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2006/07/31
お題「須田審議委員講演の補足/その他雑談」
週初に月末が来るとしんどいですな。今朝は延々同じネタで恐縮ですが先日の須田審議委員講演後の記者会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0607c.pdf
○物価重視か景気重視か
金曜にご紹介したように記者会見で須田さんは
『(前半割愛)今の日本銀行の見通しから多少下振れても金利を徐々に引き上げていく、という方向性は変わらないと考えてよろしいでしょうか。』
という質問に対して『私自身はそのように認識しています。』って発言をしてまして、その前には
『(前半割愛)CPI の上昇率が今後なかなか上がり難い中で、需給ギャップがプラス方向へ拡大していけば、物価上昇率が低くても金利調整が必要になってくるという意味でおっしゃったのか、詳しく説明して下さい。』
という質問に対して『(前半割愛、物価が需給ギャップより遅れて反応するという話です)短期的・中期的にみてあまりに振れの大きい経済は望ましくないと思っていますので、その意味からも需給ギャップに関心を持っているということです。』
ということで、まあ「金利調整」(要するに利上げ)やりましょうってお話が進んでいるわけですが、質疑の最後の部分もまた中々示唆がありますわな。
『(前半割愛)挨拶要旨の中で、物価偏重ではなく景気の方にも十分目配りをするというような表現をされていますが、むしろこういう表現であれば「物価ではなく、私は景気を重視する」という読み方をすると話しはうまく流れると思いますが、この辺はどのように理解したら良いのでしょうか。』
これに対しまして須田審議委員真っ向否定。
『そのようには読まれたくはありません。(中間割愛)。なぜ、景気も踏まえたいと考えているかというと、先ほども申し上げたとおり、中長期的な物価安定に資するからという側面と、やはり物価安定だけでなく実体経済も安定して欲しいというのが、私が金融政策を行なう上での考え方ですので、景気も重視したいと申し上げている訳です。』
ということで、先ほど金曜にご紹介した再掲分と同じ話を再度強調。そして(中間割愛)部分ですが、こちらは物価ばかり見るんじゃねえゴルァというお話をしております。まー出た当初から形骸化するんじゃネーノと思ってた日銀ヲチャーも多かったとは思いますが、「物価安定に対する理解」はやっぱり「理解」であってターゲットでも何でもございません(下限0%じゃなければ意味あるかもしれないですけど下限0%じゃあ当たり前過ぎ)でしたな。
『足許の物価の数値と物価安定の理解として私どもが出している数字だけを比較して、これから先の金融政策を考えて欲しくないと思います。例えば、先日公表されたOECD
の対日審査でも同じ意見でしたが、最近、インフレ率が1%になるまで次の利上げは控えた方が良いのではないかというようなご意見を見聞きすることがありますが、物価だけに焦点を当てて金融政策を語って欲しくないと思います。』
総合判断は結構でございますが、どうも利上げの結論が先に来てませんですかねえというのが不安視してるところなんですが・・・・
○市場との対話
先ほどの回答の続きの部分が市場との対話に関して。
『これから先のわが国の経済にしても、世界経済にしても非常に不確実性が高い中で、私どももいつどうなるかといったことはわからないというのが正直なところです。従いまして、毎回の金融政策決定会合においてしっかりと判断していきたいと思っています。』
という割には金利調整が必要という話をしてるのは何故というツッコミはさておきまして、
『このように先行きの金融政策に予断を持っていない中で、市場と対話していくために何らかのコミットメントをするということは、結果的にみると決して良くないことだと思います。』
まあこれは先ほどのIMFの意見のようなお話に対応したコメントだと思いますが、それでは金利調整が必要という話(ry
『私自身は、市場との対話の中でもう少し不確実性があっても良いと思っており、不確実性というのは良くわからないところがあるということです。』
そりゃまあそうですが、その割には判りやすいお話をしてますが須田先生。
『そのとき(引用者注記:金融政策を判断する時)の判断材料は何かといえば、実体経済と物価についての現状と先行きの見通しです。そこの部分を如何にマーケットと共有できるか――
政府との共有もそうです―― が必要なことだと考えています。それができていれば、金融政策を行っていくのはそれほど難しいことだとは思っていませんし、金融政策の先行きについてマーケットの判断と私どもの判断が違ってくるとは思っておりません。従いまして、この部分についてしっかりと対話していくことがこれから先は大事だと認識しています。』
とは言ってますが、実体経済と物価についての対話だけじゃなくて、どう見ても金融政策の先行きに関してしっかりとお話をしています。本当にありがとうございました。
以下雑談。
・債券相場下がりましたなあ
週末の米国債市場が金利低下攻撃なので元に戻りそうでもありますが、金曜のドラめもんで「相場が盛り下がって参りました」などと書いたら132円50銭あたりで延々とウゴカンチ会長だった債券先物久しぶりに132円割れ。
まあ何と申しますか、我ながらそのタイミングの情けなさに笑ってしまうしかないですわな。でもまあ世の中そんなもんということで、金曜の下げに関してはワケ判らんという感じのようですな。10年入札前に相場の全体水準を調整しておこうってこともあったのかなあとは思いますけど、木曜日には株上げに対してろくすっぽ反応しないよこりゃ底堅いと思わせておいてからこの攻撃ですので、奥が深い訳ですな。
・短いところは平穏
金曜の無担保コール翌日物加重平均金利は0.249%と0.25%を微かに切る結果になりました。利上げ後の実質初日に加重平均が0.302%だった事からすると日銀の調節姿勢が浸透してきたという事で誠に結構。
コールの低下が徐々に波及してきた感じでCPレートもそれほど上昇せず。木曜日は月末スタートの発行が多くて需給関係および月末月初のレポ現先レートの上昇が効いて若干レートは上昇しましたが、利上げ直前の「GCレポ0.35〜0.40%前提モード」からはレートが低下した状態になっています。
まあ何ぼなんでも8月、9月は金融政策は無風でしょうから(今週講演する審議委員が「連続利上げというのはFRBのように会合ごとに利上げする事を意味しているだけだから9月以降は利上げするぜベイベー」とか言いそうな悪寒はするが^^)、とりあえず9月末までの金利については平穏な推移が続くものと思われます。
株が上りだすと10月ものに関しては必ずしも・・・と存じますが、その割りには6か月物(正確には5ヶ月物に近いですが)のTBが品薄のせいもあって0.37%とかやってるのは槍杉感が漂いますな。この辺がびみょー。
#早いもので7月も終わりですね。
2006/07/28
お題「須田審議委員講演、記者会見(続き)」
ベストセラー本の訳者がスイスで永住権を取得して所得税を納税、それが日本での課税回避行為じゃないかという件で国税がスイスと協議中なんてぇニュースが昨日唐突に出てましたが、谷垣財務大臣の自民党総裁出馬表明&消費税増税を全面に掲げた政策発表とタイミングが合っているのはただの偶然ですな偶然。
・・・などと一々何でもかんでもまずは裏読みする変な癖がつくと、恐怖の陰謀論者になりかねないので裏読みも程々に(笑)。
さて、金利関係市場はネタ切れもいいところでして、相場が持ち合いで煮詰まっているというよりは単に「さあ、盛り下がってまいりました。ショボーン」って感じでございますな。CPI前ですがんな話も盛り上らずとはこれいかに。
で、まあ昨日ご紹介した須田委員の講演話続きと記者会見をネタに。しかしまあ理屈が早期利上げ先にありきとしか思えませんが、何でこの人は重任になって中原さんは重任しなかったんでちゅかねえ。
須田審議委員の記者会見要旨はまたPDFファイル。
→http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0607c.pdf
まずは講演の金融政策関連話の続きから。
○物価安定「のりしろ」論に関連して
昨日ご紹介した『つまり過半数の国民が、物価が安定し主観的にインフレ率がゼロと思っているような状況では、実際の物価指数は僅かなマイナスを示すことがあってもこのようなコストを意識しないでよいということなのではないでしょうか。』というお話の続きが『望ましい物価安定の数値の難しさ』です。
『国民の目線に合わせて、物価安定の理解の数値を求めるとしても、政策担当者としてはそれをそのまま用いるわけにはいきません。「中長期的な物価安定の理解」を数値で示すにあたっては、物価指数のバイアスやインフレ率ののりしろについて検討が必要となります。』
と言う事でご検討する訳ですが、この先延々と説明がございまして、まあその辺りをご紹介すると昨日のように引用で大増量になってしまうので物凄く端折ってまず結論部分。
『以上のようにバイアスやのりしろについてはプラスであるものの、かつてよりも下がっているととらえています。それを考慮にいれると、私の物価安定の理解の中央値はプラスであるもののかなり低めということになります。』
ということで、その理由として物価を巡る経済環境の変化と共に『物価下落を回避することに対する関心をこれまでほど強く持ち続ける必要性が低下しつつあると考えているからです。』ともご説明です。はあそうですか・・・・
『前者の環境の変化については、3月9日に公表した物価の安定についての考え方の背景説明では、のりしろに関係する要因として、名目賃金の下方硬直性の度合い、潜在成長率の水準、金融システムの頑健性、財政政策の発動余地、金融政策の有効性の5つがあげられています。これらについては財政政策の発動余地は別にして、残りの4つの要因についてはのりしろを小さくする方向に変化しています。』
『それらに加えて、ゼロ近辺の物価変動に国民が慣れてきた、つまりそれはサプライズではなくなってきたということをあげておきたいと思います。』
ということで、環境の変化をみていくと『のりしろの確保を優先し過ぎることは適当ではないと考えられます。』という事だそうでございます。バーナンキ議長の発言も引き合いに出されてますなあ。
○角を矯めて牛を殺さないようにお願いしたいのですが
で、この話の後も講演テキストは続くのですが、金融政策の運営に関してこんな話をしております。
『当面の物価上昇率のみではなく、私の場合は、中長期的な物価の安定という観点も含めて景気にも十分大きなウェイトを与えて判断していきたいと思います。もちろん実際に政策を行う場合にどちらを重視するかは目標からのギャップの大きさにも依存することになりますので、その時々の経済・物価情勢によって異なります。』
と、ここだけ読むと、昨日ご紹介したように経済の先行きに関して下ぶれリスクを意識しているのでハトさんのように見えるのですが、その次にすかさずこんなテキストが。
『また、政策の反応度合いは政策担当者が急激な金利調整を避けたいと思うかどうかにもかかわってきます。私は、不確実性の高い経済環境にあっては漸進主義の考え方が有用ですが、同時にビハインド・ザ・カーブに陥らない程度に金利調整を進めていくことも必要であると思っています。』
さてこれは何じゃらほいと言う事ですが、記者会見での主要な質疑は主にこの部分がフォーカスされていました。そりゃそうだわな。
そんな訳で会見の5ページ目くらいからそのネタで質疑が続きます。以下会見要旨より。
『(問)挨拶要旨の中で、「物価の安定」と「需給ギャップ」の両方に配慮して政策判断していきたいとおっしゃっておられますが、これの意味するところは、CPI
の上昇率が今後なかなか上がり難い中で、需給ギャップがプラス方向へ拡大していけば、物価上昇率が低くても金利調整が必要になってくるという意味でおっしゃったのか、詳しく説明して下さい。』
『(答)「物価の安定」と「景気」の両方に対して目配りしたいというのには2
つの意味があります。一つは、今後、1〜2 年の物価については、私どもは既に見通しを持っている訳ですが、物価は需給ギャップより遅れて反応しますので、それより先の物価を見通していくうえでは、需給ギャップを参考にするという側面があります。』
『それに加えて、私は経済があまり大きく変動していくことは望ましいことであるとは思っていません。短期的・中期的にみてあまりに振れの大きい経済は望ましくないと思っていますので、その意味からも需給ギャップに関心を持っているということです。』
一つ飛ばして次に手を変えて質問が。
『(問)金融政策について、須田委員は、「不確実性の高い経済環境にあっては漸進主義の考え方が有用だが、同時にビハインド・ザ・カーブに陥らない程度に金利調整を進めていくことも必要」とされています。一方、福井総裁がゼロ金利解除前に日本記者クラブで講演された際に「フォワード・ルッキングな政策」、言い換えれば「早めに、小刻みに、ゆっくりと」政策を行っていくとおっしゃっておられますが、須田委員は総裁と同じ姿勢であると理解して良いでしょうか。』
『(答)福井総裁が、どのような意味でそのような表現をお使いになったのか直接確認していませんので、比較することはできません。ただし、「ビハインド・ザ・カーブに陥らない程度に金利調整を進めていく」という言い方は、金利の調整をじっと待っていて、その水準では低すぎるとわかってから急激に引き上げるより、ある程度リスクがあるかもしれないが自分なりに判断できた時に一歩踏み出し、そしてその政策変更の経済・物価情勢への影響を確認していくという形で政策を行う方が、長い目で見たときには、物価の安定と持続的な経済成長に資するということを意味しています。これが、不確実性の高い経済環境においての私の金融政策についての考え方です。』
何かね、その発想も判らんことはないけど、景気過熱を懸念する余り景気を冷やす結果になる方が怖いと思うんですけどね。
○どう見ても利上げバイアス掛かりまくりです。本当に(ry
その後の質疑にはこんなのが。
『(問)「(引用者注:年内利上げが)ないと決めつけるのは良くない」ということは、裏を返せば年内利上げは十分あり得るという理解で良ろしいでしょうか。』
『(答)受け止め方は人それぞれだと思います。』
『(問)挨拶要旨の中で「経済活動や物価上昇率が下振れした場合でも、経済・物価情勢を見極めながらゆっくりとした金利調整を行うのであれば、金融システムの安定が回復し、設備、雇用、債務の過剰が解消されてきていることなどから、物価下落と景気悪化の悪循環が発生するリスクは小さい」と述べられておりますが、今の日本銀行の見通しから多少下振れても金利を徐々に引き上げていく、という方向性は変わらないと考えてよろしいでしょうか。』
『(答)私自身はそのように認識しています。』
とまあそういう訳でして、「物価だけでなく景気も重視」というのは別に「下振れリスクを意識して利上げは慎重に行う」という意味ではございませんわな。どっちかというと物価を理由に利上げ反対を主張する論者へのカウンターとしての意味合いの方が強いんジャマイカと思われるところでございます。
いやはや何とも。
2006/07/27
お題「ヘッドラインに騙されないようにしましょう(須田審議委員講演)」
騙されるとは人聞きの悪い表現ですが(笑)、別に須田さんにその意図があったわけではなく、ベンダーのフラッシュだけ見て反応する方が悪い訳です。はー自己責任自己責任。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0607c.htm
○何がどう騙されたのか簡単に
昨日の債券、というよりも金先の方が判りやすい動きでしたが、前場引け近くに行われた須田審議委員の講演の内容がヘッドライン打たれた辺りから上昇。後場になって平均株価が下がったのも後押しして相場上昇したのですが、14時頃に須田審議委員の記者会見での発言を受けて瞬間「ありゃー」と下落(その後やや戻しましたが)となりました。
いやまあそれだけが理由じゃないんですが、講演内容を伝えるヘッドラインがハト派っぽい(須田さんはタカ派的イメージが強いのでサプライズ)ものだったんですな。例えばブルームバーグニュースだと・・・・
『米国経済は不確実性高く、下ぶれリスク強まっている』
『国内景気も踊り場的な状況が生じる可能性がある』
『不確実性高く漸進主義が有用だが金利調整は必要』
・・・・最後のを見ると結局「金利調整は必要」なんですけど、景気の減速リスクのヘッドラインが印象強い(実際は他にも数本あります)訳でして、講演テキストを読んでいたあたくしと致しましては「何でこの講演内容で買わにゃいかんのかねえ」というものだったんですけど。
で、14時に打たれた発言内容がこれです。
『決め付けるのは良くない−年内利上げなしの見方に』
・・・・・(^^)/
ま、これで瞬間先物とか金先とか下がった訳ですが、普通こういう発言になると思うんですがにゃあ。そもそもアナリストの皆さんはともかく、トレーダーの人たちはそこまで「年内利上げ無し」に張っていないと思われます。「もしかしたら年内追加利上げあるかもしれないけど、今の状況だとちとやりにくいなあ」くらいが中心的な見方だと思うんですけどね。まあ他に大したネタも無いからスペキュレーション振り回す人たちがネタに使ったという事なんでしょうけどね。
と、前置き長くなったのですが、講演も結構長いので今日書ききれるか少々不安があるあたくしなのでした。まあテキストも読んでね。
○上方修正したものではありませんかそうですか
最初は当然ながら日本経済の現状に関する話。こちらは金融経済月報や展望レポートに則した内容となっておりますが「へえ〜」と思った箇所がございます。曰く、
『なお、私どもが公表している「金融経済月報」における表現が今月より「回復」から「拡大」に変更されていますが、これはマクロ的な需給ギャップが、長く続いた供給過剰状態を解消し、現在は需要超過状態に入ってきているとみられることを意味しているのであり、景気判断を上方修正したものではありません。』
需給ギャップが需要超過状態になったという判断はとっても重要なことのような気がするんですが、それは景気判断上方修正じゃないんですかそうですか。シロートなんでよーわからんのですが、それはやっぱ景気判断上方修正なんジャマイカと思うんですが。
○国内設備投資・個人消費
日本経済と米国経済に関する見立てと先行き見通しに関しては各項目ごとに色々と説明しておりまして、こちらはまあ読むと吉かと存じます。全部紹介しているときりがないのでまずは国内設備投資と個人消費に関する須田さんの現状の見立てに関して。
『設備投資について2006年度計画を同じく6月短観でみると、大企業では製造業が前年度比+16.4%と昨年同時期並みの高い伸びとなっているほか、非製造業は前年比+8.9%と、昨年に比べてさらに伸びが高まっています。また、中小企業をみると、製造業では、前回対比大幅に上方修正され、6月時点で既に前年並みの水準となっています。一方、非製造業については、前年比でみた計画値が現時点では1割程度下回っていますが、2005年度が1割以上の高い伸びとなったことを勘案すると底堅い計画だと評価できます。』
『個人消費については、雇用者所得の緩やかな増加等を背景に、着実な増加を続ける可能性が高いと考えられます。これまでの景気回復・拡大により、雇用に対する不安は後退しており、雇用者所得に見合った個人消費の増加を想定しています。ただ、雇用のミスマッチで一部では大幅な賃金上昇が起こり得ると思いますが、総じてみれば、企業の慎重な経営スタンス、つまり、企業の人件費等のコスト削減姿勢は堅持されており、賃金の上昇圧力が明確に顕在化するには至っておらず、雇用者所得の増加は主として雇用者数の増加を中心に緩やかなものに止まると思っています。』
総じて見ると「そんなにカンカンの強気ではない」けれども「下ぶれリスクはあまり意識していない」ということで、いわゆる「着実な上昇」というところになるのではないかと思います。
○リスク要因:米国経済、IT在庫調整、景気循環
