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2007/06/29

お題「この講演は・・・(福井総裁の物価に関する講演)」

昨日は鉱工業生産のヘッドラインで買われたけど何か売りがぶちかまされて大いに下落という図。指標前に戻ったから売っちまえということなのかも知れませんが、何もそんなに(寄り直後の高値から安値まで約50銭)下がらなくてもと思うのですが、まあ何はともあれ今日の物価と雇用に注目であります。

で、昨日は相場の方には特にインパクト無かったようなのですが、これはこれはという日銀総裁の講演(というか挨拶)がございました。一橋大学主催国際コンファレンスにおける挨拶です。お題がズバリ『物価変動のダイナミクスと金融政策』でありまして・・・・・

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0706d.htm


○フィリップス曲線のフラット化の下での金融政策運営

などとあたくし小見出し書いておりますが、まあ学問的なお話は学問詳しい人のご解説に待ちたいと存じます次第であります。あたしゃ短期的(下手すると中期的)には心理戦ばっかやってる市場ばかり見てたんで、実は物価なんて皆が上ると発想を転換したらホイホイ上るもんじゃねえのかとココロのどこかで思うのであります。ま、毎年のように公共交通料金(というか国鉄とか市電とか)などがホイホイ上昇してた時代の記憶が(かすかですけど)ある人なのでその記憶に囚われているのかもしれんのだが。

まあそんなことは兎も角といたしまして。

『フィリップス曲線がフラットな状況では、物価が安定圏内にある場合には、多少の景気変動では物価は安定の範囲からはずれません。一方、一度その範囲をはずれると、修正はかなり難しくなります。フィリップス曲線がフラットであるほど、物価を上昇あるいは下降させようとする場合に必要となる、需給ギャップあるいはその変化幅が大きくなるためです。』

ふむふむなるほど。

『たとえば、米国では、連邦準備制度(FRB)のミシュキン理事が、4月の講演で、「物価の安定と整合的なインフレ率に急速に戻ろうとすると、必要以上に景気を弱めることになるかもしれない。中央銀行は、物価の安定を確保することは不可欠であるが、経済を不当に害しないようなペースで行うべきだ」と述べています。』

物価の安定に注力しすぎてオーバーキルしちゃうと元も子も無いというミシュキン(を変換したら未集金と出てワロタ^^)理事の指摘は全くもってその通りでございます。ただまあFRBの場合は所謂メジャードペースでの金利調整(中立金利へ向けての利上げ)に関して、ペースが遅かったのか着手が遅かったのかして、現在の妙な状況(貧乏人向けチャレンジャー住宅ローン市場のアフォな拡大とか、物価は上るわ景気は怪しいわとか)になっているんジャマイカという気もしないでもない(実際はどうなのよというのは最終的には結果論でしか言えない部分があるので、正直良く判らん)訳でして、FRBの今後の運営も大変でしょうなあという所ではございます。

『日本は、全く逆の方向から同種の問題を抱えています。』

はにゃ?

『日本経済は、このところ、潜在成長率を上回るペースで成長しています。設備や労働といった資源の稼働状況は高まっており、GDPギャップは需給のタイト化を示唆しています。一方、消費者物価の反応はとても弱く、足もとはゼロ%近傍となっています。このような状況では、短期間に消費者物価を引き上げるために必要となるGDPギャップは、極めて大きく、かつ不確実です。急速にGDPギャップを拡大させようとすると、景気変動の振幅を大きくし、景気拡大の持続性を危険にさらすことになりかねません。』

つまり日本では物価が上昇しにくいので、物価だけを見て金融政策運営をしていると(現在の金融政策運営が緩和的だから)景気を過熱させるリスクがあるという事を仰りたいようですな。

逆に考えるんだ、「現在の政策金利水準が中立的だから物価が上昇しにくい」と考えるんだ(AA略^^)。という論点のお話は出てこないのでありましょうか。

『むしろ、できるだけ振幅の小さい、息の長い成長を確保することで、緩やかな物価上昇を期待するほうがより安全な道だと思います。ご賢察のように、日本銀行が緩やかな金利調整を行っているのは、こうした考え方に基づくものなのです。』

まあその理屈は理屈として把握致しますが、これはよほど上手く運営しないと景気をオーバーキルするリスクとか、そもそも景気拡大への期待を摘む(ちょっと良くなると直ぐに日銀はブレーキをかけるという認識が広がる)リスクとかがあると思うんですが。一応好意的に解釈すれば、景気をふかす(by植田元審議委員)ことなく巡航速度で長期的な成長をするために日銀が速度調整をしてるってことなんでしょう。何という好意的な解釈(苦笑)>あたくし

ま、もうちょっと下世話な発想をしますと、日銀がそんなチャレンジャーな事をしなくても(だいたいからしてそのスキームは成功しても褒められず失敗(オーバーキル)したら戦犯として縛り首コースですがな)、ど〜せ物価(あるいは資産価格)とかが一般庶民様がブーブー言い出すレベルに上昇したらマスコミ様の声が「つぶせつぶせ」の大合唱になって、日銀さまおねげえしますだモードになるんですから、そこで颯爽と登場した方が組織防衛上は吉ですわな(それはそれで困るので、まあバランスを取って頂きたいのですけど)。

まーいずれにしても運営は難しいというのは判るんですけど、その間の理屈が首尾一貫した判りやすいものになっていないのが実に困る次第なのでありまして、そもそもさっき引用したように「現状で物価に過度にフォーカスした金融政策運営を行うと、金融緩和が効き過ぎる」と取れる発言をするのであれば、あの「物価安定の理解」は何なのよ(と、書いているうちに、「いやこれこれこうです」という反論が頭の中で何となく浮かび上ってしまうあたくしも日銀理論に洗脳されていますかそうですか)というお話になるような気がするんですけどにゃあ。


○例によってインタゲに関して

『歴史的に見ても、物価変動のダイナミクスは、中央銀行の政策の枠組みやその実践に大きな影響を与えてきました。例えば、80年代までの高インフレの経験は、インフレーション・ターゲティングなど、物価に焦点を当てた金融政策の枠組みを発展させる方向に作用しました。その後、物価は安定傾向をたどり、フィリップス曲線はフラット化しました。中央銀行が物価の安定という目的を追求していくうえでも、このような物価変動のダイナミクスの変化に伴い、視野を広げておく必要が生じてきました。』

『すなわち、フィリップス曲線がフラットなもとでは、物価面にはなかなか不均衡(imbalances)は現れません。むしろ一般物価に変調が生じる前に、実体経済や資産価格面で不均衡が現れる可能性があります。このため、インフレーション・ターゲティングを採用した中央銀行においても、物価以外の経済の動きにも柔軟に対応することで、長い目で見た物価の安定を図るという方向に変化してきています。』

物価が安定しているけれども物価以外の動きに対応することで物価の安定を図るとはこれまた禅問答のようなお話ですが、まあ住宅市場の強さに対応して利上げしたBOEとか、インフレターゲット導入してて為替方向から足引っ張られてさてどうしたもんか(この前為替介入してましたけど)ニュージーランド中銀(確か)とか、まあ物価「だけ」にフォーカスというのもアレなのでしょうが、FRBだって物価と雇用の安定が目的でその中でコアPCEデフレーターを重視するとかしてるとあたしゃ理解している訳で、そういうのを混ぜながらというのがインフレターゲットなんじゃねえのかという気もするんです(が、日銀批判してる政治家から出てくるのはどっちかというとガチガチの「物価上昇率ターゲット」という傾向があったりしますわな)。

『日本銀行が2006年3月の量的緩和政策解除の際に導入した金融政策運営の枠組みも、こうした物価変動のダイナミクスを念頭に置いて、かつそれが今後変化しうることも考慮したうえで作った枠組みです。』

そうなのですか。いやあのあたくし浅学非才につきその辺は良く判らんのでありますけれども。

『物価変動のダイナミクスは今後変化しうると申しましたが、そうした不確実性が、政策運営上のもう一つの重要なポイントです。すなわち、フィリップス曲線がフラットな状況が今後も続くかどうかは分かりません。本年4月の日本銀行の「展望レポート」でも、インフレ期待や企業の人件費抑制姿勢の変化によって、フィリップス曲線の形状は変わりうると指摘しました。そもそも、これまでにフラット化が進んだ理由についても、様々な仮説があります。フラット化の原因として、たとえば、規制緩和やグローバル化に伴う競争激化を受けた企業の価格支配力の低下を指摘する向きもあれば、ディスインフレ下での企業の価格改定頻度の低下を挙げる向きもあります。どの仮説に立脚するかで、将来の見通しは変わりえます。』

結論から逆算して都合の良い理屈を引っ張り出さないように心の底から切にお願い申しあげます。






2007/06/28

お題「指標待ちの世間話ではありますが」

財務長官様が「金融システムが健全」と発言して安心して株価上昇。まんまどこかで見た状況ですなあ全く。偉い人の気休め発言でもちゃんと反応してくれるうちが花ですからねえ、うひょひょひょひょひょ。

#単なる自律反発でしょうというモーサテのゲスト解説が正しいんだと思います。ちゃんとした人呼んでるじゃん。


○ちと短い所とかレポとかごちゃごちゃしてますが

別にだからどうなのというインプリケーションがある訳でもないのですが、決定会合議事要旨ネタとか武藤副総裁講演ネタとかやっているうちに、債券先物最割安銘柄の#263のレポがやたらとタイトになった挙句に一昨日の引けではチーペストが#264に逆転してみたり(さすがに昨日はまた5糸戻ってまた#263に戻りましたが)、相変わらず10年カレントゾーンのレポがタイト(しかしあの#285なんて3回発行されてる銘柄なのに何でタイトなのよ)になってみたり、昨日は特に変哲もない筈の#216の補完貸付オペが打たれたり(16億円落札されてましたが)と何かSCレポ色々とありますなあ。

まあ最近レポと言えば資金取引のGC話が多いですけれども、債券市場という意味ではレポ対象となる国債(以外も無くは無いけど)は在庫であり商品であるので、SCレポもこう円滑に行われて頂くのが宜しいかと存じます次第。買うだけ買っておいて貸し渋りとかするのは勘弁して欲しいものです。まあそもそもレポ取引に対する体制が整備されていないという投資家も多くて、こちらに関しては株の方が進んでいる(フェイルにしてもレポ(というか貸し株)にしても対応してると聞き及んでおりますが)なあと思うのです。

まあ債券レポの方がシステム対応する手間が掛かりそうだとか、債券市場のシステム案件といえばレポやる前にやらなきゃいけないネタが続々と投入されるのでどうしても後回しになるとかお家の事情というのもあるのですけど、やはり地味かつ手間が掛かるので着手しない→状況が改善されないのループになっている悪寒も。まあ先日も短期市場フォーラムのご意見募集に色々な提言されてたのが公開(するのはいいけど全部公開なので読むだけで疲れたです。マニアには面白かったですが^^)されていましたが、レポ市場に関しては色々と意見があって非常に面白いけど、当面こりゃカオスのままだなあと思うあたくしなのでありました。


ところで、ここのところ妙にCPのレートが(FB対比で)高めなので気にしていたのですが、今週スタートものあたりからCPの現先レートだけ上昇して(GCはあまり上ってない)まして、まあこりゃ純粋な需給要因だろうなという感じ。もしクレジットスプレッドが拡大するのなら銘柄間格差が広がるはずなのですが、どうもその雰囲気はなくて、単に最上位銘柄様から全部まとめて同じ位の幅で高くなっているだけみたいなので、CPディーラー様の在庫状況と発行のバランスの問題かなあとは思います。久しぶりにこんな状況を見ました(実は少々前からその傾向はあったのですけれども)。まあ一応メモメモです。


もう一丁メモなのですが、昨日の3か月FB入札。10月1日償還というどう見ても使いにくいモノだわ期末越えだわということで、敬意を表して既発よりも2毛位安いところ(平均0.661%相当)で入札したのでしたが、引け値を見ると何か期末越えのプレミアムが剥がれているんですけどこれでいいのかよという感じであります。案外ニーズがあるのねということでございましょうか。どうも感覚的にしっくり来ないのでありますが・・・・・


○大田経財相の理屈もよーわからん

まあ報道ベースのお話が元ネタなので断言するのも何なのですが。ソースは27日のブルームバーグニュース15時15分配信のニュース。

記事のお題が『大田経財相:踊り場と呼ぶ状況ではない−景気回復基調はしっかり』というものでして、昨日の午後都内で講演したという記事であります。その中で大田さんはデフレについてこのように言及しております。以下当該記事より引用。

『また、デフレについては「物価が持続的に下落する状況を言う。持続的に下落するという状況は終わっている。しかし長く続いたデフレが後戻りしないかどうか注意している」と指摘。そのうえで、「日銀も非常に注意深く金融政策を運営している」との認識を示した。』

後半はまあともかくとして、デフレが「物価が持続的に下落する状況」であり、その状況が終わっているというならデフレ脱却であり、その「デフレが後戻りしないかどうか注意している」というのは何のこっちゃなのであります。じゃあ景気の先行きに関して弱気なのかといえば、お題にあるように別に弱くはないですわな。記事ではこうなってます。

『景気の現状について、「足元でやや生産が弱い状況にある」としながらも、「踊り場と呼ぶほどの状態ではない。景気の回復基調は、しっかりしている」との見方を明らかにした。』

ちなみに、これは5月の話ですが、金融政策決定会合に出てくる内閣府の中の人の発言は議事要旨を引っ張るとこうなります。

『経済の現状については、生産の一部に弱さがみられるものの、回復している。物価の動向を総合的にみると、いまだデフレを脱却していない。』『先行きの経済・物価については、上振れリスクよりもむしろ世界経済の動向等がわが国経済に与える影響等が今後の経済動向の鍵になると考えられ、そうした観点から下振れリスクには十分留意する必要があると考えている。』

日銀の金融政策ロジックも難しいですが、内閣府の経済物価情勢に関する見解と、その見解によって導き出される行動ロジック(散々時期尚早といいながら2月会合で議決延期請求しなかったこととか)も何だかこうさっぱり意味が判らないのですが><;








2007/06/27

お題「またも虫干しですが5月決定会合議事要旨」

今朝も2年と10年の前日比利回りがわずかに低下(上昇してるのは3か月TBだけ)している画面を前に「債券市場は反落しました」とはまた・・・と思ったら6時台になったら「買われました」になってました。悪態が聞こえたのかな(^^)。

#世の中には「概ね横ばい」という便利な言葉があるんだからもっと活用すればいいのにと思うのですけど^^;


○BIS年次報告

本題に入る前に別の話ですが、BIS年次報告の中でオモロイ記述があったという話を本石町日記さんが。あたくしも言われて年次報告斜め読みしたら、『The second move was based on the second perspective』(本年2月の利上げは金融政策の枠組み第2の柱を基に行われた)という所を見てのけぞったのでありました。BISも日銀の公式見解を否定っていうのはまあ本石町日記さんのご指摘の通りで、例の枠組みがムツカシイってのがあると思いますが、BISが実は(第2の柱を物凄い勢いで誤解しているという意味で)あたくしと不勉強振りで大差無いという事でもあろうかと(え?)。

ちなみに同報告の中で日本の金融政策どうのこうのというのは4ページ(実質3ページ)ほどの分量でありまする。本石町日記さんの当該エントリーはこちらです。最初のコメントに対する次のコメント氏の豪快な釣られっぷりに乾杯→http://hongokucho.exblog.jp/7023721/



さて本題の5月決定会合議事要旨でありますが。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g070517.pdf

○CPIを巡る議論

本文8ページ(PDFでは10ページ、以下同様に2ページ分のズレがございます)でCPIを巡る議論が分かれているように見える記述がありまして、久々に「おお」と思ったんでございます。

『何人かの委員は、@昨年ほどではないが、原油価格の反発を受けて、ガソリンなどの石油製品の価格が上昇してきていること、Aマージンの比較的薄い食料品などでは、海外での需要増加や為替円安による仕入価格の上昇を販売価格に転嫁している品目が少なくないこと、B上昇品目の数が下落品目の数を上回ってきており、企業の価格設定力が徐々に回復してきている可能性があること、といった最近の特徴的な動きを挙げながら、基調的な物価上昇圧力は緩やかながら着実に高まってきていると述べた。』

『これに対し、何人かの委員は、企業間の競争は厳しく、消費者の価格上昇に対する抵抗感も依然として強いことから、企業の価格設定力はほとんど高まっていないと考えられると指摘した。また、別の一人の委員は、わが国の物価上昇率が低水準であるのは、サービス価格による部分が大きいが、これには、サービス産業の生産性や賃金の動きが影響しているのではないかと指摘した。』

後者の企業間の競争云々ですが、先日の武藤副総裁の講演の中で(昨日ご紹介したときにはその部分スルーしたのですけれども)物価の現状と先行きに関するお話があったのですが、その中でやたらと『厳しい競争環境』を連発しておりましたので、ここにあります議論の中で「物価上昇圧力はそんなに高くない」派に武藤副総裁参戦という所なのでしょうかと思うと中々な部分でございました。


結論はこうなっております。

『こうした議論を経て、委員は、消費者物価の上昇率が基調として少しずつ上がっていくとしても、当面の速度については不確実性が大きいとの見方で一致した。複数の委員は、年度入り後の各種サービス価格の改定がどうなるかが注目されるとコメントした。』

各種サービス価格の改定に関してはこの会合の後に出たCPIでは地味ながら改定されているものがそこそこございましたという結果だったと記憶しておりますが。


○珍しく不動産価格の話がポジティブのみでした(^^)

金融面の動向という部分ですけれども、例によって不動産関連のお話が出てたのですが、珍しくバブル警戒の色が無いのはどういうことでしょうか(^^)。

『上場不動産投資信託( R E I T )がこのところ上昇していることについて、一人の委員は、都心ではオフィス需給の逼迫から賃料引き上げの動きが広がっており、こうした不動産投資の収益性の高まりを反映したものと評価して良いのではないかとコメントした。』

これはどういう風の吹き回しでせうか。


○例によって情報発信について

当面の金融政策に関する委員会の検討というところで、毎度お馴染みの如く金融政策運営に関する情報発信について議論が行われている訳ですが、そもそも論として情報発信について毎度毎度長々と記述するような議論が起こるというのが何というかちとアレなものを感じるのでございますけど・・・・・

本文9ページより。

『何人かの委員は、市場では、先行きの政策運営に関連して、経済・物価情勢の改善の度合いを具体的にどのような指標をみて判断するのか、また、特に足もとの消費者物価が低迷する中で、金融政策をどのように運営していくのか、といった点について、引き続き関心が高いと指摘した。』

まあそりゃそうですが、その次がずっこけるのでありまして。

『こうした点に関連して、多くの委員が、フォワード・ルッキングな政策運営という点について市場参加者の理解をさらに深めていく必要があると述べた。』

だからそのフォワードルッキングな政策運営というのが禅問答の世界(蒟蒻問答にならないようにね^^)なのだと小一時間。

『このうち一人の委員は、個々の経済・物価指標の動きを評価する際には、それらをもとに先行きを展望して、標準シナリオの蓋然性やリスクシナリオが変化するのかどうか、という視点が大切であると付け加えた。』

ということは、フォワードルッキングがどうのこうのというよりは、やっぱ「データ重視だけど、足元の一時的な振れには一々対応しないです」「で、今の状況は緩和的ですよん」という説明の方が判りやすいと思うのでありますが、まあ実際その説明がワークするかと考えると実は自信のないあたくしがここにいるのです。

大体からして金融政策(プルーデンス方面の話ではない)の効果にタイムラグがあるんですから、余程のショックでもない限り目先に振り回されて対症療法的対応を取るなんてぇのは有り得ない話なんですから、そういう意味では金融政策フォワードルッキングなのは当たり前という事でもありますし・・・・


で、武藤副総裁の会見でも触れられてた部分。

『一人の委員は、利上げのスケジュールは決まっていないという点は当然であって、この点を強調しても、かえって日本銀行の金融政策が分かりにくいという印象を与えてしまうのではないかとの問題意識を述べた。』

