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2006/12/29
お題「小ネタ少々&雑談+年末のご挨拶」
そういや納会って休んだこと無いな・・・・
○FB金利は上らないもののCP金利は上昇
この話は昨日申し上げておくものだったような気もしますが、そういうことはケンチャナヨ。
火曜日(実質水曜日)の時事通信報道に引き続きまして、昨日の産経新聞朝刊に福井総裁のインタビュー(Webには載ってない)が掲載されまして、まあ内容的には「1月利上げは検討課題でございますよ」と読める景気強気というか足元の個人消費の弱さについてそんなに大きな懸念をしてるわけではないですよというものでした。
という訳で、鉱工業生産が市場予想よりも弱かった方よりも前日からの余波が効いた感で、まあ水曜に威勢良く売られた2年はちょっとだけ金利低下した格好ですが、3か月あたりは金利じり高っぽいですな。
で、その3か月なんですが、また例によって例の如く買う人の層が違うことによるズレが発生しておりまして、先週入札が行われましたFB424回は水曜は0.44%堂々のビットサイド(前日比変らず)で木曜の日本相互証券引値は0.445%とレートサガランチ会長。FBの場合は何せ「国債」でございますので、金利先高警戒(あるいは先高警戒という言い訳が発生する場合^^)モードになると最初は「緊急避難」が入ってきたりすることもあり、要は「金利水準とはちと違った意味での買い」が入ることもございますという訳ですな。今週の買いはちと違うような気もしますが。
で、その一方で償還までの持ち切りで純粋に資金運用で買いに来る(基本的にセカンダリー市場でバカスカ流通するものではない)CPは1月利上げの可能性大復活ということで金利が上昇の巻。25日月曜日には3月末あたりのエンド物の最上位格付もの(の中でも格上扱いのネーム)で0.47%そこそこだったのですが、一昨日、昨日と金利水準は上昇しておりまして、3か月ものの最上位格付もの(さっき引き合いに出したネームよりは微妙に落ちますが)で0.53%近辺まで上昇しております。年末年始越えとか参加者の多寡とか色々と勘案するとイメージ的には3〜5bp上昇してる感じかな。
勿論1月利上げ直撃ゾーンの1月末償還ものなどの金利も上昇しておりまして、ちょっと1月利上げ無しに傾きすぎてましたなという感じでございます。
○愛の構造改革ですかそうですか
佐田国務相の後任に渡辺喜美内閣府副大臣が就任して、いきなり「愛の構造改革」とか妙なことを言い出しております。まあ「非情じゃなくて愛情の」って事なんでしょうが、もう何か初っ端から痛い痛い。
で、このセンセイは政策通と言うことになっておりますが、11月20日のドラめもんで書きましたブルームバーグニュースインタビュー紹介記事を改めてご覧いただければ吉かと存じますが、少なくとも金融政策に関する問題については率直に申し上げて「中途半端に変な知識がある人」としか思えないインタビュー内容でして、こういう手合いが一番危なっかしいというのは、政策がどうのこうのというようなエラソーなレベルじゃなくて、それこそサラリーマンやってての経験でも味わえるものだと思うんですよね。
その分野に対してちゃんとした知見がある人、あるいは全く知見は無いけれども正しい情報を汲み上げて何をすべきかの判断が下せる人、というのがエライ人の資質としては望ましいと思う訳でして、中途半端に変な知識がベースにあっておまけに本人が自信満々だったりすると、まさに「善意の絨毯を敷き詰めて地獄への道へご案内する」の巻に陥りやすいと言うことでして、まあ杞憂またはあたくしの誤解であることを心の底から祈りたいものであります。
○国土交通省も都心部の地価に注意ですかそうですか
というニュースが出てたのですが、何故かそのような景気の悪い話はテレビニュースでは華麗にスルーされる傾向にあるようでして(昨日の金融庁の話もそうですが)、肝心のソースがネットでも査収できませんでしたが(見つけたら追記しときます)、まあそういうことのようですな。国土交通省のサイトでも見つからなかったのですけど・・・・
まあ何となくそんな匂いもするので事前に手を打って過熱防止っていう事を考えているんだろうなあと思いますが、こういうのはボディーブローのように効いてくるんジャマイカと存じます。まあ上手く軟着陸できると良いですけどね。
○クイックと日経新聞
昨日はあたくしも一応何となく理解しながらクイックの記事に関して日経新聞向けに「正論だがお前が言うな」というのを書きましたが、詳しい人からどーなってるのかの解説を頂きました(のですが、ややこしいのであたくしもよく理解できてなかったりしますが、汗)ので話のネタに。
えーっと、日本経済新聞社の記者さんが書いてる記事と、日経QUICKニュース社の記者さんが出してるものがあるそうでして、新聞に出てくる記事は日経さんとクイックニュースさんの物らしいです。で、あたくしが悪態をついた記事はデリバティブズコメントっていう名前の記事で、こちらは株式会社QUICKのデリバティブズコメントチームさんの書いてる記事だそうです。
・・・・と、書いてるあたくしも頭がこんがらがりそうで、まるでどこぞのファイナンシャルグループの資本関係のようにワケワカランですが、要するにデリバティブズコメントの記事に「正論だがお前が言うな」と日経新聞向けに言った積りになって書いてるのは、まあ誤射ということですな。それが言いたかったのですけど(^^)。
○という訳で年末のご挨拶
本年もあたくしのしょーもない駄文にお付き合い頂きました皆様に御礼申し上げますと共に、色々とご意見ご指摘ご質問などをいただきました皆様にも感謝致したいと存じます。来年もお付き合い頂きますと誠に幸いでございます。良いお年をお迎え下さい。
来る2007年が皆様にとって素晴らしい年になりますように!
2006/12/28
お題「エライ早くに狼煙が派手にぶち上がりましたが」
頭でっかちのボンボン仲良し集団が実務を回そうとするとこうなるちゅうことなんでしょうな(追記:政府税調本間会長辞任+佐田国務大臣辞任です。念の為)。まあそれを言ったら民主党の方が以前からそんな感じ(一番最初のネクストキャビネットが出た時にそのメンバーを見て絶望したんですよね、あたしゃ)が強いので、民主党がまるで代替になり得ない所がオワットルとしか言いようが無い訳で。
などという話は兎も角、予想より早く相場が暴れましたのでまあその辺りのメモメモ。
ところで、昨日の駄文でコアコアCPIが▲0.2%とか書いたのですが、いわゆるコアコアと言われるのは▲0.1%でございました。お詫びして訂正します。
○また時事か!
えーっと、あたくしも不覚にも存じ上げなかったのですが、実は火曜日の夜中に時事メインがしらっと観測記事にしては突っ込んだニュースを配信しておりました。そんなことを露知らずに(ダメダメですな)昨日のドラめもんでは「指標自体は日銀の早期利上げサポートの内容になってるようですので、あまり利上げ無しを楽観するのも如何なものかと思われるのですが、まー変に12月利上げで盛り上がった反動なので仕方ないのかなという感じです。」などとのんびりした事を書いておりましたですな、猛省。で、その時事のニュースですが。
お題が『来年1月、追加利上げ議題に=経済指標が好転』。
『日銀が来年1月17、18両日に開く政策委員会・金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物の誘導目標を年0.25%から0.50%に引き上げる案が26日、議題に上る見通しとなった。(中間割愛)ただ、金融・証券市場で不測の事態などが起きた場合、2月以降に先送りされる可能性もある。』
金融・証券市場じゃなくて不測の事態は別のところで起きるような気もしますが(苦笑)。
『日銀は物価上昇率や個人消費の回復遅れなどと背景に、年内追加利上げを見送り、経済指標を注視する意向を表明していた。このうち、26日発表された11月全国消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率は変動の大きい生鮮食品を除くと0.2%上昇となり、プラス幅が3ケ月ぶりに拡大。日銀が注目する石油価格なども除いたベースでは0.1%下落にとどまり、マイナス幅は10月(0.4%下落)から大幅縮小した。(以下雇用統計、家計調査、株価の話が続くけど割愛)』
(以上時事メインニュースより)
という事で相場は反応したわけですが、何せ時事通信様におかれましては先般の「日銀幹部火消し発言報道」というトラックレコードがございますので(^^)、市場の人と致しましては「これはただのヨタ観測記事ではなくて1月利上げに向けた地均しにちがいない」と反応したくなる所でして、まあ相場は中期から先物中心に売られまして、2年5毛甘の0.8%だの5年7.5毛甘の1.23%だのという豪快な下げをやらかしてくれました。
まあ今回に関しては、あたくしも再三申し上げてましたが、「12月利上げ困難」って見方になった後にいきなり「1月も無理」と話がワープしてしまった事に対して「そりゃちょっと話が飛びすぎ」と思ってた人もそれなりに多かったんじゃないかと思う訳ですよ。でもまあ相場が(現物債の需給関係があると思いますが)何かやたらめったら強くて、その勢いに圧倒されて「そんなもんかいな」となってた人たちが降りた(あるいは追撃した)のも下げに拍車をかけたという所でしょう。元々経済指標を見て下がるタイミングを待ってたものの背中を思いっきり押したという事じゃないですかねえ。
昨日も申し上げた2年で言えば、12月利上げ織り込みモードの先々週(訂正:3週間前でした)木曜(7日)に0.845%だった2年カレントが一昨日は0.75%とほぼ0.1%という「そこまでやるか」という勢いになってた訳でして、「短観も良くてCPIや家計調査も別に悪くはないのに、12月利上げが無くなっただけで別に年度内利上げが消えた訳でもない筈なのにそんなにグイグイ持ち上げて良いんでしょうか?」って思って半身に構えてた人は多かったんじゃないかなと存じますですよ。
しかしまあここもと一連の流れを見てますと・・・・そもそも景気が良くてもう早期利上げですよって話を日経がしてて、そこに総裁の11月7日の講演に10日の読売新聞インタビューで雰囲気が出まして、GDPに鉱工業生産で利上げモードが盛り上がり、CPIとGDP2次速報で冷やされたものの、12月5日の水野審議委員講演に6日の西村審議委員の「ヘッドラインリスク」会見で盛り上がるまでが利上げモード。で、週末の時事報道や中川幹事長の牽制で一挙に利上げモードが終了したと思ったら、今度は決定会合で全会一致で現状維持だわ、総裁会見で弱気の発言(実は基調は弱気転換してないのですが)が出たあたりで、短観も気にせずに1月利上げもネーヨという逆方向に盛り上がった次第。
結局ね、変に12月利上げで大盛り上がりしなかったら、11月末の経済指標で「12月はちょっと材料不足」ってなって、短観とCPI受けて「1月の材料は出てきましたなあ」という感じになっていたんじゃないかと(今日の鉱工業生産もございますが)思う次第でして(その間に決定会合で誰か利上げ提案して「まだ様子見すべき」と否定されれば尚の事判り易し)。変に丁寧な「市場との対話」路線が単にマーケットを無用に引っ掻き回してるという面があると思いますな。結果論ですけどね。
要するに変に相場に織り込ませようとするから無茶苦茶になるということで、日銀というか(ごく一部の)政策委員様におかれましては猛省を促したいところでございます。
○正論だがお前が言うな
さてまあそんなことで時事通信報道に振り回された昨日でございましたが、落涙を禁じ得なかったのは日本経済新聞社様でした。
昨日の日経金融新聞朝刊1面の「アングル」欄では『来月利上げ 消費者物価、決め手欠く』『上昇品目と下落品目の差 11月、前月より微減』というお題の記事をお出しになられてまして、市場の「1月利上げも無理でっしゃろ」という(時事の記事見る前時点での)市場の動き(特に円安進行した為替はありゃ一体何だったんでしょうかと思ってた金利市場関係者は多かったと思うのですけど)を裏付けするような記事が出ておりましたですな。
で、時事の報道と言うことで見事に債券相場下落して落涙を禁じ得なかったのですが、その後日経クイック様におかれましては、時事の地均し記事に関して『一部報道に市場の不満続出』ということで前回の日銀幹部発言記事(火消し記事)も含めまして、「市場の対話としての情報発信の姿勢が如何なものか」と難ずる記事がございまして、「ああ涙目モードですなあ」とこれまた落涙を禁じ得ない風情でありました。
いやね、リーク記事っぽいのが出てきて相場が動くってのも誠に如何な物かと思うわけで、品の無い事夥しいと思いますし、講演などでの情報発信と変なリークっぽい動き(本当にリークしてるのかどうかは知らんが、結果から逆算するとリークじゃないかという疑いが濃厚)を何か変に使い分けて動きに整合性が無いという日銀の「市場との対話」はどうにかならんのかと思うので、クイックの「日銀は市場の対話としての情報発信の姿勢に問題あり」というのは誠に仰せの通り。
・・・・ではございますが、(日経クイックは日経本紙+金融新聞とは別組織ですので一緒くたにしちゃあちとカワイソスですが)それはまさしく「オマエモナー」でございまして、量的緩和解除直前の「議案内容まで報道」記事なんかはありゃどこのどなたがやっておられたのかと小一時間問い詰めたいと思う訳で、まずは日経の金融政策関連記事のクオリティを上げて下さいな(クイックの中の人と日経の中の人は全然別ですのでクイックに悪態つくのは筋違いなのは重々承知してますのでヨロシク^^)という所ですな。全員滝田さんになってくださいとまでは申しませんが。
(追記@12月31日:この後のネタには余りにもカワイソウなのでしませんでしたが、翌日には産経新聞で福井総裁のインタビュー記事がでまして、もう物の見事に抜かれたというかハブられた日経新聞妙に意地になってしまったらしく、やたらその後も「利上げすべきでない」論調の記事ばかり書いております。哀れ日経・・・ていうか12月利上げ騒動だって半分以上は日経が先走りして大騒ぎしたせいなのですから、まあおまえらはバイアス掛けた報道をするなと言うことでしょうな)
#という訳で、ただの与太話になってしまいましたが、年末ですので勘弁した頂きたく存じます。しかし昨日のモーサテで「日銀利上げ当分困難」とか言ってた某ストラテジストは髪様でございますな。まあ為替市場の反応を見るとそう言いたくなるのも判らんでもないけど・・・・・
2006/12/27
お題「相場は静かっぽいので雑談でも」
最近髪へ近づきつつあるどこぞのストラテジスト様がモーサテで「日銀は来年も利上げしにくい」と仰せだということは・・・・・・(追記:ご存知の通り、この前の日の深夜に書かれた時事通信の記事によって利上げ観測が急浮上しました、まさに天災現る)
○CPIはまあまあだったようですが
昨日は割と重要と思われるCPIとか家計調査とかが出まして、ヘッドラインとしては予想通りというものでしたが、内容を良く読むと所謂コアコアCPIのマイナス幅が縮小(▲0.4%→▲0.2%訂正:▲0.1%)してるとか、家計調査の内容とかもまあ悪くは無いという結果でした。
でもまあそんな分析が出る前に、相場の方は年内最終受渡で末初のキャリー稼ぎだの「CPIが出ないと動けませんなあ」という買わない言い訳をしてた人の買い(まだ鉱工業生産という言い訳は残ってるが^^)やらでまあ確り。全般確りですが、2年なんかまたまた0.75%まで金利低下しておりまして、いやあの足元金利との裁定で持ち切りするとして(実際にそんなことをする人は居ないと思うけど)ざっくりと考えると、1−3月期あたりに次回利上げがあると思うと、0.75%というのが間尺に合うんかいなという気も致しますが、「短期間のキャリーを確保して(2年新発ではキャリー取れませんが^^)本格的に買うのはもうちょっと金利上ってから」というのなら良いのかも知れませんな。
まあキャッシュ潰しといえば1月償還あたりのFBもやたら買いが強かった(というかモノがあまり無いと思うが)そうでして、連休前お得意のキャッシュ潰し攻撃に対して、売る人もあまりいないと言ったところなんでしょ。
指標自体は日銀の早期利上げサポートの内容になってるようですので、あまり利上げ無しを楽観するのも如何なものかと思われるのですが、まー変に12月利上げで盛り上がった反動なので仕方ないのかなという感じです。
○リスク管理強化のお知らせ
昨日しらっと出てたニュースがありまして、金融庁のサイトにこの内容が出たのは多分夜になってからでした。
http://www.fsa.go.jp/news/18/20061226-7.html
お題は『主要行等向け監督方針及び証券会社等向け監督方針の付記について』ということで、内容はまあ上記URL先(およびそこに詳しい資料へのリンクあり)をご覧頂くのが宜しいかと存じますが。
『3.当庁では、これらを踏まえ、平成18年10月〜11月にかけて、各金融機関に対し、不動産ファンドに対する投融資の実態把握のためのヒアリングを実施し、その結果を踏まえ、以下の内容を留意事項として、監督方針に付記することとした。』
ということで、現状認識はこうなってます(改行変更+○数字を○なし数字に変更しています)。
『(1)地価については、3大都市圏の商業地が15年ぶりに上昇しているが、これは一部地域の大幅な上昇が圏内の平均上昇率を牽引していることによる。実際に賃料が上昇しているのは東京都心等の一部に限られ、これまでの地価上昇は将来の賃料上昇期待による面が大きい
ことが伺えた。』
『(2)また、運用中の不動産ファンドが保有している不動産残高(簿価ベース)が、最近1年半で2倍以上になっているとの指摘もあるなど、不動産ファンド市場は拡大している。』
この(1)の表現はちと気になるところでして、「将来の賃料上昇期待で地価上昇」って表現は「本来その地価は収益還元的に見合った価格ではない」という見方が反映されている訳でして、ぶっちゃけ「都心部の一部ではバブル現象になりつつある」って言ってるのと同じように読めるのは気にしすぎですかねえ。
で、今後の方針らしいのがその先にございます。
『(3)このような中で、
1.信託銀行は、不動産管理処分信託にかかる今春の行政処分も踏まえ受託審査を厳格化している模様。
2.他方、主要行等の不動産ファンド向けノンリコースローンは、各金融機関でその取組みにかなりの差がありつつも、全体としてみれば、17年9月期の5兆円から18年9月期6.6兆円へと約3割増加しており、業種集中リスク等を勘案した、適正なリスク管理が行われているかについて十分留意する必要がある。
3.また、J-REITの運用会社等に対しては、利益相反取引防止態勢、物件取得時のデューデリジェンス態勢等、業務を公正かつ的確に遂行する態勢の整備状況について、今後も注視していく必要がある。
4.証券会社に対しては、J-REITの引受、不動産私募ファンドの募集及びCMBS(商業用不動産担保証券)等の組成の際の審査態勢や、それらの商品の販売時における顧客への説明状況について、今後も注視していく必要がある。』
2番のあたりですか、「業種集中リスク等を勘案した、適正なリスク管理が行われているかについて十分留意する必要がある」というくだりを読んでるとつい総量規制などという言葉を思い出してしまうのはあたくしだけですかそうですか。
不動産関連の融資への「リスク管理強化」はするわ、バーゼルUでアウトライヤー規制がかかるわと、銀行の皆さん一体全体どうやって収益上げにいくのでしょうと誠に同情の念に耐えませんが、この一連の動きが「不動産バブル終了のお知らせ」になるのかどうか注目していかないといけませんな。
○末初のレポ取引
昨日もまた国債買現先オペで12月28日から1月4日までという末初お助けオペが実施されておりまして、平均落札レートは0.389%となりました。28日から29日を0.35%とすると、29日から4日の年末年始翌日物金利が0.3955%となるので極めて妥当な結果でした。GCレポ取引などでも0.4%になっていたようですので、結局ロンバート金利が落ち着きどころで、参加者が事前に想定してた通りの結果と言った所でしょう。
#あたくし的にはもうちょっと下がるかと思ったのですが、まあこれだとコールしか下がらないって感じですね
しかし思うに、昨日もそんな感じでお助けオペを打っていまして、低め誘導時代(古いね)の放置プレイ状態が記憶にある者としては(当時は足元金利が0.5%をちょっと切ってて、末初レートは毎回1.5%だの2%だのという換算から始まってさてどこまで下がるのか、たまに下がったと思ったら上る事もありましたな)随分と丁寧にお助けオペを打ってくれるもんだなあとある意味羨ましい感じです。
#経済財政諮問会議も注目なのですが、本日は雑談で恐縮
2006/12/26
お題「閑散ですが総裁講演など」
まずは総裁記者会見(訂正です)講演。
○最初からそういう話をしておけば・・・・
昨日は福井総裁の講演が行われました。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0612e.htm
お題は『日本経済の本年の回顧と来年の展望』
総じて極めて穏当な内容でして、11月のきさらぎ会でのやる気満々講演はどこに逝ったんでしょうかという風情ですけれども、まあ本来はこういうトーンで淡々と話をしていけば、経済指標の好転と共に勝手に相場の方が利上げを織り込みに逝く筈だったんですがねえ。
講演自体は量もそんなに大きくなく、個別項目ごとに簡単にまとまってますので、まあ全部お読みいただくのも吉かと存じますが、一応ピックアップ。
・設備投資は過熱していません
