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2007/11/30
お題「またまた国会ネタで恐縮至極(しかも雑談ネタ)」
ぐっちーさんのところで紹介されたらアクセス数が物凄い勢いで伸びましたですな。どうもどうもです。
http://blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55/e/51a1d74335ee6c3b19682de1b7aca866
変な資格試験とかこれ以上増やされても困りますよね〜。
○国会会議録はオモシロス
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0105/168/16811060060004a.html
11月6日の参議院財政金融委員会では金融政策に関する質疑ということで、参考人として植田和男さん、高橋進さん、高田創さん、加藤出さんが出席して金融政策に関する質疑が行われておりまして、これも中々面白いのですが(ちなみに質疑の後半です)、本日はオモシロネタということで質疑の最初にありました日銀の株式買入その後に関する珍妙な質疑応答をば。質問者は民主党・新緑風会の大久保勉委員でございます。
日銀が金融機関の株式を買入したものが含み益1兆6221億円(9月末時点)ありますよという質疑の後に、買入株式の処分について質問がありまました。
で、発行会社から時価による自社株買入れの要請を受けた場合などのケースで処分したのが全体の19%になるという武藤副総裁の答弁があったのですが・・・・・
『○大久保勉君 分かりました。幾つかの論点がありまして、まず一九%も買入れ処分をしたと。原則しないというのに一九%。私は、二〇%に近い数字というのは原則に当たらないと思うんですよね。つまり、二〇%も処分しているということは、しないと言っているのに勝手にしてしまって、日銀はどういう運営をしているか、非常に疑問です。』
えーっと、日銀が能動的に処分してるんじゃないんですけど・・・・
『二点目は、その間に実現益としましては二千億以上の利益が上がっています。そういう意味では、日銀の年間の収入になっていまして、その分、いろんな経費と相殺できますから、その分、羽ぶりがいいということですね。一部は国庫に納付されていると思いますが、この辺り、もう少し詳しい説明が後日してもらいたいなと思っております。』
日銀の決算は公開されてますのでそれを見てから質問してください。
『もう一つ、これが一番重要なんですが、自社株買いを受け入れたということです。じゃ、どういう株式を処分したのか。これは、インサイダー取引とか、若しくは株式市場に大きい影響がありますから、日銀としてこういったことをやることは非常に難しい。場合によっては不適切なケースがありますから、この辺りに関して質問をしたいと思います。どういう基準で自社株買いをしたんですか。インサイダー取引のおそれはなかったんですか。』
時価ベースでの自社株買いで相対取引ですからあんまり影響ないと思うんですけれども。まあ確かに決算に影響する重要事実の公表前に自社株買いをする発行体がいたらそれはそれで問題ですが、それは買う方をふんじばれば良い話でして、そもそも日銀は知ったこっちゃあねえと思うんですが。
ということで、当然ながら華麗に受け流されたのですけど、その次に保有銘柄の状況に対する情報管理について質問してまして、その続き。
『○大久保勉君 分かりました。非常に厳しい制度を設けて、情報漏えいを起こさないということが分かりました。そういう意味ではきっちりなされていると思いますが、万々が一のことがありますから、そもそも日本銀行が特定の株式を持つことが適切であるか、こういったことを是非議論してもらいたいと思うんです。この株式保有に関しましては、平時の段階では適切じゃないと私は考えておりまして、早急にバランスシートから外しまして日銀の個別の金融政策に影響させないということが是非とも必要だと思っています。』
おまえはさっき売ったのが問題みたいな質問をしてなかったかと小一時間。まあ中央銀行が個別株式を保有するのはどうなのよという論点は判らんでもないですが、それを突っ込みだすと担保政策とかの話にも繋がるのでそれはそれでオモロイかも。
で、その次に中々いい感じで腰の砕けるお話が。
『ちょっと質問を飛ばしまして、財務大臣にここは質問したいんですが、もし日本銀行のバランスシートから外すということでしたら、是非国の方、財務省の方で管理したらどうかなと思います。例えば、預金保険機構とか、若しくは何らかの特別会計にもうそのまま日本銀行の株式を移してしまうと。具体的には、買入れした簿価に若干の保有コスト、若干のマージンを入れたものをそのまま預金保険機構とか特別会計に移管してしまうと、こういったことが一番適切だと思います。』
・・・・・????
『この中には株式の含み益としまして二兆円弱の含み益がありますから、非常に国庫に対して寄与すると思います。』
あのー大久保先生「贈与税」ってものご存知でしょうか????
『これまで銀行の破綻等によって大量の税金が投入されましたから、当然ながらその関連取引で利益が上がるんでしたらその利益は当然国庫に返してもらう、これが原則だと思いますが、大臣の大きい立場での議論を聞きたいと思います。』
利益が出たら全部国庫納付というのは一つの筋ですが、その場合は損失が出た場合は全部国が穴埋めするという形じゃないとバランスが取れないと思う(まあ今の状況で損は出ませんが)んですが(最初の仕切りはそうなってません)。というか金融危機対応で日銀特融で回収が大変なものとかあったような気がするんですけど・・・・・・
『○国務大臣(額賀福志郎君)(主論の部分は思いっきり割愛)日本銀行が買い入れた株式の処分により利益が生じた場合は、剰余金が増加をして、国庫納付が増加することを通じて国家財政にも寄与しているというのが現状の実態であるというふうに思います。』
どう見てもこれが筋。
で、大久保先生におかれましては、その利益を元に日銀が過剰な設備投資をするかもしれない(以前戸田分館の件で質問したんですよね)から召し上げてしまえという話をしたかったようです。
『○大久保勉君 大臣、認識が若干甘いですね。つまり、日銀が株式を売却して利益が上がりましたら、それは一般的な収入になりますから、一般的な支出、例えば人件費とかいろんなシステム投資でコストが引かれて、余った分が国庫に納付されます。一部は剰余金として引き続き日銀が持つことになります。ここで重要なのは、毎年二千億近く利益が日銀に上がりますから、そのことによりまして日銀の運営が甘くなってしまうと。無駄なシステム投資をすると。過去には戸田分館の問題をいろいろ指摘しました。相当無駄な投資をしている。あるときには、日銀というのはシステム会社でありますからいろんなシステムコンサルを雇っていますが、そこに天下っているという事実も明らかになっています。ですから、こういった状況があるんだったら、もう含み益をそのまま国庫に移してしまうということできっちり管理した方がいいんじゃないかという御提案なんです。(以下割愛)』
趣旨は判らんでもないが、あまりにも乱暴な話だし、そもそも日銀の経営執行状況に関してのチェック機能だってある訳でして。
『○国務大臣(額賀福志郎君)(前半割愛)ただ、これは日銀法五条第一項に、日本銀行は、その業務及び財産の公共性にかんがみ、適正かつ効率的に業務を運営するように努めなければならないというふうに書いてありますから、しっかりと執行していただきたいと思うし、財務省もやっぱり人件費とかその経費、予算については、認可に当たってチェックをしていく機能がありますから、大久保委員の御指摘するようなことがないようにしっかりと対応していきたいというふうに思います。』
という答弁の次に行われた渡辺大臣のこの答弁は・・・・
『○国務大臣(渡辺喜美君) 大変面白い御提案だと思いますね。預金保険機構でいただけるものだったらいただきたいと思いますが、なかなかそう簡単でもなさそうであります。だれがお金を工面するか、一体幾らぐらい対価を払ったらいいか、ちょっと厄介な法制面の問題もございますので慎重に検討してまいりたいと思います。』
・・・・・・・・・(゜д゜)
ギャグなのかマジなのかよく判りませんけどね。
2007/11/29
お題「国債市場懇とかその他の小ネタ」
利下げ示唆でダウ大上昇ですかそうですか。
○国債市場特別参加者会合に関連して
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/c191122.htm
ストリップス債の利札部分の買入消却がどうのこうのというお話を一昨日申し上げた次第でございますが、国債発行計画に関する話でどこの年限を増やす減らすという話はまたまた例によって目先のポジショントークする人がいたりして(ちゃんと長期的な視点で話をしてる人もいますので念の為)、毎度お馴染みのパターンですなあと言う感じでございます。
ま、それはいつもの仕様ですので良いとして、買入消却とか流動性供給入札とか原則リオープンとかの意見を見てましてあたくしも雑感。
・原則リオープンの話
『1銘柄当たりの流動性を増やすということは、結果的には、投資家、業者の双方にとってメリットがあると考えており、原則リオープンを全年限で実施する方向で進めていただきたい。』
『5年債、10年債については、現在の発行額で流動性は保たれていると考えており、今の段階で原則リオープンを実施する必要はないのではないか。』
『原則リオープンを実施していないことによって、銘柄数が非常に多くなっており、決済の際に必要玉が確保できないといった様々なトラブルを引き起す可能性を孕んでいると考えている。原則リオープンにより銘柄数が減ると、業者にとってはロング・ショートで多くのポジションを抱える必要性が薄れて資本のユーセージが少なくなり、B/S圧縮に繋がって、レポコスト減少とあわせ、ビジネスがやりやすくなるメリットがある。(以下割愛)』
原則リオープンに関してですが、時価評価を推し進めるとそんなの関係ねえな筈ですが、今のところ銘柄多いほうが簿価分散できるとかいうメリットはありますので、反対する投資家もいるというのは判らんではないです。ただ、あたくしの個人的印象を申し上げますと、簿価分散もさることながら償還タイミングの分散もそれはそれで再投資リスクを下げるためには便利なお話ではないかと思う次第でございます。そんなことを考えますと、本当は原則リオープンに適しているのは既に償還や利払いが四半期ごとに設定されている5年とか10年とか20年とか(タイミングずれてるけど15年もそうですね)に適用するのが吉な気がする次第。
#というか償還が無いのに入札するのも妙なので四半期入札で宜しいのではないかと存じますが・・・・
逆に2年国債などは毎月の償還と毎月の発行というのがバランスしていますし、年限的に短いゾーンに該当するので、TB/FBの親戚と認識して頂くと宜しいのではないかと思いまする。償還が4半期で発行が毎月というミスマッチが起きるのはこの年限ではバランスとしてどうよと思いますがどうでしょ。
ま、あたしゃ原則リオープンというよりは四半期発行でよかですたいな人ですので、原則リオープンは賛成でございますが。
・流動性供給入札と買入消却に関連して
あたくしはこの意見に大体賛成(自作自演じゃないですよ^^)なんですけどね。ちと長いんですけど段落わけしながら。
『残存15年ゾーン全体での流動性が不足しているとのことで流動性供給入札の制度が導入されたが、その結果、流動性不足が解消され、カーブの歪みが解消されたことについては非常に意義があった。この制度を拡大するスタンスとの認識であるが、その在り方について十分影響を考慮したほうが良い。不足しているゾーンを埋めるということに関してはマーケットメイクする立場としても影響は無い。』
左様でございますな。
『しかし、ゾーン全体としては足りていながら、その中で不足している銘柄を埋めるということであれば、業者にとって、銘柄だけ見ればショートが埋まるため有り難いが、各銘柄の過不足がバランスしてイールドカーブが形成されているので、不足している銘柄をピンポイントで供給すると、ゾーン全体としてはダブついてカーブが歪む可能性がある。』
誠に仰せの通りでございます。
『業者は、不足している銘柄には不足している銘柄なりの価格を付けてマーケットメイクしているが、追加供給されることにより、その価格が変わってしまうという不確定要素が増えることはマイナスである。業者として、いろいろなカーブの形で在庫を持ちながら営業しているが、カーブの形状が追加供給で変わるとなると、管理が難しくなる。』
『万人が納得するコンセンサスを作るのは難しいと思うが、新発債を在庫として持つことが多いので、少なくとも新発債に影響を与えるような制度は避けたほうが良い。手前の銘柄が不足していても、その銘柄が不足しているなりのカーブ形状があり、一方で新発債が生まれてくるが、新発債を持っている状態でその近辺の銘柄が供給されるとその部分のカーブが変わるので、マーケットメイクがしづらくなる。』
『不足しているゾーンを埋めるという制度は分かりやすかったが、拡大することについては様々な配慮が必要である。新発債の在庫は常に持っているので、そのカーブ形成が容易には予測できない要因によってふらつくと、業者としてはやりづらい。新発債に近い残存4年、9年、19年、29年は避けるなどの配慮があっていいと思う。』
まあそりゃそうですな。で、この問題なんですけど、現物国債の流動性に関しては、規制上品貸しが難しい人がいるとか、事務負担が重いので品貸しをする場合ではない人がいるとか(スクイーズ類似行為をする外道は論外)といったSCレポ市場の整備をするのが本筋じゃネーノかと思う次第。まあこの点に関しては財務省だけでどうこうなる問題じゃないですけれども。
#一番手っ取り早い解決策は証券決済のRTGSを止めて(DVPを止めろとは申してませんので勘違いの無いように)時点決済に戻す事なんですけど
現物国債の流動性問題という話を目にするたびに、本邦株式市場の信用取引制度って偉大だなあと感心するのであります。値付けのやりかたとか制度信用とか、日本の証券市場での決め事って物凄く合理的に出来ていると思うんですよね。ガイジンには判りにくいのでしょっちゅう文句がでるので、かつて債券先物で端末システムを変えたついでに値付けルールを変更したらエライコッチャな事が起きたのは年寄りの記憶には新しいですよね。
話が逸れちゃいましたが(苦笑)、一昨日申し上げた「ストリップス債の利息部分の買入消却」も、この流動性供給入札もそうなんですが、確かに現行の法令諸規則を考えるとこういう方法でやっていくのが早いというのは理解するのでありますけれども、本当はストリップスの元本にニーズがある(そりゃ再投資リスクなくなるしデュレーション伸びるからニーズあるでしょ)ならゼロクーポンの超長期を発行すればいい話ですし、現物国債の流動性って保有する機関投資家がレポ市場への品貸しを積極的に行えばそれなりに解消される問題なんで、まあそっちの方からのアプローチも欲しいなと(いうのをこの会合に求めるのはやや筋違いですけどね)思うのでありました。
○具体論に落とすとなぜこうなる・・・・
ちと古い話ですが。
http://www.fsa.go.jp/frtc/kenkyu/20071116.html
『我が国金融・資本市場の競争力強化を実現するためには、市場の発展を担う人材の確保・育成が急務であり、また、市場参加者においても当局においても共通のコンプライアンス感覚を有する人材が確保されることは、より良い規制環境(ベター・レギュレーション)の実現に資するものと考えられます。』
何を仰りたいのかさっぱり判らないのはあたくしの知能に問題があるからでございますかそうですか><;
『こうした観点から、我が国金融システムを担う専門人材に必要とされる知識及び資質についての幅広い検討を行うため、金融庁金融研究研修センター(センター長:吉野直行慶應義塾大学教授)において、「金融専門人材に関する研究会」を開催いたします。』
何のこっちゃという感じでございますが、そのメンバーを見ると証券アナリストみたいな流れの人とか、評論家な流れの人とかで、市場のプレーヤーらしき匂いがあまり漂ってこないのですが、何がどうなるとこういうメンバーになっておまけに『金融システムを担う専門人材に必要とされる知識及び資質』って益々訳判らんでありまする・・・・・
担当相様肝いり案件じゃない事を祈りたいのですが、どうもこの「ベター・レギュレーション」というあたりに担当相肝いり臭がプンプンするところでございます次第でして、概念的な話をしている分にはまあ良い話しをするんで割と業界では評判が宜しい担当相さまでございますけれども、具体的実務的レベルに降ろすと一気に訳判らん動きにでる(公務員制度改革とか独立行政法人民営化とかでもそうだとあたしゃ思うんですが)のがあたくしにはどうも勘弁願いたいと思うんですよね。
前にも似たようなことを申し上げましたが、よく考えたら「生兵法は怪我の元」という良い言葉があるのを思い出しましたわ、あっはっは。
○米国サブプライム雑談
昨日のニュースでほほうと思ったのはこいつ。
12:32 28Nov07 RTRS-米ファニーメイ、幹部が異例の自社株購入
ファニーメイの幹部15人が過去2週間で総額220万ドルの自社株を購入しましたこりゃ珍しいですね市場にメッセージを送ってるつもりなんでしょうかね、というニュースでありまする。
いやまあほほうと思っただけの事ですけどね。。。。
2007/11/28
お題「相場雑談その他」
○2日連続オーバーランチでギャップダウンとは
昨日の金融市場はご案内の通り昼休み時間に米シティの優先出資証券をアブダビ投資庁が購入というお話で物凄い勢いでギャップを空けて株価指数は上るわ債券は下がるわとなりましたわな。
昨日に関してはその前が米国株安債券高を受けてそのまんま窓を空けて株安債券高をやるという動きでしたんで、一日の前場と後場の寄り付きで窓空けとは勘弁して欲しいですな。しかも結局レンジ内とはナンノコッチャでございます。
まあ一昨日の中国なんちゃらみたいな雲を掴むような話ではございませんので反応したのは判りますけど、何もそんなに派手派手に動かなくても良いのにという感じでして、まあ相場自体に煮詰まり感と申しますか、宴の終盤っぽい感じ(あたくし的には宴の終焉になるにはもうちょっと日柄調整が欲しいと思うのですが)がしているの巻でどっちに行って良いやら右往左往という所なのでしょうな。
と申しますか、毎日目先のネタでぶれまくる米国債券市場(株もそうですが)の右往左往振りの方が呆れるのでございます次第でして、日替わりでサブプライム問題が浮上したり片付いたりの連続って何やってんだよとしか申し上げようがございません。サブプライム問題って目先のフローで一喜一憂するような話じゃなくて、もうちょっと長いスパンの話じゃねえのかよと思うんですけどねえ。
まあそんな感じですので、要するに各市場とも不安定と言ってしまえばそれまでですが、何がどうなっているのやらという所で。
○そういえば月末受渡
昨日のレギュラー受渡は11月最終営業日でございました。で、レギュラースタートのGCレポ取引がしらっと上昇して一時は0.60%レベルになる場面もあったそうで、11月末だから決算要因とかもあるのかねという感じでございます。先週の終わりくらいからGCレートが微妙に確りしてるのですが、月末抜けた所で落ち着くのか微妙に確りしたままなのかはよく判らん(多分カレンダーベースで月末か月初の税揚げ抜けたら一旦下がるんじゃねえのかとは思いますが)。
そんな中でFBのレートとかは全然動じず3か月で0.55%〜0.555%という感じで推移してるみたいですが、こっちはこっちで3月償還物の国債に対するニーズとかあるようですので、足元の金利と別の論理で動く人の買いがあって市場が微妙に分断されているって感じでしょうか(ちょっと重くなって来たようには思えますが)。
その一方で(昨日日経でネタになってたらしいですが)CPレートが微妙に高いという話はあったんですけれども、昨日はスポットが29日スタートだったので月末資金需要対応のCP発行がそこそこありまして、高格付けかつ上位発行体と目されている所のレートは、金融ネームのレートからそこそこ格差つけて(当然低い)発行されていますので、まあ短い所でも銘柄間格差(頂点にTB/FBがいるわけですが)は相変わらず平常時よりも目立ちますなあという所です。
今日は3か月FBの入札にスポット月末で税揚げや賞与資金、年末越えニーズ対応のCP発行とネタは盛りだくさんなのですけれども、昨日のニュースとそれを受けた米国市場の動きがどう影響するかワクワクテカテカ。運用サイドのニーズもあると思いますが、レート水準がそもそもこの有様なのでニーズ大殺到とは行かない気も(ちょっと上ればニーズドカドカでしょうけれどもね)しますです、はい。
○サブプライム雑感
アブダビ投資庁がどうのこうのという話に早速本石町日記さんがエントリーを→http://hongokucho.exblog.jp/7758681/
あたくしも「ちょっとタイミング早いんジャマイカ」と思うところでありますけれどもそれはそれとして、こりゃまさに「バブルの傷をバブルで癒す」の図ですなあと思った次第でございまして、何ともはーこりゃこりゃとしか(何のこっちゃ)言いようが無いですなあと思うのでありました。
まあ傍観者というか野次馬的に見ておりますと米国もまあ威勢良く炎上しますなあとか思うんですけれども、何が炎上かと言いますと当局間の連携とか危機感の共有とかがちゃんとワークしてねえなってえ所でございます。折角FEDが(端から見てると危機感持って動いてるのFEDだけにしか見えない)動いてる側から司法当局が張り切って粉飾叩きしてみたり、ご当局様に人材を沢山ご輩出されておられるどこぞの有力投資銀行様が火付け盗賊の如く不安を煽るレポートをじゃんじゃん出しているのを放置してみたり(という点についてはあたくしの方が異常な意見だと思いますが、あたしゃ非常時には非常時のルールがあって然るべきではないかと思いますんで)という有様では話にも何にもならんがなという感が。
今回の中東マネーネタで簡単に片付くのかどうかは知らんですが、当局(除くFED)の危機感がどうにもこうにもという状況ではどうもこれからも何かあるでしょと考えてしまいますです。
結局日本の教訓からあまり学んでませんなあと思う次第で、トホホ感が漂うのでありまする。
○もはや無視状態の講演でしたが
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0711g.htm
引き続き金利正常化路線の正しさを訴えているような気がしますが。
『例えば、米国サブプライム問題に端を発する今般の国際金融市場の変動の基本的な性格は、良好な経済・金融情勢が続くもとで、リスク評価が徐々に緩み、過度なポジション・テイクが行われた結果、市場の自律的調整により巻き戻しが起きたということだと思います。こうした基本的な性格は、10年前のアジア危機など、他のグローバル・レベルで起こった金融危機にも当てはまる問題です。』
