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2007/08/31

お題「水野審議委員講演ですが」

タカ派の立ち位置を確立したと思ったら発言がまたやんちゃになっているとは困ったもんです。もうちょっと立場を考えた発言をしていただきませんでしょうかねえ。

http;//www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0708b.htm

○またヘッドラインに釣られているのですが・・・・

昨日の水野審議委員の講演、前場の引け近くに内容が公表されたのですけれども、そこまで前日比マイナスで推移していたユーロ円金利先物がいきなり前日比プラスになってみたり、債券先物も戻してみたりと「買い」で反応となりましたのはご案内の通り。で、この原因はと言いますと、ロイターの一発目のヘッドラインであることはほぼ間違いないかと思います。10時48分の日本語版ロイターのヘッドラインはこのようになっています。

『FRBが景気悪化を理由に利下げに踏み切った場合、議論の前提変ってくる=水野審議委員』

英語版ロイターでも同じようなヘッドラインを一発目に打っている訳ですが、このヘッドラインから「水野さんが利上げに消極的」という連想ということになったという訳ですが、講演(というか正確には挨拶ね)要旨を読んで見ますと、どう読みましても水野さんは利上げ正当化の理屈を繰り出しているようにしか見えませんですわな。そりゃまあこの前利上げ提案してるんだからそういう話になるのは当たり前なのでございますけどね。

そして、時事メイン、ブルームバーグは後で申しあげますが、利上げ正当化ロジックをヘッドラインに持ってきておりまして、どう見てもロイターの飛ばしヘッドラインです。本当にありがとうございました(ちなみに、時事メインのヘッドライン一発目は10時49分の『サブプライム問題、我が国の低金利政策が無縁ではない』であります)。

ちなみに、日本語版ロイターを見てたらどこぞのストラテジスト氏のコメントとして『利上げを提案している水野委員の発言なだけに、やや矛盾を感じる』ってのがありましたが、見事にヘッドラインに釣られたコメントに落涙を禁じ得ませんですた。ナムナム。

・・・・んでまあ昼休みとかに皆さん講演要旨なり他のベンダーの記事なりを見てる筈なのですが、それでも相場が下がらなかったというのは如何なることかと申しますと、本当のことはよー知らんですけど、あたくし勝手に思いまするに要は「相場が上に逝きたがっていた」ということなのではないかと思うのでありました(^^)。


○という訳でFRB利下げ云々発言の前後

ではFRB利下げ云々の部分はどういう発言になっているのかと申しますと、上で引用したヘッドラインと同じ表現はは確かに講演要旨の中にありますけど、そこだけ切り取るのはどう見てもフェアじゃありませんわなという感じです。

『次に、既に行っているサブプライム住宅ローンの劣化に伴う影響について考えてみると、より本質的なことは(1)システミックリスクに発展することはないか、(2)実体経済に深刻な影響を及ぼすことはないか、ということに行き着くと思います。』

『この点については、(1)世界経済が極めて好調であること、(2)日米欧ともに企業部門の財務体質が極めて健全であること、(3)欧米の主要金融機関等の収益力が高く、自己資本の基盤もかつてないほど充実していること、を踏まえると、今起こっている流動性の問題さえ解決すれば、時間の経過とともに大手金融機関等が吸収するかたちで金融市場におけるリプライシングのプロセスは進んでいくと思います。すなわち、システミックリスクの顕在化に発展する可能性や、実体経済に深刻な影響を及ぼす可能性は小さいと判断されます。』

『サブプライム問題に関する私個人の評価は、現時点でのFRBの適切な政策対応を前提に考えています。つまり、FRBが流動性リスク、信用収縮のリスクを回避するための「保険的な利下げ」までの政策対応で十分な金融環境であるならば、時間の経過とともに世界的に金融市場は安定化に向かうと見込まれます。』

『一方、想定外の景気悪化を理由にFRBが利下げに踏み切った場合、議論の前提が変わってきます。今後のFRBの動きを占ううえで、私が重要と考えるのは、米国の雇用情勢です。想定外の景気悪化が見込まれるとすれば、米国の個人消費の下振れと思いますが、それは雇用情勢を起点に影響してくる可能性が高いとみているからです。』

この流れから「議論の前提が変ってくる」の所だけ切り取るのは扱いとしてはどう見てもミスリードでしょというのはご同意いただけるのではないかと存じます。ちなみに、日本の影響に関する部分で水野さんはこのようにまとめています。

『もう一つは実体経済への影響が考えられます。確かに米国経済が想定よりも幾分減速することはありえるものの、先ほど指摘したとおり好調な世界経済全体で吸収することは可能であると考えられます。私個人の見解としては、現時点で把握できる情報による限り、サブプライム問題はリスク要因ではあるものの、わが国のGDP成長率やコアCPIインフレ率の見通しの中央値を下方修正する必要があるとは考えていません。』

どう見ても強気ですわな。ということでロイターのヘッドラインはミスリードにも程があるということでありました。


○あちこちで話題になってますがこれは如何なものか

先ほど時事メインのヘッドラインとしてご紹介した部分ですが、この講演要旨を見たあたくし「そりゃねえだろ」と思いつつ市場参加者の知人と議論したら(あたくしの知人ですので、基本発想が似ているという点は割り引いてちょ^^)やはり「この部分は日銀審議委員として如何なものか」という話になったのです。

さっき引用した部分のちょっと前にこんな話が。

『さて、サブプライム問題が発生した背景を私なりに考えてみると、「世界的な過剰流動性」が存在する下で、行き過ぎた投資が行われていたことが大きいと思います。世界的な過剰流動性がもたらされた理由としては、(1)「経済のグローバル化」が進む下で世界的にインフレ率が安定していたこと、(2)主要国の年金マネーや、アジア諸国や産油国の膨張する外貨準備高などが国際分散投資を拡大していたこと、(3)世界的に緩和的な金融環境が続いたこともあって、クレジット投資に対する過度な楽観論が生じていたこと、(4)日本銀行が低金利政策を続けていたこと、などが複雑に絡み合っていたと思います。サブプライム問題やそれに端を発した円相場の乱高下の原因として、わが国の低金利政策が無縁であるとは言えません。』

日本の低金利が原因の一つってのはそりゃ随分自虐的なお話ですけれども、そういう事を仰るのであれば、「それでは日銀は事態の収拾に責任を取るべきである」というツッコミを受けた時にどういうことになるのでしょうかと小一時間問い詰めたいところであります。

しかもですな、記者会見では(詳しくは本日アップされる会見要旨を見たいですが)水野さん『FRBが利下げをしたから日銀は利上げはできないという単純なものではない』というような発言をしているのですけれども、海の向こうでのクレジットバブルまで日銀の原因だというのに海外の金融政策と日本の金融政策がバラバラでも良しとなるのはど〜ゆ〜理屈なんでしょうか。単に利上げを正当化したいだけなんちゃうのかと。

大体からして、検証されているわけでもないのにわざわざ日本が災厄の原因の一つとか喋るのは、責任ある立場の人として如何なものかと思いますけどねえ。

ちなみに、この続きでこう言ってますので、このサブプライム原因説、要は利上げ正当化の一環として使われているのですけれども、政策ロジックとしてなんかその場限りのものを繰り出すのは変でしょと思うのであります。水野さんのロジックは「経済物価情勢が良好だから利上げする」じゃなかったのかよという感じです。


『すなわち、足もとの「金融市場の混乱」は、「ファンダメンタルズから離れた金利水準を維持し続けることは金融市場をむしろ不安定化させるリスクがあること」ということをはからずも証明したとも言えます。』

『したがって、長い目でみて、金融市場を再び安定させるのは、(1)世界的な過剰流動性を徐々に小さくしていくことと、(2)クレジット商品の適正なリプライシングが行われることと思っています。前者については、世界の中央銀行がそれぞれの国の経済金融のファンダメンタルズをみながら一歩一歩進めているとみています。また、後者については、今回の一件を通じ、投資家がフェアバリューを探る動きを続けていることから、ある程度の時間を要すれば実現していくのではないかと期待しています。』

ということになっていますので、先ほど申しあげた「日本が原因だからケシカラン」と言われた場合には「だから利上げする」という切り返しが待っていると言う事になるのでしょうが、何だかな〜って感じです。


○記者会見も読みたいです

ヘッドラインと情報ベンダーの記事を読んだ限りにおきましては、水野さんの会見が中々威勢が良かったようで、先ほどの「アメリカ利下げするから日本が利上げできないというのはおかしい」くらいの騒ぎではなく、中立金利という話やら国債バブルという話やらがあったやに見受けられますので、ワクワクテカテカしながら会見要旨のアップを待ちたいと存じます。

ではでは。








2007/08/30

お題「武藤副総裁講演/釣られますた/その他」

毎日上ったり下がったりでご苦労な事です>米株と為替

で、3か月T-Billが19毛強で2年T-Note10毛甘ってナンジャソリャな相場ですのう>米国債券


○ヘッドラインはちょっとだけ刺激的でしたが

一昨日の話を今更で恐縮でありますが、武藤副総裁が北京で行われた「第3回北京−東京フォーラム」で講演を行っていまして、この講演要旨が一昨日アップされていたのですが、当日は超長期の入札とか金融政策決定会合議事要旨とか、他のネタもありますし、そもそも論として金融政策に関しては海外の信用収縮モードが収まらないと話が進まないでしょというのもありますので、あまり相場への影響は無かったかと。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0708a.htm

まあお題が『「開かれたアジア経済」の発展に向けて』ということですので、金融政策がらみの話ではないのですが、講演内容の一部が情報ベンダーからヘッドラインとして使われました。講演中の(資本フローとマクロ政策)の部分です。

『増大する資本フローといかに共存していくかについて、各国はアジア危機から多くの教訓を学びました。ひとつの重要な教訓は、固定的な為替レートは安定的な経済発展にとって不可欠な価格調整機能を阻害するほか、投機的な資本の流入とその変調による混乱といった事態を招き易いということです。』

ということから話が進みまして、途中を割愛してその先に。

『ただ、こうしたレジーム(引用者注:アジア危機の教訓で得られた「固定為替に固執せず」に「国内物価の安定を主眼に据える」金融政策運営手法)の下でも、近年の旺盛な資本流入への対応は容易なことではなく、アジアの当局は様々な問題に直面しています。多くの国で、為替上昇ペースを調整するために市場介入を行った結果、外貨準備が急速なピッチで積み上がっています。同時に、為替市場介入の結果、国内通貨建ての流動性が増大し、中央銀行はその不胎化を余儀なくされています。』

『こうした状況は、次第に中央銀行の財務上の負担となってきています。巨額の外貨準備は為替の増価によって為替評価損をもたらします。また、国内通貨建ての流動性を不胎化する際には、中央銀行債を発行する国が多くみられますが、この利払い負担も大きなものとなっています。』

『また、流入する資本は過剰流動性を生み、国内の不動産や株式などの資産価格が上昇するといった事象を招いています。このことは、長期的にみて物価安定への脅威となり得るほか、金融システムの安定に及ぼす影響という観点からも注意深く見守っていくことが必要です。』

ということで、話題としては至極ご尤もなお話でして、ここで言う過剰流動性の話って日本で言えばニクソンショック以降の為替介入をイメージしてるように思えるのですが、これが情報ベンダーのヘッドラインに掛かりますと、「過剰流動性が資産価格上昇を生む」というところが妙にクローズアップ去れてしまう訳ですな。何のこっちゃでございますけれどもまあそういう仕様ですので仕方なし。

今の相場環境ですと、先ほども申しあげましたように海外の信用収縮関連の見極めがテーマなのであまり政策委員会の皆様の発言に反応しにくいという状態なのですが、世が世ならヘッドライン見て「すわ第2の柱の強調か」という発想にもなりかねなかった所ではあります。で、講演要旨を真面目に読むと日本の今の話をしている訳では1ミリも無いという事が判ってありゃまとなると(^^)。

まあ何ですな、ベンダーのヘッドラインは便利ですし、まずはそれで反応するのは仕方ないのですが、1次資料が取得できる時には1次資料にあたらないとミスリードされる、というと格好良いですけど、要は「釣られますた」となりやすいので注意ですな。と自戒なのですよ。


○見事に釣られますた

さて、自戒とは何ですかと申しますと、昨日あたくしの駄文でいつもの悪態をついたところなのであります。恥を忍んで再掲すると、「それに「利下げクレクレ相場」だった筈なのにFOMC議事要旨が先行き景気懸念で嫌気とは。」と言って悪態をついた次第なのですけど、この「FOMC議事要旨で先行きの景気懸念が示された事を嫌気して株価が下がった」というのは毎度お馴染みの某テレビ番組ニュースの相場後講釈を鵜呑みにした結果なのでありますな。

で、改めて米国市場後講釈をあちこちで見たら別の講釈が多うございまして、こりゃ釣られたかと思って8月7日FOMC議事要旨を何となく読んでみた訳ですよ。

http://www.federalreserve.gov/fomc/minutes/20070807.htm

えーっと、これどっちかというとインフレ警戒のような気がするんですけど。

『The data on core inflation received during the intermeeting period were favorable, but meeting participants believed that the readings for the past few months likely had been damped by transitory factors and did not provide reliable evidence that the recent level would be sustained.』

から始まるインフレ関連のパラグラフの締めの文はこうなっていまして。

『On balance, participants continued to agree that risks to the outlook for sustained moderation in inflation pressures remained tilted to the upside.』

ということで、これはインフレ警戒スタンスが継続しているという話になりますわけでして、某テレビ番組以外の後講釈が「FOMC議事要旨で期待されているほど利下げの話が出てなかった事に失望して株が下げた」というのがまあ後講釈としては筋が良さそうな感じですわな。あくまでも「後講釈としては」でして実際のところは知らんですが(^^)。

ただまあそもそもですな、8月7日のFOMCって公定歩合下げる前の時の話でして、まだこの時点ではサブプライムのクレジット市場への影響に言及しながらもインフレ警戒スタンス変えずで米債が売られてたりしてたので、その時の議事要旨がややインフレ警戒スタンスになっているのは当然と言えば当然のような気もするんですけどね。

まあいずれにしましても、あたくし恥ずかしながら某テレビ番組に豪快に釣られてしまいますたということで、ちゃんと1次資料に当たらないといかんちゅうことでございますわな。

ただまあ人間全部一次資料を見てられるほどヒマではありませんので、要は「情報は複数のコースから取りましょう」ということになるのかなと思うのでありますが、まあ本当は「発言の一部を切り取って針小棒大にヘッドライン打つ」とか「相場を単に傍観してる人のテキトーな後講釈」(何かオマエモナーって言われそうですが、アセアセアセ)とかいうようなのを報道関連の皆様が極力排除していただけると尚結構ということなのでしょうけれども、何せあたくしが駄文で時々悪態ついておりますように、本職のお方の中からも「いや、そのりくつはおかしい」という講釈が飛び出すのが市場クオリティでありますので、中々大変な事ではありますわな。

とかエラソーに言ってますけど、これかなり自戒が入っておりますので一応申し添えます(^^)。


○GCレポだけ高い面妖な動き(メモ)

正直良く判らんのですが現象面としては実に不可思議なのれす。

昨日実施された3か月FBの入札ですが、平均落札は0.666%ということでその後も確りで日本相互証券の引け値ベースでは0.655%でございました。既発のFBも非常に確りで、償還日の関係で期末越えの担保に使えない(純粋な余資運用の人には関係ないが)10月1日、10月3日償還のFB以外は軒並み0.65%あたりと、利上げ観測どこへやらの勢いでありますわな。CPレートもまちまちながら低下気味ですし。

という中で何故かGCレポだけ妙にレートが高止まり気味なのが謎なのでありまして、0.6%半ば近くで張り付いているのはナンノコッチャという感じです。コールもオペも金利低いんですけどねえ・・・・・

そんな状況ですので、現先レートとかもまあ高めだったりして、実に不可解な動きなんですが・・・・・





2007/08/29

お題「先行きの不透明要因がこの会合後に顕在化ということで」

東京では皆既月食の代わりに雷雨でしたな。月食見ながら「天狗じゃ!天狗の仕業じゃ!」ってやりたかったんですが(あほ)。

安倍内閣支持率上昇で何となくホッとしたのですけど、重要閣僚の面々を見ると今の布陣の方が「安倍内閣」らしいと思う(政治思想的に)のは気のせいかしらん?

しかし中古住宅販売悪かったのに翌日の住宅価格指数公表になって壊れた蛍光灯のように反応するとは、米国市場(特に株)の中の人たちファンタジーモードになってきたのでしょうか。それに「利下げクレクレ相場」だった筈なのにFOMC議事要旨が先行き景気懸念で嫌気とは。メリケン連中は景気に関係なくプルーデンスで利下げするとか思ってたのでせうか?????

余談が長くなりましたが決定会合議事要旨。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g070712.pdf

○先行きの不透明要因としていたものが

さて、7月11日、12日の金融政策決定会合議事要旨・・・なのですが、前回分の公表から8時50分公表になりやがりまして、迅速な公表をしたいという一環なのは良く判るのですが、やはりこの議事要旨は朝の慌しい時に斜め読みするのではなく、後場の何もないマターリとした時間帯(1時半とか2時とか)にマターリとしながら読むところに味があると思うのですけど(^^)。朝は業者も投資家も、ポジション(ファンド)持っている人は忙しいのよね。

などと申しましても、この時間になったのは仕方ないですので(^^)、まあ読むわけですが、今回の決定会合議事要旨では「この時点で先行きの不透明要因としていたもの」がその後顕在化してきましたというお話になりますので、これはこれで政策ロジックという面を考えると「信用収縮問題が一定のカタをつけないと正常化路線は難しいですなあ」というお話になると思います。

その割には相場の方は「短い所が強いけど長いところは弱め」という状況になっております次第でして、カーブが何となく立ってきているのは漠然とした財政拡大懸念とか、正常化路線の遅れによる先行きの引締め強化懸念とか、何となくそんなキーワードが浮かんできますけど。

#そういうとBEIはどうなのと突っ込む人がいるので一応申しますと、アレは現在は参加者が非常に限定された市場でして、とてもとても国内の市場参加者の総意を示しているものではありませんのよね。

という訳で、その米国経済の見立てですが、議事要旨本文5ページ目(上記PDFファイルだと7ページ目、以下同様です)にあります『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』という部分にございます。

『米国経済について、委員は、景気拡大が続いているが、住宅市場の調整が続く中で、そのテンポは緩やかに減速しているとの見方を共有した。複数の委員は、設備投資については、減速過程にあるが、均してみれば先行指標が緩やかに増加していることなどからみて、4 月の展望レポート時点に比べて下振れリスクは小さくなっていると指摘した。』

という基本的認識でありましたが、この先が延々とサブプライムの話になるのでありましたよ。

『多くの委員は、サブプライム住宅ローンを巡る問題を含め、住宅市場の調整の帰趨には引き続き不確実性があるとの認識を示した。ある委員は、住宅価格の伸びが鈍化していることによって、消費者信用の借入れがこれまでに比べて容易でなくなってきており、そのことの影響が消費行動に出ている、と述べた。』

『サブプライム住宅ローンについて、何人かの委員は、現時点で蓋然性が高い訳ではないが、仮にクレジット市場が深刻な影響を受けることになれば、わが国を含む世界の金融経済情勢に悪影響を及ぼす可能性は否定できないので、そうした観点からも引き続き注意深く事態の推移を見守る必要があると述べた。』

ということで、残念な事に蓋然性が高い訳ではないことが徐々に顕在化しつつありますなあ。まあ一般企業金融まで「深刻な」影響を受けてるわけでもない(影響が無いわけでも無いので念の為)とは思いますけど、7月12日時点よりも益々留意が必要とな。

『これに対し、一人の委員は、住宅市場の調整は実体経済の基礎的条件に関する問題から、金融セクターの一部に限られた問題へと性格が変化しており、わが国の金融政策を考えるうえでは大きなウェイトを占めないと述べた。』

まあそういう考えもありますが、結果的には米国や欧州でうんこの投げ合いというか地雷(トリガー)の踏み合いになりましたので残念でございました。今がキモなんでしょうけどね。この先は米国の物価の話になりますが一応引用します。

『物価面について、何人かの委員は、コアの消費者物価の伸び率は低下してきているものの、労働需給など資源の稼働状況は高いうえ、原油価格も上昇していることなどから、インフレ圧力が沈静化したとみることは時期尚早であると述べた。以上の議論を経て、委員は、米国経済の先行きに関し、年末にかけて、ソフトランディングが実現する蓋然性が高いが、引き続き上下双方向のリスクに対し注意を払っていく必要があるとの見解を共有した。』

どう見ても上方向のリスク(インフレ昂進)の扱いが僅少です。本当にありがとうございました(^^)。


○円高も警戒してましたね

この続きで本文8ページになります。『金融面の動向』ってところです。

『複数の委員は、実質実効為替レートがプラザ合意以来の円安水準となっているなど、為替相場が円安方向で推移していると指摘したうえで、企業は安定的な為替相場を望んでおり、円高方向に急激に変動するリスクを警戒する声が出ていると述べた。』

残念ながらその後、円高に急激に変動しました。本当にカムサハムニダ。


○先行きの金融政策運営は「丹念に点検」なのは当然ですけど

まあ利上げ提案に対して反対する理由はそれしかないのですけど、本文9ページの『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』のところであります。

『これらの委員(引用者注:現状維持賛成の委員)は、4 月の展望レポートで示した見通しに概ね沿って経済・物価情勢は推移しているが、見通しの蓋然性とそれに対するリスクをさらに見極めるため、引き続きあらゆる指標や情報を丹念に点検することが適切であると述べた。』

『何人かの委員は、現時点で考えられるチェックポイントとして、例えば、米国経済の状況、I T関連財など国内生産の動向、賃金の動向、物価を巡る環境などが考えられるが、金融経済情勢は、絶えず新しい事象が生じるものであるので、何か特定の指標なり、特定の分野を念頭に置いて考えることは適当でないと述べた。大方の委員は、引き続き幅広い視野で見通しの蓋然性を確認し、リスク要因を点検していくということが重要であるとの意見で一致した。』

という話をしておりまして、かつ8月には7月会合で示していたリスクが顕在化した格好になるわけですから、利上げするとなりますとこれらの問題(信用収縮とか急速に円高に振れた為替とか)が大したことございませんという説明をきちんとできるエビデンスがないと、政策ロジック的に難しいのではないかと思われます(水野審議委員は別のロジックなのでこの件はあまり関係ない)ので、現状維持派がひっくり返るのはちょっとハードル高いですねという感じです。


○「中間評価のウェイトを上げるのは如何なものか」という話が

その続きの部分からですが。

『複数の委員は、経済・物価情勢の見通しの吟味は、毎回の金融政策決定会合で行っているのであり、中間評価を行う会合に特別の重みを持たせて考えるのは不適切である、と述べた。』

まあそれは正論なのですが、月曜日にご紹介した先日の総裁定例記者会見における総裁のコメント(月報の基本的見解の中でサブプライム問題への言及が限定的だった点に対する質問に対しての答えで)にありました、

『また、金融経済月報については、詳しくは展望レポートの時に十分分析をし、詳しいアウトルックを出す。中間レビューにおいてはそれとの乖離を述べる。マンスリーな変化については、基本的な変化について不確実性が多い時に、あえて不確実性を乗り越えて楽観シナリオ、あるいは悲観シナリオを作り上げるということはしないというやり方になっています。』(8月23日福井総裁定例記者会見より。月曜の駄文で引用しました)

とはちとズレがあるような無いような。うーむこの辺よくワカランチ会長・・・・

#本日も引用で嵩を稼いでしまいましたスイマセンスイマセン







2007/08/28

お題「内閣改造雑感/福井総裁記者会見(続き)」

自民党三役に対する感想を聞かれた鳩ポッポが「新鮮味が無い」と発言してたのにはワロタですよ。まさにオマエモナー。

#新鮮味がなくってもいいじゃないかと思うのですけど

しかし退任に際して「女子の本懐」「アイシャルリターン」って何か勘違いしている変な人がいるらしいのですが、変なもんでも食ったのでしょうかこのお方は????


