2004年2月
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2004/02/27
お題「日銀保有国債の品貸し検討だそうで」
昨日の金融政策決定会合では「日銀保有の国債を品貸しする制度」の導入の検討を行うことになったそうであります。まぁやらないよりはやった方がいい制度なのでして、情報が出た当初はあたくしも手放しで喜んでいたのですが・・・・・・・
○そもそも遅きに失した「品貸し導入」
いわゆる時点決済(同時刻に全部の取引参加者の決済が行われる)からRTGS決済(決済時点がバラバラ)への移行が行われた際に問題になったのは「現物国債の需給がタイトになりやすくなること」でありました。
何せ時点決済の時代は帳尻があっていれば良いので、業者が手持在庫の無い銘柄を投資家に売却する場合に「売却した投資家から同じ銘柄を借りてくる」という妙な取引が可能だった為、当時の国債指標銘柄なんぞは流通玉の推定数倍(というか多分発行額の数倍かも・・・・)にあたる玉が普通のように売買されていたという素晴らしい時代でありました。RTGS決済導入によりこの技は不可能になった(時点決済なら売却と借入、即ち売り買いを同時にガッチャンコできるのですが、RTGSの場合は取引がループしてしまう)ために「流通量>発行量」などという訳のわからん事が起きなくなってしまっております。
同じRTGSを導入している資金取引に関しては、日中の一時的な当座預金不足に対する流動性供与といった対策がRTGS導入時からきちんと確立しております。「債券のRTGS導入に関しては日中流動性供与の何らかの措置あるいはフェイル慣行の定着が求められる」という話は制度の導入前から散々言われていたお話でして、やらないよりは遥かに良いとはいえ、「何で今更?」という印象を受けるところであります。
○品貸しの前にフェイルを認めるほうが先なのでは?
昨日は虫の知らせでもあったのか(^^)、「日銀が『フェイルは許さん』というスタンスでは・・・・・・」というような事を書きました。書いたその日に突如あのような金融政策決定会合での決定が行われるとはかなーり笑ってしまいましたが・・・・・
昨日も申し上げましたが、日本銀行の売買オペではフェイルが起きると事実上の事務ミス扱いとされておりまして、必然的に実質「フェイルは許さん」というスタンスになっております。ちょっとソースが見つからないのですが、以前日銀から「国債決済RTGSの現状」みたいなレポートらしきものが出た時にも「フェイルの件数、フェイルの解消に有する時間ともに減ってきていて大変結構」というのもあったと記憶してますが、これも意地悪く解釈すると「フェイルは異常な状態であり撲滅すべきものである」という思想を背後に感じてしまったりする訳で。
勿論、フェイルが頻発するのは如何な物かと思うのですが、(直接レポ関係のお仕事をやっている訳ではないのであまり断定的に言うのも何ですが)現在の国債決済取引ではフェイルの発生に神経質になり過ぎな状況に追い込まれているような気がするんですけどね。これで国債決済T+1なんかになったらまさに利益無き繁忙。。。。
○需給の歪みを利用した裁定機会が無くなると言われますが・・・・・・
「SCレポ(=特定銘柄の品借り目的)取引市場の機能が喪失してしまう」というような意見も言われております。まぁ皆が日銀の「品貸し」に頼るような市場になったら馬鹿馬鹿しいの限りでありまして、補完的な機能として使うようなもので十分だとは思いますが、あたくしのような国債流通市場でのマーケットメーカーの立場から申し上げますと、そもそも現在のSC市場の一部で起きている事の方がよっぽど異常でございます。
具体的には2年中期国債の流通市場なんですけど、例えば2ヶ月前に発行された2年216回債のレポレートが概ねマイナス0.1%と聞いております。この債券、クーポンが0.1%ですから、216回を保有してレポ市場に放出すると実質0.2%の期間収入があるという状態。当然ですが、ショートになった業者はこんなコスト払ってられませんので買戻しに走る訳でして、引け値ベースでは一応順イールドになっていますが、実態は償還のより短い銘柄よりも利回り低い価格でないと買戻しができないと言う有様(というか業者間で売り物が無いのですが)。
まぁこんなことが最近は年がら年中おきておりますので、業者としては2年国債をまともにマーケットメークしたくなくなるのが当然の行動。「持ってりゃ販売しますが、持っていない銘柄の大口買い注文はレポコスト勘案しますと非常に割高になりますがよろしゅうございますか?」という行動を取らざるを得なくなります。
足元のファンディングコストが0.001〜0.003%(GC)の状況で流通利回りが0.05%を切っているような債券を品借りするコストが0.1%もかかると言うのは最早お話にならない状態だと思いますが如何でしょうか?
ひと銘柄で1兆7000億円も発行されている債券で何でこんな話が起きるかと申せば、要するに特定銘柄を狙い撃ちして「買占め」に近い行為がどこかで行われている可能性が高いということでありまして、そんな荒業が通用するのもひとえにゼロ金利と量的緩和のなせる技でしょう。資金が短期金融市場で余りまくっているのでこういう所で変な動きが起きるという訳でして。「銘柄毎の需給のゆがみを利用した裁定取引」といえば聞こえはいいのですが、どちらかというと「銘柄ごとの需給のゆがみを自ら作り出して力技で行う取引」と言った方が現状にマッチしているのではないかと思いますがね〜。
量的緩和の長期化というか無限化によって短期金融市場での資金ディーリング機会が無くなってしまっているので、開店休業を余儀なくされている状態の資金ディーラーが2年債市場に「出稼ぎ」にお見えになるのは、必然と言えば必然でありまして、仕方が無い面が有るのは良くわかります。まぁこうやって量的緩和の波及効果が発揮されると言うことで、とほほ。
結局何が悪いって量的緩和が市場機能を封殺しているって事なんですけどね。
そういえば昨年は久し振りに先物受渡際割安銘柄での仕手戦もどきが行われておりました。あいかわらずスクイーズ行為に対して甘々の債券市場でありますが、ちったあ改善されて欲しいものであります。
○日銀の保有する国債必ずしも・・・・・・
日本銀行の保有する国債の銘柄別残高っつーのは毎月月初近くに日銀から発表されております。で、この残高を見ますと、天下御免のショート銘柄と言われる銘柄が必ずしも入っている訳では有りません。既発2年国債の中で唯一0.2クーポンの2年212回債(半月だか1ヶ月前だかにどこかの業者間スクリーンで何と0%で取引されていましたな)なんかは7568億円保有してますが、例えば先物受渡最割安銘柄時代にスクイーズ騒ぎの起きた10年221回債はわずか221億しか保有しておりませんで、まさしく焼け石に水状態。ついでに申し上げると、上記で例に出した2年216回債は日銀の買入対象銘柄になっていないので保有していることになっていません。
本当は国債買現先オペでの保有分(銘柄差替えが可能なので保有分としてカウントするのは無理があるが)がありますので、実際は日銀に幾ら吸い上げられているのかがブラックボックスになっているのがまた困り者なのですけど。
てな訳でして、今回の措置をもってして直ぐに銘柄間の馬鹿馬鹿しい需給の歪みが全て是正されるかと言うと、そこまで期待するのは酷でしょうな。
本当にやる気があるなら、日銀の売買オペにおけるフェイルを制度として認めるとか、流通市場でのスクイーズを監視するとか、やる事は幾らでもあるんですけどね〜。
○何か動かないと気がすまないのでしょうか?
今回もまた唐突に「検討を指示」することになった施策なんですけれども、何でこのタイミングでやるのかもそうですが、一々「検討を指示」してから施策が出て来るというのは何なんでしょう??
まぁかなりの人々が指摘していますが、「検討を指示」して「具体策を発表」すると、1本のネタで2度の「金融政策」が実施できるわけでございまして、「機動的に動く日銀」の看板維持には絶大なる効果を発揮するという事ですかね。「一粒で2度美味しい」ってお菓子がありましたな。
金融政策決定会合でそう毎回毎回何かを決めなければいけない訳でも無いと思うのですが、総裁就任直後に大見得を切って「臨時政策委員会」を召集してしまった所から始まった「よく動く日銀総裁」もそろそろいい加減に落ち着いて貰いたいものであります。
だいたい政府側の構造改革も財政再建も遅々として進まないのに、日銀だけ一人踊りつづけていても仕方無いと思うのですけれども・・・・・・・
本日は一部「資金力もポジション力も無い人の遠吠え」的な部分がある事をお詫び申し上げますm(__)m。
2004/02/26
お題「ネタ枯渇でまたも雑談」
○相変わらずのカーブ乱高下
先物の値動きだけ見ていると相変わらず「動意薄の中じり高」と言う相場なのですが、イールドカーブが日中に動く動く。5年VS10年のイールド変化比較でもチャートにして先物のチャートと並べると(んな面倒なことはしませんが)かなり目眩がするような結果が出てくるのではないかと思います。
先日も申し上げましたが、業者が投資家の売買をまともに市場に出してしまうという傾向の現れです。まぁ昨年の相場大暴落の修復相場が始まった9月あたりからこの傾向は始まっていまして、9月の初旬の相場戻り局面でも相当無茶なイールドカーブ乱高下が起きていたのですが、そのときは一応「今日はスティープニングの日」とか「フラットニングの日」という感じで動く事が多かったという印象がございます。
最近のカーブ乱高下に関しては日中にカーブの形状が思いっきり変化する所が強烈な所であります。先物の位置が大して変わらないのに5年と10年の位置関係が前場と後場で逆転しているなどという光景はごくありがちな光景になってしまいました。
マーケットメーカー疲労困憊の図って感じですが、どちらかと言うと疲労困憊ではなく無抵抗主義状態という所なのかもしれませんが。。。。業者間スクリーンに投資家のオーダーフローが見え見えに出てきてしまう昨今の市場状況は如何な物かと思いますのう。
てな訳で、激しく読みにくい相場が続いているのですが、正直こういう相場で真面目にイールドカーブ動向なんかを考えてマーケットメークをしても碌な事にならないので、実を言うと先週くらいから真面目に考える事を放棄しつつあったりもします。困ったもんだ。
○備え有れば憂いが無いと思うのですが
WI取引は目出度く無事に始まりまして、小額ながらも出合いもあります。まぁ業者の売買テストの意味もあって値が付いているのかも知れませんが、とりあえず昨日も申し上げましたが、機能して結構な事です。
で、無事に機能すると当初あたくしが市場の片隅で声を大にして言っていた「発行日前取引が一般売買と法的扱いが違う事によって起こるであろう混乱」などという懸念はどこかへ忘れられるのが世の常であります。
確かに「非常災害などの場合でもバックアップはしており、決済参加者には危機管理マニュアルを作って準備させているから」「入札の延期や発行の延期などという事は『有り得ない』」というお話になるのでしょう。
こういう法的不備というか制度的不備ってぇのは有名な「ヘルシュタット・リスク」みたいに、大問題が発生しないと改善されないという事なのかもしれませんが、一応想定可能な問題については「有り得ないから問題なし」とするのではなく、制度面の手当をして頂きたいと思います。
そもそも有り得ないなら、わざわざ証券業協会が「入札や発行が延期や中止になった場合の取引の扱い」について説明義務を課す事がおかしいということになると思いますがねぇ。
同様の問題が債券レポ取引にもありまして、「レポ取引は消費貸借か売買か」という点を突き詰めますと、取引相手方が法的に破綻したような場合に、レポ取引によって自分が保有している現金あるいは債券をどう処分するのかという扱いが変わってくるわけでありますな。この点に関しては米国では裁判事例がありまして(肝心の参考文献を大昔に後輩にプレゼントしてしまったので詳しく覚えてませんが)当初はレポ取引の法的性格が曖昧であった事から、取引当事者に不利な判決が出た事もあったようです。その後法的な性格の位置付けなんかが行われたようです。
例によって日本では事例っつーのがないのですが、レポ取引の相手方が破産したりして保全命令が出た時に、レポ取引を消費貸借の契約にしている場合、借りて来た債券の所有権は貸し手にある訳ですので、勝手に換価処分して取引を勝手に終了させて良いのかはちょっと疑問なわけでして(現先形式にしておけば問題無い)。
まぁ基本契約には一応何か書いてあったとは思いますし、弁護士意見なんかも求めてはいるのですが、そんなものは裁判上の命令に対しては効力が無い訳でして、これもいずれ問題が発生してから裁判上で屁理屈をこねる人が出てきてから改善されていくのでしょうが・・・・・・・
あたくし思うに、諸外国(というか米国)の良い制度を取り入れるのは結構なのですが、日本国内の法令諸規則との整合性をもっとよく検討して、あたくしのようなド素人でも指摘しそうな点は極力手当していただきたいです。
全然話は飛びますが、証券決済のT+1に向けて頑張りましょうというお話になっておりまして、色々と制度上の手当が進んでおりますが、債券市場においてもっとも肝心なのは「フェイルもまた通常ベースの出来事」という認識が共有される事だと思います。現状では「フェイルは許さん」というスタンスの投資家様も相変わらず多うございますが、翌日決済なんて事をやるのに、現状のような銘柄数および流動性のままでは物理的に回らんと思いますが。体感的なお話と致しまして。
だいたい、日銀が売買オペにさいして事実上「フェイルは許さん」というスタンスでいる状況で、フェイルが慣行として(そりゃーフェイルしない方が良いに決まってますが)定着する訳も無く、前途は多難というか、T+1が強行されたら決済に関る手間隙が莫大な量になるのが今から予想されますな。
ここ数日に書いた話の繰り返しみたいなお話で恐縮至極でした。申し上げるような相場テーマが見事に無くなっているような気が致します・・・・・
2004/02/25
お題「WI取引無事開始」
散々悪態をついていたWI取引ですが、法的な穴はさておきまして、取引の方は無事に始まったようで大変結構であります。
○開始のタイミングは一番良かったようで
今回の10年WI銘柄は既発債から償還が3ヶ月延び、おまけに30年国債入札というイールドカーブに思いっきり影響を与えるイベントがございましたので、イールドカーブに対する見方が微妙に反映されるような板気配になりました。導入のタイミングとしてはこれ以上ない絶好の時でありまして、散々法的な穴について悪態をついておりましたが、時期設定に関しては手放しで絶賛させていただきたいと存じます。
既発の10年256回、257回債の複利が同イールドで売買されている中で、10年WI銘柄は、既発債からの複利スプレッドが当初3BPちょっとから3.5BPちょっとという感じでやや売り込まれる形になりました。ちょうど30年国債の入札がボロボロな上に結果発表後に新発30年債に投げが出ていたこともあり、イールドカーブがスティープニング圧力がかかった事と平仄を合わせる形でしたので、まぁ目出度し目出度しって感じでした。
○まぼろしの好需給崩壊(か??)
