2003年12月
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朝のドラめもん
2003/12/30
お題「年の瀬に思う」
てな訳で皆様のお蔭をもちましてドラめもんを続ける事が出来ました。誠にありがとうございました。気がついた点などございましたらこれからもご意見ご感想頂けますと励みになりますので、こんな駄文ですがお付き合い頂きたいと思います。
と、挨拶が先に来てしまいましたが、来年の相場がどうなるのやらとつらつら考えつつよしなし事を思うあたくし。
○管理相場化の進展
今年の債券市場は、前半は一方的なじり高→長期債の売りで大幅下落→中期債の売りでもう一発大幅下落という動きでありました。で、このアフォのような下落、何せ2年債が0.25%を超えて売られてみたり5年債が1%を超えて売られてみたりと見事に「量的緩和政策の時間軸」を無視した動きになってしまいました。
で、その動きに懲りたのか、結局日銀は量的緩和の強化策として「量的緩和政策の継続に関するコミット」を行う破目に陥ってしまいました。また、財務省は「国債管理政策」と称して、国債の消化のための施策を打ち出していますが、方向性としては大手業者による寡占状態に拍車がかかるような施策。
まぁ悪いとは言いませんし、大体この国債発行量が平気な顔をして消化されているのは、何だかんだといっても日銀の量的緩和政策と財務省による市場への働きかけによる効果がでかいわけですから、それはそれで評価しないといけません。かつて30兆円枠が突破するだの構造改革路線の継続が危ないだのと言って債券市場が売られた事を思うと隔世の感があります。
先日のドラめもんで雑談的に触れましたが、今や債券市場はパッシブと順張りプロップディーラー的な投資家のウェイトが高まってきておりますし、当局による債券市場管理の強化傾向は強まりこそすれ、弱くなる事はないじゃろうな〜と思いつつ、この調子では来年もまた大手業者による市場の寡占傾向に拍車が掛かるのでしょうな〜とあまり楽しくない気持ちで思う年の瀬でありました。
介入のやりすぎで市場として死んでしまったドル円為替のようにならないことを祈りたいものです。まぁいきなりそうはならないでしょうけどね〜。
○日米の「融通手形経済」
金貸しあるいは自営業をやった事のある方ならご存知の「融通手形」。ご存知でない方のために簡単に申し上げますと、企業同士で商取引の裏付のない手形をお互いに融通し、資金繰りに困った企業が入手した手形を割引に回して当座の資金繰りを凌ぐというもの。一読してお判りになると思いますが、倒産への一番の近道でもございまして、金貸したるもの融資先が融通手形や高利金融に手を出していないかどうかというのは一番気にする所であります。(金融庁や学識のある方々に言わせれば「銀行は貸した後はほったらかし」にしているらしいですけどね)
財務省の外為特別会計といえば、公表資料を見ても何がどうなっているのかよ〜わからん伏魔殿状態なのですが、先週金曜日に日銀が外為特会の資金繰り融通策として10兆円を限度に特会保有の米債を現先方式で円貨でお買い上げという素晴らしい施策が発表されました。
日銀の公表文では色々と但し書きのような表現をいれて、この施策が永続的な物にならないように歯止めを入れようとしていますが、ど〜せこの施策も来年3月末の期限が来たら目出度くロールオーバーされる事となるかと存じます。これで無制限介入への道が開けたと言うもの
です。
・米国財政赤字垂れ流し
↓
・日本が外為特会という財政資金で買い支え
↓
・米国財政赤字が安定的にファイナンスされるので米国経済失速せず
↓
・米国経済依存の日本景気にもプラス
という図式になっているのでしょうけれども、このスキームの大きな問題点は、どこかで「米国財政赤字の縮小」とか「日本の財政赤字の縮小」という動きに繋がらないと、日米双方とも財政の拡大が見事に進行してしまう事でしょう。
日本が外為特会、しかも打ち出の小槌付きという状況で米国債を買い支える以上、米国としては財政赤字のファイナンスを心配する必要なしと言う「ありがたや節」状態。んな状態に置かれていると財政緊縮政策なんぞ取る意欲も失せるという物でしょうな。
とまぁこの状況たるや、まさしく「融通手形」状態なわけでございます。
一度始めると中々足抜けできず、足抜けどころかどんどん深みに嵌ってしまい、破綻するまでどんどん大掛かりになって行く所なんかは正に現在の拡大する外為特会と二重写しになる所でございます(-_-メ)。
で、この融通手形の行く先なのですが、最初のうちは融通手形の相手方となった資金繰りの悪くない方の企業の力で何とか回るのですが、そもそも資金繰りがいかれるような企業というのは赤字体質なわけでして、融通手形状態を解消できないまま上記のように規模が拡大するものでして、気が付けば双方とも融通手形依存体質になる訳です。
で、当然どこかで資金繰りに破綻を来たした瞬間に終了になってしまいます。その破綻が連鎖反応を起して全部逝ってしまうのが実際の融通手形なのですが、この日米融通手形、もとい介入ファイナンス装置はこのままやっていくとどうなってしまうんでしょうね〜。あまり想像したくない光景ですが・・・・・・・
既にドルユーロ相場で兆候が出ていると言う気も致しますが・・・・・
○そう考えると国内も同じか
良く良く考えれば最近の債券市場でもやっていることは大同小異であるわけです。一般会計では「2010年にプライマリーバランス達成」というお題目に沿って色々とせこいやり繰りをしているのですが、特別会計とか財投機関、地方財政なんかにやり繰りのケツを回しているのを意識的にか無意識の内にか頬かむりしているような債券市場。
国債新規発行30兆円枠を「あれは精神の問題で数字はどうでも良し」的な発言を堂々と行う内閣を捕まえて「構造改革が進展している」という評価もあった物ではないと思うのですが、結局「財政発散問題」という一番重要な問題には触れないままに、無事に国債を安定消化しつづける債券市場もまた同じである訳ですな。
債券市場の場合は「日銀の量的緩和による恒常的な資金余剰」と「財務省による管理政策の強化」によって、何時の間にか国債発行(というか財政赤字)が持続可能かどうかといった観点が抜けて来ている訳でして、まぁいつの日にか寒い事態が起きることになるのは間違いなしながら、その日がいつやってくるのか判らない訳ですな。これがまた困った話ですけど。
○てなわけでして・・・・・・・
来年の日本経済は見かけの数字は結構な状態になるかもしれませんが、所詮は花見酒経済でしょうな〜と思うわけでありますな。もし何かあるとすれば、その時のキーワードは「持続可能性(あえて「サステナビリティ」と言わずに日本語で^^)」かな〜と思っております。
ま、多分「持続可能性」への議論は頬かむりして一年が過ぎることになるとは思うのですが、構造改革らしきものも進まない中で先送りと財政へのツケ送りをいつまでも継続できるとは思えませんけどね。
今年もご愛読ありがとうございました。来年もまた宜しくお願い致します。良いお年をお迎えくださいませ(^^)/~~
2003/12/29
お題「今日もまた雑談」
まさに年末モードとなっておりますがいかがお過ごしでしょうか。今日も雑談だったりするのですが。
○銀行の証券仲介業開始に関して
先日、証券取引法や保険業法の改正に関する話題がでておりました。要するに規制緩和関連と言うことですが、証券に関しては「銀行に証券仲介業務を解禁しましょ」ってお話のようです。市場活性化といいますが、本当に良いのしょうか??
相変わらず銀行は貯蓄金融機関として機能している面もあるわけでして、銀行の側もそうですが、客の方も銀行=貯蓄機関=確定利付商品という意識が強いわけでございます。
世の中日々投資活動に専念できる人がそう多くいる訳ではなく、投資活動に関してややこしいことを考えている時間が勿体無い人の為の貯蓄性商品に関する需要は相変わらず強いわけでございます。
その象徴ともいえるのが「個人向け国債」。変動金利型にしたのは兎も角として「元本保証」商品になっております。貯蓄性商品として購入者に受け入れられる為には商品設計として元本保証が必要だという現実があるわけですな。
と、まぁそんな状況の中で銀行の店頭でこれ以上リスク商品を売る(外貨商品以外には投信と変額保険を扱ってますな)必要があるのかは消費者保護の面から甚だ疑問であります。
証券業界で売る側に回った事のある人ならばご存知の「適合性の原則」ですが、銀行という元本保証商品しか売り歩いた経験のない状況においてはこの「適合性の原則」という発想は起きない訳であります。何せ安全な商品しか売らないのですから、常に消費者保護がなされている訳ですから当然です。
で、その銀行っつー箱でリスク商品を売らせると、販売実績をあげる為に(ならば逆の意味で良いのですが、恐らく販売する側が非常に無邪気に)「適合性の原則」を思いっきり軽視、あるいは無視したような販売を行うというのが目に浮かんで来るわけでありますな。
「販売に際しては資格制度などを設けて、適切な投資勧誘を行うようにする」という事で当局的にはオッケーなのでしょうが、組織っつーのは一朝一夕で文化を変える事はできない訳でして、今から先行きが思いやられるものでございます。
○フレーズ先行の行政
話は全然変わりますが、先日金融庁から出てきた「経済活性化の為の産業金融強化策」(産業金融機能強化関係閣僚等による会合ってところから出ているらしいですが)なのですが、それを見ているとまたも香しい記述があったのでそれに対して。
『リレーショナルシップバンキングにおける新しい中小企業金融への取組』というお題で、『金融機関による貸出後の業況把握の徹底、財務制限条項や信用格付けモデルの活用等により、不動産担保・保証に過度に依存しない融資の促進を図る』と言っております。
これだけ見ていると流してしまうのですが、この施策の別の所で「信用リスクデータベースの機能強化」が謳われておりますので、恐らく「信用格付けモデルの活用」というのは「企業の信用リスクを定量的に把握するモデルの活用」という事になるであることが推測されるわけですな。
企業の財務データから定量的に信用リスクを算定するというのは、お題にあります「リレーショナルシップバンキング」と思いっきり矛盾すると思うのですが、こういうフレーズがさらっと出てしまうところが実に香しいところでございます。
結局「骨太の方針」みたいなもんで、この首相にしてこの行政ありといった所になるのでしょう。困った話ですな。
ま、さすがに今日と明日はポジション調整的な売買だけで終了するのではないかと思います。相場の方は閑散でしょうね〜♪
2003/12/26
お題「雑談で勘弁」
債券市場はまだそれなりに動きもありますが、ドル円市場や株式市場は見事に動きがなくなってきております今日この頃でございますが如何お過ごしでしょうか?