○内閣改造雑感(素人の戯言です)

・麻生幹事長に与謝野官房長官

とりあえず言えそうなのは竹中氏的ないわゆる新自由主義(って便利な言葉だから使ってますけどイマイチ何のこっちゃいという気もするんですが・・・)な政策は出てきませんなあと逝った所なんでしょうか。まあそういう点では安心っぽいのですけど、金融大臣とかどうも空論で突っ走りそうな人も(後述)いるので、全体としての内閣の政策が分裂気味になりそうな悪寒も。ちなみに暫く前にネタにしましたので再掲になりますけれども、ローゼン閣下が竹中時代の金融行政に関して手厳しい批判をしてるのをご紹介したのがこのあたりに。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/zatsudan07-01.html#za070531
(5月31日のエントリーですのでよろしく)

与謝野さん、麻生さんともに日銀の正常化路線に関しては理解があるといわれてますが、ではまあ景気の先行きに不安があるときでも正常化して良いというのかと言えば、そこまでの事はないでしょうし、あたくし勝手に想像する世界なのですが、そーゆー状況下では日銀も正常化路線を推進するこたあないと思いますよ。そもそも日銀ロジックでは「経済情勢に見合った金利の調整」ですので、経済情勢の先行きが不透明ならば金利の調整にはブレーキ踏みますよとなる筈なんですけどね。


与謝野さん官房長官でちったあ金利の市場が反応するのかと思ったのですが、表面的に市場は全然反応してなかった節がありますので、その点からしましても、「結局信用収縮問題とかに一定のカタがつかないと動きも進まんでしょ」という市場の評価ということなのでしょうかね。



・渡邊金融庁長官

公務員制度改革で片鱗は思いっきり見せていますけど、この手の立場にある人の属性として「パフォーマンスが好き」で「中途半端に知識がある」(あと付け加えるなら功名心強い、ですかね)というのが一番タチが悪いというのは皆様の身の回りでも事例を散見されるのではないかと思うのですな。副大臣人事がどうなるのか存じませんけれども、これで田村さんが留任でもしやがったら、ものの見事に上記属性のコンボとなる次第でして、そもそも金融危機モード脱却で存在感が低下している(と世間的に言われる)金融庁の状況と併せますと、何かこう存在感を誇示しようとして変な空理空論で無茶な施策を打ってきそうな悪寒がするので非常に心配。

ちなみに、あたくしの駄文を普段後ご覧の方であればお判りとは思いますが、あたくし基本的に政治的パフォーマンスのお上手な方は好きではありませんので、その分個人的バイアスが掛かっていることはご容赦下さい。


・石原政調会長(内閣じゃないですが)

正直意味判らん。参議院選挙の東京地方区で官邸肝いりの新人(しかも住民票戻し忘れで在外扱いだったというギャグ付き)にテコ入れして当選させた代わりに肝心の現職落選ってトンマにも程がある動きを都連会長として仕切ってた人がご栄転とは何のこっちゃにも程があると思うのですが。今回の一連の人事の中で一番意味不明でしたな。


・舛添厚生労働大臣

どう見ても嫌がらせ人事&火中の栗です。本当にありがとうございました。

・・・・と申しますか、まあ是非頑張って頂きたいと期待してますよ。


・まあ全体的な印象

確かに新鮮さという点ではウケが宜しくないのかもしれませんが、初代安倍内閣では安定感の無いお歴々が暴走しやがった(最後を飾った騒動には笑うしかありませんでしたが)ということもございますので、逆に重厚に見える布陣の方が宜しいのではないでしょうかと思うのでありますけど、まー中々そうもいかんのでしょうかね。

麻生幹事長ってのもそうなんですけど、最初からこの人事で臨んでいれば参議院選挙どうだったんでしょうかねと思うと、安倍さんのために惜しかったですよねというのと共に、これからまあ悪くなる事もない(あったら退陣^^)でしょうから、後は良くなるだけとポジティブ思考(とは言わんか)でお願いしたいと思います。第1次内閣の時より期待できそうな感じはするんですけどねえあたくしとしては。



○総裁記者会見続き

昨日の続き
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0708a.pdf

昨日は先行きのリスク評価に対して慎重な部分の引用が多かったと思いますので、今朝は強気ヘッドラインの元になったあたりを軽めに少々。

政策金利引き上げは機動的にというようなヘッドラインを打ち込まれた発言部分は質疑応答の真ん中当たり、8ページ目になります。

『従って、全ての状況が画用紙に綺麗に描けるようになるまで政策を行なわないということでは、完全に手遅れになると思います。かといって、何かスケジュール的に先入観を持ってやるというわけではなく、十分フォワード・ルッキングに私どもとして確信のある判断が持てる段階になれば政策は機動的にやっていかなければならないということは、非常に明確だと思います。』

ここだけ拾うと「おお!」なのですが、従ってとありますようにこの発言は前半部分がございます。やたら長いのですが段落適当に切りながら。

冒頭は何となくタカ的なトーンでスタート。

『1つ明確に申し上げられることは、実体経済の姿が画用紙に描いたようにピタッと良い格好になっており、金融市場も凪のようにピタッと静まっている時でなければ金融政策を行わないということであれば中央銀行は要りません。要するに実体経済も市場もダイナミックに変化する中で、いかにより良い姿を実現できるような金融環境を作っていくかということが私どもの役割ですので、判断もプロセスも政策決定内容も全て、是非そのようにダイナミックな観点からとらえて頂きたいと思います。私どもはダイナミックなプロセスにいつも挑戦しているということであります。』

この先ちょっと調子が変わります。

『日本経済のファンダメンタルズを単体で判断すると、前回の金融政策決定会合から比べそれ程変わっていない、もしかしたら多少前進しているかもしれないと、これまで出てきている指標からみる限りそういうことが言える状況であったとしても、それを取り巻く金融資本市場の変化等の環境と実体経済との相互作用の中でダイナミックな判断が必要だろうと思います。』

ほうほうなるほど。

『その環境要因について言えば、今起こってきているリスクの再評価の過程は、今後秩序だって進むかどうか、これが混乱を伴って実体経済に対する悪影響を拡散的にもたらすような方向の動きになるのかどうかということです。』

おや、これは慎重な感じですね。

『仮に秩序だって再評価の過程が進むとしても、やはり特に渦中の米国経済に多かれ少なかれ影響があるでしょうから、それがどの程度かということは、ある程度測定しながら、続いて日本経済への跳ね返りはどうか、これは米国から日本というような単純な構造ではなく、改めてグローバルな経済の篩いにかかって日本経済への影響ということになってくると思いますが、その辺の分析、洞察力が私どもには求められていると思います。』

ということで、最後の部分に繋がる次第です。この発言最初と最後が割と「経済状況見ながらフォワードルッキングで果敢に利上げ」っぽい感じなので、話を聞いている時には強気ヘッドラインを打ちたくなるような気がするんですが、こうやって文章で見ると、どっちかといえば中間の「米国の先行きに対する慎重な見極めが必要」の方が出てるような感じであります。


ただまあこちらで引用した発言の中にある「日本経済は多少前進」について別の質疑でも同じ事言ってるのはちと注目かなと思います。金融経済月報ベースでは特にそんな感じ無いと思うのですけど・・・・

ファイルの11ページ目より。

『(前半割愛)。今の時点で言えば、前回の金融政策決定会合に比べ、少なくともこれまで出てきている経済指標を解釈して先に伸ばせば、経済実態についての判断は、多少前進しているかもしれませんが、経済は常に金融資本市場を含む環境要因との相互作用の中で改めて評価し直さなければなりません。そうだとすると、私どもとしてはまだまだ不確定要因を頭の中に抱かざるを得ないというのが、とりあえず本日の判断です。』

ということで、福井総裁としては経済情勢に関してかなり強気で見ているということなのではないかと存じます。

まあ本日はそんな感じで。。。








2007/08/27

お題「総裁記者会見」

ローゼン閣下が幹事長のようですな。最初から閣下が幹事長だったらどうだったんでしょうかね。あたしゃどうもシンキロー先生ねじこみの幹事長さんって何かというと「誰々が悪い」というネガティブな方向性が表に出てきてどうにもこうにも。この選挙演説(?)なんて選挙中だから相手批判が多くなるとは言え、野党が与党批判してるみたいなネガティブなオーラを感じるんですが。。。。
http://www.jimin.jp/sansen/enzetsu/hnakagawa.html


などという床屋政談はともかくとして総裁記者会見。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0708a.pdf


○全体的なトーンは慎重と読めます

今回は当然の如くやたら量が多く、PDFで17ページもありやがるのですが、当日のヘッドラインで見た印象は両論併記だけど利上げへの姿勢も確りという感じでしたけど、会見要旨を読みますと、確かに後半部分で景気に関して基本的に強気という話をしておりますけど、前半の信用収縮問題関連への質問に対するトーンはどちらかというと本件の広がりが実体経済に及ぼす影響について慎重に見極める必要があるというトーンが強い感じです。

ということで、今回の会見では「利上げ前のめり」な印象は受けないどちらかというと慎重なトーンでございますが、例によって裏読みすると、慎重なトーンな時というのは実は総裁としては先行きに対して自信があって「慎重な発言をしても実体経済がついてくるぜベイベー」という認識があるかも知れませんねという事も(^^)。ま〜何か慌てて利上げに走るような姿勢出すのは勘弁して欲しいところでして、利上げに関しては慎重で宜しいんじゃないでしょうかねえ。

ということで以下会見内容ですが、やたら多いので今日終わるかどうか微妙。


○サブプライム問題に関しての慎重な見方

当然ながらこの件についての質問がやたら多かったのですけど、最初の質疑でサブプライム問題の実体経済への影響に関して質問がありまして、それに対する福井総裁の答えから。例によって死ぬほど長いので段落分けしながら。

『今、サブプライム問題とおっしゃいましたが、米欧の金融市場では、サブプライム問題をきっかけとして、社債スプレッドの拡大や、ABS、ABCPといった証券化商品の流動性低下など、クレジット市場の状況が悪化しています。グローバルな金融市場が少し拡がりを持って悪化しているということです。金融市場全般につきましても、振れの大きい展開が続いており、ご承知の通り株価が下落していますし、国債金利は「質への逃避」(flight to quality)の動きから、金利が低下しています。』

『こうした中、実体経済指標をみている限り、米国経済において住宅市場の調整が続いているわけですが、設備投資や個人消費を中心に、減速しつつも緩やかな拡大を維持しているというのが実態です。先行き、米国経済は、家計支出を中心とした調整過程が一巡するにつれて、次第に潜在成長率近傍の成長パスに戻っていくと考えられており、私どももそう思います。』

と、ここまでは一応「今のところ大丈夫だと思うが」ですが・・・・

『ただ、今回の金融市場の実体経済、とくに米国経済への影響については、いくつかのルートでどのように影響が出てくるかを注視していかなければならないと思っています。』

『それは、住宅金融を通じて住宅投資に与える影響、これが一番中心的な影響でありますが、クレジット市場の機能低下が企業金融に与える影響はどうか、今のところサブプライム問題、あるいはクレジット市場の機能の停滞が、企業金融全般に強い影響を与え始めているという兆候はありませんが、市場はどこかでつながっているわけですので、クレジット市場の機能低下が企業金融に与える影響が全くないのかどうか、注目していく必要があります。』

『それから市場の動揺がもし長引くという場合には、株価の下落等を通じた家計のマインド、あるいは企業のマインド、といったマインド面への影響などが考えられるわけです。株価に反応しやすいミシガンの消費者コンフィデンス指数が既に少し下がっているということはご承知だと思います。そうしたマインド面の影響が考えられますので、注視していかなくてはならないと思っています。』

なるほど。こりゃまた随分と詳しく見てます罠。なお続く。

『つい先日の米国のFOMCの声明でも、今後の米国経済の成長を抑制する可能性があるとしておりますが、今申し上げた点を私どもは注視していくべきであろうと思っています。』

以下は欧州圏の話ですが割愛。

ということで、FOMCでのトーンダウンが結構影響してるのねというわけでして、国際的な協調に関しては気にしてるんですなあという印象を(後の質問で「協調とは何ですかいな」という答弁はしてますけどね)。

では今回の動きに関してどういう評価をしているのかという点について次の質問に対する答えとしてこれまた読みようによっては結構慎重な見方に見えるのですが。

『今回は、金融市場の新しい調整プロセス、リスクの再評価のプロセスと言えるわけです。今年の春頃起こった株価の調整や、昨年の5月、6月頃に起こった株価の調整と比較しますと、市場がもとの姿に戻るというのではなくて、リスクの再評価の過程ですので、クレジット市場を中心にこれまでのリスク評価が甘すぎた部分が、市場の中で納得できる新しい価格発見を行っていくプロセスというところが違うと思います。』

ということで、今回の調整に関しては単純に元に戻る訳ではないという見立てをしているのが「ほほー」という感じです。


○金融イノベーションと今回騒動の本質

今回の証券化云々に関しては、イノベーションはイノベーションかも知らんですけど、まーあたくし思いまするところは害債さんのこのエントリー(http://ensaigaisai.at.webry.info/200708/article_17.html)禿しく同意したい所でありますがそれは兎も角として、金融イノベーションに関してケチがつきそうな今回の事態に関して、聞かれる前から答える福井総裁の巻(^^)。

『金融のイノベーションの急速な進展というのは、過去数年グローバルな市場の中でみられてきたわけですが、証券化技術などを含め、多くの人が投資という形でリスクを取り入れやすくするための技術が発展し、過去に比べるとリスク分散がかなり急速に進められるようになりました。』

『リスク分散そのものは、資源の再配分をより有効に促し、かつ金融市場を安定化させる機能がありますが、世界経済も市場も非常に好ましい状況が長く安定的に続いている中で、すなわち、スプレッドが縮小しボラティリティが下がる中で、このイノベーションが進められてきましたので、もしかするとリスクの認定が甘い方向に流れたのかもしれず、改めて時価評価(mark tomarket)できちんと新しいプライスを発見したいというのが今の調整過程の本質です。』

『よくリスク分散が行き過ぎて、今リスクがどこにあるかわからないという言葉を聞きますが、リスク分散そのものは、資源の再配分機能、あるいは市場の安定のために好ましい現象であり、価格評価(pricing)がきちんと行われていれば、あまり問題にならないわけです。価格評価に疑問が生じた場合には、いったいリスクはどこにあるのかが問題になってくるわけです。』

これは正論は正論なのですが、特に短期物になっているCDO絡みのアセットバックもの何てえのは「短期だし償還まで持ちきるからその間時価評価しない」というのがオトナの態度であったと聞いておりましてですな、プライシングの適正さというレベルの問題であったのかという点については少々疑問がございますですわな。

『本質的には、時価評価によってリスクを再評価するということ、これが市場の中で極力秩序だって(orderly)進められていくことが一番大事です。ある程度時間がかかると思いますが、きちんとリスクの再評価が行われる過程では、損失の確定によって痛みを伴うかもしれず、あるいは流動性に問題が生じる可能性もあります。その点、中央銀行は既に先週以降、必要な流動性をきちんと供給するという体制を整えています。』

ということで、福井総裁的には引き続きイノベーション話はお好きなようでございますわな。


○金融経済月報(基本的見解)に今回の動きの評価がほとんど無かった点について

小見出しが長いですが、質疑応答の後半(PDFの14ページ目です)でこんな質問が。質問の後半部分だけ引用します。

『(問)(前半割愛)また、先程の質問とも関係あるのですが、コミュニケーションという意味では7 月に展望レポートの中間評価をしたばかりですが、このように世界でマーケットが乱高下している時は金融経済月報等で改めて4月の時点と比べて見方はどうなっているかということを述べられても良いのではないのでしょうか。』

これに対しまして総裁はこのように述べています。この部分に関わるところだけね。

『また、金融経済月報については、詳しくは展望レポートの時に十分分析をし、詳しいアウトルックを出す。中間レビューにおいてはそれとの乖離を述べる。マンスリーな変化については、基本的な変化について不確実性が多い時に、あえて不確実性を乗り越えて楽観シナリオ、あるいは悲観シナリオを作り上げるということはしないというやり方になっています。』

ほうほうなるほど。しかし今回の場合は不確実性に関する言及も基本的見解には無かった(全文の方は手抜きでまだ読んでません、汗)ですなあという気はしますけど。


#予定通り時間切れになったし増量にも程があるので明日に続く(かも知れない)







2007/08/24

お題「決定会合関連その他」

モーサテに武者先生キター!と思ったらV字型回復の可能性が非常に高いとか言いながらこのまま世界大恐慌になるのかのどっちかというのは両建てにも程がありますなあ。(基本線はやたら強気ですので念の為)

相場神の年末日経平均は19000とはこりゃまた中途半端な数字ですな。基本は20000円らしいですけど。


○月報ではサブプライムへの言及はあったものの

今回の月報→http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0708.htm
7月の月報→http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0707.htm

で、景気に関する部分に関して前月と違っているのは2箇所だけ(展望レポートの中間レビューは今回ございません、為念)でありまして、それは景気の現状認識部分になりますが、そのうち1箇所は7月短観を受けた企業の業況感の部分になりますので実質的にはこの1箇所だけ。

・公共投資

『公共投資は低調に推移している。』(8月)
『公共投資は、このところ横ばいとなっているが、基調としては減少している。』(7月)

そして、信用収縮関連のお話はどこですかと申しますと、月報基本的見解の最後の部分に該当します金融に関する部分にこのように言及が。

『為替・資本市場では、米国の住宅金融問題に端を発した世界的な不透明感の高まりを背景に、わが国でも、前月と比べ、長期金利は低下し、株価は下落している。また、円の対ドル相場は上昇している。』(8月)

ということで、言及してるけど景気に関する部分には信用収縮のお話が無いちゅうことでありまして、現状では本件はあくまでも金融面に関する問題であると言う評価になっているという事で、このあたりは景気へのダウンサイドリスクへの言及を行ったFRBとはちと違いますな。ECBやBOEに近いと言った所なのでしょうか(まあFRBの声明も信用収縮落ちつけば無問題とも読めますけどね)。

ということで、今回の月報では信用収縮問題を景気に対するリスク要因に加えるという形は取らずというのが判りましたので、トーンとしては従来通りということです。まーその「従来通り」がここもとちょこちょこトーンダウンしてるので、月報のトーン自体そんな無茶苦茶強い訳でも無いのですが、従来路線は絶賛継続中ということで。


○8対1でしたな

決定会合の票決は8対1で水野審議委員は利上げを提案。

今利上げすべきかという話はさておいて、フォワードルッキングの金利調整という政策ロジック的に言えば「足元の確信度合い」という謎のファクターを加えずに展望レポート中間レビューの7月というタイミングで利上げを提案した水野審議委員の方が筋論としては筋論でありますなということで、今回日和らなかったのはそれはそれで筋が通ってると思いますわな。

まあ今回水野審議委員が現状維持賛成に回りますと、どう考えても9月で審議委員の多数がいきなりひっくり返るという図は想像しにくいところであります(まあ今までの例で言えばいきなり変るというのもありましたけど^^)わな(信用収縮が思いっきり収拾して株価も為替も7月の頃に戻っているというのなら別でしょうけど)。

そして昨日は面倒なのでスルーしましたが、9月スキップした後10月の短観とか見て足元の確信度合いとやらが高まるのかと言えば、調査期間までまだ暫くあるから何ともいえませんが、今の調子だとどう見ても短観がよくなるとは思えませんので決め手弱し。展望レポートの見直し時点とか言ってると10月末になり、そうなるとじゃあGDP見てからの11月・・・と話がズルズルと延びるの巻という話になるかなとか思ってましたんで、その点で言えば水野さんが現状維持にひっくり返った場合にはあとあと金融政策の思惑という点では効いてくるところだったかも知れませんですわな。

