2004年1月
トップページに戻る
月別インデックスに戻る
朝のドラめもん
2004/01/30
お題「田谷審議委員の講演」
論理的整合性に欠けるな当座預金引き上げに反対票を投じつづけている田谷審議委員が今熱い!といった所でしょうか(^^)。まぁネタもないので皆様この講演をネタにしそうですね。
http://www.boj.or.jp/press/04/ko0401b.htm
○海外経済情勢
日銀の公式見解であります金融経済月報なんかでも示されておりますが、日銀は海外経済情勢に関しては基本的に強気の見方をしております。勿論田谷さんも同じですが今回の講演では少々詳しく説明しております。
現象として指摘しているのは「株価上昇」「長期金利は比較的安定」「素原料財価格の上昇」「海上運賃の上昇」というところです。で、これらの現象から近年の世界経済を動かす二つの要因を指摘しております。
『こうした世界経済のさまざまな特徴を見ますと、近年、世界経済を突き動かしてきている二つの要因に行き着きます。それは、中国を筆頭に多くの新興国が世界経済に本格的に参加するようになったことと、IT革命の浸透です。これらの要因から、世界各国は等しく産業構造の転換を迫られてきました。』
と言うことで、新興国の市場経済化のインパクトを輸出シェアと一人あたりGDPに注目したグラフなんかを出しておりましすがイマイチよくわからんので本文の方をお読み下され(と手抜き)。
各国経済に関しては米国経済について当然ながら詳しく説明しておりますが、その世界経済に与えるリスク要因として「ドル安」のほかに「長期金利の上昇」を指摘しております。
『米国の経常収支がどうなるか、また、それと関連して、ドル安傾向が続くかどうかは、世界経済にとって大きな問題です。他方、なんらかのきっかけで米国の長期金利が上昇することになった場合、それはそれで、そのインパクトは米国経済だけでなく、世界的にも非常に大きなものとなる惧れがあるように思います。ドル安ばかりでなく、この点にも注意が必要です。』
○国内経済情勢
こちらについても日銀の公式見解とほぼ同じような判断をしております。「輸出、生産の増加」「設備投資が増加」する中で、「雇用、所得情勢の改善には時間が掛かる」という判断です。また、『仮に、雇用・所得が増えるようになっても、消費が基調的に増える情勢にはなかなかなりにくい側面があります。』ということで、消費の回復に関しては懐疑的という判断を示しております。
物価に関しては、こんな感じです。
『需給ギャップが縮小する分、物価下落圧力は小さくなるはずです。実際の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、昨年秋口あたりから、前年比プラス、マイナス0.1%くらいになりました。昨年度の変化率がマイナス0.8%であったことからすると、下落率は大きく縮小したことになります。』
『しかし、これは、今年度中にあった様々な特殊要因によるところが大きいと考えられます。診療費負担の増加、たばこ税の引き上げ、天候不順によるコメ価格の上昇などです。さらに、BSE問題から牛肉価格の上昇、また、最近では、鳥インフルエンザによる鶏肉価格の上昇も、今後、物価押し上げ要因になると思われます。しかし、これらを一時的な要因としてその影響を除いたベースで考えれば、今年度の消費者物価変化率はマイナス0.5%前後といったところかと思われ
ます。』
『これが、来年度は、「展望レポート」時の見通しとあまり変わらず、マイナス0.3%程度になると現在のところ考えています。デフレ脱却の展望はまだ持てません。』
○本題(ではないのですが)の金融政策に関して
昨年の5月下旬にも田谷審議委員は講演をしておりまして、この時点で既に追加的金融緩和であります当座預金残高目標引き上げに関して懐疑的なコメントをしておりまして、まぁそのあたりから金融政策決定会合で「当座預金残高目標引き上げに反対票」というスタンスになっています。
昨年の5月以降に行った金融政策として
1.量的緩和をさらに進めた
2.中小企業関連資産を主たる裏付とする証券の買取を始めた
3.日銀の経済情勢判断説明の充実と量的緩和継続条件のコミットメント
となっております。で、この3点についてせつめいしているのですが、なぜか講演では3→2→1という順番で説明しております。どうも田谷さん的に納得の行く順位で説明しているように見えました(^^)。
3.については他の審議委員の皆様からのコメントと似ております。で、このコミットメント明確化の効果として『このコミットメントの明確化は、将来の短期金利の予想を通じて現在の長めの金利に働きかける「時間軸効果」を強めるものと考えられます。』としております。
2.についてですが、先週の決定会合で行った買入基準の『見直し』について『市場の発展に資するために、日本銀行自体の財務の健全性を維持する下で、我々として何ができるかを考えた上での変更です。買い取り実績を上げるといったことに重点を置いたものではありません。』というわけでして、あたくしが散々悪態をついております「買取実績上げのために無意味なオペが有害になるんじゃないですか」という批判にお答えしております。そんなにあちこちから「買取り実績を上げるために基準緩和かよ!」って言われていたんでしょうか。ちょっとビックリしております。
ちなみに、この中で買入基準を『買入基準を見直すことにしました』と言っているのが芸の細かい所でありまして、どこからどう考えても先般の買入基準変更は「緩和(あたくしとしては「骨抜き」だと思いますが)」としか読めないのですが、緩和というとまた要らん突っ込みを食らうので、あくまでも「技術的に見直した」というスタンスを崩さない訳です。
1.に関してはさすがに反対票を投じているだけに田谷さんとしての見解となっているのでしょうな。まずは量的緩和の効果について指摘しています。
『第一に、短期金利を超低位で安定させ』
『第二に、日銀に当座預金を保有する金融機関の資産選択に影響を及ぼして、いわゆるポートフォリオ・リバランスを起こす誘因を与え』
『第三に、流動性不足による金融システム不安の回避に貢献することです。』
『さらに、付け加えれば、当座預金残高目標を引き上げてくる過程で、長期国債の買い切りを増やしてきましたが、その長期金利に対する影響も考えられます。』
このうち第一については「ほぼ達成された状態」と指摘しています。
第二については評価しているかというと微妙な表現です。『「キャッシュつぶし」あるいは「資金つぶし」といったことがマーケットで言われてきましたように、多額の日銀当座預金を他の資産に振り替えようとする動きが一部に見られ、短国レートのさらなる低下圧力となったり、社債の対国債イールド・スプレッドなどを多少なりとも縮小させた可能性はあります。』あまり効果については評価してないと言うニュアンスなんでしょう。一応評価しないこともないって感じ。
第三については『預金保険法102条に基づいて足利銀行の一時国有化が決定された際、金融システムが非常に安定していた背景の一つとして、多額の日銀当座預金の存在を指摘する向きもあります。しかし、こうした効果に期待する金融機関の数も多くはないと思われますので、日銀当座預金残高を少しずつ増やすに従って、それだけ比例的に効果が高まる、といったものでもないでしょう。』と、量的緩和による効果自体は認めていますが、当座預金残高の引き上げによって金融システムがより安定するという理屈には否定的です。
で、反対している当座預金残高目標の引き上げについてはこんな意見となっております。意見としての筋がきちんと通っておりますな。
『日銀当座預金残高目標を引き上げるかどうかは、これらの観点に即して判断されるべきものでしょう。決定の時点で、効果があると判断すれば引き上げることになりますし、ほとんどないと判断されれば現状を維持することが適当ということになるかもしれません。』
『日銀当座預金残高目標の引上げが、これらの観点からの効果の有無と独立に、期待への働きかけを通じて「時間軸効果」を強めるかどうかについては議論が分かれますが、個人的には疑問に思っています。』
なるほど仰るとおりです。で、先ほど紹介したように、量的緩和の効果の3点のうち、1は達成されており、2はあまり効果なし、3は残高目標の引き上げに効果がないという認識でいる訳ですので、当座預金残高目標引き上げに反対という結論になる訳ですね。
ただ、このお方も景気判断上方修正の中で金融緩和策を取る事自体に反対している訳ではないところには注意しておきましょう。
『現下の金融政策の目的は、できるだけ早期のデフレ脱却です。現在のところ、デフレ脱却の見通しが持てない状況下で、デメリットよりもメリットが大きい有効な緩和策があれば、それを実施することに躊躇する理由はありません。仮に、景気が標準的な見通しから上振れたとしても、デフレ脱却の見通しを持てない限り、こうした姿勢に変わりはありません。』
いわゆる新日銀法の下で日銀の独立性が確保された形になりましたが、この時独立性確保のためにも重視されるようになったのが「金融政策に対する説明責任」でございます。田谷審議委員はこの説明責任についても言及しております。
『ただ、日本銀行が行う政策について、市場参加者等の正しい理解を得ることは、政策の信頼性を確保するために不可欠です。』
まったく仰るとおりです。
○マネーサプライについてのコメント
『最後に、最近話題となっているマネー・サプライについて簡単に触れておきたいと思います。』と言う事で、マネーサプライ論議にコメントしておりますが、結論から先に申し上げると田谷審議委員は所謂マネーサプライターゲット政策に関しては否定的です。
『このところ、マネー・サプライの伸び率低下が問題視されることがあります。確かに、最近、現金、M1,M2+CDの伸び率が低下してきています。これは、これまで様々な要因から少々高すぎた反動が出始めたものと考えられます。現金の伸び率の鈍化は、主として、保有コストの低下効果の減衰や金融システムの安定化に伴って起こっていることで、将来、伸び率がさらに低下していったとしても、自然な動きでしょう。M1やM2+CDの伸び率低下も、金融情勢の安定化に伴って、より高いリターンを求めた資金シフトによるところが大きいと思います。広義流動性は比較的高い伸びを維持しており、狭義のマネタリー・アグリゲイトの伸び率低下だけを取り出して、問題視することは必ずしも適当ではないと思います。』
と、これだけだと何なので(^^)最後にサービスフレーズが。
『最近では、金融機関の貸出態度も若干前向きになってきていますし、信用供与の多様化も進んできています。金融機関の信用供与をさらに促進させる方向での働きかけを考え、結果として、マネー・サプライの伸び率を高める努力は必要と考えております。』
で、ゼロ金利下におけるマネタリーベース(またはマネーサプライ)と経済成長や物価、為替などとの関係については理論的にもはっきりせず、90年代半ば以降の経験からもはっきりしていないと明確にコメントしております。この点については今後も説明が必要だとコメントして講演を終了しております。
講演後の記者会見については本日日銀Webにアップされると思います。または日経金融新聞の朝刊には載っていると思いますけど。こちらもご参考に。
2004/01/29
お題「最近思う事」
思うものの考えが纏まっていないので甚だ恐縮ですが、思考のネタにでもしていただければと思いまして。
○不気味な先物
最近ずーっとそうなのですが、とにかく債券先物がやたらと強い日々が続いております。特にこの数日は相場の位置が10年の1.3%割れだとか5年の0.5%だとかという水準にいる為なのか、現物債の売りがやたらめったらと出ておりまして、業者の在庫がかなり重くなっています。
パッシブ系のまぁ機械的に購入するお方の買いしかない相場の位置にいる状態で、ここぞとばかり現物債を気合を入れて外しに掛かっていると思われる大手投資家さま(誰だか良く判らん。中期はどこかの大手銀行さんだと思いますけど)の売りパワーで業者在庫過多状態。で、現物債在庫が重いとどうしても先物にヘッジ売りを入れないといけません。
先物に業者のヘッジ売りが嵩むと言う事は、在庫を外した時に先物買戻しの動きが起きるので、ちょっと下がるとすぐ買い戻しがはいる訳なんですけど・・・・・・・・それにしても先物強すぎです。
この限月の先物はここへ来て「買戻しがやたら入り妙に強い」という現象の他、「今月に入って建玉残高が妙に増えている(東証の速報値ベースで月初残高50925億円が、昨日現在65774億円と、延々とレンジ相場となっているのに何故か増えつづけている)」とか「限月間スプレッド取引が早くから板が揃っている(具体的なデータ取ってませんが)」とか色々と妙な現象が見受けられます。
こういう現象の裏にど〜ゆ〜事があるのかと言われると、これがまたあたくしは何だかよく判らんという情けない状態なののですけれども、とりあえず「先物3月限は何とも不気味ですな〜」という意味不明なコメントと相成るのでした。役立たずもいいとこでスイマセン。
○時間軸の外し方
昨日のFOMCミーティングではスタンスの変更はなかったのですが、米国流時間軸であります「かなりの期間」現在の金利水準を続けるというお馴染みの文言(for
a considerable period:スペルあってるかな?)が書き換えられているそうで(実は原文まだ見てません)早速米債は急落と実に香しい状況。
で、ニュースのお話だけで色々書くのも大変恐縮なのですが、文言が変わったとは言え、「低金利は継続する」という趣旨は声明文におりこまれているようです。お馴染みの文言が無くなっただけで「すわ早期引締めか」と動くのは、まぁ仕方の無い所ではありますが、一頃の日本での「時間軸短期化への懸念で大騒ぎ」を彷彿させる物を感じました。
政策当局は「ショックを与えないように徐々に時間軸を外していこう」と思っている段階であって、すぐに利上げがどうのこうのという話ではないと勝手に思っているのですが、それにしても文言一つ書き換えただけでこの有様。時間軸っつー妙なコミットメントを導入すると、その時は効果があるのですが、出口を探そうとすると大変な事になるというわけですな。
今回、米国で時間軸に手をつけようとしているのは「景気回復」だからという事なのですから、債券市場に連れられる形で株式市場が下落したのはご愛嬌なんでしょう。しかし「時間軸にちょっと手をつけるだけで株式市場が下落しちゃいます」という話になってしまうと「設定した時間軸が何時までも外せない」というどこかの国のような香しい状態になりますので、あたくし達もそうですけれども、日銀様はこれからのFRBの舵取りを見ていきたい所でしょう。
○いわゆる高橋財政の評価
金融政策に関して勝手なことを言っておりますので、ちったぁ勉強しなければとおもいまして、金融政策に関して色々と述べている本なんかを買ったり、せこく立ち読みしたりしております。理系出身の筈なのですが経済学の本で算式が出てくるとゲロゲロになるので立ち読み及び読書は遅々として進まないのでありますが。
で、デフレ脱却に関して色々と論議が起こるわけなのですが、どうも「高橋財政」に関する評価をどうするかと言う点がポイントになっているのではないかと。今更気がつくとはあんた遅過ぎと言われそうですが・・・・・・
何で気がつかなかったかと申しますと、「高橋財政って高橋是清さんがやっているときは上手く回っていたけれども、根性の無い後継者たちがやったら財政発散をおさえられずに結局破綻したじゃん」という認識でいた為なんですけど。
上手く回っていたというのはやや正確さを欠く表現だと思います。昭和11年予算案策定時には財政の健全化を求める高橋蔵相と軍部が対立して、2・26事件での高橋蔵相殺害の伏線になっているのですけどね。
今の大衆民主主義国家状態で、コントロール可能な「高橋財政」の実行ってぇのができるとは到底思えない訳でして、理屈上は上手く行くかもしれない「高橋財政」は政治的にコントロール困難だと思いますが、どうなんでしょうね。
(以下の部分は南條範夫著「達磨宰相・高橋是清」PHP文庫から引用致しました)
ちなみに、昭和10年11月27日の新聞紙上では、軍部予算復活問題を論議して閣議における高橋蔵相の意見陳述が掲載(白根内閣書記官長のメモによる)されたそうでして、朝日新聞では「軍部たしなめられる」という見出しで高橋蔵相の意見を報じたそうです。
・・・・予算は国民の所得に応じたものでなければならぬ。財政上の信用と言うものは無形のものである。その信用維持が最大の急務である。ただ国防のみに専念し、悪性インフレをひき起こし、その信用を破壊するごときことがあっては、国防も決して安固とはなり得ない・・・・・
と言うわけで、今更勉強中のあたくしでありました。
#いやはや、今朝のドラめもんが俺様メモと化しておりますな。
どうも面白そうなネタに欠けるもので、本日は益々簡単になってしまいました。
2004/01/28
お題「銀行への施策、何とかならんのか」
ど〜も相場は手がかりテーマにかける日々が続いておりまして、イールドカーブはそこそこ動けど結局先物の位置はたいして変わらんという感じですが、如何お過ごしでしょうか?