と言うわけであまりテーマはなく相場を見ていて思った事やらよしなし雑談をして思ったことやらをつらつらと。
○パッシブ運用全盛+全員順張りディーラー=??
昨日のドラめもんで「パッシブ運用いかがな物か」みたいなことを書きましたところ、ちと論議が起きまして、その結果あたくしの申したかった事を判りやすく纏めていただきました。どうもです。てな訳で本人未承諾で受け売りしちゃいます。
パッシブ運用だけでなく、アクティブ運用にもマーケットインパクトはあるのですが、その違いは「アクティブ運用はマーケットの歪み(というか割高割安というか)を修正する方向にインパクトを与えるケースが多いが、パッシブ運用はマーケットの方向性を加速させるインパクトを与えるケースが多い」という点でございます。
となりますと、資産運用においてパッシブ系が全盛になればなるほどマーケットが本来期待される機能が喪失してくるというわけでございますな。一方方向に行くととりあえずそれが加速してしまうという市場になりつつある債券市場。パッシブだらけになってしまう事は業者にとってはある意味お得な面があるのですが(相場と関係なく自動的に売買してくる人の動きを事前に予測して動けば良いので)、そうなってしまうと最早マーケットぢゃあございませんな。
何て事考えながら同業の方とお話していると、同じようなことを複数の方から聞いたのであります。「下がったら買いとか言ってる癖にいざ下がると誰も買わないんだよね〜。特に最近の中短期債。」「もう最終投資家って言えるのは生保さんくらいで、あとはパッシブか順張りディーラーしかいないって感じになってきましたな〜。」
確かに今年の相場をひとことで言えば「オーバーシュート」の連続でございまして、今にして思えば5年債の0.15%というのも凄いものがありましたが、それよりも驚愕したのはその5年債が1%を上回ってしまった事。当時ドラめもんで「何ですかこれは」と叫んでいた2年債の0.25%超えだとか(9月3日に「合理的価格形成機能の崩壊」というお題で書いてましたな。懐かしや)もう凄い相場展開になりました。
パッシブと順張りディーラーという相場の動きを加速させる方向に作用しやすい方々の勢力が拡大するとどうなるのかと申しますと・・・
・相場がオーバーシュートする
↓
・裁定取引系のアクティブな運用者やディーラーがその動きに向かう
↓
・ところが順張り系の勢力がでかいのでオーバーシュートに拍車がかかる
↓
・向かった逆張り系の人たちが耐えられなくなって撤退
↓
・さらに順張り系の勢力拡大
何のせいでこうなったんでしょうな〜って感じなのですが、色々思いまするに、@量的緩和の長期化による期待収益率の悪化で絶対リターンを期待する人が撤収しちゃった、A金融機関がメガ化した上に横並び意識が強くなっている(金融庁の画一的な監督姿勢も)、B変な方向での「説明責任」重視(説明責任が何時の間にか横並びにすりかわってしまうというお馴染みの弊害)、なんて事が原因として思い浮かぶのですが、皆様如何お感じでしょうか??
株式市場のように個人投資家や外国人投資家といった国内機関投資家と別の論理で参加してくれる人がいると、もうちょっとマシなのでしょうけれども、残念ながら債券市場はそういう状況にないようですので、この調子では当分こんな状況が続くのではないかと危惧する所であります。
○民営化で成功していると言いますが・・・・・・
これも知人との雑談ネタ。全然話として練れていないので軽いノリで。
民営化の成功事例ということで引き合いに出される事の多いJR。確かに業務の発展は大変素晴らしいのですが、その事業展開には「民業の圧迫」によって成功した面もあるのではないかな〜という雑談で少々盛り上がっていたりしたのですな、これが。
ご存知のようにJRは駅の真上に立派なターミナルビルを建ててホテルだのショッピングセンターだのをおったてております。元々このような事業は旧国鉄時代はやろうと思っても出来ない事でありまして、ちょっと大きな駅前であれば百貨店が進出したり、立派な駅前商店街が形成されていた訳でございますな。
しかし、鉄道会社が自分の駅にビルをおったてるとなりますと、誰がどう考えてもそっちのほうが便利でありますので、顧客の動きが変わってしまう訳でございます。商圏が相乗効果で拡大すると言うケースもあるかもしれませんが、民営化された官業が民業を食って拡大しているという結果になっているケースも多いのではないでしょうか?
悪評高いNTTの回線問題なんか民間企業にしないで官業でやっていた方が「政策的配慮」が出る事によってもっとスムーズに開放されていた(というか今でも問題ありありですが)のではないかと思ってしまいますし・・・・・・・
利用者の利便性が大事なのは当然ではありますが、結果として民業圧迫になる民営化って一体全体何のための民営化なのか非常に訳の判らぬ所であります。
全て採算を度外視されても困りますが、何でもかんでも「不採算だから駄目」というのではそもそも行政とは何ぞや?という話になるのではないかと思うわけでございます。そういう点でさっぱり判らないのは郵政事業の中でも郵便事業の民営化っつーのと道路公団の民営化ですか。特に道路公団なんて民営化して競争者が出てくるような類の物の訳がないのに、何で民営化するのかさっぱり理解できませんですな。相変わらず。
と言うわけで、年末モードで雑談状態でございました。
2003/12/25
お題「商内は踏み出しが大切なり」
今日は雑談です(^^)。
題はご存知、本間宗久秘録(相場三昧伝)の冒頭のお言葉です。思わず自分でも引用していて日々のお仕事を反省してしまうお言葉でございます。
米商内は踏み出し大切なり。踏み出し悪しき時は決して手違いになるなり。又、商内進み急ぐべからず。急ぐ時は踏み出し悪しきと同じ。売買共、今日より外、商い場なしと進み立ち候時、三日待つべし。是伝なり。
改めて引用すると耳が痛いですが、最近は特にこのお言葉を皆で噛みしめなければいけないのではないかと思ってしまうのでありますな。
○パッシブ運用さま宛
最近はアクティブ運用の肩身がやたらと狭い日々が続いておりまして、益々パッシブ運用的な債券売買の動きが相場へ影響を与えるようになっております。
このお方たちに相場三昧伝を説くのはお門違い(だからこそパッシブ運用なんですけど)という気もかなり致しますが、それにしてもこのお方たちの動きがあまりにも機械的というか何というか。
いつも思うのですが、まるで「明日は相場がない」ような売買をしてくるので、ベンチマークに対してニュートラルになっているかもしれませんが、自分たちの動きで肝心のベンチマークのパフォーマンスを悪化させているという説もあるわけでして。ま〜困ったものでございます。
資金配分と同時に買いを入れるとか、月末の引け値ギャランティーで買いを入れるとかって売買なら別に優秀なコストの高い人材を張ってやる事はないと思うのですがね。
あまり書いていると怒られるので以下自粛。
○日銀総裁さま宛
まー普段からドラめもんで好き勝手申し上げておりますので、読者の皆様この後何を書くかお判りだと思いますが(^^)、やはり書く訳で。
昨日の時事メインコラム「金融観測」では「今年の日銀十大ニュース=やった全てが事件?」というお題で、福井日銀新総裁就任以来の9ヶ月の金融政策を見直しております。で、結局日銀が矢継ぎ早に動いた事が全て事件なのですが、そもそも何でこんなに派手に日銀が動くようになったかと言う点については「日銀総裁の行動主義の結果と受け止められる」と指摘しております。
まぁ思い出してみれば、総裁就任直後の3月24日に「25日に臨時政策委員会を開催」とアナウンスして以来、この総裁は動く動く。で、この動きもちゃんと現状認識して動いているというよりは、いつの間にやら「動く事自体が目的化してませんか総裁」ってな状況になっているのはご存知の通りです。
先日の金融政策決定会合では「資産担保証券買入の基準見直しについて執行部に検討を指示」をしていた日銀総裁。どういう基準見直しをする結果になるのか知りませんが、先日ドラめもんで悪態をついたように、どっちにしても当初の「中小企業金融の目詰まり論」の政策目的に合致しない方向での基準見直しになる事は間違いない(執行部がゼロ回答すれば別ですが)所でございます。
当初の入口部分に間違いがあった訳ですから、損切り(=施策の中止)をすればいいだけのことですし、「まず行動してみて、うまく機能しないなら取りやめる」という事こそが本来の「行動主義」ではないかと思うのでございますが・・・・・結局「はじめた事を止められない」という帝國陸軍状態に陥りつつあるのが今年の日銀ではなかったかと思う訳ですな。
○最近の行政全般にも宛てられそうですな
改革改革と言うのは結構なのですが、何のために民営化するのかという当初の議論が完全に彼方へと行ってしまった道路公団民営化や郵政民営化。
まぁこれは踏み出しが悪いというよりは、巧みな問題のすり替えによって却って焼け太り状態を狙う既得権益保護軍団の戦略が上手だったということなのでしょうが、結局は当初「何のために改革を行うのか」という点に理念がないままにウケ狙いで突っ走ってしまったのが問題の始まりだったという事なのでしょう。
昨日ドラめもんでご紹介した「再建計画に則って貸出債権の一部を劣後ローンにすると不良債権が消える」という素晴らしいスキームも、読めば読むほど「単に不良債権額を減らしたいだけの数字あわせ」という発想が見え見えでございます。端的に申し上げると、「再建計画に則って一部債権放棄したゾンビ企業への貸出金が正常先債権になる」と言っているのと同じ発想でございますが、そもそも「実現性の高い再建計画」の実現性が今までの例を見れば明らかに怪しいのですがね。
何か施策をおっぱじめる時に、政策の目的が超目先的になっているのが問題なのではないかと思う訳ですよ。そのためにあちこちで合成の誤謬が発生している訳でして。しかも金融庁と日銀は「動く事が重要」と言わんばかりに色々な施策を打ち出してきますが、「まぁお前ら落ち着け」と言いたくなってしまうのはあたくしだけでしょうか??
