調をたどる可能性が高い。』(1月)
「高水準の企業収益」に「総じて」というヘッジクローズが入りましたな。
・ヘッジクローズその3
その次の住宅投資はまあ元々悪いので変化無く、その次ですな。
『こうした内外需要の動向を反映して、生産は、当面横ばう局面を伴いつつも、増加基調をたどるとみられる。』(2月)
『こうした内外需要の増加を反映して、生産も増加基調をたどるとみられる。』(1月)
ということで、ここにもヘッジクローズなのですが、この文書をあたくしのMS-Wordに落としたらWord先生か「ばう」の所に赤い波線を入れて下さいましたな、いやはや何とも。
・ヘッジクローズその4
『なお、海外経済や国際金融資本市場を巡る不確実性、エネルギー・原材料価格高の影響などに、引き続き注意する必要がある。』(2月)
というリスク要因に関する部分は今回新たに付け加えられた部分でございます。
というわけで、経済の先行きに関して強気見通しに関するヘッジクローズ入りまくりでございますな。いやはや何ともでございますけれども、まあ執行部が変って新体制になった所で先行き見通しなどを含めた基本的なシナリオを書き換える布石っぽい感じは致しますわなあという所でありまする。
○物価に関してですが
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品や食料品の価格上昇などから、プラス幅が拡大している。』(2月)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラスとなっている。』(1月)
ちなみに12月までは『ゼロ%近傍で推移』でありました。ということはゼロ%近傍の定義はえーっとえーっと幾らになるのかな?
で、先行き見通しには変化ございません。一応念の為。
『消費者物価の前年比は、当面は、石油製品や食料品の価格上昇などから、また、より長い目でみると、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想される。』
ということであります。以下金融関連に関しては前回と変らず(株価が上がったとか下がったとかの話に変化はございますが)となっておりまする。
総裁会見もどちらかと言えば景気弱気っぷりが目立つようでありましたという感じですが、そちらに関しましては会見要旨が本日アップされる筈ですのでそちらを読んでからという感じであります。
2008/02/15
お題「ネタなしなので小ネタ雑談でござる」
うーん、NY株式が上昇して戻ってくれば今日の東京株式市場は大盛り上がりになると思ったのですけど・・・・・
○債券はまたレンジか抜けるのか
たまにはあまりお話しない債券先物の与太話でも。いやまあ超本職の皆様にはヘボが何をほざくと言われそうで恐縮でございまするが。
昨日の債券市場というか先物は下で寄り付いた後、前場に物凄い勢いで戻ったと思ったら後場は一転してヘロヘロ。まあ何がどうなっているのやらという感じですが、ここの所債券先物ベースで137円20銭くらいから138円20銭くらいで(その中でやたらぶれますが)延々ともみ合いを続けている次第でございますわな。昨日も結局28銭まで叩いたものの切り返し(いやまあ66銭安まで行ったのもよーやるなとは思いましたが)となってまして、先物ベースでこのレンジに鎮座まします時間が長くなってまいりました。
で、ポール損財務長官にバーナンキ議長の議会証言で(なのかどうか知らんが、またモノラインがどうしたこうしたとかいい加減聞き飽きたですよ)NY株安長期金利上昇(短い所は低下)という実に素敵な展開になっておりまして、債券ちゃんはどっちに反応しやがるのか良くわからん(とりあえずカーブはスティープしやすそうですが)のですけど、債券先物ベースで7円の10銭台を抜けると次のレンジという話になるので、ちょっと盛り上がる(というか盛り下がると言うか)のかもしれませんなあ。昨日の切り返しっぷり見てると中々抜くのパワーいるような気がしますが・・・・・
でまあそれより株式を見ながらってえ話になると思うのですけれども(汗)、1月の急落局面で日経平均って14500円ゾーンから13500円ゾーンにあっという間に動いてまして、このあたりは価格帯として見事に真空地帯なので、本当は今日米国株式市場が上昇して帰ってくるとかなーり盛り上がったのでしょうけれども、ここで押し込まれるとちと残念というところで、まあ今日はどっちの市場もここの所の居場所を変えるのか変えないのか見ものでございまする。
○ところで金先とか
いやまあ昨日に始まった話じゃないのですが、一時物凄い勢いで盛り上がってSEP08が一番値段高いというわけの判らん展開が続いて思わずネタにしちゃったあたくしではございますが、ここの所金先様におかれましては一頃の利下げ祭りモードはとりあえず一服のようで(ですからあまり「市場が織り込んでいるから利下げすべし」とか言わないほうが良いと思うんですよ。それに市場が利上げを織り込みに行ったら利上げしろって話なのかって屁理屈返されちゃうでしょうし・・・)、SEP08が突出して高い(金利が低い)という妙な状態も解消の巻。
利下げというよりは「いやあこれは政策金利上がりも下がりもしませんなあ当分♪」という雰囲気が段々強くなっていると言うか元に戻ったと言うかというようですが、まだまだ短期国債の利回りなんかでも1年と3か月が(需給要因もあるにせよ)素敵に逆イールドだったりするので、まだまだ利下げ期待あるいは警戒はございますよね。
先週木曜は某ベンダーの飛ばしヘッドライン(しかもその後ヘッドラインと記事を削除攻撃)で金先が面白い挙動をしておりましたが、まー引き続き利下げとかそっち方面を連想させるネタには反応しやすいのかも知れませんが、ややトーンダウンって所なのでしょうか。そしてその割には2年ゾーンがやたらめったら値持ちしてるのもこれまた妙な話ではございますが・・・・・・
3か月FB入札とかもう毎度毎度0.55%〜0.56%の中で決着しちゃいますし、中々こうレンジ抜けません(そりゃまあ金融政策が動く訳も無いという感じですから当たり前ではありますが、それにしてもレンジ狭すぎ)なあって所です。
○先生!おっしゃる意味がよく判りません(><)
昨日ご紹介した衆議院予算委員会での山本幸三さんの見どころ満載の質疑応答ですが、微妙にアレな部分があったのは残念でございます。
いやまあ例によって例の大臣なんですが。
『○渡辺国務大臣 (前半思いっきり割愛)御案内のように、日本の株式市場は、売買のシェアが外人さんが非常に多くなっているんですね。大体、今でいきますと六割以上が外人さん。この投資家の方々は、円ベースで物を見ているわけではございません。ドルベースで物を見ていることが非常に多うございます。そういう観点から、ドルベースの日経平均というものをとってみますと、日本銀行が量的緩和解除を行いましたのが〇六年の三月でございます。そこからしばらくは株価は上昇していったのでございますけれども、〇六年の五月十日ぐらいに大幅な下落が始まりました。そのころ何が起こっていたかというと、金融引き締め観測が出てきたんですね。そこからずっと下落が続きまして、七月十四日にいわゆるゼロ金利解除というのが起こりました。このあたりになりますと、ダウ平均株価とドルベースの日経平均は明らかに乖離を始めるわけでございます。』
『こうしたことから見ますと、日本銀行においては適切に金融政策は行っていただいているものと思いますが、どういう影響があったのかなという懸念を持っているところでございます。』
はあそうですか。ところで外国人って米国人だけなんでしょうか?というのは兎も角と致しまして(苦笑)。
06年5月10日の株価が17000円ちょっと切るくらいで、ドル円が110円とかでして、06年7月14日の株価が15000円割れでドル円が115円。円ベースの株価が8.9%下がってドル円が4.5%円安ドル高ですからまあその程度を大幅な下落というのかどうか知らんですけど。。。。。まあいっか。
で、ゼロ金利解除後って日経平均株価って途中でちょっともたつきましたが、年末に向けて威勢良く上昇。ただしこの間ドル円はあまり動かずでしたが、年末から2007年にかけて円安ドル高が進行して07年1月には120円台に突入しておりましたが、別に株式市場的には別に悪い状況じゃなかったと存じますが・・・・・・
ってことで、この間の乖離って米国株価の上昇の方がでかいとは思うんですが、まあこの「他国通貨ベースでの株価」とか言い出すと、円安はケシカランという話になりゃーしませんでしょうか先生。
しかも先生におかれましては、2006年11月にブルームバーグテレビのインタビューで「日銀が利上げすると超円高になるから良くない」というお話をされていた(詳しくはあたくしの過去の駄文http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/zatsudan06-02.htmlの06年11月20日のところです)のでありますが、えーっとその話とこの話の理屈が繋がらないのでありますが・・・・・(><;
いやあの日銀なんてもうこの手の理屈引っ張り出してくるの得意なんですから、政策批判する方としてはその場その場で批判するのに都合の良さそうな話をした挙句に頭と尻で言ってる事違いますって状況になるのは正に日銀の思う壺。批判するなら首尾一貫して批判のロジックを通すとか、日銀サイドの政策ロジックがその時々で都合よく変化しやがる(物価評価の非対称性なんてのもそうですよね)所とかを突っ込むべきでは無いかと思うのですよ。
いやはや何とも。
2008/02/14
お題「ネタの無い時には国会会議録」
今日は国会会議録大引用祭りですので、やたら分量が多くなっております事を最初にお断り致します。
今日は1月25日に行われた衆議院予算委員会での山本幸三さんの質問ですが、これは実に良い質問。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001816920080125001.htm
福井総裁を呼んでお題は「経済・金融問題についての集中審議」でございます。
質問順は最初ですので、最初の所から読んでいただければ吉かと存じます。
○1月の株価急落に対して
山本委員はまず財務大臣と経済財政担当大臣に質問してます。
『まず、最初に財務大臣と経済財政担当大臣にお伺いいたしますけれども、今回の世界同時株安、一月二十二日、アメリカでは二十一日でありますが、株が暴落いたしました。これが世界的にも、中国、インドにも波及をいたしているわけでありますが、日本の株価も七百五十二円暴落したわけであります。(略)この世界同時株安というものについて、どのように認識しておられるのか、その点についてお伺いしたいと思います。』
で、額賀大臣は
『株価はさまざまな経済要因から動いているものと思っておりますけれども、基本的には、米国のサブプライム問題から端を発した金融不安、あるいはまた、そういう金融不安が米国を初めとする先進各国あるいは新興国の実体経済にどういう影響を及ぼしていくのか、そういう中で、特に世界経済の中で比重の大きい米国において実体経済の下振れリスクの懸念もありまして、世界的な株安が進行してきたということはよく承知をしておるところであります。』
で、当然ながらその後も続いて長くなるので割愛しちゃいまして、大田大臣は・・・・
『最近の株安につきましては、今財務大臣から答弁ありましたように、アメリカのサブプライム住宅ローン問題に端を発する金融機関の損失拡大、それからアメリカ経済の減速懸念を反映したものと受けとめております。これも財務大臣から答弁ありましたように、日本に関しては、サブプライム住宅ローン問題の直接的な影響は限定的ですけれども、やはり株価がこれだけ下落するということは、企業のマインド、消費者マインドに悪影響を与えることが懸念されます。それから、今はまだ明示的にあらわれておりませんが、株という資産の価格が下がることによって、消費にマイナスの影響を与えることも懸念されます。それから、アメリカの株安がドル安につながり、それは円高ということですので、これが企業収益に与える影響も十分注意して見ていきたいと思います。』