ヘッドラインに打たれて「須田さんが下ぶれリスクに言及ですよ」となったのは日本経済の先行きに関するリスク要因として米国経済に触れた部分。確かにこの部分も丁寧に説明しておりますので、ヘッドライン打ちたくなるのも判らんではないですけどね。
『私は、米国経済の減速とインフレ加速を巡って不確実性が高まっており、その下振れリスクの度合いは多少なりとも強まっているように思います。』
『米国経済の景気拡大テンポは、消費・住宅関連指標や雇用統計を眺めますと、確実に減速しています。シナリオどおりの減速なら望ましいのですが、問題は、来年前半にかけての減速の度合いが春先に予想していたより多少強まっている感がある上に、不確実性が高まっていることです。』
という話と、金融政策の先行き不透明感に関してこんな話を。
『フィリップス曲線のフラット化などの可能性もあって、原油高等を映じた物価上昇圧力の高まり方が読みづらくなっていると思います。フラット化の進捗度合いが測りきれない中で、インフレ期待が高まり、この抑制を狙った金融引き締めが行きすぎとなって、想定していたパスよりも成長率を低めてしまう可能性があると思っています。他方、潜在成長率を楽観的にみすぎて物価上昇圧力を過小評価する可能性も否定できません。』
『FOMCの声明で「アコモデーション」という表現が「ファーミング」に変更されてからこれまで累計で1%ポイントの利上げが行われていることに加え、世界各国で金融政策が引き締め方向に調整されていますが、その影響を織り込みにくいことも金融政策の先行き不透明感を高める要因となっています。』
まあそういう話をしてますが、基本的には『マクロ統計をみる限り、米国経済の先行きについて標準シナリオの変更を迫るような統計は見当たりません。』ということで今後に注視というお話。
IT在庫調整と、景気循環で踊り場が来るかもしれないって話もありますが、こちらに関してもリスク要因を説明した後で「とは言え現状では大丈夫ではないかと思います」って話になってます。紹介してると長くなるので割愛。
○金融政策の説明になると一転してタカなんですよこれが
ヘッドラインでは主に景気の見立てのほうが注目されていました。確かにリスク要因に関して詳しく言及したというのは注目されるんですけど、後半の金融政策に関する話になると何ちゅうかもうこれがタカに見えるのはバイアス掛けてみてるからだけではないと思います。
で、こちらの部分に関しても色々と興味深い論点についてお話が続くのですが、最初にあたくしが懸念した通り(苦笑)、全部の論点紹介してると全然終わらないので、あたくし的に「おおこれはこれは」というのをとりあえずご紹介するだよ。
○武藤副総裁講演に次いで須田講演でもインフレマインド話が
(国民の目線で見た物価安定の理解)ってお題の部分が気になるあたくし。
『そうはいっても(引用者注:物価安定の理解で示されている物価の)下限が低すぎるのでは、という意見に対して、私の物価安定についての考え方をここで示しておきたいと思います。』
『私は、物価安定について数値化する際に、国民の物価観、つまり、国民が、物価が安定していると考える物価上昇率を大事にする必要があると思っています。国民はこうした物価上昇率を前提にして経済活動の意思決定を行っていると考えられますので、物価安定についての数字が国民の物価観から離れたものになると、国民の物価の先行きに対する見方に混乱を引き起こし経済が不安定化しかねないと思っています。』
『また今回の物価安定の数値化を私ども政策委員と国民が物価の安定を巡って、効果的なコミュニケーションを行うことを可能とするための一つの方法と位置付けておりますので、その第一歩としてまずは国民の目線を大事にしたいということでもあります。』
まあそういう考えも判らんでもないですが、その発想だと期待形成の安定化を行いマイルドインフレをターゲットにっていう方向には行かないってことでもあるんでしょうな。それでそれで。
『日本銀行が四半期ごとに行っている「生活意識に関するアンケート調査」によりますと、全体としての物価の見方は実際の物価の動きと対応していることがわかります。とはいえこの間、多くの調査時点で過半数の人が過去1年間物価はほとんど変わっていないと答えています。そこで過半数の人が物価安定だと考えている時期を実際の消費者物価に対応させてみますと、消費者物価の前年比においてコア、ヘッドラインでみて▲0.5%〜+0.5%程度のときに、過半数の人が、物価が安定していたと思っていたことがわかります。』
で、もうちょっと説明があるのですがそこを飛ばしまして、先日ご紹介した武藤副総裁講演でも言及されたお話に進みます。
『なお、先日公表されました6月の調査の内訳をみると、1年後の物価が上がると思うとの回答が大きく増え、これまでずっとゼロであった1年後の物価上昇率の中央値は2%にまで上昇しています。ここにきてインフレについての捉え方が変化し、デフレマインドは解消されてきたことがわかります。同様のことは内閣府の「消費動向調査」からも窺えます。ただし、3月調査と比べて「1年前比」、「1年後予想」ともかなり平均値が上昇しましたが、公表されているアンケート結果で示されたインフレ率の平均値は高すぎると思われます。実際、現実離れした値を修正してみますと、アンケート結果における上昇幅ほど大きな上昇ではないと推測されます。』
ということで平均値は統計の綾で大きく出ちゃった(異常値処理に関するお話はテキストの最後に示されています。念の為)けど、それはそれとしてマインド面でもデフレ意識は払拭しているということですな。『デフレマインドは解消』ですから。
で、その次にはこんなお話を。
『さて、主観的に「物価が上がっている」と思っている人の物価上昇についての感想は、「どちらかと言えば、困ったことだと思う」という答えが8割を占めています。他方、主観的に「物価が下がっている」と思っている人の物価下落についての感想は、「どちらかと言えば、好ましいことだと思う」という答えが一番多くなっており、国民は物価上昇を望んでいないことが伺えます。』
・・・・・・(-_-メ)
『ただ、個々人は自分の名目所得を与件として答えている可能性が高いので、物価の下落は経済全体でみて望ましいということにはなりません。』
さよでございますな。
『実際、かつてデフレ期待が定着すると消費を先送りすることになるから望ましくないという議論がなされました。仮に、それが正しいとするとデフレ期待が解消しインフレ期待が高まってきた今日、消費が活発化することが想定されます。しかし足許、インフレ期待の高まりのもと消費動向調査や景気ウオッチャー調査における消費者コンフィデンスは悪化しています。実際の消費は天候要因があるもののそれほどよくはありません。つまりデフレ期待の解消とともに消費が増えるというシナリオは顕現化していません。』
い、いんふれ期待の高まりですって?デフレマインドが払拭する=インフレ期待の高まりだったんですか。まるでキムタケ先生みたいだ・・・・
『この点からはマイルドなデフレのもとではデフレ期待による消費の先送りをデフレのコストとして強く認識する必要はないといえるかもしれません。つまり過半数の国民が、物価が安定し主観的にインフレ率がゼロと思っているような状況では、実際の物価指数は僅かなマイナスを示すことがあってもこのようなコストを意識しないでよいということなのではないでしょうか。』
・・・・・・(゜Д゜)
○で、実は「金利調整は必要」って言ってるんですよね〜
その後に物価上昇ののりしろ論とか、金融政策の波及効果のタイムラグ問題とか話をしているのですが、案の定時間切れになったので続きは明日。
いや、須田さんの講演っていつもこんな感じで、紹介するのも中々ホネではございます。読むところが一杯あるから興味深く読めますが。
#尻切れトンボで恐縮至極
2006/07/26
お題「古いネタとか雑談とか」
今日は3か月FBの入札ですが、材料出尽くしモードによりまあ面白みの無い入札になりそうな悪寒。
○量的緩和政策の実証研究まとめペーパー
以前URLだけ置いたものですが、忘れる前に少々。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp06j14.htm
相変わらず本文(上記URL先に本文のPDFファイルへのリンクがあります)は斜め読みしかしてないのですが、上記URLが本文のサマリーという位置づけになってますんで、まあそちらでも。
『本稿では、日本銀行(以下、日銀)が2001年3月から2006年3月までの約5年間実施した、いわゆる量的緩和政策の効果に関する実証研究結果をサーベイした。量的緩和政策の効果の実証結果の蓄積は十分とは言えないが、現時点(2006年6月)で利用可能な範囲で、量的緩和政策が日本経済にもたらした効果を定量的に検証した論文を包括的に整理することを目的としている。』
ということで、実証研究の包括的な整理ということですし、そもそも「日本銀行の公式見解を示すものではありません」なので、まあこれは量的緩和政策の日銀レビューというのかどうかは微妙でございますが、忘却の彼方に沈む前に読みますね。
・量的緩和政策の緩和効果は時間軸によるものが最大と
『はじめに、量的緩和政策の効果波及メカニズムについて採り上げた。すなわち、量的緩和政策の効果を操作手段別に「量的緩和政策継続のコミットメントが将来の短期金利の予想経路に働きかける効果」、「日銀当座預金供給増による日銀のバランスシート拡大の効果」、「長期国債オペ増額による日銀の資産構成変化の効果」の3つに分類したうえで、それぞれが具体的にどのような波及チャネルを通じてどの程度効果がみられたのかについて、実証分析結果を検討した。』
ということで、時間軸効果(に類するもの)、マネタリーベース拡大効果、長期国債買入増額おのおのの波及効果はどないなんよってことについて色々な実証分析の整理をしている(のは本文中)のですが、
『ここまでの実証研究をみる限り、量的緩和政策から抽出された最も大きな緩和効果は、将来にわたる予想短期金利の経路に働きかけるチャネルを通じたものであった。』
ということでして、名目金利ゼロ制約があるときには・・・
『ゼロ金利制約を意識した金融政策運営を行う際に、政策効果を発現させるうえで中央銀行から民間に対する金融政策に関する情報発信が重要であることが示唆される。』
ということだそうですが、長期国債買入増額って福井総裁になってからはやってなくて、その後は物凄い勢いで日銀当座預金残高を増加させてるということで、やってる時期が微妙に違うというのはどういう分析になるのかやや興味がある(本文と本文の参考文献を読むと色々あると思うんですが、そこまで根性が入ってないっす)ところではございます。
・需要・物価への直接効果よりは金融環境の緩和効果だそうで
『以上を踏まえ、量的緩和政策が、様々な波及チャネルを通じて、全体として日本経済にマクロ的に及ぼした効果を分析した研究を採り上げた。総じて緩和的な金融環境を作り出し、企業の回復をサポートしたとの見方が多い。』
ということで、当座預金残高目標なお書き修正の前あたりから審議委員の方々が言ってるお話を補強する内容っぽいですな。
『まず、波及チャネルは特定されていないが、量的緩和政策によって、不良債権問題を抱えていた金融機関が市場から調達する資金にかかるプレミアムが、格付け格差を殆ど反映しないところまで縮小したことが実証されている。こうした結果を前提とすると、量的緩和政策は金融機関の資金繰り不安を回避することによって金融市場の安定や緩和的な金融環境を維持し、先行きの資金調達に対する企業の不安を通じた景気・物価のさらなる悪化を回避する効果があったと解釈できる。』
プルーデンス的説明の香りがしますが・・・・
『一方、総需要・物価への直接的な押し上げ効果は限定的との結果が多かった。中でも、マネタリーベース増加の効果は、金融政策のレジームがゼロ金利制約下で変化した点まで踏まえて実証すると、検出されないか、あってもゼロ金利制約のない時期よりも小さいとの結果であった。』
『また、量的緩和政策によって、総じてみれば無担保コール・レート・オーバーナイト物を単にゼロ%にする以上の金融緩和効果が実現したことが示されているが、それでも総需要・物価の押し上げ効果は限定的との結果であった。この理由として、ゼロ金利制約以外に、資産価格の大幅な下落によって企業および金融機関の自己資本が毀損した結果、金融緩和に対する企業、金融機関の反応が大きく低下したという分析結果や解釈が示されることが多い。』
まあいずれまた別の形で量的緩和政策のレビューが出るとは思うのですけれども、現状はこんな感じのレビューになっているということなんでしょうね。
以下雑談
○オペの打ち直し
昨日は9時20分に即日オペを実施した後に9時40分頃にもう一発同じオペを実施・・・・と思ってよく見たら前のオペが取り消しになってまして、その事情はといえばオペの応札時限が「9時20分」になっていて応札が物理的に不可能だったからでした。
いやあこんな事もあるのね〜と苦笑を禁じ得ない所でしたが、システム的にこういう場合オペ内容を変更できないようにしてるんでしょうな。突然応札時限が変られても困りますから、その点ではよく考えてますなと妙な所に感心してしまったあたくしでございました。
一瞬「何で追加オペ??」と驚愕しましたので、そーゆー時は先にお触れを回してからオペの打ち直しをお願い致します、って単にあたくしがお触れを見落としていたのかもしれませんので単に自分が恥ずかしいだけですが(笑)。
もうちょっと皆がピリピリしてる時だと非難轟々なんでしょうが、「あっはっは」で済んでいるのは短期市場は穏やかな天候ですなあって所でしょう(^^)。
○どこから突っ込んで良いのか・・・・
久しぶりにこの人のブログを拝読→http://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/2006/07/post_0f5a.html
ぼけーっとしながら読んでると説得されそうな「インフレ懸念」でございますが、一々突っ込みながら読むと、何というかどこから突っ込んで良いか判らんという論説。とは申しましても、まあ同じ論理展開かどうかは別にして、こーゆー感じで「これからインフレですよ(どっちかというとキムタケ先生はスタグフレーション懸念の話をしているような感じですが)大変ですよ」ってお話が大手新聞あたりから流されていくんでしょうな。
などと思ったので珍しくご紹介するのですが・・・・
『とっくの昔に「デフレ」ではなくなっており、それは既に「事実」』
はあはあそうですか。まあそれならそれでも良いのですが、「事実」と書いてそれで終了なのはどうなんでしょうかとは思いますが、こちらは「コラム」でして、幾つかの切り口を提示して「これから懸念すべきはインフレである」って話をしてるんで一つ一つの切り口に関して細々と書かないんでしょうね、と何となくフォローしてみるテスト(^^)。
しかしここのくだりは凄いです。本文真ん中あたりなんですが・・・・
『今後日本では、給与所得に頼らない高齢者が急激な勢いで増えていく。高齢者にとって、デフレが如何に有り難い経済環境であったかが、再認識されていくようになる。それとともに、わが国の公的年金が、本当に「百年安心」という代物なのかが、再び議論の対象となるに違いない。時期はともかく、いずれ「インフレ」は政治的なイッシューになっていく。』
・・・・・(-_-メ)
えーっと、支給される公的年金の原資は受給者の積立金じゃないんですけど、デフレになったら誰がその原資出すんでしょうか。インフレになると預貯金なんかは実質価値目減りしますが、それと公的年金の維持可能性問題は別件なのではないかと思うんですが、意図的か意図的じゃないか判りませんがその辺混同した書き方になってますなあ。まるで「インフレになると公的年金制度は維持できない」と言ってるように読めてしまいます。
で、時期はともかく、いずれインフレは云々っていうのは長い目で見れば人間は皆死ぬと言ってるのとあんまり変らんと思うんですが。短期的な話と長期的な話をこれまた混同して書くのも何なんでしょって感じです。
何か世の中「デフレ」と「高インフレ」しかなくて、インフレをマイルドな水準で安定させるって観点が無さそうに見えるのもまあ極端なお人ですなあと思うのでありました。ボーっとしながら読んでると思わず説得されそうになる文章力にはいつもながら感心させられますが。
ま、本日はそんなところで。
2006/07/25
お題「武藤副総裁講演続き/その他少々」
福井総裁はリップサービスが多くて実にネタに困らないお方ではございますが、武藤さんが総裁になった方がまあ日銀の中の人としては不規則発言による突発事態が起きなくてやりやすいでしょうな。
そんな訳で、昨日華麗にスルーした経済状況に関する武藤副総裁講演テキストより。
○経済の見立てに既視感が
『まず、前提となる海外経済は、地域的な広がりを伴いながら、拡大を続けています。米国では、住宅建設が減少し始め、家計支出や雇用面で増勢が鈍りつつあるなど、拡大テンポが幾分鈍化していますが、これは、安定成長に向けた調整と捉えることができると考えています。』
『欧州では、輸出や生産が増加しているほか、家計支出も持ち直しており、景気回復のモメンタムが徐々に強まっています。中国をはじめとする新興諸国は、経済のグローバル化のもとで、規模・質の両面で、国際分業体制が一段と進展していることを背景に、力強い拡大を続けています。』
『海外経済の拡大を受けて、わが国の輸出は、堅調なペースで増加しています。』
どっかで見た事のある話の展開だと思ったらこれは6月14、15日の金融政策決定会合議事要旨でもこんな経済見立てになっていたという感じですな。実は恥ずかしながら金融経済月報の本文って読んでない事が多い手抜きなあたくしですが、もしかして月報もこんな感じなのかもね。
んでまあこの調子で引用していると全部引用する破目になってしまいますので(^^)、このあとはあたくしがこう読んだってのを箇条書きにすると・・・・
・設備投資:企業収益の増加や設備更新需要で高水準続く
・家計部門:好調な企業収益が家計に波及し、マインドも改善
どう見てもダム論です。本当にありがとうございました。
で、株価下落に関する評価がこれまた既視感のあるテキスト。
『こうした動きは、わが国だけでなく、他の主要国やエマージング諸国においても幅広く観察されており、グローバルな現象であることが大きな特徴です。その背景としては、各国の中央銀行が経済・物価情勢に応じて金融緩和度合いの修正を進める中で、市場参加者のリスク評価についての見直しが進み、その結果として、株価の調整が生じたという面があるように思います。』
これまた先日ご紹介した6月の金融政策決定会合の議事要旨で見たことのあるようなお話。ちなみにこの部分もうちょっと長いのですけれども、まさに「株価下落は心配ないぜ」ってトーンの方が強そうに見えるのはあたくしの気のせいですかそうですか。
○物価環境はバラ色の未来に見えますが気のせいでしょうか
そんでですな、物価環境の部分もこれまた何か先行きとってもバラ色ですよウェーハッハッハと書いてあるように見えるのですよ。曰く、
『長期間に亘って回復を続けてきた結果、経済全体の総需要と潜在的な総供給能力との差である「需給ギャップ」を推計しますと、長らく続いた供給超過状態が解消して、現在は需要超過状態に入ってきています。』
『短観における企業の判断をみますと、過去十数年で初めて、設備の過剰感が解消しています。』
『雇用については、労働市場の需給改善が進む中で、過剰感が解消しているだけでなく、むしろ不足感が強まってきています。』
そんなわけで、賃金が緩やかに上昇基調となっているという認識の続きにこんなお話が(^^)。
『先行きについては、生産性上昇に伴う下押し圧力は続くと見込まれますが、賃金が緩やかな上昇を続けていることから、ユニット・レーバー・コストの下落幅は縮小し、いずれ若干の上昇に転じていくと考えられます。』
どう見てもバラ色の見通しです。本当にありがとうございました。しかもこの次には消費者マインドの好転に言及しておりますわな。
『日本銀行情報サービス局が実施している「生活意識に関するアンケート調査」では、先行きの物価について具体的な数値を家計に尋ねており、それによると、これまで1%程度で推移していた今後5年間の予想インフレ率の中央値は、足もとでは2%まで上昇してきています。』
2%といえば「物価安定に関する理解」の上限値ですよ!