1月発行の新発10年債がリオープンになりましたが、この時は「セカンダリーマーケット見え見え」という状態だったので、業者としても「好需給を演出する割高入札」→「セカンダリーマーケット好発進」→「発行体も業者もウマー」という毎度お馴染みの展開を進める事が出来ませんでした。
という事が有った時に「WI始まったら入札で儲かりませんな〜」なんて書いた覚えがございますが、その後の20年国債入札でもリオープンだったせいか入札はそこそこでしたがセカンダリーでの売買はどうも低調という動きになりまして、「景気のいい割高入札」って感じになりませんでした。
さて、今回のWI取引なんですが、何せ入札1週間前でございますので投資家様が買いに来る訳はなく、業者だけでやっている状態ですからどうしても業者間でのビットは割安(と思われる)な所にしか入らない傾向があるようでして、どうも今の所はやや割安な所での出合いが目立つようであります。
まぁある程度割安になれば買いも入るのでしょうが、これでは今までの「まず割高入札から入る」という新発債のパターンと思いっきり逆になっております。まぁ正常な姿に向かっているという所なんでしょうが、今までやっていた「割高入札で演出された好需給」が実は「底上げされた好需給」だったという事が露呈しつつあるのがWI取引導入のメリットというかデメリットというか。
10年国債入札が月初に行われる関係上、10年WI取引のスタート時点では、月末跨ぎの取引になってしまいます。クーポンが確定しない段階での売買取引なので会計処理の問題が若干あるのと、間違ってWI取引が「取消」になった場合(しつこいね。あたくしも・・・)の会計処理問題がややあるので、どうしても月末跨ぎのポジション保有というのは投資家さまにおかれましては消極対応って事になると思います。
投資家の参加がなければ必然的に業者主体になりまして、余程勝負する気なら別ですが、敢えて割高な所をセカンダリーマーケットで買いに入る必然性もないので、WI取引はやや割安になる。という事になるのでしょう。そのうちに「割安ならば入替ベースで買いましょう」みたいな投資家さまが出てくるとは思いますから、そんなに懸念する事ではないですけど。
そんな訳で、入札前のセカンダリーマーケットがスタートすれば、入札で極端な割高入札や割安入札がなくなって結構な状態になるかもしれませんが、「セカンダリー見え見え」状態ですので、「底上げされた好需給」部分が剥落した入札になるんでしょうね。
とか書いてますが、入札当日の前場にいきなり10年WI銘柄を先回りして買うような困った大手投資家様が出てくるかも知れず、実際の所は来月の入札日になってみないと判らないといったところでございます。
おまけ:30年国債入札
昨日は「所詮一部の人たちがやっている債券ですから」などと悪態をついていたのですが、前場から長期債(10年だか20年だか判りませんが)に買いが入るという余計な展開になってしまった為、入札に妙な期待感が出てしまった結果がボロボロ入札という事になってしまいました。
で、イールドダッチ方式の入札なんで、皆様とっても割安なコストでの落札になった筈なのですが、いきなり結果発表後新発債叩き売りの図。まぁ誰かが投げを誘う為に売り仕掛けしているのかも知れませんが、あまりにも情けない結果でありました。
何度も申し上げてますが、イールドカーブの一番後ろの債券が一番流動性が無いというのは如何な物かと思いますけどね。あたくし的には30年をもっと派手に増発するか、あるいは20年と統合するとか。何とかならないものかと思いますが、訳の判らない債券があった方が収益チャンスがあると考える人もいるので話がややこしい訳ですね。
セカンダリーマーケットの流動性と透明性向上こそが国債の売買円滑化に繋がり、最終的には国債の安定消化にも資すると思っておりますあたくしとしては、こんな訳のわからん債券は何とかして頂きたいと思う訳ですけど。。。
大体10年が1.2%で20年が1.8%なのに何で30年が2%(結局崩れて2.1%になりましたが)ですか??と思う訳であります。20年の上値が重いのは毎月5000億円攻撃が徐々にボディーブローのように効いてきていると言う事なんでしょうな。
2004/02/24
お題「相場雑談」
今に始まった事ではないですが実に訳の判らぬ相場が続いております。昨日の相場を振り返りながら雑談的に。
○謎の長期国債買入オペ結果
昨日行われました長期国債買入オペ。買入予定額3000億円に対しまして応札が何と3725億円という少なさ。記録をちゃんと見ていないので何ともいえませんが、最近では極めて少ない部類に属する応札額でした。当然ですが落札結果もテールが流れて、前日比+0.018%まで買入決定と相成りました。
昨日の買入オペ応札時点での債券市場から考えますと、9年以降のゾーンや超長期ゾーンなど応札する玉が無かったとも思えない(何せ前場引けの時点では9年ゾーンで+0.025%の売り注文が平気な顔をして並んでおりました)のですが、この応札意欲の低さは何だったのでしょうか。
と言うことでまず最初に考えるのは「業者間にはオファーが並んでいたが実はそんなに売り玉が無かった」というお話なのですが、後場になってから(3000億円の買いが有ったのにも拘らず)長期債や超長期債が前場よりも安くなってしまったという事から類推すると、売り玉が枯れていたとも思えません。後場に長期債に売り(多分出ていたのは超長期かと思いますが)が出ていたのも影響しているとは思いますが。
そして昨日のオペについては平均落札利回りは+0.025%となっていました。平均利回り自体は割と普通の水準でしたので、逆算すると「最初から落札する積り」の札が2500億円くらいはあったと思います。そう考えますと昨日は「入ればラッキー札」が殆ど無かったというお話になる訳です。
業者のやる気がうせているのではないかと心配ではあります。
○業者間取引にまともに出てくる顧客の動き
今に始まった事ではないのですが、最近益々その傾向に拍車が掛かっております。昨日の債券相場におきましても、イールドカーブがよく動くのですが、最近「何でこのタイミングでこういう動きをするのでございましょうか??」と言いたくなる動きが目立ちますな。
特に恐るべしという印象を受けたのは昨日でありまして、上記のように「長期債が前場の引けで3000億円、しかもかなり高いところまで買われたはずなのに何故か後場に長期債ボロボロ」というのは驚きというか呆れ果てるというか。
原因としてあたくしが勝手に考えているのは「業者が相場観を持たずに臨んでいる」という事ではないかと思います。「投資家が売買する」→「業者がそのままマーケットでカバー」→「向かった業者結局が振り回される」→「振り回された業者が反省して向かわなくなる」というようなトホホな循環が起きておりまして、特に現物債の対顧マーケットメークをやっている業者がへろへろになっているようです。
そんな訳で、最近は下手をすると先物の動きよりもイールドカーブの日中の動きの方がでかい時があったりする状態。日中に突然カーブがスティープしたりフラットしたりと実に香しい状況でして、実に困ったものです。マーケットメーカー疲弊中ですな。
○ところで円安を舐めてはいかんと思うのですが
まだ考えが纏まっていないのでざっくりと書きます。先日「そこはかとない不安」などというお題で雑感を書いた状況とあまり変わっていないのですが・・・・・・・今の相場環境を俯瞰した場合の「前提条件」の一つに「アジアというか日本(と中国)の為替介入名目での米国債買い支え」というのがありますわな。これが米国の低金利株高という素晴らしい流動性相場を支えている面が多分にございまして、何だか謎なんですが日本の量的緩和政策が米国の財政ファイナンス経由で日本に恩恵がやってくるという不思議な「緩和効果」を生み出しております。
で、この円安というかドル高にきっちりと反応しているのが米国長期債市場だというのがまた楽しい物を感じるのですけど、まぁ兎に角米債市場のほうが余程素直に反応しているということでしょうか。今朝はドルの巻き戻し(が原因かどうか知らんが)で米債反発となっているようですな。
ドル高→米長期金利上昇→ますますドル高というような話には直ぐになるとは思えませんが、どうも円債市場はこの為替動向には(警戒はしているかもしれませんが)もうちょっとナーバスになったほうが良いのではって感じですわな。どちらかというと株価に反応して動いているようですから。
先週金曜日の「ドル高にもめげずに債券高値引け」には正直驚きました。
○30年国債入札
まぁ一部のマーケットメーカーと一部の投資家様が局地的に売買しているという債券のようでして、まぁ何とも申し上げにくい商品なのですが、とりあえず先週の入札以来上値の重い展開が続く20年新発債が復活する為にはこの30年債がある程度確りしてイールドカーブがフラットニングしていかないと厳しいでしょうな。
月末恒例のパッシブ長期化ってのに期待が掛かってはおりますが、最近の傾向としては、インデックスが比較的長くなる月の方が「長期化に期待したポジション」が作られやすくて却ってヘロヘロになるというありがちなパターンが継続しております。と言う訳で、とりあえずあまり注目しても仕方無い債券ではありますが、落札結果発表後の20年、30年の動きは一応見ておくと吉かと。
これが終わると2年債をやってから来週にはもう10年債。慌しいものでありまするな〜。来月の10年債は償還が3ヶ月長くなるので、そこそこニーズは見込めると思いますよ。
とまぁ本日はとりとめも無いお話で恐縮。
2004/02/23
お題「お手本は無いのではと思うのですが」
○岩田副総裁の講演
先週ご紹介した岩田副総裁の講演には「新たな金融システムの構築」というお題のコーナーがございました。で、まぁこのお話が中々なものがございまして、昨今の経済学者の傾向をよく現しているのではないかと思う訳であります。
『日本の金融システムの特徴は、「銀行優位の間接金融」であると言われています。』ってな感じで日本の金融システムのお話をした後に比較対象に出てくるのが「アメリカの金融制度」でございます。どうもこの先生におかれましては「アメリカの金融制度を取り入れる事」というのは論証の余地の無い「定説」らしゅうございます。
『(日本に対して)アメリカのように市場を中心とする直接金融システムでは、リスクは市場参加者の間で広く負担されており、情報も市場参加者の間で共有されることになります。この結果、資産価格の崩壊があった場合に、そのリスクは広く市場参加者の間で分担されることになります。』
と言う事のようなのです。さて本当に「情報が市場参加者の間で共有されている」のか(エンロンを始めとして・・・・・)などという突っ込みもあるのですが、それ以前の問題として、日本の金融システムを米国と比較して論じているのですが、どうも米国のシステムが正しいので日本もそういう風にしましょうってお話になっているのが謎であります。大体日本と米国では社会構造も産業構造も全然違う訳でして、日本にそのまま米国流を持ち込んで上手く行くとは到底思えないのですが。
ちなみにこの講演ではひたすら「アメリカ」が出続けまして、読んでいると「そんなに米国の金融システムが偉いんですかね〜」と言いたくなる所ではございます。
○ある討論会における突っ込み
ちょっと前の本なのですが、「金融政策論議の争点」というあたくしが只今読みかけの本がございます。ちなみに初版出版日は昨年7月8日です。(小宮隆太郎、日本経済研究センター編、ISBN-4-532-13236-3、\2800)中々宜しいかと思いますがまだまだ読み途上でございますので本の内容についてのお話はまたいずれ。
さて、この本では論文と紙上討論の他に現実に討論会が行われまして、編者のお勧めに従ってまずこの部分を読んでいるのですが、この討論の終わりに日銀白川理事(当時は企画室審議役)の発言で思わずあたくし的には大ウケしてしまいました。本書380ページから引用させて頂きます。新保生二(青山学院大教授)氏への突っ込みの部分です。ちなみにここに出てくる岩田さんは岩田一政内閣府政策統括官(現日銀副総裁)。
新保「1930年代との比較で、たしか白川さんがスウェーデンとか米国とかを取り上げて、30年代の時は金利が十分高く、ゼロに張り付いていなかったとの議論をされているが、米国はゼロに張り付いていたとテーラーなどは言っている」
岩田「米国は38年から41年くらいまでゼロだ。」
新保「テーラーは、日本も米国の30年代も同じであって、マネタリーベースを増やすことによって米国はデフレから脱却できたのだから、日本も同様にすべきだと言っている。」
白川「現在の日本経済の問題を議論する時には、テーラーがどういったとかクルーグマンがどういったかではなくて、日本経済の現実からスタートし、そのうえで、理論も過去の歴史も総動員して議論するという姿勢が必要だと思う。だれそれがいったという話ではなくて、まず自分の頭で考えることが重要だと思う。(以下割愛)」
実に香しい(^^)。
○高橋亀吉先生の言葉
高橋亀吉氏の著書「私の実践経済学」。初版が昭和51年1月という本なのですが(東洋経済新報社 ISBN4-492-39005-7
\1750)同書196ページ「私の実践経済学への側面的アプローチ」という稿にこんなご指摘が。
「経済理論というものは、それぞれの時代およびその国の経済の実態を基礎にして発展したものである。(中略)経済理論には時代や国を超越したものもあるが、むしろ多くはそうではないという前提でこれを学ぶべきではないか、というのが私の経済哲学である。」
「だから、アメリカやイギリスで育った経済理論がそのまま日本経済に妥当するわけではない。また、最近(1973-75年)のように実体経済が物の豊富な経済から不足経済に突入した段階では、従来の経済理論は、そのままの形では妥当しない。したがって、ものを考える場合、既成の理論、学説から演繹していくと言う方法を、私はできるだけ避けている。現実を調べ、そこから自分で帰納的な結論を得る、あるいはそこから現実を説明できる新しい理論の発見に努める(以下割愛)」
この時から30年、日本の経済学っつーのはどうなっていったのでしょうかね〜ってあたくしも引用ばかりしてないでもっと考えないといけませんな。よく見れば本日は引用のオンパレードでした(超大汗)・・・・・・・
2004/02/20
お題「債券相場に対するそこはかとない不安」
主観まるだしの債券相場への印象って感じです。他にもネタが無いわけではないのですが、「何となく」今書いておきたくなったもので・・・・・・・
○実質はどうでもよいが名目も
先日発表されたGDP。案の定と申しますか、出た数字があまりにも実感から乖離しているせいか「GDPデフレーターの算出方法に疑問点がある」という話がコンセンサス化して参りました。ということで、まぁ実質成長率に関しては眉に唾をつけて読むというお話だと言う事については皆様同意しています。