と、こちらは要点が纏まってたんで全部引用した訳ですが、この答弁だと良く見りゃ日銀(の政策委員会)が最近言ってるのと同じですな。
で、山本委員はこのように指摘します。
『私は、ちょっと危機感が足りないんじゃないかなという感じがしてならないんですね。』
『それは、今両大臣とも、これはサブプライムローンに端を発した話だけれども、アメリカ経済の下振れリスクが高まったことによるんじゃないかということですが、私の解釈は、アメリカ経済は後退局面に入ったということがはっきりした、リスクじゃないんだ、下振れリスクがあるということじゃない、もうリスクそのものが顕在化したということがはっきりしたということを示したんじゃないかと思うんですね。』
『そのことは、これは日本経済に甚大な影響を与えるはずなんです。なぜならば、日本経済というのは、今も景気回復は続くという認識を示されたんですが、私は個人的には、もう景気は後退局面に入っていると思っているんですね。それは後でゆっくり議論したいと思いますが。』
ということで、「景気は後退局面入りしている」という論点でこの後も追及が続くので、まあ今回の論戦は読んでいて中々面白かったです。この先もあるんですが、引用してると長くなるので勝手にまとめますと、輸出以外は良くない状態であり、景気回復が続くという前提となっている輸出がダメになってきたらダメではないかというお話です。
○財政税制問題へのツッコミは難しいのは判りますが・・・・・
で、山本委員は財政面へのツッコミをしてるのですが。
『そこで、ではどうしたらいいかということについて少しお伺いいたしますけれども、そういう世界同時株安を受けて日本経済に暗雲が立ち込めてきたということを受けて、では、財政、税制面で何かできるのかということがまずあるわけでありますが、この点については、財務大臣、いかがですか。』
んでまあ額賀大臣ですが(一部割愛しておりますので念の為)。
『最近の原油高とかそれから緊急対策において、今補正予算について国会に提案をさせていただいておりますし、また、二十年度の予算についても国会に提出をさせていただきまして、我々は、できるだけこの両案が成立できるように、従来とは違って法案提出も一週間以上早目に出させていただいたりしておるわけでありますから、最大の対策は、この十九年度の補正予算、そして二十年度の予算を年度内に成立させていただくことではないかというふうに思っております。』
『それから同時に、株式市場においても最近は外国人の投資家が多くを占めるようになってきております。皆さん方が注目しておるのは、日本のそういう政治の動き、あるいはまた経済面において財政再建というものがどういうふうに展開をしていくのか。それは予算の中できっちりと我々も財政再建というものは重要な課題であるというふうに位置づけておるわけでありますから、そういう意味で、歳出改革を行い、財政再建がしっかりとなされていくのかどうか、そういうことがやはり国会の中できちっと審議をされて、成立をさせていただくことが、私は大きなメッセージになるだろうというふうに思っております。』
・・・・・うーむ、結局財政や税制面では手を打たないというか財政はやっぱり緊縮攻撃なんですねえというのはあたしゃ残念なんですが、ちょうどまあ揮発油税がどうのこうのという話をしている中で減税だの財政だのという話がしにくいというのも仕方ないというのも判りますんで、まあ何でもかんでも政争のネタにするどこぞの政党の存在が益々遺憾ではあるんですけどね。
『おっしゃるとおり、財政、税制の面からいえば、とにかく今出ている補正予算、本予算、関連法案を早急に成立させることが最大の対策になるわけですね。これを本気で我々もやらなきゃいかぬし、特にこの世界同時株安の状況を考えれば、もう一日も早く成立させなければいけないな、そして実施させなければいけないなというふうに思っております。』
ということで山本委員の話が税制関連法案と予算案の早期成立の話になってしまう点は残念なんですが、まあ何でも政争(以下同文^^)。
○で、利下げすべしの質疑ですが
と、まあここまでが前振りみたいなもんで(^^)、以下金融政策のお話になりますが、先ほど申し上げたように現在景気後退局面入りしているという論点から突っ込んでいます。
『それでは次に、これから金融政策の面にちょっと重点を移していきたいと思いますが、日本銀行が、二十二日の政策審議会で、金利水準の、現行水準を維持するということを決めました。決めてすぐ後、アメリカのFRBは緊急理事会を開いて、〇・七五%政策金利を大幅に引き下げるという決定をいたしました。日本銀行の皆さん方も驚いたんじゃないかと思いますけれども。カナダの中銀も〇・二五%引き下げました。ECBは、インフレの懸念があるということでちょっと慎重姿勢をとっておりますが、しかし、EUの首脳は集まって、これは大変だというような意思疎通をしているわけですね。イギリスは下げるかもしれないというふうに言われております。』
『こういうことを踏まえると、私は、この緊急事態、これだけの株の暴落が起こったというような状況、しかもアメリカ経済がもう減速がはっきりしてきた、そのことの日本経済に与える影響、そういうことを考えると、日銀も協調して利下げをすべきだったんじゃないかなという意見を持っているわけであります。この点について、どうして日銀は、例えばFRBが下げたらすぐにやるとかいうようなことに踏み切らなかったのか、その点、日銀総裁、よろしくお願いします。』
んでまあ福井総裁の答弁は引用するまでもないのですが、というかちょうど昨日ご紹介した岩田副総裁の先般の記者会見にもありましたが、「各国の状況に応じて金融政策を行うべきであり、日本の景気回復の基本的なメカニズムは変わっていない」というお話であります。でも弁の最後の部分、そんなに自信満々な発言して良いの?って感じがするんですが・・・・・
『日本の場合には、当面、経済は減速し、消費者物価指数は上昇率を高める、こういうことでございますけれども、私どもの先行き見通しは、来年度に向けましては物価安定のもとで緩やかな拡大を続ける蓋然性が高いと判断しておりまして、そうした分析及び判断に基づいて、当面は、現在の緩和的な金融環境を提供することによって、先行き安定した経済の姿を引き続き実現していけると強い確信のもとに金融政策を行っているということでございます。』
強い確信ですかそうですか・・・・・・
#ちなみにあたくしは株が戻ればマインド戻るって♪な人ですので景気の先行きには多分コンセンサス比結構強気だと存じます、為念
○バブル懸念をするなら資産価格下落に対して何もしないのは変
ということで、景気認識に関してですと見方が違いますという話になるのは当然ながら山本委員はご存じでしょうから、次のツッコミ論点は資産価格方面から。
『私がなぜ協調して思い切った金融緩和、金利引き下げに踏み切らなければならないかと言うのは、それは、金融政策と資産価格の暴落との関係についての一つの理論に基づいているわけですね。これは、かつてアメリカの連邦準備理事会、FRBが、日本のデフレ政策の失敗を研究いたしまして、そして論文を出したんですよね。その結論は、金融政策というものは、資産価格の暴騰に対しては何もやってはいかぬ、これをつぶそうとしてやり過ぎると、必ず失敗して日本のようなデフレに突入してしまうよ、逆に資産価格が暴落したときには、間髪置かず、思い切った流動性の供給、金融緩和を徹底してやるべきだ、それが日本のようなデフレに陥らない最善の策ですよという報告を出しまして、これはもう経済学会で確立した理論になっていると私は思うんですね。』
バブルを潰そうとして金融政策をやるのは良くないという話はそうですが、バブルが起きるのを漫然と放置して良いって話でしたっけという気もせんでもないですがまあそれは兎も角として。
『それに対して、従来から日本銀行は、どうも反対のことをやっているんじゃないかというのが私の議論なんですね。今までの日銀の政策委員会の議論を見ますと、まだありもしないバブルがあるかもしれないというような話をして、しきりに金利は引き上げるべきだ、引き上げるべきだという議論を続けてきた。これはまさに失敗を繰り返すような話ですし、そして、これだけの資産価格が暴落したときに何の手も打たないというのは、これはやはり金融政策の運営方針としておかしいんじゃないかというのが私の議論であります。』
これはごもっともなツッコミでございまする(^^)。で、途中を飛ばしまして。
『そういう意味で、私はまさに資産価格暴落と金融政策というのはそういうふうにあるべきだと思うものですから、これはまだ遅くない、G8ですか、財務大臣・中央銀行総裁会議が二月の九日に東京で開かれるということでありますが、それまでの間にやらないと意味がない。もう大体、市場は日銀の金利下げを織り込み出していますからね、夏ぐらいにはもうある、追い込まれると。嫌だ嫌だと言っても、追い込まれる。そのときにやったって意味がないんですよ。もう市場は何も評価もしない。そうじゃない、先見性の明を持って決断して断固やるところに市場は評価するわけでありまして、そのタイミングはもうわずかしかない。私は、福井総裁、おやめになる前にそれだけの決断をしていただけるものと期待しておりますけれども。』
ただまあこの点に関しましては、そもそも市場ってえのは様々な期待が自己実現方向にオーバーシュートするもんでして、あまり市場に対して先見の明を持って動いちゃうと、アラン・ブラインダー氏の言う「自分の尾を追う犬」になっちゃう懸念もあるんで、あまりそのツッコミはどうかなとも思うところで少々残念でもございます。でも先ほどの部分は仰る通りかと。
○んでまあ経済見通しに対して突っ込む突っ込む
資産価格の関連に関してはあまり追及はしない(しても話がループするだけと判っているはずですから^^)で、この後経済見通しに関して突っ込む所が読み応えあります。
『では、どうして日本銀行は金利引き下げというようなことに踏み切らないのかというところのもともとの原因というかベースですけれども、それは、経済、景気見通しというのは、いや、まだ日本経済は回復しているんだ、したがって、そんなことをやる必要はないんだというところがベースにあるように思うんですね、これは政府、内閣府についてもそうですが。ここが、私と内閣府と日銀と、根本的に違う。私は、日本経済はもう既に後退局面に入っていると見ている。しかし、何回そう言っても、内閣府も、リスクはあるけれども、いや、まだ回復していますと。日本銀行も、いや、まだ回復して、生産、所得、支出の好循環が続いているんですよと言っているんですね。』
『では、どっちが正しいんだということについて少し議論をしたいと思います。まず、政府も日銀も、これまで経済見通しをことごとく誤ってきた。特にこのところ、常に楽観的過ぎた。でも、実際は、ぐっと下振れした水準に事実として過ぎてきたわけですね。』
『そこで、まず大田大臣にお伺いします。昨年、経済見通しを改定いたしました。二〇〇七年度、今年度について、実質成長を二・〇%、名目で二・二%、もう今年度中にデフレは明らかに脱却していたはずなんですね。しかし、そうじゃない。その結果、十二月の見通しで、実質二・〇を一・三%に引き下げました。名目を二・二%から〇・八%に引き下げました。これは情けない話ですよ。どういう理由でそういうふうになったんですか。』
ということで、まずは大田大臣にツッコミを入れまして、その後福井総裁にも日銀は下振れ改定ばっかりですがというツッコミが(^^)。まあ中身はこれまた面白いと言っちゃあ何ですが、最後のあたりなんぞ中々宜しいので、このあたりだけ丸引用しちゃいます。
(引用開始)
○山本(幸)委員(前半部分割愛します、すいません)それからもう一つ、次。では、支出、消費。消費がいいというんですが、どこの消費がいいんだと。消費、いろいろありますよ。家計消費状況調査、支出総額、十一月、マイナス〇・六%、四カ月ぶりに減少。家電販売、消費者態度指数の推移、暴落していますよ。乗用車販売、落ちています。スーパー、百貨店売り上げ、落ちています。景気ウオッチャー調査、激減していますよ。個人の資金需要、住宅ローン、これもマイナス。消費者心理、四年半ぶり低水準。消費、支出の好循環、どこがいいんですか。