『これに対し、何人かの委員は、今後の経済情勢次第で利上げのインターバルが変化しうるという点は、今回の展望レポートの中で記述を工夫したポイントの一つであり、市場の理解を得るよう、引き続きしっかりと説明していく必要があると述べた。』

うーん、正直ここは難しい。その前の展望レポートからの継続性ということを考えると、今回の展望レポートで記述を工夫したのは確かにそこは重要なのでありますが、最初の委員が言ったように、その点を殊更強調するのもワケワカランとなるというのも理解できる所でありまして、まあ結局ロジックがやたらややこしい(というかつぎはぎというか・・・)のがこのような議論を呼ぶ所なのかも知れませんな。

いじょ。







2007/06/26

お題「ネタの虫干しで武藤副総裁講演です」

今週は金曜の物価統計と雇用統計&来週の短観待ちなのでありまして(まあその前に月末のリバランスとかあるけど)正直そこまでは様子見地蔵なのであります。短い所では月末越えのGC、期末越えのFB、月末スタートのCPなんぞのイベントがございますけどね。

という訳で、別に意図的にそうなった訳ではないですが(汗)、ネタ先送りになっている武藤副総裁の講演(記者会見を先にネタにするとは何たる逆順)をば。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0706b.htm

量的にはそんなに長くないですし、基本的には政策委員会の出している公表文に沿った説明ではありますが、ちょっと先行きに関しては慎重なトーンという印象を与えそうな感じであります。ただまあ一部の読み方については微妙なのですけれども。

○経済の先行きリスク要因

『以上のように、この先2年程度を展望した場合、わが国経済は、潜在成長率を幾分上回る2%程度の息の長い成長を続け、消費者物価は、目先はゼロ%近傍でも、より長い目でみると、プラス幅が次第に拡大していくとみています。これが最も蓋然性が高い見通しだと考えていますが、将来のことには当然不確実性がありますので、そうならない可能性も考えておく必要があります。ここでは、幾つかのリスク要因についてお話したいと思います。』

ということで、先行きのリスク要因を3点言及してますが、そのうち2点が下向きのリスクで、1点が上向きのリスクとなっております。

『一つ目のリスク要因は、海外経済の動向です。(略)米国経済については、住宅市場の調整の進捗度合いや設備投資の先行きを不安視する見方もあります。ここ数か月話題になっている低所得者層を対象にした住宅融資の返済の延滞問題、いわゆる「サブプライム住宅ローン」の問題については、景気全体や金融システムに広範な影響を及ぼさないとの見方が強まりつつあるようですが、住宅市場の調整が想定以上に深刻なものとなったり、設備投資が下振れた場合には、景気は一段と減速する可能性があります。』

『また、米国では、資源の稼働状況が高水準であるもとで、インフレ圧力が持続するリスクもあります。コアの消費者物価の伸び率をみると、このところ幾分低下していますが、依然やや高止まっています。仮にインフレ圧力が減衰しない場合には、長期金利や為替相場などの反応を介して、米国のみならず、世界の金融市場や経済に悪影響が及ぶリスクがあります。(中国の話もあるのですが以下割愛)』

ということで、武藤副総裁の言及では海外のインフレ圧力に関して「金融市場や経済に悪影響が及ぶリスク」と微妙な表現になっています。インフレ圧力に関してアップサイドリスクという表現をする傾向にある福井総裁とはちと違いますなという感じでして、この表現はどっちかというと下振れリスクっぽい印象ではありますが、「減速」と言わないで「悪影響」と言うのが何とも微妙であります。うーむ。


『二つ目のリスク要因は、IT関連財について在庫調整が継続していることです。(略)この分野は供給能力の拡大ペースが速く、また、そうしたもとで稼働率の維持を優先する動きもみられることから、例えば、海外経済における景気減速リスクが顕現化し、需要が下振れる場合には、在庫調整圧力が一段と高まる可能性もあります。』

IT関連の話は金融経済月報などでは一旦第2線に引っ込んだ感じですが、まあこの部分は引き続き注目ということでしょうか。ちなみに、さっきから引用で(略)とやってる部分に何が書いてあるかといいますと(本来URL先を見て欲しいのですが^^)、「このリスク要因に関しては基本的には大丈夫だと見られます」という話になっておりますので念の為。


『三つ目のリスク要因は、金融環境などに関する楽観的な想定に基づいた金融・経済活動の振幅の拡大です。(以下いつものお話です)』

ということで、こちらはいつものお話なのですが、ちょっと注目したのはここで現在の金利に関して『企業や金融機関の財務体質が改善している中、実質金利は極めて低い水準にあることから、金融・経済活動が積極化しやすい局面にあります。』と言及していることでして、展望レポートでは『経済・物価情勢の改善が展望できる状況下、金融政策面からの刺激効果は一段と強まる可能性がある。』という表現になっておりまして(当然ですが4月27日の決定会合議事要旨でも同じ指摘です)、現在の金利水準についての武藤副総裁の認識は展望レポートよりももうちょっと「現在が緩和状況」という方向にシフトしているように見えます。



○んでまあ物価面ですが

良く見ると物価面に関しては上振れリスクの方が多かったりするのでありますよ。まあゼロ近傍で下振れリスクがでかいとなると利上げどころの騒ぎではないですが(^^)。

『一つには、景気が拡大しても、物価が想定のとおりには上昇しないリスクです。先ほどお話したように、企業が厳しい競争環境に直面している中で、賃金の上昇テンポが生産性との対比で高まっていくかどうかは不確実です。また、家計部門への所得波及が想定以上に遅れる場合には、消費財・サービスを巡る需給環境があまり改善しないことにもつながります。』

これって一見すると下振れ(というか足踏み)リスクに言及しているようにも見えますが、先日ご紹介した4月27日の金融政策決定会合議事要旨を見ますとこのリスクは「第2の柱に基づく点検」で言及されているリスク要因でありまして、金曜にも申しあげたように、「消費者物価指数が上昇しにくい状況下で、消費者物価指数に過度にフォーカスして金利調整が遅れると問題がある」という話にも繋がるので、これまた実に微妙なお話。

『一方、潜在成長率を上回る成長が2008年度まで持続すれば、設備や労働といった資源の稼働状況は一段と高まりますので、これまで低位で安定してきたインフレ予想が上昇する可能性があります。また、企業の人手不足感が高まっている中で、良い人材を確保しようとすれば、人件費抑制姿勢を変化させる可能性もあります。そのような状況では、労働者側の賃金に対する姿勢も徐々に変わっていくかもしれません。これらは、物価に上振れ圧力が加わることを意味します。』

まあ潜在成長率云々は兎も角として、あたくし個人的には賃金経由の物価上昇圧力は気にしております(ので週末の雇用指標注目ですが)。

『また、原油をはじめとする国際商品市況については、地政学リスクなどの要因によって、上下双方向に大きく振れる可能性があります。そうした場合、国内企業物価や消費者物価にも大きな影響を与えることになりますので、その動向をよくみていく必要があります。』

これは上下両方向でございます。現在はサガランチ会長ですな。



○金融政策に関しては見事に公式見解通り

んでまあその次が金融政策に関してなのですが、こちらは見事な想定問答ですねという感じであります。これではヘッドラインリスクも起きませんわなという所で(^^)。

正直申しあげて引用しても展望レポートなどの引き写しになる(念の為3回読んでみたのですが^^)のですが、記者会見で質問のあった部分を引用してみるのであります。

『経済・物価が今後とも見通しに沿った動きを続けていくためには、政策金利水準の調整を行っていくことが必要となってくると考えられます。ただ、必要な調整のペースは、今後の経済や物価情勢の改善度合いに応じて、決まってくるものであり、予めそのスケジュールが決まっているものではありません。』

最近スケジュール感を否定しているのは多分正直な所なのではないかと思うのです。というかスケジュール感があって金利調整をしていくのであれば、かつてのFRBみたいに中立金利水準に向けてメジャードペース(しかし今でも不思議なのは「メジャード」が何で「ゆっくりした」となったんだろという事^^)で利上げをしていくというロジックで行った方が理屈としては判りやすくなると思うんですが、多分FRBの利上げ開始よりも日銀の利上げ開始のタイミングが早めだということもあるんで足元ルッキングのゆっくりした(どう見てもFRBより遅いですわな)調整となるっちゅうことなのでしょうか。

と申しますか、あたくし個人的にはFRBの利上げ開始は結果的に見て少々遅かった(=緩和を引っ張りすぎた)んジャマイカという感じもするところ(本当はどうだったのかは良く判りませんので今後の検証を待ちたいのですけれども)でして、まあ難しいところではありますわな。日本の場合はもともと米国ほどインフレ期待が無いですから、緩和引っ張っても急にリスクが顕在化するとも思えないところではありますので、これまたムツカシイお話ではありますわな。

#と、最後は何が何だか良く判らんグダグダになって本日は終了なのでした。また引用で増量してしまいましたすいませんすいません。






2007/06/25

お題「ちと順序が逆ですが武藤副総裁の会見より」

てな訳で、先週の武藤副総裁の講演と会見なのですが、ちと順序が逆になりますが今日は会見の方を。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0706c.pdf

まず最初にあたくしのまとめですが、武藤副総裁の記者会見の全体的な印象を最初に申し上げますと「何というスキの無い会見」と言ったところかと思います。武藤さんが総裁になったら福井さんのような「オイシイ」会見は中々見せてくれないなあと思うと共に、阪神タイガースがどうのこうのというような愚劣としか言いようの無い質問をするテレビ局のアナウンサーがしゃしゃり出てくる(そういえばそのアナウンサーは今・・・・)ことも無くなるんでしょうね。


○武藤副総裁の「市場との対話」

また「8月に利上げをするのか」というくだらねえ質問があったのですが、引っ掛け質問は止めなさいと思いますよ。まあ記者サイドはどうにかして言わせたいんでしょうな。武藤さん相手に聞いても無駄ですけどねえ。

『3点お尋ねします。1点目は、OIS(Overnight Index Swap)市場や金融先物市場をみると、8月、9月の利上げをほとんどフルに織り込んでいます。(途中割愛)要するに、市場がもう利上げするのだろう、8月に金利が上がるだろうとみたとしても、政策委員会としては、よくよく先行きを考えた上で8月に利上げをしない可能性もあると考えても良いですか。(以下割愛)』

この露骨な質問に対して武藤副総裁が質問を返しているのが何とも(^^)。

『1点目の質問の中で、8月利上げ云々とおっしゃいましたが、ご質問の趣旨は、「8月、9月のOIS市場の織込みを踏まえて、8月に利上げを実施するのか」といったことなのか、それとも、「それよりも前に織り込まれている部分を考えても8月に実施するのか」という趣旨でしょうか。』

で、要するに「市場がフルに利上げを織り込んでも利上げをしない場合があるのか」という質問に内容を明確化させて武藤副総裁は実に素晴らしい応答をしています。以下長いですけれども、おっしゃるとおりですので、適宜段落わけしながら引用します。

『1点目の市場が次の利上げをどのように織り込んでいるのか、そして、その織り込んだ姿に対して日本銀行はどのように対応していくのかというご質問については、かねてから申し上げていますように、日本銀行として、いつ、どういうタイミングで政策変更があり得るけれども、こういうタイミングではない、といった情報発信をするのは適切ではない、と私は考えています。』

これはその通りであります。で、その次に中央銀行と市場の対話について武藤さんが持論を展開しているのです。

『中央銀行と市場との対話はいかにあるべきか、ということにご質問の本質があると思います。この点に関しては、中央銀行は、まず経済・物価情勢に関する判断と金融政策運営の基本的な考え方を情報発信し、市場参加者は、そうした情報を踏まえた上で、自らの経済・物価観に照らして、市場金利を形成します。』

『中央銀行は、その形成された金利から市場参加者の経済・物価観についての情報を得ますが、自らの情勢判断に役立てていくということであって、それに従うということではありません。この双方のやり取りで成り立っているのが情報発信であると考えます。』

「市場は鏡」という福井総裁よりは一歩引いたニュアンスを感じましたけれども、こうでなければアラン・ブラインダー元FRB副議長の言う「自分の尾を追う犬」になり兼ねない訳ですから。

『日本銀行として、タイミングはいつだということを情報発信して、それにマーケットが付いて行くというのも適当なことではありませんし、逆の意味で、マーケットがあることを示した、ということに対してそれに追随していく中央銀行というのも適当ではありません。中央銀行が市場参加者による金融政策の見方について、論評を加えること自体が、双方向のコミュニケーションを阻害することになり兼ねず、適切ではありません。市場参加者による金融政策の見方について、私どもとしては論評する立場にないということです。』

イールドカーブがどうこうとか言うのがお好きな審議委員もおいでのようですが、やはりちょっとどうなんでしょうかねえと思うのですが。


○4月の展望レポートで「改善度合いに応じたペースで」金利調整となったこと

これも中々良い質問。

『同じ5月16日、17日の議事要旨の中で「何人かの委員は、今後の経済情勢次第で利上げのインターバルが変化し得るという点は、今回の展望レポートの中で記述を工夫したポイントの一つ」としています。具体的には、4月の展望レポートでは、金融政策運営について、「経済・物価情勢の改善度合いに応じたペースで徐々に金利水準の調整を行なう」として、昨年10 月の「情勢の変化に応じて徐々に」という記述から変化しています。この点も工夫したポイントの1つと理解してよろしいのでしょうか。』

『展望レポートの表現の中で、今後の政策運営の基本的な考え方に関しては、まさに今ご指摘の点が一番大きな変更点です。そこで、表現したかったことは、一定のシナリオのもとで、一定期間経過したら、政策変更を行なっていくといった、いわゆるスケジュール感をもった政策変更という議論が存在することに対して、私どもとしては、「スケジュール感をもった政策変更は、考えていません。要するに、今後の景気回復のペースの度合いに応じて対応していきます」ということを明らかにしたわけです。ご質問にあった議事要旨の記述がその部分を指していると、私も理解しています。』

まあこの裏を返しますと、量的緩和解除からゼロ金利解除に至る部分ではスケジュール感があったんじゃないのかなって感じるんですよね。それがCPI改定以降ちょっとトーンダウンしたと言ったところなのではないかなあと思いますな。

んでまあその次の質問で「じゃあ当面不確実性があると一致しているんだから利上げのインターバルは長くなるんですか」というのが飛んで来る訳ですが、それに対する武藤さんの答え。

『不確実性については、ダウンサイドの方にバイアスがあると言うことも可能ですが、私は、物価上昇が経済回復の度合いに応じて上昇していかないリスクがあると同時に、何らかの展開を契機にして、例えばインフレ期待が高まるということによって上振れるリスクもありうる、即ち、アップサイド、ダウンサイド両方のリスクがあると考えています。従って、ペースに応じた政策展開が一方的に先延ばしになるということではなく、遅くなるかもしれないし、早まる方向に働くかもしれないと理解しています。』

ということで、当面の金利調整(つまり利上げプロセス)は足元ルッキングになるというのが一点ですが、武藤さんのアップサイドリスクの説明がちょっと弱い(他の質問に対する答で「インフレが急激に起こる可能性は今のところ迫っていない」と言ってます)ので、武藤さんもちょっとダウンサイドリスクの方に注意しているような印象を受けました。


○しかし隙が無いですな

こんな質問も。例によって一部を切り取ってますが。

『リスクをアップサイド、ダウンサイドとご丁寧に説明頂きましたが、福井総裁は、IMC(International Monetary Conference)の会合や6月の記者会見において、最大の敵は急激なインフレ期待の増大である旨をおっしゃったと思います。情報を受ける側としては、「もちろんアップサイド、ダウンサイド両方のリスクがあるが、インフレについては、CPIだけみていてもだめで色々なものをみなければいけない。もしかすると、色々な国の中央銀行が利上げに転じている中で、知らないうちにインフレが進行していて、急にインフレ期待が高まることもあるということを強調されていたのではないか」と思うのですが、具体的にはどのようなことを想定しておられるのでしょうか。』

これに対する武藤さんの答え。

『IMC等における総裁発言については――正確な文脈を覚えておりませんので留保が必要ですが――、物価を巡るリスクには、アップサイド、ダウンサイド両方ある中で、ダウンサイド・リスクとして物価下落がさらなる物価下落を呼ぶ、という意味でデフレ・スパイラルのリスクがあるかというご質問であれば、その可能性はかなり小さいと判断しています。(以下割愛)』

『一方、インフレが急激に起こる可能性については、私ばかりでなくかなり多数の意見だと理解していますが、その可能性が喫緊に迫っているとは考えていません。しかし、いわゆるリスク管理のあり方として、めったに起こらないかもしれないが、起こったら非常に大きなダメージを経済・物価に与えるおそれがあるものに対しては、私どもは極めて鋭敏でなければならないと思います。その意味で、「最大の敵」という表現はともかくとして、やはりインフレ期待が急激に上昇することに関しては私どもは極めて注意深くなければならないと考えています。』

何というバランスの取れた発言。で、『「最大の敵」という表現はともかくとして』ってのは福井総裁の表現がヘッドラインリスクを招きやすい事についてちょっと苦言を呈しているように見えてそれにもまた萌えるのでございますが(^^)。


○良い物価下落、悪い物価下落という表現は・・・・

その前の質疑で『コスト引き下げ努力、生産性の向上、規制緩和等による競争の促進等によって物価が上昇しにくい状態が起こること、あるいは物価が引き下げられること自体は、プラスに評価するべきだと思います。』って武藤さんが答えた所にすかさず質問をするのも鋭いですが。

『個々のケースで、歓迎できる物価下落があるという理解でよろしいでしょうか。』

で、武藤さんの答がまたスキの無いお答えで。

『私は良い物価下落とか悪い物価下落という議論を軽軽に語るべきではないと思います。一般的な表現として案外人口に膾炙したものではありますが、簡単に良い物価下落、悪い物価下落と言っても、最終的にはなかなか判断が難しく、一般的にそのように言うことには慎重であるべきだと考えています。しかし、個別の事例について、規制緩和による競争強化を企図して料金等が引き下げられることがあるならば、それは政策としてむしろ望んで行われているものであり、その限りにおいて望ましいことと考えています。』

まさに「一般的にそのように言うことには慎重であるべきだ」ということなのでしょうな。

まあそんな感じで、スキの無い質疑応答で、中立的ではありますが、無理矢理タカかハトかと色をつければどっちかというとハトに近くなるのではないかなあと思うのは、足元ルッキングについて強調している所とか、ダウンサイドとアップサイドで並べている要因がちょっとダウンサイドの方が具体的っぽい所とかでしょうか。まあ国内経済要因というよりは海外要因のダウンサイドリスクなんで、それほどでかいわけでもないでしょうが。

#引用が多くて増量になってしまいましたね。





2007/06/22

お題「あたくしの大いなる間違いについて(第2の柱関係など)」

ということで、本日のドラめもんは是非ご覧下さい。いやあの昨日書いた内容っておめえ間違ってるだろと思ったお方は別に良いのでありますが・・・・

昨日書きました4月27日の議事要旨関連に関するお話で、読者の皆様のご指摘によりあたくしの大勘違いが判明したのは「5月14日の日経記事に関する話」と「第2の柱に関するあたくしの理解(というか誤解)」でございます。まずは日経記事関連のお話から。


○日経報道を否定する福井総裁インタビューがございました(汗)

物価安定の理解に対するバラツキという5月14日の日経新聞記事を紹介がてら昨日は4月27日の議事要旨をご紹介しましたが、その部分を再掲すると

『こうした議論を踏まえて、委員は、「中長期的な物価安定の理解」の具体的な数値についての議論を行った。多くの委員は、概ね1%を中心値として、上下0.5%ないし1%程度の範囲との見方を述べた。』

『さらに別の一人の委員は、1%よりもゼロに近いプラスの値を中心に考えていると述べた。』

(4月27日金融政策決定会合議事要旨より)

となります。まあこの時点で報道されていた「マイナス0.5%−プラス0.5%」というのが微妙ではあったのですが、頭から「これは誤報」と申し上げるわけにも行かず、他のレンジの部分が合っていたので「実は誤報じゃなかったのかなあ」と悩んでしまい、間違いと言い切る自信が無かった次第でありまして(汗)。