ところがど〜も実質成長率が眉唾だという所で思考が止まっている債券市場関係者もおいでのようでして、債券市場は10年債を中心に買われると言う展開。昨日の相場でも一部の投資家様による押し目買いって奴が入っていたようです。前日に急反発した後にほんの1BP安くなっただけで押し目買いというのは何ざましょって感じではありますが・・・・・・
もと理系のあたくしと致しましては、昨今のGDPに関する議論が「実質GDP」→「デフレータ−」となって、「名目」に関するお話があまりないというのが実に???な訳でございます。経済現象としてまず直接計測しているのは「名目GDP」であるわけですから、最初に問題にすべきは「名目」ではないかと思いますがね〜。
先日の岩田副総裁の記者会見でもGDPに関する評価を質問されて「実質成長率」→「デフレータ−」という感じで話をしてますが名目に関しては何の言及もございませんでした。何だかな〜。
で、ここで名目GDPの推移なんかをグラフにすると格好良いのですが、そいつは省略。要するにあたくしが思うのは「名目GDPのプラス」っていうのをすっかり忘れて「実質の高成長は当てにならない」という所ばかりに注目している感のある債券市場ってこの調子で大丈夫なのでしょうか???って事です。
○日銀副総裁が堂々と語る「リフレ」
昨日ご紹介した岩田副総裁の講演とその後の記者会見要旨。詳しいご紹介は時間と文章量の都合上改めて行いますが、講演で「本年は80年代からの世界的ディスインフレが終息してリフレーションの時代に転換することが予想される」と「転換」の宣言。
量的緩和で世界(正しくは宗主国様)にばら撒く過剰流動性が色々と効果を発揮しているようで、米国の金融市場なんぞも随分過剰流動性相場って雰囲気を醸し出しているように思えますな。
基本的に「リフレーション」的な政策には伝統的に否定的な日銀で、外部出身の副総裁とは言え、現役の副総裁がリフレーションを語るというのはやはり気にしておいた方が良いかと思うのですが。実権はなさそうなお方ではありますが、理論的背景は強固ですから、政策論議って事になるとそれはそれ。
しかし何ですな。このお方記者会見でも(詳しくは後日ご紹介しますが)『デフレ克服については、国内だけではなくアメリカやヨーロッパの内外の経済学者がご提言されている。』とご託宣を下さっておられますが、日本の国内経済事情をどの位把握して提言しているのか良くわからん海外の経済学者のご提言を有りがたがるというのは非常に何と申しますか(自主規制)でございますな。洋行かぶれではない経済学者っていないのですかね〜。
○一次産品の値上がり
という話はあちこちでちょっとずつコメントされておりますし、現象面でも現れております。先日の岩田副総裁の講演でも「川上から川下への価格上昇」という表現でコメントされています。
おまけに国内では天候不順で米価は上がるわ、鳥はインフルエンザに罹るわ牛の脳味噌はいかれるわと言う事で食料品価格も上昇するわと言う事で、まぁ何と申しますか、少々不気味なものを感じる訳であります。
雇用者所得が相変わらず横ばいな上に将来の雇用不安は続くって状態な所で物価だけ上がられてもあたくしのような小市民は困ってしまいますけど・・・・・
○おまけに謎のドル反発
昨日にユーロが対ドルで新高値更新してからいきなりドルの巻き戻しモード。今の所は「ドルの戻し」という動きになっているのでとりあえずは綾戻しの段階なんでしょうけれども、このドル反発」が「円安」方向に向かう。即ち「日本が財政を発散させながらリフレ政策を取るので通貨安」というロジックになった場合は洒落にならんと思う訳です。
財政発散は絶賛継続中ですし、日銀副総裁まで「リフレーション」などと言い出している訳でして、そうなりますと通貨安から来る輸入インフレってのも懸念される所。前回の円安局面では中間マージンの減少という形で最終物価への転嫁が行われなかったと(非常にざっくりとした雑な話で恐縮ですが)思いますが、仮に次に円安局面がきた場合にそのままですむのかは疑問ですよね。
おまけに、上記のロジックでの通貨安って事になれば金融資産の海外流出も懸念されますしね。
○まとめにならないまとめ
と言う事で、目先の話やら長期的な話やらごちゃまぜであまり話に一貫性が無かったりしまして恐縮なのですが、ど〜もなんというかそこはかとなくこの相場に違和感があるわけですよ。あと現象面と言うことで気になるのは
・今更こんな所で能動的かつ結構な規模でポートフォリオの長期化をしている(やるならもっと前にやれよ・・・・・・)お方がいるような節が見られる。
・「10−12月期のGDPで景気は一旦ピークアウト」といって債券に妙に強気になっているお方がちらほら見受けられる
などなど、あまり詳しい書き方をするのは自主規制させていただきますが、何と言うか「え〜、何で今更カンカンの強気なの〜」っていう動きが垣間見られるわけなんですよ。これがまた。
と言うことで、どうも強気になれないあたくしでありました。
2004/02/19
お題「中小企業金融論議の上滑り/岩田副総裁の講演は難解です」
本日はお題2本立てにておじゃる。
○相変わらず議論が上滑りしているようですな
昨晩たまたまテレビ東京のWBS(普段は見ないんですけど)を見たら「中小企業金融」というお題の特集らしきものをやっていたのでついつい腰を据えて(と言ってもほんのちょっとした時間ではすが)視聴しちゃいました。
「中小企業融資への新たな施策」という触れ込みでみずほ銀行さんの取り組みが紹介されていました。まぁその施策自体は結構なお話なのですけど、あたくしとしては「新しい取り組み」というのにはあまりにも羊頭狗肉という奴ではないかと思ってしまう次第でありました。
最初に紹介されていた事例はこんな感じです。
新たな中小企業融資(恐らく今金融庁からやれやれと五月蝿く言われている中小企業向け無担保ローンの推進)を融資現場20年以上といったベテラン行員が「電話営業」を行い、いざ融資となると行員の長い融資経験を活かして、顧客の気がつかなかった問題点までアドバイスをしたりして顧客企業からの評判も上々です。
と、ここまで見ている分には「ほほー、中々いい感じじゃん」と思っていたのですが、そのすぐ後にこの業務に従事するベテラン行員さんのインタビューでだいぶ脱力してしまいました。と申しますのも、この行員さんは電話営業のメリットとして「顧客訪問では一日に20件〜30件が限界ですが、電話営業なら一日100件の営業をする事も出来ます」と答えているのです。
一日100件の営業って、一日の実働時間を6時間としても1件あたりの電話時間が3分36秒にしかなりません。預金獲得やクレジットカードの勧誘ならともかく、そんなペースで営業かけるってまるで漫画の「ナニワ金融道」状態。どういう基準で電話をする相手をスクリーニングしているのか良く判りませんが、もし手当たり次第に電話して「やっぱり謝絶」って案件だらけになったら却って顧客に迷惑なのではないかと思うのでありました。仮にも銀行と名のつく所が行う融資なんですから一応事前にアタリをつけて営業するもんではないかと思うのでございますが。
と言うことで、この事例はただ単に年寄り行員にテレアポ絨毯爆撃をさせているのとどこがどう違うのか今一歩わからない(とは事情に詳しく無い人は思わないでしょうからそれはそれで結構なのかもしれませんが)事例であって、特に「これは画期的」というようなお話でもないでしょう。まぁテレアポ営業を大手銀行が融資業務でやるってのは画期的ですが。
次の事例はこんな感じで。
中小企業が船舶を買う(買って海運会社に傭船契約などで貸す)という融資について、その船舶の購入によってもたらされるキャッシュフローを算定して融資内容を決定します。その場合は顧客企業の信用力や船舶の担保価値だけを見るのではなく、船の貸出先の信用力や輸送する貨物の内容などといった点も見て融資内容の検討を行います。融資を受ける社長さんも「銀行が担保だけを見るという姿から変わっている」とインタビューで答えています。
はい。企業の設備投資資金の融資を行う時に、当該設備投資によって発生するキャッシュフローを考慮に入れないで融資する銀行員はいません(バブル時の馬鹿行員にはそういうのがいたかも知れませんが)。そんなのは設備資金融資を行う際の基本中の基本であります。何を今更って感じですね。ただ、あたくしが金貸し現場にいたときには「キャッシュフロー」などという高尚なお言葉はございませんで、「長期資金繰り」などという極めて泥臭い用語を用いて「これは収益返済(企業の収益によって返済原資が確保されている)が可能であるので回収懸念なし」などと申しておりましたが本質は同じ。正確には設備投資それ自体を独立させて考えるか、企業の総合的な収益力を加味して評価するかという違いが有るのですが。
そんな訳でして、これは「極めて伝統的かつ教科書的な設備資金融資の見本」という事例であります。やっている事は非常に立派なのですが、別に新たな画期的手法でも何でもありません。まぁ単に今流行の「キャッシュフローを重視した融資」ってのを番組のゲストである中川経済産業大臣さまに御覧頂きたかったのでしょうな。きっと。
日本興業銀行(なので同じみずほでもみずほCBさんですかね)といえば事業金融(大企業の調達手段が多様化するとともに担保金融もせっせとやっておられたようですが^^)。事業金融融資というのは基本的に担保金融の考えとは一線を画すものでして、米国かぶれの金融庁がやかましく言う「融資先のキャッシュフローを評価して云々」なんていうのは当たり前のお話であります。これを新手法といわれても何だかな〜ってところでしょうね。
念のために申し上げますが、みずほ銀行のこの2事例とも悪い話ではなくて、面白い取り組みであったり、銀行の融資として当然の姿勢であったりするのでございまして、これを殊更に取り上げるメディアが浅薄なのか、それともこういう事をわざわざ好事例扱いにするという茶番を演じさせる金融庁の金融行政がおかしいのか。という所でしょう。
蛇足ながら付け加えますと、金融庁が中小企業金融というか銀行のビジネスモデルとして推奨している「リレーショナルシップバンキング」の定義には「テレアポで新規開拓した顧客に無担保ローンを実行する」というのは甚だしく当てはまらないと思うのですが、如何なもんでしょうかね〜。
○岩田副総裁の講演
昨日は岩田副総裁の講演が行われました。で、その後には記者会見も行われていまして、情報ベンダーに出てきたフラッシュには昨日発表されていたGDPを受けてなんでしょうけれども「デフレ脱却がどうのこうの」などという威勢の良いお話もでていました。
債券相場は先物買戻しというか踏み上げというか、やたらめったら地合いが良かったので全然相手にしてませんでしたが、ちょっと強気なお話をしていたようにも見えました。
で、まぁその岩田副総裁の講演なのですが、「最近の金融経済情勢について」というお題でお話をしておりますが、この講演が少々あたくしには難解でござりまして一応読んだのですが一晩開けて読み直すとやっぱり難しいところがございます。
総裁の講演と副総裁の講演はわけのわからない双璧といった所で非常に困りますが本日には記者会見の要旨もアップされると思いますので、そちらとあわせて改めてご報告するかもしれません。
http://www.boj.or.jp/press/04/ko0402a.htm
・景気回復に対する中国・インドの役割
という章をたてて国内景気回復にアジア諸国の寄与があるというコメントをしております。日本の輸出増加の8割が中国(大陸+香港)向けであるという指摘から始まり中国の経済成長が日本の景気回復に寄与しているというお話をしております。
そこまでは良く判るのですが、その次に何度読んでも理解できない一文が。。。。。
『経済地理の観点から戦後アジアの発展を観察すると、日本の太平洋ベルト地帯の延長上で考えることが出来ます。札幌から始まり、天津、上海、香港、バンコック、シンガポール、ジャカルタに至る西太平洋に沿って高度の産業集積と生産性の上昇が生じています。札幌、上海、シンガポールの頭文字をとって「3つのS線上」に示される東アジアの都市・産業集積の延長上に、ITソフトウェア産業の勃興で注目されるインドのバンガロールもあると言ってもよいでしょう。私は、21世紀は、「アジア興隆の世紀」になると予想していますが、この興隆の経済基盤は、西太平洋岸からインド洋にかけて展開されつつある産業集積です。』
・・・・・・・・???何か景気の良さそうな話だというのは分かるのですが。
ちなみに、日本の今般の景気回復に関するリスクとして副総裁が指摘しているのは「地政学リスク(テロなど)」「ドル安円高」「米国経済の息切れ」「中国経済の過熱」の4点です。さすがに鳥インフルエンザについては、SARSが大した影響を与えなかった事もありましてそれほど懸念していないようです。
ところで、SARSの経済に関する悪影響を懸念して当座預金残高目標を引き上げてましたよね。あれは一体・・・・・・・(^^)。
・量的緩和の役割
昨年12月にも同趣旨の講演を行っておりまして、その時にもドラめもんでご紹介しておりますが、念のため再度ご紹介をば。
『私が、量的緩和政策について特に注目しておりますのは、将来にわたって安定的にマネタリー・ベースを増加させることによってデフレ脱却が可能になるメカニズムが存在するということです。』
基本的にリフレ派のお方ですので(しかも講演の中で世界経済をさしているのか日本経済をさしているのか不明なのですが「リフレーションへの転換」と堂々とお話しております)「デフレは貨幣的現象」って認識で議論が始まるようです。昨日ご紹介したFRBバーナンキ理事の講演本なんぞをお手軽参考文献にすると吉かと。
『政府は、中長期的に緩やかに本源的赤字をゼロにするという財政目標を採用しています。』
昨日ご紹介したバーナンキ氏の「財政規律を重視すべし」というお話と平仄をあわせているっつー事なのでしょうか。誰がどう考えても現在の政府の財政目標が絵に描いた餅だとしか思えないのですが。そんな前提でリフレ政策を大々的に採用(既に今の金融政策が事実上リフレ政策のような気がしますが)されたら結果としては財政インフレではないかと思いますが。
何と申しますか、「皇軍は精強無敵であり、我が兵士1名は他国の兵士の数名にも相当する戦争能力がある」などと言いながら前線の実情を理解しようともせずに無茶苦茶な作戦を展開していった参謀本部や軍司令部のお偉いさんの姿とダブって見えてくるのですが。
バーナンキ氏の主張するインフレターゲットというかリフレ政策を本当に実施する気があるのであれば、政府債務問題について正確な現状認識と厳しい財政健全化への縛りを設けることを同時に行う必要がありませんかね〜?