まあこれで水野さんはタカ派としての確固たる地位を獲得しましたので、30日の講演をワクワクテカテカしながら待ちたいと存じます。


○だからそう慌てて反応しないように

昨日の総裁記者会見。当然ながら質疑応答が沢山あって情報ベンダーの記事読むだけでも結構めんどいので会見要旨出るまでご勘弁いただくということでヘッドラインの考察だけ(^^)。

昨日はロイターを主に見てましたが、ヘッドラインの一発目で見事に債券先物が反応しやがりました。

『シナリオに強い確信もてれば政策変更していく』
『低金利継続のリスクの問題意識はしっかり持っていく』
『単純に他国の金融政策の影響は受けない、独自判断で』
(ロイター日本語版より、以下ソースは昨日のロイター)

これで先物を10銭ちょっと叩くのもご苦労なこったというかお祭り好きな人いますねえというしかございませんが、その間にロイターの英語版では実はこんなヘッドラインもあったりするのですよ。

『BOJ'S FUKUI SAYS ADJUSTMENTS IN FINANCIAL MARKETS MAY TAKE TIME』

で、言うまでもございませんがその直後に日本語版でもこの部分が

『クレジット市場の機能停止、ほぐれるのは数週間では難しい』

と出やがりまして、あっという間に下げた分が戻るというご苦労様にも程があるという値動きをしやがりました。だからそう慌てて反応するなよと思いつつ、英語と日本語のヘッドラインの順序が微妙に違う点についてロイターに何か意図でもあるんですかねえとかついつい意地の悪い読みをしたくなるのがドラめもんクオリティなのであります。いずこも同じで困ったもんよ。

会見全体のトーンは(斜め読みしただけですが)特に利上げに積極的にやる気だしてるという感じには見えませんでしたけどね。

ところで日経記事では「9月利上げ不透明に」ってなってますけど、金利市場的には既に9月無理で10月ですかねって感じになっていましたので、何かこうピンボケ感があるのですが、まあ為替とか株の人たち的にはそんなもんなのでしょうかね。



○これはどこかで見た光景でありますなあ

さて、昨日書きました5億ドル云々でございますが、内容としては大手銀行4行が連銀貸出を各行とも5億ドル借りましたよ皆さんも借りるといいですよ流動性が確保できますよって公表だったそうですので、とりあえずそれ全部足すと20億ドルなので2500億円位のお話でしたなこりゃ失礼。

ま、それはそれで良いのですけど、信用力が高いと見られる有力銀行が横並びで連銀貸出を受けて(ちなみに、金取れなくてヒーヒー言ってるともっぱらの話題にされている欧州系のどこぞの銀行様もお借りになっていたようですが、そっちは普通にしらっと連銀貸出ご利用のようで^^)「皆さんも借りましょう」てなお話はどう見てもセレモニーです。本当にありがとうございました。

そしてこの別に借りても借りなくても同じっぽい所が率先して借りるしかもどう見ても横並びって姿に既視感がありますなあと思っていたらそれは我が国の公的資金注入の第1弾(金融再生委員会がどうのこうのとかやってた時でしたっけ??)で、当時相対的に不良債権問題による傷が浅いと評価されていたどこぞの銀行が率先して申し込んでどう見ても○○ですとか言われてた誠にアレな物がございましたが、まさにこの既視感・・・・・(^^)

そういやあカントリーワイド社の優先株を引き受ける所も出てきたとかいうニュースを聞くと益々・・・・・・・(^^;


○おまけでレポレート低下(時間無いのでメモだけね)

国内の円資金取引はどう見ても一昨日の時点で落ち着いてるのに、昨日も国債買現先に短国買入と打ちましてGCレートがあっさり0.6%割り込みました。何たる下げの勢いの良さ・・・・・

CP、FBも確りしてまして、少なくとも国内円の短い所の信用不安は(もともと別に無かった事もありまして^^)完全に落ち着いたと評価していいんじゃないでしょうか・・・・・








2007/08/23

お題「決定会合プレビューとか相場の話とか」

朝24℃で無茶苦茶涼しいと思う体の慣れ恐るべし。

○ターム物のレートが一斉に落ち着きましたな

昨日は3か月FBの入札とか、企業様の25日お支払い(今月は25日が土曜日なので25日払いの給与は24日)対応のCP発行とか、発行が色々とあった日なのですが、レートは低下傾向となりました。順不同で申し上げますと、GCのウィーク物で0.6台前半の気配が出ましておやおやこれは落ち着いた物がという感じになりましたし、CPは軒並み2bp〜3bp程度の利回り低下。大体CPのレートがドーンと動く時というのは(月末で再投資ニーズが強くてちょっと下がるとかいうのはありますが)余程の材料が市場に出た場合を除けば、最終投資家主体ではなくてバンクのCPディーラーの懐具合の変化によるものが多いということもありますので、まー銀行ディーラーさんの懐事情が好転したんでしょうなあと思わせるものがありました。

FB入札はと言いますと、WIの前場引け0.695%−0.700%の気配から平均落札0.693%足切り0.699%と確りでしたし、その後セカンダリーでは買われてまして、引けは0.675%と強くなってました。既発が0.68%の中で0.675%まで出合うのもちょっと踏みの香りがしますが、まあ久しぶりに入札時点で強いニーズがあったという事でしょうか。

連日の国債買現先や先日付の共通担保オペが効いたのか、先週末に出てたロンバートが月曜に返済になってたとか、外為円決済絡みで予備的に準備預金を多めに積んでいた向きが放出に回ったんでしょうとか、ま〜そのあたりの複合要因なんでしょうが、渾身の資金供給が効果出て良かったですねという感じでしょうか。

一方で2年あたりはここもとのやり過ぎ(想定足元金利の足し算が2年で0.80%カツカツというのはあまりにも悲しい未来ではございませんか^^)モードから(かどうかは知らんが)売られてましたんで、短期のイールドカーブ(というのか知らんが)は6か月くらいを軸にしてツイストスティープというオモロイ結果になりましたな、おっほっほ。


○利下げのウワサで短期債急落という事で(^^)

昨日の引け後のロンドン時間のお話。何か株式が威勢良く上昇してて米国トレジャリー短期債がアホのように売られておりまして、そいつを横目に円債先物イブニングセッションも売られておりました。

何じゃコリャとか言ってたら「何か米国でFF緊急利下げのウワサだそうだよ」というのが駆け回っておったようでして、この手のうわさというのは聞いた人間が裏を取ろうとして他の人に「〜という噂があるらしいけどどうよ」と聞くので、「〜という噂が流れているという噂が流れていますなあ」というヤヤコシイ事になります(^^)。まあそれは兎も角。

ここもとの米債特にトレジャリーの短期ものに関しては、フライト・トゥー・クオリティにも程があるというのか、FF下げ何回織り込んでるのよという動きでございましたので、巻き戻しということなのでしょうけれども、利下げのウワサで短期ゾーン売られるとは中々香ばしいですわな。引けてみれば米国債10年5毛甘はまあ良いとして、米国債2年が14毛甘とは笑わせてくれます。

ま、真面目に後付け講釈しようとすると「信用不安を織り込みすぎた分、FF下げで信用不安が解消されるとの見方から巻き戻しが起きた」となるのでしょうが、FF下げても問題の解決にはならん(先送りは出来るが)のでこの講釈もかなりインチキなのであります。まー結局はですな、「群集心理で右や左に大騒ぎモードだから仕方ないんですよ」という何の説明にもならない説明しかございませんわな(^^)。

これをモーサテがどう解説するかと楽しみにしてましたが、やはり講釈不能だったようで(仕方ない罠)、欧州株の上げを「米国の利下げ期待」、米国株の上げを「大型のM&A」、米債の下げを「米国株の上げ」と無理矢理講釈致しましてご苦労様でございました(^^)。

#LTCMが飛んだ後の最後の利下げ前後でも利下げで米国中短期債が猛然と売られたそうですね^^;


しかしまあ米国連銀貸出5億ドル出たから(追記:翌日補足しましたが大手4行で各5億です)流動性が潤沢と市場に安心感(モーサテのコメンテーターの発言なので若干アレですが)とか、英国でレンディング・ファシリティが3億ポンド出たから信用不安とか、おまいら1000億円にもならねえ金で何動揺してるんだと、信用不安問題に関してはここ10年で散々とんでもないものを見せてもらいましたあたくしたちとしては思うのでありました。

ま、逆に考えればインタバンクに1兆だすよりLLRの100億の方が効果絶大(冷静に考えれば当たり前ともいえますが^^)ということでございますよオッホッホ。


○決定会合プレビュー

本日までの金融政策決定会合。利上げの可能性はマイナス1億%(政策委員全員が妖術師から集団催眠術でも受けないと無理)くらいでございますのでそれはどうでも良いのですが、総裁記者会見で何が出るのかというのと、金融経済月報で何が出るのかというのと、票決がどうなるのかという3点が注目されるところでしょう。

まず総裁会見ですが、どうせ今回の会見では「9月利上げなんて出来ないでしょうねえホレホレホレ」と記者様がツッコミを入れて、それに対して「先の事は決めうちしませんので、9月利上げ無しと断言することはできませんが何か?」というリアクションが発生。で、最近妙にセンセーショナルなヘッドラインを打ちたがるどこぞの情報ベンダーあたりがややHawkishなヘッドラインを打ち込むという所までは読めます罠。

で、そのヘッドラインに対しての市場の反応ですけど、月曜くらいの感じですと「また空元気か!」と華麗にスルーという感じだったかもしれませんが、今週になって徐々に株は確りしてくるわ為替はまた戻ってくるわ、おまけに米国短期債は売られるわという状況になっているので、ちょっと反応するのかもしれませんね。まあそこを織り込みに逝った結果が昨日の引け後の2年0.895%(金曜は0.815%の引けだったんですけど・・・・)なのでしょうかとも思えます。

まあど〜せ「経済物価情勢に応じて政策金利の調整を行う」というのは出てくるのであまり驚かないようにありたいものです。


次に金融経済月報ですが、個人的にはこれが一番楽しみでありまして、中身がどうなるというのはこれこそ中身見るまで判りませんけど、ここもとの金融情勢の変化をどう評価し、先行きのリスク要因に加えてくるのか注目ですね。

それから票決。7月にはロジックを通して(利上げの是非は兎も角として)男を上げた水野審議委員ですが、さて今回どうするのでしょうか。現状維持に回れば「日和りましたな」と悪態をつかれ、利上げ提案すれば「この状況で利上げとはどういう神経」と悪態をつかれそうな状況でありまして誠に痛惜の極みでございますけど、やはり金融政策決定会合にはタカ派とハト派の芸風をお持ちの方がいらっしゃらないとオモロクありません(というか両方いないとバランス取れないしぃ)ので是非奮起(何の?)を期待したいところでございます。と無責任にも程がある放言でしたすいませんすいません。

ま、全員一致になると「こりゃもう9月はむりぽで一番早くて10月でっしゃろ(10月も短観がこのままだとよくなる訳ないので苦しいのではという論点は華麗にスルー)」という市場の見方(たぶん9月利上げよりそちらの方が多いと思う)を補強するでしょうねというくらいの予想はつきますな。

しかし7月利上げしなかった事に関して考えれば考えるほど本当に福井総裁って悪運が強いですねと感心することしきりであります。何か地雷原の中を砂利満載のダンプで突っ走ってるのに地雷を全然踏まないというか、地雷を踏んでも何故か不発というか。。。。。






2007/08/22

お題「各種雑談でご勘弁」

しかし何ですな、昨日なんかも結構に相場は動いているのですけど、先週の豪快な相場の後だと「今日は小動き」とかわけわからん錯覚に陥りますなあorz

#今朝のモーサテゲスト解説のお馬鹿さ(追記:ちなみに言ってたのは「日銀の資金吸収が株価暴落を招いた」という馬鹿にも程がある言説)に呆れますが、テレビで与太吹くのも困りますが、それよりもナントカ大学のセンセイとして、まだまっさらな学生さんにテキトーな与太話を吹き込むのは勘弁していただきたい(最初に電波吹き込まれるまれると払拭するの大変ですから、自分も経験あるから判るけど)ものでございます>元日経の人

あ、それから全然話は飛びますが、一昨日の米国連銀貸出ネタに関しまして、連銀貸出に関する色々な参考資料をご教示下さいました皆様誠にありがとうございました。勉強になります。


○連日の供給でさすがにレポレート低下ですな

昨日も先日付スタートの資金供給が実施されていましたが、国債買現先が23日スタート28日エンドとはこれまた見事に「是非ご利用下さい」と言わんばかりの応札する方に優しいオペでございました。しかも1兆円。こちらが「使いやすい」オペだったこともあって落札利回りは0.64%全取だったのですが、午後には共通担保本店が23日スタート9月21日エンドで実施したらこちらは前日と似たような期間でしたが落札利回りは足切りベースで前日比2毛低下とだいぶ落ち着いた展開の巻。

さすがにこれだけ威勢良く先日付の資金供給を打ってくれるとちったあ落ち着くようで、前日も上昇して「えー」となってたレポや現先のレートもさすがに取引終盤は0.7%割れとなったようで、まあさすがにねという感じです。

そんな中で本日は3か月FBの入札が行われる訳ですが、誰がどう考えても今月の利上げ無し(その割りにやたらと牽制発言が出ているのが良く判らんのですけど・・・・・)という状態ではあるのですが、GCだの現先レートは妙に確りしておりますし、まあ9月前半の積み後半は今の調子だと金利がまたダダ下がりするんでしょうけれども、9月後半になると積み期間は変るわ期末だわということで、新BISの悪影響にも程がある6月末の状況から類推するにろくな事が起きなさそうな悪寒でありまして、そーゆー意味では利上げ無いからと言っても利回り重視スタンスだと中々利回り低い所まで突っ込みにくかろうと思うのですが。

あとは「短期国債だったら何でも買いますよ」状態の買いがどのくらいあるのでしょうかというお話になるかと思います。WIの0.715%ってのは既発対比ちょっと利回り高く引けつけ過ぎなんジャマイカという気もするのですけど。どの位ニーズがあるのかちょっと注目。


○翌日物金利先物の上場

月曜にTIFFEから公表がありましたので既にご存知の方も多いかと存じますが。
http://www.tfx.co.jp/newsfile/07/070820_j.html

商品概要は上記URL先にリンクがあるのでそこをご覧いただけると宜しいかと存じますが、OISが相対取引なので一応カウンターパーティーリスクがあるという事と、それ以前の問題として標準取引ロットが巨大過ぎてパンピー手が出せませんわというのもありましたので、この商品はまあ一応発展を期待したく存じます次第で、悲惨なアイデア倒れ商品に終わったスワップ先物の二の舞にならないようにお願いしたいものであります。

で、その商品内容なんですけど、ざっとみて「?????」だったのは取引単位が「元本3億円」であることです。1枚3億円ってあなたそりゃ使いにくいったらありゃしませんということで、どう見ても死亡フラグです。本当にありがとうございました。

いやまあね、元本1億円の0.01%(1bp)が1万円で、3か月(金先ですね)だと(90/360で4分の1ということで)2500円でして、今回は1か月だから12分の1になるから3の倍数にしないと端数が出て処理に困るというのは良く判るのですけれども、1枚3億というのは如何にも不自然なので、ここは端数発生も辞さずで1枚1億円(にすると1bpで833.3円になるのですけど)というのはどうなんでしょ。まあ建玉の関係で変な調整金が出てきそうなので難しいですけどね。

#などということはパブコメ出せですかそうですか。

(追記:ちなみにこの新商品なんですが、始まると言う中で外野はそこそこ話題にした割りに肝心のマネーの人たちでの盛り上がりがやたら低調。どうも諸般のヤヤコシイ話もあるようですが、行き着く先は企画倒れの死亡フラグが立ちまくりのようですな)

○ロンバート(及びその類似物)はどうも嫌われますなあ

昨日見てたニュースの中で「ありゃま」と思ったのは「英中銀がスタンディング・ファシリィティに基く貸出を実行したと発表したら相場が動いてしまいましたな」というニュースです。日本語版ロイターのニュースを見ますとこれが配信時刻が昨日の19時33分でありまして・・・・・

『(ロンドン21日ロイター)21日午前の欧州外為為市場(原文ママ)で、イングランド銀行(英中央銀行)が前日にスタンディング・ファシリティーを通じて3億1400万ポンドの貸し出しを実行したことを受け、ポンドが下げ幅を拡大している。(以下割愛)』

で、関連してGilt先物が動いたというニュース(単に元ニュースを検索する積りで間違って引いたのですが^^)を英語のほうのロイターニュースを見るとこれがまたうーむなのであります。日本時間19時42分配信の記事なんですけど、面倒なのでヘッドラインと最初のところだけ引用。

『UK gilt futures soar as BoE lends at penalty rate
LONDON,Aug21(Reuters)-British gilt and rate futures extendes gains on Tuesday after the Bank of England said it had lent money via its resort standing facility for the first time in more than a month.』

えーっとpenalty rateですかresort standing facilityですかそうですかということで、まあいずこの国でも話は同じなのかなあという感じでありますけれども、、中々難しいもんですなあというのを感じた次第でございますです。だからこれはあくまでも政策金利のコリドアを形成するものであってペナルティーではない(ないとまで言い切ると少々アレでございますが・・・)という認識を如何にして広めるのかは今後の中央銀行業界(?)の課題なんでしょうかねえ。

#本日もまた雑談で勘弁でございました








2007/08/21

お題「相変わらず短い所の話ですが」

長期ゾーンのイールドカーブが毎日物凄く動いているのですけれども、物凄すぎて正直良くワカランチ会長。

○レポとオペが妙に高いのですが

昨日もまたまた日銀の資金供給オペは気持ちよく実施されておりまして、即日オペ実施で当座預金残高は10兆円になるわスポットスタートの現先オペに共通担保オペが打たれるわとせっせと供給状態。しかしオペ結果の方はと申しますと、即日オペのオーバーナイト物のレートが0.64%の按分という何ですかそのレートはという高さで、1週間程度の期間で打たれた買現先レートも0.634%/0.62%と前日比若干上昇するわ、1か月の共通担保も0.642%/0.64%とこちらも利上げ懸念無いくせに確りのレート。

んでまあこちらのレートが高いこともありまして、GCレポ取引も高止まりの巻となっておりまして、昨日は0.7%台での取引だったらしく、こりゃまたどうしたもんよという感じでありまする。そしてタチの悪い事に、オペやらGCのレートは高いというのにTB/FBのレートは相変わらずでして、昨日の日本相互証券の引けベースではレート若干上昇したものの、先週発行の新発3か月FB468回で0.690%とどこからどう見ましてもGCから逆鞘です。本当にカムサハムニダ。

ま、3か月間この有様が続くわきゃあねえ(というか積みが進捗してくりゃどう考えても低下するっしょ)と思うので、逆鞘は逆鞘で一時的現象ではあると思うのですが、GC0.7%台という状況ですと半年以上のTB/FBも足元と変らんという有様でして、何たる国債選好状態としかもうしあげようがございませんですわな。ナムナム。

何がどうなって資金の出が悪くなってるのか微妙ではございますけど、まあ為替などを含めてドタバタと動きがあるので資金繰り読みにくいとか、国内で特に大きな地雷は無いにせよ、昨日も申しあげた疑心暗鬼モードがあったりとかまあ兎に角「読みにくい」の一言に尽きるのかなという感じです。多分積み後半を待たずして落ち着いてくるとは思うのですけどねえ。


○ディスカウント・ウィンドウについてちょっとだけ

公定歩合引き下げと共にNY連銀総裁とコーンFRB副議長が大手金融機関と電話会談を行って連銀貸出(ディスカウント・ウィンドウの事ね)の利用をしましょうとのお告げという報道がございましたが、18日6時7分配信のブルームバーグニュース記事を拝読致しますと、『クリアリング・ハウスの発表資料は、「二人は窓口貸し出しの活用を促すとともに、活用は力強さの表れだとの認識を示した」とした。』そうでございますが、何というか利用を躊躇わなくていいですよって言いたいのは判るのですが、「力強さの表れ」とはもう何と申しますか・・・・

ということで、その連銀貸出ですが、まあちゃんとみるべえと思いましてFRBのサイトをみたら、連銀貸出専用サイトがあるとは不勉強にも存じませんでしたすいませんすいません。
http://www.frbdiscountwindow.org/index.cfm


で、そちらのサイトを読みますと連銀貸出の仕組についてのドキュメントとか読めるのでありますが、何となくそういやちょっとだけどこかでレポートとか見て昔勉強したような気もしないでもないのですが、まあそこは追々勉強するといたしまして(こら)、上記URLの右側のテーブルにあります所のCollateral Margins Tableというのをクリック致しますとPDFその他のフォームで担保掛目を取得できますわな。例えば見やすそうなのですとこちらのPDFなんぞ如何でしょう。
http://www.frbdiscountwindow.org/discountmargins.pdf

こいつを拝読致しますと、結構いろんなものを担保にとってくれるようでして、表の一番下の方を見るとConsumer Loans-SubPrime Credit Card Receivables というのまでございますかそうですか。掛け目60%ですけど、疑心暗鬼モードになってファンディングがつかねえという状態になりますとちょっと変なもんはレポもつかねええええよとなるでしょうから、お助けモードとしては中々宜しいのではないでしょうか。

ただまあこちらのサイトをざっと見たのですけれども、今回の公定歩合引下げはFF対比で100bpあった貸出金利(本当はプライマリーとセカンダリーのレートがあるとかややこしいのですがそのあたりはちょっとネグらせてちょ)が50bpに下がりましたよ使いやすくなったでしょうという施策ではあるのですが、惜しくも担保基準の緩和は実施されていないようでございますな。