本日は金融庁関連雑談。
○良かれと思ってやっているんでしょうけど・・・・・・
日銀もやたらと銀行経営がどうしたこうしたとか、ペイオフ完全実施に向けての金融システム安定化がどうのこうのと言うコメントを連発しておりますが、金融庁も相変わらず大手銀行グループへの実質常駐検査に加えて、今年もまた特別検査の実施ということで、銀行経営の監視(あるいは傍迷惑な口出し)をせっせと行うようです。
先週末にUFJ銀行の融資先に関する資料がどうのこうのというお話がいかにも「UFJに裏資料あり」と言わんばかりの言われ方で報道されており、おまけに金融庁が調査を行うというような報道でしたな。何故か金融庁は否定してましたが。
「裏資料」と言えば先日の道路公団騒動を思い出します。任期切れ直前の藤井総裁を無理矢理クビにする口実に裏資料問題が使われておりましたが、あの時も資産評価の仕方で何とでもなる財務諸表が何本かあってもおかしくない筈なのに、さも大問題であるかのように報道されておりましたな。
で、今回のUFJ銀行に降って湧いた裏資料報道ですが、これとて報道の通りに隠蔽しているのかどうかは判らんわけでして、まぁ昨日正式に通告された「来月からの特別検査」に向けて、銀行へ緊張感を持たせようという意味でのリークさせ記事では無かったのではないかな〜と思う訳です。こういうのを別の言い方をすると恫(自主規制)とも言いますがね。
劣後債の発行が延期になってしまったUFJさんはお気の毒でございましたね。
という訳でまたも特別検査なんですが、常駐状態で検査が行われおまけに特別検査が年に一回。欧州訪問時に竹中大臣は特別検査を2005年3月期まで続ける考えを示唆した(日経新聞)との報道もございましたので、来年も特別検査。
銀行の不良債権を何とかしたいと言うお気持ちの現れと好意的に解釈したいところですが、かつて現場のヒラ銀行員をやっていて当時の大蔵省の検査というのがあった時の経験を思い出しますと、これほど営業妨害なお話はございませんです。
まぁ特別検査は限定された超大口の債務者が対象だからまだいいのかも知れませんが、当時「MOF検」と呼ばれていた検査の資料作成というのがこれがまた悲惨なくらいに大変。あたくしの勤めていた会社では融資部門の内勤(事務方ではない内勤)というのはいませんで、日没時間あたりに営業から帰り、通常業務をこなした後に検査資料作成と言うことで、検査前は1ヶ月以上休日出勤と残業の嵐でした。
あれを通常業務のようにやらされるとは悲惨極まりないと思ってしまいます。特に最近は営業店の人減らしで(もしかしたら合併で人余っているのかも知れませんが)ひーひー言っているらしいですし。ご愁傷様です。
ま、景気の悪化が続いているからある意味し方が無いとは言え、銀行が「不良債権わんこそば」「債権放棄わんこそば」を実演し続けていたのがこういう結果を呼んでいるので、銀行経営者にはあまり同情の念は無いんですけどね。
○そもそもチグハグな金融庁
ま〜それ以前の問題として、金融庁が行っている銀行に関する各種施策を傍から見ておりますと、「アクセルとブレーキを全力で踏む」という状況が相も変わらず続いておりますな。以前もドラめもんで申し上げたのでくどくどは書きませんが、中小企業金融に関する施策として金融庁のWebに掲載されている「リレーションシップバンキング」に関する部分なんぞ、門前の小僧であるあたくしですら内容の矛盾が指摘できるわけです。
リレーションシップバンキングってのは「融資判断にあたっては顧客との長期的な取引関係から事業内容を重視しろ」という事だそうでして、それはそれで正しい。しかしその理念から出てくる具体的施策が「スコアリングモデルの活用(顧客の財務データから機械的に判断する方式なんですけれども、それって)」とか「起業段階にあるベンチャー企業への融資(起業したばかりの会社のどこに長期的な取引関係があると言うのか)」とか実に香しい状況。
スコアリングモデルにしろ、ベンチャー融資にしろ、一つ一つの言っている事が間違っているとは思いませんが、その施策がトータルで矛盾しており、おまけに全ての施策を各セクションが大真面目かつ厳格に実行しようとしているという状態では現場の銀行は溜まったものでは有りませんな。
一事が万事。恐らく検査の現場では「厳格なる検査」が実施されているのだと思いますが、そんな状況下で「中小企業融資の目標が未達だからケシカランので業務改善命令」などと言われてしまう銀行の経営者も良くもまぁ暴れださないものだと感心する事しきりであります。
そういう状況に対する批判どころか、「全ては銀行が悪い」という事にしておけばウケもよいのでそのまま銀行悪玉論で通しきってしまうメディアの有り方も、金融庁の整合性の無い金融行政に拍車を掛けているのではないかと先週の報道を見ていて思うのでありました。
念のため繰り返しますが、銀行も相当問題あるんですけどね。
と、本日は全然相場と関係ないお話でした。相場関連ネタがないっす。
2004/01/27
お題「金融経済月報」
すっかり忘れていましたが、先日の金融政策決定会合で金融経済月報が公表されております。今回は昨年10月末に発表された所謂「展望レポート」の標準シナリオからの乖離状況についてのコメントもあるという割と重要なものになる筈でしたが、ご存知のとおり名分無しで金融緩和をしてしまったので、月報の意味付けが益々訳判らん状態になっております。
と言う事にめげずに月報を読みますと・・・・・これがまた何の為に金融緩和したのか理解に苦しむほどの情勢判断でございます。何せ今回の月報は「まるっきり12月と同じ」となっております。何とも素晴らしい。
念の為主要な記述を抜粋しておきます。
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』
『輸出は増加しており、設備投資も緩やかな回復を続けている。こうした動きを背景に、鉱工業生産も増加している。また、雇用者所得は徐々に下げ止まってきており、個人消費は横ばい圏内の動きとなっている。一方、住宅投資は低調に推移しており、公共投資も減少している。』
『先行きについては、景気は回復を続けるが、そのテンポは緩やかなものにとどまると考えられる。』
『海外経済が高めの成長を続けるとみられるもとで、輸出や生産は増加を続け、設備投資も回復傾向がより明確化していくと予想される。もっとも、過剰債務などの構造的な要因が根強いことを踏まえると、設備投資の増勢は力強さを欠くものにとどまると考えられる。また、個人消費は、雇用・所得環境に目立った改善が期待しにくいもとで、当面、横ばい圏内の動きを続ける可能性が高い。この間、公共投資は減少傾向をたどると見込まれる。』
『物価の先行きについて、国内企業物価は、目先は強含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、米価格の上昇などから、当面ゼロ%前後で推移する可能性が高いが、需給バランスが徐々に改善しつつもなおかなり緩和した状況のもとで、基調的には小幅のマイナスを続けると予想される。』
ということで、この辺の記述は12月と全く同じでして、並べてチェックしていますと、正本と副本のドキュメントチェックをしているのではないかと錯覚するような状態であります。ちょっと違うのはこの辺。
『銀行券発行残高の伸びが金融システムに対する不安感の後退などから低下傾向を続ける中で、マネタリーベースの伸び率は、前年比1割台半ばに低下している。マネーサプライは、前年比1%台の伸びとなっている。』
昨日のドラめもんでご紹介した12月の金融政策決定会合議事要旨にもございましたが、マネーサプライのお話が最近特によく目立つというものです。最近は政府に迎合じゃなかった政府よりも先に手を打つ機動的な日銀っていうのが定着したせいか政府サイド(というかヘイゾー大臣ですが)からマネタリーベースがどうのこうのと五月蝿い五月蝿い。今回もまた政府及び御用学者への言い訳のためにマネタリーベースの鈍化について言及していると言う事なのでしょうな。
量的緩和してもマネタリーベースには殆ど影響がなく、もっと別の要因で動いているのではないかという仮説が成り立ちそうな昨今の動きなんですけれども、この調子では何らかの景気失速的状況(株式市場の下落ですな)が発生したときに、犯人がマネーサプライと言う事になって、マネーサプライ真理教とリフレ派の皆さんが「国債の買入を増やせ」とか「日銀は国債を引受すべきだ」とかまたまた無茶なお話になるのでしょうな〜。
その時、元々は日銀マンである福井総裁はどうするのでしょう。今となっては原理原則を重視する速水総裁が懐かしいですな。あのお方も原理主義者なのでそれはそれで困るところもありましたけどね。
今回の金融経済月報の眼目は「展望レポート」の四半期ごとのレビューだった筈なんですけれども、こちらにつきましてはこんな感じになっております。
『わが国の経済・物価動向は、昨年10月の「経済・物価の将来展望とリスク評価」(展望レポート)で示した経済・物価の標準シナリオに概ね沿った動きを続ける、と予想される。』
基本的に標準シナリオどおりという事ですので、まぁ回復するけどテンポは非常に緩やかということでしょう。標準シナリオはそんなにカンカンの強気シナリオではありません。念のため。
『こうしたシナリオが上振れまたは下振れるリスク要因としては、引き続き、海外経済の動向、金融・為替市場の動向、不良債権処理や金融システムの動向および国内民間需要の動向が挙げられる。このうち、海外経済については、下振れるリスクが展望レポート公表時に比べ小さくなっていると評価できる。一方、金融・為替市場の動きとその影響には注意が必要である。』
海外市場が牽引して回復基調にあるという認識なのですから、『海外経済については、下振れるリスクが展望レポート公表時に比べ小さくなっている』という表現になるのは当たり前なのですけれども、これだけでは追加緩和をする大義名分に激しく乏しい訳でして、お為ごかしもいい所なんですけれども『金融・為替市場の動きとその影響には注意が必要である。』という表現を最後に加えております。
国内金融市場のどこをどう探すと不安要因があるのか全く理解に苦しみますので、結局は為替市場が円高に振れると問題なんでしょうけれども、正直申し上げてこんなに緩やかなペースで進んでいるドル円相場で何で大騒ぎになるのか理解できん。
まぁどちらにしても今回の金融緩和の大義名分になりそうなものを日銀の公表文から探すとなると上記の一文しか無い訳ですから、結局は「景気に悪影響を与える為替市場の動きに対処する為の金融緩和」としか申し上げようがありませんな。
しかし何ですな。金融経済月報での情勢判断を何も変えず、「下ぶれリスクに注意が必要」というだけの理由で金融緩和をするってぇ話ですから、日銀自らが先日のコミットメントを軽いものにしているとしか申し上げようがありませんな。日銀にいわせれば「あのコミットメントは量的緩和解除の必要条件(十分条件ではない)について述べただけだ」という事なのでしょうが、金融緩和に大義名分も論理的整合性も無いお方が金融緩和終了時には大義名分どおりに動くのでしょうか。甚だ疑問ですな。
とまぁそんな事を思いながら今月の金融経済月報チェックはこの辺で。
2004/01/26
お題「12月の金融政策決定会合議事要旨を読む」
12月15〜16日に実施された金融政策決定会合の議事要旨が公開されました。相変わらず2日間の1日目が1時間半位しかやっておりませんで、何ざますかって気がしますがそれは兎も角。
http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/g031216.htm
○景気の基調判断は徐々に上方修正
前半は景気の現状及び先行きの見通し。基本的には金融経済月報に反映される内容ですので、そっちをチェックしておいたのと同じではありますが、改めて念のため確認。
国内金融経済情勢の基調判断の部分では次第に表現が強気になっておりまして、景気判断を明確に「回復」とスタンスを変えてきていることが確認できます。
実体経済に関する記述を見てみましょう。まずは輸出から。
『輸出は、米国や東アジア経済の好転を背景に、7〜9月に増加に転じた後、10月も7〜9月対比でかなりの増加となった。地域別にみると(中略)8月までは弱めであった米国向けも、自動車の在庫調整が進んだことなどから、ここへきてはっきりと増加に転じている。(以下略)』
この部分では『はっきりと増加に転じている』という表現がこれまでになかった所でして、景気回復の牽引役である輸出に対する強気な見方が窺えるというものです。
設備投資は「回復はしているけれども慎重」で前回と全く同じです。
家計部門は「雇用者所得は下げ止まっているが目立った改善は期待しにくい」でこれもまた前回と全く同じ。
個人消費部門に関しては表現が前進しておりまして、
『個人消費関連指標をみると、耐久消費財についてはデジタル家電を中心に堅調な動きとなっているほか、7〜9月には天候要因のため弱さが目立っていた全国百貨店やスーパー売上高などにも持ち直しの動きがみられる。また、消費者コンフィデンスを示す指標も概ね改善している。もっとも、先行きの個人消費については、雇用者所得に目立った改善が期待しにくいことなどから、横這い圏内の動きを続ける可能性が高い。』
前月の表現が現状に関して「弱めの動きが続いていると判断される」、先行きが「引き続き弱めないし横這い圏内で推移」となっており、内需の大きな柱となる個人消費に関しては情勢判断を上方修正させております。
物価については表現をあまり前進させると量的緩和解除の思惑が出て来るということもあるんでしょう。基調判断は前月と同じです。つまり「特殊要因の影響でゼロ%前後で推移するが、基調的には小幅のマイナスを続ける」という先行きの予想になっております。
○マネーサプライに関する議論
経済情勢に関する委員の議論もそれなりに興味深いのですが、何と言うかまとめにくい(毎回話が違うから)ので議事要旨をお読みいただきますと致しまして、その他のお話に関して。
『このところ、マネーサプライの伸び率がやや低下している背景について、何人かの委員が意見を述べた。これらの委員は、マネーサプライ、とりわけM2+CDの伸び率が高まるためには金融機関貸出が増加する必要があるが、現在のように構造調整が進捗する下では、企業は有利子負債の圧縮を優先するため、景気が回復基調にあるにもかかわらず、金融機関貸出が増加しにくい状況にある、との見方を示した。』
『このうち、ひとりの委員は、M2+CDと実体経済活動の間には、非常に長い目でみればある程度の関係がみられるが、90年代後半以降、そうした両者の関係が不安定化している、との見方を示した。別のひとりの委員は、最近の数年間については、マネーサプライの伸びは金融システム不安と正の相関を示しており、金融システム不安が高まればマネーサプライの伸び率が高まり、金融システム不安が鎮静化すればマネーサプライの伸び率が低下するということもできる、と述べた。』
『また、さらに別の委員は、構造調整の過程においては、金融政策の効果をマネーサプライの伸び率で判断することは適当ではない、との見方を示した。』
という話が金融情勢に関する議論で行われております。相変わらずマネーサプライ議論が行われているのですが、これに関しては盛り上がったと思われる節がございます。その後の「金融政策運営に関する検討の概要」でも同じ話がされております。相当話したんでしょうな。
『ひとりの委員は、金融政策運営に当たっては、様々なマネー指標の中でもマネタリーベースに注目すべきであり、その伸びを中長期の名目成長率に見合ったかたちで安定的に増加させる政策運営が、デフレの克服だけでなく、長期金利の安定化にも資する、との見方を示した。』
大体誰が言ったか想像がつくのですが、マネーサプライの伸びがちょっと鈍化すると直ぐにどこかの大臣が「マネーサプライを増やせ」と言い出しまして、こういう議論が決定会合(政策委員会)で行われているのでしょう。