『企業部門の動向』の部分から。
『ただし、企業が、国内市場のみではなく、拡大する海外市場からの収益機会も意識して、供給体制を強化していることを考えれば、現在の設備投資の増勢は「過熱」という状況ではないと考えています。』
『企業は、資本市場からの規律が高まっているもとで、個々の投資案件の採算性を厳しく見定める姿勢を堅持しておられます。緩和的な金融環境の中にあって、こうした規律の効いた投資活動が今後も維持されていくことは、日本経済が持続可能な安定成長の経路を辿っていくうえで、たいへん重要なポイントだと思っています。』
ということで、第2の柱である将来のリスク要因としての「設備投資の過熱」には全然至ってないという話ですな。まあどう考えても当たり前なんですけど。
・個人消費をや消費者物価を丹念に検討とな
『家計部門の動向』の部分から。
『賃金の上昇がより明確化していけば、所得の伸びは高まり、個人消費の増加基調の持続性を高めていくものと考えています。このところ、個人消費の関連指標には、天候要因や新製品投入前の買い控えなど一時的な要因もあって、やや伸び悩みの動きがみられます。今後とも、その動向は注視する必要がありますが、所得が伸びていくと展望できるのであれば、個人消費も増勢を維持するというのが基本的な見方だと思っています。』
ということで、今後の消費関連の指標に注視する必要ありと。
『このように、企業部門がやや強め、家計部門がやや弱めとなっている点はありますが、生産・所得・支出の好循環という景気拡大の基本的メカニズムは崩れていないと考えています。ただ、このところ、個人消費や消費者物価などの面で弱めの指標が出ていることも事実であり、今後公表される指標や様々な情報を、引き続き丹念に点検していきたいと思います。』
ということで、丹念に点検と言うのが立て続けに出てくるあたり話してる相手が経団連評議会ということもあると思いますが、「慎重に」ってのを見せてますな。まあ本来そういうもんだったと思うのですけどね。
・物価に関して
企業物価は上昇基調って話をしてますが、消費者物価について。
『消費者物価の前年比は、プラス基調で推移していますが、経済の改善に比べると、その上昇率の変化はごく緩やかなものにとどまっています。経済活動に対する物価の感応度が従来に比べて低下している可能性があります。こうした傾向は、近年、わが国だけでなく海外を含めて観察されています。』
『その背景としては、規制緩和や情報通信技術の発達といった要因に加え、経済のグローバル化が影響していると考えられています。例えば、新興諸国から輸入される製品との競合が強まれば、物価上昇圧力は高まりにくくなります。また、先ほど述べたように、激化するグローバルな競争に直面して、企業が賃金の引上げに慎重になれば、物価にも影響を及ぼすと考えられます。』
左様でございますか。ふーん。
『特にわが国の場合には、消費者物価上昇率がマイナスの状況から改善してきている過程にありますので、他の主要国に比べても、消費者物価の前年比は低い水準で推移しています。先行きは、経済が息の長い拡大を続ける中で、消費者物価上昇率のプラス幅は徐々に拡大するとみていますが、物価上昇率の拡大テンポがどうなっていくか、引き続き注意してみていく必要があると思います。』
ということで、ここでも「注意してみていく必要」と言及しております。
・てかまあ元々この話だけしてれば良いのでして
『新たな金融政策運営の枠組み』の中でこういう話をしてまして。
『こうした点検結果を踏まえ、先行きの金融政策運営としては、見通しに沿って経済・物価情勢が推移していくと見込まれるのであれば、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境を当面維持しながら、経済・物価情勢の変化に応じて、徐々に金利水準の調整を行うことになると考えています。』
『もとより、フォワード・ルッキングと言っても、特定の政策金利の水準やタイミングを予め念頭に置いているということではありません。経済や物価情勢に関する情報は毎日新しく加わってきます。それらを丹念に点検したうえで、先行きの日本経済の姿を虚心坦懐に見通して、最善と考えられる判断を下していきたいと考えています。』
まあアレですな、本来この線でぶっきらぼうに話をしてればそれで無問題ではないかと思う次第でして、福井総裁の場合は自分の言葉で丁寧に説明しようとしてドツボに嵌まるという展開が多いと存じます。何と申しますか、中途半端に丁寧と言いますか・・・・
ということで、全体のトーンとしては慎重な姿勢に終始してる感じでございますわな。
○さてCPIですが(雑談メモ)
本日はCPIの公表。先日来申し上げておりますように、何だかんだと言いましてもやはりCPIが明確に上向きトレンドじゃないと利上げを正当化する論拠は弱いと見るのが順当だと存じます(第2の柱を全面に押し出すのは余程衆目の一致するバブル大発生でもしてない限りちょっと苦しいでしょうなあ)ので、ここのところ3か月連続で伸び率が鈍化しているCPIが再び上向きトレンドにならないとちと利上げ云々は先の話って感じじゃないですかね。
ということで、0.2%だった時が一番微妙な気がする。0.3%以上だったら1月利上げ観測がまたぞろ強くなるんでしょうかね。
○オペやCP金利など
実は金曜もオペ金利低下傾向でしたが、月曜のオペ金利もまあ低下。
国債買現先オペが12月27日〜1月16日で平均落札利回りが0.342%となりまして、現在の足元のGCレートが0.35%あたりで中々下がりにくい事を勘案すると年末年始の翌日物金利のプレミアムもだいぶ剥落したような感じがしますな。大体のパターンとして、年始のGCとか現先レートというのも暫くは年末モードになっている事が多く(ただし今年は金利の付いた正月明けで久々のパターンなのでよく判らん)、中々GCレートが下がりにくいというのもございますので念の為申し添えます。まあ金利分解するときには1月10日あたりからは0.30%で計算するんでしょうけれども。
昨日はスポット受渡が27日ということで、そろそろ月末&年末の資金繰りの為にCPの発行も増える時期ってなもんで、大手の最上位格発行体を中心に発行がそこそこありました。で、発行する人たちも当たり前ですがよく見てまして、1月利上げを必ずしも100%織り込んでいる訳ではないゾーンの1月末エンドあたりの(あたくしから見ると)お得な(発行体にとって、です)ゾーンの発行が目立ちますわな。
そんな中で3か月ものもそれなりに発行されてましたが、最上位格の月末近くのエンドもので0.47%近辺と0.50%を結構割り込んだ位置に低下したようですわな。まあ月末は発行も多いですが償還も多く、特に年末越えの資金繰りにメドがついたところから順に資金放出ニーズが出てきますので、年末接近と共に金利が低下しやすいというのはあると思いますが、レートはじりじり低下と言った感じでしょう。
#まあとにかくCPI注目ですな。
2006/12/25
お題「決定会合議事要旨2つ」
金曜日には過去2回の金融政策決定会合議事要旨が公開されました。展望レポートを公表した10月31日分と先月の11月15、16日分です。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g061116.pdf(11月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g061031.pdf(10月)
○11月会合時点でトーンダウンかよ・・・・
何はともあれ決定会合議事要旨を見て最初に「ほほう」と思ったのは11月の議事要旨の『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』部分の冒頭。
『経済情勢について、委員は、わが国経済は、10月の展望レポートに概ね沿って、引き続き、緩やかに拡大しており、先行きについても、内需・外需がともに増加し、企業部門から家計部門への波及が進むもとで、息の長い拡大を続けていくとの見方を共有した。』
ここまでは10月31日の議事要旨(ちなみにその前も)と同じ文言です。で、今回はここにただし書きが着くのでした。
『ただし、最近の経済指標に強弱双方の数字が混在していることについては、これまでのところ、展望レポートで示した経済のメカニズムについての評価を変えるものではないものの、今後の経済・物価情勢の展開をよくみていく必要がある、との見方で一致した。』
11月会合の時点で足元弱いって議論をしたいたということのようですよ。しかも「よくみていく必要がある、との見方で一致」ですよ一致。そんな議論してたのに何で地均しモードの雰囲気になったのかよというところでございますわな。足元の数字が悪いという認識があったから審議委員の皆様から妙に第2の柱への言及が多くなったのかも知れませんが、こんな議論になってると市場の人たちは知らんですから、「第1の柱を気にしないで第2の柱を持ち出してくるとは何たる利上げバイアス」となるのは(そもそも「日銀には利上げバイアスがある」と見てる人が多いんだし)仕方ないと思うんですけどねえ。
まーしかし11月決定会合後の地均しっぽい雰囲気とこの「ただし書き挿入」のギャップはもう脱力するしかございませんですな。
○個人消費について
11月の議事要旨より。
『個人消費について、委員は、増加基調にあり、先行きについても、雇用者所得の緩やかな増加等を背景に、着実な増加を続ける可能性が高いとの見方で一致した。』
『ただし、何人かの委員は、天候が回復した8月以降の販売指標は持ち直しているものが多いが、賃金の上昇が明確化しない中で、消費に力強さが窺われないのも事実であり、今後の動きを注意深く点検する必要があると指摘した。』
ちなみに、10月31日の議事要旨ではこのただし書きに相当する部分はこんな感じ。
『ただし、複数の委員は、このところの個人消費関連指標の弱めの動きがどの程度一時的な要因に基づくものかについて、今後も注意を払う必要があるとコメントした。』
で、10月13、14日の議事要旨ではこうなっております。
『複数の委員は、消費者コンフィデンスの足踏みや消費における高額品と安値品の二極化進行などを挙げながら、企業部門の好調さが家計部門へ波及するスピードは比較的ゆっくりとしたものであり、個人消費は着実に増加しているが、力強く増加しているとまでは言えないとコメントした。』
どう見ても時間を追うごとにトーンダウンしておりますわな。政策委員会の皆さん何だかんだと言っても国内景気は結構慎重にみてるじゃないですかという議事要旨なのですが、第2の柱をあれだけ持ち出している所はやはり気になると言いますか、「でも利上げ」って話になるのかよという疑問は払拭できません。
○で、何で「ギャップが存在」になるの?
先ほど「でも利上げ」って話になってるのかよと疑問があると申し上げましたけど、それは何故かといいますと、『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の最後の方でこんな話をが出てるところだったりするんですけど。
『何人かの委員は、一部の経済指標に弱めの動きがみられたことなどを背景に、市場参加者と日本銀行との間で景況感に関するギャップが存在しており、今後、経済・物価情勢を点検していく中で、そうしたギャップについても検証を行ったうえ、市場との対話を密にしていくことが望ましいと述べた。』
まあ「何人かの委員」であって、別に一致した見解ではないのですが、この辺りを見てると日本銀行の景況感はまだまだカンカンの強気と思わせる(まさか市場の景況感が日銀よりも強いという話をしてることではアルマイト)ものでございます。
ここの辺りがどういう論理展開になっているのか実に謎です。
○市場機能回復に関して
同じく11月の議事要旨、当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要部分から。
『何人かの委員は、短期金融市場において安定的な金利形成が行われていることについてコメントし、その背景として、機動的なオペの実施に加え、市場参加者が新しい市場環境のもとでの取引に習熟してきたため、資金取引が効率的かつ円滑に行われるようになってきていることを指摘した。』
はあそうですか。
『このうち、複数の委員は、このように市場機能の回復が進展していることによって、市場金利が市場参加者の景況感等をより良く反映するようになり、今後、日本銀行は市場との対話を一層建設的に行っていくことが期待できると付け加えた。』
対話を建設的に行っていった結果がアレでございますかそうですか。
#ええ、もうそれ以上の悪態をつく気力も起きませんよ
○トーンダウンしてるのにそうなる理屈が判らんのですが
同じ部分の先行きの金融政策運営に関してですが。
『先行きの金融政策運営について、委員は、今後とも、経済・物価情勢を丹念に点検し、経済・物価情勢が展望レポートで示した見通しに沿って展開していくと見込まれるのであれば、金融政策運営についても、経済・物価情勢の変化に応じて徐々に政策金利を調整するという方針に沿って進めることが適当であることを確認した。』
『この間、一人の委員は、次回の会合以降、展望レポートで示した見通しに沿って経済・物価情勢が展開していることを、より確信を持って判断できるのであれば、政策変更を躊躇なく検討すべきであると述べた。』
さっき『今後の経済・物価情勢の展開をよくみていく必要がある、との見方で一致した。』って議論をしてたのに何故そうなるという感じですが、まあ一人の委員様のお話ではありますが、こういう話が出ているということで、今後も経済指標が好転してきたら利上げの議論は一気に近づくということは変らないと思います。
まあ本日はそんなところで。
2006/12/22
お題「総裁記者会見続き」
サハリン2の結末は「また露助か!」でございますな。まあそれはともかく総裁記者会見の続きを。
○個人消費の先行き見通しについて
先行きの個人消費に関してどう見てますかという質問への福井総裁の説明。
『私どもは、個人消費は基調的には増加を続けているという判断をベースにしています。賃金が伸び悩んでいるという話をよく聞きますが、企業部門から家計部門への所得の移転という目でみると、雇用が一貫して着実に増えており、賃金面でも、時間外、ボーナス、あるいはパートタイマーや契約社員の賃金という順序で増えています。』
『所定内賃金の伸びが十分みられないということですが、賃金を離れても配当とか、最近は団塊世代の退職が次第に増え始めていることによる退職金の支払い増加も、かなり目立っています。色々なかたち、幅広いルートで所得が家計部門に流れており、基調的には、これらを背景として個人消費が伸び続けているとみています。』
うーむ、ちょっと説明として苦しい気もするんだが・・・で、続き。
『しかしそうは言っても、現実の経済は生き物であり、個人消費も生き物であり、いくらか波を打ちながら動いていくだろうと、前もってそういう目で個人消費についても追いかけています。最近は、天候不順の影響があったり、あるいはいくつかの新製品の登場に伴ってその前後のやや不規則な動きが入ってきているとか、個人消費に関する統計データについても、――統計上のノイズという言葉は悪いのですが――非常に読みにくい数字が出ているという要素もあります。そこで、先々につなげて個人消費の基調をよりしっかりと確信を持って判断していくために、もう少し丹念に見極めたいということです。』
ホンネがどの辺りにあるのか、公式文書の方を見てると先に強気をぶち上げている手前、依然として強気の旗を降ろしてはいませんが、このあたりのトーンを読んでいると、個人消費に関してちょっと弱気というか、思ったより良くない状況が続いてちと困ったなってニュアンスを感じるところではございます。
で、いわゆるダム論の実現という点で見るとちょっとシナリオ通りに行ってないんじゃネーノってところなんでしょうが、まあそのあたりと利上げ時期が必ずしもリンクしないと思われるのがまたややこしい所でございます。
○追加利上げと個人消費
ということで、その後でこんな質問が。
『(問)(前半割愛)10 月に出した展望レポートでは、金利の調整、あるいは追加利上げを予定ないし模索している内容だったと思います。追加利上げをする際に個人消費が持ち直すことを確認する必要があるのか、もしくは、それが重要な要素になるのかという点についてどのようにお考えでしょうか。』
『(答)(前半割愛)次の政策変更につながるかどうかについて、個人消費あるいは物価の動きだけでなく、経済全体の動きを常に総合的に点検しながら判断していくことになると思いますが、足許やや弱めの指標が出ている個人消費あるいは消費者物価指数の動きについて、新しい指標に基づいてより深い分析を加えたいという気持ちは当然持っています。』
ということで、こちらでの答えのように「個人消費が持ち直さないと利上げができないわけでは無いけれども、個人消費とCPIに弱めの数字が出ているからちょっと先行きを見極めたい」という理解で良いのではないでしょうか。
でね、個人消費の方が経済情勢という点では気になる話なんですけれども、政府与党の経済見通しも強気に設定されているという点からすると、利上げ判断はやっぱりCPIの方に縛られやすいとあたくしは思うのでございます。即ち、政府との政策協調で云々と言われる中で政府というか与党サイドから利上げに反対する論拠として使われ易いのは「デフレ再突入懸念」だと思われる訳でして、(将来の効果はともかく、短期的には個人負担増大で個人消費を冷やす蓋然性が高い税制改正をしてるので個人消費ネタは使いにくいでしょ)結局のところはCPIが再度上向きトレンドになってきましたよってデータが無いと利上げを政府与党に納得させるのは難しいんじゃないですかね。
んな訳で来週のCPI注目してるんですが。
○「徐々に」とか「ゆっくりと」のタイムスパンについて
次の政策変更に対してどのような時間感覚を持っていますかという質問に対する総裁のお答え。
『マスコミの皆様方からよくそういう質問を受けますが、私どもとしてはこれに答える材料を持っているとしたら、私どもが判断を間違うケースではないかといつも心配しながらお答えしています。経済・物価の動きを将来につなげる形で十分分析して判断していきますが、「ゆっくりと」というのは、日本経済の現状は私どもがゆっくり分析する時間的余裕を与えてくれているという意味です。』
『従って、カレンダー的に7月から何か月経ったから残りの期間が短くなったのではないか、もうあと1か月か2か月か、という発想に立っておりませんので、ご質問と私どもの答えとの間にはギャップが存在するし、それはやむを得ないと思っています。(以下割愛)』
最初からこの話だけしてりゃ良いんですよね〜マッタクモウ。
ということで、全体のトーンに関しても強気丸出しモードからは後退した感が強い会見ですなあという所だと思います。ただまあ経済指標が好転してきたら利上げをするだろうなあというのもまた感じられますので、結局のところは今後出てくる物価と家計関連の指標が好転するかどうかという話ではないでしょうか。
以下おまけ。
○村上ファンド問題
この質問は大変に結構でございます(^^)。
『(問) 今年1年を振り返るお話の中で、村上ファンドの投資問題についての言及がなかったのでお尋ねします。改めて世論から厳しい批判を受けたあの問題をどう振り返られますか。また、現在の村上ファンドの解約状況についてお伺いします。』
『(答) 前回の記者会見でご報告した拠出金の返戻のプロセスにつきましては、前回ご報告申し上げた以降進展はみておりません。そして私自身振り返って、様々なご批判を謙虚に受け止め、深く反省しているという点について重ねて申し上げます。』
私募ファンドだから色々なやりかたがあるんでしょうが、基本的に上場されてる株式を投資対象にしている(と理解してるんですが)ファンドなのに解約申し出してから10か月経過してまだ全部返金されないファンドってあたくしの理解の範疇を超えるとっても不可思議なファンドでしたなあ。
○金融政策決定会合の日程
6月までの金融政策決定会合の日程が前回の会合で決定されておりまして、日程が公表されておりました。
http://www.boj.or.jp/type/schedule/s061219.htm
ふむふむ、金曜に最終日が来るのは6月と4月の2回目だけということで、日程は一応考えてますな(^^)。
市場金利急騰への配慮のためにロンバート金利を0.4%にしてますけど、次回の利上げの際にまた駆け込みロンバートが炸裂してエライコッチャになるものと思料されますので、決定会合のケツは金曜を避けるようにしております。本当は「短期金融市場の機能も回復してきたので、避難的措置で行っていたロンバート金利の0.4%を0.5%に引き上げる」ってのをどっかでしらっとやっておけば良かったのにと思うのですが、何せ利上げ直後の会見で総裁自らがご丁寧に選択肢を排除しちゃいましたので不可能でございます。残念無念。
#という訳で、今日は古めのネタで恐縮でございました
2006/12/21
お題「個人消費の見通しもやや下方修正/ネタ多数の総裁記者会見」
昨日の日経金融新聞で日銀に対して「市場との対話に課題を残す」と書いてた見出しに「お前が言うな」と突っ込んだ市場関係者は4桁はいるに違いないと思ったあたくし(^^)。
○その前にFB入札についてちょっと
昨日の3か月ものFB入札ですが、落札レベルが平均落札価格で0.423%あたりとやたら強い入札になったのですが、後続の買いが不足しており結局0.445%での引けとなったようですな。今月は年末年始挟みの関係でFBの入札が昨日で月内最後だったので入札段階での買いがちと多かったのかもしれませんが、入札レベルでは概ね1月利上げ無し織り込み(2月利上げ織り込み)のレートになっていたのにはちとビックリしました。まあ引けの0.445%だと1月利上げ3割織り込みとかになると思うんですが。