ま、別に連銀が購入してくれる訳ではないのですが、目先ファンディングが付くというのは時間稼ぎには役立ちますし、恐らく今は味噌も糞も一緒くたにファンディングつきませんよ状態になっているものと思料されるので、そのうち味噌のほうにはちゃんとレポ市場などで金が付くようになることでありましょう。そうなればちったあ落ち着くんジャマイカ。

ということで、今回はとりあえず「いまここに連銀貸出あるんだから使いなさいよ」という施策でございましたが、ブルームバーグニュースNYの山広さんのコラムの出だしは中々手厳しゅうございますわな。
http://www.bloomberg.co.jp/news/column.html
(多分暫くすると移動しちゃうと思うので後日リンクはりかえ予定)

『これまで、「弱さの象徴」だったものが、電話会議で突然「強さの象徴」と言われても、銀行関係者は面食らったはずだ。しかし、そこは、金融システムの維持という当局と共通の使命を持つ金融界首脳。「金融界の代表は非常に前向きに反応した」という声明が発表された。この時代がかった舞台装置は金融市場の混乱が続くなかで、連銀が一層窮地に追い込まれていることを図らずも示す結果になった。』

いやーあっはっはっは。

#まあしかしここでも言及されてますが『グリーンスパンのプット』ってのは中々香ばしいですな。「グリーンスパンなら、グリーンスパンならきっと何とかしてくれる」(AA略)ということで(^^)。


○格付けがコロコロ変る件について

えーっと時間がなくなってきたので簡単に、というか人のふんどしでございます(^^)。

最近勝手にふんどしをお借りしております厭債害債さんのところで格付けに
関する考察がございまして、誠に仰るとおりかと存じます。
http://ensaigaisai.at.webry.info/200708/article_12.html

で、この格付けといえばあたくしども少々歳を食った市場関係者が思い出すのはアジア通貨危機に際した格付け会社の物凄い勢いでの格付け変更。まあ外貨建て格付けだから通貨問題にある程度振り回されるのはやむを得ない面がございますが、この推移は中々香ばしいですなあということで、当時の皆様なつかしの銘柄、って今も元気な会社様の格付け推移でも。

韓国産業銀行(KDB)外貨建て長期銀行預金格付(Moody's)
(ちなみに本日現在の格付けはA2であります)
10/27/97 A2
11/27/97 Baa2
12/10/97 Ba2 Neg
12/21/97 B1
01/09/98 Caa1
12/18/98 Caa1 Pos
02/12/99 Ba2
ということでこの先の格上げも中々慌しいのですが以下割愛(^^)。

いやまあただの雑談なのでだからどうしたと言われると困りますが(^^)

#それから話変りますが、同じく害債さんのこのエントリーにも激しく同意。
http://ensaigaisai.at.webry.info/200708/article_13.html









2007/08/20

お題「信用収縮と申しますか」

○GCというより先日付のレートが上昇なのか

先週末は実に派手派手な相場でして、正直最後の方は見てて吐き気を催すような動きでありましたが、そんな中で超短い所の金利が何とも。

金曜は前日に引き続き即日オペ供給して積み上拡大してたり、スポットスタートの国債買現先オペに共通担保オペと供給はしてるのですが、GCレポレートはといえば引き続き高止まり、というか上昇傾向みたいでして、0.65%レベルから上昇して最後は0.70%台になったようでして、足元資金供給をしてもどうも下がりません(どころか上昇)なあという感じになっております。

要するにGCの資金出し手がろくすっぽ資金を出さなくなってきているというのでしょうけれども、GCだから出さないというよりは、何かあたくし思いまするに先日付スタートの資金繰りをいつもよりも思いっきり保守的にしているという動きが現れているのではないかと思うのであります。

具体的にどこどこがお危ないからそこに資金が出てきませんというのであれば逆に問題は局地的なのですが、現状だと「何か突発事態が起きると困るから手元流動性を確保しておきましょう」となってしまう次第ではないかと。クレジット物とか仕組物とかに色々チェックが入るような状況であればまあ仕方ないのかなあとは思いますし、どこから何が飛び出すのか良く判らんという状況であれば、今のところは(日本なんか関係ないはずなのだが)仕方ないかなあと思うのであります。結局のところ、全体的、というか世界的な信用収縮の状況が見えてくれば(今の問題はどこで何の問題が起きているのががさっぱり掴めていないことであり、具体的な病巣さえ判れば他の人たちには問題ありません)落ち着いてくると思うのですが・・・・・

しかしまあ何ですな、金曜の時事メインコラム「金融観測」(17時03分配信)で『疑心暗鬼の厄介なところは、根拠もなく疑われること。』と指摘されてましたが、こういう状況になってしまうと市場メカニズム経由での調節をしても効果が大して出てこないというのが問題なのですわな。量を出したり金利を下げれば済むという問題ではない(市場に任せておくと肝心の所には回らない)のが信用収縮のオソロシイところだというのは幸か不幸か日本の皆様学習済みでございますが、向こうの中央銀行はさてどう出る?


○FEDの公定歩合引下げ

散々報道されておりますので皆様ご存知の通り。
http://www.federalreserve.gov/boarddocs/press/monetary/2007/20070817/default.htm

『Financial market conditions have deteriorated, and tighter credit conditions and increased uncertainty have the potential to restrain economic growth going forward.』

さようでございますな。

『In these circumstances, although recent data suggest that the economy has continued to expand at a moderate pace, the Federal Open Market Committee judges that the downside risks to growth have increased appreciably.』

ということで、経済のダウンサイドリスクに言及してるのですが、前の所から繋げて読みますと、金融市場の混乱が収まればダウンサイドリスクもございませんわなあという風に言ってるようにも見えるのでありまして。まあ微妙な表現ですわな。

実際にはFF下げてないので要するに日本でいうロンバート金利の引下げに過ぎないのでありまして、これだけでの経済的効果は大したことはない(そもそも連銀貸出はあんまり使われたがらないようですし)ですが、「緊急会議を実施」して「経済のダウンサイドリスクに対する懸念に言及」したというのがインパクトとして大きい訳でして、そーゆー点では「見せ方」がお上手ですなあという所ではあります。

で、できるだけこの措置を有効にする為にということで連銀貸出を使いましょうってお話も出ているわけでして(^^)、あたくしも不勉強で連銀貸出の適格担保基準存じませんのですが(おい)(追記:皆様ご教示ありがとうございます。こちらに詳しくはございますです、はい)これによって市場でファンディングがつき難くなってしまったモノに関してそこそこ勘弁できる金利(こうなりゃFF+0.5%で金取れれば御の字でしょ)で金取れれば助かる人も増えそうですな。適格基準がキツかったらあまり関係ないですけど。。。。

まー話は難しい所ですけど、先ほども申しあげましたように信用収縮に伴う流動性問題というのは金利下げてマーケットメカニズムに任せたからと言ってどうなるものでもない(日本でもインターバンクの事実上の保証と政府による救済姿勢への転換が決め手になったのですな)ので、まずは開示によって問題の所在を明らかにすることと、その問題が余計な所まで拡散しないようにプルーデンス的方策を打つというのが本筋でありまして、まあ利下げだの何だのというのはそのための時間稼ぎ効果しかねえと思うのでありますが(別のバブルを発生させて問題を先送りするのは、その次に発生する問題が更に凶悪になるだけなので論外)。


○そういえばこんなのありましたな

さっきちょっと言及した時事メインコラム「金融観測」の金曜日17時03分配信の記事ですが、記事のお題は『世界を救う秘密兵器は・・・=今こそ使える日銀ABCPオペ?』というモノでして、確かにこれは究極のアナウンスメント効果(^^)。

鳴り物入りで始まったABCPオペですが、信用不安の解消と量的緩和によるゼロ金利によって日本ではABCPが相対的な運用商品となってしまったのでオペやっても応札がろくすっぽなく、暫く前にお蔵入りになってのでありますが、今こそABCPオペの再開の検討を指示とでも政策決定会合でやれば、勘違いしたおガイジンさまが涙を流して喜ぶのではないかと存じます。日本のABCPと海外のABCPだとモノが大分違うので、一緒くたにすること自体が話として大間違いのコンコンチキなのであります(日本のABCPの裏付け資産は海外対比物凄い勢いで真っ当と思われます)ので、日本で実施したからどうなのよというのがありますが、まあそれはそれでありますよ(^^)。

そちらの記事のまとめですが、ABCPオペがもしかしたら世界を救うかもしれないという指摘をして、最後に『金融政策ではなく、オペで世界を見返すところが日銀らしい。』で結んでいるのですけれども(^^)、金融政策にはプルーデンスというモノもあり、危機対応という意味でのプルーデンスの優秀さはもっと評価されるべきではないかと思うのであります。

ところでもうひとつの究極兵器といえばセンター担保(以下敢えて自主規制^^)。









2007/08/17

お題「いやはや何とも」

ロンドン時間で為替がぶっ飛んでいる時にブルームバーグのクロスカレンシーマトリックス画面見てたんですが、これだけ画面がチカチカするのは久々に見たですよ。引き入られるように見入ってしまったです・・・

ということで、物事をゆっくり考える余裕は無いので雑談でご勘弁ありたいと思うのであります。


○カテゴリーごとに動きが違って何が何やら(短期のメモ)

昨日の短期市場ですが、コールは朝からビット確りで、打つのか打たないのかどうなのかと思ってた即日オペは実施の巻となりましたが、こっちの落札レートが平均0.580%に足切り0.56%と結構高い感じ。結局この日は終日ビットが確りでコールの加重平均は0.535%(まあ別に目を剥くほど高いわけではないが)でした。

で、レポの方は国債現先オペが0.62%足切り(平均0.623%)ということで0.6%台前半に落ち着いたと思ったら時間が遅くなってからまた上昇して0.6%台後半になったようで、このあたりは妙にレート確りと。

一方で8月利上げに関しては(毎度お馴染みの著名海外レポートで8月利上げありうべしというどう見ても暑さで頭に来てしまったとしか思えない記事が債券市場の一部では話題になってましたが)短期市場の人で真剣に利上げありと思う向きはいませんということで、TB/FBは強いという有様で解くに9月償還までの期内物はついこの前までモノが出ててゲロゲロだったのが嘘の様にモノなし状態で、FBの利回りが足元のGCや日銀のオペレートよりも低いという素晴らしい人気振りのようですわな。うーむ。

一番右往左往しないCP(何故なら購入する人が基本的に持ちきり前提であり、現先などの商品在庫としてのディーリングポジションはありますが、相場の上下を取りに逝く意味でのポジションを取る人が居ないから動きが派手にならない)はFBレートの上昇(3か月FBで月初から目の子で8bpくらい上昇して4bp戻った所)にもまあやや(目の子で4bpくらい)レート上って只今ちょっと戻ってきてるという感じですか。まあCPに関してはこの状況では持つ側にどうしても「調達コスト」が意識されてしまうので仕方ないかなあという感じです。

ということで、正直短期の商品カテゴリーごとに何が何やら独自の動きをかましているという感じでありまして、もうワケワカランよパトラッシュと逝った所でございますが、てめえの備忘も兼ねてメモメモなのであります。


従いまして、コールが何となく上昇しているのを見て「8月利上げを警戒して準備預金を早めに積む動きがあるのでは」とか講釈するのは間違いもいいところ(とか言って本当にその気で積んでいたらゴメンナサイですが、そういうアホウは可及的速やかに退場すべきではないかと存じます)ですので、間違い後講釈に騙されないように注意しましょう。というか一番間違えられると困るのは政策委員k(ry



○非不胎化介入をすると金利がゼロ近くまで低下するという実例

最近この話あまり聞かなくなったので世の中ご理解も進んだのかなと思うのですが、「短期金利の誘導操作と非不胎化介入は両立しないんですが」というお話がかつては短期市場の中の人以外に中々ご理解いただけなかったという記憶がございます。

でですな、今般の積み最終日騒動をご覧頂きますとご理解頂けたかと存じますが、積み最終日近くに超過準備だらけで準備預金の積み終了先が続出した場合と言うのは、火曜日のコール市場に見られますように金利が大幅に下がるわけですわな。火曜だって売出手形でせっせと吸収しても加重平均0.235%と。

従いまして、中央銀行が準備預金所要額を大きく上回る資金余剰を放置することをコミットした場合には「積み最終を前にして所要準備がゼロになるから金利下がるでしょ」→「そんならその前も金利が低くて然るべき」ということになりまして(ちょっと切り方がざっくりなのは勘弁)短期金利の誘導目標金利の設定と矛盾することになるんですわな。

大昔にこの周囲の論点でエライ人たちが論争になってたような気がしますが、今回は期せずして良い実例が出たというものであります(^^)。非不胎化するなら利下げしたほうが判りやすいってことですわな。

#まあそれ以前の問題として、現在の日本の制度では外為特会が他通貨買いしたらFBが発行されて市中公募されるので、純粋な意味での非不胎化は起こりえないですけど、それはまあケンチャナヨ

量的緩和時代に後付けとして為替介入額に見合うだけの当座預金残高引き上げが行われていましたが、あれはゼロ金利だから技術的に可能だった訳でして、超過準備放置して政策金利誘導をするのは(ゼロ以外では)技術的に困難ということで一つよろしくお願いしますですぅ(誰に?)。


○来週は決定会合でしたなあ

昨日の引け後には米債2年は飛ぶわ、為替は飛ぶわとなっておりまして、午後6時の時点で2年カレントは0.83%まで金利低下し、とうとう4月中旬まで戻ってしまいましたよ我々のこの4か月は何だったんですか(苦笑)と逝った所でございます。

まあ何ですな、トドメのように為替がぶっ飛びやがりまして、こりゃまあどこをどう叩いても利上げ強行するのは無理難題(しかし適正水準というものが一番判りにくい外国為替というのはいつも動きが豪快ですな)というものです。というかここでやったらどう見ても暑さでアタマに来てしまったとしか思えません。頼むから大人しくしててくださいお願いします。

・・・とまあそれはそれとして、今回注目するのは、金融経済月報などで米国発の信用収縮という金融問題と、為替、株式市場に関してどのような言及があるのかという事と、もっと判り易いのは決定会合での票決がどうなるのか(というか水野審議委員は今回も利上げを提案するのか)と逝ったところでしょうか。

一応当たらない予想をしておくと、市場の急変に関しては「一時的なものなのか今後実体経済に影響を与えるのか注視する必要がある」程度で済ませて利上げ無し思惑に一定の牽制をする感じで、水野さんは利上げ今回も提案(フォワードルッキングでの利上げだから)するような気がするんですがどうでしょうかね。据え置き反対票が増えるとそれはちとビビルが。

一旦利上げ提案が0になってしまうと「こりゃ9月も利上げ無しですなあ」となるかなと思います。2年ゾーンなんぞ見てると既にこの相場付きは9月どころか利上げペースが3か月以上後寄せになるような価格形成となっておりまして、それもちとどうなのよとは思うのですけれども、思惑は生みやすかろうという感じでございます。

ま、しかし7月利上げしてなくて良かったねという所で福井さんの悪運(失礼)の強さにホトホト感心。


#何かもうちょっと書こうかと思ったのですが、暑いのでじゃなくて時間がちと無くなったのでこの辺で勘弁。









2007/08/16

お題「またまたええもん見せてもらいました」

と申しますか、疲れる積み最終日でありましたが(^^)。

○売出手形即日の足切りが高ええええ

昨日はご案内の通り積み最終日にしてスーパー積み上となっておりましたので、朝からコールは0.2%台にさっくり低下しておりまして、当然の如く15000億円の売出手形即日吸収が9時20分にオファー。で、その結果を見たらもうなんちゅうか腰が砕けてしまったのですが、平均落札0.501%はいいとして按分レートが0.75%ってあーたそれは何よという感じで。

でまあ応札のほうも19000億円弱となってまして、参加者の皆様が全員トンの資金繰りやってたら札がそんなに少ない訳はないと思われる(目の子で3兆ちょっとになる筈)ので、き資金繰りのマージンを相当多く持っていた大手銀行さんがいて、そのお人が(単数か複数か知らんが)応札しなかったという事でしょう。しかし0.75%に応札するとは相変わらずいい感じで楽しんでますなあどっかの誰かさん(^^)。

ということで、この落札結果出た瞬間は0.50%台の出合いもあったコールですが、結局そんなもんは瞬間の話だったようで、その後もコールは低かったようなのですが、12時50分の即日手形売出(ちなみに朝のは3時同時処理で昼のは5時同時処理)5000億円は平均0.687%の足切り0.74%とこちらも高かったようです。

まあそりゃそれで現象としては理解致しますのでありますが、同日公表の無担保コール翌日物取引に関する公表を見ますと平均0.330%で最高利回りが0.550%の最低利回りが0.070%ということでして、コールよりも激しく高い売出手形のレートというのは、日銀のオペ先で札入れた人はウハウハでありますが、そうじゃない人にはどうも釈然としませんなあという感想が少々。積み最終日で超過準備を抱えた人がいたという特殊要因の下ではありますけどね。

ちとここから先の話は微妙ではございますが、売出手形打ったからコールの加重平均が0.33%と昨日よりマシなレートになったというのはあるかも知れないですけど、そもそも論として売出手形の応札を正直に上のほうまで落札させないで、適当な所で札切ったらどうなのよという気もちょっとしたんですけど、じゃあその判断はどういう風にするのかと言われると難しいのかもしれませんね。旧法時代の金融調節を色々と楽しませてもとい経験させて頂いておりますあたくしと致しましては、別に「このレートは不適切と判断したので(要するにケシカランので^^)札は切ります」というのがあっても別に構わんと思うのですが、頭がアナクロですかそうですか(^^)。

しかしまあ売出手形の0.75%だの0.74%だのというのは中々楽しいエンターテイメントでありましたことよという所ですが、資金繰りバッファー持ち過ぎの人がいたのが原因という希ガス。。。



○でもトムやスポットは高いのよね

と、コールレートが絶賛低下する中で次の積み期間にかかる金利は昨日も絶賛上昇というこれまた面妖な展開。朝からトモネが0.65%を超える水準で推移してたりという動きだったようですが、午後に実施された共通担保本店オペは10月29日エンド(17日スタート)の2か月もので平均0.720%の足切り0.71%とこちらはFB並みのレートなんざますが、9月利上げだと思って計算してもちと高いというレートになりますわな(ただし足元を幾らで置くのかが難しいので一概に割り切れないのですけれどもね)。ということで足元がちと高いというお話になる訳で。

このオペ結果も影響したのかどうか知らんけど、レポGCレートは0.70%に乗っかってしまうという結構なレートでございまして、8月利上げを警戒しているとは思えないのですが、何でこう資金の出が悪いのよいう感じです。まあ勝手に類推するに、ここもとの海外信用収縮(と言ってもこっちはそんな動き無くてただの対岸の火事の筈なんですが)を受けて資金繰りが保守的になった結果、当日になるまでは資金の運用に慎重になっている人たち(というかレポの資金出し手ですな)が多いですということなのでしょうか。それにしてもあまりと言えばあまりのこの違い。裁定はたらかねえのかよおおおおと存じますが。

短期の運用が慎重になっているのならFBはどうなのよと申しますと、昨日の新発3か月FB入札は入札時点ではちょっと押して平均落札で0.739%の足切りで0.745%となりましたが、こちらは買い優勢でございまして引けは0.715%ってあーた買入手形よりレート低いじゃあーりませんかということでございます。こっちはまあ確りな訳でして、要するにちょっとだけ先渡のところだけ妙に金が出てこないというワケワカラン状況なんですな。何のこっちゃという感じですが、GCレポで資金を積極的に出す人と、FBやらCPやらを買う人は別の理屈で動いているということでございましょうなあといったところです。

CPに関してはお盆モードかつ月の真ん中で閑散時期にあたりますが、まあレート的には長めの所で気持ち低下して、短い所はGCレポレートなどがサガランチ会長なのを反映してあんまり下がらないというか気持ち程度強含み横ばいという感じでしょうか。



○暑いので(?)その他は雑談小ネタで勘弁

・しかしまあ良く戻ってきましたなあという感じで

引けでとうとう5年1.2%で2年0.9%でございますが、似たような水準っていつでしたっけと思うと、機械受注が下ブレして1QGDPが予想通りなるも弱めの結果になった5月17日が5年63回引けが1.200%とか帳面に書いてあります。この頃は米債も平和で10年米国債が4.7%とかでございましたわな。

この日の2年256回の引けが0.855%で10年285回の引けが1.620%、20年94回の引けが2.060%で30年26回の引けが2.270%でございました。引け値だけ単純比較するのは少々雑なのですがケンチャナヨということで昨日の引けと比較すると30年の引けがイマイチ追い着いてませんが、他はまずます。2年はさすがに一応利上げに敬意を表してちょっと高くてもいいでしょ。

ということで、要するに米国のインフレ懸念だの何だので米債が5%台を突破した6月の香ばしい相場が全部無かったことになったと思えば腹も立たん(何に?)ということでございましょうか。この2か月は何だったのよと言いたくなりますが(^^)、それもまたいつものことなのでしょう。


・8月利上げは無いとして・・・・

やはり8月利上げは鬼門でしたということがまさにここもとの動きで出てまいりましたが、どこをどう考えても来週の利上げは無理ということで、それでは注目するのは何かと言いますと、利上げ提案が出るかとか利上げ賛成票が出るか位のところですな。フォワードルッキングだけど目先不透明感があるのでという理屈で今回は堂々見送りとしても、それはそれこれはこれという利上げ論がどのくらい出てくるのか注目したいです。

どうせなら決定会合の結果公表分の中で「利上げしたいのですが米国住宅ローン関連商品市場の混乱があるので今回は様子見」というのが出てくると香ばしいのですが、それは縁起が宜しくないですかそうですか(^^)。