思いっきり深読みすると、マネーサプライの伸び鈍化をネタに金融政策に下らない政治圧力が掛かることをかわす為に先日当座預金残高目標の引き上げを行った(介入サポートが最大の理由だと思いますが)という面もあるのではないかという事になりますな。
本来はマネーサプライを増やすという政策の実現性の難しさと、政策効果が有るのかが不明だという事に関して、岩田−翁論争ばりの議論をしていただきたいのですが、中々そうは行かないのでしょうな。
『別のひとりの委員は、マネタリーベースの約7割を占める銀行券については、そもそも日本銀行が直接的にコントロールするのは困難であるうえ、現在の銀行券発行残高の対名目GDP比率は長期的なトレンドを大きく上回って推移しており、金融システムの安定化などに伴って減少する可能性があることなどを考えると、マネタリーベースに注目した政策運営には問題が多い、と述べた。』
マネーサプライ真理教の学者先生たちはこの「銀行券発行残高は日本銀行が直接的にコントロールするのが困難」という理屈がさっぱり判らないらしく、「銀行券発行によって発生する通貨発行益の活用のためにドンドン日銀券をだせ」といった無意味な話(発行しても過剰な分は還流してきますよ)をしてみたり、しまいには「政府紙幣を発行しろ」と言い出したり(スティグリッツの説なのですが、リフレ派の皆様にとっては定説らしい)しているようであります。政府紙幣を発行したら、その分日銀券の流通が落ちるだけ(地域振興券でしたっけ?独身世帯のあっしは支給されませんでしたが)でしょうし、過剰に発行したら悪性インフレになるだけでしょう。
○資産担保証券買入絡みのお話も
資産担保証券買入に関しては一応ちゃんと議論をしていたようですな。
『何人かの委員は、資産担保証券の買入基準については、制度発足時より、資産担保証券市場の発展の状況等を踏まえて見直すこととしていたところであり、日本銀行によるこれまでの買入れの実績や、証券化市場フォーラムで出された市場関係者の意見も参考にしつつ、見直しの余地があるかどうかについて検討を行うこととしてはどうかとの意見を述べ、すべての委員がこれに賛同した。』
ということですが、こんな意見も出ていたようです。
『ある委員は、見直しに当たっては、現行スキームの導入時の考え方の基本線はしっかりと守るべきである、と述べたほか、何人かの委員は、市場の健全な発展を主眼とすべきであり、日本銀行による買入実績を増やすことに重点を置くべきではない、との見解を示した。』
せっかくそんな議論がされていた割には、結局の所「ただの骨抜き」としか思えないような要件緩和が発表されてしまいましたし、おまけにこれが全員一致だったということでしたな。少なくともこの「ある委員」は物申して反対票を投じても良かったのではないかと思いますけれども。
『中堅・中小企業金融の円滑化に資するとの観点から、「中堅・中小企業」をより肌理細かく定義する』(前回の金融政策決定会合での発表文より)といかにも定義を明確化しているかのような表現でやっている事は定義の大幅緩和という何とも強引なお話が通ってしまったのは何故なのか、個人的興味として気になる所ではあります。
本日はこんな所で。
2004/01/23
お題「相場と関係のない与太話3題」
もはや金融政策を論じても悲しいだけの論理崩壊ですので、本日は軽〜い与太話でも。
○個人向け劣後債発行っすか
東京三菱銀行が個人向けに7年もの劣後債、しかもコーラブルという中々大胆な商品を発行するそうです。2年後以降に発行体が期限前償還のオプション付きって奴ですな。発行条件が幾らになるのかは報道段階では「1.0%〜1.7%を想定」などと思いっきり幅のある話にはなっております。
この銀行は1年半ほど前に個人向けデュアルカレンシー社債という商品を何故か直接販売したことがあります。金融債じゃなくて銀行社債なのに何で銀行が直接販売できたのか(証取法に抵触しないのかという点で)激しく不思議なお話でありました。
どうもこの社債は一発公募販売しただけで終了となってしまったようで、興味を持ったあたくしが半年後に客の振りをして(現実に客なのですが)某支店に電話して問い合わせたところそんなお答えが(^^)。
新企画商品を個人向けに販売するというのは良い企画だとは思うのですが、この銀行さん前回の「デュアルカレンシー社債(って米ドル部分いかれてますな〜)」もそうなのですが、一発目から商品の仕組みが複雑すぎます。セールストークで使いやすい商品設計にしたと言う事なんでしょうけれども、最初から複雑な商品にしているのは勘ぐれば「条件が投資家に厳しいのをばれないようにする意図があるのでは」となってしまいますな。
小口販売するから条件が機関投資家向けの大口商品と比較するとかなり厳しい(というかボッタクリなんですが)ものになってしまうのは、ある程度までは仕方無い面もありますけど、業界トップの企業が業界のトップを切って企画する商品なんですから、もうちょっと「単純明快」「判りやすい」商品であり、かつ「機関投資家向け商品との比較でボッタクリ過ぎない」「真の意味で個人投資家を呼び込める」商品を企画していただきたかったな〜と思う訳です。
国債以外の金利商品にも個人投資家を引き込むってぇのは、政府日銀がよく言ってる「直接金融への流れ」を作るためにも軽視できないと思うのですが。発行側というか販売側というか、とにかく目先の収益ばかり考えて「市場の育成」を考えてないでしょ〜あんたたち、と突っ込みたくなるような今回の劣後債発行です。個人向け国債(あそこまで有利な商品を作る必要があるのかというのもありますが)を見習って頂きたいものであります。
青臭い書生論ではありますけどね、はい。
○日本の円売り介入に文句を言うのは筋違い
最近めっきり「日本の円売り介入はケシカラン」という諸外国の方々がいなくなってまいりました。まぁあたくしの駄文をお読みの方は既にこの後の話の流れが読めているとは思いますが(^^)、まぁ一つ。
日本の円売り介入は明らかに為替市場の需給を歪めておりまして、もう市場機能封殺もいい所。皺寄せが他通貨、特にユーロにやってきましてユーロ高を懸念する声もちらほら。
しかし、日本の円売り介入は、日銀の量的緩和政策との合わせ技で、「ブッシュ政権が行うレーガノミックス的経済政策」を強力にサポートするのが結果になっているな訳でして、この介入によって「財政拡大+低金利政策」というどこかの国が一生懸命やっている経済政策が実現されると言うものです。
日本以外に米国の財政赤字ファイナンスを支える存在が新たに現れる(米国の経常収支が黒字転換して自力ファイナンス可能になるのがベスト)のであれば、日本のドル買いの振りをした米国債買支え(と勝手に決めるなって言われそうですが)も終了できるでしょうが、そうでない状況では円売り介入は止められないでしょうな〜。
現実問題として米国経済が下支えされている(永遠に持つと勘違いして宇宙開発なんて言い出すブッシュ君には困ったものですが)と言う認識が広がっているので、段々日本の円売り介入に文句をつける人が少なくなってきているのではないかと思いますな。
○「資産インフレに備えて不動産投資」の落とし穴
基本的発想は間違っていないですし、資産インフレが始まった場合に預貯金持っていても仕方無いのは事実。しかし「資産インフレに備えて」と称してマンション投資をするのはあまり効率の良い話とは思えません。
建築に関する規制がどしどし緩和されて、最近は都心部での高層マンション相変わらず建築ラッシュ。もともとペンシルオフィスビルを作る積りだったと思われる所にもどしどしマンションが出来ております。再開発地域の多い東京駅からみて東南方向の地域での建築ペースはもう目を見張るものがあります。
土地の高度化利用と申しますか、縦への開発と申しますか。とにかくマンションの供給がこれだけ続いており、一方の需要は幾ら都心回帰が続いているとは言いましても需給バランスが取れているのか疑問に感じてしまいます。現にあっしの地元である中央区界隈では、中途半端に作ったマンションで新築だけど空室ありになっているものが分譲、賃貸とも結構あるわけです。新築以来1年以上「入居者募集中」の垂れ幕が外れない「駅前0分」の公団賃貸住宅なんてぇのもありますし。
てな訳で、非常にシロート的発想なのですが、土地の高度利用が可能になっている為に、マンションの供給力ってのは高まっている訳ですから(現実に絶賛供給中ですし)、投資対象としてのマンションというのは今後の需給を考えると必ずしも適切なものではないのかと思う訳です。
むしろ、高度利用が可能になる土地に投資すべきであろうかと。利用価値が高まれば土地の価格が上がるというロジックはそんなに変だとは思いません。マンションよりも高度利用可能な土地のほうが適切でしょうな。
問題はそんな土地を個人のレベルで買える訳がない事なんですけど(^^)。
では〜。
2004/01/22
お題「論理なき金融政策」
今回の金融政策変更に関連して引き続き。
○で、何のために緩和したのでしょうか?
金融政策決定会合の後に実施された総裁記者会見。日銀Webにアップされた要旨を拝読した第一印象は「論理的説明がありませんなぁ」というところでござりまする。どうも話の節々に「俺様がこういってるんだから正しいだろう」という総裁様のスタンスが見えてくるのですが・・・・・・。
で、冒頭で当座預金残高目標の引き上げに関しまして、
『このうち、当座預金残高目標値の引き上げは、デフレ克服に向けた日本銀行の政策スタンスを改めて明確に示し、今後の景気回復の動きをさらに確かなものとすることを目的とするものである。』
と、判ったようなわからないような説明をしておりますが、その後の質疑応答の中で「追加緩和を行った」とありがたいお言葉がございます。とある質問へのお答えの中にこんな件が。
『(前半部分割愛)今までも、量的緩和を進める過程で、オペレーション上の工夫等も含めて、我々は金利に頼らずに量に頼る金融緩和手法についてそれなりに腕を磨いてきたつもりだし、市場との対話のやり方についても──十分ではないかもしれないが──成果が上がるように努力を積んできているつもりである。そうした努力、あるいは幾ばくかの蓄積した自信の上に、今回さらに追加緩和を施すことによって、景気回復の芽を本物にしなければいけない、(以下割愛)
』
ちなみに前回の当座預金残高目標の引き上げに際してはこの点について火だるま状態になっておりまして、こんな事を言っておりました。
『まず最初に申し上げたいことは、これまで何回か日本銀行が流動性供給枠の増加を含め、緩和政策の措置を決め、この席で発表してきたが、いずれも、一言で言えば「経済の下振れリスクへの対応」であった。しかし今回は、経済の下振れリスクへの対応という観点に立った追加緩和ということではない。』
『情勢判断は上方修正しているので、ダウンサイド・リスクに対応した、従来通りの意味での緩和措置を追加したわけではない。従って、枠の下限というものは操作していない。オペレーションの余地を広げるために上限を広げたのである。なぜならば、上限一杯のところまで既に流動性を供給しているからであって、そこは非常に技術的な理由である。』
『資金の吸収、供給が技術的に困難になっているから枠を操作したということは全くない。現在、資金の吸収、供給とも極めて円滑に行われていて、金融市場局において、技術的に困難を感じているということは一切ない。従って、今日の措置はそうしたこととは全く関係がないということである。それから、枠を広げた理由というのは、先程から申し上げているとおり、機動的にオペをやっていく、これに尽きるわけであって、私どもはそれ以上のインプリケーションをこれに付与しているというつもりはない。』
前回の緩和の時は「これは緩和措置ではなくオペレーションの余地を広げる為の措置である」というような言い訳をしていた訳です。何せ「景気が緩やかに回復している」という情勢判断をしながら金融緩和とするという中央銀行の常識を逸脱する措置を取ったのですから、言い訳も必死な訳でした。
今回の緩和措置に関しては、もはやヤケクソとなっておりまして、堂々と「これは追加緩和です」と言い切りつつ、その理由が何がなんだか判らない「日銀のスタンスの明確化」というものであります。今回の金融緩和措置の理由を何度か質問されているのですが、引用する気力も湧かない訳の判らない答えになっております。正直、今回の記者会見要旨は一読しても何が何だかさっぱりわからないところが多々ございます。
質疑応答における総裁のコメントを通して読むと、論理的に整合性が取れないような気がするのですが、どこがどう整合性が取れないのか今一歩あたくしも指摘できないので、まぁそのうち気がついたらご報告いたします。量的緩和の拡大に関する意味付けに対して明確な答えが出ていないというのが正直な印象。
例えば・・・・
『(問)企業と銀行がバランスシートの構造調整をしている中、銀行の外になかなかお金が出て行かないということで、マネーサプライが伸びないのだと思う。そうした状況の下、量的緩和を拡大し、銀行の構造調整をサポートすることにより、どのような具体的な効果を期待されているのか、教えて頂きたい。』
『(答)まず抽象的なことから申し上げれば、金融緩和環境というものを万全な上にも万全な状況で用意して、企業・金融機関がリストラ努力をする場合の金融環境を最も恵まれた状態にし、それをキープしていくということだ。』
『金融緩和環境と抽象的に申し上げたが、より具体的に言えば、まず、短期金利が非常に低いところで安定し、かつできる限り期間の長い金利についても低位で安定するように──長短ともなるべく金利が低いところに安定的に抑制されているように──する。2番目には、金融市場に様々なニュースとか、場合によってはショックが持ち込まれてきた場合にも、金融市場で不安感が増幅されて、人々がリストラや前向きな努力に対して素直な気持ちでこれに取り組めない──心配が先行する──というような状況をなくすということだ。』
『今までも、量的緩和を進める過程で、オペレーション上の工夫等も含めて、我々は金利に頼らずに量に頼る金融緩和手法についてそれなりに腕を磨いてきたつもりだし、市場との対話のやり方についても──十分ではないかもしれないが──成果が上がるように努力を積んできているつもりである。そうした努力、あるいは幾ばくかの蓄積した自信の上に、今回さらに追加緩和を施すことによって、景気回復の芽を本物にしなければいけない、これからの一番大事な時期──日本の全ての企業・金融機関が同じように意識しているこの大事なタイミング──に、我々もしっかりとした金融緩和の環境をより明確に整えたいということだ。我々は従来よりもさらに完ぺきなものにしていく自信があるということである。』
いや、さっぱりわからん。。。。
まぁ要するに最大の問題は金利機能を封殺した状態で実施される量的緩和の拡大っつーのがどういう効果を持つのかの検証が行われていないということでしょうか。実質的には岩田副総裁が指摘するように事後的な円売り介入非不胎化の役にしか立っていないように思えますがね。
○金融経済月報
昨日はご紹介しませんでしたが、金融経済月報が公表されております。いつも基本的見解ってところを見ておりますが、今回はものの見事に前月に発表されたものと同じような文章になっております。
ただ、まるで同じ文章にしておきますと「じゃあ何故今回当座預金残高目標の引き上げをしたんでしょうか」という突込みを受けるのが必至な訳ですので、おためごかしに基本的見解のまとめの部分をこういう風に書いております。