まあ何ですな、需給ギャップ解消の話と消費者マインド好転の話から物価上昇話という直球というか本命の話が全面に出て来たような気がしますにゃ。気のせいかも知れないけど。
以下雑談を少々。
○短期市場は落ち着いてるようで
利上げ翌日(先週の火曜日)には無担保コールが0.3%とかになって目が丸くなってしまいましたが、その後気合の資金供給でコール市場も落ち着き、GCレートも0.3%ちょっとあたりで落ち着いている感じ。
まあそんな事からFBの利回りもやや低下して1か月ものあたりでは0.3%近辺(0.3%割れかも)と確りしておりますわな。大変結構なお話です。CPに関してはやや需給環境が悪いようで、イマイチ金利が下がりませんが、まあこちらも徐々に低下しつつあるイメージですわな。
とは申しましても、まあ月末月初あたりまではちょっとオペが途切れると金利は上りやすいんじゃないかなあとは思います。明日のFB入札はまあ無難に収まって0.37〜0.38%位で入札をやってセカンダリーであっさり0.35%〜0.36%まで進むって感じなのではないかと勝手に想像してますが、その通りになるかどうかは保証の限りではありません(笑)。
○デリバティブ上場規制緩和
テレビニュースを聞いただけで記事を見ないで脊髄反応。
金融庁の事前承認を撤廃して取引所の判断で上場が出来るってえ話ですが、取引所間で下らねぇ対抗意識を燃やす余り、原資産をマニュピレート(と英語を出して何となく穏当に書いてますが、要するに恣意的な価格操縦だよ)しやすいような胡散臭い物を上場しだして却って碌な事にならないに1万マザース(^^)。
マザースおっぱじめて1年も経たないうちに上場規制が強化された(上場審査を早く通すために決算期変更する荒業が続出してましたな。規制がいきなり強化されて決算期変更した企業皆呆然なんて懐かしい昔の話^^)のは記憶に新しい(ってほどでもないか)ですが、この手の物おっぱじめると必ず最初にコケて、その後立て直しでヒーヒー苦労するのは日本の伝統芸能でもございますので、今度はそうならないようにしてね(はあと)。
いやね、規制緩和するのはするで良いんですが、経済事犯に対する罰則の強化とか不当利得の没収制度とか作って経済犯則が「割に合わない」ようにして、ついでに監督機能の強化もセットにしないと規制緩和は無法地帯の創設に繋がる「善意で敷きつめられた地獄への道」になるんジャマイカと思うあたくしはアナクロ規制強化推進の抵抗勢力ですかそうですか。
ではでは。
2006/07/24
お題「相変わらず手堅い武藤副総裁講演ですが」
その前にちと別の話。
○オペ刻み変更来ました
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/mok0607a.htm
昨日の引け後にしらっと公表されていたのですが、量的緩和政策下でオペの刻み幅を0.001%にしていた(理由:0.01%刻みだと最低金利が0.01%未満に下がらない)のを元に戻したという措置。まあさすがにベースレートが0.25%になってからはコールの呼び値も概ね0.01%刻みになってますので、実態に即した変更でございます。
ということで、政策的に何か意味のあるお話ではなくて、量的緩和政策の下で行われていた緊急避難措置の解消です。今年4月に財務省がTB、FBの入札の応札刻み幅を広げた(らその後金利が低下したのは微苦笑を禁じ得なかったのですがそれは兎も角)時に日銀がオペ刻み幅元に戻すという誤報を1面で打っていた新聞がございましたが(笑)、結局利上げ後に様子を見てから刻み幅変更というまあ当然の形になりました。こうしないと政策的意図がどうのこうのとか勘違い講釈をする人が現れますからね。
#売買系のオペは元々刻み幅が0.001%ですので変更ないです。
#なぜか金先が引け後に売られていたのは気になりますが
という訳で本編は武藤副総裁の講演。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0607b.htm
○丁寧かつ手堅い印象なんですが・・・
全編を通してざっと読んだ第一印象はいつものように「丁寧な内容」で「手堅い」ですなあというものです。ここの所出てきていた(と言いながらまだ読んでないペーパーがあったりするのですが、汗)日銀レビューの内容や展望レポートなどで示されている論点に丁寧に触れている感じでございます。内容的にはタカでもハトでもなくって感じですが、金融政策のあり方に関する部分ではちと気になる点も(後述)。
でですな、ふと読んでいるうちに脳内妄想が沸き起こってきたのですけど、今回の講演を読んでると「さすが武藤副総裁だ、これなら総裁の首をすげかえても心配ないぜ」という感じではございますな。不規則発言がどのくらい講演で出たのかは出席して無いので存じませんが、変なフラッシュが出てなかったようですので、まあ福井総裁のようなことは無いんでしょう。いつものことですが。
福井総裁は自信満々の暴れ馬っぽいところがあるようですが(だから判断ミスするとファンド出資問題での行動のような事が起こる訳で)、武藤副総裁の方がその点では(前からその印象強いのですが)安定感抜群ですなあと毎度の如く思うのでした。
○今回の政策変更に関する説明部分
『3.今回の政策変更の狙い』の『(今回の金融市場調節方針変更)』より。
『今回の政策変更は、4月の展望レポートで示した経済・物価見通しを維持した上で、同じく展望レポートで示している金融政策運営の基本的な考え方に基づいて行ったものです。今後についても、経済・物価情勢を丹念に点検しながら、金融政策を運営していくことになります。すなわち、経済・物価情勢が展望レポートで示した見通しに沿って展開していくと見込まれるのであれば、政策金利水準の調整については、経済・物価情勢の変化に応じて徐々に行うことになります。この場合、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高いと考えられます。こうした考え方はこれまでも繰り返し説明してきたところですが、要すれば、金利水準の調整は、経済・物価情勢をよく見極めながら、ゆっくりと進めていくということです。』
どう見ても公式見解です、本当にありがとうございました。
『なお、今回の金融市場調節方針の変更に当たって、補完貸付の適用金利については、0.4%としました。』
ということでロンバート(引用しませんが、講演の後の方で「これからは公定歩合って言葉は使いませんのでよろしくね」って説明もしてました)金利についてのお話もしてます。
『(前の説明部分省略)このところ、レポレートの高止まり等を背景に、多額の補完貸付が恒常的に利用される状態が続き、市場における自由な金利形成の面からは、やや窮屈な状態となっていました。そうした一方で、量的緩和政策の解除以降、短期金融市場の機能は徐々に回復してきてはいますが、なお道半ばであり、引き続きコールレートの安定的なコントロールにも配慮する必要があると考えられます。』
座りが悪いとか中途半端とかいう話は(講演だから当たり前ですが)テキストにはございませんな(^^)。
○金利コントロールの仕組みと波及経路というお話
今回の講演の見ものは『4.金利コントロールの仕組みと波及経路』という部分かと勝手に思う訳でして、ここの話が丹念に行われている事からさっき書いたような脳内発想が出てきたんですな(笑)。
『(中長期金利への波及メカニズム)』って所から。
『このようにして実現している中長期金利には、将来の短期金利の経路に関する市場の予想が反映されていると考えられます。金融政策は、金利と期間の関係を表す曲線、すなわち、イールドカーブを直接動かすものではなく、市場参加者により先行きの中央銀行の行動が予想され、それが金利の期間構造に織り込まれることにより、イールドカーブが形成されていきます。そして、こうしたイールドカーブの形状が、全体として、企業や家計の経済活動に影響を与えていくのです。』
『予想された短期金利の変動が重要といっても、日本銀行が、政策金利である短期金利のパスを低く設定し、これを市場に伝えれば、常に中長期金利を低く保つことができるということにはなりません。政策金利のパスは、長い目でみて、経済・物価情勢に応じたものでなくてはならないからです。政策金利が経済・物価情勢に対して過度に高かったり低かったりする状態が続くと、経済や物価に望ましくない動きが生じ、いずれはそれに対応するために、政策金利を大きく引き下げたり、引き上げたりしなければならなくなります。そうした金利の無用な変動を金融市場が予想し、不確実性が高まれば、リスクプレミアムが拡大し、中長期金利はかえって高い水準になってしまいます。』
『「長期金利は、将来の経済や物価に対する人々の見方を反映して決まるものであって、金融政策によってコントロールできるものではない」と言われることがあります。長期金利は、金融政策の影響を受けますが、只今申し上げたような理由から、経済や物価の情勢から離れてコントロールすることはできないものです。金融政策が経済・物価情勢に応じて適切に行われ、このことを市場が信用している状態を実現していけば、リスクプレミアムが小さくなって、長期金利の安定に最も望ましいと考えられます。』
ということで、このあたりの件を読んでおりますと、先日読んでまだご紹介しておりません(おい)が、長期金利コントロールの重要性に言及している中原伸之さんの「日銀はだれのものか」(中央公論新社)を思い出してしまうのですが(苦笑)。
この前後の説明も色々とご覧になるのが宜しいかと。
○一歩間違えるとそれは地均し路線何ですが・・・・
というよりは現状が地均し路線な訳でして、その辺に関して本音としてはどうお考えなのか非常に知りたい所ではございます。『5.金利コントロールを巡る論点』の『(期待形成の重要性)』という所から。
『先ほど、将来の政策金利の経路に関する経済主体の予想が、実体経済活動に影響を及ぼし、それがさらに物価に影響を与えていくということを述べました。金融政策は、一つ一つの利上げや利下げのアクションだけでなく、その後の政策運営についての市場の予想に働きかけることで、大きな効果を持っていくということです。』
それはその通りなのですが、そうなりますと「金融政策の正常化」という話で量的緩和政策を解除した時に「時間軸はなくなっているので解除しても実態は変らない」という公式説明をしてたのと話が微妙に矛盾しませんですかねえという気もするんですがまあそれは兎も角。
『先行きの短期金利の変動が予想され、それが中長期金利に十分に織り込まれている場合の金利の変動については、重要なポイントがあります。』
『第1に、政策変更は、それが事前に予想された時点で、中長期金利の変動を通じて、金融政策の効果を発揮していくということです。イールドカーブが将来の政策変更を織り込んでいるのであれば、企業や家計はそのことを前提として、投資や消費の意思決定を行うからです。』
『第2に、実際に政策金利の変更を行った時には、中長期金利は大きく変動しないということです。政策変更がサプライズとなって中長期金利が大きく変動しないと、政策効果はないと考えるのは適当ではありません。予想通りの政策変更である場合、中央銀行の政策変更は市場の動きに追随しているようにみえますが、これは、金融政策運営が透明かつクレディブルであり、かつ、企業や家計といった経済主体がそれに基づき行動してきたことの表れと考えられます。』
『第3に、政策変更が事前に織り込まれて、政策効果を発揮しているからといって、政策変更は不要にはならないということです。予想が裏切られれば、その後の政策についての見方が変化し、イールドカーブの形状も変わっていくからです。』
なるほどそうですか。ややツッコミを入れたい気もするのですが、こちらの頭が整理されていないので今日は引用するだけで恐縮至極(汗)。
でですな、その後の部分が何ちゅうか地均し礼賛攻撃のような気が思いっきりする部分ですが、このあたりの論理展開って「個人の見解に属する」日銀レビューで先日拝読したような気がするんじゃがのう。
『以上に述べたような期待形成とイールドカーブの関係を踏まえますと、イールドカーブが政策運営の考え方と整合的に形成されるよう、中央銀行は、金融経済情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方を丁寧に説明し、透明性の向上に努めていく必要があります。(中略)言うまでもないことですが、市場が政策変更を誤って織り込んでいる場合に、中央銀行が、それに追随するような金融政策運営を行っていくことはありません。そうした場合には、情勢判断や政策運営の考え方を市場に伝えていくことを通じて、市場の予想の修正を図っていくことになります。』
えーっとですな、この場合は「中央銀行の金融経済情勢に関する判断が市場の情勢判断よりも常に正しい」という命題が成立する必要があるような気がするんですが。一歩間違えると中央銀行無謬の前提で結果先にありきの運営にならんかねえという不安が。
いやまあ「情勢を丹念に点検して」って市場の価格形成もよく見ますって話は別の部分でしてるんですけど・・・・・・何だかね。
#寝坊したので最後は引用だけになって恐縮でした
2006/07/21
お題「金融政策決定会合議事要旨(6月14、15日)」
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060615.pdf
○PDF形式より従来のHTMLの方が・・・・
いきなり内容と関係ない話で恐縮ですが。
上記URLにありますように、議事要旨の公表形式が今回PDFになっています。最近記者会見とかもPDFになったりしてる場合があるのですが、従来のHTML形式と比較すると、
(1)ダウンロードしないといけないから手間とダウンロードの時間が増える
(2)ページ当たりの字数が少なくなるので紙に打ち出したときに余計に枚数が掛かる
(3)2と同じ理由で今までよりも読むのに手間が掛かる(HTMLだとスクロールすれば読めるんで一覧性がある)
ちゅうことで正直読み難いんですけど勘弁していただけないでしょうか。慣れの問題もあるんですけど、日銀のWebサイトに関してはリニューアルして改悪になったと思います。いやまあ努力というか工夫したというのは判るんですが、以前の方が調べ物するのも便利でして、変に凝った作りにして却って不便になりましたな。
話がどんどん逸れますが(笑)、日銀のサイトが新しくなってからは、必要な情報に行き着くためにトップページから辿る階層が多くなってます(よって毎日見る所を全部ブックマークしないと面倒という状況になってます。以前はそんな事無かったんですが)し、それ以前の問題として、サイトリニューアルで過去のドキュメントのリンク先を変えてしまってるので、あたくしの過去の駄文とかでもリンク切れになってる(リンク直す気力が涌かない・・・)のも勘弁して欲しいのですが。
もっとどうでも良い話になりますと、HTML形式で公表されている会見要旨をWordなどに落とす場合(IEの場合ですが)「全て選択」で本文だけ選べた(フレーム形式だったんで)んですが、フレーム形式じゃなくなった為に「全て選択」すると余計な部分まで選択されるので一々範囲選択しないといけなくなったのもまた面倒なお話でして(苦笑)。
と、日銀のサイトリニューアルに散々悪態書いてますが、正直前のサイトの方があたくし的には使いやすかったんですけど何とかなりませんですかねえ。(と勝手な言い草ですが^^)
○株価の下落に対する評価
本文6ページ(表紙で1ページ使ってますので注意)『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の『2.金融面の動向』で株価下落についての議論が。
『株価の下落について、多くの委員は、程度の差はあるが、主要先進国、新興市場諸国に共通して見られており、基本的には、昨年後半以降の大幅な上昇に対する調整が進んでいるとの認識を示した。複数の委員は、非鉄など国際商品市況でも同様の傾向があると付け加えた。多くの委員は、各国で金融政策の転換が行われてきた中で、投資家のリスク・アペタイトが後退していると述べた。』
アペタイトってappetiteのことですかな。別に横文字使わんでも良いと思うんですがまあそれはそれとして、その前段にありますが、株価下落(この会合の時点では13日に福井総裁様のファンド出資問題やら新興国株大下落やらで大下げの14218円なんぞやってましたが)は調整の過程だそうでございますな。
『また、多くの委員は、特に最近の動向について、米国経済で、インフレ懸念や景気減速懸念などが、従来よりも強く意識されるようになっていることも影響していると指摘した。』
景気減速に言及してますが、インフレ懸念にも言及。まあ確かに米国に関してはインフレが懸念される所ではありますけど。
『もっとも、このうち何人かの委員は、これまでのところ、日本を含め、各国経済のファンダメンタルズには大きな変化は生じていないので、株価の下落を実体経済に関する何らかの変調を示すものとまで見る必要はないとの見方を示した。』
平均株価14000円接近でも変調を示すものではないそうです。
『株価の動向が経済の先行きに与える影響について、何人かの委員は、調整が長引いたり、調整の幅が大きいと、マインド面などを通じて経済に悪影響を与えかねないとの見方を示した。』
4月に日経平均17500円とかトピ1780とかやってたのがこの決定会合時点では13日ベースで14200円(18%下げ)とか1470とか(17%下げ)とかやってますが調整の幅は大きくないということですね。ほうほうなるほどなるほど。
『こうした議論を経て、委員は、国際金融資本市場の動向を、その実体経済に与える影響を含めて注視していくことで一致した。』
ここも「国内株式市場動向」じゃないところがあたくしには引っ掛かるのでございますが。結局国内株式市況は心配ないぜというように読めてしまうあたくしは頭の中が「政策委員会は利上げバイアスが掛かっている」のがデフォになっているからそんな読み方になってしまうんでしょうかねえ??
ま、上ってる時はバブル懸念みたいな話もちらほらあった(確かに日本の新興市場の値付けは如何なものかというのは有ったけど)訳で、下がっても動じず(本当に動じて無いかは知らんが、ここだけ見てると全然動じて無さそう)というのはまあ態度が一貫していると言えば一貫してますかな。
そんな訳で、ここを見てると株価が現在(15000ちょっと割れ)くらいの水準であっても平気で次回の利上げを行いそうな悪寒がするのですけど・・・それで大丈夫かなあ??