で、読者の皆様からご指摘を頂いて始めて知ったのであります(という時点で自分の不勉強ぶりを恥じ入るしか無いのですが)が、週刊東洋経済の6月16日号に福井総裁のインタビュー記事が掲載されておりまして、その中で5月14日の日経報道に関する質問と答えがございました。インタビューの真ん中あたりになりまして37ページ下段になります。

そこで、福井総裁は日経記事に関して明確に否定しておりまして、各審議委員のレンジは0%−2%であると発言していました。ご教示頂きました読者の皆様に大感謝すると共に、自らの不明につきましてここに謝罪させていただきたく存じます。



○『新たな金融政策運営の枠組み』に関するあたくしの大誤解

本日は自分の不勉強ぶりを晒す文書ばかりでして、こういうのを「穴があったら入りたい」って心境だなあと思うのですが、自分の間違いはちゃんと訂正しないとネットの文章はキャッシュになって半永久的に残るんで、きちんと直さないといけないです。ということであたくしの大誤解をご紹介しましょう(超大汗)。

昨日あたくしはこう書きました。

(昨日のドラめもんより)
・・・・とつらつら考えますと、この金融政策の第2の柱ってのは「より長期的な展望でのリスク要因」というよりは単に「サブシナリオの点検」なんじゃねえのかという気もしてきた(冷静に考えたら展望レポート見た時点で気が付いても良かったように思えますが、そこはあたくしの不勉強の致す所)のであります。(つまり時間のスパンが同じじゃねえのという意味です)

・・・・何だかこの「第1の柱」と「第2の柱」の区別が良く判らなくなって参りました><;
(以上昨日のドラめもんより)

で、読者の皆様からご指摘を受けまして、改めて昨年3月の文書を読んでみたあたくしが愕然としてしまいましたんですよ(滝汗)。

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/k060309b.htm

『(2)2つの「柱」に基づく経済・物価情勢の点検』

『金融政策の運営方針を決定するに際し、次の2つの「柱」により経済・物価情勢を点検する。』

『第1の柱では、先行き1年から2年の経済・物価情勢について、最も蓋然性が高いと判断される見通しが、物価安定のもとでの持続的な成長の経路をたどっているかという観点から点検する。』

『第2の柱では、より長期的な視点を踏まえつつ、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現するとの観点から、金融政策運営に当たって重視すべき様々なリスクを点検する。具体的には、例えば、発生の確率は必ずしも大きくないものの、発生した場合には経済・物価に大きな影響を与える可能性があるリスク要因についての点検が考えられる。』

目の玉かっぽじってよく読んでみますと、第1の柱はあたくしの理解しております通り、先行き2年以内のメインシナリオに対する点検であります。で、肝心の第2の柱なんですが、「上記メインシナリオ以外のサブシナリオ・リスクシナリオに対する点検」なんですね。『より長期的な視点を踏まえつつ』というのをいつの間にやら『より長期的な視点を踏まえ』と脳内変換して理解しておりました。何たる勘違いと大いに愕然とするあたくしなのであります。いや正直申し上げて、改めて読んだ瞬間にリアルで冷汗でまくりでした。

あたくしが把握したことをもうちょっと詳しく整理してみます(ということですので、もしあたくしの理解に問題ありましたらご教示賜りますと大変ありがたく存じます。えーっと合ってっても「それで大丈夫」って教えていただけるともっと嬉しいのですが、汗)のでお付き合い下さい。

この第1の柱、第2の柱ってえのは、「物価安定の下での持続的な経済成長」を点検するための判断ファクターが2つあるというお話でありまして、じゃあその「物価安定」とは何ぞやというのが展望レポートで示される「中長期的な物価安定の理解」および2006年3月10日の日銀公表文『「物価の安定」についての考え方』であります。

即ち、先行き2年以内の経済物価情勢に対するメインシナリオが「物価安定の下での持続的な経済成長」に合致しているかどうかを点検するのが第1の柱でありまして、それ以外のサブシナリオ・リスクシナリオに関しての点検および、より長期的な観点、即ち2年を超える期間を展望した場合に、目先2年のシナリオでは「物価安定の下での持続的な経済成長」に合致するけれども、その先まで考えた場合にそうはならないリスクなどを点検する、というのが第2の柱であるということとあたくしは理解致しました。即ち、これらの「柱」はあたくしたち市場参加者が良く使う言い方の「相場シナリオ」なのではなくて、相場シナリオに則った「点検作業」なのであります。うーむ書いてて判ったような判らんような表現ですが、もうちょっと良い表現があるのかもしれません。

そうなりますと、昨日申し上げた「第1の柱と第2の柱の時間軸が同じなんじゃないか」というのは、第2の柱が見ているのは第1の柱でフォローされない部分の全てなのですから、見ている時間のスパンが重なるのは当たり前という事になるのですよ。いやあもう思いっきり誤解もいいところで、自分の不勉強ぶりに情けない思いでございます。

で、こういう位置づけになっているからこそ、6月15日の福井総裁記者会見で「第1の柱と第2の柱に等しくウェイトを置いている」という発言が出るのだと理解致しました次第。「メインシナリオだけでなくてリスクシナリオにも十分目配りしていますよ」というメッセージだったと言う事なんですね。



○ただまあこれ誤解を誘発しやすいのは確かだと思うんです(と言い訳)

えー、こういうのを俗に「引かれ者の小唄」などと申しますが(爆)、あのその一応言い訳になっちゃいますけどちょっとだけ申し上げますね。

先ほども申し上げましたが、市場参加者が相場見通し会議なんぞのようなイベントを実施する際には、時間軸とその間のメインシナリオを中心にして頭の中を整理しながら話をすると思うんですよ普通。そしてサブシナリオとかリスクシナリオとかは「メインシナリオの前提を崩す場合」というような扱いとしてある意味セットで考えるものになると思うんですなこれがまた。

で、一方で先ほどご紹介した「新たな金融政策の枠組みの導入」の説明文書での「第1の柱」「第2の柱」は第1の柱と第2の柱の中で同じタイムスパンと別のタイムスパンが混在しているので、市場参加者が普段慣れている頭の中の整理法とちょっと違っている訳でして、こりゃまあ誤解を誘発しやすい書き方だと思うんですよ。ついでに申しあげると、「より長期的な視点を踏まえつつ」って部分がまた誤解を誘発しやすい訳でして、もうちっときっちりと「第1の柱で点検された見通しに対する様々なリスクや、より長期的な視点に立った場合に重視すべきリスク」というような書き方にしていただけますとクリアカットになったのではないかと思います。冗長な文書があまり美しくないのは理解できますが、時にはくどく説明するのも大事なのではないかなあと思ったのでありました。



そんな訳ですから、昨日ご紹介した4月27日の決定会合議事要旨において、『また、下振れの場合として、経済情勢の改善が足踏みするリスクがあるほか、経済情勢が改善する場合でも物価が上昇しない状況が続くリスクもあるとの点で認識が一致した。』とあるのはまさしく第2の柱の点検であるということになる訳です。

で、ここもややこしいと思うのですが、『経済情勢が改善する場合でも物価が上昇しない状況が続く』のがリスクとは何のこっちゃ(それが一番望ましい姿ではないかという意味ね)と瞬間思ってしまうのですけれども、これは物価が上昇しない状況が続き、物価指数の数値に過度にファーカスして政策運営を行うことによって、経済情勢の改善に見合った政策金利の調整が遅れ、より将来において必要以上に経済情勢が過熱するリスクがあると言いたいのかなと思ったのですけれども、その理解で合っておりますでしょうか。。。。


ということで、議事要旨の続きとか武藤副総裁の講演+記者会見とかネタが全部繰越になってしまい、本日はあたくしの無知蒙昧を披露する場となりました、アセアセ。

(追記:一応上記の理解で第1の柱、第2の柱の整理は合っているようです^^)







2007/06/21

お題「決定会合議事要旨(4月27日)」

日銀からはネタを3本投下していただいた訳ですが、まあ3本とも惜しくも相場にはインパクトになりにくかったようですな。まあ想定の範囲内ってのもありますが、寄り付き10分前に決定会合議事要旨のように読むのに時間がかかるものを出されても精査してるヒマがないという感じも致しましたです。ま、昨日は法人企業統計があったのでそっち優先でもあったんですが(^^)。

ということで3本まとめてやっつけるのは重いので今日は決定会合議事要旨で力尽きるものと存じます(汗)。まずは4月27日の議事要旨から。(追記:と思ったら案の定時間切れになったので今日はこの要旨チェックだけで勘弁願います。明日二日酔いじゃなかったら頑張るだよ)

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g070427.pdf
(4月27日の議事要旨)

重大な追記:読者の皆様の指摘によりまして、この日に書いた内容に大いなる誤解や大いなる勘違いが連発していることを知りました。ということで、翌日にこの内容を確認、というよりは書き直しのエントリーを作成致しました。詳しくはこちらをご覧下さい。

○1か月前の新聞報道の裏を取ってみる(^^)

旧聞もいいところですが、5月14日の日経新聞(諸般の事情で手元にあるのが国際版なんですが)3面に「物価安定の目安、日銀にバラツキ」というお題で記事が出たんですが、その見出しに『消費者物価 小幅マイナス容認論も』『金融政策 微妙な影』とございまして、記事のリードには『この(引用者注:物価安定の目安)討議の際に一人の委員は下限は小幅マイナスでよいと主張した。』とございまして、記事ではこの主張が「プラス0.5%〜マイナス0.5%」であったという報道でした。

・・・で、まあ今回の議事要旨で該当する部分は要旨の11ページ以降(PDFファイルでは13ページ以降、以下同じようにファイルと要旨のページが違うのでご注意)になるのですが、具体的な数字を議論してた部分は本文12ページですな。

『こうした議論を踏まえて、委員は、「中長期的な物価安定の理解」の具体的な数値についての議論を行った。多くの委員は、概ね1%を中心値として、上下0.5%ないし1%程度の範囲との見方を述べた。』

で、問題の委員と見られる人の部分はこうなります。

『さらに別の一人の委員は、1%よりもゼロに近いプラスの値を中心に考えていると述べた。』

なるほど幅が1%で中心がゼロに近ければプラス0.5%からマイナス0.5%というのも似たようなもんといえば似たようなもんでもありますな。記事では『マイナスの下限を主張した委員は、中長期的に望ましい水準はゼロ%より少し上』となっていたのでまさに記事の通りだったりします。なるほどなるほど。

というかそもそも論として、金融政策決定会合での議論内容が議事要旨公表前に表に出ること自体が如何なものかという話がありますわな。リークする方もする方だし書く方も書く方。しかも書いてるのが日本の経済クオリティペーパーと自他共に認める日経新聞って所に落涙を禁じ得ませんが。

ちなみに、上記日経記事によりますと9人の委員が示した望ましい物価上昇率の図まで出てまして、もう思いっきり見てきたような記事になってますが(図を文章で説明するのはめんどいのでお暇な方は古新聞を漁って下さい)、その図と議事要旨の記述を比較してみると日経の記事の方が詳しかったりする(概ね議事要旨の記述で裏を取ると大体正しそうな感じです)のですな。ちなみに議事要旨での記述はこのようになっております。

『多くの委員は、概ね1%を中心値として、上下0.5%ないし1%程度の範囲との見方を述べた。このうち何人かの委員は、中心値は1%より若干低い水準を考えていると付け加えた。これに対して、一人の委員は、1%から2%程度の範囲が適当と述べた。また、別の一人の委員は、0%台後半との意見を示し、さらに別の一人の委員は、1%よりもゼロに近いプラスの値を中心に考えていると述べた。』

どう見てもリーク記事です。本当にありがとうございました。

・・・という話は兎も角、この記述と日経の記事併せて見てると、望ましい物価上昇率のレンジは0%〜2%で示されてて中心値が1%になってるけど、最頻値取りに行ったら1%切るんジャマイカという気がするんだけど。。。。。。


○2つの柱の検討部分でちと判らなかったんですが><;

本文8ページより。

『第1の柱、すなわち、2008年度までの経済・物価情勢について最も蓋然性が高いと判断される見通しについて、政策金利に関して市場金利に織り込まれている金利観を参考にしつつ点検すると、委員は、わが国経済は、生産・所得・支出の好循環のメカニズムが維持されるもとで、息の長い拡大が続く可能性が高いとの判断で一致した。』

まあそうですか。

『第2の柱、すなわち、より長期的な視点を踏まえつつ、金融政策運営という観点から重視すべきリスクの点検を行った。この点に関して、委員は、金融政策面からの刺激効果が一段と強まる可能性がある中で、中長期的にみて、経済・物価の振幅が大きくなったり、非効率な資源配分につながるリスクに留意する必要があるとの認識を共有した。また、下振れの場合として、経済情勢の改善が足踏みするリスクがあるほか、経済情勢が改善する場合でも物価が上昇しない状況が続くリスクもあるとの点で認識が一致した。』

ここの部分が正直良く判らなかったんですが、「また、下振れの場合として」云々が「第2の柱の検討」に掛かるのか、単に経済物価情勢の先行きの下振れリスクなのかが読んでて微妙に判りにくいんですよね。で、仕方が無いので展望レポートの該当箇所を読んでみるとこうなります。

(展望レポートより)
『第2の柱(略)を点検すると、経済・物価情勢の改善が展望できる状況下、金融政策面からの刺激効果は一段と強まる可能性がある。例えば、仮に低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着するような場合には、企業や金融機関などの行き過ぎた活動を通じて、中長期的にみて、経済・物価の振幅が大きくなったり、非効率な資源配分につながるリスクがある。一方、前述のような下振れ要因が発生した場合、経済情勢の改善が足踏みするような局面が考えられる。また、経済情勢の改善にもかかわらず、物価が上昇しない状況が続く可能性もある。』

ということですので、展望レポートの記述と議事要旨を合わせれば、先ほどの「下振れの要因として」云々は第2の柱の検討だということになりますです。はい。

じゃあ引用部分で書いてある「前述のような下振れ要因」とは何ぞやという話になりますと、そのちょっと前のあたりで示されている経済物価情勢の先行き展望の中で発生しうる下方向の不確実性ということになると思われます。

・・・・とつらつら考えますと、この金融政策の第2の柱ってのは「より長期的な展望でのリスク要因」というよりは単に「サブシナリオの点検」なんじゃねえのかという気もしてきた(冷静に考えたら展望レポート見た時点で気が付いても良かったように思えますが、そこはあたくしの不勉強の致す所)のであります。(つまり時間のスパンが同じじゃねえのという意味です)

・・・・何だかこの「第1の柱」と「第2の柱」の区別が良く判らなくなって参りました><;

#判らなくなった所で時間切れなので続きは明日以降・・・




2007/06/20

お題「総裁会見続きその他少々」

梅雨を割愛して急に暑くなるもんだから調子が悪いです(;;)

まずは昨日の続きを少々。

○いつものことですがインフレ警戒全開モード??

昨日最後にご紹介した「インフレ期待が高まることが最大の敵」云々ですが、これってどう見ても言わずもがなですなあと思うのは、その話に対応する質問がこうだったからでもあります。

『3点目は、足許金融市場で長期金利が上昇し、為替相場では円安が随分加速していますが、金融政策との関係も含めて金融市場の動向をどのようにご覧になっているか、お伺いします。』

強いて言えば、その前の部分になります「金融政策の変更は第1の柱ですか第2の柱ですか」ってのに答えたということなのかも知れませんが、それにしてもわざわざ『一般論として申し上げると』って話をしてインフレ期待が高まるリスクに言及するというのはちと早いんじゃないかと。まあ逆に言えば、福井総裁のホンネには「緩やかなインフレ」という選択肢は無いちゅうことなんでしょうなあという印象を強くするのでありました。ヘッドラインにならなくて良かったですね(という問題ではないが)。

で、米国経済に関しての次の質問(要旨4ページ目)に対しても以前から同じ趣旨の話をしてますが、インフレ圧力に関して「アップサイドリスク」とするような発言をしておりますわな。例によってやたら長いので適宜引用。

『米国経済が、いわゆるソフト・ランディング・シナリオを全うしていく調整プロセスの中で残るインフレ圧力を完全に吸収し終えることができるかどうかについては、まだ幾ばくか不確実性を残しているのではないかというとらえ方ができると思います。そういう意味では、米国経済についての見方が、一頃に比べて手放しに楽観できる良い方向に大きく振れているかというと、私はそうではないと思っています。米国経済をウォッチする非常に多くの人々は、引き続きダウンサイド・リスクと、残存するインフレ圧力がどう吸収されるかというアップサイド・リスクの両方のリスクをにらみながら今後の推移を引き続き注目しているというのが実態ではないかと思います。』

ちなみにダウンサイドリスクに分類されるのは住宅市場の調整問題ですのですが、あたくし思いまするに景気が云々って文脈だったらインフレ圧力が吸収できないってのは必ずしもアップサイドじゃない気もするんざますが、まあ金融政策って意味では利上げってことなんでしょうかにゃ。


○確認すべき事項が非常に多い云々の追補ですが

これまた昨日の補足なんですけど、要確認事項が多い云々の部分に関して実は具体例を列挙してましてですな、それは何かと申しますと、「米国経済」「設備投資」「個人消費」でして『内需の基調的な拡大の持続性について私どもはより確証が欲しい』という話をしております。ということは、もうちょっと良い指標が揃ったらやりますよって話な訳でして、まあ例によってバックワードルッキングなフォワードルッキングですなあと微苦笑を禁じ得ませんが、日本語のニュアンスとは恐るべしといったところでしょう。まあ国内市場は冷静に反応してますから福井さんのサービス発言(またの名を梯子外し発言とも言う)への耐性がようやく確立されたとも思えますが(^^)。

で、このくだりで物価に関してはまあこれに注目するでしょうなって発言をしております。

『また、物価の動きにしても、失業率が3.8%というところまで下がってきた段階で、労働市場の構造変化まで含めて物価形成の基本的なメカニズムが今後どのように変わっていくかというところをよりリサーチしたいとも思います。』

あたくし的には今月末に公表される失業率などの雇用指標を注目しておりますが、まあ暫くは失業率が相場の最大注目点になるんジャマイカという気がします。

『私どもは経済・物価情勢の分析と政策判断とを結び付けるに当たって、そこにこそ丹念な継続的分析が要ると考えており、そういうことを本日確認しました。従って、要確認事項が非常に多いという点でも全員一致で決まっているということです。』

何と申しますか、「経済物価情勢を確認した結果、政策変更を行う判断に至らなかった」と言えば済む事をわざわざ丁寧に説明するのはそれはそれで福井総裁の親切というかサービス精神の発露であるとは思うのですが、その説明の中で上記のように「要確認事項が非常に多いという点でも全員一致で決まっている」というような主観的な印象を与えるような表現をするのがヘッドラインリスクを誘発するモトだと思うんですよね。



○イールドカーブとインフレ期待

今回の会見要旨ですが、ヘッドラインは何となく穏健な印象を与えてくれましたが、よくよく見ると(あたくしの見方なんで必ずしも正確かは保証いたしかねますが)やたらインフレ期待の話が出てくるのであります。所謂グリーンスパンの「謎」が解消されたのかどうかという話を昨今のイールドカーブ動向と絡めて質問された時の答え。また例によって途中でぶったぎっておりますので念の為。

『少なくともこの一か月近くの動きだけで、いわゆる「conundrum(謎)」が解け始めた、イールド・カーブが昔のスティープな姿に戻りつつある、今はその初めだ、と言い切る自信はありません。』

『長期金利がこのように動いたのは最近では比較的新しい現象であり、注意深くみなくてはなりません。何よりも、その背後にインフレは抑えられているが健全な経済成長への期待がより強まって、金利水準なりイールド・カーブが変わるということであれば、それは市場自体の健全な動きであり問題はありません。しかし、もしインフレ期待を市場が何がしか感度良く、感度鋭く、私どもが感ずる以前に感じ取っているということがあるならば、これは非常に問題含みになってきます。』

