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2004/04/30
お題「ぶちきれ相場/強気の展望レポート」
○水曜日はぶちきれ相場
と言うことで相場のお話。水曜日の債券市場は荒れ模様でございまして、朝から中期債の4〜5年ゾーンが過激に売り込まれまして、逆に10年ゾーンはやたら堅調。しかも20年、30年ゾーンは軟調という事で、イールドカーブの整合的な動きという観点からするとかなーり支離滅裂な動きでありました。まぁ終わってみればまたも先物独歩高だったのですが、何をやっているんだという展開。
まぁ材料目白押しの連休を前に(早速米国GDPとイニシャルクレームで米国金融市場荒れ模様のようですが)してポジションクローズの動きがあったんでしょうが、それにしても激しく強引な相場展開でして、相変わらずマーケットインパクトっつーのをよく考えて売買しているのか良くわからんお方がおいでのようで。困ったものであります。
おまけに2年国債入札は事前のプライストークでは「まぁそのレベルは入るでしょう」と思われていた99円94銭(0.130%)の按分が僅か6%になってしまいまして、(ちなみに前場引けでの入札前売買では0.135%で取引されてましたが)またも1社が驚愕の落札をしたようであります。
落札結果発表直後に踏みあがるのかと思えば、逆に前場から無茶苦茶に相場を振らされてしまいぶち切れモードになっていた中期債ディーラーが激怒激怒大激怒!!状態になって「投資家需要が盛り上がってねぇのにそんなに一人占めするんじゃねぇヴォケ」と新発債やら既発2年債に売りをぶつけて(というか元々そんなに業者が大きくショートだったわけでもないのでしょうな)何の事は無い入札前よりも気配が弱くなってしまいました。
3月の日銀による国債買入実績、要は週3000億円ずつ行われている輪番オペでぶち込まれている国債を見ますと、買入総額1.2兆円のうち7000億以上が2年国債でして、まぁ元々2年国債に爆発的なニーズがあるわけではない(あるなら7000億円もぶち込まれません)っつー事です。
毎回2年債の入札が妙な盛り上がり方をしますが、別にその後踏みあがる所も無い訳でして、要するに皆さん欲しいのは「入札実績」であって「玉そのもの」では無いということなんでしょうな。確かに今後のことを考えると早いうちに入札実績を稼ぎたいところなんでしょうけれども、入札後1分も持たずに価格が崩れるような入札をする行動がプライマリーディーラー制度導入の本旨に叶っているのかどうかという事に関してはもうちょっと考えた方がいいのではないかと思うわけでありますな。まぁそこまで財務省も細かくチェックできないでしょうが。
○予想通り強気の展望レポート
展望レポートの基本的見解が昨日発表になりました。で、発表になったのは良いのですが、発表時間である15時の前に時事メインで政府関係者のコメントとして「基本的見解での消費者物価指数見通しは小幅マイナス」という記事が出ておりました。この日の金融政策決定会合に出席していた政府出席者は2名でして、石井啓一財務副大臣と大守隆
内閣府大臣官房審議官(経済財政−運営担当)でありますので、どう考えてもコメントをしたのは石井財務副大臣。
15時に発表になるべきものを事前にリークするというのはその内容が事前予想の範囲内であっても言語道断でありまして、こういう人間は政府の職に就けるべきではないでしょうな。要注意人物ということで別の意味でチェック対象ですな。
さて、それはともかくとしまして展望レポートなんですけれども、内容としては今まで毎月のようにしぶとくチェックしていた日銀の金融経済月報の延長線上でありまして、今月の初旬に発表されたやたら強気な内容の月報と同じく随所に「ダム論」らしき表現が散りばめられたものでありますな。
http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/gor0404.htm
『わが国経済は、昨年後半以降、輸出の増加を起点に、生産、企業収益が拡大した。これが設備投資の増加につながり、個人消費もやや強めに推移する中で、景気は緩やかな回復を続けた。本年度も、前向きの循環が次第に強まるもとで、景気は回復を続けると予想される。前回(昨年10月)の「経済・物価の将来展望とリスク評価」において示された「標準シナリオ」と比べると、総じて上振れて推移していると考えられる。』
で、その中をやや詳しく述べると・・・・と書いてあるのですが、その中で「資産価格の変化」について触れているのが初めて出てきた表現だったと思うのですが目新しいところです。
『生産活動や企業収益の増加の好影響は、雇用・所得面や資産価格の変化を通じて家計部門にも徐々に及んでいくと考えられる。このため、個人消費は緩やかな回復に向かうと想定される。』
資産価格効果に関して言及しているのは中々。しかし家計部門の中での最大資産って相変わらず絶賛下落傾向の続く不動産じゃないかと思うのですが・・・・・・・ま、いっか。
先日の須田委員の講演では個人消費の先行きに関して「原材料価格の上昇傾向による国内企業物価上昇を消費者物価に転嫁しにくい状況において、企業収益の減少あるいは雇用への皺寄せが行われる懸念」を指摘していましたが、この後にあります「上振れ・下振れ要因」の中にもこの点については指摘されておりませんです(企業部門における回復の家計部門への広がりが遅れる可能性としか言ってません)な。
国内企業物価の上昇に関する点の影響については楽観的というか、あえて何も懸念していないという事なのでしょう。景気回復を伴わないで物価だけ上昇するのが世の中的には一番困ると思うのですが、どうもデフレさえ脱却すれば日銀は免責とでも思っているんでしょうかね〜。
『国内企業物価は、内外商品市況高や国内需給の改善などを反映し、本年度は前年比若干のプラスとなる可能性が高い。(中略)商品市況上昇が川下段階に及ぼす影響も、企業部門における生産性上昇等によってかなりの程度吸収されると見込まれる。(以下略)』
で、上振れ・下振れ要因に関しては、4つの要因を並べているのですが、正直論点として全然面白くないというかそんなのは別にあたりまえの話であって大袈裟に『上振れ・下振れ要因』とかいうものでもないでしょう。一応並べると、1.海外経済の動向、2.国内金融・為替市場の動向、3.国内民間需要の動向、3.不良債権処理や金融システムの動向、4.不良債権処理や金融システムの動向、となっております。
最後に日銀の決意表明なんだかよくわかりませんが、『デフレ克服の展望と金融政策運営』というお題で文章が並んでいるのですが、その中で金融緩和の枠組みがどのように有効に機能しているのかというお話があります。
『こうした金融緩和の枠組みは、以下のルートを通じて、民間部門の前向きの経済活動を金融面から支援する役割を果たしている。第1に、量的に潤沢な資金供給は金融市場の安定や緩和的な企業金融環境の維持に貢献している。第2に、景気回復のもとで、前述のような約束を通じて先行きの金利予想の安定が維持され、経済活動における投資採算の改善をもたらす。そうした金利を通じる景気支援効果は、景気が回復し企業収益が改善する状況において、より強まっていくものと考えられる。』
第1の金融市場の安定に関しては短期金融市場を意識しているのかとは思いますが、まぁそれはその通り。でも緩和的な企業金融の維持って本当ですかね〜と思うわけですな。だって「企業金融の目詰まり」とか言って資産担保証券の買入始めたのは量的緩和だけでは駄目だからってことでしょ。そもそも金融庁が不良債権の引当強化だの繰越納税資産の否認だの散々に金融機関に締め付けを行ったのが企業金融引締めに大いなる効果を発揮しているわけでして、日銀と金融庁の連携が出来ていない(まさに汪兆銘氏指摘の「左右不連携」な訳でですな)のが問題なんでしょうな。
第2の理屈はさっぱり訳わからん。量的緩和のコミットメントという中央銀行にとっては屈辱的な「お約束」が本当に文字通り機械的に実行されるのであれば、消費者物価指数に関する市場の思惑で市場金利が却って大きく乱高下するというのが市場の片隅で小理屈を並べているあたくしの実感的なイメージであります。それ以前の問題として、日銀(というか総裁)が率先して長期金利に関する不規則発言を繰り返しているわけでして、ここで書いている事をそのとおりに実施していると思っているのかと小一時間問い詰めたいところであります。大体この前須田委員なんか講演で「ほんの僅かでもいいから金利機能の復活を」って言ってました(前から言ってます)が、須田委員の理屈とこの文章は論理矛盾してませんかね。
まぁ「市場に任せるけど金利は安定します」って言う事なのかもしれませんが、どうも判ったようなわからんような理屈であります。
全文は本日14時に発表されます。
2004/04/28
お題「今日もネタが無く雑談」
○5年債の空中戦
昨日の債券相場の主役は先物(というか7年の現物債)でありました。どうも強力な買いが入ったようでして、一昨日はとてつもなく上値が重かった先物が一夜明けるといきなり独歩高モードと相成りました。まぁ日替わりで強くなるゾーンが交代するのは勘弁していただきたい所ですが、相場がボックス圏になって投資家様(除くディーラーみたいに動く人)の商いが低調になってくると「日替わりイールドカーブ」という動きなるという傾向がありますんで、要するに今の相場が思いっきり「商いの薄いボックス圏相場」になっていると言う事でしょう。
そんな中で、最近日々大暴れするのが5年債であります。先週末からその傾向が顕著なのですが、日中に5年債の売買が交錯しているようでして、5年ゾーンの値動きが他の年限と比較するともう激しい激しい。下手をすると日中のイールドカーブの動きの方が先物の値動きの方がでかいという場面もありますな。
5年ゾーンは銀行業態の主戦場になっておりまして、戦場には強力兵器でばっかんばっかん撃ち合いが行われているようなのですが、平和愛好家のあたくしと致しましてはあまり撃ち合いに提灯をつける気も起きず毎日唖然としながら眺めております。その見ているだけの感想ではあるのですが、先週金曜日にはリアルの大口売買のぶつかり合いだったようですが、それ以降はどうも大口売買がぶつかっているわけではないようですな。で、どういう状況になっているかと申しますと、中期ゾーンが大戦争モードになってしまっているので業者が余計な手出しをしないというスタンスになってしまい、本来そこまでマーケットインパクトがね〜だろ〜と思われるようなロットの売買でも簡単にぶれてしまうという困った状況に陥っているようですな。
先物も先ほど申し上げたように独歩高になったり独歩安になったりするのでヘッジに使いにくく、おまけに中期債の値動きが激しいということで、常に市場に強制参加状態のマーケットメーカーと致しましては血圧が上がりっぱなしの状態であります。ヘッジが効きにくい状態な上に尚もヘッジがしにくい債券で撃ち合いをしていただくのはあたくしの健康の為に勘弁して頂きたいものです(^^)。
○金融政策決定会合
本日は金融政策決定会合。何故か本日は一日開催なんですが、「展望レポート」の内容承認が行われる訳でして、んな重い話をするのに一日かよ!って言いたい所ですが、ま〜本日の議題は展望レポートだけだというお話なんでしょうな。
と言うことで本日は追加緩和はある訳ないという結論にしておけば宜しく、展望レポートでの物価に関する先行き見通しはまさかゼロにする訳にも行かないので、▲0.1%か▲0.2%のどっちかになるでしょうし、経済に関する見通しの記述は最近の金融経済月報の表現や福井総裁の言動から推測するにどう考えても超強気な表現が散りばめられる事になるでしょう。
何かやたらと注目が集まっているという報道が目に付くというか鼻に付く訳ですが、今まで日銀から出てきている各種のコメントや発表を見ていれば自ずと内容は読めてしまうと思うんですが。新しい経済指標が出てくるわけでもないのに何でそう注目扱いされるのか訳わからん。
と言っても何か反応するんだろうな〜。
○証券化ですか〜
やたらと新しもの好きの日本銀行では「証券化市場フォーラム」というのを肝いりで実施していたんですが、その証券化市場フォーラムの報告書ってのが先日日銀Webにアップされていました。
http://www.boj.or.jp/seisaku/04/mpo0404b.htm (報告書要旨)
でまぁあたくしそれほど証券化に詳しくない門前の小僧以下の存在ですんで、「ほうほうそうざますか」とマターリと読んでいる訳なのですが、何かよくわからんのですがシロート目に見て「結局この報告書は何を言いたいのかなぁ??」という感じでした。もしかしたら全文にはちゃんと書いてあるのかも知れませんが、問題点の論点整理がどうも突っ込み不足かと。
で、ややこしい話は兎も角として、「???」と思ってしまう記述が冒頭にあるわけで、これで本当に大丈夫かいなと思ってしまうわけであります。
『証券化商品は、裏付資産の分散効果を通じてリスクを削減し、リスク許容度に応じて多様な投資家を呼び込むことが可能になるという特性を有している。』
別にリスクの総量は減らんと思うのですが。リスクを広く分散させたり逆にリスクを抽出して濃縮する(とは表現せんが、まぁそういうイメージと言うことで)ことが出来るのが証券化商品だと思うんですけど。意地の悪いツッコミですけど、金融に思いっきり疎いパンピーが一読すると夢のような商品に見えてしまうので如何な物かと。お得意の政治ウケ狙いなのかも知れませんが。
『証券化市場の活性化は、貸出を含む金融取引について「リスクに見合ったリターン」の実現に寄与し、新しいビジネスや金融先端分野の発展と相俟って、わが国の金融機関を活性化させることにも貢献しよう。』
この「リスクに見合ったリターン」という観念の幻想に関しては何度かドラめもんで申し上げているのでしつこく申し上げませんが、んなものが実現したらとてつもない金融引締めになってしまうと思うんですけど。
『さらに、金融機関の貸出を補完するかたちで信用仲介チャネルが複線化していけば、金融システムのリスク耐性を高めることも展望される。』
どうも相変わらず市場万能への幻想があるのではないかと思うのですが、市場っつーのは均衡点で安定するものではなく年がら年中オーバーシュートするものですし、日本のように大手機関投資家の横並び意識が強く、おまけにメガ化している状態であればそのオーバーシュートも尚更の物であります。
全ての矛盾を銀行セクターに押し付ける体制にも無理があったとは思いますが、何でも市場で時価評価しちゃうのがそんなに絶賛されるべきものなのかは激しく疑問があるわけですよ。ディーラーやっててそういう事を言うのもとても変なお話ですけど。
しかも昨今の景気回復って究極はりそな問題の対応やら産業再生機構に見られるように「リスクを政府に押し付けてとりあえず封印しておく」という対応が効果を発揮しているものでして、何でもかんでも表面化させて世の中全て上手く行くとは思えませんけどね。まぁ封印するのもどうかとはおもうが、現実に景気が上向きになっている(ように見えるだけだと思うが)訳ですのであまり厳しくは断罪できませんな。
・・・・・・・リスクを政府に押し付ければ最終的には納税者にツケが回ってくるのだからこれこそ究極の「証券化によるリスクの幅広い分散」なわけですか。即ち日本は新たなやりかたによる証券化でリスク分散に成功しているということでありますな。相変わらず金融最先端を走る国だということで(^^)。
#政府のやる事はあたくしのような凡下の遠く及ぶところではありませんな。
2004/04/27
お題「いつもの相場雑感」
見事にネタが無いので相場を見ながら考えた事をつらつらと。
○相変わらずのダラダラとした相場
昨日の債券市場、現物債の受渡日が4月30日で、本日の受渡日が連休明けの5月6日になることもありまして結構な買いがあるのではないかと期待されておりました。で、昨日は輪番オペという「日銀様3000億円お買上げ」までもがあったのですが、蓋を開けてみれば超長期ゾーンや中短期は堅調でしたが、債券先物やら長期ゾーンはやたらと重くて終わってみれば前日比16銭安と、見事に拍子抜けの展開でありました。先物の売買高も13381枚とやたらと盛り上がりを見せた先週末の半分近くになっておりました。
まぁ平均株価が上昇した割には下がらなかったというお話もあるのですが、NRI-BPIが0.09年延びると言う事や連休のキャリー取りの動きへの期待が大きすぎたのかも知れません。
で、相変わらずの相場ですなぁと思うのは現物債の動きであります。前場は3年ゾーンも5年ゾーンもしっかりしているのに4年ゾーンの5年25、26回債だけやたらと売られ(実弾で売りが出たのか、4年の預金保険機構債の発行に絡むヘッジなのかは不明ですが)、後場では先物(7年)と5年よりも6年ゾーンの方が堅調だったり(引け値ベースではイールドカーブは綺麗に引かれていますが)というように、特定の年限が前後と関係なく強くなったり弱くなったりしておりまして、まぁ引き続き「動意薄の中で一部の売買で動いていますな〜」という展開になっております。
特に相場が戻った後にこの傾向が顕著になっているのは、多くの投資家様がひたすら「ターゲットが来ると買うけど、来ない限りは何もしない」という方針に徹している事の反映なのかな〜と思います。下がりゃー買いが入るのですが、別にキャピタルゲイン狙いの動きではないので、上がると買いが細ってしまい、ダラダラと時間が経過するうちに入札があるって感じです。
外部環境が外部環境なだけに、攻めの債券投資をする雰囲気ではない(一部銀行業態のおおどころで頑張っておられる人もおいでのようですが)ので、償還+新規資金流入VS国債発行という静かな対決となっているのでしょう。どうも国債発行の方が優勢のようで、気が付けば「1.5%では買いが入る」だった筈の10年は「1.5%割れは中々厳しいですな」になったり「0.6%乗せは堅いですな」って5年債は「0.6%前半はやはり重いっすな」となっている訳で(^^)。
一応3月終わりからの「スティープニング+相場下落」という流れは止まっているような雰囲気ですが、どうも引き続きぱっとしないようですな。