『中央銀行として、こうした事態に対してどう対処するのか、特に予防的措置と事後処理とのどちらにより注力すべきかについては、政策当局者やアカデミアでも、多くの論戦が繰り広げられてきていますが、私自身のこれまでの体験を振り返ると、これらは二者択一の問題ではなく、その両方とも大事としかいいようがありません。』
はあそうですか、で、こっちの都合上途中を飛ばして結論と思われる部分を引用しますとこうなります。
『二つ目の柱では、さまざまなリスク要因をチェックしますが、その際、起こる可能性は低くても、起こったときに多大なコストを引き起こしかねないリスクに関しても評価を行っています。ここには、先ほど申し上げました行き過ぎやその巻き戻しのリスクも含まれています。私どもは、このように、予防的対応をしっかりスコープに入れた判断を行うよう努めています。』
ということでまたまた第二の柱の重要性を強調しておりますが、さっき飛ばした部分でこういう話をしておりまして・・・・・
『いざことが起きた時の迅速で適切な対応は当然です。ただ、むしろ平常時においては、いや、平常時であるからこそ、潜在的なリスク要因を念頭においた充分注意深い政策運営を心がけることが必要であると思っています。金融危機といった経済の動揺は、人間の身体に降りかかる大病のようなものとみなせるかもしれません。大病にかかった後の治療よろしきを得ることが重要なのは当然ですが、まずは、日ごろから健康管理に気をつけ、予防に心を配るということが大切であることは自明です。』
えーっと、現下の国際金融情勢は大病あるいは大病一歩手前であって平常時じゃないと思いますし、この話の別の部分で総裁様におかれましては『各国の金融市場がグローバルなレベルで一体化し、相互に複雑に影響を及ぼしあう中』ってご認識されておられる次第でございますので、欧米金融システムが大病一歩手前になっているのに日本だけ平常時と言うのは無理があるんじゃないでしょうかねえ。
ま、どっちにしても全然市場反応せず。完全な狼ジジイ状態に落涙を禁じ得ません。
ところで、さっき引用してた最初の部分に米国サブプライム問題について『良好な経済・金融情勢が続くもとで、リスク評価が徐々に緩み、過度なポジション・テイクが行われた結果』って話をしてまして、確かに良好な環境の生み出したものなのかも知れませんけれども、そもそも論として市場はオーバーシュートするもので、それを妙な規制(格付け別リスクウェイトというある意味で高度化した管理手法による規制)や運用難が後押ししたともいえるのかなあなどと漠然と思うあたくしなのでありました。その話はいずれまた。
2007/11/27
お題「中村審議委員記者会見:今は慎重派/その他少々」
本題の前に少々雑談を。
○外しの口実にされましたかねえ
昨日は昼前だかに中国の政府系なんちゃら機関が日本株を買うとかいう雲を掴むような話をネタにして輪番オペはヘロヘロ。後場から窓開けて債券先物落ちるわ株価指数先物は上昇するわと相成りました。
えーっと、何でこんな雲掴むような話で反応してるんだかという感じですが、先週末に瞬間10年新発1.395%なんぞをやらかしている訳でして、世の中の想定レンジを見事にぶち抜けまくりの巻(1.5%割れ定着はねえよというのが普通の投資家が描いていた説明用紙芝居ですわな)でして、一旦売ってみたいという願望が出まくる水準でございます。しかしながらこの相場展開ですと売ってからもう一発持ち上げられたら目も当てられないのでございまして、中々突撃するのもオソロシス。
・・・ということで、水準感で売ってみたい人(株式は買って見たい人)が出やすい水準で、かつ月曜ということで基本は閑散相場となっているタイミングでちょうど良く材料らしきもの(しかも本当ならインパクトありそうですわな)が出たのでとりあえずやってみましたという所でしょうか。で、今朝は米国10年債4%割れ(17毛強ってなんなんですか><;)で帰ってきておりまして、もう戻るとは早過ぎですがなという所ですわな。
ちなみに、あたくしはそのニュースというか観測というかの話を聞いたときに「そんな金があるならODAを即刻全部返済して下さいもう出しませんよ」とか物凄く斜め上の反応をしたのですが(苦笑)。
○国債市場特別参加者会合でふと思ったのですが・・・・
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/c191122.htm
内容が盛りだくさんで詳しくは後日なのですが、ちょっと「??」だったお話がございまして・・・・・
いやまあストリップス債の買入消却の話しなんですけど、この意見を見てて素朴な疑問が。
『30年債の分離元本に対する投資家ニーズは非常に強く、40年債についても引き合いがある。現状の分離利息残高1,000億円は、各業者が抑えに抑えた上での残高である。分離利息の買入消却を導入することで、業者はストリップス化しやすくなり、市場も成熟していくと考えている。』
分離利息はロット細かいですし、分離すりゃ短いものが増えてしまうのでニーズが無いのはよく判りますが、それならストリップスのクーポンを買入消却するよりも真正面からゼロクーポン発行した方が良いんじゃないんですかと思うんですけど・・・・・
たぶん長期でゼロクーポンを発行した場合、償還差益に対する源泉税徴収の問題があって制度上の手当てが必要になるんじゃないかと思うのですが、ストリップス債と同様の制限を設ければ税務上の公平性は保てるんじゃないのかなあとか漠然と思う次第でして、わざわざ利付債発行してストリップス化するなどと手間掛けるよりも、直球ストレートで出した方が余計なコストが掛からないのではないかと存じますが。
#まあそう直球を出されると裁定機会が減るので困る人はいそうですが
30年債ならまだ判りますが、ついこの前1回債が出た40年債のストリップス化の引き合いがあるなら、40年のゼロクーポンを源泉徴収免除(非課税玉)扱いで発行できるようになって欲しいと要望する方が筋のような気がしますが。30年債だって「強いニーズがある」のならゼロクーポン発行したって消化できるんでしょ(^^)。
ま、もっと申し上げれば、もうちょっと金利水準があればの話になりますけれども、ストリップス債の利息部分の細かい部分って多分長いものなら長期マッチングというか年金感覚で個人に、短いものなら担保ニーズなどで一般法人など、要するにリテール窓販に使える(そのニーズが何千億もあるかと言われると少々困りますが)と思うのですが、これまた税制の問題が・・・・・・・何とかならんもんですかね。
と、雑談が長くなりましたが中村審議委員の会見。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0711d.pdf
○まずはまとめ
展望レポートに沿った説明をしながらも、先行きに関しての見極めが必要な点をいくつか指摘してまして、あたくしが読んだ感じでは、(1)米国サブプライムローンが米国景気を大きく後退させてしまうかどうか、(2)国内個人所得の伸びが弱く、マインド悪化で個人消費が悪化しないかどうか、(3)不動産価格の上昇によって住宅投資が減退していないかどうか、という辺りがポイントのように思えます。
まあ(1)についてはお題目みたいな所があって、会見の中でもサブプライム問題に関しては全てが片付かないと景気見通しを上にできないという訳でもないというような感じの発言(後で紹介します)をしてますが、残りの2点についてはモロに日本の景気という部分ですので、まー足元は慎重というところでしょう。ただし景気アセスメントが強くなった場合の利上げ判断に関しては別っぽい(昨日ご紹介した通りで)感じですけどね。
それから、会見要旨を見ておりますと、中村さんの発言はポイントを押さえて判り易いという印象でして、その中で「私の個人的な感触を申し上げれば」というような感じで自分の意見もコメントしてますし、中々宜しいのではないでしょうか(などとエラソーに言ってスイマセンスイマセン)。やたら発言が長くて論点が拡散する(以下自主規制^^)。
○サブプライム問題が全部解決するまで動けない訳ではないという話
最初の方の質問でサブプライム問題が解決しないと利上げの環境が整わないのかというのが来まして。
『サブプライム住宅ローン問題が完全に解決するには、相当の時間を要すると思われます。ただし、サブプライム住宅ローン問題の解決と、今起きている様々な国際金融市場の動揺や不安定な動きが落ち着く時期が必ずしも一致するということではありません。見通しの蓋然性とそれに対するリスクを見極めた上で、適切な政策判断を行っていきたいと考えておりますので、いつまでも金利引き上げができないということにはならないと思います。』
これだけ見ると利上げ先にあり論者に見えないこともないですが、再度確認質問があったときの答えを見ると、まあバランスとった発言なんじゃないですかと思うんですけど。
『次に、二点目についてですが、こうした金融市場の混乱やサブプライム住宅ローン問題の解消と利上げのタイミングを直接結び付けて考えるのは、少し違うのではないかと思います。我々は、これらの問題を、物価安定のもとで、日本経済の持続的な成長を達成していくプロセスの中の一つのリスクファクターとして捉えており、要は、それが日本経済の先行きというか、成長度合いにどのように影響するかを見極めることが、利上げとの関連でいえばカギになると考えています。』
ということですので、まあ景気強気になったらあっさり正常化路線っぽいですけれども、見極めるという部分に関しては慎重ですから、バランスは宜しいのじゃないでしょうかね。
○で、サブプライムの見通し
『サブプライム住宅ローン問題で一番厄介なのは、只今ご指摘のあったとおり、その実態が掴めないということかと思います。米国のサブプライム住宅ローンの融資残高は総額1.3
兆ドルと言われています。サブプライム住宅ローンを担保とした住宅ローン担保証券の多くで格付けの見直しが行われたことを契機に、これら証券化商品の価格に対して不透明感が拡がり、殆ど値がつかなくなりました。かなり過敏になっている面があるかと思います。』
というのは講演でも言及してましたのですが、中村審議委員の個人的印象という部分があったのでそちらを引用しますとこうなりまする。
『私の個人的な感触を申し上げれば、実態はもう少し早く分かるのではないかと思っていましたが、当初考えていたよりも多少時間を要しており、これは影響の範囲が大方の予想よりも少し拡がっている現れではないか、という気がしています。』
ほほう。
『ただ、今後は、欧米の証券会社が決算を発表しますし、何れは価格が再評価されてきますから、何れにしても時間の問題だと思います。なお、運用機会を求めている資金は、待機資金として世界中に大量に存在していると思います。価格が適正でないということが問題なのであって、適正なプライシングが行われてくれば、落ち着くところに落ち着くと思います。』
ま、そうですと良いのですが、どうもサブプライム問題に関しては当局間の連携がちゃんと行ってるのかとか、金融機関同士で刺し合い(自分の話を棚に上げて「誰それは大やられしてますよ」と言い出す見苦しい展開)してる場合じゃねえだろとか見てますと、その時間の問題もやや長そうな悪寒が。
○個人所得を注視
展望レポート対比今の景気は下振れていないかという質問に対して。
『その後、10月以降の状況については、実体経済に関する公表数字について言えば、基本的にはそんなに大きく変わっていないと思います。ただ一つ気になる点は、個人の所得です。企業から家計への波及という部分でもありますが、9月も一人当たり賃金が前年比マイナスとなるなど、考えていたよりも改善のテンポが少し緩やかなのかなと思います。』
『所得以外の動向については、消費等の各種指標や中間決算からみた企業業績は、悪い数字ではありませんでしたので、10月末と比べ、それ程大きく違っていないのではないかと思います。ただし、今後の注目点として、12月短観については仔細に検討する必要があると思います。』
なるほど。ということで中村審議委員は次に紹介する住宅投資問題もそうですけれども、個人消費がコケないかについては注目してるというところなんでしょうか。
○住宅投資に関して
講演では住宅投資について慎重に見ている印象を受けましたが・・・という質問に対して(この質問者はちょっと講演の趣旨勘違いしているようでして、質問のピントがずれてましたが、それはご愛嬌ということで)。
『6月以降現れている建築基準法改正の影響については、何れは戻るだろうということかと思います。ただ、この問題が発生する以前、時期としては今年春過ぎ頃から、首都圏を中心に、土地の値段の上昇等から分譲価格がかなり上昇してきていた一方、購入サイドでは、自分の返済能力を超えるような物件は買わないという傾向になっていたため、今後はかなり売れ行きが鈍るのではないかとの見方をされている方が複数いらっしゃいました。こうしたこともあって、これまで高水準で推移してきたマンション分譲も、法改正の問題を除いたとしても、場合によっては少しスローダウンするのではないか、と思っています。』
『(建築基準法改正の影響が来年度まで)ずれ込む可能性もあるかもしれませんが、申し上げたいのは、法律改正の問題とは別に、ベースの需要が従来想定していたよりも落ち込む可能性もあるということも考えておく必要がある、ということです。』
つまり、特殊要因での落ち込みではなくて実はベースラインが落ち込んでいるのではないかというご尤もな指摘でして、こちらも注意してるというところでしょうな。
ではでは♪
2007/11/26
お題「中村審議委員講演」
中村審議委員の金融経済懇談会デビュー戦です。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0711f.htm
○総合的にはちょっと慎重かなと
講演(挨拶)は基本的に展望レポートに沿って説明が行われてますが(当たり前ですが)、その中でやや慎重な言い方が散見されますというのが全体的な印象でして、景気に関してはやや慎重なスタンスなのかも知れませんねという感じです。
ただし、バブル警戒とか物価上昇警戒とか、そっちの方に関しては割と警戒的な話をしてまして、まずはその辺りから。
冒頭部分の『2.日本銀行の金融政策運営』の『(1)基本的な考え方』から。
『いわゆる「第一次オイルショック」は、1973年の第四次中東戦争に端を発して原油価格が高騰し、翌年の国内の消費者物価指数は前年比+23%上昇しました。「狂乱物価」という言葉がもてはやされ、私の給与も+30%近く上昇しましたが、所得が増えた実感はなく、わが国経済や個人の消費活動が大混乱に陥ったことを鮮明に記憶しています。また、バブル経済は資産価格の高騰をもたらし、一時的に景気を押し上げましたが、その後の日本経済に大きな痛手を与え、長期低迷に陥った次第であり、「物価の安定」の大切さについては皆様にも良く理解して頂いていると思います。』
『金融政策の変更を行いましても、その効果が経済活動の実態まで行き渡るには長い期間を要します。また、金融市場、経済社会、海外情勢等の様々なショックに伴う物価の短期的な変動を、金融政策によって全て吸収しようとしますと、かえって経済の変動が大きくなることから、金融政策決定に際しては、十分長い先行きの経済・物価の動向を予測しながら、中長期的にみて「物価の安定」を実現するように努めなければなりません。』
ということで、以下経済物価情勢に関して話をしている分にはやや見方が慎重っぽい面はあるのですが、特に前半部分のあたりを読みますと、それはそれとして所謂「経済を吹かす」というようなスタンス(by植田前審議委員)ではないんですねという所でしょうか。
○家計部門のマインド悪化と住宅投資の動向
『3.経済・物価情勢の現状と見通し』部分ですが、企業部門については割愛致しまして(やや減速だが基本的には底堅いという感じですけど、やや弱めっぽいかな)、家計部門に関して。
『一方、冒頭で申し上げたように、企業部門の好調さに比べると家計部門の改善のテンポは緩慢な状況となっています。個人消費は、百貨店やスーパーの売上高が天候要因により振れが大きくなっていますが、(具体例部分割愛)底堅く推移しています。ただし、消費者マインドは、賃金が伸び悩む中でガソリンや生活関連品の値上げ、または値上げ表明が相次いでいること、年金問題等将来に対する漠然とした不安などを受けて、例えば、先日公表された消費者態度指数をみても、足許やや悪化していることは気懸かりです。』
で、その次が住宅投資なのですが、先日ご紹介した10月10、11日の金融政策決定会合議事要旨で住宅投資が実は基調的に弱くなっているのではないかという指摘があったんですが、中村審議委員がこの点について言及しています。
『住宅投資については、新築住宅着工件数が改正建築基準法施行の影響により7月以降減少を続けていますが、法改正による影響が落ち着けば先行きは回復するものと考えられます。ただし、回復する時期やその規模については、不透明感が強いほか、法改正の影響が長期化した場合の建設財出荷や建築関連の中小企業の業績に及ぼす悪影響がやや懸念されます。』
『また、家計の所得が目立って増えない下で、分譲住宅の価格が上昇していることが影響し、住宅需要の基調的な動きに弱さがみられるとの慎重な声も聞かれています。このため、住宅投資の動向については注意してみる必要があるように思います。』
ということで、景気先行きに関しては慎重に見極める必要があるという趣旨の言及が多いなあというのが印象でありまする。
○物価についても上りにくいと
その次に物価に関しての言及。
国内企業物価指数が想定より上振れて推移する間に消費者物価指数が伸びない要因に関してこのように話をしてます。
『その要因の一つとして、物価下落が長く続いてきたことで、消費者の提供されるサービスや商品価値に対する厳しい評価や、値上げに対する抵抗感が非常に根強いことが挙げられると思います。多くの企業は、値上げすれば消費者の反発を受けるのではないかと、値上げには極めて慎重な姿勢で臨んでいます。』
『例えば、流通業者間の競合が激しい中、価格転嫁に踏み切ったあるスーパーでは、来店客数の減少により値上げ品目以外の売上高も減少し、結果的には業績が悪化したことから、改めて値下げに踏み切ったとの話もあるようです。また、川下にある家電量販店やスーパー等の流通業者の集約が進展しており、メーカーに対する価格交渉力を一段と強めていることも要因の一つと考えられます。』
なるほどなるほど。ちなみにこういう指摘の続きがいきなり日銀公式見解となっているのですけれども、微妙に話が繋がってない気がする。
『このように、足許、消費者物価は弱めの動きとなっていますが、先行きについては、前年比でみて目先はゼロ%近傍で推移する可能性が高いものの、より長い目でみると、プラス幅が次第に拡大するとみています。(途中割愛)これは、潜在成長率を幾分上回るペースでの経済成長が持続することから、労働需給を中心に資源の稼働状況が緩やかながら着実に高まる中で、これまでの原材料価格の上昇分も含め、昨今の原油や食料品等の高騰している諸コストを価格に転嫁する動きが、企業間取引段階のみならず消費者段階でも徐々に拡がっていくとの見方に基づいています。(以下割愛)
』
前半部分の分析とこちらの話が微妙に飛んでる気がするのはあたくしだけでございますかそうですか。
○米国サブプライムローン問題
『4.先行き見通しに対する上振れ・下振れ要因』部分に関しては展望レポートに沿ったものになっていますが、サブプライム問題に関しては「先行きを見極めよう」という話になってます。まあ普通といえば普通なのですが。
『こうしたサブプライム住宅ローンの不良債権化は、米国の実体経済に対して、担保物権の処分増加により住宅市場の調整を長期化させるリスクのほか、企業や消費者のマインドを悪化させて設備投資や個人消費を下押しするといった悪影響を与えかねません。』
『国際金融資本市場においては、サブプライム住宅ローンを担保とした住宅ローン担保証券の多くで格付けの見直しが行われたことを契機に、証券化商品全般の価格や、流動性に対する疑念や欧米の金融機関の業績に対する不透明感が拡がり、他のクレジット商品や株式市場などへも影響が波及しました。もっとも、こうした国際的な金融市場の動揺が、わが国の短期金融市場やクレジット市場に与えた影響は今のところ限定的とみています。』
で、先行きに関しては。
『先行きについては、どの時点で住宅市場の調整に見極めがつくのか、あるいは国際金融市場における証券化商品の価格形成に関する不透明感が払拭されるのか判然としませんが、サブプライム問題が世界経済に与える影響と、わが国経済への波及について、引き続き注意深くみていきたいと思います。』
まあ穏当というか普通のお話ではあるのですが、福井総裁が比較的やる気のある発言をひところ繰り返してた印象が強いので、ちょっと慎重派に見えてしまうというのもあるかも知れませんね。
また、記者会見に関しては例によって本日のアップを待ってからにしますが、ベンダーの記事を見る限りでは「景気の先行きに関してはちょっと様子見モードですが、金融政策に関しては割と早めに対応してきそう」って感じになるのでしょうか。でもまあ金利調整を全面に出した感じは受けないので、景気の先行き見通し見ながらということになるんでしょう。
ということで、連休明けですので(と言い訳)本日は引用ばっかの手抜きバージョンで誠に恐縮至極でありまする。
2007/11/22
お題「こりゃ参ったですぅ」
何か11月はやたらあっという間に過ぎている気がするんですけど、あたくしの感覚が妙なのかなあ・・・・・
○FB3か月0.55%ですかそうですか
長いところも強かった昨日の相場ですが、短い所に関しても何か強いですなあという感じになってるようですな。火曜日に入札が行われたFB486回(3月3日償還)ですが、昨日の日本相互証券の引けは0.550%となりました(たぶんビットサイド)。入札の時の平均落札が0.562%でしたんで、1日ちょっとで1毛さっくり進むという展開。
いやまあ1毛くらいさっくり進んで頂いても結構なんですが、その絶対水準が0.55%ってGCレポのレギュラーネクストが0.53−54%とかでやってる中で3か月を0.55%で固めるとは幾ら利上げ確率ゼロ(は言い過ぎ^^)とは言えさすがにちょっと如何なものかと思うんですが、同じく3月償還のFB471回(6か月FBの残存短くなった奴で3月10日償還)が0.54%などというレートをやらかしていますので、最早この辺は現先でもFBでも同じという状態・・・てか年末年始のオーバーナイト7日間があるんですけど・・・・
でもまあもっと先の金利を見ますと、この前出た6か月FBのFB483回(5月14日償還)は0.570%だわ、1年TB427回(11月20日償還)は0.605%だわと1年までのカーブが潰れる潰れるという有様で誠に遺憾に存じます。
一応自分を納得させる為に(?)「向こう半年利上げが無いので1年の金利は(0.5+0.75)/2で0.6%台前半は無問題」といささか(どころではないが)強引な理屈を持ち出して見るんですけれども(笑)、現実はもっと進んで0.605%ですかあという感じでありまする。ちなみにお約束のようにこのあたりのTBの引け値はかなりフラットになってますわな。本当にそのレートなのかどうかは(品薄ですから)よー知らんが。