○6月時点で利上げ慎重派はひとりと見えますが
7ページ目『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』。
『大方の委員は、現在までの経済・物価情勢は、展望レポートの見通しに概ね沿って展開しているが、世界的な金融資本市場や米国経済の動向などを含め、さらに情勢を見極める必要があると述べた。』
ということではございますが、慎重派のコメントはどうもお一人のようでして、まあ中原眞さんであることは間違いないかと存じます。気のせいか外部の審議委員の皆様退任直前になると大勢意見から離れているケースが目立つんですが、このインプリケーションは・・・(苦笑)。
『このうち、ひとりの委員は、足もとにおいて景気や物価が上振れるリスクが喫緊のものとなっている訳ではないので、慎重に情勢を見極めていく時間的余裕はまだあると指摘した。』
禿げ上がるほど同意ですが、これに対してもう利上げできますよウェーッハッハッハという強硬派が少なくとも2名おいでな事が読み取れます。
『この間、ある委員は、短期金融市場で安定的な金利形成が行われるか見守る必要があるほか、市場にサプライズとならないように金融政策運営を行う必要があるため、今回は現状維持とするのが適当であるが、経済のファンダメンタルズの面では金利を引き上げられる条件はすでに備わっていると述べた。』
この「市場にサプライズとならないように」ってのが地均し路線に繋がるのが毎度ながら如何なものかと存じますが、経済の条件で金利引上げできるんなら何故利上げ提案をしないんでしょうかねえ。市場がどうのこうのというのは金融政策判断に対してそこまで優先されることなのかしらん?
『これとは別の委員は、実質成長率のトレンドと実質短期金利の乖離はさらに拡大しており、金融緩和の度合いが強まっているため、政策対応を適切なタイミングで行う必要があると述べた。』
実質短期金利とはどういう計算してるのか浅学非才の為存じませんが、5月の連休明けからターム物金利が上昇して足元金利も上昇する場面が5月末とかにもあったと思うんですが、実質成長率のトレンドが強いちゅうことなんでしょうな。適切なタイミング云々はどう見ても利上げ早くやりましょう発言です。本当にありがとうございました。
ではでは。
2006/07/20
お題「コールレート低下/その他少々」
バーナンキ議会証言で米国株大上昇金利低下。発言のテキストまで読んで無い状態(ブルームバーグテレビでダイジェスト部分聞きましたが)で申し上げるのも何ですが、印象として「米国市場はグリーンスパン流の決め打ち金融政策時代の意識から中々抜けられませんなあ」という所でございます。バーナンキ議長は決め打ちタイプの人ではないと端から見てて勝手に想像してるのですが、市場が決め打ちを求めているとなると今後も大変ですにゃ。CPIはやたら強かったんですが、そんなに安心していいのか米国市場。
#ところで、モーサテで某雑誌のCFが放映されてたんですが、何なんですかあのアナクロ「会社は誰のものか」芝居は(笑)。
○渾身の資金供給
昨日は9時20分の即日供給でオーバーナイトの共通担保オペ1兆円のぶち込みが行われました。利上げ初日にオーバーナイトが0.302%なんぞになりやがったのでここは冷却が必要ということのようで。んでまあ昼にもご丁寧に即日供給(これまたオーバーナイト)を6000億円打ち込みましたので、さすがにコールも低下して最後は0.2%とかもうちょっと下とかのあたりまで低下したようでございますな。
そんな次第でGCレートも上ったり下がったりしたようでして、前日の続きで朝方やってた21−24のオーバーナイト物は0.36%〜0.38%とかが中心だったようですが、午後になって始まる24−25のオーバーナイト物は0.31〜0.34%あたりだったらしく、まあよう動きますわなという感じです。
いずれにせよ、無担保コール翌日物取引の加重平均金利が堂々0.3%台定着は許さんという極めて当たり前の認識が徐々に市場に広がってきましたなあという感は受けます。日銀公表の日銀当座預金需給速報とか見てると何か超過準備と申しますかブタ積みをしている人が相変わらずお出でのようで(しかしもう準備積み終了ですかそうですか)すが、そんなお金もそのうちブタ積みによる機会損失に目覚めて動いてくれる日も近いのではないかと勝手に想像しております。
で、3か月FBは0.38%あたりでの落札結果になってましたが、最初勢いで0.36%まで買われたものの押し戻され、その後はGC低下でも好感したのか何だか知りませんが再度買われて0.365%となったようで、まあ無難な入札だったんジャマイカと。大体からして既発の10月償還物が軒並み0.36%で、まあ10月第1回会合越えまで意識するこたあねえという状況で既発対比でそんなに甘くなるイメージもなかったんで妥当な線ではないかと思うのでありました。
○総裁記者会見続き:ロンバート金利関連
ロンバート関連の総裁コメント。
『まず大変申しわけないのですが、公定歩合という言い方を私どもはどちらかというとお蔵に入れたいと思っています。(中略)今回も公表文の一番下の欄外に「手形割引は停止しています」と静かに書いていますが、この意味するところは公定歩合という言葉は、今後お互いに使わないでいければ非常に嬉しいという意味です。』
物凄く芸が細かいなあと思ったのは、日銀のウェブサイトのトップページでして、あたくしが気が付いたのは6時過ぎ位だったと記憶してますが、この当日にはトップページ右下にある「主な指標」の一番上にある「公定歩合」が「基準貸付利率」となっておりました。そういう所はヌカリがないぜ日本銀行(^^)。
『基準貸付利率と申しますか、補完貸付の適用金利、これは今申し上げました通り、今回は取りあえず少し低いところに抑えたというのが実感です。』
総裁の本音は0.5%だったんですかそうですか、まあそうだとは思うが。
『従って、将来は誘導目標と基準貸付利率とのスプレッドについて、どの程度が本当に適正なのか、外国のように0.5%とか1%というスプレッドが良いのかを、日本の場合、新しい展開の中で決めていかなければならないので、いくら勉強しても机上の作業で事前に一発勝負で最終的な解を出すのは難しいのかなと思っています。』
机上のナントカって言い方が好きですなあ総裁。というツッコミではなくて、まあ誘導目標が0.5%位になったら(何時の事か知らんが、鬱)スプレッド0.5%でも良いんジャマイカと思いますが、ただしちゃんと誘導金利目標近傍で市場が動くようになってればの話ですけど。
『従って、今後の政策変更の過程でその都度、市場機能の回復振りを判断しながら現実的に判断していきたいと思っています。通常は余程のことがない限り、政策変更の時にきちんと判断していくということになると思っています。今回中途半端に止めたからここだけ別途急いで決めたい、というような気持ちを予め持っているわけではありません。』
必ずしも完全否定ではないですけど、ロンバート金利だけいじるという事はやりませんと言ってるようですな。技術的にはアリかなとも思いますが、まあ確かにロンバートを先行して動かしてから誘導水準動かす(昔のブンデスバンクみたいに)というような連想が働きやすいので難しいんでしょうね。
以下小ネタっぽくなりますが少々気になった経済関係閣僚会議後の話題にツッコミをば。
○小ネタその1:デフレ脱却ではないけどデフレは削除ですかそうですか
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20060719AT3S1901Y19072006.html
↑1か月もすればリンク切れかと存じます。
えーっと上記記事によりますと、「7月の月例経済報告では物価の基調判断を前月に続き上方修正し、約5年ぶりに「デフレ」の表現を削除」だそうなのですが、「物価の伸びが再びマイナスに戻らないか見極める必要があるのでデフレを脱却判断は先送り」だそうな。
デフレの表現を削除したということは日銀の利上げに関して政府も同じ認識ということになるので、利上げコケたら日銀は勿論ですが政府も責任ありですわなあ・・・でも内閣は9月までか(苦笑)、ということになるような気が思いっ切り致しますわな。
そして、後半にある「デフレ脱却判断は先送り」だそうですが、判断先送りなのならば何で金融政策決定会合で議決延長請求をしないんでしょうか内閣府様は。行動が伴わないでヘッジクローズのように「デフレ脱却判断は先送り」などというのは如何なものかと思うんですけどねえ。何だかワケワカラン話ではございます。
○小ネタその2:株価下落は地政学リスクが影響ですかそうですか
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20060719AT2C1903G19072006.html
記事のお題は『日銀総裁、株式市場の値動き「地政学リスク影響」』でして、今週になって株が下がったのは地政学リスクが影響との見立てのようでございます。
いやまあそれならそれでも良いのですが、米軍がイラク攻撃をした時に臨時政策委員会を招集して当座預金残高を増やしたお方の同じ口から出る言葉とは思えませんな。中東情勢の激化は先週の決定会合前から顕在化(イスラエル軍のベイルート国際空港空爆は13日)してたと思いますが利上げですかそうですか。
なんちゅうかね、一つ一つの理屈はそれはそれで判るんですけれども、過去からの経緯を並べて見るとその時々で持ち出してくる理屈が違うのが福井総裁クオリティなのは今に始まった事じゃないんですが、それで良いのか金融政策って思うあたくしはケツが青いですかそうですか。
○そういやまだ読んでませんがこんなのが
面白そうだが量があるので。この手のものは紙に出しただけだと場所も取るし紙ももったいないので、刊行物を買った方が良いんでしょうね。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp06j14.htm
量的緩和政策の効果:実証研究のサーベイ
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp06j16.htm
価格弾力性の異質性を考慮したフィリップス曲線の推計
どちらも本文は上記URLの画面にPDFへのリンクがございます。
2006/07/19
お題「のっけからコールレート0.3%ですかそうですか」
モーサテで「日経平均が2000年と同じ動き」の後付け理屈キター(゜∀゜)って感じですが、ゼロ金利をとっとと解除汁!というキャンペーンを打っておいて解除直後にいきなりそう来るかあって感じですな。
さて本日ですが、金融政策決定会合関連のネタが積み残しなのですが、市場金利があたくしが思ったより上昇気味でそっちから。
○コールレートなど全般強いですな
昨日の無担保コール翌日物金利は0.302%になりました。朝からコールのビットが0.3%→0.35%→・・・などと上昇しまして、準備預金の積みというよりは資金繰りのニーズの方が高い(=準備預金対象資産が邦銀対比少ないから)外銀のビットアップが目立ったようで。日銀も朝9時20分の共通担保即日本店オペ4000億円の後に昼0時50分にもう一発共通担保オペ6000億円を打ち込んだのですが、何かコールで0.45%を取る限界的なお方もいたようで、いやはやコールレート高いですなあという感じ。
本石町日記さんの所では「外銀プレミアムの顕在化」という指摘がありましたが、あたくしと致しましてはそれよりも「資金が引き続き上手く回っていない」「自行準備預金の意図的な積み操作がまだ慣れてない」という方面に目が行ってしまうのですが、まあその線で少々。
世間的(ただし局地的な世間)に言われているのが「今回の積み前半は足元金利が高くて、積み後半は足元金利が下がるでしょう」ってお話でして、昨日のコールレート上昇を受けてGCレポ金利や現先利回りも22日〜24日の翌日物で0.35%以上(0.35%〜0.38%あたり)になっていたようです。このままだと少なくとも月末を抜けるまではこんな感じとも。
でも別に準備預金の積み進捗はちゃんと進んでいる(大体からして1兆円即日供給してますし)状況でして、どうも準備預金の積み上げをコンサバ目に行っている銀行がいるのではないかと思われる訳ですな。勿論ここぞとばかりに資金放出している人もいると思うんですが、どうも相変わらずの「資金抱え込み現象」は全体としては中々解消してないようで。
正直、こんな金利の日に積みの進捗をせっせと進める(コールじゃなくて即日オペで資金を取ったとしても0.29%以上の金利になってます。そりゃまあコール0.27〜0.25%でも取れるのでしょうけれども)のはワケワカランというか損な気がするんですけれども、それでも積みをせっせと進める人もいるようで、まあ意図的に積みを前倒ししてみたり後ずれさせてみたりして準備預金のコストを下げるという所まで体制が出来てないのかもしれませんな。困ったもんですが、まあ初日だから仕方ないのか。
でまあご案内のように昨日もまた邦銀レートと外銀レートが違うようでした(つーかそんなに邦銀取ってるのか?)が、これは資金の出しての方が無担保コール放出体制の中で外銀への放出枠が少ないという要因がでかい(ジャパンプレミアムの時に散々食らったので金なんぞ出してやるもんかという気持ちは理解出来ないでもないですが^^)ということで、まあ相変わらず資金が上手く回らない状況が思いの外継続しているようですにゃ。
そんな訳で、GCレポやら現先の金利が足元の誘導目標からかなり上ブレ(って言ったってコールが高いんだから仕方ないけど)しちゃったので、日本相互証券様謹製のTB/FB引値は9月償還ものまで軒並み0.35%、10月償還ものが軒並み0.36%となったようでして、お約束のイールドカーブベアフラット状態になりました(ちなみに6か月が0.39%)。まあこれもGC上ればこんな感じですわな。
カーブがベタベタに寝てしまうと正直言って工夫の余地が無くなるので、商売としては「差がつけにくい」世の中になってしまいまして誠に遺憾なのですが、そんな中で本日は3か月FBの入札。10月23日償還ですが、どう考えても「10月決定会合超えプレミアム」が発生する訳は無いので、WIは0.4%とかになってますけど既発債並みのレートで落ち着くんジャマイカと思われます。そうすると現先レート対比でかなりカツカツのレベルになるので現先レート見合いで買う人は中々厳しいのかなあという感じですな。
ま、コールがいつまで経っても0.3%では何やってんだって話になりますんで、そのうちもうちょっと落ち着くと思いますし、もしかして前半0.3%で後半0.2%などというようなアフォな事になれば何ぼなんでも意図的な積み操作をする人も出てきて裁定されるとは思うんですが・・・・・
○総裁記者会見でとりあえずツッコミたい所
いやまあ総裁記者会見も色々と論点があるような感じですけど、書く方が追いつかないです。やっぱ休み中に少し書けばよかったですよorz
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0607b.pdf
PDFで20ページ、会見時間が約80分。色々読むべき点はあるのですが、まあぼちぼちと参りますとしまして、本日は読んでて真っ先に気になった点について軽く悪態を。
・市場からのメッセージを取捨選択してませんかあ?