おまけ:2年国債入札
誰も相手にしない2年国債入札が行われます。根本的には価格さえある程度(0.1%台後半まで)調整すれば何とかなってしまうかとおもいますが、同残存の10年債や5年債と比較すると単利ベースで見ると無茶苦茶割安に見えてしまいますな。というか需給要因だけで外の債券が割高になっているだけの話なのですが。
「時間軸」がもろに直撃するゾーンでもありますが、現在の2年債の価格形成を見ておりますと(というよりは、2年債自体もカレント物以外は需給要因でインチキイールドカーブが形成されているのですが)、一応来年の9月くらいまでは量的緩和の解除はありえないという感じの状況になっております。
んなわけでして、これからの2年債入札は徐々に「時間軸はどこまでなんざんしょ」という所への意識をしながらの入札になってくると思いますので、その味ではもうちょっと注目してあげてください。
ではでは。良いクリスマスを。
2003/12/24
お題「益々ねじれる中小企業金融」
あまり債券市場とは関係ないですが、「脳内現実」を元に訳判らん政策を打ち出し続ける現在の「頭でっかち政策」を象徴するような出来事と感心したもので。
上が上なら下も下。現実を本当に把握して政策立案しているというよりは、何でもかんでも米国で行われている事や米国の学者の言説を金科玉条の如くありがたがって政策の機軸を打ち出す金融庁の出す碌でもない中小企業政策。その最大の作品であります「金融検査マニュアル」の改訂案が出されました。
マニュアル本体をきちんと読むべき所なのですが、例によって量が膨大なので正月にでも読むと致しまして(読み物だらけになりつつありますな^^)、「主な内容」の部分で気になった所を並べて見ましょう。詳しくは金融庁のWebで読む事ができます。
○貸出金固定化の勧めですか??
まずは「U.擬似エクィティへの対応」でございます。ここには「資本的劣後ローンによるデット・デット・スワップ」っつーのがございます。
『資本調達手段が限られている中小・零細企業においては、事業の基盤となっている資本的性格の資金が債務の形で調達されていることが多い(疑似エクィティ的融資)。』
しかし誰が言い出したのか知りませんが、相当の昔から行われていた融資形態をさも大発見かのように命名するっつーのも香しいですな。先日あたくしがドラめもんで申し上げた通り、過小資本の方が有利になったり、企業に利益の内部留保するよりも給与の形式で社外流出させちゃった方が有利になるという税制、中小企業政策をどうにかすべく提言するほうが先決ではないかと思うのですがね。
『このような状況を踏まえて、金融機関が、中小・零細企業向けの要注意先債権(要管理先への債権を含む)を、債務者の経営改善計画の一環として資本的劣後ローンに転換している場合には、債務者区分等の判断において、当該資本的劣後ローンを資本とみなすことができるとする。』
で、まぁ事例みたいなものも別紙で書いてあるのですが、読んでも全く理解に苦しむ内容でございます。何考えているんだか・・・・・
要するに、延滞貸出金状態になっている経常運転資金の短期転がし貸出を劣後ローンに切り替えるとあら不思議、与信先の資本が充実しちゃいますってお話なのですが、もうアホか馬鹿かと。不良債務者の貸出金固定化を推進してどうするんでしょう?
で、この事例を読むと益々訳がわかりません。この「事例」によれば、「実現性が高い経営再建計画」の実施の一環として、一部の貸出を劣後ローンに転換した場合、この会社への貸出金と劣後ローンが全て貸出条件緩和債権に該当しない(=正常先債権)になり、劣後ローンに関しては100%引当を行う、となっておりますな。
これって結局「表面上の不良債権額が減る」だけの事になるようですし、それ以前の問題として契約上短期弁済が可能な(金がないから不可能ですが)貸出金を長期固定化するのを勧めるというのは、単なる「先送りの勧め」であるとしか思えませんな。
中小企業の過小資本を問題にするのであれば、その企業の代表者などが行っている自社への貸出金を資本へ転換させるとか、代表者個人へ融資させて企業の資本金を払わせる(これは商法上の見せ金にあたるので問題がございますが)など、まぁとにかく何でも良いのですが、今まで企業から代表者(およびその親族など)に社外流出していた金を企業に戻させるようにした方が良いのではないかと思いますがね。
○マニュアルの恣意的運用に拍車がかかるのでは??
順番が逆になりましたが「T.債務者との意思疎通」の部分がございます。
『金融機関が、的確な金融仲介機能を発揮していくためには、その前提として金融機関自らが日頃の債務者との間の密度の高いコミュニケーションを通じて、債務者の経営実態の適切な把握など的確な債務者管理に努めていることが不可欠である。』
言われなくても普通にやっていると思いますがね。まぁそれはともかく。
『こうした事から、検査に当たって借り手企業に関する説明責任の履行状況を検証するとともに、これに加え、金融機関の中小・零細企業に対する企業訪問・経営指導等の実施状況についても検証し、それらが良好であると認められる場合には、以下の取扱を行うこととする。』
ってな訳で「企業の成長性等について金融機関の評価を尊重」だとか「金融機関による中小企業の再生支援の実績を引当率に反映」という話になっております。
この部分、一見するともっともらしく読めるのですが、よく読めば結局金融庁の自由裁量部分が増えております。「良好であると認められる場合」っていうのがどういう内容なのかというのは結局金融庁の検査官に判断が任される(マニュアルそのものにはもうちょっと詳しく書いてあるでしょうが)訳でありますな。
元々「裁量的金融行政を排除する」とか偉そうな事を言っておっぱじめた金融検査マニュアルの策定でありますが、案の定金融庁の権限拡張の道具になってしまい、裁量行政の推進を行う一助となっている訳ですな。こういうものは最初の理念とは関係なく自己拡大していくんですよね。全く困ったものです。
そういえば金融検査マニュアルの策定やら、30社問題やら好き勝手言っていたもと日銀マンの某氏は、りそな救済に関して何の総括もしないままに妙な銀行の設立に名前を出したりしていましたが、今般はFPの新たな認証機関を設立するそうですな。自分の政策の検証とか総括をやらないで次々と新機軸(?)をうちだして「やり逃げ」状態のこのお方、まさに現在の象徴みたいなお方ですな。
ま〜その他にも妙な「キャッシュフロー重視」主義なんかも気になる所でありまして、中小企業融資に関して配慮したマニュアルの改訂らしいのですが、相変わらず零細企業を大企業をごっちゃにしたような内容になっております。
こんな無茶苦茶な当局に資本を持たれてしまっている金融機関というのも実にご愁傷様としか申し上げ様がありませんな。この国の中小企業金融政策ってどうなっちゃうんでしょうね。頭が痛いものです。
2003/12/22
お題「日銀ウォッチと見せかけた只の雑談」
金曜日はヒマヒマ相場の中で金融政策決定会合の議事要旨が公表されました。10月31日分と11月20〜21日分の議事要旨が同時に発表となっています。
http://www.boj.go.jp/seisaku/03/pb/g031031.htm
http://www.boj.go.jp/seisaku/03/pb/g031121.htm
で、まぁ比較的ど〜でもよいチェックが入るあたくしであります。
○2日間かけて何の話をしているんでしょ?