まあ3月償還に関してニーズがあるのは何となく判るんですが、1年あたりも国債への買いが強いという状態でして、その一方でCPのレートは下げ止まり(一部でじりっと上昇)だわ、一般債は国債の爆発についていかないで遅れ気味だわとなっておりますので、まあこれを強引に解釈すると「利上げ時期の先送り観測」と「小型版質への逃避(というか質への選好というか)」の合わせ技という事になるんですかねえと言うことで。よー知らんけど。
ちなみに、連日実施されている資金供給オペのレートも順調に低下しておりまして、昨日実施の全店オペ3月7日エンドが足切り0.56%(按分は9.5%ですからかなり薄いですけど)まで低下しやがりまして、そりゃまあFBが0.55%でもおかしくは無いわなという感じになっております。そんなに景気良く資金供給するのは何でなのよと思う気持ちは少々(実はかなり)ございまして、まあ足元は兎も角として、ターム物も抑えに掛かっているという印象で、どこがどう「市場機能の回復」(すっかり忘れてしまいましたが、量的緩和解除の時にはそんな話ありましたなあ)なのかと小一時間という感じではございます。まあそれだけターム物金利の跳ね上がり(落ち着いていたLIBORがまた微妙に怪しいようですな)を警戒してるんでしょうと好き勝手な解釈しておきますけど。
○まあ強いですな
昨日は超長期国債の入札がございましたが、前場は入札に敬意を表して(??)押し込んでまして超長期とかも比較的弱めになってましたが、落札結果発表後に(株価指数の動きとか為替市場の動きとかもあったとは思うんですけど)相場上昇するわ、後場遅くになってからは長いところが強くなるわという有様。最後の方の上げってどう見ても長いところに買いが入ってるでしょという感じですわな。
暫く前までは先物(とか中期)がやたら強くて(今でも強いけど)現物が置いていかれるという展開も多かったんですが、さすがに置いていかれた分の反動もあるんでしょうけど、ここもとの動きは長期ゾーンがきっちり引っ張ることも多くなっておりまして、昨日の最後の方なんぞはちょっとこう相場から若干悲鳴が聞こえた気がするんですが、まあこの調子で値持ち(さすがにこのまま一気というのは・・・・)して下さいますと、最後は阿鼻叫喚のブルフラットをやらかして下さるのではないかという悪寒。
だいたい10年1.5%割れ定着ってのは市場の中の人的にはシナリオとして「それはさすがにないでしょ」という形になってたと思うのですが、このくらいの期間で定着とは言わないですけど、この調子で値持ちしやがりますと、シナリオ(あるいは説明用紙芝居)をどうするのよという話になって参ります(と思う)ので、投資家様におかれましてはケツが重くなるものの、諦めて動こうものなら今までと別の前提で登場となるでしょうから香ばしい展開も期待(したくないが)されますわな。おーおそろし。
ま、こんな時に限って「四半期の締めまであと1か月しかありませんが如何お過ごしでしょうか」というタイミングになっております訳で・・・・
と、本日は相場の愚痴でございました。まあ債券市場もいきなり厳冬(市場の中の人以外には「何で相場が上ってるのに厳冬?」と思われるでしょうけど、何故かそういうもんなんですよね)でございますので風邪引かないように注意しましょうと言った所でございまする。。。。
#水野さんの暫く前の講演はまだ読んでない、正直スマンカッタ
2007/11/21
お題「相場雑談/ちと前の話ですが武藤副総裁インタビュー」
○緊急利下げの噂ですかそうですか
昨日の相場ですが、米国様の長期金利がアホほど下がって10年4%割れるんじゃないかという勢いで帰ってきたので先物大上昇してスタートしやがったのですが、午後になるあたりから株価指数がエライ勢いで上昇。その割には債券先物下がらんねえとか思っていたらネタが「FED緊急利下げ」という噂でした。そりゃ債券先物中々下がらんわな(^^)。
でもふと冷静に考えますと、ここの所の米国長期債市場って利下げ催促相場→利下げになると長期金利上昇というなかなか楽しい動きをしやがっておりますので、FED緊急利下げは実は長期債売りだと気が付いた(かど〜か知りませんが)ようでその後は下がりましたが、いやまあ利下げの噂で動きますかと実にこう不安の巷というか不安定な相場というかでございまする。
そんな中で(というかFED利下げどうのこうのと関係ない範囲の市場ですが)昨日は3か月FBの入札が実施されましたが、3月3日償還と遂に3月償還になりやがったのですが落札結果の方はと申しますと前回よりも金利低下して平均が0.562%(片端計算なので財務省発表の数値と違います、以下同様)の最低0.563%とまあ強いですねという結果になりまして、その後ショートカバーとかもあったようで0.55%の出合いもあったそうな。引けは0.555%なんですけど、あのそれは足元のレポからカツカツ(取れて3bp)ですし、年末年始とか越えてさすがにその期間は逆鞘じゃないでしょうかとかいうレートでして、中々持っているのもしんどいレートですなあと思いまする。でもまあ短い所にはニーズが強いようでして、今回のFBに関しても「3月償還もの」ということで、諸般の事情で決算跨ぎのものを買いにくい人にとっては絶好の買い対象銘柄という感じみたいですな。
共通担保オペが3月13日エンドで実施されてましたけど、こちらも足切りレート0.57%ということで、先週の頭に実施された3月足のオペが0.59%の足切りで先週水曜実施の2月末足の全店オペが0.58%の足切りでしたので、まあいい感じでレートはじり安という所ですわな。まさに亜空間でございます。。。。。
○武藤副総裁のブルームバーグインタビュー(ちと昔のネタ)
先週金曜のブルームバーグ記事になるので少々どころかだいぶ前のお話になるんですが、武藤副総裁の単独インタビューの記事がございましたです。以下引用部分はブルームバーグニュース16日12時25分配信の記事です。
・こりゃまあ利上げについては慎重と読むのが妥当
米国経済について
『米国経済については、緩やかな調整局面が続いている。(途中の説明部分割愛)ただ、少なくとも現時点では、住宅部門の調整や貸出基準のタイト化がその他の部門に波及しているという事実は観察されていない』
『米国の個人消費と設備投資は減速しているが、緩やかな増加基調を続けている。米国の潜在成長率は以前と比べて多少下がっているという見方もあるが、先行きはその潜在成長率近傍の成長パスに戻っていくとみている』
『ただ、米国の住宅市場の調整が一段と厳しいものになった場合、あるいは国際金融市場の変動の影響が予想以上に広範囲にわたるような場合、マイナスの資産効果や信用収縮、マインド悪化を通じて、個人消費や設備投資が下振れる可能性も考えられる。その場合、米国経済は一段と減速する可能性がある』
『さらに、米国経済の減速の程度によっては、他の地域に悪影響を及ぼし、世界経済が下振れるリスクも全くないわけではない。こういう米国を含めた海外経済の状況、あるいは国際金融市場の動きなども頭に入れて、適切な金融政策の運営を行っていかなければならないと思っている』
日本の金融政策について
『われわれは予断を持ったり、スケジュールを決めたりせず、経済・物価情勢の改善の度合いに応じたペースで金融政策の運営を行うと繰り返し言っており、この点にそれほど誤解はないのではないか。ただ、事態はなかなか複雑なものがあるのはご指摘の通りだ』
『1つは、米国の住宅市場の調整が一段と厳しいものになった場合、あるいは金融市場の変動の影響が予想以上のものとなった場合、下振れのリスクがあることは十分認識している。一方で、10月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)でも指摘しているが、低金利が経済・物価情勢と離れて継続するという期待が定着すると、経済・物価の振幅が大きくなったり、非効率な資源配分が生じたりするリスクがあることも、われわれは繰り返し申し上げている』
『したがって、蓋然性の高い見通しは先ほど申し上げた通りだが、いろいろなリスクもあるので、そういう上下両方のリスクを丹念に点検しながら、金融政策を運営する必要があると申し上げている。グローバルなメカニズムのなかでのリスクなので、事態は非常に複雑で、そう単純ではない。なかなか困難な状況にある』
と、引用ばかりですが、まあ武藤副総裁の見立て的にはちょっと下のリスクを注視しているというところではないかと思います。
・これは感心しちゃいます
財務省出身ですがという質問に対しての武藤さんの発言は「さすが事務次官まで努めたお方だ」と感心致します(皮肉じゃなくてマジで)。
『少なくとも、私はこの4年半、中央銀行マンになりきっていたので、官僚だったということを金融政策の判断の基準にしたことは一度もない』
『私が財務省出身であるがゆえに生じるさまざまな憶測については、私自身はそういう考え方は全くもっていない。今まで随分いろいろなポストについて、いろいろな仕事をさせていただいた。しかし、前にこういうポストにいたから、今のポストでの判断が変わるなどということは、考えたこともないし、現実にもあり得ない』
『ポストは任命権者に与えられるわけで、自分で決めるものでは決してない。与えられたポストを天職と考え、そのポストで職責を全うするため、全力投球を行うという気持ちでずっとやってきた。残された任期はわずかだが、同じような気持ちでやっていきたい』
パブリックサーバントとしてあるべき姿勢だと思うのであります。
#と、引用のタイピングで時間が無くなったのでほとんど引用だけで恐縮至極でありました。
2007/11/20
お題「市場雑感/15日の福井総裁スピーチ@MAS」
いやあ昨日は寒かったですねえ。NY株式市場はもっと寒いですけどまだダウ13000ちょっと切ったくらいですから。。。
#GSのCITI投資判断下げに対してCITIの反撃が炸裂して泥沼の叩きあい合戦になることキボンヌ・・・と思ったら他所もまとめて引き下げたのか。実に素晴らしい刺し合いです。他社のGS判断引下げマダ〜♪
○日銀のオペが何気に金利下げ攻撃です
日銀の資金供給オペがやたらと金利を抑えるオペレーションをしているという話が市場のごく一部の地域で持ちきりの昨今でございますのでそのお話でも。昨日は国債買現先オペが実施されたのですが、何故かトムスタート(普通はスポットスタート)で実施しやがった事から応札する札が少なくて6000億円の予定額に対して応札が7511億円にとどまりまして、落札結果はトホホの平均0.521%の足切り0.51%という有様。
いやまあ20日は資金需給上不足日だからオペ打つのは判るんですが、何も札が集まらないの確実な国債買現先を打たなくても良いのにと思う訳でして、こりゃまあ「調節担当部署は意図的にレートを押さえつけようとしている」と見られても仕方ないでしょうな。ちなみにこのオペの時点で別に20日スタートのGCとかの金利が跳ねていたというような話は聞いておりませんので、敢えて国債買現先でやる意味は何なのとなると先ほどの答えになるのかなって感じです。
共通担保オペに関しても足の長いのと短めのを併用してやたらめったら打ってきまして、そりゃまあ資金需給的に中立に打って来ているというのは判るんですが、3000億円くらいで1〜3週間くらいのオペを頻繁に打ってくるという状態で、少なくとも国内参加者的にはTBやFBの利回りが素敵な階段状になっている(しかも段差が潰れてきてますが・・・・)ことに象徴されるように、短期セクターには資金がとても気持ちよく余っているのが現状判断でございますので、日銀の資金供給がどう見ても金余り状況への嫌がらせです本当にありがとうございました。
ここもとの無担保コール翌日物加重平均金利を見ますと見事に0.50%±0.01%に張り付いている(国債発行日要因に何かがぶつからないと動きません)次第ですが、そもそも無担保コール翌日物加重平均は短資経由の取引集計でございます筈でして、ダイレクト取引(国内大手銀行など)分が加味されないので実質的な取引金利は加重平均ベースよりも若干下になると考えられますので、実質的には市場平均って0.48とか49とかになっているんジャマイカと思料。
・・・えーっとこの部分認識違いがあったら指摘お願いしますね。
今年の前半あたりでは加重平均をそれほど0.50%に張り付かせるようなオペレーションではなくて、もうちょっと上(0.52%位)でもオッケーという感じで、GCレポレートがレギュラーネクストで大体0.55%が中心のイメージだったんですけど、加重平均を0.50%ガチガチに持って行ってる最近ではそれに対応してGCレポレートが0.52%〜0.54%という感じになってますわなという所で、オペレーション的にはしらっと金利が下がっている感じでございますわな。
とまあそんな感じで、超短い所の金利が全然動かないので、まあそこの動きで超過収益を確保したいねえという人には実に詰まらん状態が続いておりますなあという感じです。別にゼロ金利じゃなくても動かなきゃただの事務作業ですわな、とほほのほ。
#で、今日は3月償還のFB入札がありますが、3月償還が一頃妙に人気化した事もありますので、足が3月になってもそんなの関係ねえという感じになるんでしょうな。あっはっは。
○残念ながら(^^)市場は華麗にスルーしてましたな
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0711e.htm
・物価が上りにくい構造だと金融政策が難しいという話
『近年の世界経済の特徴は、単に高い成長率に止まりません。成長率、インフレ率とも極めて振れが小さいことが、もうひとつの際立った特徴です。多くの識者によって、Great
Moderationと呼ばれている現象です。経済・物価の安定化傾向は、第二次石油危機以降、明確化していますが、特にインフレ率は、2000年以降、先進国においても、新興経済国においても、平均値、分散とも顕著に低下しています。このように、低インフレと高成長が極めて安定的に実現されている近年の世界経済の状態は、物価・経済の安定を図ることを使命とする中央銀行の立場からも、望ましい現象と言えます。』
ふむふむなるほど。
『しかし、各国中央銀行の仕事は、決して楽にはなっていません。むしろ、一層チャレンジングになってきている、というのが私の偽らざる実感です。次に、その背景にある、いくつかの事象についてご説明したいと思います。』
はてさて。
『一つめの事象は、経済と物価の間の関係について、従来の経験則が当てはまりにくくなってきている、ということです。経済学の用語で表現すれば、フィリップス曲線がフラット化しているとみられると同時に、その傾きが正確にどの程度なのか、また、将来もこのような状況が続くのか、いずれ従来の関係に復していくのか、不確実性があるということです。』
んでまあ日本の例を出しているのですがそこはスルーしまして。
『このような物価を巡る環境変化のもとで、中央銀行は、難しい政策運営を迫られます。一般に、中央銀行の金利政策は、まず実体経済を変動させ、それが、資源の稼働状況の変化を通じて、物価に影響を及ぼすと考えられます。経済と物価の関係が変化し、従来の経験則が当てはまりにくくなっているということは、中央銀行にとっては、金利をどの程度動かせば、最終的に物価をどの程度変化させるのかについても、はっきりしなくなっていることを意味します。』
でもまあそれって今に始まった事じゃないような気もしますが。昭和30年代の金利と物価の関係と50年代と今と全然違うんじゃないっすかとか言い出すと素人はすっこんでろと言われますかそうですか。
でまあもうひとつ素人のたわごとモードになりますけど、資金不足かつ間接金融ガチガチで金利操作とか窓口指導とかが機能してた時と比較すると、市場ってのは期待収益率がもっと素敵なブレを示す上に投資しないといけない金が余っている状態となりますと、金利操作が資源配分に大昔より効き難くなりそうなのは感覚的に思うのですが。
『日本銀行は、昨年3月に量的緩和政策から金利政策に戻って以降、消費者物価前年比がゼロ%近傍と極めて安定的な中にあっても、政策金利を緩やかなペースで引き上げてきています。そうした政策運営の背景には、今ご説明したような経済と物価の関係の変化があります。仮に、現在のような状況下で、短期間に物価を引き上げようとすれば、国内景気の成長スピードをかなり速いものにしなければなりません。加えて、どの程度の景気拡大スピードが必要なのか、大きな不確実性を伴います。したがって、そのような政策は、結果として、金融・経済活動の振幅を大きくし、景気拡大の持続性を危険にさらすことになりかねません。それよりも、できるだけ振幅の小さい、息の長い成長を確保することで、緩やかな物価上昇を期待するほうが、より安全で確実だと考えられます。』
あのですな、とりあえず景気拡大していただいた方が多分世の中困らないので、まずは景気拡大させてから後のことは後のことという訳にはいかんもんでしょうか。経済の活気という意味では別に振幅大きくなってもいいじゃないか(まあ確かに振幅が大きくなると強者ウハウハで弱者には厳しいのですが、それは福祉政策の世界で何とかしていただくということで)と思うんですけど。
どうせなら「物価を上げようとして低金利を無理に継続(別に今は無理に継続している状態ではないと思うがその話は置いといて)した場合には、期待インフレ率の急速な上昇で長期金利が跳ねますし、将来は急速に引き締めないといけないタイミングが来ますけどそれで宜しいでしょうか」と開き直った説明した方が良いんじゃネーノとか思うのですが(苦笑)。
・バブルあるいはフロスの発生と金融政策
『緩和的な金融環境が長期に亘る中で、低金利がいつまでも続くという期待が生じれば、資産価格の決定式における将来収益の割引率が低下し、資産価格の上昇をもたらす傾向が強まります。また、同様のことは、実体面において高成長が続く中で、人々の採算見通しが甘くなることでも生じます。例えば、80年代の日本についていえば「内需主導の成長への転換」、90年代の通貨危機前の状況についていえば「アジアの奇跡」など、社会を覆うような「テーマ」があり、人々のリスク感覚に緩みを生じさせたり、期待収益率を上振れさせたりする、ということです。』
まあそりゃそうなのですが、そもそも金余りという状況自体が緩和的な金融環境な訳でして、金利だけで止めようというのは中々こう難しいような気がするんですけど。とまたドシロートのたわごとモード。
『こうした状況のもとで金融政策を運営し、中長期的にみて物価の安定を実現するためには、より長い目でみて経済活動や物価の振幅を大きくしそうなリスクへの対応が一層重要になります。具体的には、例えば、発生の確率は必ずしも大きくないものの、資産バブルなど、発生した場合には経済・物価に大きな影響を与える可能性があるリスク要因や、金融環境、インフレ期待など中長期的な経済・物価情勢に影響を与えうる要因をつぶさに検証する、という作業になります。』
持論はよく判りますが、この例って全部利上げ方向の話ばかりでございまして、んな言い方するから「利上げ先にありき」と言われるんじゃと申しあげたいです。
これでまあコアCPIがプラス0.3%位で平均株価が18000円でもあれば市場は利上げモードになってくれるのでしょうが、海の向こうで金融機関同士が見苦しい叩きあいをして不安の連鎖が起きているような有様では市場が反応する訳もなく、華麗にスルーされるのでありました。
#福井総裁の任期が来年3月で切れるのもありますかね
・ゴールキーパー論久しぶりに見ましたよ
『私は、時々、中央銀行を、サッカーのチームにおける、ゴールキーパーに喩えてお話をします。ゴールキーパーは、自分で得点を挙げることはあまりありませんが、ゴールをしっかりと守りつつ、仲間のプレーヤーが得点を狙いに行くことを助けます。守る際には、相手の陣形を読むこと、すなわち、経済や金融市場のリスクプロファイルを的確に分析することが必要です。』
確か入行式の挨拶か何かでこういう話をしてたような気がするんですが、久しぶりに拝見致しました。
『そして攻める際には、チームの体制を整えること、つまり、効率的な資源の配分を達成し、イノベーションを促すことに尽力していかなければなりません。』
別に攻める方まで考えなくても良いと思うんですが。。。というか景気の変動をしたほうが資源の配分がよりダイナミックになるような気がするのですけど。。。。。。ま、いっか。
ということで、あんまり材料にはならなかったんですが、福井総裁の利上げに対する持論は把握した。でも状況がそれを許しそうも無いので残念でしたということで。
2007/11/19
お題「何だかな〜/決定会合議事要旨を見ながら雑感」
この1週間で一気に冬モードになりましたね。もうすぐ12月。
#ゆっこさんお帰りなさいませ〜♪
○何かねえという光景
例によってサブプライム関連なんですけど、ここもとのサブプライム絡みの動きが、最近ますます「どこかで見た光景」っぽくなっているなあって感じでどうも気分が宜しくございませんわな。と申しますのは、先々週くらいからですかね、多分米国会計基準のレベル3資産がどうのこうのという話が盛り上がりだした所からのように思えますが、レベル3資産の保有額がどうのこうのという話をネタにして「どこそこはこれだけ持ってますよ」ってなレポートが色んなところから出てみたり、「サブプライムの最大損失は今以上に沢山ありますよ大変ですよ」というようなコメントをする人が出てみたりとなってまして、もういい感じで刺し合いのようになって来た所ですな。
先週はどこぞの会社から海外金融機関の保有するレベル3資産が自己資本対比幾らありますよというレポートが出てたんですが、自分たちの所に関しては華麗にスルーしている所が実に心温まる次第。もうちょっと前に出てた別のレポートでもそんな感じで自分の所は華麗にスルーして他の人がいかれてますよというの話をする事例が頻発しているのが何とも「う、うちよりこいつらの方がやられてるもんね」っぽくて誠に香ばしい。
ちょうどね、日本の不良債権がどうのこうのという話が出ている時に毎度毎度の如く「次はどこどこが危ない」という話が出たりして、見苦しい風説の巷になっていたのを思い出しちゃうんですよね。実にいやーな感じでありますな。
で、金曜にロイターの記事見ててコーヒー噴きそうになったのがございまして・・・・・
15:06 RTRS-サブプライム関連の投資はゼロ、下期も含めて損失は考えていない=日本生命社長
・・・・おもわず大木ひびき(追記:ツッコミはこだまでしたな^^)風に「そんな奴おれへんやろ〜」とツッコミを入れてしまいましたが、ニュース本文を見て思わず微苦笑。
[東京 16日 ロイター]日本生命の岡本圀衛社長は16日、生命保険協会長会見で、日本生命の運用でサブプライム関連への直接投資はゼロで、通期ベースで損失が発生するとは考えていないと述べた。