1月利上げを3割程度織り込みってのはまあ居心地よさそうな感じですし、まあ切りのいい所ですので(何たる根拠レス)、昨日も0.45%まで押した時にはビットが湧いて出てきたようですな。まあ年内はここから入札もないですから、需給にも支えられてこの辺から徐々に確りって感じじゃないですかねえ(と、極めて常識的なことを書いてるつもりなのに外すのがドラめもんクオリティ)。
○個人消費の先行き見通しがやや下方修正されてました
昨日ご紹介した金融経済月報の基本的見解(要旨とか言ってましたね、すいません)では、個人消費についての現状判断に一言入りましたなあというお話をしまして、『ただまあ月報レベルでは下方修正というよりは但し書きをつけというべきもの(基調判断そのものが「増加基調」のままだから)であって、「下方修正」と見るのは過大評価ではないかと存じますので要注意』と申し上げたのですが、全文を読むと実は先行き見通しも下方修正しているのでありました。
全文のURLはこちら(PDFで69ページあります)→
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/data/gp0612.pdf
で、11月分はこちらです→
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/data/gp0611.pdf
この中で個人消費の先行きに関しては、12月分では本文9ページ(ファイルだと10ページ目)、11月分では本文7ページ(ファイルだと8ページ目)に記述がございまして、このように変化しています。
『先行きの個人消費については、雇用者所得の緩やかな増加等を背景に、増加基調をたどると考えられる。』(12月)
『先行きの個人消費については、雇用者所得の緩やかな増加等を背景に、着実な増加を続ける可能性が高いと考えられる。』(11月)
とまあ並べて見るとトーンが下がっていることがお判りになるかと存じます。
では何で昨日はあたくし先行きの判断変化ないという話をしたかという言い訳をしますと、基本的見解では先行き見通しに関しては「国内民間需要」という形で括っていまして、そこでは『引き続き増加していく可能性が高い』という表現が継続してたんですな。
ということでございますので、目立たない形ではありますが、個人消費の先行き見通しの強気トーンがやや後退しているというお話でございました。
ちなみに現状弱含みの要因に関しては次のところでさらっと。
○総裁記者会見は盛りだくさん
盛りだくさん過ぎて明日に続きそうな予感。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0612c.pdf
PDF13ページなのですが、比較的しょうもない質問が少なくて、結構バシバシ突っ込まれてた感じをこの要旨からは受けます。
・冒頭の説明部分での個人消費への言及
冒頭で総裁が金融経済月報(基本的見解)をベースに景気判断の話をしまして、基本的にこの部分はスルーしちゃうんですが。
『個人消費は、天候要因や新製品投入前の買い控えなど一時的な要因もあり、足許はやや伸び悩んでいますが、基調としては増加していると判断しています。』
ということになっておりまして、その辺りに関しては月報基本的見解を読みましても載ってないのですが、先ほどご紹介した月報全文の個人消費に関する部分を読みますと(本文7〜8ページです)、上記発言のような趣旨の分析がございますのでご参考までに。
まあ「足許個人消費が弱いのは一時的要因」ということで、強気は強気というのは継続してるようですが、ちと確信持てるかというとそれはどうかなっていうニュアンスなのかなと読みました。
・市場との対話について
地均しした挙句にこれですがどうですか(意訳)って質問に対して。
『(答)私どもは、毎回、私だけではなく他の政策委員の皆さんも、政策決定について予断を持って臨まないとの姿勢で一貫して本日まできており、今後もその方針です。つまり、政策変更のタイミングを予め示唆するということは、これまで一度もしていないということです。市場もそのところは十分おわかりの上で行動していると私どもは理解しています。』
梯子外し発言キター!!という所でございまして、いやまあ確かに具体的時期に関しては何も言ってませんでしたが、あのトーンを並べられたら「早期利上げに前のめり」としか取れないんですけどねえ。もともとの方針の「経済物価情勢を点検しながら必要になれば利上げする。そのペースは今の情勢だとインターバルは兎も角としてまあゆっくりとなるんでしょう」という話しかしなければ、経済指標を見ながら市場は動くと思うんですがねえ。
変に対話を意識して、バランサーみたいな発言(市場が利上げ無しで盛り上がると第2の柱を持ち出して、早期利上げで盛り上がるもまだ様子見たい時は火消しに回る)が出てくるから話がややこしくなると昨日も似たようなことを申し上げましたが、市場なんて極端から極端に振れやすいものなんですから、変にバランス取りに行くと却って振り子の振れが大きくなるって事なんでしょうな。
まあ7月の利上げが上手くできたんでそれが過信に繋がったということっすかねえ。今とあの時では外部環境が違うということで。
・消費者物価指数発言について
昨日ご紹介したときに、企業物価じゃなくて消費者物価の弱含みに総裁が言及しましたねって話をしましたが、会見場で突っ込まれておりました。
『(問) 今回の現状維持の背景として、(内容部分省略)ということをおっしゃいました。その後、個人消費だけではなく消費者物価も些か弱めということをおっしゃっていますが、一致した点については、個人消費だけではなく消費者物価についても若干弱いという認識で一致されたのかどうか、というのをまずお伺いします。(以下割愛)』
『(答) 最初にお尋ねの点は、先ほども個人消費や消費者物価などで弱めの指標が出ていると申し上げました。しかし、今後点検していく材料というのは何もこの2点にだけ絞るということではなく、これらも含め引き続き様々な指標を丹念に分析していき、政策変更を行うことが適当だという十分な確信を得られるところまでの点検結果が結論として出てくるかどうかということであります。(以下割愛)』
えーっと、どうも回答を回避してますなこりゃ。ちょっとサービスしちゃったかなって所なのかも知れない(^^)。
・定率減税の影響について
これはまた素晴らしい質問。
『(問)1月から定率減税が全廃になり、家計部門にとってみれば実質増税になると思いますが、個人消費が少し弱い中でその影響について、どのようにお考えですか。』
『(答)そう単純ではないと思います。定率減税によって受けていた家計部門のメリットがなくなるというのは、確かに負担が増えるということになるわけです。しかし、経済が今後とも息の長い成長を続けていけば、民間部門内での所得の増加は当然期待できるわけですので、併せて考えますと、やはり息の長い成長が続くということが、家計部門にとっても将来のコンフィデンスをより強めていくことになるだろうと思っています。』
まるでこれでは答えになっておりません(^^)。ということは「悪影響あるんだよな〜、でも政府与党の庭に特攻する訳にもいかないからな〜」というのがホンネでは無いかと勝手に総裁の心を妄想するあたくしなのでありました(^^)。
その他幾つか論点というかネタらしきものがあるのですが、時間と量の関係上とりあえずこんなところでご勘弁下さい。続きは明日。
2006/12/20
お題「今度は逆方向に火付けとは・・・・(-_-メ)」
全会一致で現状維持は予想当たりましたが、まさか総裁会見で金先債先など大暴騰の火付けが発生するとは予想大外れでしたな。毎度の事ながらありゃりゃですよ。
という訳で、昨日の総裁会見に関しては「じゃあ今までの地均しはありゃ何だったんでしょうかねえ」ということで、「最初からそう言って置けば振り回されなかったんですけどねえ」と文句の声多数と逝ったところでしょうな。
しかしモーサテ見てると日経新聞では「日銀は市場が織り込む形での利上げを重視しており1月の利上げは難しい」(今までの路線は事実上日銀による織り込ませ路線なんで市場の織り込みは正直日銀次第でしょ。それの是非は別として)とか金融経済月報のニュースで「企業物価は当面弱含みが横ばい(報道ママ)」(「目先、弱含みないし横ばい」が正しく、当面ではない)とか、ついさっきまで「利上げバイアス報道」だったのがドテンして「利上げまるで無しバイアス報道」になったとしか思えんメディアで実に困ったもんだと存じます。
などと前置きが長くなりましたが、まずは月報から。
○金融経済月報:個人消費の現状判断をやや変更
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0612.htm
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0611.htm
(例によって上が12月分)
で、ご案内のように、現状判断部分で個人消費がやや伸び悩んでいるという事をやっと認めましたなあということでございます。
確かにここもとの審議委員の講演でも個人消費関連の経済指標が冴えませんという話は多かったので、こういう風になっても不思議では無かったんでしょうけれども、地均し(というのが悪ければ、第2の柱を全面に押し立てた利上げロジック満載の情報発信)を散々した挙句に決定会合は全員一致で現状維持だわ月報は消費の現状判断に弱めのフレーズ入れるわ、会見ではなおトーンダウンだというのは何だかねって感じです。
正直言って「市場との対話」をしようとして結局のところ「市場をかき回して大騒動を起こして元の木阿弥」と逝ったところでございまして、総裁と水野審議委員イイカゲンにしやがれと思ってる市場の中の人は結構いると思いますけど。
で、くだんの部分ですけど。
『雇用者所得も緩やかな増加を続けており、そのもとで個人消費は、やや伸び悩みつつも増加基調にある。』(12月)
『雇用者所得も緩やかな増加を続けており、そのもとで個人消費は増加基調にある。』(11月)
ということでして、やや「伸び悩みつつ」も「増加基調」という増加基調の旗は降ろしてないのですが、項目が「個人消費」という景気拡大ロジックのキモになっている部分なだけにインパクトがございましたなあという所です。ただまあ月報レベルでは下方修正というよりは但し書きをつけというべきもの(基調判断そのものが「増加基調」のままだから)であって、「下方修正」と見るのは過大評価ではないかと存じますので要注意(ちなみにブルームバーグニュースのヘッドラインでは「下方修正」とは書いてませんでした。時事とロイターは存じませんが)。この調子の個人消費指標が続くとどっかで本格的に下方修正になるんでしょうけれども。ナムナム。
他の部分ですけれども、短観を受けて企業の業況感に一言『業況感も良好な水準で推移する中』と入っている以外で違うのは国内企業物価の部分ですな。
・国内企業物価の現状判断
『国内企業物価は、原油価格の反落が影響し、足もとでは3か月前比でみて横ばいとなっている。』(12月)
『国内企業物価は、原油価格の反落が影響し、上昇テンポが鈍化している。』(11月)
・国内企業物価の先行き見通し
『国内企業物価は、原油価格反落の影響がなお残ることから、目先、弱含みないし横ばいで推移するとみられる。』(12月)
『国内企業物価は、当面、原油価格反落の影響が残ることから、上昇テンポの鈍化が続くとみられる。』(11月)
ということで国内企業物価に関しては弱めになっております。
○総裁記者会見
詳しくは例によって日銀発表の会見要旨が本日出るでしょうからそれを真面目に読む必要が物凄い勢いでありますので、本日は諸般の事情(最終報出る前に呑みに逝ったからですが^^)で最終報を見てないブルームバーグニュース(プロフェッショナル)ではなくて、珍しくネット上のブルームバーグニュースから簡単に。リンクはどうせ暫くすると切れると思うんですがこちらです。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=aL4W2pscI1kA&refer=jp_news_index
上記URLから引用致します。
・利上げ見送りになった背景は?という質問に対して
『本日の決定会合で現状維持を決定した。政策の先送りとおっしゃったが、先送りではなくて、諸情勢を丹念に点検し続けた結果、今回は現状維持となった。背景となる経済・物価情勢は、短観やGDP統計を含め、前回会合以降明らかになったいくつかの指標を踏まえて、丹念に検討した結果、日本経済は引き続き緩やかに拡大していることを確認した。先行きについても生産、所得、支出の好循環の下で、景気は息の長い成長を続けていく可能性が高いと判断した』
『ただ、このところご承知の通り、個人消費や消費者物価などの面で弱めの指標が出ているということも事実だ。今後公表される指標やさまざまな情報を引き続き丹念に点検していくことが適当である、という点で意見が一致した』
ということで、まあ月報で個人消費と国内企業物価に関しての言及があったのですが、会見では消費者物価に関しても弱めという話をしております。月報要旨との整合性はどうなのよという気もします(ちなみに消費者物価指数については『生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)前年比上昇率は、石油製品価格の影響によって伸びが鈍化しているが、なおプラス基調で推移している。』と言及してます)がそこは追及せずに(^^)別の質疑を。
・フォワードルッキングと足元の数字について
実に素晴らしいツッコミをする人がいます。質問も引用。
(問)『日銀はこれまでフォワード・ルッキング(先見的)な政策、先手を打つ政策を標榜されてきたが、今回は足元の指標を重視したかのように聞こえるが。』
で、これに対する答え。
『フォワード・ルッキング・アプローチというのは、先々まで経済・物価の状況を深く読みながら、必要とする政策を早めに適切なタイミングでやっていく。この点はおっしゃった通りだ。ただ、フォワード・ルッキング・アプローチと言っても、手前の現実に出てくる経済指標、物価指標を無視して、これを飛び越えて、遠眼鏡で先だけ見ているというアプローチではない』
いやあ第2の柱を全面に押し立てて「手前の指標が強弱あっても必要な時は判断する」というような趣旨の講演要旨をここんところ何回か拝読しておりました愚昧なあたくしから致しますと、何を今更言い出すんだという感は拭えない(べき論で言えば当たり前のことをやっと言ったかという所ですが、笑)ご発言でありますな。
その続き。
『やはり刻々と出てくる経済指標、あるいはさまざまな情報、データを先につなげる形できちんと分析しながら、先を判断していく。先々の経済の姿が指標で出てくるわけではないので、やはり現実に出てくる情報を丹念に分析し、将来の展望という形で組み立てながら政策判断につなげていく、そういうやり方をとっている』
『したがって、手前に出てくる情報に乱れがなく、整斉と一定の方向で出てくる場合と、つい最近のように強い指標、弱い指標が入り乱れて出てくる、あるいは過去の数値が改定される、こういうふうなときには、手前の指標の丹念な分析が一層必要になる。そうでなければ、確信を持って先を見にくいという面が出てくる』
GDP改定まで言及しておりまして、何と申しますか「データ重視」と逝ってみたり、将来のリスクを重視してみたり、その時々で言うことに一貫性がないから結局のところ市場は「ロジックじゃなくて政策委員の意向重視」になるんじゃないでしょうかねえ。これじゃあ市場の対話とか言わないでルール重視でやってもらった方がよっぽど動きやすいんですけどねえ。更に続き。
『そういう意味で、手前の情報をより重視しているように見えるが、実際にはわれわれはたんたんと同じペースでいろんな情報を分析し続けている。今後もそうしていく』
どう見ても転向です。本当にありがとうございました。
#その他雑談小ネタあったのですが時間の都合で明日に順延
2006/12/19
お題「金融政策決定会合ですが」
モーサテ様が華麗にスルーする中、他局では国会も閉会するということで次の政治ネタは本間税調会長になっておられるようですな。大体からして報じられているような「立場を利用して自分に本来受けるべきで無いような便宜を図らせる」という行動を(報じられていることが事実であれば、ってか事実のようですが)平然と取る時点でこの人感覚が麻痺してるでしょ。
さて、昨日は久々にまあ平和な市場でございまして、利上げ懸念で大騒ぎ、そして懸念剥落で大騒ぎと相場で疲れ、年末宴会モードで疲れたのでほっと一息と言ったところでございましょう。そんな訳であまりトピックスも無いので金融政策決定会合と総裁会見の予想でも。相場の予想と違って(こら)、そこそこ当たると思うんだけどなあ。
#フジマキ先生、今朝もまた論評しがたし。ゆっこさんもツッコミをしないで「はあはあそうですか」モードなのが益々アレでございまして、まさに麒麟も(以下自粛)。
○現状維持の票決差、あるいは利上げ提案はあるのか
まあこれで今日利上げやったら驚天動地ですが、そもそも火消しの決め手が「日銀幹部発言と伝えられた発言」でありますところから勘案するとさすがに現状維持で間違い無いでしょう。あったらマジで暴動もの(笑)。
問題は誰か利上げの提案する人はいねえかって所でして、正常化路線を昔からよく主張する福間審議委員とか、毎度毎度余計な過激発言をするうえにやたらと発言の出る機会も多い水野審議委員とかに利上げのご提案でも賜りたいところでございますわな。というか騒動の責任の半分くらい水野さんなんですから(あたくしの主観的判断ですが)、おめーは発言の責任取って利上げ提案しやがれという感じです。「正常化路線」という意味では、ある意味緊急避難的な措置であったロンバート金利とコール誘導目標金利の回廊幅を、正常化にふさわしく拡大するという提案を福間さんがするのもどうでしょうかと思いますけど。
まあこれで全員一致で現状維持だったら今までの騒ぎが何たる茶番という感じですけど、あたくしの予想は実は全員一致だったりするのですな。あたくしが勝手に考えるべき論と予想は別もんですよ別もん(ま、だから予想が外れたときにもやたら対応が早いのですが、苦笑)。
○金融経済月報
7月の利上げ以降、特に景気判断部分に関して毎回毎回判で押したように同じような内容(当然ながら物価に関しては原油価格だの国際商品市況だのの影響で表現が変わってますが)となっている金融経済月報(要旨)も本日公表されます。こちらでの表現に何か変化があるのかも注目したいです。というかここん所同じ内容が続いているので注目度がどうも下がっておりますな。
ちなみに、この間金融政策決定会合の議事要旨を見ると、少数意見として景気先行きに関してどうなのよというのが出てきてますが、月報要旨が不変ということは多数派意見は前回までの段階では変化なしということです。今回の割と良い内容である短観を受けて判断をどういじってくるか、あるいはいじらないかを注目したいです。ただまあこれまた予想としては、そもそも7月時点で強気満々の月報だった(当然ですが、7月時点で内容を一歩強くしている)ので、今更これを強くすることもねえだろうという所ですが。
○総裁記者会見
あたくしの過去の駄文でもご覧頂くとお判りになるかと存じますが、実は総裁記者会見そのものは11月のきさらぎ会での地均し節全開講演以降は極めて穏当なものになっております。まあ一度言えば十分ですから、そういう点では市場のオドシ方へのご理解がこの期に及んで進んだのでしょうか(苦笑)。
まあその間に他の人がやらかしてくれてますので、総裁がそれ以上火を点けて回る必要が無いというのもあるかとは存じますが、今回はまあ会見で散々っぱらツッコミを受けることになるんでしょう。何か言い出すかちょっとだけワクワクテカテカ。
#しかし超長期入札にぶつかっている決定会合最終日ってのも中々アレでございますなあ
ま、ここもとの流れから行きますと、総裁は原則的な話に終始すると思いますので、どこかの勇者が「中川幹事長が日銀は平成の関東軍にならないようになどとおっしゃっていたことについてどう思いますか」とか総裁の機嫌を悪くするような質問をして頂くとアレでございますが(いやまあ半分冗談ですよ、冗談)。
これまた予想ですが、「こんなに良い短観を受けてるのに12月利上げできなくて無念」ってのがどっかに出てくるのではないかとやや思ってますです、はい。
以下雑談。
○GCレート一旦低下
20日スタートのGCではエライコッチャでございまして、その余波で20日スタートのCP発行レートはまちまちでしたが、局地的には「えっ!」というレートも散見されまして、まあ銀行CPディーラーのポジションが重いんですかねえという感じでした。で、昨日のGCは前週末の流れから0.36−38くらいからスタートしたものの、さすがに資金放出をいつまでも止めてても仕方ないので出す人も出てきて最後は0.3台前半まで低下したようで、均してみたら0.35あたりなんですかな。
これで一安心と言いたい所ですが、間もなく国債発行集中日の25日になりますし、その後は年末年始6日間というのがありますので、まあ下がりにくい展開は続くんでしょうな。そんな中でTB/FBは買いが旺盛でやたらと堅調なんで、業者も運営が難しいんじゃないっすかねえ。年末とか期末とかには顕著になるんですが、商品カテゴリーごとに参加者層も参加するロジックも微妙に違いますので、商品ごとに思いっきりブレが出てくる時期になって参りましたですなあ(って先週からそうですが)。
○証券取引所はやろうと思えば明日からできるビジネスモデル??