あたくしの勝手かつ根拠レスな予想は、ECBが利上げすると思われる9月に利上げをぶつけるか、その利上げ後の動きを見てから10月に利上げをぶつけるかというものですが、その頃には一応「いやまあそうは言いましても日本はあまり関係ないですしぃ」となって世の中落ち着いているというのが前提、というか無理しなくて宜しいのではないかと存じますので、何卒一つ慎重なご対応をお願いいたしたく。

#いやあしかし室内にいても熱中症になりそうですね、今日の東京は








2007/08/15

お題「ここもとの資金供給に関するちょっとした考察2つ」

企業年金基金連合会が不動産投資という報道にガクガクブルブル。

○即日吸収はテクニカルな問題(BOJ編)

昨日のコール市場ですが、先週末からの日銀による足元資金供給攻撃によりまして準備預金の積みが豪快に進捗しまして、朝8時の準備預金予想公表時点で準備預金62000億円とのお告げ。残り所要の1日当たり金額が27300億円で積み終了先の前日残高を足しても31800億円ですので、概ね積み上3兆円ということになりました。もう国内大手銀行さんなんぞ朝から金イラネでノービット状態。

で、0.40あたりからスタートした無担保コール翌日物はあっという間に0.3%台に低下して9時20分の調節タイムを迎えたのですが、即日吸収(翌日エンド物)が6000億円で、引いても積み上24000億円ですかそうですかということでレート益々下がるの巻。オペ結果の方も平均0.183%と0.2%を切る有様(足切りは0.22%で応札は22800億円)となりましてまあ低い低い。

12時50分になってもう一発即日吸収を1兆円行いまして、こちらは芸が細かいことに(というかそうしないと後で申しあげますが明日のオペに超負担がかかるので当然なんですが)16日エンドと2日物。こっちは平均は0.403%と上昇したものの相変わらずレートでありましたが、足切りは0.52%まで流れたのでまあマシですな。その結果を受けて瞬間コールも強くなりかけたのですが、やはり金余り恐るべしということで、最後は0.01%までやらかしていたようです。結局加重平均金利は0.235%でありまして、今般のECBの派手派手指値オペに端を発した資金供給合戦(笑)で結果的に最も緩和的な対応になっているのは日銀であるというのは奥が深い(^^)。

まあ何ですな、結果としては月曜の即日供給が余計だったという見方もあるのですが、金曜時点でGCレポ取引が瞬間0.70%の気配まで金利が上昇しておりまして、足元の金利とスポットのレポ金利の間に乖離がありまして、月曜の朝の時点でもスポットの現先レートなどが一部で高止まりしてたという状態でありましたので、あの資金供給は即日スタートのターム物(翌日物だったら意味なかったけど)供給という意味はあったとあたしゃ思います(スポットスタートだけ打っておけば良かったとも結果から逆算するといえますけど)。

昨日の朝のコールの状況はちと極端。というか、GCレポ金利の方は0.6%前半で推移しておりまして、足元金利は低いの何のという状態でして、確かに積み期間が16日から変るというギャップはあるのですが、そもそも8月利上げがあると思っている現場労務者は100人中0人であると思料される状況で何でそうGC出しを抑えるのかなあと、この市場の不思議ぶりに感心するやら呆れるやら。



ということでですな、昨日の9時20分の即日吸収というのはコールと準備預金状況をちゃんと見てれば打って然るべきというか頼むから打って下さいませ状態であったのでありますが、そのオペレーションについて金融市場局の担当者のコメントが一々ベンダーに出るというのは何のこっちゃという感じでありました。まあ情報ベンダーが揃って取材したんだと思いますが、答える方ももうちょっと詳しく「今日吸収しないと準備預金の進捗が進みすぎて明日の調節に技術的支障を来たす」という説明をしたほうが判りやすかったんジャマイカと。

などと思ったらどこぞの情報ベンダーの市場解説ニュースでどこぞのエコノミスト様かつ世間的には著名BOJウオッチャーということになっているお人のコメントとして、今日の資金吸収は少し驚き云々というのがあったのには落涙を禁じ得ませんでした。おまい市場動向見ないでオペに関する論評するなよと小一時間(苦笑)。

まあそれは余談ですが、昨日も結局は所謂積み上状態で終了しておりますので、昨日の準備預金39600億円(うち積み未了先残高32700億円)に対して、本日の所要準備が20600億円となっておりますので、所要準備に積み終了先分を足した24500億円(便宜的に計算してますけど、積み最終日ってもうちょっと精緻に計算した方が良い希ガス)に対して既にこの時点で積み上モード。本日は年金定時払いの関係で財政が払い超でオペ含めても14300億円の余剰ですが、財政払い超のうち「その他」(要するに郵政公社)に回る分がいくらなのかこちらでは良く判らんので最終的には8時の発表を待つという話になりますが、どう考えても今日もまた資金吸収が必要になるのでしょう。

それでですな、今日も資金吸収すると見た目は2日連続で資金吸収してますよこりゃ日銀協調性ありませんなあとかイチャモンをつけて来る人が出て来そうな気がするので申しあげますと、本日吸収するのは全く他意なく(というか昨日も他意ないですが)純粋にテクニカルな問題でございますので、勘違いして「すわ日銀利上げ準備」とか「日銀は世界の資金供給に背を向けてケシカラン」とか言い出して風雪のルルにならないようにご注意ありたいものです(^^)。

そういや昨日は引け後に妙に金先が売られてたのですが、まさか昨日の吸収を何か勘違いしたおガイジン様が売っているのであったらかなり香ばしいお話ではあります。まあおガイジン様におかれましては今後とも日銀の金融政策に対する不勉強と誤解を元にピントのずれた商内を続けて頂きまして、おガイジン様の虎の子を日本に落として逝って下さりますと甚だ幸いでございます(^^)。

更に余談ですが、おガイジン様云々に関しては丁度昨日の引け後にロイターニュースで「ユーロの下落はサンタンデール銀行(BSCH)が米国クレジット市場に大きな額(幾らだか忘れました、汗)のエクスポージャーがあるとのスペイン紙の報道から」というのを見て(ちなみにブルームバーグではドイツのGDPが市場予想より弱かったからという講釈に。オモシロイデスネ^^)、ネットでスペインの新聞をいくつか探したのですが、そこの経済ニュース欄見たら「日銀が巨額資金吸収」というのを(共同通信ニュースの転電みたいでしたがスペイン語はよく判らないので勘弁)デカデカと報じてまして、「なるほどこうやって勘違いする人が出てくるんだろうなあ」と変に感心しちゃいましたとさ(^^)。



○スタンディング・ファシリティは何のために(ECB編)

昨日もECBはオペ打ちましたが額が77億ユーロで足切りが4.09%となっておりました。まあそれは良いのですが木曜の指値オペってありゃ何だったのとつらつら考えますと、ロンバートの存在意義に関わる論点もございましたなあというお話もある訳で。

ここで復習を兼ねて便利なものをご紹介しますと去年の6月に出た『主要国の中央銀行における金融調節の枠組み』という奴でして→http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research/ron0606c.htm

上記URL先にPDFファイルのリンクがありまして、金融政策がどうのこうのというお話をする人必読であろうかと思いますと1年前にもお話したので既にご覧になっているお方も多かろうと存じますが。

でね、PDFの方の13ページ目からスタンディング・ファシリティの説明がございますので引用させていただきたく。

『マクロ的な資金過不足が適切にコントロールされていれば、個々の民間金融機関における資金過不足は、基本的に、金融市場を通じた資金の相互融通により調整される。しかし、現実には、様々な制約から必ずしもこうした調整が円滑に行われず、民間金融機関が資金を調達(運用)するために借入(貸付)金利を大幅に引き上げ(下げ)ざるを得ない状況に陥り、短期の市場金利が金融調節上の誘導目標から大幅に乖離する事態が起こり得る。』

今回の騒動のようなケースもそうでございますな。

『このため、各中央銀行では、オペによる金融調節を補完し、短期の市場金利を安定化させる仕組みとして、中央銀行が民間金融機関からの申込みを受け、ごく短期間、予め定められた金利により受動的に資金貸付けもしくは預金受入れを行う制度を設けており、これをスタンディング・ファシリティと呼んでいる。日本および米国では、貸付ファシリティのみを設けている一方、ユーロエリアおよび英国は、貸付ファシリティと預金ファシリティの双方を設けている。』

ECBのサイトを見れば書いてありますが、ECBの場合は貸付ファシリティ金利が「Marginal lending facility」の5.00%で誘導金利が「Main refinancing operations Minimun bid rate」の4.00%で預金ファシリティが「Deposit facility」の3.00%という事でして、適格担保さえ持っていれば1%余計に金利を払えば制限なく資金調達が可能なのでありますわな(日本の貸付ファシリティは補完貸付制度。ユーロに預金ファシリティがあるのは準備預金の所要額が大きいので金融機関の資金コストを軽減するためだと記憶してます)。

然るに先週木曜のECBのオペレーションというのは、オペを指値で4.00%で実行するというものでありまして、要するに何をやっているのかといえば、貸付ファシリティの金利を瞬間的に引き下げましたというお話。まあそれはそれで良いのかも知れませんけど、冷静に考えて見ますと、貸付ファシリティの金利は「何かあった時に短期市場金利のキャップになるもの」として設定した筈ですので、その肝心の「何かあった時」に貸付ファシリティ金利を無視して指値オペを実施したら何の為に貸付ファシリティ金利を設定したのか意味が良く判りませんなあというお話でございます。オペにしたって貸付ファシリティにしたって適格担保必要なのは同じでして、貸付ファシリティ使えば無制限で金は出てくるんですからね。


このインプリケーションなのですが、実は欧米での誘導目標金利と貸付ファシリティの金利差でありますところの1%というのは実はでかすぎなのではないかという論点にも繋がるのではないかと思うのであります。「何かあったとき」に折角用意してある貸付ファシリティの存在が無いかの如きオペレーションを打ち込んだECBはやっぱちょっと慌て者のうっかり八兵衛だったんジャマイカと思うのでありますがね。9.11の時みたいに明らかに決済リスクがある(大手決済機関の入ってるビルがアレでございましたから)状況なら兎も角、何かまあちょっと取りあがってる人が居ますなあ位の状態でいきなり大見得切ってご登場して却って資金の抱え込みを煽る結果になる(先日ご紹介した本石町日記さんのブログ紹介で現場の人たちの見解が沢山読めますな)わ、貸付ファシリティの存在意義は何なのという話になるわと、ネタとしてはオモロイECBのプレイでしたが、ちょっと撃たずもがなの無駄玉撃った印象がございますですな。

ちと話が逸れましたが、今回のECBの指値オペ打ち込み攻撃は貸付ファシリティの存在意義って何なのよとか、貸付ファシリティの金利設定が広いのが良いことなのかとか、色々と論点を与えてくれるECBの対応でありました。

#何かトリシェがFEDの真似して声明みたいなの出してるみたいでございますが、その点については今日はパス。





2007/08/14

お題「昨日の相場を見ながらつらつらと雑感的雑談あるいは悪態」

○さすがにキャッシュ化一服(か?)

昨日の債券市場では5年30年で6毛という強烈なツイストスティープ相場になるわ、その割に15年変動国債の引けは前日比安くなるわとワケワカラン相場でございましたが、あちこちでアンワインドの動きが起きているということなんでしょうかねえとしか感想は無いということで、要するに何が起きちょるのかワカランチ会長。ポジション閉じ攻撃の流れ続くというのであればまだ色々と信用収縮の影響は続くの巻というところでありましょうか。

より短いところですが、金曜に一部で散見されたフライト・トゥー・キャッシュもどき(言い切るとちと大袈裟なのでもどきね)の雰囲気も一服しまして、金曜日に前日比甘くなっていたFBの期内物とかのレートも何となく小じっかりのようです。引け値を並べてみると期末越えの所に若干のプレミアムが付くのですが、基本的に短期国債のイールドカーブはフラットになるの図ということで、まあ先月末から見ればベアフラットと言ったところでしょう。GCレートは0.64%くらいということで前日比若干の低下ですが、こちらはまだ高めですな。

そうは言いましても、月曜相場らしく別に売買が活発だった訳では無いので、ここから売りでも買いでも何か大口が来たらまた動意付いてくるのでしょうな。カレンダーベースで次の積み期間になるとちょっと変るかも知れませんな。

ただまあ国債と比べて一般債やCPに関してはまだ威勢良く戻るという訳にも行かないようで、国債対比ファンディングコストが高く付く分だけこういう時には業者が在庫として持つのが重くなる(まあこの程度では屁のようなもんでしょうが)次第でありますので、戻り局面ではスプレッドが開くかなという感じです。

CPとか短い一般債に関しての救いは2年ゾーンの金利がやたら低下していることでして、足元から1年とかの金利を一番真面目にヲチしておりますと如何にも割高に見えてしまうのが2年ゾーンなのであります(が、もうちょっと目線が長めの人からすると話は別)よって、2年国債と対比して見ると1年とか6か月がお買い得に見えるという所でしょう。

#しかしいくら8月利上げ無しだからと言っても2年0.925%ってちょっとそれはどうよという気がするのですが・・・・・


○芸の細かいオペ

昨日の日銀は本店即日オペと国債買現先。即日オペは金額こそ6000億円と減額となりましたが、そもそも積み最終が近くて積みが金曜の1兆円で威勢良く進捗しましたので、オペ前日比減額でも効果的には十分な所へ加えまして、今回のオペは珍しくオーバーナイト物ではなくて1週間物という期間でして、目先数日の資金を確保しておくと安心という人にはお勧めのオペでした。

で、その後に国債買現先を打ち込みまして、こちらは15日スタートの1週間ということで、目先のGCレートや現先レートの上昇に困る人には丁度良い(ただし8月利上げあるという可能性を100%否定できないので若干入れにくいかも)オペでしたわな。即日オペの方は兎も角、こっちの現先は足切りが0.61%となりまして、妥当と言えば妥当なのですが、案外低いところで決着しましたなあ(本当に必要だったら0.65%からご相談だと思ったんで)という感じで、先ほど申しあげましたレートの落ち着きに寄与したのではと思料されるところでございます。

ま、こういうの見てると、日銀の調節のマニアックさというのは地味ではありますが実に有効だということで(^^)。




○海外はとりあえず資金供給で安心感でよかったですねえ

ECBは月曜もオペ実行ということで、一応市場後講釈的には「資金供給によって安心感が広がった」ということになっているようで誠に結構でございます。

でもまあ冷静に考えて見ますと、オペそのものはオペ適格担保が必要なわけでありまして、今回問題になっている金融工学を駆使した商品群(笑)にファンディングがついている訳ではない(筈なのですがどうでしょう)訳でして、無駄な取り上がりによって発生する無意味な金利上昇には対処できておりますけれども、別に物事の本質でありますところの本尊の問題は1ミリも解決していない訳でありまして、そりゃまあこの措置自体は必要不可欠ですが、それを持っていきなり大安心という講釈は如何なものかという所であります。

まあ確かに目先の流動性問題をクリアしてしまえば、塩漬け攻撃によって時間が物事を解決するという事は言える訳でありまして、中央銀行としてはそのための時間稼ぎをすることはできますので今回はそういう措置を取りましたってえことなのでありますけれども、まあ安心感が出るのは結構な事です。

何せどこぞの国に置かれましては、金融緩和しようと資金供給しようと、肝心の監督当局がシバキアゲモードあるいは動かんモードになっていたので、流動性は何とかなっても信用不安は何ともならんという時代がございまして、それを見てたクチと致しましては、毛唐どもがいきなり「時価算出の停止」だの「解約受付停止」だのと抜かしますと、日本の金融機関に対して好き放題やってたお前らのその口が言うかと実に香ばしいものを感じる次第でして(いつの間にか話が逸れましたが^^)、結局の所こ〜ゆ〜時にはLTCMの時もそうですが、「一度瞬間凍結」というのが一番即物的かつ実践的解決法でありましょうなあと思うのであります。「瞬間凍結」って何じゃいとなりますが、要するに「時価会計凍結」「含み損開示凍結」でございますな、ハーコリャコリャ(^^)。


○暑さに頭がやられてるのでその他悪態を少々

・米国市場のび太論

サブプライムサブプライムと騒ぐ割には良く見りゃ平均株価とか全然下がってない米国市場でございますが、何かこう情報ベンダーあたりで話が出てくる論調を拝見致しますと、てめえらは人に時価会計だの会計の透明性だのやかましい割には、こ〜ゆ〜時にはいきなり不透明炸裂ですなあというのは先ほども悪態申しあげた通りなのでありますが、FF先物とか見てると金利も引き下げろとご催促のようで誠に香ばしい。

というのを見ながら暑さにやられている頭が思うのですが、この政策対応クレクレ攻撃をみてると、「いざとなったらドラえもんが何とかしてくれる」と言ってるのび太君の姿が米国市場と重なる次第でありまして、サブプライム問題→対応のため米国利下げ→株に買い安心感って論理展開はどう見てものび太くんです。本当にカムサハムニダ。

まあ米国お得意のダブスタダブスタって奴でしょうけれども、本件は今後の頭の体操課題なのであります(^^)。


・クオンツは勝ち逃げが難しいなあと思う訳で

いわゆるクオンツ系のファンドがあちこちでバカンスシーズンと共に西方浄土に片道切符のバカンスにお出掛けの昨今でありますが、だいたいまあこの手の運用って統計的に過去の数字を取ってどうのこうのって話なんですが、5年に1回くらいの頻度で市場で碌でもない事が起きた時に血の池地獄送りになるというのは如何なものかと。

大体ですな、クオンツ運用様の理論によると「めったに起きない事が起きた」と言うとる割には5年に1回位のペースでこの手の騒ぎが起きるということは、こりゃどう見てもクオンツの限界部分ではないかと思う訳で、やはりどこかで定性的な人間様の判断で勝ち逃げをしないといかんのじゃないかと思うんですよね、とクオンツなどというものとは無縁の現場叩き上げの先任軍曹は存じますのであります。

#ま、定性的な判断を入れてしまうとクオンツじゃなくなるのですが

順張り系でも逆張り系でも良いのですが、そもそも対象資産の流動性が皆無になった場合にどうなるのかとかいう極めて定性的な人間様の勘や経験に依存するようなお話を判断に入れるのが難しい(というか市場の板に張り付いている人間じゃないと無理でしょ)というのがクオンツ様でございまして、基本的に平時の市場を前提にしている節がありますので、長期的に見るとどこかで必ず市場がグチャグチャになる時がありまして、そのときに逆ポジションを持っていると死亡というのが弱点ですわなというところでございます。

じゃあそんな大災厄的状況まで考えて統計分析しろとなると、恐らく取れるリスク量が小さくなりすぎて運用としてワークしないのでしょうかね。まあそれこそアジア通貨危機みたいな時とか古くはニクソンショックとかスターリン暴落とか(古過ぎ^^)今よりももっとトンデモないマーケットの急変は良くありましたからね。

ということで、暑さに頭がやられているせいで妙に悪態の多いあたくしでございました。








2007/08/13

お題「金曜日の相場レビュー(ただし短い所だけ)」

金曜の市場でありますが、てめえのポジションの損得は別に致しまして「久々にいいもん見せてもらいましたわ」というのが正直な所であります(苦笑)。


○まあさすがに今月はお見送りでござんしょうか

金曜の金融市場はご案内の通りの結果。まあ誰がどう考えても金曜にもし決定会合があったら100%利上げなしとしか言いようが無いですが、来週の水曜木曜までに市場が落ち着くかと言えば市場混乱の元ネタがこれからどう波及するのか不透明にも程があるという状況ですんで、それこそ先週の米国株式みたいに200ドル上ると思えば300ドル下がるというような不安定な状況は暫く続くでしょ。

それでですな、にわか予想屋さんとして8月利上げについて考えますと、今までの政策変更と違いまして今回は「スケジュール的に後が押してる」という状態ではない訳ですな。量的緩和解除の時は30兆円を引くのに掛かる期間、ゼロ金利解除の時はCPIの基準年改定、前回の利上げの時はコアCPIのゼロへの低下(その後マイナスに)ということで、「後になるとちょっといちゃもんつきそうな状況」があったのですが、まあ今回に関してはそういうネックは見当たらないということは、裏を返せば別に今月でなくてはならぬという事でもないという事ですな。だから別に8月に固執することもなかろうとは思いますが如何でしょ。

さすがにこんな所で変な意地張って利上げしてアメリカ発の信用収縮の原因だとか言いがかりつけられる結果を招くようなトンマな事はしないと思うのですけど・・・・・


ということで、金曜の即日オペ1兆円なんですが、ありゃもしかして金融市場局から政策委員会に向けた「シグナルオペ」だったんでしょうかねえ(^^)。


○流れたFB2か月入札

金曜日にちょっと注目と言ってたFB2か月物の入札でありますが、ご案内の通りの債券金先大暴騰相場でありましたが、超足元に関しましては案の定キャッシュ化の動きが一部にございまして、9月償還とかの短いFBに換金売りですかそれはという連想をしたくなるような豪快な売りが入札前からあったらしくて、そのあたりは何故か前日比レート上昇しやがるの巻。寄り前の朝イチには直前の3か月FB466回が業者間で3.5毛強の0.710%が出合っていたという状況下で手前の方は甘いという状況になった訳ですな。

そんな訳で、もともとが償還ロールじゃない純粋新発の2兆9千億円というのは中々厳しいものがありますなあという事で、入札は平均0.747%で足切りは何と0.771%となりました。まあ期末越え要因があるからこの時期2か月と3か月が逆イールドになっても良いのですけど、今回に関して言えば一応利上げ観測とかある中での価格形成になりますので、3か月の方が高くて然るべき所なんですけど、結果は今週の短期の入札の中で一番利回り高いの図。世の中ではエッサエッサと金利が低下している中での金利上昇ですからまあ目立ちますわなと思うのですが、惜しくもモノが2か月FBなだけに世間の注目は浴びませんでしたな。