○福井参考人 国内需要の項目であります設備投資と比べますと、個人消費に力強さが欠けている。だけれども、これが落ち込んでいるといいますか底がたいという状況で推移しておりまして、これは雇用の増加、雇用者所得の増加がこれを裏打ちしているということでございます。名目賃金の弱さということが個人消費をいま一段押し上げる力を欠いている、その点は注意深く見ている。それが各種の販売統計あるいは消費者マインドにも幾らか影響している。特に最近は、原油価格の高騰、身の回り品の価格の高騰というのが消費者マインドにかなりのダメージを与えている、このことも私どもは認識をいたしております。
○山本(幸)委員 私の質問に答えてくださいよ。私は、これとこれとこれとが悪いよと。消費の数字でいいところなんかないんだ。どこがいいんですか。どこが底がたいんですか。証明してください。
○福井参考人 私どもは、消費がどんどん落ち込んでいるというふうには思っておりません。緩やかな増加ないし底がたいというふうなことで、GDP全体を大きく消費が足を引っ張っているというふうには判断いたしておりません。
○山本(幸)委員 全然答えてないじゃないですか。私は全部、この消費のどれとどれが悪いと言っているんですよ、どこが底がたいんですかと。それを示さなきゃ答えにならないですよ。どうぞ。
○福井参考人 最近時点の百貨店売り上げとかあるいはスーパーの売り上げ等々、比較的、いい数字とは申しませんけれども、そんなに極端に悪い数字が出ているわけではありません。それから、GDPに対する個人消費の寄与も決してマイナスというふうにはなっておりません。
○山本(幸)委員 百貨店売り上げ、下がっているのに、それほど大したことはない。要するに、何か希望的観測じゃないですか、それは。私は納得できないですね。つまり、GDPベースのものは少し問題があるんですよ。そうではなくて、生活者、消費者の実態のところは悪くなっているんです、消費も。だから、私は、日銀が言っている生産、所得、支出の好循環というのはないんだと。ない。間違っています。したがって、金融政策は、こういう状況になったら引き下げるなり変えなきゃおかしいというのが私の主張であります。(以下割愛します)
(引用終了)
やはり国会ではこういう論戦をしていただかなければと存じます次第です。
ということで、今日は日銀ウォッチじゃなくて山本幸三さんの鋭鋒鑑賞会になってしまいました(^^)。
2008/02/13
お題「岩田副総裁記者会見続き」
連休明けの昨日は相場も連休明けでございました(^^)。
という訳で昨日の続き。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0802b.pdf
岩田副総裁がハト派なのは仕様でございますが、今回も仕様どおりで基本的には慎重な見方を示しております。
ちなみに念の為申し上げますと、量的緩和政策実施時代の岩田副総裁は、量的緩和政策の継続や強化をするような立ち位置でしたけど、一方で物価の先行きに関しては結構強気でした。「量的緩和政策をこれだけやっているのだから物価は上がる筈」という発想ですわな、たぶん。
○格差問題と金融政策
高知県で実施された金融経済懇談会ということもありまして、地方経済が大変ですが金融政策としてはどう対処しますかという質問がやってまいります訳です。
『今回の景気回復局面では、過去の景気回復局面と比べても、輸出が日本経済の成長をかなり引き上げているといった側面が大きいと言えます。(途中割愛)輸出を主なターゲットとしてビジネスを展開している主として大企業では、足もとでも収益は比較的堅調で、設備投資意欲も衰えていないことが、最近の短観調査でも確認されています。その一方で、内需については、2007
年入り後、伸び悩みの状況にあります。GDPでみても、内需の寄与度は、前期比でみてほとんどゼロに近い状況になっています。』
『加えて、原油価格や原材料価格がかなり上昇する中で、冒頭に申し上げたように、特に中小企業では、コストアップはしたが販売価格に上乗せできないために、交易条件が企業レベルで悪化するといった状況にあります。さらに、内需が伸び悩んでいるために、数量的な売上の伸びでこれをカバーすることができない状況にあり、内需を中心として事業展開をしている中小・零細企業は色々な困難に直面しているということだと思います。これは、地域間の格差あるいは大企業と中小企業の格差が、交易条件が悪化する中で厳しいものになっているということだと思っております。』
と、ここまでが岩田副総裁の現状に対する説明。
『こうした中で、私どもの金融政策は、あくまでマクロ経済、日本経済全体の状況がこの先1〜2年どうなるかということをよく見極めて政策運営することになりますが、例えば、中小・零細企業の収益が非常に圧迫され、その結果として賃金の伸びが弱くなる場合もあります。(途中割愛)私どもとしては、地域間の格差あるいは企業規模の格差だけをもって、政策運営するわけではありませんが、こうした格差の存在、あるいは格差がさらに厳しくなることによってマクロの経済状況が影響を受けるということになれば、そうしたことも十分に配慮しながら金融政策運営を行うことが必要なのではないかと思います。』
まあストレートに「地方経済は大変ですが金融政策をどう考えていますか」とそのまさに大変なところで質問されてゼロ回答ってえ訳にも行かないというう点については割り引く必要はあるかと存じますが、マインドの悪化が経済実態の指標にどういう影響を与えているのかという点については今後2−3か月の経済指標を見ないといけませんなあということになるのではないかと思います。
○米国経済に関する見方
昨日ご紹介した長期国債買入に関する質問と同じ質問で米国経済に関する見立てを聞いています。例によってすげえ長いので途中割愛しながらです(が長い)。
『米国経済の見方からお答えします。現在、特に米国の市場関係者間では、米国の景気後退リスクが高まっているのではないかという見方が強まっています。(途中割愛)市場関係者間で景気後退リスクが高まったのではないかという懸念が出てきたのは、雇用の数字がマイナスになったということが一つの大きな要因ではないかと思います。また、卸・小売の売上高との関係で言えば、最近、非製造業の景況感が大幅に低下したことにより、内需、特に個人消費の停滞リスクが出ているのではないかということなど、幾つかの変数がトレンドからかなり離れて下方に振れてくるという状態がある程度の期間続くことが、景気後退のリスクが高まってくるということではないかと思います。(途中割愛)従って、私も幾つかの主要な指標がどういった動きになっているのか、またこの先どういう動きを示すのか、仮に低下してもどのくらいの期間続くのか、という点をよく見極めていくことが大事なのではないかと思っております。』
というわけで、雇用と消費に注目ということのようです。特に決め打ちはしていませんが、下振れリスクには十分注意というニュアンスかと。
○利下げの可能性について
同じ質問で国内実態経済に悪影響が及ぶ場合に利下げを検討するのかというものもございまして、これがまた死にそうなほど長いのですが・・・・
『もっとも、現在の事態はやや複雑で、2007 年度の経済成長率は潜在成長率を下回っていますが、物価の上昇率については、まだわれわれの理解する中長期的な物価安定の範囲内の動きではありますが、特に原油価格等の要因でやや上昇率が高まっているという状況になっています。しかし、そういう状況のもとで、中央銀行はどういう対応をするかというと、1年後、2年後の日本経済がどういった姿になるのか、最も蓋然性の高いシナリオは何なのか、仮にそのシナリオの蓋然性が高いとしても、上振れと下振れのリスクがそれぞれどの程度あるのかということをよく見極めたうえで最善の対応をするということだと思います。』
『これは単に日本銀行だけの考えではなく、ほとんどの先進国の中央銀行が共有している考え方だと思いますが、経済の先行きをよく見極めながらそのリスク点検をしつつ、最善の対応を図るということだと思います。バーナンキFRB議長は、これを「予測に基礎をおく政策」という表現をしたことがありますが、あくまでも大事なことは、1年後、2年後の日本経済の姿がどのようなかたちになっているのか、そして同時に先行きのリスクをよく見極めながら、最適の政策は何かということを考えて実行していくということに尽きるのではないかと考えています。』
何か読みようによってはどっちとも取れる発言ではございます。別の質疑応答で、日本経済の先行き見立てに関しましてこのように説明しています。
『まず最初のご質問ですが、私はスピーチの中で、リスク要因として潜在成長率への日本経済の復帰のタイミングが後ずれするリスクがあり得ると申し上げました。これは金融市場の不安定な状況が続いたり、米国の後退リスクが高まったり、あるいは原油価格がもう一度再加速するというような、景気を下振れさせるような要因が大きくなるような場合にはそういうこともあり得る、と申し上げました。しかし、同時に私どもは、現在の成長率の減速は一時的要因によるところが大きいという判断を基本的にしております。』
で、この理由の説明がまた細かいのですが、引用してると長くなるので原文読んでいただければと存じますが、(1)住宅投資が戻るでしょう、(2)交易条件悪化は原油価格頭打ちで止まるでしょう、(3)米国の利下げが効果を発揮するでしょう、という説明になってます、たぶん。
『米国経済は今出ている数字はあまり良くない数字が多いのですが、年後半には金融・財政面での政策措置の効果が出てきて、景気の下支えをするということが同時に期待できると思います。そうであるとすると、今出ている米国の数字は悪いのですが年後半にはもしかするともう少ししっかりとした足取りに戻っていく可能性もあります。重要なことは、マイナスのリスク要因と先行きのプラスのリスク要因の両方をよく勘案して見極めをしっかりしていくということです。特に、この不確実な状況のもとではそういった対応が必要だと思っております。』
ということを勘案しますと、どうも目先の金融政策は「見極め」という名のもとに動かないと見るのが(岩田副総裁の任期はあと少しでございますけど)妥当と言う話になるんでしょうね。
○既に終了しちゃいましたけどG7での国際協調に関して
『米国の場合はまさに財政・金融政策ともに総動員して現在の問題に立ち向かうという対応をとっており、非常に正しい対応だと思います。景気の後退リスクが高まると、金融市場の不安定性と景気の後退リスクが、ある意味相乗的にマイナス方向で働いてしまうということがしばしば起こります。そういうことに対して歯止めをかけるということで、金融・財政の両面でこれを強力に阻止するという対応をとっていることは、非常に正しい対応だと思います。』
ということで、金融政策と財政政策のセットでの対応が重要ですというお話を。シバキアゲ政策から転換して以降の日本もまさに金融政策と財政政策のセットでしたが、世間というかメディアというか日経新聞というか、まあそのあたり的には財政政策をやらずに戻ったみたいな話になっているのがどうにもこうにも。
『ただ、経済の状況、あるいは金融市場の不安定性という問題につきましても、これは国によってかなりの違いがあります。日本の金融機関の場合でも、そもそもエクスポージャーが欧米の金融機関とはかなり違いますし、マネーマーケットにおいてもその不安定性の度合いは随分と違いがあります。このため、協調行動と言っても、それぞれの国がそれぞれの国の事情に応じて、最も適切と思われる方策を実行していくことが正しい処方箋であると思います。』
まーECBがそもそも協調利下げなんぞやるという雰囲気をろくすっぽ見せてくれませんでしたので、市場的にはまあ残念ですが協調はないでしょうという感じでしたので、こういう答えが出ても市場的にはあまり反応しなかった(ヘッドライン出てましたけど特に動いた感じは無かった)という所かと思います。そもそも日本政府がはなから財政措置(減税も含む)を否定してましたしねえ。。。。