金曜の日経金融新聞で内閣府の金融担当政務官の田村耕太郎さんのインタビュー記事がございました。この人以前国会の委員会質疑(参議院財政金融委員会)で、福井総裁にとんでもない馬鹿質問をした挙句、ご本人のサイトで「ギャグを交えた」と自慢をしてた誠に香ばしい方なのですが(2005年10月21あんど28日のドラめもんご参照)、東証に関してこのようなご発言を(以下12月15日の日経金融1面インタビュー記事より)。
『(前半割愛)取引所の本質は売り手と買い手に最善の価格を提供することだ。グーグルなどが明日からやろうと思えばできる陳腐なビジネスモデルと言っていい。取引シェアの92%を握っているといってあぐらをかいているようでは吹き飛ばされる』
まあ東証が如何なものかというのは同意なんですが、売り手と買い手に最善の価格を提供するだけならカカクコムあたりでもやってるわけでして、取引所の本質はそういう所ではなくて、執行と決済にあると実際に売買を(まあ債券の場合相対が多いですけど先物は取引所ですわな)してると思うんですが。
ちゃんと決済ができるかとか、取引所がカウンターパーティーになることによる決済リスクの軽減とか、取引が集中することによって執行がスムーズに行くとか、諸々のノウハウと決済インフラの必要なものでしょうと実務で売買(あたくし株式のディーラーもやってたことありますんで)してた人としては思うんですが、このセンセイ証券会社にいたときにそういうことやって無かったのかなあ(まあやっててもそういうこと意識しない人もいると思いますけれども)と不思議に思うのでありました。
てか、そういう認識で金融担当政務官をやってる人と言うのがオソロシスな訳でして、変に半端な知識があるがために現場の状況を聞かないで自分の脳内理念で爆走されると目も当てられないのは貸金業規制関連で大暴れしてたどこぞのボンボン議員様を見るまでもございませんので、まあそれがあたくしの取り越し苦労であることを祈りたく存じます。
○ネタメモ
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/fsc0612a.htm
『金融機構局金融高度化センターでは、12月7日・8日に日本銀行名古屋支店で、東海地区の地域銀行、信用金庫を対象とする金融高度化セミナーを開催しました。7日(木)は信用金庫向けセミナーを、8日(金)は地域銀行向けセミナーを行いました。』
中の資料を読もうと思ったけど量が多いので後日の宿題です。
2006/12/18
お題「日銀短観/その他世間話を少々」
○短観をいつもと同じようにチェック
日銀短観が公表されました。「予想通りなら大してインパクト無いでしょ」と予想してたら、利上げ予想時期が1月に寄せられたインパクトが割とあったのが少々意外でございました。てかまた外した訳ですが(こら)。
短観に関しては本職の方々がレポート出してると思いますので、あたくし如きの出る幕は無いのですが、駄文書き出してから毎度同じパターンでチェックしてるので今回もチェックでございます。ちなみに、短観の1ページ目を見たときの印象は「こりゃ良い数字ですなあ」でございましたので念の為。
・3か月前には先行き下向きでしたが・・・・
ずーっとチェックしてるのが「前回調査での先行き予測が実際にはどうなったか」というお話です。3か月前の現状判断DI、先行き予測DIが今回どうなったかというのを並べて見ましょう。
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
製造業大企業 +24→+21 +25→+22
製造業中堅企業 +14→+11 +17→+12
製造業中小企業 +6→+7 +10→+5
非製造業大企業 +20→+21 +22→+20
非製造業中堅企業 +5→+4 +4→+2
非製造業中小企業 ▲8→▲9 ▲6→▲10
で、あたくしが毎回注目しているのは上記数字で言うと真ん中の2つの数字でございますが、今回もまた殆どのセクターで「前回の先行き予測よりも好転」しておりますわな。ついでに申し上げると、前回時点では多くのセクターで「先行きは今よりも悪化(というか減速というか)する」という予測DIとなっておりましたが、蓋を開けてみれば殆どのセクターで「9月時点よりも現状判断が好転」しておりますわな。
今回の調査でも先行き予測DIが現状判断よりも小さい(またはマイナス拡大)数値になっておりますが、これは景気が緩やかに拡大している(まあ企業部門はそうでしょ)ここまでの局面での短観の仕様みたいなもんでして、ややあたくしの妄想と毒も入りますけど、先行き予測DIが現状より好転するような結果が出るようなら「天井の時には皆さん揃って強気」っていう奴になるんじゃないかなあとも思うのでした。まあ景気弱気派のストラテジスト様やらエコノミスト様(区別が良く判らんが)におかれましては「先行き予測DIが下を向いている」というのを鬼の首を取ったように宣伝する向きもありますが、残念ながらこれは仕様ですのであまり注目しない方が吉かと(^^)。
・雇用判断DI
こちらも最近見るようにしたのですが、こっちは今回も「前回予想するほど雇用の不足感が拡大していない、だけど不足感拡大」という結果になっております。でもどうもこれも短観の仕様のようです。短観概要の6ページ目です。
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
製造業大企業 ▲2→▲6 ▲5→▲7
製造業中堅企業 ▲5→▲7 ▲7→▲8
製造業中小企業 ▲7→▲10 ▲8→▲9
非製造業大企業 ▲13→▲16 ▲15→▲19
非製造業中堅企業 ▲12→▲16 ▲12→▲17
非製造業中小企業 ▲11→▲13 ▲10→▲13
過剰−不足で数字が出てくるので、マイナスのほうが人手不足感が強いっていう意味では良い数字だと思います。
・証券業の業況判断DIはいつ見ても笑えます
7ページ目にある「金融機関の業況判断等」のコーナーで証券業のDIを見ると今回もまた実に香ばしい。
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
証券業 ▲4→+36 0→+40
前回予測がここまで豪快に外れまくっているのは短観概要の1ページ目を見ても見当たらない次第。てかおまいら3月予測でそんなに好転すると思ってるなら冬季賞与のファンドを何でそんなに減らしたのかと小一時間問い詰めたいですが(というのは半分冗談)、いくら市況産業とは言え、この「先行きの楽観予測が見事にダメダメ」というのを見ると、「大本営発表」という文字を大書して証券会社の経営ナンチャラ部の人たちにご進呈申し上げたくなりますな。マッタクモウ。
○20日スタートのレポが
金曜はご案内の通り、短観を受けて先行きの過度な楽観(というか利上げ予測時期が延びているのだがら景気には悲観だが)が剥落する形になって、ロングの外しが出たのかなあとは思いますが、思ったよりも下がったような感じ。で、短い所はさてどうよという所だったのですけれども、こちらは中長期債ほどの反応はしておらず。まあもともと「年度内利上げ無しかも」というような価格形成になってなかったので反動も小さかったとも言えますけど。
ところが、金曜もまたまたGCレポ市場では何でそんなに出し渋るのかあたくしなどにはどうも釈然としないのですが、資金の絶賛出し渋り現象が発生したようでして、15日〜18日の当預積み上げ大会が一旦ピークアウトして低下したと思われてたGCレポレートが0.33%あたりからあれよあれよと上昇して0.37%−0.39%レベルまで上昇。
金曜のレポは20日スタートのものになりますが、12月利払い銘柄のレポが期落ちになって通常ベースに戻るのに加えて、12月なので国債償還が多いという要因はあるにせよ、別に短観で12月利上げ観測が高まった訳でもないのに何でそんなに資金出し渋るのか訳判らんです。そこまで上るこたあねえだろうと思うのですが、金曜は業者のレポ担当の皆様大変な一日だったようで誠に同情の念を禁じ得ません。
資金の出し手が横並びだからすぐこうなってしまうんですよねえ。
○OISとレポ金利先物キャンペーンが展開されてますが
金曜の日経金融新聞1面は最近絶賛展開中のOISキャンペーンにレポ金利先物のお話も出ております。OIS取引の市場規模が拡大しましたよ凄いですねって話なんですが、オフバランスの取引の想定元本とコール取引の元本を比較する時点で香ばしいものを感じますが、記事を読んでて吹いたのは以下のくだり。
『(OIS取引は)欧米で開発・普及した取引で、ノウハウを持たない国内金融機関では様子を見るところが多い。』(15日日経金融新聞記事)
いやあのそれは量的緩和が延々と続いていて国内で取引のニーズが無かった事に加えて、参加者のニーズが一方方向に振れやすい(まあその点は鶏と卵みたいなもんで、参加者増えれば解決するかもしれないけど)し、金融政策を予測してヘッジする云々ということならば、(これもまあ変な市場ですが)ユーロ円金利先物がありますわなってところでしょう。大体からしてスペキュレーターが参加するには金利の絶対水準も低いし金融政策の先行き予想方向が双方向じゃないから値動きオモロナイでしょうし。
そもそも論として、国内金融機関は今や資金余剰ですので、別に翌日物金利を積極的にヘッジするニーズがそんなにあるとは思えませんですわな。日銀オペや短期国債で調節できるでしょうし、その方がカウンターパーティーリスク無いし、一発でロット捌けるし。
まあアレでございますよ。「取引が拡大」「ノウハウを持たない国内金融機関は参加してない」「日銀様も注目されておられます」って記事を日経金融様の1面に乗っけると、朝から新聞を隅から隅まで熟読されておられるエライ人たちが下々の者に向って「こんな記事があるが当行はどうなっているんだ」と御下問をなされますので、そーゆー意味での効果はあるんでしょうなってところですな、てかそれが狙いでしょ(笑)。
#大体からしてこんな単純な取引にノウハウも糞も無いと思うが。
などとまた月曜の朝から悪態ばかり書いておりますが、記事の中でTIFFEがレポ金利先物上場を計画している話も出ておりまして、この話まだ継続してるのかよと暫く前に鳴り物入りで導入して見事に大コケした(金融ファクシミリ新聞の報道によりますと11月は全ての限月で売買高0枚という素晴らしい状況)「スワップ先物」の二の舞となりそうなお話で実に香ばしい。
何で無担保コール翌日物をリファレンスにしないのか全く意味が判らないのですが、もしかすると「レポ取引市場の方がコール市場よりも取引規模が大きい」とか思ってるのではないかという気がするんですけれども、それはまあ「取引高がでかい」のはその通りですが、マネーの取引市場として価格発見機能がどうなのよって話とは別問題だと思うんで、リファレンスにするには不適当(そもそもリファレンスレートに耐えられるものが無いですけどねえ)と思いますので、TIFFEさまにおかれましては「レポ金利先物上場」は是非思い止まって頂きたく存じます。コケた場合の責任問題はまあ他人事ですのでどうでも結構ですけど、無駄投資のツケは結局会員企業に回って来るんですから。
2006/12/15
お題「短観ですが無関係に雑談」
決定会合前に一相場終了の巻で雑談シリーズ。
○短観でございますが
本日は短観。大企業製造業のDIが前回の+24から若干改善というのが市場予想だと存じますが、まあトンでもなく凄い数字(あたくし的には29とか30とかいうようなとてつもないものじゃない限り・・・と思うけど)をが出ない限りは相場は反応しないものと思料。
#まあ「短観の結果が出てから行動」という言い訳じゃなかった投資行動の説明重視の人が世の中には大層おいででございますので、そうは言っても動きはあるんでしょうが。
で、問題は下ブレした時の筈なんですが、何せ既に12月利上げどころかその先の利上げに関しても疑問符が付くという実に香ばしい展開になっている昨今ですので、まあそうなった場合には5年あたりがもう一回買い直されるとかいうような話になるんじゃないですかねえ。いや何となくあてずっぽうですけど。
○FB3か月0.45%まで低下
短観を待たずして12月利上げ観測はどこぞへ逝ってしまい、昨日あたりは短いゾーンの買いが絶賛優勢だったようでして、3か月も強いですし、1月償還物あたりのTBFBにも買いがご到来遊ばされたようで確りとなってます。
で、3か月FBは0.45%とかになっているのですが、まあ1月利上げになるとGCや現先対比で絶賛大負けという利回り水準ではありますが、短期国債に関してはそーゆーコストと関係ない人のご参入もありますので、そんな買いもあって誠に堅調ではございます。あまり意識してないけど、一応先週のFBは期内物最終便で、来週以降は期越えになるし。
昨日申し上げていたCPですけれども、まあ当然ながら3か月あたりのレートは低下してきまして、週初の現先レート上昇モードの時から見ると3か月でざっくり4bpくらい低下したようなイメージですわな。FB421回(先週の3か月もの)のように0.49%(先週水曜の入札)→0.52%(先週金曜)→0.45%(昨日)という豪快さには欠けますが、まあちゃんと反応しているような感じですな。ちなみに水準的には0.5%台前半かと。
年末越えに関しては次の積み期間に向けて積みを進捗させようって人がいる上に、まあ一応資金繰りに関しては慎重にやる人が多いので、CPの金利自体は暫くこんなもんなのかもしれませんな。銀行のCPディーラーが頑張りだすともっと豪快にレート低下するとは思いますけど。
月末近くになって(既に利上げ無い事を前提に話してますが)ギリギリになれば資金が余ってくるでしょうし、月末は発行も多いですが償還も多いので、運用圧力が高まって月末近くの何処かの時点でCPレートそのものは低下すると思料されます。
○これは必見(人のふんどしですが)
毎度お馴染み本石町日記さん→http://hongokucho.exblog.jp/6192017/
ま、必見もへったくれも無く皆さんご覧になっておられると思いますんで別にご紹介する必要もないと存じますが(笑)、「ヘッドラインリスクが生じる理由」シリーズ第2弾のエントリー投入。
例によってコメント欄も示唆に富む、と申しますかあたくしも最初のお二方のご意見に激しく同意でございます。まあそうなるとあたくしの駄文のネタが減って困るのですが(笑)。
コメント欄でa-kunさんが『でも一番困るのはブラックアウト期間や国債入札日ですらおかまいなく呼び出したり牽制したりする国会のみなさんかな。責任ある立場として経済政策を語るのならせめてクリティカルな時間帯かどうか確認してから発言してほしい。』とご指摘ですが、あたくしも全くその通りだと思います。昔の決定会合の結果を見ると「国会出席の為に金融政策決定会合が一時中断」というような無茶な事もありましたわなあ(しかも大事な時でしたが)。
ま、あたくし趣味(実益も兼ねてますが)で政策委員様の講演要旨や会見要旨を毎度毎度読んでおりますが、武藤副総裁の安定感たるや抜群でございまして、さすがは官僚としての最高地位までお勤めになられただけの事はあると敬服する次第です。だから想定問答に無さそうな発言をした場合に重みがあるんですけれども。
○これは酷い(と皆様思ってるでしょうが)
昨日の某経済新聞様の1面にあった利上げ見送りの観測記事はご覧になった皆様「何を今更」だったと存じますが、念には念を入れてこちらにメモメモしておく所存(笑)。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20061214AT1F1300213122006.html
『これに対し、7―9月期の国内総生産(GDP)改定値で消費が下方修正されたうえ、10月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)も前年同月比0.1%の小幅上昇にとどまるなど、消費や物価面で力強さを欠く指標が相次いでいる。』(上記記事より)
いやあのそういうのはとっくの昔にでてまして、「それでも利上げするんですよ」って報道してたんじゃなかったんでしたっけと小一時間問い詰めたいとはこのことでございますが、昨日はこの記事を読んで「今更お前が言うな」と突っ込みを入れた人が物凄い勢いでいたかと存じます。
まずおまいらのその「シナリオ営業」のような「結論先にありき」チックな論調をなんとかしやがれ(おまけにいつの間にやらドテンするし)と思うんですけどねえ。
○そういや税制なんちゃらの答申がでてましたが
昨日は一相場終わったのでひねもす経済財政諮問会議の議事要旨なんぞを鑑賞しておりましたが、税制に関してお話があったのは11月24日の第26回でございました。
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2006/1124/shimon-s.pdf
ぼーっと読んでおりましたが、11ページあたりを読んでると不思議な話が。
『(八代議員)伊藤議員が言われたことを補足する。税制は、基本的に個人や企業の行動に中立でなければいけない。配偶者控除の例も挙げられたが、配偶者が働くか働かないかは家計が自ら決めること。今の税制は、基本的に配偶者が働くと損するような仕組みがビルトインされて、こういうことは速やかに変えていただく必要がある。(以下略)』