『わが国の経済・物価動向は、昨年10月の「経済・物価の将来展望とリスク評価」(展望レポート)で示した経済・物価の標準シナリオに概ね沿った動きを続ける、と予想される。こうしたシナリオが上振れまたは下振れるリスク要因としては、引き続き、海外経済の動向、金融・為替市場の動向、不良債権処理や金融システムの動向および国内民間需要の動向が挙げられる。このうち、海外経済については、下振れるリスクが展望レポート公表時に比べ小さくなっていると評価できる。一方、金融・為替市場の動きとその影響には注意が必要である。』
どこからどう見ても、今回あえて当座預金残高目標引き上げを行う理由に乏しいのですが、この最後の『金融・為替市場の動きとその影響には注意が必要』というのがどうも当座預金残高目標をわざわざ引き上げる理由らしいですな。理解に苦しみますが。
と、まぁそういう事で、今回の金融政策に関して論評致しますと、「中央銀行として重視すべき説明責任や論理的整合性を完全に無視している」という所になるでしょう。
緊急避難だか何だか判りませんが、中央銀行が「何でもありの行き当たりばったり」という政策を取る事によって喪われる「政策への信任」というものに関しては無頓着なのでしょうか。実に憂慮すべき事態でございますな。
ちと本日は時間がなくて舌足らず的になっております事をお詫び致します。
2004/01/21
お題「『金融政策変更』を過去の発言などから整理しました」
昨日の金融政策決定会合。ほぼ大勢は「追加緩和なし」と見ていたようですが、あたくしも伊達に自称日銀ウォッチャーやってません。とうとうやりやがってくれました。あまり当って欲しくない予想が当るのも複雑な気分ではあります。
それでは今回の金融政策決定会合での変更点をチェック、あるいは罵倒してみましょう(^^)。
○当座預金残高目標の引き上げ
『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、金融調節の主たる操作目標である日本銀行当座預金残高の目標値を、これまでの「27〜32兆円程度」から「30〜35兆円程度」に引き上げることを決定した。』
と言う事でして、大体3兆円の目標値引き上げであります。既に先日来ドラめもんだけでなくほんまものの有識者からも「円売り介入の不胎化操作によるクラウディングアウトを防止するための引き上げに過ぎない」と言われておりますし、昨年10月2日にはマネーサプライ真理教徒の岩田日銀副総裁が記者会見で以下のように言及している事は以前こちらのドラめもんでご紹介しているかと存じます。
『8月18日の記事についてであるが、先週、内閣府の国際セミナーでも同様のことを申し上げた。すなわち、今年に入ってからの為替介入額は、財務省の発表によると、現時点では13.5兆円、先月までは9兆円程度であった。一方、年初からの日本銀行の追加的な流動性の供給額は計10兆円──3月2兆円、4月5兆円、5月3兆円──で、偶然ではあるが、為替介入額と追加的な流動性の供給額がほぼ同額であった。このように、国内の流動性の供給と介入を併せて行うと、事後的には、「非不胎化政策」と呼ばれる政策を実行したのと同じ効果が出る。また、これも結果的にはであるが、日本銀行が米国債を購入するのと同じ経済効果が生じる、ということを申し上げた。』
まぁ事後的であれ、従来の日銀理論では実行し得なかった「非不胎化政策」が実施できているのですから岩田副総裁もニッコリと言う事でしょう。一応岩田副総裁はこの(昨年10月の)会見では「あくまでも事後的に発生していることだ」というスタンスでして、同じ会見で「だからと言って介入額の増加=追加的金融緩和の量」である必要は無いとの趣旨の発言もしております。
何はともあれ、今回の当座預金残高目標額の引き上げの理由はこんな感じです。
『日本銀行は、以上のような情勢(引用者注:景気は緩やかに回復し持続性もある。物価は需給バランス改善しつつも小幅下落で、金融為替市場の動きがリスク要因)を踏まえ、デフレ克服に向けた日本銀行の政策スタンスを改めて明確に示し、今後の景気回復の動きをさらに確かなものとする趣旨から、当座預金残高の目標値の引き上げを行うことが適当と判断した。』
もはや説得力皆無です。まるで何処かの国の首相がやっている事と同じではないかと申し上げておきましょう。そういえば瞬間的に話は飛びますが、某国首相はイラクへの派兵の言い訳に事もあろうに「兼愛」「非攻」「尚賢」をモットーにした(尚賢はどうでもよいが)墨子の言葉を引用したそうですな。もうアフォかヴァカかと。
という余計は話は置いておくとしまして、岩田副総裁が過去に指摘しているように
・事後的には、「非不胎化政策」と呼ばれる政策を実行したのと同じ効果が出る
・結果的にはであるが、日本銀行が米国債を購入するのと同じ経済効果が生じる
という当座預金残高目標の引き上げ。金融経済情勢がより一層の緩和を求めるような状況でもないのに目標額を引き上げると言うのでは、岩田副総裁の指摘通りのことが政策目的になっているのではないかと言われても全く反論できないでしょうな。
と言うわけで、金利をゼロにして流動性を供給することによって「ポートフォリオリバランス効果」を期待していた現在の金融政策の枠組みはとっくの昔に崩壊しておりますが、その代わりに日銀の流動性供給で米国債券市場が堅調に推移するために世界景気の下支えが出来きるという無茶苦茶な経路で、量的緩和が国内へ波及効果をもたらしたという事になるのでしょう。
軍事でも経済でもご奉仕とまるで宗主国の手先(以下自主規制)・・・・・
さて、この論理的破綻を来たしている当座預金残高目標額の引き上げなんですけど、もう一つ寒いものを感じたのは総裁記者会見で明らかにされたのですが、「反対が2票しかなかった」という事です。
ご存知の通り、最初は田谷さん、その後は須田さんも反対に加わり、最近は植田さんも「理念無き当座預金残高目標引き上げ」に反対票を投じていると言われておりました。ところが今回、そのうちの1名が脱落(予想では植田さん)してしまったのです。
明らかに今回の当座預金目標引き上げは「円売り介入の事後的な非不胎化」を狙ったものであって、「財務省の円売り介入への強力なサポート」として位置付けられるべきものであります。その性格は前回の引き上げと全く同じであり、なお露骨になってきております。
然るに、今回反対票が1票減ったというのは、完全諦観モードになっているのか、はたまた円売り介入非不胎化賛成なのか良く判りませんが、何はともあれ日銀の政策委員会の機能が壊れてきているという事を意味するのではないかと思う訳でございます。
もはや中央銀行としての矜持も理念もなくなった日本銀行はどこに行くんでしょうかね〜。
○資産担保証券買入の基準緩和
福井総裁の提唱で始まったような鳴り物入りの資産担保証券買入。元はといえば就任記者会見におけるこんな所から始まっている訳ですな。
『日本銀行としては、この面で、国民の皆様の期待に応えられるように、引き続き、知恵を出してまいりたい。「知恵を出してまいりたい」という意味は、日本銀行の最も有力な武器である金利機能が使えない状況に至っているということであるので、日本銀行の総力を挙げて知恵を絞り出し、それによって適切な対処をしていきたいということだ。』
『流動性をより多く供給することによって、マネーサプライ増加につなげる、あるいは実体経済に対して良い影響を与えていくということであるから、それは日本銀行が流動性を供給したその後の伝達径路が、十分磨かれていないと目的を達成できない。お金は供給したけれど、金融部門の中で空回りする事態になる。これまでのところ、そういった状況がかなり現出しており、いわゆる「流動性の罠」にはまったような状況が続いているということである。』
『従って、デリバリー・チャネルというか、お金を末端にきちんと届けるという「出前持ち」のような仕事は、大変地味に見えるが、そこを愚直にやっていきたい。そのためには、銀行貸出のルート、あるいは銀行貸出のルートを通じない場合には、債券市場その他のマーケットの機能の活用を通じて、お金が広く伝播することを考えていかなければならない。』
このあたりが福井さんお得意の「企業金融の目詰まり論」の基本となる部分であります。現実問題ということでは、業務内容は良いけれども財務内容やら何やらの事情で中小企業を中心として企業金融が円滑に機能していないために、乃公いずくんば蒼生をいかにせんって感じで開始した訳であります。>資産担保証券買入
で、始めてみたものの、元々根本であります現状認識が変なので、ニーズがある訳なし。よってオペが機能しない。という悪態は昨日も申し上げたと思います。残念ながら予想通りに(-_-メ)、政策目標の達成よりもオペを機能させる事が日銀にとっては重要だそうで、オペの存続というか拡大解釈によってオペを実施することが目標に摩り替わってしまいました。
で、この内容なのですが、中々香しいものを感じさせます。
元々が「企業金融に目詰まりが生じており、本来資金が供給されるべき優良な中堅・中小企業に資金が回りにくくなっている」という(ありもしない)問題を解決する政策目的で始まった政策ですので、買入対象となる資産担保証券には要件がありました。曰く、
(1)中堅・中小企業関連債権比率要件
・裏付資産に占める中堅・中小企業関連の割合が「金額ベース」で5割を下回らないこと。
・中堅・中小企業は「資本金10億円未満」の会社と定義。
(2)正常先要件
・裏付資産に金融機関の貸付債権が含まれる場合、各貸付債権の債務者が自己査定上の「正常先」に分類されていること。
(3)格付要件
・ABCP等は、a−1格相当の格付を複数取得していること。
・ABS等は、BB格相当以上の格付を複数取得していること。
本来の政策目的を達成する為には実に当然な要件でありますが、ABSのBB格ってのは結構ゆるゆるな要件ですな。で、今回はこれが緩和されたのですが・・・・・・・
(1)の要件については
・5割の算出ベースを「金額または件数」に拡大(件数ベースで5割も可とする)。
・中堅・中小企業の定義を「資本金10億円未満または常用雇用者数999人以下」の会社に拡大。
と言うことです。幾ら何でも最初から極端な事はしないと思いますが、この定義ですとお為ごかしに数千万円程度の中小企業債権を件数稼ぎにプールしておいてドカンと大企業向けの債権をぶちこんだ資産担保証券も対象になるという訳です。実に香しい。
おまけに「常用雇用者数999人以下」という事ですが、なんちゃらホールディングなどという持株会社を始めとして、大企業の金融子会社あたりも見事に対象になってくる事でしょう。非常に香しいものを感じます。要件緩和で骨抜きもいいとこ。
この骨抜きの言い訳がお笑いなのでご紹介しておきましょう(-_-メ)。
・中堅・中小企業関連債権を裏付資産に組み入れるインセンティブを高めるため、新たに「件数」に関する基準を追加し、当該基準を満たす資産担保証券も買入対象に加える。
・中堅・中小企業金融の円滑化に資するとの観点から、「中堅・中小企業」をより肌理細かく定義する。
特にお笑いなのは2番目ですな。「きめ細かく定義」っていうのは定義を厳格化する場合に言う言葉であって、「または」で対象を拡大しておいて「きめ細かく」もあった物ではないでしょう。もしかしてギャグですか??
と、悪態をついた所で(2)の要件ですが、こちらの緩和は簡単でして、
・本要件を撤廃する。
です。元々ABSに至ってはBB格付け(元利金の回収に懸念があるって奴ですな)のものまで買入というゆるゆる要件があるので、この要件を撤廃した挙句に(1)の要件が緩和されると、ど〜ゆ〜事になるのでしょうか。
極端な話しをすれば、大口要管理先以下へのでかい貸出債権としょぼい中小企業への貸出債権をプールしたABSを組成しておけば、そのABSのうちBB格部分までは日銀がお買上してくださるという実に美しい話になる訳ですな。
現状では投資適格部分については世の中の機関投資家様が先を争ってお買上となっていますので、不適格部分だけ日銀に押し付ければ良い訳ですな。そのうち格付け要件も緩和されるのではないか(今回も緩和されてますが大勢に影響がない緩和です)という気がしてきます。
本来の政策目的がどこかに行ってしまい、総裁の鶴の一声で鳴り物入りで始まった「画期的な新政策」それ自身を実行させるために驀進する日本銀行。もう情けないとしか申し上げようがありません。世界に稀なる中央銀行です。
○と言うことで、今回の政策レビュー
散々書きましたのでまとめも何もあったものではありませんが(と、あたくし既に激怒状態ですな^^)、今回の政策は近代国家における中央銀行設立の意義、即ち「中央銀行の政治からの独立」を自ら破壊するという実に素晴らしい行為でありまして、そのような歴史的な大仕事を達成された福井総裁さまの英断には実に頭が下がる思いです。
特に大衆民主主義における政治っつーのは極めて場当たり的目先的な政策に走るというのは致し方無い面がございます。そういう意味では某学者大臣さまなんぞ政治における素晴らしい活躍をする資質をお持ちのお方ではございます。
しかし、通貨の番人(正確には通貨価値の番人ではないかと思いますが)たる中央銀行は政治とは一線を画して良くも悪くも安定して構えていないと、通貨の番人たる役割が果たせないというものです。
この調子では、政治からの要求に対して日銀は何でもやるという状況が益々進行することになるでしょう。政治としては結構な打ち出の小槌が出来たわけでして、日銀法改正の理念も全て崩壊という事でしょう。
行き着く先は財政インフレだと思いますよ。何時やってくるのか判りませんが。
2004/01/20
お題「あまり纏まっていないので箇条書きモード」
や〜(^^)、調子に乗って2日連続で相場見通しについて能書きを垂れたらきっちりと外しましたな。とほほのほ。
通常国会も始まりますし、金融政策決定会合も実施という事で、やっと政策も動き出す(かど〜かは知らんが)のでもう直ぐネタには困らないでしょうな。只今端境期。
○金融政策決定会合の注目点
本日の決定会合は日銀の「展望レポート」の四半期ごとの見直しというのが公表されるらしく、ど〜ゆ〜内容になるのかが注目される所です。
と、申しましても最近の政府経済見通しなんかを見ていると、「景気は回復傾向だけど物価は横ばいないしは弱含み」という従来の見通しの延長線上になるでしょう。あたくしの考える理由は非常に単純でして、「まだ時間軸を短縮する訳に行かない」と言う事。あまりにも早くに景気回復モードになってしまった為に、債券市場は暴落スパイラルから早期利上げまで織り込んでまった昨年の反省からして、時間軸が短期化するというような印象を持たせる訳には行かないでしょう。
ところで、昨日もNY市場の祝日を狙ったのかどうか知りませんが、円売り介入があったのではないかと思われる動きが為替市場にございました。相変わらずの円売り介入で、短期金融市場での日銀のオペレーションがややしんどくなっている印象があります。資金供給オペを長めの期間で実施しようとすると、同時または予め資金の吸収オペを実施しないといけない(当座預金残高目標を理由も無く突破しちゃうから)状況になってしまいました。
そんな訳でして「円高への経済への悪影響を緩和する為」と銘打って当座預金残高を引き上げる(実態は介入の非不胎化というマネーサプライ真理教の皆様大喜びの政策なのですが)という苦し紛れの政策もありかなとは思うわけであります。何せ介入の向こうは財政赤字絶賛拡大中の米国大統領でございますから、弾は用意しておかないといけませんな(-_-メ)。
○金融政策にも「損切り」が必要なのではないかと
福井総裁になってからというもの、色々と新たな機軸を打ち出すのがお得意な技となってしまいました。まぁあまり意味があるのかどうか良く判らないけれどもとりあえずサプライズみたいな政策を出すのがお好きな方(どこかの首相みたいですな)だと言うのは良く判りましたが・・・・・