『国際会議でも、しばらくはこの件について真剣に材料を持ち寄って議論し合うことになるかと思います。』

ということで、世界的な「経済堅調だけど物価は上りにくい」モードの転換についても言及ということで、まあインフレ警戒モードにスイッチが入ったような印象を思いっきり与えてくれるのですよね。


○でもまあメインシナリオはインフレ期待は落ち着いているということですか

と、インフレ期待に関する話を聞かれもしないのに話してくれたので(?)最後の方でインフレ期待に絡めて商品市況や原油価格動向についての見方を質問された時の答え。

『人々のインフレ期待を正確に把握するのはなかなか難しいものです。日本の消費者物価指数は、足許まだ前年比若干マイナスですが、色々なアンケートをみると、先行きの人々の物価感は何がしか物価上昇の方向でみていることは認識しています。しかしインフレを強く心配しているという状況ではないことも確認しています。そうした人々の先々の物価感は、原油価格が上の方向に振れたり、商品市況が振れたり、あるいはマヨネーズが値上がりしますといった話など、身近な物の値上がりが起こった時に、非常に敏感に反応することがあると感じています。』

『いずれにしろ、人々は物価の先行きについて、極めて緩やかな上昇はみているがインフレの心配までには到っていないと思われ、その意味でインフレ期待は落ち着いた状況にあると理解しています。』

ということですけれども、何せ「第1の柱と第2の柱のウェイトは同じ」(昨日の駄文でご紹介したとおり)ですので、そこまでに言及したインフレ期待がどうのこうのってのが気になっちゃうんですよね。

ま、あたくしの気にし過ぎなのかも知れませんけど、「福井総裁はタカ派」という印象が強い中でインフレ期待の広がりがどうのこうのというポイントを何度も並べられると、「いやあのまだ発射台が低いんで今からそんなに懸念なさらなくても」とは思うのでありますが、実際のところどうなんでしょうかねえ。


ということで以下別件のメモ的なお話です。

○10年286回の発行日です

本日は10年286回債の発行日な訳ですが、この債券は先週金曜日のSCレポ市場で驚愕のレート(20日〜21日で▲14%)を一部でマークするというどう見てもスクイーズです本当にありがとうございましたという状況になっておりました。何せレギュラー受渡で20日渡しの最終日だった金曜には3か月短い285回債と単利で1毛5糸逆イールドとかもう無茶苦茶。

まあ要するに下げの過程で買ってた人たちがレポ市場への品貸しを渋ったということなんでしょうけど、レポ市場が機能しなかったら現物の売買も円滑に行かなくなって結局困るのは投資家なんだからおまいら貸し渋りとか下らねえことすんじゃねえと逝った所でございます。

さすがにやり過ぎ感爆発の為に月曜からおちついてレポレートもプラスになって来た(それでも十分低いが)ようですが、まあこの際こーゆーヤヤコシイ事になるのもアレですので、入札は全部T+3で十分なんジャマイカとか思ってしまうのであります。

(追記:結局この日の#286の受渡は、投資家対業者は11時ごろ片がついたのですが、JGBCCでの決済は滞りまくって結局14時回ったらしいです。合掌)


○次期日銀総裁に関するアンケートというか人気投票というか

昨日(19日)の朝7時配信のブルームバーグニュースによりますと、日銀ウォッチャーといわれる人にブルームバーグがアンケートして、次期日銀総裁の予想と、それはそれとして誰がふさわしいかって質問した結果は、予想部門で武藤さん圧勝。ふさわしい人部門では植田和男東京大学教授のお名前もそこそこ出たそうでございます。まあ順当ですなと思うのですけれども、ブルームバーグだけに商売敵部門に所属される某日記の中の人には取材してないようで(^^)、まあ見解をお伺いしたい所ではありますが、答えにくいですかそうですか(^^)。

あたしゃ武藤総裁+植田副総裁って組み合わせ(加えて岩田副総裁が再任するとなお強力な気がするんですが、そうすると日銀の中からの人がいなくなってしまうのもどうなのという感じで、理事または前理事の中からもう一人ってのが順当に思えます)がどうかなと思うのですけど、まあこればっかりは外野の与太話で床屋政談の域を出ませんわな(苦笑)。

#しかし「日銀ウォッチャー17人にアンケート」ってそんなに専業(あるいは第1種兼業^^)ウォッチャーいましたっけ?何かどう見てもそれは(以下物凄い勢いで自主規制)。(追記:これはナンノコッチャという質問が多数あったんですけど、まあ要は「日銀ウォッチャー」と呼ぶには相応しくない人がいますなあということですよ。何人居て誰誰とは申しませんが)






2007/06/19

お題「良く見りゃいつもと同じ話でもある総裁会見」

体感的な物価情勢と現在の物価統計はどうもこう違和感があると思うあたくし(今もそうですが、吉牛280円の頃のデフレ時代も)。いやまあヘドニックっていう手法も意味は何となく判るんですけど、実際問題としては名目の購入価格が変らないで性能向上したから物価指数が下がりましたされても何かねえと。今売ってるもんだったら例えば扇風機みたいに値段が下がった従来機種が販売されてるなら「下がった」って思うんだけど・・・・

という話をするにはあたくしの勉強が不足してるのも甚だしいのでとりあえずつぶやいてみただけです。

本論は例の総裁記者会見ということで。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0706b.pdf

で、最初に相場の燃料ヘッドライン発言の検証をしようと思ったんですが、相場ヘッドラインにならなかったけど、「えええええ!」という発言がございましたのでそちらから。


○第1の柱と第2の柱のウェイトは同じだったんですか!

冒頭の質問で説明以外に質問が3つ出てまして、その答えがやたら長いのですが、その質問に対する答を見て驚倒。会見要旨の3ページ目になりますが、「市場の一部では最近の金融政策が第1の柱ではなく第2の柱に基づいて行われているとの見方があるが如何」(意訳)という質問に対する答えであります。オモロイので驚愕した部分を先に引用しますね(^^)。

『どちらかの柱を他方の柱に優先させるといったことではなく、あくまで2つの柱を共に点検し、等しくウエイトを置いて政策判断を行っていくという考えです。』

えーっと、金融政策に関する基本的な考え方に関する説明を読みますと、ど〜考えましても第1の柱(=先行きの経済物価情勢に関する基本的な見方)がメインで、第2の柱(=リスク要因)はオマケに過ぎないと思うのですが、「等しくウェイト」とはこりゃ如何なものかと。こういう話をされると第2の柱を結構意識してるんじゃないのかと思わざるを得ませんわな。「実は第2の柱で利上げしてたのをニュートラルに戻したんじゃないですか」と意地悪い解釈をする知人も居ましたが(^^)。

でね、この発言の前半ではこんな話してるんですよ。

『2番目にお尋ねのあった、リスク要因である第2の柱と基本的シナリオの第1の柱のどちらを重視しているのか、密かに重点を特に資産価格に移していないかというご質問ですが、私どもは量的緩和政策解除以降、一貫してこの2つの柱双方の点検結果に基づいて政策判断を行ってきています。この点は現在も些かも変わっていません。』

『私自身あるいはボードメンバーの発言で資産価格に触れる回数が多いというお尋ねも時々聞きますが、それはそれらに関する質問が多いからであって積極的にその発言を増やしているとは思っていません。』

まあそりゃそうですな。で、ちょっと途中を割愛してその先。

『今後の金融政策運営においても、こうした基本的な考え方を維持する、つまり量的緩和政策脱却の時点で決めた枠組みの中できちんと判断していくという方針です。』

で、その先にちょっと説明があった後で先ほどの発言になるのですけれども、正直言ってここまでで発言を止めときゃ何の問題もないと思うのですが、最後の部分(最初に引用した部分)は丁寧に説明しようとして何か余計な発言をしたように見えるのであります。

で、ヘッドラインが踊った会見であったということで、今回の会見要旨を読むとこの手の余計なサービス発言が多いのよ。ということで次にヘッドラインで燃料投下になった部分の検証を。


○相場への燃料ヘッドラインになった発言部分は・・・・

ヘッドラインで要確認事項がどうのこうのとあった部分は、案の定今回現状維持になった理由への質問に対する答えでありました。要旨の5ページ目。

『(問)今回、金融政策は現状維持でしたが、経済・物価については、4月の展望レポートで示したシナリオに基本的に沿って動いているという判断でした。先程まだ滑り出しに過ぎないとおっしゃいましたが、今回現状維持を決定された理由は、4月の展望レポートから間もないからという時間的理由なのか、それとも、例えば昨年の12 月あるいは1月のように基本的シナリオに対する蓋然性に対してまだ確信の度合いが十分でないから現状維持にしたのかお伺いします。』

これはある意味オイシイ質問の仕方ではありますな。こう聞けば「7月利上げ観測を市場にばら撒きたくない」と考えているであろう福井総裁はハトっぽい発言をしちゃいますもんね(^^)。で、答がいつものようにやたら長いので一部だけ。

『(答) 一か月半という比較的短い時間が経った現段階でみて、標準的なシナリオに概ね沿って経済が動いており、少なくともこの趨勢でみる限り先行きも物価安定のもとでの息の長い拡大が期待できるというところまではしっかりと判断しています。しかし、政策変更という行動に結びつけるためには先行きの経済・物価の動きについて私どもはより確証を持つ必要があると思っています。』

まあここまでは良いのです。で、その後各項目について一々説明するのは親切は親切なのですが、最後がどう見ても言わずもがなでございます。

『しかし、私どもは経済・物価情勢の分析と政策判断とを結び付けるに当たって、そこにこそ丹念な継続的分析が要ると考えており、そういうことを本日確認しました。従って、要確認事項が非常に多いという点でも全員一致で決まっているということです。』

「非常に多い」っての外信だとどう報じられるのか知らんですが、すぐ大げさな言い方をする福井発言の仕様に慣れてれば「非常に」とか言ってるけど経済指標1か月分良いのが揃ったら豹変するでしょと思うのですが、福井さん独特のおおげさ表現を真に受けるとこれはどう見ても当面の利上げ無しと読んでしまいますわな。しかもここだけ切り取ると・・・・ナムナム。


もう一丁の市場がどうのこうのって奴ですが、これまた何だかなあって感じです。要旨の8ページ目。

『(問) 今、マーケットでは金利引き上げの時期について、8月ということを8割くらい織り込んでおり、対して7月は2、3割の織り込みになっていると思いますが、総裁自身はマーケットがなぜそのようにみているとお考えですか。』

どう見ても釣り質問です。本当にありがとうございました。

『(答) 短期金融市場を色々眺めていますと、私どもにとって市場は正に鏡です。(略)しかし、同時に申し上げたいことは、市場金利は、あくまで私どもにとってはひとつの参考材料であり、私どもに予断を持たせる材料には決してなり得ないということです。(略だけど後で書きます)一方、市場は市場金利という形で経済に対する見方を示しており、これは私どもの参考材料ではあるものの、逆に「市場が私どもに対して交通信号を灯している」、「市場は青信号だからやっていいよ」、「だからやるよ」というような感じには決してなっていません。(略)』

なんちゅうか別にそんなこたあいわなくても良いのにと思うのでありますが、多分この釣り質問に対して容認みたいな発言をすると「すわ7月利上げ」って話になりかねないと警戒して喋っているうちに例によって口が滑らかになって言わずもがなの例え話をしちゃったんでしょうかと推測。

ちなみに(略だけど後で書きます)部分には微苦笑。

『これまでも様々な場で申し上げたかと思いますが、私どもが申し上げることは、経済や物価についての情勢判断や先行き見通しです。金利をいつどうするかといったことは、予断を持っていないが故に、残念ながらサインを送れない、つまり私どもから交通信号を灯すわけにはいきません。』

地均しと言われるのが相当気に食わないですかそうですか。


○ロンバートについて

会見要旨の10ページ目より。発言の途中を切り取っています。

『そういう意味(引用者注:誘導目標金利へのコントロールが円滑に運営できているということ)では、補完貸付金利との幅をもう少し引き上げていっても良い可能性がこの先はだんだん出てくると思いますが、まだよく分かりません。郵政の民営化をはじめ、市場には色々と資金繰り円滑化要因もあれば、不円滑化要因もまだ色々と孕んでいますので、この先の市場の変化をきちんととらえながら――別にこれは急ぐ課題ではありませんので――、ゆっくり点検しながら適当な状況にもっていければと思います。今非常に不適当な状況であるとは思っておりませんので、時間をかけて検討していけば良いと思います。』

別にロンバート引き上げてもどこからも苦情出ないと思うのですが、何でここで決め打ちするのか良く判らんです。以前ゼロ金利解除の時にもロンバートを政策金利と別に変更するのを否定しましたが、ロンバート回廊を広げるだけじゃなくて狭くするという選択肢だって将来的にはある筈なのに何でじゃろ。正直、短期市場の中の人的にはちょっとがっかりだったのではないかと思うのですが。

ま、この発言も「7月利上げ観測を抑えるためにホーキッシュな発言をしないように」って意識の余りなのかもしれないけど・・・・



○聞かれもしないのにインフレ期待の問題に言及するのでした

最初の質疑に戻りまして、要旨の4ページ目(最初の質疑応答で3ページとはこりゃまた長い)にあります金融市場動向に対する質問に対して何故かインフレ期待がどうのこうのという話に。

『一般論として申し上げると、過去かなり長い間、世界経済が全体として高い成長を続ける中で緩和的な金融環境が維持されてきました。日本経済もそうしたグローバル経済の中にきちんとビルトインされてきました。こうした組み合わせを可能としたのは、グローバル化の進展などを背景とした物価やインフレ期待の安定があると思います。こうした構図が崩れるリスク、つまりインフレ期待の高まりなどから、国際的な資金フローや金融市場に大きな変化が生じ、世界経済全体、つまり実体経済に悪影響が跳ね返ってくるリスクについては注意していかなければなりません。』

それは仰せの通りですな。で、続きですが途中割愛してます。

『今のところグローバルなインフレ期待は安定しているとみられます。私どもはインフレ期待が高まることが最大の敵だと思っています。まだ最大の敵は顔をみせていないと思っていますが、為替市場も含めて世界的な金融市場の動向の背後にある経済・物価の動きとともに、深く探りを入れながら今後とも十分注視していく必要があると考えています。』

何か別にインフレ期待が安定してると見ているならわざわざリスクに言及するこたあねえと思うのですが、まー本邦では何かの期待あるいはブームが発生すると鉦や太鼓でメディアが煽って国民踊っていきなり大爆発という仕様になっておりますので、懸念するのもまあ判らんでもないけど、別に言わなくても良いような希ガス。

そういう点ではまあ真面目に全部の可能性の話をするという意味で福井総裁はきちんとしたお方なんですけど、全部の話をしようとするからヘッドラインリスクが高まる訳でして、ある程度木で鼻をくくった答弁も必要なんじゃないですかねえと思います(が今更遅い^^)。






2007/06/18

お題「ヘッドラインリスク炸裂のようで実に香ばしい」

与党7割圧勝とかいう流れだった筈なのに、今朝起きてみると与党の議席が減るってどんな外し方だよということで、おフランス様恐るべしであります。米国流基準に喜んで乗っかるフランスなんてフランスじゃねえと思うあたくしにはまあ良かったねってニュースですが。

んな話はともかく、金曜は実に驚倒の相場なのでありましたので雑感を少々。

○全員一致でショートカバーにビックリ

金曜の金融政策決定会合はわれわれの昼休み中にあっさり終了して結果は全員一致。まあだいたい市場が予想してた通りだと思ったのですが、後場寄りから先物に買いが入って先物は20銭ほど(前場引けが21銭で寄り付き直後の高値が42銭)上昇しやがりました。

確かに金融政策決定会合が近くなるにつれリスクシナリオが浮上してきたのは判るんですが、そのリスクシナリオを意識したスケベショートがそんなにいやがったとは恐るべしとしか申し上げようがありません。というか、リスクシナリオを意識する余りメインシナリオになったのに動くというのは実に香ばしい。そんなに気にしてたんですね。まあ正直あたくしも気分は似たようなもんでしたんで人の事を笑えませんが(汗)。

ただまあ金曜の駄文でも書きましたように、木曜あたりから中短期ゾーンの逆襲とか起きてましたので、現物買う人たちは「さすがにここまで来ればメインシナリオ通りまで全部織り込みでしょ」と思い出したという所ではないかとは思います。リスクシナリオまで気にしてやりすぎるとは誠に香ばしい相場なのでした。


○総裁会見でビックリ

で、まあ債券市場の方は「そうは言ってもまあメインシナリオ通りだし」ということで後場のビックリ上昇後は落ち着いたもみあいになったんですが、引け後の総裁記者会見でご案内の通り先物更に上昇。大引けが30銭でしたが、総裁会見のヘッドラインが出てくるといきなり10銭ほど上昇して、イブニング引けにかけて一段高となって53銭で終了の巻。為替とか金先とかも反応しておりまして、金先12月限は99.000まで買われる場面があるわ、為替はご案内の通り海外で円一段安で帰ってくるわと、どう見ても総裁会見が燃料投下です。本当にありがとうございました。

でまあその総裁会見の内容はどうせ今日の午後とかにならないと日銀のサイトにはアップされませんのですが、そりゃまあヘッドライン見たらあたくしも「ありゃりゃ」と思いますわな。例えばあたくしが見ておりましたブルームバーグニュースのヘッドラインから「ありゃま」と思ったのは3つありましてこんな感じ(出た順序とは違いますので念の為)。

『市場が青信号だからといって政策変更行うわけではない』
『政策変更するには確認すべき事項が非常に多い』
『補完貸付金利とのスプレッド拡大は急ぐ課題ではない』

3番目のはちと別の話ですけど、2番目はブルームバーグニュースの配信記事の題名にもなってましたし、最初のも「市場が織り込んでいても利上げしない」→8月利上げ織り込み相場だが8月利上げをする訳ではない→こりゃ8月利上げも無いでしょ→こりゃエライコッチャという連想が働きやすいヘッドラインなのでありまして、まあ恐らく今朝の本職の皆様のレポートの中で「8月の利上げにも消極的」とか言い出して元気になる債券強気派が出るに100ジンバブエドル(^^)。

で、まあそういうヘッドラインを出されると、普通だったら特に驚倒しないはずのヘッドラインであっても意味がありそうになってくるのです。曰く、

『設備投資と消費の持続性判断にはより確証ほしい』
『円安が即、リスク要因というほど単純ではない』
『中間評価と政策変更の可能性は全く無関係』

今回政策変更しなかったんですからこういうのは当然ではあるのですけれども、上記のようなヘッドラインが出るとこういうのも燃料になり得るのでありますよ。まあ心理的なもんなのでこれがこうと定性的に話すことができないのがムツカシイ所なのですが。

でまあ肝心の記事を読んでみますと、これらの発言の流れ自体は、7月利上げに関しての質問を打ち込まれて、それに対して否定的なニュアンスでの発言をした流れ(ちなみにあたくしが読んだのは15日18時01分配信のブルームバーグニュース)でやっちまいやがりましたなあという感じのようですな。そして「市場が青信号云々」は市場が7月利上げを20%織り込んで8月利上げを80%織り込んでいますが如何でしょうかとかいうチョー引っ掛け質問を受けての発言で、おまけにそれは言わずもがなのサービス発言に見えます。何やってんだか。


あたくしが勝手に想像するに、この前から書いておりますが、福井総裁としてはこれ以上の早期利上げ観測が盛り上がられても困るので、とりあえず7月利上げ観測が盛り上がるような燃料の投下を避けようと思って、そのニュアンスで発言したら、いつもの福井仕様によって逆方向へのサービス発言が飛び出したと逝ったところなのではないかと思うのですが、まあ今日出る総裁会見要旨を良く読んでみるのが吉だと思いますのであたくしなりの最終判断は保留です。ただまあ参考になりますのは例によって本石町日記さんのエントリーでございます。

http://hongokucho.exblog.jp/6982104/

で、コメントのところにもありましたが、ロンバードの拡大を否定したのがあたくしにも激しく意外でございました。というか今時点で否定する理由が良く判らん。


○ところで金融経済月報

などと書いているうちに時間がなくなってまいりましたが、今回の金融経済月報は見事なまでに前月と同じ(物は試しにすかし読みしたら良く判ります)でして、特に書くことも無いのですよ。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0706.htm(6月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0705.htm(5月)

