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2006/06/30
お題「FOMC雑感/何でそうネタが小出しに・・・」
今日はCPI、週明けは短観。
○FOMC雑感
FOMCの結果を受けて「思ったほどタカ派じゃない」ということで米債がブルスティープして米株が上昇。寝ぼけ眼でFOMCステートメントを読んでみて前回と比較しようとしたのですが、各部分に関して書き方が色々と違っててさすがにこれは寝起きで比較するほどFEDに関してみてる訳ではございませんのでただの俺様備忘録メモなんですけど。
今回の声明文
http://www.federalreserve.gov/boarddocs/press/monetary/2006/20060629/
前回の声明文
http://www.federalreserve.gov/boarddocs/press/monetary/2006/20060510/
今回の声明文から先行きの金融政策がどうのこうのって部分の引用。本文では一つの段落ですけど、各文に分けておきますね。
『Although the moderation in the growth of aggregate demand should help
to limit inflation pressures over time, the Committee judges that some
inflation risks remain.』
『The extent and timing of any additional firming that may be needed to
address these risks will depend on the evolution of the outlook for both
inflation and economic growth, as implied by incoming information. 』
『In any event, the Committee will respond to changes in economic prospects
as needed to support the attainment of its objectives.』
要するに「インフレリスクは全開じゃないけどございます」「そんな訳だから決め打ちせずに先行きの経済状況を見て判断」って話ではないかと勝手に解釈しましたが、市場ではリスクシナリオとして「インフレ懸念決め打ち大全開モード警戒」だったんですにゃあという所なんでしょうか。まあここもとFRBの偉い人からタカ発言全開でしたから仕方無いと言えば仕方無いのですが。
インフレターゲット的な発想としてはあまり「決めうち型金融政策」にはならない(と思う)ので、そろそろ米国市場も「グリーンスパン的決め打ちメッセージを求める」のは諦めれば良いのではと思うんですが、まあここ数年の決め打ちに慣れきっていた米国市場はどうも「決め打ち」をしたいようですな。今日の朝のニュース見てても(モーサテとブルームバーグ)今後の利上げについて論者によって思いっきり解釈が分かれているのがオモロイです。
まあ日本もそうなんですけど、今後は「次のアクションがどうなるかは経済情勢次第」っていうパターンになっていくもんじゃないのかって思うんですけど。あたくしは米国経済のことまで詳しくは知らんので今後の利上げが何回とか判りませんけど、物価上昇圧力がどうなるのかって方がメインになるんじゃないんでしょうかと思うのでした。となると資源等の価格動向と賃金動向なんすかね。
○福井総裁のファンド出資問題の周辺話題雑感
・外貨預金がどうのこうのというお話
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20060629AT2C2903I29062006.html
「日銀総裁が12万ドルの外貨預金」民主が公表
って記事がございました。為替介入をする権限は財務省にありまして、介入に関しては日銀は単に財務省のパシリなので、外貨預金があってもインサイダーでも何でもないですわな。よってこれをネタに何か民主がいちゃもんをつけた場合は単に己の無知蒙昧振りを宣伝するだけでして、市場関係者からの格付けが投資不適格級に下げられる(既に・・・という事は申しませんが^^)だけの事でしょうな(笑)。
まあそれはそれで別にどうでも良いのですが、記事にもありますように、『日銀は27日に、福井総裁が保有する金融資産を公表したが、預貯金の内訳は出していなかった。』ってのがちょっとどうだったのかなあと。今や本件はただのワイドショーネタになっている訳でして、世の中でのニュース報道では「政府・日銀が為替介入」って言い方をする事を勘案したら、外貨預金がありますよってのも公表して、記事にある「民間人の時に設定した契約に基づき継続保有しているもので、職務との関連で何ら問題ない」って公表もして、介入の仕組みもついでに説明れば別に問題は無いって話になるにと思うのでありました。
こうやって小出しに出てくると何でもかんでも色眼鏡で見られる訳でして、実際には何の問題も無い話までぐちゃぐちゃ言われるわけですわな。よってプロ的には「外貨預金無問題」と思っても、「よー知らん人たちがどう思うの」ってのを意識しないといけませんですわなあという事ですよ。
しかし日経の記事もこりゃどうよと思うのは、記事中に『日銀は財務省とともに外国為替市場で介入をしているが、日銀には外貨預金を禁止する明確なルールはないという。』と、いかにも日銀が自らの意思で介入できるような書き方をしてるのが実に嫌らしいですな。日経の見識を疑う。
ちょっとだけ話が変りますが、上記記事にある日銀の公表「民間人の時に設定した契約に基づき継続保有しているもので」って説明はどういう文脈で行われているのか存じませんが、その説明を推し進めると「村上ファンドの場合は継続保有を途中で止めたので不適切行為」って逆ねじ(あたくしは途中で解約したのは不適切行為と思ってますけどね)くわされるのでは無いかと思うんですが。。。。。ま、どうでも良いけど。
そして、本件に関してですが、みのもんた様のコメントを聞こうかと朝ズバ!を7時から見てたのですがネタになってませんでしたな(その前の時間は知らん)。そりゃ「介入を決めるのは財務省だから無問題」で終了でしょうからネタにならんわな。哀れ民主党。
・山本幸三議員が辞任を求めたそうですが
読売新聞から
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060629ia29.htm
ご本人のメールマガジンなんぞ読んでいる訳無いですので、実際にどういう文脈で辞任を求めているのかは存じませんが、報道されている内容によりますと、概ね上記記事にあるように「日銀総裁にはあらゆる情報が集まり、金融政策を左右できる」「そのようなポストで資金拠出や株保有を平気で続けるのは(総裁の)資格がない」というこだとされています。
・・・・はて、その理由でしたら本件問題が表面化したときから状況は変っていないのですが、このタイミングで急に辞任を求めだしたのは何の理由があるんでしょうか。えーっとまさかとは思いますが「小泉首相が擁護していたから当初はそんな事はいえませんでしたけど(以下激しく自主規制)」って理由ではないですよねえ。
ま、市場で7月利上げ説が濃厚、というか7月利上げ(ただしその次は直ぐには行われない)を前提に動いていることが影響してるんじゃないのって風には思うのですが、タイミング的には・・・・(苦笑)。
ちなみに、ちょっと前のニュースを見てるとこんなのがサルベージされます。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060614-00000232-reu-bus_all
「日銀総裁の村上F問題、金融政策影響せず=山本幸三氏」
この記事にありますように「8月のCPI改定を見てから利上げを検討すべし」ってのが山本氏の見解ですんで。ちなみに何でこの時は辞任云々の話をしてないんでちゅかねえ〜。
なお、ご本人のウェブサイトでそのうち理由についてご説明があると思いますので、それ次第では本稿の扱いが変るんですが、あくまでも現時点での報道内容を元に書いております事をお断りしておきます。
ではでは。
2006/06/29
お題「材料待ちで今日も雑談」
毎日雑談のようだが、ドラめもんは落ち着いて物を考える意欲が無いのかなどというツッコミをしてはいけません。
○国土交通省・・・・・
ネタもねえ(日本はCPIと日銀短観前だし米国はFOMC結果待ちだし当たり前なのですが)のでやむなくネタ拾いの為にNIKKEI NETなんぞを拝見していましたらこんな記事を査収。
『REIT海外投資解禁へ・国交省2007年度にも』→
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20060628AT3S2302927062006.html
どうせリンク先は数週間でリンク切れになりますので、記事の要旨は何ぞやと申しますとお題どおりでして、REITで海外不動産の組み入れを解禁にする方向だそうな。
えーっと、金融庁様におかれましては、最近不動産投信およびファンドに関して、組入不動産の鑑定評価がどうよとかいう観点からご指導に余念が無い昨今でございます。そんな中で国内不動産よりも鑑定がムツカシイ(と思ってますが)海外不動産の組入解禁って国土交通省の方針ですが、何か金融庁のやってる事と方向性が矛盾してねえかと思うのですが。
ちなみに不動産投信に関しては証券会社から出てくるレポートはどう見ても発行体寄りだなあとか、どこぞの公募投信でリリースされてた物件入替をみてたらSPCやファンド間の売買なんだけど、中身をよく見ると入替案件が同じ資本系列からの売買だったのを見て何だかなあと思ったとか、色々と書きたいことはあるのですが、(つーか昨年ちょっと書いたのですけれども、過去の駄文のどこに逝ったか忘れた。鋭意サルベージします)判断材料が少ない(というか単に判断材料を集める努力をしてないだけですが)、まあそんな状況によりあまり話をしないのでありました。
しかしこの規制緩和(まだ検討段階のようですが)は金融庁に新たな悩みのタネを投下する話ではあります。今後の展開を気にしたいと思うのでありました。
○水野審議委員のインタビュー(今更ネタですが)
26日にロイターが配信した水野審議委員のインタビュー。まあ色々と言ってたようなのですが、実はインタビュー全文をまだ入手してないのでヘッドラインとかにしか反応しないのですが、その中で先日の西村審議委員の講演と平仄を合わせた部分が。
『ゼロ金利解除後、連続利上げの思惑高まらない様にすること重要』
まあ水野さんもそういうお話ですから、こりゃまあ流れとしては早期解除して暫く様子見するんですよってお話だと安心したいのですが、こちらのセンセイにおかれましては何せ前科があるので安心できない。
昨年12月1日の講演で水野審議委員こんな話をしてました(12月2日のドラめもんで書いてます)。ちなみに、水野審議委員の発言等の時系列紹介はこちらに→http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/hatsugenmizuno.html)
『また、先行きについても、経済がバランスのとれた持続的な成長過程を辿る中にあって物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、引き続き極めて緩和的な金融環境を維持していけると考えています。展望レポートでも、金融政策の枠組み変更やポスト量的緩和政策における短期金利の水準・時間的経路について、「全体として、余裕をもって対応を進められる可能性が高い」としました。』
ところがいざ量的緩和政策を解除してみたらこのセンセイは3月13日の講演でこんな話をしてました(3月15日のドラめもんで書いたのですが)。
『金融市場では、再び「デフレ」に戻らない「インフレ率の糊しろ」の議論が盛んであるが、将来の景気減速局面で機動的に対応できるマクロ経済政策として金融政策を位置付けるのであれば、「政策金利の糊しろ」は不可欠です。』
おまけに記者会見では(こちらはあちこちで話題になってたのにキャッチアップするのが遅れて何故か4月11日のドラめもんで書きましたが)もっと香ばしい話をしてましたわな。
『今回、量的緩和政策を解除したが、これで終わりでないというメッセージ、すなわち景気のファンダメンタルズが我々の見通しどおりであれば、二の矢、三の矢の量的緩和解除のプロセスが続いているというメッセージを出していかなければならない。』
『挨拶要旨の後半部分では均衡実質金利の話をしているが、私は景気に中立的な短期金利の水準を意識して政策を運営したいと考えている。現在の景気に中立的な金利水準を潜在成長率から計算すると、現在の政策金利は明らかに低すぎる。』
『(潜在成長率を)1.5%〜2.0%として、それに対しゼロから若干のプラスの望ましいインフレ率があると仮定すれば、2%台の政策金利というのは中長期的にみれば十分正しいと考えている。』
・・・・というのを以前見せつけられているので、正直言ってこのお方の「連続利上げの思惑云々」発言は眉に唾をつけて読みたいところであります。勝手な憶測なんですが、そのうち「連続利上げ」というのは「FRBは毎回のFOMCで連続利上げしているが、日銀は毎回の決定会合で利上げを継続する訳では無いので連続利上げではない」とか言い出しそうな予感がします。今の金融市場では「連続利上げ無し」と言われれば半年とかのタームで利上げないでしょって理解をするでしょうし、そういう事は水野さんのことだから重々承知の介だと思うんですが、いざ初回利上げが終わったら「四半期ごとの利上げは連続利上げに当たらない」とか言い出しそうな悪寒がするのは考えすぎですかそうですか。
#ということで本日も材料待ち&本業多忙のため手抜きモードで恐縮
2006/06/28
お題「相場雑談その他」
昨日は日経平均株価の日中値幅が狭かったようですが、髪様のお告げ更新が少なかったことが原因だったと本気で信じるあたくしは髪に毒されてますかそうですか・・・まあ小ネタを少々。
○短い所は7月利上げを織り込んでるようで
本日は3か月ものFBの入札が行われます。今回の新発FBは初の9月末越えで、まさに期初の10月2日償還なので、イマイチ使い勝手が悪い代物でございます。とは言いましても、ここもと2回実施されたFB入札は堅調で、業者の持ちがあまり無い状況になっておりまして、先週発行されたFB395回は0.28%あたりが居場所らしく、まあ既発債から勘案するとそんなに碌でもない結果にはならないものと思料。WIは0.35%とか0.36%とかになっていたので、まあその辺か(ここの所のパターンで言えば)それよりちょっと強い入札になるのか。
どっちにしてもこの水準は7−9月に利上げがあるんでしょっていう価格形成ではあろうかと思います。入札が強いかどうかは最近一部ではやりの小商い「FB買ってGC打ち返し」が相変わらず継続するのかどうか(期末期初が3日あってそこを越える金利はさてどうなるんでしょって意味で)といった所でしょうか。
と、書きましたが、実は既発のFBの価格形成も妙でして、FB395回は0.28%なんですが394回と392回(393回は2か月もの)も0.28%だったりする訳でして、単に入札時点での買いが多かった394と395はショートカバーで引っ張られている気もするので念の為付け加えておきます。
一方でCP金利の方は相変わらず強含みとなってまして、最上位格発行体レートでも1か月物が0.25%あるいはそれ以上になってきましたし、2か月物は0.3%を上回るという状況が継続。どうも発行が多いのかディーラー(CPの場合は基本的にバンクディーラーの持ちになり、証券はあまり持ちにしない)の持ちを圧縮してきてるのかよー知らんですが、ちと重そうな感じ。発行サイドの資金需要も多い月ですし、利上げがどうのこうのとなると発行も増えるってお話なんでしょうかねえ。
いずれにせよ、CPのこのあたりの利回り形成を見てると「7月に利上げがあっても心配ないぜ」という感じになっているという所でございましょう。まー現先利回りも高止まりしてるし。
このあたりの価格形成も「GCが落ち着いてるのに何故かオペ金利やコール金利がドンドン上がる」「特定日になるといきなりコールが跳ねる」「やたらめったらロンバートが出入りする」「CPがどこからか涌いて出たように重くなる」などとあたくしめのような年寄り連中には理解に苦しむ怪奇現象が局地的に発生しているのですが、まあこれはどうも不慣れな参加者が多いのが原因のようでございます。この辺の考察に関してはまたいずれやれればやると言うことでメモ書きだけで勘弁。
○日銀諮問会議設置&関連雑談
日銀からこんな発表が。
→http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/un0606h.pdf
「役員の金融取引等に関する内部規程等の見直しに関する諮問会議」って名前がなげえよと思いながら拝見するのですが、2ページ目のメンバーを見て「うむむ」と唸るあたくし。
いやまあこのメンバーの各人の識見を疑うものでは全然ございませんが、何を基準に選定したのかイマイチよー判らんというのが正直な所。ど〜せ「諮問会議」なんだからもうちょっとインパクトある人として中原伸之元審議委員でもお招きすればウケが良かった気がするんですが。日銀の強い影響の下にあると世間的に認識されている(事実関係はさておいて)短資会社の人(ちなみに加藤さんの能力識見に文句つけてる訳ではないので念の為)をメンバーに入れるのは外部アピール的にちと下手なんじゃないですかと言うあたくしは意地が悪いですかそうですか。まあ能力本位で選んだらこうなったという事だと理解しておきますけど、もうちょっとこう何かアピール度ってのも考えていただけると宜しいのではないかと思うんですけど。
本件どうも福井総裁引くタイミングを逸してしまった感じで、傍観しててひじょーに痛々しいのですが、まあ一通り本件の収拾はやっていただいてからまた改めてお考えをいただきたいものだと思う次第。昨日は小泉首相の毎度お得意の「一般論として」語るヒヤリとする発言が出ました(前日の公明党神崎党首発言を肯定する発言)が、それによって債券先物とか反応しちゃうような市場状況ってのは一頃前からすれば考えられない話でして、まあ日銀の政治からの独立性に関する市場からの信頼が毀損とは言いませんが、微妙に低下しているというのは否めないと思います。
韓リフ先生昨日のエントリー「総裁は「一時休業」するのも案かも」
→http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20060627#p4
本石町日記さん昨日のエントリー「焦点は「2月解約」と村上ファンド捜査の行方」