一応補足しておきますと、配偶者控除に関しては「雇用者世帯の半数以上が共稼ぎ」という現状を踏まえての話なんですが、何かこれって「配偶者が働くと損する」んじゃなくて「配偶者が家事専業だった場合に得をする」という話だと思うんですが、どうも理念とやらが負担増の免罪符に都合よく使われますなあって脊髄反応。
そういえば、企業から個人への経済効果波及に関しましては甘利議員からこのようにお言葉を賜っております(12ページ)
『(甘利議員)日本の企業が国際競争に勝ち抜いていける環境を整備する、イコールフッティングを図っていくという私の主張に関して、丹羽議員からの御発言で、法人税の減税だけが声高に叫ばれることにならないように、という御指摘をいただいた。まさにそのとおりだと思う。企業が得た収益は、次なる競争力に向ける、株主に向けると同時に、やはり雇用者にも向ける。あるいは下請け、中小企業への配慮にも向ける。これは社会政策上も必要になるかもしれないが、消費の拡大を通じて企業に跳ね返ってくるという、消費と企業の収益の好循環を早く作り出す必要があるので、そういったことに対する自主的なコミットメントを期待する。』
ということで、「自主的なコミットメント」を「期待する」だけのようです(まあそれしか言えないですけどね^^)ので、直近トラックレコードから勘案するとどう見ても期待薄です。本当にありがとうございました。そういう時の為に「所得の再分配機能」というのがあると思うんですが(といつものグチ)。
粘着質のあたくしはこれを読んでるうちにまたサルベージしたくなったんで付け加えますと、11月9日の第24回経済財政諮問会議で丹羽議員(伊藤忠商事会長)さまが誠に景気の良いお話をしておられまして、その点について安倍議長がこのようなお話をしておられましたな。
『また、丹羽議員から、だんだん企業の収益が個人に移転され始めており、フリーターや非正規の人たちの給料も15%上がっているという御発言があった。我々はいつも国会で、企業は収益を上げているが格差が広がっているではないかという厳しい指摘をいただいているので、そういう調査結果、指標があれば、是非出していただきたい。』(これは11月9日実施の経済財政諮問会議議事要旨の最終ページ)
そういう調査結果、指標が提出された雰囲気はここもとの議事要旨をざっと読んだ範囲内では残念ながら見当たらないのですなあ。何せ『新入社員の初任給は、これまた確実に10%以上上昇過程にある。』(丹羽議員の発言)という景気の良いお話だそうですので、あたくしも是非拝見致したく存じます♪
#と、短観だというのに緊張感の無い雑談に終始するあたくしでした。
2006/12/14
お題「利上げ観測時期が物凄い勢いで先送られ」
昨日に引き続きまして訂正。昨日「利上げだとベアスティープでカーブがフラット化へ」などと意味不明の事を書いてしまいましたが(アホです)、文脈からお判りの通りベアフラットです。日々忘年会(という名目の単なる飲み会)続きで宴会脳になっているというのは言い訳です。
さてまあ決定会合前にとうとう日経様まで「年内見送りの公算」という記事を書いてました(本紙は当然未確認、モーサテでやってた)が、既にその向こうに逝きつつあるのが相場クオリティ。
○オペ金利
昨日実施された共通担保本店オペは15日スタートの1月19日エンドで0.410%/0.39%(平均/足切り)となりました。んでもって全店オペでは15日スタートの2月19日エンドで0.466%/0.44%ということで絶賛金利低下と相成りました。1月エンドの方をご覧頂きますと、どう見ても12月利上げがノーケアーとしか言いようの無いレートになってますわな。
で、1月エンドのオペが19日足でして、1月の決定会合が17、18日という日程だからまあちょっと誤差ありますがこのオペ結果を使って2月足のオペ金利を分解すると平均を使えば後半1ヶ月が0.529%くらい、足切りを使えば0.496%くらいということで、まあ一応1月利上げには敬意を表しているという金利ですが、つい先週は12月以降の金利が0.53%換算などという脅威の金利をやっていた事を考えると隔世の感(3日しか経ってませんが、笑)。
ちなみに、全店オペは本店オペよりもレートが上昇しやすい傾向がありますので、実際に今のような比較をして金利を分解するのは少々問題があるのですが、まあざっくりと考える分にはこんなもんで勘弁ということでよろしくです。
○FB入札
で、昨日「あっちゃー」となったのは3か月FB入札。前日の2か月FB入札は落札結果発表後に葉っぱ踏み踏みモードになっておりましたが、昨日はそれがなお大掛かりになるの図。
前場の引け時点では0.495%から0.50%あたりだったらしいのですが、平均落札が0.49%で最低落札が0.493%というジャンピング入札になった挙句にショートカバーだか何だか知りませんが0.46%まで買われるの巻。あまりにも入札が強いので債券先物もビックリして135円近くまで上昇しておりましたが、新発FB423回は先週発行された3か月もののFB421回(当然1週間償還が短い)のオファーを差し置いてより低いレートで出合うというのはさすがにそれはいやはや何とも。
市場観測によりますと、どこぞの業者が物凄い勢いで落札していたようで、バックにはお家の事情というか細かいお値段は兎も角としてモノが欲しいというようなお人がいたんじゃネーノという話もございますが、1週間短い償還ものよりも低いレートまで買わなきゃいけないような状況になるのは参りますわな。ということで、日本相互証券の引け値ベースではFB423回が0.455%でFB421回が0.46%かと存じますが、見事に需給のみによって発生した逆イールド見参と相成りました。オーオソロシ。
で、まあそのレートですけど、それはもう1月利上げでも「持ってたら負けだと思っている」の状態でございまして、そこまで戻るのかよ!という感じで眩暈がしますが、まあそういうレートなのでございますから、短期国債はまたまた強気モードになってしまいましたなあという所でしょうか。戻るときも早いのは流動性が高くて売買が行われるからでして、これがCPになると基本が持ちきりなのでのんびりと動くのですな。
○一応CP
ということでCPなんですが、月の中盤と言うのは基本的に発行償還が少ない(相対で発行されてる分は別で、入札発行されている分について話をしてるので念の為)ので元々低調ではございますが、こちらに関しては年末資金ニーズに対応した発行が多くなっていることからディーラーの在庫が依然として重いようでレートの下げは遅行気味のようですにゃ。
CPのディーラーってのは基本的に大手銀行中心ですんで、その銀行が次の積み期間で準備預金を積みたい=CPを買うのに回す資金が減るという(あたくしが勝手に推測する)お家事情も相俟って買い手に乏しいちゅうことなんでしょうな。ここ数日のTB/FBの買い手様とは懐事情が違う(と思われる)ので金利に差がでるのもむべなるかなと逝った所でございましょう。上った金利がサガランチ会長になってますが、さすがにFB対比でレート下がるのか、逆に新しい積み期間で足元の金利が高止まりして(するかどうか判らんけど)ファンディングコストの問題からFBのレートが若干上昇するのかという所で、いずれスプレッドは縮小すると思いますけどね。
○1月どころか年度内も難しいという話も
いやもう12月利上げとかいう話だったのがコケたら次は1月という話をすっ飛ばして「年度内利上げも困難になってくるでしょう」的な言説がどんどん増えているような感じでございまして、節操の無いお話としか申し上げようがございません(オマエモナーというツッコミは却下)。
昨日も申し上げましたが、もともと1−3月期のあたりで利上げですかねえという話をしながら経済指標見ながら一々反応していたのがついこの前までの相場だったんですが、ヘタにその時期を手前に寄せてみたら(いやまあ地均しの意思は無いと言うんでしょうが、水野審議委員講演なんぞは地均しと言われても致し方ないと存じます)、引っ張ったゴムが(弱めの経済指標と中川幹事長のコンボで)切れてしまい、その反動で引っ張ったモノ(市場の利上げ織り込み)が遠くに逝ってしまったの巻、まさに「山高ければ谷深し」の典型ですな(先週末からFB421回は0.52%→0.46%ですよあっはっは)。雉も啼かずば撃たれまいというか過ぎたるは及ばざるが如しというか、まあ実に香ばしいことです。
市場が勝手に解釈しやがって反応するからだろうがコノヤローと政策委員会様的には歯軋りしたいところでもあるかと存じますが、まあ「市場との対話」路線やって試行錯誤中ということでございますので、この手のご批判はご批判として今後の(と、すっかり12月利上げ無し一点張りになってるあたくし)情報発信に生かして頂きたいのですが、何かあまり反省して無さそうな気がするので、またどこかで性懲りも無く「やるやる詐欺」が出るのかね。
本石町日記さん(また受け売り)のところでヘッドラインリスクの件について連載(するんですよね?)エントリーが投入されておりますが、コメント欄も含めて示唆に富みますので必読でございます。
#と、本日も世間話で恐縮至極
2006/12/13
お題「短観を待たずしてひとテーマ終了(か?)」
まずは我ながら超恥ずかしい物凄い訂正。
昨日あたくし2か月FBに関して「発行量1.4兆円」と書いて話をしておりましたが、1.4兆円の発行は金曜の1年TBでございまして、2か月FBは2.8兆円でございました。伏してお詫び申し上げます。すいませんすいません。
「入札大丈夫でしょう」というのは珍しく当たってましたが、もしかしたら「誤字があると怪推奨の呪いが掛からない」という某兜町の撃墜王である髪様と同じパターンになっているのではないかとガクガクブルブル。
まあ本日も相場雑談。FOMC声明文は寝坊したのでパス。
○12月利上げ観測後退ですなあ
昨日は5年国債の入札も(というかそっちがメインイベント)ございましたが、入札堅調で引けに向けて相場上昇するわ5年は堅調だわということで、5年60回ベースで見れば先週金曜の引けが1.255%だったのが昨日の引けで1.180%とはまあ豪快な展開(新発は1.215%)でございます。
まー「利上げだとベアスティープ(間違えてました)でカーブがフラット化へ」という話を市場で皆さんしてるようですので、逆になるとブルスティープというのは実にこうお約束な展開でございますが、様子見してた人たちがここぞとばかりに買いに来たんですかねえ。
で、昨日世の中の失笑を買っていたのは某著名海外レポートでございまして、あたくしも実物を見ている訳ではないので詳しくは知らんよって事実誤認があるかもしれませんが、先週の火曜だか水曜に出たレポートでは物凄い勢いで「12月利上げですよ大変ですよ」というものを出しておきながら、今週のレポートでは「12月利上げなんぞございませんが何か?」というものだったというのが世の中で言われていることでした。何たる風雪のルル。
ま、かくいうあたくしも先週の火曜日に水野審議委員が行った「利上げ理屈をやたら並べた講演」(先週水曜のドラめもんご参照)そしてその中にあった『もちろん、景気のベクトルが右肩下がりになる、すなわち、景気が踊り場に入った後に景気後退局面に入る蓋然性が高いと判断されるような状況判断ならば、金融政策は現状維持が適切だと思います。』という無茶苦茶(適切な金融政策は「現状維持」じゃなくて「利下げ」だろうよという意味で)なフレーズに驚倒してしまった口でございます。
そのために、「質疑応答で言わされちゃった」西村審議委員の会見に関して最初のヘッドラインの印象も残り、つい「もしかして西村さんも利上げバイアス?」と疑問を入れながら読んでおりました(先週木曜と金曜のドラめもんご参照)んであんまりエラソーな事は申せませんが(自爆)、毎度毎度日本の金融政策に関してどういう取材をしてるのか知りませんが困ったレポート会社でございますなあという所ですが、そもそも一番その手の話を煽りまくっていたのは日本経(ry
#なぜかいつの間にか悪態に(苦笑)
○15日スタートのレポレート上昇と・・・
昨日のレポ取引は15日〜18日の期間が主にトレード。で、そのレートですが最終的には0.38%近傍だったようでございまして、そのココロは16日から準備預金の新しい積み期間に入るによって、先に準備預金沢山積み上げておこうというインセンティブがレポの主要資金出し手様であられますところの大手銀行様に働いたものと思料されます。資金の出が悪くなってレート上昇と。
何で準備預金を先に積んでおこうかという話になるのかと申しますと、勝手に人の事情を類推しますと、(1)多分無いとは言え、短観が度肝を抜くほどよければ(特に中堅以下で)利上げが無いわけでは無く、足元金利が0.5%になる前に積めばその分丸儲け(儲かる訳ではなくて準備預金のコストが下がると言うのが正しいですが)の巻、(2)それはそれとして今年は冷静に考えると年末年始が6日間もあって、どう考えてもその時の翌日物(なのに6日もの)金利は上昇するので、そんな高金利の時に準備預金をあまり積み上げたくはない、ということで、16日から前倒しで準備預金積んでおきましょうという話になるんでしょう。
で、この影響が昨日(というか先週後半からその気配はありましたが)のコールに出て参りまして、翌日物コール市場のビットが減ってレートも見事に低下。月曜に0.246%だった加重平均金利は昨日は0.226%まで低下しちゃいました。
16日からの準備預金積み上げを行うという事になりますと、土日の関係上必然的に今回の積み最終日の15日にドカンと準備預金を積むという結果になる次第でして、そうなると今回の積みはもうそんなにする必要はないとなって(ただでなくさえ準備預金の進捗が進んでいるし)足元の資金取り意欲が激減するという訳ですな。実に奥が深い。
まあそんな訳ですので、必ずしも12月利上げノーケアーという訳でもないですわな。昨日の2か月FBは葉っぱ踏み踏みで0.47%平均が終わってみれば0.455%になってましたが、まーそれでも12月利上げを無警戒な訳ではございませんし。
ちなみにオペレートですが、昨日は共通担保本店オペが2本実施されてましたが、期間の長いほうは2月22日エンドで0.499%/0.48%(平均/足切り)でして、12月19日エンドのオペ結果の平均0.309%を手前の金利として認定すると、平均からだと後ろの金利が0.516%ですが、足切りからだと0.496%ということで、おお0.5%割れまで入ってるじゃんという結果でした。
○まあ短観で後押しされなかったとして決定会合で・・・・
金融政策は当然現状維持ということになるんでしょうけれども、利上げロジック大爆発の講演をしておられ、結果として市場をかき回す燃料を投下して頂きました水野審議委員様におかれましては、講演のロジック通りに利上げの提案とかをなされるのではないかと大変期待をするところでございます。ワクワクテカテカ。
まあメディアが煽ったり、変なレポートが出たり、相場が勝手に織り込みに逝ったというのも勿論ございますけれども、このままだと外部的な印象としては「日銀(の政策委員)が利上げに意欲を示したら、自民党幹事長から一喝されてシュンとなりました」というのが残像になる次第でして(まあ中川幹事長にとっても「政治介入」っぽく言われるのは本意じゃないと思いますが)、現に市場では早速「12月利上げ出来ないと年度内の利上げも中々出来ず」っていう見解が入ったレポートも散見される有様。てか参加者の皆様におかれましてもそーゆーイメージが何となく頭に浮かんで来ていると存じますが。
#まあこれも不幸ちゃあ不幸で、そもそもやる気全開と取られて致し方無しなのはあたくし思うに水野さんの講演と11月頭のきさらぎ会での福井総裁講演(それでやったひと相場はちょっと前にやりましたが)なんで別に日銀が一丸となって地均ししてたわけじゃないんですけど・・・
そもそもこのひと相場の前においては市場的には年内利上げに関してケアーしてなかった(ストラテジスト様の見解は兎も角、ポジション動かしてるプレーヤー的にはノーケアーもいいとこ)だった訳ですから、何もなければ何もないで淡々と動いてた(で、まあ1月から3月の間に利上げなんでしょで相場は動いてた)筈なんですけど、変な燃料を投下して却って自分の首を絞めた結果になっとりゃあせんかと思うのですが。
大体からして次回(いつだか知らんが)利上げする時にもその直前まで全員一致で現状維持とかいうのがキモチワルイと思うのはあたくしだけではありますまい。これだけ燃料を投下していただいて次回の会合で誰も利上げ提案しないとかだとまさにやるやる詐欺。
・・・などと悪態全開でございますが(苦笑)、水野さんの講演に関しては確かにそれは一般論として述べた話ということではあるんでしょうが、結論として「方向性は利上げ」という状況下で「こういう点で金利の調整が必要です」って話を連発されたらそりゃまあ「利上げしますよ」って読んでしまうと思うんですけどねえ。まあこれで「全会一致で現状維持」だとこの騒動は一体全体何だったんでしょうって感じですな。
なお、短観がまあボチボチ程度で決め手にならないという状況を前提に上記の悪態をついておりますので念の為申し添えます。
2006/12/12
お題「とりあえず12月利上げ観測トーンダウン」
昨日は「そんなにトーンダウンしますかね」と書いてたら物の見事にトーンダウンしたのは米国雇用統計に幻惑されたという言い訳をしておきましょう(大汗)。しかしあたくしが何か言い出すと逆に逝くような気がするのはきっと気のせいですよ気のせい・・・・なのかなあ??