違っているのは2箇所だけです。

・物価の現状部分

『国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に、』(6月)
『国内企業物価は、国際商品市況の反発などを背景に、』(5月)

・金融面(あんまり見ないのですが・・・)

『CP・社債の発行残高は前年を幾分上回っている。』(6月)
『CP・社債の発行残高は前年並みの水準となっている。』(5月)

まあどちらも現状認識の部分ですが、企業の資金需要に関する金融面の部分に関してはちょっとだけ注目しておきます。ただ基本的な内容は全然変っていませんので「判断は思いっきり据え置き」でよろしいんじゃないでしょうか。








2007/06/15

お題「小ネタとか人のふんどしとかで恐縮至極」

関東地方で雨が降って梅雨入り宣言した翌日(今日のことですが)には天気回復の予報で、向こう1週間の予報によりますと早速「梅雨の中休み」だそうです。「梅雨入り宣言できる時にやっておこう」ということのようですがまるでどこかの国の(以下割愛^^)。

○中短期の逆襲

昨日は前日に引き続き2年とか5年とかお強くございまして、一昨日安値1.605%とかやらかしてた5年新発の引けが1.55%とか、一昨日安値1.10%の2年新発の引けが1.06%とかもう先生エライコッチャでございますがなという感じ(一方で超長期が弱いのは発行要因とかがあるんでしょう、よー知らんが)です。特に2年に関しては火曜の引けよりも強くなっちゃってる次第でして、そこまで買うなら何故火曜に買わん(いやまあ火曜にも買ってるのかもしれないですけど)とか思うのですけれども、勢いというのはキングオソロシス。

もっと短い所も逆襲しているようで、最も落涙を禁じ得ないのが今週火曜に入札が行われた2か月FBでして、入札の平均は0.56%だったのですが当日の引けは0.57%で、水曜には0.585%の引けにされたと思えば昨日の引けは0.57%とまあ何と慌しいことでございますことよという感じです。昨日入札が行われた1年TBは落札こそ弱かったですがその後は堅調という動きでしたんで、まあ昨日のどっかのタイミングで短い所の様子見軍団から水準および中期の強さに触発されて動きがでたという事ではないかと勝手に解釈するのでありました。

まあいずれにせよ、中短期が落ち着いてくると全体的な浮き足立ちっぽい感じが払拭されてくるんジャマイカとは思うのですが、金融政策決定会合に米国CPIがあるので待ってる人もいることでありましょう。

・・・と思ってますけど、もしかして一昨日の途中からの動きは、「様子見してる人が多いうちにこの水準で登場しよう」→「あ、やっぱり下げ止まったじゃん、俺も買わなきゃ」→「俺も俺も」という流れで、今更様子見モードじゃ無いのかも知れませんが、あまり人の懐事情に興味は無いのでよー知らんです。


○少々気になった記事から

国交省、不動産鑑定の監視強化・価格算出の基準を統一
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20070614AT3S0801613062007.html

国土交通省は不動産の「時価」を決める材料となる不動産鑑定の監視強化に乗り出す。不動産の証券化商品の市場が拡大していることを踏まえ、一般投資家などが不測の損害を被るのを防ぐ狙い。鑑定の根拠となる収益見積もりなどの情報開示を義務付けるほか、不動産鑑定士が不適切な評価をした場合などの登録取り消し制度を積極的に活用する。(以下割愛)

ということで、このニュースだけだと何とも良くわからんのですけれども、記事のお題にあるように「価格算出の基準を統一」というのを本当にやらかすのであればそれはちょっと待てと思うのですよ。

そりゃまあ収益還元法の賃料見通しがバラ色のメルヘン爆発とか実は費用を過小計上してるとかいうのは問題ありと思うのですけれども、「基準を統一」というのにはちと引っ掛かりますわな。これが「一定の算出方法を押し付けてそれ以外は罷りならん」という代物になりますと、画一的なリスク管理手法を導入させてマーケットが集団レミング状態になってしまったどこぞの国のどこぞの市場の悪夢が蘇ってきてしまうのはまあ杞憂なんでしょうけれども、どうも何だかねえという感じが致します。

ま、不動産鑑定根拠の情報開示を、ごく基本的な金融知識しかなくてもわかるような形で行うように義務つけるとかして、その「わかるような形」に関してガッツリ規定して判断は投資家に任せるけど内容に関して虚偽があったら超厳罰適用とかいう風に持っていただけると宜しいのではないかと思うのですけれども、まあ現実問題としてそれもムツカシイのでしょうね。

だいたいからして価格算出の基準が人によって違う(不動産は金融商品じゃないから利用価値に関して人によって違う部分があるでしょうし)から売買が活発化するんじゃろと思うので、あまり鋳型に嵌めるような事は賛成できませんなあと思うのでした。

・・・などと書きましたが、単に記事のお題に釣られただけだったかもしれないなあという気も致します(汗)。


○人のふんどしですが

おなじみ本石町日記さんからですが、思いっきり同意したので引用させていただきたく。
http://hongokucho.exblog.jp/6978444/

『改めて思うのは、金融政策は印象論である、ということだ。何度か述べているように、日銀は地価上昇の抑制を半ば念頭に置いて利上げしようとはしておらず、基本的には「第一の柱」(持続的成長・物価安定)を目的に金融政策を運営している。残念ながら、この姿はあまり伝わらず、「第二の柱」が広く(海外にも)浸透しているわけだ。』

『変な理屈で利上げ論をぶつ向きは、日銀のためにを思った応援団では全然ないと私は思うんだが。』

というのはあたくしも同意でございますが、市場との対話路線で日銀というか政策委員会は動いてるんですけど、印象として第二の柱が主役になっているかのような解釈をされてしまうってえのは、市場との対話があまり円滑に機能してないってことじゃねえのかと思うのですけどねえ。



○後講釈もムツカシイという雑談(^^)

ここもとの動きは経済指標とか要人発言とか関係なくやっておりますので、相場らしいちゃあ相場らしいです。こんな時に変な後講釈しようとすると却って相場を見誤るモトですんで、全部「何だかよくわからんがこうなった」なんですよね。ということで「ふ〜ん」と思いながら見ていたモーサテ雑感^^;

米国PPIのヘッドラインが強くてコアは予想通りという結果に対して為替の後講釈は「インフレリスクの高まりで米国金利上昇期待」で、株の後講釈は「インフレが抑制されているので買い安心感」で債券の後講釈は「インフレリスクで利上げ懸念から債券売られました」(の割には2年金利よりは10年金利の方が上昇、と言っても2毛5糸甘程度で、ここもとの動きからすると売られたという程でも無さそう)となっていました。ちょっとお前らその説明整合性無いじゃろという所なのですが(笑)、要するにその市場のモメンタムというか雰囲気で好き勝手解釈して勢いで動いてるちゅうことなのかなあとか思うのです。

#番組後半での説明では「数字が出た時には債券が反応したけれども、そこから買い戻されました」なのでやっぱ相場の内部要因なんでしょうね。というかそれを先に話してくれないとワケワカランがな(苦笑)


まーモーサテだって各市場に取材したらそういう答が返って来たからそう解説してるだけなんで、こういう「市場ごとに後講釈を並べると右と左で話が矛盾している」っていう面に関しては、番組サイドにも同情申し上げるものでありますけど、どうせだったら「米国PPIを受けて株式と為替ではやや異なった反応をしました」くらい付け加えてくれるとカッコイイのですけどね(^^)。

#まあ番組を珍しく真面目に聞きながら書いてましたが、市場関係者の後講釈聞いてるとどう見ても為替の人の講釈が頭と後ろで言ってることが違うので、連中が「勢い」でやらかしてるんジャマイカと思うのですけど・・・

特に勢いがついて動いてる時って、何でもかんでも動きたがる方向に材料を勝手に解釈したり、反対方向の材料を無視したりというのは市場の仕様でございますなあと思った朝のひとときでございました。

#しかしゆっこ先生、「世界的な金利上昇でインフレが懸念されています」というのは言う順序が逆だぞ・・・・







2007/06/14

お題「相場雑談その他」

アメリカ様も上ったり下がったり忙しいですなあ。

○下に逝ってこいでございましたが

何か昨日の債券市場は豪快に色々と動きがあったようでございまして、引けの利回りだけ見てると穏当なのですけれども、朝っぱらからいきなり2年カレントが1.1%とかやらかしたと思ったら押し目買いご到来とか、超長期ゾーンがゲロゲロに売られたと思ったら買いご到来で猛然と切り返して結局先物パラレルで引けてみたりということですんで、まあちょっとしたプチ祭り状態だったですなあということのようで。

まーこれで落ち着いてくれれば良いのですが、米国市場が今朝は10年4毛甘やってから切り返して9毛強とかやらかしてますので、まあこれは落ち着いたとは言い難いですからやはり米国の物価指標が揃わないとにゃんともですかいな。

でもまあ昨日の超長期大売られ→切り返しとか(2年の1.1%はちょっとインチキっぽい気がするんですが)、本職のお方で債券強気のレポート書いてた人たちの降参モードが益々増えてきてる雰囲気(そりゃまあこの動きじゃ仕方ないですけど^^)なんぞからも、助さん格さんもういいでしょう的なもんは感じるんざますが(^^)。


○で、ちとアレなのはFBとかでして

ということで長いところは祭り状態だったようですが、短いところでは3か月FBの入札があったんですが、こちらは昨日申し上げた0.62%という訳に逝かなかったようで、平均0.63%でしたが足は流れて何と0.64%台。その後も上らずで0.645%とかやらかしてようです(BBの引けは0.64%になってましたけど)。まあこれなんですけれども、単に買いの手が引っ込んでるだけで、別に7月利上げを警戒してどうのこうのというのではないと思いますけど、一昨日の2か月新発FBも引けが0.585%と入札の平均落札利回りから2日で2毛5糸甘くなっちゃっいましたし、まあ雰囲気は宜しくはございませんわな。

間が悪い時にはそういうもんなんですが(苦笑)、GC取引のスタートが18日ということで積み最終日を抜けて来た影響もあってGCのレートが再び0.55%を超えて0.56%〜0.57%とかになったのもこれまた感じが悪い訳でして、いつも言ってる「8月決定会合まで0.55%でその後は0.80%」という前提で良かったんでしたっけ(実は本当に利上げを織り込むなら8月後半の積み期間入りしてから足元金利が上昇する)というのもあるかも知れないなと思うのでありました。

そんな訳で短い所から6か月くらいまでって比較的落ち着いていたんですが、昨日はちょっと雰囲気が悪くなっております。まあ今日の1年TB入札を通過すれば月後半は入札の頻度が減るので、今日明日あたりが一番需給が悪くて来週から徐々に落ち着くとは思うのですが。


○ところで「データ重視のフォワードルッキング」とは?

本日から金融政策決定会合でございます。で、材料が出るのは明日ですので本日の所はど〜でもいいですし、プレビューもどきは今週頭に既に申し上げておりますので(^^)特にコメント追加するほどの事はございませんが、ちょっと雑談。

今の金融政策の枠組みは実にこうロジックを全体的に見るとワケワカランのですが、あたくし(だけでないと思いますが)がいつも理屈を理解するのに困るのが「フォワードルッキングだけど足元のデータがどうのこうの」ってお話。

いやね、第1の柱でも良いのですが、1年半とか2年とかのターム(が確か第1の柱でしたよね)での先行き見通しがきっちりと確立されているのであれば、足元での経済指標なんぞぶれる訳ですから、足元の一時的ブレは気にせずに淡々とメジャードペースでの利上げをしても良い筈ではないかと思うんですよね。そこに「足元のデータ重視」ってのが入ると、単に「足元の指標が良い時に利上げしますよ」って言ってるように聞こえてしまう訳でして、そんならメジャードペースで利上げして、その間に経済が悪化する見通しになったら利上げを止めたり利下げするというロジックにしてくれた方が何ぼ判りよいかと存じます。

ま、そうされると先行きの政策金利シナリオが揃ってしまってオモシロクナイという話は兎も角として(苦笑)、まあそこまでの自信満々さも無いから「フォワードルッキングなんだか足元ルッキングなんだかよく判らん」という現在の状況になっているんでしょうなあとは思うんですけどね。

いずれにせよ、今更ロジックの立て直しも無理でしょうから、総裁が変ってからで仕方ないと思いますが、もうちょっとこう理屈を判りやすくして欲しいものです。(判りやすくなるとこっちの駄文のネタが無くなるのが痛し痒しですが、笑)。


○この前お話してたサーバーコンピュータのヘドニックに関して

一昨日引用した挙句に「結局ワカラン」で終了した企業物価統計でのサーバーコンピュータのヘドニックなんちゃらの日銀ペーパーですけど、von_yosukeyanさんがスラド日記にエントリーを上げておられました。恐縮至極にございますm(__)m。

http://slashdot.jp/~von_yosukeyan/journal/406158

いつもながら勉強になりますです。しかしさらっと例えに入れた「律速段階」に反応するとは(^^)。ええあたくしそんな関連のことをメシの種にしようとしていた時期もございました。あたしゃどこをどう間違えてこの世界に入ってきたんでしたっけ(笑)。

しかしこのヘドニックってのも家電製品のスーパー値下がり(物価統計上の)を見るに、効き過ぎるような気も致しますですわな。住宅でも効くようですが、帰属家賃のヘドニックとかも興味はあります(がどうせ理解できませんけどね^^)にゃ。





2007/06/13

お題「会見とか国会会議録とか」

米国10年国債5.25%抜けやがりましたかうひょひょひょひょ。

○FBの入札とか

昨日は2か月FBの入札、本日は3か月FBの入札でございまして、明日は1年TBの入札と続くのですが、昨日の第1弾2か月FBは入札が平均0.560%の足切り0.566%で、引けは0.57%になっていましたが、相変わらず7月利上げをろくに織り込まない(0%ではないと思いますが^^)水準と言う感じです。ただまあこのFBって8月2日償還ですので、心理的には「8月に償還が掛かるので」っていう意識が働いてちと7月償還よりは買いにくくなるんでしょう。実は期末や年末でもない限り別に月末越えにそんなに大きな意味はなくて、金融政策決定会合越えの方が意味あるんざますが(^^)。

んでまあ本日の3か月FBでございますが、発行が6月18日で償還が9月18日なのを例によって手前が0.55%で利上げ後が0.80%で計算すると0.62%になりますが、足元のGCレートが(昨日はちょっと上昇したようですが)0.52%あたりで推移していることもありますので、昨日のWIの引け0.615%がまあこんなもんでしょうかね。まあ何と見事な8月利上げ1点収束モード(ただし今日の米債安がどう影響するのかは知らん、超短い所にはあまり意味ねえと思うが)。

そして明日の1年入札が何ともこう微妙な所なんですけど、8月利上げして来年の2月にもう一丁利上げするとして毎度おなじみの単純計算をすると0.8%台にはならんと困りますという結果になる筈でして、まあ発行がそもそも1兆4千億しかないですので正直どっちに転ぶかワケワカランであります。


FB入札と全然関係ないですが、2年国債の引けが1.065%なんぞに上昇しておりまして、そろそろ足元金利の足し算をすると買う人がいてもおかしくないと思うのですが、もっと後ろの金利を考えますと、5年が1.545%(昨日の新発)とかやらかしておりますので、そっちから見るとまあバランス的にはまだ叩かれ易いちゅうのもあったりして(5年が買われて戻るかも知れないけど、今日だけ見たらそうはいかんでしょ)、このあたりもちょっと注目しちゃっているのであります。2年がもうちょっと売られるなら1年の水準もこれでどうなのよという気もするんですよね。

#まあそれは兎も角今日は米債がどの位影響するのかねというところでございますけれども


○藤井次官の会見

http://www.mof.go.jp/kaiken/kaiken_jim20070611.htm
一昨日の会見でしたが、あたくしは情報ベンダーのヘッドライン見てて「ほほう」と思ったんですけどあんまり話題にはなって無かったですな。QEを受けてデフレ脱却の時期について質問された答えた部分から。

『経済全体としては息の長い景気回復が続いている姿が、今回のQEにおいても確認されていると思います。そういうことから言いまして、デフレという表現を使うような経済状況ではなくなってきていると思います。』

『また、大田大臣の方は、デフレ脱却は視野に入っていると、こういうような言い方もされていると承知しております。デフレ脱却に係る判断につきましては、これは前も申し上げていると思いますけれども、諸々の物価指標等を総合的に考えた上で、内閣府が中心となって検討されるものというふうに考えております。』

ということで、尾身大臣は既に上記のような話をしておりましたが、藤井次官もちょっと踏み込んだ感じがしますわな。で、当然ながらその点についても質問されました。

『(問)先程の日本経済の状況で、デフレという表現を使うような状況ではないというようなお話をされましたけれども、これまでは大臣の個人的見解として伺っていたんですが、そうすると、次官もその考えに賛同されるのか。既に個人的見解を超えつつあるという認識なのか。』

『(答)財務省の言わば政策決定の最高責任者は大臣ですから、私共、まあ大臣がどういう物の見方をされているのか、承知しておりませんけれども、今までの経済の大きな流れというものを見る限りにおいてはですね、まさしく大臣がおっしゃっているということであろうと思います。』

まあ現状ではマーケットの方が8月利上げ1点張りモードになっていますので、逆の趣旨の発言なら兎も角、今回は特に反応する必要は無かったということではありますけど、個人的には「おお」と思ったのでクリップクリップ。


○国会会議録ヲチ

ひねもす国会会議録(^^)。

・5月29日の参議院財政金融委員会

富岡委員(民主党・新緑風会)からの質疑応答は日銀短観などの調査で零細企業が網羅されてないのは判断を誤るもとではないのかとか、まあお馴染みの格差社会がケシカラン的な質問で、その間に「これが美しい国ですか」とかもう正直くだらねえのですけれども、質疑の最後の方で先般OECDの報告書だか何だかで利上げを慎重にという話があったことに関して総裁に質問してたんですな。で、それに対する答え。

『OECDの方々とは日本銀行もいろんな形で対話を続けてきておりまして、基本的な認識に非常に大きなそごがあるというふうには思っておりません。先般のOECDのレポートは表現的にややそういうふうな形になっておりますけれども、現在各国中央銀行、少なくとも先進国の中央銀行の金融政策の基本的なスタンスというのは、足下の物価だけを見ていて金融政策の責任が全うできると、こういうふうに考えている中央銀行は一行もございません。』

『やはり先行きの経済をどういうふうに深く読み、そして将来につながる金融政策をするかという点がむしろ共通のスタンドポイントになっていると、こういうふうに認識しておりまして、日本銀行の今取っておりますスタンスは、足下の物価を無視するということは一度も申し上げたことはございません。現在の物価を更に将来に引き延ばしてどういうパスが想定できるかと、その望ましい蓋然性のシナリオを持つことができるんであれば、それを実現できるような金融政策を必要なタイミングでやっていくということでありまして、将来につなげる立体的な枠組みという点で御理解をいただかなければならないと、こういうふうに思っています。』

まあ別にいつも通りの発言をしているのですけれども、情報ベンダーに乗せられると「足下の物価を無視するということは一度も申し上げたことはございません」がクローズアップされるので、第一印象として「福井総裁慎重ですな」となるのですけど、よく見りゃいつも通りでした(^^)。ただまあ勝手に福井総裁の考えを憶測致しますと、先行きの利上げシナリオの達成に自信がついてきてその分発言に余裕が出てきたという事ではないかと思うのですけれども。


・5月25日の衆議院決算行政監視委員会

ゼロ金利政策で失われた家計利子収入がどうのこうのという議論があった会でして、ブルームバーグニュースの記事を引用して「アホス」と悪態をついたと思うのですが、この質疑って岩国委員(民主党)がしておりまして、この質疑応答を見ているともうアホか馬鹿かと小一時間問い詰めたくなるような質問ですわな。

どうも話の流れを追いますと、為替介入を行わなくなった→代わりにゼロ金利政策を強化した→企業の収益は上ったが家計の利子収入が減った→ケシカランという話をしてたようでして、先日悪態をついた時は岩国さんは低金利政策の弊害について主張して利上げすべしという話をしてるのかと思ったんですが、あたくしの早とちりでした(^^)。

一々引用してると長くなるのでちょっとだけ拾って見ますが、何かもう電波ゆんゆんもいい所ですが、多分この人とか民主党の経済政策なんかには影響力大なんだろうなあと思うと、実に頭が痛いものを感じるのであります。まあアレですよ、大昔からあたくしの駄文にお付き合い頂いている方はご存知だと思いますが、いつぞやの選挙で影の内閣みたいなのの閣僚名簿が出た瞬間に感じた嫌な予感の通りですなあという所でございますがね。

『そういう御答弁をいただきましたけれども、昨年、アメリカの選挙において民主党が勝利をおさめた。その後、アメリカの産業界を中心として、日本の今の為替レートに対する批判が起きております。また、現に、そうしたゼロ金利政策に固執し、今、円売り介入がとまった、その辺からゼロ金利政策がフルに適用されている。円売り介入することなしに、かわってゼロ金利政策という異常な金利政策をとることによって、結果的に百二十円という円安を維持することができた。ゼロ金利政策は、円売り介入の代理人として、為替政策の上では結果的に百二十円という円安の水準を維持するのに効果をもたらしているのではありませんか。だからこそ、今アメリカの自動車産業を中心とする批判が起きているのではないんですか。』

『また、この円売り介入、それに続くゼロ金利政策の結果としてもたらされた今の円安水準というものが日本の輸出企業を中心として大きな利益をもたらしているということは、いろいろな統計を見ても明らかではありませんか。』

その前に「金利を下げると為替はどっちに動く」とか質問もしているのですけれども、あの別に介入止めてからゼロ金利政策したんじゃないんですけど・・・・・


『我々国会議員に、いつもこのように、日銀の政策委員会のいろいろ議論された議事要旨というのを届けていただいております。(途中割愛)もう一つ関連して意見として申し上げたいのは、我々のところに届けられるこの議事要旨が少し時間がかかり過ぎるんじゃないかと思うんです。きのう届いたものは四月九日、十日のものです。もう一カ月以上もたっている。なぜそんなに時間がかかるのか。(途中割愛)そして二番目、先ほど申し上げましたけれども、こうした政策委員会の議事要旨というのは、我々国会議員にもっともっと早く届けていただきたい。これは、なぜそれができないのか。』

>我々国会議員にもっともっと早く届けていただきたい
>我々国会議員にもっともっと早く届けていただきたい
>我々国会議員にもっともっと早く届けていただきたい


そりゃまあ国会議員様は選良様でいらっしゃいますから特別扱いするのは当然でございますわねえ。(棒読み)それで公表前に早く届いた議事要旨をどう料理されるのでしょうか??