資産担保証券の買取りは本来の「企業金融の目詰まり論」が事実誤認に基づくものだったと思われまして、政策目標に合致した形で実施したオペレーションは開店休業状態(-_-メ)。で、開店休業ならば廃業(オペから撤退)すれば良い物な筈ですが、先日の証券化市場フォーラム(何で日銀が主催しているのか理解に苦しみますがそれは兎も角)では「資産担保証券の買取をより利用しやすくする」などとあらぬ方向に驀進中。本日の金融政策決定会合で何らかの進展があるはずです。
一たび政策が動き出すと政策の実施それ自体が目的になってしまい、本来の目的たる「政策目標の達成」がどこかに行ってしまうというのでは、どこぞの干拓やら河口堰やらダムなんぞを笑えないというものです。というか、土木系公共事業は中止すると雇用が喪失しますが、機能しない金融政策を止めても別に誰も困らないと思うんですけど、どうなっているんでしょうね〜♪
あ、強力に実施を言い出したとある人物の体面上困るのか(-_-メ)。
折角おっぱじめた「長期間の手形オペ、債券買現先オペ」も碌に実施していない(まぁこれもやりすぎると技術的に逆効果なのでやらない方がよいのですが)わけですし、何とかならんもんですかね。訳の判らんものまで日銀が買い取って、震災手形状態になったら洒落にならんのですが。
○構造改革と経済財政の中期展望
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2004/040119kaikaku.html
昨日の閣議で正式に決定した表題の「中期展望改訂版」をパラパラと眺めていたのですが、何をどうやりたいのかあたくしの知能では判りかねる所が多々ありますので困ったものだと思いつつ。
金融政策に絡むお話は当たり前ですがヘイゾー先生の面目躍如。金融政策に直接絡む話しはそんなにありませんが、その中には「資金供給」のお言葉が並ぶ並ぶ。
『金融仲介機能を回復することや産業金融機能を強化することにより、資金供給を
円滑化する。』
『日本銀行は(中略)コミットメントをより明確化した。このコミットメントに
従った、潤沢な資金供給が期待される。』
『さらに、政府の行うより強固な金融システムの構築に向けた取組と、日本銀行による金融政策の波及メカニズムを強化するための取組などにより、資金供給が増大していくことが期待される。』
マネーサプライを増やすと何故景気が好転するのかさっぱり判らない、と申しますか通貨やら国債やらへの信認を維持したまま人為的にマネーサプライを増大させる方法(減らすのは可能だとおもうが)が有るのでしょうか??という疑問がありますな。しかもその疑問に関する答えは既に実証されているような悪寒が・・・・・・
「金融政策の波及メカニズムを強化するための取組」って資産担保証券の買取なんでしょうから、残念ながら当分は撤退しないようですな。泥沼化しないようにしましょう。
ま〜よくもまぁこれだけ訳の判らん文章を作りますな〜という感じなのですが、どこがどう変なのか良く判らんという情けない状況ですので、また後日考えてみます。それにしても「改革工程表」をまた改定するそうで、子供の「お勉強計画」じゃあるまいし・・・・・・と思うのでありました。
甚だ纏まっておりませんがこんな所で。
2004/01/19
お題「債券先物139円は通過点か?」
金曜日に割と強気な相場コメントをしたら超久し振りに大当たり致しました。何でこんな外部環境で強気相場になるのか理解に苦しみますが、これはもしかしてもしかするとレンジ相場遂にブレイクかという感じもする訳でございます。
で、お題のお話になる訳ですが、某識者の方が「債券先物139円台での引けって殆どないですな〜」という指摘をしておりまして、言われてみれば・・・・・・ってな所です。
○昨年は通過点でした
あたくしの手元にあります手控帳によりますと(と言う所が情けないのですが)、昨年1年間で債券先物が139円台で引けたのは7月3日、7日、8日と8月18日の4営業日となっております。言われて帳面パラパラめくっていてある意味感心しちゃったのですけれども(^^)。で、この2回の債券先物139円台なのですが、どういう事になっていたかと申しますと、
7月3日→長期債中心に相場が急落した6月からの債券相場暴落第一弾の真っ最中。10年国債の入札がテール90銭という大不調入札で、前日比163円も下落した日。
7月7日〜8日→4日に某機関投資家によると言われる強力な買いで下落のピークをつけた相場が反発。あまりにも下落と上昇が派手だったので利食いが出て緩んだ日。翌日からは戻り相場になりました。
8月18日→中期債を中心に売りが出て相場が崩壊した債券相場暴落第2弾の真っ最中。日経225が引けベースで10000円を回復した日でもあります。前日比89銭下落した日なのですが、翌日は133銭下落とまさしく通過点でございました。
てな状況(あたくしの手控記録ベースですので、間違っていたらゴメンナサイ)でございまして、この位置ってぇのは実に居心地が悪いようですな。先物の価格だけを単純に比較するのは正確性において少々問題があるのですが、まぁ非常にざっくりとした話として考えますと、理由不明ながらこの139円台というのは相場の通過点だと言うことになるのでしょうな。
○株高+債券高??
何となく平均株価の動きと関係なく動くようになってきました債券市場。短期金融市場での資金ジャブジャブ状態と呼応した感じでの相場上昇という雰囲気が何となくする所でもあります。
中期債に売りが出て相場が崩壊した昨年の8月後半以降、2年新発債が0.1%を上回る状況が続いていたのですが(8月18日が最後の0.1%割れなんですけど、これがまた)、先日も指摘したように、最近は2年債が0.1%割れ状態を続けております。中短期債を中心に相場の堅調さが維持されていると言う事でして、もしかしてもしかすると債券相場崩壊第2弾の逆をゆっくりと始めたのかも知れませんな。
とは言いましても、外部環境的にはどこからどう考えても金利が趨勢として低下するとは思えない訳でして、仮に相場が目出度く(かどうかは知りませんが)戻ったとしても、その戻りは「債券相場暴落第1弾」の後の戻り程度ってことでしょうか。
良く良く考えてみれば昨年債券市場下落は景況感の改善、と言うよりは単に株式市場の戻りなんですけど、まぁ景気回復をテーマに長期債が売られて始まったものでして、その後の中期債売りでの下落は過剰なまでに金融政策変更の可能性を織り込んだ下げと言う意味では、余計な下げでもあるわけです。と、そんな屁理屈を捏ねれば、今回の債券相場の戻りも違和感がありながらも正当化出来たりする訳です。
勿論、その背景には円売り介入によります資金大余剰状態というのがあると思うのですけれどもね。
○ところで金融政策決定会合ですが
金融政策決定会合です。円売り介入のサポートの為に当座預金残高目標を屁理屈をつけて引き上げるという荒業が起きる可能性は無しとは言えませんが、常識的に考えれば何もないと見るものでしょう。物価に関する見方をどうするのかというのが難しいお話でして、先日も鉄鉱石の輸入価格引き上げのニュースがあったり、鳥インフルエンザが流行してみたりとCPIに色々と影響しそうな事があちこちで起きているのをどう捉えるのでしょうな。
一応、現在の表向きの政策の枠組みは「消費者物価指数が趨勢的に前年同月比プラスとなる」事を持ってデフレ終了と認識するようです(実態は円売り介入の為に当座預金残高目標を累増させているだけのようですが)ので、そのあたりの議論がどうなったかというお話に関しては要注意。
散々強気の話をしておいて何ですが、時間軸への信用が薄れるとまた悲惨な相場が待っている訳ですので、その点だけは要注意。まぁ日銀も馬鹿ではないのでそんな事はしないと思います。
って書いている所でふと思ったのですが、所謂「ディマンド・プル」型のインフレならば金融引締めの意味もあると思うのですが、「コスト・プッシュ」でデフレが解消されて金融緩和を終了(今の量的緩和を終了させると相当の引き締め効果があると思いますよ〜)したら只のスタグフレーションになってしまうんじゃないでしょうかね〜。よー判りませんが。
と言う事で、本日の債券市場もまた注目と言ったところですな。
2004/01/16
お題「強気相場の復活か、それとも・・・・・」
連日同じ話というのもなんですので久々に目の前にある相場の与太話をば。
昨日は5年国債入札が実施されました。落札結果は事前のプライストークのコンセンサスらしき水準からきっちり1銭高い水準になりまして、市場観測では銀行系と言われる証券会社の落札が目立ちました。
平均株価が例によって11000円を前に力無く軟調モードになっていたり、米国10年債が4%割れと堅調だったりするのもあるのですが、入札という玉が放出される大イベントでも相場が下がらないとは恐るべしといった所であります。
○堅調な中短期ゾーン
最近2年ゾーンの国債がやたらと堅調になっております。2年物新発国債が0.1%割れとなり引き続き安定推移という状況は久々に(不覚にも手控えが無いので具体的時期書けませんが昨年の債券暴落第2弾以降久し振りって感じですから5ヶ月振り位ではないかと)見る相場でございます。
2年ゾーンといえば金融政策の変更でまともに影響を受けるゾーンですので、逆に申し上げれば2年近辺の金利水準を見ていると、市場が何となく考えている将来の金融政策を想像できると言う物であります。まぁ相場ですから理解不能なオーバーシュートをする事もあるんですけどね。
てな観点から2年金利が0.1%割れとなっている事を見ますと、市場は「時間軸の延長」を徐々に織り込みに来ているというお話になる訳です。物価に関るニュースを見ている限りにおいては、量的緩和政策の期間が延長されるようなイメージも掴めない所でして、まぁ相変わらず市場は先走りし過ぎじゃの〜と思ってはおりますが。
この2年ゾーン国債の堅調推移なんですけど、まさか平均株価が11000円を前に頭打ちになっているからとか、短期金融市場で資金不足月に大量に実施された円売り介入のせいで資金がジャブジャブになったから買っているなどという安直なる理由では無いと思いたい所ですな。
見極めには今しばらく様子を見る必要はあるかと思いますが、この調子で2年ゾーンの金利が安定推移するようですと、「時間軸の長期化」というテーマが浮上してくると思います。
○昨年のスーパー強気相場との違い
で、昨年も何気に時間軸の長期化などと言って強気相場をやっておりました。本来は時間軸の長期化っつーのは「イールドカーブを手前から順に潰していく」となる筈なのですが、ディーリング意欲(あるいは山っ気とも言いますが)旺盛の銀行勢(メガバンクだけではありません)の買い買いパワーが炸裂していきなり長期債やら超長期債やらが買われるというフラットニング相場になってしまいました。
今回はどうなるのかっつーのは実際に強気相場になって見ないとわからない(だいたい強気相場になるんかいなという気もしますし・・・・・)のですが、昨年と今年の違いは「新値を取りに向かっている相場」「戻り高値をつけに行っている相場」という点でございましょう。
今回は「昔に戻る相場」なわけでして、そ〜ゆ〜相場に非常にありがちなお話としまして「相場が戻ってラッキーラッキー♪」という過去の塩漬け腐れポジション復活に伴う売りってぇ奴が出て来るわけでござんす。まぁ昨日なんかもそうなのですが、節目に来ると長期債中心に売りがバカスカやってまいります(それでも相場が下がらないのが凄いんですけど)。
もう一点は当然ながら株価やら物価やらの動向であります。常識的に考えると、時間軸は若干伸びているのかもしれませんが、過去の強気相場時点で想定されていたような長さまで戻る事は有り得ないですから、そう考えますとやはり長期債やら超長期債やらに強力な買いが入るというのも無理がある想像でしょう。
おまけに申し上げれば、昨年の債券相場暴騰暴落祭りで「キャピタル狙い(とは投資家を名乗る手前死んでも公式には認めないでしょうけれども)の債券投資」をおこなっていた皆様(特に銀行業態。資金構造考えたら超長期国債なんて買えるのかよ・・・・・)が総員玉砕と相成りましたので(-_-メ)、今やテーマは「キャリー狙いの投資(の割には入替売買とか相変わらずですけどね)」となっている訳でしょう。
○ということで結論はブル(になるなら)スティープにならないかな〜と
キャピタルゲインを狙いたければ長期債なんぞを買うほうが効率が良いのですけど、そ〜ゆ〜投資はいけませんな〜という状況でありますので、今度強気相場になる(かどうかはまだ確定してません)とすれば、相場の流れは「ブルフラット」にはならずに「イールドカーブを手前から徐々に潰して行くブルスティープ」になるのではないかと勝手に考えております。
でも、相場って勢いつくとそんな小理屈が及ばなくなって、「なーに下がらないなら長期債買っとけや」みたいなノリになったりする可能性も否定できず。投資は自己責任でよろしくお願い致します(^^)。
皆様とっくにお気付きかも知れませんが、あたくしがこ〜ゆ〜感じで相場の見通しの話をすると、何かが憑依したのではないかと思うほどの外しっぷりが続いておる訳です。非常に恥ずかしく間抜けではありますが・・・・・・と言う事もご参考にされると吉かと、とほほのほ。
逆にいえばあたくしが当りだすというのはレンジ相場からトレンド相場に転換するって事なので(レンジ相場を苦手とするチャブツキが得意なディーラーっす)それもまたご参考に(^^)/~~
2004/01/15
お題「連日の量的緩和談義」
最初に激しく重要な正誤。昨日と一昨日に為替介入資金の「不胎化」がどうのこうのというごたくを並べましたが、「円売り介入によって市場に供給された円資金を金融市場から吸収しない」というのは「非不胎化」というのでした。思いっきり間違えておりました事を陳謝致しつつこの場で訂正させていただきます。申し訳ございません。
さてさて、マーケット的にネタもございませんので、引き続き同じネタで引っ張りましょう。某著名日銀ウォッチャー様のレポートで量的緩和の出口問題を為替と絡めて議論しているというものが既に先週金曜日に出ていたそうでして、昨日同僚から見せてもらったのですが、概ね同じような事を指摘していたので嬉しく思いました(と自画自賛)。
ただ、某氏の場合は「為替市場への介入は結果として不胎化されている」という結論になっている所があたくしと違うのですが・・・・・・「日銀の当座預金残高目標引き上げの意味付けは今や為替市場への介入を通じた米国金融市場下支え」などという事を会社の名前を背負って書くのは「日銀に喧嘩を売る」というのと同値であるので書けませんわな。心中お察しいたします。>某氏
前振りの与太話が長くなってしまいましたが、本日は別の観点から量的緩和政策を考察してみましょう。
○量的緩和を無邪気に解除した場合に何が起こるのか
昨日の論理展開で行きますと、量的緩和政策というのは実はCPIターゲットが達成されただけでは解除できない訳でして、米国のプライマリーバランスの達成とまでは言いませんが、米国の財政赤字ファイナンスを強力に行わなくても何とかなる状況になるまでは量的緩和政策を継続する必要があるという話でございます。
とは言いながらも、日銀はそんなことは心で思っていても絶対そうは認めない訳でございます(そういうのを欺瞞というのですが)。日銀執行部(というか福井総裁)は昨年の「量的緩和出口政策議論」に見られますように、現状の不本意なる金融政策はとっとと終わらせたいというのが本音かと思います。昨年後半に何度となくご紹介した福井総裁の講演もやたら「景気回復奉祝奉祝」モードになっており、福井総裁が審議委員中一番の景気強気派のようです。
そんな事を考えますと、そもそも日銀は量的緩和政策を終わらせたがっていると考えるのも大いに合理的な推論でございます。で、実態ベースは量的緩和政策が米国の「低金利+財政拡大」という金融財政政策を支える構図になっている事なんぞは無視して「CPIターゲット達成おめでとうございます。デフレは終息しました」と言ってあっさりと量的緩和政策を解除する可能性は大いにある訳でございます。
この場合何が起こるのでしょうか??