・・・・そりゃサブプライムに「直接投資」する投資家は中々居ませんでしょうな、というかどうやって直接投資するんだよという感じですので、この発言は確かに仰る通りでございますわな。ただしこれで「実はサブプライム関連じゃないCDOだったんですがやられが発生しています」とかになったらどうする積りなんでしょうかねえとか思うのですが、さすがは非上場企業だ、微妙な発言をしても心配ないぜと言ったところでございますな。
・・・・あたくしも刺し合いの一環を担ってますですかそうですか。
ところで、全然関係ない話ですが、昨今の動きを「コンプライアンス不況」と木村剛センセイが仰ってるようですけれども、不良債権問題やってる時に金融検査マニュアルなどを初めとしてシバキアゲ政策を推進したお前が言うなとしか申し上げようがございませんな。話と関係ないけど・・・
#お前がいうなというのを気にしてたら務まらないんでしょうけど
○決定会合議事要旨を見ながら微妙に雑感
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g071011.pdf
10月10日、11日の議事要旨はやや慎重な議論が増えてきたような感じですが、まあこの時点から世の中だいぶ進展しているのであまり材料にはならなかったようですね。
・米国経済に関して
議事要旨の6ページ目(PDFファイルの8ページ目、以下同様です)から。
『大方の委員は、先行きについて、現在までのところ、次第に安定成長に向けて軟着陸するというこれまでのシナリオは維持されているが、景気下振れリスクが高まっているとの見方を示した。』
大方の委員ですかそうですか。
『その背景として、何人かの委員は、住宅販売や新設住宅着工の件数が減少しているなど一段の悪化がみられており、住宅市場の調整は長期化の様相を呈していると述べた。複数の委員は、住宅価格の低下幅次第では、家計の保有資産が減少するルートや、金融機関のバランスシートが悪化し、与信基準が厳格化するルートなどを通じて、経済全体に対する影響が大きくなる恐れがあると述べた。別の委員は、住宅価格が下落している州ほど売上税の伸びが低いという傾向が窺われており、住宅価格の下落が個人消費に影響を与え始めている可能性がある、と指摘した。』
最後の指摘なんてなるほどでございますな。
・国内住宅投資について
『住宅投資については、改正建築基準法施行の影響から一時的に大きく減少しているとの認識で一致した。先行きについて、ある委員は、不動産業界の一部には、住宅需要が頭打ちになっているとの声があるとしたうえで、特殊要因が剥落した後の住宅投資の動向をよくみていく必要があると指摘した。』
何かシロート考えになりますけど、実は業者の値付けが強気過ぎで住宅需要が価格上昇に伴い頭打ちになっているんジャマイカという気はあたくしもするところでございまする。大体からして法令施行要因で供給が細くなったら需要が変ってなければもうニーズ大爆発でウハウハですよ先生となる筈なのですが、住宅販売の方が大盛り上がりという話はついぞ聞きませんわな。
特殊要因が剥落したら本来ならV字回復する筈なんですが、さてどうなることやらでございます。
・当面の金融政策運営に関して
9月の会合対比慎重派が拡大しています。
『複数の委員は、日本経済は、物価安定のもとでの持続的な成長を続ける蓋然性が高く、経済・物価情勢の改善ペースに応じた政策変更は必要であるが、現在は金融市場や世界経済の状況とその影響を丹念に点検していく余裕はあると述べた。』
この部分なんですが、9月会合ではこの冒頭の部分が『ある委員』となっておりまして、「ある委員」→「複数の委員」ということで、慎重派拡大と見て宜しいかと存じます。
『このうち一人の委員は、物価・成長の足取りは、見通しの範囲内にあるものの、その下方で推移している、と付け加えた。』
9月会合の議事要旨では上記の「ある委員」の指摘に対して「複数の委員」がツッコミを入れて「それならどういう状況を見るべきなのか」という話をしているように読めたのですが、今回は慎重派の発言が増えたんですねという感じです。
慎重派が10月11日時点で増えているってことでしょうね。そうしますと現時点ではもっと増えてるかも・・・・・・
○その他ネタ(ただの備忘録)
えーっと、武藤副総裁のブルームバーグニュース単独インタビュー記事とか、水野さんのこの前の講演とか福井さんのMASでのスピーチとか積み残しのネタが多々あるのですが、忘れるといけないのでメモとして残しておきます。武藤さんのインタビューはちょっと慎重っぽい感じですかね。
2007/11/16
お題「これはちゃんとした論争/その他」
欧米では再び金融不安拡大ってあーた早過ぎですがな・・・・
ところで、一昨日ネタにした某岩国先生のT/C両替拒否られ事件ですけれども、読者様から頂きました可能性として、「両替所に行く前にカウンターサインをした状態で持参したために拒否られたのではないでしょうか」という目から鱗なご指摘が。T/C関係でトラブルが起きるのってこのサイン関係が多いようですね。
ところで、よくよくに考えたらT/Cの番号って販売時に起番するんじゃなくて普通はそのものに最初から印刷されてる筈です(で、オリジナルサインと共に何番から何番まで売ったというのを控えで保存される)からそれこそ落丁乱丁でもない限り2重起番ってありえませんわな。。。。。
まあそれが岩国先生クオリティなのですが。
○いやあ戻っちゃいましたね
昨日の債券相場はあっさり味で戻っちゃいましたわな。前日には金融不安一服で米債売られりんぐの米株上がりんぐと前々日の10年1.5%瞬間風速で割れの達成感とかまあとりあえず叩くネタが色々あったので相場叩いたんですが、まあ押したら翌日戻るとは結局皆さん買えてないのねって感じですわな。
15年変動利付国債は正直ワケワカランので1年TBの入札に関して申しあげますと、前場引けはインチキっぽく0.66%なんぞやってましたが、入札は0.65%水準でやってやっぱり買いが旺盛でショートカバーも入って引けは0.63%ですかそうですかという有様。どうも短い所に関してはここもとの戻り局面で流動性の低いものだったり、信用面にアレなものだったりするような物をさっくりと売却した資金なんぞが入って来てるのかなあとか勝手な当て推量をするあたくしなのでありまする。
いずれにせよ、よほど明確な売り(というか買わない)ネタが出ないと下がった所で買いがじりじり入ってくるの巻と相成っている次第でございますので、こりゃまあ炙り出された投資家が徐々に泣きながら買いに入るの図なんでしょうなあという所です。でもまあ最終局面のもう泣きながらブルフラットですよ大爆発ですよという展開には程遠いです(まだ時間的には余裕がありますし・・・・)ので、こんな感じで「何かネタ出て下がる」→「ネタの続編無くて相場止まる」→「下げ止まると押し目買い」→「ネタの無い中上昇」という実にいやーな展開が待ち構えていそうな悪寒です。
正直、こんな所で相場が強くなられても嬉しい人はあまりいないと思うんですけど、相場は皆が困るほうに動くの法則がありますからね。
○これは良い論戦(11月2日衆議院財務金融委員会より)
ここもと民主党のトンマな国会論戦を肴にしておりましたが、それではあまりにも不公平ということで(そうか?)ちゃんとした論戦をご紹介。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009516820071102003.htm
11月2日の衆議院財務金融委員会での民主党の小沢鋭仁さんが福井総裁に突っ込む姿は中々結構でござりまする(ちなみにこの日は自民党の佐藤ゆかり委員の質問もあったのですが、「美しい国の美しい金利」というような迷言が全然ない上にありきたりな質問でがっくりです)。会議録の真ん中辺りになります。
景気の見方に関して質問をして福井総裁の「先行きは息の長い拡大」という展望レポートの見解を引き出した所から小沢さんのツッコミは開始されます(^^)。
『○小沢(鋭)委員 決定的に違うんですね、私の見方は。景気は減速し始めていて、物価は下落を続けている、こういうふうに思っているんですね。これだけガソリン価格を含めて原材料が値上がりしているにもかかわらず、コアのCPIが下がり続けている。下がってないと先ほど総裁はおっしゃいました。そしてまた、さっきやじでも私申し上げましたが、ゼロ近傍、こういう話を岩田さんはおっしゃっていましたが、正確な数字を言ってくれませんか、コアCPI、マイナスでしょう。』
『○稲葉参考人 数字のお尋ねでございますので、お答えいたします。消費者物価、除く生鮮、前年比を見ますと、数字をそのまま申し上げますと、マイナス〇・一%でございます。この動きが、八カ月マイナスの動きが続いておりますが、ごく小幅のマイナスの動きが続いておりまして、達観して見れば、ゼロ%近傍で動いているというふうに評価してよろしいと思っております。』
「達観してみれば」ってよく考えたらオモロイですね。で、小沢さん突っ込む。
『○小沢(鋭)委員 マイナスはマイナスなんですよ。何でゼロ%近傍と言わざるを得ないのかというと、それは日銀が今まで発表してきていた政策基準と違うからですよ。違うから、ゼロ近傍と言わざるを得ないんでしょう。私、昨年の三月のときですか、やはりこの委員会で質問したときに、これは岩田副総裁の話で、量的緩和解除のときの議論でありますけれども、いわゆるコアの消費者物価指数が安定的にゼロを上回る、そう思っているから量的緩和を解除するんだ、こういう議論がありましたよね。安定的にゼロを上回るという話と八カ月連続マイナスという話は、これは矛盾するんじゃないんですか。そこのところを正確にちょっと答えていただきたいんです。』
まあここをストレートに突っ込まれると答弁は微妙になるのです(^^)。
『○福井参考人 昨年三月に量的緩和政策を解除いたしました。私どもは、その当時の利用可能な消費者物価指数で、安定的に消費者物価指数はプラスの領域に入り、基調的にもそれが続くというふうに判断いたしました。市場の判断とも完全に一致していたというふうに思います。そして、何よりも、経済の前向きの循環メカニズムがしっかり働き始めていて、その後これが定着する。したがって、実質二%前後の安定的な成長軌道に経済は乗った、ここが一番確信を持って判断したところでございます。その後の経過を見ておりますと、やはり経済は緩やかな拡大を続けている。先行きを見ましても、生産、所得、支出の好循環のメカニズムが維持されるもとで息の長い成長を続けていくと判断できる。』
『今、海外あるいは市場環境にリスク要因が高まっておりますけれども、それでも、私どもの標準的な見方をすれば、日本経済の前向きの循環メカニズムはそう簡単に崩れそうもない、崩れない蓋然性の方が強い、こういうふうに見られる状況でございます。物価の面では、その後指数の改定などもありまして、今、厳密に数字を見ると、ここ数カ月間、前年比マイナス〇・一ないしはそれに近い数字で続いておりますが、これもやはり、経済が着実にやや潜在成長能力を上回る成長を続けていく限り、需給がさらにタイト化して、基調的な消費者物価指数そのものもプラスの世界に入っていくことは間違いない、そういうふうに考えております。』
『ゼロ近傍で推移しております消費者物価指数は、そう遠からずプラスの世界に入り、そんなに急激に上がる、インフレの心配があるということを申し上げているわけではありませんが、ゆっくりとプラス幅を拡大していく可能性が強い、こういうふうに見ておりまして、これまでの量的緩和政策解除後の経済の推移を見ましても、これまでの政策判断にそんなに大きな狂いがあったというふうには考えておりません。』
『○小沢(鋭)委員 何でそんなに言い張るんですかね。僕は、だから、一方的に物価が下落し続けるなどと言っているつもりはありませんし、先ほど来の話のように、まさに原油価格の高騰だとか、そういう原材料費の値上がりがある意味ではかなりCPIを押し上げていくだろうな、こうも思いますよ。ですから、大事な話は、その時々の判断をしっかりと行って、弾力的な運営を行うということなんじゃないんですか。(以下割愛)』
んでまあこの先も突っ込む小沢さんに言い張る福井さんの図というのが続くのですが、まあ中身をあたっていただければと存じます。中々宜しい質疑応答。また後のほうで小沢さんはこんな話もしておりまして、まあそうでございますなあという感じです。
『要は、先ほど来私が申し上げているのは、機動的にやってくれ、こう言っているわけですよ、かたくなではなくて。そういう話なんですけれども、まさに福井さんの、総裁のおっしゃられる、また記者会見でも、新聞で見たから本当かどうかわかりませんが、記者会見では、長い目で見たアップサイドリスクは軽視できない、こういう言い方をしているんですが、長い目というのはいつのことですか。このFRBの機動的な運営と決定的に違うんじゃないですか。』
途中からは内閣府へのツッコミも入ってますが、中々筋の通った質問をしておりまして、民主党の金融政策論議に関してはこの人に集中させれば国会での論戦もちゃんとしたものが期待できるのではないでしょうかと思うのでありまする。
で、この前も申しあげましたが、総裁がこういう時に発言する定番として、『具体的な将来の状況を一定のイメージを描いて政策措置をあらかじめ予定するということは、金融政策上は絶対にあり得ないことでございます。』とかがあるんですが、そこでは突っ込まれなくて良かったねという所ですが、展望レポートにおける先行きの見通しの前提を「市場が織り込む先行きの政策金利」っていうのはどうなんでしょと思う(「政策金利不変」のケースを併記するもんじゃないでしょうか)のでありました。
まあ面白い論戦ですので読んでつか〜せ。
2007/11/15
お題「今回はバランスを取った総裁記者会見」
昨日は先日の水野審議委員の講演もアップされていましたが、こちらもまた長いのでちょっと両方という訳にも参りませんで、本日は総裁記者会見で勘弁。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0711c.pdf
○まず結論を申しあげますと
ここもと福井総裁の会見やら国会答弁やらてんこ盛りでありましたが、まあご案内の通りで妙に強気な発言が目についた(特に先日の大阪での記者会見では売り言葉に買い言葉モードになっておりましたな)のですが、今回の記者会見は字面を見ますと穏当というか平和というか。まあバランスを取った発言になってますなあという感じです。
まあ威勢の良い発言をだいぶしたのでファイティングポーズは伝わったということで穏当モードになったんでしょうかねえと思うのですが、威勢の良い発言をしても市場は反応しないわ、世間からは「何言っとるんじゃ」と非難を食らう状態では言うだけ損だと思ったのかもしれませんね(^^)。
結局、総裁が強気な発言をしても経済指標や資産価格動向などがなどの環境が強気発言にそれなりにマッチする状況じゃないと市場ってえのは反応しない訳ですなあということですわな。
○景気に関する発言は「シナリオ通りだけど点検事項が多い」
実質最初の質疑(3ページ)は住宅投資の低迷や原材料高に絡んで国内景気に関する見方についての質問でした。で、その答えですが、
住宅投資に関して
『おおまかな印象を申し上げますと、足許の住宅着工の減少はかなり急激であると思います。これは、本日公表されたGDP統計にもあらわれており、2007
年度の成長率を下押しする要因となっていると思います。ただ、改正建築基準法施行に伴う手続き面の問題が主因であるため、基調としての住宅着工が弱っているかどうか判然としない状況です。改正建築基準法施行に伴う手続き面の遅れが徐々に解消していけば、その後需要は再びあらわれてくるものと思います。この点については、今後もう少し様子をみないと正確なことが言えないと思います。』
原材料価格の上昇に関して
『また、原油価格をはじめとする原材料価格の上昇についてですが、中小企業を中心にこのところ企業収益を圧迫している、というお話を東京でも地方でも伺います。事実としてそのように認識しております。ただ、全体としてみる限り、中小企業も利益水準はかなり高い状況であり、この先生産の増加が続く中で、中小企業も増益傾向は続く可能性が高いのではないかとみております。』
景気循環に関して
『資本ストック循環の観点からみると、設備投資の増加テンポは昨年度までと比べれば緩やかになることを想定しており、展望レポートの見通しに織り込んでいます。』
『一方で、家計部門への波及が緩やかながら着実に進む中で、家計所得は緩やかな増加を続け、個人消費は緩やかな増加基調を辿るであろうと考えています。』
『このように、日本経済を全体としてとらえてみれば、展望レポートでお示しした通り、生産・所得・支出の好循環が途切れることなく働き続け、そのもとで息の長い拡大を続ける可能性が高いとみています。循環的要素を全く無視しているわけではなく、影響の大きい設備投資循環をある程度シナリオの中に入れているということです。』
という話をした後に、最後に不確実性に関して言及しています。
『もっとも、繰り返しになりますが、海外経済や国際金融資本市場の動向などには不確実な要因が存在しています。リスク要因がもし顕現化した場合には、その程度如何によって世界経済全体が下振れ、ひいては、日本経済にも影響が及ぶ可能性があります。引き続きそういう目で十分注視していく必要があるという点を付け加えさせて頂きたいと思います。』
いやあ急に中の人が変わったのではないかと思うようなバランスを考えたような発言でございますが、景気に関して基本的に強気な見方を変えず(2週間前に展望レポート出したばかりですし)で「確認すべき事項があります」という言い方で決め打ちを避けるという感じで宜しいのではないかと思うんですけどね。
○サブプライム問題、世界経済
4ページ目から5ページ目に掛けての総裁発言です。
『リスク再評価の過程というのは、新しい価格を発見するという非常に難しいプロセスを経ることであります。そして新しい価格を発見すれば、必ず何らかの損失が浮かび上がるのです。誰が損失を負担するかはともかく、誰かがその損失を処理しなければならないという、苦痛を伴うプロセスであることを申し上げました。従って、時間がかかるし、多少行ったり来たりしながら市場は新しい均衡価格を見出す努力を続けるだろう、と申し上げました。』
『そうした大きな枠組みで言えば、現在までのリスク再評価の過程というものは、私の頭の中に当初浮かび上がったイメージとさほど齟齬はなく進んできたと思っています。』
とは言いましても・・・・
『価格再発見の目処はまだついたわけではなく、欧米の金融機関の処理すべき損失額、マグニチュードについて、まだ明確に底が見通せる段階ではありません。全体の処理の枠組みは、私の頭の中の想定に沿って進んでいますが、最終的な処理の大きさ、マグニチュードについては、想定外かどうかまだ判定できない段階にあると思っています。』
で、世界経済ですが。
『実体経済について、米国の住宅市場の状況をみますと、ご承知の通り住宅投資が減少を続けており、在庫も非常に高い水準にあるので、こちらも当分の間調整が続くと感じています。これまでにかなりの時間をかけて調整を経てきておりますが、依然として、米国の個人消費や設備投資は少し減速しつつも、緩やかな増加基調を維持していると言えると思います。』
『7〜9月のGDP統計はさほど悪くなく、上方修正されるかもしれないという指摘もありますが、今後、成長率はある程度下がるとみるのが自然だろうと思われます。私どもは、そうした過程を経て、その後の安定成長に向けて軟着陸していく可能性が引き続き高いとみています。』
『また、世界経済全体としては、米国の減速をエマージング諸国の高い成長が補い、堅調な拡大を続ける可能性が高いとみています。』
ということで、こちらも展望レポートどおりであります。当たり前ですが。
○これは何というかちとオモロカッタ
こんな質問がありましたんですが(6ページ)。
『(問)(前半割愛)先程お話のあった住宅投資の落ち込みや原油高等、内需を取り巻く環境は決して楽観視できないという見方もありますが、この点は日銀の利上げ判断にマイナスとなるのかどうか、お伺いします。』
で、この答なんですけど・・・・・
『(答) まず、何事につけ、それを利上げ判断だけに直結して物を考えるという姿勢を取っていないということを申し上げます。』
と、最初に断ってから経済状況の話を始めているのですが、後半で結局こういう発言になっておりましてですな。
『金利引き上げのタイミング云々ということは、これだけでは決まりません。経済全体の拡大がシナリオ通り頑健に続いていくということが確認されるかどうか、リスク要因が数多く指摘されていますが、これらが想定以上に悪い姿で顕現化する心配がないかどうかなど、色々なことを考えながら毎回きちんと判断していきたいと思っています。』
どう見ても利上げ判断に直結して考えていますな(^^)。
別の所でもこんな事言ってましたんで、国会で「利上げ先にありきの姿勢は如何なものか」と散々言われたのがさすがにちょっとマズイと思ったのでしょうかね。
『繰り返し申し上げておりますが、私どもは利上げのスケジュールを前提にして、それとの比較で経済がどうかという見方はしておりません。』
とは言いましても、そもそも展望レポートにおける先行き見通しは市場が織り込む先行きの政策金利を勘案して設定されているんじゃなかったでしたっけとかいうツッコミは野暮ですかそうですか(^^)。
○長期金利の低下はフライト・トゥー・クオリティですかそうですか
最後にこんな質問が。
『(問) (前半割愛)2点目は、これに関し、特に債券市場では1.5%を割り、日銀がまだ量的緩和政策を続けていた時の水準に戻ってしまっています。総裁はかねがね、市場は金融政策の鏡という言い方をされていますが、今の市場が鏡となっているかどうかお伺いします。(以下略)』
『(答)2点目のご質問である長期金利が非常に低くなっている点ですが、これは世界的に連動しており日本の長期金利もそうなっています。グローバルな金融資本市場におけるリスクの再評価の過程で、いったんリスクテイクの姿勢が後退しリスクの少ない資産に流動性が向かうというflight
to quality(質への逃避)の一つの表れです。少なくとも今の長期金利動向は、こうした動きの中で一つの経過的な位置付けを持ったものだとみております。』
中々良い感じで意地っ張りであるというのは把握致しました。
まあ強気なのは変わらないんですけど、先日来のちょっと強引な発言は抑えつつも福井さん個人としては強気ですよ利上げですよというのは変りませんという所でしょうか。でもまあさすがにこの状況では笛吹けど踊らずということで、総裁在任中に金融市場情勢が落ち着いて景気が踊り場脱却してくれたらいいですね(棒読み)。
#ちなみに3か月FBと6か月FBの利回りがほとんど同じというとても素敵な状況になっているのでして、どう見ても市場は年度内利上げをケアーしてません本当にありがとうございました。。。。
2007/11/14
お題「まあ2週間しか経ってませんし/衆議院・・・・(−−)」
金融政策決定会合は案の定でございましたが、結果が出た後場の頭あたりから買いが入ってたように見えるのはありゃ何だったんでしょうか?警戒する必要あったんか??