んでまあさすがにもうちょっと長いところはレート低下してた(何せ2年は8.5毛強の0.940%ということで、後場は特に2年あたりの中期の中でも短いゾーンが上昇相場を引っ張るの巻でありましたから・・・)こともありまして、セカンダリーでは買いも入って来まして引けは0.715%と戻っておりましたが、日本相互証券の引け値ベースを見ましても8月9月償還物はこの市場環境下で前日比レート上昇ということで、見事に超短期ものだけレートが上昇するの巻と相成りました。ナムナム。


○GCレート大いに上昇

どっちが先かという話になりますと難しいのですが、既発FBにドカンと売りが出るような動きを反映致しまして(というかそもそも既発FBに売りが出たのは足元の資金を一応抱えておこうという動きの一環ではないかと思う)GCレートも上昇しまして、先ほど申しあげた期内ものFBレートだけ上昇の要因にもなった(まあ一連の現象ですのでどれがどれというのは無いのですけど)ということであります。

当然ながらこーゆー時には中々動きが起きないのでありまして、レポ市場の方はいつもよりも始動が遅かったようですが、15日スタートのGCが0.65%なんぞに上りやがりました。その後0.70%の気配とかまで逝きやがったらしいのですが、最後の最後には資金の出し手も出てきたようで0.70%と言った状態は解消されたようなのですけど、まあ随分上がりやがりましたなあという所です。そりゃFB451(8月27日償還)の日本相互証券引け値が0.650%になりますわなという所であります。

こちらはまあ8月利上げ観測が後退してるのですから、資金繰りに関して別にまあそこまで厚めに持っておくこともあんめえというようなメドが付けば資金の出し手も出てくるでしょうという事で、落ち着けば落ち着くでしょうけど・・・・


○資金供給雑考

毎度お馴染みの本石町日記さんですが、今回の一連の流れに関して最新の2本のエントリーはお勧め(というか1本目のリンク先はまだ全部読んでないですけど、汗)

http://hongokucho.exblog.jp/
市場混乱のBehind the Scenes=ブログ紹介も兼ねて
ECB緊急・無制限オペの考察

んでまあ、2本目の『ECB緊急・無制限オペの考察』に関しては確かにちょっとECBの対応が大袈裟すぎた感というのにあたくしも共感するのであります。上記エントリーより引用させていただきます。

『この点、ECBの15兆円オペは、不安がなんとなく漂う程度の状態でいきなり表舞台に出てきた感が強い。緊急オペでしかも無制限となると、「何か大変なことが起きている」という印象を与え、さほど問題を感じていなかった銀行も不安になって応札するから、巨額のオペになってしまったのではないか。そして、その巨額さが周辺市場に不安をもたらし、キャッシュ需要を高めた可能性もある。』

まあこのあたりの匙加減というのは難しい面もありまして、資金供給が中途半端だと金クレクレが殺到してレートが必要以上に上昇して水面下で金利上昇してますなあとこっそりやってたのが表面化して却って大騒ぎになるとかいうのもありまして、変にオペを打つことによって結果として煽りになることもございます。

で、金曜ですが、シンガポールとか韓国とかでは「必要なら出すけど別に出さないもんね〜」という姿勢でしたが、日銀はご案内のようにオペ実施。まあ協調性を出しておくとか、政策委員会に向けて8月利上げすんなコノヤローとかシグナルを出す(かどうか知らんが^^)とか、色々とオトナの事情があるのでしょうが、朝のコールで別にくだんのネームが金を取りに逝ってた訳でもなく(当たり前です)、国内銀行なんぞは落ち着き払ったものであったという状況で、果たして積み進捗し過ぎるような即日1兆円ってどうだったのかなあという感も拭えません。

世界協調資金供給→ということは不測の事態が起きるのかも→そんな状況でいつも通りの資金繰りするよりは保守的に逝こうではないか→世の中資金の抱え込みモードに・・・という図になるというのも一面では言える(朝から過激にガンガン取り上がる人がたくさんいたのなら兎も角)のでして、そもそも本件は国内金融機関には関係ない(無くはないけど精々蚊に食われた程度の話)ですので、そのうち資金繰りのメドというか見極め付いたら落ち着くでしょうと思うのですが。


ということで、ECBの今回の措置ですけど、本石町日記さんのところで議論されているように、ちょっと派手に動きすぎだったような気もする訳でして、雉も鳴かずば撃たれまいとは良く言ったものであります。

さてさて、余談になりますが「特に誰も不安を感じていないときに登場した中央銀行」という偉人伝がございました事を皆様覚えておられますでしょうか、それは2003年3月25日のことです。
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako03/k030325.htm

『こうした状況のもとで、今般、イラクに対する武力行使が開始された。日本銀行としては、今回の事態が株式市場や為替市場などを通じて経済全体にどのような影響を及ぼしていくか注視するとともに、潤沢な流動性の供給などを通じて、金融市場の安定確保に万全を期す方針である(別添参照)。こうした方針のもと、補完貸付制度についても、当分の間、すべての営業日を通じて公定歩合による利用を可能とすることとした。』

で、ロンバートの日数制限を外したまま今に至るのでありますが、これって単にロンバートの日数縛りを外したかっただけで決定会合やったんとちゃうのかと(^^)。ま、福井総裁就任直後で何か速水さんのときとは違うって雰囲気だしたかっただけだと思うのでありますけどね。


しかしまあ何ですな、この手のクレジット案件ってエンロンとかLTCMとかアジア通貨危機とか(以下延々と続く)5年に1回くらいやらかすものでありまして、まあ「AAAなのにL+50で回る魔法の資産担保CP」とかいう話が出て、おまけにそれがどこぞの金融新聞や公社債情報あたりでネタになってエライ人が「うちでもこの勉強をしてるのか」とか言い出す頃に碌でもないことが起こるというのは毎度お馴染みのパターンではございますが、今回カモになったのは誰なんでしょうな。

まあ本日は雑感ばかりで恐悦至極。






2007/08/10

お題「あちこちで誘爆モードですかな」

盛 り 上 が っ て ま い り ま し た !

○どうもトリガーがあちこちで引かれたようで

毎度お馴染みメリケン様の貧乏人向け特攻住宅ローン問題が火吹きというお話でありますが、後付けで申しあげるのも何ですが、一昨日とかも微妙にどこぞの住宅ローン会社がサブプライムよりちょっとマシな貸し出し先に相当する「オルトA」級のローンの受付停止したとか、S&PがオルトAを担保にする証券を格下げする可能性があると発表した(ニュースソースは8日の日本語版ロイター10時44分配信記事『米住宅ローン問題がサブプライム以外に波及、貸し出し停止の動きも』です)とかあって実にいやーな悪寒はあったのですが・・・・・

昨日インパクトがあった話と言うことになってるのはBNPパリバがサブプライム問題で3本のファンドの価格算出や解約などを一時停止しましたってニュースでありまして、この話が広まると米国債は暴騰するわ、円債もイブニングセッションの先物大上げだわと実にてーへんなことになっておりますわな。と思ったらNYダウはゲロ下がりですかそうですか。

ところで、メディアが「サブプライム問題再燃」とか言うのは如何なものかと思う訳で、地雷はずっとあるのですから再燃もへったくれもないと思うのですが、FEDあたりのエライ人が大丈夫と言うから大丈夫とか逝って安心感が出るどんなプリオン脳だよとか悪態をついてるあたくしとしてはなーにやってんだかという感じではありますな。

ところで、「欧州の銀行におけるサブプライム問題に対応してECBが資金供給オペやったので不安心理が広がり株が下がった」とかいう後講釈をどこぞのテレビ番組がしておりました。まあど〜せ米国市場の中の人たちがそう講釈してるんでしょうが、2月の株安でもそうでしたが、メリケン連中はど〜してそう人のせいにするのが得意なのでございませうか。どっちもおまいらがそもそもの原因ジャマイカと小一時間。


○フライト・トゥー・クオリティで済みますかな

昨日ECBがオペを打ち込む前なのですが、ユーロ市場でのドルデポのトムネク(翌日スタートのオーバーナイトね)のレートがいきなり50毛ぶっ飛びやがりまして(東京19時にブルームバーグの端末叩いたら前日5.32%に対してBID5.80%/ASK5.85%とか出てやがったですぅ)、こりゃ来ましたなあという感じでございます。まあこんなの出てたから資金供給打ち込んだのでしょうけれども。

でですな、まあ米国では教科書通りに短期債大上げして20毛強とかやらかしやがっておりますが、本当にうんこの投げ合いモードになってしまうと「フライト・トゥー・クオリティ」とか逝ってる場合じゃなくて「フライト・トゥー・キャッシュ」になっても何ら不思議ではないというのは10年ほど前に取り付け騒ぎのようなものがあちこちで誘爆してたどこぞの国での市場の動きでヒーヒー言ってた頃を思い出だすと結構冷汗モンなんですよね。まあその片鱗が昨日のユーロデポトモネクレートいきなり50毛上昇に現れていると思うのであります。ご注意あらされるのが吉ではないかと。

一応若人のために申しあげますと、日本で証券お陀仏さんとかやってた時は、要するに「流動性が落ちるもの」が全部ゲロゲロになったんですよね。当時だと「非上場中期利付国債」(現先オペや輪番の対象外だからという理由ですが、まあそれよりも持ってた人が換金売りしたのがでかいんですけどね。当時はロンバートのような便利なもの無かったですし)とか「事業債・金融債」(担保不適格ですし、そもそも金融債はそのセクターズバリですし)とかがエライコッチャになったんですが、それに加えて中期(というか2年あたりの中期の短めの所)ゾーンのイールドカーブが随分膨らんだなあという感じでしたな。今にして思えば売られたモノが中短期ゾーンのものだったという需給要因が大きかったと思うのですけど。

別に今回同じような事が起きるかどうかは知らん(日本は大丈夫でしょ)ですけど、換金性というか流動性が一枚落ちるものは換金売りの対象になり易い(本当にボロボロになってしまうと売るにも売れないから)ので要注意だったりすると思うんですよね。まああとはフライト・トゥー・キャッシュの動きで「換金したいけどあんまり損は出せません」という時には真っ先に叩かれるの短期国債だったりするケースもあるので、まあ換金大会モード入りするのかどうかは見極めておかないと足元掬われますなという所でありましょうか。

ま、海の向こうならともかく、日本で換金大会というのは遠い話だと思うのですが、米国や欧州の市場でどのへんがズタボロになるのか(そりゃまあABSとかCPODとかがボロボロになるのは当然として)見たいものであります。と対岸の火事モードでありますが、まあ注意注意といった所で。


○ところで昨日は短めのFBがゲロゲロになってましたが

まあ今日の相場付きは全然違う可能性も高うございますので、メモメモと逝ったところでございますけど、6か月FB入札を機に火曜から本格化したFBのゲロゲロ状態が昨日も継続して、日本相互証券の引け値ベースで言えば例えば8月27日償還のFB451回は昨日の引けで5毛甘の0.600%でありますが、火曜の引けベースでは0.500%でありまして、2日で10毛甘とはこれまた豪快な売られっぷり。

何か先週末まではソイヤソイヤと短期国債買い攻撃だった銀行勢がいきなり外し攻撃に回っているというのが主因のようですけれども、何という極端から極端への転換と逝った所でございますですが、モノ出たせいでGCレートも上昇とか(0.55%)何やってるんだかという感じであります。いやあの大手銀行の皆様におかれましては自分のマーケットインパクトというものをよくご考慮されてオペレーションをされていただきたいものだと思うのでありますが、ど〜もどっかのポイントを超えると「よそがやる前にやらねば」モードになっちゃうんでしょうかね。心理は判らんでもないが・・・・・

ま、今日はご案内のような状況で帰ってきましたので、ちったあ戻すとは思うのですけれども、とりあえず不透明な時にはキャッシュ持ての法則は、そーゆー時代を経験している日本の方がよっぽど理解しているというお話もある訳で、世の中モノが多いところで新規に2か月FB発行とかどうなんでしょうね。

ということで今日のFB2か月入札も微妙に注目。

#えーっと、8月利上げ云々に関しては正直判らんですが、結局株価次第でしょうといういつもの印象。今回に関しては8月できないとその後できないという状況でもないから慌てることもないと思いますけどね。

#それから、米国利下げどうのこうのとかで盛り上がってますけれども、本件の問題解決で金利操作を使うのは一時の気休めにしかならず、プルーデンスの出番だと思うのですけどね。米国もなーんか勘違いしてますな

#独り言が大杉で恐縮ですけど、結局のところこれって「グリーンスパンがITバブル崩壊後の処理で緩和引っ張りすぎた弊害」が今になって出てきてるんでしょと思うのですがどうでしょうかねもういい加減マエストロとか言うの止めて欲しいもんです






2007/08/09

お題「益々盛り上がって参りました/その他少々」

しかし機械受注のヘッドラインに反応しなかったのは少々驚きでしたですね〜>昨日の債券

○3か月FB入札も流れました

火曜日の6か月FB入札が事前予想よりも低調でしたというお話は昨日致しましたですが、昨日は第2弾で3か月FBの入札があった訳です。3か月FBと言えば先週は入札が0.66%−0.67%という金利でやらかした後0.65%レベルまで金利が低下しとった訳ですが、昨日は入札に向けてWI取引の板が威勢良く叩かれて入札前に0.7%乗せとなってしまいました。で、落札結果は利回り換算すると0.726%〜0.745%と2毛近くのテールだわ、おまえその利回り昨日の6か月FBと変らんジャマイカという実に香ばしい展開となってしまいました。

まあ当たり前ですが、1週間前の3か月FB464回の引けは0.700%まで上昇(出来値もあったようですが)しちゃいやがりましたし、新発466回の引けは0.735%ということで、先週金曜の「この強さは何なんですか(><;」という状況(GC0.49%出合いとか如何なものかと思ったんですけど)はどこへやらという状況。地合い変化とはオソロシイものなのでありますが、今回の場合は昨日も申しあげたように、特にこの間に経済指標が出たわけでも無く、日銀のエライ人の発言が出たわけでも無く、一体全体何がこの変化の切っ掛けなのかワカランチ会長ではあります(><;

#いやまあ尤もらしい後講釈垂れろと言われれば適当にそれらしい要因をいくつかでっち上げることはできないでもないが

今週に入ってGCレートも上昇しておりますのもご案内の通りでございますが、それまで日銀様の資金供給オペも効果を発揮しやがりまして0.50%で張り付きモードだったものが上昇の巻で、昨日は前日の0.51%→0.52%から、0.52%→0.53%と上昇して、その後0.55%くらいまでの上昇もあったらしいですわな。それまでが0.50%でベタ凪だったこともあって「エライ上りましたなあ」という感じではありますが、冷静に考えればそれまでのGCレート0.55%近くで推移するのがフツーでしたので、まあもともとの居場所に戻っただけなのでありますけどね。

でもまあチョー短い所をいじってる人にとってここの5bpは物凄くでかい話でありまして、そもそも先月19日の3か月FB入札をピークにレートが低下という現象が発生してたのは足元のGCレート低下も大いに寄与してた面がございましたこともありまして、FBのレートが軒並み上昇の巻と相成りました。そこまでの低下が調子に乗り過ぎでしたんで、その反動って所でしょうか。


調子こきやがってと言えば月曜の引けで0.955%なんぞをマークしやがった2年カレント。月曜の朝の駄文(勿論金曜の相場を受けて書いている訳ですが)で「なんぼなんでもここから8月利上げスキップしても中期の低下余地乏しいでしょ」と書いたら火曜の駄文で懺悔を書く破目になったあたくしとしては、昨日の引けで4毛甘の1.005%になって頂きまして誠に慶賀の念にたえません。などと感情論モードですが(あほ)、まー米国の信用収縮云々とかCPIとかで中短期ゾーンが強くなった中でちとやり過ぎ分の修正モードなんでしょうかな。今日は5年国債入札というのがアレでございますが、米債が9毛甘とかやらかしているので入札段階で調整してくれりゃ逆に何とかなるでしょう。と思いますが。


ま、そーゆーことで昨日の共通担保全店オペは10月23日足で平均落札0.705%(足切り0.69%の極薄按分)などとなっておりましたが、8月10日〜10月23日の期間で8月23日から0.75%で電卓叩く(末初1%)と0.713%などという数字になります(8月16日〜0.75%で計算すると0.736%)ので、こりゃまた織り込み度合い復活ですなあという感じであります。本格的に織り込みに逝くなら来週になってから(かつ来週時点で株式とか米国とかが変調じゃないのが前提条件)と思っていたあたくしとしては???なのであります。

#これで実は「来週はエライ人が夏休みだからその前に利上げヘッジをしておけ」とかいう話だったら笑うしか無いのですが(^^)。

とりあえず、金曜の2か月入札を無事に抜けるまでは織り込み度合いとか足元のGCレート推移とかに神経質(来週になるとT+3が次の積み期間になるのでまたややこしいのですが)になるんでしょうかね。金曜の2か月FBは足が10月3日なので、ポートで半期末債券残高の調整するのにはもってこいではあるのですが、期末期初に償還前の振替停止期間に掛かってしまいますので資金繰りという面ではちとアレですなあという微妙なモノとなりますな(つまり生保年金は買えるけど銀行は買いにくいということで)。償還見合いの発行ではなく単発モノなので、はてさてどうなることやらという感じです。


○殊更ヘッドライン打ちまくるものだったのでしょうか(昨日の続き)

昨日大田経済財政担当相の記者会見での発言について「何でこんなに大田さんが福井総裁の発言を紹介するの」とか思って駄文を書いた訳ですが、やはり1次ソースを見ないでヘッドライン見ただけで書き物をするのは早とちりになる事もあるの巻と逝ったところでありましょう。というお話。

とりあえず内閣府のサイトを見ますと、各担当相の会見へのリンクがございます。で、そこを拝見致しますと、月曜と火曜の記者会見として掲載されているのは経済財政諮問会議後の会見と、月例経済報告の関係閣僚会議後の会見でありまするな。

リンクのページ→http://www.cao.go.jp/kaiken_youshi.html

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2007/0806/interview.html
http://www.cao.go.jp/kaiken/0609ota/2007/0807kaiken.html

上が月曜の経済財政諮問会議後の会見で、下が火曜の月例経済報告等関係閣僚会議後の会見なのですが、まあURL先ご覧いただければお判りのように、福井日銀総裁の発言として大田さんが紹介しているのは、火曜の月例関係閣僚会議の発言のようですが、別にまあ福井総裁の話がメインじゃないようにしか見えないのでありますし、福井総裁はいつもの原則論の話をしているようにしか見えない訳でして。そんなにバカスカヘッドライン打つもんなのかという気がするのであります。

何かね、最近のブルームバーグニュースの日銀関連のヘッドラインの打ち方って殊更目立とうとしてるようにってバイアスが掛かってねえかという気がするんですよね。前もお話したような気がしますが、かつて日本語版ロイターがそんな感じでミスリードなヘッドライン打ってみたり、長期国債落札結果発表直前のザラ場にいきなり「どこぞの格付け機関の人が日本国債の格付け変更について検討を示唆」みたいなヘッドライン打って世の債券ディーラーを激怒させたという実績がありましたけど(ちなみにその時ですが、実はこの話もっと前に格付け機関の人のコメントは出てまして、明らかにタイミングを悪意で狙ったとしか思えませんでした)、あんまりヘッドラインをセンセーショナルに打とうとするとしまいに誰もニュース見なくなる(あるいは経費削減で情報ベンダー削減する時に真っ先に槍玉に上る)ぞと苦言を呈しておきましょう。



○やたらと人のせいにするのは責任ある地位の人間として如何なものか

小見出しが長いですかそうですか。

さっきの大田担当相の会見ですが、短い方で火曜の会見を見ますと、月例関係閣僚会議で自民党の中川秀直幹事長が日銀に八つ当たりしていたというお話がございます。

『閣僚会議でのいろいろな質問、御意見については、私の方から簡単に主なものを御紹介します。まず、中川自民党幹事長から、やはりこの選挙の結果、地方の声、有権者の声というのはなかなか景気回復が実感できていないというのがあると。その理由としては、名目成長率がなかなか上昇していかないと、見通しが達成できていないという面があると。これは、日銀の政策変更に責任があるのではないかという御質問がありました。』

日銀は地域間格差の解消もしろと仰せですかそうですか。というかこの文面だとまだ大したこと無いですけど、これがメディアの記事になると「選挙に負けたのは日銀のせいと発言」という方向になってしまう次第でありまして、大体からして日銀の政策に文句あるなら内閣には金融政策決定会合における議事延期請求提案できるんですし、政府が財政使って何かするとか出来るでしょうにと思う訳でして、定率減税廃止だって別に延期すりゃ良かったじゃんとか申しあげたいんですけど。

と申しますか、先日も中川幹事長のサイトを見てたら『安倍総理への期待値は最大41%である』というかなり強引な世論調査解釈をしているコラムがあったんですけど、幹事長のコメントにどうもねえ感が。
http://www.nakagawahidenao.jp/pc/modules/wordpress0/index.php?p=616

『結果としてこのような事態になってしまったことについて、幹事長たる私の責任は重い。』

とこの一文は誠におっしゃる通りなのですが、その先はナンノコッチャという感じでして・・・・

『その責任において、敗因検証の一環として、例えばこの農相問題について、「このまま静かにしていれば局面は変わる」などとの「根拠のない楽観主義」をもとにした忠言があったかどうかの確認が必要である。そうした忠言は、先の大戦でサイパン島陥落後も本土決戦を唱えるに等しいもので、国家運営上の危機管理の大失敗である。(以下割愛)』

忠言があったかどうかの確認が必要であるってあーたが自民党幹事長なんですからちゃんと身を挺して苦言を総裁に言上するのが勤めなんじゃないですかねえという感が。何というか、幹事長の例えから言えば、本土決戦を唱える動きに対してその時は声を上げないで、戦争に負けてから急に「軍部が全部悪い」とか言い出すようなもんでしょ。無力ないち市井人なら兎も角、幹事長たるお方の発言としては何ともまあという感じでして・・・・・

まあ、中川幹事長の忠言に安倍総裁が聞く耳持たずモードだったのであればこういう発言が出てくるのも不思議ではないので、内情はそんな所なのかも知れませんけどね(そうだったら中川さんごめんなさい)。

ま、メディアの伝え方というのもありますし、官邸と幹事長の距離が本当はどのくらいあるのかとか下々の者は存じませんので、そのあたりで苦労しておられたのが出てしまったというのが実情なのかもしれませんけれども、何かどうも中川幹事長から伝わるのが「〜が悪い」というのが多かったですなあという印象が強かったですな。まあお疲れ様でございました。




2007/08/08

お題「なんかよー判らんタイミングですが」

米国10年国債”利回り”の日中グラフを見ながら某モーサテの代打キャスター様「債券は声明文公表後売られましたが、急速に買い戻されました」でありまして、いつものおねいさんが間違えるのは今に始まった事ではないのですが、代打君お前もかと朝からがっくしであります。

まあ所詮債券市場なんぞ世間様から注目されない日陰者市場ですし、金利の上下と売り買いの関係が逆なんて判りにくいこと夥しいですから間違えられるのは当然でございますよNe!