ということで、本日もまた引用で増量攻撃で申し訳ない。
2008/02/12
お題「岩田副総裁講演:市場予想通り」
G7は特にどうという物もございませんでしたですか。まあ米国の絶賛利下げの効果を見極めてから次の動きがどうなるのってえ感じになるんですかね。想定の範囲内ですが少々拍子抜け。
金曜は飛ばしヘッドラインネタで済ませちゃいましたので(汗)。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0802a.htm
今回は岩田副総裁の講演にしては説明が短めで図表はやや多めかなあという感じです。
○リスク要因などの説明が長いです
最初に景気の現状評価と展望レポートの中間評価の説明があるのですが、基本的には日銀公表文書どおりになっていまして、物凄くあっさり味。で、その先の個別の説明がメインになっている感じであります。曰く、
4.成長率の下振れ要因
5.物価の上振れ傾向
6.交易条件悪化の影響
7.先行きのリスク要因
8.サブプライム住宅ローン問題
ということで、この並びはどう見ても下振れ強調です本当に(略)。まあ中身を見ますと、展望レポートの中間評価にありますように、「現状は減速しているけれども、先行きは2%成長の巡航速度に戻ります」というシナリオに沿った話にはなっておりますが・・・・・
○成長率の下振れ要因
『2007年度の成長率が下振れしている要因として、まず対外面では、国際金融市場で株価や為替レートが大きく変動するなど動揺が続くなかで、アメリカの住宅部門調整が長引いていること、さらに原油価格が高騰し、高止っていることがあげられます。次に、国内面でも、改正建築基準法施行の影響によって住宅投資のみならず、一部設備投資にもマイナス効果が波及していることがあげられます。また、2006年末以来、名目賃金が伸び悩んでいることを背景に、内需は2007年に入ってから全体として伸び悩みが続いています。』
『このほか、最近の消費者マインドの動きをみると、景気ウォッチャー調査の家計動向関連DIは、2003年初以来の低い水準にあります。また、消費動向調査においても、消費者態度指数が同様の動きとなっており、とりわけ、12月には暮らし向き判断が82年の調査開始以来の最低水準(34.9)に低下し、選択的消費の項目が急速に悪化しました。また、中小企業の景況感も景気ウォッチャー調査と同様に悪化しています。』
何かこう良くない話が並んでいるのですが、先行きに関しては基本的なメカニズムは維持されているという話になっております。引用すると長くなるので割愛しますけど、要は「住宅投資は法改正の影響剥落で戻り、輸出は米国以外がカバー、消費マインドは悪いけれども個人消費のハードデータは強く、所定内賃金は改善」ということであります。
つまり裏を返せばハードデータに影響出てきたらもうそれはエライコッチャということなんでしょうな。確かにまあそんなに悪いっていう数字が出てこないのが不思議っちゃあ不思議とも言えますが
○物価の話と交易条件の悪化の話
物価の数値に関しては「目先上昇するけれども結局はそんなに上がりません」というお話でして、かいつまんで引用すると・・・・
『原油価格が現状の水準で推移するとすれば、コア消費者物価は、今年の春先まで上昇率を高め、1%近くに達する可能性があります。』
『しかし、その後は、エネルギー要因による物価押し上げ効果は次第に小さなものになっていくと考えられます。(途中割愛)また、差し当たり成長率が、潜在成長率をやや下回って推移することによって、経済全体の需給ギャップの改善傾向が、当面、足踏みすると予想されますので、「実力ベースのコア消費者物価」の上昇テンポは引き続き緩やかなものにとどまるとみられます。』
『この結果、中間評価では、2008年度のコア消費者物価については、従来の見通し(0.4%程度の上昇)を変更する必要はないと判断しました。』
でまあそれはそれとして、その次の「交易条件の悪化」というお話に。
『成長率は減速しているにもかかわらず、物価が上振れて推移している一つの理由は、原油価格の大幅な上昇によって外国との貿易面における交易条件が悪化しているからです。外国からの輸入価格が日本からの輸出価格よりも大幅に上昇する場合には、生産活動が拡大していても人々の生活水準の低下をもたらすことになります。』
ということで、物価上昇に関しては皆様と同じお話になっていますが、延々とこの話を強調しなければいけないってのは「日銀はコアCPIが上に振れたら何でも利上げしようとしてるのじゃないか」って思われているというのを相当意識してるんだなあという気が致しますですよ。
○やはりサブプライム問題ということで
でまあリスク要因について述べていますが、こちらに関しては「米国の減速」「原油価格の上昇(による交易条件の更なる悪化)」「製造業の悪化」という話をしてますが、まあ要するに最大の問題はサブプライムローンでしょうというお話になってましす。
『いずれにしても、世界経済の先行きに関する最大の不確実性は、国際金融市場の動揺がまだ沈静化していないことにあります。』
で、その次にデカップリング論に対する指摘が。
『世界の株価をみると、先進国と新興国の株価が連動して、年初から大幅に下落しています。金融市場では「デカップリング」が生じていないことが改めて認識されました。』
なるほどなるほど。んでまあサブプライムの説明がありますが割愛。
○冒頭にちょっと興味深いお話が
話は戻りまして挨拶の冒頭ですが。
『本日は、高知県における各界の皆様と懇談の機会を賜り、心より御礼申し上げます。高知支店は、太平洋戦争の下で現金手当ての円滑化を図るために、昭和18年11月に23番目の支店として開設されました。』
それはまた興味深い開設理由でございまする。
で、記者会見。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0802b.pdf
これまた一本ごとの質疑応答が長くて、質問の総量が少なめと来ておりまして、引用する方としては中々困ったちゃんなのですが(苦笑)。
○「人が変われば政策も変わる」云々の部分
金曜に申し上げましたように、この発言がヘッドラインに流れた時に、ロイターの飛ばしヘッドラインで持ち上がってその後ヘロヘロになったユーロ円金先が再度ちょっとだけ復活したのですが、さてその発言内容はと申しますと、まず質問から。
『(問)(前半割愛)次に、金融政策の継続性についてお伺いします。正副総裁は今年3月で任期が切れるかと思います。5年前は福井体制になって金融政策も量的緩和をさらに拡大したりする動きもあったかと思いますが、もちろん再任される可能性もあるとは思いますが、政策委員の9分の3が交替してしまうことにより金融政策が変わる可能性があるのかどうかという点についてお伺いします。』
で、それに対する岩田副総裁のお話。
『(答)(前半割愛)二番目の質問については、メンバーが替わればそれなりに金融政策の決定内容も変化があると思います。』
と、ここでヘッドラインになって市場は反応した訳ですが、その続き。
『合議制という点では、日本銀行は、世界の中央銀行を眺めてみますとどちらかというとバンク・オブ・イングランドに近く、各ボードメンバーの個人の意見を随分尊重しながら、その中で少しずつコンセンサスを形成するというやり方をとっております。個人の説明責任を充分考えながら全体としてのコンセンサス形成を図るという方法をとっていますので、その中でボードメンバーが例えば3分の1替わるということがあれば、それなりの変化はあり得ると思います。ただ、その変化がどのようになるかというのは、これからお決めになられる結果次第ということだろうと思います。』
うーむ、これでは別に衝撃の内容でも何でもありませんなあ。ということか、ヘッドラインで反応した人たちもまあ冷静に考えたらメンバーが替わったら変化生じるの当たり前ですがなという話になって木曜の金先市場も最初反応してその後失速という感じでしたわな。
○長国買入の件
微妙な釣り質問な気もしないでもないですが。
『(問)(前半割愛)三点目は、福井総裁体制の任期が終わりに近づいていますが、長期国債の買い切りについては、次期体制にどのように考え方を引き継いでいかれるのかお聞かせ下さい。現状、残存1年程度の利付国債の吸収が続いているとはいえ、実際、市場から1兆2千億円を吸収していることを考えると、長期国債の買い切りが国債市場にとって良いことなのかといった点についても、お考えをお聞かせ下さい。』
これに対して岩田副総裁は長期国債買入に関して説明しています。
『(答)(前半割愛)三番目の長期国債の買い入れのオペレーションについてですが、これはご指摘のように現在も続けています。私どもは既に以前からこの点についてはポジションを明快にしており、これも世界の中央銀行で共有している考え方であると思いますが、中長期的な観点から、経済の成長に必要な通貨を供給していく必要があります。その場合に中央銀行の資産と負債のバランスをよくみながら、成長通貨を供給するということであります。』
『もう少し具体的に言いますと、銀行券発行残高と日本銀行が保有している長期国債残高のバランスをよく考えながら、長期国債の買い入れ額を考えていくということであります。銀行券の発行残高と日本銀行が保有している長期国債の残高の差は、ある時期にはかなり接近していましたが、現在のところ、ある意味で余裕のある状況が続いております。従って、直ちに長期国債の買い入れについて変更する必要はないのではないかと思っております。』
とまあそんなことで、この前引用した各国の金融調節に関して解説している日銀のペーパーも併せてご覧いただければと存じます次第。
ちなみに、同じ質疑の中で利下げの可能性について質問がありましたが、岩田副総裁も先日の西村委員同様に利下げの可能性を否定しないというスタンスになっております。まあ下振れリスクを意識しているんですから当然ちゃあ当然ですが。
時間と量の都合上続きがあれば明日にでも。
2008/02/08
お題「ヘッドラインにご注意を(^^)」
昨日は高知県金融経済懇談会で岩田副総裁が挨拶。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0802a.htm
もともと市場的にはハト派認定なので、ハト派的な発言が出てもあまりサプライズにならない筈ですが・・・・・・
○消えたヘッドライン(笑)
講演の最後の部分で岩田副総裁はこのような話をしております。
『資金流動性と市場流動性が大きく変動するなかで、世界の中央銀行にとって、市場機能の円滑な発揮や信用供与チャネルの安定性を維持していくことは重要な課題です。日本銀行は、ゼロ金利や量的緩和の時期に金融不安を和らげ、デフレからの脱却を目指し、多様な手段を駆使して潤沢な流動性供給を行った経験があります。また、日本は、巨額の不良債権を処理した経験をもっています。過去の経験から日本が学んだことを国際的な場で生かしていくことは極めて重要な点であると思います。』
まあ普通のお話なんですが、日本語版ロイターのヘッドラインが・・・・
11:12 07Feb08 RTRS-日銀は量的緩和など多様な手段持っており、過去の経験から適切に対応可能=日銀副総裁
・・・・・その前にハト派ヘッドラインが並ぶ(これは講演内容の関係上当然ですが)最後にこれが打ち込まれたら、まあ普通「量的緩和政策への復帰を示唆かよ!」と反応したくなりますわな。
で、その時間開場しておりましたユーロ円金利先物市場では、9月限で99.400あたりから99.415レベルに上昇してしまいました。ちなみに他のベンダーどころか、ロイター英語版にも同じ意味のヘッドラインは無かった(そりゃまあ当たり前だわ)のですが、特にマネーマーケットにはロイター使いの人も多いようですので、日本語のヘッドラインに見事に釣られて買い上がった(踏み上がったのかもしれませんが)皆様におかれましては、まあ自己責任でございますが、誠にご愁傷様でございました。