#何て書いたら相場大反発したりして(汗)
おまけ:読書室で思ったこと
昨日ご紹介した「大東亜会議の真実」ですが、時間の都合上昨日書けなかったことを追加で。
同書の中で大東亜会議に出席したアジア諸国の代表たちの人となりやら日本に対するコメントなんかが色々と出てくるのですが、その中で印象に残ったのが2つ。
汪兆銘氏:日本政府に対して言いたいことは山ほどある。それを要約すると三つの"不"に到達する。"上下不貫徹、前後不接連、左右不連携"。上役がよろしいと受けても下が聞かん。前任者が言ったことを後任者はそんなことは俺は全然知らんと問題にしない。左右の連携もまったく欠けている。外務省がいいこと言ってくれたと当てにしていると、一つも陸軍は聞いてくれない。外務省が言ったことなど俺が知るかという態度だと。これが海軍、陸軍、外務省全部に通じる。これが日本の悪い所。自分は重慶から引っ張り出され表舞台に立たされて、やろうと思っても何もできません。恥ずかしくてできません。なぜならこの三つの"不"のためです。(第4章:裏切りつづけられた一中国人の悲劇より引用)
チャンドラ・ボース氏:日本という国が偉い事は認める。良い兵隊がいるし、いい技術者もいて、万事結構である。ただし日本には良き政治家がいない。これは致命的かも知れぬ。(There
are good soldiers, good engineers, everything is good, but there is no
good statesman. Perhaps, it may be fatal.)(第7章:大東亜共同宣言より引用)
ま、反省っつーか学習効果がないんでしょうな。
ではでは。
2004/04/26
お題「月曜なので(嘘)雑談ですな」
ま〜色々と思った事などをとりとめも無く。
○衆議院補欠選挙
与党全勝。まぁ鹿児島と広島は元々の議員が山中貞則氏に池田行彦氏なのでやる前から負け確定なのですが、埼玉も見事に敗北。といっても元々埼玉も自民党の議席でしたので、全敗というのは一番可能性の高い結末でありまして、ある程度仕方が無いところだとおもいますが、例によって連立与党は大喜びの図です。
ただ、この結果は連立与党が勝利したと言うよりは、自爆系のギャグを繰り返しているとしか思えない民主党の菅代表が勝手に転んだという図に見えますな。マニュフストなどという横文字をブームにしておきながら、選挙で負けた瞬間にマニュフェストを反古にしたり、今更そりゃね〜だろって感じの「榊原英資財務大臣」という閣僚名簿も瞬間反古。
最近の自爆ギャグで目立った事件と言えば、江角マキコさんを国会に呼ぶという本来追及すべき対象を根本から間違えている発言がございましたが、先日ご紹介した「日銀出身の金融政策通」が衆議院財務金融委員会で福井総裁翼賛質疑を行う(しかも肝心のポイントは外しているし)の図などといった事にも示されるように、野党というか反対党としての能力はともかく、政権担当政党としての能力に欠けるってのが浸透してきたのが、民主党敗北の原因でしょうな。
相変わらず小泉悪運が強いなと思うのは、先日のイラクでの人質事件でありまして、よく考えたら海外で日本人が誘拐されるというありがちな事件だったのに、犯人グループが突如「自衛隊云々」という要求をした上に被害者家族のうち約2名のご家族が何を勘違いしたのか、北朝鮮拉致被害者の家族会の猿真似をして大騒ぎというか居丈高な動きを示した為に、綺麗に政府サイドのキャンペーンによって返り討ちになってしまいましたのには、小泉首相の悪運の強さに感動すら覚えてしまいました。
本日で就任3年目。ひたすら政府部門に問題を押し付けて先送りを繰り返してますが、どうもその点については見てみぬ振りをするのがお約束らしいんで、当分政局らしい事も無いでしょうな。
○法令違反ノススメ?
日曜日は朝からぷらぷらとお出かけして、ある種の広告欄を見る為に140円も払って日経新聞を買って喫茶店なんぞでマターリと読んでおったのですが、その中で腰の砕ける記事があったのですな。
15面の投資のお勧め的な煽り記事に「新規公開投資のイロハ」というのがございまして(しかし日経で記事になると・・・・の法則から逝くとそろそろIPO何でも上昇相場も・・・・・ですかね)、その中で「どういう方法でIPO株を確実に手に入れやすくするか」という話をしております。
で、その方法ってのが中見出しにもデカデカと書いてありまして、「ブックビルディングは複数の証券会社に申し込む」って奴です。
えー、さすがに手元に日本証券業協会公正慣習規則が無いので正確な文章までは出せないのですが、ブックビルディングにおいて「割当を受けるために行われる過大な需要申告」というのは公正慣習規則の多分1号のどこかに抵触する行為でありますな。証券業協会の自主規制と言う事ですから直接的に投資家が法令違反になるというお話ではございませんが、証券会社は顧客が複数の証券会社にブックビルディングの申込をしていると知りながらブックビルディングの申込を受け付けると公慣規に抵触でございます。つーか証券会社は「ブックビルディングは一人一件(株数は兎も角)しか申込できませんので宜しく」って(形式的に言っているだけでしょうが)ヘッジ入れてませんかね〜。
まぁ実態が色々とあるというか、そもそも今のブックビルディングの需要調査のやり方が現実的な需要の反映をするのに適していないのではないかというお話はあるのは事実(というかブックじゃなくて入札に戻せよなって感じなんですけど)ではありますが、一応ある規則は規則なのですから、堂々と規則違反をご推奨する記事を掲載するとは注意不足もいいところでしょう。
猛省されたし>日経新聞
#なんて言ってたら規則があたくしの知らぬ間に変わっていたりして。
○別の囲み記事
同じ日経新聞ネタ。確か5面くらいに産業再生機構に関する囲み記事というかコラムがあったのですが、日経新聞らしく「民間に産業再生をやらせておくと銀行主導で先送りになるのはケシカラン。もっと産業再生機構が頑張らないといけない」という結論になっておりました。
最初は記事の中見出しの「先送りはケシカラン」といった趣旨の(ネタ新聞だと言うのに持って帰らなかったので実物が手元にないと言う実にいい加減なあたくし)文言を見て、「おお!産業再生機構が先送り装置になってはいけないという記事なんだな」と思って読んだあたくしは「はぁ??」って読後感に囚われてしまいました。
いや、メインバンク主体で先送りをしているのも事実ですが、産業再生機構のやっている事も単に政府部門に先送りしているだけではないのかと小一時間問い詰めたいところなのですが、どうも産業再生機構送りになることは不良債権の抜本処理だという事は疑う余地の無い真実だという事のようですな。何考えてるんだか。
しかしまぁ日経新聞っつーのは普段読まないせいか偶に見ると突込み所満載で楽しいですな。真に受けて読まなければ楽しめますが、問題はこの新聞が「日本を代表する経済のクオリティーペーパー」として扱われている事なんですが。
○読書室
大学病院の外来ってぇのは待ち時間が長いので、読書には最適であります。んな訳でまた本を一冊読んでしまいました。
「大東亜会議の真実」(深田祐介著、PHP新書)
底本は同氏の「黎明の世紀−大東亜会議とその主役たち」(文藝春秋1991年9月)でして、大幅に加筆修正を加えてPHP新書として上梓されました。
昭和18年11月に東京で開催された大東亜会議は「アジアの傀儡を集めた茶番劇」と東京裁判史観では散々に評されるのですが、それだけの会議ではなかったという点を明らかにしようとする作品であります。
と言っても、単純な反東京裁判史観に見られるような「日本の戦争は全てが白人支配からの解放戦争であった」というようなこれまたバランスの取れない論点ではなく、「もともとが欧米帝国主義を模倣して権益を追求する戦争であり、自存自衛の戦争という位置付けであった戦争が、大東亜会議と大東亜宣言で戦争の目的が大きく変化したのではないか」という観点から、歴史的評価が低く貶められている大東亜会議の意義を見直そうというお話です。
当時の関係者の発言が色々出てきますが、フィリピン派遣軍軍属で大東亜会議の通訳を務めた浜本正勝氏の「大東亜会議の理念は正しかったが、現地の軍が全て駄目にしてしまった」という件なんかは「なるほど」と思わせるものがございます。
また、会議出席者の人物像や、当時の欧米(というか英国とオランダ)の圧政といえるアジア植民地支配に関してもコンパクトに纏めてあって読みやすいです。最後の福田和也との対談は福田和也に反東京裁判史観が入りすぎの感があって、却って余計なような気がしますが。
ISBN4-569-63495-8 \800
#相場の話がまたありませんでしたな。
2004/04/23
お題「何かこっちも支離滅裂ですな〜」
本題に入る前に相場のお話。
昨日の20年国債入札、前場引け時点での既発債の気配から算出される適正と思われる価格やら事前のプライストークよりとてつもなく強い結果になりまして、こりゃまたビックリという入札でありました。
落札結果発表前には妙に煽りを入れる動きがありましたが、結果発表後は「20年入札が順調」→「買わない理由がなくなりました」→「では中期債でも買いますか」という謎の(気持ちはわからんでもないが)論理展開で中期債に買いが入り、先物と3年〜5年が引っ張って相場が持ち上がるという業者泣かせの展開になってしまいました。
入札が割高な上に結果発表後に別のゾーンに買いが入って相場が持ち上がってしましましたので、肝心の超長期債が売れずにヘッジが担がれるとはまた血圧の上がる展開でありますが、おまけに一晩明けたら米国株式が上昇と言う事で、ヘッジを軽めにした人も頭が痛いという心温まる展開になりましたな(金利も低下しているからどっちに反応するのか激しく謎ですが)。
最近いつも思うのですが、今は経済状況から考えて債券投資を「攻め」の姿勢で行う時代では無い訳でして、即ちキャピタルゲイン狙いではなくて債券投資の本道でありますインカムゲインをどう効率的に取っていくかってお話だと思うんですな。
そんな中で相変わらず一部では自分で相場を持ち上げたり叩き落としたりするような派手派手売買をする人、っつーか大手銀行さんなんですけど、まぁそんなお方がおいでな訳ですな。めっきりキャピタル狙いの売買ってのが減ってきている中で相変わらず「攻め」の債券投資の幻影から抜けられない一部の勇者が売買すると、売買の出たゾーンの債券が何か親の敵のように買い上げられたり売り叩かれたりするので、実に香しい展開を示してしまうわけです。冷静に売買する投資家様にとっては絶好のカモですので、まぁ勝手に暴れてもらった方が良いのでしょうけれども(^^)。
と、まぁ軽〜く流す積りの前振りが長くなりましたが、本題の須田審議委員の講演ご紹介の続き。『量的緩和政策と「展望レポート」』って部分です。
昨日のドラめもんでは「日銀現場サイドの入れ知恵があるのでは」などと書きましたが、講演の最後の部分であります金融政策への講釈を見ますと、これがまた突込み所満載というか何を言いたいのか良く判らん内容です。こんな内容の講演原稿を日銀の内部の人間が書くわけありませんので、昨日の入れ知恵説は慎んで撤回させて頂きたいと存じますm(__)m。
○金利形成を日銀が決める??
『金利効果については、量的緩和政策への移行前から短期金利(無担保コールレート<オーバーナイト物>)はほぼゼロであったため、資金供給量を増やしてその金利を限りなくゼロに近づけても、その金利低下効果は非常に限定的でありました。したがって、先ほど示した量的緩和政策の解除条件を示すことで、短期金利(無担保コールレート<オーバーナイト物>)が限りなくゼロに近い状態の継続期間についてコミットし、それを通じてオーバーナイト物だけでなく、イールドカーブにもその金利低下効果を浸透させていくことを狙う「時間軸」効果にも期待しました。これは景気の下支えに効果があったと評価できます。』
まぁ量的緩和政策とコミットメントに関する説明はごく当たり前の内容ですので省略しますが、この後に前回の講演などでも言われたご本人の意見に属するお話が出てきます。
『コミットメント効果を伴った量的緩和政策は、景気、物価についての市場の判断によって、時間軸を伸び縮みさせて金利効果を発揮させるメカニズムを内包しています。』
というか昨年の夏に時間軸が縮んだのは日銀の梯子外し的な景気回復大歓迎出口政策論議モードで期待に働きかける政策とやらが意図せざる方向に爆走した為だったような気がしますが、まぁともかく。
『このような市場の経済・物価に対する見方が、経済・物価の真の姿や、日本銀行の経済・物価情勢の判断とも整合的であれば、このような時間軸の変化は、経済・物価情勢を反映したスムーズな金利変動に資するものであり、景気回復やデフレ克服とも整合的です。一方、市場の経済・物価の見方と、日本銀行の経済・物価情勢との判断にズレがあれば、時間軸が不安定になり、金利の動きが必要以上に大きくなってしまいます。』
そもそも日本銀行の判断とやらが正しいという前提で物事を語っている時点で「何じゃこりゃ」なんですけど、「期待に働きかける金融政策」をやると言いながら、「金利形成を市場で決めて欲しい」と言いつつ、最後には「日銀の判断どおりに動かないと時間軸が不安定になり」と言い出すというのは幾ら何でも支離滅裂すぎやせんかね大先生って感じなんですが。
○と言いながらもこんな事も言ってまして
と、自己矛盾したお話をしつつもやはり日銀が相場を撹乱しているという事は認めているのが良い感じの講演でもありまして(^^)、
『したがって、日本銀行として重要なことは、コミットメント、すなわち量的緩和政策の解除は現行の条件にしたがって行なうことを明確化するとともに、解除の判断基準となる景気や物価についての見方を市場に丁寧に説明する一方で、市場の声に耳を傾け、市場との間に認識のギャップができるだけ生じないようにしておくことであると考えています。この点については、このコミットメントを明確化した昨年10月に私自身が強く意識したことです。』
『先程お話したように足許の金融経済情勢では、量的緩和政策の解除の条件が揃うような状況は予見できません。こうしたもとで、今後とも、金融経済情勢の分析や日本銀行の行動について、誤解を生まないような情報発信を心がけ、日本銀行の行動に起因する予想形成の不確実性を小さくする努力も重要だと考えています。』
いいですな〜『日本銀行の行動に起因する予想形成の不確実性』。
○金利機能の復活って話
この前(12月)に講演ダイジェストが日銀Webにアップされた時にもご紹介した「金利機能復活待望論」でありますが、まぁこんなお話をしておられます。
『景気回復の芽を摘まないためには低金利政策を粘り強く続けていくことが必要なことは言うまでもありませんが、実体経済の回復度合いに見合った僅かな金利や資金需給を映じた僅かな金利の変動を現時点でも容認することが必要なのではないかと考えています。』
念の為に申しますと、この部分は短期金融市場を念頭においたお話なんですが、一方で時間軸のコミットをしておいて、更にとてつもない額の資金供給をしている中で金利をつけるというのは物理的に不可能なお話ですし、そもそも現行の政策はゼロ金利政策と同じ物理的効果を発揮するものであり、現行政策と矛盾した無いものねだりってところかと思われます。
『確かに日本銀行が当座預金目標を30〜35兆円に設定し、資金を潤沢に供給しているため、無担保コールレート(オーバーナイト物)は殆どゼロ金利となっております。もっとも、ターム物等に若干の金利はみられることからこうした金利を潰さないようにして、少しでも金利機能を復活させることが必要なのではないかと考えています。』
量的緩和の効果と言うことで福井総裁は国会で「長短金利をできるだけ低いところで安定させる」という説明をしておりましたが、その説明とも矛盾したお話でして、別に全員の意見が揃っている必要はないでしょうが、今まさに実行している政策に関して色々な説が飛び交うという状況は、その政策の効果が見えていないという事の傍証でもあるわけで、結局は量的緩和政策という名目は壮大な茶番的政策であるというお話になってしまうのではないかと思う訳で。
まぁ元々の政策に無理があるので、それに対して無理矢理意義付けを行おうとして更に無理矢理なお話になると言うことで、まるでどこかの国のいつぞの時代の政策みたいですな。
その他に「クレジット・リスクに見合う金利」という話もしているのですが、何度もあたくしがドラめもんで申し上げているように、それは金融庁の支離滅裂金融行政と同じお話です。つーか量的緩和で企業の調達コストを下げるって話と矛盾しているでしょう。一応「市場機能を高める」というのが氏のテーマらしいです。まぁいいけど。
○何か早速誤解がある「日銀の国債品貸し制度」
国債の品貸し制度に関して自画自賛しないといけない日銀に置かれましては、色々とその効果について説明する訳ですが、これはちょっといかがな物かと。
『また、同一銘柄について複数の市場参加者の売買が複雑に連鎖している下では、1つの取引の決済の不履行が次々と波及することがありますが、これに対しても対象となっている銘柄を一時的に供給することで、決済の履行を確保することができます。』
「1つの取引の決済の不履行が次々と波及することがあります」という理由で現物国債の流通玉を激しく減らす効果をもたらした「国債決済のRTGS化」という奴をおっぱじめたのではないのでしょうか。言葉尻を捕らえるような指摘かも知れませんが、こういう細かい事の認識の齟齬からドンドン話にズレが生じてきているのが最近の「市場の育成」やら「市場の拡大」やらを行おうとしながらもピントのずれた施策を次々に打ち出してくる日本銀行(だけではなく、政策当局全般に言える事ですが)の行動を招いているのではないかと思う訳ですな。
まぁ日銀が適切な情報発信をする努力をしているのは認めますが、努力の方向がどうも迷走しているようですな。是非読者の皆様におかれましては、日本銀行Webの中にある「CIについて」という所なんぞをご覧になられるとかなり腰が砕けるとおもいますので是非ご一読を。本館のライトアップって何の意味があるんだ??