○しかしまあ派手に戻りますな
何が効いたのか存じませんが(まあ「利上げ見送り」報道に中川幹事長の牽制のコンボによって改めて機械受注と景気ウォッチャー調査が見直されたということなんでしょうけれども)とりあえず相場は戻って一安心の巻・・・・ではあるのですが、本日は5年入札があると言うのに何もその前日に5年に買いが入らなくてもと思うあたくし。
で、「12月利上げが1月利上げになって(そりゃまあ1月だって無いかも知れないけど)1か月しか変らないのに5年が4毛も5毛も動くもんなんですかねえ」と言ってたら知人の一人は「5年分の1か月ではなく、下期ベースで言えば残り3.5か月分の1か月なんだよきっと」などとうまいことを言われて思わず頷いてしまいました(いやまあ半分ギャグですけど)。まあそれは兎も角。
市場が12月利上げに関して殆どノーケアーだったものが一気に12月利上げを織り込みに行った為に動きが派手になったというのもあるとは思いますが、米国みたいに次のFEDのアクションが利上げなのか利下げなのか判らんという訳じゃなくて方向性はまあ見え見えだというのによーやりますなあという所で(特に為替市場)。国内的、というか短期市場的には突如物凄い勢いで様子見地蔵になられてしまった人たちが多かったという印象なので、まあそういう人たちが5年とかでも買ったんでしょうかねえというところでございます。
○5年入札は華麗にスルーして2か月入札ですが
さてそんな市場でございますが、ふと見ると本日入札の2か月FBのWI引けが0.475%になっております(というか金曜の0.48%ってオペ金利と比較してどうなのよという気もしますが)。今週のFB以降は保有期間は殆ど12月会合後ですけど、その利回りが0.5%切っている(のかどうかは最終的に蓋を開けてみないと判らん、所詮引値は引値なんで)ということは12月利上げ無しの読みも増えておりますよってなもんでしょう。
証券ディーラーみたいに在庫ファイナンスをしなければいけない人からすると保有期間中のGCとか現先利回りが気になりますし、マネー系の投信のような運用の人だととりあえず保有期間中の無担保コール翌日物利回りが気になる所ですが、どっちの立場にしても12月利上げを思いっきり意識すると買いにくいし、1月利上げだと思えば行けるという微妙な所ですな。
まあ発行が1兆4千億しかなくて、誰かひとり大手の人が積極的に行ったら終了しちゃうんで大きく崩れるということはさすがに想定しづらいんですけど。(これ発行量勘違いしてました)
一方で先週発行された3か月FBは堂々0.505%がオファーで引けている(引値も0.505%で前日比1毛5糸強水準)ので、そんなに威勢良く12月利上げ無しの一点張りで突き進む訳にもいかん(短観あるし)でしょってところかと存じます。まあ本命は水曜の3か月FB入札という感じでしょう。
ちなみに、クーポン銘柄のGCは特に波乱なかったようで、まあ良かったですねというところでしょう。確かに19日に利上げがあって即日実施したとしても、その時間が3時近くとかになっていれば、その前に取引行われちゃうかもしれませんし(ただし前回の場合は翌日実施だと思ってた人が普通に資金放出したという面もありますので微妙ですが)、利上げがあったにしても実質20日からだと思えばそれはそれで無問題なんでしょうかねえ(ちと釈然としないが)。
#などと昨日と全然違う話をしている事はケンチャナヨ
○国債市場特別参加者会合議事要旨で雑感
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/c181208.htm
国債発行計画の話と発行方式をどうするという話で、特に後半部分に関しては現物の対顧客取引をしているディーラーにはモロに利害関係のある話でございますが、まあ実際に現物をやらない人にはあまり関係ないお話ですかね。
まあ色んな意見がありますなあと思いながら流し読みしたのですが、ここのところあたくしが読んでて目につくなあと思うのが「海外投資家が云々」というくだりでございまして、現物国債のセカンダリー市場で海外投資家が暴れるじゃなかった存在感を高めているという事なんでしょうなあという話。
で、あたくしここは業者主体の会合の落とし穴なんじゃないかなあとふと思ったんですが、業者(といったら語弊があるかな。トレードの現場という意味ね)としては入札の札がどうなるというのも大事なんですが(価格を調整しても誰も買わないのでは困る)、セカンダリーマーケットでの存在感がでかい人(要するに相場で暴れて方向性を出す投資主体)の動向というのが何だかんだ言って気になりますので、どうしてもそういう人を意識した意見が多く出るような気がするんですよね。この会合って。
大手銀行さんの存在感が今よりももっとでかい(今でも十分でかいですが)時の市場懇議事要旨のことを思い出しますと、大手銀行の売買動向を意識した意見をよくみたような気もしますし、まあ業者としてはどうしてもそういう風になっちゃうんジャマイカと存じますが、それはあたくしの気のせいでしょうかねえ。
てな訳で、業者の話だけ聞いていると「買ったらホールドですよ」という安定消化の人の動向がなおざりになる可能性もあるのかなあ何て書いていると、ちゃんとそのあたりに目配りしている意見もありますし、その上投資家懇談会もあったりすのでまあ問題ないですか(^^)。
今回の会合は発行方法の話が多く、さすがにこれは意見が分かれる所ですのでまあ読んでみた雑感だけでございましたけれども。
○何でも日銀のせいなんですかねえ
自民党中川幹事長の日銀牽制(?)見解なんですが。
http://www.nakagawahidenao.jp/pc/modules/wordpress0/index.php?p=377
『7−8月の統計と7−9月の統計の差の原因は何か。この間に影響を与えた政策転換といえば、私には日銀による3月の量的緩和解除と7月のゼロ金利解除しか思い浮かばない。』
多分7−8月というのは4−6月のタイポだと思いますが、まあそれは兎も角として、定率減税の半減だって給与所得者で年末調整する人は12月の年末調整で手取りに跳ねてきますが、年末調整しないで確定申告する人にとっては3月の所得税納税で納税額に跳ねてくる話でして、その効果が出てきてるのかもしれませんよね。
#そっちは政策「転換」じゃないって事なのかなあ
実質個人増税(社会保険料も昨年11月以降段階的に小出し引き上げでして、今年も10月納付分から引上げになっております)している政府の施策は華麗にスルーですかそうですかとつい思ってしまうのでありました。
企業を強くするときっと所得に反映するというここまでの実績を考えると???がつきような理屈で法人減税(の一方で定率減税廃止はそのまま)というような個人消費に逆に作用しそうな政策を絶賛推進している件も華麗にスルーですかそうですか。大体からして「きっと所得に反映する」とか言う前に税の所得再分配機能使えばいいじゃんよと思うんですけどねえ。
などと、つい自分の財布にもかかわる話なので熱くなってしまいましたが(自爆)、まあ日銀全部悪いってのもどうかと思うんですが。金融政策決定会合で政府は議決延期請求だってできるんですし。
なお、毎度言ってるのでお判りかと存じますが、念の為申し上げますと、別に慌てて日銀が今すぐに利上げしなきゃいけないような環境では無いと思いますけどね。
という訳でなんかとりとめも無い雑談ばかりで誠に恐縮至極。
2006/12/11
お題「あっという間に12月利上げを織り込んじゃいましたが」
来月から機械受注が8時50分発表だそうで、北ハマー髪様の迷言「虹が見えてきた」はこのまま殿堂入りになるんですな。
○オペ金利ますます上昇
昨日は12月12日〜2月15日の期間で共通担保全店オペが実施されまして、オペ落札金利は平均0.507%の最低0.50%で按分34.6%ということでレート上昇。これを例によって19日のところで切って手前を0.30%とした場合の後ろの金利は0.53%ちょっとになってて、まあ12月利上げをかなり織り込みに逝っておりますわな。
てかそもそも全店オペは本店オペよりも落札金利が上昇しやすいので、何もこんなセンシティブな時にレートが上るようなオペ打たんでもとは思うのですが、まあこれ自体に意図は無いと思いますが、金利上りそうなオペを打ちやがったですなあという感じでございます。まあそれは兎も角。
FB3か月に関しては0.52%レベルまで利回りが上昇したようでして、ご案内のように午後2時公表の機械受注は予想よりも低めに出て債券市場は何となく戻りましたが、こちらはあまり戻りも無くパッとしませんでした。CP発行市場は発行そのものは閑散だったようですが、閑散な中応札意欲が碌になくてまたまたレートが上昇してたようですし、まあこの1週間であっという間に12月利上げを織り込みに逝ってますなあという感じです。いやはや。
まあその後景気ウォッチャー調査もDI50割れしてみたり、何かまた変な「発言」が報道されてみたりしているようですので(内容見てないから良く判らんけど)、週明けの本日はちょっとは12月利上げは後退するのかもしれませんが、逆に逝った場合にお陀仏さん確定なので警戒しだすと最大限警戒を始める短期市場的には「そうは言っても短観がある程度上向きになってれば利上げをやらかすんじゃないか」という動きになるんでしょうなあというのもありますので、警戒は警戒なんでしょうかねえ。正直蓋を開けてみないと判らん。
で、今回の警戒モード下でターム物金利がさっくり上昇するのは、そもそも12月利上げ(があるかどうか知らん)が直前までノーケアーだった事や、そもそも利上げ後にどう考えても誘導目標とロンバートのスプレッドが現行の0.15%から拡大するでしょう(たぶん0.25%)という事でGCやら現先の落ち着きどころにコンセンサスができてない事に加えまして、資金需要が強くてレートが跳ねやすい年末年始の翌日物が6日間もあるのが要因といった所かと存じます。
というテクニカルな問題もあるので、何も12月にやる(ような姿勢を見せてくれる)こたあねえだろう(しかも今回は決定会合最終日が19日なのでクーポンGCの問題もある)と思ったんですが、そういうテクニカルな問題で金融政策のご判断を先送りすると大変なリスクを残しますかそうですか。
○で、今週は2か月と3か月のFB入札があるんですが
実は1年TBや5年国債もあったような気がしますが、足元が気になるあたくしにはケンチャナヨということで、火曜水曜の2本に注目。
まあ本日になって12月利上げ警戒がどのくらい後退するのかによる訳でございますが、何せ年末年始6日間攻撃がございますので12月警戒がありますと特に1か月だの2か月と行った短い所は弾薬庫被弾になるので買いにくいというか値付けが難しいこと夥しい。
で、金曜の雰囲気だと2か月でも平気で0.5%を越えそうな感じ(オペが既に0.5%)ですし、3か月だと0.55%近くにはなりそうな感じという所で、誠に遺憾な価格となっております。まあ利上げ後のコール対比だったらそろそろ良さそうなのかも知れませんけど、そもそもFBのファンディングコストという事で考えるべきなのは現先やGCとかでして、その予想レート対比で考えると、それでもまだ上昇余地はあるし、年末年始攻撃もあるので、12月利上げ観測が払拭されるまではちとしんどいんでしょうな。積極的な買いが引っ込んでしまうとどうもダメダメでございまして困ったもんです。
○ところで岩田副総裁の講演ですが
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0612c.htm
お題は「リテール金融の課題と展望」ということで、金融政策の話じゃなかったので「岩田副総裁の講演は金融政策への言及は無し」という一言で市場的には華麗にスルーされてしまいましたし、正直あたくしも斜め読みしかしてなかったんですが、まあ内容的にはちと何かアレなものも感じたのでメモメモ。
よく言われる話ではありますけど、「ショックに強靭な経済構造への寄与」っていう小見出しの部分。
『さらに、リテール金融の発達は、より効率的なリスク分担の実現を通じて、経済のショックに対する頑健性を高める面もあると考えられます。』
『家計の資産運用手段が預金に偏った金融仲介システムの下では、経済に生じるショックは、銀行与信や銀行保有株式の価値変動を通じて銀行部門に集中することになります。また、そうしたショックが銀行資本のバッファーで吸収可能な範囲を超えてしまうと、金融仲介の機能不全を通じて経済の振幅が拡大されてしまうことは、バブル崩壊後の経験が示す通りです。』
『この点、――先ほど申し上げた「リスク・マネーの供給」と裏腹ですが――各家計のリスクテイク能力に合わせ、リスク性商品も含めた多様な金融商品が提供されることは、家計が金融商品から得られるリターンを高めるとともに、経済に加わるショックが銀行部門に集中せず、家計部門を含めた幅広い主体によって吸収されることにも繋がります。』
そりゃまあ家計部門を含めた幅広い主体がちゃんとリスクリターンを把握して投資してればそうなのかも知れませんが、実際問題としてはリターン対比で取ってるリスクを判って取ってるんでしょうかという商品がうわなにをするくぁwせdrftgyふじこlp
というか、日銀副総裁様がそのように仰せの中で、先般報道されて騒ぎになっておりましたが、ファンドやら仕組債などのリスク管理がどうのこうのと監督官庁様が仰せになっておられる訳でして、何か理念と実態の乖離というものについても思いを馳せて頂きたいものだと存じます。
シロートのあたくしが勝手に愚考するに、銀行セクターにリスクが集中するというのはそれはそれで銀行セクターをきっちりケアーしておけば良いという事にも繋がるような気もするんですけど。「経済に加わるショックが銀行部門に集中せず、家計部門を含めた幅広い主体によって吸収される」と仰いますが、逆に言えば経済に加わるショックが物凄い勢いで伝播するということでもありますよって、岩田副総裁が講演で仰せの「リテール金融の高度化」とやらが本当に家計などの幸せになるのかはあたくし懐疑的なのでございました。
#あたくし思うに株式(と変な仕組物じゃない投信)がありゃあそれで十分だと思うんですが。
2006/12/08
お題「オペ金利上昇/西村審議委員会見」
某銀行の政治献金復活。経団連様やら政治様から頼まれてそろそろやらんとマズイってのは判るけど、さすが銀行様は空気読めねえ奴だなの一言に尽きますわな。関係者の皆さん少々調子に乗りすぎじゃネーノ?
○共通担保本店オペ金利上昇
昨日の短期市場では前日の新発FBが0.4975%→0.50%と売られまして、0.50%オファーとなってしまいました。あらまあ0.5%乗せですかそうですかという所ですが、午後に行われた共通担保本店オペは12月11日〜2月21日の期間で平均落札が0.475%で最低落札が0.47%と先週金曜の2月15日足の0.423%/0.42%から5bpの上昇と相成りました。このオペ金利ですが、12月19日までとそれ以降に例によって分解すると、12月19日までの手前8日間が0.30%として、後ろ64日間は0.497%となりますんで、まあGCや現先の予想レートとは言いませんが、コール金利くらいにはなっておりますな。
ということで、まあオペ金利も12月利上げをかなりの所まで一気に織り込みに行きましたというようで。いや何と申しますか最近の季節の移り変わりのようにあっという間に冬モードと逝ったところでございましょうか。ついでにCP発行市場だと上位格付けの中でもまあ比較的格上とされている銘柄の3か月ものとかの金利が0.55%あたりまで逝っておられるようですな。0.55%と言えばあたくしが勝手に予想する現先レートと殆ど変らん(あたしの予想は0.55%〜0.6%でセンターは0.56−57)のですが。いやはや何とも。
で、また「市場も織り込んでいるので利上げ」とか言い出すのかと思うと、誠に血圧が上昇する所存でございます。寒い時の血圧上昇は体によろしくないのですけどねえ。
ということで西村審議委員記者会見。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0612b.pdf
○良い質問が続きますな
いや、今回の会見冒頭から中々良い質問が飛び出しますな。
『(問)西村委員は、本日午前中の金融経済懇談会で、最近の経済のリスク要因として、海外経済の他に個人消費に注意すべきと発言されました。これまで日本銀行の報告では消費は比較的堅調に推移しているという判断でしたが、ここにきてモメンタムが少し変ったとおっしゃったのか、あるいは、利上げを今行うと企業部門から家計部門への波及という回復のメカニズムに水が差され回復のメカニズム自体が途切れてしまうような心配があるのか、この辺を詳しく伺いたいと思います。』
で、西村審議委員の質疑応答というのは答が死ぬほど長いのが仕様でございますので、ほんのちょっとだけ引用。
『(答) これは重要な点ですので明確にしておきたいのですが、目先数ヶ月もしくは1
年の議論と、5年から10 年という議論は分けて考えなければならないということです。私が強調したかったことは、長期的に個人消費の弱さが構造的な要因で問題になる可能性があり、この長期の問題について充分考えていく必要があり、特に日本の経済政策という観点から考えていく必要があるということです。』
『ただ、10 月の展望レポートで明確にしたように、個人消費は弱含んでいることは否定できない事実ですし、その後のいくつかの統計をみても、それをサポートする例があります。(内容説明割愛)こういうことから長期的にみると構造的な変化が起きているのではないかと考えられますので、これについて慎重に考えていかなければならないということです。』
ということで、目先の話ではないということでございます。「慎重に考える」ということでハトを期待されましたが、何の事はない慎重なのは長期的な話だそうで、目先は別にってことのようですな。そして実質2番目の質問から突っ込みがなおも鋭く。
○直球質問に対してフルスイングの巻(か?)
『(問)本年3月に量的緩和政策を解除し、その時点でCPIに基づく政策のコミットメントがなくなったわけですが、足許3か月をみるとコアCPIの前年同月比の伸び率が+0.3%、+0.2%、+0.1%となっています。フォワード・ルッキングな金融政策運営ということからみれば、足許よりは先行きの方が重要だと思いますが、足許をみると――デフレに陥るようなことは別にしても――コアCPIのプラス幅が小さくなっている中で、金利の引き上げといった政策変更がなかなか正当化しづらいと思われますが、物価の評価を含めて見解をお伺いします。』
実に素晴らしい直球ストレートな質問(^^)。
『(答) 明確にしておかなければならないことは、金融政策は物価もしくは期待物価上昇率のみで決めているわけではないということです。』
いやーん。
『これは挨拶要旨でも明確にしました(昨日は長いのでその部分引用しませんでした、引用者補記)が、広い意味での投資の実質収益率――これは将来収益のリスクを考慮した割引現在価値に係る概念です――に対してコストの部分、すなわち名目利子率、期待物価上昇率というかたちになります。この3つを勘案して考えているわけで、どれか一つで決まっているということではありません。』
何か判ったような判らんような話ですが、まあ華麗にスルーしまして足元の物価に関しては「物価が上りにくい」という状況を認めつつ、
『足許の物価の状況の中にある将来の物価上昇率に関する情報を非常に慎重に見極めながら、全体として政策判断をしていくことになります。』
どうもこう浅学非才なあたくしには「コアCPIが3か月連続で低下して0.1になっちゃったけど別にそれは利上げしない理由にならないもんねー」と仰っているようにしか読めないのですが気のせいだと有難い。
○話題になった部分を改めて引用
しかしこの日の質問者の皆さん突っ込み方が厳しい。ちょっと先に行って上記ファイルの6ページ目になります。
『(問)(前半割愛)もう1点は、金利水準の調整は慎重にゆっくり行うとおっしゃっていますが、不確実性が先行きだけでなく足許もこれだけ高まっていることを素直に受け止めると、少なくとも西村委員自身は目先1、2か月といったタイミングでの追加利上げには非常に慎重でないかと思えるのですが、そのような理解でよいか、お願いします。』
『(答)(前半割愛)目先の金融政策については、不確実性が高まっているからそれで政策判断が縛られるかというと、そういうことではありません。当然のことですが、あり得る不確実性の下でやらなければならないことはやらなければならないわけです。その時、その時のデータを虚心坦懐に精査し、それでも不確実性はどうしても残ります。残っても、十分な確信が得られるならば、そこで何らかの政策が決められるかたちになります。(以下割愛)』
「不確実性が高まっても確信が得られる」というのは禅問答のようなお話でございますが、まあ何せ目先の不確実性は「経済の指標データそのもの」が不確実というこれまた難しい理屈でございますので何とも。まあ要するに利上げの方向ですよって言ってるんでしょうけれども(というと身も蓋も無いが)。
○ちなみにコーン氏の名前がここでも
不確実性に関するコーンFRB副議長のお話ってが会見の中で2回でておりますが、福間審議委員の講演でコーン氏の言葉が引用されてたのを思い出しますな。そのときは「わずかな予防は、膨大な事後対応にも値する(an
ounce of prevention is worth many pounds of cure)」だったんですけど、またコーンさんのお言葉がここでもネタになるんですねってふと思いました。ちなみに西村審議委員は『この間、FRBのコーン副議長が不確実性の話をしていましたが、』とさらっと流していますが(って会見だから当たり前か)。
○本石町日記をご愛読されておられますでしょうか?
『(問)(導入部分割愛)総裁は、市場と日本銀行の見方が一致した時にはそれに遅れることなく判断していくということを常々おっしゃっていますが、西村委員の意見として「市場の織り込み」と「日本銀行の政策判断」について、どのような考えを持っていますか。』
で、この質問のトリッキーな所に西村審議委員さすがに気がついたようで、回答の後半は「私たちは地均しをするなんてとんでもないですよ」という趣旨になっております(^^)。例によって答が長いので後半部分。
『(答)(前半割愛)私どもとして注意しなければならないのは、日本銀行が市場に対して、一方的に情報を押し付けて、それを市場が単純に我々の姿を鏡で映し出しているということであってはなりません。そういうことはかつてもなかったと思いますし、そういうことができる時代でもないと思います。』
でもオーバーナイト金利の決定権限は日銀だしなあ・・ブツブツ
『市場は一つの情報を集約する場であるし、私どもはそこから色々な情報を得ます。私どもの情報発信も、市場はそれを反芻します。その間で、色々な方向性が出るのがあるべき姿であると思っています。総裁が言ったことは、おそらくこういうことであろうと私は理解しています。簡単に言えば、「鏡よ、鏡よ・・・」ということではないということです。』
最後の一文で爆笑。西村さん本石町日記を愛読してますな(^^)。
まあそれは兎も角、やはり最終的に日銀に政策金利決定権があるのですから、市場との対話というのは要するにシャチョー様(=日銀)が下々のもの(=マーケット)に向って「この機会に自由闊達な議論をして欲しい」と言ってるようなもんでして、その場でシャチョー様が黙ってニコニコしながら聞いてるとか、思い切って席は外しちゃうとかすれば(外したら聞けないので議論する意味ないが^^)自由闊達な議論ができると存じますが、そのシャチョー様が急に議論に割って入り意見を言っちゃったら全ては台無しで、後は「シャチョー様の仰るとおりでございます。シャチョー様は偉大なり」で終了でしょって思うんですが。
ということで、市場との対話と一言で言いますが、難しいんでしょうな。
2006/12/07
お題「西村審議委員講演など」
本題の前に例によって短い所のレビュー。
○3か月FB入札はヘロヘロ感が
昨日は3か月FBの入札。1週間短い先週の新発の前日引けは0.455%で、新発は一応0.475%に引けを置いていましたけど、まあ水野さんの「利上げやるもんね」攻撃もありまして雰囲気宜しくなく、前場引けで0.485%がヒットされて入札を迎えました。
で、落札結果は平均が0.488%相当で最低が0.492%相当でございまして、落札結果発表後も平気で平均よりも安いオファーが出ていたようですな。引けも0.49%ということで、ここ暫くの入札で見られた「入札の時は水準をちょっと安くするけどその後盛り返す」というパターンが崩れるの巻と相成りました。
大手購入者の方々に「様子見」モードになられた向きが増えたのがその原因でしょうなと思うのは、昨日のCP発行市場でもディーラーの応札が消極的になってきた感じで、特に期間の長いものに関してはレートが上昇傾向になっておりましたからです、はい。まあ急に皆さん勢揃いで引きモードになってきましたなあという感じがするのが相変わらずなのでございますが。来週は2か月、3か月、1年、5年と中短期の入札がドカドカございますが、さてどうなるのやら。
火曜の6か月TBは0.53%レベルでの平均落札だったんですけれども、こちらも0.52%まで戻ったと思ったら昨日の引けはあっさり0.535%と相成りまして、まあパッとしませんわなあという感じ。そういう時に限って年末向けのCP発行が多くて(先月末に大量に出てた)ディーラー(主に大手銀行)の持ちが重そうですし、雰囲気悪い時はまとめて悪くなりますなあって感じです。
ま、短い所は12月利上げに関してあまりにもノーケアー(って長いところも別にケアーしてた訳じゃなくて「勝手にやればぁ」状態なだけですけど)になってましたんで、ちと仕方ない面もあるかなあとは思いますけど。。。。
さて西村審議委員の講演と記者会見を少々。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0612b.htm
○一見弱気のようだが読んでると訳判らん講演要旨
例によって前半部分はスルーしますが、以前どこぞの講演で西村さんが指摘していた「政策委員会としての意見と、政策委員個人の意見は区別して考えないといけません」ということを政策委員会の説明をする中で改めて指摘していたのが目に付きましたにゃ。
で、景気に関する話と金融政策に関する話ですが、その小見出しが
『3.最近の経済情勢と今後の見通し:「高まる不確実性」の吟味』
『4.長期を見据えて:個人消費に目を向ける必要性』
ということで、ほほうこれは先行き慎重ですなあという印象を。
・統計データの不確実性ですかそうですか
でまあその景気の見立て(最近の経済情勢云々)について。
『それでは、最近の経済情勢と今後の見通しについて、説明したいと思います。私の見方を一言で申し上げると、不確実性が高まっているということです。』
ほほう不確実性ですかそれはそれはと思い続きを読むと・・・
『特に、将来の見通しだけでなく現状の把握についても、様々な不確定要素が存在し慎重な判断が必要な状況にあると思います。』
はて??