でね、記事本文(確保していた魚拓です)を読みますとその部分はこうなっております。
『日銀としても、量的緩和など多様な手段を取った過去の経験を、国際的な場で活かしていくことが重要だと述べた。』
えーっと、ヘッドラインと記事本文内容が微妙に合っていないように思えるのですけれども・・・・・・・(-_-メ)
まあヘッドラインのフラッシュが先に出て、その時点では記事内容読めない(確かこの本文も最後のヘッドラインが出た後の11時28分以降に出たと記憶してるんだが)のでヘッドラインで反応してしまうのは致し方なしなのですけどね。
いやあのですな、モノが審議委員の金融経済懇談会での挨拶だったら要旨が殆ど間をおかずに日銀のサイトにアップされるのでそれ読めと思いますし、他のベンダーが全く流さないヘッドラインの場合は注意した方が良いというのとかってジョーシキだと思うんですけど(単独インタビューのような場合は裏の取りようが無いが)、慌て者さん大杉。
んでまあ友人と「いやあこのヘッドラインは酷いけど、金先って何で簡単に騙されるんですかねえ。金先見て反応しない方が良いよねー」などと話しておりましたら、ロイターが入ってる友人から「何か岩田副総裁関連のヘッドラインが全部無くなってるんですけど・・・・」というお告げが。
・・・・・・・・いつの間にやら11時6分以降に並んでいたロイター日本語版のヘッドラインが見事に全部消え、当該記事も消えておりまして、後からしらっとアップデート版の記事が出ておりますの巻。おまけに英語版の記事はそのまま残っているのがチャーミング(^^)。
当然ですが、ユーロ円金先様におかれましても昼休み(11時半から12時半)開けたらさっくりと下落致しまして、9月限は午後2時過ぎには99.390まで下落ということで、高値から2.5ティックの下落と相成りました(12月限はもうちょっと値動きしてました)。合掌。
えーっとですな、記事削除した位から適切じゃないヘッドラインってえのはロイターさんも認識してると思うんですけど、上記の挨拶要旨の文章のどこをどう読むと「量的緩和政策突入示唆」みたいなヘッドラインになるのか全く理解致しかねる次第でございます。マーケットに情報を流すニュースベンダーという性格上、どうしてもインパクトのあるヘッドラインを打つインセンティブが働くのは仕方ない面はあるんですが、それも程度問題でございまして、拡大解釈にも程がある報道をするのは報道機関としての姿勢を疑われても仕方ないんじゃないですかねえ。
・・・というか記者さんもっと勉強しましょうねって所なんでしょうけど。
ま、昨日はそんなことでありゃりゃな昼下がりなのでありました。しかし記事とヘッドライン全部削除して無かったことにする攻撃とは中々の大技。。。。
○しかしまあ過敏に反応しますねえ
で、午後には岩田副総裁の記者会見が行われました。会見内容は例によって今日アップされるのでしょうが、その中で(これは各社とも打っていましたが^^)執行部交代後の金融政策について、「執行部の顔ぶれが変れば金融政策の進め方に変化があってもおかしくないでしょ」的な(すいません手元にモノがなくて・・・)ヘッドラインがうたれていたのですけれども、それを見てまたまたユーロ円金先は買いで反応して、1ティックくらい上昇したあとに、良く考えたらそれって当たり前でしょということに気が付いたのかまたまた元に戻るの巻というのをやっておりました。
いやあの何だか良く判りませんけど、ユーロ円金先ってSEP08で0.5%を割り込んだだけの剛の者だけあって、何だかドタバタと動きますなあと思う次第であります。
どーせこりゃALMのスワップなども含めまして、上のロングと下のショートがどっちも捕まっていて、材料らしきものを見ると一生懸命上やったり下やったりしたくなるんでしょうねえと思うのでありました。金先恐るべしということで。
○すいません肝心の講演内容は後日
ということで、本日は金先の素敵な動きに魅了されてしまい、すっかりそっちの話ばかりになってしまい時間が無くなってしまいましたので、講演内容に関しましては週明けにでも。。。。基本的には景気に慎重だけれども、腰折れや後退をメインシナリオにするまでは至らず、でも警戒は警戒モードというほぼ市場が岩田副総裁に期待する(ってナンノコッチャですかな)内容でした。
2008/02/07
お題「しつこく輪番の話」
北ハマー先生の具体的数値砲オソロシス・・・・・・
○しつこく昨日の続きですが
阿部編集長ブログにやや脊髄反射して無い頭を無理に使って煙を出しながら2日にかけてうだうだと書きました結果、あたくしも日銀病罹患認定を賜りまして恐悦至極でございます(^^)。
さて、改めて本石町日記さんのコメント欄をゆっくり読み直したら、コメントの中で「飛車」さんが既に話をまとめていた事に今更ながら気が付くの巻。ちゃんと読んでおりませんで飛車さんすいませんすいません。
で、コメント欄から勝手に引用させていただきたく存じますわけですが。http://hongokucho.exblog.jp/7972046/の真ん中あたりになると思います。
(引用開始)
Commented by 飛車 at 2008-01-25 00:30 x
先に学とさんが書かれている。
僕も、国債買いオペは当座預金残高を増やし、少なくともデフレでない時には当座預金を預金準備率ギリギリまで貸し出しに回す=マネーサプライ増加という話だと理解しています。次の段階として運用先である短期金融市場などで金利が下がり、もともと意思決定として行われていた「目標金利」が実現されるわけで。最初に、「誘導目標を下げる」という決断を下すところが不況期に適切な金融政策であります。買いオペはその実現手段の一つですね。
ただ、これ短期金融市場が整備されている国の場合で、プリミティブな中央銀行は公定歩合で直接的に金利の底を指定するだろうし、預金準備率を動かすだろうし、あるいは金額を指定して買いオペをやる事になるのかなと。
また、デフレ下では当座預金がブタ積みされて貸し出しに回らないという議論もありますが、それはここ50年で日本しか経験していない特殊事例ですので、放置w。
で、銀行券は当座預金を現金で出金したり、不良紙幣の返品みたいな経路で入金されたりしないと増減しないので、こちらは完全に市中銀行に対して中央銀行は受動的であります。
こういう理解でよろしいでしょうか?
(引用終了)
・・・・あたくしが2日掛けてうだうだと書いた話が既にまとめられておりましたですな、いやはやこれは恐縮でございます(汗)。
例の3番の選択肢ってあたくしは間違いとは思いませんけど、「今の主要国の金融政策の実態としては」国債の買入に誘導目標金利の引き下げが伴わないと緩和効果が相殺されちゃいますし、大量の超過準備の存在を放置して短期金利の低下を放置した場合は、金融政策目標のディレクティブ違反になってしまいますので、(あくまでも現在の)実務からすると、もうちょっと書き方があるんじゃないですかなあというお話を申し上げていた次第でありまして、「買いオペやると金利が下がるというのが間違い」とは申したつもりは無い(というかそんなこと言う人ってふつういないでしょ)んですけどね、まあいっか。
まあ、準備預金率操作を欧米英日では最近は殆どやらないけど中国ではしょっちゅうやっていますとか、状況によって使われるツールが違う(一時期の米国みたいに金利が目標じゃ無かったときは短期金利の乱高下が普通に放置されたことだってある訳ですし)んで、まあ大学入試問題の選択肢を作るんなら「金融緩和/引き締め」ってシンプルなものにした方が吉なんじゃねえのと存じます次第。
○償還乗換に関して少々
話は変りまして輪番オペの償還乗換に関して(結局輪番かよ^^)。
一昨日色々と引用したと思うんですが、現在は日銀が買入などを行って自分の所の持ちになった長期国債は償還になると割引短期国債に乗り換え(なので新発の引受ですよね)られまして、いつの間にか短期の資金需給調節オペレーションの中に紛れ込んでしまうという状態になっておりますと存じます。
えーっと、そうなりますと輪番オペの目的として確か「成長通貨の供給」ってえのがあったかと存じますが、以前は買い入れた長期国債がそのまま償還乗換で長期国債にロールオーバーされるによって確かに長期国債の残高が積み上がったんで、日銀の長期資産が増えるの図ということになってたんですが、方式変えた時点で、長期国債が償還したそばから短国に化けて短期調節の中に入っちゃうので、それって微妙にありかたが変化してますなあというお話でございます。
おまけに利回り競争入札での買入でほぼ全銘柄対象になっている関係上、テクニカルに中短期国債が輪番で吸収されやすくなっておりますので、日銀保有の長期国債のターンオーバーがやたら早くなっている(筈です。ちゃんと計算してないけど)ので、ますます「ちょっと長めの短国買入」化しつつあるような感じでして、それってどんな成長通貨の供給なのよという気はせんでもない。
まあ難しい所なのですが、ちょっとこの輪番の位置づけに関してはちょっと見直しが必要なんじゃないかと思います。ま、ずっと将来の話でしょうが。
○さて物価連動国債入札
3日に渡って市場の話を華麗にスルーしているうちに10年と6MTBと3MFBの入札がございましたが、まあ入札の日にカーブがドカンと動くような入替するなよなとか、6Mも3兆円になって少しはマシになってきましたなあとか、3Mは相変わらずカレントだけ需給良くないですなあとか、まあ一応の感想はあるんですけど、へえへえそうですか程度だったりします(おい)。
で、今日は物価連動国債入札。
BEI的に見ればさすがにそんなに下は無いんじゃねーのとは思うのですけれども、そもそもBEIトレードで入ってくる人たちが瀕死の状態なので買いがはいらねえとか、足元で国債対比ネガティブキャリー(BEIがプラスだから当たり前)なので中々持ちにくいとかございますけれども。肝心のCPIが揮発油税いじられたら下がるとか、携帯キャリアのどこぞの禿が低料金プランを打ち込むと下がったり下がらなかったりするとか、どうにもこうにも経済予測の斜め上方面でぶらされる部分があって突っ込みにくい商品ですなあという感じ。
ま、そんなに悲惨なことになるとは思わないんですけど、今日米債の下げに反応してくれて(株が下がる方に反応する悪寒もするが)相場が下押ししてくれないと困りますなあという感じでございまする。
しかしこれもかつて「消費税が増税になるとウハウハですから今のうちに買いましょう」とか今にして思えば何という珍妙な営業トークと思うのですが、まーそんな営業トークとか、インデックスアルファリターンを求めるためにもやってみましょうとか、しばらく妙に人気化してしまった時代があり、その後ヘロヘロになってしまった商品ですんで、一度大やられした人たちの記憶が遠くなるか、配置転換になるまでは投資家様的にはどうにもこうにもって感じじゃないでしょうかねえ。
とまあ本日はそんなところで。
2008/02/06
お題「やはり金融政策と金融調節話の混同か・・・・」
ということで昨日は本人的には判り易く書いたつもりでございましたが、「おめーこれじゃわかんねーよ」という暖かいお言葉が太宗で誠に申し訳ございませんm(__)m
#ゆうちょ銀行が全銀に接続って・・・ダイジョウブナンデスカネ
○操作するのは「政策金利」ですというお話
あたくしが書き物しちゃったんで本石町日記さんの例のエントリー
http://hongokucho.exblog.jp/7972046/
のコメントがまた伸びておりまして恐縮至極でありまする。
で、何かテレビ番組で竹中センセイまでもがこのネタを取り上げていて、本石町日記さんの所のコメント氏が正しいという前提でお話をしますと、センセイはこのネタを「日本は政策の「イロハ」の「イ」ができていない例として取り上げられていました。」ということのようで。
いやあ残念無念としか申し上げようが無いのですが、オペレーションの技術的な話をしている相手に「政策のイロハのイができてない」とか言われましてもそれは話が噛み合わない(まあ本石町日記さんの元エントリーでオペレーションの技術と概念としての金融緩和/引き締めの違いについての説明を端折っているんで、釣り成分が入ってるかなあとは思うんですが)ですなあというお話。