ちなみに、この後の論理が非常に訳がわからないので、引用するのは止めておきます。詳しくは講演要旨を御覧下さい(というか前回ドラめもんでご紹介した時も何が何だかわからないまま流してしまいました)。ちなみに「民間保有実質資産残高の増加が続くと人々が予想すると、過剰となる実質資産残高の増加を支出に振り向けるようになります。」というお話なんですけれども。
それはそれと致しまして、現状のデフレについては「川上から川下への価格上昇」が進行していく可能性があるという認識ですので、そのあたりが記者会見における「この調子が続けばデフレ脱却はいけるかもしれない」というような発言に繋がっているのではないかと思います。
・新たな金融システムの構築
ついに経済企画庁エコノミスト(岩田副総裁はもともと経済企画庁です)にまで言われるようになったかって感じですが、例によって宗主国様もとい米国の金融システムが大変に素晴らしく偉大なるものであり、日本もそれを導入すべきだという香りが非常に漂ってくる内容でございました。イマイチ精読できていないので、突っ込みもいれませんでこちらは省略。
ま、金融政策や金融行政の茶番ぶりは今に始まった事ではないのですが、益々茶番化が進行するので呆れる次第であります。そういえば夕刊紙をみてたらカネボウの企業再生っていきなり「掴み金モード」になるような報道がされているんですけどこちらも何時の間に宗旨変えしたんでしょ???という話もしたかったのですが、全然調べが進んでないのでこちらはまたいずれ。
2004/02/18
お題「リフレ派の主張に対する違和感」
英「エコノミスト」誌で「世界で最優秀の中央銀行総裁かもしれない」などと相変わらず海外で絶賛されて国内では日銀のお膝元に行けば行くほど酷評されるという不思議な日本銀行総裁様でございます。
FRB理事にバーナンキというお方がいらっしゃいますが、このお方の講演を訳出して解説、インタビューを加えてまとめた本が日本経済新聞社から「リフレと金融政策」という題で出版されています。(高橋洋一訳、吉次弘志解説・インタビュー:ISBN4-532-35075-1価格1900円)
一応読み終えたとはいえ、浅学非才でまだまだ勉強途上の段階で、極めて稚拙な疑問点しか出せないのですが、読後感第一弾という感じで。
○日銀総裁が海外で絶賛なのは当たり前ですな
本書に出てくる氏の講演は5本あるのですが、リフレ政策に関する提言として出てくるのが正に日銀がせっせと実行しているものとして現出しております。かつてあたくし(去年の4月くらいでしたっけ)「日本を新型兵器の実験場にしないで頂きたいものですな」というような駄文を書いたことがあるのですが、まさしく新型兵器の実験中。そりゃ海外からは評判高くなりますわな。
何で日本がわざわざ人柱になって新型兵器の実験を行わなければいけないのかは相変わらず理解に苦しみますし、だいたい株価は戻ってますけど、金融政策が株価の戻りに対してどのような波及効果を与えているのかも明確なパスは見出せていないと思うのですがねぇ。株価の戻りは「りそな救済」と「産業再生機構による救済」という一種の財政政策というか税金投入政策によるところが大きいと思いますが・・・・・。
○通貨価値毀損は良くて財政破綻は不可というのが現実に可能か?
リフレ派の皆様と同様に「不換紙幣システムの元では政府が紙幣をより多く発行する事によって調整インフレが可能である」という貨幣数量論をベースにした金融政策のお話をしております。
貨幣数量論自体はその通りなんですけど、政府部門が通貨供給を野放図に拡大するようなリスクをどうやって抑えるかという話になりますと「財政政策は国債の対GDP比率を妥当な水準に安定させておく必要があります。」としかも「どんなに厳しくても構いません」とまで言っております。
実際の政治の場でそんな規律がきっちり守れるというのは歴史的に見た場合どうなんでしょう?
いわゆる高橋財政でデフレ脱却には大成功しました(リフレ派の方はそれ故高橋財政への評価が非常に高いのですが)が、デフレ脱却に成功し、引締めと財政健全化へと転換しようとしたら軍部の猛反発を受けまして2・26事件に至る伏線になったというのは歴史の教訓。経済問題とは関係ないですけど、ナチス党が政権を取ったのは「最も民主的な憲法」が生きていたワイマールドイツでの出来事でもあります。
金融政策は何でもありで財政政策はきっちり縛るというのは非常に難しいお話だと思うのですが、その点は何かスルーしちゃっているんですよね〜。
というか日本では既に国債の対GDP比率が絶賛増大中なんですけど、その状況を放置して調整インフレ政策とやらを実施したらやはり大変なことになると思いますが。氏の講演を援用いたしますと・・・・・・・・・
○長期金利へのコミットメント
最近は氏もこの主張を取り下げているというお話を聞いたような気もするのですが、「長期財務省証券の金利操作で政策目的を達成できるのではないか」という仮説を述べておられます。
短期金利がゼロになってしまった場合の政策オプションとしてというお話で現在の日本銀行のやっているような「ゼロ金利へのコミットによって長期金利の下落誘導」というのと、「短期金利ではなくやや長い財務省証券(氏は2年物を例にあげています)の利回り上限を公表する」というのをあげております。
でも、結局金利下落が碌に効果を生んでいない(生んでいたらとっくの昔にデフレ脱却できていると思いますが、この低金利状態ですから)のは既に日本において実証済み。
まぁ日本経済と米国経済では根本的な構成要因に色々な違いがあるわけで、日本では効かなくても米国では効くかも知れませんけど、氏が「より好む政策」としている財務省証券の利回りコミットメントっていうのはありていに言えば金利統制みたいなものでして、市場関係者としてはどうかな〜と思ってしまいます。有効かも知れませんけどね、と市場関係者にあるまじき印象は有りますが。
もしかしたら最近急に長期金利の話を福井総裁が国会でするようになったのは「バーナンキ講演集を見た議員あたりが何か言い出す前にコメントしておくと受けが良いだろう」なんて思っていたりして。
○解説で喧嘩を売るのは止めましょう(-_-メ)
この本は解説が2本立てになっていて、その一本が各講演の解説でして、そちらの部分は訳者でもあります高橋洋一氏(財務省総合政策研究所研究員)によります。講演への解説部分はわかりやすく書いてあって大変結構なのですが、高橋氏の主張部分で日本におけるインフレ目標批判に対する解説(反論)がありまして、ここにくるといきなりこの書の格調が低くなってしまうのは残念です。
日本でのインフレ目標批判を列挙して「無効論タイプ」と「弊害論タイプ」に分けております。それはそのとおりですが、その後に「批判には互いに矛盾する無効論タイプと弊害論タイプがある」と文章のレトリックを駆使して如何にもインフレ目標批判者が支離滅裂であるかのような印象をあたえるような書き方をしているのはいただけません。
で、その後には「金利債券市場関係者の反対論が強い」として、その理由を「インフレ目標が採用されると名目長期金利が上昇(フィッシャー効果)し保有債券の評価損が生じると信じられているからであるといわれている」などとあたかも市場関係者が私利私欲の権化であるかのような印象を与えるような書き方をしております(-_-メ)。
せっかく喧嘩を売っていただきましたので格調低く同じレトリックを使用致しますと、「野放図に拡大した財政赤字縮減の政策努力を放棄する為にインフレ目標導入を提唱する存在があるともいわれている」とでも申し上げましょうか、財務省総合政策研究所研究員様。
日本におけるリフレ派の方々の著作(≠思いっきり研究的著作)っつーのを真面目に読むのはこれで2冊目なのですが、自説に対する批判が何でこう格調の低い(というかはっきり言って罵詈雑言)書き方になるのか実に理解に苦しみます。といっているあたくしも殆ど悪口雑言になっている場合が多いのですが、一応学究の徒なんですからもうちょっと格調高く批判して頂きたいのですけど。
念のため申し上げますと、バーナンキ氏の講演は格調の高い調子でありまして、その格調の高さというのは訳者でもある高橋氏の高い能力のお蔭でもあると思います。
とりあえず第一次読後感想ということで本日は簡単に。
2004/02/17
お題「見え見えの穴は塞いで欲しいものです」
昨日は日経平均の日中値幅が80円、連日2兆円台だった債券先物の出来高がいきなり今年初の1兆円割れという閑散ここに極まるという相場でしたが、如何お過ごしでしょうか?
相場に大したお話もないのでこの前のWI取引のお話続き。
13日のドラめもんで申し上げた「停止条件不成就問題」に関して悩むあたくし。
・やはり「取消」は如何なものかと
新発国債の売買というのはそれだけ独立して行われている訳ではなく、既発債やら先物の売買との絡みで業者はポジションを調整しながら投資家様の需要にお応えしているわけであります。
発行日前取引、即ち現在一般的に言われる「新発国債の売買」に関して何らかの事情で発行が延期になった場合は「停止条件の不成就」に該当するので約定が取消になるというのは、「新発国債」という存在していないもの(リオープン発行は別)の売買を現行の法体系で解釈すると実に正しい処理になります。
然しながら、上述の通り、既発債の一般売買と同様に売買されている新発国債の発行日前取引を「国債発行が延期になった場合にこの取引だけ法的に違うから取消になってしまう」という事になってしまうと、(発行が延期になるくらいだから何らかの大災厄が起きてモラトリアム状態になるんでしょ)ただでなくさえ混乱しているであろう債券売買取引がより一層混乱する事間違いなし。不測の大損害が発生する証券会社も出る事でしょうな。
・リオープンの場合も問題が
ここまでは先日もお話しましたが、実はリオープンの場合も問題が発生します。この場合は発行日前取引とは別の問題になりますが。
リオープン発行の国債が何らかの事情で発行延期あるいは中止になった場合は、そもそもリオープン発行というのが「既発国債の追加発行」であることから、何事も無かったかのように決済をすることになります。
しかし、当たり前ですが追加発行される新発国債を当てにして玉を繰り回しているわけでして、この場合発行が中止あるいは延期になった場合には強烈なスクイーズが発生してしまいます。
で、「そういうときにはフェイルをすれば良い」というのは実態をご存知ないお方の発言でして、現在の国債流通市場では相変わらず「フェイル不可」というスタンスを取っている投資家様が多うございますし、そもそも日本銀行が「フェイルは事故扱い」というスタンスを取っておられるという意識の低さ。
何せRTGS導入後に当初結構頻発したフェイル件数が、「最近になって減っている」のが制度定着の証拠だと喜んでみたり、あまつさえ「日銀のオペレーションでフェイルをしたら事故扱い」という状況になっているんですから。
あまり外国の証券決済事情には詳しくないのですが、あたくしの印象では海外での証券決済ではフェイルが日本よりも遥かに一般的な事象であるという認識なのですが、どうなんでしょうか?
・世の中に絶対はない筈ですが
とまぁそんな訳で、発行日前取引の法的性格を周知徹底するのは結構なのですが、御覧の通り法的定義が取引実態に合っていないという状態をそのままにしておくのは如何なものかと思う訳であります。
恐らく、財務省としては「入札のアナウンスを行ったら必ず入札を行うので、そのような事は有り得ない」「入札が終了し、募入決定通知を行った国債の発行が中止になったり遅延になったりする事は有り得ない」と言うのでしょうが、世の中に絶対というのが無いのはここ10年で散々見せつけられております(-_-メ)。
現在の国債決済制度っつーのは基本的に金利低下局面で導入されているものですし、入札の事前アナウンスなどといったものも同様。本格的な金利上昇局面になった時の試練という物は受けていない制度でありまして、あたくしの如き人間であっても指摘できるような穴は事前に塞いでおいて頂きたいものであります。
・あたくしの愚案
と、言うだけだと何ですので、あたくしがテキトーに考えた代案をば。
→国債の入札中止、発行中止といった事態になった場合は、民法の停止条件不成就を援用するのではなく、当事者代表ということで国債市場懇談会と国債投資家懇談会と財務省、証券業協会で協議して清算価格を決定して、その清算価格で反対売買して現物の授受は行わない。清算価格は直前の既発債の流通利回りから合理的かつ理論的に算定する。
→国債の発行が延期になる場合は延期になった発行日まで決済は繰延
リオープン債の発行が中止または延期になった場合のスクイーズ防止対策も必要でしょうな。今一歩思い浮かばない。。。。
まぁ先物出来高4000枚の昨日後場に呆然としながら考えていた妄想でありますので、かな〜り難点がありそうな代案ですが、「法的には取消だけどもあとは当事者間で何とかしろ」という無責任な扱いよりは遥かにマシだとは思いますが(^^)。
とここまで書いたら時間切れになってしまった。あたくしはやはり考え過ぎなんでしょうかねぇ??ゼロ金利から通算すればもう何年になるのでしょうか、超絶的低金利時代に慣れすぎて市場全体が一種の平和ボケになっているのではないかと思えるのですが、あたくしには・・・・・
2004/02/16
お題「金融政策に関する誤解だとあたくしは思いますが・・・・」
先週の木曜日に国債市場懇談会が実施されました。議事要旨を見る限りでは大した話は無かったようなのですが、今回もまた「え〜そうだっけ〜」と言いたくなるような「意見」が交換されておりました。同じような趣旨で実施されている国債投資家懇談会と比較すると、参加者が多いせいなのかもしれませんが、どうも出席者の皆さん「言いっぱなし」状態になっているのではなかろうかと思ってしまうわけであります。
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijisyousi/a160212.htm
いろいろな意見が出ておりまして、勿論ご尤もなお話もあるのですが、今回は「金融政策に関する理解」に関する2つの意見に関して突っ込みを入れてみます。
○国債買切オペはそう簡単に増えませんって
『福井日銀総裁が国会等において、追加的緩和政策の効果をして長期金利の低下について言及しているが、その背景について、マーケットでは次のように考えているのではないか。』
『すなわち、福井日銀総裁の発言の背景について、「今後も国債の大量発行が続く中、景気回復無しに金利が上昇する可能性がある。また、景気に回復に伴い、資金需要の逼迫により金利が上昇するなら、景気回復時においても、日銀の国債買切オペを増額する可能性がある。福井日銀総裁は長期金利にも言及することで、いわゆる「時間軸効果」を長くしているのではないか」という見方が出てきているのではないか。』
福井総裁になってからの日銀は「当座預金残高は威勢良く増額するけど、長期国債買切は増えない」というスタンスで一貫しております。これが渋々国債買切を増やしていた速水総裁時代との大きな違いであります。
金融緩和に関する説明はもはや論理破綻状態ですが、先日の記者会見でも福井総裁は長期国債買切に関して『国債の買切りオペについて、私が着任して以来一度も増やしていない。増やす必要がなかったし、増やさないことによって国債に対する信認を確保するということに非常に役に立っていると思う。この考え方は今後とも崩したくないと思っている。』とコメントしております。
このお方、割と何でもあり系の雰囲気ですが、どうもこのこの長期国債買切オペの増額問題に関しては「セントラルバンカーらしい一徹さ」を発揮しているようです。色々やっている「積極的に動く」政策は「国債買切オペの増額を行わない事によって国債に対する信認を確保する」という(本当にそうかいなという気もしますが・・・・・)事を守る為に放っている「犠打」なのではないかと勝手に総裁の心を忖度する今日この頃。
「積極的に動く」という印象につい「何でもやるでしょ」と思ってしまいますが、日銀プロパーの総裁の言動を見ておりますと、やはり日銀のDNAっつーのがあって、どこかで激しく意地っ張りな所があると思うんですけどね。この総裁様も(期待も込めてますが)。
○量的緩和から金利ターゲットに移行してやる事が同じ???