PDFの3ページ目、ゼロ金利解除の日本経済への影響に関する質問に対する福井総裁の説明部分から。
『そういう状況(引用者追記:日銀の経済物価情勢メインシナリオに沿った動きが続くという認識)がイールドカーブに示されるように、市場参加者や企業などの民間経済主体がある程度先行きの政策変更を織り込んだ上で、意思決定を行ってきているということを前提としているわけです。現時点では、そういう姿に市場の認識が揃い、私どもの判断と市場の認識との間に、ほとんど隙間なく一致を見ているという状況であります。従って、今のこの時点では、この程度の政策金利の変更を行うことが、むしろ息の長い成長に繋がっていくと判断しました。』
はあそうなんですか地均ししてませんでしたっけ〜まあいっか。
で、その次の質問で株価が下がってますが?ってのがあってそれに対する答えは4ページ目から5ページ目にかけて。
『株式市場の変動というのは、当然、実体経済の先行きとの関係でそれがどういうインプリケーションを含んでいるかということを十分抽出して判断しなければ、政策判断として一部が欠落することになります。そこのところは私どもは十分意識しており、特に5月中旬以降の世界的な株価の下落あるいは調整については、その性格や実体経済に及ぼす影響を非常に慎重にウォッチしてきました。つい最近までの世界的な株価の下落は、私どもの判断では、結局のところ各国の中央銀行が経済・物価情勢に合わせて金融緩和度合いの修正を慎重に進める中で、市場参加者のリスク評価についての見直しが進み、その結果として株価の調整が生じた面が強かったと思っています。世界経済のファンダメンタルズの先行きの悪さを、株式市場の動きがウォーニングを発しているという感じではないと、取りあえず判断しました。』
日銀と同じ認識の市場動向は良い市場インプリケーション、認識と違う市場はインプリケーションを与えていませんですかそうですか。
ちなみに、ウォーニングを発していない根拠は上記の続きにあるのですが・・・・・『その証拠に、かなりの株価下落だったと思いますが、エマージング諸国の経済を含め世界経済は、先程申し上げた通り、むしろ地域的な広がりを見せながら着実に拡大しています。』だそうでございます。はあそうなんですか。
・・・・何だかなあって思うのでありました。以下続編は明日。
2006/07/18
お題「さて色々と話がございますが」
色々とあるのだから連休中に少しは書いておけば良いのですが、いざ休みになると書かないのがドラめもんクオリティなのであります。休み中にも見に来る人がいるというのにスイマセンスイマセン。
○景気判断を益々強気にしている7月月報
金融政策変更のディレクティブの前にマニアっぽく月報ネタ。→http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0607.htm
例によって6月分と比較するのですが、株価下落にもめげずに5月と一言一句変らない月報をだした6月にも瞠目しましたが、今月は利上げしたから判断前進してるのは理屈としては判るんですが、いやあのこのタイミングで判断思いっきり強気化って・・・・うーむ・・・・・。
6月分(http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0606.htm)と比較しながら毎度の如く。
・基調判断を「拡大」に変更
『わが国の景気は、緩やかに拡大している。』(7月)
『わが国の景気は、着実に回復を続けている。』(6月)
この「着実に」と「緩やかに」のニュアンスの差という議論もあるのですけれども、「回復」と「拡大」の方を注目したいというのがあたくしの見立て。何故かと申しますと、今回もそうですけど、ここもとの金利引上げのロジックが「金利の調整」という言い方でして、「景気が拡大しているからそれに併せて調整」という方が回復状態という現状認識よりも話として通しやすいですから。
・微妙な順序替え
景気の現状判断部分も強くなっております。
『公共投資は減少傾向にあるが、輸出は増加を続けている。』(7月)
『輸出や生産は増加を続けている。(途中色々あって最後に)この間、公共投資は減少傾向にある。』(6月)
今まで最後に「この間、公共投資は・・・」って書いてたのがいきなり前に来まして、何とも妙な繋がり方になっているのが今月の月報。文書として何だか妙なのですが、「(悪い材料)だが、(良い材料)です」という書き方にしたのは、悪い材料の影響は少ないですよって言いたいからなんでしょうね。公共投資と輸出を並べて書くのは物凄く妙な書き方ですが、ここしか文章上入れようがなかったんでしょう。で、「生産」はどこに行ったのかと申しますとそれは後述。
・短観の結果挿入
まあこれは短観発表後のお約束ですので、6月分には無い所。
『企業収益が高水準を続け、業況感も良好な水準で推移する中、設備投資は引き続き増加している。』(7月)
『企業収益が高水準で推移するもとで、設備投資は引き続き増加している。』(6月)
・需給ギャップは需要超過へ判断前進
7月月報の現状判断部分に需給ギャップのお話が入りました。当該部分は6月までは先行き見通し部分で記述されていた部分でして、この認識ですと日銀としては需給ギャップは絶賛解消し、もう需要超過で内外需要が増加してますよ。デフレ?何ですかそれは?ってなもんでしょう。
『このように、内外需要の増加が続く中で、生産も増加を続けている。』(7月)
さっき順序替えがどうのこうのという話をした時にどこかに行った生産はこちらにございました。「内外需要の増加」という話を生産にくっつけたかった訳ですな。そしてその次の部分にはこんな記述が。
『マクロ的な需給ギャップは、長く続いた供給超過状態が解消し、現在は需要超過状態に入ってきているとみられる。』(7月)
現状判断が需要超過ですよ先生!で、ちなみに6月はどうなっていたかと言うと、先行き判断部分にこの話がありまして、現状はゼロですよって感じでした。
『マクロ的な需給ギャップは、長く続いた供給超過状態が解消し、現在はゼロ近傍にあるとみられる。』(6月)
ということで、このタイミングで需要超過に判断前進なのでした。
・先行き見通し、物価等は変更なし
で、その先ですが、景気の先行きやら物価に関する部分は変更無しになっております。先行きに関しては引き続き『先行きについても、景気は緩やかな拡大を続けるとみられる。』となってますが、この「緩やかな」という文言を入れる事によって将来的な追加利上げに関して「別に急いでは実施しませんよ」ってニュアンスを包含しているんだと思います。
今回に関しては現状判断の強気っぷりが目に付きますが、まあ利上げした瞬間なので現状判断が強気になってないと話が合わないという事でしょう。
○金利変更即時実施ですかそうですか
14日の「利上げ即時実施」には少々驚きました。翌営業日で良いじゃんとか思ったのですが(今書きながらふと気が付いたのですが、思い切って「補完貸付の金利は16日の利息計算部分から実施」というのはどうだったかしらって多分そんなことしたら事務的に無理ですかそうですか^^)、まあ14日に関してはその時間までに即日スタートのオーバーナイト物(14日〜18日)資金供給をご丁寧にも国債買現先と共通担保オペの2本立てで各8000億の計1兆6000億円ぶち込んでおりましたし、そもそも「翌日実施でしょ」と思ってた人も多かったので、当日のコールはまあ概ね終了の巻となってましたわな。よって利上げは無関係状態でした。
でも、これをやっちゃうと次回の金融政策変更(があるかも知れないと皆が思っている)時に当日のコール出し渋り現象が絶賛大発生して話がややこしくなるんじゃないかなあという懸念も少々どころかかなりございますわな。
・・・などと思っていたのですが、夕刻に公表された資金需給状況を見てロンバートが3兆2000億円も出ていた事を知り、「ああなるほど」と納得してしまいました。朝からそんなにロンバートが出ていたのならば致し方なしですわな。しかしロンバート借りるなら当日の即日オペでも良かった(ちなみにオペの落札金利はどっちも0.1%割れ)のでは無いかと思うんですが、どうもこうインターバンクの中の人たちの行動はワケワカラン。
ちなみに、コールは0.08−0.09で出合ってたと思うんですが、無担保コールのうち短資会社仲介分は0.02%+消費税(なので0.021%)の短資会社手数料が両方から徴収されますので、0.08%で無担保コール取っても直接取引じゃ無い場合のコストは0.1%を超えてしまうので、担保繰りに何の問題も無い昨今の状態ではまあ使われませんわなという感じでこれはこれで仕方ないという所でしょう。
しかし微苦笑したのは最後の即日売出手形オペ結果。ロンバートは出るわ、供給オペは打つわで資金が出まくったので引いたんでしょうが、1兆2000億円のオファーに対して応札が1兆6090億円あって落札が何故か9870億円。よく見たら最高落札利回りが0.4%でして、0.4%超の札が切られておりました。久々に見たぜ応札カット攻撃(^^)。
まあこのオファー見たときに直感的に「金が余っててギャグで入れるなら0.4%」と思った訳ですが、この0.4%というのは公定歩合(という言葉はお蔵入りですのでこれからは「ロンバート金利」ですな)でして、これより上に札を入れると落札分をロンバートでカバーすれば利益確定になってしまいますから札切るのは当たり前といえば当たり前。
つーか0.4%超で応札するのは、資金供給オペでマイナス金利を応札(というのは物理的に不可能です、為念)するくらい喧嘩売ってると思うんですけど、6000億円ほどそのようなオトボケあるいは喧嘩売り札が有ったということですな。というか多分喧嘩売ってる意識はあんまり無いかとは思いますが(苦笑)。
○ロンバート0.4%でしたね
総裁記者会見のテキストが出てからその辺の話をまたしますが、この0.4%に関しては「座りが悪い」とか「コール誘導目標から0.15%は異例に狭い」というようなお話をしていたようですな(ブルームバーグニュースより)。その割には本石町日記さんの所によりますと「ロンバートだけ単独引上げ」を否定していたそうで、それは別に否定する必要はなかったのではないかと思うんですが。
まあ今回3兆2000億円もロンバートが出てましたが、次回に0.25%利上げする時(がいつになるのか前途遼遠だと思うのですが)にまたまた駆け込みロンバートが発生することを勘案しますと、短期市場の金利コントロールがきちんと機能する事が確認できた時点で、しらっとロンバートの幅を拡大する事も有りだと思ってますんで、わざわざその道を否定するのはどうだったんでしょうかねえと思います。
まあ一応「ロンバート0.4%」が好感されたような感じになっていましたが、実際問題としてロンバートが0.4でも0.5でもGCレポや現先レートにそんなに直接的な影響は無さそうなので、あとは心理的な問題という所かと思います。木曜のオペやら金曜のGCなんぞを見てますと、まあ本日のコール市場が落ち着けば、以前どこぞで吹聴されていた「GCレートが0.4%でもしかしたらロンバート金利(当時だと0.5%の認識)まで跳ねることもあるかも」などというような状態にはならんという感じではございます。こればかりは蓋を開けてみないと判らんですが。
話は逸れますが、前回の量的緩和解除の前にも「解除後のコールが0.05%〜0.1%になるリスクも」とか吹聴している人がいた訳ですが、現実には当座預金が思いっきり引かれた2か月後になってやっと上昇したわけで、最初のは勘違いなのかもしれませんが、同じネタが吹聴されるのは勘違いじゃなくてポジショントークの香りがプンプンですな(笑)。
○まあ今後は経済情勢次第でしょうな
結局は物価指数と株価次第ではないかと思います。だと話がそこで終了しちゃいますけど、ディレクティブに関して言えば先行きの金融政策に関して「経済・物価情勢を丹念に点検しながら」と書いていますが、もう一つ注目されていたダウンサイドリスクに関する言及は特に見当たらずですし、同日公表された金融経済月報は相変わらず進軍ラッパが鳴りまくりんぐでございます。市場は「ロンバート0.4%」にやたらと反応していたような気もしましたが、ロンバートの衣の下に何気に鎧も見える感じが少々致しますな。「もう年内利上げ無し」って話もでまくってますが、平均株価が戻ってきたら意外に早く利上げの虫が騒ぎ出すのではないかという点はリスクシナリオとして見て置いた方が良さそうな感じ。
#まあ本日はそんなところで。
2006/07/14
お題「GCレポ、現先金利のコントロール」
今日も今日とて思いっきりテクニカルなお話ですが。
○大変に素晴らしい国債買現先オペ
昨日午前の金融調節では国債買現先オペを実質8000億円実施したのですが、この期間が実にきめ細かい打ち方でして、オファー時点から「これは凄い」との声が(^^)。
8000億円の現先を14日→18日、18日→27日という2本立てで打ったのですが、14→18というのは今日から翌営業日でして、ロンバート大量利用の懸念ありの本日の翌日物にぶつけてきた格好、そして18→27は前日の共通担保オペの期間と同一で、勿論資金需給予想を反映して足を27日に設定してるんでしょうが、前日のオペとまるっきり同期間という事で、何となく金利下がらんかねえと応札するほうが思う(前日のオペで資金需要に対応してるから)期間。
ま、そんな事もありまして、14→18のオペは平均0.102%で最低0.095%となりまして(ということは0.1%以上の札もあったということですが、一昨日のGCレートから勘案すると低下してるからエエンジャネエノ)まあそこそこ落ち着きモード。18→27のオペ金利は平均0.334%で最低0.303%となりまして、前日の共通担保オペ金利の平均0.389%最低0.360%から大きく低下となりました。
で、まあこの低下を受けまして昨日のGCレポ取引(19日スタートの翌日物取引)は0.30%近辺まで低下して、前日比5BP位は低下した感じで、混乱モードから平静モードへ移行しつつあるといった感がございます。実は共通担保オペ金利は相変わらず高い(と言っても昨日のは期間が長いのでまあ単純比較しにくいですが)状態なんですが、GCレポや現先取引をする時に参考にするオペ金利が共通担保オペ金利から現先オペ金利に移ってきたようで、昨日のオペはGCレポや現先市場を落ち着かせる(って本当に落ち着いたかどうかはまだ判らんですが)効果が高かったと思われますです。はい。
何はともあれ昨日の現先オペの期間設定方法に拍手。午前中にT+1スタートとT+2スタートを2本立て(というか連続方式ですが)で打ったのは中々よく考えられた方法かと思います。
○レポ金利の跳ね上がりも抑えられるのでは・・・・
ということで、昨日の朝に駄文を書いているときは共通担保オペの金利上昇(というか高止まり、火曜のオペ金利も高かったし)→GCレポいきなり0.35%かよ!ってことで「利上げ(まだ決定してないですが)後のレポ市場大丈夫かよ」と思ったのですが、昨日のオペ結果とその後のレポ金利の低下を見ますと「金融調節で落ち着かせることできるじゃん」ってことで、これならまあロンバート0.5%でも心配ないぜって感じでしょうかね。
まあそもそもの話として、誘導目標金利0.25%に対してGCや現先が0.4%近辺で張り付いてしまったら、その時点で金融調節が上手く行ってないという話になりますんで、そういう意味ではロンバート0.4%でも0.5%でも実を言えば同じだったりするという指摘も現場的にはございまして(まあ期末期初だけですか)、あとはまあ心理的な問題に過ぎないという気もします。と、昨日の市場を見てかなり安心したあたくしなのでありました(^^)。
ま、ど〜せ同じなので最初0.4%にしておいて、市場が落ち着いているのでコリドーを広げてみるよってのも別に日和見だとは思わないですけどね。その点では本石町日記さんおよび本石町日記のコメント欄の大勢意見と違ってマル公0.5%にそこまで拘る気分にはならないです。現在の誘導ゼロ近傍+ロンバート0.1%は、上限0.1%(抜けることもありますが)で下限が名目ゼロ金利(だから実は純粋なゼロ金利政策とは言い難い)ですけど、誘導目標が0.25%になった時には下限制約が外れるのでスプレッドが0.1%のままだとしても実質レンジは拡大(まあロンバート0.35%は無いでしょうが)なんですよね。
#たぶんマル公は0.5%になるんでしょうけど。
○しかし共通担保オペの金利高いですな
昨日の共通担保オペですが、本店方式での実行で7月18日〜9月5日の期間。相変わらずレートが意味不明の高さで平均が0.406%の最低が0.381%となっています。いやまあ期間が長いからその分プレミアムが乗っても良いんですけど、それにしても期間中の現先利回りとかを予想するにその金利はちと高くないでしょうかって感じなのですが。
昨日の短期国債市場は全般的に確り(ロンバートの金利が0.4%になるんじゃないかという憶測が流れて買いが入ったというのもあったようですけれども)でして、前日に入札が行われた3か月FBが0.38%近辺まで金利低下してたんですが、共通担保オペだけ何か別世界になっているのは何か違和感ありまくり。他市場の動きや現先オペの金利(共通担保オペは午後に実施されたので、午前のオペ結果は判明している)とかの動きと整合性が取れてないのは何なんでしょ。
ま、共通担保オペを入れる人が何か全然別の論理で動いているとしか思えませんけど、何考えてるんだかって感じです。
○という訳でとうとう利上げですかそうですか
まあここまで来ちゃいますと利上げ確定でしょうし、まあ予想屋(ではないが)としては量的緩和解除の時から「7月利上げの可能性思いっきり大有りでしょう」と言ってた予想大当たりですんでこれはこれはって感じですけど・・・・そんなに急いで利上げする(まだしてないけど^^)必要があったのかはあたくしには謎です。
量的緩和解除をした当初は金利が逆に下がりましたが、5月の連休明けから(6月解除観測が急浮上したせいでもありますが)ターム物金利とかが上昇しだしてますんで、その観点からすると5月以降は市場金利上昇という形でそれなりに金利の引上げ効果が出て来てる筈だと思います。(追記:そう考えますと、株価が5月連休明けから下落しているのと、ターム物金利の上昇が期を一にしているわけですよ。現象面であって因果関係があるのかどうかは兎も角として)で、その影響を見極めつつアクションするならもうちょっと様子見ても良かったのかなあとも思いますけど・・・・
ま、ここまで短期市場金利が利上げを織り込んでしまうと、利上げして材料出尽くしにしちゃった方が却って市場金利が落ち着くんですけど、問題は「ちゃんと材料出尽くしにしてくれるかどうか」でございますわな。その点に関して物凄く懐疑的なあたくしであります。要するにちょっと株価が上ったり、政府のデフレ脱却宣言が出たりしたら、またまた利上げの虫が動き出すのではないかという懸念でございますな。頼むから今度こそちゃんと「利上げの効果を確認」してからにしてくださいね(はあと)。
とりあえず日銀の景気見立ての通りに経済情勢が向ってくれる事を祈ります。
2006/07/13
お題「決定会合ですが色々と雑談を」
6時のNHKニュースの2本目がゼロ金利解除でしたが、無担保コールの誘導目標について「短期市場金利」という表現で、説明は「日本銀行が誘導目標にする短期市場金利を0.25%に引き上げる見通しです」って言い方をしてましたな。なるほど。
○0.125%引上げとか有り得ねえんですが
一昨日の引け後からユーロ円金利先物が急に上昇したんですが、この時聞いて回ったら「ゼロ金利解除後の目標金利が0.125%とかになる」って観測が突如流れたとのこと。あまりにも馬鹿馬鹿しいので放置してたら昨日の債券市場でもその話題で短いゾーンがしっかりしたとの後講釈(実際は何考えて買いが入ったのか判らんですけど)。
いやあのですな、0.125%への引上げなどという中途半端なことしかやらないのであれば引き上げない方がマシですし、そもそも0.125%だったら量的緩和解除と同時にそこまで利上げしてたと思う(以前そんな事を書いてた記憶がある)。
大体からしてGCレポレートがゼロ金利政策前提でも0.1%近くにある状態ですから、0.125%の引上げだとただの現状追認とあまり変化ない次第ですわな。となりますと、「ただの現状追認をしているのに利上げのアナウンスをした」ということで、利上げをすることによる政策効果が得られないのにアナウンスだけするという無駄玉撃ち行動という事ですから、まあ常識的に考えてそりゃねえでしょ。
で、まあこの後で書きますが、マネーマーケット方面ではそんな観測は完全無視で「無担保コール0.25%、ロンバート0.5%、GCレポレート0.35%」で動いている、というか昨日もまたまた金利が上昇していまして、金利が下がったのは6か月以降のゾーンでございますので、先行きの利上げペースがどうのこうのということに関する思惑なら兎も角、少なくともマネーマーケットで0.125%説は全く相手にされていない事がお判りになるかと思います。
なお、ユーロ円金利先物市場ですが、あれはカテゴリーは短期市場ですが、現状はマネーマーケットのヘッジとして機能してませんので短期市場とは言い難いものがございます。ユーロ円金先が動いてるから短期市場がこう考えているのは昨日のような場合は思いっきりピンボケ論議になります(勿論いつも短期と無関係に動くわけではないですけど)のでご注意ありたし。まあGCレポだの現先レートだのCPレートだのって言われても今幾らですかってのはベンダーとかで公開されてる訳じゃないから知らんがな〜ってのはあるんでつい金先を見たくなるのも判りますけどね。
○オペ金利高けえぇぇぇよ→GCレートも強い
昨日の資金供給オペですが、ついに18日スタートのオペが実施となりました。18日〜27日というショートタームのオペだったのですが、多分ゼロ金利解除されて新金利が始まるであろう初日からの金利の見立てが露骨に判る期間で8000億円のオファー。
結果は平均0.389%ってちょっと待てそれは何ですか状態のレートになっております。ここもとのオペ金利がやたらめったら上昇してるんで、まあそんな勢いなのかとも思いますが、この期間のGCや現先レートが平均で0.39%に達するとか真面目に考えないとそのレートは取れないと思うのですが、何の金利を見てもそんなレートで回っている物はございませんがな。どう見ても逆鞘です。本当にありがとうございました。
そんなこともございましたので、午後遅めの時間に行われた18日スタートの翌日物GCレポ金利も堂々0.35%近傍での取引となりました。14−18日のGCレポ金利が前日の最終で0.10%まで下がったのはありゃ一体全体何だったんでしょうなあ。
多分次回の積み前半は超過準備がある状態からスタートだから本来だとそんなに金利が上らない筈なんですけどって思うのですが、皆さんがこぞって足元で資金を抱え込むと金利は高止まりするわ準備預金の進捗は進むわという非常に香ばしい事態が発生する(積み後半の調節が苦労するという意味です)かも知れませんな。金融調節担当の人も大変ですなあ。
しかし0.35%でもちと高いが、まあ最初だから仕方ない面もあるのかなあとは思いますが、0.4%はあなたそれはマジっすか状態でございますな。
毎度申し上げますが、GCだの現先だのの利回りはターム物金利でありますところのFBだのCPだのの金利にまともに反映されるものでして、この辺の金利が上ると企業の調達コストにも跳ねるお話。つーことは、0.25%の利上げをしているように見えて実はもっと利上げ効果があるんですよウェーハッハッハという話になるかもしれませんなあという論点は正直マニアな話なので(あちこちでその話してる人いるんですが)、あまり話題になって暮れませんな。
#まあそもそも論で言えばFBの発行が市場の処理能力を超えているからこんなにGCのレートが上るのでして、日銀頑張って供給しなさいとツッコミ入れるだけでは話が発展しませんけど。
昨日のFBは0.40%にはさすがに絶対水準バイヤーが登場してたように見受けれられます(最後の最後には0.395%テイクン)ので、昨日の市場を見るとコールが0.25%でGCや現先金利が0.35%あるいはそれよりも高くて3か月FBが0.40%という訳の判らん価格形成になっておりますわな。まあどこかが変なんでしょうけど。
○ふと思ったのだが・・・・下限制約を勘違いしてないか?