→http://hongokucho.exblog.jp/5129115/
を読みつつ深く頷くあたくしなのでありました。本石町日記さんの上記エントリーの『避けるべきは、事件が(私から見て)中途半端に終息し、その一方で「濡れ手に泡」という批判に抗し切れずに総裁が辞任を余儀なくされることであろう。肝心なところが不明なまま、なぜか端っこにいた総裁が善意を仇で返され、見当違いの批判で消えていく。こうなると、なんだか不条理劇のようである。』という点に同意ですな。話の方向をワケワカラン所(=ゼロ金利を強いておいて大儲け)へ持って逝った野党(特に民主党)とメディアは逝って良し。
そして、韓リフ先生の上記エントリーの次にあるエントリーの最後の部分『で、もうこの路線対立は完全ネタ切れで各論者のブログをみまわしても情勢変化待ちの状況ですね(=みんな飽きてる状況』ってのは全くその通りでございますね、いやはや何とも。
まあ色々と思うことはあるものの、例によって論理的な書き方ができなさそうなので本件は今後の推移を見たいと思います。ニュース映像を見る限り福井総裁相当お疲れのようにお見受けしますが大丈夫でしょうか。
#そんなわけで本日は雑談モードで恐縮至極でした
2006/06/27
お題「金融政策決定会合議事要旨」
適当に聞き流しているモーサテなんですが、出てくるコメンテーターの皆様に置かれましては、金融引き締めの行き過ぎを「ビハインド・ザ・カーブ」という人がいるわ(オーバーキルでしょ)、チャート上で価格のギャップを埋める動きを「穴埋め」という人がいるわ(窓埋めでしょ)と、おまいらそれでもプロかよと言いたくなるのですが、まあ生放送ですからと聞き流すのが大人の対応ですかそうですか。
で、本日は虫干しシリーズ。
4月28日の議事要旨
→http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060428.htm
5月18、19日の議事要旨
→http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060519.htm
○総じて景気には強気です
まあ一々引用するとこれこそ長くなるのですが、両方の議事要旨に共通するのが「景気に強気」というか楽観というか。まあ4月28日と言えばスティーブン・ローチ先生が見通しをドテン強気にするような時期でしたし、5月17日あたりでも日経平均ベースで16000円はまだキープしていましたので、内容的に強気になっているのはまあそんなもんではあります。
まあ大体こんな感じです。5月分の要旨「金融経済情勢に関する委員会の検討の概要」部分から。
『経済情勢の現状について、委員は、わが国の景気は、内需と外需、企業部門と家計部門のバランスがとれた形で、着実に回復を続けており、マクロ的な需給ギャップは、長く続いた供給超過状態が解消し、現在はゼロ近傍にあるとの認識で一致した。』
5月の金融経済月報にも需給ギャップ云々の記述がありましたな。
○月報での先行き景気が「拡大」という表現に関連して
金融経済月報ベースだと5月に景気の先行き判断を「着実に回復」から「緩やかに拡大」と変化させたというのはご記憶に新しいかと思いますが、この時どういう話があったのかということが5月の議事要旨にございます。「金融経済情勢に関する委員会の検討の概要」部分です(さっきの続きにあたります)。
『先行きについて、委員は、生産・所得・支出の好循環が働くもとで、潜在成長率を幾分上回る成長を続ける可能性が高いとの見方を共有した。その上で、金融経済月報における先行きの総括判断として、委員は、先行きの景気については「緩やかに拡大していく」という表現が適切であるという点で一致した。』
うーむ強気強気。
『何人かの委員は、「回復」から「拡大」への変更は、展望レポートで示したように、経済活動の水準が高まり、マクロ的な需給ギャップの面で需要超過の領域に入っていくとみられることを受けたものであり、成長ペースが速いということを必ずしも意味しないとした上で、「緩やかに」を「拡大」に付しておけば、当面の成長率が潜在成長率を幾分上回る程度であることを明確にすることが可能であると述べた。』
ちなみに4月の議事要旨には『多くの委員は、今回の回復局面は、既に4年3ヶ月を経過しているだけに、景気が「成熟段階」に入っていくに連れ、成長率は潜在成長率近傍の水準に向けて徐々に減速する可能性が高いとの見方を示した。』という表現がありまして、総裁の会見などでも確か同じような見立てが披露されていたと記憶しておりますが、「緩やかに」「拡大」という言葉の意味する所は上記のようなものですって訳だったんですな(大体想像はついたが)。このくだりは月報読みの参考になる話でした(^^)。
○米国経済のインフレ懸念
同じく5月分の「金融経済情勢に関する委員会の検討の概要」部分で米国経済に関してこんな見立てになっているのですが。
『米国経済について、多くの委員は、住宅販売件数などに減速の兆しがみられるものの、現状は家計支出や設備投資を中心に着実な拡大を続けており、先行きも潜在成長率近傍の拡大を続ける可能性が高いとの見方を示した。ある委員は、住宅投資の減速が同国経済に与える影響については、不確実性が小さくないため、注意してみていく必要があると述べた。』
『物価動向について、何人かの委員は、労働需給の引き締まりや設備稼働率の高さを踏まえると、原油価格を含めた商品市況の上昇とも相俟って、インフレ圧力が高まってくるリスクには注意する必要があるとの見方を示した。複数の委員は、インフレ・リスクは既に顕在化しつつあり、金融政策の舵取りがより重要な局面となっているとコメントした。』
米国経済のインフレ懸念ですか。先日ご紹介した総裁の講演(日本記者クラブ)でもグローバルなインフレ懸念節が炸裂しておりましたので、こんなのも出るだろうなあとは思いつつも、やはりこう「今は利上げゆっくりと言ってるけど、いざ利上げしたらインフレ懸念持ち出すんじゃネーノ」って懸念は拭いきれないのであります。あたくし的には経済情勢が(政治ではなく^^)そう簡単に次の利上げ前のめりを許さんとは思うんだが・・・・
○市場機能の回復orz
これまた5月の議事要旨「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」から(ちなみに4月28日はその部分殆ど無しのすけ状態)。
『別の複数の委員は、当座預金残高の削減が進む中で、短期金融市場の取引は増加傾向にあり、今後も市場取引の回復が期待できるとコメントした。』
正直、その話はせんで宜しいと思うんですが。金利が上がれば短期金融取引で収入が期待できるから参加者も増えるでしょうし、取引も自然に活性化する話ですから、「犬が西向きゃ尾は東」みたいなお話。殊更にその点を話題にすると、「短期金融市場の活性化のために利上げは本末転倒も甚だしい」ってツッコミが飛んでくると存じますが。
○まあそれはそうなんですが
5月の連休明けに俄かに飛び出して大騒ぎになった「6月利上げ観測」に関連したお話。これまた5月分の「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」から。
『金融市場で一時早期利上げ観測が高まったことに関連して、何人かの委員は、市場は、量的緩和政策のもとでのコミットメントのような異例に明確な政策の運営指針に慣れてしまっているため、より具体的な基準を求めがちであり、当座預金残高の削減ペースなどから、利上げのタイミングを読み取ろうとする向きも少なくないようであると指摘した。複数の委員は、当座預金残高の削減は利上げに直接リンクしていないことを改めて説明していく必要があると述べた。』
まあこの時の早期利上げ観測って大騒ぎしてたのは海外でして、海外の売り叩きに例によって例の如くバンクのALMがヘッジ入れだして反応したのでなお大騒ぎになったと理解しております。で、本件と話が違いますが、最近短期市場で話題というか笑いになっているのは「次回の利上げが0.125%とか0.15%になる」という説でして、これもまた海外方面からやってきてるらしいのですが、どうも先日の日銀総裁発言の「小刻みに」金利の調整を行うという「小刻み」をそう解釈したお話だそうな。
いやね、6月利上げの話が出た時もそうなんですが、金融政策がらみでは短期金融市場界隈からみると「はぁ?」って珍説が海外(や他市場)から飛び出して来る事が多くて、まあそれに対して丁寧に説明することも大事っちゃあ大事なんですが、どこに向けて説明すれば良いのかというのもこれまたムツカシイですなあと思う次第。
まあ本職の人でも「ロンバート金利先行引上げ」などという珍説を披露するケースがございますので(笑)、気が遠くなるようはお話かもしれません。
○3つ併記のシナリオ
同じく5月の要旨の続きで最後の部分でこんなのがありました。便宜上段落分けしてますが、この部分は一つの段落です。
『この間、一人の委員は、実質成長率のトレンドと実質短期金利の乖離はかなり拡大しており、経済・物価が見通し通りに展開していく中では、緩和度合いが強まり過ぎるリスクに注意しながら遅過ぎることがないように適切な政策運営を行う必要があると述べた。』
『別の委員は、最近の内外株価の下落や国際商品市況の乱高下などが市場に不安心理をもたらしていることにも配慮しながら政策を運営していく必要があると述べた。』
『さらに別の委員は、資本設備の経済的陳腐化の影響は次第に薄れつつあるが、現状は投資の限界収益率が極めて低い水準から緩やかに上昇し始めたばかりの段階であるという見方を披露した上で、いつまでもゼロ金利を維持することは不適当である一方、物価上昇率が目立って加速しない限り、物価安定と整合的な金利の上昇テンポは緩やかなものになると指摘した。』
最後のは西村審議委員でしょう。先日の講演と同じ話ですから(^^)。
3つ並んでますが、金利早期上げ方向の話に慎重論がサンドイッチになっているという書き方を見ると、まあ初回に関しては早めの利上げって話になるんでしょうなあという雰囲気を勝手に感じてしまいました。
ま、6月の月報で株価下落は心配ないぜとばかりに5月と全く同じ内容にしてきた件に興味がありますので、あたくし的には6月の議事要旨まだ〜って茶碗を箸で叩きたい気分でございます(^^)。
2006/06/26
お題「野田審議委員と西村審議委員の記者会見」
○野田審議委員就任記者会見(6月19日)
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0606d.htm
就任記者会見が行われたのが6月19日でしたので、質問が福井総裁のファンド出資問題絡みが多くて金融政策絡みの話が殆どございません。
・さっそく総裁語録が飛び出すのであった
冒頭での発言から。
『ご指摘の通り、5年間にわたる量的緩和政策が終わり、それから早3か月が経ちましたが、こうした日本経済、あるいは日本の金融政策にとって、言わば屈折点と言えるような時期に日銀の審議委員を拝命致しまして、かつてない程の緊張感を覚えております。』
屈折点ってのは福井総裁が講演(要旨の残らない奴)で「インフレクションポイント」と発言して講演聴いてた時事通信とブルームバーグがどっちも「インフレーションポイント」と聞いてしまってフラッシュが打たれたという曰く付きの総裁語録の和訳になりますわな。
本件に関しては本石町日記さんのところで既に指摘されているので2番煎じで恐縮ですが、レクはしっかりと受けておられるようですなあという感が。しかも総裁語録をさっくりと出して来る所なんざあニクイねえ。
ちなみに、物凄く下らない揚げ足取りになるのですが、冒頭の発言の中で野田さん『銀行時代、あるいはその後の実業界での経験』って言ってるんですが、経歴を拝見するにみずほFGの副社長退任後にお勤めになった2つの企業は旧第一勧銀のバリバリのファミリー企業で、それは一般的には「実業界経験」とは言い難いものがございますので念の為。
・手堅いお方です
潜在成長率、物価水準、株価についての質問に対して。
『まず潜在成長率のご質問ですが、これにつきましては私も勉強途上であり、1%の上の方とか、あるいは2%を超えるのかといった細かいところまでの見解は持ち合わせておりません。最優先の勉強課題であり、今後良く勉強してみたいと考えておりますが、今この場でいくらということは申し上げられません。』
多分これは掛け値なしだと思われます。
『2点目の私が考える安定した物価水準はどの程度かというご質問ですが、そもそも中長期的に安定した物価水準の理解というものは、各委員がそれぞれ示しているのでしょうが、誰がいくらとは公表されているわけではないので、私がこの場でいくらですとピンポイントで申し上げることは、いささか適切ではないと思います。もちろん私なりの考えとしては大体この辺りかなというのはありますが、ここでピンポイントでお示しするのは適切ではないと思います。ただ、あえて申し上げれば、確か中心値が1%を中心にばらついているといった表現であったと記憶していますが、それ自体は私にとっては違和感のない数字ではないかと認識しています。』
実に模範的な回答です。まあこれからどうなのかは見えてくるとは思うんですが、この後に紹介する過去の金融政策に関する何とも表現が微妙な評価から勘案すると基本は大勢順応にしても、ハトになる素地はあるような気がするのは気のせい?
『3点目は現在の株価水準についての評価につき、ファンダメンタルズと比べてどうかということですが、株価についての評価は個人的には持っていますが、私の今のこの立場で株価水準についての評価を申し述べるのは適切ではないと思いますので、回答はご容赦願いたいと思います。』
具体的な水準について言及しないのは実に正しいですな。
総じて言えるのは「非常に手堅い応答話法をする方だ」という所。まあ日銀Webにある略歴を拝見すると銀行の企画畑っぽいお方なので、手堅い対応はお手の物なのかもしれませんな(中原前審議委員は為替資金畑だったかと)。
・過去の金融政策の評価に関して
新日銀法になった98年以降の金融政策の評価に対して。
『ただ、あえて申し上げれば、98年の日銀法改正後の日本経済は、正に私もその中に身を置いていたのですが、極めて混乱と言いますか、未曾有の状況であったわけでございますので、後の評価では、様々なことが言えると思いますが、そのプロセスの中で、混乱の中で政策を執行してこられた先輩方のご苦労に対しては、一定の評価は差し上げたいと思います。』
『この種のものは、いわゆる総括として様々なことが評価できると思いますが、今申し上げたように、私にとっては非常に難しいことです。ただ、混乱の中での大変なご苦労については、一定以上の評価をしたいということでそれ以上の回答はご勘弁頂きたいと思います。』
「ご苦労に関しては大いに評価します」ちゅうのは要するに結果に関しては評価致しかねますなあって事でしょう(と勝手に解釈^^)。ま、これから日銀で仕事しようって状況で露骨に喧嘩を売っても仕方無いというのはよく理解できますので(^^)。
その他の質疑は殆ど全部ファンド出資問題及び関連事項になっておりました。はーこりゃこりゃ。
○西村審議委員記者会見(6月22日)
なぜこっちはPDFになってるの?HTMLの方が軽くて良いんですけど。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0606f.pdf
・ゼロ金利は長期化させないけど金利はゆっくり上げるというスタンス
3ページ目で「ゼロ金利が長期化することの問題点を指摘してるように見えましたが」という質問がありましてそれに対する答えから。
『この点については、はっきりさせておく必要があると思います。文脈を読んで頂ければご理解いただけると思いますが、基本的に展望レポートをパラフレーズしています。従って、私の考えが変わったとか私のスタンスに変化があるということではありません。展望レポートの第二の柱を皆さんにきちんと理解して頂きたくて、ここに詳細に書き込んだということです。』
『全体のトーンは、これまで申し上げてきましたように、金利の調整は、非常にゆっくりと非常に慎重に行われるだろうし、行われるべきだと考えています。これは2月に行われた高松の金融経済懇談会でも申し上げたし、他の様々な場面でも申し上げているとおりで、これまでと何ら変化はありません。』
で、その次に「目先数か月以内にゼロ金利を解除する姿を排除しているのか」って質問があったのですが、それに対しましてはこのように答えて目先のゼロ金利解除に関しては否定していない訳です。
『そういうつもりで申し上げている訳ではありません。ゆっくり慎重にというのは、正にゆっくり慎重にということです。しかし、判断そのものは、その時点その時点でしなければいけない時はしなければなりません。その時に利用可能なデータから将来の日本経済の姿を見通しながら、そして金融政策は、短期ではなくより長いところで影響を及ぼすことを頭に入れながら、その時点できちんとした判断をすることになります。』
利上げ→様子見→利上げってプロセスでやっていくんでしょう。当面は。
・比喩のお好きな方ですな
金融政策に関連する質疑は実はこのくらいしかなくて(そもそも質疑応答がPDFで8ページなんで大した量は無い)例によって総裁のファンド出資関連問題の質疑だらけです。そんな訳で経済に関するお話は冒頭部分になりますが、そちらではこんな話をしておりました。
『本日の金融経済懇談会では、私から格差というか「ばらつき」について話をしました。同時に「ばらつき」が「しぶとさ」を生み出しているというか、「ばらつき」があって「しぶとさ」が重なるかたちで、今の景気の状況があるということを話しました。』
講演がそもそもそういうお題で話をしていたのですが、長期化する量的緩和政策を「モルヒネ」と言って見たり、1冊だけ読んだ著書もそうなんですが、比喩がお好きな人だなあと思うのでありました。だからどうだと言われると困りますが。
#ということで、月曜らしく(?)ネタの虫干し系で勘弁でございました
2006/06/23
お題「西村審議委員講演」
基本的には「ゼロ金利からの脱却は早期に行う」けど「初回利上げ後は暫く様子見」というお話ではないかと思います。昨日の福井総裁の「早めに、小刻みに、ゆっくりと金利調整」ってのとまあお話は同じですわな。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0606f.htm
やたら話が長いのですが、とりあえず目に付いた所を少々。
○市場が反応した部分
ゼロ金利政策の長期化に対するリスクに対して言及したのは講演の最後の部分になります。反応した部分の前段部分から引用します。
『まず、「物価の安定と整合的な実質利子率」の水準は、今まで説明した「投資の限界収益率」に等しいことに注意が必要です(理論的に正確に申し上げますと「名目硬直性のない時の投資の限界収益率」で、資本の経済的陳腐化以外にショックがない場合ですが、簡単化のため、条件が成立しているとして説明します)。とすると、「物価の安定と整合的な実質利子率」も現在は低位にあるがプラスであり、そこから緩やかに上昇していくと考えられます。』