では良い週末を〜(^^)/~~
2004/04/22
お題「須田審議委員の講演」
沖縄県金融経済懇談会に須田審議委員が出席して、「日本経済の現状・先行きと金融政策」というお題の挨拶(というか講演)を行っておりました。この須田審議委員というお方は過去の講演やら記者会見やらでの発言から類推すると、本来の日銀理論に立脚した議論を展開したりしておりますので、日銀内部というか日銀事務方というか、とにかく執行部ではない日銀現場の声を代弁する傾向にあると勝手に分析しております。
と言うことで、須田委員の講演は多分に日銀現場の意見を反映している(とあたくしが勝手に分析しているだけですが)事から自称日銀ウォッチャーのあたくしとしては重視する訳でありまして、講演のご紹介という事になりますな。
http://www.boj.or.jp/press/04/ko0404d.htm
○次回展望レポートは上ぶれの予定ですな
この講演は昨年の景気のレビューと今後の見通し、そして量的緩和政策と「展望レポート」という内容で構成されておりますが、レビュー部分もそれなりに興味深いのですが、とりあえず端折りまして今後の見通し部分に関して。
『今年度については、前年度初にみられたSARSの影響といったようなこともなく、先行きの不透明感は薄らいでいますが、見通しは様々な前提を置いて求めることになりますので、なるべく蓋然性の高い前提を置く必要があります。』
『昨年10月の展望レポートでは、今年度も米国や東アジアなどを中心に高めの成長を続けるとの想定のもとに、今年度を通じて回復が続くが、「緩やかな回復」となる可能性が高いとしています。なお、今年度のシナリオが前回展望レポートで示した通りと想定するとしても、実質経済成長率や国内企業物価については、昨年度分が前回展望レポート対比上振れていますのでその分を反映するだけで、数字の上では前回の想定よりも上振れることになることに注意が必要です。』
と言うことで、次回の展望レポートでは数字が上振れるというお話をしていますな。何でも本日の日経新聞朝刊に展望レポートの消費者物価指数見通しがマイナス継続とかいうリークなのか観測記事なのか判らない(記事の実物見てないので)記事が出ているらしいですが、債券相場に最も重要(という事になっている)問題について微妙なタイミング(グリーンスパン議長の議会証言で米国利上げ観測が高まり、20年国債の入札のある日ですが)でこういう記事が出てくるとは、相変わらず品性というものが感じられないお話ですな。リークなら日銀逝ってよしですし、勝手な観測記事なら風説の流布みたいなもんで、どっちにしろ気分の良い記事ではありませんな。
つい話しが逸れましたが、日本経済のリスク要因に関しては以下の4点を挙げております。
『以下では、このような問題意識をもちながら、鍵を握っていると思われる点に絞って、つまり、(1)海外経済の回復動向、(2)企業の増益、(3)製造業の設備投資の更なる増加と非製造業への広がり、(4)所得環境比強めの個人消費の動向について、現時点で私が蓋然性が高いと考えている見方とリスク要因についてお話したいと思います。』
○海外経済の回復動向
『日本の輸出が米国および東アジアの経済の回復に支えられている構図は、当面、変わらないと思います。従って、日本経済の持続的な回復のためには、米国および東アジア経済の高めの成長が今後も続くことが必要となります。』
というお話でして、米国、東アジアというか中国の見通しについて述べていますが、金融経済月報などに現れている見方よりはやや慎重なスタンスを示しております。まず米国経済については、
『家計債務が増加している中で、堅調な消費が減税効果剥落後も持続する可能性が高いと必ずしもいいきれないからです。(一部割愛)注目を集めていた3月の雇用者統計は予想以上の強い数字となり、第1四半期における雇用者の増加数は、景気回復に必要な雇用者の増加数(一般に+15万人/月といわれています)を超えております。ただ、これで安心できるかというとそうではなく、何人かの米国当局者が「こうした状況が数ヶ月続くかどうか見極めたい」と慎重な姿勢をみせております。私も同感であり、今暫く雇用・所得の環境が好転するか否かについては慎重にみておきたいと思っています。』
『また、地政学的リスクの高まりなどによる消費者マインドの低下、ガソリン価格の上昇、米国の低金利政策からの転換ないしはそれをめぐる思惑によって金利やそのボラティリティが高まるリスクなども気になります。米国金利の変動は、資本移動を通じてエマージング・マーケットをはじめ世界に波及しますので、その点からも気になるところです。』
一方中国経済についてはこんな感じです。
『中国経済は2004年も8%成長を達成し、2008年の北京オリンピックや2010年の上海万博まで足許の好景気が続くという強気の見方が多かったのですが、最近、一部地区の資産価格・人件費の高騰、過剰設備投資、電力、石油、石炭等の供給制約などへの関心が高まり、過熱気味だという見方が増えてきたようです。』
『私は中国の2004年の成長について、昨年ほどではないものの高い成長を想定していますが、このような二極化拡大問題を背景に、適度な引き締め政策によって過熱分だけ除去して、安定成長を持続することができるのかどうか、気になるところです。また、足許の景気は、沿海部を除き、財政主導の投資が牽引していることにも注意が必要です。』
福井総裁の講演なんかでは米国経済は大いに堅調、中国どころかブラジルにロシアにインドなんぞも持ち出してBRIC'sの発展で世界経済が益々発展だのと文字通り景気の良いお話が出てくるのでありますが、須田審議委員(あたくしの勝手な予想では日銀の現場も)におかれましてはまぁ割と慎重な見方のようですな。
○企業収益の増益
企業収益の増益傾向がどの程度持続的なものなのかという点について、原材料価格の上昇という川上面と、雇用者賃金への影響という川下(というよりは川の脇の伏流水ですか)面について指摘しています。短いから丸々引用。
『3月短観によると昨年度に大幅増益を実現した後、今年度も増益が続く計画となっています。具体的には、製造業が前年度比+9.8%、非製造業が同+11.1%の増益を見込んでいます。ただ、原材料価格が依然として上昇していますのでその上昇を引続き数量効果と計画されたユニット・レーバー・コストの低下でカバーできるのかが気になります。最終財価格への転嫁が部分的に止まるため、今後も増益を維持するために更なる賃金抑制を招くとしたならば、雇用・所得環境に悪影響を及ぼしかねないだけに心配です。他方、現在では、その可能性はかなり小さいとみていますが、個人消費の回復次第では、価格転嫁が消費者物価に何がしか影響を与えることも否定できませんので、注意深くみておく必要があります。』
つーことで、原材料価格の上昇に関しては先日国会で竹中金融担当大臣も懸念する発言をしていましたが、まぁ皆様懸念のようですな。物価上昇でデフレが解消って言ったって、最終需要の拡大によって物価が上昇するのなら良いですけど、原材料価格の上昇で物価が上昇して、景気が回復していなかったらそれはスタグフレーションって奴ですわな。最悪な訳で。
○製造業の設備投資の更なる増加と非製造業への広がり
『3月短観によると、製造業については、大企業・中小企業とも今年度は積極的に設備投資を行う計画となっています。このように今年度の設備投資については、持続的な回復が見込まれるものの、キャッシュフロー対比では抑制的な回復にとどまる蓋然性が高いとみています。』
ということで、新規投資については抑制的な回復なのですが、更新需要に関しては期待を持っているようでして、上ぶれの可能性に言及しています。
『ただし、バブル崩壊後、企業は設備投資を手控えてきたこともあり、生産設備のヴィンテージは約11年と過去最長になっている一方で、企業収益増を実現していることから更新投資に期待が持てます。また、素材産業では稼働率が上昇しているうえ、プロダクト・サイクルが短くなっている電気機械では除却率が高まっており、これが続けば設備投資が上振れる可能性もあります。』
そのヴィンテージって言葉は止めていただきたいのですが、まぁ要するに既存設備の更新需要が目先高まるのではないかという事ですな。企業収益に余裕ができたら既存設備の更新需要も高まるかも知れませんしね。
製造業の設備投資の持続・拡大についてはかなり期待をもっているようですが、非製造業については期待が出来ないという見通しであり、『現時点では設備投資の裾野がどんどん広がっていくと判断できる状況にはありません。』というお馴染みのダム論もどきのお話が出てまいりまして、設備投資の非製造業への広がりは道遠しという所のようですな。
○所得環境比強めの個人消費の動向
『昨年度の個人消費については、先ほど述べましたように雇用・所得環境の改善が捗々しくないものの、貯蓄率の低下等を背景に強めの動きとなりました。』
ということで、雇用・所得環境に対して個人消費が強めであった昨年度の傾向が持続するのかって分析をしております。
『貯蓄率の持続的な低下については、その蓋然性が高いようには思えません。例えば、金融広報中央委員会が行っている「家計の金融資産に関する世論調査」3をみると、貯蓄残高が減った理由として59.6%の方が「定期的な収入が減ったので貯蓄を取り崩した」と回答しており、こうした人々は収入が増加すれば貯蓄の復元を図ると思われるからです(図表8)。また、そもそも貯蓄を保有している世帯割合は3年前の87.6%から77.4%に減少しています。今後は所謂「団塊の世代」が順次定年を迎えることとなりますが、こうした世代はリストラ等による所得減に直面しています。厚生労働省が先に公表した「賃金構造基本統計調査」によりますと、昨年6月時点の50歳代前半の男性の平均賃金(ボーナス、残業代を除く所定内給与)は、▲1.7%と全体の平均(▲0.2%)を下回っています。この世代は「年金不安」等を強く感じている世代でもあるため、現在のシニア層と同じように貯蓄を取り崩して消費を続けるということは考え難いと思います。』
激しく同意ですな。
『こうした状況であるため、貯蓄率の低下を伴う個人消費の強さが続くとは考え難く、堅調な消費を維持するには、企業の増益が雇用・所得環境に好影響を及ぼしていくことが見通せる必要があります。』
で、賃上げなんぞ持っての他などと言っている某優良企業経営者なんぞは国賊だという事になるというような流れにはなりませんが(当たり前ですな)、先ほど紹介した原材料価格の問題や、趨勢的な雇用環境の構造変化などがあるので、やはり個人部門の雇用・所得環境の改善は厳しいのではというお話になっているようです。
『先ほども述べましたように3月短観によると雇用の過剰感は緩みつつありますが、派遣労働者の台頭などによる構造的な賃金押し下げ要因の存在がありますし、現象面として企業収益から所得へのリンケージが未だはっきりと見えてきていません。また、原材料価格の上昇等をさらなる雇用・賃金の抑制でカバーしようとする企業行動が続く可能性もあります。したがって、足許の個人消費の強さが今後もかなりの期間持続すると想定することは難しいのではないかと考えています。』
○総括判断
「成長率と物価の関係」という小見出しで総括判断をしているのですが、基本的な判断としては、地味な判断ではありますがこんな感じのようであります。
『以上私が展望レポートで経済見通しを構築する際に重要と思っている項目について、みてまいりましたが、今年度中に景気が腰折れせず「緩やかな景気回復」が続き、昨年度程度の経済成長が維持できるのではないか、というのが現時点での私の見方です。』
ただ、構造要因に関しては金融経済月報に見られるような「改善に向いつつある」という表現は使ってはいますが、『その過程で二極化が拡大することはあっても、縮小するまでには至らず、したがってマクロでみた場合、なかなか経済の改善となって現れてこないということかもしれません。』と言及しておりまして、個別では強い部分もあるものの、全体的な改善は展望しずらいという分析のようです。
物価に関しても同様にわりと慎重なスタンスのようでして、
『短期的には、実質経済成長率が高まっても、一方で供給力も伸びるため、需給ギャップはあまり縮まらず、この結果、直ちには物価上昇圧力が高まらない可能性が高いように思います。今年度の上振れリスクシナリオとして、このような強い経済を想定することができますが、その場合でも近い将来に消費者物価が安定的なプラスに転じることまでは展望しにくいというのが現在の私の見方です。』
となっております。まぁ非常にオーソドックスな見方ではありますが、鉦や太鼓を鳴らしながら景気回復音頭を謳っているトップと慎重な現場(の意見が反映されていると勝手にあたくしが推測しているだけですが)の対比が興味深い所ではあります。
#引用多用でやたらと長くなったことをお詫び致します。
2004/04/21
お題「昔の表現で出ています」
○日銀総裁の国会答弁
昨日は国会に福井総裁が出席して例によって金融政策に関して答弁をさせられたのですが、そこに懐かしいフレーズがでて来たようです。報道によりますと金利に関してこんな感じの発言をしたようです。曰く、
「金利をあめ細工のように操作することはできない」
あめ細工ってのは懐かしい例えでして、「昔聞いたフレーズに似てますな〜」と有識者とお話をしましたらこの表現はなんと三重野総裁時代の総裁発言にあったものだそうで、この時は為替市場に関して「為替市場をあめ細工・・・・・」というコメントが飛び出してドル円市場で1ドル=100円を割り込むドル安というか恐怖の円高相場が始まったという曰く付きのものでありました。
この頃は福井さんは理事だか副総裁だかをやっていると思うのですが、三重野発言を覚えていて同じ例えを使ったのか、それとも日銀マンが使いたがる例えなのか、どうでもいいことですが興味のある所であります。
あたくしとしてはもはや福井総裁のこの手の発言ぶれぶれ状態に関して一々論評をするのも馬鹿馬鹿しいとしか申し上げ様がありません。さすがに真面目に一々反応しているようなディーラー仲間もいい加減この馬鹿馬鹿しさに呆れておりますな。まぁ一応お約束なので悪態をつきますが(^^)、あめ細工云々発言をするお前のその口はついこの前「金利に蓋をする」といった同じ口かと小一時間問い詰めたい所でありますな(-_-メ)。
まぁ効果のない金融追加緩和を効果のあるような論理展開を繰り広げて正当化しているという苦しい状況ですんで、色々と余計なじゃなかった気の効いたサービス発言をして日銀の存在意義を出そうと言うお話なんでしょうな。
折りしも米国ではグリーンスパン議長が市場引け際に議会証言で「デフレ懸念無し」証言をして米債米株が大幅下落していますが、ここぞという時に慎重な言い回しをしながらもきっちりと自分の見方を市場に伝えて、きっちりと市場がそれに反応するという美しい動きを見ますと、発言の度に市場が余計あるいは無茶な反応をする東京市場はまだまだ「市場との対話」などというものからは程遠いということなんでしょうな。