『将来の見通しはともかく、現状の把握にも不確実性が高まっているということは奇妙に聞こえるかもしれません。しかし、経済指標には一過性の特殊要因や誤差がつきものであり、真の経済の姿は実はかなり時間を経てみないとわからないのが通常です。最近の様々な経済データを見ると、この特殊要因や誤差による指標の振れが大きくなっているように見受けられます。』
という問題提起をしているのですが、まあ確かにそういう事を良く精査して景気判断の正確さを期すべきなのは誠に仰せの通りなのですが、どうもこう特殊要因や誤差を言い訳にするんジャマイカという疑念が頭の中に飛び回るのは火曜日の水野審議委員の講演にあたくしが毒されていますですかそうですか。
で、西村審議委員は展望レポートに沿った説明をした後に、個人的見解として消費を注目すべき点として挙げています。で、その点について詳しく説明しているのですが・・・(実はその前に米国の住宅市場について詳しく説明してるのですが、そっちは割愛)
『GDP統計で7-9月期の民間最終消費支出、特に持ち家の帰属家賃を除く個人消費の伸びが大きくマイナスに転じたことが、大きな話題となりました。しかし、景気の肌感覚に感応的であると言われている内閣府の景気ウォッチャー調査を見ると、DIは50を超えて景気が回復あるいは緩やかに拡大している状況です。このような状況にもかかわらず、GDP統計については、個人消費が単に前期比若干伸び悩みという程度を超え大きく落ち込んだわけですので、その原因を精査する必要があります。』
『結論を先に申し上げますと、GDP統計の国内消費データの弱さの一部は、現在国内消費推計のために使われている統計が実際の個人消費の状況を十分に捉えられなくなっていることに起因しているように思います。』
で、以下統計の話になるのでまあ興味のある方は講演録に当たって頂きたく存じます。本職の方には先刻ご承知の話でしょうけれども、普段は統計数字の詳しい分析なんぞする前にきゃあきゃあ言いながら売り買いするのが仕様となっている人(そんなのはお前だけというツッコミは却下^^)にはまあ読んどけと存じますが。
で、その結果として西村審議委員の見立てはこうなりました。
『以上の事実は、以下のように要約できるでしょう。企業部門の好調さが家計部門へ波及するスピードは比較的ゆっくりとしたものであることは、否定できないと思います。他方、7〜9月期GDP統計の民間最終消費支出の弱さは、家計調査報告に絡む特殊要因の影響による可能性もあるのではないかと思われます。また、現在のGDP統計が、革新が進み拡大が続くサービス産業の一部をうまく捉えていない可能性にも十分に配慮して、統計を使っていく必要があります。』
そして金融政策に関してですが、
『以上述べましたように、私は、現在は不確実性が高まっている状況にあると見ています。将来についての不確実性が高まっていると同時に、「足許の経済状況がどうなのか」ということにも不確実性がつきまとっています。こうした中で、日本銀行政策委員会としては、内外で公表される様々な経済指標を精査し、これらにつきまとう誤差や歪みをできるだけ取り去り、経済指標が指し示している将来への情報を読み取っていかなければなりません。そこには、経済指標を虚心坦懐に慎重に吟味する態度が必要であることは、言うまでもありません。その上で、もう一度基本に戻って金融政策の姿を考える必要があります。』
ということでございますが、足元が不確実なんでしたらフォワード・ルッキングとやらで将来が良くお見えになられると致しましても、「遠い先を見てたら足元の穴に躓いてしまった」などというギャグマンガのような事態にならぬよう存じます。
で、長期を見据えて個人消費が云々という話は何故か結論がリバースモーゲージになっておりまして、西村先生この手の舶来的新らし物がお好きですなあ(以前読んだ著書では社会投資ファンドがとっても素晴らしいって話をしてました)というのが感じられました(^^)。
○で、記者会見がやたらタカっぽい印象を与えるのですが
そして記者会見。引け近く(ブルームバーグニュースだと14時44分頃からから)ヘッドラインが出てきたのですが、その出方が実にタカ全開になってまして、曰く、
『不確実性高くてもやらなければならない時はやる』
『不確実性残っても核心えられればやる』
『足元の物価だけで金融政策決めるわけではない』
『市場が十分消化しなくても利上げあり得る』
ってな感じでして、何ともやる気満々の香りが漂いますが、会見の一問一答の記事を見ますと(会見要旨は今日出ると思いますので詳しくはそちらを改めて読みますが)こんな感じになっています。(ブルームバーグニュース6日16時45分配信の記事より引用)
『(問)講演で金利水準の調整は「慎重にゆっくりと」行うと発言された。不確実性の高まりを強調されたこととあわせると、西村委員は目先1、2か月といったタイミングで追加利上げを行うことには慎重と受け取られるが、そのような理解でよいか?』
この質問なんですが、さきほど講演のご紹介をしたのでお判りになると思いますが、不確実だと言ってるのは実は経済統計の話がメイン(将来の不確実性の話も記者会見でしてますけど、それはもっと長いスケールの話)でございますので、この質問は「ノー」という答えが来るのは承知の介だったんじゃないかなあ。で、そのお答え。
『(答)目先の金融政策だが、不確実性が高まっているから、何かそれで政策判断が縛られる、そういうことではない。当然のことだが、あり得る不確実性の下で、やらなければならないときはやらなければならないわけだから、それはきちんと判断する。そのときそのときのデータを虚心坦懐に精査して、それでも不確実性はやはり残る。しかし、残っても、それが十分な確信が得られるならば、そこで何らかの政策が決められなければならないという形になる』
ヘッドラインや第一報を読んでいた時には西村さんあたかも「不確実性が高まっているけど確信が持てれば利上げ」と無茶しやがって・・・(AA略)と言いたくなるような印象を受けたのですが、さすがにそこまで無茶な話をしてたわけでは無さそうです。ただまあ相場は動いちゃいましたからねえ・・・・
まーそんな訳でして、記者会見がお騒がせでしたが、会見要旨を良く確認した方がいいかもしれませんね。
2006/12/06
お題「水野審議委員講演は結局利上げを主張ですか」
という話の前にそろそろ書こうかと思ってたら動いてしまった短期の局地的な話をメモメモ。
○昼からコールが下がったようで
昨日のコールは朝方こそ0.26%あたりだったようですけれども、昼頃になってみると0.2%近傍とかその下の水準まで低下して、加重平均金利は0.233%となりました。税揚げを通過したので金利低下って話ではあるのですけれども、そもそも先月後半からせっせと資金供給をして準備預金の積みがやたら進捗してたんで、積み最終に向けてどっかで金利がドカンと下がりだすのは予想しやすい話でございました。
・・ってのを昨日かいてりゃ格好良かったのですが、まあ気が付いたらコールがゲロ下がりということでございまして、誠に遺憾なことでございます(苦笑)。ここからはどっちかと言うと当座預金引き気味に運営しないといかんという事になるんでしょうが、この動きって10月から11月に掛けても同じような事やってたわけでして、自行の積み進捗を意図的に調整して準備預金のコストを下げるというような動きがもうちょっとあったら(やってる人はいるでしょうが)こういう絵に描いたような話にはなりにくいんジャマイカと思料するんでございますけど。
というメモメモでございました。さて水野審議委員講演。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0612a.htm
一番最初に出てきたベンダーのヘッドラインが「日銀の利上げにはある程度の自信が必要」(ブルームバーグによる)とございましたので、やっと利上げ先にありきを宗旨替えしたかと瞬間喜んだのですが、講演要旨を読んでいくうちに「また水野か!」でございました。合掌。
まあブルームバーグニュースのヘッドラインがまさにその通りという感じでしたが、「最近の経済指標は冴えないものが少なくない」けれども「全ての指標が良くないと利上げできないわけではない」という感じで、「最近の経済指標が冴えないけど自信あるもんね」というお話と共に、色んな理屈を駆使して利上げのロジックを補強するという誠にアレな講演でございました。
○国内景気に関して
このセンセイの講演はいつもの事ながらやたら長いのでこっちについては簡単に参りますけど、各項目に関して「最近は冴えない指標が出ていますが、先行きについては懸念してません」のオンパレードでございます。
例えば賃金の話では・・・
『賃金の見通しはコアCPIを予測するために重要なものの一つです。これまでのところ賃金上昇率が極めて緩やかなものにとどまっていることは、今後のコアCPIの前年比上昇率のテンポが緩やかなものになる可能性を示唆していると考えられます。』
という所から始まり、賃金上昇が高まらない可能性に関しても指摘しているのですが、最後のところでこういう話になっているのですな。
『別の観点からは、賃金上昇率が緩やかな上昇に止まっていることは、短期的には個人消費の増加テンポを鈍くする一方、中長期的には多少の外的ショックに耐えられる財務体質となる余裕を企業に与えるため、景気の持続的な回復にはポジティブに作用する面もあると言えます。』
そりゃそうですけど、それだと日銀の景気に対するシナリオとは別の話になると思うんですけど、まあ何でもポジティブ思考でございますかそうですか。
まあ景気に関する話とグローバルなお話が凄く長いのですけれども、長くなるので金融政策の話に参りましょう。
○何か利上げの理屈総動員ですな
・中立金利への調整理論の巻
この部分は「金融政策運営の展望」の直前部分にあるのですが。
『生産性向上による潜在成長率の上昇と金融政策運営の関係については、10月の展望レポートでも簡潔にまとめています。すなわち、「景気拡大の長期化にもかかわらず、生産性の上昇が継続し、賃金の上昇が遅れる場合には、物価が上昇しにくい状態が続くことも考えられる」ため、当面は辛抱強く緩和的な金融環境を維持することができます。一方、生産性上昇によって潜在成長率が上昇すれば、(途中割愛)(2)いわゆる中立的な金利水準が上昇することから、中長期的には、「経済・物価情勢の変化に応じて、徐々に金利水準の調整を行う」ことが適当であるとの判断になります。』
またこれが出やがったかとしか申し上げようがございません。
以下は「金融政策運営の展望」部分とからの引用になります。
・資産バブル懸念の巻
『世界の金融市場をみると、潤沢な流動性、あるいは、「カネ余り」の状況が更に強まってきました。』
『経済情勢の変化に応じて臨機応変に政策対応を行わないと、資産価格バブルや経済・金融市場の振幅が大きくなることを丁寧かつ繰り返し情報発信していくしかありません。』(ここだけ「まとめに代えて」部分から引用)
足元の経済指標が冴えないものが多いのに将来のバブル懸念で利上げとは「本末転倒」と大書して額に飾ってご贈呈申し上げたくなるのでございますけど。
・のりしろ論の巻
『米国と日本の比較の面では、米国において債券市場や株式市場が総じてみると安定的に推移してきた背景には、景気のダウンサイドリスクが高まった場合でも金融政策の機動性が確保されていることへの安心感があるとの指摘もあります。』
どう見てものりしろ論です。本当にありがとうございました。
ちなみに、この話の続きがまた実に奥が深いです。またも中立金利を持ち出しているのですけど。
『政策金利がいわゆる中立金利の近傍か、それよりも高いところにある米国と、将来的に低金利の副作用を警戒する必要がある0.25%という極めて低い水準にある現状では、追加利上げに踏み切るかどうかのハードルは異なることが自然です。』
自然なのかあ???
・長期金利低下は緩和効果があるので・・・・
『主要国の長期金利については、各国が現実に「金融政策の正常化」を行うと、むしろ低下するといった現象がみられています。(分析部分割愛)』
『言い換えると、主要国における長期金利の低位安定は構造的な側面もあると言えるかもしれません。金融市場では、国債イールドカーブのフラット化や長短金利の逆転現象をもって、景気後退のシグナルであると判断する見方は少なくなってきたように思います。長期金利低下は金融緩和と同じ効果があるため、主要国の中央銀行は、仮に足許の経済指標が弱めでも様子見を続ける余裕をもった対応ができるというメリットがある一方、債券市場が発するシグナルを読み取るための努力は以前よりも容易でなくなってきたともいえます。』
じゃあインフレ懸念から長期金利が上昇するまで利上げ引っ張れば引き締め効果が出て結構なんじゃないですかねえと嫌味の一つも申したくなりますな。
こりゃまあ「早めに手を打って利上げすると長期金利の急騰を抑えることができますよ」って国債発行当局様向けの理屈をしたんでしょうけれども、金融政策の正常化を行って長期金利が低下して緩和効果があるんじゃ低金利の将来のリスクとやらに対応できないじゃん。
・先行き見通しが現状維持だと利上げするという驚倒すべき話
自信云々の部分から引用します。
『仮に遠くない将来、日本銀行が政策金利の引き上げに踏み切るには、先行きを見通した場合に展望レポートの見通しに沿って推移していくことにある程度自信を持てることが必要です。最近の経済指標は、冴えないものが少なくありませんが、全ての経済指標が力強いものとならなければ、政策金利を引き上げることができない訳ではありません。緩やかな景気拡大の下では、経済・物価指標が強弱まだらになることは致し方ない面があります。』
で、読んでて驚倒したのはその次。
『もちろん、景気のベクトルが右肩下がりになる、すなわち、景気が踊り場に入った後に景気後退局面に入る蓋然性が高いと判断されるような状況判断ならば、金融政策は現状維持が適切だと思います。ただ、現時点では、そのような状況にはありません。』
ということは、景気のベクトルが横であった場合の金融政策は利上げが適切だと仰せであられるとしか読めないのですが、今後の景気が拡大する見込みで、それもこのままの金利を維持すると副作用が出るくらい拡大する(苦笑)から利上げするって理屈はどこへ逝ったのでございましょうか。
てか右肩下がりになると判断されるんだったらお得意の「フォワード・ルッキング」様は普通「金融緩和」と仰るのではないかと存じますがもしかして水野先生におかれましては選択性難聴の症状が現れているのではないか(あたくしが勝手に作った言葉ですので念の為)と誠に心配でございます。ちなみにこの続きの部分ですが・・・
『また、(1)デフレに逆戻りするようなことはない、(2)個人消費は、緩やかな回復に止まっているが、増加していくという見通しを変えるほどの弱さではない、(3)労働需給が逼迫するなか、所定内給与を含め名目賃金はいずれ上昇圧力がかかってくると見込まれる、(4)日銀当座預金残高は所要準備とほぼ同じ水準で推移するなど短期金融市場の機能は相当回復してきたこと、などについては、日本銀行と市場参加者との間でシェアできる見解ではないでしょうか。』
だそうなんですけど、本当にそうなんですかねえ?
・で、最後にデータ重視というのが出てくるのでして
と、まあこんな調子で利上げするぞ利上げするぞという話をして、最後にとってつけたようにデータ重視というのが出てくるのが誠にアレなのですが、まー結局「12月に拘るわけじゃないけど(というのは暫く前に言ってたと思う)利上げするぞ」ってな所なんでしょうか。
『いずれにせよ、今後発表される新しい経済指標を精査し、10月の「展望レポート」で示した先行きの「経済・物価情勢の見通し」における前提や経済のメカニズム通りに展開しているかどうか、しっかりと点検していきたいと思います。』
その前に散々利上げロジック並べてデータ重視とか言われましても何だかなあって感じです。まあ金融市場は12月無くても1月利上げとか前提になって動いてる(というか12月は織り込まれてないと思うのだが、週末の経済指標が度肝を抜くような良い数字でも出てくれば話は別でしょうけど)のですが、冷静に考えてもうちょっと納得できる経済指標の数字が並んでからで利上げは良いんじゃねえのと思うんですけどねえ。ここから威勢良く景気が良くならない限り、別に1月である必要もないと思いますが・・・・・
何ともいやはやな講演要旨でございました。
2006/12/05
お題「昨日は様子見デーなので雑談」
○やるなよと思いながらも12月利上げに関する愚考
本日は日銀総裁と安倍首相の会談がありまして、先月後半からの政策委員の皆様の講演ラッシュとあわせると如何にもアレなのですが、12月利上げをするとどうなるんでしょという雑考を。
まあ債券市場的に問題なのは「その次の利上げ」でございまして、現在は「その次の利上げ?んなの当分デキネーヨ」という認識ですので、現実に短期金利が上昇しても下手したら長期金利低下するんじゃないかという勢いで(本当にそうなるかどうかは知らんが)、これって利上げに関する日銀の論理であります所の「金利の調整」に関して債券市場から駄目出しを食らってると思うんですけど。日銀的理屈によると徐々に政策金利を調整する筈でしたんで。
ところで、次の展望レポートの時に市場金利が将来の利上げを織り込まなくなった場合にはやはり景気見通しは上方修正されるんでしょうか(笑)?