で、市場が反応した部分(というかヘッドラインを打たれた部分というのが正しいが)はこの先になります。長いので段落分けします。
『実際の実質利子率が、長期に亘ってこの「物価の安定と整合的な実質利子率」よりもかなり低い状態が続くと、資源配分上無視できない無駄な過剰投資を呼び起こし、将来の経済の振幅を大きくしてしまう可能性があります。従って、物価上昇率が低いながらもプラスに定着してきている状況で、名目利子率を極端に低いレベルに長期に置き続けることには、長期的にみると、起こる可能性は小さいかもしれないが、起きた場合には相当な問題を生じさせてしまうリスクが伴います。』
この部分に反応したわけですが、この続きでは「ゆっくりと」の話をしていたりします。
『と同時に、「物価の安定と整合的な実質利子率」が非常に低いレベルから緩やかに上昇していくということは、物価上昇率が目立って加速されない場合は、「物価の安定と整合的な実質利子率」を達成するために必要な名目利子率も、非常に低いレベルから出発して、緩やかに上昇させるだけで十分であり、従って急速な名目利子率の上昇は望ましくないということになります。』
『ただし、外的なショックがあれば、それも勘案しなければなりませんので、時点時点での慎重な検討が必須となることが分かります。』
そういうことでございますので、暫くは「早くゼロ金利から脱却するけどその後の金利調整はゆっくりと行いますよ」ってお話が審議委員の皆さんから出てくるようになるんでしょうな。はー地均し地均し。
で、本来この「ゆっくりと」にもっと反応しても良さそうな物なのですが(ちなみに1年どころの金利を妙に下げようとしている人はいるんですが、金先は兎も角、1年TBは0.4%後半から0.5%前半で推移してるんで、一応向こう1年間で2回強の利上げというシナリオで割と安定推移してるという印象ですが)、そんなにビビットな反応しないのはまだ「ゆっくりと」に対して半身なのかなあと勝手に思ってます。
まあ基本的に景気失速をあまり見て無いとか、グローバルな利上げトレンドがあるというのもあると思いますが、あたくし思いまするに、量的緩和政策解除の時には解除前に「低金利継続」って取れるような情報発信が続いてたのに、いざ量的緩和解除をしたらいきなりどこぞの審議委員方面から「中立的な政策金利がどうしたこうした」という話が出てみたり、総裁方面からは「蓋然性が低くても発生した場合に大きな問題になるリスクに対応」という話で資産バブル警戒話が出たと思ったら先日の講演にあるように「グローバルなインフレ懸念」ってお話が出てみたりという前科(というか現在進行形ですが)があるのも効いてるのかもしれないと勝手に考えています。
まあ実際にそこまで考えて皆さんが動いているかどうかは知りませんが、やっぱ半身になっちゃうんじゃないかなあと・・・・
○景気に関しては比較的コンサバに見てる印象
景気のリスク要因に関しての部分です。『(4)当面のリスク要因』って所です。
『そこで、以下では今後注意しなければならない当面のリスク要因について、いくつか指摘したいと思います。』
『第一のポイントは、米国経済の動向です。同国経済については、特に住宅市場の見通しが一つの鍵になると思われますので、この点について私見を述べさせて頂きます。』
ということで、リスク要因を解説してますが、その辺は端折って結論。
『いずれにせよ、鍵は「住宅市場の減速が目立った価格の下落をもたらすか否か」ということです。この点については、今後の推移に十分に注意しなければなりません。』
メインシナリオはソフトランディングなのですが、リスクに関しては十分注意というコメントになっています。
『第二のポイントは、中国経済の動向です。中国は、固定資産投資が高めの伸びを続けるなど引き続き高い成長を続けており、景気過熱に対する警戒感を指摘する声も出始めています。今後も2007年の党大会、2008年の北京五輪、2010年の上海万博、と政治的にも経済的にも大きなイベントが目白押しです。その一方で、2008年の北京五輪後の経済失速を懸念する声、深刻化する水不足や環境問題などを懸念する声などが引き続き聞かれており、予断を許さない情勢が続いています。』
ということで、こちらに関してはメインシナリオは無事だけど、結構リスクを意識した表現になってます。
『しかし、現在のところ微妙なバランスの中で安定していること、いずれの問題も抜本的な問題解決にはなお時間がかかりそうなこと、を考慮すると、政治・経済の両面から思わぬ波乱があるかもしれません。』
ということで、米国と中国という日本経済に思いっきり影響与えそうな海外経済のリスクに関しては、このように結んでいます。
『このように、米国・中国ともに引き続き景気や経済情勢の判断については、微妙な局面にあることは留意しなければならないでしょう。』
そしてポイントはまだまだ続くのですが、ややおとなしくなってきます。
『第三のポイントは、新興国、特に同地域向けの輸出の動向です。』
ということで、こちらに関しても詳説してます。これまた引用すると長いので内容は講演テキストをご覧になられたいと思うのですが、円の実質実効為替レートが世界規模で見た場合に最安値圏にある点に注目しています。
『第四のポイントは、世界的な商品市場の動向、特に原油価格や素材価格の影響です。』
こちらに関しては説明はあるものの、景気減速とリンクした話にはなってないように読み取ったのですが、まあ講演テキストをご参照下さい。
『さらに、商品市場の乱高下に加えて、最近の世界的な金融市場の乱高下にも、注意をする必要があるのは言うまでもありません。ここのところ続いてきた金融環境の微妙な変化に対する調整のプロセスであり、新しい均衡を探る動きであると考えるのが自然と思われますが、注意深く見守っていくことになります。』
と金融市場動向にもさらっと言及。
『第五のポイントは、個人消費の増加基調の持続性です。』
この点に関しては「消費の二極化」というキーワードで話を展開してまして、これまた全体的な景気減速話とは結びつかないように見えます。
『このように、個人消費の着実な増加傾向は、今後も持続する可能性が高いとみていますが、消費者の選好と企業の商品のミスマッチがどのような影響を消費に与えていくのか、今後引き続き注意してみていく必要があります。』
何か全体の話と個別の話がごっちゃになっている気がせんでもないのだが。
で、結論としては・・・・
『以上を踏まえますと、わが国経済の短期的な見通しにつきましては、当面は「拡大」というメインシナリオを維持することで大きな問題はないと思っていますが、上述したようなリスク要因もあり、これらが顕現化する可能性も頭に置く必要があるのではないかと考えています。』
となっています。まあ後半の2つのポイントは兎も角、外需に関しては結構リスクを意識している感じでして、昨日ご紹介した福井総裁の楽観シナリオ(がメインシナリオなのは西村さんも同じですが)と比較するとリスク要因に関しての意識が強いという感じではないかと思います。微妙なハトになる可能性がありそうですにゃ。>西村さん
2006/06/22
お題「福井総裁講演続きと記者会見」
その前に昨日のニュースでちょっと気になったこと。
○首相発言&官房長官発言のトーンが・・・
こういうのは報道だけで判断するのは慎重にしないといけないのでメモメモ程度なんですけど。
昨日のブルームバーグニュースが報じる(12時38分配信)ところによりますと、小泉首相は福井総裁の「早め」発言に対して官邸で記者団に対して「金融政策は、政府と協力し、日銀としてどう判断するかだ」と発言したそうです。また安倍官房長官は福井総裁の村上ファンドへ資金拠出問題に関して、午前の定例会見で、福井総裁に職責をまっとうしてほしいという考えに変りはないとしながらも「国民の信頼が必要だ。やるべきことをしっかりとやってほしい。資産公開など内規の見直しをすべきだというのが国民の声。これなしに国民の信頼を得ることは難しい」と述べた(11時49分配信)そうです。
どっちもちょっと引っ掛かるなあ。最近の首相は金融政策に関しては「日銀が独自に判断すること」という言い方(イヤミっぽい言い方の時もありましたが^^)をしてたように記憶してるんですが、一般論としての政府と協力というのは見たことあるけど、日銀の判断という言葉の前に「政府と協力」って言い方してたかなあとちょっと気になります。官房長官は福井総裁の村上ファンド出資の件に関して「国民の信頼」という言い方でちょっと厳しい言い方してるなあと。うーむ。
○総裁講演の金融政策運営に関する部分(昨日の続き)
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0606e.htm
講演後半の『低インフレ環境下の金融政策運営』以降から。
『ところで、少し理論的な話になりますが、低インフレ下における金融政策運営の難しさとしては、これまで主として、デフレ・スパイラルのリスクへの対応という論点が意識されてきました。』
『低インフレ環境においては、一般に、名目金利は低いと考えられますので、金融政策運営上も名目金利のゼロ制約の問題が生じやすいと指摘されています。(途中の説明割愛)わが国でも、1990年代終わり頃から、こうしたリスクが強く意識されるようになりました。現在は、金融システムの安定が回復し、企業の設備、雇用、債務の過剰が解消されていることから、このリスクは小さくなっていると考えられます。』
ほほう。
『一方、低インフレ下で厳しい経済状況に見舞われたときの対応として大幅な金融緩和を行い、経済活動が上向いてきた後には、上振れ方向へのリスクを見極めつつ、金融緩和の度合いをどう調整していくか、非常に微妙な金融政策の舵取りが要求されることになります。』
『例えば、インフレ率の変動には慣性が強い傾向がありますので、経済の需給バランスが逼迫してきても、実際のインフレ率やインフレ予想はさしあたり低水準のまま落ち着いている可能性が考えられます。こうしたもとで、過度の金融緩和を続けることは、経済の一時的な過熱とその反動という形で、経済の振幅を大きくしてしまうリスクを内包しています。』
ということでこりゃまたインフレ警戒全開モードですな。昨日ご紹介した「グローバルインフレで金融引き締め状態という現状認識」と合わせますと、我が国でも金融の過度の緩和は好ましくないって論理展開になっていると見ました。うーむ地均し地均し。
『近年、わが国だけでなく海外を含めて、規制緩和や情報通信技術の発展、経済のグローバル化といった構造的な変化によって、需給ギャップの変化に対する物価上昇の感応度が低下傾向にあります。中央銀行としては、短期的に物価の感応度が低下している分、中長期的なリスクをしっかり見極め、的確に対処していかなければなりません。このことは、金融政策は、十分先行きを展望し、フォワード・ルッキングに対応していく必要があることを示唆しています。』
早めの対処って話でございますな。
それと、まあここの所記者会見などで「今後の判断は総合的に」って話もしてはいるので驚かないのですが、改めて講演テキストとして読むと「これは・・・・」と思うくだりが最後の方にしらっと。
『また、情勢判断に当っては、量的緩和政策の時の消費者物価指数のような、特定の指標にウエイトをかけた判断を行うのではなく、様々な指標や情報を丹念に点検し、全体としての経済・物価情勢を見極めていくことが大切だと考えています。』
それはそれで一つの考え方ではございますが、それなら量的緩和政策の解除をした際に鐘や太鼓を打ち鳴らしながらご披露されました「新たな金融政策運営の枠組みの導入」にあった「中長期的な物価安定の理解」はありゃ一体全体何だったんでしょうかと小一時間問い詰めたくなる訳でございます。
○総裁記者会見(20日)
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0606e.pdf
文書のプロパティ(文書の概要)を見て全米が泣いた。22日0時・・・・・
例によってファンド問題への質疑なのですが、国会での参考人質疑よりも100億倍まともな応酬となっておりますわな。お読みになると(って23ページもあるのですが)ワイドショーや某野党が喚く「ゼロ金利を強いていながらお前は大儲けでケシカラン」というような質疑は見当たらずですな。まあ読んだのですが、ど〜見ても福井さん本件に関して認識甘かったですなあって感じです。
それはともかくとして、「早め」発言に関する総裁の会見での説明。長いので適当に段落わけしますが。
『フォワード・ルッキングな政策運営と「早めに」ということは、表裏一体のものとして理解して頂きたいと思います。「早めに」と言った場合、市場が何月だと予測しているのに対して早めというような感覚で言ったわけではありません。そういう意味ではありません。』
『フォワード・ルッキングというのは、ずっと先々まで、かなりロングランに見通して、物価安定のもとに景気の波の小さい望ましい経済の姿を実現していくというように、ずっと先まで見通して、例えば、企業の設備投資は強い方が望ましいかと言えば、強すぎると後で大きな波が生ずるから強過ぎてもいけない。これは強すぎると明確に認知出来るところまで行ってしまうと、遅すぎるということであるので、非常に難しいのですが、そのことを「早め」に察知するという意味です。フォワード・ルッキングと裏腹な関係にある「早め」というように是非理解して頂きたい。市場の中で短期的にいつ頃利上げがあるのかという観測がある中で、一番「早め」というような次元の話ではありません。』
いやそれは普通マーケットは「早期利上げ」って理解するぞよ総裁。何でフォワードルッキングだけで発言を止めておかないのかねえ。まあフォワードルッキングを強調しても十分に「早期利上げ示唆」でございますけどね。
2006/06/21
お題「話題だらけの火曜日でしたが・・・・」
ネタだらけの一日でしたが、まずはそれらネタ案件に関して一言脊髄反射。
・4月28日の金融政策決定会合議事要旨
→どう見ても強気です。本当にありがとうございました。
・5月18、19日の金融政策決定会合議事要旨
→どう見ても強(以下同文^^)
・日本記者クラブでの福井総裁講演
→わざわざ不規則発言した意味は何なのかな?
・村上ファンド問題の記者会見
→ここまで大問題になるという認識に欠けた対応が火に油を注ぎましたな。
・2489アドウェイズ誤発注問題
→立花証券は間抜けですが東証の対応にも疑問が・・・
ということで誤発注問題から。
○東証の対応にまた悪態をついておきます
昨日株式公開した2489アドウェイズで誤発注が発生しました。まあ今回の誤発注は発行済み株式数15000株に対して1482株(発注したのは2600株)なので大株主から借株してじっくり構えていれば適正価格水準+α位では買い戻せるでしょうって量なので実は大した問題では無いのですけど。
立花証券が間抜けなのは言うまでも無いですが、東証の今回の対応も意味判らん。
今回の場合は早い段階で「立花証券が誤発注した」とアナウンスしたのは、前回のジェイコム株式事件で批判されたことを受けたのでしょうが、「誤発注がありました」とアナウンスするだけしておいて売買停止にしないという東証の対応は甚だ疑問。まあ当然ながらその後は買い注文がわさわさと集まってストップ高で買い超引けずの巻になったのですが、そりゃまあ「ここで大量誤発注がありましたよ〜」ってアナウンスして場を開けておけば「どうぞ火あぶりにして下さい」って言ってるようなもんでしょうに。
一応こういう時はある程度収拾策のメドつくまで板を止めるとかした方がよいのではないかと思うんですけど・・・・・
○「早い」利上げですかそうですか(日本記者クラブでの講演)
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0606e.htm
講演テキストには無かったのですが、話題が集中したのは今後の金融政策について「早め」の対応に言及したこと。
曰く、「早めに、小刻みに、しかしゆっくりと政策対応していく」だそうで、ブルームバーグテレビでは発言のシーンも放映して下さっております。
で、まあわざわざ講演テキストに無い発言を入れてしかも「早め」という文言であれば市場に火が付くのは当たり前でして、もともと米国の継続利上げ観測やら、ここもとの世界的な政策金利引上げの流れから反応しやすい地合いに良質の燃料になりました。2年も4甘で0.8%になり、いつも過剰反応することで高名なユーロ円金先はだだ売られ状態。
その後の記者会見で「早めに」というのは「フォワードルッキング」の意味だっていう趣旨のお話をしたらしいのですが、どう見ても証文の出し遅れです。本当にありがとうございました。
で、まあ今回は「総裁のファンド出資問題で7月の利上げが困難になったですなわっはっは」という市場の声に反応したのかどうかは知りませんが、本発言に関しては「7月利上げ困難との市場の見方(=政策判断の独立性への疑問)が生じた為に殊更に利上げへの意欲を見せた」という見立てのレポートを拝見しちゃいました。まあそういう見方は思いっきりあり得る話ですが、何と申しますか日銀にとって非常に不幸な状況になりつつありますなあという感は強いわけですよあたしゃ。
この調子で何とも中途半端な市場環境が続いた場合に、7月に利上げすればしたで「独立性を殊更強調した逆切れ利上げ」と悪態をつかれ、先送りすればしたで「政治圧力で利上げを先送りした」と悪態をつかれるのが目に浮かぶようでございます、ってそういう光景を勝手に目に浮かべるあたくしがひねくれ者ですかそうですか。
ま、あたくし的には(韓リフ先生ブログの「暗黒大陸」さんのコメントの受け売りですけど)7月の決定会合で再発防止策と日銀の中立性とは何ぞやというポリシーを出して頂きまして、0.25%の利上げを花道に福井総裁ご退任ってのが美しい引き際じゃないのかって思うのですが。何か昨日の新聞見てると別件ネタで延焼の悪寒もしますし・・・・総裁の個人的問題の炎上に金融政策を巻き込まないで頂きたいのですけどねえ。NHKニュースの総裁の進退に関する言い方がちょっと怪しいのも気になりますし。
まあ民主党が無茶苦茶な論点で本件を政争に使おうとしてるのが非常に話をややこしくしている訳でして、本来この問題は中央銀行の公正中立とか独立とは何ぞやという重要な論点で前向きな話に発展できる話なのですが、民主党がぶち壊しでございます。こういうのを国賊というのですな。民主党逝って良し。
・・・と、話が横に逸れまくりましたが、さてその講演テキスト。
内容は基本的に景気に強気カンカンになっていまして、また地均しか!と言いたくなる(また福井一座の地均し芝居開始ですかあと頭も痛くなる)のですが、それは先日公表された金融経済月報が平均株価大幅下落にもめげずに同じ内容だったことから勘案すると何ら不思議はございません。