○急に盛り上がってまいりました

昨日の債券市場は長期ゾーンや超長期ゾーンが強うございまして、終わってみれば先物も前日比高くなっていましたが、短い所は先週までのやたらめったら強い状況からちと変調。で、その変調がユーロ円金先とかにも出てきて、それが影響したのかイブニングでは債券先物にも影響出てたようですな。んでまあその短い所ですけど・・・・・

多分実際には月曜の途中から何かあったのかもしれませんが、昨日は朝から今までやたら強かった短いところがちと妙な感じになってまして、業者のオファーで微妙に安いのがちらほら出てみたりしてたようなのですな。で、あまり注目してなくて、まあどうせ確りなんでしょとか高を括ってた6か月FBの入札が意外に流れるの図となりました。前日の段階では「まあ0.72〜0.73%だけど0.73%届くかねえ」という感じだったと思うのですが、入札終わってみたら平均落札価格が利回り換算で0.734%くらいで最低落札価格が0.750%くらいと結構流れたのであります。

まあ「利上げ後の足元金利は0.75%」というのがありますので、0.75%だととりあえず利上げ食らってもコール対比チャラという(本当はGCとかと比較する方が良いんですけどね)精神的支え(?)もありますので、とりあえず0.75%レベルは止まり所ではあったのですけれども、セカンダリーもあまり好調とは言えなかったようで、日本相互証券の引けは何とか0.740%にしてますけどそれはどう見てもオファーサイド。ということで、平均落札よりも安いところで引けるとはちょっとアレレ感漂うのでありました。

それはそれとして、もうちょっと短い所にも何か売りが出ておられるようでして、日本相互証券の引けよりちょいと甘い売り板が出てたとかいうお話があったり、GCレポレートが暫く延々と0.50%で張り付いてたのが上昇となって、0.51%→0.52%レベルとなってきたと久々に動意付いて参りました。

2年カレントの引けが0.965%で前日比甘くなっていたりとか、今まで散々ショートスクイーズ掛かって前月発行債と引けが逆イールドという遺憾な状態だったTB423回が日本相互証券の引け値ベースで422回とやっと単利並びになりました(0.780%)なあとか。まあ短い所がそんな感じということで、多分引け後の金先とかに影響でてきて(あまり参考にするのも何ですが)OISレートがちょっと上昇してみたりとか、何でこんなタイミングで??と思うものの、何か動意が出てきたような気がしますわな。

従いまして本日の3か月FB入札が注目となる次第なのですけれども、何せ先週の3か月FBは11月5日償還だというのに0.66%−0.67%の入札などと(昨日も申しあげた気がしますが)償還まで保有前提の持ちキラーさんとしてはちとご勘弁頂きたいようなレートになりやがっておりましたので、もうちょっとご調整頂きたく存じますところではありますわな。

7月18日の3か月FB入札で0.69%台をやってた訳でして、何ぼなんでも0.7%位にならんもんかと思うけど、まあそんな訳にもいかんでしょうね。記憶ベースでいつのことだか咄嗟に思い出せない(ノートを引っ張り出して探すと言う超アナログなあたくしですので)のですが、そういや以前も、暫く延々と強い→6か月TB(当時)入札が流れえて安そうに見える→翌日の3か月FB入札がもっと流れて前日の6か月の割安さが解消される→アヒャヒャヒャヒャというのがあったと思うのですが、単純な需給によるものか、急に8月利上げへの警戒モードが高まったのか、どうもよく判らん所がございます(てかいつもそんなことは判らんのですが、汗)。


○妙な出方で「福井総裁発言」が・・・・・

一昨日の経済財政諮問会議以降、情報ベンダーを見ておりますあたくしが「何か妙ですな」と思っているのが「福井総裁発言」でございます。

何が妙かと申しますと、福井総裁が発言したものがヘッドラインに出ているのではなくて、「福井総裁の発言」として大田経済財政担当相が発言しているものがヘッドラインを飾るという状態でして、例えばブルームバーグニュース(ネットのやつじゃなくて本格的な奴ね)で「日本 内閣府・総務省」のカテゴリーでヘッドラインを並べると、延々と『日銀総裁:なんちゃらかんちゃら−経財相』というのが並ぶと言う何とも違和感のある状態。一昨日の経済財政諮問会議後の会見と、昨日の閣議(経済財政白書を提出したのですが)後の記者会見(だと思うのだが)で福井総裁の発言が大田さんから話されているの図に見えるのであります。実に妙な気が。。。。

まあ会見要旨を見ると実はただの(毎度お馴染みの)ベンダーミスリードなのかもしれないですけど、一見すると何とも妙でありまして、福井総裁の発言について大田さんが延々と紹介(経済財政諮問会議直後の会見で紹介するのは判るけど)しているように見えるのは何か意図でもあんのかとか思いたくもなりますわな。

ちなみに、紹介されている福井総裁発言は毎度お馴染みのお話から大きくずれるものではなくて、要約しまくると「景気は良いです、物価は上がりにくいですけど、金利の調整は徐々に行います」という奴ですな(^^)。まさかこの一連の流れが「政府も8月利上げ容認」とか取られるのか??という気もあまりせんのですが・・・・

まあ実は会見要旨見てみたら大した事無くて、情報ベンダーのエサになりやすい釣り(意識してるかどうかは兎も角)エサ発言を大田さんがしただけというオチとは思うのですが、とりあえず情報1次ソースに当たる前にヘッドラインを見てしまう市場の人としては(同時に出るときには1次ソースも見ますが、記者会見とか国会答弁はどうしても後出しになりますからねえ)ちと気になったので。


○余談メモ

・日銀の金融政策ご紹介パンフレット

昨日ご紹介したパンフレットですが、中身拝読致しました。日銀のサイトにある「教えて!にちぎん」の簡略版を文書形式にしたという感じですな。興味ないわけじゃないけど・・・という素人衆向けなのでしょうが中々。高校教科書の副読本に宜しいのではないでしょうか。


・どうもねえ・・・・

銀行決算受けて邦銀の収益性が低いだの欧米銀行見習えだのまた御託を並べているようですが、欧米銀行では考えられないような現状レベルの顧客(というかリテールというか)サービス水準は維持しろ収益上げろとか無茶言うなと思うのはあたくしが金融関係者なのでつい身贔屓するからですかそうですか。

大体「収益力上げろ」と言ってる側から「人材養成や人材招聘をもっと積極的に行え」とか短期的な話をしてるのか長期的な話をしてるのか判らんがなと思うのですけど・・・・

#と最後はただの悪態になったことをお詫び致します^^






2007/08/07

お題「とっかかるネタもなく毎度余談みたいな話で恐縮です」

あのですな、暑いのは良いんですけど、湿度が高いわ無風だわというのは勘弁して頂きたいのでありますけど。


○結局一番わかりやすい指標は株価な訳で

昨日の債券市場ですが、米国市場の不安定さを受けましてまたまた上昇。そしてあたくしが朝の駄文で「中期ゾーンって8月利上げスキップでここから低下余地ろくに無いでしょ」と書いた事が髪様効果を発揮したらしく(涙)、2年0.955%5年1.300%、10年1.750%、20年2.155%の引け(日本相互証券、単利)となりまして、5年から先物が引っ張ってのブル相場とは、自らの髪様振りに落涙を禁じ得ないのであります。明快なビュー(というか妄想)を書くと綺麗に逆に逝くとは我ながら甜菜現るですな。

と朝一から自虐ネタではありますがそれは兎も角として、まあ何だかんだと言いましても、債券(短期も)市場が8月利上げに関する判断をせえって話になった場合、勿論機械受注とかGDPとかございますが、日々ベースで言えば結局のところ一番ネタに使いやすいのは株価という感じっすな。米国の貧乏人向け住宅ローンのトランシェが爆発している問題に関しては、何せ聞いて回る人によって言ってることが思いっきり違いまして、おまけにこの言ってることに一定の説得力があるものの決め手が無い(からこそワケワカランので不透明不透明と言われるのだが)と来たもんで、正直その現場にいるわけではないあたくしには理解しかねるものがありますし、まあ結局判らんとしか言いようが無いですな。よって判断不能。

そんな訳で暫く株価に振らされる動きが続くと思うのですが、この2年0.955%というのはちょっとそりゃ利上げペースがちょっと遅くなると言う読みになってやせんかと思うのですけれども。この水準見てると1年ゾーンの一般債が安く見えてきますなあとか思ったらさすがに短いゾーンの一般債が捌けてきましたなあというのは昨日申しあげた通り。

まー結局のところ利上げするしないってえのは福井総裁などの発言を引用すれば「確信度合い」の問題というファジーな世界でありますので(苦笑)、そうなると(GDPが弱けりゃ話にも何にもなりませんが)判りやすいのは株価となるですわな。決定会合まであと2週間になりましたので、まあそのあたりまで株価がどうなるか。米国株価はどう見ても高値波乱もいい所でありますので2週間で落ち着きそうもないですけどねえ。

#で、今朝は2年米債10毛甘で帰ってきやがりましたですか


○ところで米国はどうなるのやら

米国株価指数は上昇しておりますが、今朝もまた住宅金融が破綻とか熊証券のシャチョーがクビとか香ばしいニュースが出ているようで、まあこりゃどうなるのやらと言う感じですが、前回に起きたLTCM問題と比較して考えて見た場合、

(1)今回はLTCM問題と違って各所に幅広くリスク分散(というかリスク飛ばしというか^^)が行われているので、食らった人たちは多い(何せワールドワイド)かもしれないけど、一人一人の額は小さいので何とかなるでしょ

というのが楽観論な見方で、

(2)前回はLTCMやその他幾つかのファンドが無茶しやがったのが原因だったけど、その点で言えば病巣がはっきりしていたのでFRBは緊急奉加帳+救済スキーム発動で問題の凍結化が瞬時にできたけれども、今回はどこがどういう形でリスクの移転が行われているのか判らんので問題の瞬間凍結スキームが図れず地雷が続々爆発しだすと本来爆発しなくても良い物まで誘爆するかもしれんでっせ

というのが悲観論な見方となるのかなあと思うのですが、あと言われているのは

(3)実体経済との関連で言えば住宅価格の下落スパイラルになるかがどうかがカギ

というところでしょうか。んでまああたくし的には(1)or(2)だとやや(2)気味に考えているのですが、(3)に関しては正直全然ワカランチ会長なのですけど、住宅ローン会社がヘロヘロになって貸出余力が無くなるという事態が日本のバブル崩壊の引き金を思いっきり引いた「総量規制」に似たような効果が出るのかどうかという所がポイントになるのかなあと思うのであります。

ということで、この問題でFEDが動くとすれば利下げというのはちょっと筋違い(たぶん利下げをするとその場は凌げるけれども将来にもっと碌でもない資産バブルかインフレが起きると思う)でして、住宅関連与信が急激に収縮しないように手を打つというプルーデンス対応になると思うのです。

#ということで、米国長期金利がソイヤソイヤと反応してるのは利下げ期待のし過ぎジャマイカと思うんですけど

ま、抜かずの宝刀よろしく「利下げするかも知れんよ」という期待だけ見せて何とかなるのが一番オイシイのでしょうけれども。

#と思ったらWSJの社説も利下げするなですか(理由がドル安懸念というのも何のこっちゃでありますが)そうですか


○日銀正副総裁人事床屋政談(おい)

さてまあ昨日はどこぞの鳩ポッポの発言に激しく反応しましたが(笑)、今朝のニュースを見ておりますと(見ただけでソースは無い)民主党は国会同意人事に関して事前に候補者を国会で審査会みたいなものをすることによって、候補者の見解を聞くように要望とのこと。

これはまあ正論に見えるお話でして、このあたりが制度上担保されれば、逆に言えば「本人の見解も聞かずに反対するのは如何なものか」という話になるので、武藤、岩田両氏の目が復活しても何らおかしくはないかなって思うのでありました。まあ鳩ポッポがあれだけ露骨に名指ししちゃうとひっくり返すの大変は大変だと思いますが。

#だからこそ責任政党を目指すのなら後から撤回できなくなるような断定的発言をするのは避けるべきではないかと思うのですけど

しかしまあ民主党は誰を想定してるのかが良くわからんところでありまして、昨日引用した本石町日記さんの指摘にもありますように、正直民主党の金融政策に関する意見は「お前ら何も考えてないだろう」としか言いようが無い尻滅裂と逝った所でありまして、政策もねえのに日銀総裁人事には意見があるとは恐るべし。

という悪態は兎も角として、民主党の経済関係といって最初に思い出すのは榊原英資大先生なのでありますが(^^)、まさか「元官僚」という理由で武藤、岩田両氏に反対してるのに榊原さんとか言い出さないですよね。民主党のネクストキャビネットの財務大臣までやってるんだから、それをやらかしたらまさに政治任用なのですが、ブーメラン政党なだけにやらかしかねない所がオソロシスであります。


ま、政治的な理由でワケワカラン人を引っ張ってくるのだけは勘弁していただきたいものであります。


○その他余談

余談その1:「JAから農家への供米代金支払方法変更」というニュースを聞いたのですが、そういやあたくしが駆け出しの頃は「秋になると債券市場は供米代金の払いによって農林系金融機関に資金が流入するので買われる」というお話がございましたわな。国債の流通残高が今よりもずっとずっと少なかった遠い昔のお話ですが(^^)、今の若い衆知らないでしょ、そんな話。とただのジジイの邪魔くさい自慢話でした。

余談その2:解説パンフレット「日本銀行と金融政策」の作成についてということで、http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/bojmp0708.htmのあたりにパンフレットのPDFへのリンクが張ってあるのですが、中身を読もうと思って多忙に紛れてまだ読んでおりません、いやまあそれだけの話ですが

余談その3:今週のモーサテはNYのキャスターが田中さん。矢吹さんがNYメインだった時は「何ちゅうチャラチャラした人だ」と思ったのでありますが、今週見てるとまあ落ち着いて見える。でも着てるものよく見たら相変わらず派手派手でして、まあ通常見ている人との比較問題というのは恐るべしと逝った所でしょうか(笑)お願いだからNYの皆さんもうちょっと落ち着いてね。





2007/08/06

お題「民主幹事長の発言に悪態/相場雑談」

朝から蝉が豪快でありますことよ(^^)。

○もうね、アホかと馬鹿かと

土曜の新聞にも大々的に掲載(何せ東京新聞でも1面記事になってましたし)されてたので皆様ご案内の通りとは存じますが、民主党の鳩山幹事長が日銀正副総裁人事で存在感を出すと言う動きに出るそうですわな。

で、民主党鳩山氏の発言によりますと(ソースは東京新聞やブルームバーグニュース)『武藤さんに関して新しい状況が存在しているとは思わない。考え方を買える環境にはない』だそうですが、そのような節穴の目しかない鳩ポッポはもう少し勉強すべきではないかと存じます。おまいの首から上は鳩なのかと小一時間(鳩の方が視界は広いか^^)。

まあね、前回の副総裁就任時点ではほんのちょっと前まで財務省事務次官でしたから、百億歩譲れば財務省支配云々を言うのは(どうみてもただの言いがかりだが)まだ理屈として通らんこともないですけど、日銀副総裁に就任して5年近く経過し、その間の武藤副総裁は誰がどう見ても日銀の執行部としての行動。就任当初は財務省の代理人と見られることも無かったとは言わないけど、その色眼鏡はご本人の実績で皆さんとっくの昔に外していますわな。その5年近くの実績をまるで見ないで「新しい状況が存在しているとは思わない」とはもうアホかと馬鹿かと

日銀副総裁としての5年近くの実績をまるで無視とは恐れ入る論理でありますが、それだったらてめえの政党で最初に「ネクスト財務大臣」に据えたお方は元財務官僚で、しかも選挙の洗礼を受けた代議士さんでもなかったですけど、あれが適正でこちらが不適正な理由が1ミリも理解できませんですわな。それから「元なんちゃら」が何年経っても問題になるなら、おまいら揃いも揃って元自民党だったり元官僚だったりするじゃねえかと問い詰めたくなりますわな(-_-メ)


前回の正副総裁の就任では民主党は武藤さんと岩田さんは「元官僚」というので反対。福井さんの反対理由は何だか覚えてません(たぶん不祥事で辞めた人間が復活するのはケシカランだと思うが)けど反対となってまして、福井さんの理由は兎も角として、官僚全部ダメってあーたそりゃちょっと幾ら何でもおかしいじゃないのよ。おめえの政党には元官僚(大蔵官僚もいますなあ)何人いるのかとってさっきと同じか(笑)。

ちなみに、東京新聞の4日土曜日の経済面(7面)解説記事では「あるエコノミスト」のコメントとして『次期総裁を天下りの有無でしゅん別するのではなく、市場と対話できるかどうか、で考えてほしい』とありましたが、まあ左様でございますわな。政府与党側が何か怪しい事をおっぱじめているというのなら兎も角、野党が率先して日銀総裁人事を政治ネタにするとは思わなかったですよ。まあこの発言で民主党の金融市場からの支持率は(元々そんなに高いとは思わないけど^^)大暴落したことだけは間違いないと存じます。


しかし何ですな、本石町日記さんが民主党の金融政策に関する国会での発言が支離滅裂である事を指摘した暫く前のエントリーでこんな指摘をしていたのには脱帽であります。

http://hongokucho.exblog.jp/6974947/
民主党はワンボイス主義を=金融政策論議で考える党戦略

『民主党の経済(特に金融系)戦略は、個人的には政府系金融機関(含む郵政)などの主張(国営のまま縮小)は支持できるが、金融政策については@独自のポリシーがない(与党に抑圧された日銀という対抗戦略のみ)Aトンデモ系の利上げ論が横行−しているという印象だ。特に、日銀を与党に抑圧された存在とみなす戦略は、仮に与党になれば日銀を抑圧するのが見え見えで、薄っぺらな感じである。』(上記エントリーより、強調部分は引用者による)

与党にはなりませんでしたが、早速正副総裁人事にあまり意味のない理由で口を出している訳でして、「与党になれば日銀を抑圧するのは見え見え」というのが見えて参りましたですね。

でね、民主党は上記本石町日記さんの指摘のように、国会では「与党に抑圧された存在」という流れで色々と政府への追及をしていたのですが、東京新聞(正直言って、経済記事や経済関連の社説のレベルは結構まともな部類に入ると思う)の経済面解説記事の見出しには微苦笑を禁じ得ませんでした。曰く、『日銀総裁人事 政治に揺れる「独立」 混乱、国際評価に影響も』という事でして、どう見ても民主党が中央銀行の独立性を損なっているとの評価です。本当にありがとうございました。


などとあんまり外野が武藤さん武藤さんというと贔屓の引き倒しになりかねませんので(って別に場末で叫んでるあたくしの駄文は関係ないですけど)まあ悪態は今日だけにしますけど、ちょっと民主党の政権担当能力に暗雲どころか土砂降りの大雨がという感じでございます。ど〜せ自爆クオリティーの民主党だから何か自爆するとは思いましたが、早速金融市場が呆れる攻撃に出るとは思いませんでした。


しかしそう考えるとトホホなのは、外準の積極運用だとか東京金融街構想だとか与党から出てくる話にもどう見ても空想ファンタジーの世界から出てきた物が散見される(特に金融庁の大臣と副大臣方面)ことでして、とにかく中途半端に「お勉強」したファンタジーの世界で訳の判らん施策を出すのは止めて頂きたいと思うのでありますよ。


○その他相場雑感

ここもと一般債のスプレッドが拡大してますなあとかいう話もありましたが、短い所は月末恒例のインデックス落ち銘柄の売りとかもあって月末あたりはちょっと重そうにしてまして、国債というかTBFBからのスプレッドもちょっと拡大してたのですが、何せ皆様ご案内(かど〜か知らんが)の通り、1年ゾーンのTBで0.8%を堂々割り込み(カレントのTB423回は需給要因で無駄に金利が低いので要注意)の巻ということでもありますので、スプレッドで云々する人は兎も角、絶対水準バイヤーとしてはまあこのゾーンの一般債くらいしか買う物ねえなという所ではあります。

何せ金曜は一応5糸甘になってくれたとは言え、11月5日償還のFB464回が相変わらず0.655%とか絶対水準バイヤーとしては少々ご勘弁いただきたい水準ですので、まあ絶対水準で手をだせるのはCPか一般債となる次第。とは言えそればっか買う訳にも参りませんので(バランスがおかしくなる)ここもとのオペ打ち込み攻撃には運用サイド青息吐息、調達サイドウハウハと逝った所でありましょう。