まぁ債券市場関係者ってのは長期「金利」の世界を仕事にしている割にはその金利のベースになっている短期金融市場に疎いお方が多いのですが、
『短期金融市場では、FBの発行残高が増加する結果、量的緩和政策の解除が困難になると見られていると思う。』
量的緩和政策の解除を行うと今のような無限介入が出来なくなるという見解はあたくしもそうですが、市場の機能低下で絶滅寸前の市場ウォッチャーの見解であって、因果関係が逆になっていると思いますが、それはともかくと致しまして。
『しかしながら、量的緩和から引締めに移る場合は、超低金利政策に移ると見るのが一般的であり、仮に無担保コールオーバーナイトを0.25%で誘導目標とした場合、ターム物にはFBの発行残高増による金利上昇圧力が掛かってくるが、無担保コールオーバーナイトを0.25%以下に抑え込むため、例えば量的緩和の時以上に資金を供給すれば、トータルの資金供給は増えるので、心配しなくても良いのではないか。』
最初の一文は仰るとおりです。もしかしたらコール金利0.10%への誘導だってあって然るべきかと思います。しかし最後の部分はちょっと酷い。
金利誘導政策を実施する際の基本は準備預金制度の利用。昔と違って超過準備を持つのに慣れてしまっているので、昔のような「常に準備預金の積み最終日には超過準備を全額吸収する」という事をしなくても短期金利がある程度の水準になってくれるかも知れませんが、今と同じような超絶的超過準備供給しまくり状態で「無担保コールオーバーナイト0.25%」っていうのは有り得ないお話です。
超過準備が30兆円もある状況であれば、資金の取り手は安い金利が呈示されるまでのんびりと構えていれば良いですし、誘導水準を達成するには資金の出し手全員に圧力でもかけて「おまいら0.25%以下で資金放出したら死刑」とでも言って、日銀のオペも入札方式ではなくて強制的に実施する昔懐かしい「日銀貸出(知っている人は年寄りです)」しかできませんな。それってただの統制経済なんですけど・・・・・・
量的緩和を解除して、金利ターゲットという本来の姿に戻った時に、経過措置的に一時的に「ゼロ金利政策」状態になる可能性はあると思いますが、その状態を恒常化させる事はまぁ考えずらいお話です。
この量的緩和政策というのは政策導入時に「量的緩和政策(=当座預金残高を政策誘導目標にする)というのは、過去に実施したゼロ金利政策(=金利をゼロにするが政策誘導目標)とは違います」と言って実施したものであります。量的緩和政策を終了させたあとに金利ターゲットを復活させたのに、やっていることが同じだという事になってしまえば、「量的緩和政策とゼロ金利政策は政策の枠組みが違います」と言っていた事がただの茶番になってしまう訳でして、それは幾ら何でも中央銀行として恥ずかしいというか、議論以前のお話になってしまうのではないかと思います。他に色々と茶番をやっているとはいえども・・・・・。
それより情けないのは、この意見に誰も突っ込まなかったと思われる(突っ込まれた場合それらしい「意見」が掲載される)ところでしょうか。金利のお仕事やっているんだからもうちょっと短期金融市場に対する理解があって然るべきだとは思うのですが・・・・・・・ま、皆様理解されてしまうとあたくしのメモの存在意義が無くなるのでそれはそれで困りますが(^^)。
こ〜ゆ〜突っ込みはやや揚げ足取りみたいであたくし的にはあまりやりたくないのですが、あまりにも気になったのと、「国債市場懇談会で出された意見」という事で、ある意味公的なものになっている事もありまして、あえて取り上げさせて頂きました。誰々だか知りませんが槍玉に挙げて大変恐縮至極でございますm(__)m。無力ディーラーのたわごとだと思って下さい。
では。
2004/02/13
お題「WI取引に関する徒然なる愚考」
昨日の債券相場はあっと驚くブルフラット。というか先物が碌に動かないのに先物よりも長い年限(まぁ10年あたりなのですが)の気配が動く動く。そんな中で一時はスクイーズ懸念まであった先物受渡際割安銘柄の227回債は業者間のベーシス取引で玉が出てきて(先週後半あたりから動きが怪しかったのですが)こちらは突如として気配が甘くなるというのもありまして、まぁ長期債は実に賑やかに動いてました。
忙中おのずから閑ありという訳でもないですが、そんな中で画面を見ながらつらつらと下らない事を考えていたので今朝はそんな与太話でも。
○発行日前取引の説明義務の謎
国債の入札前取引というのが正式に開始されるのが今月23日ということでして、最近はあちこちで取り上げられるようになりました。で、まぁ既に昨年7月31日付で国債の発行日前取引に関するガイドラインは出ておりまして、12月には証券業協会からFAQが送られてきておりましたな。ちなみにガイドラインはこちらです。
http://www.jsda.or.jp/html/saiken/wi/gline.html
国債の発行日前に行われる売買っつーのは当該債券が発行される事を条件としている売買ですので、所謂「停止条件付売買」にあたります。
で、今般突如公正慣習規則に追加条項が入って、「国債の発行日前取引が停止条件付売買であり、停止条件が不成就の場合(国債の発行が予定通り行われなかった場合ですな)の取扱に関して説明する義務がある」と言う事に相成りました。
入札前取引は新設されますが、入札結果判明以降の発行日前取引自体はとっくの昔にやっていたので今更説明ってのも何だかな〜とは思いますが、それは良いと致しまして、激しく理解に苦しむのはこの「説明義務」が何故か日本証券業協会の協会員どうしでの売買にまで課せられている事でございます。
形式的な問題で言えば、説明自体は一回すれば良い話なので別に大した問題ではないのですが、「協会員どうしでの売買」に説明義務を課すというのは理解に苦しむところでございますな。
協会員が顧客との売買を行う際に説明するのが必要だってぇ事になっているのであれば、協会員は当然説明義務になっている内容については周知しているのが協会員の義務です。また、この説明義務の本旨は「投資家に対して、取引の法的性格が既発債の一般売買と異なることを周知させる」という事の筈だとおもいます。そんなこと考えますと、協会員どうしでの売買において説明の義務が発生するというのはどうも不思議というか、本来の趣旨に合っていないというか。
まぁこの件に限らず一事が万事って奴なんですけれども、所謂「取引に関するルール」の中には、「何のためにそのルールを作ったんでしょうか」という趣旨を考えるとどうも理解に苦しむ形式的な部分があったり、巨大な抜け穴が空いていたりという所が散見されるんですよね。でも規則は規則ですんで、実にどうでも良いような形式違反(をしても良いとは全く思いませんが)が問題になったりする訳であります。肝心の投資家保護が出来ているのか疑問なことが一方で行われていたりするのにね。
○停止条件付売買なのは判りますが・・・・・・・
さて、今回のガイドラインによって明確になったのが国債の発行日前取引が「停止条件付売買」だという事です。具体的には国債の発行が中止されたり延期されたりした場合や、国債の入札が中止された場合は停止条件不成就ということで(リオープン発行の場合はちょっと扱いが違いますので、この表現は正確さに欠ける事を予めお断り致します)民法の規定をそのまま援用するとそれまでの約定が「取消」の扱いになります。
でも本当に「取消」扱いで良いのでしょうか??
物騒な例えですが、国債の発行日(払込日)当日にでも関東大震災を超えるような大災厄が発生して、どうしても当日中に決済が完了しないっつー可能性だってある訳で、この時に払込が数日日延べになるような場合にポジション上都合の悪い側が「停止条件不成就」を盾に取って約定取消を主張して来た場合どうする積りなんでしょうかね。
本来、こういう場合は「強制解け合い(落札玉の問題があるので解け合いは難しいでしょうが)」あるいは「強制日延べ」を行うのが通常の運用だと思うんですけれども、証券業協会のガイドラインは「売買当事者間において、別途合意する事を妨げるものではない」としかありません。
このような混乱時においてこそ、中立な立場にある証券業協会のような組織が混乱収拾に動くのが本来のあり方ではないかと思うのですが、「勝手に当事者間で何とかしろ」ってのは職務放棄ではないかと思う訳ですよ。きつい言い方かもしれませんが。
国債の入札が中止されるようなケースもまた然り。1週間前に「やる」と言っていた国債の入札が中止される場合は相場がとんでもなく暴落している時でしょう。
当然買い方は大喜びして約定取消を主張するでしょう。一方の売り方ですが、全ての売り玉を入札での落札を前提に裸でショートしていれば期待収益が消滅するだけでしょうが、当日の売り玉ならともかく1週間前から涼しい顔して裸でショートしっぱなしなんて出来る訳ありませんから、既発債あるいは先物なんかで買いヘッジをしている(で、入札直前に買いヘッジを解除して入札でカバーすれば良い訳です)でしょうから、約定取消を食らったら反対側のロングポジションだけ残ってしまう訳でございまして、まぁ即死でしょうな。
法律上は「停止条件不成就」であり、「取消あるいは当事者間で何とかしろ」と言う事なのでしょうが、新株発行あるいは売り出しのような場合と同じような扱いにしておいて良いのかは甚だ疑問であります。何せ10年債で1兆9000億円の発行がある訳でして、その影響たるや甚大。時価総額数十億の新株発行と同一に論ずるのは如何なものかと思いますがね。
常にWI取引で買い方に回って直近発行債券をショートしておけば、なんかの拍子に大儲けって事ですか。まぁ目先直ぐに起きはしないでしょうが、世の中何が起こるか判りません。
あたくしが小僧の頃には国債の入札って大体の予定は何となく判っていましたが、正式なアナウンスは前日のヒアリングにならないと判らないという時代だったのですが、ある時に「20年債の入札をやるタイミングなんだけど、相場環境が極悪だから6年債にしますか。え?6年債も駄目?じゃあ2年債の入札を先にやるか」なんて事があっていきなり2.6%クーポンの2年債入札が行われた事があります。
当然のように入札はボロボロで2.6%クーポンなのに最低落札価格における利回りが2.7%になった上に、翌日には中期債に投げが入って安値2.8%をマークするという実に涙な相場になりました。この時は一人で国債窓販玉の管理をしていたから鮮明に覚えてますよ。恐ろしかったな〜。
ま、そんな事でございまして、民法の規定を安易に援用して単純に「取消扱い」としてしまう辺りに、短期金利が動かない時代に慣れ親しみすぎているなぁという物を感じてしまうあたくしでありました。
2004/02/12
お題「ボディーブロー」
○不思議な入札前後の動き
火曜日の5年国債入札。前場はやたらと5年ゾーンが重そうにして
いまして、前場の引け段階では既発の5年33回債を初めとして
やたらめったらオファーがありました。新発債と同償還になる33回
債で0.48%に500億以上の売り注文が置いてありました。
しかし、毎度お馴染みのパターンと化している動きなので、既に
プライストークの始まった段階から「100円9銭(0.48%)は
入るんですかね〜」という状態になっておりまして、結果はプライス
トークよりもやや強めの100円11銭(0.476%)の平均落札
で最低落札は10銭(0.478%)と言うことでして、世の中もう
1銭上に結構な応札があったと言うものになりました。オファーサイ
ドの向こう側を買いに行ったのね。
さて、こういう入札になった場合というのは「入札絶好調で相場大爆発」
と言うのが普通で、ごく稀に「入札で梯子を外されてヘッジ売り出まくり」
になると言うのが今までの相場パターンでございました。前回の10年や
20年入札でも一応入札を機にフラットニング(直ぐに戻り売りでスティ
ープニングしちゃいましたが)していたのですが・・・・・・
今回の入札では落札結果発表後に新発債が(入札自体は堅調だったの
にもかかわらず)ショートカバーらしき買いが入るでもなく、ヘッジ
売りが目だって出るでもなく、債券先物は少々値動きをしていたもの
の、現物債の気配は見事な膠着状態になってしまいました。
まぁ店頭で新発債が売れていない(あるいは売れていても既発の中期債
に売りがきているのかも知れませんが)のですから、先物にヘッジ売りが
入っても良さそうなものなのですが、先日来皆様指摘しているように先物
は売りにくい。ど〜せ0.5%まで下がれば売れるのだから、下がりだして
から考えれば良いっすね。ってな感じですので益々誰も先物ヘッジを行わ
ないという状況に陥っております。不思議な相場です。
○背景は何でしょう
昨年11月に初めて「全部の入札揃い踏み」というのがありまして、
その時は(ちょうど総選挙もありましたし)やたらと「需給悪化」を
警戒して事前にヘッジ売りのような動きになって債券相場はやたらと
弱含みになりました。
結果は全ての入札をそこそこ順調に消化し、入札後の需給も悪くはないと
いうものになりまして、「何だ、大丈夫じゃん」と言う事になりまして
その後は「入札のイベントリスク」というような言い方もされなくなって
参りました。
しかし、冷静に考え直してみると、需給というのは入札ラッシュが恒常化
してきてから次第に悪化していくものでして、11月以降の超長期国債
増発がボディーブローのように効いて来ているということなのでしょう