ま、議事要旨ってぇのは基本的に一定のフォームがあるのは1年以上に渡って読んでいればさすがにあたくし如きでも判ります。判るんですけど、この2回の議事要旨。紙に打ち出してみますと10月31日分が9ページ分、11月20〜21日分が10ページ分となっておりまして、いくら定型フォームだからとはいえ思わず「何で1日の会議と2日かけた会議の議事要旨の量が殆ど同じ?」と突っ込みたくなる訳であります(-_-メ)。
実は10月30日の会合では展望レポートの発表という大仕事があったので議事要旨が長くなっているというのはあるのですが、展望レポートの内容に関して討議、決定するくらいの重い内容が一日でできるんでしたら、わざわざ2日間かけて会議をする必要も無さそうなものです(-_-;)。
ちなみに、11月の2日間実施の会議なんですけど、初日は何と13:59〜15:37と、何でそんな時間帯に、しかもたった1時間半かよ!という時間であります。どうりで最近情報ベンダーで「金融政策決定会合が始まった」ってニュースにならんわけですな。恐らくそんな時間に「金融政策決定会合が始まった」ってニュースが出ると市場関係者が脱力するので、是非次回の2日開催の際にはフラッシュを出して頂きたいものであります(^^)。
それはそれとして議事要旨。11月分のみです。
○資産担保証券の次はシンジケートローンですか
シンジケートローン債権がこの会合の終了時から日銀の適格担保になったのですが、それに対する言及が2箇所にございます。
最近の金融為替市場動向に関する執行部からの報告部分でこのように。
『この間、シンジケート・ローンの組成は趨勢的に増加している。一件当たりの組成額については、徐々に小口化が進む傾向にある。なお、9月11、12日の決定会合でも報告した通り、執行部は証書貸付形態で実行されているシンジケート・ローン債権を日本銀行の適格担保として受け入れるための実務面での検討を進めてきたが、今般これを適格担保として受け入れることが可能となったため、明日(11月21日)から受け入れを開始する予定である。』
当面の金融政策運営に関する委員会の検討の部分ではこんな感じです。
『また、信用仲介ルートの育成という観点から、ひとりの委員は、(1)執行部から報告されたシンジケート・ローン債権の適格担保化は、市場型間接金融の発展に向けた取り組みの一つである、(2)この11月に始まった「証券化市場フォーラム」でも、実りのある議論を期待したい、と述べた。』
ふーんって感じなのですが、市場型間接金融とやらを発展させたいのであれば、市場介入にあたる日銀の適格担保化をするのは如何な物なんでしょうかな。
速水総裁は在任の最後の方では「クレジット・カルチャーの定着」などという言葉を使って要するに「市場にもっとリスクマネーを供給すべし」と主張していました。で、この「市場型間接金融」。こんな言葉いつの間に出てきたのか知りませんが、とりあえず市場型と言うくらいですから、日銀(というか日銀総裁)があちこちで講演している通りに「リスクに見合った金利」という体系が市場を通じて構築されるという発想なのでしょう。
然るに、市場発展のために日銀の適格担保化というよーするに「日銀がファンディングのお手伝いをする」という事をするのは、実際的ではあるかもしれませんが、結局は現在の金融機関貸出(手形オペの適格担保には一般の手形貸付形式での手形も含まれます)が中途半端に適格担保化されているのと同じ事になってしまい、価格形成機能がおかしくなってしまうのではないかと思いますけどね。
○また横文字か!
フツーに読んでいたのですが文中に一箇所思いっきりあたくしを固まらせる場面がございました。肩凝りが酷いので、そういう語句は入れないで欲しいものですな、全くもう(-_-メ)。
金融経済情勢に関する委員会の検討の部分にその記述はございます(^^)。
『別の何人かの委員は、現在の設備投資の増加は、IT関連に集中していた2000年度の回復局面と比べ、家電や素材関連なども含め業種的な広がりを伴っていると指摘した。このうち複数の委員は、ヴィンテージの高い設備の更新需要も踏まえると、今回の回復は2000年度の回復局面よりも持続性があるといえるのではないかと発言した。』
「ヴィンテージの高い設備」ですよ先生、なんすかその用語は????ってところですな。普通こういうのは「老朽化した設備」って言うのではないでしょうか?と思う訳であります(-_-メ)。
この不要な部分での外来語、しかも「ビンテージ」じゃなくて「ヴィンテージ」という使い方といえば誰が発言したものかが良く判るというものであります。おまけに言えば、議事要旨を作るのは当たり前ですが事務局として出席している日銀の政策委員会室や企画室といった事務方です。この人たちまでわざわざこんな表現を使う事もないと思うのですが。
ま〜事務方が総裁にヨイショしているのか、それとも総裁おん自らが書けと命令したのかは判りませんが、どっちにしてもろくなもんじゃないですな。
大体ですな、不必要な洋行かぶれ的な外来語の使い方って、たぶん誰もが読んだことのある夏目漱石の「坊ちゃん」に「赤シャツ先生」というキャラクターで登場するくらいでありまして、文明開化以来「恥ずかしいインテリ」の典型として扱われている筈なのですが・・・・・・・
いまさら「洋行気取りのインテリ」的なキャラクターという最早お笑いを通り越してしまう存在であります日銀総裁。ま、その点におきましては某学者大臣様とよく似ておりまして、このお二方実にいいコンビでございますな。全くもう。
○一応真面目に読むとこんな感じです
基本的には金融経済月報と同じなのですが、足元の景気については企業部門を中心に非常に順調。特に今回の景気回復の持続性については、設備投資を中心に持続性への可能性が高い。一方、物価に関しては構造調整が依然進行中であり、やや弱含みが継続するも、再度のデフレスパイラル入りは考えられない。という感じでの認識になっていると読めます。と言う訳で5行で片付くのでありました(^^)。
よ〜するに強気の見方ですな。念のため。
2003/12/19
お題「引き続き須田委員の講演記録」
20年国債の入札は見事に順調な結果でありましたが、この新発債はどう見ても業者の持ちになっております。一部の銀行さんもお買いになられているようですが、本来の投資家層の買いってあったんでしょうかね〜。
ま、落札業者がこれまた見事にばらけているので、業者連合艦隊が頑張って支えるでしょう。ただし相場の上下ではなく、10年〜20年のイールドカーブで支える格好になるでしょうが(相場を上げると売りが来るので)・・・・
と言うわけで昨日に引き続き須田審議委員の講演記録。
あたくしが昨日「金融緩和の波及効果として為替レートを通じる効果についてのお話があるのですが・・・」と申し上げました所、色々と参考になる資料など頂きまし恐縮でございます。で、その資料を読んで理解するのにこれまた時間が必要ということで(とほほ)、結局本日は別の部分について書いてみたいと思います(汗)。
○量的緩和は金利ターゲットではない筈ですが
量的緩和はゼロ金利政策ではないと言っておきながら(というかそういう政策だという事になっているのですが)も、結局は金利ターゲットに本卦帰りしていると思われるお話があります。
「量的緩和政策採用時点での議論」というお題で、ゼロ金利政策と量的緩和政策の違いについて強調しているのですが、政策における道具をミックスすると結局金利ターゲットになっていると思う訳です。
『量的緩和政策の導入時点では、「ゼロ金利政策」に戻ることも選択肢の一つでしたが、なぜ「量的緩和政策」を採用したのでしょうか。その理由の一つは、「市場機能の維持」です。ゼロ金利政策の下で失われてしまった市場機能を、量的緩和政策を採用することにより、維持していきたいとの考えがありました。』
昨日ご紹介したように、結果としては市場機能の維持はできなかったのでありまして、その点についてはこの講演でも当然ながら触れています。で、何で市場機能が維持できなかったかと申しますれば、本質的には「なお書き」だというわけであります。
『ただし、量を一定にすると「金利」が大幅に振れる可能性があるので、それを防ぐために、「なお書き」が導入されました。通常のなお書きは、「なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う」というものです。』
『「量」をターゲットにした場合、金利がボラタイルに動く可能性があります。とはいっても、同年3月16日から補完貸付制度(通常の場合の貸付金利は公定歩合)が運用を開始されていましたので、公定歩合(当時0.25%)が概念上は無担保コールレート(オーバーナイトもの)の上限金利になるはずです。ところが、量的緩和政策に移行する前は、無担保コールレート(オーバーナイトもの)の金利が0.15%程度でしたので、補完貸付制度があっても、それが0.15%をオーバーしてしまうことは排除できませんでした。金融緩和政策と言いながら、金利がそれまでよりも高くなってしまうと緩和にならないという意見があって、そのような高い金利を回避するために、「なお書き」が付け加えられました。金利が高くなりそうなときに弾力的な資金供給を行えば、金利の跳ねを防ぐことができるというのが、「なお書き」の意味合いでした。』
そもそも市場機能の維持をしようというのであれば、金利が跳ね上がった場合に資金供給を行うというのは妙なお話でございます。「金利が上がったら金融緩和にならない」というのは仰る通りですけれども、そういう話になること自体が「金利ターゲット」的な発想でございます(-_-メ)。
この矛盾に関して須田委員は「量的緩和政策の現実」というお題のコーナーでこのようにコメントしています。
『量の増大が金利の平均的な低下だけでなくゼロ近傍での安定化をもたらしたことは、市場機能の維持という当初の狙いとは異なる結果をもたらしましたが、その一因として取り上げておきたいのが、当時想定していた扱いとは異なるようにみえる、「なお書き」の運用とその受け止め方です。なお書きについては、前に申し上げた通り、短期金利が一時的に許容範囲を超えて跳ねた場合に資金供給量を増やして、マーケットを鎮めるということを想定していました。』
『(前半割愛)なお書きを発動した時の状況を見れば、結局、大きなショックに対しての施策として、かなり大量に、かなりの期間、資金供給を増やしたということになります。確かに、大量に資金を供給した結果、金利は跳ね上がらずに済んだと言えるでしょうが、当初考えていたように、金利が変動し、許容範囲以上に金利が跳ねた場合に、なお書きを発動するということにはなりませんでした。』
『今日では、市場は、日本銀行は単純に当座預金残高を目標にしているだけではなくて、短期金融市場において継続的に金利をゼロ%近辺に維持することにも強くコミットとしていると認識しています。資金需要の急増に対して補完貸付に委ねてある程度の金利上昇を許容するのではなく、なお書きで対応しゼロ金利を維持してきたことが、このような認識を生じさせた一因であると思います。』
と言うことでして、講演では指摘してませんが、「金利ターゲットではない」と言いながら結局やっている事は「金利ターゲットと同じだよ〜」という事でありまして、そうなると量的緩和政策における量の拡大って何の意味があるざんしょってな感じになるのですが、その点については全く別の論点でお話がされているのが惜しい所ですな(-_-メ)。