無理矢理こじつけると、この懐かしいフレーズが出てきているというのは、福井総裁も「長期金利の自然な上昇を容認」しているのではないかと思わせる所もあるのですが、そういう発言の側から「量的緩和の出口論議はとても時期尚早」的な発言をする訳ですから、真意がどこにあるのかさっぱり訳がわからない所ではあります。総じて言えば景気に強気だけど量的緩和解除は別の理由でできないので長期金利の上昇を容認しつつ量的緩和継続って感じんでしょうかね。
○金融経済月報
先日もご紹介した金融経済月報ですが、時事通信社の時事メインコラム「金融観測」で指摘されていましたのが「ダム論復活」でございます。
あたくしはこのゼロ金利解除の時には金融市場におりませんで、アイテー関連のお仕事をしていたのでどういう論理展開ならびに金融市場の動きがあったのかは詳しく体感していないのですが、(体感していたのはアイテー業界のバブル崩壊ぶりです)このときに「ダム論」と名づけられた「景気回復の効果が徐々に広がっていく」という論法が見られるのが先日発表された金融経済月報(4月)の目に付く所であります。曰く、
『企業収益は増加を続けており、企業の業況感は広がりを伴いつつ改善している。』
『また、企業の人件費抑制姿勢は引き続き強いが、生産活動や企業収益からの好影響が、雇用・所得面へ徐々に及んでいくと考えられる。』
似たような論法はちょっと前の金融政策決定会合議事要旨(3月14〜15日分)にも目立っておりまして、一々引用はしませんが、まぁこの手の「製造業の大企業の業況回復の効果が次第に広がって来る」という論理展開で景気回復ムードを盛り上げている訳ですな。
という訳で、こちらも懐かしい「ダム論」(時事メインコラム「金融観測」によりますとダム論というと過去の悪夢が甦るそうで、日銀さまのPTSDらしいです^^)復活の巻というお話になるわけでありまして、まぁ日銀執行部的には「景気は回復しているんだぞ」とキャンペーンを張りたい気分なんでしょうな。
どう考えても不良債権やら年金などの問題部分を政府部門に押し付けるスキームやら、実質非不胎化介入による米国債買い支えによってもたらされている「小泉型大盤振る舞い財政支出政策」で支えている経済に過ぎないと思う(んですけどあたくし株価には強気です)のですが・・・・・・・ま、いっか。
まぁあまり目立たない部分のお話ですし、穿った見方過ぎるかもしれませんが、最近の日銀執行部(あくまでも執行部であって現場の認識はもっと景気に厳しいのではないかと思われますが、いえ何となく)の言動に「本卦帰り」の傾向が見られるという事はブックマークしていただくと吉かと存じます。
ではでは〜(^^)/~~
2004/04/20
お題「今日もネタがないのですが」
今一歩相場に手がかりがないせいか見事にネタ切れとなっておりますので、きょうもまた相場世間話です。
○UFJショックリターンズ
昨日のドラめもんでちょっとご紹介したUFJ銀行の記事は意外に知られてなかった(まぁ東京新聞=中日新聞なんで)ようですが、さすがに朝から見事な売り気配。寄りから売り気配なんであたくしが紹介したからどうなるというものでもありませんでしたがね。
しかしUFJ銀行VS金融庁ってのは前も同じネタでUFJHD株が下落しておりましたが、一粒で2度おいしい(全然おいしくないが)と言った所ですな。いずれ金融庁方面からのリーク記事というよりは、反応を見るためにマスコミを使って観測気球を上げるの図という所なのでしょうが、「足利銀行以外に問題のある銀行はない」というような発言で地銀株が上昇した直後というタイミングの選定方法に呆れる訳ですな。
おそらくリークした方は「問題のある金融機関はいない」と先に安心感を広めておいてから悪い材料を流してみたって所なんでしょうけれども、まぁ市場を判っていない事甚だしいわけですな。地銀株暴騰祭りが先行して発生している所に爆弾テロをぶち込んでいるような物で、祭りの参加者総員大炎上となってしまいましたな。
この手のマッチポンプを何度もやられると次第に市場参加者は政策当局の言動を信用しなくなる訳でして、今の所一応発言は信用されているらしい竹中大臣の言動もまた茶番扱いになってしまうのではないかと危惧される所ではあります。
「また」というのは当然ながらどこぞの中央銀行の総裁の事を指しているのですが、英エコノミスト誌で取り上げられたかと思えば米タイム誌の「世界の100人」とかいう記事で取り上げられるといった所で、市場からは酷評を受けまくっているのに、市場から離れれば離れるほど受けの良いお方となっているのは、もはや悪い冗談としか思えない状況であります。
まぁそう言えば、竹中大臣の経済政策(というか銀行政策)ってのも散々なる締め付けをしたかと思えば一転して税金大投入とまぁ首尾一貫してません(強いて言えば「金融庁による業界支配力の強化」というのが根底に一貫してあるが、それは政策ではなくただの金融庁ファッショ)し、大臣さまご本来の御立場であらせられる「学者」世界からは見事なまでに「論外」扱いされているわけですから、似たもの同士上手くやっているって事なんでしょうかね。
○相変わらずの景気回復モード
日本銀行の全国支店長会議ってのが行われていまして、昨日の日銀Webでは「全国11支店金融経済概況」というのが出ています。実は今までこの内容を真面目に読んだ事がないのですが、まぁ要するに金融経済月報みたいな書き方(何故か各支店によってフォームが違っているのが理解に苦しむというか比較するときに流して読みにくいのですが)で各支店のある地域の経済状況をリポートしています。
で、前回のを見ていないので比較は出来ないのですが、まぁ今回さらっと流して読んだところ、「回復している」だの「回復の動きを一段と強めている」だのまぁ景気の良い(景況判断だから当たり前か)言葉が並ぶわけでして、駄目駄目な景況感なのが北海道で、まだまだ回復は力強くありませんな〜というニュアンスなのが東北って感じでして、一応「一部にのみ見られていた景気回復の流れが全国的に広がりを見せている」というお話を裏付けるような報告になっておりますので、一応ご覧になると面白いかと。
http://www.boj.or.jp/ronbun/04/ju0404.htm
本日もネタがイマイチございませんで恐縮至極。
2004/04/19
お題「落ち着いてきた債券市場」
○新たな居場所を見つけた債券相場
金曜日の債券市場は先物と20年だけが安いというイールドカーブという点で考えれば実にまぁ不思議な展開になりました。で、引け際には突如20年債もしっかりという動きになった後、引け後はまた20年失速という動き。
世の中で言われているのは(というか現物債の板気配を見るとそのまんまなのですが)20年債売り→10年債と30年債の買いっつーのと7年(または先物)売り→5年債と10年債の買いってのが入りましたという事のようです。引けはまた例によって長期化(あるいは新規資金設定)に伴う引け値ギャランティー取引の買いがあったということで。
最近の債券市場の特徴として、普段落ち着いている時には入替売買の動きがまともにマーケットに出てみたり、引け値ギャランティー取引によって買いが入ったゾーンが引け際に突如強くなってみたりという動きが見られるようになります。投資家様がキャピタルゲイン狙いの売買に動かずに、インカム収入を取りつつ割高割安を見ながら割高なものを売り割安なものを買うという動きに徹している事が要因な訳ですが。
期初からの債券市場は何だかんだと言いながらも株価上昇に日銀の景況感の強気化、国債入札への懸念ということでイールドカーブのスティープ化と相場全体水準の下落という形になり一応トレンドらしきものを形成して動いておりました。
で、5年入札前後から137円を挟んで上下40銭でやたらと不安定に上下する動きが続いていたのですが、金曜日は先ほど申し上げたような相場展開を示した事は、債券相場もようやく期末期初から続いた下げ&スティープのトレンドも終了して現在の位置でそれなりに落ち着いた展開になってくるのではないかと思います。
・・・・・と書くと良く外すのですが。
○気になったニュース
今朝のニュースでは話題になっていなかったのですが、土曜日の東京新聞1面には「UFJ銀行不良債権1兆円増加」という見出しで、金融庁の検査によってUFJ銀行の不良債権を新たに1兆円積み増しを要求されたという記事がありました。この場合には経営責任というお話になるそうですな。
また金融庁か!って感じなのですが、先日担当大臣が「問題のある銀行は無い」などと言って地銀株あたりが暴騰祭りになっている最中のお話で、「なんのこっちゃ」という感を強くするものであります。相変わらずトップの言っている事と現場でやっている事が支離滅裂と申しますか何とも??な役所であります。
ま、世の中平穏無事になってしまうと折角鉦や太鼓で職員を集めて人員を絶賛大拡大した組織の存在感が薄くなる訳でして(自主規制)という事になるのでしょうか。どうも日本の証券取引等監視委員会もそうなんですけれども、監督の強化をするのは良いんですが、その方向が「とりあえずしょっ引く実績を挙げる」というのに向っているのが如何なものかと思う訳ですな。上手く表現できないのですが、何か力の入れる方向が違うのではないかと。
まぁしかしこの期に及んで大手銀行をとっ捕まえて不良債権の認定をせっせと厳しくするというセンスはさっぱりわからん所です。一方で産業再生機構は(本当に実現するのかどうかは謎ですが)鬼怒川温泉にファンドを突っ込むだのというような絶賛大救済スキームを着々と進めている中で銀行への査定は相変わらず厳しくする(というか累積的に厳しくしているのではないかと思う訳だが)とい事ですから、一方で税金を突っ込んで救済しながら、もう一方では査定の厳格化をしている訳で、冷静に考えれば支離滅裂な政策運営でございます。
支離滅裂な政策運営は今に始まった事ではないのですが、特にこの金融庁というお役所に関しては何を考えているのかさっぱり理解のできない行動を取ることが多く、不思議なものを感じます。あたくしドラめもんで時々「金融検査マニュアル中小企業編」だの「リレーションシップバンキングへの疑問」だのと取り上げますが、その度に「この役所は何を考えているのでしょう」と思ってしまう訳であります。
先日横浜銀行が5月(だか4月)にも公的資金の完済をするという報道がありましたが、こんな支離滅裂な監督官庁に資本まで持たれていたら目も当てられないので、返せるものはさっさとご返済って事なんですな。
まぁそんな所で。
2004/04/16
お題「量的緩和政策雑感」
まぁとりあえずイラクの日本人人質解放を祝いたいですな。願わくばアフォなメディアが帰国した3人を凱旋将軍の如く取り扱って妙な事にならないようにして頂きたいものでございます。で、3人解放されたのですが新たに2人が行方不明だったする訳であまり問題は解決されていないのですがね。
先日公表された金融政策決定会合議事要旨のうち3月14〜15日の分(そういえばこの時はあたくしの悪態が聞こえでもしたのか^^、初日は2時間ほどやっていました。やっぱ2日間やるのに初日1時間は無いでしょう)の「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」に、どう見ても岩田副総裁のものと見られる意見がでております。
『なお、別のひとりの委員は、先行きの政策運営に関し、各国において目指す物価の状態の示し方にはかなり相違があり、日本は日本に合ったやり方を考えていけばよいと思うが、例えば消費者物価上昇率について1%以上を目指し、かつ2%程度の上限を置くことを明らかにしていくことは有益ではないか、との見解を表明した。』
えー、量的緩和政策の当初においては実質ゼロ金利政策を量的緩和といいながら、前回のゼロ金利政策のような曖昧な時間軸ではない「CPIターゲット」という時間軸を設定した訳です。でまぁこの量的緩和がなしくずし的に拡大する中で、意識的になのか無意識なのかは兎も角として、この量的緩和自体が財政政策にビルトインされた状態になっているという話は何度かしつこくこちらで行ったかと思います。為替の絶賛大介入への強力サポートであったり、国債および政府関連債務の安定消化に寄与してみたりといったところですな。
そんな訳で、量的緩和政策の性格が当初導入の時に想定していなかったものに変質している筈なんですけれども、何故か「量的緩和政策のコミットメント明確化」などという名目でますます「CPIターゲット」を打ち出す破目になっております。
じゃあCPIを見ていれば良いかというとそう事は単純ではない訳でして、上段であたくしが申し上げましたような認識を皆様お感じになっている訳でして、その為に「量的緩和を解除すると外為特会のFB消化が困難になるので解除は遠くなる」といった類の議論が出てくるわけです。
そのFB問題は金融政策決定会合の中でもよく議論されているようでして、先ほどの議事要旨の中でもこんなお話が。
『この間、ある委員は、政府短期証券(FB)の増発について、その短期金融市場への影響については引き続き注意が必要であると述べた。別のひとりの委員は、FB増発懸念の問題は国債発行管理の観点から留意が求められるが、現在のFB金利は依然極めて低い水準にあり、市場機能の確保という観点からも殊更に問題視すべきものではないとの見解を示した。』
議事要旨に載っていないお話を勝手に推測するのも何ですが、こんな話が出ているということは恐らく「量的緩和解除の際に現在の大量発行FBは大丈夫か」という議論も行われているのではないかと思う訳です。
まぁこのFBのお話に関して考えても、どう考えても量的緩和政策が導入当初の意図せざる効果(笑)を発揮している訳なのですが、相変わらず日銀の公式見解ベースでは「FBがどうのこうのというのは金融政策に影響を与えるものではない」というスタンスを継続している訳でして、日銀の公式見解から次第に意義がずれてきている量的緩和の本来の機能がまた「市場との対話」をややこしいものにしているのではないかと思うのであります。即ち、日銀が公式見解ベースによる観点からしか「市場へのアプローチ」が出来ない訳ですから、公式見解と現実のギャップが拡大すればするほど「市場との対話」とやらがややこしい事態を招く事になる訳でしょうな。
で、最初の岩田副総裁の(と思われる)意見に戻るのですが、CPIターゲットが何となく達成されそうな雰囲気になっても、今や日銀が公式には認めない諸々の効果を発揮している量的緩和政策を簡単に終了させる訳には行かないという事を日銀政策委員会の内部で認識しているとすれば、現在のCPIターゲットに関して岩田副総裁の意見が使われる可能性があってもおかしくはないという話になるかも知れないな〜などとも思う訳です。政治的にもウケが良さそうですし。
まぁそんな事をしますと、益々量的緩和政策の実態と公式見解的な位置付けの乖離が激しくなって、金融政策の茶番化が一層進展する破目になるとは思いますが。
と、寝不足のせいか何とも締りのない文章で誠に恐縮なのですが、景況感のカンカンの強気の一方で、量的緩和政策と景況感をどう折り合いをつけていくかという事に関してはそれなりに議論がされているのではないかと勝手に議事要旨の行間を読んでいるあたくしなのでありました。