○月報基本的見解は今回もまたまた同じ
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0711.htm(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0710.htm(前回)
サブプライム問題について何か追加あるかなというのは実はあまり期待してませんで、まあそのあたりは今日公表される全文を読まないといかないですかなと思うのです(がその時間があるのかどうか怪しい)けれども、これはまた見事に何もなかったような月報です。
・景気の現状認識、先行き見通しは全く同じ
10月は短観を受けて企業の景況感に対する言及がありまして、その部分が当然割愛されているのですが、それ以外に関しては冒頭の『わが国の景気は、緩やかに拡大している。』からまるっきり同じであります。しかし海外経済の見通しの『すなわち、輸出は、海外経済が全体として拡大するもとで、増加を続けていくとみられる。』ってのはどうなのよとは思いますが、この「全体として」に何かを加えるとなるとリスクアセスメントがより下方シフトしますって話になるんでしょうかにゃ。
・企業物価の先行き見通しを上方修正
『物価の先行きについて、国内企業物価は、当面、国際商品市況高などを背景に、上昇を続ける可能性が高い。』(今回)
『物価の先行きについて、国内企業物価は、当面、上昇を続ける可能性が高いが、そのテンポは鈍化していくとみられる。』(前回)
まあこれに対して消費者物価指数は上らないのですから困ったもんです(いち消費者としては困りませんけど)わな。
・金融面でも特にサブプライムの言及は無しですな
これまた基本的見解では言及無し。まあいつもの事ですが、金融面に関しては引き続き良好な環境にありますなあというお話になっておりまする。
という訳で金融経済月報は淡々と従来のトーンを継続しているのですけれども、あんまりこうトーンが変わらない状態が続くと「お約束の作文でございますかそうですか」と見做されるかも知れませんねえとは思うのでありますけれども。。。。
○票決が8対1
で、水野審議委員が利上げ提案というのはもうここまで来ると様式美の世界になっておりますな(^^)。まあ材料にはなりませんですし、理屈はともかく反対論が出ればそれに対して議論が発生する訳ですから、宜しいのではないでしょうか(??)。
総裁記者会見に関しては特にこう衝撃のヘッドラインとかも出なかったようでして、今回は(そりゃまあここの所総裁会見連発してたから何を今更というのもありますが)特にどうというのは無かったようですわな。
というわけで平和な決定会合でありました。その次まで6週間ほどあるというのもちと困るなあと。まあ展望レポートなので特殊要因とは言え、前回からから2週間しか経ってない決定会合(金融経済月報ベースでは1か月経ってますが)というのもなんですかなという感じはします。まあ諸々の日程があるんでしょうけれども、どうせなら決定会合は全部積み最終日にやってくれると楽(ある意味詰まらんが)なのですけど・・・・・(^^)
てなことで決定会合ネタはこんなもんなのですが、衆議院様が財務金融委員会の会議録を2回分アップしておりまして、これが中々面白いのであります。
○これはもっと凄い珍獣を発見しました!
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009516820071102003.htm(11月2日)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009516820071107004.htm(11月7日)
ちなみに11月2日分の最大の見所は民主党の小沢鋭人委員が「現在のCPIをゼロ近傍というのはペテンではないか」というような感じで日銀を攻める部分でありまして、大変に良いツッコミ振りを示しておりますが、既にご案内の通り国会会議録のご紹介をすると、引用でやたらと増量になってしまいます(大体個人的目安としてプレーンテキスト10kb以内というのがありまして)ので、こちらは後日また。
で、7日も色々なお話をしているのですが、驚愕の質疑応答を行っていたのは民主党の岩国哲人委員であります。ちなみにこの人の質疑応答部分を紙に打ち出す(範囲選択して「指定した範囲」を印刷)と9ページ分になりますが、笑える(内容が無茶苦茶なので)が笑えない(こんな話を国会でしてるのかと思うと)という代物です。
最初に証券税制の話をしてて、その中での内容も言いがかり(仮定の話をどうシミュレーションするんだよという感じ)ですけれども、発言の言い回しにまず笑いました。
『○岩國委員 岩國哲人でございます。(割愛)質問の順番を変えまして、今、石井委員がお取り上げになったキャピタルゲインタックス一〇%をめぐって、最初に質問させていただきたいと思います。(以下割愛)』
別の部分から一部だけ切り取ります。
『証券業を代表する協会の代表者たちは、株価水準に対するインパクトはどういうふうな数字を挙げて言っておられるのか。何らかのカンバセーションというのはあるわけでしょう。』
おまえはルー大芝かと小一時間。
#えーっと、このセンセイ「キャピタルゲインタックス」とか言ってますが、軽減税率は配当課税にも含まれるのでまあ勉強不足にも程がありますな。
ま、こちらのセンセイさまにおかれましてはこの先の質疑の所で、
『私は、ニューヨーク、ロンドン、パリ、いろいろなマーケットで仕事もしてきました、住んでもきました。』
とご自慢なされる方(ちなみにこのセンセイのホームページの自己紹介文章がまた凄いのですが、それは是非皆様ご覧いただいて爆笑していただければと存じます)でございますから、これは先生の仕様なのでしょう。
まあそんな話は良いのですが、兎に角この先生の質疑応答は電波ゆんゆんとしか申し上げようがございません。
その1:「日本」の読み方を財政金融委員会でするのでしょうか
『○岩國委員 (前半部分思いっきり割愛)さて、この世界最大の銀行の名前がどういう名前になっているのか、これを、監督局の七人の方に、我々の勉強会に来ていただいたときにお伺いしました。上場されるゆうちょ銀行の親会社はニホン郵政株式会社と私はそのとき聞きました。なぜニホンと言うんですか。このゆうちょ銀行が扱うお金は、ニッポン銀行と我々の一万円札には書いてあるわけです。日本でニッポン銀行という中央銀行があって、民間で一番大きな銀行はニホンと読ませている。ちょっとおかしいじゃないか、どっちかが間違っているんじゃないですか、どっちかに統一した方がいい、こういうことを伺いました。中央銀行、セントラルバンクがニッポンと発音させているときに、民間で一番大きな銀行はなぜニホンと読ませるのか。七人の方からは、これという御返事はありませんでした。要するに、ニホンと読ませるということがその勉強会では確認されただけなんです。ニホンなんですか、ニッポンなんですか、どっちなんですか。』
・・・・・・アホですか??
『○渡辺国務大臣 ニッポン郵政だと承知しております。』
『○岩國委員 私もそのように聞いたことがあります。しかし、監督局のそうそうたる七人の方たちが全部ニホンと言い、ニホンと決めたはずと。いや、ニッポンが正しいという人は、この七人の中に一人もおられなかったんです。つまり、ニホンと言うのがごく普通だ、そういう常識、感覚を持っておられたんでしょう。私はそれはあえて批判しません。私はニホンが正しいと思うからです。なぜか。天皇陛下が昨年六月シンガポールへいらっしゃったときに記者会見を開かれました。天皇陛下は、二十二回、ニホン、ニホン、ニホン。ニッポンと一回もおっしゃらなかったんです。ニホン、ニホン国、ニホン人、ニホンの伝統、ニホンの歴史、ニホンの文化、二十二回、ニホンですよ。ニッポンは一遍もありませんでした。皇后陛下は、三回、ニホンとお使いになりました。ニッポンは一度もありませんでした。なぜ、国民統合の象徴の天皇陛下がニホンとおっしゃっているときに、日本で一番大きな銀行にニッポンという名前をつけなければならないのか。どうお考えになりますか。』
以下延々目を疑うような質問が続きまして、読んでいると抱腹絶倒と同時に、これが国権の最高機関で行われている議論なのか情けなくて涙が出てくるのですが、この質問が財務金融委員会として意味があるのかと申しあげたくなります。
・国会は個人的な苦情お取扱機関の場ではありません
『○岩國委員 (前半割愛)トラベラーズチェックというのは、日本円を外国のお金にかえて、そして外国で買い物もできる、そういう点で非常に信用されている。日本の銀行でトラベラーズチェックも販売しておる、付随業務として。その中で、販売したトラベラーズチェックが、外国の、外国といってもアフリカのどこかの小さな国というんじゃなくて、パリのど真ん中で、ニューヨークのど真ん中で、そのトラベラーズチェックが換金できないという事態が起きている。そういう報告はきちっと来ていますか。同じ番号が二度販売されている。これもあってはならないことです。ちょうど、日本銀行の同じ番号のお札が二つも三つも出回っている、こういうことはまずあり得ないはずだと思うんです。トラベラーズチェックにおいて、なぜ同じ番号が二度売り、三度売りされているのか。政治家のレシートのように、二重三重のトラベラーズチェックが出回っている。そういう不祥事故はどういう報告が来ているのか、お答えください。』
事実ならとんでもない事件ですが、そんな事件どこでありましたっけ(当然政府参考人からは「そのような話は聞いていない」と答弁してます)と思ったらその次でずっこけ。
『○岩國委員 これは、はっきり言って、私自身が七枚のトラベラーズチェックを買いました、東京三菱銀行の京橋支店で。しかし、その七枚のうち一枚は、もう既にだれかに販売した数字だったんです。パリのオペラ座のところで現金にかえようとしたときに、当然、それはダブりトラベラーズチェックだということで拒否されました。恥ずかしい思いをしました。しかし、幸い、ほかのお金も持っていましたから、金銭的に不便をするということではありませんでしたけれども。私がそのとき思ったのは、トラベラーズチェックの専門のところがきちっとした金融機関としてやっていればこういうシステムの間違いというものはまずなかっただろう。それが、いろいろな大きな銀行が付随業務を次々にそういう形でもって広げていく。そういう管理体制もだんだん薄くなっていくでしょう。それがお客さんに迷惑をかけている。(以下割愛)』
事実であればご愁傷様としか申しあげようがございませんが、普通に考えて疑問が幾つかございます。
疑問その1:7枚なんて半端なT/Cの販売してますかいな
疑問その2:そもそも街の両替所がT/Cの換金済み番号を把握するようなシステム無いでしょ
疑問その3:大体難癖つけてますが、外貨両替業務なんてもう長いこと銀行やってますが何か?
疑問その4:岩国先生のようなお金持ちが何でT/C7枚ぽっちを必要としたんですか?
T/C両替する時ってパスポートの呈示を求められたりするような気がする(最近全然使わないから知らないんですけど)んですが、単に身分証明するものを持参してなくて拒否られたのを脳内で勝手に記憶変換されたのではないかと邪推したくなるんですが・・・・・・・
(翌々日読者様からのメールを頂き追記)
ところで、一昨日ネタにした某岩国先生のT/C両替拒否られ事件ですけれども、読者様から頂きました可能性として、「両替所に行く前にカウンターサインをした状態で持参したために拒否られたのではないでしょうか」という目から鱗なご指摘が。T/C関係でトラブルが起きるのってこのサイン関係が多いようですね。
ところで、よくよくに考えたらT/Cの番号って販売時に起番するんじゃなくて普通はそのものに最初から印刷されてる筈です(で、オリジナルサインと共に何番から何番まで売ったというのを控えで保存される)からそれこそ落丁乱丁でもない限り2重起番ってありえませんわな。。。。。
まあそれが岩国先生クオリティなのですが。
(以上追記終わり)
・そしてこれは素晴らしい電波質問
結局長くなりましたが最後は本石町日記さんのところで紹介されていた質問。
『○岩國委員 (前半割愛)家計所得そのものは、小泉内閣以来、二〇〇一年からほとんどふえてはおりませんけれども、激減しているのは利子所得なんですね。この利子所得の激減というのは十年ぐらい前から始まっております。二十兆円ぐらいあったものが、今はもう四兆円、三兆円程度の話。明らかに、メガ銀行が次々とできて、銀行は大きくなったけれども、銀行が払っている利子は激減しているんです。なぜ、銀行が大きくなるとお客さんは利子を減らされるのか。これについて、大臣、いろいろと金融界の責任者の方を御指導していらっしゃると思いますけれども、大きくなればなるほど利子は小さくなる。銀行の規模と利子はなぜ反比例するのか、お答えください。』
・・・・・(゜д゜)
『○渡辺国務大臣 これは、銀行の規模の問題というよりは、日本経済の置かれたデフレ状況が大変大きな影響を持っていると考えます。先生がお配りになられた資料を見ましても、一番利子所得が高いのが一九九一年の三十八兆九千億円、ここをピークとしてだんだん下がってきております。二〇〇五年においては三兆五千億円程度ということでございまして、まさに、この間の金利低下というのが最大の影響があるのではなかろうかと思います。』
そして以下無茶苦茶な質問が続くのですが割愛致しましょう。どうも岩国大先生によりますと低金利政策は銀行救済のためだったらしいです。
#うーむ、11kbになってしまった
2007/11/13
お題「決定会合ですが雑談」
サブプライム関連は大延焼モードでございますが、そもそものサブプライムの原資産から考えておまいら幾らレバレッジ掛けてたのかよと小一時間でありますな。
○ますます亜空間
昨日は株価指数がアホのように下げておりましたが、何か余りの動きに反応しそこなったのか単に月曜で投資家様会議で多忙だったのか知りませんが、外部環境がこれだけ動いたのに債券先物にしろ金先にしろあんまり動きませんでしたなあという結果になっておりました。
・・・・でもまあ仔細に見ると債券市場ではイールドカーブが超長期に掛けてフラットしておりますし、短い所でもちゃっかり金利が低下していますわな。
昨日は共通担保本店オペで8000億円の資金供給が行われまして、とうとう3月足のオペなんぞを打ちやがったのですが、こちらの落札レートが平均0.593%で足切0.59%となりました。先週水曜に実施された2月26日足のオペが平均0.603%で足切0.60%ですので3月足になったにも関わらずきっちり1つ下がりましたの巻。まあ先週木曜の2月15日足全店オペが0.59%足切でしたから下がるかなあとは思ってましたが。。。。
んでまあそんな状況ですのでFBの利回りも12月足まで(日本相互証券引けベース)0.53%と、それはGCや現先(大体0.53%〜0.54%ですから)で回した方が宜しいのではないかというレートですし、1月足で0.56%という状況は相変わらず(先週入札があった新発3か月は0.57%)で、金利の期間構造もへったくれもないというのは引き続き継続。こうなるとさてどこを潰しに逝くかといえば何かそこに存在するプレミアムを潰しに逝くの図となるので、短い所で言えば年末越えのプレミアムと、CPなどのクレジット物のプレミアムを潰しに逝きますよという話になるものかと。
その中で年末越えに関しては現実問題としてサブプライムだ何だというのがありますので、年末越えでファンディングの問題が生じるかもしれない(実際に最後の最後には何とかなると思いますが)ということで、潰しに逝くのはまずCPの方でしょうかという感じであります。
ということで最近SBの発行が多いせいか妙に(特に事業系の)発行が薄くなっているCP市場ではありますが、3か月ものの上位格付け銘柄で金融系で0.72%近辺まで下がるわ、事業系で(あんまり発行がないのですが)0.65%あたりになるの巻でして、まあ金融系はここもとのご時世なのでハンデつくのは仕方ない面がある(とは言え今までの流れから言えば結構つけさせられてる観があります)のですが、事業系はFB対比でもまあかなり潰れましたなという感じ。電力CPとかがこの期間で出てくると幾ら位になるのかをちょっと見てみたい気はするのですけどね。
なお、年内物に関してはFBとのスプレッドもっと薄くて事業系で0.55%近くまで下がっている有様ですんで、そういう意味では実需筋というか持ちきり前提な短期市場の最終投資家はまだ長いところに資金をそれほど持っていってないというか短い所の運用で凌いでいるという感じなのでしょうな。
・・・・でもまあ外部環境がこの有様で年度内(年内ではない)利上げって何ですか状態になりつつある亜空間な昨今ですので、どこかで年末越えを潰しに逝くのかなあとは思うのでありますが、さてどうなることやら。。。。
○金融政策決定会合ですが
まあ当然ながらノーケアーでして、注目材料はもはや完全に泥レス状態と化しているサブプライム関連問題の実体経済に与える影響に関してどう評価するのか(金融経済月報だと基本的見解部分ではあまり細々書けないのかなあとは思いますが)とか、総裁記者会見で狼ジジイ状態がまだ続くのかどうかとかが注目される所であります。
というか総裁会見はほとんどネタ会見になりそうな予感がしますが・・・・
ただまあ一応金利変更できないですがなの期待が定着するのは良くないという認識は変らないですし、すっかり忘却されていますけれども前回のFOMCでは一応リスクアセスメントを中立にしておりましたので、そーゆー点からもファイティングポーズだけは継続するんでしょうな。ちょっと現状からすると違和感ありありではございますが、もうこれはお約束芸の流れだと思って鑑賞するのが正しいオトナのあり方ということで宜しいのではないかと。
○ろくな指標が出ませんなあ
昨日出てたのが企業物価指数(日銀)に消費動向調査(内閣府)。
企業物価指数
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/cgpi/cgpi0710.pdf
消費者物価指数は上らないというのにこの有様。まあ全く同じ統計じゃないですから一緒くたにする訳にはいかないのかもしれませんけれども、川上の物価がまたまた上昇向きになっているのに川下は上りませんなあということで、どう見ても交易条件の悪化です本当にカムサハムニダ。というか企業物価上昇が消費者物価に波及するというシナリオも全然進みませんですわなあということで。ナムナム。
消費動向調査
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/2007/0710shouhi.html
ここを見ても総括判断が書いていないのですが、報道によれば総括判断を下げたようですな。ナムナム。で、どうでも良い事にケチをつけるのですけれども、確かにこの統計取ってるのは「経済社会総合研究所」ですが、内閣府トップの新着情報(http://www.cao.go.jp/news.html)で本件の見出しが「研究」というのは何だか妙ですな。景気動向指数とかも「研究」なんですけど、これって「経済」とか何かそういう名前にならんですかねえ。
#相場が亜空間入りしているので雑談で恐縮至極でありまする
2007/11/12
お題「サブプライム話はスルーして国会ウォッチ」
えーっと、サブプライム関連についてはどうも実感がイマイチ(あたくしは証券化商品と聞いただけで自動的に拒絶反応が起きるという素敵な仕様になっているというプレーン商品のトレーディング一本槍な人間ですのでどうにもこうにも)ですので、厭債害債さんの最新エントリー『金融商品の公正価格って』を心して読むべし(と人のふんどし)。
http://ensaigaisai.at.webry.info/200711/article_8.html
流動性の低い商品の「公正価格」ほどあてにならないものはないですわな。近くはエンロン騒動で短期公社債投信が現金化攻撃をした時なんて最後の最後は1年とか2年とかの国債まで無茶苦茶なレートになってましたっけ。最近はとにかくなんちゃら理論みたいなのが幅を利かせやがるから公正時価というものはあると勘違いして投資する輩が多くて甚だ頭が痛いところでありまする。
などと前置きが長くなりましたが。
1日に行われた参議院財政金融委員会での日銀半期報告での委員会質疑から(質疑応答引用なので長くてすいません)。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0105/168/16811010060003a.html
○今度はまあちゃんとした質問ですかな
またまた民主党ネタですが(しつこい)、今回は大久保勉さんが「量的緩和解除したのにコアCPIがマイナスが続いているのは如何なものか」という質問をしています。
『○大久保勉君 (前半割愛)私はよく分からないんです。実は、今年の三月二十七日に日本銀行総裁に同じような質問をしました。そのときは、二月のコアCPIが昨年四月に続きマイナスになるおそれがありましたので、わざわざ二〇〇六年三月の量的金融緩和解除が失敗ではなかったかということをお聞きしました。当時の回答は、マイナスは一時的で、将来CPIは安定的にプラスと予想しているということでありました。いわゆるフォワードルッキングという情緒的で、そういった言葉に煙に巻かれてしまいまして、何となく納得したんです。』
『しかし、あれから半年が過ぎたんですが、CPIは八回連続マイナスなんですね。ですから、そういう意味では、二〇〇三年の市場との約束におきまして、量的金融緩和の解除条件の一つに全国のコアCPIがマイナスに戻らないという項目設定がありました。約束違反じゃないですか。』
これは当然のツッコミ。まあ当然過ぎるので想定問答が帰って来るでしょうけれども、聞くべき質問ではございます。しかし民主党って質問する人によって金融政策に関する主張が真逆くらい違うのはなんぼなんでも如何なものかと思うのでありますが。総裁の答弁。
『○参考人(福井俊彦君) (前半割愛)そして、量的緩和政策の解除に当たりましては、物価指数はもちろん重要な判断材料としてこれを分析いたしましたが、その背後にある経済全般の動きを点検した上で、日本経済は息の長い成長を続け、消費者物価指数の前年比は先行きプラス基調が定着していくと見られるというふうに判断をいたしました。』
『また、消費者物価指数は、解除当時、つまり量的緩和政策解除当時、利用可能であった二〇〇〇年基準でプラスでありまして、コミットメントが満たされたことについて、当時市場と日本銀行との間で認識の相違は全くなかったというふうに考えております。その後、昨年八月の消費者物価指数の基準改定に伴う指数の下方改定の影響もございまして、御指摘のとおり、このところ消費者物価指数の前年比はごく小幅ではございますけれどもマイナスの月が続いていると、これは確かでございます。』
『しかし、消費者物価の基調を形成する経済環境という観点からは、その後も息の長い成長が続く中で労働や設備といった資源の稼働状況は高まっております。経済の前向きの循環が働き続けているという状況でございまして、先行きもこうした動きが続いていくと見られる状況でございます。消費者物価の前年比はプラス幅がこの先次第に拡大していくというふうに判断しております。展望レポートでも、その点は明記いたしております。日本銀行といたしましては、このような経済、物価の動きに照らしまして、量的緩和政策解除の判断は適当であったというふうに考えております。そしてその後も、経済・物価情勢の改善の度合いに応じて、極めて徐々ではございますけれども、正に徐々に金利水準の引上げを行ってきているというところでございます。』
というわけでこれが想定問答でございまする(^^)。で、この想定問答ではケシカランということで、大久保さんは「じゃあCPIが悪いんですか」と質問しておりまして、そのやり取りの流れでこんな発言が出てました。ベンダーでヘッドラインになってましたが。
『○参考人(福井俊彦君) 私ども、政府の作られました諸統計、なかんずく消費者物価指数についていささかも不信感は持っておりません。現に、この消費者物価指数に信をおいて経済情勢全般を判断し、今後とも金融政策を運営していく、こういう立場にございます。』
で、この次に「願望レポート」質問がございます(^^)。
『○大久保勉君 非常に一つ一つ点検してみましたら、何か、じゃ総務省のCPIもおかしくないと。じゃ何がおかしいか。それは説明の仕方がおかしいんでしょうね。ということは、総裁のコミュニケーション能力が非常にクエスチョンマークかなというようなことも理解しました。実は、この展望レポート、業界では、非常にフォワードルッキングで、ずっと景気は順調に拡大すると。つまり利上げ先にありき、若しくは利上げできる余地があるから、そういうふうにシナリオを作っていこうと。いわゆる日本銀行の展望レポートじゃなくて、日本銀行のこうなってほしいという願望である願望レポートと言われているんですよ。このことに関して、何かコメントございますか。』
あっはっは。で、これに対する総裁の答弁は確かその時の報道によりますと結構トサカに来てたようでしたが。
『○参考人(福井俊彦君) お言葉ではございますが、政策を急ぐことによって日本銀行が益するところは全くございません。金融政策が経済や物価に影響を及ぼすにはある程度期間を要するということは委員もよく御承知いただいていると思います。そのため、政策運営は先行きの経済、物価を見通しながら行っていく必要があると、足下の状況だけでは正確な判断ができないということでございます。このように、先行きを見通しながら金利の調整を行っていくという、これがいわゆるフォワードルッキングな政策運営の在り方ということでございますが、世界のいずれの中央銀行にも共通した考え方、認識でございます。』
字面だけだとアレですが、ややムッとしながら答弁したらしいというのと合わせて読むと中々味わい深い。展望レポートの説明もしましたがそこは割愛してその続き。
『(途中割愛)私ども、コミュニケーションが下手だというおしかりを受けましたが、上手だとは決して思っておりません。しかし、懸命に努力をしておりまして、この経済・物価情勢の判断と政策運営の基本的な考え方について展望レポートを出しておりますが、それを始めとして、議事要旨や記者会見、さらには本日のような国会の場での議論を通じてできるだけ丁寧にお話をさせていただいているというふうに思っております。引き続き、適切な情報発信を通じ、かつ努力をし、透明性の確保に努めてまいりたい、こういうふうに思っております。』