昨日ご紹介した日銀のペーパーにもございますし、まあそれ以前の問題として竹中センセイあたりだったら先刻ご承知の介だと思うのですが、主要国(というか欧米英日)の中央銀行が金融政策を行う場合、操作するのは政策金利(オペ金利だのFF金利だのモノは違いますが)としての短期金融市場における金利でございますというのがこの駄文を書いている現在の状況でございますわな。
即ち、「中央銀行が行う金融政策」というのは(プルーデンスの話をするとややこしくなるし、そもそも高校の教科書では「銀行の銀行」という言葉がちょっと出てくる程度だったという記憶がありますのでここでは一旦スルー)政策金利の上げ下げによって行われるというのが欧米英日で現在実施されているモノでありますんで、政策金利が不変だと緩和/引き締めではございませんなあというお話になるというのが「現在の欧米英日での金融政策の運営」でありますってことですな。
ということで、例の設問の選択肢って「政策金利がどっちに行くかによっては適切だったり適切じゃなかったりする」というのがあったりする訳でして、2番の預金準備率操作って(中国では銀行の貸付を抑制する手段として使ってますけど)、実は預金準備率を引き下げながら政策金利の引き上げをやらかした場合(普通そんな事はやらないけど)やっぱり金融引き締めになるんじゃないですかねというお話になるんですわな。
もうちょっと判り易い(と本人が思っているだけ)言い方をしますと、「現在の欧米や日本などの主要国では金利操作で金融政策を実施しておりまして、預金準備率の操作(実際には殆ど使われない)や公開市場操作は短期市場金利を政策金利に誘導するための手段として使われております」という話になる次第ですが、んなこたあ高校の教科書に書いてるわけはございませんわな。
#・・・・・と、ここまで書いて気が付いたのですが、あたくしが高校生の時って規制金利時代でしたよorz(ジジイであることがバレバレ)
まあそれは兎も角。
○えーっとつまりですな
現在の欧米英日の金融政策運営という意味でお話しをした場合、例の選択肢のうち、明快に間違いな選択肢って1番「デフレが進んでいる時に通貨供給量を減少させる」と4番「好況期に市中銀行に資金を貸す際の金利を引き下げる」でありますというお話。
で、2番の「インフレが進んでいる時に預金準備率を引き下げる」はそもそも欧米英日だと預金準備率操作を金融緩和/引き締めの意味で使わない(調節の技術上実施する場合はあるんでしょう)ので何とも言えませんが、政策金利の変更が伴わないとすれば間違いになるって話なんでしょ。
では3番の「不況期に市中銀行から国債を買い入れる」って奴でございますが、昨日延々と引用致しましたように、公開市場操作による国債の買入というのは欧米英(と言いましてもそもそもユーロエリアでは国債の買入自体行っていませんが)では金融調節上の一手段としての位置づけでございますわな。するとど〜ゆ〜ことになるかと申しますと、これまた昨日も申し上げたように、国債の買入が増えた(そもそも設問では「増やす」と書いてないのも困ったもんなのですが)ぶんは、短期のオペレーションでの資金供給が減る(または吸収が増える)事になるちゅうお話であって、残念な事に「政策金利を変えないと短期のオペが長期のオペに振り替わるだけ」という結果になるんですよね。
・・・・という趣旨が本石町日記さんのエントリーと理解する次第なのでありまして、阿部編集長とか竹中センセイとかにおかれましては、人を罵倒する前にもうちょっと元の文章を読んでいただきたく存じます次第なのでありますけれども、過去のこの手の論争でいつも思うのは、「現在の金融政策実施における実務としては、このように行っているのでこうなるしかございませんのですが」と申し上げましても中々ご理解していただけないというお話でありまする。
#まあ高校の教科書という話であれば3番正解で無問題っすけど、その先の話となりますとね・・・・
まずは「現在の預金準備制度を利用した金融調節において、恒常的に大量の超過準備(急に引き出しが来たので系の不測の事態に備える予備的需要分を大幅に超えるという意味です)が存在する状態を放置していたら、短期市場金利はゼロ(または預金ファシリティがある場合そのファシリティ金利)まで下がってしまうので、金融政策の操作対象である政策金利がコントロールできていない事になる」という所からご理解を進めていただかないとどうにもこうにもという感じでございます・・・・・・
○量的緩和政策時代の生き残り?
えーっと、さっきしらっと欧米英と書きましたが、日本の場合はどうなんでしょと申しますと、速水総裁時代に導入された量的緩和政策下において当座預金残高目標に操作対象が変わり、この時に当座預金残高目標の引き上げと長期国債の買入額増額がセットになって金融政策決定会合で公表されるというのが続いてしまったんで、その時代のフレームワークに引っ張られてしまっている所が少々宜しくなかったりするっちゅう話ですわな。(ちなみに福井総裁になってからは当座預金残高目標引き上げても長期国債の買入額は増えませんでした、為念)
金利操作に戻った(また量的緩和に戻るかも知れませんがそのときはそのとき^^)時点で輪番オペの増減に関してはオペレーションの技術的マターに落としておければ良かったのかもしれない(定例実施モードに慣れきってますので債券市場の心の準備が全くできていないのが誠に遺憾なのですが、苦笑)んですけど、まあそもそも買入額がそこそこあるのと、参加者の方も輪番オペに関してそこまで割り切っている人はあんまりいないでしょう(それにそもそもの額がそこそこでかいし)と考えると急に輪番の位置づけを下げるというのも難しいのかも知れませんですね。
ということで、結局本日も煙に巻いてしまった気がする。うーん難しい・・・・
2008/02/05
お題「話題?のセンター試験ネタですが」
えーっと元ネタはごぞんじ本石町日記さんの
http://hongokucho.exblog.jp/7972046/
でして、何か燃料投下だったらすいませんすいません。(それより自分への燃料ですか)
○まあ答えは3番でしょうが
で、その問題ってのがこちら。
「中央銀行が行うと考えられる政策として最も適当なものを以下から選べ」
1−デフレが進んでいる時に通貨供給量を減少させる
2−インフレが進んでいる時に預金準備率を引き下げる
3−不況期に市中銀行から国債を買い入れる
4−好況期に市中銀行に資金を貸す際の金利を引き下げる
さて、あたくしがn年前(10<n<30)に高校の政治経済の授業で教わったのは(さすがに手元に高校の教科書は無いので記憶ベースですが、あたくし一応政治経済は得意科目のつもりだったので記憶違いは無いと思料)中央銀行が行う政策としては、(1)公定歩合操作、(2)準備預金操作、(3)公開市場操作、でありまして、その(3)がカッコ書きで「オープン・マーケット・オペレーション」ってなっててその英語が妙にカッコイイなと思った記憶がございます。何せn年前のことですので、その後教科書の記述はどうなったのかは全然存じませんが。
んでまあこの問題ですが、1と3と4が不適当。当時教わった記憶によりますと「買いオペレーション」をすれば市中に資金が放出されるので金融緩和というお話になってましたんで、まあこれは3番なんですな。少なくともあたくしの勉強したn年前の「高校の教科書」で言えば。
○んじゃまあ何で「正解がない」という話になるかと申しますと・・・・
本石町日記さんは『それはさておき、まじめに考えると、@は間違いである。Aも間違いで、しかも預金準備率の操作はもはや金融政策の手段ではない。Bは、好不況に関わらず、日銀は国債を買い入れている。Cは明確に間違いである。』って説明しているのですが、これがまあ絶妙の釣りになってしまって話題沸騰になったのはコメント欄とかコメント欄で紹介されているFacta編集長阿部さんのブログなどをご覧になればお判りの通り。
えーっと、要するに「好不況に関わらず日銀の国債買いは行われておりますので、不況期だけ買うわけではない」って意味で「正解はない」と本石町日記さんは書いていると理解したんですが、「不況なのに国債の買入=金融緩和を行おうとしないとはケシカラン!ムキーッ!」という反応になってしまったのは誠に残念無念としか申し上げようがございませんです、はい。
いわゆる「成長通貨の供給」という意味での長期国債買入(輪番オペ)という論点(実はこれが少々アレという話はこの先で行います)で考えますと、成長通貨の供給だけに基本的には年がら年中供給すべきものでありまして、好況だろうが不況だろうが国債の買入は行なわれるというお話になって、「不況時に国債を買い入れる」と殊更に不況時を強調されましてもそれはちと妙という話になるちゅう事ではございますな。
まあ、設問が「以下の中で最も適当なもの」を選ぶということなので間違っている3番以外の選択肢が消え、結局3番が正解にはなるんで「正解が無い」というのも問題に釣られているんですがね(^^)。
○ところで輪番オペの額に一々意味を持たせているのは・・・・・
ご案内の通り、日銀では月ごとの長期国債買入額を金融政策マターとして変更があった場合(最後に変更になったのは速水さん時代に遡りますけど)に決定会合議決事項として公表してるのですが、主要国の中央銀行で長期国債の買入額に対してこのようにウェイトを置いてるのは他には無かったりするんだなこれが。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research/data/ron0606c.pdf
こちらは何度かご紹介しましたが、大変よく纏まっているのでまあ読むべしと存じますもんですが、こちらの本文(いきなり本文なのでファイルのページと同じ)6ページ以降を読むとヨロシアルね。
『オペは、概念上、長期オペと短期オペに大別されることが多い。長期オペは、主に、銀行券など、中央銀行の安定的な負債に対応するものとして、長期的に資金を供給するための手段であり、国債の買入れがその典型例である。他方、短期オペは、主として一時的な資金過不足に対応するための手段であり、例えば、期間の短いレポ取引(債券等の売戻し条件付き買入れもしくは買戻し条件付き売却)や有担保の資金貸付けなどを通じて実施される。』
『金融調節において長期オペを用いると、一度に長期間に亘る資金供給を行うことが可能となり、短期金融市場において巨額の短期オペを頻繁に実施する必要性が低下する。この結果、中央銀行のオペにより短期金融市場における金利形成を歪めることを回避できるとともに、オペにかかる中央銀行・民間金融機関双方の実務負担も軽減することができる。他方、長期オペは中央銀行の資産の固定化にもつながるため、その規模が安定的な負債に見合わないものになると、資金過不足の変動に合わせて柔軟に金融調節を実施していくことがより難しくなる惧れがある。』
つまり国債の買入ってのは「足の長い資金供給オペ」でありまして、これをあまり打ち込みすぎると金融調節上短期で吸収オペを打たないといけなくなりますので、あんまり打ち込みすぎるのも良くないですし、逆にあまりにも打ち込みが足りないと短期の供給オペをやたらめったら打たないと回らなくなるという話。
打ち込みすぎたのを放置して量的緩和すりゃいいじゃないかとか言われそうですが、現在の準備預金制度を利用した金融調節手法(主要国は須らくこの手法ですわな)の下では、のべつまくなしに超過準備がある状態ですと翌日物金利が預金ファシリティ(ECB以外だとゼロ)まで低下するというのはご案内の通りかと。
でまあ日本の長期国債買入はご案内の通りと存じますので、上記のレポートから日本以外の長期オペに関する部分を引用致しますですよ。
『ロ) 米国
FRSでは、長期国債および短期国債の買入れを「永続的(permanent)な資金不足に対応する観点から実施するもの」と位置付け、国債保有残高の増加額が銀行券発行高の増加額に概ね見合うように買入れを行っている。国債の保有残高や買入総額に関しては、従来、FRSにおける金融政策の決定機関であるFOMC(Federal