#相場はさっぱりわからんのでノーコメントっす。
2004/04/15
お題「話題になった『行き過ぎた長期金利の低下』」
本題に入る前に相場の話。一昨日は5年国債入札のタイミングで10年、20年国債に投資家様の買いがお入りになりましたが、この買いのタイミングが絶妙(あるいは最悪)であって、業者のショートとかヘッジが一掃されてしまったというお話を昨日しましたのはご記憶にお有りかと思います。
で、その晩に米国の経済指標で俄かに早期利上げ観測が爆発して米債絶賛下落となってしまい、米株は下がるも日本株はあまり下がらんという状況においては当然ながら国内債券相場は下落モードとなってしまう訳であります。まぁ余計な買いのせいでショートを一掃してしまったのが下げの勢いをつけてしまったということでありまして、もはや笑ってしまうしかありませんな。
で、本日は30年債入札。5年債入札で変に相場が戻ってしまったのが災いしそうな雰囲気であります。ちょうど先週末にテロ懸念で相場が妙に戻ってしまった後に5年入札に向けて下落してしまったリズムと同じような感じですな。どうなる事やら。
で、本題は金融政策決定会合議事要旨。
○「市場との対話」って何なんでしょう。
昨日は2月26日と3月15〜16日分の金融政策決定会合議事要旨の発表がありました。この中で「実体経済から行き過ぎた長期金利の低下には注意が必要」というのがフラッシュで出てきまして、後場の気だるい相場が急にお目覚めになってしまいました。
この時、ところで2月26日の長期金利水準っていくらでしたっけ?などと確認した人は多いと思いますが、あたくしも確認したら、直前の30年国債入札が大崩壊している中で10年が妙に堅調で1.2%(ザラバ中は多分1.2%割れもあったと思いますが)ちょい乗せという金利低下祭りがちょうどピークアウトする所でありました。
で、それは兎も角として、そのフラッシュを見ながら「何を言っておるんじゃこいつらは」と思いつつ問題の部分を読むとそこには驚愕の記述。
『長期金利について、何人かの委員は、GDP統計等景気回復を再確認する経済指標にもかかわらず、僅かながら水準を切り下げていると指摘した。これらの委員は、金融機関が流動性確保の観点や企業サイドの債務圧縮の動き等から国債投資への依存を続けている中、1月の追加緩和後、量的緩和の継続期間が長期化するとの見方が広がったこともそうした長期金利の動きに寄与している、との見解を示した。このうち複数の委員は、実体経済の動きに比して行き過ぎた金利の低下には注意する必要がある、とコメントした。もうひとりの委員は、先行き、プラスの名目成長率の持続性が確認されていく段階では、実体経済の動きに応じたイールドカーブのスティープ化は自然なものと考えるべきである、との意見を述べた。』
これを見て「おいおい」と場中に思わず声を上げてしまったのはあたくしだけではないと思うのですが、ちょっと呆れてしまう内容ではあります。
まぁ前半の『長期金利〜見解を示した。』はいいのですが、その後に出てくる複数委員の『実体経済の動きに比して行き過ぎた金利の低下には注意する必要がある、とコメントした。』というのは何ざますのかしらという感じであります。一方で自分たちも指摘しているように1月にやらずもがなの当座預金残高目標引上げを行い「市場の期待に働きかける政策」とやらをやったのは日銀じゃないんでしょうかね。
おまけに、1月の当座預金残高目標引上げ後には日銀総裁御自ら国会において量的緩和の意味をわざわざ説明するわ、2月5日の記者会見では『局面の変化があっても、企業行動をフルに金融面からサポートしていくことにより効果を出していくとともに、短期および比較的長期の金利を極力低いところで安定させ、先行きについても、低位安定が確保されるであろうという企業の期待にきちんと応えていく。』などと言うわで、長期金利の低下もそうですが、5年国債の金利が絶賛低下して0.5%を割って0.4%台前半までの「株価堅調なのに金利低下祭り」という状況を演出していたのもこれまた日銀の「期待に働きかける」姿勢であった事は言うまでもありません。
まぁ「金利の低下には注意する必要がある」といった「複数の委員」は前回の当座預金残高目標引上げに反対をしていた人なのかも知れませんが、具体的な(数字は挙げてませんが)金利水準に対して「金利の行き過ぎ」といったコメントが議事要旨として出てくるのは如何な物かと思う訳ですな。しかも「複数委員」だし。
これでは「日銀のマッチポンプ」と言われても仕方がない訳でして、自分たちが「市場との対話」などと言って行っている「市場の期待に働きかける政策」が逆に市場のあらぬ期待を煽る事によって「実体経済の動きに比して行き過ぎた金利の低下」が発生してしまったという事であります。と言う事は即ち自らの政策が破綻している事を意味する訳でありまして、まぁ笑えないけどお笑いという事なんでしょうか。何ともまぁトホホであります。
ちなみに、この議事要旨の発表というのは後日の政策委員会(というか金融政策決定会合)で内容を承認してから行われるものでありますので、このような「具体的な金利水準に関して意見が出ている」という意味あいの議事要旨が発表される事に関しては、金利水準に言及しなかった審議委員も承認しているという事であります。となりますと、他の審議委員も市場金利に関しては具体的水準に言及する事は不自然ではないと思っているという事でありますな。
普段言ってることと違うじゃん。おまけに「ひとりの委員」はイールドカーブの形状に関して意見しちゃっているし、もうこいつら何の話をしているのでしょうかとちゃぶ台をひっくり返したくなるような状態であります。まぁ議論するのは勝手だと言われてしまえばそれまでですが。
そりゃまぁ市場ってのは年がら年中オーバーシュートするんで、それに対するスムージングオペはあっても良いとは思いますが、この時の金利低下は自分たちが煽った低下であり、その結果として起きた金利低下を他人事のように「行き過ぎた長期金利の低下」とか言うのは当事者意識が無さ過ぎというか、市場が何を考えて動いているのかに対する理解がなさ過ぎるというか。それ以前の問題として「実体経済の動きに比して」って言ったって実体経済の動きに本当に正確な判断が下せているのかだってあてにならないわけですしねぇ。
具体的な金利水準だのイールドカーブの形状だのといった話は市場がパニックにでもなっていれば別ですが、そうでもない時に一々言及するのは市場に対して「無用な期待形成」を行うだけだという事は福間さんとか中原さんとかが判っておられるんじゃぁないのかな〜と思うのですが、何やってるんだかって感じです。
「ある委員の意見」として出された見解によって「量的緩和の終了が視野に入っているのではないか」という思惑を呼んで、大手銀行のスパイラル的な売りを誘発してしまった昨年の「出口政策騒動」から何も学んでいませんな〜と言う事を痛感すると共に、そもそも具体的な長期金利水準の話を政策委員会で一々する(誘導対象になっている、というか今は誘導対象ではないですが、短期市場金利は別ですよ)必要があるのでしょうかと思うのですが。もっと話をすべきことがあるのではないでしょうか。
てな訳で本日は血圧を上げながらのドラめもんでありました(^^)。
2004/04/14
お題「本日は雑談」
いやはや、疲れる相場です。まだ水曜だってぇのに既にあたくしお疲れモード。一緒になって相場に巻き込まれているせいか相場の話も上手く纏まりませんな。困ったものです。
○5年国債入札
入札は直前のプライストーク通りの結果という感じでして、市場推定の落札業者の顔ぶれを見ておりますと、まぁ銀行主体の落札となっているという感じでしょう。量的緩和政策が当面継続するというのは上下をやった挙句にやっと0.10〜0.15%で落ち着いた2年債の動向にも現れていますが、この辺の金利が時間軸に関する市場の見方を反映しております。つまり、2年債のカレントものの金利がぶれださない=時間軸に関する見方が安定しているという事ですので、その限りにおいて、さすがに5年の0.7%は投資に値するという事なのでしょう。
入札はやたらと割高に見えますが、まぁ昨日の場合は前日から下げていた相場でして、5年ゾーンの気配も前場引け間際にやや安くしたという事もありまして、業者の事前ヘッジもかなり入っていたと思われます。思ったよりショートカバーの札もあったという事でしょう。
○入札結果は良好でしたが
さて、落札結果は直前予想通りで「入らなかったカバー」が入るとは到底思えない内容だったのですが、何故か先物が威勢良く上昇。そのうち20年債を中心に長期ゾーンがいきなり派手派手に強くなりまして、一時は5年は全然上がらないのに先物は景気よく上昇という所謂「ヘッジ股裂き状態」という大変に血圧の上がる展開になりまして、別に先物でヘッジしている訳でもないあたくしの血圧も先物の上昇と共に絶賛急上昇しておりました。
まぁ業者間気配を見ただけで「これは20年債に買いが入りましたな〜」という感じなのですが、30年債入札を前に何となくショート気味になっていると思われる(もしかしたら30年はまだ在庫が苦しいのかもしれませんが)所で買いが入るとは相場水準的には非常に理解できる動きですが、性格の激しく悪い買い方でした。
結局現物を持っていかれた業者ショートカバー以上の買い(=上がったのを見て追随買いをする投資家さまの買い)は存在しないので、引けにかけては何となく全般的にしっかりという展開になったようでございまして、あたくしの血圧も低下するというものであります。
という事でして、「5年国債の入札結果が良好で相場が上昇した」という後講釈は微妙にずれていまして、単に割安な20年国債に強力買いが入ったのがタイミングよく(あるいは悪く)新発5年債ヘッジのカバーを誘発したというのが正解かと。
その後相場上昇を見て5年新発にも買いが少々入ったというのは業者間気配を見る限りは本当ではないかと思いますが。
というのが昨日の相場講釈。
○時間軸はCPIでいいのかね
激しく根源的な話で、このネタを研究しだすと大変長い話になるのですが、とりあえずあたくし的愚意見を何となく書いてみます。そのうち真面目に論理展開をしてみたいネタなのですが。
現在の景気回復に関しては時々書いているように「政府+日銀によって下支えしている景気」と認識しております。まぁ財政というか量的緩和によってサポートされる円売り介入とか、りそな救済スキームやら産業再生機構やらといった公共事業ではない財政支出あるいは財政の債務保証(見せ金)という隠れ財政による訳でして。
そういう状況の中でCPIが(死ぬほど上昇すれば別ですが)ゼロ程度になったからといって金融緩和状況を大幅に解除するのは如何なものかと思う訳ですな。先日も申し上げましたが恐らくゼロ金利解除の二の舞になるかと。
そもそも、ある程度の金利上昇に耐えられる試算にはなっていると思いますが、財政が上記の状況で相変わらず絶賛発散中なのに、金利上昇に耐えられるのかという問題がございます。だいたい今でも借金をしてチワワを買うような財政運営状態なのに、財政赤字が縮小しないのに金利が調子よく上昇しだした時に財政が借金の利払いに耐えられるのでしょうか。税収が上がって赤字縮小になってくれれば良いのですが。
ということで、まぁ正常な金融状態に持っていくためにはCPIよりもプライマリーバランスの達成(しなくてもする方向になるということ)が大事なのではないかと思いますが、如何でしょうか?
先日の日銀総裁記者会見でも「財政再建問題」と金融政策を絡めた質問がありまして、それに対して日銀総裁はこんなコメントをしています。ちと長くなりますが財政に関する部分を引用します。段落が切れていないので長い引用ですいません。
『それから、財政再建という言葉をお使いになられたが、長期的に見て日本の財政規律というものをより強めていくことが当然重要な課題である。この時間的距離はもっと長い。金融政策が今の緩和のフレームワークの段階を過ぎる時期からさらにその先において、非常にロングランな、しかし非常に重要な課題として意識していかなければならない。おそらく、金融政策が今お尋ねになったようなかたちで「エグジット」という時期を過ぎた以降の状況になると、人々が経済政策全体を見た場合に、財政規律を将来にわたってどう確立していくかという点について、デフレの状況が続いている今の状況よりもより厳しく、より厳格な判断を持ってウォッチしていくであろうと思っている。また、そのような人々の視線に我々は強く期待しており、長期的に見て財政規律というものがしっかりと担保される前提のもとでなければ、より均衡のとれた日本経済の姿にたどりつくための望ましい金融政策を組み立てていく作業そのものに困難さが加わるということにもなってくる。従って、日本銀行も時の経過とともに財政規律に対する見方を厳しい方向にしていかなければならないと思っているが、これは非常にロングランな課題である。政府は既に、10年くらい先を展望して、プライマリー・バランスの回復――ないしはプライマリー・サープラスの実現――というターゲットをしっかり持ってこれから前進していこうとしておられる訳だが、おそらく時の経過とともにそれがどのような具体的な裏付けをもって実現されていくのかについて、より詳しく人々の検証作業が始まるだろうと私は見ている。』
まる引用で長くなりましたな。恐縮至極。
2004/04/13
お題「昨日の補足(国債品貸しについて)」
補足と言うよりは資料の読み漏れなんですけれども(大汗)国債品貸し(正式名称は国債の補完供給制度)に関連してすっかり読んでいなかった資料に関してご説明致します。
http://www.boj.or.jp/seisaku/04/mok0404b.htm
○銘柄の選定
銘柄の選定に関しては日本銀行が決める事になってはいますが、さすがに日銀が決めるだけの判断材料が無いので、『1銘柄につき3社以上から売却依頼を受けた場合』に実施するそうですな。オペ形式で実施するので仕方がないのですが、結局はリクエストベースにならないところが残念至極であります。どちらかと言えば当座預金の日中流動性供与みたいな仕組みの方がありがたかったんですけれども。
○実施のタイミング
『決済日は原則として約定当日とする』という事ですので、当日オファーがあって当日スタートということのようです。おまけに『競争入札のオファーは、市場取引がピークアウトする午後に実施する』という事でありますので、午後にオペのオファーが行われて即日決済となるというわけ。かなり時間的にはいっぱいいっぱいのオペであります。
このタイミングに関して問題点というか疑問点が2つ
(1)資金需給がぶれますが
国債の品貸しは現先売買方式で実施されるので、品借りを行う側に関しては資金の払いが発生します。現在のように日銀当座預金残高が大幅積み上で脅威のジャブジャブ状態であれば少々の(一回に最大で額面1000億円)ぶれは問題ないでしょうが、量的緩和が解除されてまともな短期金利が付くようになってもそのままだと色々と不具合が生じる訳ですな。下ぶれした資金需給は供給するのでしょうか??