とまあそんな感じでやたらめったら盛り上がるレポというよりはオペの金利なのですが、色々と妄想しているうちにふと思ったのは、今度実施されるであろう0.25%への誘導金利引上げの「0.25%」をゼロ金利の「0%」と一緒くたにして考えてないかってお話。
「ゼロ近傍」が誘導目標の時は、名目ゼロ金利には物理的に下限制約がある(日銀当座預金金利はゼロ、各種オペレーションの金利はゼロおよびマイナスにならない)ので、「誘導目標ゼロ近傍」と言いましても、実際問題としては「下限がゼロで上限を抑える」という形になるわけで(為替スワップの関係でマイナス金利がどうのこうのという話はとりあえず措く)して、この場合のゼロは目標といいつつ下限金利でもあったわけですわな。
ところが、誘導目標が0.25%になった時には物理的な下限制約は無い(日銀当座預金への付利が行われればその金利がスタンディングファシリティになりえますが、現状では日銀当座預金金利はゼロ)ので、「平均して0.25%近辺になるように」(どういう表現になるのか知りませんが、まあそんな感じになるんでしょ)誘導した場合には加重平均金利が0.25%を下回る日だってある筈ですわな。何かそのあたりに妙な勘違いがあるんじゃないかって気がしてくるこのオペ金利の上昇でございます。
ええ勿論上記の話はあたくしの脳内妄想の世界でして、まさか皆様そんな勘違いしてないと思うんですが・・・・・どうもこのレートは。
○いやあしかし7月にゼロ金利解除ですか
4月に量的緩和解除のコンセンサスが出来上がっていたのに強引に地均しして3月解除を行った時にあたくし「3月に解除すると7月の利上げに間に合いますなあ」などと申し上げてましたが、日銀様のシナリオ通りに7月に利上げでございますかそうですか。
そういえばその前には「量的緩和解除してゼロ金利を長期間継続するのであれば別に量的緩和解除する意味が無くて、『量的緩和解除したという結果だけが残る』ので日銀にリスクだけあって意味無いんじゃないの」などとも申し上げてましたが、結局量的緩和解除してから当座預金残高を引いた時点でさっくりと金利引上げでございますなあ。
・・・・などと珍しく当たったので自慢するあたくしですが、まあ当たったと申しましても、そんな威張るようなもんでもなくて、同じような指摘をしている人は結構いたと思うんですが、あの「物価安定に関する理解」でゼロ金利が長期化するとかいうのは大いなる勘違いでしたなあという所でございますな。
で、今回ですけど、誘導目標は0.25%ですが、ロンバートは市場コンセンサスはたぶん0.5%(少なくとも短期では)だと思うのですが、現状でオペ金利がこんな有様で0.5%になった時には日銀の短期金利のコントロールがきちんと効くのかどうかは色々言われそうな感じではありますな。まあ最終的には収斂するんでしょうけれども、その「最終的には」に2週間も3週間も掛かっているとあちこちから文句が出てくるのではないかと思料される訳でして、今回は0.4%でも良いんじゃないのっては思いますが。落ち着いてきたらorその次の利上げ時に引き上げればよろしアルね。
「市場機能回復の為には一時的な金利上振れも容認すべき」という見解も判らんでもないのですが、その「一時的」が経済に悪影響を与えるような幅や期間になるようであれば、やはりそれはイカンと思う次第でして、まあそこまで来ると皆さんの感覚の世界になるので議論しにくい所ではありますが、市場機能回復に熱心になる余り、金利引上げ効果が過剰になる事を忘れてはいかんと思うのでございます。いやまあそんなに長期間に渡ってショートターム物の金利が高止まりしないとは思うんですが、日銀的には0.25%でもまだまだぶっちぎりで低水準と思っていそうな気がするのがちと気掛かり。
#うだうだ書いてたら長くなってしまいましたな。
2006/07/12
お題「短期市場雑感」
あまりにも派手派手に動くので他市場をフォローする暇なし。
○どう見ても過剰反応です
昨日実施された資金供給オペはまたまた金利上昇。8月30日エンドの本店オペ(共通担保資金供給です。以下面倒なので本店オペとか全店オペとしか書かないっす)の平均落札利回りが0.374%となり、前日の全店オペの0.357%からなお上昇。昨日のオペは前日のと比較してスタートが1日遅いですが、一般的に全店オペの方が本店オペよりも金利が高めになる(応札できる人が多いから)という傾向を勘案するとやっぱ「金利上ったなあ」という感じ。
えー、このレートですが、こりゃ計算するまでもなく今後の足元のGCや現先利回りが平均して0.35%とかいう数字になってしまう(追記:正確には0.4%です。計算するの面倒だったので手抜きな書き方しちゃいましたが、GC現先が0.35%ベタでも高いのに、0.4%はどう見ても高杉新作です。本当にありがとうございました。)訳ですな。まあ毎日足元でファンディングしてロールオーバーする場合のリスクプレミアムが乗っていると言う事でもあるんで、必ずしも期間中の予想GC/現先レートが平均0.35%を上回るって訳ではないとは思う(というか思いたい)のですけれども・・・・・
んじゃ一方で他の金利はどうなのよと言いますと、業者間取引で8月14日エンドのFB388回が0.29%(手元のメモが自分の字だというのに解読不能なんですが、確かそんな感じかと。違ってたらゴメン)とかで出合っていたようでして、まあ足は違うけどFB利回りVSオペ金利で比較すると、オペの金利は大幅に高いという感じ(ちなみに、昨日の本店オペ7月24日エンドの平均落札利回りが0.294%)ですわな。そして昨日はこんな時期でもまあCPの発行もあったようでして、最上位格付けの1か月ものCPが0.34%近辺だったらしいのですが、これまたオペの金利の方がど〜考えても高いです。
勿論オペと短国セカンダリーやらCPでは捌けるロットが全然違うので、こういう訳の判らん時期には単純比較だけでは測れないものがある(流動性確保という観点がある)のですけれども、それにしてもまあこりゃ随分金利が上りましたなあという感じです。
正直、リスクプレミアム織り込みすぎなんじゃねえかと思うのですけど、あちこちヒアリングしてみると意外に「日銀はGCや現先の金利が瞬間的に跳ね上がっても別に気にしない。平均的に高いと気にするけど」って意見の人が多いようで。瞬間的というのが期末期初だけなら兎も角、やれ国債発行だやれ財政揚げ超だと一々理由をつけて現先やGCレートが跳ねるようなマーケットになるとそれこそ「リスクプレミアム」が付いて恒常的に金利が高止まりするんじゃネーノって気がするのは気のせいですかねえ。
ま、ロンバートが幾らになるかも判らんので何事も蓋を開けて見ないと判らないですが、「ベースレート0.25%の引上げと言ってたのに、実質的に0.35%の引上げになっているのは如何なものか」とか言われない程度には運営すると思ってるあたくしは市場機能の回復を理解してませんですかそうですか。
○14−18のGCレポ取引メモ
いやはやよく動きましたようで。
当初は何となく0.15%−0.25%の気配って感じだったようですけれども、誰かが0.25%で少額の出合いをつけた所からスタートとなったようです。
しかしまあ0.25%って18日スタートならともかく、ロンバート0.1%で借りれるんだからそりゃ高杉晋作でしょうという感じで、その後は0.20→0.18→・・・と物凄い勢いで金利が下がって、最終は0.10%というロンバート水準での出合いもあったやに聞いております。いやあの0.25%は高すぎだと思うが、別に0.1%のGCを買う(=資金放出する)のなら準備預金積んでおけば良いのにとか思っちゃう(準備預金非対象なら仕方ないけど)レベルで、それまた面妖なというお話ではございますが、とにかく訳の判らん動きではございました。
いやまあその前に年寄りじゃなかったベテランな知人たちと「で、どうなんよ」って話はしてたのですが上と下の金利が何か想定をぶち抜けていまして、「何なんですかこれは」と呆れてしまいました次第。まあ余りにも笑えてしまったのでメモメモということで。
しかしまあ「14日は資金を抱え込む向きが多い事が想定されるので資金が出にくい」って観測がメジャーだったというのにこの有様は何と申しますか実に香ばしいですな。
○ところでFB入札ですが
昨日のオペ金利上昇に伴い、本日入札が行われるFB398回(償還日10月16日)のWI取引はとうとう0.40%オファー。既発の10月償還ものはそこまで行ってないようですが、どうも既発10月償還物も業者の持ちっぽいですし、3か月で0.4%とはそりゃまた凄い金利ですねえとは思うのですが、需給が宜しくないので仕方なし。
今回の新発に関してはさすがに水準が0.4%ともなれば決定会合直前とは言っても水準から買いはあるでしょうとは思いますけど、これが毎度お馴染みの既発債からの入替ベースとかで買いにこられると既発が重くなりそうで中々しんどいでしょうな。まあ皆が懸念しているほどGCレートが跳ねなければ落ち着くとは思うんですが。
まあ一応7月ゼロ金利解除後に次回利上げを行う場合最速で10月13日の決定会合という可能性は無いわけで無い(無理でしょうけど)というのはあるけど、さすがにそこをリスクシナリオで見に行くのは時期尚早でございましょう。
・・・と書いて気が付いたが、10月16日償還だから「次の次」の政策変更は全く関係ないですな。わははのは。ま、ゼロ金利解除後の短期市場のリスクプレミアムと申しますか、市場の安定度合いをどの位で見ていくかという部分がFB利回りに反映してくるんじゃないのかなあと思ってます。
ではでは〜♪
2006/07/11
お題「市場は利上げ態勢」
本日午後からは14日スタートの翌日物(=14→18日)のGCレポ取引がスタートするのでまあそちらには注目したいところでございますな。という訳で本日もその手の話。
あ、それから昨日の訂正なんですが、10月の決定会合は13−14日じゃなくて12−13日でした。積み最終日の週末というのは正しくて、月曜から新積み期間に入るという形になっていますです。謹んでお詫びいたします。
○足元はちぐはぐな状態でタームは上昇
昨日の短期方面ではコールレートが午後からいきなり上昇(国債売現即日のレートが妙に高かったせいもあるでしょうが)する側からGCレポレートは先週後半からの流れを引き継いで低下して0.05%台(無担コールの加重平均金利は0.037%)。
何だかモノによって動きが逆だったりする訳でして、実際に何がどうなっているのかは相変わらず市場の片隅でクダを巻いているあたくしにはイマイチ判りかねるものがございますが、勝手に想像致しますと、これもまあ利上げ準備態勢の一環かなあと。と申しますのは、運用サイドは利上げ確定前になると運用を足元に持っていく傾向がある(長いのを出して利上げになった時に言い訳しにくいと言うことでしょ。本当はターム物金利が利上げを過剰に織り込んでるならタームに出すべきなんですけどねえ・・・)ので、リアルマネー系の足元運用として現先市場に金が入ってGCが影響されて金利低下。コールの上昇はよく判らんけど、最後のストレステストでもやってるのかなあ。ま、勝手な妄想なんですけれども、市場間で資金が回ってるんだか回ってないんだかよく判らん動きになってます。
一方でターム物金利は相変わらず上昇。
CPのレートは相変わらず上昇傾向(あまり発行が無かったようですが)で6か月TBとか1年ゾーンとかはゲロゲロの巻と、ターム物金利は相変わらず上昇してますし、全店の供給オペ8月29日エンド(これ何て略称で言えばいいんでしょ?)の金利は平均で0.357%となってまして、利上げ後のGCレポや現先の金利水準が思いっきり0.35%(もうちょっと高い)というのを織り込みに逝ってる(勿論7月利上げで)水準まで上昇しております。
いやあの足元の誘導水準0.25%に対してその金利は高くねえかと思うのですが、どうも資金出しサイドのポジショントークと不慣れな取り手の不安心理が上手にマッチしているようで、誠に遺憾なことでございますわな。だいたいからしてGCや現先レートは毎度申し上げているように、FB金利やらCP金利、中長期国債のファンディングコストなど「世の中」の金利体系に思いっきり影響を与えるものですので、日銀の誘導目標は確かに無担保コール翌日物金利ですけど、GCレポやら現先レートが跳ね上がるのを放置する訳ねえじゃんという想像は働かないのかおまいらと小一時間ですわな。
というか、そのあたりのオープン市場金利のうち足元の部分がコール誘導目標水準から大幅に上方乖離(何を持って大幅と言うのかは議論の余地がありますが、0.25%に対して0.35%〜0.4%が恒常的なのはあたしゃ大幅に上方に乖離と思うが)しっ放しだったら、金利政策の誘導目標は一体全体何なんですかという批判が起きるでしょ(まあそもそも大昔と違って今の無担保コール翌日物市場は限界的な市場になっているので、その金利が誘導目標というのもどうなのよって議論もありますが、ややこしくなるのでスルーしとく)って思うんですけどね。
ついこの前までは利上げ後のファンディングコストを0.25%前提にしてFBなんかのレートが値付けされてまして、「それもまた妙だろう」と思ってたのですが、今度は利上げ後のファンディングコストが0.35%になるんじゃないかって勢いになっているのは実に香ばしいと申しますか、極端から極端に振れる世の中ですなあという感じです。
ま、そういう市場じゃないと商売のネタが無いのでそれはそれで別に構わんのですけど(苦笑)。
○相変わらずの誤解なのか、それとも・・・・
例によってブルームバーグニュースのネタにちと絡んでみます。
と申しますのも、どうもここの短期市場解説記事は資金出し手に都合の良い話ばかりやたらと流布されてて、取材する相手に偏りがあるんじゃネーノって思う(ブルームバーグ社のポリシーとして、市場関係者のコメントは「所属を明らかにする」っていう仕切りになっているので証券会社の現場の人間からコメント取っても報道できない(社内仕切りとして正式にコメントするのはアナリストの場合が多い)というのもあるとは思うのですが)ので、ここはバランスとらナイトと思う訳でして(笑)。
昨日の10時43分配信の14日の翌日物金利に関する記事の中で、『必要以上のロンバートはモラルハザード?』って小見出しをみてぶっ飛んでしまいました。記事の該当部分を勝手に要約すると・・・
14日はロンバート貸出の金利が0.1%(金融政策決定会合で公定歩合の引上げが行われ、即時実施になればその後は変更後の金利になる)なので、14日にロンバート貸出を利用して当座預金残高を積み上げておけば、16日、17日に0.1%で準備預金の積みができてウマーなので、その時の市場金利次第ではロンバート借り入れが殺到するかもしれませんってお話。で、その記事中で唖然としたのはこんな一節があったことでして、曰く、
『しかし、準備預金の積み上げを稼ぐためだけに、利上げが実施される直前の隙を狙って、ゼロ金利時の特別制度を利用して、必要以上の資金を確保することについては「モラルハザードだ」の意見が多い。』(ブルームバーグニュース10日10時43分配信記事より)
えーっと、準備預金の積み上げニーズは立派な「資金需要」(ブタ積みの方がよっぽど立派じゃないと思いますけど、笑)なんですが、「準備預金の積み上げを稼ぐためだけに」ってそりゃ一体全体どういう意味なんでしょうかねえ。それからロンバート制度は「ゼロ金利時の特別制度」じゃなくて金融調節におけるスタンディングファシリティとして機能するもんなんですけど(昨日ご紹介した6月30日公表の日銀ペーパーを参照のこと)。記事ではロンバートを『本来は異常時対応である補完貸付』とか書いてまして、おまいら日高記者からちゃんと教えてもらえと小一時間でございますわな
そんなわけで、市場金利が上ったらロンバートに行くのは制度の本旨に叶った行為だし、積み期間中に(今回利上げして18日から新金利適用であれば積み3日目ですな)政策金利が変更になる時に意図的な積み進捗操作が行われるのも昨日ご紹介した日銀ペーパーで指摘されている通り。それを「モラルハザード」とか言い出すのはロンバート制度の趣旨を理解しないで言ってるんじゃなければ、金利が上って欲しい人のポジショントークとしか思えませんですわな。いやはや困ったもんだ。
ちなみに、別記事で「公定歩合が0.5%になった時に、大手銀行が運用に慎重になればレポ金利が0.5%付近まで上振れると警戒している可能性」ってのを指摘してましたが、これは出し手の脅しポジショントークというよりは資金取り手が「公定歩合を0.5%にすると大変なことになりますよ」って逆のポジショントークをしているような気もしますな(苦笑)。うーむ、ポジショントーク満載ですなあ。
多分なんですけど、瞬間的に変なことはあるかもしれないけど、そんなに極端な事にはならないと思いますよ。でも何か変な誤解話が堂々流布される状況みてるとちと怖いものは感じますけどね・・・・
#と、うだうだとクダ巻きトークで恐縮至極
2006/07/10
お題「日銀の金融調節レポート」
ちと前の話ですが、日銀から『主要国の中央銀行における金融調節の枠組み』というのが出ておりました(6月30日)本文はPDF22ページ(最終ページは参考文献リスト)でして、本石町日記さんが「お勧め」って紹介してましたのでお読みになった方も多いかと存じます。確かにマジでお勧め(ただしマニアの方のみ)。→http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research/data/ron0606c.pdf
○これは「個人的見解」ペーパーではございません
そのレポートの冒頭部分を紹介したページはこちらです。→http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research/ron0606c.htm
で、ついついあたくし本文読み出す前に妙な点に着目しちゃうのですが、このペーペーよく見ますと普段良く出てくる「日銀ワーキングペーペーシリーズ」と違いまして、毎度お馴染みのヘッジクローズであります所の『なお、本論文の内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行および企画局の公式見解を示すものではない。』というのがございませんな。
まあ内容に関しては日米英にECBの金融調節の枠組みに関する説明ではあるのですが、何気にしらっと重要な論点が転がっているようにも思えますので、個人的見解ではない解説レポートだというのも中々奥深いものがあるかと存じます。
#しかし何でそんな点を最初に書くんだか>自分
○準備預金制度は金融調節の円滑化に寄与
いきなり15ページに飛びまして、3.(3)の『法令または契約に基づく中銀当預の積み立て制度』ってところに参ります。上の方で言及した本石町日記さんの所でも解説がございましたが。