@為替介入弾切れ→米国債と米ドルの下落
介入が弾切れした位で米国債が崩れるというのも極端なお話かもしれませんが、これだけ大規模介入を行っていると米国の財政赤字ファイナンスに対して介入が占める比重が高くなって来てしまう訳でして(具体的な数字を出さないところがちと情けないですな)、米ドル下落が先に来てから米国債の支え役がいないことに気が付いて下落となるのでしょうな。
そもそも日本の介入が無ければとっくの昔に上記のような状態になっている筈でして、日本の円売り介入によって余計な先送りが行われているというのが現状なのではないかと思います。余計な先送りをすると問題がドンドン大きくなって、悲劇的な最後を迎える(極稀には先送り中に問題が解決されますが)というのは日本のあちこちで起きている現象かと思いますがねぇ。
A無理矢理介入→日本の短期金利急上昇
量的緩和と金利ターゲットというのは技術的に成り立たないお話ですので、現在の規模で介入を継続的に実施すると、円売りを行った時点で短期金融市場の円資金が余剰になりますので、ベースマネーが拡大しないならば余剰分の円資金は売りオペなど(最終的なケツは政府短期証券の発行増になります)で吸収しないといけない訳であります。売りオペにせよFB発行増にせよ短期金融市場ではテクニカル的に金利上昇要因になる訳ですな。
全然意味は違いますが、資金フローだけ見ますと円売り介入っつーのは国内短期金融市場のお金で米国債を買っているとも言えるわけでして、本来国内短期金融市場で回るべき金が米国債に化けてしまえば、それだけ資金需給が逼迫する。といった方が(ややこじつけ的説明ですが)良いかもしれませんな。
他にもバリエーションが考えられそうなのですが、あたくしが今のところ思いつくのはこんなところでしょうか。。。
○そもそも「財政拡大+低金利」と言っても・・・・・
米国が日本の真似をするが如く財政拡大+低金利(+自国通貨安)という縁起が悪い金融経済政策を実施しておりますが、日本と米国では状況が全然違う訳で、そもそも一緒くたに論じるのも乱暴ではあります。日本の場合は財政拡大を自国内でファイナンス可能なのですが、米国の場合はファイナンス出来ませんわな。その代わりに米国には基軸通貨国だというのが大いなるメリットな訳ですが。
その辺を考え出すとこれまた無限思考ループに入ってしまうので以下省略、というか考え纏まってないので書けません。
○リスクシナリオはドル高かドル安か?
まぁその原因によってどっちが危ないとも言えないですが、これもまた思考実験ということで・・・・・・・
@ドル高のケース
一番洒落にならないケースというのは日本からの資本逃避して、ドル高というよりは円安になった時ではないかと思います。今や米国までも支えるという豪気な日本財政(介入資金は結局財政資金ですから)が無事に回っているのはひとえにマネーが国内に滞留しているからでしょう。
資本逃避が真面目に起き出しますと「円安で景気回復」の前に財政が回らなくなって財政インフレが起きる危険性の方が高いのではないかと思うのですが、例によって数字的な論証が無いのであまり説得力のあるはなしではありませんな(汗)。
単純に現在のドル安状況が改善されるのであれば、米国の「双子の赤字」に対する懸念が後退している事を意味する訳ですから、それは日米融通手形経済状況からの脱却に向けたチャンスになるかとは思います。
調子に乗って「月面開発を行う」とか益々大風呂敷状態になっているブッシュ君が大統領やっているうちは財政均衡化への道なんぞ不可能ですけどね。
Aドル安のケース
ドル円ベースで今程度のちんたらとしたドル安が継続しているうちは、引き続き「円高阻止に介入」と称しつつ「米国債の買い支え」を行うという素晴らしい欺瞞じゃなかった介入を継続できるので何ら問題なし。
問題になるドル安というのはやはりドル急落でしょうか。米国の「双子の赤字」を支えるパワーが無くなってしまっていると言う事を意味において。
まぁ基軸通貨国であり国際経済の中心に位置する国は世界経済成長の為にある程度赤字を出した方が良いとも言えるのですが、何事も過ぎたるは及ばざるが如しでございまして、双子の赤字が拡大しすぎると赤字調整の為にドルが急落するというある意味自動調整装置が働いていたのが管理通貨制度における今までの流れだったかと思います。かなり乱暴な割り切りかたしてますが。
ところが、日本が余計な買支えをしているので、とっくの昔に調整されるべきドルの価値が調整されずに進行しているとも言える訳でして、余計な買支えでドルを延命させると反動が恐ろしい訳ですな。
いくら介入無限大と言いましても、世の中限度という物がありますから(本当に無限だったらそれはそれで恐ろしいが)どこかで無理が生じると思います。ドル安トレンドが終わる前に日本が弾切れになってしまい、おまけに米国財政赤字は相変わらずそのまんまという状況になってしまうと・・・・・・・これまた洒落にならんと思うのでありますが。
と言うわけで、本日もまた何だか纏まっているのか纏まっていないのか良く判らん。
○読者様から頂いたシナリオ
現状の量的緩和の行き着くシナリオとしてこのような図を読者様から頂きました。
なるほどなるほどと思いつつご紹介させていただきます。
>次の一手は
>介入継続→大量資金吸収→「一部」調達不安→@国有化→A量的緩和拡大
>これによりペイオフまでに
>問題行の処理(=@)、少なくとも大統領選まで米国のファイナンス援護(=A)
>が達成されます。
>@は日銀のかねてからの主張、量的緩和の「理由付け」が出来て
>ブッシュに貸しが出来る(というか総選挙のときの借りを返す?)の図ですね。
>被害をこうむるのは、為替差損をくらい、ぼろ銀行に税金突っ込まれる国民。
>民主主義下の政府(ふくむ日銀)とは国民意思の「最大公約数」を立案実施する機関
>なはずですが
>米国を助けることが国益になるという説明をせず、独立性なんぞというあって無きが
>如しの看板を振りかざすと
>看板を守るコストまでかかってしまうわけですな。
と、しまいには人の褌で相撲を取っているあたくしでした。
2004/01/14
お題「量的緩和政策再考(昨日の続き)」
昨日の続きでございます。
昨日のドラめもんでは「量的緩和が為替介入を通じて米国の財政赤字ファイナンスに組み込まれてしまうのはいかがなものか」という趣旨で余り纏まっていないお話を致しました。その後何人かの読者様とお話させていただきまして考えを整理中です。整理中なんですけれども、どうも考える程に複雑怪奇な話ですので、なおも整理が必要(というか整理ができれば小論文書けるのでは)です。
○当座預金残高引き上げに関する一つの解釈方法
昨日申し上げましたように、為替市場で円売り介入を行いますとその分短期金融市場で円資金が余剰になります。で、現在の金融政策の枠組みは「日銀当座預金残高ターゲット」になっておりまして、当座預金残高目標を引き上げないままの状態ですと、介入で供給される円資金の分だけターゲットをはみ出す事になります。
従いまして、ターゲットをはみ出さない為に(恒常的にターゲットを越えるというのは現在の金融政策の枠組みを否定する事なので、自己矛盾になってしまう)は何らかの手段で資金の回収を行う必要が生じるわけでございますな。
で、日銀総裁が福井さんになってからは、何だかんだと屁理屈を捏ねて当座預金残高を引き上げている訳ですが、おりしも米国のフセイン征伐戦争がおっぱじまったのが福井総裁就任直後でございます。その後戦争に伴い財政支出拡大とドル安に呼応するが如く為替市場への介入が増えて行きまして、日銀の当座預金残高目標が拡大の一途を辿るの図。
これは一つの解釈方法に過ぎないのですけれども、当座預金残高目標の引き上げを「介入を通じた米国金融市場の援護射撃」と考えますと昨今の意味不明な当座預金残高目標引き上げの論理がすっきりとしてくると言うものです。この論理、日銀は絶対認めないでしょうけれども。
さて、今月に入ってからも例によってアフォのように介入をしております。先ほど申し上げましたように、大規模介入をした場合にはその分資金余剰になってしまうので、短期金融市場から資金回収を行う必要が生じてしまうのでございますが、今月はラッキーな事に資金不足月でございます。
日本の短期金融市場というのは昔も今も季節要因での資金余剰と資金不足というのが画然としておりまして、今月は資金不足傾向の月です。資金不足傾向にある場合は短期金融市場に資金供給のオペレーションを行う必要がありますので、今月の大規模介入が資金供給オペレーションの代替機能を果たしておりますので、大規模介入の短期金融市場に与える影響が目立ちません。
とは言いましても、さすがに介入のやりすぎが効いているのか、長い期間の買入手形オペ(=資金供給)を実施する為に資金の吸収を行う必要が生じてしまっているようでして、昨日は国債売現先オペ(=資金吸収)を実施して買入手形オペを実施するという動きをするようになっております。ちょっと厳しそうな雰囲気ですな。
で、先読みを致しますと、そろそろ当座預金残高目標を引き上げておかないと日々の短期金融市場での調節に不具合を起こしそうではあります。起こしそうなのですが、金融政策決定会合で反対票が3票もでている(総裁と副総裁で3票なので、執行部以外の票決が既に賛否同数な訳ですな)理由付けに乏しい当座預金残高目標引き上げがすんなり通るとも思えませんので・・・・・・・(-_-メ)
ということで、今月の金融政策決定会合で当座預金残高を引き上げる可能性は無いとは言い切れません。ただ、本命は資金余剰月。資金吸収オペレーションの実施に無理が生じてしまうので、やむなく当座預金残高が目標を恒常的に上回るようになってしまってから追認のような形で引き上げるという格好になるのではないかと思います。
○量的緩和の出口に関する愚考
量的緩和の出口に関してはご存知のように「CPIターゲット」という事になっております。まぁこれも曲者で、CPIターゲットが達成されても総合的判断という屁理屈を持ち出して量的緩和を終了させないという大技はあるのですが。
ところが、先ほどあたくしが申し上げたような観点、即ち「量的緩和政策は為替市場への介入を通じて米国金融市場の下支えを行っている」というロジックに基づきますと、CPIターゲットが達成されたからと言って量的緩和を終了させる事は出来ないという結論になる訳です。
昨日および上段で申し上げました通り、量的緩和政策を終了させてしまいますと為替市場への介入を実質的に不胎化する事は不可能(介入を不胎化(訂正:非不胎化介入の誤りです)すると自動的に量的緩和になってしまいます。マネタリストに言わせると出来るらしいですが、短期金融市場の技術的観点から不可能です)でして、円売り介入をすればその分何らかの手段で短期金融市場での資金吸収が必要になります。小規模の介入なら問題無いでしょうが、今のペースで介入を続けていると短期金融市場で強烈に資金吸収を行う必要が生じますので、大規模な円売り介入は短期金利の急上昇につながってしまいます。
という事ですので、米国金融市場の下支えを行う必要性が生じている限りにおいて量的緩和政策を終了させる訳には行かないという訳でございますな。
本来「財政拡大」+「低金利政策」のセットによってデフレ脱却を目指していた筈の金融財政政策ですが、何時の間にやらその金融財政政策の意味が変質してきてしまったと言う事なのでしょうか。何だか狐につままれたような気分なのですが、どうも気が付いたら日銀の量的緩和政策が色々な所に組み込まれてしまい、抜けるに抜けない泥沼状態になってしまっているのではないかと思います。
そういえば米国も「財政拡大」+「低金利政策」状態ですな。日本がそのサポート役になっているというのがお笑いなのですけれども。
まだなんか結論が出てませんので、明日も続くという感じですな。書きたいけど今百歩纏まってなくて書ききれない課題が幾つかございまして・・・・・・・・
2004/01/13
お題「これでいいのか『量的緩和の輸出政策』」
先週金曜日には、と申しますか金曜日にも財務省による為替市場への介入が行われましたようであります。珍しく瞬間的に2円以上ドル高になるような派手な介入でした。
派手な介入というのは大体何かのイベント(というか要人発言)とぶつかっていることが多いんですけれども、今回は谷垣財務大臣の会見か何かで出たコメントにぶつけた様でございますな。ちなみにコメントは外為特会から日銀への外債レポ取引に関する類。
しかし介入で2円以上押し戻したドル円相場ですが、戻ったのはほんの一瞬でして、介入が終わったあとではまたまた円じり高となって気がつけばまた106円台になっているようですな。何の為の介入だったんでしょうね。
実際に外為特会から日銀へのレポ形式での外債売却が実施されたかどうかは後付けでしか判らないのようですので、いつ実施されるかと言うのは何ともいえませんが、状況証拠から言えば既に外債レポをあてにした介入は行われているように見えます。
そんな訳でして、とうとう日銀も介入無限連鎖に組み込まれてしまいましたのですけど、この無限介入にお付き合いするという事態は色々と問題があると思うんですけどね〜♪
○いろんな市場のシャブ中化
皆様ご存知のように、短期金融市場では量的緩和政策によって見事に機能不全状態になっているのですが、昨今では為替市場というかドル円相場だけは介入パワーで思いっきり相場が安定的になっております。安定的にドル安になっているだけなのですけれども、他通貨と比較してみれば見事にドル円相場もまた機能不全モードになりつつあります。
で、今朝の報道番組でも言われてましたが、最近は日本の為替市場での介入が米国債市場の下支えになっており、日米の金融市場への流動性供給に繋がっていると言う事も指摘されております。先日来しつこく申し上げているように、意図しているのかしていないのかは判りませんが(というか意図していると思われ)結果的に為替市場の介入が米国の財政赤字ファイナンスになっている訳でして、これもやりすぎると止められなくなる訳ですな。
○米国財政もまた
雑な議論で恐縮なのですが、ブッシュ政権が現在やっている事はブッシュの親父が散々こきおろした(と記憶してますが)悪名高い「レーガノミックス」に似ているようにあたくしには思える訳です。
レーガノミックスは結局政策の誤りを米国債暴落(金利急上昇)という形でツケ払いさせられたのですが、レーガン時代と現在の違いは(もちろん他にも色々ありますが)日本政府による財政赤字ファイナンス装置があると言う事なのではないかと思うわけです。
永久に財政赤字ファイナンス装置が機能し続け、その間に財政均衡ができるようになれば話は全く問題がないとおもうのですが、日本の例を見るまでも無く大衆に主権のある国家における財政支出っつーのは放置していくと益々拡大する物でございます。普通にやっていると減る訳ありません。
で、その財政支出拡大に関する歯止めのひとつとして機能するのが債券市場なわけでございまして、要するに国債が消化不能になれば債券価格の下落を通じて色々な所に不都合が発生してしまうので、財政拡大への歯止めになる訳です。
日本に起きましては、未曾有の財政赤字が絶賛拡大中なのですが、日本政府+日本銀行は日本の財政ファイナンスの繰り回しの為に目先の国債発行額をツケ回しとやり繰りで上手に誤魔化しつつ量的緩和政策によるジャブジャブの流動性供給で「財政赤字」を市場のテーマにさせないようにしているのはご存知の通りであります。
で、これが今のところ非常に上手く機能している事でもありますので、今度は米国財政ファイナンスをおっぱじめているのではないかと思ってしまう訳であります。日本で報じられている米国市場の話題(なんていうのはあまりあてにならないですが)を聞いていても「財政赤字拡大への懸念」というのが意外に話題になっていなさそうな印象を受けます。
まぁ今のところ上手く回っているという事なのでしょうか。
○で、出口はどうするの?