(相場水準事態は上昇していますから、世の中全体で売りが多い訳では
なく、業者の現物ポジションが重くなっているだけなのではありますが)
かね。
まぁどこかで相場を下げて調整するしかないとは思うのですが、変な所で
パッシブ系の買いが入っちゃうので中途半端な動きになっちゃうんですよね。
○で、気になるのは先物
先物の建玉は相変わらず高水準。火曜日は後場寄り付きに2500億ほどの
クロスがはいっていまして、建玉も3400億ほど落ちていましたがそれでも
7兆円という建玉水準。おまけに先物の値幅が碌に無い相場なのに先物オプ
ションのボラティリティは不思議と下がりにくく、おまけに138円50銭
などの先物オプションの建て玉が妙に高水準。
先物の妙な底堅さには銀行ALM系のスワップヘッジの戻し(固定金利受け)
も一役買っているというお話だそうですので、逆にいえば債券相場が下落する
と、またALMの自爆テロじゃなかったヘッジが入る可能性も否定できず、
先物オプションの妙な動向と重ね合わせるとどうも気になる所ではあります。
だいたい債券先物の建玉だって両建てにしておけばたいしたコストも掛から
ずに高水準の建玉水準を演出できるわけでして、このまま現物債のポジションが
重い状態が続いた場合にはどこかで先物中心に相場が叩き落される展開が
あっても然るべきかな〜とは思って少々警戒しております。
しかし何ですな。「消化に問題はない」って言ったらまたも消化に時間のかかり
そうな展開になっている5年国債。困ったものですな>自分
2004/02/10
お題「相場雑談その他」
○益々支離滅裂になる相場
相変わらず昨日も債券先物独歩高。先物の値動きだけ見ていますと債券相場はじり高の堅調相場なのですが、現物の動きを見ていると全然違う相場が見えてくるという傾向(以前にも指摘しましたが)に益々拍車が掛かっております。
10年入札の翌日の前場に「入札好調でフラットニング」をやってしまい、ポートフォリオの中で半年(高値つかみ玉に加えて6月以降の暴落でナンピン買いをしたロークーポン物ですね)塩漬けになっていた漬物債券が息を吹き返すきっかけになってしまったのが不幸の始まりといったところでしょう。
相場が上がれば売りが来まして、追いかけて買いが来なければヘッジ売りが嵩んで投資家様の買い水準に達するまで下がるものなのですが、変なタイミングでパッシブ系の買いが入ってみたり、株式市場で平均株価が妙に下がってみたりと言うことで先物がとにかく下がりにくい。入札の翌日と昨日の引け値を比較するとまぁ実に悲しいものを感じます。
2/4
2/9 変化
債券先物3月限 139.45 139.78 +33銭
20年65回債 1.810%
1.850% +0.04%
10年257回債 1.280% 1.275% ▲0.005%
5年33回債 0.480%
0.480% 変わらず
2年217回債 0.065% 0.060%
▲0.005%
先物(=7年)が買われて20年が売られて、その他は変わらずというそんな変な事が起きて良いのでしょうかと言いたくなるような状況でごさいます。
引けだけ見ていても斯くの如しなんですけれども、日中の動きたるやもっと支離滅裂でして、先物VS10年のイールドスプレッド(という言い方は普通しませんか、ベーシスとも言いますが)が日中の先物の値幅並みに上下するという状態になっておりまして、各年限ごとに勝手に動いているという感の強い債券市場になっております。
まぁ冷静に考えれば、20年が1.8%〜1.9%のレンジ内で推移しており、10年と5年は1.3%と0.5%というそれぞれの節目を突破したもののヤレヤレの戻り待ち売りだらけ。2年新発債は需給がタイトでしっかりだけども、他の銘柄は同じく売りが出ているので需給極悪と言った状況になっているのが現状であります。
今までのパターンであれば、少々下落をすれば投資家様のお買上レベルに到達するので、業者の在庫も何とか救われるのですが、延々と戻り売りが出ながら相場水準がじりじりと切り上がっているので、ちょっとの押しでは皆様お買上にならなさそうです。困ったものですね。
誰かがヤケクソで10年あたりを一気に買い上げてくれれば相場の風景が変わるかも知れませんが、まぁよく考えれば円高進行も一服してますし、平均株価が軟調と言っても別に1万円割る事もなさそう(ちょっとだけ個人的には不安に思ってますが)ですし、長期債をヤケクソで買うのは言い訳がつきにくいでしょうな。
と言うことで、先物VS長期債という意味では、相場の上昇時においては相変わらずロークーポン漬物が出てくるので長期債は重いでしょうが、上記のようにちんたら上げつづけた相場ですんで、ちょっと下がったからと言ってそう簡単に投資家様の買いが入るとも思えません(パッシブの平準買いは除く)です。総合しますと相場上昇時も下落時も、当面は先物VS長期債でのフラットニングは期待薄でしょうと言うのが結論。
#そういう結論を出すと外すのですけど(自爆)
○5年国債入札
そんな状況で5年国債の入札を迎えるのですが、これだけ散々ヤレヤレ売りがでている相場ですので、その資金の一時退避場所のニーズはある筈。今回の5年債は大変素晴らしい事にリオープンにならない可能性が高い(今日暴落すれば話は別ですが)ので、皆様のポートフォリオの中での「空き銘柄」になる訳でございます。おまけに中期債と言うことですから、絶好の資金退避債券として利用されるでしょう。
とまぁそんな事を考え、5年債のレンジが0.45%〜0.55%という状況で昨日のレベルがまぁ真ん中に近い(やや高いが)所にあるので、手も出し易いかと思います。まぁ消化に問題はないでしょうな。
と楽観的なことを言ってますが、昨日の日本相互証券の5年33回債引値がどう考えても完璧なオファーサイドになっている所が気になる所だったりもしております。入札前日なのにわざわざ強い方に引け値を設定すると言うのは、業者のポジションがそれだけしんどいことを意味しているとも言えますので。
資金退避債券、実は2年債がそれだと言う説もありますしね。
○相場とは全く関係がないのですが、あまりにも気になるので
本来ドラめもんネタではなくて、メールに書くマクラに書くネタなのですが、あまりにも気になってしまうので書いてしまう次第。
http://www.be.asahi.com/20040207/W11/0019.html
ニュースのチェックをしているうちに偶々拾ったのですが、朝日新聞の土曜日の暮らしと経済みたいなコーナーにりそなHDの細谷会長ご登場。随分精神論の多い方だな〜と思うのですがそれは兎も角。
この会長さま故事成語の「先憂後楽」を思いっきり誤用していて、朝日新聞社もそのままスルーして掲載しております。「先憂後楽」というのは君主(人の上に立つ物)は人々よりも先に世を憂い、人々が楽しんだ後に楽しむべしというような君主の心得を説く言葉(何かあたくしの説明も下手下手ですね^^)なんですが。ちなみに「後楽園」というのがありますが、この「先憂後楽」から取ってる訳ですな。
「先に苦しいことをやり遂げ、あとで楽になろう」というのはもしかしたら中学入試レベルではないかと思うくらい(某進学塾の電車内広告で出てきそうという意味です。本当はいつ勉強する言葉なのかな?)の超有名な誤用で、ライター(記者)やっていれば普通気が付くし、ライターをスルーしても校閲が気がつかなければいけない問題でしょう。どうなってるんだ朝日新聞(嫌がらせの為にわざとおとぼけでスルーさせている可能性はありますが、基本的に記事の書き方が提灯系ですので、スルーしたのは素でやったと思われます)。
それ以前の問題として、こういう古典の誤用っつーのは(あたくしも時々やらかしそうになりますが)基礎的教養を問われるお話なんで、下手に使わないで自分の言葉で話した方が良いのではないかと思いますがね〜。
自分の言葉で話す事が出来ないから、そこらのお手軽な「中国の古典を経営に生かしましょう」みたいな本を齧ったフレーズを出すんでしょうな。他国への侵攻を非とした墨子(ちなみに墨子は防衛戦争は否定しません、念のため)の言葉を事もあろうにイラク派兵に際して引用しちゃう人が国家の最高責任者というお国なんで仕方がないのかも知れませんが。
水曜が休みだと楽ですな。問題は入札の翌日が休みだってことですが(汗)。
2004/02/09
お題「例によって日銀総裁記者会見」
○政策委員会の討議事項が無いんですか??
先日の金融政策決定会合では、何の政策変更もなかったのですが、物価連動国債の適格担保化と国債現先オペでのマージンコールに対する金銭担保の導入というのが発表されておりました。
正直申し上げてこの程度の技術的な話をわざわざ政策委員会で審議するような事項なのか疑問に思う訳です。金融政策決定会合で話をする事がないので、こんな話でもしないと間が持たないのか、はたまたパフォーマンス大好きな今の日銀ですんで、とにかく「何か動いている」というイメージを作りたくてやっているのか。まぁどちらにしても「おまいらは諸葛孔明か」と突っ込みたくなってしまう状況ではあります。
そんな訳で、ますます論理破綻の金融政策で、真面目にチェックするのが馬鹿馬鹿しくなって参りますが、それにもめげずに総裁定例会見チェックをするのでありました。
http://www.boj.or.jp/press/04/kk0402a.htm
○景気認識はやたらと強気
例によって景気に関するコメントはやたら強気な点が多いわけであります。
『景気は引き続き緩やかに回復を続けており、今後もそのように動くであろうということである。個々の指標で見ると、輸出・生産が、少なくとも年末くらいまではかなり目立って増加している。雇用の面でも、有効求人倍率とか失業率で見る限り、比較的良い数字が出ている感じがある。』
『今まで出たデータからみて、10〜12月については、おそらくGDP統計についても比較的高めの数字が出ると思うが、経済というものは、予想よりも高めの動きが出た場合は、その後に若干の調整をしていくことがあるので、今申し上げたとおり、10〜12月、1〜3月と引き伸ばして、実際によく確認しながら、これからも適切な対応をしていきたい。』
このコメントは会見の冒頭(要旨によれば)質疑での景気認識に関するものであります。景気認識が強気なのもそうなのですが、物価についても「デフレ払拭近し」的な発言をしております。会見の内容が報道されている時にはこのコメント出てなかったように思えますが。
『物価については、生鮮食料品を除くコアの消費者物価指数でみると極めて微細な一進一退の動きで、結局ゼロ%でここ数か月横這っている。その限りでは分水嶺を歩いているということで、良い傾向にターン(転換)して欲しいが、これも今後の推移を少し見ないと軌道がよくわからない面が残っている。』
と、まぁこんなコメントしたらまたも「日銀の梯子外し」が懸念される所ではございます。こんなコメントを昨年の絶賛暴落相場で言ったら焼き討ちモノでございますが、現在の日銀総裁様は、先日の国会答弁でもこの記者会見の後半でも言っているのですが、金融緩和政策に関して、次第に「口先介入」が拡大していくような状況になっております。
先日も「信じるものは足をすくわれる」などとふざけたお題で申し上げましたが、景気認識がサービスフレーズなのか、口先介入がサービスフレーズなのか良く判りませんが、この人の発言を過度に信用するのは如何なものかと思う訳です。今までが今までですので。
○金融政策口先介入
信じるものは掬われる(^^)。金融政策をとにかく緩和のままにしておくという御託を今回もまた述べておりますが、金利水準にも国会答弁と同じく口先介入をおっぱじめております。
『経済、金融の局面は、当然のことながら刻々と変わっていく。普通の経済状況であれば、局面変化に応じて金融政策のスタンスは微妙に修正されていくのが普通の姿である。今のように景気が少しでも良い方向に向かえば、それに沿って日本銀行も金融政策の緩和スタンスを微妙に修正していくのが普通の姿であるが、我々は普通の姿をとらないということを繰り返し明確に言っている。局面変化があっても、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまでは、頑固に今の姿勢を続ける。』
まぁ散々悪態を今までついていて何ですが、総裁も現在の姿が通常のものではないという御認識でいる事は判りました。非常時なので非常の事をしていると言う事なのかとは思いますが、それにしても論理破綻した金融政策というのも何なんでしょうかな。ま、いいけど。
『局面の変化があっても、企業行動をフルに金融面からサポートしていくことにより効果を出していくとともに、短期および比較的長期の金利を極力低いところで安定させ、先行きについても、低位安定が確保されるであろうという企業の期待にきちんと応えていく。』
ということで、国会答弁と同じ話ですが、金利に関して具体的数字は述べてはいないものの、水準に関して口先介入をするようになって来ましたな。他にやる事が無いから口先介入をしているのではないかと思われる節がありますが、あまり変な口先介入するのは如何なものかと。
口先介入はその場では一時的に効果を発揮するかも知れませんが、結局はあとから実弾(あるいは政策)を打ち込まないと空しいものになるでしょう。そうなりますと最終的には口先介入をやったお方の言動に対する信認が失われる事に繋がるんですけど、そこまで考えてやっているのかしらん?