なんつうかな、確かに市場との対話って相手があることだし、かつ色々と無茶苦茶な解釈をする人たち(オマエモナーというツッコミは却下^^)のいる訳の判らんものですから難しいというのはご同情致しますけれども、プロフェッショナルの世界なんですから、「一生懸命努力してますから」というのはどうなのかねとは思ってしまいます。漫画「ギャンブルレーサー」(作、田中誠)の中で主人公の競輪選手が弟子希望の若い人に言った言葉をつい思い出しますよ。曰く、「仮に2年、3年と死にもの狂いの努力をしたとしても、もし結果をださなきゃ世間様は絶対努力したおは認めねえからよ。結果の出ない努力は遊びと同じでな・・・・」(漫画なので句読点補足、第118話より)。
せっせと努力してもその方向が間違って、結果の出ない自己満足だけしてるっちゅうのが許されるのは社会人2年目とか未経験者の最初くらいまででしょ。別にそちら様の自己満足的な努力を見せられても仕方ないんですけどねえ。
・・・などと偉そうな事をいうあたくしが結果が出てないときに努力はしたんですよと定性評価を持ち出してその場を何とか切り抜けようとする仕様になっているのはここだけの話ではございますが(爆)。
えーっと、話がいつの間にか逸れてしまいましたが、これが巷で話題になった「願望レポート」質問の流れでありました(^^)。なお、めんどいから引用しませんが、大久保先生質疑の途中からかなりグタグタになっていまして、なんちゅうか大久保さんの仕様なのですけど、最後まで良い質疑が続かないという不思議なお方でございます。
○質問は皆さんで整合性を取るようにしたほうが良いのではないでしょうか
まあそんな感じ中々結構な質疑があったのですが、2番手に出てきた民主党の川崎稔委員の質問でいきなりこんな話が。
『○川崎稔君(前半割愛)資料にもお出ししました日本銀行で実施しておられるこの生活意識に関するアンケート調査、これ、私の記憶が間違っていなければ、総裁がかつて副総裁でいらっしゃったころに生活短観ということで肝いりでスタートされた調査ではないかというふうに思っておるんですが、非常に実は私もいろんな結果を見ていて、そして実際の国民の皆さんとお話をしていて、非常に実感に合っているんですね。そういう意味では、この調査というのをもう少し重視なさってもいいんじゃないかなという気がいたしますが、いかがでしょうか。』
いやあのそれですと折角大久保さんが質問した話が台無しなんですが・・・・
で、もっとややこしいのはこのセンセイ、その後格差問題に話を持っていった挙句に最後の方では金融政策についてこういう質問(というか主張)をしているところです。
『○川崎稔君 今お話にございましたことを逆に言うと、生活実感として考えた場合といったことで見ますと、資料の3に景況感、先ほどの生活意識に関するアンケート調査の景況感、グラフをそのまま記載させていただいておりますが、やはり実際に生活者の実感では、ここに来て急速に景況感の悪化という形で数字が出ているわけですね。やはりいろんな意味で、決して格差の問題というだけではなくて、地方、本当に日本の中で多くの方が地方に住んでおられるわけですが、その実感というのはむしろこちらに近いんではないかというふうに思っておりますので、この点については引き続き十分なウオッチをお願いしたいというふうに思っております。』
じゃあ物価の話を持ち出すなと・・・・・
○これは釣り質問なのか本音なのか良く判らん
後半(午後)のトップバッターは自民党の田村耕太郎さんなのですが、この田村さんはついこの前まで内閣府経済財政担当政務官をやっていたのですが、何故か今回の質疑では「CPI統計に囚われることなく利上げすべきである」という質問を連発しています。
国会でギャグ質問をしたのを自分のサイトで自慢するお方なだけに、何か釣り質問をして相手(日銀)に「その通りです」と言わせる引っ掛け釣り質問と見ましたが、日銀もさるものでそういうのには引っ掛かりませんですなあというのが中々微笑ましかったです。
全編がそんな感じの釣り大会になっていますが、適当なところから引用するとこんな感じであります。
『○田村耕太郎君 (前半割愛)例えば、リスク資産の再評価が起こっていると仮定した場合、ということはリスク資産が過大評価されているということですよね、今のリスク資産が過大評価されている。その一つの要因として、日銀が低金利政策を取り続けたことによって、円キャリートレードですね、低利な円資産で資金を調達して、それをリスク資産にどんどん投資していく。この行動が世界的に起こって、それがリスク資産の過大評価を引き起こしてしまったんじゃないかと、私はそういう面があると思うんですけれども。(途中割愛)私としては、もっと早く金利を上げて、バブル、もう本当に、リスク資産の過大評価が起こるまでに先手を打っておくべきではなかったか。また、これからそういうことが起こるとしたら、リスク資産のこれ以上の過大評価が起こる前に先手を打つべきじゃないかと思うんですけれども、その辺りいかがですか。』
実際は武藤副総裁が答弁(今は国内にバブルはないという話)をしたのですが、そこの部分は飛ばして総裁の答弁を。
『○参考人(福井俊彦君)(前半割愛)しかし、問題は、市場の本質は決してとんでもないところに行くことをねらっているわけではなくて、最終的な均衡値というものを求めながらダイナミックに動いているということでありますので、中央銀行の政策というものが的を外れていないと、投機にも限界があるんだという意識を市場参加者にいつもきちんとアピールできるような政策を各国の中央銀行がやっていけるかどうか。特に、日本の場合でいえば日本銀行の責任はそこにあるわけでして、仮に円キャリートレードにひととき力を入れる方があっても、我々の金融政策がその人たちの心理に対して、深層心理においてきちんとブレーキが掛けられているかどうかと、こういった点が非常に大事でございます。委員のおっしゃるとおりの感じでやっていきたいと思います。』
微妙に釣られている感じでもありますわな(^^)。CPIの統計手法に問題があるのではないかとか、結構面白い釣り質問が連発するのでこちらも結構楽しめます。あくまでもネタとして楽しめるだけで勉強にはなりませんが・・・・・・
2007/11/09
お題「相場も盛り下がってまいりましたので雑談」
というか国内要因のネタが無いという感じですのですが。
○3か月もの資金供給オペ0.6%割れ
のっけからマニアックな話で恐縮ですが、昨日はスポットスタートの共通担保全店オペで2月15日足というのが実施されました。似たようなのは31日にスポットスタートの2月15日足(年金定時払いの財政払超にぶつけてる訳ですな)というのが行われてこの時は平均0.608%の足切り0.60%だった訳ですが、今回のオペは平均0.597%の足切り0.59%と見事に1bp低下。
これは1bp低下したというよりは「ああ0.6%割りましたなあ」という感じ(地合いから言って時間の問題だったとは言え)でございまして、昨日は今週入札が行われた6か月FBも0.595%に金利低下してましたし、短い所には資金が例によって余ってて年末越えあたりのレートに低下圧力がかかってますなあという感じです。
#実は最初トムスタートの本店オペと勘違いして0.58%くらいまで下がるのかと思ったのはここだけの話です
FB3か月も結構な感じで低下してまして、入札段階で0.583%レベルでやってた今週の(って一昨日入札ですけど)新発FB3か月は昨日は0.570%まで金利低下の巻ということで、こちらもまた確りです。で、このFB利回りですが、レートが階段状になっているのはいつものとおりでして、1月償還のFBが大体0.56%で、1月28日償還のFB480回になって0.57%で新発の484回まで0.57%が並ぶの巻。どう見ても利上げ無警戒です本当にありがとうございましたという感じですが、まあ致し方無しですわな。
ちなみにもうちょっと長いところですと3月償還のTB419回は異常値(この銘柄は入札の時に超大量の不明玉があって流通玉が極端に少ないんですよ)としまして1月〜3月が0.56%〜0.57%となってて、4月から何となく傾きがついてる(まあこの辺は流動性に乏しいのでこの引けも本当にそうなのかはよく判らんのですけど一応信用すると致しまして・・・・)感じで0.6%〜0.63%というような感じになっているようですわな。それにしてもろくすっぽ傾いてない訳で、これまた利上げ警戒感の大幅後退というところでありましょう。
まあ利上げ観測はだいぶ前から後退している訳ですが(苦笑)、ここもとの動きは先ほど申しあげた共通担保オペレートに加えまして、CPの発行利回りが3か月などの期間でやや低下(年内償還物は既にこれ以上低下しにくい所まで低下してますので・・・・)している所でありまして、サブプライムというネタで微妙に最近ハンデのつき方が目立つ(サブプライムと関係ねえだろという気がするのだが^^)金融系の上位格付け発行体で0.7%台後半だったレートが月末辺りから徐々に低下傾向になってきて昨日は0.73%あたりまで低下してるようですわな。まあ時間的に11月に突入した事もありますし、徐々に年末越えの資金を(それなりに年末越えプレミアムがついているうちに)放出しておこうってのもあるのかなあと思うのであります。
また、相変わらずキャッシュ潰そうという人はいるようで、1年以内の国債とかは何せ1年TB426回(ほとんど11か月ものですけど)が0.635%などという有様ですし、これらのゾーンの高格付けものの一般債もやたらビットが旺盛のようでして、正直足元金利の足し算をしながら買おうとする人にはちょっと勘弁して欲しい(超短い所というのは国債なら途中で売りにいけるけど、一般債は一度買うと売りに行った場合のハンデがでかくなるので中長期債以上に流動性に差がある)というレートになっているようですので、このあたりの資金も相変わらずという感じ(ただしディーラーの在庫はさすがに増えているようです)ではあります。
てなわけで、1年辺りの金利がさすがにちょっと間尺に合わない水準で安定しやがっているので、年末越えのプレミアムをここらで剥がす流れになってくるんでしょうなあと思うのでありました。
○ECBも利上げ無しですなあ
まあ当然の結果ではありますが、ECBは金利据え置きで金利水準に関しては(実は声明文を真面目に読んでいるわけではないのでまちがってたらゴメンナサイなのですが)中立(というか要するに様子見なんでしょう)のようですし、FRBはバーナンキ証言にあるようにまあ普通に考えて利下げになりそうな感じ。
これでまあ日本国内の経済指標が良いというならまだしも、昨日公表された景気ウォッチャー調査はまたまた悪化しやがっておりましたんで、ますます雰囲気宜しくない状況の中で金利正常化路線を無理に継続するこたあねえと思うんですけど。だいたいからして米国みたいにインフレ懸念がある訳でもない(まあ日常品の値上げは話題になってますが、それで買い溜め現象とかが起きてる訳でもないので、まだまだインフレ懸念には遠いでしょ)我が国は余裕をぶっこいて様子見してりゃ良いんじゃネーノという感じですわな。
ま、総裁発言に相場が全然反応しなくなっているという現象を取りましても、市場の方が既にその辺まで織り込んでいるという証左ではございますが、そこまでの状況が中々市場の外の方には伝わらんようで福井総裁の狼ジジイ発言の方がクローズアップされるのは仕方ないこととは言え残念な事でありますな。
いやまあそれだけのことですが。
○その他備忘メモ
・サブプライム問題
http://www.asahi.com/business/update/1106/TKY200711080371.html
サブプライムで73億円損失、滝野川信用金庫
ほほう。日経読まないので知らなかったんですが、6日の夕刊に出てたそうですねえ。
・40年国債入札(火曜の話を今更)
入札の前場引けまで煽って2.405−2.415の気配で入札やったら結果が2.435%だわ、大引けになってみたら2.450%だわとは何という不祝儀相場・・・・・しかも昨日の引けでも2.445%で、入札時点から先物は気持ちよく上昇しているのに、まだこんなもんですかそうですか。何だかトホホ感が漂いますな。というか煽るなよ・・・・
・ドル安ですなあ
奇しくも西村審議委員のスピーチが話題になった(正確に言いますと、スピーチの時点ではごく一部の人間が「チューリッヒの小鬼」なんて久々に聞いたぜとネタにしてた程度だったのですが、WSJだかFTだかで記事になった途端に国内の一般メディアまでが追随したという情けないけどありがちなパターンだったのですが)あたりがドルの最盛期でしたかそうですかということで、相場ってえのは手を変え品を変えながら結局同じようなパターンを繰り返しますなあという感じであります。
しかしアメリカ様はこの状況で物価上昇したらインフレというよりはスタグフレーションになるような気がするんですが、どういう手を打って来るのかバーナンキ先生大変ですが頑張って頂きたいと存じます(と見物人モード)。ケチャップまだー?
2007/11/08
お題「ネタも無いので国会会議録見学とか」
米国3か月短期国債40毛強ですかぁ・・・・
さてまあ国内の金融政策絡みでは「こりゃちょっと動けないでしょう」ということで徐々に年末越えのプレミアムが潰れる感じとか、短い所の強さとかが目立ちますが、何かこう大ネタになるようなものも(あたくしの目が節穴のせいか)見当たらない昨今。ここもと国会で何故か金融論議が多くて会議録がようやく出てきたので査収したのですが・・・・
○これは喜美大臣の見事な瞬殺攻撃で素晴らしい
http://hongokucho.exblog.jp/7677831/
評判悪いと言われてしまいましたが(苦笑)、渡辺大臣って全体的な話をしてる分にはそう無茶でもないとは思うのですが、公務員制度改革でもやらかしてたと思うのですが、具体的な施策に落とす段階で急にトンデモになるのがオソロシスなのですよね。またその辺の話はいずれ(笑)。
ちなみに、民主党のこの某質問者は確か以前質問主意書で裁判係争中の案件について意見を求めるという司法介入ですかと申しあげたくなる行為に及んだ方ですわな(以前ネタにしたことがございます)。この質問はアホウとしか申しあげようがございませんです。民主党はこういうアホウに質問をさせる時間を共産党に渡して質問させた方が遥かに有益ではないかと思うのですが、昨日査収した国会会議録はもっと酷いのであります(驚)。
○この質疑応答は酷い
先週火曜日(10月30日)の参議院財政金融委員会での質疑。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0105/168/16810300060002a.html
トップバッターで延々と質疑応答を行っているのは民主党の円より子委員なのですが、この質疑応答を見ていると小沢代表じゃなくても政権担当能力への疑問符がつくというものであります。トップバッターでありますので上記URLの最初の部分(うっかり紙に出すと大変な量になるので要注意)です。
延々と無茶苦茶な話が続くので全部紹介するのはちと難しく、まあ適当なところを。しかしこんな問答に付き合わされる日銀の稲葉理事と堀井理事およびお付の皆様におかれましてはご愁傷様としか申しあげようがございませんが。
まあ全編言いがかりと思い込みの連続なのですけれども、為替問答のあたりがまず笑うしかございません。以下引用。
『○円より子君 円相場に関しまして今大臣が何度かおっしゃった経済のファンダメンタルズを確実に反映すべきという、その真意はどこにあるんですか。』
『○国務大臣(額賀福志郎君) それは正に経済の基本的なファンダメンタルズを反映したものとして市場が決めていくことであると、そういう原則に基づくものであるということでございます。』
『○円より子君 現状認識を変更するものではないという御発言もあったと思いますが、これは現在の為替水準、動向を容認するものなんでしょうか。』
『○国務大臣(額賀福志郎君) 為替の問題について私が一々、こうあるべきだ、こうすべきだということのコメントは差し控えさせていただきます。したがって、市場が日本の経済状況、経済ファンダメンタルズを反映したもので決められていくべきものであるという基本的な考え方を持っているということでございます。』
『○円より子君 差し控えさせていただきますとおっしゃっていますが、何も言わないことは現状認識を容認するということになりますよね。アメリカのポールソン財務長官がG7において強いドルを確認したと報じられておりますけれども、これは何もおっしゃらなければ日本としては弱い円を容認するということになりますが、そういうことでよろしいんですか。』
・・・・この質問者はアホですか??
で、まあこの後延々と「円安はケシカラン」という話が続くのでありますが、「強いドルを望む」という米国の政治家を褒めるかと思えば日本の経常黒字が多いのは良くないというような話をしていて、もはや意味が判らんというか支離滅裂というか。
『円安のまず国民生活への影響についてお伺いしたいと思います。(途中割愛)輸出者である企業は大変この円安基調を背景に潤っておりますけれども、そのしわ寄せが輸入者である国民の負担となっているのではないかと私は懸念しているんです。』
ほほう。
『特に、最近は生活必需品の輸入が目立つようになっておりまして、こうした生活必需品価格の上昇が実感として顕著なものになっております。例えば、年収千五百万円以上の世帯では日常生活品の購入は三七%なんですけれども、今格差が広がっていると言われていますけれども、年収二百万未満の低所得者世帯では生活必需品の購入割合というのは六七%なんです。そうしますと、当然実感するコアのCPIは、今年四月以降、前年比プラスに転じております。そういうふうなCPIの上昇要因の分析も踏まえまして、これらの生活必需品の価格上昇が低所得者層への負担増加につながっている。』
ほうほうなるほど。
『こうしたことがよく都市部と地域の所得格差ですとかいろいろ言われますけれども、実質的にこうした円が弱いということが所得格差の拡大につながり、これが為替政策の私は負の部分だと考えるんですけれども、こうした格差の拡大や低所得者層の負担の増加について、大臣、政府はどのように認識しておられますか。』
論理の飛躍がすげええええええ!!!です。えーっと生活必需品とやらに対する輸入品の割合は幾らになるとか、輸入原価に対する販売価格の寄与がどの位とか、生活必需品じゃないものに輸入品はどの位あるのかとかいう話が全部華麗にスルーされているのですが・・・・・
まあアジ演説のガイドラインとして読めば勉強になる(ならないか)のですが。
で、まあどう見てもお馬鹿としか言えない問答が続くのでありますが、外準を巡る話の部分がまた驚倒すべきものであります。質疑応答の最後の方。
『○円より子君 それでは、もうあと時間が少なくなりましたので、外貨準備の運用の在り方について質問させていただきたいと思います。(長いので割愛)こう見ますと、対米経常収支黒字と外貨準備はもちろん今中国が日本を上回るんですけれども、官民合計の米国債保有残高は日本が中国を上回っております。 こういった点について、政府は本当にどのような基準で積み上げていらっしゃるのか、この巨額の外貨準備ですね、お伺いいたします。』
『○国務大臣(額賀福志郎君) 先ほども若干話があったわけでございますけれども、通貨の安定のために将来為替介入する場合も予想されるわけでございますから、そのために準備を持っているということは当然であります。(以下これも長いので割愛)』
『○円より子君 今また何かがあったときに介入をするためにとおっしゃいましたが、今全部ドル建てで、ほとんどドル建てで持ってるんですね。例えば、ユーロの場合は金で四〇・七%です。日本って金は一・五%程度しかたしか持ってないと思いますし、インドでも四・二%、ロシアでも四・九、イギリスでも七・一、金を持っています。 日本ってほとんどドル建てで持ってるわけで、それで介入をするということは、ドルをお売りになるんですか。』
・・・・・・・(呆)
『○国務大臣(額賀福志郎君) いや、だから、それはどういう状況に、為替の状況によって、為替があんまり混乱をしないように考えるわけでございます。』
『○円より子君 ドル建てで持ってる外貨準備のあれを売れば、ドルはますます暴落します。そうしますと、先ほど申しましたように、どんどんどんどん毀損していくわけですよね。更なる毀損を呼んで、まるきり日本の財産をなくすということになりませんか。』
外準使って通貨介入するのは自国通貨防衛の時だろう常識的に考えて・・・
というか、このセンセイ先ほど円安はケシカランって話してたんだからドル暴落歓迎じゃねえのかと思うのですが(苦笑)。
『○国務大臣(額賀福志郎君) ですから、我々も、円が急激な変動があっては経済の安定に支障を来す場合もあるわけでございますので、そのためにそういう外貨準備をしているということでありますから、その状況状況によってどういうふうに対応するかは考えていくわけでございます。』
『○円より子君 この三、四年はたしか介入一切なさってないんですが、もう物すごい額の介入をその前はやっていらしたんですよね。そういう介入のときも、どうも財務大臣等が余り相談に乗っていらっしゃらないような気がするんです。国会での質疑もほとんどありませんし、チェックなしに介入というのはやられてますし、こういう外貨準備の、今の大臣のお話を聞いていれば、なぜ介入をしたり、なぜ外貨準備がこれだけ増え続けて必要なのかということに対しての御認識が、どうも大臣としての資格の点で、資格なんてそういうことを言っちゃいけません、申し訳ありません。大臣としてあんまりよく分かっていらっしゃらないんじゃないかなという気がして、大変不安でございます。』
どう見ても質問者の方が全然よく分かっていらっしゃらなくて大変不安です。で、この発言続きがあるのですがこれが酷い。
『(続き)この私の時間もうなくなってまいりましたけれども、本当に、今外貨準備高からその金額、百兆を超える中から介入をしようということはドル売りだと思うんですが、それでよろしいですか。』
『○国務大臣(額賀福志郎君) だから、そういうことを、我々が何を幾ら持っていて、こういうことを今やろうとしているとか、やりますとかいうことについては大臣にはちゃんと報告があり、また協議をした中で考えていくことになります。したがって、為替の安定のために我々が今の時点でこうする、ああするということを言うべきではありませんが、きっちりと為替の安定のためにはしかるべき措置はとりますということであります。』
この質疑応答の途中から額賀大臣どうみても質問者の馬鹿さ加減にイライラしている感じで実に楽しいですが、確かこの質問者は民主党の副代表だったとあたくし認識している訳でして、会議録見てるこっちのほうがアホさ加減に絶望してしまいますな。
かつて自由党があった時は、金融関係の国会論戦って自由党の質問者が中々いいツッコミをしてて(共産党は時々拍子外れな質疑をすることもあるけど、結構良い質疑をします。持ち時間が少ないのが残念ですが)、結構政府サイドがたじたじになったりするのを見るのが楽しかったのですけれども、最近は珍獣観察のネタ拾いに国会会議録を見るようになっている自分にも絶望した!なのでありまする。
#ベタベタ引用で増量になりまして恐縮至極です。
ということで珍獣観察の巻でありました(^^)。
2007/11/07
お題「9月前半会合の議事要旨と月曜の総裁会見」
まずは議事要旨。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g070919.pdf
○やはり米国サブプライム懸念
『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の海外経済の部分ですが、米国サブプライム懸念てんこ盛りの図となっています。
『金融市場の動向について、委員は、米国サブプライム住宅ローン問題に端を発した国際金融市場の動揺が続いているとの認識を共有した。』
で、色々と指摘があるのですが割愛します。
『こうした議論を経て、委員は、今後の金融市場の動向については、A B C
P のロールオーバーの進捗状況や金融機関による流動性・信用補完実行の動き、金融機関の収益やバランスシートの状況などを含め、注視する必要があるとの見方で一致した。』
結論としては先行き要警戒という当然の物になっています。
で、このサブプライム問題に関連して、米国経済や欧州経済に対しても警戒モードになっているというのは当然ではございますわな。
『米国経済について、委員は、個人消費や設備投資を中心に、減速しつつも緩やかに拡大しているとの認識を共有した。サブプライム住宅ローン問題と金融市場の動揺が米国経済に与える影響について、複数の委員は、企業のバランスシートは健全であり、クレジット市場の機能低下が信用収縮を招いていないなど、これまでのところ、悪影響が生じているわけではないとの認識を示した。』
と、まずは強気の見方になるのですが、先行きのリスク認識はいきなりこれです。
『もっとも、先行きについては、大方の委員は、景気下振れリスクが高まっているとの見方を示した。』
で、要因分解の部分は勿論住宅市場の実体経済に対する影響を見極めないといけませんという議論が続いております。
で、欧州経済。
『欧州経済について、委員は、ユーロエリアでは、内外需要のバランスのとれた景気拡大が続いており、英国経済も高めの成長を続けているとの見方で一致した。そのうえで、多くの委員は、金融市場の動揺が続いており、その実体経済に与える影響に注意する必要があるとの認識を示した。』
ということで、こちらでは金融部門の動揺が実体経済に与える悪影響に関しての言及もございます。
ということで、サブプライム問題が欧米経済に与える影響についての警戒は(当然ですが)結構議論されてて、かつリスクとして認識していますわなという当然の結論。
総裁記者会見では(後でも紹介しますが)「実体経済の好調にも関わらず金利を上げられないという認識が定着する」のをやたら警戒している物言いが目立つ今日この頃ですが、まあ政策委員会のリスク認識は総裁記者会見での空元気じゃなかった強気姿勢とはちょっと温度差あるんじゃネーノというところではないかと存じます。
○実はバブル警戒じゃなくて・・・なのかな?