時間の都合上および頭の中が纏まっていないので、以下は思考実験のテーマと言うことで。本日考えたいところですが、何故かロンドン市場で激しく債券先物が買われているので多分本日は暇無しでしょうな(-_-メ)。
日本政府による為替市場の介入が度を過ぎてしまって米国の財政赤字ファイナンスに組み込まれてしまっている現状。何事もやりすぎは良くない訳でございまして、米国の財政赤字ファイナンスに日本政府による米国債購入が重要な寄与をする訳ですから、逆に言えば日本政府が米国債購入を止めれば米国債も米ドルもエライコッチャになってしまうと言う事でしょうな。
その前に米国財政が均衡化して、財政赤字の拡大が止まれば何の問題も無いのですけど、政治状況を考えれば期待薄。よって日本政府は市場介入の名目で米国の赤字ファイナンスを支えないといけない破目に陥るの図。
為替市場で無限介入をしている中で量的緩和政策を解除するとどういう事が起きるかと考えますと、その影響たるや考えれば考えるほど複雑怪奇なのですけれども、とりあえず言えるのは外為特別会計によるクラウディングアウトが生じて短期金利への上昇圧力が掛かるのではないかという事かと。
現在の為替市場への介入は実質的に不胎化介入(1月14日訂正:非不胎化介入の誤りです)をやっているのと余り変わりが無い状況です。為替市場への介入資金によって発生する円資金(円売りドル買いをやるから)がジャブジャブになって日銀当座預金残高が増えてくると、何だかんだと屁理屈を捏ねて当座預金残高の引き上げを行っております。
と言う事は、為替市場での無限介入を続けたままで量的緩和政策を解除して、昔と同じような金融調節を行ってしまいますと、介入で出てきた円資金を強力に回収する必要が出てきますので、短期国債(正確には政府短期証券)の消化難を通じて短期金利に上昇圧力が掛かるということですな。
で、為替介入規模を減らすと今度は米国債価格の下落に繋がってしまい、その後ドル高になるのかドル安になるのかは良く判りませんが、色々と良からぬ事が起きてしまうのではないかと思ってしまうのですが、これが良く判らんので思考実験のテーマとして考えてみたいと思います(^^)。
どちらにしても、日銀の量的緩和政策は考えれば考える程に「出口無しの袋小路」状態に陥っているのではなかろうかと思ってしまう今日この頃でございます。
あんまり纏まって無くてスイマセン。量的緩和政策の出口を為替市場介入とリンクして考えると面白い(けど全然洒落にならない)思考実験ができるかと思いますので、皆様もよろしく〜(^^)。
2004/01/09
お題「10年国債入札レビュー/その他」
他にネタが無いので本日もまんまの相場後講釈です。
昨日の10年国債入札。何故か入札前の前場から長期債に買いが入ってしまいまして、いきなり入札前に256回債が1.34%まで買われてしまうという、昔懐かしい「入札前から強くなる」という相場を彷彿とさせてくれる動きになりました。
しかし、所詮は上を追っかけて買う最終投資家は不在だったようで、入札の行われる直前である前場引けではほぼ前日比変わらずのレベルまで相場は押し戻され。入札の結果はほぼ事前予想通りでしたが、蓋を開けてみればこれまた買いがあまり入らずで256回債が景気よく買われるような展開はほんの一瞬だけ。
落札結果発表後相場が前場引けから高い位置にいた時間も殆ど無く、256回債が強くもならずと言うことでして、まぁぱっとしない入札でございました。新発債って言ったって、既に同じ銘柄が出ている訳ですから、まぁ追っかけて買う人はいませんでしたっつーことで。
入札後の動きで言えば、「相場が値持ちして最終投資家が痺れを切らして債券購入」VS「販売が低調で業者が痺れを切らして債券売却」の勝負でもあるのですが(^^)、今日値持ちするかしないかが勝負の分かれ目ですな。と言ってもとりあえず1.4%の100円で止まるので大して下げないとは思いますけどね。
で、これがまた問題なのは来週に5年国債の入札があることです。来週木曜日に入札があるのですけど、今週末3連休なので入札まであと4営業日。ちと強すぎだと思っていました5年ゾーンも弱いという状況でございますので、どうしても相場自体は上げ難い所ではありますな。
と言うような状況を見せ付けられてのあたくし的感想なのですが・・・・
○債券相場上昇パワー無いですな〜
昨年の前半のような相場状況では、入札が「種玉仕入れの絶好の場」というような状況になっておりまして(^^)、入札をきっかけに当該ゾーンに買いがわんさかやってくるという実に香しい動きが目立っておりました。
でもって今回の入札でも「夢よもう一度」的な買い(ではないと買った人は言うでしょうが、市場観測の手口から類推するとどう考えても・・・・・・)が入ったようですが、残念ながら(^^)見事に梯子外され状態になりました。
入札もあまりテールが流れなかったので、落札した業者のコストもそんなに余裕があるわけでもなし。やはりイケイケドンドンの債券相場というのは見果てぬ夢のようでございますな。
○WI取引始まったら入札で儲かりませんな〜
昨日も申し上げましたが、今回の入札はリオープン形式ですので入札前からそのものずばりが普通に売買されていた訳でございます。その結果ど〜ゆ〜事が起きたかと申しますと、「入札のレベルが誰がどう見ても見え見え状態」という状況が発生してしまいまして、その為(かどうかは知らんが)に入札のテールもわずか5銭(事前予想では平均落札価格はもう1〜2銭くらい下と言う感じでしたので予想よりはテールが長かったのですが)とガチガチの入札になってしまいました。
事前にそのものズバリの価格が見えているメリットが良く判る入札と相成りました。ここ数回の入札のように「入札が流れてそこで安値をつける」という動きにならないと言うことは、まもなく始まるWI取引によって「入札のイベントリスク化」(しかしこの言葉の使い方ってもの凄く変だと思うのですが、誰が言い出したんでしょう)が起きないということが非常に良く判りましたな。
しかしリスクが軽減されると言うことはリターンも軽減される訳でして、値段が見え見えの入札では「入札で上手に立ち回りひと儲け」ってな訳に行きませんので、ま〜益々つまらん相場になりそうですな。
とまぁそんなつまらん事を思いながら、あたくしもまた「まるで売れませんな〜」とブローカースクリーンを眺める昨日の相場でありました(^^)。
ところで、話は全然変わるのですが、報道によりますと先日設定した日銀の外債レポ枠が早速活用されるようですな。実に香しいお話でして、日銀の資金供給によって米国の財政赤字ファイナンスを行い、米国の株式相場上昇に繋がるという素晴らしいスキームが本格稼動と言う事でしょう。
おりしもナスダックが2100ポイント乗せと言うことで、朝から見ている某報道番組では、米国スタジオから奉祝モード一色という浮かれた雰囲気がよーく伝わってくる放送でして、ま〜結構でございますな〜という感じです。
かつて資産価格の上昇に目をつぶり「CPIは安定推移している」とか言い訳して金融緩和を長期間に渡って継続した挙句に、大蔵省と一緒になってバブル潰しに励んだ結果、悲惨な事が起きた筈なのですが、相変わらず反省が無いとしか申し上げようがございませんな。量的緩和を永久に続ける気なんでしょうかね〜??
と、思っておりまして、何と言うかあちこちまずそうな爆弾があるのを気にしながらもチキンレースは続くと言う事なのでしょうか。どうも景気回復を信じられないので見方にバイアスが掛かっているのかという気もしますが、いやはや何ともという所でございます。
しかし年初いきなり1週間っつーのは疲れますね。
2004/01/08
お題「10年国債入札」
相場の方は勝手に通常モードになってきていると言うのに、世の中的には相変わらず「新春賀詞交歓会(字あってますかね)」モードだったりする訳でして、ネタの無いこと夥しい訳です。
で、去年は何が起きたかな〜と思い、昔のドラめもんを眺めていたのですが、やはり年初って材料無し。でも材料の無い中で年初から(というか年末からその傾向は有ったのですが)超長期国債に大手銀行系の買いが入り、10年国債入札も絶好調モードというか過熱したのですな。今は昔のお話でありますな。。。
あんまり外部材料の無い中で10年国債入札が行われる訳なのでございますが、今回の新発国債は順当に考えれば12月発行の256回債リオープン。240回債以来のリオープンでして、実に1年5ヶ月ぶり(かいな。足し算すればよいだけの話ですが)の2ヶ月連続同クーポン。債券市場あまり動かんと言いつつも、意外に細々と動いていたっつーことでしょうな(^^)。
入札に関してのいろんな現在の状況を検討してみましょう。例によって無力業者のあたくしとしては、目を皿のようにして業者間スクリーンを見ながら人の懐具合を想像しております関係上、思いっきり推測に属する部分が多くなっている事を予めお断りしておきます。
○業者のポジション
もともと年末あたりから「やっぱ1.3クーポンは勘弁」という感じで相場全体が売られ出した辺りからリオープンを意識して業者は256回債を売りに回って来ていると思われる節がございます。
で、そんな感じで売りに回っていたら、年始に何と1.4%まで相場が叩かれてしまった訳でして、さすがにそこまで下がると買いも本格的に入る(正月あけという理由もありますが)という動きになりました。
おまけに昨日には日銀の国債買入が予定通り実施されて、投資家様の買いがあまり入らない上に、相場が上昇するとヤレヤレの売りが出てくる残存8年〜9年前後の長期国債の在庫処分も無事に出来たようでございます。
昨日は後場途中から元々投資家様の買いが入る10年ゾーンが何となく買い戻しモードになってきている雰囲気ですが、元々10年ゾーン、というか今回リオープンされる256回債をせっせとショートにしている業者がある程度入札に関して目処を付けて来たと言うことなのでしょうな。
よって業者のポジションは重くなく、その意味での懸念は小さい訳です。
○投資家様動向
年初に1.4%まで売られた256回債ですが、実はこの1.4%という水準をキープしていたのは発会日の大引けと、翌日の寄り付き後30分も有りませんでしたので、良く良く考えれば1.4%水準で相場が推移していたのはトータルで1時間も無い訳であります(^^)。
そんな状況で皆様が思ったように買えているとは思えない訳でして、一昨日以降の相場の戻りでもあまり売りが出てこない訳であります。却ってオプションがらみでのターバイやバイライトといったやや腰が引けた系の買い(^^)が散見されるような感じ。
今のところ上を追っかけて買ってくる人はパッシブというか機械的な買いというか、まぁお家の事情で自動的に買うようなお方だけなので、下がらないと新発国債が中々捌けない状況かとは思いますが、さほどの懸念はないかと思います。目先飛ぶように売れるとは全然思いませんが。
また、決算を意識した動きと言うものもそろそろ気にしないといけないのですが、短期化で来る場合もありますが新発への入替もニーズがあるわけでございまして、まぁ今のところはあまり気にする必要もないかと。
○外部環境
平均株価が11000円を超えて上昇トレンドに突入すると話は全然違いますが、その動きが直ぐに見られないのであればとりあえず10年金利の上限は平均株価11000円レベルで1.5%、と言いたいところですが、皆で1.5%を意識している時はそこまで下がらん訳でして、とりあえず1.4%が強く意識されるでしょう。
ドル円市場はあんまり材料にならないと思います。
金融政策に関しては、要人様がお正月モードで何の材料も無し。と申しますか、先日来申し上げました通りで、量的緩和政策が何故か米国の財政赤字ファイナンスにまでリンクするようになってきて、足抜けしようにもがんじがらめ状態になっている以上、目先金融政策は材料にならず。
と言うわけでして、株式市場が気になるのでそうそう昔のように威勢良く買うというわけにも行かないでしょう。
○その他特殊事情(^^)
リオープン発行というのは、応札する業者にとっては実にやりやすい商品でございます。なにせ同銘柄がとっくの昔に売買されている訳で、まさにWI取引状態。
ただ、難点は値段が見え見えなので、応札のリスクが少ない裏表って事ですが値付けがグレーな部分で上手い事立ち回って儲かるというチャンスが無い事でもあるのですがそれはまぁ兎も角。
応札のリスクが比較的少なく、環境もそんなに悪くは無い。と来ますと出てくるのは「国債市場懇談会メンバー狙いの応札」って奴でございます。リスクが比較的少ないのでノルマ達成には絶好のチャンスであります。
そういう応札が増えると割高入札になってしまうので、国債引受シンジケート団のメンバーに割当てられる分が割高になってしまうのよね。はた迷惑とはこのこと。
○総合すると
直ぐに売れるわけではないのですが、入札自体は堅調でしょう。ショートカバーで全部埋まる訳ではないのですが、まぁ今回は業者もそこそこショートメイクしていますので、売れ行きスローでも問題無いでしょ。
しかし何ですな、1.4%クーポンの10年債って無闇矢鱈と発行されているんですけど、やはり見慣れた位置って感じなんでしょうかねぇ・・・・
2004/01/07
お題「今年の相場のテーマを愚考しつつ」
昨日の債券市場もまぁ訳の判らん動きでしたが、要するに年末年始にお休みしていた人がここぞとばかり買いに来たので、いきなり年末のレベルまで相場が戻っちゃいましたという事でしょうか。
そんなに買うなら年末年始に幾らでも買うタイミングがあったぢゃあないですかと突っ込むのは野暮らしい訳でして(-_-メ)、最近(というか昨年の下落開始以来)の債券市場では、「お家の事情」的なタイミングでの売買が目立つようになっているという状況を新年早々(いまさら正月気分でもありませんが^^)見せてしまったと言うことでしょうな。どうにもやりにくい訳でございます。
年末年始の平均株価上昇を見事に無視したような相場の戻りを呆然として眺めながらつらつらと相場のテーマを愚考する訳でございまして、まぁ思考のたたき台に使ってください。
○メインテーマは景気回復
なのは衆目の一致するところな訳なんですけど、んじゃあこの回復がどういう経路で進むかっつーのが問題。経路として挙げられるものは概ね、@米国経済の順調な成長による外需増とA国内民間設備投資の回復による内需増という所のようでしょう。他には中国の経済成長による外需増っつーのもあるんでしょうか。
米国の方は後で申し上げますが、どうもあたくし的には「?」を百万個くらいつけたくなる所なのですがそれはさておきまして国内民間設備投資。
国内民間設備投資が回復しているようですが、昨今あちこちの工場などでしょうもない事故が多発している事に象徴されるように設備更新を思いっきり遅らせていたという面もありますので、こちらはそれなりに持続性のあるものかと勝手に考えております。
内需に関する最も重要な位置を占める個人消費に関しては相変わらず期待できないでしょう。もともと国内個人消費っつーのは住宅ローンに代表されるように「終身雇用制度」「最悪でも横ばい、基本は定期昇給」っていう素晴らしい雇用環境によって将来の需要を先食いしながら走っていた面がございます。
雇用環境が悪化し、それなりの規模の企業であっても給与所得が減少する可能性が当たり前に考えられるようになってしまった以上、過去の終身雇用時代のような「将来の需要先食い」的な消費は全体でみればシュリンクしてしまうと考える方が自然な訳でありますので、やはり少々雇用環境が好転したからと言っても個人消費の大幅な復活はちと考えにくいでしょうな。
というのがあたくしの極めてノーマルな考えなのですが、御覧の通り論議に穴が開きまくっているような気がするので、これを敷衍していきながら考えていくっつー感じですな。以下は段々極端なお話になります(^^)。
○日米融通手形経済の持続可能性