Open Market Committee:連邦公開市場委員会)がFOMC会合間の純増減額に一定の制限を設けていたが、2005
年2 月以降は、金融調節上の必要に応じて適宜決定する扱いとなっている。年間や月間の買入れ予定額は事前に公表されない。2005
年中は、24 回のオペにより、総額248 億ドルを買い入れている。買入れは金利競争入札により行われる。』
『ハ) ユーロエリアおよび英国
ECBでは、長期オペに相当するものとして、Structural Operationsと呼ばれるオペ手段を制度上設けているが、これまでのところ実施されたことはない。その背景は必ずしも明らかではないが、ユーロシステム全体のバランスシートに占める金・外貨資産の比率がそもそも大きく、長期オペにより固定的な資産を積み増す必要性がさほど高くないといった事情による面もあるのではないかと考えられる。
対政府貸付など、固定資産の比率がECBと同様にもともと高かったBOEでも、従来は、期間が1
年を超えるオペ手段を有していなかった。こうしたなか、BOEは、2006年5 月に金融調節の枠組みの見直しを実施するに当たり、その一環として、債券買入オペを導入する方針を明らかにした。当面は、年平均40
億ポンドの英国国債のほか、これを若干下回る額の外貨建債券を買い入れることが予定されている。BOEでは、買入債券の残高を銀行券発行高の推移に応じて調整していくこととしている。』
で、まあ実際にどう運用してますかという話ですが、まあそちらは上記レポートの本文11ページをご覧いただければと存じますです。米国では長期オペの残高が多く、ユーロエリアは長期オペが実施されていないって話(2006年前半時点での話です)でして、好況不況と長期オペが関係あるというよりは、中央銀行の資産負債構成および資金需給の振れ方に依存するというのが実務のお話になりますなあという話になるんですな。
・・・・と書くと、阿部編集長ブログ風に言わせれば「日銀病に罹患しているので実務レベルの話に持ち込んで煙に巻くとはケシカラン」となるんでしょうなあ(吐息)。
○まあ時代によってやる方法も違ってますから
さっきの資料の最初の部分にはこのような記述がございます。
『米国や英国、ユーロエリア1を始めとする各国の中央銀行においても、現在、金融調節によって短期の市場金利を誘導することを通じ金融政策を運営するという枠組みがとられている。したがって、金融調節の円滑な運営は、中央銀行にとって重要な課題であり、各中央銀行とも、それぞれが置かれた金融市場の環境等を踏まえつつ、金融調節に関する制度の見直しや運営上の工夫に努めてきている。』
ということで、主要国のMPCで出てくるのは基本的には金利操作でこの前の流動性供給のようにたまにプルーデンス(を利用した裏口利下げもありましたが^^)と言ったところでございまして、準備預金操作は特に金融政策としてどうのこうのという事でもないですし、オペに関しては金利操作を実施するためのツールでございますなあという話になりますと、あたくしがn年前に高校で勉強したのは何でございましたんですかという気もせんでもない次第。
まあボルカー議長のFRBの一時期みたいにマネタリーベースだかマネーサプライだかを直接の操作対象にして金融調節を行った例もありますし、この手の話って時代によって話が違ってくるので、高校であたくしが勉強したのはそれはそれで良いのでしょうかとも思いますし、とは言え現在実務的には金利操作が金融政策として使われているのに金利操作以外の選択肢だらけというのも何ですなあとか思うのもありまして・・・・(と微妙にお茶を濁す)。
○長期国債買入の償還乗り換えに関して
http://www.boj.or.jp/theme/kokko_etc/giketsu/index.htm
このあたりの下の方を見ますと、『「対政府取引に関する基本要領」の制定等に関する件』ってえのがあると思います。FBが実質日銀引受(直近何日か前の公定歩合よりも低い利回りで定率公募されるので応募が基本的にゼロとなり、残額が日銀引受になる)だった状態から公募入札方式に変更になったのを機に制定されたんですな。
http://www.boj.or.jp/type/pub/pb_geppo/kako02/giji99037.htm
『2.償還期限到来国債の取扱い
償還期限の到来する本行保有国債(政府短期証券を除く。)について、借換えのための引受けを行う場合には、予め年度ごとに当委員会の決定を経て行うものとする。』
ってえことで、さっきの上のほうにある中で『平成12年度中に償還期限の到来する本行保有国債の借換えのための引受けの方針に関する件』というのがあるように、日銀が保有する長期国債が償還になると借り換えの為の引受が行われるんですが、
http://www.boj.or.jp/type/pub/pb_geppo/kako02/giji99129.htm
にもあるように、基本的にここ数年は割引短期国債で日銀乗換えが行われておりまして、その後ロールオーバーしてるのかしてないのか正直良く判らん(利付国債に関しては割引短期国債で乗り換えているのは判るのですが、その後の割引短期国債がどうなっているのかは良く判らんという話です)次第でございます。
ではこの平成12年度より前はどうなっていたかというのは、日銀のサイトはどうも旧法時代まではフォローしてくれないようですし、財務省の国債発行計画を見ても「日銀乗換」としか書いてないので総額は判るのですが割引短期国債で乗り換えているのか長期国債で乗り換えているのかが良くわからん(さすがにここから先は専門家の出番を待ちたいですぅ)のでありますが、確か長期国債で乗り換えていたと聞いておりますです。はい。
さて、延々と訳の判らん話をしておりますが、長期国債を買入ましてもその償還が現金で行われた場合、その分を何も手当てしないで放置した場合には資金吸収オペと同じ効果になってしまうので、あれれ成長通貨の供給ってのはどこにって話になるんですよね。同じ理屈で償還乗り換えが足の短い国債で行われた場合には短期の資金オペの中に混じってしまうような気がするんですが・・・・・・というお話。
となりますと、長期国債買入って単なる「足の長いオペ」って話ですなという話になるんですけれども、この輪番オペが入札方式のテクニカルな要因によって残存の短い国債が入り易いのでやたらターンオーバーが早いのですなあとか言う話をおっぱじめると益々訳の判らん話になって来るのでまあ本日はこの辺で。
・・・・・結局わけのわからん実務の話になってしまいましたすいませんすいません。
2008/02/04
お題「西村審議委員記者会見」
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0802a.pdf
全体的にはハト派の雰囲気が強いです。
○利下げを否定しなかったくだり
『(問) 本日の挨拶要旨の中で、「時々の経済・物価情勢に応じた柔軟な対処を考えていくのは当然のこと」とありましたが、これは利下げも含めて検討していくと受け止めても良いのでしょうか。』
変に途中で割愛しないでまる引用します。段落わけはしますが。
『(答) 本日お話したことは、過去もそうでしたし今後もそうですが、それぞれの時点時点でフォワードルッキングに先を読みながら、何が起こるかを想定し、その時点その時点で最も望ましい政策のタイミング、刻み幅、方向性といった具体的な内容を考えていくということですから、常に伸縮的に考えなければならないということをご説明しました。』
『従って、どの時点どの時点でも、今までもそうでしたしこれからもそうですが、全ての選択肢は当然のことながら排除する訳ではありません。その時点その時点で最も望ましいものを的確に判断しながら決めていくということが、少なくとも私が考えている政策決定のベストプラクティスだと思っています。』
ということで、このヘッドライン出たとき確かに先物とか反応していましたわなということで。ただユーロ円金先みたいにモロに短期金利な部分だと利下げネタは買いで反応できるんですけれども、より長いところに関しては、メジャードペースの利上げ路線が低金利引っ張る路線に転換した場合には普通に考えて期待インフレ率が上昇するんですから長期金利は上昇しますわなとなるので債券先物は反応しにくい面も。
んでまあこの応答に対して更にツッコミが。
『(問) 西村委員は先程、「すべてのオプションを排除しない」とおっしゃいましたが、今、日銀がはっきり言っているのは、徐々に金利を上げてきたから今後もその部分は崩れていないということだと思います。先週の日銀の調査統計局長の講演では、利下げの可能性について非常に大きな外的ショックがあってデフレの圧力が高まった時に限定して言われていましたが、委員もそのようにお考えですか。次に何をするか仄めかすことは日銀としてはしないということですが、今、徐々に金利を上げていくというフレームワーク、ポリシー・スタンスがある時に、例えば展望レポートとか毎月のレポートで何の前触れもなく、急にもうディレクション(方向性)が変わりましたというのはちょっと違うと思いますが、いかがですか。(以下割愛)』
またそれは意地悪質問で。
『(答) 最初のご質問につきましては、挨拶要旨でも説明していますが、基本的な考え方は、金利が非常に低い状態、つまりゼロから出発して、経済が非常に長い沈滞の状況から回復をしていく、調整過程でありますが回復をしていく、回復そのものは極めてゆっくりしたものであるということから考えるならば、全体の方向性としては上げる方向にあるだろうというのが、日本銀行が展望レポートで採っているスタンスです。』
『しかし、当然のことですが、その行程においては、経済にはいろいろなショックが入ってきたりしますから、そのショックに応じた対応を採るということは、「経済・物価情勢の改善の度合いに応じて」というところで明快にしてあります。「柔軟に対処する」というところで、それに関しての様々な方向性を含めた柔軟性というものを明確にしている訳です。(以下割愛)』
「経済・物価情勢の改善の度合いに応じて」という言葉もこれまた曲者ちゃあ曲者でありまして、「金利水準の調整」って言い方はメジャードペースの金利調整(要するに引き上げ)を示唆するような感じな上に、「フォワードルッキング」ってお話してるんですから、フォワードルッキングで金利調整をしますとなるとFRBのメジャードペース攻撃を想像したくなりますわな。
でも、西村さんのこの質疑応答を見ておりますと、「経済・物価情勢の改善の度合いに応じて」を足元ルッキングとして位置づけている訳でありまして、まあ都合が悪くなった(=経済がシナリオ通りに行かなかった)場合に足元ルッキングに軸足をそろりとシフトするという技が使えるというのが日銀マジックなのであります。恐るべし日銀文学。
まあそれは兎も角として、西村審議委員は利下げも含めてかなり柔軟に対応するというスタンスとなっていることは把握しました。でまあその後もこの点に関する質疑応答がやたら多かったのですけれども、無難な応答になってましたので、引用は割愛します。
○協調利下げについて
『(問) (前半割愛)次に、渡辺金融担当大臣が欧米との協調という面でも日銀も足並みを揃えるべきだということで利下げにも言及されていると思いますが、協調利下げについては現時点でどのようにお考えでしょうか。』
欧米の協調するなら財政(ry
『(答)(これまた前半割愛)それから協調ということですが、これはちょっと誤解があるかもしれませんが、12
月の米欧の中央銀行の資金供給については日本銀行も参加した形で協調的な行動が採られています。ただ、日本銀行は日本銀行そのもののところで起こっている訳ではありませんので、われわれとしては普通の手段で対応出来、実際対応しているということですが、しかし重要な点としては協調して問題に対処したということです。』
そういやまあこの時も「日本がどうのこうの」と批判する人もいたような気がしないでもないですな。市場実務的には「日本はこの辺りの対応ツールは何でも揃ってるから、海外がやっと追いつきましたなあ」くらいのもんでしたけれどもね。