んでまあ欧米経済のサブプライムに関するリスクアセスメントを議論しておりますが、返す刀でアジア経済の好調さや、本邦経済はサブプライム問題の影響は乏しいというお話になっておりますというのは念の為つけ加えておきますね。
さて、その本邦経済に関してですが、国内住宅投資の中でちょっと「ふーん」と思った指摘を。
『ただし、複数の委員は、首都圏の新築マンション契約率が低下していることや、不動産ファンドからの資金流入が減少していることを指摘し、今後の動向には注意を要すると述べた。』
ということでですな、昨日ご紹介した月曜の総裁講演での福井総裁の指摘する『活発な再開発や堅調なオフィス需要などを背景に、9月に公表された都道府県地価で、東京、大阪、名古屋の3大都市圏の地価上昇率が拡大しました。こうした動きも、企業や金融機関の行動を活発化させる方向に作用すると考えられます。』という先行き上振れリスク部分ですけれども、他の「複数の」政策委員におかれましては、必ずしも不動産バブルワッショイじゃないのではと冷静な指摘をしているという所ではないかと思うのであります。
何かこうこのあたりを見ておりましても、記者会見などでの福井総裁の利上げへの積極スタンス(に見える姿勢)と政策委員会での論議の温度差が出ているんじゃないのかなあって思うのであります。ちょっと期待込みではありますけどね。
ということで決定会合議事要旨はそんな感じです。さて月曜の福井総裁記者会見。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0711a.pdf
○かなり「利上げするな」と言われたんでしょうな
全部で9ページの質疑応答なのですが、質疑応答の内容がほとんど「これだけ皆さんに利上げするなと言われてる中で利上げしようというのは何でなんでしょうか」というような勢いの質問で、それに対してどんどん売り言葉に買い言葉モードになっていくのが実に香ばしい次第であります。
ということで、こちらは是非全文をお読みいただき流れを楽しんで頂きたいと存じます次第ではありますが、それだと話が終わってしまいますので(^^)後半の質疑のあたりから。
6ページ目の質問が実に良い燃料投下になっております(^^)。
『(問) 懇談会出席者から、利上げについては慎重にとの意見がありましたが、こうした場で、あのような形で要請を受けたことについて、率直なご感想として、どのように受け止められたかを伺いたいと思います。また、常々、「予断を持たずに」というように仰っておられますが、時期的な判断として、世界経済全体の最近の状況から、なかなか利上げし難くなってきているのではないかという見方もあると思います。国内情勢と海外の情勢を含め、そのあたりをどのようにお考えか、もう一度お聞かせ下さい。』
正直、これに対する福井総裁の発言は言語明瞭意味不明の世界でありまして、全部引用すると長くなるし、かいつまんで紹介しようにも意味不明ですのでどこが要点だかワケワカメなのであります。
で、多分この辺が言いたい所だったのかなと思う部分は・・・・
『やはり、色々と新しい材料をこなす過程で過不足のある評価が行われ、しかし、それがマーケットの中でもう1回読み直すというインセンティブが働いて、きちんとリプライスを繰り返しながら、更に前進していく、これが、むしろ経済および金融の普通の姿だと思います。我々は今、より困難になったというよりは、普通の状態に向かっているということであり、金融政策としては普通のやり方で判断していけばいいのではないか。何ものをも楽観視せず、何ものをも無理に、過度に恐れず、そこに冷静な判断が求められる状況になってきていると思います。』
と引用しましたがやっぱり訳が判りません><;
そして今回の白眉は最後のあたりでございまして・・・・・
『(問)(冒頭割愛)足もとの金融市場では、株価が随分変動していることもあると思いますが、日銀の金融政策について年内の政策変更の可能性は非常に小さいという前提に基づいて取引が行われているように見えます。こうした現状が、展望レポートや講演で述べられた「行き過ぎたポジション」に当たるのか、まずお聞かせ頂きたいと思います。』
この指摘もたいがい厳しいですなあという感じですが、その後がもう燃料どころかガソリン投下の様相。
『もう一つ、今日の講演後の質疑応答でも、タイムリーな金利引き上げが重要ということを繰り返されました。このところ、先週の国会質疑でも、同様のお考えを繰り返し述べておられ、日銀はやはり利上げをしなければならないというメッセージが非常に伝わっていると思いますが、実際には、世界経済の下振れリスクとか、市場の変動とか、国内での中小企業の弱さとか、非常に利上げし難い状況が続いていると皆が思っているところです。』
誠に仰せの通りです。そしてかいしんのいちげき!
『そういう中で、利上げしなければならないと繰り返すこと自体が、実際に利上げできない時期が長引いていますので、ある種、狼少年ではないかという指摘もあります。こういう状況が続くことは、日銀の金融政策に対する信認ということにも関わってくるのではないかと思いますが、そのことについてお考えをお聞かせ下さい。』
本来は総裁記者会見の紹介をする筈なのに、質問が素晴らしいので思わず質問の引用が長くなっておりまして恐縮ですなm(__)m
でまあヘッドラインにも出ていた総裁の迷言が登場。
『(答)(最初もオモロイけど割愛)ダウンサイドリスクが、しばらく以前に比べると、米国経済あるいは国際的な金融資本市場中心に、少し高くなってきているという事実は認識しています。これをもカウントしながら今後適切なタイミングを掴んでいかなければならないということですが、ダウンサイドリスクにばかりかまけていて、「しばらく我々は頭の中を空っぽにして待つのだ」ということは、将来の大ミスに繋がる態度になります。』
『我々は、ダウンサイドリスクが強まる場合であっても、一方で、緩和を長く続け過ぎることによる、よりロングランなリスクを十分考えなければなりません。日本に限らず、海外においても、経済の大きな変動を結果としてもたらした、その以前の段階では、ある問題に対する対処に余りにもエネルギーが注がれ過ぎて、一見、すぐには起こりそうもないリスクから目を離すという瞬間があったのではないかという反省があります。率直に言って、日本においても同様のことがあったのではないかと思われます。従って、我々としては、自らそういう態度をとることは許さないという強い自戒の下にやっているということです。』
まあ米国の緩和引っ張り過ぎによる住宅バブルというのはあったような気がしますが、それと現在の日本とは状況が違うのではございませんでしょうかとか思うんですけれども、まあこの部分は福井総裁のバブル警戒主張ということではあはあそうですかと申しあげますけれども・・・・
『何か急いでやりたいという気持ちから、やれないで焦っているとか、やらないことによって狼少年のようなものの言い方をして、やらないからといって信用を失うということはあり得ません。それは経済の結果としてのパフォーマンスをよく見て下さいとしか言いようがないと思います。』
えーパフォーマンスをよく見ると・・・・・・(−−)
で、その次が最後の質疑なのですが、ちと売り言葉に買い言葉で言い過ぎたと総裁も反省したのでしょうか??
『(問) 年内に利上げの可能性が小さいとの市場の見方については如何ですか。』
『(答) 私は、ある意味で時間帯が長い話として申し上げています。年内とか、あるいは至近距離で、利上げの観測が強まったり弱まったりしているのは、マーケットの特性として、日々出てくる新しいデータに大きく揺れ動きながらマーケットが自ら消化していくという過程をとりますので、利上げ観測が遠のいたり近づいたりすること
自身が極めて自然なことです。』
急に冷静になっています(^^)。
『我々の分析アプローチとマーケットのアプローチは違います。我々は個々のデータに一喜一憂しません。全て織り込んで、冷静な分析を延ばしていくという態度です。この間、齟齬はないと思っています。』
個々のデータに一喜一憂しませんって嘘こけとか思うのですがそれは兎も角として、日銀様の高尚な分析は欲まみれの市場の有象無象どもが目先の材料で一々右往左往するのとは違いますですかそうですか。いやまあ別にいいんですけどね。。。。。
ではでは。
2007/11/06
お題「強気発言が痛々しいんですけど」
その前にニュース雑感。
○ニュース雑感
・民主党の騒動
最近もネタにしましたけど、金融政策に関する民主党の国会質問を見ますと、どう見ても支離滅裂です本当にありがとうございましたというのは明白でして、一事が万事と申しますように、小沢代表が「政権担当能力が無い」というのは実に同意するものであります。で、小沢さんとしてはサラミ戦術を狙ったんでしょうかねえ(ハンガリー共産党、サラミ戦術で検索して下さいな)とか思うのですが、恐らくそのサラミ戦術は自民党だけではなく民主党にも向けられるものだったのかなあとか考えるのであります。
・パキスたん
昨日の昼に何となく情報ベンダー見てたら「カラチ株式市場が2%(くらい)安で始まる」というヘッドラインが出てきてちょっとビックリ。非常事態宣言中なのに株式市場が堂々オープンとはその妙な落ち着きぶりにある意味感動しました。夕方見たら6%ほど下がってましたな。
いやまあそれだけの話なんですけどね。
・サブプライム問題
東京市場に上場した当日夜にサブプライムで巨額追加損失の可能性示唆とはこれまた見事な食い逃げ上場で、東証は何か文句言わないんですかねえ(言う根性ある訳無い)というメリケン様の企業を始めとして、どうもサブプライム関連は大変によろしい感じで疑心暗鬼の連鎖になってきているようで誠に香ばしい。
どっかが大損→うちがそうならてめえもそうだろ→お前のところ投資判断格下げというような感じで、実に素晴らしいうんこの投げ合いと化してきているようでございまして、いやあ日本の教訓から結局学べないのねえとか思う次第。こっちに延焼して来るという問題もあるのであまり大笑いして眺める訳にも逝かないのが残念でありますが、まあそもそも金融工学を駆使したご立派な仕組債でAAAなのにL+50とかいう商品なんぞ大っ嫌いなあたくしとしては香ばしい展開が広がるのは天罰でしょ天罰としか申し上げようがございませんので、あとは火の粉がかからないように注意しないといけませんな。
しかしどう見ましても時価評価暴き合い(というか刺し合い)大会をやるのは不毛と思われますので、ここは一発我が国のように巨大洗濯機を幾つか作ってそこに暫くぶち込んでおく方向で。
しかしFEDが利下げ打ち止め示唆した途端にサブプライム地雷爆発ってもう「利下げクレクレ」モードに突入ですわなあという感じでバーナンキ先生大変ですねえと思うのですが、一部は自分で撒いた種でもありますからまあ頑張りや〜♪
・金融といえば
そういや国内金融機関の中間決算では全体的に昨年同時期と比較して預貸利鞘が縮小してたと思うのですが、量的緩和解除のあたりで「金利が上昇したら金融機関の収益が改善するので買い」とか絶賛してた金融セクターアナリストの皆さん(特に海外系)におかれましては以下暴言(^^)。
さて前置きの雑感が長くなりましたが、本日のネタは本当は決定会合の議事要旨にしようと思ったのですが、その後に出てきました総裁講演と記者会見に関して。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0711c.htm
○講演は基本的には展望レポートに沿っていますが・・・
展望レポートが出た直後に行われた講演(正確には挨拶)ですので当然ながら経済物価情勢の説明は展望レポートに沿った内容になっております。ただまあ読んでいますと福井総裁の利上げに対する思いが伝わりますなあという感じはするんですな。
経済物価情勢見通しの基本シナリオに対する上振れ下振れ要因に対する説明の部分なんですけど、「海外経済の動向」と「金融・経済活動の振幅」「需給ギャップに対する物価の感応度」の3点について小見出し作って説明してるんですけど、その中で「金融・経済活動の振幅」に関しては展望レポートでの表現に福井総裁の表現が加わっている部分でして(それ以外の部分は基本的に展望レポートのお話をしています(と読みました)わな)、ここのところを展望レポートと比較するのも面白かろ。
全部引用しながら比較すると長くなりすぎるので部分部分だけで恐縮。
『2つ目の要因は、緩和的な金融環境が続くもとで、資源配分に歪みが生じ、結果として金融・経済活動の振幅が大きくなる可能性があることです。円キャリートレードの動きにその兆しを感じるとの声も聞かれます。』(講演)
『第2に、緩和的な金融環境が続くもとで、金融・経済活動の振幅が拡大する可能性である。』(展望レポート)
ということで、円キャリートレード(早くも死語化してますが)の話を持ち出すところが福井総裁の独自色。
『活発な再開発や堅調なオフィス需要などを背景に、9月に公表された都道府県地価で、東京、大阪、名古屋の3大都市圏の地価上昇率が拡大しました。こうした動きも、企業や金融機関の行動を活発化させる方向に作用すると考えられます。』(講演)
『また、大都市の地価など資産価格の動きも、そうした行動を活発化させる方向に作用すると考えられる。』(展望レポート)
こちらも展望レポートより具体的に例を挙げてまして、バブル懸念への福井総裁の思い(杞憂の気がするが)が伝わりますわな。
『このような動き(経済情勢を離れた低金利継続を背景とした投機的なポジションの積みあがり)は、短期的には景気を押し上げることがあっても、その後大きな反動を招き、息の長い成長を阻害する可能性があります。』(講演)
『このような行動は、短期的には景気や資産価格を押し上げることがあっても、その後の調整を余儀なくされ、息の長い成長を阻害する可能性がある。
』(展望レポート)
ここでも展望レポートの「調整」が「大きな反動」と強い表現になっておりまして、まあバブルに関する懸念が伝わりますね。
○やたら強気発言の記者会見
でまあ総裁記者会見ですが、ブルームバーグニュースのヘッドラインを見るともはや落涙を禁じ得ません。曰く、
16:55*福井日銀総裁:低すぎる金利は危険
16:55*福井日銀総裁:タイミングよく金利引き上げなければいけない
16:56*福井日銀総裁:着実に金利上げないと企業努力も水泡に
16:56*福井日銀総裁:将来にわたりバブルはいけない
16:56*福井日銀総裁:慎重に先読みしながら金利を引き上げ
16:57*福井日銀総裁:先行きは不確実性に満ちている
16:57*福井日銀総裁:緩やかながらも息の長い成長続く可能性高い
(以上ブルームバーグニュースより)
んでまあ会見の記事のお題が『福井日銀総裁:頭を空にして待つのは大失敗につながる−利上げで』ということでして、まあ例によって売り言葉に買い言葉だと思うのですが、やたらめったら利上げに積極的な発言をしているのですが、どうも市場はあんまり反応してないようで。
まあ時間も時間ということがあって市場が反応しなかったとも言えますけれども、先週の総裁会見でも別に市場が派手に反応したわけでもないという事を勘案しますと、要するに今の経済物価情勢が到底連続的な金利調整を許す状況じゃないでしょと市場が申しているとも言える訳でありまして、その上福井総裁の任期もあとわずかという事でもありますので、まあ強気発言しても反応しませんわなあという所なのでしょう。
何か総裁頑張って利上げ無し期待の広がりを抑えたいというのは判るのですが、まあ経済物価情勢は不透明感強いけどでもそんなの関係ねえという利上げ強調発言はさすがに説得力が無いので如何なものかと思いますが。某速水総裁の円高発言を思い出したのはあたくしだけでしょうか。
狼ジジイとか言われないように願いたいものであります。というか殆ど市場の反応は狼ジジイ扱いになりつつあるんですが。。。。。
2007/11/05
お題「相場雑感とか国会とか」
東証に上場した途端に経営責任を取って最高経営責任者退任って何だかなあとしか申しあげようがございませんが、これが日本企業の新規上場だったらどうなんでしょうかねえ。
#しかし民主党の壮絶な自爆芸には感動した
#それから、モーサテに出演してた某大臣。どう見ても中途半端な聞きかじり知識の典型で先行きが不安です。しかも金商法に関しては「そのうち慣れます」で済ませるとは・・・・
○下がった分以上に上がるとは
金曜の債券市場ですが、水曜夜に折角(?)FRBがもう中立金利ですよ利下げ一旦打ち止めですよという声明をだして木曜に(10年国債入札のヘッジもあって)下がった相場でしたが、木曜夜に米国サブプライム地雷が早速爆発して株安債券高を受けて国内債券市場も大上昇。
んでまあ金曜の上げがすげええええと思ったのは、朝っぱらから木曜に下げた以上に戻ったことでして、展望レポートも出ましたし、大体からして期初から1か月も経ってしまったことですし、そろそろ様子見地蔵のままでいる訳にも行きませんなあとなったのかなあとか勝手に人様の懐事情を忖度。
朝方はさすがに先物が先行して爆裂していたのですが、時間の経過と共に長いゾーン(というか超長期ゾーン)の気配が追い着いていくという展開でしたんで、先物だけの上げじゃなくて現物にも買いが来ましたなって所でしょう。金曜は昼頃に一旦先物が押し込む場面がありましたんで、まあ下がったところで早速買いが来たのか、時間差で入替でもあったのか知りませんが、まあ戻って下げ以上の上げですから、こりゃまあ強くなりましたなあという感じです。
#とか言ってたら週末の雇用統計は良い内容とは
まあ毎度毎度同じ話をしてますけど、日本の金融政策に関しては、欧米の金融政策が平常モードに戻る、すなわちサブプライム問題が一定の決着(または先送り)をするとかで、まあ実体経済への悪影響を遮断できる状況になるというのが前提なのですけれども、まあこの手の物はウダウダと問題が長引くという(長引かないで済ませられる規模ならとっくの昔に片付いてるでしょ)のが日本の経験でもあります。で、日本の場合はそう簡単にインフレ期待が盛り上がらない(生活価格が上ってるのは勘弁して欲しいですが)ので、金融政策は余裕かませるでしょうとなります。
となると、レンジ内で色々と動きますが、何か1か月終わってみると同じような所に居やがりましたなあ外部環境も変りませんなあというのが暫く続きそうな勢い(勢いが無いのですが)でありますので、そーゆー時は相場が下がったら買おうとか悩んで時間をかけているよりも素直に買って時間を味方につけちゃった方が良かろう(ディーリングは別ですが)ということにもなって来ますので、まあ月も変りましたのでそろそろご出動といった風情なのではないかと勝手に想像しております。
○あまり材料になりませんでしたが総裁の国会答弁(ちょっとだけ)
木曜に引き続いて金曜には衆議院財務金融委員会で日銀の半期報告がありまして、質疑応答が結構行われました。
で、内容は結構こちらも多岐に渡っていて興味深いと申しますか、こちらも会議録見なきゃと思うのですが、ブルームバーグニュースから「ほほー」と思った質疑を引用します。ブルームバーグニュース2日13時34分配信の記事の最後のほうで、民主党の小沢鋭人委員の質問とその答えでして、小沢さんは「サブプライム問題の影響でもし景気が下振れしたら利下げをする覚悟はあるか」と極めてご尤もですが、福井総裁相手になると釣り質問確実な質問をしておりまして・・・・・
『具体的な将来の状況を一定のイメージを描いて政策措置をあらかじめ予定するというのは、金融政策上絶対にない。将来の状況を正しく読み取りながら、早めに手を打っていくというのが、われわれが取っている基本スタンスだ。日本経済にとって何が重要か。目先のダウンサイドリスクは、われわれは嫌と言うほどきっちり認識している。これは誤りなく認識している』
えーっと、展望レポートで先行き見通しを置いて、それに対して政策金利の調整が必要になるというストーリーがあったような気がしますが、それは「具体的な将来の状況を一定のイメージを描いて政策措置をあらかじめ予定する」のとは違うんでしょうか??