『以上では、主に中央銀行による資金の供給・吸収に焦点を当ててみてきたが、金融調節を円滑に実施するためには、同時に、中銀当預に対する需要が安定的かつ予測可能であることが不可欠である。』
『既に述べたとおり、中銀当預は民間金融機関の様々な取引にかかる資金決済に利用されるため、一義的には、中銀当預に対する需要はそうした資金決済を円滑に行っていくために必要とされる残高(資金決済需要)となる。しかし、個々の民間金融機関の資金決済金額の動きに応じて、全体としての資金決済需要は日々変動し、中央銀行がこれを予め正確に予測することは必ずしも容易ではない。』
という訳で、準備預金制度があると便利ですよってお話になります。
『こうしたなか、中銀当預の残高について、日々の資金決済需要を安定的に上回る一定の水準に維持するように促す仕組みが設けられていれば、中央銀行による中銀当預に対する需要の予測は容易になり、金融調節を円滑に行うことが可能となる。』
実務的な論点では全く仰せの通りでございますが、この点に関して経済学的には準備預金制度というのはどういう扱いになっているのでしょうかというお話を本石町日記さんがしてまして、ここから先の話をするとただの2番煎じもいいところなので、本石町さんの下記エントリーをご覧下さい。→http://hongokucho.exblog.jp/5176437/
○積み期間と金融政策決定会合の関係
20ページのコラム「BOX2」の『ECB、BOEにおける積み期間やオペ期間の変更』部分を読みつつ「ほほう」と。
『法令や契約に基づく中銀当預積み立て制度における積み期間の途中に、金融政策決定会合の開催が予定されていると、時により、目先の政策変更を見込んだ民間金融機関の裁定行動(意図的な積み進捗操作)を通じて中銀当預に対する需要が変動し、オーバーナイト物など、ごく短期の市場金利が政策金利と整合的な水準から大きく乖離することがあり得る。』
この文を一読しただけで何の事か判るのは短期金利が動く時代をご存知の方でしょうな。一応しつこく説明しますと、準備預金の積み方式は対象期間(日本の場合だと当月分の積み期間は当月16日から翌月15日まで)の積数(要するに合計残高ですわな)ですので、極端に言えば初日に全額積んでしまえばそれ以降は準備預金の積み不要となりますが、積み期間中に政策金利が動くという予想をした場合には、積みのペースを速める(金利が上ると思った時)とか遅めにする(下がると思った時)という動きがあるというお話ですな。
この事例って昔々短期金利が動いた時代にはよくあった話でして、政策金利が下がると思う→準備預金の積みを遅らせる→市場の資金需要が大いに減退→コール金利が勝手に下がりだす(→怒りの積み下調節あるいは日銀貸出炸裂^^)というのは何度か見た覚えが微かにございますな。
ちなみに、コラムでも書いてますが、オペが金利指値方式の場合は応札の過熱(金利が上ると思った時)や札割れ(下がると思った時)という形で反映されますわな。従いましてこういう話になります。
『オペの金利を政策金利としているユーロエリア(MROの最低応札レート)や英国(Short-termRepo
OMOsの適用レート)では、こうした事態が発生することを防ぐ観点から、積み期間やオペの実施日・期間を金融政策決定会合の日程と整合的に設定することにより、金融調節運営の円滑化を図っている。』
なるほどそうですな。ちなみに先週もちと書きましたが、今月の金融政策決定会合が行われる7月14日は積み最終日(惜しくも15〜17が3連休で、次の積み期間初日に掛かりますので、厳密な意味では積み最終日+積み初日になります)になりますので、金融政策変更をするのには技術的には都合が良いんですよ(^^)。ちなみに、金融政策決定会合の日程を調べても(実は10月会合も週末の14日(訂正:13日)に実施^^)別に政策的なインプリケーションは発生しない筈ですので勘違いしないようにお願いします。
と申しますのは、金融調節の枠組みという技術的な問題に関して日本と類似しているFRBの場合について同じ20ページの脚注にこんな記述があるわけで、日本の枠組みの場合は別に積み期間中に決定会合があっても無問題な訳ですわな。
『米国では、FOMCが通常積み期間中に開催され、政策金利の変更は直ちに実施されるため、意図的な積み進捗操作を行う誘因が働き得る仕組みとなっており、翌日物の市場金利は政策変更を先取りして動く傾向がある。もっとも、FRSでは、オペの金利は、応札レートに制約のない金利競争入札によって市場動向を反映するかたちで形成されることから、オペの応札過熱や札割れといった事態は比較的生じにくい。また、FRSでは、積み進捗操作に伴う需要の増大をある程度吸収するかたちでオペを運営している。』
昔の日本でも「翌日物の市場金利は政策変更を先取りして動く傾向がある」というのはございましたわな。ただし当時は市場下限金利としての強力な最終兵器「日銀貸出」がございました(ただし低め誘導政策始まってからは最終兵器は使えなくなりましたが)ので、下げ方向であまり無茶な先取り行動はできなかったような記憶も。まあ「怒りの積み下調節」とか色々面白かったですけど(^^)。
同じ脚注でECBについてこんな記述があって「なるほど」と思いました。
『ECBは、当初、政策金利をMROの適用レートとしていたが、利上げ局面においてオペへの応札が過熱する事態が生じたことなどを受け、2000
年6 月にこれをMROの最低応札レートに変更した。2004 年3月の見直しは、利下げ局面においてオペの札割れが生じやすいことを踏まえて実施されたものである。』
なるほどなるほど。
#と、マニアなお話をしてオチも無く本日は終了。
と思ったのですが、一応一言。金融政策の話になりますと、日銀サイドが金融調節の技術的な論点にすぐ話を持っていくとお嘆きの皆様におかれましては、まあこういうのも是非お読みになると宜しいのかと。
2006/07/07
お題「短期ゾーンがいまさら金利上昇・・・」
今日は短いゾーンの相場後講釈を簡単にという感じで誠に恐縮ですが。
○3か月金利がちょっと上昇
昨日は前日の流れを引き継ぎましてTBFBとか1年ゾーンの利付債なんかがヘロヘロになっていたようでございます。利上げの蓋然性が高〜くなってきた今更になって売り売りになるというのが実にワケワカランのでございますけれども、まあこれが今の短期クオリティなので一々驚かないのが吉かと。
3か月物のFBで見ますと、昨日は前日に入札が行われたFB397回が10月10日償還ですが、これが前日比1毛くらい甘い0.385%とかのレベル(何か値付け師が0.39%を叩いたらしいのですが)で、まあそれは良いとしまして、既発ゾーンがまたもヘロヘロ。
1週間前に0.32%とかで入札が行われたFB396回も397回並みにヘロヘロですし、前週まで妙に買いが入って強かった9月後半償還のFBがどうもダメダメの状態のようですな。前週の入札の時には軒並み0.27%だった9月後半償還物のFBは(水準感はちょっと微妙なのですが)概ね0.31%あたりはオファーのようでして、「利上げ後のGCレポレートへの思惑」とやらが物の見事に直撃しているようですな。
ま、それで思うのは「買い方の皆さんだって7月か8月に利上げって予想してた筈なのに、その時のGCや現先レートについて考えてなかったのかYO!」って所なのですけど。正直今更売りが出てくる意味判らん。ついこの前までは「3か月の0.35%には買い意欲が物凄い勢いでありますなあ」とか言われてまして、ああそれって7月利上げをかなり織り込んでもそうなんでしょうなあなどと思ってたんんですけど、いざ0.35%を抜けて見ると0.4%に接近とはドウナットンジャですな。
さてまあそんな状況であった短期国債方面ですが、CP方面では昨日はスポットスタートが10日になりますので、そこそこの発行が見られました。正直、既に価格形成が7月利上げを完全に織り込み(正直織り込みすぎの気もするんだが、2月末と同様に・・・)に逝ってるので「利上げ前に資金を確保」もへったくれも無いとは思うのですが、それはそれで発行体様におかれましても大人の事情もおありでしょうから余り野暮なことは申すまい(・・・って言ってるじゃんかよというツッコミは却下^^)。
で、金利が大きく動く時にはTBFBに対して割と遅行性があるCPちゃんなのですが、どうも昨日はさっくり追随して上昇したらしく、3か月の最上位格CPで0.4%台に乗ってしまったようでございますな。一応期末越えというのはありますけど、それにしてもここへ来て0.4%台というのはちと上りましたなあ感が致します。
この動きがFB方面に波及しちゃうのかは正直よーわからんのですが、CP金利が上昇してる背景には最終投資家が利上げとその後の現先からターム物の利回り形成を見極めてから動きたいということを考えていることがあるのかもしれませんなあ(ディーラーは既に在庫重いでしょ)と感じる昨日の動きでした。
○1年方面も弱いようで
3か月方面を見るのに多忙のため1年ゾーンは今一歩見てませんがメモメモ。
ここの所1年ゾーンの既発利付債もダメダメのようでして、5年20回債だの194〜196回債だの、つい2週間前にはエライ勢いで強くなってたものが弱いという何だかな〜状態のようですわな。買うときは踏みのような買い方で、売るときは投げのような売り方というのはいやはや何とも。
6か月に関しても弱めですが、まあここのゾーンは品薄をいい事に妙にスクイーズっぽい動きが起き易くて、割高になりやすいゾーンでしたので、まあ入札で需給が変ったところで売られてご愁傷様ですが、昨日は嫌がらせのように値付け師による0.475%ヒットとかあったようで、つい先週の既発が0.37%(新発TB404回と1か月償還が違うので単純比較できませんが)ですよウェーハッハッハとやっていたのが幻のようですな。
しかし最初にも書きましたが、もう利上げですよって煮詰まりまくっているこの期に及んで「利上げ後のGCレポレートが高いかもしれない」とか言われだして相場が動き出すってえのも「おまいら今までこんな大事なことをちゃんと考えて無かったのかよおいおい」って言いたくなりますな。「泥棒を見て縄をなう」というお馴染みの言葉を墨痕鮮やかに大書して贈呈したくなりますな。マッタクモウ。
#ということで、日銀支店長会議の話と、日銀役員の金融取引等に関するネタは華麗にスルーです。何か少々ツッコミたい気はするけど論点が整理されて無いのでまたいずれ。
2006/07/06
お題「GCレポ金利に関する愚考続き」
さて本日も短期のテクニカルなお話で恐縮です。
○足元金利とロンバート金利の関係
オペ金利上昇のあたりからマル公が幾らになるのかという話題が出ていまして、毎度お馴染み本石町日記さんもエントリーを→http://hongokucho.exblog.jp/5186204/
足元の誘導目標金利が0.25%になった時のロンバート金利(=公定歩合)との幅が現状の0.1%からどこまで広がる(まあ広がっても0.25%ですけど)のかという話題になっているのですが、コールだけの問題だったらマル公が0.4%でも0.5%でも正直どうでもいい話。問題はレポ市場の金利がどうなるのよって話かと。
で、まあ昨日の駄文で利上げ後のGCレートがどうなるのよという愚考をオペ金利から逆算する形でお話しましたが、このGCレートが何らかの状況(期末要因とか)で上昇した時にロンバートが概ねの上限メドになる(暫く前にもGCレポが0.12%とかまで上ってたこともありましたけど)事を勘案しますと、誘導金利とロンバート金利のスプレッドが小さい方がGCレポ金利が安定しやすくなるでしょうという考察もございます。
で、そのGCレポ金利の動向はまともにFB利回りに反映して来るのは昨日も申し上げた通りですし、GCレポ金利が証券業者の在庫ファンディングのコストにまともに跳ねて来る(基本的に証券会社は商品として保有している債券はレポ市場でファンディングをつけますんで)ことからしますと、GCレポ金利が妙に高いところになっちゃいますと、現物債のファンディングコストに反映→現物価格下落=金利上昇というお話にもなりますかな。まあ中長期国債に関してはレポ金利が0.1%違うこと自体、日々の価格変動から見れば微々たる世界ではございますけど。
まあ現状のGCレポ市場環境を見てますと、資金の出し手はご案内の通り大幅に偏在というか寡占状態。資金の取り手は証券業者という図になってますが、どうも双方ともゼロ金利時代しか知らん人が大勢いるので何かこう不安心理というか不慣れというか、年寄りから見ると何だかなあって動きをよーやらかしてますので、ロンバートの支えが外れると暫くは不安定化するのは避けられないかと思います。
で、そうなった時に日銀のオペレーションでレポ金利を(直接働きかけは厳しいですけど)それなりにコントロールできるのかどうかというのがポイントになるかと思います。ちなみにあたくし思いまするに、まあGCレポ市場金利が無用に跳ねた場合にオペレーションで打つ手は幾つか考えられますので、そんなにナーバスになる事はないかもしれません。
「市場機能復活」と言っても、金利政策をやってるんですから無担保コール翌日物金利だけ誘導するけど他の金利は市場にお任せ知らん振りというのはあり得ません(と思う)ので・・・・・
何か肝心のマル公が幾らになるかと言う話をスルーしておりますけれども(苦笑)、まあレポ金利の跳ね上がりをそれなりに抑えるオペレーションが出来るのでしたら(出来ると思いますが)0.5%でも別に無問題だし座りが良いという話になるかと思いますが、まあ量的緩和解除→ゼロ金利と来ているリハビリ期間中という認識で行くのであれば0.4%という(本石町日記さんによりますと^^)中途半端な水準に今回は置いて無用な不安心理の台頭を抑えるのも有りではないかと思うのですが。
例えば脳内妄想ですけど、まずは0.4%にしておいてからレポ市場などの金利が落ち着くのを見極めて(どこぞの某著名ストラテジスト様のように「金利上昇してるので現状容認で」行うのは論外)から公定歩合だけ後から0.5%に上げる(市場が落ち着いていれば上げても無影響)というのはどうでしょう。まあその次に利上げ(いつの事やら・・・)する時に幅を拡大すればいいだけの話ですが。
そういや「国際的に見て100bpくらいあるのが普通」という論もどこかで拝読した覚えがあるのですが、高金利時代からやってるものが金利引下げになってそのまま100bpってのと、これから制度が本格稼動する状況でしかも超低金利って状況ではそもそものスタートラインが違いますので、一緒くたにするのは無理があると思いますな。
○未体験ゾーンと言うのは恐ろしいものらしく・・・・
先ほども申し上げましたが、昨日の駄文ではオペ金利から逆算したGCレポ金利の雑考。結論は「0.3%〜0.35%というあたりは短期金利が0.5%近傍の低め誘導時代のインターバンク金利と現先金利の関係から見ると高い(足元から0.1%は高いでしょ)けど市場環境の変化を勘案するとまあそんなもんかもね」というのでありましたが、よくよく話を聞いて回ると色々と香ばしい見方も流布されているらしいですな。
ロンバート金利が0.5%になったらGCのレポ金利も0.5%近くに跳ね上がるのでは無いかと心配(意訳)というような話があると聞きつけた知人が「んなアホな〜」と教えてくれましたが、どうもマジでそういう話が出てるんだなあと思ったのは昨日のブルームバーグニュースでの本日の短期市場解説記事(昨日のお題は「FBが0.38%台に上昇、来週の利上げに一段と現実味」って奴で15:37の配信のものです)でして、そこに大手銀行のトレーダーのコメントとして『金利回復によって取引が落ち着くことを考えれば、予想されるロンバート貸出金利0.50%にレポ金利が張り付くことはあり得ないと指摘』てのを見た時。
こう指摘するということは世の中のどこかで「あり得るかも」という見方が流布されているということの裏返しに他ならない訳でして、まあこんな事を改めて取材で指摘させられるトレーダーさんも呆れてたと思いますが(^^)、しかしまあどこのアホウがそんな話をしてるのか意味が判らんというか脳味噌に虫でも涌いてるのではないかという感じでざいます。ゼロ金利時代しか知らん人たちは何言い出すか判ったもんじゃないでしゅな。オソロシオソロシ。
ところでこの記事によるとレポ金利が0.35%だという話になってますが、それちょっと高くねえか??0.35%〜0.4%とかいうのにはポジショントークの香りを感じますけど・・・・
○金融政策に関する情報管理を徹底して欲しいのですが
一昨日も書きましたが、相変わらず湯気ポッポーなので。
昨日の日経金融1面左上のコラムは滝田さん執筆。で、そこを見たら『事務方はゼロ金利解除を政府に打診し始めた』という記述(実際はここの間にもうちょっと状況説明があったのですが、資料が手元にないので引用途中部分を割愛していることをお断り致します)があってちょっと嘆息。
「打診する模様」ではなく「打診し始めた」って書かれるのは、要するにそういう行為があるという事が流布されているという訳ですわな。一昨日は東京新聞の記事について湯気をポッポーと立てて駄文を書きましたけれども、読売新聞でも「ゼロ金利解除の方針が4日固まった」というような記事が出てたらしいですし、どう見てもリークです。本当にありがとうございました。
でね、どこの誰が何の意図でリークしてるのか知らんですけれども、金融政策に変更が出るとか、皆が注目してる展望レポートがどうなるかとかいうような時になると毎度毎度お馴染みの如くどこからかリーク情報のようなものがホイホイと新聞紙上を賑わすことに関してはあたくし非常に腹立たしく感じてるんですよ、いやマジで。
#「打診し始めた」って書く滝田さんにも何か失望というか脱力です。
2006/07/05
お題「短期のマニアなお話で」
ミサイル発射でどうのこうのという話に関してはこれ書いてる時点で情報が判らんので保留。米国の独立記念日あんどスペースシャトル打ち上げにぶつけた嫌がらせというかボクチャン構ってくれなきゃヤダヤダ状態なのかなと直感的には思うのですが、軍事知識はドシロートなのであまり良く判らん。
で、昨日の短期マーケットは7月利上げを完全に前提にした動きになってますんで、あたくしと致しましても利上げの是非がどうのこうのではなくて、利上げ後の世界の話を申し上げたいと思います。
○利上げ後のGCレポや現先レートへの思惑
昨日のオペ金利はまたまた上昇。7月6日→8月7日のCP買現先が平均0.263%で、7月6日→8月15日の共通担保資金供給全店(ちなみに同じエンドで前日に本店方式で実施)が平均0.266%となりました。