・グローバルな「インフレ懸念」に言及
『わが国経済の先行きを展望するうえで、重要なリスク要因の一つは、海外経済の動向です。』
ということでお話が展開されていますが、米国についてはこんな話を。
『先行きについては、今申し述べたような景気の減速傾向が、米国経済全体のソフトランディングにうまくつながり、ひいてはインフレ懸念の沈静化をもたらしていくかどうかが重要な着目点になっています。』
で、欧州や中国に関しては・・・・
『ECBでは、原油高の物価面への波及を抑制しつつ、息の長い景気拡大を続けるために、昨年から慎重に金利を引き上げています。』
『また、中国も、極めて高い成長が続いており、最近では、マネーサプライ・貸出の高い伸びや設備投資の増加に対応するため、金融引締め策が講じられています。』
『世界経済は、2005年に5%近い成長を達成しました。こうした世界経済の拡大は、物価上昇圧力が抑制される中で、安定的な金融環境が維持されたことに支えられてきたという側面があります。今後、グローバルなインフレ懸念を抑制できるかどうかは、そうした安定的な金融環境を維持していくうえで重要な条件であると考えられます。』
インフレ懸念と金融引き締めネタが満載の印象を受けましたが。
・国内設備投資に関して過熱リスクを指摘
『設備投資につきましては、先ほども申し上げましたとおり、同じストック面の調整ではありますが、短期的な上振れ要因であると同時に、やや長い目でみると、その後の反動のリスクも含め、経済活動の振幅を大きくする要因として考えておく必要があります。』
ということで、設備投資の先行きに関しては『設備投資によって資本ストックの水準が高まって行きますので、設備投資の伸び自体は次第に鈍化していくと考えられます。』という話になっているのですが、その後に延々と過熱リスクに言及しているわけですな。
『特に需給ギャップがゼロ近傍になっているもとでは、設備投資が行き過ぎ、経済がさらに上振れていく場合には、いずれ反動がくる可能性が高くなります。今のところ、設備投資の行き過ぎが生じているという証左はありません。企業は、厳しいグローバルな競争環境などを意識して、必要な分野を選別しながら経営資源を投入していくといった形で、メリハリの効いた行動をとっているとみられます。』
『もっとも、金融環境は極めて緩和的な状態にあり、企業の投資行動が一段と積極化しやすい環境となっているのも事実です。実際、わが国の実質短期金利は、現在マイナスであり、足許3%を上回っている実質成長率や1%台後半とみられる潜在成長率と比較して極めて低い水準にあります。また、金融システム面の改善が進み、民間金融機関は積極的な貸出姿勢を維持しており、民間銀行貸出は、昨年夏以降前年比プラスになった後、プラス幅が次第に拡大しています。』
どう見ても過熱警戒モードです。本当にありがとうございました。
で、上記部分にありますように・・・・
『実際、わが国の実質短期金利は、現在マイナスであり、足許3%を上回っている実質成長率や1%台後半とみられる潜在成長率と比較して極めて低い水準にあります。』(さっきの再掲)
ということでございますので、政策金利の調整が必要ですよって話に展開されるのですが、量と時間の問題で続きは明日にでも(こら)。
2006/06/20
お題「小ネタで勘弁」
早速民主党にブーメラン飛んできましたな。追及の仕方が思いっきりピンボケで及び腰なのは何ででちゅかね〜って市場では笑いのネタになってましたよ民主党さん。だから民主党は・・・・・
ま、今朝のニュース見てるとまた燃料投下の予感。
○2か月物金利の不思議
昨日の市場はまあ閑散でしたが、そんな中で先週から継続の6か月以内TBFBじりじり買われる攻撃で先週入札が行われた3か月FBは0.3%割り込みまして0.29%の気配です。
で、ちょっと不思議なのは2か月ものでして、先週の入札もやたら強かったのですが、昨日も確りしてまして恐らく0.18%とか0.19%とかのレベル。足元のGCレポ金利やらコール金利やらが下がりにくい(さすがにGCの0.11%から上は中々上がらないようですが)状況にあるのにも関わらずこの金利というのはもう思いっきり「7月利上げ無し」モードですな。
一方でCPの金利なんですが、先週金曜が20日スタートの新発が出た日でして、まあ発行はそこそこあったらしいのですが(昨日は閑散)a-1格の中でもまあ格上銘柄とされる銘柄の2か月もので0.27%〜0.29%程度のようでして、こっちは「7月利上げリスクを結構意識」モードになっております。
この差が信用リスクスプレッドなのかというとそういう訳でもなく、3か月とかになるといきなりFBとCPの金利差が縮小するのがまたオモロイ。では何でそうなるかっちゅうのはイマイチよく判りませんが、あたくし思いまするに毎度お馴染みの「購入層の違い」って奴ではないかと思います。CPの場合は基本的にそうパカパカ業者間で転売できるような代物ではなく、現先玉にするか、持ち切り前提の最終投資家に売却するかってのが使い道。これに対してFBの場合は業者間でも流通しますし、いざとなれば日銀の短期国債買入もあり、ついでに国債だから海外の投資家さんも買うし、長期債投資をしてる投資家も買いますよと購入層の幅は格段に広い。
長期債投資の退避資金が流れるとかのケースだとあまり金利水準の細かい所まで気にしませんが、短期市場の国内最終投資家は持ちきった場合の保有期間中の足元金利や現先利回りに対して勝つか負けるかって点を細かく気にしますので、7月に利上げがあった場合のリスクをより一層意識するんでしょうなあという所が「2か月だけ短期国債とCP利回りが開いている」原因なのかなあと思います。
ま、FBの場合2か月の発行が薄くて需給が一方方向に振れやすい(というか普段品薄でたまにゲロゲロになる)のですが、CPの場合は1〜3か月の発行が色々ある(その時々で微妙に発行期間に偏りはありますが)という需給要因もあるかとは思いますけど。
○野田審議委員就任記者会見
会見の録画をブルームバーグプロフェッショナルの放送で拝見。就任のタイミングのせいで総裁のファンド拠出問題の質問がやたら多かったの事もありますが、やたらと慎重な物言いが目立つ人でもあります。で、経歴を見るとこんな感じ。
http://www.boj.or.jp/type/list/pb_member/noda.htm
どう見ても企画エリートです。本当にありがとうございました。
ちなみにみずほFG副社長の後に就任している清和興業と中央不動産ってのはもう思いっきり旧第一勧銀の関連企業です。
いやまあ別に企画エリートが悪いとか言う気はさらさら無い(生涯一職人を目指すあたくしには理解致しかねる世界ですが)のですけれども、前任の中原審議委員(東京銀行→東京三菱銀行出身)が量的緩和解除に対して一人で反対票を投じたようなお方でしたので、野田さんには申し訳ないのですが、やはり何だかなあって感は否めません。正直、最近の政策委員の選定基準が意味判らん、というか総裁寄りの人が多いですなあって意味は判るんですがね。
ちなみに、特に変った話はしてませんでした。現状の展望レポートの内容を踏襲したお話をしてましたな。このままだと影の薄い人になりそうな悪寒(と言って変な知恵を吹き込まれて目だってもそれはそれで碌な事にならんが)。
#総裁会見ネタは本日の所はパスします。書きかけの書き物と人のふんどしシリーズがあるにはあるのですが。
2006/06/19
お題「15日の総裁記者会見あれこれ」
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0606c.pdf
○無念のPDF29ページ
総裁定例会見が29ページにも及ぶPDF形式で出たのは今回が初めてのことのようです(本石町日記さんのコメントによります)。ちなみに通常は会見翌日の夕方までにはアップされる会見要旨ですが、金曜の場合は夜7時になってもアップされず、深夜に見たらアップされていたのですが、ファイルのプロパティ見ると夜10時近くにファイルが出来たようですね。日銀事務方の皆様のご苦心のほどお察し申し上げます。
29ページある中で金融政策に関するお話は4ページちょっとでして、残りは延々と村上ファンドへの出資問題。まずは金融政策に関して。
○株価下落配慮発言のようですが
株価下落に関する質問に対しての総裁コメントは2ページのあたりからです。
『株価の動きについて、これまでの動きを少し振り返ってみますと、株価は弱含みですが、弱含みという言葉を使って表現できる状況というのは、私どもは5月中旬以降の動きだと見ています。つまり、5月の中旬以降は、株価は弱含みで推移していると認識しています。ただ、このところの株価の下落は、日本だけではなくて、他の主要国やエマージング諸国においてもかなり幅広く見られております。株価はグローバルな現象であるというのが今回の非常に大きな特徴であります。』
ということで、現状としては株価弱含みだと言ってますが・・・・
『その背景として、もちろん様々な要因が指摘されていますが、世界的に金融緩和度合いの調整が慎重に行われている中で、米国をはじめとする世界経済が、引き続きインフレ・リスクを適切に抑制しつつ成長を維持できるかどうか、その点について、不確実性が改めて幾ばくか意識されていることが一つの要因ではないかと思っております。』
株価下落の話の中にインフレリスクという言葉が入っているのは今に始まった事じゃ無いのですが、今回もさらりと入ってます。
『世界経済の状況は、引き続き注意深く見ていく必要があるが、今後とも拡大が続く可能性が高いと考えているわけです。また、わが国経済については、今申し上げた通り、内需と外需、企業部門と家計部門のバランスがとれたかたちで、息の長い成長が続くものとみています。こうした内外経済情勢のもとで、市場は、特に株式市場も含め、新しい材料を次々と消化しながら、市場相互間で牽制を働かせつつ、新しい均衡点を求めて動いているという状況にあると見ています。』
ということで、ここまでの所を読むと今までと余り変らない話をしているのですな。市場の人たちの間で話題になったのは以下の件。
『申し上げるまでもなく、株価については、経済や物価の先行きについての情報を含む重要な指標の一つでございます。従いまして、今後とも、その動きの指し示すところを、やはり十分読み取る努力をしていかなければならず、こうした株価の動きは、企業や家計のマインド面などへの影響を通じて経済全体に影響を及ぼす可能性があります。この点は引き続き注意して見てまいりたいと考えています。』
基本的には「調整の範囲内」という見解なのですが(だから金融経済月報が5月と同じになる)、このくだりで「株価が与えるマインド」について言及しております。この点については短観を見ましょうってことになるのかも知れませんな。個人的印象としてはこの部分はリップサービスのような気がするんですけど。
以下は例によって村上ファンド資金拠出問題
○在任期間中の解約が・・・の方が適切だったのかなあ
先週水曜に「2月に解約したのがマズイでしょう」として「2月に解約した理由ってこういう感じだと言われたら困りますわなあ」というのを書きましたら多くの方に引用されまして恐れ入ります。で、その時に「解約するのなら過去の経緯を開示して堂々と解約すればよかったのに」と書いたので「2月解約がマズイ」という主張になってしまいましたが、つらつら思いまするに在任期間中だったらいつ解約しても問題は問題だったような気も。
でもまあそうだとすると市場の人たち(だけじゃないですが)が口を揃えて言う「総裁就任前に解約すればよかったのに」というのと話が微妙に混乱するので益々話がややこしくなりますが。
まあそっちの話は一旦置きますと、金曜に申し上げたように、「在任中に投資判断をしたのはマズイ」ということかと思います)実際は投資判断じゃなくてホリエモン逮捕で「こりゃ持ってるのが判るとヤバイ」って思ったと邪推してますけど)。
まあ書きながら自分でまだ上手く話を煮詰めて無い事に気がついたので、もうちょっと練ってみますが、「2月じゃなくても解約はマズイ」「その上2月というのはタイミングが最悪」というのがあたくしの見解であることを申し上げさせていただきますね。
○事後報告とは随分甘いルールですなあ
日銀のルールはどうなっているのかという話に関して会見の6ページ目にこんなお話が。
『(水野理事) ルール上は、動かしてはいけないというルールがあるわけではございません。動かした場合には、その報告をするというルールになっています。』
国会でも似たような話を聞いたのですが、こうやってちゃんとしたテキストで見たのは初めてでして、聞いたときから「ええっ!」と思ったのですけれども改めて活字でみるとやはり「これは如何なものか」です。
あのですな、事後報告だったら「やっちまった」らそれまで何じゃないかと。本人をクビなり何なりにして利益返上させることはできるかもしれませんが、「やっちまった」後で信用が傷つくのは日銀という組織でしょ。
普通の証券業務やら運用業務やってる会社だと、役職員の個人的な投資判断行為に関しては、事前に申請して然るべき部署で承諾を受けてから行うのが常識(どこからどこまでの商品が対象になっているのかは各社個別に違いますが、基本的に自社で投資情報を流している商品や、利益相反の可能性が起きる商品は対象になります)でして、「やった後に事後報告」なんてルールで運営してる会社は聞いたこと無いです。
どう見ても大甘ルールです。本当にありがとうございました。
○株式とファンドは別と言うのは詭弁でしょ
投資判断をしたのはおかしいのではないかという質問に対して。質問は6ページ目で答えは7ページ目。
『(総裁) 私は、株式については極力売却しないでおこうと思っています。余程資金繰りに窮しない限り、株式については即、実現損・実現益がでるということになりますのでそれはしません。しかし、このファンドの場合は解約を申し入れてからずっと先になるまで実際の清算が行われませんので、その間どう相場が動くかわかりません。要するに結果がわからない仕方の解約でありますので、そういう意味では、何らかの情報を利用して利益を得るために売買をしたのではないかという問題を避けるためのルールからは、遮断されているという理解であります。ルールの管理者もそういう理解であるということです。』
どうも国会で民主党のアホウどもが「儲かったのが怪しからん」「低金利で庶民は喘いでいるぞ」と実に下らぬ論点でツッコミを入れているのでそのことが頭にあったのかも知れませんが、この答えって(引用してないけど)質問の論点からずれているんですよね。問題は「儲かった」ことじゃあ無いと思うんですけど。
まあそれは兎も角として、この答えはちょっと・・・・でございます。損益が出なけりゃ良いとかいう問題かと思うんですけどねえ。
まずですな、「余程資金繰りに窮しない限り」って言ってるけど、そういうアフォな事が起きないように日銀総裁ってのは待遇されている筈でして、在任期間中に売買が生活上必要になるような事はないでしょ。
それからですな、「ファンドの場合は解約を申し入れてからずっと先になるまで実際の清算が行われませんので」って話ですけど、別にファンドやら投信やらだって可及的速やかに清算されるものが遥かに多い訳でして、この理屈は意味判らんですな。「ファンドなら良い」の理屈になってないとおもうんですが。
#これはまあ取っ掛かり部分でして、延々とやってますが本日は簡単にこんなところで。まあ続きはやるかもしれないしやらないかも知れないです。
2006/06/16
お題「判断変えない金融経済月報/福井総裁質疑雑感」
お願いですから北浜先生「警戒が必要」のままでいて下さい。間違っても底打ち宣言なんぞしないように、ナムナム。
○株価下落に対して強気継続ですなあ
金融政策決定会合は当然の如く変更無し。で、6月の金融経済月報(基本的見解)が出たのですが・・・・
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0606.htm
一読して「株価下落で判断何も変えてないじゃん」と思って5月のと比較しようと思って両方紙に打ち出しまし、ふと気がついて2つ重ね合わせて透かしてみました。
・・・・・いやはや、現在のマーケットに関する言及以外まるっきり同じですよ(^^)。ということで、株価大幅下落でも景況判断関係ないぜというのが今回の月報の特筆すべきことだという訳ですな。
・前月と記述が違う所はここだけ
(6月)『為替・資本市場では、前月と比べ、円の対ドル相場および株価は下落し、長期金利も低下している。』
(5月)『為替・資本市場では、前月と比べ、円の対ドル相場は上昇しており、株価は下落している。この間、長期金利は前月と概ね同じ水準となっている。』
ということで、ここ以外は前月と一言一句変りません。うーむ、強気というよりは「この程度の下げは調整の範囲内」という認識なのかもしれませんが、はてさてどうなんでしょうかね。
あとは5月と同じなのでややこしい比較検討はしませんが、念の為ポイントの文言を並べておきます。
・景気先行き見通し
『マクロ的な需給ギャップは、長く続いた供給超過状態が解消し、現在はゼロ近傍にあるとみられる。そのうえで、今後も、輸出は、海外経済の拡大を背景に、増加を続けていくとみられる。また、国内民間需要も、高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を背景に、引き続き増加していく可能性が高い。こうした内外需要の増加を反映して、生産も増加基調をたどるとみられる。(以下割愛)』
・物価見通し
『物価の先行きについて、国内企業物価は、当面は国際商品市況高の影響などから、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップが、今後は緩やかに需要超過方向に向かっていくとみられる中、プラス基調を続けていくと予想される。』
まあそういうことで、株価下落も心配ないぜというのが公式スタンスであるという点に関しては留意が必要かと思います。
○福井総裁問題:答弁はちと苦しそうな印象なんですが
国会中継のインターネット放送を見たのですが、民主党の平野議員の追及はズレまくってて20点と言ったところですな。しかしそのズレ質問「ファンドの収益はいくらだったのか」に対して「ただいま精査中」は如何なものかというように、福井総裁の答弁は輪を掛けて如何なものかという感じでしたな。
あのね、確定申告してる(ファンドの帳簿上の損益に対して納税するなんて税制ありましたっけ???と甚だ疑問はありますが)のに収益の額判らんってことはないでしょう。確定申告書の控えくらい保管してるでしょ、申告する時には明細つけるんだから見りゃすぐに判る筈なんですけど。
それとも何ですか?福井総裁は一読してわからない位に多岐に渡って譲渡所得(本件所得?が譲渡所得なのか配当所得なのか雑収入なのかという問題は正直判らんので科目に突っ込まないで下さい^^)が発生してるんでしょうか???