○金融政策の説明責任
もはや申し上げる事もございませんが、当座預金残高の3兆円引き上げには、『当座預金残高目標引き上げ分の3兆円という額についての機械的な計算根拠はない。』と涙の出るようなお話がされておりました。まぁこの前も同じ事を言ってましたので、もはや驚くに値しないのですが。
で、それはまぁ良いと致しまして、国債買切りオペに関しての誘導質問なのか抜け作な質問なのか良く判りませんが、『量的緩和拡大で引き上げている長期国債買入額が累増して買入残高が日銀券ルールを超える場合どうしますか』という質問に対して、総裁はこう答えております。
『国債の買切りオペについて、私が着任して以来一度も増やしていない。増やす必要がなかったし、増やさないことによって国債に対する信認を確保するということに非常に役に立っていると思う。この考え方は今後とも崩したくないと思っている。』
まぁこれだけは守りたいと言うことなのでしょうか。日本銀行にとっての悪夢国債直接引受だけは避けたいと言うことなのでしょうが、結局短期国債の買入は増えている(短期国債は直ぐに償還になるものであるから金融調節の世界だと言う理屈になっております)ので、それも如何なものかとは思います。
まぁ深く突っ込むのはFBの引受問題との比較とかをしないといけないので、別の機会にしようかと思います。
○銀行経営問題に関してのコメントは相変わらず金融庁と同じで・・・・
金融政策と直接関係無いのですが、中小企業融資において「キャッシュフローを見て融資する」という動きが起きるのが望ましい姿であるといった、金融庁と同じく激しく現実を無視したお話をしておられます。まぁ金融庁がそう言っているのですから仕方が無いかも知れませんが。
『中小企業の世界でも既にキャッシュ・フローという言葉は、外国の言葉ではもうなくなっていて、自分たちのビジネスについて、将来の収益性を数字の上で予測し、それに対してどの程度リスクがあるかという感覚の掴み方も、かなり広範囲に始まっている。』
将来の資金繰りを数字の上で予測するのは昔からやっている話ですが、収益性でございますか。まぁ株式公開でも目指すというなら判らんでもないですが・・・・
『また、そういう条件が整っていけば、金融機関のほうでも新しい審査能力が身に付いてくる。担保ということを頭の中に真っ先に思い浮かべるというよりは、キャッシュ・フローをどう読むか、企業自身の見方と、自分達の見方とは一体どう違うのか──リスクの評価についても同じであるが──、その辺のすり合わせがもう健全に始まっているということもあるので、一概に悲観する必要はないと思う。』
今の制度下において、税務上合理的に中小零細企業が行動すると、企業に内部留保を行うよりは、代表者個人(と家族)に流出させた方が有利。よってまぁ普通の中小零細企業は揃いも揃って過小資本。そんな過小資本かつ社外流出の多い企業に対して、まともにキャッシュフローを重視して融資したら融資謝絶だらけになってしまうと思いますがね。
どうも金融庁あんど日銀は中小企業というのは将来株式公開を目指すべく日々成長にいそしんでいるものだと勘違いしているのではないかと思ってしまいますな。
では。
2004/02/06
お題「金融経済月報/その他」
○金融経済月報
昨日の金融政策決定会合はさすがに昨日の今日(ではないが)で再度何かやるという事もありませんで、全員一致で現状維持と相成りました。しかし「何をやるのかわからない日銀」という評価が次第に定着しつつある昨今ですので、直前まで「長期国債の買入増があるのではないか」といった観測もあったようです。
ちなみに長期国債買入増に関して決定会合後の記者会見での総裁コメントは(時事通信報道によりますと)「長期国債買入の無闇な拡大は国債への信認を失わせる」とまぁその通りなのですが、その他でなんでもあり政策をやっておいて何を今更というものでした。
それは兎も角として、昨日の金融政策決定会合では金融経済月報の2月分が決定され、基本的見解が公表されました。この金融経済月報なんですが、当然というか恐ろしいというか、1月とまるまる同じといっても差し支えない内容。まぁ前回が1月20日で、そこから2週間しか経っていないので当たり前といえば当たり前です。
1月22日のドラめもんで「1月の金融経済月報は12月とまるで同じですな〜」と申し上げましたが、2月の月報もまたまるっきり同じ状態。相違点は実質的には1箇所だけです。
経済の現状認識にあたる部分で1月までは『輸出は増加しており』と言っていたのですが、今月分は『輸出はこのところ大幅に増加しており』となっているところです。
基本的に輸出主導による景気回復という話ですので、先ほどは「まるで同じ」と申し上げましたが、この「大幅増加」という所は微妙な表現ながら「また判断前進」という事なのかもしれませんので、一応注意しておいた方がよいのかもしれませんね。
その他微妙に表現を変えているのが金融情勢に関する部分でして、マネーサプライにも関連する銀行融資のところに関してどういう意図かよくわかりませんが表現が微妙に変わっています。1月分では『民間銀行貸出は減少幅が僅かながら縮小してきている。』という表現でしたが、今月分は『民間の資金需要は減少テンポが幾分緩やかになってきている。』となっております。
「何だ、同じじゃないか」と言われそうですが、この手の文書で表現が変わる事にはそれなりの意味がある筈でして(と勝手に言ってますが)、この表現変化は「主語が違ってますな」という所にあるかと言う事で。つまり、前月は「銀行貸出の減少」という現象面への言及であった部分を「民間の資金需要の減少」という表現で、「銀行貸出の減少は銀行によるいわゆる貸し渋りが原因なのではなく、民間の資金需要が減少していることが原因である」と言いたかったのではないかと勝手に解釈しております。
今年も金融庁による大手銀行への特別検査(毎年やるのに何で特別検査なのかよくわからんですが)が行われます。特別検査は大口債務者の債務者区分に関するものですので、中小企業貸出目標の話は関係ないのですが、これもまた「銀行貸出が伸びないのがケシカラン」みたいな理不尽なる批判を受けている大手銀行への援護射撃を意識しているのではないかと思う訳です。考えすぎかな??
○ますます変な先物
連日の先物独歩高。先物がやたらと強い理由としては、現物債に戻り待ちのヤレヤレ売りが出ている事に加えて、上を買いに行く投資家さんの動きが乏しく、とは言っても下を叩いて売る投資家さんもいないので、売っても相場を取れない。というややこしい状況が背景にある所までは理解可能ではあります。しかし現物債がやたらと重いのに先物は連日じりじり上昇(ここ2日は加速しつつありますが)するというのは、株安が背景にあるにせよやややり過ぎの感もいたします。
そんな債券先物ですが、一昨日には久し振り(殆ど1ヶ月ぶりだと思います。実は一日だけ手元の記録が欠落してるもので、汗)に先物の建玉残高が減少しておりましたが、昨日はまたまた建玉残高が増加して、速報ベースで7兆2131億円となっております。イカサマ両建てもあるとは思いますが、それに致しましても「ようやるわ」という感じであります。
で、それはそれと致しましてもっと驚きなのが期先の6月限の建玉でございまして、こちらは昨日何と前日比545億円減少して、速報ベースでは3182億円となっております。
この時期、期先限月には通常の板気配は入っていませんで、限月間スプレッドを利用した取引が行われます。で、まぁ期先限月単独での普通のアウトライト取引が殆ど出来ないので、建玉は基本的にはロールオーバーの分と言うことになる筈です。そんな訳でして、こんな時期にいきなり期先限月の建玉が減少するという事は通常起きないのですが・・・・・・
今回に関しては(以前から皆さんが指摘されておりますが)限月感スプレッドの売買が早い時期から妙に活発に売買されておりますし、どうも期先を絡めているのかチーペストを絡めているのか良く判りませんが、色々と先物で策謀をめぐらせている人がいるようですな。
そんな事も気になりますので、中々債券先物のヘッジ売りがやりにくいという認識が広がっております。よって、本日のように外部環境的にちょっと売られそうで、おまけに週末ときているような時には思わぬポジション調整に注意が必要かもしれませんな。
それでは。
2004/02/05
お題「勝敗不明/説明責任というもの」
今日もまた小ネタ2本と言う感じです。
○強いには強いのでしょうが何だかわからん
昨日の債券相場、「また外れか!」ってな感じで膠着ではなくさっくりと上昇してしまいました。われながら情けない・・・・・
まぁ債券市場は全体で言えば上昇。債券先物の値動きだけ見ておりますと「下値を切り上げながらじりじりと上昇」というように見えるのですが、イールドカーブという観点で見ますと連日激しく乱高下という感じであります。昨日もまた日中の動きが結構強烈でありました。
昨日は朝一番から10年、20年ゾーンが引っ張って相場上昇という絵に描いたようなブルフラット。ところが後場途中からいきなり長期ゾーンが失速してしまいまして、債券先物が139円35銭〜40銭で膠着している間に見る見る10年ゾーンが弱くなりました。相変わらず先物と連動しない現物(イールドカーブの形状が変わっているのだから当然ですが)の動きはマーケットメーカーとしてはしびれる相場の一言に尽きます。
そんな訳で、昨日の相場は「10年債が最初強かった(=買われた)けど終わってみれば弱い(=売られた)」という事ですんで、あまり雰囲気が宜しくはありません。20年ゾーンなどの超長期ゾーンが堅調で、相変わらず先物が強く、とりあえず相場全体は上昇しているので、強いには強いのでしょうが、何ともいえない所です。
入札のあった10年ゾーンだけについて言えば「投資家さんの買いが来たので調子に乗って(より儲けようとして)気配を強くしたら戻り待ちの売りを食らってとほほのほ」という感じだったのでしょう。過去の不良在庫である「戻り待ちのロークーポン債券在庫処分市」は1.3%割れ水準から急速に多くなってきた印象です。
さて、本日はどうなるのでしょうか?まぁ今日も強いのではないかと曲がりが入神の域に近づきつつあるあたくしは正直に思うのでありました。まぁ相場観外しても儲けりゃ良いのですが、ディーラーは。
○説明責任というもの
急に精神的なお題になってしまいますが、筋の通らない事が嫌いという三十路に入ってはや○年にして未だオトナになれないあたくしのぼやきであります。
一昨日の一部新聞報道では「財務省のスワップ取引」やら5年国債連動の変動利付国債発行などといった国債管理政策に関する観測記事なのかリークなのかわからない(いつもの事ですが)記事が出ておりました。本職の方々が昨日のテーマにしてレポートを出しておられたので御覧になったと存じますが。
で、まぁこの「財務省のスワップ取引」をどう使うのかという事に関して本職のみなさまが分析されていました。総合すると結論は「変動利付国債(15年ものとか個人向け)の変動利払い部分に対してスワップ取引を行うのが妥当な線ではないか」という感じだったと思います。
で、皆様が一致するのは「長期債が発行できないときに短期債を発行しながらスワップを活用して長期債発行の経済効果が得られるという論点が完全に無意味だ」という事であります。まぁあたくしも何度かもうアフォかヴァカかって悪態をついておりますが。
財務省的には公式にはスワップ取引の活用を具体的にどうするというお話はしていないと記憶しておりますが、たしかだいぶ前に国会では具体例の一つとして「長期債発行の代替でスワップ活用」というような話があったと思います。
しかし「スワップ取引によって長期債発行の代替」というのは皆さん指摘しているように、ちょっとでも金利の話を理解できる方であれば明らかに指摘できるレベルで論理破綻が生じている訳でして、幾ら説明を単純化させる為とはいえ、その説明は如何なものかと思う訳でございます。
「現実性は無いが対外的には説明しやすい」スキームであるという方もおられるようですが、明確な論理破綻をかなり判り易く指摘できるような仕組みを使って対外説明をするというのは幾ら何でも・・・・・・説明をすべき相手を愚弄している行為ではないかと思うんですけどね。
ま、説明責任という意味では政策が見事に論理破綻しており、今やまともに説明しようという雰囲気のない現状の日銀もそうですし、それを言い出すと帰着されるのは現政権という事になるんで、まぁこのご時世如何なものかと思う訳であります。
そういえば本日は金融政策決定会合の2日目です。この前意味不明の金融緩和と、誰かさんの顔を立てるためにやっているとしかいいようのない資産担保証券買入オペの買入基準骨抜きという凄まじい「論理崩壊政策」を実施したので、今回は何もないとは思います。思いますけど、先日の国会答弁でもありますように「何をしだすかわからない」という恐ろしさが今の日銀(というか日銀総裁)にはありますので、何が起きても驚かないように♪・・・・・って何なんだこの中央銀行は。
というわけで本日は甚だ簡単でしたがこんな所で。
2004/02/04
お題「今日が分岐点かも/田谷審議委員」
○10年国債入札を受けて
昨日の10年国債入札、今まで散々10年ゾーンを弱くしてきた反動もございまして、前場から10年ゾーンに買いが入るという久々に見る展開になりました。突如株価指数先物に仕掛けのような売りが出て10500円を突っかけにいったのもサポートという感じでした。
ま、入札結果自体は前場引け時点でのオファーサイドを買いに行くような感じで、まぁ普通と言えば普通。落札状況もまぁ穏当な結果で、どこかが派手に行ったというような感じでもなく、ニーズがあるのかショートカバーなのかわかりませんが。
で、とりあえず10年債は強くなったのですが、その間に5年債には売りが嵩んでおり、両方の綱引きによって(?)先物は前日比1銭高。債券先物だけを見ていますと連日じり高なのですが、10年や5年の水準は上がったり下がったりという相場が続いております。
本日は、その入札と言うとりあえずでかいイベントが終わり、米債が上昇しておりまして、何となく強くなりそうな相場。今まで10年の1.3%割れを何回もやって、「今度こそ買いか」と思わせておいて「また戻り売りか!」という結果が続いておりましたが、今回はどうなるのでしょう。入札直後の相場で戻り売りモードにならなければ「行けるかもしれない」と言う感じになるのですが・・・・・・・・
上を買う人が現れないと、またまた10年1.3%台前半での超絶的膠着相場になってしまうでしょうな。5年については既に0.5%割れはかなーり厳しい状態ですし。
相場観を書くときっちり外す日々が続いているので、折角ですからご参考までに正直に書くとしますと(自爆)、「今回も結局は膠着」ではなかろうかと思うのですが。
○田谷審議委員の悩み
話は変わりまして田谷審議委員の記者会見。先月末の講演の後に実施されたものなのです。まぁ焦点は「金融政策についてどうお考えですか」と言う事になる訳でして・・・・・・・(^^)
http://www.boj.or.jp/press/04/kk0401b.htm