ということで、ナンノコッチャでございますが、以下ブルームバーグニュースの記事より引用しますね。
『しかし、本当の長い将来を見通したとき、これから厳しい少子高齢化、人口減少、財政再建という長いプロセスの中で、一番困ることは景気が大きく振れるということだ。これは国民の皆様にとってものすごく大きなダメージになる。あらゆる対応が全部行き詰るというリスクがある。したがって出来るだけ長く物価安定の下でも持続的な成長を、たとえ緩やかであっても絶対にキープしなければならない』
『したがって、われわれはダウンサイドリスク、手前のものは十分認識するが、そこにばかりかまけていて、将来バブルの発生、あるいはその崩壊ということがあってよいかというと、絶対にあってはならんわけなので、そこまで読みながら安定的な経済運営をしたい。そういう判断をしている』
要するに何があっても利下げはしたくないですかそうですか・・・・・・
#ま、総裁がそう思ってても他の政策委員が違えば多数決ですから
2007/11/02
お題「総裁記者会見など」
総裁記者会見の前に少々。
○第2の柱の表現(展望レポート)
展望レポートに関してですが、昨日あたくし華麗にスルーした第2の柱の部分の表現にも味わい深いものがあるという指摘がございまして、例によって本石町日記さんの所で詳しい解説エントリーがありますんでそちらをご参照ありたし(人のふんどし)。
○FOMCですが
昨日のFOMCでは利下げしたものの、現状を中立金利としたような表現をして何となく打ち止めっぽい表現になってたんですけれども、例によって勝手な予想をしますと今回の利下げって市場から「利下げクレクレ」状態になって利下げに追い込まれた(本当はもうちょっと様子見したかったんじゃないでしょうか)節がありますので、FRBとしては「市場に追い込まれて今後も利下げ継続」とか見られるのがムカツクので釘指し差したかったのではないかと邪推。
でもど〜せまた市場から利下げクレクレになるから12月にまた下げに追い込まれるんジャマイカ(サブプライム問題は抜本的解決なんぞは無理で先送り大作戦しか無いでしょうから)とか書こうと思ったのですが、早速ダウナス下落(と言ってもその前に上昇してるから大騒ぎする下げでもねえだろと思うのですが)で帰って来ちゃいましたね。
○昨日の参議院財政金融委員会での国会答弁
福井総裁と武藤副総裁が登場して結構多岐に渡る話題に触れていまして、チェックしておいた方がよいなあと思ったのですが、例によって会議録は直ぐに出て来ませんので後日要確認であります。
ということで総裁記者会見ですが、今回の会見のヘッドラインは妙に強気なものが並んでいましたが、会見要旨を読み進めておりますと「これは苦しい空元気」という感じでどちらかというと落涙を禁じ得ない質疑応答となっているように見えましたがどうでしょうか。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0711a.pdf
#今回はオモロイ質疑応答が続くので是非ご覧になられたし。
○どう見てもお題目です本当にありがとうございました
実質的に最初の質問(冒頭は幹事社が「今日の結果についてお願いします」とやるので)はサブプライム問題で金利調整が遅れるのではないかという物でしたが、これに対する総裁の答えの中に落涙物の部分がございますが、その前の部分も中々でありますので段落分けながら引用をば。
『(答) 必ずしもそうは言えないと思います。今申し上げた通り、サブプライム住宅ローン問題に端を発し、国際金融資本市場の不安定な状態が続いており、今後もしばらく続きそうであるほか、米国経済の先行きを含め、世界経済について何らかの不確実性が生じていることも事実です。そういう意味では下振れリスクは高まっていると率直に言えると思います。』
とここまでは良いとして、
『ただし、そうした状況のもとで、私どもが判断した最も蓋然性の高い見通しは、日本経済は先行きも物価安定のもとで息の長い成長を続けるということです。加えて、サブプライム住宅ローン問題や国際金融資本市場の変動が、わが国の金融情勢に及ぼす影響は限定的であり、極めて緩和的な金融環境が維持されるとみられるということです。こうした中で、低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着し、経済・物価の振幅が大きくなったり、非効率な資源配分につながるリスクは引き続き存在すると考えています。』
この意地っ張り!と言いたくなりますが、この次が落涙物ですよ先生。
『これは決してお題目ではなく、本当にそう考えています。』
どう見てもお題目です。本当にありがとうございました。
ということで、この発言に見られるように「確かに下振れリスクはございますが、標準シナリオ通りに進んでいるんですよ」というような流れの発言がやたら多く、まあ強気ヘッドラインが出るのも当然なのですが、こりゃ強気というよりは空元気と申しますか大本営(ry
○企業部門から家計への波及が遅れている件
次の質問が上記の件なのでありますが(しかしツッコミが厳しい事^^)、それに対する答えも何となく小島よしお状態。
『経済の拡大の中身を子細に点検し続けていますが、それによると2007 年度前半の経済は、好調な企業部門に比べると家計部門の改善テンポが些か緩慢な状況が続いたことは事実だと思います。』
『しかし、それをも含めた経済全体の動きは、4月の展望レポートで示した見通しに概ね沿って推移したと言えると思います。そして大事なことは先行きについてです。先行きについて本日もしっかり議論しましたが、高水準の企業収益等企業部門の好調が続き、家計部門への波及も緩やかながら着実に進んでいくという判断に至りました。』
こりゃまあ本石町日記さんから「願望レポート」とか言われちゃいますな。そういえば昨日の参議院財政金融委員会で民主党の大久保勉委員から「業界の中からは「願望レポート」とも言われているようですが」というような質問がされたようですが(笑)。
○目先は下振れリスクがあるが長い目で見ると・・・・・
中々オモロイので次の質疑も引用する訳ですが、次の質問は「メインシナリオは変らないとして、上振れリスクと下振れリスクのバランスはどう考えていますか」というような趣旨の質問でしてこれに対する総裁の発言。
『目の前で起こっている現象、あるいはやや短期的にみて、海外経済やグローバルな金融資本市場の動きの中で、ダウンサイドリスクが幾ばくか高まっている、あるいは高まった状況が続いている、しばらく続きそうだということは、その通りだと思います。』
と、ここまでは左様でございますなあという所ですが・・・
『従って、短期的にはダウンサイドリスクの方が強いと言えなくもないのですが、展望レポートの中で私どもは上振れリスク・下振れリスクをより長い目でみています。』
ほほう。
『金融政策も目先だけではなく、ずっと先々、できる限り先まで読みながら、一番手前の政策判断を行っていくというアプローチをとっていますので、時間の尺度を少し長く伸ばして上下のリスクを考えた場合に、低金利をあまりにも長く続けることのリスクや、資源配分が歪み、結果として経済に大きな振幅をもたらすというリスクを、手前のダウンサイドリスクが大きいからと言って相対的にこれらを希薄化してみるわけにはいかないと、私どもは思っています。』
いやあそれはちょっと無理筋だと思うんですけど・・・・・・
○「今の政策金利が長期化する期待」に釘を指し差したいのは判りますが
今回の会見要旨を見てますと、目立つのは上の方でご紹介したような「足元は確かにダウンサイドリスクあるけど・・・」っていうような流れでありまして、これは何を意味するかと言えば恐らくは小見出しに書いたような事だと思うんですが、債券や金利市場としては(確かに執行部交代のタイミングという政治的なスケジュールの考慮はありますが)、欧米のサブプライム問題とか、国内景気の特にマインド面の悪化とかも見ながら「そう簡単に政策金利上げられないし、引き上げペースが加速するとも思えない」となっている面はございますので、あまりそう必死に釘を指さなくても良いんジャマイカとは思うんですけどね。
別の質疑の中でこんな話をしてますけど、何かそこまで言わんでもという気が。
『先程も申し上げた通り、足許や直近の未来におけるダウンサイドリスクをオーバーにカウントし過ぎると政策は誤る、長い目でみたアップサイドリスクは結構大きいということです。今回のサブプライムローン問題を引き金として起こった世界の様々なことをみても、この問題を決して軽視できないということは非常に明確ではないかと思います。従って、ダウンサイドリスクは強まる一方で先行きのリスクについてもより明らかになってきているということは、政策判断として難しくなったのかと言われればそのように言えなくもないと思いますが、その難しい判断を行っていかなければならないと思っています。』
目先数か月のことだって中々判らないのに、より長い期間のことを重視して判断というのはやはり理屈として苦しいのではないかと。
○政策の話をさせないとやはり不透明ですよとなります
最後の方の質疑ですけれども、政策判断と切り離して「ところで前回会合と対比して今月の不透明感はいかがでしょうか」というような質問がありましたが、これに対する総裁の答えはこれまた長いのですがかいつまんで。
『前回に比べて今回がどうか、この比較はなかなか難しいなと思います。例えば、世界経済の見通しについて、G7などもありましたし、少なくともこれまでに出てきたところの影響は、世界経済に対しては下方修正を迫るものであっても成長率0.4%ポイントの下方修正です。少なくともこれまでの様々な出来事の世界経済への影響は総和としてはとりあえずそんなところということで、世界の政策当局者が認識をシェアしている、ということは前回に比べて少し明確になっていると思います。』
『しかし一方で、これで留まるのかということになると、米国経済については、(途中割愛)米国経済全体に対するダウンサイドリスクがより強まっていると言えなくもないという状況になっています。』
『それから金融資本市場の動きをみますと、夏場に比べるとやはり特にマネーマーケットについては少し落ち着きがみられます。(途中割愛)しかし一方で欧米の金融機関のバランスシートに損失が舞い戻ってきて、その計数の発表があったりするとこれは非常に区々であり、時にはその程度で良かったと思われる場合と予想よりも少し悪いという場合とが入り混じり、かえって先が少し読みにくくなっているとみる人もいる状況です。』
『つまり、少しずつ明確になりながらも、先行きの不確定要因を大きく引きずっているということですので、全体として、私どもは高まった不確定要因がほぼそのままで今も続いているという状況ではないかと思っています。』
ということで、まあ景気に対する認識はこのあたりということになるんでしょう。ただ、それによって市場が「こりゃもう低金利継続ですよ全然利上げ無し」とかなるのは宜しくないので強気(空元気)発言を繰り返したということになるのでしょう。
今までの福井総裁の発言っぷりを拝見(直接見てるわけではないが)しておりますと、本当に自信が有る時って割と余裕をぶっかました発言をするのが福井総裁クオリティでありまして、ちょっとどうなのよという時になると妙に強気な発言とかをし出すという傾向があるんで、まあ強気発言の時はあまり気にしないのが吉とも言えるのでありますよ。市場もさすがに慣れて来たようで、一昨日の総裁会見ではろくすっぽ反応してませんでした(昨日はFRBの利下げ打ち止め示唆攻撃をちょうど良いネタにして10年入札に向けて相場水準を訂正しましたが)わな。
まあ本日はそんなところで。今日も引用だらけでスイマセン。
2007/11/01
お題「さて展望レポート(基本的見解)」
「今日の注目記事はこちらっ!」ってノリノリの勢いで紹介された新聞記事が豪州の記録的な旱魃っていうのは利下げで株高に浮かれるにも程があるというものです。MLBネタの記事かと思ったですよ。>某番組
という嫌味は兎も角、展望レポート。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0710.htm(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0704.htm(前回4月)
○最初にあたくしのまとめ
展望レポートに関しては、先行きのリスクアセスメントが増えているのはまあ当然なのですが、2008年度の実質GDP見通しを下げないとか、コアCPI見通しをちょっとしか下げないとか、足元の経済に対するレビューを「見通しに概ね沿って推移」とするとか、あたくしとしては想定していた以上に強気に設定した内容になっているなあという印象です。
総裁記者会見のヘッドラインもやたら強気なコメントが並んでおりまして、「ふ〜ん」という感じでありますが、意地悪く解釈致しますと、低金利長期化期待が定着すると宜しくないという考えが今回の展望レポートや総裁記者会見に反映されたんじゃネーノと思います。というか市場がろくすっぽ反応しなかったのは「そうは言っても利上げ出来ないでしょ」という見方なのかなあと思いますが。
○冒頭の総括部分は足元そのままで見通しにヘッジクローズ
『わが国経済は、緩やかに拡大している。2007年度前半の経済は、好調な企業部門に比べると、家計部門の改善テンポが緩慢な状況が続いているが、全体としてみれば、前回(2007年4月)の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示した見通しに概ね沿って推移したとみられる。』(今回)
この部分は前回と同じで、見通しに概ね沿って推移したということになっておりますが、「見通しに概ね沿って推移」したということであればその間に政策金利の調整をしなかったのはどうしてなのでしょうなどというツッコミをするのは野暮ですかそうですか(^^)。というかレビューを全然下げなかったのは少々意外でした。「この意地っ張り!」と言ったところでありましょうか。
で、見通しがヘッジクローズてんこ盛り。
『先行き2007年度後半から2008年度を展望すると、後述するように海外経済や国際金融資本市場の動向など不確実な要因はあるものの、生産・所得・支出の好循環メカニズムが維持されるもとで、息の長い拡大を続けると予想される。住宅投資の振れが、2007年度の成長率を幾分下押しする一方、2008年度の成長率を幾分押し上げるとみられるが、成長率の水準は、均してみると、潜在成長率を幾分上回る2%程度で推移する可能性が高い。』(今回)
『先行き2007年度から2008年度を展望すると、生産・所得・支出の好循環メカニズムが維持されるもとで、息の長い拡大を続けると予想される。成長率の水準は、2007年度、2008年度とも、潜在成長率を幾分上回る2%程度で推移する可能性が高い。』(前回)
米国サブプライム問題と、改正建築基準法(これはどう見ても人災)の影響を下振れ要因としまして、結論部分が「均してみると」という表現になっているところが泣かせてくれます。足元の成長率予想を引き下げざるを得なかったのでこういう表現になったという感じでございましょうかねえ。
○海外経済
そりゃまあFRB様が下方リスクを意識して利下げしてるんだから当然といえば当然ですが、米国経済の見通しを下方修正しつつ、別のネタを持ち出して「でも大丈夫」というのが中々。
『米国経済は住宅市場の調整を主因に減速が長引く一方、他の地域が高成長を続けるとみられることから、海外経済全体としては、拡大を続ける可能性が高い。』(今回)
『米国経済は、足もとは住宅市場の調整が続いていることなどから減速しているが、先行きは安定成長へ軟着陸する可能性が高い。海外経済全体としても、地域的な拡がりを伴って拡大を続けると想定される。』(前回)
ということで、見通し部分では米国経済の減速が長引くとなっておりますけれども、先行きの「上振れ・下振れ要因」部分を見ると、米国経済については『安定成長に向けて軟着陸していく可能性が引き続き高い。』と前回の先行き見通しの表現を踏襲しているのですが、全体を読むとインフレリスク部分を削除したり、サブプライム問題の影響に関してより具体的な説明が入るなど、「サブプライム問題が実体経済に悪影響を与える」という点をよりクローズアップしてます。まあ当然ではございますけど。
『米国では、住宅市場の調整が長引いているが、設備投資や個人消費は減速しつつも緩やかな増加基調を維持しているなど、安定成長に向けて軟着陸していく可能性が引き続き高い。』(今回)
『米国では、住宅市場の調整は続いているが、これまでのところ、個人消費が堅調に推移するなど、経済に広範な影響を及ぼしていない。また、設備投資は、このところ先行指標の一部が弱い動きとなっているが、高水準の企業収益を背景に、緩やかな増加基調が維持されるとみられる。』(前回)
『ただし、住宅市場の調整が一段と厳しいものとなった場合や金融資本市場の変動の影響が予想以上に広範なものとなった場合、資産効果や信用収縮、マインド悪化などを通じて、個人消費、設備投資が下振れ、米国景気が一段と減速する可能性も考えられる。』(今回)
『しかし、住宅市場の調整が予想以上に深いものとなったり、設備投資が下振れた場合、景気は一段と減速する可能性がある。また、物価情勢については、設備や労働といった資源の稼働状況が高水準であるもとで、原油価格の動向などと相俟って、インフレ圧力が減衰しない可能性もある。この場合、金融市場の反応等を通じて、米国経済や世界経済全体に悪影響が及ぶリスクがある。』(前回)
それから、海外経済に関しては、今回の「上振れ・下振れ要因」の中で中国経済を外して欧州経済を入れておりまして、その欧州経済にのリスクアセスメントは当然ながらサブプライム問題となっています(引用は割愛します)。
○企業部門から家計部門への波及
ちと長めになりますが、『第3に、好調な企業部門から家計部門への波及が、緩やかながらも着実に進んでいくとみられる』(ちなみに、ここの部分ですが、前回は「緩やかながら着実に」となっていて「も」が入っているのですけどその意味はどうなんでしょ)から始まる部分を前回と今回を並べて引用しませう。
『雇用者数の増加が続く中で、雇用者所得は緩やかに増加し、株式配当の増加など様々なルートによる波及も続くとみられる。賃金については、グローバルな競争や資本市場からの規律の高まり、原材料高などを背景に、中小企業を中心に人件費抑制姿勢が根強いことに加え、賃金水準の高い団塊世代の退職やパート比率上昇に伴う人員構成変化などもあって、やや弱めの動きとなっているが、労働市場の需給がさらに引き締まっていけば、徐々に上昇圧力が高まっていくと考えられる。こうしたもとで、個人消費は緩やかな増加基調を辿る可能性が高い。』(今回)
『グローバルな競争や資本市場からの規律の高まりを意識した企業の人件費抑制姿勢は続くとみられるが、雇用者数の増加が続く中で、労働市場の需給がさらに引き締まっていけば、賃金の上昇圧力は徐々に高まっていくと想定される。加えて、株式配当の増加など様々なルートを通じて、企業部門の好調は家計部門に波及し、そうしたもとで、個人消費は緩やかな増加基調を辿る可能性が高い。』(前回)
大体ですな、こういう時に前回対比で字数が増えているのは結論に至るまでの様々なヘッジクローズが入るからでございまして、その時点で「ああ見通しを下げてるなあ」とか思うのですけれども、まあその通りの展開になっているのが読み取れるかと存じます。
○国内のサブプライム問題は限定的
企業部門の好調と緩和的な金融環境の部分に関しては特筆すべき変化はございません。まあそりゃそうだという所ですが、サブプライム問題に関しては今回言及が入りましたが、こちらについては限定的とのお告げ。
『米国サブプライム住宅ローン問題やこれに端を発する国際金融資本市場の変動がわが国の金融環境に及ぼす影響は限定的であり、』(今回)
ということで、サブプライム問題に関しては、欧米の金融市場における混乱が欧米の実体経済に影響を与えるリスクという径路でのリスク評価となっています。概ねそんなもんでしょうかねえ。
○IT関連財の需給調整リスクは後退
前回の「上振れ・下振れ要因」で独立した要因として言及されていたIT関連財の在庫積み上がり問題に関しては、おまけのように指摘されているという形に降格となりました。
『なお、IT関連財については、昨年来高めで推移してきた国内の在庫は出荷とのバランスを徐々に改善してきているが、海外経済が予想以上に減速した場合などには、世界的な供給拡大のペースが速いだけに、需給バランスが崩れる可能性もある。』(今回)
○例のバブル懸念はほぼ前回通り
上振れ・下振れ要因の中で毎度お馴染みの『緩和的な金融環境が続くもとで、金融・経済活動の振幅が拡大する可能性である。』の部分に関しては概ね前回の表現を踏襲しています。サブプライムに関しては言及していますが、あまり関係ないという感じ。
○今後の金融政策に関して
第1の柱、第2の柱に関してはこれまた前回を踏襲、というか踏襲するのが当たり前のような気がしますのでそれはそれで良いのですが、先行きの金融政策について今回いきなり「引き上げの方向」と書いたのはどういう風の吹き回しなんでしょ。
『金融政策運営については、これまで、(1)金融環境は極めて緩和的であり、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長軌道を辿るのであれば、金利水準は引き上げていく方向にある、(2)引き上げのペースについては、予断を持つことなく、経済・物価情勢の改善の度合いに応じて決定する、という考え方で進めてきた。』(今回)
それに対応するのは前回(というか従来)こういう表現になってたんですが。
『昨年3月の量的緩和政策解除以降の金融政策運営を振り返ると、経済・物価情勢の先行きを展望して、(1)生産・所得・支出の好循環メカニズムが働き、息の長い成長が続く中で、(2)消費者物価は長い目でみると緩やかに上昇し「中長期的な物価安定の理解」に沿って推移する蓋然性が高いという判断に基づいて、経済・物価情勢の変化に応じて、徐々に金利水準の調整を行ってきた。』(前回)
ということで、引き上げとは書かずに「金利水準の調整」という言い方になっていたのですが、ここへ来て何で「引き上げていく方向」という書き方になったんでしょ。
で、勝手に意地悪く解釈しますと、さっきも書きましたように環境的にも市場の見方的にも利上げ時期が遅れるという雰囲気が強くなっているので、敢えてここで利上げという文言を入れて市場の楽観(というか経済物価情勢という意味では悲観なのですが)ムードに釘を指そうという所なのではないかと思うんですけど。
で、最後の表の部分でいえば、2008年度の見通しを殆ど下げてないというのが「これはまた空元気ですなあ」などと思った次第であります。
ではでは。