ついでに申し上げますと、この制度の利用は基本的に国債でショートを振る人が対象になる訳ですから、普通に考えれば証券業者が利用主体になりますわな。で、この人たちが当日の午後に資金の手当をどうやってやるんでしょというお話もあるわけです(証券業者の無担保コール調達能力は銀行より劣るし)。今は世の中金が余っているから良いのですが。将来金融政策が昔のように元に戻った時のことを考えているのか甚だ疑問であります。
(2)当日午後オファーでは・・・・・
まぁ別に常に使わせろとは申しませんが、この「当日午後に品貸し実施のオファーがあります」というのは中々使いづらいものがあります。まぁ並みの神経をしていれば「当日午後のオペ一発勝負」で玉手当をするような勇者というのは存在しませんわな。従いましてこのオペは「当日フェイル確定状態だけど、フェイル料払うくらいならオペに参加してもいいかな」状態になっているような銘柄しか応募しないでしょう。上記したような「資金をどうするの」という問題もあるわけですから。
せめて翌日スタートにしてくれれば使いやすいのにとは思うのですが、どうも「使いやすさ」よりも「補完機能」に徹した(といえば穏当ですが、要は「敢えて使いにくくしている」)内容になっているようであります。
全然使い物にならないので無理矢理対象範囲を増やして何とかしてオペ実績を上げようとしている(が全然実績が上がらない)資産担保証券の買入とは大違いの扱いでありまして、まぁやはり銀行の銀行様は証券業者には厳しいという事でございましょうなどと言うのは株屋の僻みですかね〜。
○再売却(=貸出のロールオーバー)に関して
本来の期間は1日なんですが、同銘柄を最大で21回再売却してくれるそうですな。という事は最長で1ヶ月というわけなので、その辺は中々結構なお話であります。
ただ、昨日(資料を全部読まずに)書きましたように、再売却が機能する為には技術的問題として「売り(貸出)先行」でオペレーションを行う必要があるので、売却(貸出)可能銘柄の半分を超えて売却を行えない(全員が再売却を希望した場合に日銀が出す玉が不足する)わけでありますな。
勿論そうならないように売却額の上限は日銀保有残高の50%を上限にしているので技術的に問題はないのですが、各銘柄について日銀の保有残の半分しか本制度に使えないというのは勿体無い話ではないかと思う訳であります。再売却じゃなくて期限延長の形にできなかったのかな。
と、まぁ色々と総合すると、この制度は当面は「既にフェイル(しかも多くの業者を巻き込んだ大規模なもの)になっていて解消の見込みが全然ないような銘柄」に関して実施されるくらいの物になってしまうのではないかと思われます。まさに補完的機能であまり使い勝手が良さそうな物ではありませんな。
抜かない伝家の宝刀というのが役に立つのかどうかはノーコメントです。
例によって相場の話がおまけ:5年国債入札
先週末はテロ懸念、というよりは一旦利食いを入れる言い訳ができたので株式市場が下落したという感じでしたが、結局週初は日米共に株価上昇と相成りました。よって先週末上昇した債券市場はまたまた下落となっております。
本日の5年債から絶賛増発入札が始まります。0.7%クーポンという事でまぁそれなりに消化は可能だと思うのですが、じゃあ大手銀行さまがどの位積極的に残高の積み増しに動くかという話になりますと、株価というか景気への見方次第となるでしょう。
昨日はさすがにだいぶ話題になっていましたが、日銀の金融経済月報では景気判断を前進させていますし、まぁ株価も本格下げの気配なし。という事になりますと、別に今から渾身の買いを入れなくても良いというお話になるので入札でドカンとぶち込んでその上まで買いあがるといった気合の入った買いは中々難しいかと思います。
とは言っても、10年債買う位なら一時的に資金をこのゾーンで運用しておいて相場下落のタイミングを見ながら徐々に長期債に入れ替えていくというオペレーションも魅力がありますので、とりあえず大崩れはないかと。
問題は皆が「まぁ何とかなるでしょう」と思っている所なんですけど。結局業者の持ちになった場合、益々先物にヘッジ売りが入る事によって、将来的にヘッジの解除や掛けなおしといった動きで先物が乱高下しやすくなりそうですな。
ま、正念場は正念場であります。30年債の方がもっと寒そうですが、こちらはあまり真面目にウオッチしていないのでコメントは控えさせていただきます。
2004/04/12
お題「どさくさに紛れて景気判断前進」
先週末の金融政策決定会合ではさすがに当座預金残高目標の引上げはなく、例によってお為ごかしに貸し債の内容を決定というお馴染みの「一粒で2度美味しい」攻撃だけでありました。そのドサクサに紛れて(って訳でもないのですが)発表された金融経済月報を見ますと景気判断がもう一発前進している訳でして、そりゃー当座預金残高は増やさんわなという感じです。
http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/gp0404.htm
○景気の基本的判断がやたらと前進
今月の基調判断、先行き見通しはこうなっております。
『わが国の景気は緩やかな回復を続けており、国内需要も底固さを増している。』
『先行きについては、景気は当面緩やかな回復を続ける中で、前向きの循環が次第に強まっていくとみられる。』
3月はこんな感じでした。
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』
『先行きについても、景気は緩やかな回復を続けるとみられる。』
とまぁご覧の通りという感じなのですが、その他にも3月から前進をしている部分がございます。短観を受けた企業の業況感の広がりや、雇用環境の改善(本当か??)にも言及しており益々景気回復モードとなっております。
『企業収益は増加を続けており、企業の業況感は広がりを伴いつつ改善している。』
『企業の過剰債務など構造的な制約要因はなお根強いが、徐々に和らぎつつある。』
『企業の人件費抑制姿勢は引き続き強いが、生産活動や企業収益からの好影響が、雇用・所得面へ徐々に及んでいくと考えられる。』
この中で企業収益云々に関しては今月初めて出てきた表現なのですが、残り2つに関しては3月ではこんな表現をしていました。
『企業の過剰債務などの構造的な要因は、徐々に和らぐ方向にあるとは言え、依然として根強い。』
『企業の人件費抑制姿勢も引き続き強く、当面、雇用・所得環境に目立った改善は期待しにくい。』
と言う事で、「構造調整が進行」「雇用環境も改善」という話をしております。結構な判断前進でありますが、金曜日は週末で他のニュース(というかイラクですが)が気になったのかあまり話題にはされていなかったと記憶しております。
○物価については0.1歩くらいしか進めないという慎重さ
物価に関しては需給ギャップの問題が相変わらず緩和しているということについて一言だけ変化がございます。
(4月)『需給バランスが徐々に改善しつつもなお緩和した状況』
(3月)『需給バランスが徐々に改善しつつもなおかなり緩和した状況』
かなり緩和→緩和という事ですな(^^)。基本的にはこんな感じです。
『物価の先行きについて、国内企業物価は、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、需給バランスが徐々に改善しつつもなお緩和した状況のもとで、診療代などが前年比押し上げに働かなくなるにつれて、小幅のマイナスで推移すると予想される。』
○金融面はいつもどおり
強いて言えば先日の短観を受けて「金融機関の貸出態度が改善」というところだけでしょうか。ここの部分は毎月見てますがあまり変化のないところであります。まぁ金融政策が意図した通りに機能しているからということなのでしょうけれども。
おまけ:国債品貸し制度についてとりあえず一言
「補完供給を目的として行う国債の買戻条件付売却基本要綱」というのが出ております。導入の趣旨が「市場流動性の低下を防ぐ上で効果がある」という事なのですけど、本当にそうなのかざっくりと検証してみましょう。
○現先方式であって日銀が主導ですか
この制度は現先方式になっております。現先方式になりますと資金需給に影響を与える話になりますので、個別の品貸し実施にあたっては日本銀行が主導する必要があり(勝手に申込されると資金需給のコントロールが出来なくなるから)まして、実際に要綱内にも『本行が金融市場の情勢等を勘案して適当と認めるときに実施する。』という風になっています。
リクエストベースでの実施(日中流動性供与のイメージ)ではないわけであります。市場参加者というか現物債を投資家様相手に売買するマーケットメーカーとしては、何か肝心の部分が間違っているとしか思えない無駄な制度になりそうなのがこの時点でも読めてしまいます。市場参加者から意見を求めた筈なんですけど、どうなっているのでしょうか?
まぁ世の中の市場関係者には、円滑な国債市場の流通が行われると収益機会がなくなる、有体に言えばレポ市場のスクイーズなんぞを狙って仕掛けをしたりするお方もいる訳ですから、色々なお方の話を聞いていると段々「??」になってくるんでしょうな。
○実施時期のみならず銘柄も日銀が主導
売却対象国債(=品貸し対象国債)は『本行が保有する利付国債、割引短期国債および政府短期証券のうち、本行が適当と認める銘柄とする。』となっているのですが、どういう基準で銘柄を選定するのかといえば、『売却対象となる国債の流動性が著しく低下していることが懸念される場合において、その影響が市場全体に波及する惧れがあるなど』という基準および実施時期な訳です。
営業局制度の廃止以来、日々の調節には思惑を入れないように淡々と行うというお話だった筈なのでして、思惑を入れないから市場参加者ともある程度の距離をおきながら不即不離と言った感じで市場に相対していた金融調節。お蔭で量的緩和復活以降も「何でこのタイミングでこのオペを実施する?」というような間の抜けたオペが何度も見受けられましたが、そんな人たちが売却銘柄や売却時期をちゃんと判断できるのかは失礼ながら少々疑問であります。
○期間1日では無意味
この品貸しは「翌日に返す」方式のみの運用となるようで、要綱の中に思いっきりその旨が記載されております。市場参加者からの意見でも「1日で必ず返すのでは実効性がない」という意見が非常に多かった筈なのですが、何を考えているのかさっぱり理解に苦しむ決定ではあります。
そもそも、本制度はスクイーズ状態になっているような銘柄を「市場安定化」の為に品貸しする筈。スクイーズ状態になっているような銘柄というのは当然ながら常にフェイル懸念がある状態で推移している訳でして、日銀様が現物債をレポ市場に供給しても「翌日に返せ、フェイルは許さん(日銀とのオペでフェイルをすると事務ミス扱いになるという厳しい扱いになってますから)」という事を行ったら「フェイルが出来ない玉」が増えるだけのことで、却って火に油あるいはガソリンを注ぎ、スクイーズ祭りに拍車が掛かるだけのことだと思うのですが。
一応「再売却」という制度もあるようなので、それにちょっとだけ期待したいのですが、再売却してもらっても、技術的にはその前に返す玉の確保をしないといけないように思えるのですが、その辺は大丈夫なのかいなという所ではあります。「再売却の時には売却先行」という制度にすれば返却玉の確保は必要ないですが、その場合日銀としては保有玉の半分以上の品貸しが出来なくなる訳でして、何のこっちゃというお話になってまいりますな。
細かい事に関する脳内検討は行ってませんが、要綱を見たところでの本制度の謎な点はこんな所です。はっきり言ってこりゃ使い物にはならないですな。
2004/04/09
お題「説明責任というもの」
○イラクでの事件
イラクで3邦人拘束という事だそうですが、いざ拘束されてからいきなり「日本以外の各国でも拘束事件が起きていました」と報道するとは何やってんだって感じであります。他国の民間人が拘束される事件が頻発しているなんて話聞いてませんよ〜。
まぁそれ以前に戦争状況下の状況で、戦争当事者の一方に加担している国の人間がボランティアだか反戦活動だか取材だか知りませんが、戦争当事国に出掛けるなどというのはあんたら焼死マニアですか??という感を強くします(ジャーナリストはまぁいつも危険と隣り合わせだから仕事といえば仕事の一環ですか)が、まぁそれは兎も角。
自衛隊の撤退要求を拒否したのは当然だと思いますが、その中で相変わらず「そもそも日本はイラク人のために人道支援を行っている訳であって云々」(福田官房長官)というお話をしているのが気になる所であります。
こっちが「相手の為になる」という論理展開でやっていても相手にそういう意図が伝わらなければただの間抜けあるいは大迷惑なわけでして、その辺の微妙な所を「自衛隊は軍事活動をしに来た訳ではありません」という国際的な常識レベルであっても「何じゃそりゃ」状態のままで突撃してしまった事がそもそもの問題でございましょう。
#もっと問題なのはブッシュ君ですが。
で、国内的には自衛隊派兵の理屈が「戦闘地域ではない所に平和活動をするために」な訳でして、これもまたそもそもの論理が無茶苦茶な前提に基づく状態であったが故にこのような事態(スペインでの列車テロ事件を考えると想定範囲内の事態だと思いますが)が起きて大騒ぎというお話になる訳ですな。
つーか必要以上に騒いでいるのは日本の報道機関だという気もするんですけど。今目の前でやっているテレビ東京の番組のコメンテーターなんて「民間人の拘束とは虚を突かれた」とか言ってますが、激しく理解に苦しむコメントでありますな。それでお前ら専門家かよ。
○またも靖国
先日の「勝訴しているけど敗訴」という摩訶不思議な判決によって話のネタになりまくっていた靖国神社問題ですけれども、テレビで放送された小泉首相のコメントに「他国の方が何で参拝を批判するのかわからない」と言う趣旨のお話がありまして思わず目と耳を疑った訳であります。
その論理は国内的には通じる話であっても、「当事国以外の第三者が見た場合にどっちの言い分を妥当と見るか」という観点で説得力のある論理展開を行うという意味においては、明らかにその努力を放棄した発言であります。紛争が起きた場合に第三者を味方につけるような策を放棄するとは外交的には最も稚拙なやり方であり、外交的敗北宣言を行っているに等しいお話であります。
ネット上の論客の意見も色々見たのですが、「これは日本の伝統行事ですから」と自国の特殊性に話を持っていく論理が多いのは残念なところです。普遍性のある論理を持ち出して頂きたいものです。まぁそうなると中々勝てないんで「日本の特殊性」に話を帰着させている訳ですわな。勝者から「戦争犯罪人」とされた当時の指導者を敗戦国が神として祀って参拝する行為(これは合祀問題だから先日の判決とは話が別問題ですが・・・・・・)は客観的には「臥薪嘗胆を誓うの図」と取られても仕方ないんじゃないでしょうかね。
この問題はつつき出すと色々と考えなければいけないお話で、あたくしもまだきちんと考えが整理できていないので以下継続審議という事で。
○結局は・・・・・
まぁ一事が万事と申しますか、現内閣のやっている事っつーのにはこの手の「俺様が正しいって言ってるんだから正しいんじゃ」的なやり方が多すぎでありまして、そ〜ゆ〜手法は国内では通じるかも知れませんが、世界にその論理を押し付ける為には押し付ける為の圧倒的な力(武力)でもないとお話にならんでしょうな。
結局のところ内向きに通用する論理で突っ走っても、元々の論理に無理があるときにはどこかで破綻を来たすということなのでしょう。やはり「説明責任」に耐えられるようなバックグラウンドあってこその政策であり外交であると思う今日この頃なのでありました。
○てな訳で金融政策決定会合なのですが
昨日コメントした通りなのですが、日銀的には一応当座預金残高目標を引上げる口実が出来る訳でして、「イラク情勢が不透明になっていることが市場に不測の影響を与えないように」とでも言えば話は無事通るというものであります。
昨日は「さすがに今回は当座預金残高目標引上げはやらないでしょう」というお話をしましたが、もしかしたら引上げをやるかも知れませんね。可能性20%くらいのお話ですけど。
ではそうなった場合に何かあるかと言いますと、昨日申し上げた通りでして直接的には何の意味もない動き。ただし、今回の場合は「マネーサプライの伸びが鈍化した事に対応して当座預金残高目標を引上げた」などとマネーサプライ真理教のエコノミストならびに大臣が評価する可能性が高い点が注目材料であります。
即ち、「今後マネーサプライの伸びが思わしくない場合には当座預金残高目標の引上げに加えて長期国債買入額の引き上げを行うのではないか」という思惑が将来的に発生する可能性があると言うことでありまして、その思惑が出た場合は短期的には債券買い材料になるとも思われますが、さすがに「日銀の国債直接引受」という連想が働くと思われまして、必ずしも債券相場には買い材料にならないかもしれません。
一応念のため。
○たまには相場の話
今週は海外が復活祭休日にあたるので、久し振りに週末リスクをあまり意識しないで迎える金曜日だと思っていたのですが、イラク情勢がこの有様ですので、本日もまた金融市場はポジションを閉じる方向に圧力が掛かりやすいというお話になるかと思います。
で、株は少々反落程度かと思うのですが、債券は上なのか下なのかよくわからんところが困ったものです。何か売られそうな気もするのですが。
って相場の話はこれだけなんですけどね。
2004/04/08
お題「雑多な雑談」
いやはや。まだ木曜日ということはあと2日あるのですが、この強烈な相場で既に電池が切れかけた状態であります。週末まで気力体力持つんでしょうか??