と、意地の悪いツッコミができてしまうのはちょっとねえ。
で、共産党からは前日に引き続き昨日もまた大門議員が登場して突っ込んでましたが、富士通総研の行為に突っ込みをしても仕方ないと思うんですが。そんな中で福井総裁は富士通総研時代に複数企業の社外取締役をしていた関係で複数の企業の株式を保有しているって答弁をしてました。
で、その株式については凍結しているという表現をしてましたが、まあ信託してるとかいうような明確な形じゃないんでしょうなあと思わせるものがございました。それじゃあ何だかなというのもありますが、もうひとつツッコミをさせていただきますとですな・・・・
総裁は富士通総研時代に保有していた株式を「凍結」しているとご答弁されているということは「日銀総裁の在任期間中に個別株式の売買行為を行うのは不適切」という認識はお持ちだという話になると存じますが、ファンドの解約だって売却行為(法律的な形式は措く)じゃないのかと思いますがね。そっちは凍結でこっちは解約という行為の整合性が取れませんわな。極端に言えば「社外取締役を引き受けた時にはその企業の社会的貢献を応援するつもりで受けましたが・・・・」ってな具合で株も売れますよって話にならんかね。
総裁就任時に売却するか在任期間中は売買できないようにきちんとした形で信託なり何なりするかが必要だったと思うんですが、個人の管理に任せたままで推移してファンドを2月に非公開で解約というのが返す返すも痛恨事でしたな。
ま、本日は衆議院財務金融委員会で吊るし上げが待っておりますけれども、昨日までの答弁と矛盾する話がでてきたらさすがにアウトになりそうな予感。
○信認とか期待とかを扱うのだから・・・・
今一歩生煮えのような気がするので論点がグダグダになってしまうかもしれない点は先にお断りしつつ、今日は別の論点を。
本件の推移を受けまして、今朝のモーサテでのゲストコメンテーターもそうですが、早速あちこちのレポートで「本件によって7月のゼロ金利解除の可能性は後退した」(ちなみに短期ゾーンの利回り形成状況を見てるとまだ7月利上げリスクは結構ありで見てるようです、為念)とか「今後日銀は政府に対して意思を通しにくくなった」というような見立てが出てくるわけですよ。当然のことですけれども。
そういう見立てが広がってくると、「官房長官がゼロ金利継続と言ってるから政策金利はいじることができない」というような金融政策決定プロセスと本来関係ない筈の読み方になってくる次第でして、これはやはり日本銀行の政策に関する信認が低下するってお話になるんじゃないでしょうかって思うのですよ。
金融政策ってのは金利操作(この前までは日銀当座預金残高の操作)を使って物価などの経済を安定化させるというもんですが、そこには「中央銀行の政策運営に対する信認」とか「市場のインフレ期待」などというような必ずしも理屈でスパッと割り切れるかというと中々難しいものがある訳でして、金融政策が所期の目的通りに機能するためにはそういう信認とか期待とかいうものを大事にしないといけないと思います。
確かに推定無罪かも知れませんが、「政府に庇われた」人が中央銀行のトップで今後の金融政策への信認ってどうよとか考えると、総裁がこのままでいるのは日銀の為にも良くないような気がするんですけど如何なもんでしょう。
・・・・思いは色々涌いてくるのですが、やはり文章にするのが難しいです。全然論理的じゃなくてスイマセンスイマセン。きっと本石町日記さんがクリアなエントリーをしてくれるでしょう(と人に振る^^)。
#何か今日の天気のような気分でございます
2006/06/15
お題「FB入札/金融政策決定会合ですが」
日銀総裁ネタに関してですが昨日に書きました「2月にこっそり解約したのは如何なものか」って愚見にご同感頂きまして、色々な方からご引用いただき大変光栄でございます。
○FB入札で空振り組ショートカバー
昨日の3か月ものFB入札、前場から0.345%での出合いとかあって前場引けも0.345%ビット残りで入札を迎えました。前日来の業者間出合い推定2000億程度だったようでございますが。
で、まあ落札の結果は最低落札価格が利回り換算で0.347%(財務省方式だと0.3437%)で平均落札価格が利回り換算で0.343%(同0.339%)と前場引けが堂々落札最低レベルでございました。最近の入札は前場引けから幾ら流れるかって状況でしたんで、かなり良い結果だったようです。
落札結果発表直後にショートカバーであっという間に0.28%まで金利低下しちゃいまして、「どっひゃー」と呆れ果てておりましたら、ショートカバー一巡後は「さすがに0.3%割れは如何なものか」と言う事なのかどーかは知りませんがその後0.31%まで押し戻されて、最終的には0.305%の引け。終わってみれば前回債(=償還が1週間と1日短い)の今週月曜の引値が0.305%だったので、見た目で言えば週初と同じ。実際には1週間(今回は祝日の関係で+1日)償還が伸びているのでその分利回り低下したとも言えますが。
落札結果の市場推定から類推すると海外系のご購入のようでございますが、まあ7月の利上げ見通しがここもとの株式市場ヘロヘロ状態によってだいぶ後退してきたのもありますし、そう考えると少なくとも保有期間の前半2か月は今の金利体系だって読めばそこそこ足元金利との鞘抜きが出来ますよって発想なんでしょうな。
○足元金利はサガランチ会長
ターム物金利は何となく落ち着いたようですが、足元金利は20日の国債大量償還日を意識(国債償還が沢山あって資金の動きが極端に大きくなる日なので資金繰りにナーバスになります)して下がらんようで。
無担保コールが平均で0.066%でGCレートは相変わらず0.11%近辺らしいですし、7月エンド物の手形オペ落札利回りは最低レートでも0.1%超えとなってまして、こちらの方は確りもいいところです。
何かまた積み後半になると金利が下がりそうな気もしないでもないですが、まーこの程度のスプレッドを取りにショートファンディングで一勝負する位なら新発FBでも買った方がマシという所でしょうか。
まあ先行きの金融政策に関する読みは読みで動くとしても、足元の金利に関しては需給要因ですので、このように微妙な違いが出てくるのもアリなんでしょうな。やや違和感なきにしも非ずだというのは単にあたくしの予想本線であるところの7月利上げ観測が世間的に後退しているからですかそうですか。
最近はユーロ円金先が株価指数の動きに逆連動しているような節もあり、株価動向が金融政策の読み筋に影響与えまくっているという感が強い今日この頃であります。
○さて金融政策決定会合ですが(話は全然別^^)
当然のように本日の政策変更に関してはノーマーク。会合後の記者会見に関しては、本来注目されるべき金融経済月報だの先行きの金融政策に関する総裁発言などというものがちゃんと出てくるのかは・・・・まあどうなんでしょう(苦笑)。今日の定例記者会見に関しては一般紙やらテレビ局やらがわんさか襲来して大変な事になるんでしょうな。政策広報の皆様におかれましては誠にご苦労さまでございます。
で、その一般紙なんぞがどういう質問をするのかというのが気になる所でして、昨日の朝はどこぞのコメンテーターがテレビのニュース番組で「低金利政策をしながら総裁は高利回りのファンドで儲けてケシカラン」などという思いっきりピントが斜め上に逝ってる話をしてましたが、そんなレベルの質問を意気揚々と会見場でするのは勘弁して頂きたいものです。
まあ今日の記者会見と、今後予定されている国会での閉会中審議でどういう対応をされるのか見ていきたいものです。
で、まあ本件に関しては田中秀臣先生、bewaadさん、本石町日記さん、ぐっちーさんのブログでの議論や、各ブログへのトラックバック先のブログでの見解などを読みながら勉強させていただいております。大体こちらの読者様ならご存知とは思いますが、念の為URLを置いておきます。当該記事のリンクを入れれば良いのですが、ちと面倒なので(おい)トップページで勘弁。
・田中先生(Economics Lovers Live)
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/
・bewaadさん
http://bewaad.com/
・本石町日記さん
http://hongokucho.exblog.jp/
・ぐっちーさん
http://blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55
#URLを置いて終了とは手抜きではないかというツッコミはしないように(笑)。
で、真面目な話の中でいきなりおちゃらけるのがドラめもんクオリティなのですが(こら)、では福井総裁は辞任することになるのかという点につきましては、兜町の撃墜王であらされるところの髪様がこんなコメントをしてました→http://blog.livedoor.jp/orion3/archives/50580431.html
>辞任はやむなしではないか。
・・・首が繋がりましたか福井総裁。
というおちゃらけ話はともかく、本件が訳の判らん政治的取引の材料になってしまい、結果として金融政策運営に変な影を落とすような事があってはいかんのではないかと思います。(まあ今の結論先にありきみたいに見える運営も如何なものかとは思うけど)
ではでは。
2006/06/14
お題「福井ショックと言いたかねえが」
昨日の参議院財政金融委員会で明らかにされた福井総裁の村上ファンドへの拠出問題。ニュースが出たときは「まあ99年だから民間人だし、1000万円ってのは一般人感覚から言ってちょっとどうかと思うなあ」ってのが第一印象。ここの所福井総裁が村上ファンドのアドバイザリーボードを昔やってた話とかは夕刊紙ネタだったので、それはまあ兎も角として、あっしなんぞは「いっせんまんえんですかそりゃまたすごいおうえんですねえ」と棒読みになっておりました。でもまあそれは過去の話でしょうと思ったら・・・・・
よくよくそのニュース記事を読んでおりますと、共産党の大門委員からの質問に対して「数ヶ月前(その後記者からの質問に対して2月と答えたそうですが)に解約の申し出を行った」というお話。こりゃマジイダロとか思っていたわけですが。
○それと利上げは別問題だとは思いますが・・・
後場途中からは思いっきり平均株価崩壊あんど金先債先大幅上昇の巻と相成りました。まーこの手の話題に食いつきが宜しい海外の皆様なんぞが盛り上がりそうなネタとしては「福井総裁退任必至」→「ゼロ金利解除困難」→「金先買ってウマー」というお話になるんでしょうけど、まあそのネタはさすがに無理筋の読みでしょう。ま、株式市場がゲロゲロですから利上げをやりにくいというのはあるかと思いますが。
昨日の市場では前場は株安でも金先やら2年債やらは弱い展開での推移してまして、さすがにちと先週木曜はやり過ぎでしたかって感じだったのですが、思いっきり逆襲の図になったのはいやはやこりゃ参りましたなあという感じです。
○「数ヶ月前の解約申し出」はどう見てもマズイでしょう
本件に関してですが、99年に村上氏の志を応援する為に云々というのは富士通総研理事長という立場だからまあそこまで言う事は無いとは思います。1000万円をポンと出すというのは随分おかねもちですなあ(棒読み)という印象はありますし、本人公職に戻る気があるのならちょっと脇甘いでしょうという印象は拭えませんが。
で、どう見てもマズイのはその「数ヶ月前の解約」ですわな。
1.投資判断(相場が下がる)として解約したのであれば金融政策運営の責任者である日銀総裁という立場を勘案すると日銀の行動倫理の内規に抵触しそうな気が思いっきりします。しかも2月に申し出との事ですからその直後の3月に量的緩和解除してるのはまさにタイミングがアヒャヒャヒャヒャヒャですな。
2.村上ファンドを保有しててマズイと思って解約したのであればこれまた問題。何故この時点で急にマズイという認識になったかという点で突かれだすと、あーたファンドの違法性への認識があったのか捜査ターゲットになってるという認識があったのかなどと突かれ放題。
まあね、「よくよく考えたら日銀総裁が特定のファンドに肩入れしているような印象を与えるのは良くない」と思ったので解約するちゅうのであれば、そもそもの拠出の経緯と現状についてアナウンスして、その上で解約をするって青天白日の下で行うべきだったんじゃないですかね。どうみても「こっそり解約した」としか思えない行動は実に情け無いとしか申し上げようがございません。
本件では与太話盛り上がりましたが、周囲でも「解約はマズイ、持ちっぱなしで何もしてないって状態の方がまだ言い訳がつくでしょう」って話になっておりましたな。「本来日銀総裁に就任した時点で解約するもんじゃねえのか」というのは認識が一致しまくってましたけど。
与太話の一環として「阪神ファンとして怪しからんので解約を申し出た」ってネタで逃れるという案もありましたが(笑)、解約申し出が2月だと残念ながらその言い訳も無理筋の香り(爆)。
という訳で、あたくしと致しましては「拠出したこと」よりも「2月にこっそり解約したこと」の方が大問題であって、福井総裁におかれましては公職の高い地位にあるものとしてその行動に問題があるということで辞任していただきたいと存じます。
○まあしかし脇の甘いことで
・・・・しかし脇が甘いとしか言いようがないですな。
福井総裁は以前も木村剛氏肝いりの金融雑誌の創刊号を飾るという騒ぎを起こしてましたけど、「志のある人を応援する」というお心は男気として誠に美しいのですが、一歩間違えると「広告塔として利用される」という結果になるわけですわな。
結果的に悪徳商法の広告塔になってしまったタレントさんが暫く仕事を干されるのと同じようなもんで、総裁としてはそのお立場を良く踏まえて行動をしていただかないといかんと思う訳ですよ。
#今回の場合はまあ広告塔をやってたわけでは無いのですが。
あっしとしては福井一座の円環性「市場との対話」芝居にはほとほと呆れ果てておりますので、とっとと武藤副総裁に総裁の座をお譲りいただきたいと思うのですけど。武藤さんの就任以降の言動を拝見してますと、別に財務省寄りの金融政策運営するとも思えず、まあバランス取れた運営するんじゃないのかと思うのでありました。
#ネタの宝庫が辞めてしまうと書き物のネタに困るのですが(爆)。
○話が変わってGCレート高止まり(メモ)
昨日は朝からGCレートが0.12%だの0.125%だのとやっておりましてコールも0.1%とかやってまして、如何にも「即日供給クレクレ市場」と化しておりましたら、即日手形買入5000億円実行。
まあ以前のように1兆だの何だのというような強引な供給はしないけれども、跳ね上がりは抑制するというスムージング系のオペになっているような感じで、中々いい感じ。
後場になってご案内のように株価下落債券金先上昇だったので、気持ちレートは低下しましたが、0.11%〜0.12%でGCレポが回ってたようでして、そうなると月曜の0.2%割れの2か月FBは一体全体何だったんだというお話になりますが(笑)、朝方は0.23%の気配だったらしいですな。その後は知らんがまあ合掌。
本日はFB3か月ものの入札がございますが、またぞろ株価下落で7月利上げ後退観測VS昨今のGCレート上昇という感じになりますので、結局の所前回並みの0.35%あたりでやるんじゃネーノという感じでしょうな。
ではでは。
2006/06/13
お題「短期市場雑談」
よしよし、モーサテのゲスト解説が「この先まだまだ警戒」とか言う話になってきたですぜ。と思ったら結論が「いい拾い場」だから悲観モードに成ってないでしよorz。で、本日はネタが乏しく甚だ簡単に。
○こりゃまた割高入札でしょう
昨日は2か月もの、というか7週間ものFBの入札。
この期間のFBは時々しか発行が無くて、まあスポット的に発行されるものなんですが、どうも毎度毎度割高入札になるようで、昨日もどう見ても割高入札。
6月15日〜8月2日の期間で平均落札価格が利回り換算で0.198%(財務省方式で0.1944%)と何と0.2%割れ。最低落札価格も利回り換算で0.205%(同方式0.2011%)と0.2%そこそこという有様。
同日の午後実施された7月3日エンドの本店手形買入が平均0.099%の最低0.096%とかやっている中でどこをどう考えると8月2日エンドのFBを0.2%割れの水準で買えるのかが甚だ理解に苦しむのですが、まあ毎度毎度割高なことですなあという所です。持ち切りベースでの投資という観点で言えばこの利回りは7月利上げの可能性をかなり低く読まないと、つーか利上げ食らったら死亡が確定しそうな水準。とても買う気が起きませんなあ。
まあ例によって例の如くこちらの債券はセカンダリーマーケットにろくすっぽモノが出てこないという代物でございまして、何か純粋持ち切り投資で利回りがどうのこうのっていう観点からの理屈を超越した買いがあったんでしょうなあって所です。1兆5千億しか発行無いですからねえ。
ちなみに4月の2か月FB入札も無茶苦茶で、キャッシュ潰しだか何だか知りませんが、入札で0.012%の平均だったものが0%まで出合って業者間の一部ではマイナス利回りまで出合うという参加者の思考回路を疑いたくなるような状況でしたが、今回もまた変な買いニーズがあったんでしょうね。後で申し上げますが、GCレポ利回りがさっくり上昇してるのに何でその水準を買うのかというお家の事情は全くワケワカメであります。なお、同期間で最上位格のCPが発行された場合の利回りはざっくり0.27%〜0.28%くらい(FBが強くなっちゃったので少し変るかもしれないけど)と見てますけどね。
まあここもとの短期市場の極端な動きを見聞しておりますと、どうも参加者の中にはゼロ金利しか知らない為なのか何だか知りませんが、「これだけのロットを捌く」って行動を優先してレート水準は二の次という人がいるのではないか(しかもそういう人の振り回すロットがでかい)と甚だ頭が痛くなるところです。
・・・・で、ちょっと与太話ですが、この結果を受けて財務省様が「コリャ美味しい」と思ってFBの入札ロットを落として発行回数を増やすという小口化大作戦を始めるとこちらは事務が回らなくなり参加者の休む間もなくなりまして、おまけに流動性が無くなるので勘弁して下さい、ってんなこたあするとは思えませんが、笑。
○GCレートまたまた上昇
14日〜20日のクーポンものGCはさっくり片付いたようですけれども、残り半分(3/9月利払いもの)はフツーにGC取引が行われる訳でして、昨日の午後は15日スタートの翌日物GCやら現先取引のお時間になりました。
で、しらっと本店手形買入のレートが上昇(平均は前回の0.101%から低下したけど、足切りが0.088%→0.096%)した事が影響したのかど〜か知りませんが、GCレポレート上昇。15日スタートだから積み最終なんですが、何せ積みは大体終了してるんで最終だから足元金利あがることも無かろうとは思うのですが、GCレートは0.1%水準あるいはそれ以上の所まで逝ってしまったようでして。
まあ日銀当座預金残高が本日にも10兆円切りますが、一応その辺りを意識してるのでしょう(コールレートも0.032%まで上昇してますし・・・・)か、と書くと美しいのですが、単にGCの乏しい資金出し手がレートを持ち上げて当座預金残高削減を牽制してるのかもしれませんな。
それにしてもこのGCレートやオペ金利に対して2か月FBの入札の0.2%割れはねえだろうと思うのですがどうなんでしょうかねえ。
○その他おまけ雑感
昨日の市場ですが、総じて月曜相場でしたが、引け後に金先が売られてみたり2年が甘くなっていたりしたのが妙でございました。スワップとかはよー見て無いのですけど、7年を軸にカーブがツイストしながらフラットするような感じだったようで、またまた米債が2年ー10年で逆イールドになってるのをネタにした動きなのかなあと思ってしまった次第です。
短期に関しては水曜に3か月FB、木曜に1年TBがありますが、3か月はまあ良いとして1年TBを修正しないまま入札を迎えると中々大変ではないかと。0.4%台前半だと厳しかろう。後半でもちとアレですが。
まあ何かチグハグな昨日の短期マーケットでございました。
2006/06/12
お題「岩田副総裁講演&記者会見(続き)」
○その前にFBの動向に呆然
金曜の市場では前日に一挙に強くなった3か月ものFBがいきなりヘロヘロ。前日高値0.27%レベルまで逝ってたものがいきなり朝っぱらから0.31%だの0.32%だのとなってしまいました。何たる節操の無さ。
債券市場の方は強かったので、1年とか6か月とかは前日比利回り低下してたのですが(というか1年辺りは玉締めの香りがしますが)3か月は392回債で0.31%あたり、新発WIで0.35%近くという結果のようでして、水曜日から見ると金利水準若干低下となったのですが、木曜の買いは一体全体何だったんだという感じ。
まあ毎週4兆4千億円は重いですし、今月は2か月ものFBの発行までありますので、需給が悪いってのも判りますが、それにしても呆れてしまう金曜の相場でした。
○岩田副総裁講演&記者会見続き
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0606c.htm
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0606b.htm
上が講演(金曜も紹介しました)下が記者会見。両方見ながら。
・岩田副総裁の量的緩和への評価
先日は福井総裁も総括もどきをしてましたが、岩田副総裁によるとこんな感じになるようです。講演から。
『量的緩和政策の有効性について多くの議論と批判がありました。しかし、私は、最終的には、時間はかかったけれども、当初の目的を無事達成することが出来たと考えています。』
『目的を達成できた理由は、2つあります。まず第一に、コア消費者物価指数が安定的にゼロを上回るまで量的緩和政策を継続するという日本銀行による約束は、物価の先行きについての人々の期待を安定させるという「錨」の機能を果たしたことです。』
『第二に、政策が持続することを事前に約束することによって、将来の金利のパスに関する市場の期待に働きかけ、短期の金利のみならず長めの市場金利も低めに保ちました。この結果、企業の負債支払い負担が軽減され、事業の再構築が促進されました。』
『事業の再構築によって資源の配分がより効率的に行なわれるようになり、生産性や企業収益が改善され、潜在成長率も押し上げられることになりました。市場金利を低めに保ち、その一方で、企業の保有する実物資産に対する収益率を高めるという組み合わせが、コア消費者物価指数の変化率をプラスの領域に引き上げる基本的なメカニズムであったと考えています。』
『もちろん、潤沢な流動性供給が金融市場を安定化させ、市場金利を低めに保つうえで補完的な役割を果たしたことは言うまでもありません。』
先日ご紹介した福井総裁の講演ではこのあたりの話を華麗にスルーして「金利の低位安定」と「流動性供給により金融危機回避」っていう形で話を片付けていたのですが、岩田副総裁としては「期待」の経路を重視しているということかと存じます。
で、まあ期待経路の重視をするのであれば、連続利上げへの思惑が出てきちゃったりしたのは如何なものかと思って頂くと誠に幸いなのですが、金曜日にもご紹介したように、景気と物価の先行きに関して結構なブルなので、あまり気にしておられないと思われる所が惜しいなあと思っちゃう訳です。
この話に来る前に量的緩和政策の時間軸効果について言及しているのですけれども、そこでは将来の金利政策経路に対する期待形成を重視していまして、講演要旨の脚注でこんなお話を。
『現代における金融政策の有効性は、足元の政策金利の変化そのものよりもむしろ、「将来の金利パス全体についての市場の期待」に働きかけるところにあります。バンク・オブ・イングランドのキング総裁は、政策金利よりも大幅に市場金利が変動して金融政策の有効性を高める現象を「金利のマラドーナ理論」("Maradona