『次に、我が国のトップクラスの銀行が、預金に対する利子をほとんど払わない、最高水準の利益を上げながら法人税も払わない。そして、ゼロ金利政策の結果として株高の現象も起きている。企業に対しては、金利安、それから税金が免除されている、そして株高、これは非常に異常な状態ではありませんか。これが百年前の鎖国経済のときならともかく、今の開かれた経済の中で、世界の先進国の中でトップクラスの銀行が、利子も払わず、税金も払わず。そのような国が世界のどこかにありますか。私は探してみたけれども、見つかりません。尾身大臣、御存じだったらお答えいただけませんか。』

>税金が免除されている
>税金が免除されている
>税金が免除されている


・・・・・その前に有税償却させられている事はスルーですかそうですか。それはまあ庶民の敵であります大銀行様はいつでも公益のために上納をしないといけないのですから当然でございますねえ(棒読み)。

まあ読んでると頭痛くなるのでお勧めです(え?)。







2007/06/12

お題「さて5年入札/その他雑談」

さすがに月曜から終電まで飲むと体に来ますわな。うーい。

○警戒しつつも何とかなるでしょという訳ですが

本日は5年国債入札。相場の水準がご案内の通り物凄い勢いで修正されましたので昨日の引けから引っ張ると1.5%台半ば近くまで修正されてしまったとなると思うんですが、まーここまで水準訂正すれば何とかなるでしょという感じは致します。ただまあここもとの相場下げ局面においてはど〜考えても中期ゾーンに実弾が打ち込まれていそうですんで、よーするに「売りがここで止まる」のなら下げ止まるし、「売ってた人が買い戻す」のなら一旦は反発コースになっても不思議じゃないっすなあ、ってまあ当たり前の話ですけど。

ということでですな、こーゆー何だか祭り状態になってる時ですと、水準どうこうというよりは勢いと申しますかモメンタムの方が重要になる(だから相場はオーバーシュートするのですけれども^^)ので、心理面に影響与えまくっている米国債の動向次第ですなあという感じです。米国市場の後講釈をどこぞの番組で聞いてると、株式市場的には金利急上昇が一段落したという見方らしいのですが、数字を見ると10年5毛ちょっと甘いようなのでまだまだでしょうな(というか米国株式市場の楽観というか外部環境を都合よく解釈する才能に驚倒するのですが)。まあ米債に振り回される円債ってのもどうなのかよと思いますが(苦笑)。


んでまあ心理面ということになりますと、「中期ゾーン=金融政策動向に影響されやすい」という発想がございますので、今週の金融政策決定会合で利上げ時期への見方が前倒しになるとテラオソロシスという発想になって積極的に買いにくいという理屈が成立するのが誠に遺憾でございますわな。

正直3か月FBとか2年中期国債じゃないんだから8月利上げの見方が7月利上げになってどこがどう違うんだと小一時間問い詰めたい訳でして、「半年毎に0.25%の利上げ(=8月に利上げしてその次は来年の1−3月期)でとりあえず来年の今頃は1%」というコンセンサス(正確に言えばコンセンサスかどうかは怪しい次第で、単に市場の価格形成がそうなっているからそうだという話ね)を覆すような話でも無いと中々ここからドカドカ下叩く訳にもいかんと思うのですけどねえ。

従いまして、利上げのペースが早くなるとか、実は経済物価情勢がもっと良くて政策金利引上げのゴールが結構上の方にあるのかも知れないとか世の中が思いだせば、世の中の風景が変るでしょうし、そうじゃなければ「景気は巡航速度で物価が上りにくい」というのが基本的なテーマですから(あたくしは失業率4%割れを見てちょっとその基本テーマもどうなのよとは懐疑モードなのですけどね)、攻勢終末点に来たら止まるっしょ。


と、ぐだぐだ書いた挙句に「今日の入札はよー判らんけど、入札で止まったら相場も止まるでしょ」という結論にならない結論なのでした。ナンノコッチャと言われそうですが(汗)。

#先物のヘッジがワークしやすいので、1円も売れなくて全部業者の持ちになってフルヘッジしたら(んな事は現実には起きませんが^^)目の子で額面の半分くらい先物売ると思います



○8月利上げで落ち着いた市場に手を突っ込むでしょうか

などというと「日銀は地均しなどしていません」とか政策委員会様におかれましては仰せになりそうですけど、まあこっちの感覚としてみれば、量的緩和解除の無理矢理1か月前倒しなんぞは「手突っ込んで地均し」にしか思えませんでしたし、まあそれ以外でも市場の対話というよりは・・・っていうのが散見されたのはあたくしが以前から折に触れて悪態をついておりますとおり(^^)。

んでまあ現在の市場でございますが、短い所では綺麗に8月利上げを前提にした値付けで落ち着いてしまった(昨日も金利水準は落ち着いた状態でした)ので、2か月先の話をブレ無くきっちり織り込むとはこれはまた中々面白い話であります。普通こんな先の話で意見が揃うってのも珍しいと思うんですが。

まあ政策委員会様(の利上げ路線の人)におかれましては、この市場の8月利上げ1点張り路線に乗っかって淡々と市場的にはノーサプライズの利上げをするのか、それとも前寄せしたり後寄せして市場を引っかき回して下さるのか、一応ワクワクテカテカしながら決定会合を待ちたい(週末ですが)と思うのであります。

べき論はこの際どっかに置きますと、市場があっさり8月利上げで収斂したので、それに乗れば無難に利上げできちゃうというのは政策委員会様におかれましてはもうウハウハの展開でございましょうなあとは思います。先行きの経済に自信があるんだったら別にこの(短期の)落ち着いた状況を叩き壊しに逝く必要は無いと思うんですが・・・・



○何だかよく判らないけど奥が深そうな資料

http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/pi/ecgpi09a.pdf
ヘドニック法の適用実績:汎用コンピュータ・サーバ(うち、サーバ)(2007年6月時点)

こういう話に全く不案内なあたくしには正直何が何だかよく判らんのでありますが、結局この結果は物価統計にどのような影響を与えるのでしょうか><;

いやまあ良く判らないんですけど、色々と指数化するのって大変なんですなあというのだけは把握致しましたが、特にコンピュータの性能向上となると、だんだん向上する場所が変っていると思うんで、指数化するの難しくねえかとか思うのですけど。

例えばシロートのあたくしが辛うじて認識してるのは鯖ではなくてあくまでもパソコンですけど、例えばかつてはCPUのクロック周波数が使う側にとっては重要でした(ので、PC雑誌にオーバークロックがどうのこうのとか記事が良く出てたと記憶してるんですが)が、性能が向上しやがって、化学反応でいう律速段階が別の場所に移った今はCPUのクロックがいくらってあんまり気にされなくなったと思うんですよね。実際には今でも重要なファクターなのかもしれませんが。

などと何となく聞きかじりと記憶だけでテキトーなたわごとを申しておりますが、このヘドニックちゅうのも何かムツカシアルね。勉強しないととは思うのですが、偏微分の記号を見るとマーライオンになってしまうあたくしにはちと荷が重すぎでしょうな(涙)。

追記:と書いたらvon_yosukeyanさんがスラド日記にエントリーを上げておられました。恐縮至極にございますm(__)m。

http://slashdot.jp/~von_yosukeyan/journal/406158





2007/06/11

お題「正直ここまでやるとは驚きました」

正直申し上げまして、相場の動きで何か気分的に浮き足だっておりましたよ先週は。落ち着いて物を考える感じではありませんでしたなあ。特に後半かなあ。

○こうなると米債が落ち着くと落ち着くんでしょうな

というのはまあ市場の中の人なら大体そう見てると思うのですけれども、よくよく考えたら円債が米債に連動する義理もないんですが、まあアレですな、根拠レスであってもそう考えて動く人たちがいて相場にインパクトを与える事例が続けばマーケットなんちゅうものは自己実現しますから。

先物も売られるの巻なんですけど、中期ゾーンも弱くて(というか中期が売られるから先物も売られるんでしょうけれども)引けベースの2年1.04%だの5年1.50%だのこりゃまた良く下がりましたなあという感じではあります。2年に関しては1%だと「3か月後から半年後毎に0.25%のペースで利上げをすると2年間の政策金利の平均が1%」という一応のメドみたいなのが言われてましたが、例によって例の如くリスクプレミアム寄越せ状態となるの巻となっちゃいました。

5年になると足元金利の足し算という訳に行かないので本当に適正なのは幾らかというのは判らんですけど、今よりも早いペースでの利上げまで予想されていた昨年のゼロ金利解除前の7月6日の引け(ただし単利)を見ますと、あたくしの手元の手書き帳面ベースでは5年が1.510%で10年が1.975%で20年が2.340%で30年が2.605%と申しております(2年はベースレートが全然違うので比較する事も無いでしょ)が、先週金曜は5年が1.500%で10年が1.725%で20年が2.230%で30年が2.410%という事ですんで、先行きの利上げペースの予想が昨年ほどの勢いが無い事の反映でもあるんでしょうが、あたくし的には「バランスこれでいいのかよ」という気はしますです。いやまあ気分の問題ですが。

などと適正水準がどうのこうのというごたく(しかも結論なし)を並べましたが、実は小見出しに書いたように、現在の動きは適正水準がど〜のこ〜のというではなくて、米債の動向を中心にしたモメンタム系の動きになってますんで、モメンタムを止めるものはモメンタムということですから結局米債次第ということでしょ。金曜は機械受注も景気ウォッチャー調査も予想より弱い数値(特に景気ウォッチャーは弱め)でしたが、相場の勢いはそんなことはケンチャナヨ状態でしたから、冷静になったら経済指標に目が行くんでしょう。


ただし、あたくし暫く前から申し上げているような気がするんですけど、「景気が拡大する中で物価が上りにくくて、長期金利は上昇しにくい」っていう世界的(というか日本と米国ですかいな)なテーマ(あるいは都合のよい話)に変調が出るとなると世の中また風景変らんかなあと思うのでありますけど、そりゃまあ先の話でっしゃろ。



○さてまあ今週は金融政策決定会合ですが

今週末は金融政策決定会合。積み最終日に決定会合のケツがあっておりますので、ここで政策変更したら事前にコールが上昇することも無いのですが(笑)、まあさすがに今回政策が変更になる事はございませんとして、今回ちょっとだけ気にしてるのは「利上げ提案誰か出すかな」(誰かってまあ出す人は一人しか予想できませんが)という所でしょう。これが出ると7月利上げ説にも現実味が出てくるので、8月利上げの線で金利形成が収斂されている短期ゾーンがまたぞろ大騒ぎになって全体的にも影響を与えそうな悪寒。

#まあ選挙の与党勝利が鉄板ならともかく、この状況で利上げした日にゃあ他人の責任追及するのが大好きなどっかの幹事長に格好の責任転嫁じゃなかった責任追及燃料を提供するだけですから賢明な福井総裁は避けるでしょうと思う訳ですが。

折角市場が8月利上げを織り込んでくれたのですから、このまま特に余計な波風というか前倒しにする事も無く、まあ7月に短観が良いのを確認して利上げの提案が出て否決されるも雰囲気出てきて、8月か9月あたりに利上げって流れで無理が無いと思うんですけどどうなんでしょうかねえ。

量的緩和解除の時には、市場が4月あたりで織り込んでいたものを無理気味に3月解除に引き寄せて実施したのですけれども、あの時は30兆円を引く時間とCPIの改定を天秤に掛けるようなスケジュール感があったんでしょ(政策委員会の人たちに聞いても絶対にそれは否定されるでしょうが^^)と思う次第でして、まあどうせ精々半年ペースくらいでちんたら利上げする位で御の字という現状ではスケジュールのケツが特に無いでしょ(強いて言えば福井総裁の任期ですけど・・・)ということで、さすがに今回強引に前倒しをしてくるとは考えにくいところであります。

西村審議委員の会見で見られたように、ここもとは政策委員の皆様の発言が慎重というかあまり無理な言い方になっていないのは、先ほど申し上げたように「市場が8月利上げをきっちり織り込んでいるのでこれ以上無理することもないでしょ」という余裕ぶっこきモードと見ましたが如何でしょうか。

という訳で、利上げ提案に関しては正直判らんのですが、少なくとも週末の総裁記者会見でそんなにやんちゃな発言は出てこないと思いますよ。


○本を読んでみた訳だが

・「とてつもない日本(麻生太郎著、新潮新書)」

土曜日に書店で本を見掛けて速攻で購入したのですが、諸々の用事を片付けにあっちこっちと電車や地下鉄でホイホイ移動する間に全部読み終えてしまう本でもありますが、それは恐らくあたくしが麻生さんの公式サイトに掲載されている麻生さんの文章なんぞを熟読しているからなのかも知れません(^^)。

個人的には第6章の「外交の見取り図」、第7章の「新たなアジア主義−麻生ドクトリン」が一番面白いと思います(靖国問題に関する麻生氏の具体的提言は現実的かつ筋が通っていると思ったんですけどどうでしょう)が、麻生ファンじゃない方にこそ読んで頂きたいですな。

ISBN978-4-10-610217-2 C0231 \680







2007/06/08

お題「債券先物出来高9兆円ですかそうですか」

盛り上がってまいりましたなあ♪

○そもそも金利下げ観測ってのがねえ

昨日(というか今朝)米国債券市場はモーサテさまによりますと10年国債5.138%と16毛6糸甘とは実に素晴らしい展開。利下げ観測後退で徐々に利上げ観測ってえ話らしいのですが、そもそも論として、海の向こうから何となく(あたしゃ別に米債が本業じゃないのでそんなにマジメには見てませんが)FRBおよび中の人の言動を見てますと利下げ期待が発生するのがワケワカランとあたくし的には思っておりまして。

たぶん米国市場的にはバーナンキ議長といえば副議長時代のイットバブル崩壊後の思い切った政策金利引下げが印象強くて、金融緩和的という意識があるんジャマイカなどと勝手に想像するんですが(全く的外れだったらゴメンナサイ)、バーナンキ議長の発言などを追ってみると(そんなに詳細に追ってませんけど)どちらかというと「きっちりインフレターゲット」という感じがする訳ですよ。他のエライ人たちも大体同じですしねえ。

で、そんな事を考えると米国ではインフレの数字(コアPCEデフレーターとか)が既にターゲット水準から高い所にいるんですからFRBへの利下げ期待ちゅうのが起きる方がどうもよく判らんかったなあという感じなのでありました。まーここもとの動きはやっとインフレ懸念に対してきちんと市場が評価しだしたって事ではなかろうかと。

・・・・などとほぼ部外者がエラソーに言う頃に相場というものは一旦底/天井を打つものなのであります(こら)

#というかそこまでの何でもかんでもワッショイワッショイ状態だった株価が1週間で3%くらい下がったっていいじゃないかという気もしますけどにゃ


○しかしまあ先物出来高9兆円とは

昨日の債券市場では、前日に何となく相場が戻った事やら米国の株安債券高でこりゃ反発ですかねとか誰もが思っていた所にあの有様で6月限は132円を割り込む場面もございました。何かこう先物の売り方が昔懐かしい「崩すような売り」って奴でして(その後の戻りでも「如何にも」って感じのビットの入り方をしてた場面があったようですが)、あたくしが小僧だった古き悪しき時代(笑)を思い出すような感じでございました。年寄り(あたくしも含む)ワクワクテカテカの展開。

まー先物の回転も効いてるのか何だか知りませんが、それにしても出来高9兆円(というか9.4兆円ですか)とは久しぶりに見る数字(5月23日に8兆円出来た時にも驚倒しましたが)のような気がするんですが、こういうのがあっても良いでしょ。

・・・・とはいえ、何かこう相場的に「どこかの誰かが派手にぶん投げて相場が壊れた」っていう感じが漂ってこない(実はそういう動きもあるのかもしれないですが)のがまた過去の下げ相場とちょっと違う感じはする次第でありまして、売りらしき売り(先物は別として)は新発債の発行くらいしか思い浮かばないのでありまして、ちとこう勝手が違うなっていう感じも致します。「売り」というよりは「買いが引っ込んでいる」という所ではないかと。


○地味に下げ止まるチョー短いゾーン

2年が1.03%マーク(引けは1.02%)などとこちらもまた実に香ばしい展開になっておりましたが、そんな中で地味に気配が堅調になっているのは火曜と水曜に入札が行われたFBだったりするのですなこれがまた。昨日の日本相互証券の引け利回りは今週の新発3か月FBが0.595%(昨日は0.600%)で新発6か月FBが0.690%でこっちは火曜の引け0.700%から2日掛けて1毛低下となっております。

まあ昨日や一昨日の新発の引けがちとビットサイド寄りだったというのもあってその修正分と言えない事もないのですけれども、それよりもとりあえず「8月利上げ織り込み水準」という水準感が共有され、何となくレベルが見えて落ち着いたところでホッと一息の買いが入って来たという感じなんじゃないかなあと(ディーラーは別ですが、投資家的には「何だか落ち着きどころも判らずワケワカラン」という状況で相場に突撃するのは二の足を踏むようでして)思うのであります。保有期間中の資金コスト見合いでの動きがより強いCPレートに関しても、ここ2日ほどで落ち着き所が見えてきて買いが徐々に強くなってきたような気がしますし。