んなわけで、月末辺りにはそこそこありました世の中の在庫も先週のFB入札が強かったあたりからサクサク捌け出してきたようでして、格付けがそこそこ高い物に関しては比較的落ち着いた推移といった所でしょうか、ただし短い所限定の話ですが。


しかし、もうちょっと足を長くしてみると、相変わらず2年カレント国債が1%を割っている次第でして、どうも直感的にはそりゃちょっと強いんジャマイカというか、これじゃあ8月利上げが無しでも最早金利低下余地あるのかよという感じなんですけど、それを言い出すと中期全般何か強いっすねえという気もしてしまうのがアレな所でありますが、2年とか3年とか需要強いですもんね、やはり金余りというか運用難というかちゅう所なのかもしれません。

まあいずれにせよ、米国の信用スプレッド問題がどういう動きを見せるのかと言う話と、GDP統計見ないと何とも決めうちの仕様がございませんなあといういつもの結論で結局は様子見なのでありました(またそれか)。







2007/08/03

お題「相場点描とサブプライム雑談(というか放言)」

参議院議員に当選して登院する前に娘のキャディーですか、そしてこれからもキャディーやりたいんですか。まあ実績ある人が落ちて在外から帰国後に選挙に行った事ない人が当選する訳ですから、それもやむなしということでしょうかねえ(吐息)。

○相場点描

昨日は米債がちと売られた事もありまして、ど〜せ10年入札があるということもありまして前場は弱目に推移し、後場の寄付きには株が何だかよく判らんのですが(バスケットですか?)窓開けて下に逝ったと思ったら債券先物は窓開けて上という感じで、株価指数がランコルゲする間に債券先物も振らされるの巻でありました。ふ〜。

アメリカの信用収縮問題を措きますと、GDPがそんなに悪くなければ利上げ自体はまあ8月に行われても全く不思議ではない(というかそういう認識で織り込んでましたから)のですが、まあ信用収縮問題が実体経済に影響を及ぼすかどうかという話になると一番手っ取り早い指標が株価と言うことになる(それが正しいかというとかなり怪しいのでありますが^^)ので・・・・ってのが後講釈としては成立しますが、よーするに他に見るもん無いから株価見てイントラデイの動きがパタパタとなるっちゅうことでやんしょ。


しかしまあ相変わらず資金供給オペはよく打たれまして、おまけにレートは低いと来たもんで、昨日の共通担保オペは8月6日〜9月19日の1か月であった訳ですが、平均0.550%で足切りが0.54%という有様。本当に8月の利上げを全力で織り込みに逝くと次の積み期間から足元金利は上昇(まあさすがに16日からロンバートというのは極端な話で、全力で織り込んだ場合にコールで60bpに毛が生えた位になるんでしょうけれども)する筈というのも皆さん華麗にネグっている今日この頃でありますわな。

そりゃまあFBの9月償還は買い来るわ、証券業者の資金も足元余り気味ですからGCは0.51%とかやってる(またぞろ0.50%に突っ込みそうな勢いですけど)わということですから、手前の金利を決定会合まで0.50%で置けばこれはこれでまあまあのレートなのかも知れませんが(段々計算するのが面倒になってきてるだろというツッコミは謹んで却下^^)、いやはやという感じですな。ま、ど〜せ取るなら9月の変な足で資金取るよりも10月足の方がよい(利上げに掛かるかもしれないし、6月末越えであの状況だったんで9月末越えは気分良くないですし)でしょうと思うので、ニーズねえぶんだけ9月のレートが下がっても仕方ない面はありますわな。とかくと益々9月足のFBが買われる理由がワケワカランのですが・・・・・

で、まあオペに意味を求めるのは不毛な話ではございますが、敢えてギャグの積りで意味を求めてみると、これはきっと8月に利上げするから皆さんちゃんと低いうちに資金取っておきなさいね(はあと)という親心なんですよ、な、なんだってー(AA略)。
・・・あくまでもギャグですので本気にしないように(^^)。


まあしかし何ですな、やはり何事も先走りすぎた織り込みというのは宜しくないというのと、市場が織り込んでいるからと逝って政策変更すりゃあいいってもんじゃないというところでございましょうか。6月から8月後半の利上げを織り込んだら途中でこんなことが起きることがあっても不思議じゃありませんでしたな。あまりにも早期に決めうちモードになったもんであたくしもその積りになってた点は素直に反省反省。


○米国サブプライム雑感というか雑談

今朝もまたどこぞの住宅ローン会社が火の車などという報道がございまして、まさに盛り上がって参りましたと逝ったところでございますが、厭債害債さんのブログ(http://ensaigaisai.at.webry.info)を拝読しておりまして色々とサブプライム問題で頭にいくつか浮かんで来たので害債さんのふんどしをお借りして・・・・

ちなみに、インスパイヤされた(これって便利な言葉ですな、と言って反応してくれるのはのまネコ騒動をご存知の方ですかな)のは害債さんの最新エントリー。→http://ensaigaisai.at.webry.info/200708/article_1.html

『これまで米国発の市場騒乱がヘッジファンドなどの過剰なポジションテイクとずさんな流動性管理によって行われてきた例が多く見られる。(略)LTCMのように知能指数の高いコドモがマーケットで遊んで迷惑をかけまくったケースなどまだましで、最近のサブプライム問題などそもそもおつむまで相当ヤバイひとたちがやっているとしか思えないし、案の定おかしくなった。アメリカの方にこの辺のことは言われたくないですなぁ。』

激しく同意致しましたので引用させて頂きましたですm(__)mちなみに他の論点も頷くところ多でございますのでご覧あれ。

ちょっと前のNY株価なんぞでも何でもかんでも上げ材料にしてワッショイワッショイという感じで動いていた(ように端からは見えたのですがどうでしょう)わけで、まあ正直言ってちょっと調整して頭冷やせやというところでありますわな。火の粉が対岸に飛んでこられると迷惑なのでそれは勘弁ですが(何というご都合主義>あたくし)。

で、このサブプライムと言えば最近関連商品の格付けがバカスカ下げられて実に香ばしいことになっておりますが、最近は格付け機関にも批判が向いているとよく報道されるのですが、それを目にする度に「何のこっちゃ」感が拭えないのでありまする。

そもそも格付けは元利払いの安定性についての論議でありまして、途中の価格変動リスクに関しては華麗にスルーと言うのが本来の趣旨だと思う訳で、ど〜せ運用利回り嵩上げする為に「これは高格付け」とか言い訳に使って確信犯(誤用)で買ってたてめえらが悪いじゃろとか思うのでありますけど、まあこの手のCDOだかCPDOだか何だか忘れましたが、国内でも「高格付けで利回りも高い魔法の商品」的にどこぞの業界雑誌で紹介されてたりしてましたなあと思いますと、これらの商品がどのように散らばっているのか興味津々。

しかしですな、よく個人向けに売ってる「ナントカ輸出金融公社発行の株価指数参照型ナントカカントカ債券」とかの債券格付けがAA格だのAAA格だのと言われても買う方は参照株価で動くもんだと思っていると思うんですが、それに対して今更格付けの問題がどうのこうのとか何を今更という感じでございます。

とまあそんなこと考えると、絶賛適用開始になりましたバーゼルU格付け別のリスクウェイト調整とかやっているのが中々空しく見えてくるのがあら不思議(というよりは、格付けオッケーなら行けちゃう人向けに商品設計工夫してるんでしょと思うのですが)と逝ったところでございまして、色々とオモシレエナーと思うのであります。

ところで、昨日あたり報道されてたベアスターンズ傘下の3本目のファンドが解約一時受付停止云々ですけど、3本目のファンドはもうちょっと格付けの高いトランシェ中心と聞いておりましたが、これはそろそろ延焼モードなのか、単にちと先走りで保守的になっているだけなのか、見極めが必要でありますな。





2007/08/02

お題「今日も雑談です」

関東甲信越地方梅雨明け宣言したのは良いですが、東京地方は今朝は早速どんよりと曇っております。梅雨入り宣言の時といい今回といい、まるでどこかの中央銀行(以下省略^^)。

○福井総裁の悪運(失礼)は尽きずの図

昨日はご案内の通りまさに巻き戻しという言葉がピッタリの円高進行に株安。後場に入って株安がより進行したこともありまして債券やらユーロ円金先やらも後場に入って一段高と相成りました。さすがに平均株価17000円割れともなりますと、市場心理的には「まあ別に利上げ直ぐにやらなくてもいいんジャマイカ」という方向に傾きやすくなる次第で、そもそも織り込み度合いが絶賛低下中の短い所なんかも尚確りの巻。

3か月新発FB(8月6日発行で償還はとうとう11月入りでありますよ)が0.66%−0.67%での入札だったんですが、落札結果発表後に買いがご到来して、終わってみれば日本相互証券の引けベースで0.65%ということで、まあ強いもいいところであります。

まあそんな市場ではありますが、こうなってくると7月利上げをしなくて良かったですねという話になる訳でして(^^)、そもそも論として今年2月に出た馬鹿言説にも程がある「日銀の金融調節がヘボだから世界同時株安を招いた」に見られるように、ただでなくさえ言いがかりに近い非難を浴びやすい日銀でありますので(それは過去のトラックレコードが芳しく無いという点で日銀にも原因があるのですが)、まあ利上げしてたら今頃全部日銀のせいにさせられる所でしたので、その点で言えば福井総裁の悪運(こら)は未だ尽きずと逝った所でございます。運が良い人をトップに戴くというのも重要な話でありますにゃ。

余談ですが、サブプライムの話は最近になってようやく「この問題は2月頃から表面化しだしましたが・・・」という言説が一般的になってきたようですが、2月の頃には何故か日銀のせいにする論説が散見されましてちょっと閉口したもんです。今回の信用収縮からの巻き戻しモードを捕まえて「日銀の8月利上げを織り込みに行ったから」とかいう人は言いがかりにも程があるのですが、さすがにそれはないでしょうね。、



んじゃまあ8月利上げがどうなるかってお話ですが、正直次の決定会合まで20日もある訳でして、その間ど〜ゆ〜動きをするのかはよ〜わからんとしか申しあげようが無いっすけど、メリケンの信用収縮に関する影響なんぞは(爆発してトリガーの引きあいになってうんこの投げ合いになれば話は別ですが)10日や20日で片が付くものではないと思料されますので、結局のところどこかで踏ん切りが必要ですよってお話になるかと思う訳ですよ。そうなりますと各種経済指標がそこそこ確りであることもさることながら、結局は金融市場がそれなりに安定してないとやりにくいってことになるんでしょう。

短期市場の水準を見てますと、ここもとうだうだ申しあげているように8月利上げ織り込み水準も低下してますし、長期債も1.7%台半ばに突っ込んでしまいやがっておりますように、ここまで来ると別に8月利上げをしなくても市場にとってさほどのサプライズではない(というか値段だけ見れば半々よりちょっと利上げ無しモードなのでして、やってもやらなくても半分織り込み済みで半分サプライズですわな^^)ので、日銀としてはこれは見事なフリーハンド状態(あたくし的にはまあ別に無理しなくても良いんジャマイカとは思いますが)ということで、これまた何という悪運の強い福井日銀(^^)。

そんな中で米国クレジット市場がアヒャヒャヒャヒャになっている余波で弱含みになっている本邦のクレジット関連がちとアレでして、債券相場自体が確りしている中なので、ただでなくさえ対国債スプレッドが拡大しやすいところですから、少々困ったちゃんにはなっております。まあ株価が下がりやがった事から(株価とクレジットは必ずしもリンクするものではないのだが)もう一段の売りが出るとちょっとマズーなんですけど、まあ短い所から徐々にスプレッドに関しては落ち着いてくるんじゃないかなあとは思いますですよ(サムライ債とかは当分どうしようも無いと思いますが)。


○日銀正副総裁人事

などというものを話題にするのは早いのですが、民主党様におかれましては、前回の福井総裁、武藤副総裁、岩田副総裁という人事に全部反対というただの嫌がらせとしか思えないプレイにでておりましたが、さすがに今回はちゃんと考えるでしょうと思う次第。そもそも正副総裁全員入替というのも何か政策の連続性とか考えると(他の審議委員がいると言いましても、正副総裁の重みは違うっしょ)どうなのよとあたくし的には思うところでありますので、できれば総裁は武藤さんか岩田さんという気もするんですけど、ミンスはどう出るのやら。

前回3名に反対した理屈を持ち出してダメだしをすると、武藤さんも岩田さんもダメという話になっちゃうんですが、さすがに今回はもうちょっとまともな行動を取ると思いますがね。


○野田審議委員会見続き

先週の木曜の会見話をここまで引っ張るあたくし。

・ロンバート貸出金利について

『基準貸付金利と、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導金利との差につきまして、私としては、基本的には市場の金利裁定がより働きやすい幅がどの辺にあるのかということを議論のポイントとしています。今の0.25%という幅が望ましいということではなく、今後、誘導金利が引き上げられる過程で、その幅がどうあるべきかについては、その時点その時点で考えていきたいと思います。』

『私どもとしては、前回利上げ以降のマーケットの状況をみて、現在の幅で何か支障があるかというと、必ずしも具体的に認識してはいませんので、その意味で、その幅の拡大について市場から差し迫ったニーズがあるとは理解していません。ただ、基本的には、先程申し上げたとおり、市場がいかに効率的にワークするかという観点から、今後も検討を深めたいと考えています。』

先般の福井総裁の記者会見と同じ流れの話でして、この前もちょっとご紹介しました(あの時のソースはブルームバーグニュース)のですが、改めてこちらを見ると、どうも次に利上げがあってもロンバートは100bpですなあという感じですね。


・都合の良いデータを持ち出すのは如何なものかという質問

これは良い質問。

『2点目ですが、日銀では、去年は、家計調査があまり良い数字ではない、あまり信用できないデータだということで、むしろ他のデータ、例えば、景気ウォッチャー調査をみて、それほど状況は悪くないと説明していたと思います。ここにきて、家計調査の数字はそれほど悪くなく、景気ウォッチャー調査の数字がここ数か月かなり悪いわけですが、家計調査への批判はあまり聞かれないほか、景気ウォッチャー調査の数字が悪いことへの懸念も聞かれません。こうした説明の一貫性の無さについてどのようにお考えですか。』

まあこれに答えろと言われる野田さんも少々不憫ですが(^^)。

『2点目の一貫性が無いのではないかということについては、そういう見方をされているとすれば――仮にもそういうご指摘があるとすれば――真摯に受け止め、今後も説明していきたいと思います。ただ、それぞれの調査にはそれぞれの癖というものがあります。個人的に言えば、私どもの行っているアンケート調査にしろ、景気ウォッチャー調査にしろ、その振れが、これまでどのように実体経済ときちんと相関を持ってきたかという点については、私自身、自信が持てる状態ではないため、繰り返しになりますが、そういったものも含めて色々な数字、データ、情報を併せながら、トレンド、基調というものを判断しているところです。』

ちょっと無理矢理っぽい答弁であります(苦笑)。ただまあ昨日も申しあげたように、基本的には非常に手堅い受け答えをする人ですなあという感じであります。





2007/08/01

お題「各種雑談/野田審議委員会見」

特攻住宅ローンに関する懸念材料って奴は全貌が中々判らんのでありまして、日替わりで思惑は動くでしょうけれども、その度に一喜一憂されると見てるほうが疲れますがなという感じですな。昨日は満面の笑みで今日はやたら深刻そうな表情で報道ってのはどうも(苦笑)。

しかしここもとの円の巻き戻し(対円で4円とか対ポンドで10円とか)は海外旅行予備軍のあたくしには天の助けでございますな(不謹慎)。


○相場点描

週明けからの債券市場はと申しますと、週末の米債上昇選挙結果はあの有様というのを受けて月曜は買いなのかと思えば相場は下がるわイールドカーブはスティープ(そっちは何となく「財政拡大」という連想でカーブが立つというのは判らんでもないけど、そんなに今日明日反応するものなのかいな)するわという相場。まあ鉱工業生産が確りではあったんですけどそれにしても何たる相場。

と思ったら米債下落して失業率も3.7%に低下した昨日は朝方は弱かったものの時間の経過と共にクイクイ上昇の巻。まあ個人消費関連指標が弱かったというのはあるんですが、失業率3.8%以来めっきり雇用環境の改善ルートでの景気下支えと物価上昇に強気になってしまっているあたくしと致しましては、この数字で下がらないのもちと驚き桃の木。月末のインデックス系さんの長期化にぶつけて相場を持ち上げたというのはあるのかもしれません(その割には最後の最後に先物失速しちゃいましたが)けど、どうもイメージと合わない相場でありますなあという感じでありまする。


んでまあ短い所ですが、TBFBの利回りは相変わらずでありまして、何でその辺買うのかイマイチ良く判らんのですが、9月償還、というか期内物の短期国債は絶賛大人気らしいですわな。単純に足元金利(あるいはGC)との比較で利回りを考えて買うという話になりますと、8月利上げと9月利上げの当たり外れによって思いっきり損得がでてしまうゾーン(しかも現在の水準は8月利上げがあまり織り込まれてないのですが・・・・)なのでありまして、単純に利回りベースで買う人のロジックでは無い買い方なんでしょという感じです。

オペ金利はオペ金利でこれまた相変わらずでありまして、共通担保本店オペの8月23日エンドは平均0.512%の足切り0.51%と遂に決定会合2日目エンドでもレートはカワランチ会長。10月17日エンドは平均0.633%で足切り0.63%なのですが、毎度お馴染みの計算をすると、8月23日から0.75%だと0.687%とかになって、9月19日から0.75%だと0.599%となりますので、これだと8月利上げ織り込みが50%以下になるんですかそうですか。まあ悪くないファンディングですなあと思うのであります(本店オペだから全店オペよりもレートが下がりやすい)。


ところで、ここんところ債券相場は堅調なのに何か一般債の水準が甘くなってますわなあという話もございますんですが、こりゃまあ例の貧乏人特攻ローンあぼーん→メリケンのクレジット市場青息吐息→こっちに波及って図でございましょう。特にサムライ債などのスプレッドが実に香ばしい展開になっておりますけど、こーゆー時って若気の至りでスプレッド拡大初期に全力買いしたくなる若人(かつてのあたくし^^)がいたりして悲喜こもごもの展開が想定されますな。スプレッド絡みで市場が大騒ぎになるとそれはもう恐ろしい展開になるのですが、外から見てると学習効果が働かない理由として、参加者が数年タームで入れ替わってるというのがあるかなあ何て思うあたくしなのでありました。まあ年寄りも残ってますけど、最近は業界の景気が良いので若い衆も随分増えましたからねえ。

正直、証券会社が飛んだり銀行が飛んだりした時とか、アジア通貨危機の時の一般債市場のスプレッドの豪快な動き(債券市場の中堅以上の人に向って「ダルマラ」「インダキアット」と言って反応するのは当時クレジット物をいじってた証拠ですのでお試しあれ^^)にから見たら、ここもとの動き自体は「ふ〜ん」程度ではあるのですが、市場規模自体が拡大している(と思うんだが)ので、実額ベースでは食らってるというのはありまして、はてさてどうなるのやらなどとまるでひとごとのように語るあたくしなのでありました。



○資金繰りが付かず資産売却キター!

と言ってもニュースのヘッドラインだけですけど、メリケン様の住宅ローン会社様が資金繰り回らずに資産売却もでございますかそうですか、これは香ばしい。

資金繰りが付かずに資産売却というのは実にこうトリガーな訳でございまして、我が国で見られた光景で最近あったのはエンロンがエライコッチャになってサムライ債が豪華格下げになった結果、評価損で日々決算型の追加型公社債投信(要するにMMF)が元本割れ→驚き桃の木で他のMMFにも解約到来→資金繰りで売り→・・・という具合でひところ短期(2年以内)の一般債どころか国債まで大変な事になったという事案でしたわな。換金売り恐るべしなのであります。

まあこの住宅ローン会社の行動がどの位の地雷で、誘爆するものなのかどうかなんてあたくし知る由もございませんので読みもへったくれもないのですが、ちょいとばかり気になるニュースなのでありました。ナムナム。



○野田審議委員記者会見

と思ったのですが時間が無くなってしまったので一部だけ。続きは明日にします。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0707b.pdf

野田審議委員の質疑応答を見ておりますと、実に確りしたというか不規則発言の無いお方だなあと感心することしきりであります。マーケット上がりの人だとどうもこう不規則発言をやっちまう面があるのは勢いで仕事をしないといけない面が多々あるからだと言い訳いたしまして(^^)、経歴を拝見するにマーケット上がりというよりも企画系のお方と見受けられる野田審議委員の手堅さが印象強いです。しかも手堅いだけじゃなくてゼロ金利解除の時にロンバートの引き上げ幅に反対したり、本年1月の決定会合では利上げ提案に賛成したりと、大勢追随系でもないということで、結構面白い(というとちと失礼ですが)存在かも知れませんね。

で、あたくしが感心したくだり。

『(問) 1月の金融政策決定会合の時点で、3人の委員が利上げを提案して否決され、2月の会合で利上げが決定されましたが、今回は7月の会合で1人の委員が利上げを提案して否決されました。懇談会の冒頭挨拶でも、先行きの経済・物価に関しての確証が必要だと言われていましたが、野田委員からみて、現状では、やはり利上げに関してまだ不透明とか不安要因とかが依然として残っていると理解してよろしいのですか。』

『(答) 不安要因が残っているかどうかについては、今の時点でコメントは差し控えたいと思います。なぜならば、私どもは、金融政策決定会合開催のギリギリまで、新たに利用可能となるデータ、あるいは諸情報というものを過去のものと重ね合わせた上で、その都度その都度、その時点その時点で先行きの見通しを形成していくわけです。極端に言えば、金融政策決定会合の採決の直前まで、そういった頭の中での作業を繰り返しているわけですので、現時点でどのような不安要因があるのかということについて、あるいは確証が持てるのかということについて申し上げるのは適当ではないと思っています。』

何たる手堅い答弁・・・・・・

#その他は明日にでも