theory of interest rates")と呼んでいます。アルゼンチンのサッカー選手であるマラドーナが、1986年W杯の対イングランド戦で有名な「60ヤード独走シュート」を決めた際、相手ディフェンスがマラドーナの巧みなフェイントに対して抱く期待を利用し、実際にはほぼ一直線にゴールに向かっていたことになぞらえたものです。詳しくはKing
M. (2005), "Monetary Policy: Practice Ahead of Theory" Mais Lecture
2005を参照して下さい。』
その期待が量的緩和政策解除前と解除後には大きく変化したのですけれども(しかも日銀が主導的に変化させていたように見えますけれども)量的緩和解除の際に政策委員の皆様が言ってた「政策に不連続な変化が生じているわけではない」というのはありゃ政治向けのペテン説明でしょうかって突っ込みたくなるのはあたくしが馬鹿正直だからですかそうですか。
・相変わらず当座預金残高に関する質問が出るのですが
記者会見より。
【問】『先程の質問に関連しますが、日銀幹部の方が最近、日銀当座預金残高を所定の水準まで減らすというプロセスとゼロ金利解除とは全く関係ないということを強調されています。マーケットが描いていたイメージというのは、総裁、副総裁もおっしゃっていたように、日銀当座預金残高がある程度まで減っても、しばらくの間はまだゼロ金利が続き、それからゼロ金利解除ということになると思いますが、それは変わっていないのでしょうか。(以下割愛)』
【答】『先程申し上げたとおりではありますが、「日銀当座預金残高という量が例えば10兆円になったから、もうこれは良い状況なのでゼロ金利を解除します」というように、機械的に量の動きと金利の調整を結び付けることはしないということは、総裁も繰り返し申し上げていますし、私もそのように思います。つまり、量の動きをみて、それで金利調整が直接その影響を受けるということはないと考えています。(以下割愛)』
多分同じ記者だと思われるのですが、この後もこの文脈で質問をしております。当座預金残高が減ってインターバンクの金利がガタガタ動いても今更ど〜でもいい話だと思うんですが、どうしてそう大騒ぎしたくなるのかよく判らん。数字で出てくるから判りやすいからなんだろうけど。
・もう一つ凄い質問をする人がいます
【問】『短期・中長期のリスクを丹念に点検されていくとのことですが、そのリスクを点検したうえで早ければ6月あるいは7月にも、量的緩和政策解除の際に示された方向性に沿ってゼロ金利を解除することもあり得ると考えてよろしいのでしょうか。』
答えの引用は省略(苦笑)。この質問者の凄いところは多分重ねて同じ質問をしたと思われるところです。答えられるわけ無いでしょ。
・CPI基準改定について
CPI基準改定に関する質問に対して岩田副総裁はこんなコメントを。毎度のことなのですが、副総裁の記者会見の質疑応答は一本一本が長いので引用するのに困りますな。ということで段落分けしました。
『消費者物価指数の基準改訂については、展望レポートの中で既に示しており、注意深く読まれた方はお気付きかと思いますが、消費者物価指数の改訂でどの程度の変化があり得るのかということを詳しく説明しています。』
『品目の入れ替えや基準年の変更によって、消費者物価の前年比上昇率を押し下げる方向に作用することがあり得ますし、その大きさについても、前回改訂時と同じくらい──前回改訂時は比較的大きく、−0.2%〜−0.3%ポイントですが──ということを展望レポートの脚注に示しています。コアの消費者物価については、ご承知のとおり本年入り後3月まで前年比+0.5%で推移し、4月は+0.5%から少し下がる可能性があるという見方もありましたが、実際にはそのようにはなっていません。』
『つまり、基調としてコア消費者物価の前年比上昇率は明らかに正の領域に入っており、仮に指数の改訂が8月に行われたとしても、その傾向に変化はないと考えています。』
最近あまり話題にならなくなってますが、この問題に関しては大騒ぎするような事は無いということでしょうか。
2006/06/09
お題「どうみてもタカ派丸出しです(岩田副総裁講演)」
陰線2本つけて大きな陰線ですよ。いやはやスゴス。そして今朝のモーサテは「弱気一色の株式市場」ってお題になりましたよ。そして今日のゲストコメンテーターさまも本日の相場についてゆっこが「下値を探る展開ですか」って聞いたら「そうですね」と(ちなみにコメンテーターは毎日違いますので念の為)返しております。債券市場も続きで書きますが、やっとこう「感極まって悲鳴」って感じになってきましたよ。
しかも解説コーナーでもとうとう「景気に変調」って話を材料持ち出して説明おっぱじめましたよ。これは何とも希望というかトンネルの先が見えて来たような気が(^^)しますが、冷静に考えるとあたくしがこんなこと言ってる位じゃまだダメですなあっはっはっはっは。
#と、株の話しばかりてどうする自分。
○一応市場雑感
昨日の債券はまさに短期ゾーン主導という豪快な相場。短い所のスワップや短期ゾーンの債券を派手派手に振り回すことでお馴染みの海外勢+銀行ALMがまさに感極まって踏み上げって感じ(海外の場合踏み上げなのか買い仕掛けなのか判らんが)でして、2年7.5毛強で5年6毛強と。30年が1甘というのも香ばしいですが。。。
キングオソロシスだったのはもっと短い所でして、1年TBが前日比10毛強の0.445%(TB401回)くらいで6か月が前日比6毛くらい強の0.375%(TB402回)くらい。何と水曜の入札で0.35%なんぞやってたFB392回まで前日比5毛強の強さでして0.27%ですよ短期爆発ですよ。
足元に関してはコールは低いですけど、次の積み期間に入るオペに関しては相変わらずニーズありありのようでして、7月5日エンドの本店手形買入の平均落札が0.1%ですし、6月20日エンドってオペ期落ち後に苦労しそうなオペで、ニーズあるのかよなどと悪態をついて見てた方も0.064%と金利上昇で、次の積み期間になるとまた金利が上がりますよと言わんばかりの動きです。
となりますと、9月11日償還のFB392回を0.25%割れまで威勢良く買い上げるには7月利上げ99%無しの自信がないと中々厳しいと思うんですが、まあ昨日の場合はどっちかというと何度も書いてますが(この表現お気に入りなのよ)感極まって踏みあがっているという感じもするので、まあここからまだ買いがあるのかというのは注目ですな。
TBFBの昨日引けレベルだと7月利上げ警戒はまだまだあるけどちょっと警戒後退、年内の利上げ2回は警戒するけどちょっと厳しいんじゃネーノって感じになってるという所ですかな。
まあここもとの金融政策の読みに関する海外勢の動きは正直「ハァ?」って感じですし、銀行ALMの投げ踏みもアレでございますから、そーゆー点では昨日の短期ゾーンはまさに悲鳴モードという感じでした。
○どう見てもタカ派爆発です。本当にありがとうございました。
そんな大騒ぎ市場の為に最早どうでも良い状態になってしまった岩田副総裁の秋田県での金融経済懇談会での挨拶と記者会見ですけれども、インフレ警戒爆発でこの株式市場を横目に男岩田はタカ派爆発といった所です。うーむ。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0606c.htm
・景気の先行きを懸念してませんな
講演(正式には挨拶ですけど)で景気の先行き見通しの部分で(リスク要因)って部分があって、リスク要因を並べているのですけれども、この要因を「詳しく書いているから岩田副総裁は金利引上げに慎重だ」と書いたレポートを見たような気がしますが、目の錯覚であれは幻だったんでしょうかねえ。
確かに景気のリスク要因を5つ挙げておりまして説明をしておりますが、その後にこういう話をしてる部分がございます。
『以上述べたようなリスクのうち、アメリカ経済は、先行きについて様々な不確実性があるものの、労働生産性の伸びがなお高く、経済の基礎条件がしっかりしていることを考慮すると、年後半に潜在成長率(3〜3.5%)に見合った成長径路へとソフトランディングする可能性が高いと思います。』
『また、主要国の株式、債券市場において過度のリスクテイクが行なわれてきたわけではないこと、実体経済は総じて健全性を維持していることなどを考慮すると、投資家のポートフォリオ調整の動きが一段落するにつれて、世界の金融資本市場もやがて新たな均衡と安定性を取り戻すものと考えております。』
『さらに、国内経済において、かりにIT部門の在庫調整が行なわれるにしても、2005年入り後の上昇局面における電子部品・デバイス部門の生産や出荷の盛り上がりが大きなものでなかったことを考慮しますと、在庫調整による影響は2004年の場合よりも小さなものにとどまると予想されます。』
どう見ても先行き楽観です。本当にありがとうございました。
#まあアレだ、情報はソースに当たれということですよ皆さん。
・フォワードルッキング全開ですよ
そもそもの講演のお題が『新たな枠組みの下での金融政策運営』でございまして、金融政策に関するスペースが多く割かれておりまして、量的緩和政策の総括や現在の枠組みに関するお話などが展開されていて興味深いお話が出ているのですけれども、時間と量の関係上後日(ネタを温存している訳ではありません・・・よ)と致しましてこんな所に反応するのがドラめもんクオリティ。
『量的緩和政策の下での政策運営のあり方について、「物価指数は景気の遅行指標であり、日本銀行は、バック・ミラーをみて運転しているようなもので、危険極まりない」という批判の声もありました。』
『しかし、日本銀行は、2003年10月に、量的緩和政策を継続する条件を3つに整理しました。その第2番目の条件として、生鮮食品を除く消費者物価指数の変化率が「先行き再びマイナスとなると見込まれないこと」を掲げました。従って、バック・ミラーのみを見て運転してきた訳ではありません。』
いやーん、ビハインド・ザ・カーブの政策運営リスクを取ってでもデフレ脱却への強い決意を示してたんじゃないのかよ日銀はってツッコミをしたくなるんですけど。一段落飛ばしてその先。
『量的緩和政策の下での政策継続に関する約束が果たしていた「物価安定の錨」は、「中長期的な物価安定の理解」へとその姿を進化、発展させたといってよいでしょう。そして、この「物価安定の理解」の下で、この先日本経済が直面すると予想される、短期(1-2年)および中長期のリスクを点検し、さらに、リスク点検を通じて金融政策運営のあり方を吟味することにしたのです。この結果、先行きの経済リスクの評価に基いて、短期的な金融政策運営を柔軟に、かつ機動的に運営することが可能になりました。』
『自動車の運転にたとえますと、目的地についての政策委員の間での意見分布を明確(透明性の向上)にした上で、しっかりと前方のリスクの変化をみて「機動的に」運転する正常な姿に戻ったといえます。』
はいはい機動的機動的。
・予測の前提としての政策金利
『さらに今回の「展望レポート」におきましては、経済の先行きを予測するに当たって、「政策金利について市場金利に織り込まれたとみられる市場参加者の予想を参考にしつつ」予測する方法を採用しています。量的緩和政策の下では、少なくとも、コア消費者物価指数の変化率が安定的にゼロを上回るまでは、「政策金利は一定」という仮定をおいて予測することが自然であったわけですが、新たな政策枠組みの下ではむしろ不自然な仮定になってしまいます。』
というのは判りますが、その後の説明は残念ながら「犬が西向きゃ尾は東」って感じのものでして、これについては今後の検討を期待致したいところです。岩田副総裁もこう纏めています。
『もちろん、これは各委員が見通しに当たって政策金利に関する市場の予測をそのまま受け入れるという意味ではありません。市場が予想する金利の変化を機械的に受け入れて予測および政策運営を行なうと、中央銀行が望ましいと考える将来の経済・物価動向から乖離してしまう可能性があります。市場の期待を参考にして予測を行なうという方法の採用も、「最適な金融政策運営」に向けての重要なステップであると考えています。』
ま、個人的には一定と市場金利前提の両論併記が判りやすくて良いんじゃネーノと思いますけど。
・1万5000円割れにも動じず(記者会見より)
記者会見は8日17時3分配信のブルームバーグニュースからです。
株安に関しての副総裁の応答。
『今日も株価が大きく動いているが、講演で話したとおり、主要国のファンダメンタルズ、たとえば企業部門の財務面で何か大きな変化が起こっているかというと、起こっていない。新興国の株価や為替市場のボラティリティが最近高まっているが、新興国の政府部門、あるいは企業部門に何か財務面で大きな変化が起こっているかというと、それは起こっていない』
『だから、現在起こっている事柄は、経済の基礎条件が変化して、資産価格がそれで大きく変動しているということではない。むしろ、グローバルな投資家が部分的にややリスクを取り過ぎてしまったと考えている部分について、ポジションの調整を行っている』
もうちょっとあるんですけど、引用ばっかりになるのは申し訳なしなので、後は今日アップされるであろう会見要旨を見ましょうねって所ですが、現状の株式市場に関してはむしろ「好ましい調整」と考えている節が見られますな。ゼロ金利の解除と株価の関係について同じ応答部分でこのように言及しています。
『量的緩和政策を解除した時点で、金融政策の対象は量から金利に移った。金利については、既に量的緩和政策を解除した時点で、その方向性については申し上げている。新しい政策の枠組みの下で、簡単に言うと、ベストのタイミングに金利の動きを考えていくということに尽きる。量的緩和政策を解除した時点で申し上げたこと、あるいは展望リポートで申し上げたことに尽きる』
も株価下落に動じていませんなあ。うーむ。
・米国の先行きスタグフレーション観測には否定的(記者会見より)
同じくソースは上記ブルームバーグニュースです。
『米国経済のファンダメンタルズは強靭だ。インフレ懸念と減速のリスクに対して、米国の労働生産性の伸びを見ると、これは基本的に強い。2.5%‐3%くらいで動いている』
『経済学者によってはスタグフレーション的な様相が強まるのではないかと議論する人がいるが、それに対抗する一番強い力は何かというと、労働生産性の伸びだ。短期的に多少インフレ懸念があったとしても、生産性の伸びは十分高く、単位当たり労働費用を見ても、決してどんどん上っていく感じではなくて、むしろ安定してるというのが現在の状況だ』
以下もうちょっと詳しい話が続くのですが、引用はこの辺で。資産価格下落がなんぼのもんじゃいという男岩田一政景気に結構ブルですよ。
#まあ補足は週明けにでも。
2006/06/08
お題「FB入札/GCレート何故か上昇など」
某巨大掲示板で「悲観待ちに悲観無し」ってカキコ(つーかスレッドのサブタイトルでした)がありましたが、あたしゃー最近まさにそんな心境。さすがにモーサテのゲストコメンテーターもやや弱気になってきましたが、まだ悲観には程遠いですなあ。コリャダメダ。
○FB3か月で0.35%はさすがに止まりましたか
昨日実施された3か月ものFB入札ですが、朝から何故か手前のGCレポレートが上昇しまして(後述)債券や金先は強いのにイマイチな展開。月曜の0.29%(1週間短い方ですが)テイクンはどこへやらという感じでして、新発FBのWI取引は前場引けでは0.35%という切りのいい所まで叩かれる始末。
で、落札結果はと言いますと平均落札価格が利回り換算で0.351%(財務省の出している数字だと0.3478%)で最低落札価格が0.359%(同じく0.3553%)でしかも殆ど按分かからずということで、前場引けの勢いとこれまでの入札の流れっぷりからすると堅調な結果という感じでしょう。テールがこれだけあって平均が前場引けの0.35%ということは、確信犯で0.35%まで叩いて目線を下げさせてから上に札を入れるというパターンでしょうから、まあやる気満々の人がいたんでしょう(市場推計の落札結果によると某外資系が珍しくしこたま入れたようですし)。
そんな結果だったのでその後も当然ながら確りの展開となりまして、終わってみれば0.325%まで金利低下しておりました。先週(先月末)にGCレポレートがそろそろ下がらないですかねえって言ってた時新発FB3か月は当日の引けが0.32%でしたんで、まあ大体同水準。ということは気持ち確りですな。
まあ幾らなんでもいつまでも金利上るのもアレでございますので、一応はこの辺りが当面の金利上昇のメドになるんじゃないのかって気はするんですがどうなんでしょう。
○なんじゃこのGCレートは
さっきもちょっと書きましたが、昨日は朝方からGCレートが妙に上昇。前日は0.02%レベルでやってた筈なんですけれども、前場からやってるT+2スタート(概ねそれは前の日に終了してましてこれは調整玉)の取引レートが妙に上昇。場中のT+3スタートに関しても資金調達意向が妙に強かったようで、終わってみれば最終のT+3スタートGCレポレートは0.07%〜0.08%近辺となったようです。前週末あたりからの金利急低下からいきなり急上昇となっておりまして、今回に関してはその外部要因は一体全体何なんでしょってところでワケワカラン。
前場に行われた(9時30分オファー)国債買現先オペの落札利回りは(6月9日〜20日)平均0.052%で月曜の0.056%から低下してたのですが、後場に行われた(13時オファーなのですが若干の時間差攻撃)本店手形買オペ(なぜかT+3スタートで6月12日〜29日)の落札利回りは平均0.075%と期間が長いというのはあるけど、あららという感じの上昇。うーむ。
まあ今の短期というかマネー市場ではどうもこう需給の振れが極端から極端にというのが目に付く訳で、過渡期だからしょうがない面はあるのですが、あたくしあんどあたくしの前からのお知り合いなロートルもといベテラン選手から見ると「何じゃこりゃ」っていうのが散見されますな。などというと如何にもジジイのエラソーな自慢話っぽくて嫌なんですが(汗)。
あまりにもアフォのように足元が下がってきたのに、ターム物金利が妙に高止まりしているのでショートファンディングで小商いやってる人がいるんですかねえ。今のゼロ金利政策状態って資金需給で足元金利振らされ易いからリスクリターンを天秤にかけるとその小商いあまり間尺に合うとは思えんが。
○初回の利上げは7月の予想継続のようですね
昨日は週末のお支払い(賞与って奴ですかね)対応のCP発行がそこそこありまして、今月に入って最初のそれなりなロットかつ期間のバリエーションのある発行があったようです。
で、まあ具体的なレートは端折りますが(手抜き)、推測される発行レートを見てると、さすがに6月の利上げを予想した利回り形成が行われている気配は毛ほども無し。7月エンド物になると金利が上昇するのは、月末近辺でのレート上昇可能性を加味しているんでしょうなあという感じでして、金利が目立って上昇するのは7月下旬以降にエンドが来るものですな。
でまあその辺から金利が目立って上昇するもんで、発行(資金調達)する方も「長い期間の資金調達はしたいがレートが高いのも困る」ってなもんで1か月以降2か月以内ものあたりの発行が多い感じですかな。別に真面目に統計取ってる訳じゃないので雑駁なる印象ですけど。
TBFBの既発ゾーンに関しては正直気配が無いので良く判らん(よってCP発行が無い時期になると1〜2か月のレートは読みにくいこともある)のですが、まあ似たようなものかと推察されまして、この価格形成を見てますと、とりあえずのところは相変わらず「初回の利上げは7月の決定会合で幅は0.25%」というのが短期というかマネーというか、短い所をいじっている人たちの予想本命であることは変らんようですね。
#ということは株式市場への総悲観も遠いですかそうですか
2006/06/07
お題「何か慌しい相場ですな」
今日のモーサテのゲストコメンテーターも「そろそろ底」でございます。誰か「もうダメです」ってコメントしてくださいお願いします。出来ればムーシャ先生あたりに一発頼みたいですが、この際「より一層の円高ドル安」コメントをモーサテで嬉々として行い、一層の円高進行を止めたミスター円先生でも良いのですけど。
○ターム物金利は存外下がらず
昨日実施された6か月TB入札は最低落札価格で0.45%乗せ(財務省公表方式だと0.4477%)となりまして、既発債(よって1か月短い)がつい先週まで0.4%に乗せるか乗せないかというレベルでやってたのですが、入札を機にカーブの修正を行ったという感じです。まあ前場の時点で0.435%−0.44%とかやってましたので、テールが0.45%で良かったですねって感じでして、終わってみれば0.445%と入札から特に上らず下がらずという所です。
本日入札予定の3か月FBですが、前回債の391回債(9月4日償還)は月曜日には0.29%あたりまで買いがあったものの、昨日はまたまたヘロヘロになりまして0.31%とまた0.3%台に戻しております。よって新発WI取引は0.34%近辺。前週は入札の最低落札が0.34%レベルでして、その前日の新発WIの居場所が0.32%あたりであることを考えると1〜2BPの利回り上昇という感じです。
と、まあ3か月は月曜に下がってみたもののまた上昇、6か月は入札を機にここぞとばかりカーブ修正と言うことでして、まあ金利下がりませんなあ(というか上ってますけど)というところでございます。では1か月とか2か月のあたりですが、これまた売り買いの気配が離れてて、これまた月曜の勢いはどこへやらという感じになっていたようです。月初なのでCPの発行は少なくあまり参考にならないのですが、先週の前半に見られた月末発行CPの金利跳ねあがり状況はさすがに解消されたものの、同ゾーンのFB金利の低下に比較してそんなに下がっている訳でもなさそうな感じですな。
そんな中で足元金利は益々順調に低下。まあ準備預金の積みも終わってますから金繰り回しておけば良いという状況なんで低下するのもやむなしですが、その割にはそっちの金がターム物に流れてこないというのは、次の積み期間(16日以降)が開始になった後への警戒があって、超短期での運用(というか資金滞留というか)になっていると言うことなのでしょうか。人の懐具合は判らんので推測ですけど。
まあ今回の積み最終までは波乱なしとして、その先の16日以降になる19日(FB発行)20日(国債償還)あたりが気になる所ですし、まあその前に波乱あるとすれば14〜20日の6月利払い債のクーポンGCが16日以降のエンドに当たるので要注意という所でしょうか。
○武藤副総裁のスピーチ
武藤副総裁が米国だか何だか忘れましたがどこぞの会議でスピーチをしておりました。日銀のWebサイトには残念ながら掲載されてないのですが、ブルームバーグニュースで通訳付き(スピーチは英語)でやってたのを聞いてみました。さすがは武藤副総裁でして、決めうち一切無しのバランス重視のスピーチという印象。手元のメモベースですが一応備忘録。
・暫くは金利ゼロをベースとする緩和的な状況は続くだろう
・将来は必要に応じて金利を上げていくでしょう
というのが日本の金融政策に関するコメントでした。通訳の日本語ベースをメモしたんで英語のニュアンスと通訳の日本語の間に齟齬があるかも知れんので断言しにくいですけど、聞いてて「おっ」と思ったのは緩和的な状況の枕詞に「金利ゼロをベースとする」ってのがあった事。福井総裁などの発言でも「金利の調整はゆっくり」とか「緩和的な状況を継続する」というのはあるのですが、「金利ゼロをベースとする」って言い方をしているのは(あたくしの記憶が間違ってない限り)見た事はないのでちょっと耳がダンボになりました。
でもその後に必要に応じて金利を調整していく話をしているのでさらりと水を掛けているところがさすがは武藤副総裁という感じですな。暫くのタームがいくらかはさっぱり判らんのですが、まあ先月大騒ぎした6月利上げはさすがにこりゃ有り得んでしょう。
○しらっと量的緩和総括中?