○量的緩和における「量」の意味
この話を真面目に取り上げだすと大変な重い話(ただし実務上の意味はないような気もするのですが)だったりするのですが、この講演から関連するコメントを拾って見るとこんな感じになります。
『量的緩和政策への移行を決めたものの、量自体の効果については不確かであり、その効果や当座預金残高の増額による追加緩和の可能性については、その後も検討を続けることになりました。』
『この政策を採用した時点では、コミットメントが満たされるまで、量をターゲットとする政策の枠組みを用いることを決めたのであって、その間、量のターゲットを減らすことはあり得ないということまでコミットしたわけではありません。ただ、その後、市場においては「量的緩和を進めることが金融緩和である」という期待が形成されていますので、今のところはそういう形で政策が進められています。』
その割には先日は「当座預金ターゲットを拡大したけど追加緩和ではない」という無茶苦茶な理屈になっておりましたが、その点についてはスルーしております。極めて遺憾の念に堪えません(^^)。
『短期金融市場の機能の低下を取り上げましたが、それが当座預金需要増に結びついていったのは、日本銀行がその機能を代替していったからです。』
『(途中は思いっきり割愛)以上のように、供給面の工夫と需要面の要因が相俟って、当初の想定以上の当座預金残高目標の増大にもかかわらず、それに合わせて資金供給を増やすことが、比較的スムーズにできました。』
ここでは例によって指摘していないのですが、追加的金融緩和をしているように見せるために当座預金残高のターゲット拡大を行い、いつの間にやらターゲット拡大が自己目的化しているのではないかという印象を与えてくれます(^^)。
で、この量に関する評価に関しては「ゼロ金利下での量増大の効果をどうみるか
」というお題のコーナーで須田委員こんな指摘をしています(^^)。
『なお、展望レポートでは現在のようなゼロ金利のもとで「量」を増やすことの効果についてそれだけを取り出して評価していませんが、私の現在時点での量増加の効果についての評価は、その効果は不確実であって、これまではあるとしても非常に小さくて確認できない程度であったということです。』
と言うことで、須田委員的には「流動性の罠」に陥っているという評価になっているのではないかと思います。マネタリスト的発言で金融政策に口を出す某大臣におかれましては良く良くお読み頂きたいものであります。
『最近、日本の金融政策は研究テーマとして世界的に関心が高いので、様々な分析が行われるようになっています。量の増大はマネタリストからみれば当然有効だということになります。他方、「ゼロ金利の状況下ではマネタリーベースの増加と供給手段の多様化、それに中央銀行が何を買うかは、市場参加者の将来の金利に関する期待形成を変化させることがない限り、経済の均衡に影響を与えることはない。ゼロ金利の状況下では量的緩和は無効である」という有名な論文もあります11。いずれにせよ、今のところ、理論の世界でも実証の世界でも、ゼロ金利下で「量」を増やすということの効果については、決着がついていないということです。』
というのが結論となっております。どうなんでしょう、結局は??
2003/12/18
お題「日銀的量的緩和考」
お題のお話に入る前に昨日の補足。
昨日金融経済月報の本文が公表されたのですが、一昨日先行して発表された「基本的見解」と比べてちょいとばかり気になる部分がありましたのでご紹介。
昨日のドラめもんで、企業物価の見通しについて「強含みに推移」という点が目に付いた所だと申し上げました。確かに基本的見解ではこういう表現をしております。
『物価の先行きについて、国内企業物価は、目先は強含みで推移するとみられる。』
ま〜先生「強含み」ですよ〜ってなもんで驚いてしまいましたが、昨日公表された全文を見ますとこの「目先強含み」というのはどうも「特殊要因のせいだ」という事のようです。人騒がせな。
『以上を踏まえつつ、国内企業物価の先行きを展望すると、米価格の上昇の影響が残る目先は、強含みで推移すると見られる。』
そんなに米価って影響あるのかよという突っ込みはさておき、どうも国内企業物価が強含みとなっても「特殊要因たる米価上昇のせい」にしてしまうようですな。
さて本題。
日銀Webに昨日アップされた須田審議委員の講演記録。お題が「量的緩和政策について-その暫定的評価と今後の課題-」となっておりまして、内容は9月7日と12月5日に行われた講演の内容をまとめたものであります。
http://www.boj.or.jp/press/03/ko0312d.htm
須田審議委員といえば、最近の「意味のない当座預金残高引き上げ」に対して田谷審議委員とともに早くから反対票を投じている方です。だいぶ前に当ドラめもんで講演記録をご紹介した時に「昔の『日銀理論』に近い文脈で話をしてますな」という感想を申し上げたと思いますが、この講演も基本的に日銀本来の政策思考に沿った内容になっているのではないかと思われます。
ちと量が多く(本文を紙に出すと13ページ)、結構内容が充実しているので、実はまだ全部を詳細に読めておりません。そんな訳で、本日は順番が逆になるような気がしますが講演の最後の方にあたります「今後の課題」という部分についてさらっと読んでみたいと思います。
○長期金利上昇に関して
「市場との対話の重要性」ということで、6月以降の長期金利上昇への反省なども指摘しています。米国と英国の中央銀行が市場との対話に色々と苦労しているという例を挙げたあとに、日銀について話を転じております。
『今年の6月以降に長期金利が急騰し、ボラティリティもかなり高くなりました。私はこの一件以来、市場との対話の重要性を拠り一層強く実感するようになりました。市場との対話について改善できるところはないかどうか、常に考えていなければならない課題だと思います。金利急騰時の経験は、私にとって、市場との対話の改善のためのよい教材となりましたので、それをもとにお話したいと思います。』
ということで、金利上昇の要因分析並びに須田さん的な見解であります。
『6月以降の長期金利の急騰の要因としていろいろ挙げられています。金利低下の行き過ぎ感の強まりや内外における経済指標の好転を背景に景気についての過度の悲観論が後退し景況感が改善したこと、金融機関による利益確定売り、もしくは損切り、それにボラティリティ上昇やそれに伴っての持高調整売り等が嵩んだこと、などが指摘されています。』
ですな。で、出口政策への意識が市場金利に影響を与えていた(と言われている)点について率直な見解があらわされておりまして中々のものであります。
『8月以降については、消費者物価の前年比下落幅が0.1%まで縮小したもとで、そのとき公表された7月の決定会合議事要旨の読み手が、「日本銀行が量的緩和の出口論を本格化させたのではないか」という疑念を抱いたことなどもあって、量的緩和の出口のことなど、まったく考えていなかった人達が出口を意識しはじめたことも、金利上昇に影響を与えたといわれています。』
『この間、イールドカーブの形状が(1)時間軸の長さと(2)量的緩和後の短期金利の水準によって決定されるとの前提をおいて、イールドカーブの動きから、市場が先行きの金利予想をどのように変更させたかを探ると、量的緩和解除後の金利水準が、過度の悲観論の後退や経済指標の改善に伴って、上昇するとともに、時間軸が短縮したことがわかります。特に出口論が注目された8月には時間軸が大きく短期化しました。』
時間軸の短期化と出口論への注目についてきっちりと言及してますな。ちゃんと現状認識ができております。
『その間、私は日本経済は展望レポートの標準シナリオに沿った動きを続けているという判断を維持していましたし、時間軸が大きく短期化しているという認識もありませんでした。したがって、市場の景況感の急な強気化と時間軸の短期化には大きな認識ギャップを感じていました。長期金利の急騰に、景気や時間軸についての日銀の見方を市場がきちんと把握していなかったことが影響を与えていたとしたら、それはこちら側にも責任があります。』
非常に婉曲な表現なのですが、あたくしは何気にこの部分は日銀総裁への遠まわしな批判なのではないかと思ってしまったりしております。講演者の本意ではないかもしれませんけれども。
と申しますのは、この「市場との対話」につきまして、一番最初に挙げた実例としまして、FRBグリーンスパン議長の事例が挙げられておりましたからでして、
『FRBが非伝統的な金融政策に移行する可能性を示唆したことを受け、長期金利が3%台まで低下していた状況下で、グリーンスパン議長が景気について少し楽観的に取れるような発言をしたため、途端に金利が跳ね上がったことは記憶に新しい出来事です。』
なんてコメントしております。これって市場金利急騰で市場金利から逆算される時間軸(=市場の期待時間軸って事ですかな)が見る見る短期化していく間に景気に楽観的なコメントを出しつづけていた福井総裁を暗に批判していると読んでしまった訳であります。読みすぎかな??
○出口論は否定、時間軸に関しては機能している
順番が逆になりましたが、この「今後の課題」と言う所の前置き部分ではこのようなコメントを行っております。
『量的緩和政策について、以上のようなコストがあるとしても、コミットメントが達成されないかぎり量的緩和政策からイグジットすることはあり得ません。また出口論も重要な課題ですが、以下で述べる必要条件の提示以外には、頭の体操としてもまだ具体的に議論できる状況にありません。』
てな訳でして、時間軸効果については先日のコミットメント発表を評価しておりまして、一歩進んでインフレーションターゲットを取ると言う発想は無いようです。
『なお、出口のための必要十分条件として、物価のハードルをより高くして条件を数値だけにするということも考えられますが、物価と景気とには一対一の関係があるとはいえず、物価以外の要因も無視できないため、総合判断の方が望ましいと思っています。それに出口のための必要条件を高く設定すると、量的緩和の解除が非常に遅れてしまうリスクもあります。』
『例えば、歴史依存性が非常に強いコミットメントである物価水準ターゲットの採用を求める声もありますが、それが正当化されるのはデフレの慣性がない場合であって、日本のようにデフレの慣性がある場合に物価水準をターゲットまで戻そうとすると、GDPギャップの大幅なオーバーシュートを引き起こしてしまうとの分析があります。市場が量的緩和からの解除が遅れる蓋然性が高いという認識を強めれば、むしろ長期金利が上昇する可能性があります。』
浅学非才ではありますが、あたくしもそう思います。
『実際、今回の時間軸効果の明確化について、量的緩和解除が遅くなりすぎるリスクへの言及も見受けられますが、今回の発表によって時間軸は長期化してはいないようです。時間軸の明確化で量的緩和の継続が明確になった1年半程度の金利は低下しましたが、発表自体が長期金利全体へ与えた影響は限定的であったと思われます。今回は混乱を生じさせることなく時間軸を明確化できたのではないかと思いますが、イグジットは最終的に総合判断としていることもありますので、まだ改善する余地はないか探っていく必要があるとも思っています。』
ご指摘ご尤もであります。
○「市場機能回復」が日銀現場の本音なのかな?