てな次第でして、そうですなあ半年位のゾーンあたりまでですかなあ、素早く織り込みやがったこともありまして一旦ここで止まる感じでありますな。でも7月利上げは大して織り込んでいませんので、すわ7月利上げとかなるとまたひと騒動ありそうですが^^;


○ところで人のふんどしですが地公体の仕組ローン

http://hongokucho.exblog.jp/6951778/
昨日の日経金融新聞話でございますが、そういえば日経金融新聞って終了なんですよね、ネタ新聞というか釣り新聞としてはかなり秀逸な存在で、あたくし何度も「そんな餌に俺様がクマー(AA略)」状態になった訳でして感謝感謝であったのですが。

と話がそれましたが、要するに地公体が「デリバティブを活用して調達コストの軽減をやっております」というお話なのですが、まあ普通に考えてそれは仕組商品部隊的にはまさに絶好の(伏字)現ると逝った所でございまして、実にこう表現すると問題含みなアレがソレなのであります(なんのこっちゃ)。

大体ですな、「長期金利が上昇すると利払いが増えて大変です」という論議が片手落ちな訳でして、長期金利が上昇するような経済情勢だったらインフレか好景気かまたはその合わせ技な訳でして、そういう状態なら名目税収は上るし、実質ベースの債務負担は減ってる訳ですから別にケンチャナヨだと思うんですよ。まあそんな話を抜きにして考えても、自分たちの資金調達をどうするのかってのは、自分たちの事業リスク(地公体だから事業とは言わんが)や税収などがどのようになったら増減するかと言った資産、負債サイドが抱えるリスクとの見合いで考えるものではないかと思うんですよね。

2年20年のスプレッドがてめえらの調達運用にどういう影響を与えているのかとか(投資銀行のセールスマンに吹き込まれた理屈ではなくてめえらの自分の頭で考えたロジックで)ちゃんと理解しているのかと小一時間問い詰めたいものであります。何はともあれ、本石町日記さんの当該エントリーだけではなく、コメント欄も熟知されたし。

#おまけに私募発行だったりローンだったりすると実態が良く判らんのがオソロシスなのよね








2007/06/07

お題「まあ何となく8月という感じでやっていますが」

たまに見せるゆっこ先生のツッコミが秀逸な経済ニュース番組様におかれましては、冒頭から世界的な利上げ懸念とかインフレ懸念とかいう話が延々と続き、さては10年米国債5%抜けでもしたかと思えば、「インフレ懸念が高まったことや株式市場からの資金流入から米国債券相場は金利低下しました」のアナウンスと共に10年より2年の金利低下が大きい(その動きは常識的に言って利上げ懸念の時には有り得ねえだろう)という画面が平然と出されると何だかもう良く判りません><;(まあ同じ経済指標見て市場ごとに別の反応するのはよくある話ですけどね)

#と思ったらNY為替市場の後講釈を電話でしてる人は「ECBは25%の利上げをした」とかもうアホかと馬鹿かと

ええまあ債券だの金利だのなんてどうでもいい市場でございましょうええそうでしょうそうでしょう。


○8月利上げが織り込まれたのはどの辺だ

昨日のFB入札ですが、昨日の駄文でうだうだ述べた通り、8月23日から0.80%、その前が0.55%で単純計算をすると出来上がりが0.6%となるという日数なんですけど、平均落札価格が利回り換算で0.598%くらいで最低落札価格が利回り換算で0.600%くらいと、前日の6か月FBに引き続きまして絵に描いたような所で足切りになってしまいました。で、昨日の日本相互証券の引けは0.600%となっていたようですが、前日の6か月FBが昨日は確りしてしてて引け値が前日比利回り低下とかしてやがったですぅでしたので、まあこの0.600%というのも普通に考えてビットでしょ。

てな訳で、一応8月の決定会合の手前0.55%、後ろ0.80%という所が止まり所となっている訳でして、まあ大体これで8月利上げを織り込んだ水準で、8月までに利上げが無ければ丸儲けということですからこんなもんでっしゃろ。

まあケチをつけようと思えば(昨日ケチつけるのを忘れてましたので)、利上げ観測が高まった時には準備預金の積み進捗ニーズが高まるのでそもそも8月利上げ懸念となれば16日(=積み初日)から金利上昇するんじゃないですかとか、足元とGCのスプレッドが金利の絶対水準に関わらず5bpというのは本当にそれで良いのかとか、まあ色々とケチのつけようはあるのですけど、何となくこれで座りが良いのでこれはこれで宜しいのではないでしょうか(何たるイイカゲンな)。


ここのところGCレートが弱含み(ややこしいのですが、短期のレートの話をするときは主体が「金利」なので強含み=金利上昇ですわな。債券市場の場合は債券が主体になるので相場が強含み=金利低下ということで^^)となっておりますが、準備預金の積みがやたら進捗しているとか、タームのオペで資金がきっちり取れてるとか、足元に資金があるのでTB/FBの在庫が重くないとか色々と要因はあると思うのですけど、ここのところGCは0.55%を割り込んで推移しているようでございますな。そんな状況もありますので、ひところちょっと上昇が目に付いたCPレートもさすがに上昇一服のようですし、そーゆー意味では半年くらいまでのところは織り込み具合が収斂してきてとりあえず落ち着きましたなあという所ではないでしょうか。


○2年1%とか

まあそんな感じで6か月くらいまでの所が何となく8月利上げの線で見方が収斂されてきたような価格形成(相場には自己実現性があるので、必ずしも8月利上げだと思ってない人も相場がそういう値動きになっていてその考えを覆すような材料でも飛び出さなければ、そう派手に成敗しに逝く訳にもいきませんわな)になってる中で、1年とか2年(とか3年もかな?)とかどうもパッとしません。2年カレントは堂々の1%台乗せですし、前日1枚しか99.00割れしてなかったユーロ円金先の12月限も98.990なんぞが出合ってたりと、こっちのゾーンの居場所がやや修正されている感じ。

そりゃまあ3か月や6か月がGCレートの足し算で価格形成してるとなると、今まで政策金利の足し算で「こんなもんでっしゃろ」とか言ってた1年や2年辺りもちょっと見方を改めないといけませんなあという事になるのは止むを得ないところであります。ということでちと弱いんですわな。これが「大体半年毎に0.25%ずつ政策金利上るんでしょ」という漠然とした読み筋をもっと前傾させるような読み筋でも出てくればなお大騒ぎなんですが、そうじゃなければまあ上昇するのもGCと足元のスプレッドにリスクプレミアムらしきものを目の子で乗せて・・・って辺りで止まるんでしょうな。

#そのリスクプレミアムがワケワカランのでオーバーシュートしやすくなるのですけど

もっと長くなると期待インフレ率がどうのこうのとかの話になるのですけど、まあ2年くらいまでは足元金利の足し算で説明がつきやすい範囲ですから。



○ニュース雑感(雑談です)

何かこうネジのゆるんだニュースですなあと思ったのが昨日は気になりましたので・・・・・(^^)今日は全部6月6日のアサヒ・コム記事です。

http://www.asahi.com/business/update/0606/TKY200706060328.html
顧客から苦情殺到 松井証券、一橋大との共同研究延期

個人投資家の投資行動について一橋大と共同研究することで合意していた松井証券は6日、研究の実施を無期限で延期する、と発表した。松井の顧客の株式売買データなどを匿名で一橋大に提供する計画だったが、提供に同意しない顧客からの問い合わせが3000件以上も寄せられたため。松井は「研究について説明不足の面もあり、延期を決めた」としている。(以下略)

自分の売買が上手く行ったか下手だったかなんて誰だって一番気にしてることで、幾ら匿名でもそういうのは自分が自慢または武勇伝でもする気がない限りお見せしたくないものだというのが売買する人の心理じゃないかと思いますけど。まあこんな企画出した人たちは自分で売買とかしない人なんだろうなあ。


http://www.asahi.com/politics/update/0606/TKY200706060350.html
さくらパパ、民主が擁立へ 参院選比例区(記事は引用するまでもなし)

民主党って実は政権なんて取りたくないんですね。ここぞという所でいきなり自爆するというのはまるでタイムボカンシリーズ(古いって)のような政党ですな。

http://www.asahi.com/life/update/0606/TKY200706060405.html
コムスンの全事業「グループ子会社へ」 処分骨抜きに(皆さんご存知だと思うので記事引用しませんが)

いやあこういうのって奇策というよりは(以下激しく自主規制^^)。







2007/06/06

お題「相場雑談をいくつか」

あまりまとまった話ではなくどちらかというと小ネタ陳列と逝ったところです。

○またあたくしの事前予想(妄想)が外れる訳だが

昨日の10年入札の事前妄想
→米債も戻ってきたし事前の買いとかヘッジの戻しとか入ってややこしい入札になりそう

結果:入札を10年伸び悩みで迎え、落札結果は順当(若干落札分布にいつもと違うものがあったんですがそれは後ほど)だったのにその後相場ゲロゲロに

6か月FB入札の事前妄想
→こりゃムツカシイ入札だからニーズ次第で強い入札になるのかダダ流れ入札になるのか

結果:事前に相場水準が8月利上げをほぼ(ケチをつけようと思えばつけられますがそれは後ほど)織り込みの水準まで訂正されたので実に普通の入札

・・・・・・(-_-メ)

どう見ても逆指標です。本当にありがとうございました。

という訳で、まずは6か月入札に関して。


○8月利上げ織り込みですわなあ(6か月FB)

その6か月FB様でございますが、平均落札価格が利回り換算で0.696%くらいで、最低落札価格が利回り換算で0.700%くらいという結果になりまして、何か引け値は0.700%とかになっていたようですけれども、はてこのレートは何ぞやと考えますと、例によって例の如くあまり緻密ではない電卓で計算できる似非ブレークイーブン利回り計算を「8月の決定会合まで0.55%で利上げ後が0.80%」という前提で行いますとまあ丁度良さそうな数字になるのでありました。

ちなみにこの6か月FBは6月11日〜12月10日でございますが、さっきの前提で計算するとまあ0.700%となると思いますので、8月利上げになっても心配ないぜというレートであるというお話になろうかと思います。

同じ理屈で今日入札が行われる3か月FB(発行日6月11日で償還9月10日)をアバウトに計算致しますと、まあ0.600%になると思いますので、本日の入札が昨日と同じような感じで動くならこのあたりがメドかなあという感じが致します。


それから、入札と話は違いますが、昨日は2か月ちょいの期間となる共通担保オペ(8月15日エンド)が実施されたのですが、こちらの落札結果が足切りは0.57%でまあそんなもんかなという感じなのですが、平均落札利回りが0.584%ということですので、もしかしたら0.60%から札が入ったのかもしれないという結果でして、こりゃまたレートが高めですねえという感じであります。ちなみに月曜の共通担保オペは7月23日エンドで平均0.561%の足切り0.56%でしたので、エンドが伸びたっちゅうのもあるのですが、ちょっと上りましたなあという感を受けました。

まあ何となく雰囲気が盛り上がり、というかちょっと今までの楽観はどうなったのよという動きが垣間見られるのでありました。で、またまた話が脱線しますが、昨日の福井総裁の国会答弁(記事のヘッドラインしか見てないので引用とかしませんが)が何となく火消しっぽい感じになってましたし、西村審議委員の会見でも慎重(よく見りゃ結局「展望レポート通りでございます」なんですけど)な物言いが目立つのは、市場がこの通りの有様で利上げをせっせと織り込みに逝ってるので、別にここから変に地均しをする必要も全くなく、まあ余裕をぶっこいているのかなって勝手な想像をするのでありました。


○こりゃまた妙な動きでしたな

で、10年入札ですけど、市場推定の落札上位では某大手様が結構落札してたんですが、その他の上位メンバーの中に常連であります所の他の大手さんのうち2社ほどのお顔がございませんで、若干いつもとテイストの違う感じではございました。まあ足切りが事前予想(らしきもの)よりも1銭高かったこともあるのかも知れませんが、通常だと償還が変る新発はそれなりにニーズある筈なんですがどうだったんでしょうか。

まあそれよりも久々にこりゃやりやがったなというのは落札結果発表後の動きでして、結果は順調だったのでちょっと先物とか上昇してきた所に先物だか中期だかがいきなり下落。その後ちょっと止まったかに見えた後また売るという誠に嫌がらせのような動きを示しておりましたわな。

誰が何をしたのか存じませんが、前場確りしてた5年ゾーンが引け値を見ますと先物並みになっておりますので、まあ順当に考えれば先物の叩き料理か5年の実弾ぶちかましと逝った所かと思うのですが、売り仕掛けして相場下げたいんでしょうが、入札後にマーケットがロングになった所で売るとは何たる嫌がらせ。というか前場に売ってくれれば入札がもっと安くなって皆さん(除く財務省)ハッピーだというのに誠にケシカラン話でして、地獄の火の中に投げ込まれるべきものでございますわな。

んでまあ今朝は米国10年債4.997%(ソースはモーサテ)ですかそうですか。はあはあなるほど。


○1枚ですかそうですか

昨日のユーロ円金利先物市場。あたくし的には金先は銀行ALM(およびそれを受けてる業者のヘッジ)と海外ファンドの隔離格闘場だと勝手に勘違いしておりますので(何たる偏見)、正直あんまりちゃんと見てないのですが、昨日引け後は2007年12月限が99.000とかになってたのでつい見てしまいました。

で、16時過ぎに金先が99.000をマークしてほほうと思ってたらその後99.005になったり99.000になったりしてたんですけど、99.000オファーになったところであたくしワクワクテカテカしてたら、これがまた待てど暮らせどダウンティックを叩く人が現れず。「あたくしが小僧の頃はこういう時は必ず節目を抜いた新値を付けに行くのがお約束みたいなもんだったのに」と世の中変りましたなあなどと思ってたら16時54分に98.995が付きましたよ先生♪

と思って出来高みたら98.995の出合いは1枚でして、その後99.000、99.005とか戻っている次第でして、(18時以降の板は見てないから知らんが)99.000割れがせっかく出来ても出来高たったの1枚じゃあニュースにも出来ませんがなという感じですな。売るなら100枚くらい売って下さいな金先なんですから。。。

#というか歩み見てると1枚で何か付値らしきことやってる人がいるようですが、何の意味があるんじゃ?

ま、そもそも金先のイブニングセッションを延々と20時まで営業してそんなに参加者いるのかよという議論もあるので、まあこれはこれで仕方の無い現象なのかもしれませんが、何かこう古き悪しき時代とは隔世の感がございますなあと逝ったことを思った次第でございまして。

#ちなみに、トレーダー(ディーラー)と言われる人種には最高値(とか歴史的な高値とか言われるもの)を買って(安値を叩くというバージョンもあります^^)武勇伝とする人と、最高値を売って武勇伝とする人(さっきと同じで安値を買うというのもあり)の2種類がおりまして、どっちでもまあ生き残る人は生き残るし、討ち死にして退場する人は退場するのですが、そんな与太話は機会がございましたらいずれ。


○議事録公開は来年夏から(メモ)

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/mpm0706a.htm

ということで、金融政策決定会合議事録等が来年夏から(というか来年って平成20年なんですか、どうりで歳取るわけですな)始まる訳でして、今から来年がワクワクテカテカ、と申しますか、本当に見たいのは福井日銀のロジック展開なんで、まだまだ先の話ですな(^^)。

ということで本日もまた雑談ばかりでした。




2007/06/05

お題「入札2本とその他世間話」

○10年入札と6か月入札

昨日は米国様の金利上昇を受けて海外の金利が上ると日本の金利も上るという相変わらず意味がさっぱり判らない理屈(だって日米欧で金融政策のステージが全然違うでしょ)なのですが、まあそういう理屈で相場を張る人がいれば相場はそう動くという毎度お馴染みの自己実現性によりまして朝っぱらから10年1.8%だの5年1.4%だのまあいい感じでポイント付けまくり。

10年入札も控えてますのでヘッジ売りもしたくなる所なのですが、さすがに水準が水準なだけに投資家押し目買いも入り、ここから下を叩くのも如何なものかということで戻ったんでしょうが、今度は「威勢良く下がっている内はオソロシイので手が出せないけど、下げ止まりを確認したら買えますがな」という人も出てきたんでしょうかね、何か引け後も戻っておりましたが、正直何がなんだか><;

んでまあ本日はその10年入札と6か月入札があるのですけれども、10年の方についてつらつら妄想しますと今日の入札は前日に下やって戻ってきてるので、こりゃまたムツカシイですなあという感じがします。どうせなら昨日の相場今日やってくれれば皆さん(除く財務省)ウハウハだったんですが、世の中そう都合よく行かないもんですなあ。おまけに今日は米国金利が低下して戻って来ましたので、米国金利追随型の人が買ったり、事前の先回り買いとか余計なものが入って入札前に余計な動きをしそうな悪寒。ちとややこしいことになりそうですな。


で、6か月FBのほうがまた訳判らん次第なのれす。WI取引をとりあえずスルーして既発債からレートを引っ張ると、11月12日償還の既発6か月FBが0.660%で12月20日償還の1年TBが0.690%と申しておりますので、その間のどこかという話になるのでしょうかねえ。で、そのレート何ですが、足元のGCレートが0.54%〜0.55%(オペに叩き込めば1か月半で0.56%くらいで回る)ですのでとりあえず今の所は10bpちょっと取れるのですが、途中で利上げがあると普通にフルスライドして考えてもGCやオペレートが0.8%位になるのは必定でして、今度は10bpちょっと負けの巻となるので、まあいい塩梅といえばいい塩梅なのですが、こりゃまあ利上げ織り込み具合とリスクプレミアム幾らで見るのよって話になりますな。8月利上げだと思うとちょっとこのレベルは持ち切り前提では買いにくかろうという感じ(そもそも利上げ後のGCレートが今と同様に律儀に足元+5bpで収まるかどうかの保証は無いのですから)ですな。

6か月FBは発行が2兆円しかない(「しか」ないってのも何か冷静に考えると凄い話ですね^^)ので、ちょっとどこかのニーズが入るとあっさり片付いてしまいますし、まあそんなこともあるので往々にして6か月ゾーンって3か月や1年と比べて(持ち切り前提で考えた場合)割高になる傾向がある(いつも割高な訳ではないです、為念)ので、ニーズが無くなると一挙に修正が起こる事もありと、中々これもムツカシイのであります。特に金融政策がどうのこうのって話があるときは。

まーそんな訳ですので、今回の入札は先月のような無難な入札になるというよりは「ニーズが入って超確り」か「ニーズが来なくてダダ流れ」の両極端を予想(それは予想ではなくて両建てだというツッコミは正解です^^)するのでありました。

・・・・さて、こんなに好き勝手書いて、また外してしまうのがドラめもんクオリティ、と最初から予防線を張るのがオワットル。


○新銀行東京が大赤字ですかそうですか

先週末に決算発表をしていた新銀行東京。547億円の赤字とはこれまた豪快な決算でございますが、決算発表が東京都知事選挙の後だったのが不幸中の幸いでございますなあ(棒読み)という所でございますか、ってまあそういうシャレにならない悪態は兎も角として。

こちらの銀行の設立経緯などは人口に膾炙しておりますが、その後の営業に関してはまあ一応東京在住東京勤務のあたくしは時折見る広告やら、誰も使っている姿を見たことの無い地下鉄駅構内のATMやらで何となく存じておりますが、どう見ても手の広げすぎとしか言いようのない状態で、一体全体どうなっているのやらという所でございましたが、結局は成算の無い拡大路線は作戦計画の変更をするまでの旅順攻撃の如く死屍累々の巻になったということでございますかそうですか。テラアホスで済めば良いのですが、あたくしが雀の涙ほどお支払い申し上げております都民税が・・・・