あまり纏まっていない上に話がやたらと飛びますが、まぁ種々おもうことをつらつらと。
○金融政策決定会合ですが・・・・・・
本日から金融政策決定会合が実施されます。まぁ「何かやる」のがお好きな日本銀行様の実施するネタとしては、先日発表した「国債品貸しスキーム」の実施要綱をリリースするってのがあるので、とりあえず「何かやる」のノルマ(笑)は達成できるという事で宜しいかと。
今回の金融政策決定会合では、普段あまり金融政策にコメントしない人たちが「マネーサプライの伸びが鈍化しているので、当座預金残高目標額の引上げがある」とコメントしているのが目に付きます。
まぁ為替介入サポートと明言せずに為替介入の実質的な非不胎化を実施しているのですから何でもありでしょうと思われても仕方がない所ではありますが、一応日銀の正統的理論に即して言えば、マネーサプライは長期トレンドはともかく短期的には不安定性があり、金融政策によって細かくコントロールすると却って金融政策が目先のマネーサプライの動きに振らされて不安定になるということであります。
従いまして、目先のマネーサプライの伸びが少々鈍化しても金融政策は動かないというのがノーマルな発想であります。大体からして「目先のマネーサプライの伸び鈍化に対応して当座預金残高目標の引上げを行った」と解釈されるような動きをすると、「次は長期国債買入額の拡大」という思惑を当然の如く産むわけでありまして、就任以来「長期国債買入額の増加だけは避ける」というスタンス(避けている理由は、日銀の国債直接引き受けに繋がるからではないかと思うのですが)を継続している福井総裁としては、幾ら「何でもあり」とは言えさすがにそれは避けると思います。
ま、所詮当座預金残高目標を幾ら増やしても意味が無い茶番政策だという事は既に明白なお話ですんで、どうせ茶番なら外部ウケを狙って引上げを実施するという可能性は勿論ありますけど。
○銀行の消費者金融への進出
みずほ以外のメガバンクは消費者金融業者への出資やらなにやらとやっております。で、まぁその動きも世間様には高く評価されておりますが、あたくしは「ちょっと違うんじゃないかな」と思う訳であります。
収益性が高いかも知れませんが、そもそもが銀行の顧客層からかな〜り離れたハイリスクな分野でありますし、一件あたりの貸出額も激しく小口化された分野で、回収のノウハウもまた全然違う世界でもあります。「新たなノウハウの吸収ができる」だのお為ごかしな理屈が出てきますが、正直消費者金融業に看板をすげかえるのなら兎も角、一般的な預貸業務に消費者金融のノウハウを持ち込んでも仕方がないと思いますが。
まぁやっている方も多角化の一環で洒落あるいはポーズでやっているに過ぎないとは思います。本当に個人取引で儲かるのは預金額ベースで上位10%程度の部分でしょうから、真面目に各行取り組んでいるのは大金持ち様との取引です。
つーか、あたくしの預金は日本経済の発展に貢献し、社会に役立つ企業(個人事業者でもいいけど)への融資金としてご運用いただきたいわけでして、チワワを買うのに借金するような非生産的な活動のサポートに使われて欲しくはないのですけどね。
ま、国が借金してチワワ(以下自主規制^^)
○何でそう言われるのか判らない
てな事を昨日の靖国神社参拝の政教分離問題の裁判に関して小泉首相は発言していたようであります。判決の妥当性とかの問題は置いておく(すべての戦没軍人を本人の宗教に関係なく勝手に神道形式で祀るのは、宗教的バックグラウンドが希薄な日本人らしい無神経な話だとは思いますが)としまして、判決を受けて「何で批判されるのかわからない」とは相変わらず恐れ入ったコメントでございます。理論的に反論するならまだ救いがあるのですが。
このぶら下がりインタビューの映像を見ながら思ったのは「今の日銀も同じですな〜」なんて感想であります。一昨日ご紹介した国会での総裁答弁にもありましたが、最近あまりにも支離滅裂というか論理的整合性の片鱗も感じさせない「機動的な」金融政策を実施する日銀からは、やたらと「市場との対話」「期待形成の安定化」というお話が出てまいります。
かなり天然で言っていると思われるどこぞの首相とは違いまして、恐らく自分たちの論理崩壊振りを自覚しているとは思うのですが、何か日銀執行部、というか日銀総裁の発言が「期待形成の安定化」ではなく「債券市場のモメンタムを加速する方向」に向っている昨今の動きに関しては「何で相場が俺様の意図しない方向に進むのか判らない」と言いたいのではないかと勝手に推測しながらニュース映像を見るあたくしでありました。
#ちと昼間の生業でお疲れ気味につきパワー不足でスイマセン。
2004/04/06
お題「通貨及び金融の調節に関する報告書の続き」
相場が多忙を極めていることもありますので、手抜きと言う説もありますが本日は昨日の続きです(汗)。
○量的緩和からの脱却での「重要な条件」なのか??
昨日引用していた福井総裁答弁の続きからまいります。『』は会議録からの引用で、『』内の()は引用者による注釈です。
『しかし、やはり、将来に目を転じますと、ある時点、こうした枠組み(量的緩和政策)からは脱却していかなきゃいけない。』
と言う事なのですが、この時に『そのときに非常に重要な条件が二つある』そうです。
『一つは、やはりこの量的緩和のフレームワークの中で金融政策をやっておりますと、特に流動性を非常にたくさん供給するという金融政策をやっておりますと、市場のメカニズムをある部分犠牲にしながらやってきているところがございます。したがいまして、委員おっしゃいましたエグジットポリシーということになりますと、この市場のメカニズムの蘇生と言うとおかしいんですが、回復を図りながら、そこを十分、どの程度回復したかということを見ながら変化を遂げていかなきゃいけないと思います。』
量的緩和を解除する際には市場メカニズムを復活させながら解除への地ならしをするという事のようですが、ここまで散々当座預金残高を増やしまくって短期金融市場の機能が無くなっている(今や市場とは名ばかりで、ボリュームは大きいけどよく見れば日銀との相対取引で調達運用しているような状況ですから)現状をどうやって復活させるのか、お手並み拝見と参りたい物です。
『もう一つは、委員御指摘のとおり、市場の期待の安定化ということが大事だというふうに思います。長期金利をただ低く抑えればいいというものではないにいたしましても、経済、物価の先行き見通しと整合的な金利の形成が、市場の中で余り不規則な動きをすることなく整々と形成されていくように、期待の安定化を図りながらやっていかなきゃいけない。』
この総裁様、昨年の長期金利、というか中短期の金利が絶賛大上昇して、早期利上げまで織り込む壊滅的な相場になったときは、本当に壊滅状態になって焼死者が続出する暴落祭り状態になるまで「金利は市場が決める」と能天気な発言を行っておりました。
で、先日も引用しましたが1月末の無意味当座預金残高目標引上げの後には衆議院財務金融委員会で「金利を抑える」発言をして、5年国債が0.5%割れまで買われるまさに余計な戻り相場を招く発言。
とまぁそういう訳でして、この総裁様が『市場の期待の安定化ということが大事だ』などと仰るのは日頃から意地悪く要人発言をチェックしている市場関係者(というかあたくし)にとりましては、自爆系のギャグにしか思えないのですが、ご本人は至って真面目に仰っているようであります。そこがまた恐ろしい所なのでありますが。
○話は逸れますが
総裁発言にあります「市場の期待の安定化」に関して恐らく総裁は自分および日銀の政策運営が発する情報を「市場の期待の安定化」を図るように日々よーーーく考えて行動しておられると思う訳ですよ。金融市場を撹乱させる為に行動する中央銀行なんてありえません(為替市場で暴れるのは別問題^^)から、客観的には一々火に油を注ぐ言動をしている日銀総裁および一部審議委員も大真面目に「市場の期待の安定化」をしようとしていると思います。
でも、結果として出てくる動きがどうも悉く後手後手に回っているというのがあたくしの受ける印象。まぁ片言隻句が後手後手に回るくらいなら別に実害はないのですが、この調子では政策決定でも後手を踏む事になるのではないかと危惧する次第でありまして、「ゼロ金利解除の悲劇リターンズ」を想像するあたくしであります。
基本的にあたくしは、現在の景気回復万歳モードは所詮財政で支えているものであると認識しております。直接の一般会計からの財政支出は抑制していますが、金融機関への税金投入を「見せ金」に使ったり、産業再生機構も何だか大盤振る舞いモードになりつつあり、止めは巨額介入で米国様の財政赤字ファイナンスを実施。それを支えているのがどんどん増えつづける日銀当座預金残高の拡大というように、「統合政府による新手の公共事業」はせっせと実施しております。
これらの「支え装置」が外れたときに本当にこの景気回復が持続するのかと考えますとどうも「?」が飛び交う訳でありますな。まぁその前の日経平均8000円とかが下にやりすぎだったという面もありますけれども。
そんな訳でして、現在の「本格的景気回復」などというものは所詮大本営発表の世界でして、循環的な回復局面に過ぎないと思ってはおります。とは言え、懐かしいアイテーバブルの頃を思い出しますと、大体「ありゃま随分上昇しだしましたな」などと思いだした頃から絶賛大上昇が始まり、最高値をつけるまでの日柄が約半年ございまして、この「景気回復モード」状態の相場もまぁ半年は続くでしょ。
今の内に勝手な大予想しておきますと、一番早くても参議院選挙。多分秋口まではこの状況が続き、もしかしたら年末あたりにピークを迎えるのかな〜なんて思っておりますんで一つよろしく(何を??)です。
で、ずれまくった話を戻して、あたくしが勝手に考える今後の展開を申しますと、そんな感じで美しい景気回復モードになって実は年末あたりに景気が循環的にピークアウト。その後にペイオフ解禁になるのですが、何となく余韻が残って無事通過。何となく景気も回復してるしペイオフ解禁も無事に実施できてさあ量的緩和解除だとなる時には実は景気は循環的に下降局面へ向っており財政も締めだしているので相乗効果でお陀仏さん。という感じでしょうか。
前回のゼロ金利解除の時にはまさしくアイテー系の怪しいベンチャー会社でお仕事にいそしんでいたのですが、アイテーバブル崩壊によって本業がいかれる前に投資損失やら資金繰りが回らないやらで騒ぎが起き出しておりまして、2000年7月(でしたっけ?)当時「何でこんなタイミングで金融引締めをやるんだろう?」と激しく理解に苦しんだ覚えがあります。
まぁ今回も似非本格回復景気(いや、本当の本当に本格的に日本の経済構造が改革されていて本格的な回復になっているのなら素晴らしい話なんですがね)ムードに何となく流されつつ、漫然と時間が経過してしまい、「さて量的緩和解除」とやっている時には循環的景気回復はピークアウトした後で、既に「宴の後」状態になっているのではないかと思う訳であります。
ま、小渕政権の「景気回復」とやらも大盤振る舞い財政によってもたらされたものでありまして、実は今回も同じ道を歩んでいるのではないかと思い出す今日この頃であります。今度景気が失速したら財政打つ手なしで、究極の手段「財政インフレによる事実上の徳政令攻撃」が出るのではないかと気にかけるあたくしです。是非杞憂であって欲しいものですが。
という訳で、昨日の続きと称しつつも全然別の話になりましたな(^^)。
ちなみに当該会議録ではウケを取るのが大好きで、その芸風があまりにも間抜けな為に支持率絶賛暴落中の某野党第1党様の委員から「ゴルゴ13」がどうのこうのという話題になった質問をしている一部始終も掲載されておりまして、読者の失笑を誘う内容となっておりますので、お暇なときに軽く読み流す事をお勧め致します。
ではでは。
2004/04/06
お題「通貨及び金融の調節に関する報告書」
ちょっと前の話になるのですが、衆議院財務金融委員会で半年に一回(だったと思いますが)行われる通貨及び金融の調節に関する報告というのがありました。その会議録が衆議院Webにアップされた(実は先週にアップされたのですが)のですが、普段割とさらさらと終わるこの報告会が今回に関しては参考人大量招集の上、結構なボリュームの会議録になっておりまして、とりあえず長時間やったようであります。
ちなみに、参考人で呼ばれたのが福井総裁、岩田副総裁、三谷理事、小林理事、白川理事と見事なメンバーでして、何でまたこんなに気合の入った参考人招致になるのか不思議な会であります。
量がやたらと多いので本日はその一部をご紹介。
○報告書概要の説明
『日本銀行の福井でございます。日本銀行は、昨年十二月、平成十五年度上期の通貨及び金融の調節に関する報告書を当国会に提出させていただきました。今回、日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をちょうだいし、厚く御礼を申し上げます。まず、最近の経済金融情勢について御説明を申し上げます。』
冒頭は福井総裁による当該報告書の概要説明なのですが、まぁ普段日銀が言っている公式見解です。「現在の金融経済情勢」に関しては日銀の金融経済月報と同じ分析になっていますので、最後のまとめの部分だけご紹介。
『我が国経済は、一年前に比べ、明るい動きが着実にふえてきていると申すことができると思います。しかし、同時に、持続的成長の実現とデフレ克服のためにはまだまだ課題が多く残されていることも事実でございます。また、大企業と中小企業、製造業と非製造業、都市圏と地方圏との間で景況感に格差が存在することも十分認識いたしております。景気の前向きの循環メカニズムが働き始めている今こそ、日本経済全体に景気回復の動きが行き渡るよう、企業、金融機関、そして政策当局といった幅広い主体が経済活性化に向けた取り組みを重ねていくことが重要であると認識いたしております。日本銀行といたしましては、民間部門の前向きな経済活動を金融面からしっかりと支援し、持続的な成長軌道への復帰とデフレの克服に向けて今後とも全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。』
相変わらず景気認識は大いに強気です。前々から当ドラめもんで指摘しておりますが、恐らく日銀でも一番強気。しかもかなり前から強気継続しておりまして、まぁ昨今の情勢は総裁としては会心の状態って感じでは無いでしょうか。自信の程が窺われます。
○谷口隆義委員の質疑
公明党の谷口さん、ご本人も質疑の時に仰っていますが、福井総裁就任時には財務省の副大臣をやっていたお方で、時々金融政策決定会合にも出席していたような記憶がございます。
まぁこちらのセンセイの質疑は基本的に(与党なので当然ですが)大翼賛質問でありまして、総裁もご機嫌で答弁をしているという雰囲気が会議録から伝わってきます。実際見ていないので勝手な想像で申し上げているのですが^^。
質疑を全部紹介していると延々とかかるので端折りますが、谷口委員の具体的質問の一発目は「量的緩和のコミットメントの明確化」の経緯と意図となっています。
『昨年の八月、九月に、若干景気回復が見込まれるということで長期金利が上がったときがありまして、これは一・六%程度まで長期金利が上がったわけでありますけれども、そのような、市場のオーバーシュートをやはり懸念するというようなこともこれあり、日本銀行でこのような厳密な定義(引用者注:量的緩和コミットメントの明確化)をすることによって、いわばエグジットポリシーと申しますか出口政策を余り論じないようにしよう、まだ先なんだと。いわば、先ほどのデフレのことでありますけれども、やはりなかなかデフレは難しいよというようなことで、簡単にこれがまたすぐにさっといくようなものじゃないというようなことでやられたのではないかと思うわけでありますけれども、厳密にまた定義をされた目的を教えていただきたいと思います。』
で、これに対してよせばいいのにまたサービスフレーズが炸裂する福井総裁。困ったものです。
『私どもの物価に対します基本的な認識は、日本経済が持続的な経済の成長パスにしっかり戻っていくということを前提に、物価、デフレという姿で根が深く生えている、この根をだんだん短くしていって物価の動きをプラスの世界に持っていく、この根の深さということを十分認識しながら金融政策をやらせていただきたい。景気という、表向きに出ている姿が少し好転したからといって、物価のデフレという根が急速に短くなるものではないという認識に立っているわけでございます。』
この「デフレの根」ってのをどこぞの情報ベンダーが間違えて「デフレの芽」と配信してマーケット関係者に笑いを取るという自爆ギャグを行っておりましたが、それは兎も角。
『こういう前提からいきますと、非常に早い段階から長期金利が先を読み過ぎて上昇するということとは両立しない物の考え方になります。そういう意味で、私どもは、先々まで金融緩和が続くという約束を改めて明確にして、私どもの持っている認識を国民の皆様方にも同じように持っていただいて、金融政策の効果の出方に十分関心を払い続けていただきたい、こういう趣旨で実施したものでございます。』
まぁ段々こういうのに反応しなくなってきている債券市場というのも結構なお話ではないかと思うのですが、別の観点からしますと、この総裁のいる限りは日銀の送るシグナルが思いっきり誤解されて伝わりやすい(誤解されるような訳のわからん言い方や行動をするからいけないのですが)訳でして、市場の対話もあったものではないという話もまた事実かと。