量的緩和政策のコストとして、「市場機能が喪失した」という事をこの講演の前半でも指摘しております。市場機能の喪失の変わりに日銀がその機能を代替している(というか必然的にそうなるのですが)事については、須田委員(たぶん日銀の現場の意向を反映していると思われますが)的には「何とかならんか」と思っているのでしょうな。現在の政策の枠組みでは無理だと思いますけどね。
『現在の量的緩和政策は市場機能の低下をもたらしたという意味では、当初、想定していた政策とは異なっていることを指摘しましたが、少しでもそのコストを削減するために、「市場メカニズムに配慮しつつゼロ金利政策の有する金融緩和効果を実現」という初心に戻ってもう少し市場機能を活かした政策にできないものかと考えています。』
と言うことで、短期金融市場での金利形成が常識の反対的現象が起きているという点について述べておられます。まさに日銀の現場から出てきそうな指摘ですが、ちょっとマニアな指摘かつ文章が長いので須田さん的結論だけ引用します。
『これ以上、短期金融市場の機能を低下させないために、できることなら金利機能を僅かでも回復させることが必要ではないかと思っています。』
『30兆円も資金を供給していますので、短期金融市場で資金を運用して儲かるような金利が付くのは稀かもしれませんが、少なくとも日本銀行はそのような金利をつぶすような金融調節はすべきではないと思っています。』
この講演記録、次には金融緩和の波及効果として為替レートを通じる効果についてのお話があるのですが、時間とスペースとあたくしの読み込みの関係上、何も無ければ明日にでもご紹介いたします。
2003/12/17
お題「金融政策決定会合結果」
昨日は皆様ノーケアーの金融政策決定会合。確かに金融政策の変更は「全員一致で変更なし」ということでありましたが、それはそれとして2つほどございました。
○金融経済月報
現在の量的緩和政策の時間軸に関しては、展望レポートを中心に注目しておけばよいのですが、だからと言って毎月出てくる月報をおろそかにしていいとは言えません。基本的な見解の部分で微妙に表現が前進しちゃったりしている訳ですな。11月分と比較しつつ見てみましょう。
http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/gp0312.htm(今回)
http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/gp0311.htm(前回)
@情勢判断上方修正
最初のひとことが、『わが国の景気は、緩やかに回復している。(前回:回復しつつある。)』となっております。前回から微妙に表現を強気方向に変化させている訳であります。また、経済の現状に関する判断についても、微妙に強気になっております。引用内の()は前回11月の表現です。
『鉱工業生産も増加している。(横ばいから増加に転じている)』
『個人消費は横ばい圏内の動きとなっている。(弱めの動きを続けている)』
また、今回は日銀短観を受けまして企業収益と業況に関してもコメントしておりまして、『企業収益は増加基調にあり、企業の業況感も改善を続けている。』という表現になっております。
A先行きの情勢見通しは変わらず
先行きに関する表現はこうなっております。ちと長いですが丸々引用します。
『先行きについては、景気は回復を続けるが、そのテンポは緩やかなものにとどまると考えられる。』
『すなわち、海外経済が高めの成長を続けるとみられるもとで、輸出や生産は増加を続け、設備投資も回復傾向がより明確化していくと予想される。もっとも、過剰債務などの構造的な要因が根強いことを踏まえると、設備投資の増勢は力強さを欠くものにとどまると考えられる。また、個人消費は、雇用・所得環境に目立った改善が期待しにくいもとで、当面、横ばい圏内の動きを続ける可能性が高い。この間、公共投資は減少傾向をたどると見込まれる。』
ここの文章、先月と違うのはたった一箇所。個人消費の部分が「弱めないし横ばい圏内」という表現から「弱め」の部分がカットされただけですな。
まぁ先行きの見通しを目立つ形で表現前進させてしまいますと、量的緩和政策の終了が見えてきたという思惑を生みかねない所でありますので、ひじょーに表現を抑えないといけないという話もありますが。
B企業物価はデフレ終結?
問題の物価に関してです。まずは国内企業物価ですが、現状に関してはこんな感じで表現されております。
『国内企業物価は、米価格の上昇や内外の商品市況高から強含んでいる。』
当然ながら先月は横ばい圏内という表現になっておりました。物価については数字がまともに出てしまうので表現前進なのは当たり前なのですが、その中で「内外の商品市況高から強含んでいる」と商品市況について言及しているのが目に付きますな。で、先行き見通しはこんな感じです。
『物価の先行きについて、国内企業物価は、目先は強含みで推移するとみられる。』
前月は「当面、引き続き横ばい圏内で推移する可能性が高い」となっておりまして、国内企業物価に関してはデフレ脱却の見通しになっているという訳ですな。うーむ。
C消費者物価も判断前進
消費者物価の現状に関してはこんな感じ。
『10月の消費者物価(除く生鮮食品)前年比は、米価格の上昇の影響もあって+0.1%とプラスとなった。』
ちなみに先月は「医療費自己負担やたばこ税の引き上げといった一時的要因がかなり影響して、下落幅が縮小しており」と表現されております。9月は前年比-0.1%です。念のため。
で、先行き見通しもこれがまた表現が前進しているわけです。さっきと同様に()内は前回の表現です。()内以外は変わっていないということですな。
『消費者物価の前年比は、米価格の上昇などから、当面ゼロ%前後で推移する可能性が高いが(一時的にゼロ%以上となる可能性も考えられるが)、需給バランスが徐々に改善しつつもなおかなり緩和した状況のもとで、基調的には小幅のマイナス(緩やかな下落)を続けると予想される。』
ちなみに、上記の中で「米価格の上昇」が先月は「米価上昇の影響」などと書いてあったりして、プリントアウトした紙を並べて透かし読みするという手抜きチェックができなかったりする訳です。そこまで狙っているなら芸が細かいですな。
んなわけで、消費者物価の判断も何気に前進しています。これもまた表現を強くすると、金融緩和政策の終了を予感させてしまうので痛し痒しといった所でしょう。ただ、前段で見られるように国内企業物価に関しては強含みという先行き見通しになっている所には留意すべきではないかと思ってしまう訳であります。
○資産担保証券買入基準見直しの検討
昨日のドラめもんで丁度悪態をついた資産担保証券の買入。政策目的である「本来資金が供給されるべき中小企業への資金の目詰まり状況を解消する」という課題に沿って実施した筈の施策が全然ワークしていないのですから、本来は「現状認識に問題があったのではないか」という検討も行う必要があるような気がするのですが、何せカリスマ総裁様の鶴の一声で実施の運びとなった政策ですんで、止める訳にはいかないようであります。どこかのダム工事や干拓事業みたいなもんですな。
で、日本銀行の主催する証券化市場フォーラムで出された市場関係者の意見などを参考にして、資産担保証券の買入基準見直しの検討をするそうです。そんな訳で、あまり読む気力がなかったフォーラムの議事要旨を読んじゃいました。横文字の多い議事要旨でして、舶来大好き総裁様がお喜びになっている姿が目に浮かびますな。
http://www.boj.or.jp/seisaku/03/mpo0311a.htm
最後の方で、資産担保証券の買入れスキームについての意見っつーのが出ております。
『「裏付資産に占める中堅・中小企業関連資産の割合が、金額ベースで5割以上であること」との要件は、企業金融全体の円滑化あるいは証券化市場全体の活性化という観点から、これを緩和する方向で見直しを要望したい。』
何か元々の政策趣旨と違う提言ですな。緩和が進めばそのうち大企業向けの資産担保証券ばかりになるような気がしますけど、それで本来の政策目的は達成できるのでしょうかね〜
『「裏付資産が金融機関の貸付債権である場合には、その債務者が金融検査マニュアルに定める「正常先」に分類されているものであること」との要件は、証券化商品の特性を勘案すると、不要ではないか。』
えー、証券化商品の特性を考えるとその通りなのですが、本来の政策意図は「資金を供給されるべき中堅中小企業金融の目詰まりを解消する」という事なので、要管理先以下の債務者の貸付債権の流動化商品を買取るというのは、これまた政策目的の達成と違うお話ですな。
まぁまずは債務者区分を緩和して、そのうち流動化商品のメザニンどころかもっとリスクの高い部分を買えだという話になるんでしょうな。となれば目出度く「震災手形」となるんですな。実に香しいお話であります。
あと2つあるのですが、技術的というか手続的な話ですので省略。
やはりこの政策は、導入するという話が出た時に「日銀が死んだ日」などと申しあげて散々罵倒したように、本来の政策意図を逸脱して暴走する危険性のある諸刃の剣、というか余り役に立たないので諸刃ではないような気もしますが、まぁともかくあまりよろしく無い政策であるという事が見えて参りましたな。
政策目的を達成するために導入した筈の資産担保証券の買入。何時の間にか資産担保証券の買入実績を上げて、オペレーションとして機能する事が目的化しつつあるのではないかと感じております。困ったものですな。
では。
2003/12/16
お題「またも中小企業金融について」
ちょっと古いのですが、12月4日に愛媛県金融経済懇談会で春英彦審議委員が講演をしておりました。講演の内容自体は最近の日銀審議委員の講演と余り変わらないのですが、この中で中小企業金融の問題について触れておりまして、相変わらずの現状認識か!と思わせるものでした。
というわけで、時々書いておりますが中小企業金融に関して元金貸しの手先として愚考を再度。ところで、話は全く逸れますが、最近日銀審議委員の皆様があちらこちらで講演してますけど、講演の原稿作る事務方も大変ですな。最近どう見ても使い回しをしているように見えます(^^)。
http://www.boj.or.jp/press/03/ko0312a.htm
この講演のうち、景気の現状認識や日銀の金融政策に関する自画自賛的なお話に関しては正直言って他の人の講演と変わらないので紹介は省略。「中小企業金融の円滑化」というお題の部分だけちょっと読んでみましょう。まぁいつもの日銀の見解といった文書ではありますが、何故か今回の講演要旨は箇条書きになっておりまして、日銀的現状認識がコンパクトに纏められております。
○それはマッチポンプではないでしょうか??