『(問)本日配布された挨拶要旨をみると、日銀当預残高目標を引上げる際の判断に関し、いくつかの観点に言及しておられる。その上で、こうした観点に照らし「(省略。30日のドラめもんをご参照下さい)」と述べられている。これは、審議委員の持論であると考えていいのか。また、講演ではこれをそのまま説明されたのか。さらに、その説明に対する反応はどうであったか。』
『(答)ご指摘のように、私の持論である。本日は、概ねそのまま申し上げたが、懇談会の出席者の多くは金融界の方でなかったこともあって、特段ご意見はなかった。』
となればこういう質問がくる訳でして、
『(問)1月20日の金融政策決定会合で、日銀当預残高目標レンジの引上げが決定されたが、これに対してどのように考えているか。』
『(答)まだ議事要旨が発表される前の段階であり、賛否について明らかにすることは差し控えたい。ただ、事実として、私は昨年5月の日銀当預残高目標レンジの引上げおよび同10月の同残高目標レンジの上限引上げには反対した。その主たる理由は、本日お配りした要旨に3点を挙げて示した通り、はっきりした効果が見込めないと考えているためである。もう一つ大事な点として申し上げれば、期待に働きかけるといったことにも個人的には疑問を持っているということである。』
この田谷さんが指摘する「大事な点」に関する部分は、講演要旨の中でも触れていましたが、この記者会見で「現在の期待に働きかける政策には疑問」というのが「大事な点」だと、日銀総裁よりもよっぽどセントラルバンカーらしい発言をはっきりと打ち出しております(^^)。今日も金融政策決定会合ですけれども、これじゃあ孤立しそうですなぁ。
その後の質疑応答で『ご承知のように主要な政策ルートである短期金利がほぼゼロの状態になってしまっている状況の下では、やはり期待というものに働きかけることが、政策が実体経済に影響するルートとして大事なものになる。』とコメントしておりますので、完全否定ではありません。念のため。
で、金融政策の説明責任という新日銀法(福井さんが副総裁の時代に作られた法案だと記憶してますが)の下で重要な扱いになった筈の事柄が形骸化しつつあるのではないかという懸念も示しているように思えます。
『(問)(引用者注:金融政策に関する)市場の理解が得られていないということのデメリットは何か。』
『(答)今、具体的に申し上げることは難しいが、例えば、金融緩和継続に対する条件をさらに変えていくような場合、その解釈について、我々の意図するところと違う解釈が出てくる可能性がある。そうした誤った解釈がマーケットにネガティブ・インパクトを与える可能性もある。また、我々が、景気の現状判断とか物価見通しを公表しても、必ずしも額面通りに受けとってもらえなくなるような可能性もあろう。』
遠まわしな言い方ですが、政策に関する信認が失われたら中央銀行としておしまいではないかと言っているように思えるのですが。
この後の質疑が「田谷さん大変ですなぁ」と声をお掛けしたくなるやり取りで。
『(問)1月20日の決定については、市場関係者から正しい理解を得られなかったというように感じておられるのか。』
『(答)そういう側面もあるのではないか。個人的にはマネーサプライやマネタリーベースのコントロールのためにやったものではないと思っているが、そういう解釈をする人もいるし、為替相場対策だと理解している人もいる。量的緩和効果について誤った解釈もある。このように解釈の幅がかなり広いということは、我々の努力が今少し足りないのかなと思う。』
『(問)なぜ、誤った解釈が市場で起こるのか。』
『(答)我々の努力不足が原因と思う。』
『(問)努力不足ということではなく、審議委員は1月20日の当預残高引上げが適当ではなかったとの立場をとっておられるものと理解している。そうであれば、「1月20日の決定は間違いであった」と言えるのではないか。』
『(答)私の口から、1月20日の決定が間違いであったと申し上げることは出来ない。仮に皆さんがそう解釈するというのであれば、私は「ああ、そうですか」と言うだけである。』
いやはや(^^)。
○おまけの雑談
昨日の前場は現物株式の状況に委細構わず225先物を売っているという感じの売りがありました。で、お昼のニュースで「米国上院議員に猛毒リシン入りの郵便物がやってきました」というお話がございました。
昨日の先物売りは10550円あたりにチャートポントがあった事や、現物が引っ張る下げではなく単に先物の叩きだった事から「チャートポイントを崩しに行った仕掛け売り」という解釈のようです。
まぁそうだと思いますが、この株先売りの後債券先物にもこれ見よがしの大口買いがございまして(投資家の長期債に対するカバーだとは思いますが)、あたくしはついつい「もしやこの先物売りの背後には・・・・(以下激しく自主規制)」などと考えてしまう訳であります。勿論妄想ですけれども。
東京でも(あまり報道されてませんが)爆発音がどうのこうのというフラッシュが流れていましたし。
命が惜しいので本日はこの辺で(^^)。
2004/02/03
お題「白川理事のスピーチ」
先週末は日銀関係で白川理事のスピーチ、武藤副総裁の講演、田谷審議委員の記者会見といきなり3本もネタがご登場。武藤副総裁の講演が一番量があるのですが、どうも講演の相手が金融関係というよりは一般ピープルに近いお方が主だったようでして、非常に惜しい事にお話が極めて一般的。武藤副総裁の意見に属するような部分がまるでありません。よって読んでも全然面白くなく、今回はご紹介を省略します。
てな訳で白川理事のスピーチ。
http://www.boj.or.jp/seisaku/04/mpo0401a.htm
「金融調節に関する懇談会」というのがございまして、そちらで日銀白川理事のスピーチが行われました。お題は「国債市場と日本銀行」ということで、国債市場改革の話と金融調節の話がメインになっております。
惜しい事にこのお話、資料も色々あるんですが、非常に一般的なお話が多く「日銀事務方の意思」が前面には出てきておりません。って当たり前と言えば当たり前ですけど。そんな中ですが、まぁ意見表明的な部分を無理矢理見つけて読んでみましょう。
○国債投資家層の拡大について
『例えば、わが国の経済や国債市場の規模を考えると、非居住者の国債保有はもう少し増えても不思議ではありませんが、非居住者の国債保有割合は依然として数%に止まっています。勿論、どの国の市場にも自国の金融資産を選好する、いわゆるホーム・バイアスは存在しますが、わが国の場合は、非居住者の国債保有割合が小さく国内投資家の割合が高いことが、海外主要国とは際立った違いとして指摘されます。この点は、同じわが国の金融資本市場でも、投資家層のグローバル化が進んでいる株式市場とは対照的です。』
日本の国債市場の問題といえば日頃からあたくしが悪態をついておりますように、投資主体が機関投資家ばかりで、おまけに金融再編によって個別投資家がメガ化。止めに横並び(当局がリスク管理の名目で横並び化を推進しているのも問題)という事です。
『保有者構造に偏りがある市場では、保有者の相場観やリスク管理手法、投資ホライズンのバラツキが小さくなるため、多様な投資家が存在する市場に比べ、局面によっては相場が一方向に大きく振れてしまいやすくなります。昨年夏の国債相場の下落局面では、債券ポートフォリオに占める国債のウェイトが高く、市場でのプレゼンスが大きい金融機関が同じようなリスク管理手法を採用していたことが相場下落を増幅したとの指摘も多く聞かれました。』
と言う事なのですが、機関投資家の対極に位置する個人投資家は「個人向け国債」という思いっきり非市場性国債へと誘導する国債管理政策を絶賛推進中であります。個人投資家を参加させない(と言ってこの市場環境で参加する訳ありませんが)方向なのに投資家層の拡大をしようとすれば必然的にそれは非居住者と言う事になります。
『非居住者の国債保有割合が際立って小さいのは何故か、その原因は何であるかは改めて検討する必要があると思っています。』
本質的には金利が低すぎる所にあるのではないかと思いますが。
○金融調節に対する密かな悩み
金融調節に関して、白川理事はこのように言っております。
『日本銀行は近年、国債系オペの様々な見直しを行ってきましたが、それらを貫く縦糸をひとつ挙げるとすれば、私は「市場に対する中立性の維持」ではないかと思っています。』
現在の金融政策の枠組みにおいては、短期金利の基本であります翌日物金利がゼロに張り付いておりまして(金利はターゲットになっていないのでゼロである必要はないのですが、実質的にやっている事はゼロ金利固定政策)、「時間軸効果」に代表されるように「市場の期待形成に効果を与える事を狙った政策」を行っております。先週末の日銀総裁の国会答弁なんてまさにその典型。
基本政策が「市場の期待形成に効果を与える事を狙った」ものとなっている中で「市場に中立」というのも中々苦しいお話ではあります。まぁこの場合の「市場に中立」というのは「期待形成の結果として現れる取引価格に極力介入しない」という事なんでしょうな。
旧日銀法時代のように、金融調節に一々日銀の「意思」がでている方があたくしのような(元)職人としては判り易いんですけど、新日銀法時代になってからは淡々とした調節になってしまっておりますので、そういう点では「市場に中立」となっております。
『日本銀行は金利ターゲットの下ではコールレートを、また現在のような量的緩和のレジームの下では、日本銀行当座預金のコントロールを目的としています。ただ、金融調節によってコールレートあるいは当座預金の総量はコントロールしますが、あとは極力市場に任せ、市場機能や個別銘柄の価格形成に対しては、中立的であることが望ましいと考えています。』
『と言うのも、中央銀行が市場をドミネートするようになると、「リスクフリー金利を示す機能」、「金融政策判断を行う上での情報源機能」が損なわれることになるからです。そうなると、「金融調節を実行する場」としての役割も低下しかねません。』
と、言いながらもやはり悩みは累増する長期国債買入残高なんでしょうな。
『長期国債についても、多額の買入オペを行っており、市場でのプレゼンスは拡大しています。デフレからの脱却を図るという重要な課題と、経済の発展を支える市場の機能を維持するという重要な課題との両立をいかにして図るかは、昨年7月の本席で武藤副総裁が述べたように、悩ましい問題です。』
日銀(の事務方)としては、市場機能を封殺するような現在の金融政策の枠組みについては「困った物だ」と思いつつも、その政策の枠組みが強化されている訳で、実に苦しいところでしょうな。ご同情申し上げます。
○おまけ
『本日は、国債市場の機能向上に向けた日本銀行の取組みについて、とりわけ金融調節の面での工夫を中心に、お話させて頂きました。国債市場を巡る議論の中では、このような実務に関するお話は、テクニカルな部分も多いため、ややもすると見過ごされがちですが、市場が本来あるべき機能を健全に発揮するためには、そうした面での改善の積み重ねは極めて重要です。』
誠に仰せのとおりです。
『私は仕事柄、国債市場を含め金融市場に関するエコノミストやストラテジストの皆様のレポートには比較的目を通しています。その際、私にとってはマクロの金融経済情勢に関するレポートも重要ですが、市場機能に関するやや専門的なレポートや分析も非常に貴重で、そうしたレポートや分析には必ず目を通すようにしています。』
ぜひドラめもんも御覧下さいませ(嘘^^)。
本当は(昨日手抜きだった分)田谷さんの記者会見も入れないといけない所なのですが、こちらに関しては基本的部分は講演で言い尽くされておりますので、明日ネタが乏しい場合にはちょっと登場するかもしれません。読むと田谷さんの金融政策に関する「言いたい事はあるけど立場上これは言えない」という雰囲気が伝わってきまして、これはこれで中々のもので(^^)。
2004/02/02
お題「信じるものは足をすくわれる」
本日は諸事情(後日注:ただの寝坊)により簡略版で、その分明日だしますんで。
先週末の債券市場では福井総裁の衆議院財務金融委員会での答弁が注目されて、中期債に大手銀行さまと思われる買い出動がございまして、今まで散々押さえられていた5年債の0.5%を割り込むという素晴らしい相場になりました。
ところで、本当にこの発言で中期債を買って良いんでしょうか?
国会の会議録がアップされるのには少々時間が掛かるので、金曜日の時事メインの記事を参考にしますと、こんな感じです。
・(量的緩和政策からの)出口戦略の詳細を語るのは時期尚早
・ただし、将来における出口戦略の重要性については強く認識している
・前年比CPIが安定的にゼロ%以上というのは当面の非常に重要な目標・しかし、それで本当に均衡ある日本経済の姿になるかは別問題
・従って、CPI時間軸は一つの通過点であるかもしれない
・通過点が来た以降の問題はより望ましい均衡のとれた日本経済に向かって金融政策をきめこまかく運営していかなければいけないと思う
・(前述の「きめこまかい運営」について)重要な点がいくつかある
1.量的緩和の下では金融市場の機能をかなり犠牲にしているので、金融市場の機能回復を図りながらその後の金融政策を運営しないといけない。
2.国債発行残高が非常に累増しているという前提条件の下でその後の金融政策をしないといけない。
よくよく見ると強気な事と弱気な事を同時に言うというこのお方独特の答弁でございまして、しかも発言している場所が衆議院財務金融委員会。
頑固とも愚直とも思える前任の総裁と違いまして、現総裁はその発言にサービスフレーズを入れるのが得意であります。時あたかも米国では「時間軸外し」を連想されるようなFRBの声明があり、国内消費者物価の発表もあった日と言う事でございまして、福井総裁としては、国内金融市場で「時間軸短縮」の思惑が出るのを避けたと言う風に解釈した方がよいのではないかと思います。
サービスフレーズと言えば昨年の福井総裁。長期金利どころか2年金利やら5年金利が「早期の量的緩和解除」を織り込むまでに上昇している最中にも「長期金利上昇放置、景気回復奉祝」的な、まさしく「景気付け」発言を繰り返して「大手銀行ALMの成行売り」を止めるどころか駄目押しを行ったのは記憶に新しい所でございます。
「量的緩和のコミットメント」はその反省の為に導入されたものですね。
で、話を戻して、最近の福井総裁は先日の予算委員会でも「短期・長期の金利を出来るだけ低くする」(日経新聞)といってみたりしておりまして、かつての景気回復フレーズを反省したのか、債券市場へのサービスフレーズ(ただし金利低下が機関投資家にとってのサービスフレーズかというと甚だ疑問)を連発しております。
政治からの下らない圧力を避ける為に、ある程度のサービスフレーズを入れるのも理解できなくはないですが、何事も過ぎたるは及ばざるが如し。
何時の間にやら時間軸のコミットメントが「CPI」から「均衡ある日本経済」というもはや訳の分からぬ物になっておりまして、中央銀行の政策とは思えない状況になっております。こういう風になんでもかんでもサービスフレーズを出すと言うのはその逆もありうる訳でして(というか現にそういう事態はありました)そのへんのリスクを考える必要があるでしょうな。
とまぁそんな感じです。
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