とまあ長い方は利上げ材料を消化しちまった感じ(ではありますが、なんぼなんでも「短期金利水準上昇」を舐めすぎなのではないかとい思いも無きにしも非ず)なのですが、短期はどうなのよと考えますと、これがまた12月利上げ織り込み不足としか申し上げようが無い所が実に香ばしい。
仮に12月に利上げになりますると、19日から適用なのか20日なのか適用なのか知りませんが(ちなみに、今回も即日実施する積りならとっとと結論を出してくれないと、当日のコール取引が無茶苦茶停滞する(出し手はそりゃ出し渋るでしょ)と存じますので、午前中にでも結論出してくれと思うのですが)、まあいずれにせよ20日の国債大量償還と25日の国債大量発行(今月は月末発行を避ける筈で、普通に考えると25日の月曜に発行の山が来て、この日にFB発行もぶつかるので結構出入りがでかい)があって、年末年始は6日間ということで、如何にも金利が上りそうな所に利上げがぶつかるの巻ですな。
まあ日銀は頑張って供給するからコールは抑えられるし積みはアフォのように進捗するんでしょうが、GCとか現先(11月末に物凄い勢いで発行されたCPの重さがどこまで残るのかというのはございますが、今はCPやたら重くて現先金利高止まり中)のレートがどこまで抑えられるかは少々???な所もございます。ど〜せ大手銀行はギリギリまで資金放出渋るでしょうし。
で、極めて勝手な都合で言えば、12月利上げやると年末年始のレートとかがアフォのように上昇する、と言いますか、上昇するようなレート形成が行われると言うのが正しく、恐らくギリギリになると資金が出てきてそんなに無茶な金利(というのは予想されるロンバートの0.75%)にはならないと思うのですが、とにかくそういう状況でもございますので、局地的には結構な騒動になると思うのですが。ロイターあたりが聞いて回った電話アンケートで「12月利上げの意見が多い」とかいうのを「市場の声」とか解釈するのではなくて、市場金利をみて頂戴ね(はあと)という所でしょうか(苦笑)。
12月でも1月でも2月でも、今のような「パッとしない経済指標時々素晴らしい経済指標」っていうような状態だと、利上げしたら「材料出尽くしですなあ、次の利上げ?何ですかそれ??」って話になるんで、足元は兎も角ターム物はフラットするんでしょうけれども、何も年の瀬にぶつけなくても良いんジャマイカと言う気は致しますが。どうせこうなったら12月見送れば「じゃあ1月利上げ」って前提で市場金利は動くでしょ、と思うんですが。
○国債投資家懇談会議事要旨
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/b181201.htm
あたくし恥ずかしながら、正直HTMLとか良く知らんのでよく判らんのですが、この画面を普通にIEで表示した後に印刷を掛けたら右端が切れてしまったのです(時々この手の議事要旨だすとそうなる)けれども、これってあたくしが単にヘタなだけでしょうか。それなら良いのですが、HTMLで何かが設定されているような気がするのですけれども。ちゃんと印刷する方法誰かプリーズ。という話は兎も角として。
今回のお題は市場懇(国債市場特別参加者会合)と同じく来年度の国債発行計画に関する話で、まあ皆さん色々とお話してるのですけれども、あたくしが勝手に「ほほう」と思ったのを少々ピックアップして見ますが、本日は正直雑談的に読んでみるのでした。
・総論部分で思わず苦笑したところ
『全体として、日本の国債発行の種類は他の先進国に比べ、超長期のゾーン及び物価連動国債の比重が少なく、一方で他の主要国にない変動利付国債がある。来年度以降も、それを他の主要国と同様の方向に向けていく変化があったらいいのではないか。』
つい1年半前までは変動利付国債を増やせの大合唱だったのにこのジャガーチェンジ振りは実に香ばしい。いや同じ人が言ってるわけじゃないんでしょうけれども。
・超長期はいろんな意見が出ますなあ
『超長期は、生保・年金からのALMのマッチング・ニーズがあるため増額は可能。一方で、バイ・アンド・ホールドが前提となる投資家が多いため、既発債の流動性が向上しないという問題もある。したがって、新発債を増額するよりも、流動性供給入札で増額してはどうか。』
これはなるほどと思いました。まあ超長期の問題点としては「既発債の流動性が全然向上しない」ってのがありますし、かと言って流動性が全く問題ないってなるような発行をしたら多分発行しすぎで価格が下がりすぎの巻になってしまう恐れもあるんで、現実的には良いのかなあと思います。一方でこういう事を言う人もいて面白い。
『20〜30年の間にイールドカーブの空白期間があり、これは継続的に30年を発行することにより自然体で完結することができるが、たとえば、25年債を発行して早期にイールドカーブを繋げることも検討課題と成りうる。』
元々流動性が低いゾーンの発行をこれ以上細かくしてどうするのかと小一時間。そんな事言い出したら40年債発行したら35年債とか32年債とか同時に発行しないと行けないんでしょうか(苦笑)??
・中短期ゾーン
『中短期ゾーンの中では、TB6MとTB1Yの余剰感が強い。TB6MとTB1Yとでは、TB6Mを若干減額すべき。ただ、金利の上昇懸念がでた場合、一番リスクプレミアムがつくのが3か月ものであるため、FB3Mの減額も併せて他年限への分散を検討するべき。』
これって似たような話が市場懇でも出てて、まあ大手銀行さんの意見だ(というか生保とか年金とかは短期国債なんぞシラネーヨでしょうし)と思いますが、あたくしが思うのは逆で3か月がちょっと重くて6か月と1年は恒常的に品薄の感が強いのですけれども。まあこのあたりは難しい話で、6か月や1年を増発するとその辺の金利は上昇圧力が掛かりやすくなって、後ろのカーブ形成に影響を与える可能性もあるんで、匙加減はどうなのよというのもございますけど。正直難しい。
・物価連動国債
15年変動の話は華麗にスルー(減額の大合唱には落涙を禁じ得ませんけど)しまして物価連動国債なのですが、まあこういう事なんじゃないかと思うんですよ。
『商品自体は分析対象としては面白いが、実際の需要として考えると、年金や保険のデュレーション長期化の目的では投資対象とはならない。また、銀行のポートフォリオでも、全体のバランスシートで考えれば、エクイティや預貸ギャップにおいて、インフレに対するリスクヘッジ効果が出ていることもあり、強いニーズが出てこないのではないか。』
アセットクラスとして物価連動国債って「債券」カテゴリーなんでしょうかという問いに繋がってくるお話のような気がする次第。いや真面目な話これこそ「個人向け」商品じゃねえのかという感はするんですけど。個人向けに直接発行するのもそうですが、DCに向いてる商品じゃネーノと思う次第ですんで。
・最後におまけ
で、まあこの先に相場見通しの話が延々と続くのですが、時間の都合もありますのでその辺は全部飛ばします。最後に読んでて微苦笑したのがイールドダッチ入札に関する意見。
『イールドダッチは投資家にとっては有利だと思うが、マーケットが成熟するまでの過渡的な措置であり、30年債のマーケットがしっかりしてきたという認識で価格コンベンショナルにするということであれば、プロの運用者を自負している我々としては問題ないと考えている
』
アベレージ握りとかしてる人に対する嫌味なのか何だか知りませんが、(これで言ってる本人が業者に平均落札握りとか発注してたらその頭の悪さに涙数行下るの巻ですけど)「プロの運用者を自負」ってフレーズを聞く(読む)と村上某の記者会見を思い出してしてしまうんですけど。貴方プライド高杉晋作ですな。
2006/12/04
お題「ブルフラットですか/野田審議委員記者会見」
モーサテさん、折角株式市場が戻ってきてるのにムーシャを呼んで強気を言わせるなと小一時間。しかしこのオッサンも相場がヘロヘロの時はだんまりだったのに、16000円を回復したらその途端に「歴史的な買い場」レポート出す辺り実に香ばしいのですが(笑)。
○この期に及んでブルフラットですかそうですか
先週末の債券市場はご存知のようにブルフラット。まあ何と申しますか、相場がここまで戻ってきた所でブルフラットというのはまさに「感極まって踏み上げ」って奴でございまして、こりゃまさに「投資家の踏み」でございますな。合掌。
週末につらつらと先月の動きを見直したんですが、まあ月前半に早期利上げ観測が浮上して月半ばに向けて全体的に弱くなったものの、「冷静に考えてこの経済状況で利上げしてもその次は当分先じゃろ」ということで中長期が戻ってきましたという感じでしたな。その間短期ゾーンはちょっと戻ったけどまた売られて来ましたんで、結局戻ったのは中長期ゾーンということですな。
まあ早期利上げ観測がどうのこうのって話をしてる時にはど〜しても様子見したくなる訳でして、押し目待ちの人たちが行列状態になってたんでしょう。だから先月後半は「何か材料が出て下がった後にはさっくりと戻る」という状況になっていたのですが、先週水曜と金曜日には月末(金曜は月初ですが)のでかい経済指標が登場し、月末のリバランスもあるし、まあ遂に様子見の理由も無くなりましたでございますかそうですかという事だったんでしょうな。
そんな中ですが、短期ゾーンは先週末も重くて、FB3か月利回りはまたまた0.45%を超えて来たんで、短い方を見ているとあんまり相場が上った気がしないのが誠にアレでございます。しかも金先上昇してるんで、現物持っててヘッジしてたら絵に描いたような股裂きであることに涙を禁じ得ません。
・・・・などと起きた相場の後講釈をエラソーするのは誰にでもできますですかそうですか(自爆)。
○野田審議委員記者会見
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0612a.pdf
・「金利の調整」はするんですよという話でしょうな
好調な企業部門から家計部門への波及が遅れているという認識を講演でもしていましたが、その点が利上げのタイミングにどう影響するのかという質問に対してこういう答を。
『繰り返しになりますが、賃金が急に落ち込んで、消費が急に落ち込むといったことは考えにくいわけです。挨拶要旨の中でも申し上げていますが、わが国の経済は、現在、展望レポートに沿ったかたちで緩やかな拡大を続けていると私は理解しています。賃金の上昇が遅れるといっても、これは中長期的な展望のもとで述べていることであり、現在のシナリオに沿った金利調整の足取りとは時間的な軸が違うような気がします。』
えーっと中長期的な展望としての「企業部門から家計部門への波及」が遅れているけれども、ペースがゆっくりなだけであって標準シナリオの通りに行ってるから金利の調整はするということでしょうか。何か判った様な判らん様な話ですが。
・日経新聞が端折って報道したので大反響になった部分について
順番としては先ほどの次の質疑応答になります。4ページ目ですな。
『リスクの見極めがつけば利上げを行うのかということですが、挨拶要旨の中で述べましたように、リスクが顕在化する蓋然性はそう高くはないと考えます。従いまして、そのリスクが顕在化するタイミングがいつかという問題は判断が難しく、そのリスクの顕在化云々で利上げを判断することは考えにくいと思います。勿論、仮に想定しているような上振れあるいは下振れリスクが顕在化したということになりますと、それは私どもの判断に重要な示唆を与えるものだろうと思いますので、別の話になると思います。』
『2点目の物価の基調は先行きも緩やかな上昇を辿るとみているのかというお尋ねですが、それはその通りと考えます。』
『3点目ですが、コアCPIの水準自体はプラスであります。懇談会での挨拶要旨や展望レポートで示している通り、緩やかな上昇を辿ると考えておりますが、仮にこの水準に止まったとしても、私どもの判断は、現状の物価水準だけではなく、経済の実態や成長のトレンド、あるいはこれらの先行きの見通しなどを総体でみています。いわばフォワード・ルッキングにみていますので、ただ物価の水準だけの一点をみて判断しているわけではありません。近い将来、コアCPIがこの水準に止まったとしても、政策変更の判断にそれ自体が影響を与えるものではないと考えています。』
ということで、念の為当該部分を全文引用しましたが、物価に関しては上昇すると見ているし、金融政策に関しては物価だけではなく経済状況を総合して対応するってお話をしております。日経の報道を見てると物価が下がると言う見通しでも利上げしそうな書き方でございまして、そりゃ大反響になるわな。ちゃんと報道して欲しいものでございます。「CPI一点張りじゃないですよ、総合判断ですよ」っていうのが発言の趣旨(それに「利上げするもんね」も入ってるのがアレなのですが・・・)かと存じますが。
#ま、日銀の経済見通し楽観過ぎだし資産インフレも懸念し過ぎだとおもいますけどね。
・データ重視なのかデータ重視じゃないのか
その次にこんな質問をしてる人がいて、その後から「データ」という言葉が質疑に頻発してますが・・・・
『(問)政策委員会のメンバーの方々から、金融政策を運営する上でデータ重視といった言葉がよく出てきますが、最近の鉱工業生産、機械受注、GDP、CPIなど指標の動きをどのようにみておられますか。また、それが金融政策の運営に与える影響をどのように考えておられますか。』
ということで、まあお話をしてるのですが、後半部分だけ引用すると・・・
『また、金融政策に与える影響は、経済指標のひとつひとつをみているというわけではなく、金融政策決定会合の都度、それまでに出てきた経済指標を丹念に総合的に検討し、その議論の過程を経て結論を出すものです。今この時点でそれが金融政策にどういう影響を与えるかについてはコメントしかねます。』
データ重視と言いながらも総合判断というのもよくよく考えると判ったような判らんような話でございまして、全部が全部悪いデータとか全部が全部良いデータというのなら兎も角、現在のように(質疑応答で野田さんも言及してますが)まだら模様で出てくると「データ重視」と言いながらも元々の景気への強気スタンスが「総合判断」に影響してきて、「良くない数字は一時的要因で基本シナリオを崩すものではない」とかいうような「良いとこ取り」のデータ重視になるんジャマイカというようなあたりがキングオソロシスなのでありました。
データ重視するなら「まだら模様の現在は別に慌てて利上げをする必要はない」って事にならんのかなあと思うのですけど。それに日銀の言う様に景気の先行きに自信があるのなら、ちょっと待てばもっと多くの人が利上げするのが納得できるような経済指標が揃う(というか今だと納得しない人のほうが多いと思うんだが)んじゃないんですかねえ。
#まあ今週も経済指標が色々ございますのでその数字次第だとは思いますが、よほど強い数字が出てこないと今月の利上げを多くの人に納得させるのはちょっと難しいのではないかと存じますが。
2006/12/01
お題「野田審議委員講演と記者会見」
まずは講演。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0611i.htm
○経済物価情勢に関する説明はまあ普通
こちらの講演ですが、IE使いの人が普通のフォントサイズでA4の紙に打ち出すと12ページとかになる結構な量でございます。経済物価情勢に関するお話は基本的に日銀の公式見解+最近出てきた政策委員の講演内容を踏まえたものになっているという感じですが、中身は結構丁寧に説明しているので、まあこれは読んでおいて吉なのではないかとは存じます。あたくし斜め読みした感じでは読んでて手が止まる部分は特にございませんでした(読み方が悪くて気が付かなかったらスマン)。強いて言えば「下方リスクに関しての説明がより丁寧」ってことでしょうかねえ。
で、本当はこの部分も引用しておくところなのですが、突飛な話は無かったこともありますので割愛して、ちょっとニヤリとした部分をば。
不動産価格の問題について『私自身の経験も踏まえながら申しあげれば』としてお話をしている中で、バブル状況という点について否定しつつも、まとめの部分で『地価は物価一般と違って一度上がり始めると上昇スピードが速いということもあり、今後とも、地価の動向については注意深くみていく必要があると思っています。』というコメントをしたのは銀行本流部門ご出身だけにまさに実感がこもっているんでしょうなあと(^^)。
まあ気になった点としては「今回はあまり景気悪化についての懸念色が強くないんじゃないの」って感じです。先行きリスクの話あたりは、先日の福井総裁講演のお話を丁寧にしたバージョンと言った感じでして、タカ派じゃないというのはそうなのですが、じゃあハトなのかと言ったらそれもまた別にハト丸出し感も無いですなあという所ですにゃ。
○金融政策に関してはそんなにハトっぽくも無いのですが
最後の2ページ分(A4の紙に出した場合)が金融政策の話になるのですが、金融政策の「第1の柱」に関してこのような話をしております。
『また、この見通しは、市場参加者などの経済主体が、先行きある程度の政策金利の上昇を織り込んだ上で意志決定を行っていることを前提としています。そのため、経済・物価情勢が見通しどおりに推移しているにも拘わらず、これに併せた政策金利の調整をしないとすれば、いずれ、より大きな調整が求められることとなり、経済活動の振幅を招き、我が国経済の息の長い成長を妨げる可能性を高めてしまうことになります。』
これ自体は金融政策の枠組みそのまんまの話なのですが、ハト派としての期待(?)がある野田審議委員がしらっとこの話をすると、「あらら」感が漂って来るというものであります。
で、フォワードルッキングの話もしております。
『この枠組みは、足許の経済・物価動向そのものもさることながら、それよりも金融政策が実体経済に影響を及ぼす時間的なラグなどを踏まえたうえで、より先行きの情勢を可能な限り展望して――これは「フォワード・ルッキング」という言葉で表現していますが、――金融政策運営を柔軟かつ機動的に行うという考え方が基本になっています。量的緩和政策の解除、さらにはゼロ金利解除といった政策変更時はもとより、日本銀行では、折りに触れて「フォワード・ルッキング」なスタンスの重要性を説明してきています。』
ま、こちらも日銀公式見解のまんまですけれども、何かもうちょっとハトなお話を期待していた向きとしては拍子抜けの巻でござる(^^)。
その前に「物価は遅行指標」という話をしておりまして、金融政策のCPI離れをしましょうっていうのは政策委員会の総意なんでしょうなあというのを感じましたですよ。
『私は、物価情勢の判断に当たっては、物価指数の水準そのものもさることながら、物価の基調的な動き、言い換えれば、根源的なインフレ圧力とそのトレンドを重視しています。そこで、消費者物価についていえば、総合指数(ヘッドライン)から生鮮食品を除いたコア指数とともに、それから更にガソリンや灯油などの石油製品などのように変動幅(振れ)の大きい項目や制度的な要因で一時的に変動している項目
―― いわば「特殊要因」というもの ―― を除いた指数を、基調を判断するうえでのベースとしています。』
『物価指数は、あくまでも遅行指数であり、その動向を「フォワード・ルッキング」な判断に結び付けていくには、自ずから短期的な変動を取り除いた指数の動きが重要であると考えるからです。ただ、だからといって、家計や消費者の実感に即した消費者物価の総合指数そのものを疎んじるものではないことは言うまでもありません。』
○記者会見での質疑は同様にハトっぽさがあまり・・・・
以下ソースは30日16時32分配信のブルームバーグニュース。
『(問)9月コアCPI前年比上昇率はプラス0.2%と低い水準で推移している。表面的な物価指数がこのように低い伸びを続けたとしても、近い将来の利上げを妨げる要因にはならないとお考えか。』
『(答)コアCPIの水準そのものはプラスだし、私もあいさつで申し上げた通り、あるいは展望リポートで示した通り、緩やかな上昇をたどると考えているが、仮にこの水準にとどまったとしても、私どもの判断というのは、現状の水準と経済の実態、あるいは経済の成長のトレンド、先行きというものとの相対というものも見ているし、その他のいろいろな経済事象をフォワードルッキングに見ているので、ただ物価の水準だけ一点を見て判断しているわけではない。将来、コアCPIがここにとどまったと仮にしても、政策の変更の判断にそれ自体が影響を与えるわけではない』
『(問)リスク要因についてはいろいろあるが、そのすべてが消滅したと確認してから利上げをするというわけではない、という理解でよろしいか。』
『(答)その通りだ』
まあそんな感じで、質疑応答を見てると、こりゃこれから出てくる指標と短観次第では12月利上げ提案出ても反対しないですな野田さんっていう印象を受けてしまいました。ところでこの質問は勘弁してくれよというのがあったんですけど・・・・
『(問)昨日公表された10月の鉱工業生産が非常に強い数字になったので、私どもの方で市場参加者を対象にアンケートを取った所、半数近い人たちが12月の利上げの可能性が高いと答えた。あいさつで「市場は鏡だ」と述べられたが、この結果を妥当とお考えか。日銀と足並みが揃ってきたと受け止められるか。』
誰だこんな露骨な質問したのは?ってアンケートした所から考えるとどう見てもロイター通信です。本当にありがとうございました。
いやあのね、電話アンケートよりも市場の価格を見ていただきたい訳でして、あたくし再三申し上げておりますように、ターム物のオペ金利やらFB、CPの利回りを見てると昨日の時点では12月利上げまだ殆ど織り込んでないと思いますが。中長期は「12月でも1月でも2月でも所詮次の次は当分無いから同じことよ」って感じですけど。
で、その答えですが。
『(答)今、初めてアンケートの結果をお聞きしたが、そういう結果であるということは、素直に受け止めたいと考えているが、繰り返しになるが、その判断はやはり1つの流れの中で、金融政策決定会合の時点で判断するわけであり、あいさつでも指摘しているように、市場はこれまでも経済指標の発表の毎にビビットに反応してくるので、1つ1つの動きに対して今コメントするというのは差し控えた方が良いと判断している』
ということで、全体的には普通の答なのですが、最初の「素直に受け止めたい」がヘッドラインで打たれてしまってましたな。
まあこの記事を見た限りでは、思ったほどハトじゃ無いんでネーノってところでして、まあ今日以降出てくる経済指標やアンケート(短観とか)などの数字次第では12月に利上げしても別に反対はしませんよというところでございましょうか。別に急ぐこと無いと思うんだが・・・・・