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0606b.htm
先週木曜の話ですが、福井総裁が日本銀行金融研究所主催の国際コンファランスで開会挨拶をしました。上記URL先に(日本語仮訳)ってあるように英語で挨拶してたんでしょうな。
今回のコンファランスのお題は「低金利下における金融市場と実体経済」だそうでして、量的緩和政策に関して色々とお話してるんですけど・・・・・
『こうした政策パッケージである量的緩和政策は、わが国の金利環境に顕著な影響を与えました。まず、潤沢な資金供給によって、無担保コール市場におけるオーバーナイト物金利―これは、本来借り手金融機関の信用リスクを反映すべきものですが―は0.001%まで下がりました。同時に、量的緩和政策継続の「約束」は、イールド・カーブが低位で安定的に推移することに寄与しました。』
『量的緩和政策が金融市場にいかに大きな影響を与えたかという点は、1930年代の米国の状況と比較すると、よく分かります。1930年代、米国の財務省短期証券の金利はほぼゼロ%まで下がりましたが、フェデラル・ファンド・レート―これは金融機関が短期資金の貸借を行うときの金利ですが―は、0.25%までしか下がりませんでした。また、1990年代以降のわが国の長期国債金利は、1930年代の米国の長期国債金利よりずっと低い水準にあります。このようにしてみると、量的緩和政策が、歴史的な観点からみても、中央銀行にとっていかに断固とした政策的な対応であったか、ということがお分かりいただけると思います。』
量的緩和政策の「量の意味」は金融危機対応でございますと政策ロジックをしらっとまた摩り替えているような気が思いっきりするんですけど・・・・・
で、その後に量的緩和政策の効果について2点挙げてます。
『量的緩和政策は、次の2つの点で目に見える効果を発揮しました。第一に、量的緩和政策は、特に潤沢な資金供給を通じて、金融システムへの強い懸念を払拭し、その安定化に寄与しました。日本銀行による潤沢な資金供給によって、金融機関の流動性需要は満たされ、1997、98年に観察されたような大規模なクレジット・クランチの再来を回避することに成功しました。』
さっきと同じく量の効果は金融危機対応になっちゃってますなあ。
『第二に、量的緩和政策は、ゼロ金利継続の「約束」を通じて、企業金融の面でも緩和的な環境を作り出し、わが国企業の回復をサポートしました。銀行の貸出金利や企業が発行する社債の金利は、イールド・カーブの低位安定に加えて信用スプレッドの縮小もあって、低下基調を続けました。』
時間軸効果といわれる奴ですな。で、ポートフォリオリバランス効果については『この経路が機能したのかどうかについては、量的緩和政策下の期間を振り返ってみても、まだ確たることは申し上げられません。』と、まあそうでしょうなあという評価になってます。
ではどう見ても金融危機状態を脱却していた時期にガンガン量を増やしたのは一体全体何のためでしょうかと小一時間問い詰めたくなるのですが。ロジックがグタグタなのは今に始まったことじゃ無いので余り驚きはしませんが、それで良いのかよとは思うのでありました。体面重視で変なレビューをしてると将来の糧にならんと思うんですけどねえ。
2006/06/06
お題「ネタも乏しく雑談を少々」
○まあどうでもよいが一応村上問題
村上氏の記者会見を「けっ、グリーンメーラーが何を言う」と聞いていたら、今朝の某公共放送トップニュースでは早速「ニッポン放送株式買占めは村上氏の主導である事が明らかに」って話と会見での弁明(村上氏曰く「たまたま聞いてしまったんですよ」)がセットで放映されておりまして実に香ばしいですな。引退宣言で追及を弱めようとしたものの追い討ち情報早速投下攻撃(誰がでしょうかねえふがふがもごもご)キングオソロシス。
買い占め屋が正義だの株主価値向上などと言うのも片腹痛いし、大体からしておまえは株主価値向上とか言っても全然長期保有してねえじゃんよと言った印象しかないのですが、あまり村上氏を罵倒してると市場関係者のウケが悪くなりそうな気がするので罵倒はこの程度で(苦笑)。
しかし今でも不可解なのは「ファンドは投資家の代理人だから大株主の短期売買規制の適用対象外」という解釈をしていた金融庁。それはファンドが経営に介入しない投資という前提に立たないと規制の趣旨に合わないでしょう。
それから印象的だったの昨夜の銀座数奇屋橋での光景。日経新聞が「村上逮捕」の号外を配ってた(夜7時半過ぎです)のですが、3人も号外配布員(というのか?)がいるのですが、誰もわざわざ取りに行く訳でもなく、ほとんどティッシュ配り状態でして、道行く人で号外貰ってるのはどうみても3人に2人以下。日経の腕章をつけたカメラマンが所在無さげにしてたのが何とも味わい深いものを感じました。まあ時間の問題とされていたから今更号外でも無いってのはあるかもしれませんが、所詮興味はそんなもんなのね。
#しかし頭が痛いのは相変わらず「村上氏逮捕の市場への影響は限定的」と世の中悲観モードになってくれないところでございますな。
○短期市場は4月の再来モード(か?)
昨日も足元に関しては資金余りまくりの図になってまして無担保コール翌日物加重平均金利はとうとう0.01%に下落。ということは0.01%割れの取引がうじゃうじゃあった(まあ金曜も似たようなもんですが)という訳で、先週前半の大騒ぎは何だったんでしょうという感じ。
3月末にも何かそんな感じで意識したものの結局何も波乱なく、それまで金を抱え込んでいた人たちが安心感からお金だしてきて4月になって金余りになってしまい、量的緩和解除前よりも余剰感が強まると言う馬鹿馬鹿しい事態が発生してましたが、今回はそのプチ版と言った所。
まあ株価の下落で7月利上げ観測が若干後退気味(あたくしは予想屋(じゃないけど)としては相変わらず7月だと思ってますけど)だというのはあるようですので、2か月辺りの金利が下がるのは判らんでも無いのですが、どっちかというとビビットに下がってるのは足元とショートターム(1か月以内)の金利。流動性確保の為に抱え込んでいた金だから足元にしか出さないという理屈もよく判るんで、4月とはちょっと違うのかもしれませんけどね。
まあしかし先々週の木曜あたりには0.12%だの0.13%だのまで上昇してたGCレポレートが0.02%あたりまで下落したのには苦笑を禁じ得ません。今般の足元金利大動きで一番派手に動いたのがGCレポ取引というのは何とも困ったもんです。
○市場との対話の道は遠いなあと思った挿話
まあこんな見解が出てくるのも判らんでも無いですが。
情報ベンダー提供のニュースでは「今日の短期金融市場まとめ」みたいなのがありまして、その中で昨日ブルームバーグニュースで見た解説の中で、とある市場関係者のコメントと共にあったのは「日銀メッセージを注視」って小見出し。で、その市場関係者のコメントはと言いますと、『本当に7月にゼロ金利政策を解除するなら、日銀はそろそろ市場に明確なメッセージを発する必要がある』(当該記事を補足して引用してます。ブルームバーグニュース5日15時37分配信記事より)ってものでした。
いやあのですな、5月19日の総裁記者会見で福井総裁はこう言ってるんですよ。
『むしろ金融政策のあり方として、普通の状況に戻ったということです。普通の状況とは、一歩先の金融政策そのものについて、具体的な示唆を中央銀行が明確にスプーンに乗せて差し上げ、それをそのまま鵜呑みにして下さいというやり方ではなく、オーソドックスだが新しく工夫を凝らして透明性の高い措置で対処するということです。』
これを額面どおりに受け止めるといつまでもあると思うな「明確なメッセージ」となるのですが、まあ3月の量的緩和政策解除が思いっきり地均し路線大爆発だったから、そういう見方も出るでしょうし、聞いてる記者の方も「まったく仰るとおりですなあ」として記事になるのでしょう。
今後も一々地均し待ちになっちゃうとまさに円環性状態になるのではないかという悪寒がする訳でして、市場との対話とやらも先行きの道は遠そうですな。いやまあ円環性で宜しいと言うのであれば今でも対話になってますけどね(爆)。
2006/06/05
お題「今度は資金余りまくり/春審議委員講演」
K浜先生とM者先生お願いだから早く悲観して下さい。
・・・・と思ったら朝のブルームバーグTVでM先生が今週の株式相場について「底値固めの展開」「徐々に買い安心感が高まってくる」「今週のレンジは15700−16300」という事ですので、ここからまた底抜けかよorz
#曽宮キャスター風邪早く治してね
○一転して金利急低下
金曜日の無担保コール翌日物取引の加重平均金利は0.013%とまたまた低下。オペを沢山うったので税揚げではありましたが当日は資金余剰で当座預金残高は速報ベースで14兆3200億円と前日より多くなりました。
無担保コールが下がりましたが、GCレポ金利なんぞも朝っぱらから下がりまして、7日スタートの翌日物取引のレートは前日最終の0.05%レベルから大きく下がって最後は0.03%から0.02%近辺まで低下したようです。週初は無担保コール0.071%のGCレポ0.08%だったのですからまあよー下がりますなあという所です。
GCレートが激下がりした事から水曜のFB入札あたりに無茶苦茶需給の悪かった1〜2か月もののFB需給も改善したようで、やたら売りが出てて重かったこのゾーンがだいぶ復活しているようでございます。いやはや。
で、まあ潤沢な供給で下がったということで片付けてしまっても良いのですが、よくよく当座預金残高推移を見ると30日以降14兆円台で(1日は13.3兆)やってましたので、供給で安心感は与えましたが、そんなにバカスカ出した訳でもありません。じゃあ何で金利下がったのかよと考えますと、どうも週前半に資金抱え込んでいた人たち(例によって大手銀行様かと)が税揚げイベントも無事通過の着地が見えてきたのでここぞとばかりに資金を放出したようでございます。あっはっは。
いやまあ何事も未体験ゾーンですからある程度仕方無いのですが、おまいら揃いも揃って資金抱え込んでGCレートがやたら高止まりしたと思ったら今度は皆で資金放出でございますかと苦笑を禁じ得ませんな。週初はコールが下がるのにオペ金利は妙に高止まりしてまして、この時なんぞはCPやTBFBの需給が悪いうえに資金が抱え込まれてたからコール以外の需給が悪くて仕方なくオペで資金を取りに行ったクチもあるようですな。
いやはや何ともでございまして、金曜日は「マーケットに突如資金が溢れてきました」っていう感じでございました。
多分「短期市場は落ち着いた」という表現で理解されるんでしょうけれども、ジジイの現場感覚的にはこれは「金利は確かに下がったがこりゃ落ち着いてないしょう」という評価ですわな。だって振れ方が極端なんだもん。
○春審議委員の講演と記者会見は相変わらず無難ですな
先週木曜に春審議委員の講演&記者会見が沖縄で行われました。
講演http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0606a.htm
会見http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0606a.htm
まずは講演。
まあだいたい無難なお方なのですが、今回も無難という感じ。特に金融政策に関連する所は見事に日銀の公式見解になっていますので、余計な個人的見解が混じって無い分だけ理解の整理をするには吉かもしれません。
そんな中で春審議委員の見解と思しき部分が出たのは先行きの経済に関する部分です。講演の真ん中のあたり(経済の上振れ・下振れリスク)ってところです。
『展望レポートでは、経済の上振れ・下振れリスクとして、海外経済の動向、在庫調整の可能性、企業の投資行動の一段の積極化の3点を掲げていますが、私としては、1点目の海外経済、特に原油価格の高騰の影響と米国経済の先行きに注目しています。』
ということでして、景気下ぶれリスクの方に注目しています。一応具体的にはどういうことですかという所を引用しておきます。
『先行き、原油価格の高止まりが続き、あるいはさらに上昇傾向を辿った場合、エネルギー利用効率の高い日本では直接悪影響を受けるリスクは相対的に小さいかもしれませんが、海外景気の減速によって間接的にその影響を受ける可能性は低くないと考えられます。』
『また、米国経済については、まさにこの原油高が進む中で、インフレ予想の高まりから長期金利が急上昇し、成長率が大きく減速するリスクが考えられます。また、これまで住宅価格の上昇が個人消費の基調を押し上げてきた面もあるだけに、住宅価格の調整が急激なものとなれば、やはり成長率の大きな減速につながるリスクがあると考えられます。』
まあしかしここの部分以外は展望レポートの内容に即して説明をしているという感じでして、普段から講演その他を粘着して見ているヲチャー的にはオモロナイのですが、まあ本来こういう感じでやっていれば良いんじゃネーノとは思うのでありました。ただし皆がこれだとこちとら書き物のネタが無くなるという諸刃の剣(^^)。
金融政策についてもごく無難。
『最近、市場やマスコミではゼロ金利解除の時期に関心が高まっているようですが、私としては、予断を持つことなく、月に1回ないし2回開催される政策決定会合の都度、経済物価情勢をつぶさにみて、適切な判断を行っていくことが大切と考えています。』
いやあの時期はどうせ7月−9月(最近は7月の人が多いと思うが)くらいで最初は早いでしょうという感じでして、関心はどちらかというとその後もドンドンやっていくのかどうかって所だと思うんですが、まいっか。
『ただ、いずれにせよ、今回の展望レポートで示した2本柱に基づく点検の結果によれば、政策金利を概ねゼロ%とする期間の後も、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高い、というのが現在の基本的な考え方です。今後、慎重にゼロ金利解除の時期を判断し、その後も、経済・物価情勢の変化に応じて、徐々に金利水準の調整を行っていくことになりますが、基本的には判断を急ぐことなく、全体として余裕をもって対応できる状況であると認識しています。』
「判断を急ぐことなく」って所に微妙に春審議委員の見解が出ているという理解をしておきます。まあ是非その方向でよろしゅうに。
記者会見も似たような感じですが、総じて先行きの景気に関して楽観論を排除しているという印象です。
【問】『先程、アップサイド・リスクの話がありましたが、挨拶要旨の内容をみると、どちらかというとダウンサイドのほうを強調されているように思います。アップサイドとダウンサイド、現状の可能性としてどちらに振れる可能性があると思われるのか。午前中の冒頭挨拶要旨では原油、海外のリスクについて文章を多く割かれていますので、景気に与える影響という観点から教えて下さい。』
【答】『私のこれまでの職業経験も若干影響しているのかもしれませんが、やはり今、最大の不透明要因は、依然として原油価格ではないかと思っています。(長いので中間割愛)やはり日本経済の今後の持続的な回復あるいは拡大にとっては、世界経済、特に米国、中国の継続的な拡大が非常に重要ですので、原油価格上昇の影響を受けて米国あるいは中国の経済が下振れするということになりますと、日本経済の持続的な回復も難しくなるのではないか。どちらかというと私は原油価格のさらなる上昇、高止まりに伴う経済としての下振れリスクを心配している状況です。』
【問】『挨拶要旨の中で、ゼロ金利解除の時期について、「判断を急ぐことなく全体として余裕をもって対応できる状況であると認識している」とのお考えを示されていますが、余裕をもって対応できると判断されている理由について少し詳しくご説明頂ければと思います。』
【答】『先程も申し上げましたが、ゼロ金利を解除するかどうかという判断については、景気とか物価が徐々に好転していく中で、ゼロ金利を維持していくとその金融政策面からの刺激効果が次第に強まってくる可能性があります。(これまた中間割愛)私自身としては刺激効果が強く出過ぎてしまうというリスクは現在では少ないのではないかということから、ゆっくり慎重に判断していく余裕があると申し上げた次第です。』
まあ原油価格上昇に伴う物価への影響よりも景気に関する影響を意識しているということで宜しいのではないでしょうか。
2006/06/02
お題「火消しのつもりが火付けになる難しさ」