「中小企業金融の円滑化」というお題で「中小企業金融の課題」というお話が行われたのですが、その一発目がこんな感じです。
『中小企業の活性化のためには中小企業金融の円滑化が欠かせませんが、日銀短観を見ても企業側から見て金融機関の中小企業に対する貸出態度は依然として厳しく、貸出残高も大企業向けよりも大きく落込んでいます。』
金融機関の貸出に関して厳しい自己査定を要求しているのは日銀ではなく金融庁ではありますが、まぁ日銀も不良債権処理をしろと散々言っている訳でして根は同じ。自分たちの政策効果が上がって中小企業の金融が厳しくなってきているのを捕まえて「問題だ」と言うのは如何な物かと思う訳ですよ。
で、その自分たちで作った「問題」を解消するためにABSの買取を行っておりますが、買入対象を「正常先債権を流動化した商品」としたら案の定債券の買取もCPの買取も盛り上がらない事夥しい状況。
この結果から容易に類推される結論は「中小企業金融の目詰まりが起きると宜しくない箇所では実際問題としての目詰まりは発生していない」というお話になる訳ですな(^^)。不良債権処理という政策が進行している中では、不良債務者の金融が目詰まりするのは政策の結果として当然起きることであります。
てな訳ですから、「企業金融の目詰まり論」って話は根本から崩壊しているのでして、日銀短観の数字(対象企業には要管理先以下もいる訳ですから)を都合よくつまみ食いしているというお話だったという事であります。
というか、貸出態度DIってここの所そんなに激しく悪化してないんですけれども・・・・・・・・
ちなみに最近は「日銀による資産担保証券の買入がワークしない」という意見が民間の方から出てきておりますが、正常先債権以外も日銀が買取りをするというのは只の「震災手形」への道だと思いますが。
○現象には理由があるはずなのですが・・・・・
『中小企業の資金調達の特徴は、所謂メインバンクからの土地担保や個人保証による借入が中心で、自己資本比率が低く、約定日毎にロールオーバーを繰り返す形の短期の借入金が言わば自己資本に代る機能を果たしてきたとされています。』
確かに現実はそうなのですが、もともと中小企業の過小資本というのは、企業規模の小さい企業をやたらと優遇する税制にも問題があるわけでして、企業が経済合理性を追及した結果、銀行と企業の利害が一致する形として「貸出金の永久ロールオーバー」という形態が生まれたという面も強いわけであります。
税法上のメリットもそうですし、公的金融(保証協会や制度融資などなど)においても過小資本にしておいた方がメリットが高い(はっきり言って非常に高い)という制度の下では、公開企業を目指す人でもない限り過小資本にする方がお得。その点に関する考察無しに「中小企業の過小資本問題が課題だ」とか言っても困る訳ですな。
さっきの話とも重なりますが、「課題」といっている現象に関して、元々何が原因なのかという因果関係に関する掘り下げが不足しているのではないかと思う訳ですよ。日銀のおエリート様やら大企業出身の大経営者様は・・・・・
○担保や個人保証を徴求するのは悪なのか??
で、この次はこんな事を言うとるわけですな。
『ところがデフレ等により企業業績が悪化すると、土地価格の下落により担保価値が低下し、金融機関の側にも不良債権処理による自己資本比率の低下や利鞘確保の必要があって債務者に厳しい態度を取らざるを得ない状況が出て参ります。この場合、個人保証の存在は、経営者にとって重荷になっていきます。』
不良大企業に対する部分的徳政令の横行に伴い、皆様すっかりモラルを失ったようでありますが、「借りた金は返す」というのが本来の姿なのではないかと思う訳ですよ。特に中小企業では代表者個人の信用力が企業の信用力を補完するものでありますし、税法上企業で内部留保するよりも社外流出させたほうが有利という無茶苦茶な税制を取っている日本においては尚更の事。
仮に連帯保証人制度が廃止されて、企業が支払不能になっても代表者個人に遡及できないというような話にまでなってしまいますと、まぁかなーり多くの中小零細企業では普通の金融機関では借入を受けられませんわな。企業の内部留保がろくすっぽありませんもん。
日銀はそこまでアフォな事は言いませんが、一部では「連帯保証人制度を無くせ」という議論を大真面目にしている人もおります。政治家が人気取りで言う(そういえば民主党ってそういうアフォな事言ってましたな。さすが民主党)のが多いとは思いますが、このテキストの底にも同じような思想が流れている訳でして、全く困った物だと思ってしまう次第であります。
ちなみに、この講演の続きには「中小企業金融に関する新しい動き」と称して『その第1は、不動産担保、個人保証に頼らない融資の動きです。』と言っておりまして、要するに担保や個人保証を徴求するのは悪だという論調になっております。
ほんの少しの期間だけですが、金貸し(および回収)の手先をやっていたあたくしとしてはどうも釈然としませんな。
○信用リスクを金利でカバーするのが正しいのか??
この点に関する考察はまだあたくしの中で煮詰まっていないので、お題だけ提示するのですけれども、どうも理解できない点なのであります。講演の中でもこんなことを言っているのですが・・・・・
『また、現在、中小企業にとっての資金調達先は、金利5%以下の金融機関借入と金利15%以上の所謂貸金業者の借入しかなく、その中間のミドルリスク・ミドルリターンの借入の余地が小さいという問題もあります。』
『最近では審査の効率化により、融資の申込みに対して即日可否を決定し、無担保のリスクを若干高目の金利でカバーする形での所謂無担保、無保証の小口ビジネスローンへの取組みが活発になっています。』
まぁこの点はもうちょっと考えて見ますが、そもそも貸出金の信用リスクを補完するのは担保(人的担保を含む)でありまして、貸出金利を高く設定してさっさと回収する事によって信用リスクを補完するというのは、街金の発想ではないかと思う訳ですよ。
でですな、この講演では金融機関借入と貸金業者の設定金利が死ぬほど違うと言っているのですが、そもそも金融機関借入と貸金業者からの借入では、借入の期間も金額も全然違うという観点が抜けているのではないかと思う訳です。貸金業者からウン千万円の借入を無担保で長期で行うという人はいない(というか普通は業者が貸さない)ですし、銀行は小口のカードローンを除けば30万や50万で貸出期間が一月以内などという貸出はやっていない訳でして、金利設定には事務コストという観点もある(筈)です。
だいたい、ジャンク扱いされている社債の流通利回り(公社債店頭売買参考統計値でも御覧下さいませ)を考えたら、信用リスクをまともに金利に反映させたら利息制限法の上限なんぞあっという間に突破すると思いますけど。
ちょっとこの点については考えてみます。どうも「信用リスクに見合った金利」という理屈が釈然としないのですが、反論する理論武装もできませんな。
ではでは。
2003/12/15
お題「材料の整理」
年末なので整理整頓(謎)
○日銀短観を簡単に読む
あたくし的には短観のポイントは2つ。
ひとつは例によって「前回予測DIと実際のDIのギャップ」ですが、製造業は「前回予測のDI」に比べて7〜9ポイント好転しておりますが、非製造業は▲1〜2とほぼ前回時点での予測値と変化がないという結果でした。
全般的な景況感の数値は改善しておりますが、例によってその改善は製造業が中心だという所でしょう。まぁ数字だけ見ているとようやく主要製造業の大企業中心の回復が製造業の中小企業などにも波及して来たって感じでしょうか。
非製造業への波及は今一歩といった所なんでしょうか。
もうひとつは「先行きのベクトル」です。恐らく金曜日の債券市場ではこちらの材料をネタにして相場堅調という形になったのではないでしょうか。
今回の業況判断DIと先行きの予測DIを比較致しますと、製造業で先行きのベクトルが下を向いているというのが特徴的であります。非製造業は次回のDI予測数値が今回のDIとほぼ変わらずという数値でして、製造業は今回よりも悪化していまして、いかにも「景気回復一服」って雰囲気を醸し出しております。
これが循環的な回復過程の踊り場なのか、循環的回復がピークアウトしてしまったのかは謎ですが、基本的に(真面目に統計取ってないから何ともいえませんが)短観の数字って株価によく影響を受けているようであります(どっちがどっちか良く判りませんな、ちゃんと統計とっている人はいると思います)ので、株価の頭打ちと平仄を合わせているだけなのかもしれません。
あまり債券の買いで反応するほどの材料でもなさそうですが。
○フセインくんタイーホ
まー小泉さん悪運がお強い。今度こそ政権の命取りになるかと思ったのですが、フセイン君拘束。ということで、イラクの政情安定化が進めば慶祝モードになりますんで当然ながら株式市場に好影響を与えることになるでしょう。