『従って、協調というのは常に中央銀行間ではなされていることですし、その協調の表れがどうなるかということは、当然ながらそれぞれの国のそれぞれの状況に大きく依存する訳です。そういう状況でありますから、この中央銀行間の協調の体制は今後も堅持して、今後起こりうることについては対処していくという形になると思います。先程申し上げましたとおり、協調しながら対処するということは同じですが、その表れは各国の状況、各市場の状況によって違いが出てくることは極めて当然ということです。』
まあ協調するとしたら効果出る形でやらないと外れになった場合に市場から変に追い込まれてしまうというのもありますし、日銀が協調で利下げとかかましても政府がより一層の財政緊縮とかやらかしたら意味ねえ(しかも閣僚発言とかを見てますと「政府が財政措置などをやる余地無い」というのが繰り返されている次第ですから、より一層その悪寒が・・・・)わなと思うのですが、西村審議委員がそこまで考えているかどうかは別にして、協調対応に関してはあまり積極的ではなさそうだというのは理解しました。
○格差というか爬行色に関して
最初の説明のところでちょっと興味深い発言が。
『また、特に中央と地方の景況感の差について理解して欲しいというご要望があり、それに対しては、本日の挨拶要旨でも言及したように、ハードデータとソフトデータの違い、マクロの経済データに出ている姿と一人一票のサーベイデータ、センチメントサーベイに出てくるものの違いを的確に把握して、政策判断に活かしていきたいと考えており、日本銀行の中でもきちんとそうした議論がなされているということを私からお伝えしたところ、そういったことは非常に励みになるというお話を伺いました。』
講演要旨の中でもこの「ハードデータとソフトデータの違い」について言及されていた部分は金曜日にご紹介しましたが、講演要旨だけ見てますとどういう文脈なのかが今一歩よく判らなかったんですが、ここの説明を読みますと「ハードデータが強いからと言って強気の政策判断に結びつけるのでは無い」という文脈だったんですねということで、これまたハト派な発言ですなという感じであります。
ということで、本日は路面凍結の惧れがあるので引用ばかりで恐縮でございました(汗)。
2008/02/01
お題「西村審議委員講演」
徐々に「金融政策動かないですし」って感じになってきたんで、よほど突拍子も無い話が出ない限りあまり反応しなくなっているような感じはしますけど・・・・
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0801e.htm
○世界経済実体面の下振れリスクについて
『国際金融市場の動揺に加え、実体経済面でも、米国を中心に世界経済の不確実性は高まっています。』
ということで、西村さんも実体経済の下振れリスクに対して言及ということで、まあ審議委員の皆様揃い踏みと言った所でありますので、具体的な部分については引用を割愛しますが、米国経済の見通しに関してはこのように纏めています。
『このように不確実性は下方に大きく高まっていますが、大掴みで見ると、低成長ないしは停滞が当面相当程度続いたあと、その後は住宅市場の調整に応じる形で、潜在成長率近傍の成長経路に向かった動きが出てくるというシナリオに蓋然性があるように思います。』
ということで、まあ下振れをかなり意識しつつという所。
『こうした中、FRBは昨年9月以降、政策金利であるFFレートを順次引き下げ、1月22日には緊急の利下げに踏み切り、米国政府は1月18日に財政支出による景気刺激策を公表しました。今後は、これら一連の景気刺激策がどの程度米国経済を下支えしていくか注意深く見ていく必要があります。』
そして所謂デカップリング論に関しても。
『このように、世界経済は足もと米国経済の弱さをその他の地域が補う形で拡大を続けており、今後も減速しながらも拡大方向の動きを続ける蓋然性は十分にあります。しかし米国経済や国際金融資本市場の調整が長期化し、かつ、深まっている中では、下振れリスクが高まっていることも事実です。』
とまあこちらも不透明不透明。
○国内のマインドとハードデータの差異に関して
『わが国経済は、足もと建設投資の落ち込みや、原材料価格高騰の影響などから減速していますが、基調としては緩やかな成長軌道にあると考えられます。先行きも当面は減速が続くと考えられますが、その後は緩やかな成長軌道に戻ると思われます。ただ日本経済と世界経済のリンクが強まっている中で、世界経済の実物面の下振れリスクと物価面の上振れリスクが日本経済の今後に影響を及ぼす点には十分な注意が必要です。』
というのはこれまた皆さんと同じでして、項目別展開も概ね皆さんと似た話になっていますが、マインド面とハードデータに関する指摘が西村審議委員独自の部分って感じであります。
『このように現状は、改正建築基準法の影響が依然として強く残る建設投資を除けばマクロ経済のハードデータは若干の弱さを示す程度です。しかし対照的に、景気ウォッチャー調査や消費動向調査、生活意識アンケート調査等、センチメントを示すソフトデータには大きく低下しているものが少なくありません。』
さてそれは何故でしょうということを西村さん解説。
『景気判断の基礎となるGDPなどの指標は単純化すれば支出額ベースであり、支出の多い企業・家計の動向に、より強く依存します。これに対してセンチメントサーベイである、景気ウォッチャー調査や消費動向調査、生活意識アンケート調査等のサーベイデータは、一人一票の世界です。』
ふむふむ。
『従って数の多い中小企業、数の多い平均以下の所得層をより強く代表しています。センチメントサーベイで2007年中葉から大きく悪化したものが多いのは、好調な外需の恩恵を受ける企業(大企業とその関連企業)に比べると内需にもっぱら依存した企業(中小企業が多い)の業況が相対的に伸びにくくなっていること、好調な外需関連企業からの波及を享受する家計層に比べて、そうでない家計層では所得の伸びが鈍化していることを示していると思われます。』
それは確かにご指摘のとおりのような気がします。だからどうなのよという話が後続が無いのが残念なのですが。
○国内物価に関して
『ここで注意したいのは直近の物価指数、12月の全国そして1月の東京都速報、に見られる動きです。内訳を見ると、国際的な原油価格、穀物価格の上昇からガソリン・灯油価格そして外食を含めた食品価格が上昇した影響が大きいのは事実です。と同時に、原材料価格高騰とは直接結びつかないサービス価格にも上昇傾向が表れていることを見逃すことはできません。また品質向上が著しいため品質調整後価格の低下が大きかった耐久消費財の一部でもしっかりした需要を反映して品質調整後価格の低下幅を縮める製品も出てきています。』
『物価変動の傾向を見るため、大きく上昇したり下落したりした品目を外して平均をとる10%刈込平均物価上昇率でみても、上昇率はプラスに定着してきています。』
おお久しぶりに10%刈込平均が。10%刈込平均はずっとプラス(と言っても0コンマ何ぼの世界ですけれども)推移なんですよね確か。
で、この物価上昇に関してどう見るかなのですが。
『欧米に比べ日本の物価上昇率が低かったのは、第一にサービス価格が欧米ではコンスタントに上昇していたのに対して日本ではこの十数年間殆ど上昇しなかったことと、第二に品質向上の著しいIT関連耐久消費財の品質調整後価格の低下幅が日本で大きかったことが主要な理由です。』
なるほどなるほど。えーっとそうしますと第二の部分ってもしかしてヘドニック効き過ぎの面があったりするのでしょうか。
『IT関連をのぞく財の価格の動きを見ると日本と欧米の差はさほど際だったものではありません。従って日本のインフレ率の推移を見通す際に、これらサービス価格や耐久消費財価格の一部に見える上昇幅の拡大(下落幅の縮小)が持続するのかどうかが、鍵となります。』
で、その後で物価上昇の悪影響に関して指摘しています。
『また原材料価格の高騰を製品サービス価格にどの程度転嫁できるかは、中小零細企業の収益にも響くことでもあります。原油価格、穀物価格上昇の影響の裏に隠れがちな小さな変化ですが、ごく最近の物価データに見られるこの動きは慎重に見守る必要があるでしょう。
』
○今般の景気回復メカニズムに関して
『以上、経済物価情勢の現状と見通しについて説明いたしました。少し視野を広げて、経済物価情勢の現状が、七年目に入った今般景気回復の基本的メカニズムの変調を示しているのかどうか、検討してみたいと思います。』
『今般の景気回復は、国の内外で需要を生む成長エンジンの多様さとそのバラツキの大きさに特徴づけられます。そのため、生産から所得そして消費への波及は従来型の景気回復に比べて底堅いものの、盛り上がりには欠けるものでした。』
で具体的な説明の後、
『このように、小さな主役が頻繁に交代し底堅いのですが、そもそも景気回復に力強さがあった訳ではありません。従って需給ギャップはプラス領域にあるとは考えられるものの急速に引き締まるというより一進一退の状況であったと言えます。そうした背景の下で、建築基準法改正の影響等から元々力強さに欠ける成長が更に一旦鈍化するという状況となりました。』
で、具体例をして建設投資と不動産市場全体の話をし上でまとめは、
『このように考えると、現状は、減速感はあるものの、景気を動かす基本的なメカニズムに足許で大きな変化は見られないというのが適切な判断と思われます。』
ということになっています。うーむ、こういう話ですと悪化とか失速という判断に中々行きにくいような気もする。足踏みは延々と足踏みになるんでしょうけれども。。。。
○金融政策に関してはかなり柔軟に
展望レポートに関する説明部分は割愛しまして、具体的な政策の部分を。
『さて、日本銀行はこれまで、日本経済が物価安定のもとで底堅く拡大を続けるとの判断のもとで、金利水準を徐々に調整してきました。そのペースについては、日本経済が長い沈滞状況から新しい成長経路への調整プロセスの途上にあることを考慮し、見通しの蓋然性や上下両方向のリスクを十分に点検しながら、ゆっくりと柔軟に決定してきました。こうした考え方は、現在の景気を動かす基本的なメカニズムに変調が見られないのであれば、これからも基本的に維持することになると考えられます。』
で、例によってこの部分までを切ったヘッドラインが打たれていましたが、市場は全然反応しないのがチャーミング。ちなみに次にこのような説明がありますので、実は利下げだって視野に入っているとなるのですけど・・・・・
『と同時に、すでに中間評価のところで説明を加えました通り、現在は10月展望レポートに比して下振れ、後ずれの状態にあり、また「見通し」に対して様々なリスク要因が存在しています。仮にこうしたリスクが現実化する蓋然性が高まるような場合には、当然ながらそうした要因の影響の深さ、広がり、期間を勘案し、時々の経済・物価情勢に応じた柔軟な対処を考えていくのは当然のことです。』
会見でもこの点について突っ込まれてて、利下げの可能性だって排除しませんと取れる質疑応答だったのでほんのちょっとだけ反応したような感じでしたが、何せ月末なもんでインデックス系投資家のリバランスで大変な時間帯で反応してる暇が無かったという感じだったのではないかと(^^)。
『しかしながら現在のところはリスク要因が顕現化する蓋然性はまだ低い状態で、慎重に見守るのが適切な対応であると考えています。
』
ということで結論としては現状維持なんですが、時と場合によっては利下げだって対応するというのは当然ですよって話になっている(別に利下げするとは言ってませんが)のは金利水準調整路線の休止を意味するという所になるんでしょう。
でもヘッドライン打つときに引用部分の最初を切り取られてるくらいですから、どうせ報道される時になると、報道するサイドに「日銀は利上げ」という観念が染み付いている関係上、最初の部分にフォーカス当てた報道をされちゃうんじゃないのかなあという感じではありまする。後半部分の「柔軟な姿勢」にスポットライト当てた報道する所はあるのかなあ。。。。。