で、上気し次に関連して出口政策についての質疑もあります。
『エグジットポリシーを市場関係者はいろいろ論じられているわけでありますけれども、これはなかなか日本銀行の方からおっしゃるのは難しいと思うわけでありますけれども、しかし、これをタブー視するというわけにいかぬのではないかと私(谷口委員)自身は思うんです。(中間大幅割愛)このエグジットポリシーも論じていく、それは市場に安心感を与えながら論じていく必要もあるのではないかと思うわけですけれども、総裁、ちょっと言いにくいでしょうけれども、御答弁をお願いいたしたいと思います。』
で、この出口政策に関しての答弁はこんな感じです。
『私どもも、量的緩和政策という今までとったこともない政策を異例の措置としてとっているわけでございますので、できるだけ早くデフレ脱却の成果を上げて、こういった異常な金融政策の枠組みからはやはり卒業して、通常の金利機能が生かせる金融政策に早く戻るべきだ、こういうふうに思っております。』
『しかし、(途中割愛)この実態を十分整える前に我々は決して早とちりはできないということでございます。』
『そのために、ことしの一月には、景気はいい方向に向かっている中にあっても、なおこの回復をより確実にするために追加的な緩和措置をとった。ある意味で時間軸効果もこれをもって補強して、国民の皆様方ももう少し、今のかなり大胆な緩和政策が長く続くんだということについて認識を新しくして持っていただきたいという趣旨でやったわけでございます。』
『しかし、やはり、将来に目を転じますと、ある時点、こうした枠組みからは脱却していかなきゃいけない。』
3番目にまた余計なフレーズが有るのですが、日銀総裁の発言を通して見ますとこの辺の金利に関するコメントはサービスフレーズであってサービスフレーズではないという見方も言えるかも知れません。
つまり、日銀総裁としては景気に関する認識がとにかくカンカンの強気になっている訳でして、その大強気景気認識からすれば「先回りして長期金利が上がる」という事態が起きても不思議ではない訳で、総裁はその基本認識の元に金利上昇を抑制する積りで、量的緩和の拡大に関して後付けで「今のかなり大胆な緩和政策が長く続くんだ」というような発言をしているのではないかと思います。
ここ近日はともかく、2月頃の債券市場では平均株価の伸び悩みを背景にして景気回復のペースに関して懐疑的な見方が出てきている所でしたが、日銀総裁としては景気に強気一辺倒でしたので、総裁なりにシグナルを出したら、市場が勝手に誤解をして金利絶賛低下攻撃により、何故か5年金利が0.5%を割れてみたり10年金利が1.2%に接近してみたりしたということなのでしょう。
シグナル出すのは結構ですが、「市場との対話」を文字通りしていただきたいものです。どうも市場の状況が総裁にちゃんと伝わっていないような気がするんですよね。総裁の出すシグナルが「火に油を注ぐ」状態になることが往々にしてあるというのはいかがなものかと思う訳で。
まだまだあるのですが、時間の都合上この辺で。
2004/04/05
お題「雑談でござる」
週末ほとんど寝込んでおりました。どうも最近体のあちこちに不具合が生じておりまして、「まぁトシって奴ですな〜」などと言われながら日々ヘロヘロです。そんな訳で月曜の朝は相場と全然関係のない雑談で勘弁してください。
○これがお役所的発想なのでしょうか
ちと古いお話ですが今年度の税制改正。もう成立したのかどうか不覚にも存じませんが、ど〜せ原案のまま可決成立の予定なんでしょう。で、その中にあります「土地、建物の譲渡損失の通算廃止」という件に関する東京新聞の記事(3月26日の記事ですけど)があったのですが・・・・・・
「不動産の譲渡損失の通算」というのをざっくりと申し上げますと、「一定の要件を満たした不動産を個人が売却した際に損失が発生した場合、所得控除が可能である」という制度でして、不動産を高値で掴んでしまった人にとってはまさに地獄に仏のような制度となっております。損切りしてやられた分が所得控除になれば幾らかは助かる話ですので、買い換え需要の後押しにもなっている(筈)わけなのですが、恐らくあまりにも利用が多いのでしょう。不動産売却益の税率引き下げとのセットという訳のわからない組み合わせで本年1月1日に遡って譲渡損失の通算が廃止になります。
で、新聞で報道されている財務省の「言い分」というのが実に素晴らしい。『損得を計算した上で節税目的の不動産売却が横行すると、地価の急速な下落を招きかねない』という事らしいです。この理屈、昔々その昔にも聞いた事がありますな。国鉄清算事業団の土地売却問題で、かつてバブルが絶賛華やかなりし頃、清算事業団の都心に保有する土地の売却を行う際に「今土地の売却をすると投機を煽る」という不思議な理屈で売却を散々遅らせておりました。
この報道における財務省の「言い分」とやらが事実だとすればという話になりますが、財務省(というかお役所全般に言えるのでしょうが)の発想はまるで「経済統制」ですな。都心部に大量に保有するまとまった遊休地を放出すれば、普通に考えれば需給が緩和する筈なんですけれども、「人気化して高値になるだろうから売却しない」という訳のわからん理屈が今でも生きていたとは驚きというか呆れてしまうわけであります。
こんな理屈で政策運営されるのはどうもねぇ・・・・・・
○かなりお奨め本の紹介
暫く前に本を数冊買っていたのですが、そのうちの一冊を土曜日に病院に行くので大量待ち時間向けに読んだ訳ですよ。で、あまりに痛烈な本だったのでついつい読みふけってしまいまして、あっさり読了してしまいました。
「日本はなぜ敗れるのか−敗因21カ条」(山本七平、角川書店)
初出は雑誌(でしたよね)「野性時代」1975年4月号から1976年4月号に連載されたものということですから実に30年前の文書な訳であります。
小松真一氏の手記「虜人日記」にある「敗因21カ条」をベースに氏の手記を引用しつつ山本氏の体験も踏まえて日本の敗因はどこにあったのかを記述しております。
この「虜人日記」を書いた小松真一氏は陸軍専任嘱託として徴用されて、ブタノール(ガソリン代用品)を粗糖から製造する技術者として昭和19年1月にフィリピンに派遣を命ざれて辛酸を舐めた方です。分析も表現も的確かつかなり冷静なのは兵隊ではなく軍属という立場もあったのでしょうか。
実はあたくし山本七平氏の著作を読むのは初めてでして、他の本もこんな感じなのかも知れませんが、とにかく心に染み入る痛烈さがございますな。思わず現在の日本あるいは自分自身の状況に敷衍して読んでいると背筋が寒くなります。
はっきり言ってこの本はお奨めなのですが、角川書店が何を考えているのかさっぱり判らないとしか言い様が無いのはカバーの作り。敗因21カ条に一言も入っていない「反日感情に鈍感である」などという言葉をカバーにつけてみたり、帯には「失敗を繰り返す日本人への究極の処方箋」などと(本書は処方箋ではない)書いた上に「マネー、外交、政治・・・・このままでは日本は再び敗れる」などと内容と全然関係ないというか、読もうとする人をミスリードするデザインになっております。
角川書店いかがなものかと思われますが、それは兎も角お奨めでございます。30年前に書かれている事と今と、本質的に何も変わっていない、結局は敗戦の頃と何も変わっていないのが日本および日本人ってことなんでしょうか。
という訳で本日は雑談恐縮。
2004/04/02
お題「短観への素朴な疑問/その他」
○日銀短観
昨日の短観はまぁ予想通りというか予想の上限の結構な結果でありましたが、織り込み済みって奴だったのかあまり反応はしませんでした。というか期初から売買はぶつかるわ、先物を振り回す人はいるわって感じでありましたな。
ところで、この短観なんですけれども、今回調査対象企業等の見直しが行われましたので、比較の為に12月調査の数値も見直し後ベースでの数値を発表しています。
添付のExcelファイルは例によって例の如く時系列で左が次回予想DI、右が実際のDIということで、今回は04年3月のところが対象になります。また、03年12月の実際のDI数値と、04年3月の予想DIの()内は昨年12月に発表された短観における発表数値(=旧ベースでの数値)です。
毎度毎度の事で、景気が上方傾向にあるので当たり前と言えば当たり前なんですけれども、「前回に予想している3ヵ月後の業況判断DIより、実際のDI数値が良い結果になる」という傾向にあります。ということで、今の所は景気回復傾向と言われる状況については引き続き継続中という観点で宜しいのではないかと思われます。
この集計をいつものように行っているうちに少々不思議な事に気が付いたのですが、12月調査時点でのDIが非製造業で悉く上方修正になっているというお話。何でこうなるのかというのはもしかしたら見直しの内容をちゃんと調べれば当たり前のお話なのかも知れませんが、「これってもしかして統計のトリック?」などと思いつつ「????」という不思議な思いを拭いきれません。
○総裁の心象風景を勝手に忖度する
相変わらず性格と意地の悪いあたくしは日銀のWebから「入行式における総裁挨拶」などというものを見つけて来る訳であります。
http://www.boj.or.jo/press/04/ko0404a.htm
相変わらず景気にはお強気でおいでの総裁様は、景気に関してはこんな形で言及しておりまして、やる気満々と言うところですか。
『日本経済は、持続的成長、デフレ脱却へ向けて着実に前進しており、次第に好ましい動きを見せ始めている状況です。これまで大変苦しい時期を経験してきた訳ですが、今正に、過去10年以上にも及ぶ国民的努力をどうしても結実させなければならない大切な時期を迎えています。』
しかし、自分たちの政策意図がきちんと伝わっていないという批判に付いては気になるようですな。日銀内部的にはカリスマ総裁として絶賛君臨中というお噂をちらほらと聞くのですが、この手の批判を妙に気にするところがこの人のウィークポイントではないかと思う訳ですな。これがまた。
『日本銀行は、経済全体のより良き動きを実現するため、公的な立場で仕事をするところですが、政府のように法令で律するのでなく、銀行券の発行や、金融市場における様々な取引を通じて、意図するところを経済の隅々まで、国民の皆様に的確に伝え、その方向に沿った行動を促すことによって、目的を達成しなければなりません。その際大切なことは、日本銀行の考えていることが国民の皆様に十分理解されることです。』
論理的整合性が破綻している政策運営をして何を言ってるんだかって気もしますが、内部にはやたらと権威的で外の批判を妙に気にするという姿勢は何ともね〜って感じです。これ以上書く暴言になりそうなので以下自粛。続きを読んでみます。
『従って、皆さんも、中央銀行員として、専門性、得意分野のノウハウを厳しく磨き上げていく必要があることは申すまでもありませんが、狭い殻の中に閉じこもってはならないという点が非常に大切なことです。』
まぁそれはそうですな。その後一言入るのですがそこは飛ばして、その次に出てくるのが「セントラルバンクサービス」なる不思議なお言葉。
『今、皆さんが持っておられる強い好奇心、広範囲に及ぶ関心を、今後益々広げながら努力してもらいたいと思います。そして、国民一人ひとりの心の奥底に迫るという気迫で、タイムリーに政策行動その他高度なセントラルバンク・サービスを提供していく心構えを是非持って貰いたいと思います。』
タイムリーに政策行動ってのは自分に対する言い訳なんでしょうけれども、この「高度なセントラルバンク・サービス」って何ですか??中央銀行は実効ある政策を着実に遂行してくれれば良い(それが難しいからこそ優秀な人材が求められるのですが)わけで、別にサービス精神を持たなくても結構なのですが。
パブリックサーバントの意図で言っているのかと解釈したいですけれども、何か違和感の思いっきりある言葉です。もしかして国会やら記者会見やら講演なんかで「サービスフレーズ」を語るのが「セントラルバンク・サービス」なんでしょうか???
で、この総裁様がおいでのうちには日銀は「動く」のがお仕事になるようですので、金融政策のスタンスが安定している筈なのに、余計なサービスフレーズ的な情報発信によってスタンスがぶれるかと見紛う事も起きるのでしょう。頭の痛い所です。
『その(引用者注:近日実施される日銀の組織運営と人事制度の見直しの)キーワードは「戦略、起動、実現」です。このキーワードは、皆さんも、今この場で確りと頭に入れておいて下さい。』
『日本銀行は、昔の中央銀行のような「鎮守の森」ではありません。』
『皆さんの旺盛な好奇心、ものごとに挑戦する心を呼び起こすダイナミックな職場です。』
『厳しい中にもワクワクしながら仕事に打ち込める、仕事を通じて社会に貢献するとともに、自分自身を磨き上げることが出来る、一人でも多くの皆さんと早くそういう気持ちを共有したい。』
確かに世の中の動きが速いですから鎮守の森でも困りますけど、やはり中央銀行は「通貨の番人」という役割を果たす為にわざわざ政府と別組織にしているという歴史的経緯というか歴史の教訓も踏まえて頂きたい訳でして、意気込み抜群状態で「ワクワクしながら」「ダイナミック」に行動されても困るんですけど。
と、相変わらず性格と根性の悪いあたくしは思うのでありました(^^)/。
2004/04/01
お題「期初だというのに雑談で」
期末期初ですからまぁ長期的な展望のお話でもする所なんですけれども、あまりの大荒れ相場に考えを纏める元気が湧かず(-_-メ)、最近気が付いたことなどをつらつら。
○中途半端な介入は止めましょう
先月初頭の米国雇用統計で押上げ介入をやって112円台まで円安ドル高に持っていった素晴らしい動きを行っていた同じ人が、昨日は月末の仲値が確定した時点で「どうでもよい状態」の円高ドル安放置プレイ。104円割れって3週間で8円ドル安ですよ先生。
市場っつーのは放置しておくと大体碌でもない暴走をするので、ある程度のスムージングオペが必要でしょうというのがあたくしの基本的な発想(ディーラーにあるまじき意見というお話もありますが)なのですが、この「何かに取り憑かれたかのような無限介入」の後に「いきなりやる気なし」状態になるという介入は相場を荒らして、政策当局への信用を無くすだけの効果しかないでしょうな。
長期金利の方でもどこぞの中央銀行総裁様が「金利に蓋をする」などと訳の判らん余計なお話をして、方向感に悩んでいた債券市場に長期金利低下爆弾をぶち込み、金利低下祭り状態が発生。株価が何気に底堅いのに10年金利が1.2%だの5年金利が0.5%割れだのという素晴らしい状態になってしまって、こちらでも余計な上昇と下落が発生。
相変わらず総裁発言に反応する人がいるから債券相場の乱高下祭りが展開されて炎上す人が出てくるわけなのですが、こんな状況が繰り返されると日銀総裁というか、日銀の出す政策の信用が低下していく懸念がありますな。まぁあたくし的には最早「勝手にすれば」状態なのですけどね。
○昔のPKOを彷彿させました
昨日の為替市場。「仲値が出たら後は知らん振り」という素晴らしく腐った根性の展開には感動すら覚える所ではありました。
そういえば昔々、「期末の株価PKO」というのが年中行事になっていた頃のある時(中間期末だったと思うが)、日経平均指数先物で引け際に猛然と大口の買いが連発して15時の指数先物を頑張って持ち上げた挙句に、「現物が大引けになったら後は用なし」なのでしょうか、いきなり先物の引け際に急落(株価指数先物は15時10分までやっている)という大笑いする動きがありました。
昨日の為替市場の「仲値だけ無理矢理キープ」というのはまさに当時の無駄としか申し上げ様の無かったPKOを彷彿とさせるものでして、まぁ何時までたっても進歩のない困った方々ですな〜というのが感想であります。
○気になったニュース
ほんのちょっとの扱いのニュースでしたが気になったお話が一つ。
昨日の時事メインのニュースに証券取引等監視委員会の野田晃子委員の講演というのがありまして、所謂「仕組み商品」に関して歯止めが必要という見解を示したそうです。
「商品性が怪しい商品、販売員が理解していない商品が、高齢の投資家などにどんどん販売されている」「これを野放しでいいのか疑問だ。いい方法を考えなければならない」と述べたそうです。(ソースは昨日19:43に出た時事メイン提供ニュースです)
まぁ一般ピープルにとっては相変わらず証券会社との取引をするのは敷居が激しく高いのですが、最近では銀行様までもが色々な仕組み商品を売り出すわ、銀行と証券会社の共同店舗や一体店舗のような形で銀行経由で証券会社の敷居が低くなるわということで、あたくしもいい加減そういう話がでるだろうな〜とは思っておりました。
まぁ仕方無いんじゃないかと思いますが、証券会社ばかり規制しても無意味(というか逆に銀行優遇の尻抜け規制になってしまいますが)ですので、歯止めを考える際にはその辺もちゃんと考えて欲しいものであります。
その一方で一昨日は日銀総裁様が金融広報なんちゃらという所で「ペイオフ全面解禁で預金者には自己責任の意識を持って欲しい」などと相変わらず現場における実態を知ってか知らずかの脳天気なご発言をされており、大変に頭の下がる思いであります。
期初なので本日は悪態ばかりでしたな。今期も宜しくです。