ということで、詳しい解説をvon_yosukeyanさんが(っていつも勝手に人のふんどしで相撲をとりまして誠に恐縮至極っす。しかしいつ読んでも豊富かつ深い知見に感心することしきりでございますです)エントリーしてますので(過去にも新銀行東京ウォッチエントリーがあります)必見であります。

http://slashdot.jp/~von_yosukeyan/journal/405024

そういえばもう一つの日本振興銀行ってえのもありましたが、あちらは最近いかがお過ごしなのでしょうか。設立するとか言ってる頃には「顧客の預金は役員が個人保証する」とか息巻いていたのに、いざ設立してみると「やっぱ個人保証止めます」となり、その後は「預金保険があるから元金と利息が全額保証されるのがミソです」と変遷するその香ばしさに感動した覚えがございますが、まあ現実に直面して対応を改めるだけマシなのかもしれませんね(^^)。

#今日はテレビで「王子」とか出ると「また報道フィーバーか」とチャンネルを変えるのに忙しく、このへんで時間切れでございます(笑)





2007/06/04

お題「慎重な物言いに終始した西村審議委員会見」

西村審議委員会見でございますが、月曜なのでまあ簡単に。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0706a.pdf


○CPIと金融政策

CPIが上りにくいという解説を行っていた点についてのツッコミに対する西村審議委員の答から。

携帯電話に関するCPIの計測方法が具体的にどの位になるのかという話は「CPI作成のための予算は限られているので正確な調査は無いと思う」という答えをしてまして、物価が上昇しにくい状況に関しては今までどのように考えていたのかという質問に対してこのように答えています。

『次に、物価が上がりにくい状況については、そういった状況についての認識は、私はずっと持っていました。他の政策委員の方がどのように考えていたかは私にはわかりませんが、私がこういうかたちで自分の意見を表明したのはこの挨拶要旨が最初ということになります。そういうことですので、物価が上がりにくいということは、2月の金融政策決定会合の時点で、私も含めて十分に討議をしたと言って差し支えないと思います。』

で、次にもうちょっと直球な質問がありましてそれに対して西村審議委員のお答えはと申しますと、

『まず、物価と金融政策運営の関係の問題ですが、物価の動きというのは非常に複雑な要素があり、色々なかたちの不確実性が存在します。そういった中で、物価をみるときに、物価だけではなく他の要素もやはりみなくてはならない。逆に言えば、他の要素をみる時に物価も当然みなくてはならない、といったかたちの総合的な判断がどうしても必要になってきます。それを勘案して、必要な時期に、もし確信が持てるのならば何らかのかたちの政策変更をするというのが一般的な私共の方針です。それについては何ら変更する必要もありませんし、私はそのかたちが一番正しいと思っています。』

『それから、特定のデータや特定のイベントに特定の意味を持たせて金融政策を考えようというのは、やはりミスリーディングではないかと思っています。従って、経済・物価情勢に応じて、慎重に検討しながら、経済・物価情勢の改善の度合いに応じて徐々に金利水準の調整を行うという考え方が、今の日本経済にとっては一番望ましい考え方であると思います。逆に言えば、その時その時において色々な状況が起こりますから、その起こりうる状況をひとつひとつ把握しながら、その時点その時点で最も望ましい政策運営とは何かということを考えて行動するということになると思います。』

ということで、講演でもありましたように、特定の経済指標にフォーカスするのではなく「フォワードルッキングな総合判断」を支持しているというように読める次第でして、結局現在の金融政策の枠組みの「物価安定の理解」は「理解」であってターゲットでも何でもないですという話になりますわな。

いや別に「フォワードルッキングな総合判断」ならそれでも結構なのですが、それなら目くらましみたいなものを出さない方がよっぽどロジックは判りやすいと思うのですが、その場でいろんな理屈を捻り出すのが福井日銀クオリティですのでねえ。


○金融政策をどうするという発言には慎重さが目立ちますが・・・

まあ前回の会見で「やっちまった」だけに今回は妙に慎重なものの言い方が目立ちます。お蔭でマーケットインパクト皆無の講演&記者会見になりましたが、あたくしの読み方に問題があるせいなのかもしれませんが、講演内容でも割と福井総裁路線っぽい話をしてますし、会見でも上で引用したように、結局「フォワードルッキングな総合判断」をいう話になっているように見えますな。少なくとも西村審議委員が「利上げ時期尚早」と止めに入るという図はあまり想像しにくい(自分から利上げを先導することはあり無いでしょうが)のであります。

まあ昨年2月の会見要旨を見たときに「ちょっと口が滑りそうな人ですなあ」という趣旨の感想を申し上げた事がありますが、前回の反動で「慎重」を強調し過ぎているように見えます。

講演の「今後の金融政策運営の方針」部分で「慎重な態度」というのが連発されてましたが真意は如何という質問に対して。

『「慎重な態度」というのは、別段新しくしたわけでもなく、従来からの「慎重な態度」を今後も続けていくべきだと考えています。(途中割愛)こういう状況の下で、逆に言えば、余裕のあるかたちで金融政策をみていける状況ですから、慎重に物価情勢の改善の度合いを検討しながら、その度合いに応じたペースで徐々に金利調整を行うという態度が一番重要な態度であると私は思っております。(以下割愛)』

ちょっと途中割愛しているのですが、発言全体を良く読んでみると「慎重」は福井総裁の「慎重」と同義に読めますわな。うーん。で、最後の方で改めてツッコミが来るのですが。

『(問)先程の発言の確認をさせて頂きたいと思いますが、「慎重に対処することで一番望ましい金融政策が可能になる」(引用者注:後でそのくだりを引用します)というのは、ここで「慎重にゆっくりと」ということでよろしいのですか。「慎重にゆっくりと対処することで一番望ましい金融政策が可能になる」というご発言でよろしかったでしょうか。』

『(答)正確に言うと、経済・物価情勢の改善の度合いに応じたペースで、「慎重にゆっくりと」、という意味です。』

『(問)「慎重にゆっくりと」ということでよろしいのですか。』

『(答)はい。これは、これまでの展望レポート等で書かれてきたことと同じ意味であり、「慎重にゆっくりと」ということで私はかまわないと思います。』

ということで、この応答でも「慎重にゆっくりと」」は「展望レポート等で書かれてきたことと同じ意味」としているので、実は執行部(除く岩田副総裁)ペースの発言をしているとも言える訳で、何か前回のせいで今回の発言が変にハトを意識した(というかタカを意識させない)言い回しになっているんじゃないのかなあと思います。

でね、前回の会見でもそうだったんですけど、ここで発言全部読むときっちりバランスを取った話をしているように見えるんですけど、ヘッドラインを打つ場合には「慎重にゆっくりと」の発言が踊る訳でして、「それは展望レポートと同じ意味」って部分はヘッドラインに出てこないというのが普通(記憶が怪しいけどたぶんヘッドラインもそんな感じでした)ですんで、この手の物言いをするときって「両論併記」みたいな言い方をしない方がヘッドラインリスクの回避が出来ると思うんですけどね。

で、この後にも質疑応答があるのですが、この部分を読んでいると良く見りゃ展望レポートと同じこと言ってるんですよね。ヘッドライン打つと慎重派っぽい打ち方になると思うのですが。



○投資行動の積極化に関して

挨拶要旨で投資行動の過熱について説明していましたのでその点に関する質問もございました。

『挨拶要旨に書いてある通り、現時点でこのような差し迫った状況にあるという認識は持っておらず、必要以上にこの点を強調するのは望ましいものではないと思っています。問題は、現在起こっている様々なリスク価格の低下が構造的、永続的な変化であって今後のショックに耐えうるものなのか、それとも、ある構造変化の中でしばしば起こりがちな一方向に偏った投機的な取引が生じているものなのか、を見極める必要があります。(以下割愛)』

『第1の柱のところで書いてあることは、投資の実質収益率が回復しているときに、それに対応する実質コストがかなり乖離した状態が長く続くと、経済の中に、ある種の非効率性が溜まってしまうことを説明しています。これは、先程申し上げた金融面の話とは違う話をしているということをまずは確認させていただきます。ここでは、労働力や設備を含めた実物の資産の資源配分が効率的なかたちに変化していかなければならないが、そうした動きを大きく阻止することがあってはいけないという趣旨で言っています。』

これは一連の質問の中での答えの流れなのですけど、なるほど金曜に「あたくしにはどっちも第2の柱にしか見えないです」と申し上げましたが、そういうことでございますかそうですか。何かこう判ったような判らんような理屈ですが、言いたいことは把握致しました。で、その一連の質問の最後は「現状認識如何」というものでしたが・・・

『こういったリスクに対処するには、全体的にみるならば、先程申し上げた通り、私共には十分な時間があると考えています。この点は、非常に重要な点ですが、投資の実際の収益率は、経済の資本蓄積や労働参加率や、それらの部門間、地域間の配分というかたちで決まってきますので、金融市場のように急に大きく変動するということはありません。従って、これはゆっくり起こりますからこうしたゆっくりした動きに対して、そのトレンドをじっくりとみていくというかたちになります。そういう意味で「余裕がある」といっており、慎重に対処することで、一番望ましいかたちで金融政策が可能であると考えています。』

というお話でして、ほうほうなるほどとか最初読んでて思ったのですが、よく考えて見ると「投資の実際の収益率(=第1の柱)は、金融市場(=第2の柱)もように急に大きく変動しません」という事は、やはり「第2の柱が顕在化する方が早いです」って話に帰着されそうな気がする次第でして、やはりこう金融政策についての論議をする際に資産価格がどうのこうのという話をするとどうしても「第2の柱」というか「予防的引き締め」論議に傾斜しやすくなってしまうのではないかと思うのでありました。

いずれにせよ、あまりこの資産価格云々の話を強調し過ぎるのは(どうせ金利操作でどうこう出来る範囲は限られていると思うので)どうなのよという感は致しますです。はい。

#ロンバートの話とかもうちょっと有るんですが、まあこんな所で。






2007/06/01

お題「西村審議委員の講演」

今回はまあ穏当にまとめたようで、質疑応答も穏当に終始したようなのですが、何せ前日にカーブが豪快に動いた翌日かつ月末だったので影響があったのか無かったのかよく判りませんでした。多分無かったと思いますが。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0705f.htm
A4の紙に打ち出すと12ページございますが、西村審議委員にしてはまあ標準量ですな。で、結論を先に申し上げますと、概ね現在の執行部というか福井総裁の金利調整云々と平仄があっておりますわな。基本的に利上げ容認でっしゃろ。

○特定の経済指標に注目するのは勘弁してという話

前半の「金融政策の新たな枠組み」解説部分から参ります。

『日本経済は構造変化のただ中にあり、中長期的に安定した発展経路の姿にはまだ大きな不確実性があります。日本経済の様々な分野で進む構造改革は、国民の物価や景気に対する期待形成を今後変えていくことが予想されます。消費者物価指数を含む経済データの作成方法も、実体経済の変化に応じながら変わりつつあります。こうした中では、将来のあり得べき物価安定の姿を消費者物価指数で表す時に、様々な見方がある方が自然であり、且つ構造変化が進むにつれて変わっていくことが考えられます。このような状況を前提とすれば、組織として特定の数字に自らを拘束するのは必ずしも望ましいとは言えません。』

まあ消費者物価指数自体、小市民でありますあたくしから見るとナントカ調整が効き過ぎて上げも下げも過小評価してるんジャマイカ(などというとドシロウトがまた何言うと怒られそうですが、苦笑)という気がするんで、西村審議委員の文脈も判らないではないのですけれども、構造変化がどうのこうのという話を言い出すと、世の中常にどこかで小さい構造変化は起きている(起きなきゃ進歩がございませんし)んですから「大きな不確実性」とか言わなくても良いような気もするんですが。まあ「不確実性」と言ってハトっぽい雰囲気を醸し出そうというのかもしれませんが(何という無理矢理な裏読み^^)。

まあ国内市場的には「日銀は特定の経済指標にフォーカスしているわけではない」という認識は定着してる(香ばしく勘違いするガイジンどもの認識は知らんが)ので、市場向けというよりは金融経済懇談会参加者向けのお話とも言えそうですが。

で、展望レポートの説明をちょっと先でしておりまして、こちらでもこんな話が。

『展望レポートには、当該年度及び翌年度の実質GDP成長率、国内企業物価指数及び消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の上昇率について、各政策委員の見通しの幅やその中心値等が具体的な数値で記載されているため、これらへの注目度が高いのが実情です。しかし、これらは参考として位置付けられています。展望レポートの本来の趣旨は、日本銀行政策委員会が考える標準シナリオ及びこの上振れまたは下振れ要因について、定性的な説明を行うことであり、参考として記載された実質GDP成長率等の達成をコミットするものではありませんし、また、政策金利調整のタイミングや幅等を予め示唆するものでもありません。』

#と、考えると「半年毎の利上げ」をすると全部GDP後になっちゃうのはちょっとアレのような気がするんですけどね・・・・



○どっちも第2の柱に見えるのは気のせいですかそうですか

もうちょっと先で2月の利上げについての背景説明をしてますが、そのあたりから。

『私の見方では、景気の拡大が次第に裾野を広げ、投資の実質予想収益率の上昇は製造業、都市部、大企業から非製造業、地方、中小企業にも緩やかながら広がりつつあります。その中で、投資の実質コストが長期に亘って著しく低位に抑制されると、非効率的な投資や事業の継続から経済全体の生産性向上が大きく妨げられます。こうした非効率性が90年代の日本経済を蝕んだことは、私自身の研究を含め様々な実証研究で裏付けられています。』

いきなりバブル経済警戒でございますかそうですか。

『従って、第1の柱の観点から、「物価安定のもとでの持続的な成長の経路をたどる」ためには、投資の実質予想収益率が経済全体でみれば回復しつつあるのに合わせて、投資の実質コストを調整する観点から政策金利を調整することが適当です。』

あたくしは頭が宜しくないので、どうもこの論理展開は第2の柱の観点にしか見えないのでございますけれども・・・・・

『また、第2の柱の観点に基づく経済・物価情勢の点検については、国内不動産価格は全国平均でみれば底を打ち、経済情勢の好転を反映する水準にあるとみられます。金融機関の不動産関連融資はリスク管理への適切な配慮から慎重ですが、都市部のAクラスのビル等では、世界的なオフィス不動産ブームの一環として資金の流入がみられ、高騰する物件もあるようです。また、国際金融資本市場においては、一方向に偏した取引が生じる可能性もあります。』

不動産バブル警戒と円キャリー取引懸念でございますかそうですか。

『従って、第2の柱の観点からも、低金利が経済・物価情勢と乖離して長期間継続する期待が定着する場合には資金の流れに歪みが生じる可能性があり、先読み的な見地から必要な措置を採ることが適当です。』

ということで、どうもあたくしの無い知能では同じ話を2度しているように思えてしまったりするのですが。まあそういうことのようでございます。



○米国の住宅関連に関する指摘には同意

で、この話の後に経済物価情勢の解説コーナーとなるのですが、経済の上振れ、下振れ要因を説明するなかで米国の住宅市場関連について指摘している部分にはあたくしも同意なのですよ。

『しかし、米国では、保有する住宅価格の上昇分について、銀行から借入を増やすことができるスキーム(ホーム・エクイティ・ローン)があります。従来、住宅価格は上昇基調にあったため、このスキームを利用し銀行から融資を受け消費に回すケースが多く、個人消費が堅調であった一因と目されています。しかし、一部地域で住宅価格が下落に転じた中、逆資産効果が機能し個人消費に水を差すことがないか、注視が必要です。』

『また、昨年末以降、返済能力が低い住宅購入者に対する住宅ローン(サブプライムローン)の利息延滞率やデフォルト率が上昇し、これを専業とするモーゲージバンクの倒産も相次いでいます。これらの住宅ローン証券化されており、信用リスクは広く分散されていますが、それだけにいずれの投資家がこの信用リスクを最終的に負担しているのか、明確見通せない状況です。その意味では、サブプライムローンのデフォルトがより広範化した場合の影響を注視する必要があります。』

特に後半部分ですな。『いずれの投資家がこの信用リスクを最終的に負担しているのか、明確に見通せない状況です。』というのが同意なのでして、米国方面では「サブプライムを扱っていた投資銀行が経営に影響軽微と言ってるから無問題ですよウェーハッハッハ」という見方があると報じられております(本当はどうなんでしょ)けど、んなもん投資銀行が律儀に信用リスク抱えているわきゃあないのでして、西村審議委員のご指摘どおりではないかと思います。


○そして先行き見通しでまたまたバブル警戒

経済の上振れ・下振れ要因の説明の3つ目の項目が『金融環境などに関する楽観的な想定に基づく、金融・経済活動の振幅の拡大』でございますので、こちらでもまたバブル警戒ですかそうですかというところでございますが。

『例えば外国為替市場やクレジット市場における価格形成の変動幅(volatility)は、歴史的にみて低水準となっています。この変動幅の低下が新たな投資資金の流入を招来するといった連鎖が生じているようにも、見受けられます。また、先程は、国内の不動産市場でも、世界的な投資資金の流入による一部オフィスビルの従来の常識を越える高騰といった事例も指摘しました。』

と、改めてビル価格高騰に触れるのでありました。



○なぜ物価の上昇は緩やかなペースに止まっているのか

という小見出しで物価に関する説明をしているのが今回の講演(正確には挨拶です)の後半部分でして、このコーナーが西村審議委員の面目躍如という所なのかと思いました。で、ここなんですが、あたくし「ほうほうなるほど」と思いつつ読むには読んだのですが、ちょっと頭を整理しないとにゃんともはや。一応その要因としてあげているのが挨拶要旨の小見出しベースにしますと、『緩やかな成長の背景にある「ばらつき」:需要の多極化、コストの多様化』、『川下企業と川上企業の力関係の変化』、『サービス産業における価格体系の複雑化』というのがあります。

携帯電話の価格改定に関する話に関しては判りやすく指摘してますな。

『昨年は消費者物価指数における携帯電話料金のモデル式を変更し、この問題に部分的に対処しました。しかし、そこで考えられている利用パターンは3種類のみで、しかも予算制約のもとで詳細な調査も不可能ということもあり(ここに脚注が入ってまして、『この予算制約の下で、モデル式の採用範囲を広げ、特にサービスの分野で大きく変わる物価体系に対処していこうとしている統計部局の努力には、頭が下がる思いである』と総務省をフォローしてます^^)瞬時に最も安価な料金体系を利用できると仮定しています。実際には様々な制約から生じる変更費用(switching cost)があるのですが、これを結果として無視することになっています。』

『この影響から携帯キャリアが企業間競争を勝ち抜くために様々な料金体系を導入した際に、導入時点で大きく携帯電話通信料が下落し、それが消費者物価指数を押し下げるということを生じさせることになっています。実際には、変更費用があり人々は時間をかけて最も安価な料金体系に移って行きます。従って瞬時に平均的な通信料が低下するのではなく、時間をかけて低下するというのが正確と思われます。携帯電話通信料が家計のサービス支出に占める比率は大きいので、携帯電話通信料の頻繁な価格体系の変更は、最近の統計上のサービス物価の上昇率を実態よりおそらく低く抑える効果を生んでいると考えられます。』

なるほど。


○最後に第2の柱強調を否定するのでありました

というような物価に関するお話のあと、まとめの部分で今後の金融政策運営について話をしてるのですが、この結論部分(とたしか記者会見)では「金利調整はゆっくり」という方を強調しております。

『すなわち、2月の金融政策決定会合での政策変更時、経済・物価情勢から乖離した低金利が長期間継続するという期待が形成された場合、資金の流れや資源配分の歪みが生じる可能性を指摘しましたが、これに対する注意の必要性は現在も妥当します。とはいえ、現時点では差し迫った状況にあるとは言えず、必要以上にこの点を強調するのも望ましいことではありません。』

『従って、繰り返しになりますが、展望レポートで謡われているように、「経済・物価情勢の改善の度合い」を丁寧に検討しながら、その「度合いに応じたペースで、徐々に金利水準の調整を行う」という慎重な態度が必要ですし、私もこの方針に従い金融政策運営に携わる所存です。』

一応まとめの部分でそういう話をしてマイルドになってはいるのですけれども、2月の背景説明部分を読んでいるとまあ基本的に福井総裁ペースの路線に親和的な印象を受けましたわなという所かと思うのでございます。