昨日は春審議委員の久々の講演がありましたが、打たれたヘッドラインは割とハトっぽい中立という感じで、要旨もざっと読んだらまあそんな感じになってました。本当はこちらをネタにする所なのですけれども、ブルームバーグの行った福井総裁単独インタビューで引け後に相場が動いたのでその感想をば。
以下ソースはブルームバーグニュース1日16時38分配信の記事を主に、ヘッドラインなども。
○こりゃ誤解しますって
引け後で特に何の予定もない筈ののノーケアー時間帯でありますところの16時になって本件のヘッドラインが打たれました。普通この時間は事務作業タイム(総裁記者会見とかがなければ)でして、しかも日本相互証券の債券引値が公表される時間帯ですからディーラーも事務タイム。
その時間にブルームバーグが31日に行った福井総裁単独インタビュー記事が出て、ユーロ円金先が売られてみたり、2年新発が引けの2毛5糸甘の0.90%まで叩かれてみたりとなった訳ですな。
ヘッドラインをよくよく見ると中立な話をしているようなのですけれども、そもそもが「日銀はホンネじゃ早期かつ連続利上げをやりたがるんじゃネーノ」って警戒心が強い(その背景には量的緩和解除を頑張って3月に行ったうえに水野審議委員あたりから中立金利がどうのこうのという話がでた事がある)になっている所に加えて、昨日はFOMC議事要旨という燃料が投下され(それだけじゃなくて月末の年金リバランス期待で余計に相場が上った反動もあるようですが)て債券市場が派手派手に下落した日なので、売り材料に反応しやすい地合いであった事もあったんでしょう。売り材料っぽいヘッドラインに見事に反応しました。曰く、
『最初のステップ早ければ、2回目以降の判断にむしろ幅』
『何か問題起こってから金利上げるのでは手遅れになる』
『金利も経済の足取りに沿って次の階段用意した方が良い』
『見通しどおりなら金利が変化しないと経済は飛び上がる』
『金利が変化していく方が経済の安定的な運行支える』
#ちなみに売り材料の方だけ並べてますので念の為。
新聞記事のように全部の内容が一覧できるのであれば、ヘッドラインの書き方を工夫して(この前の日経新聞がそうですな)両論併記も良いのですが、ヘッドラインが一本ずつ出てくる情報ベンダー方式だと、全体が両論併記でも一本一本のヘッドラインまで両論併記できませんから、刺激的な内容を見るとまず即座に反応しちゃいますな。今の市場はまだまだ早すぎる連続利上げに対してナーバスになっているからそっちに反応しやすいし。
○最初のステップが量的緩和解除とは普通気が付きません
などと冷静に書いているあたくしですが、このヘッドラインとインタビュー記事を読んでいるときは市場平均と全く同じ反応をしておった訳でして、「火消しの後に火付けしてどうするんだ福井総裁ゴルァァァァ」と湯沸しポッポー状態になっておりまして、記事を冷静に読んでいた冷静な人に指摘されて始めて気が付いたというのが実際の所です。ちなみにもうちょっと正確を期して申し上げますと、その時間は事務作業をやっておりまして、気が付いたら金先が大売られしてて「こりゃ一体どうしたんだ」と人に聞いて回りながらブルームバーグをチェックしてたら見つけたという間抜けな状況であったのはここだけの話です(滝汗)。
一番反応しやすいヘッドラインは『最初のステップ早ければ、2回目以降の判断にむしろ幅』でして、よくよく考えればこれもそんなに強烈な売り材料にはならない筈なのですが、「最初のステップ」=「次の利上げ」と解釈して早期の利上げですよやっぱりタカ派ですよ大変ですよとなりますわな。インタビュー記事の小見出しでも『最初のステップが早ければ次は遅い』ってあったらそう思うわな。
しかし上記の冷静なるお方に指摘されてよくよく記事を見ると、この発言は『日銀が今年3月に市場予想よりも早く量的緩和解除に踏み切ったことで、ゼロ金利解除やその後の利上げが早まるのではないか、という見方が市場で強まっている。』という見方についての福井総裁のコメントだと書いてありました。
・・・つまりこの「最初のステップ」は量的緩和解除だったという事になるんですが、済んだ話を最初のステップとか言われても市場の人たちは普通そう理解しませんって。
それとですな、まあ仮にこの最初のステップを「次回の利上げ」と解釈しても、「2回目以降はむしろ幅が出る」って言い方だと買い材料になってもおかしくない(直線的連続利上げを否定しているのだから)のですが、その話をしてる側から「フォワードルッキング」と言ったりしてますし、そもそも論として3月解除の地均し大会が始まる前にも「余裕を持って対応」みたいな言い方をしていたのにおもむろに解除を急いだというトラックレコードがあるのですから、「やっちまったら後は後でまた別の理屈が出てくるんでしょ」って疑念は払拭できませんわな。
○「最初のステップ」論は前の説明と整合性が取れませんけど
それにですな、量的緩和解除の時の説明では市場の状況について福井総裁というか日銀のご説明は確か「既に時間軸効果が剥落してただのゼロ金利になっているので政策には非連続的な変化が生じていない」という理屈になっている筈。
自分達で「政策に非連続的な変化が生じてない」と説明してから3か月も経たないうちに「量的緩和解除は最初のステップ」とか言われてますと「ああまた後から勝手に理屈が書き換わっているわ」とあたくしなんぞは思ってしまう訳ですな。
まあ「政策が量から金利に変ったから最初のステップだ」っていう理屈なんでしょうけれども、金利政策でステップがどうのこうのって言ったら金利の変更と解釈するのが自然だと思うのですが如何でしょう。本音では「最初のステップ」って初回の利上げなのではないかと思っちゃいますよ。
ちなみに、英文で配信された方には最初のステップ云々の部分に量的緩和解除云々の件がないので、より一層誤解しやすいようで、引け後に一番派手に金先が売られたのは海外タイムでもあることですし、海外勢だったのかもしれませんな。
○「勝ち続ける」よりも「負けない」ようにして欲しい
インタビュー記事は色々と読みどころありそうですが、政策云々じゃなくてあたくしが一番気になりかつ不安に思ったのは福井総裁が意気込みを表明(?)したくだりです。
日本の将来像についてこんな話をしておりました。
『世界経済の中の日本というプレーヤーは、絶対に勝ち続けなければならない。時々勝つのではなくて、勝ち続けることが大事だ。わたしもアスリートの1人だが、競技場において勝つことを意識しないことは、即、死を意味する。勝ち続けること、これは私の哲学だ。』
アスリート系の自信満々の人にありがちなパターンでして、もうスポーツがタコで腕っ節の弱さに定評があったあたくしなんぞは「はあはあそうですかすごいですねえ(棒読み)」という反応しかできません。
あたくし思いまするに、勝負とはもっと息の長いものでして、常に勝つというのは実力に裏打ちされた自信もあるんでしょうが、一歩間違えると傲慢にも繋がると思うんですよね。相場だって上るか下がるかって話だと5分5分ですけど、人間欲があるから目がその分曇るので3分7分とか良くて4分6分(たまに百発百中で外す髪様もいますが^^)だと思うんですよ、上げ下げ勝負だけだと。で、その7分の負けを最小化するとか、自分が相場に参加している立ち位置がどういう点で有利性があるのかを考えてその有利性を生かすかとか、そういう工夫をするのが技術だと思うんですよね。
そりゃまあ外資を幾つも動くような力強いディーラーとかだと100億儲けた後に3年連続40億損しても100億儲けたトラックレコード引っさげて次の会社に転職するとか(やや極端かつ大げさな書き方してますし、全員が全員そういう訳はございませんので念の為申し添えます)いうのも出来ますけど、同じ立ち位置(例えば自分の金で相場に参加する人)から延々と相場に参戦するためには「致命的な負けをしない」というのが大事ではないかと。一度樹海送りになったら終了なんですからね。
あたくし前もちょっと申し上げたかもしれませんが、囲碁なんぞやる(相手が身近にいないので全然やっておらず、いまやったら三段も無いでしょうな)のですが、囲碁とか将棋とかって息の長い勝負(特に囲碁は)でして、一流のプロ同士の勝負であっても「良い手を打って(将棋だと「指して」です)勝つ」よりも「悪い手を打って(指して)負ける」というケースの方が多い競技でございます(この辺のことに関しては確かPHP文庫から出ている将棋の第15世名人大山康晴さんの書いた「勝負のこころ」という本がマジお勧め)。
いやあの延々としょうも無いあたくしの与太話ですが、何を申したいかと言うと、金融政策運営というのも似たようなもんで、延々と続く息の長い勝負であって、「勝ち続ける」なんてのは人間のやることだから所詮無理だと思うんですよ。自分の任期中に勝ち逃げだったらまあ運が良ければ出来るかもしれませんが、もっと長い目で見たら「致命的な悪手を打たない」方がより重要なことだと思うんですよね。
「勝ち続けることが哲学」というのにはその点で物凄く危ういものを感じるのはあたくしがアスリートじゃないヘタレ君だからでしょうかね。何だかな〜って思うんですが。
#最後の方は妙な話になってしまいましたな(汗)
2006/06/01
お題「今日も雑談で勘弁」
もう6月ですか。陽気がこの調子なのでブルームバーグテレビの曽宮さん風邪声ですな。かくいうあたくしも5月相場でヘロヘロもいいところで月末進行と相まってもうフラフラ。皆様もご注意ありたし。
○マル公論議って盛り上がるんですね
例の公定歩合の話題ですが、昨日はあちこちの人が本件に関するレポートを出していました。ロンバート金利と誘導目標金利の間のレンジをどのように設定するのかって話はかなーり技術的な問題のような気がするのですけど、やはり「公定歩合」という言葉には偉い人の興味を動かすものがあるんでしょうなあと思ってしまいました。本職の人たちの出しているレポートを熟知すべしと言った所で。
レンジが狭い方が良いのか広い方が良いのかというのはケースバイケースとしか言いようが無さそうですが、今後起こるであろう利上げ局面は未体験ゾーンの世界ですので、いきなりレンジを派手に大きくするのはどうなのかって感覚的には思うのであります。
未体験ゾーンというのは何かと申しますと、コール誘導目標を公定歩合よりも低くするという「低め誘導政策」が始まる前(っていつでしたっけ?少なくとも10年以上前だったような気がしますが、低め誘導時代に無担保コールをきゃあきゃあ言いながら日々放出していたのは懐かしい思い出話^^)には日銀は短期金融市場への最強オペレーション手段の強制指値オペ(オペじゃないけど)「日銀貸出」というのがありましたし、そもそも無担保コール翌日物市場がメインの市場だった(今はまだまだ局地的な市場の観が強いと思うのですが)のでコントロールが効きやすいというのがあった訳ですな。
で、今後コール目標金利を引き上げていく際には昔のような強力手段は無いわ、時点決済じゃないわ、そもそも短資経由のコール市場が拡大するのかどうかもよー判らんわというまあ不透明な要素が多い訳でして、まあそんな中でいきなりたがを外しまくるのも無駄な乱高下を招きやすそうでアレでございますな。まあ短期が1%の時にもレンジが0.1%とかいうのは強烈な金利コントロールモードとなりますので、そりゃ現実的に如何なものかと思いますわな。まあ金利を引き上げていく過程で徐々にレンジを拡大していくのが現実的な話でしょう。
まあ幾らになるとか予想するのもど〜でもいい話ですけど、コールレート0.25%の時には現状の0.1%のレンジだと0.25〜0.35となりますが、もうちょっと拡大するのもアリかなとは思います。とは言え、ゼロ金利から0.25%になった如きで正常モードの積りでレンジをいきなり強烈拡大するのは如何なものかと思う(金利政策が実質始まったばかりの時期にあたるから)ので、引き上げて精々0.25〜0.50%でしょう。個人的には中途半端ですが0.4%なんてどうでしょうと思いますが。
まあ経済状況がまともになって短期金利が3%だ4%だというようなまともな金利がつくような時代になる頃には(なるのかどうかは実にアレでございますが)レンジも広くなっているでしょうし、必ずしも常にフルスライドでコール金利とロンバートを変化させる必要もない(記憶が間違ってなければFF誘導金利と公定歩合を昔は必ずしもフルスライドで動かしてなかったと思いますが)でしょうね。
#と、思わずまたこのネタを引っ張ってしまいました。
○ちと古いのですが総裁定例記者会見メモメモ
5月19日の会見ですが。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0605b.htm
こんな質疑応答がありました。
【問】『先日の講演において、市場との対話について触れている部分があって、3月の量的緩和政策解除の前からかなり粘り強く市場──メディアも含めて──と対話を続けていたが、そういうフェーズはもう終って、総裁自身の言葉では、スプーンでそういう材料・ヒントを市場に差し上げるようなことはしないという趣旨の発言があったかと思います。これは市場との対話戦略について何か変化があるということですか。関連して、例えばマーケットの期待があまりにも高まってしまうと、中央銀行がそういった罠に陥って政策の機動性が奪われるという研究が米国でもなされているかと思いますが、そういった期待の罠のようなものを念頭に置かれて、今後コミュニケーション戦略を変えていこうとしているのかを伺います。』
この質問に対する総裁のお答えが何とも南海ホークス。
【答】『講演で申し上げたのは、米国でも、at a measured paceというように、次のステップが具体的に読めるようなかたちで情報提供をしてコミュニケーションを図ってきました。日本でも、量的緩和政策の枠組みのもとでは、消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上になるまでこれを続けるというように、先々のことが具体的に読めるような情報提供を続けましたが、これは経済環境がそれを許す状況にあったということです。コミュニケーションの基本ポリシーを変えるというわけではありませんが、米国も日本も、そういうやり方でのコミュニケーションを許す経済環境ではなくなった、そういう意味では局面が変わったと申し上げました。むしろ金融政策のあり方として、普通の状況に戻ったということです。』
まずここで疑問なのですが、それでは展望レポートで『先行きの金融政策の運営方針については、上述の2つの「柱」に基づく点検の結果、現時点では、無担保コールレートを概ねゼロ%とする期間の後も、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高いと判断している。』って言うのはありゃメジャードペースがどうこうとか言う意味では無いという事でございましょうか?そうなると何のために運営方針については云々ってことを言うのかが良く判らんのですが。。。。
『普通の状況とは、一歩先の金融政策そのものについて、具体的な示唆を中央銀行が明確にスプーンに乗せて差し上げ、それをそのまま鵜呑みにして下さいというやり方ではなく、オーソドックスだが新しく工夫を凝らして透明性の高い措置で対処するということです。』
つい一昨日出ていた地均し礼賛レポート(本文見て無いのでそう断言するのは申し訳ないが、日本語の要旨はどう見ても・・・)は執筆者個人の見解で日本銀行の見解ではございませんですかそうですか。
『国によってやり方は異なるでしょうが、日本銀行について言えば、やや長い先々までの標準的な経済のシナリオを明確に示し、かつそれについての価値判断も示し、実際の動きがそれに沿っているかどうか互いに知見を持ち寄って判断し、その情報をコミュニケートしながら、市場においては正しい市場金利の形成に努めてもらい、私どもとしては適正な政策措置および時期を懸命になって究明します。』
正しい市場金利という言葉につい脊髄反射したくなりますが。
『市場金利、現物や先物の金利を挟みながら──丁度魚釣りの浮きのように常にピクピク動くが、浮きの真下に必ず魚がいるというわけではないので──、私どもは適正な政策の在り処をきちんと探るし、市場では、自らの経済情勢判断、金利感にピタッと合うところに浮きの位置をいつでも調整して下さい、というのがこれからのやり方です。』
どう見ても円環性(ry
『このように、コミュニケーションの仕方を変えただけで、透明性を意図的に後退させようというものの考え方でやっているわけではありません。これまでに比べ、かなりオーソドックスなかたちに戻りましたが、この枠組みの中で今後とも透明性を高める努力を続けていきたい、という基本姿勢には変わりはありません。』
何か益々ややこしいコミュニケーションになりそうな悪寒。