えーっと、手前が7月15日までで、16日からレートが上る(実際は15日が土曜なのでそこで分けて計算するのは妙なのですが、14日の決定会合で誘導目標が0.25%に上った場合にコールなどが14日に上昇するのか18日に上昇するのかが微妙なので折半したイメージね)現在のCP現先金利で0.1%(ちと高めですが)と置きます。するとCP買現先の0.263%は手前10日間0.1%で後ろ22日間は0.337%となる計算ですかな。本人計算合ってる積りでやってますけど違ってたらゴメン。14日以降の金利が上昇で計算すると0.32%とかになると思いますが。
さてこの金利ですが、昔々その昔、低め誘導などという物をやっていた時には大体コールが0.47%−49%(それを抜けると下がったとか上ったとか言われる)の時にTBFBの現先レートが0.51%−0.54%くらいだったと10年前の帳面を引っ張り出すと出てくるのですが、まあ当時はコール金利をかなりファインチューニング出来ていた事や、参加者層の変化、TBFBの発行残高の増加なんぞを勘案すると、誘導目標0.25%に対して現先やらGCが0.3%台前半にいる事自体にそんなに違和感は無いのかなあと。ちとスプレッドがついとるような気もしますが。
しかしよー判らんのだが、こんな高いオペでファンディングを敢えてする理由が正直謎。このレートで固めるのであれば、足元で転がしているのとあまり変らんような気がするし、大体からして無担保コール金利は相変わらず低いのに有担保のオペ金利がこれだけ高いのもナンノコッチャという感じです。まあ相変わらず資金がうまく回ってない(参加主体が量的緩和状態前提の体制から中々脱皮できない面がある)のでこういう商品間の需給関係が分断されている状態が続いてるんでしょうなあと思うのですけど。
ま、オペ金利が上る要因として、どうも「オペ金利を高止まりさせることによって以下自主規制」という輩がいるのではとの憶測も勝手に逞しくしているあたくしでございますことを念の為申し添えます。今週になって国債買現先の応札限度額をオファー額の半分から4分の1に減らしたと聞いたもんでして・・・^^;
まあそんな訳でして、本日は3か月FBの入札がありまして、前回の入札では既発の期内償還物が0.28%などという利回りになっていた事もありまして、期末越えなのに落札レートが前回比低下するという実に香ばしい入札になったのですけれども、「利上げ後のファンディングコストが0.3%乗せ」という事に気が付けば0.3%割れのFBをせっせと買う人も減ってくださるのではないかと勝手に想像してます。ただし、「長期債からの退避資金」が入ってくる場合は話しが全然別でして、その人たちは「債券」であって「価格変動リスクが殆ど無いもの」であれば別にレートの細かいことは気にならないぜという豪快な方で、3か月の金利が0.01%(価格に直せば0.2銭ですが何か?)上った下がったときゃあきゃあ言ってる短期の人たちとは別世界の人。
○ところで7月14日は積み最終日
相変わらず来週利上げを前提にしたテクニカルなマニア話。
7月14日の決定会合で誘導目標が引上げになった場合ですけれども、この日は3連休の前日にあたりますのでここの4日分の金利が上るのか上らないのかはマニアには重大な問題。
つらつら考えまするに、準備預金の進捗状況から考えて14日の時点では今回の準備預金積みは終了している筈。よって14日単体で考えれば資金繰り以上の資金ニーズは無い事になります。ただし、16日から新しい積み期間に入るので、そっちの準備積み上げニーズはあるでしょう。その為に全くニーズが無いわけではないですわな。で、当日利上げがアナウンスされるのはど〜考えても午後になりますので、その前の取引から先走りで金利が上るにしても空振りだったら間抜けですからまあそんなに上らんと思います。
でもまあ資金の出し手が超偏在しているGCレポ取引市場だと出し手様が資金抱え込んで金利上げなきゃ出さねーよ攻撃をして積み最終日の利上げ(するかどうか知らんがそれ前提の話ですんで)の意味が良く判らん人たちが何しでかすか判らんので、まあこのあたりも蓋を開けてみないと判りませんな。
しかし積み最終日に政策金利を動かすとなると、途中での準備預金の積み急ぎ(利上げの場合)とか積み渋り(利下げの場合)とかの動きが発生する余地が無く、今般足元金利が動かない(というか進捗が良いので上らんどころか下がる勢い)のもそのためという感じですな。何か昔の記憶が蘇る今日この頃でございますわな。
だいぶ余談ですけど、日銀のサイトを見ると相変わらず当座預金残高がトップページに出てるんですが、金利操作になってることですし、準備預金の進捗状況の方が大事だと思うんで、利上げしたあたりでしらっとあの欄外した方がよいのではないかと。
2006/07/04
お題「どう見ても7月利上げです」
そういえば引退表明するサッカーの中田選手。東ハトの非常勤執行役員をやってますけど、よくよく考えたら「執行役員」で「非常勤」ってのは執行役員制度の意味から自己矛盾してますなあなどとしょうも無い事を考える(というか多分就任時も同じこと考えてたような気も^^)のがドラめもんクオリティ。
○6月短観をさらっと読みます
毎度お馴染みの「前回の見通し対比で業況判断DIはどうなったか」というのを見ましょう。
製造業大企業(以下3月時点でのDI見通し→6月DI)
22→21
非製造業大企業
19→20
製造業中堅企業
12→13
非製造業中堅企業
5→4
製造業中小企業
9→7
非製造業中小企業
▲8→▲6
まちまちって言えばまちまちですが、3月調査時点で既に良い状態であった事を勘案するとまあ強い数字。中小企業の景況感が改善しているのが強気後押しという感じですな。
で、先行きの予想DIが非製造業中小企業以外で今回比改善あるいは横ばいを見込んでいまして、回答期間がちょうど6月中だった割にはマインドの悪化が見られませんって事でなお強気という感じですわな。まあそうは言いましても、実際問題として日経平均やTOPIXが上った下がったと言って市場が大騒ぎするのと、フツーの企業が受け止める景況感は必ずしもリンクしないというのがあるものと(自社株が暴落でもすれば話は別でしょうが)思われまして、株安のインパクトに関しては市場と一般企業の感じる温度差はあると思いますけど。
その他内容に関してポイントの設備投資、価格、雇用ですけれども・・・・
設備投資計画の数字は全体的に上方修正。製品仕入価格判断DIの改善(というか上昇)傾向が加速。雇用人員判断DIが3月予想時点での不足予想ほどの現状判断にはなっていないものの全規模・業種で不足。しかも先行きの人員判断DIが現状よりも更に不足方向に振れていますな。詳しくはあたくしのようなオタクシロートではなく、専業のお方にどうぞ。
ということで、どう見ても7月利上げです。本当にありがとうございました。
○どうしてこういう書き方になるのでしょう
新聞各紙は日銀短観を受けて来週の金融政策決定会合で金利引上げが行われるのではないかという事を報道しているのですが・・・・
例えば東京新聞朝刊は1面トップで「ゼロ金利 月内解除へ」と報道しており、小見出しが「誘導目標0.25%の公算」となってます。リードの部分を読みますとこう書いてあるのですな(漢数字を算用数字に直してます。東京新聞朝刊12版1面より引用)。
『日銀執行部は3日、今月13、14日に開く政策委員会・金融政策決定会合で、ゼロ金利政策の解除を正式提案する方向で検討に入った。提案されればほとんどの審議委員が賛成するとみられ、月内のゼロ金利解除・利上げが確実となった。』
用語の使い方がきっちりしてるのは感心するのですが、それよりもあたくし的に「はあ?」と思うのは上記記事(リード)中の「検討に入った」って書き方ですわな。もしこれが観測記事ならばこの部分は例えば「ゼロ金利解除を検討する見通し」というような書き方をするでしょう。大手じゃないけど新聞社が1面トップで書くのにこれだけ確信的な書き方をするのはどうなんでしょう。
いやね、市場では確実視されてるし、まあ多分そうなるでしょうとは思うんで、観測記事を「検討に入った」という書き方をしたのかもしれませんし、その辺の真相はさっぱり判りかねます。判りかねるのですが、次回の決定会合で何が提案されるかとかいう話がこのように確定的に報道される(観測記事ならば書くのは勝手)のは如何なものかと思う次第で、こういう報道には日銀は抗議すべきではないんでしょうかねえ。
○そのセンスは何だかなあという感じ
短観を受けて利上げが思いっきり視野に入って来ましたが、牽制発言もまあ出てくる訳で、財務事務次官がゼロ金利継続というのはまあお約束みたいなもんですから良いとしまして(笑)、小泉首相は報道によりますと「経済状況を良く考えて判断して欲しい」という趣旨の発言をしたようですな。
で、安倍官房長官が「ゼロ金利継続」発言をしてるのですが、伝えられる閣僚発言の中で金融政策を「こうすべし」と言うのは安倍さんだけのように見える訳でして、どうもこうセンスがねえお方だなあと思うのであります。時あたかも総裁のファンド出資問題から「日銀の独立性」に関してああだこうだと言われている中で「政治から金融政策に口を出す」ような物の言い方をする時点でなんだかなあ的感じ。小泉首相はその辺よーく理解して間接的にキツーイ言い方(言外に「これで失敗したらタダではすまない」と言ってる訳で)をしてますわな。小泉さんを見習いましょう(^^)。
まあそもそも論として「量的緩和政策解除をしてもゼロ金利継続というのは政策として矛盾してるでしょ」ってだいぶ前から言ってたら見事に外したあたくしとしては、ゼロ金利解除に今更反対するくらいなら3月の量的緩和解除を議決延長動議でも何でもして止めとけば良かったんじゃないですかねえとしか申し上げようがございませんが。
○しかし何でこんなに反応するの?
さて、あたくしは昨日のドラめもんでこんな事を書きました。
「CPIの内容は「既定路線に変更を加えるものではない」って感じだと思うのですが、その結果が出て債券市場がろくすっぽ反応しなかった所を見ると、とりあえず目先7月か8月の政策金利変更を織り込んでしまったという所で、次のネタ探しの段階になっているんでしょうな。そこで短観なんですが、まあ予想の範囲内であった場合、この調子だと何も起きなさそうな感じですわな(苦笑)。」(以上昨日のドラめもんより)
こうやって自信満々(でもないが)で書くと大外しするのがドラめもんクオリティでございますよええもう情け無いったらありゃしない。
昨日の債券市場ですが、短観発表を受けて朝っぱらから残存1年ゾーンの5年20回債が3毛5糸甘だか4毛甘だか忘れましたがとんでもない所まで叩かれ。金先も債先オープン前の時間から威勢良く売られておりました。つい暫く前にはこのゾーンやたら買われていたのですが、投げなのかスワップ見合いなのか知りませんが、これまた極端な動き。
7−9月のどこかで利上げっていうのは市場のコンセンサスだと皆が思っていた(ってのも変な言い方ですね^^)ので、この豪快な下げにディーラーの皆さん「はぁ?」ですよ。まあ売る言い訳が出来たので翌日(つまり今日)の10年入札に向けて相場水準を調整しますかって動きが出るのは判らんでも無いのですが、それにしても5、6年〜8、9年あたりが威勢良く下がりまして、まあ先物の売りとかそこらへんのゾーンの売りとかあったんでしょうが、よくもまあここまで叩くわと。
「7−9月のいつかの利上げ」が「7月利上げ」に前倒しになったからと言ってそこまで売り込む必要があるのかワケワカランと言いますか、ここまで売るなら何で先週末のCPIで値持ちするのか意味不明なのですけれども、まあ最近の市場はそういう妙な反応をするのが仕様になっているので、一々驚いていると身が持ちません、と言いながらネタにはするのですが(苦笑)。
実は1年ゾーンに関しては先週末も弱くなってまして、週末週初で4毛とかもうちょっと甘くなっている感じなのですが、月末恒例のインデックスから外れた1年ゾーン売りだけじゃなさそうな予感はします。5年20、21回とか194〜196回という残存1年ゾーンの現物が妙に動くのがスワップ連動っぽい香りが致しますな。
ちなみに、もっと短いゾーンはどうなっているかと言いますと、今日の6か月物TBに関しては0.4%台で大丈夫なのでしょうかという気はするのですが、まあ誰か買うのかなあという所。これが0.5%台あれば最悪持ちきりで何とかなりそうという読みから買いが入ってもよいのですが。で、3か月に関しては案の定大して動いてなくて、先週に入札が行われた396回FBは0.33%−0.35%と前日比0.01%くらいしか動いてません。1か月ものや2か月もののFBはファンディング勘案すると持ちにくそうですので、この辺がやや売られそうな感じですな。
まあ3か月ものあたりは見事に「既に織り込み済みですが何か?」という状態になっている感じですな。ただまあ問題として、誘導目標0.25%に対してGCレポレートが本当にその近傍で収まるのかという昨日申し上げたお話がありまして、その絡みで別の雑談もあるのですが、本日はこの辺で。
2006/07/03
お題「相場雑談」
滋賀県で社民党支持(推薦でしたっけ?)知事誕生。自民公明民主推薦の現職が新幹線新駅計画凍結ネタで落選すか。本件に関しては素人かつ思いっきりノーケアーだから判んないけど、県連で分裂があったとしてもあたくし的には「おお!」という感じ。
○先週後半の動きから〜FB入札以降
先週はまあ取っ掛かり不足でやや煮詰まり感が出て来ましたが、まあそんな中で何があったかという俺様備忘録を忘れないうちに。
水曜のFB入札ですが、期末越えの10月2日(発行日は7月3日)の償還でまあ「使いにくい」債券だったにも関わらず入札は強くなりました。お約束のように前日までのWIは0.35%とかだったんですが、当日になって見ると入札前から気配しっかりで前場引けで0.33%となりました。で、落札結果は平均99.9187円で利回り0.326%(財務省方式だと0.3228%)の最低99.9155円で0.339%(同0.3355%)と期越えなのに利回り低下という状況。
まあここ3回の入札が「入札で空振りする人が出てショートカバー大会」となって「業者の持ちが無いのでセカンダリーでオファーが出て来ない」というのが連続してたんで、買いたい人も事前に平均での予約とかしてたのかと思うのですが、落札結果発表後に後続の買い無しとなりまして、当日は0.335%まで逝きまして0.33−335%。足元金利が益々低下した木曜日以降は0.325%レベルになりましたが、さすがに同じ事が4回連続では起きませんでしたなあという感じです。
勝手な想像ですが、大体まあ最近の流れから勝手に憶測すると、今後も暫くは「入札の平均落札が強めになって、セカンダリーは低調」ってかたちになりそうな予感。
FBと言えば新発だけじゃなくて既発に関して動きがあったのが木曜日。9月償還もののFBが業者間スクリーンで大量出合い(1000億以上)がありまして、期内物のFBは0.27%と新発と1週間違いでその利回り差は何よって状況。木曜はCP発行が若干あったのですが、この落札利回りも前日対比で妙に低下しましたし、9月後半償還ものの一般債とかでも買いイントが強かったようです。
ところが、金曜になるとあっさり0.27%オファーは並ぶわ、CP発行レートは元の水準に戻るわという動きになりまして、木曜の動きは一体全体何だったんだという感じ(ただし今日になってみないと判らんが)でした。
これまた好き勝手な脳内妄想ですが、木曜の買いは「とりあえず期内物の資金を潰しておけ」という会議室からのご指令でも来て、まずは買って見ましたってことだったのかなあと。まあ同じようなこと考える人が後から出てくれば後続の買いも出てくるでしょうし、そうじゃないかも知れませんし、まあこればかりは人の財布の状況ですんで知らんとしか言いようが無いですな。FBレートで言えば期末越え対比で期内物の金利は低すぎに見えるし、実際問題として政策金利引上げ後にレポや現先金利が無担保コール翌日物の誘導水準(0.25%でしょうが)近傍でファインチューニングできるかと考えると、0.27%という利回りはちと糊代が無さ過ぎだと思うんですけどね。
まあそんなことはリアルマネー系の買いサイドは先刻ご承知ということで、基本的に最終投資家(銀行ディーラーも持っているけど、FBと違ってアウトライトで頻繁に流通されるものではない)が買うCPに関しては9月末近辺で償還があるもので最上位格付けでも0.3%台でして、だいたい0.32%から0.35%とかの範囲が居場所だと思うのですな(先週木曜には目を疑うような低レートがあったらしいのですが)。以前から「2か月ものでFBとCPのスプレッドが開いてる」って話をしてましたが、ここもとは「期内ものでFBとCPのスプレッドが開いている」という感じになってきました。まあこれが当然なんでしょうけれども。
○さて短観ですか
というか金曜にCPIが発表された訳ですが、何かもう7月の利上げに関して市場は「はいはい利上げ利上げ」という感じでどうぞご随意にモードのような気がします。短期だって足元は別だけどもCP発行レートとか思いっきり足元の利上げ織り込みに逝ってるし。問題は次回以降の利上げに関してまたまた前のめりになるかどうかという所でしょうにゃ。
CPIの内容は「既定路線に変更を加えるものではない」って感じだと思うのですが、その結果が出て債券市場がろくすっぽ反応しなかった所を見ると、とりあえず目先7月か8月の政策金利変更を織り込んでしまったという所で、次のネタ探しの段階になっているんでしょうな。そこで短観なんですが、まあ予想の範囲内であった場合、この調子だと何も起きなさそうな感じですわな(苦笑)。
じゃあ次に何がネタになるかと言うと、今後の利上げペースが早くなる(多分市場コンセンサスは7月か8月に1回、その次は年内に出来れば御の字で来年1−3月の間かなあって所かと)というのが一つですが、もう一つあるとすれば足元金利問題。
と申しますのは、さっきさらっと書きましたが、利上げを行って無担保コール翌日物の誘導水準が0.25%になった時に本当に誘導水準近傍で足元金利がファインチューニングできるのかってお話でして、以前のように精緻な積み上積み下調節でコールの金利が狭い範囲で安定するのかって事に関しては甚だ疑問がございますし(実際にやってみたら収まるかもしれないけど)、GCレポ取引は益々ややこしい事になりそうな気もする訳で。
多分、「利上げ後ベースレートが0.25%になります」っていう予定になっているかと思います。で、一方で現在のGCレポレートが0.1%(ここの所0.08%くらいまで下がってますが)だというのが今の前提だとなってますわな。実際に政策金利が変更になった場合にレポレートが市場の想定よりも高止まりした場合に「前提となる短期金利が違う」って話になるのかなあと。
まあどっちも政策金利が動いてからの話になりますので、それまではネタ不足の感は否めませんわな。ちなみに日銀総裁が変ったとしても別に流れは変らんと思いますのであまり気にしていませんです、はい。