年末納会の日に「日米融通手形経済」などと好き勝手に命名しました日米の相互依存状況。ある方から「それは日米経済の巨大な『エンロン化』ですな」と的確なるご指摘を賜りましたが(^^)、本日も融通手形経済と申し上げておきます。
相変わらずドル安は止まらず、日本政府のドル買い介入も同様に止まらずという状況になっております。幾らでも介入できるように色々と打ち出の小槌も準備万端怠り無しと言ったところでもありますので、当分は介入が続く事になるでしょう。
で、この無節操と申しますか無限大の介入。良く良く見ておりますとひたすら別に押上げ介入をするでもなく、ひたすら坦々と買い下がりをしているって感じでありまして、円高阻止は円高阻止なんでしょうけどじゃあ円安にしようという意図があるかと思うとそんな雰囲気はあまり見られなかったりする訳です。
そんなことをつらつらと考えておりますと、実を言えばこの為替介入は「円高阻止」を意図しているのではなく、「米国の財政赤字ファイナンス」を意図しているのではないかと妙な勘ぐりをしてしまったりする訳でございます(^^)。フセイン征伐戦争以来米国の財政支出も増大してますし、それに伴ってドルは下落するわ、日本政府の為替介入は増えるわというところでもありますので、ついついそう考えたくもなりますな。
財政赤字ファイナンスが無事に回っているので米国の「双子の赤字」も話題にはなるが懸念材料にはなりきれず、戦争需要の好影響という側が出てきて米国の株式市場は益々堅調という見方も出来る訳でして、そう考え出しますと、日米経済はますます「融通手形経済」化が進展しているという見方もあながちトンデモ議論ではないと思うのですが。
当面は日米双方の経済でバランスシートの拡大(要するに財政の拡大)が起きて、見かけ上の景気は好調そのものってな状況が「今年は」継続するのではないかと思います。
融通手形の繰り回しが出来なくなった時が大変なので、どういう経路から繰り回しが出来なくなるのかということを考えると吉かと存じます。
○日本財政の持続可能性
というわけで、日本の財政は外為特会で「融通手形経済」の一翼を担いつつ、一般会計はあちこちにツケ回しをして何とか格好をつけているのですが、公的債務は相変わらず増大止まらずというわけですか。
んな財政の持続が可能であるとは到底思えないのですが、最早そのテーマは語るのがアンタッチャブルであるかの如く話題になりません。確かに財政持続可能性について疑問を持って債券を売ってみたところで、誰も追随しないので踏まされるだけなんですけど(^^)。
財政持続可能性の議論をしないから売られないのか、売られないから誰も議論しなくなったのか、どっちが先なのか良く判りませんが、こちらでもある意味「チキンレース」が行われているという気は思いっきりする訳でございます。
こっちの均衡が崩れるきっかけは「量的緩和解除」によってまともな金利が付き出すようになってからなのかな〜とも思ってしまう訳でして、これまた昨日申し上げたように日銀にその気がない(ような気がする)以上、暫くはチキンレースに参加するのも吉かというところでしょうな。
うーん、あまり纏まっていない・・・・・・
2004/01/06
お題「今年の金融政策のテーマ(か?)」
と言う訳で始まってしまいました新年相場。そんな中日銀のWebに本年一発目にアップされたのは中原審議委員が全国銀行協会の「金融」(たぶん機関誌だとおもうのですが)2004年1月号に寄稿した「歴史に学ぶ銀行の在りかた」という文書でございました。
http://www.boj.or.jp/press/03/ko0401a.htm
で、内容の話はともかくと致しまして、まず気になるのはと申しますと、日銀Webに年初一発目でのアップが「銀行経営がらみ」だったという事でしょうか。
昨年末あたりから日銀の複数の審議委員からやたらと銀行経営に関して色々とご提案と申しますか、外野のお節介と申しますか、まぁいろんな発言がされているのはご存知の通り。でもって、今年の日銀からの情報発信の一発目がやはり銀行関連っつー事でありますので、今年の金融政策における最大の関心事が「量的緩和の解除をどうするか」ではなく、「来年のペイオフ完全実施が無事に出来るか」という事のようだとも勝手に推測出来る訳ですな。
ではちょっとだけ内容を拝見。
○銀行への苦言
まぁ最初は苦言から入るという感じでございます。最初のお題が「銀行への不満」であります(^^)。
『「銀行は要らない」。新年早々、穏やかでない話から始まって恐縮であるが、昨年、東京下町のある工業会々長とお会いした際にお聴きした言葉である。同氏曰く、「民間銀行は担保の積み増し、理不尽な金利引上げを要求してくるだけだ。どんな事業計画を持っていっても聞く耳を持たず担保しかみていない。将来の企業の成長性に着目して融資するということができないでいる」ため、「銀行は要らない」と言われる。』
「担保しかみていない」というのは不正確な表現で、「担保割れしかみていない」の間違いではないかと思うのですが(^^)、金融庁の検査マニュアルの弊害がもろにでているのが昨今でもある(検査マニュアルを言い訳にして無茶やっているという面も否定できませんが・・・・・)と言ったところでしょうな。
特に昔からの顧客からはこういう風に言われるでしょう。
『また、海産物を販売している中央区の老舗の商店主さん曰く、「銀行は今になって金利を引き上げてくれというが、昔は我慢して高い実効金利を払ってやったではないか。まず、昔支払った分を返せ」。これは、かつては、貸し手優位の中で拘束預金や協力預金が存在していたことを指摘されておられるのだろう。』
そういえば銀行は銀行で「昔は税効果資産を認めるからと言われて不良債権の償却を前倒ししたが、今になって税効果資産を否認する行動に出るとは何事だ、まず、昔支払った有税償却分の税金を返せ」と言いたいでしょうな。そう考えるとこの国は結局「ナンジ人民飢えて死ね」って事何でしょうな、とほほのほ。
で、銀行の立場からの弁明というか言い訳が後に続くのですが、それはともかくとして、次のお題の「新しいビジネスモデルを求めて」という部分の冒頭にこんな事を言っておりまして、思わずウケてしまいました。
『もっとも、総じてみれば、依然として銀行の評判が芳しくないのは認めざるを得ないだろう。私自身、民間銀行出身なので、上述のような銀行批判に対し、「そうは言っても・・・」と反論するものの、その途端に「すわ回し者か」と睨まれることもある。』
わはは、あたくしも身に覚えが(^^)。
○「銀行のビジネスモデル」論議への苦言(か?)
で、「新しいビジネスモデルを求めて」です。
さすがに中原審議委員は元々が銀行員ですし、寄稿している文書の読み手が銀行関係者だというのを意識しているのもあるでしょうが、他の日銀審議委員やどこぞの監督官庁の人々のような現実を全く無視した夢物語みたいな話は致しません。こういう人の意見が金融庁の金融政策にちったあ反映されて欲しいものです。
『銀行の新しいビジネスモデルは何かとの議論が盛んだが、民間銀行に身を置いた経験から言うと、収益力を一挙に高め、一気呵成に不良債権問題を解決できるような普遍的な単一のビジネスモデルがあるとは思えない。』
金融庁の画一的な管理って一体全体何なんでしょうと思ってしまう訳でございまして、その辺も思い切って指摘して欲しいのですが、まぁそこまで言わせるのは無理というものですね。
『そもそも、足許の不良債権は、日本経済の構造問題と結び付いている根の深い問題だ。外需によってもたらされたフロー収益の国内への還元と、その再分配を前提とした株価・地価等ストックの膨張、これらを担保とした信用供与によって経済を発展させるという旧来の日本経済の構造自体が大きく変化している。』
『他産業と同様、銀行もこのような構造変化に対応した経営を行おうと必死になっているが、新しいビジネスモデルは、思い付きで生まれたり、"お上"から与えられるものではない。』
銀行業界が"お上"に完全屈服状況でございますので、中原さんが言わないといけないっつー事なんでしょうか。何気なく書いていますが、昨今の銀行を巡る好き勝手な議論に物申すって感じに思えるのですが(^^)。
『さらに、銀行業には様々な点で規制が多く、歴史的にみて、収益性の高い業務分野への参入が難しかったということや、公的な金融機能が肥大化し民間市場の拡大の妨げとなっていたことも忘れてはならないだろう。』
『リテール業務の一部の分野や公共料金の振替等、「儲からないからやめる」とは言わせてもらえない分野も多い。新しい銀行のビジネスモデルといった場合、このような銀行に求められている公共性、社会性との関係をどのように考えていくべきかも重要なポイントである。』
そういえば決済業務という一番コストのかかる部分をやろうとしないで「銀行」と銘打って中小企業金融をやるといった「それは商工ローン会社とどう違うんだ」と言いたくなる某銀行(設立予定)もそうですし、民営化してから主要駅を巨大ターミナルにして近隣の商圏を食って成長した積りになっている某国有鉄道からやって来た経営者に好き勝手言われてる(言われる方にも問題があるとおもいますが)某銀行。
現在の銀行の状況は確かに利用者的に言えばかなり「いかがなものか」という感じであるのは事実でございますが、元々精緻な決済インフラが構築されている訳でして、このインフラ整備に如何にコストが掛かっているのかといった宣伝を銀行はもっとすべきであろうかとは思います。正直言って銀行が収益性を重視しだしたら殆どの小口金融が相手にされなくなる(あるいは無茶苦茶手数料が高くなる)と思うわけです。
銀行に規制緩和で色々な業務が出来るようになれば、結局国鉄民営化の二の舞でありまして、それこそ近隣の中小商店あたりがゲロゲロ状態になってしまうとおもうんですけどね。
と、話が何時の間にかあたくしのご機嫌斜め的な発言になってしまった事をお詫びしつつその先を読みますと、銀行に対してきちんと苦言も呈しております(^^)。
『しかし、だからといって開き直ることもできない。取引先企業のニーズを満足させるとともに、社会経済の構造変化に対応した経営を構築し、安定した収益をあげていく、そのために銀行は今後如何にあるべきなのか?明確な将来像は未だ見えていない。』
で、まぁ温故知新っつー事で「銀行の歴史」についてお話があるのですが、こちらは読み物としては楽しいので是非御覧下さい。さすがは「銀行の銀行」の日銀さまだけにこういう文書は天下一品なんでしょう。
○まとめの部分
「歴史に学ぶ銀行のありかた」というのが続くのですが、これはまぁシュンとしている銀行へのエールみたいなもんですので本文を読んでくだされ。
で、最後の「おわりに」ではやはりペイオフ完全実施のことに触れている訳でして、日銀の今年の金融政策の最大の焦点が「ペイオフ完全実施へのスムーズな移行」だという事なんでしょうな。
『明年春からのペイオフ完全実施、再来年の新BIS規制導入は、全銀行一丸となって乗り越えねばならない大きな課題である。今後、今まで経験したことない大きな厳しい環境が待っているかもしれない。しかし、縷々述べた歴史から学べる教訓は、決して悲観することはないということではないか。戦後蓄えた豊かな富を次世代に引き継ぐため、今ほど銀行の叡智が求められている時代はない。換言すれば、いつの時代であっても「銀行は要る」どころか、「経済社会発展の要である」ことを証明するのが、私を含め銀行業に携わる者の責務と認識している。』
と言う事で、今年のメインテーマはペイオフ完全実施への地ならし。その為には量的緩和解除は有り得ないと考えるのはまぁ勝手(というか金利水準は今年1年の量的緩和解除に関して全く意識していない)なのですが、そちらに関しては「関心が薄い」だけのことではないかとも思っちゃうんですけどね〜♪
ではでは。
2004/01/05
お題「新春読書室」
ど〜も、あけましておめでとうございます。本年もご愛読のほどよろしくお願い致しますm(__)m。
本日は半日立会いという事でもございますので、相変わらず正月ボケ気分で正月に読んだ本の書評という全然マーケットと関係ないお話で(^^)。
○武富士対山口組(木村勝美、イーストプレス)
イーストプレスがこの本の宣伝広告を全国紙に打とうとしたらどこからともなく(自主規制)ので広告無しでの出版になってしまったというウワサを聞いたので千代田書店に行ったら思いっきり平積みになっていたと言う本。
あえてやっているのかも知れませんが、構成が散漫(特に前半部分)なので、ちと読みにくいのが難点ですが、まぁあっさりと読める本でしょう。背景知識が全然無い状態で読むのはちとしんどいかも。
著者の事情もあるでしょうから仕方無い面もありますが、武井会長がほぼ一方的に問題があるような書き方になっているのは(事実なのかもしれませんが)やや残念ですな。株式公開に絡む話にもっと突っ込むと株屋的には面白かったかな〜と思いますが。
海外投資家に向けてこの本を英訳して送り付けたら洒落にならんだろうな〜などと思ってしまったりする訳です(^^)。
ISBN4-87257-395-1 C0036 \1600
○三酔人経綸問答(中江兆民、岩波文庫)
新刊の次はいきなり古典。中江兆民の有名な「恩賜の民権」「回復の民権」というフレーズや、問答の最後に国権拡張論者の豪傑君が上海に渡る件なんかはとても明治20年に書かれたものとは思えません。辛亥革命の支援を行った日本人に所謂右翼系の人が相当加わっていたのを予言していたのでしょうか・・・・・
吉田茂の「大磯随想」を読んだ時にも感じたのですが、優れた洞察力の持ち主の書いた文章ってのは後世になってその評価が定まるものなんでしょうな。
桑原武夫・島田虔次訳・校注
ISBN4-00-331101-9 C0110 \600
○国家なる幻影 わが政治への反回想(石原慎太郎、文春文庫)
文庫の初版が出たときに流し読みしたのですが、改めて熟読。
この人に関する報道は悪意で歪められている場合と好意で歪められている場合がありますが、というよりは淡々と報道されないお方であるな〜と改めて認識してしまいました。まぁこの人の発言をきちんと見たければ都庁のWebを見るか、東京MXテレビの都知事定例記者会見を見るかが必要でしょうな。
読み物としては面白いです。文体が25年くらい前に流行ったような新文学系のキザなものだったりする事や、東京都知事選挙で美濃部知事と選挙戦をやって敗れた事が相当「恨み骨髄」なのね〜と思わせる所なんかもございまして、このお方のやっている諸政策や言動なんかがど〜ゆ〜ベースにあるのかという事を理解するには宜しいかと。
上下2巻ですがそんなに重くはありません。議員辞職をした所までの回顧録ですので、現在のお話はございません。念のため。
ISBN4-16-712804-7 C0131 \590
ISBN4-16-712805-5 C0131 \552
○チベットわが祖国(ダライ・ラマ、中公文庫)
これも前に読んだ本なのですが多分ご紹介していなかったと思うので。
インドと共産中国が協力関係に転じてしまってますし、人権外交を標榜していたクリントンからブッシュ政権になって益々孤立無援状況が深まるチベットの今日この頃ではありますが、アジアで爆発する可能性のある爆弾候補の「台湾問題」「チベット問題」の一方を理解する一助になるのではないかと思うわけです。もちろん「ダライ・ラマ14世の主張」でありますので、その辺は割り引いて読まないといけないとは思いますけど。
そういえばダライ・ラマ師が昨年訪日して両国で講演会を行ったのですが、誰に遠慮しているのか知りませんが、ダライ・ラマ師の来日に関して全くと言って良いほどメジャーなメディアで報道されていなかったような気がします。気のせいでしょうか??
木村肥佐生訳
ISBN4-12-203938-X C1123 \1048
というわけで、本日は思いっきり趣味に走ってしまいました(^^)。