あたしゃーイラク国民ではありませんし、知人もおりませんので、現在のイラク国内でのテロ活動の本質が、ただのテロ行為なのか、米軍に対する民族的レジスタンスなのか、旧政権組織が地下に潜って抵抗している一種のゲリラ戦なのかさっぱり判りません。判らないので、この先どういう風に転ぶのか予測不可能なのですが、フセイン抜きでテロが全然終わらないとなりますとそれはそれで困るでしょうな。
この先のことを考えますと、フセインくん同じ捕まるなら生きて捕まった方が後の処理が難しいような気がする訳ですよ。処刑するにしたって変にやってしまうと却って反米意識を煽るだけでして、敢えて残酷な言い方をすれば「拘束しようとしたら戦闘になって戦死した」となっていた方があとの話がややこしくなかったような気もしますな。シロート考えですけど。
ま、単純なる発想ではとりあえず「めでたしめでたし」でありますので、株式市場が買いで反応して、日本の債券市場の場合は「景気回復モード」でありますのでイールドカーブのスティープ化が進むとなるのでしょうが、とりあえず株価次第というお馴染みのパターンになるでしょうな。
これで泥沼状態が収まらなかったら洒落にならないのですが。
○念のため国債の需給
当初予算における新規財源債の発行額は40兆円以下死守っつーことで、週末の新聞報道(大掃除していて不覚にも捨ててしまった)では37兆円とかいう数字がでておりました。
まぁ何度も申し上げておりますように、昨今の国債需給は新規財源債の発行額に対しては反応しないようにできています。とは言いましてもさすがに40兆円の大台をあっさり突破ともなりますと、なんぼなんでも反応するかな〜と懸念しておりました。
発行年限の長期化については全く問題になっておりません、というよりは既に織り込み済みでしょうし、「新規国債発行額40兆円以下」となりますと国債の需給に関しては特に問題はないでしょう。
実際問題としては色々とやり繰りをしている様ですので(これもまた怠慢で真面目に調べていなかったりするのですが)別の政府部門に皺寄せが来ているような気がするのですが、まぁとりあえず国債に関しては問題ないでしょう。
まぁそんな感じで。
2003/12/12
お題「国債市場懇の事を書いているうちに別の話になりました」
国債市場懇談会っつーのが先週金曜に行われておりまして、財務省のWebに議事要旨が載っております。先週金曜の話を今頃するのも何ですが、市場懇談会に参加していない無力業者のあたくしとして思った事を今更。
○参加者多すぎ
今回のお題は「国債市場特別参加者」制度に関する質疑応答というか意見表明って感じなのですが、意見の羅列だけで12ページもありまして、これだけ見ていると纏まってるのか纏まっていないのかよく判らんという所。
単に意見を好き勝手言わせる会なのかもしれませんが、それにしても投資家懇談会と比較してあまりにも「船山に登る」って感を強くする内容(今に始まった事ではないのですが)ですな。
良く良く見ればこの市場懇談会ってメンバー20社以上もいて、その中には「確かに突発的に大量落札するけどコンスタントに市場に顔をだしてるかいな??」というような業者さんもいたりします。
何らかのまとめをするなら参加者絞った方が良いんじゃないのかな?
○国債市場特別参加者になぜ投資家が入るの??
どうも質疑応答を見ておりますと、国債市場特別参加者には業者だけでなく、投資家、というか多分参加したがるのは大手銀行さんだけでしょうが、とにかく何故か業者じゃないお方が参加する可能性があるそうな。
特別参加者の権利と義務というのを並べて考えますと、この制度はどう考えてもマーケットメーカーとしての業者に対するものだと思います。その上、現在の国債市場においては、残念ながら特定銘柄を大量に購入してレポ市場への品貸しを渋るといったパワープレーが横行するのが現実。
投資家さんが業者と同じ権利義務をもって国債市場特別参加者になるのは本当にできるのならば結構なのですが、現実問題としてマーケットメークできるわけではないですし、何でもレポ市場に出せるわけでもないでしょうから、根本的発想にやはり無理があると言わざるを得ない所でございましょう。
ま、そこを頑張って頂いて大手銀行さんが特別参加者に入っていただくというならば非常に結構至極なお話であります。財務省さまにおかれましては下手に基準を緩和して特別参加者を増やすという方向に走らないようにして頂きたいものです。
意見の中では多分銀行業態の方からの意見として「自分たちも特別参加者に手を挙げたい」という話もでております。実質的にプロップディーラーとしてしか参加してない大手銀行さんの商品勘定に参加能力があるとも思えませんが、まぁ精々頑張って頂きたいものです。
○そういえば小ネタですが
この国債市場懇談会と国債投資家懇談会の議事要旨をみますと、財務省WebでのURLに「審議会」って言葉が入ってるんですよね。まぁ所詮は審議会って事なんでしょうかね、うしゃしゃのしゃ。
○器も大事ですが・・・・・・
さて、議事要旨を拝読いたしますと国債発行計画に関しては話題が碌にでなかったと思われる節がございます。「意見等の概要」を見ますと最初の5行だけが国債発行計画のお話のようですので、まぁ見事に話題にならなかったという事なのでしょうな。
最近しょっちゅう「国債管理政策」という言葉が聞かれるようになりました。非市場性国債の発行構想やら個人向け国債の新バージョンの発行構想、そして今回の国債市場特別参加者計画と、国債の安定消化に対して色々と手を打っておられます。
でも、国債発行額がバカスカ累増しているという厳然たる事実は変わらない訳でありまして、正直言って現在の超絶的金融緩和というつっかい棒を外した時に本当に国債が消化できるのかよ〜わからん所ではあります。
先日どこかで書きましたが、「国債管理政策への信認が高いので、国債の発行が増えても安定消化可能」というのは論理的におかしな話です。国債が安定消化できるのは、あくまでも財政が持続可能な状況だという信認がなければいけない話でありまして、「財政赤字の持続可能性」についてまともな議論がないままに国債管理政策への注目を持って「国債発行増に対応可能」というコンセンサスになっている現状の債券市場での論議は如何な物かと。
ま、まともに検証しだすと洒落にならんというのもあるのでしょうが、それでは先送り思考と同じお話ではないかという風に思えますが、どうなんでしょうかね。
○書いているうちにぜんぜん違う話になってしまいます(^^)
てなわけで、ここから先は、というかさっきから既にそうですが、国債市場特別参加者制度とも国債発行計画とも全然関係のないお話です(^^)。
さてさて、先日ご紹介したように日銀副総裁の岩田さんは講演で堂々と「財政政策の方は、2010年代初頭に本源的赤字がゼロになるように運営されています。」と言っておりました。政治的に「自分の政策は破綻していない」という発言をせざるを得ないどこぞの首相様の発言ならわかるのですが、日銀副総裁という表面上は政治から独立している人が、公的な場で文書として残る形でこんな発言をしている現状を見ると、あたくしは実に寒いものを感じるわけであります。
ここ数年の政策運営。個別の政策を見るとそれなりに筋は通ったことをやっているのかもしれませんが、どうも根本的な現状認識を行わないで、この副総裁(もともと内閣府にいた学者さんですな)の発言「財政政策はプライマリーバランスの達成に向けて動いている」に代表されるようなといった虚構を元に政策を運営してるという感を強くするものであります。で、その矛盾が先に行くと爆発が起きて修復のために余計なエネルギーを消耗するというのがここ数年の政策運営の現状ではないのかと思ってしまう訳でございますな。
良く良く考えたら、銀行の不良債権問題も何度となく「不良債権処理は峠を越えた」という前提で次の政策が実施され、時の経過とともにそもそも崩壊している前提条件の問題点が爆発して大騒ぎ、という経過を繰り返している訳です。そういえばあしぎん問題につきましても「足利銀行のような問題のある地方銀行は他には無い」という公式見解で通しておりますな。
不安を煽らないために「問題無い!大丈夫だぞ!」と言うのは結構でありますが、その発言が何故か「正しい現実」として認識されて次の行動につながるというのは実に困った話。まぁ日本の制度疲労もここまできたかという感じであります。
兵隊に「神州不滅」とか「大和魂」を説くのは鼓舞の役には立つかもしれませんが、参謀本部や陸軍大臣までもがそれを信じて戦争遂行するというのは愚の極みだという事例がほんの60年前にあった筈なのですが・・・・・・・幻の戦果や幻の現状認識を元に作戦を発動して数多くの英霊を失ってしまったという事例も無数にありましたよね。インパール作戦やレイテ沖海戦なんぞが有名ですが、それ以外にも無慮多数(-_-メ)。
#何時の間にか毎度の大東亜戦争引用というお馴染みの話ですな、スイマセン。
2003/12/11
お題「相場雑談」
日銀審議委員の講演と記者会見ばかり追っかけているのも何ですので、というのは言い訳でして、単に色々調べ物をしているのが全部中途半端で纏まりに欠けるので、本日は相場的雑談をば。
○大手銀行勢の再参戦?
一昨日の5年国債入札。事前段階では「何とかなるとは思うけど」「本当に買う人がいるのか良く判らん」という今一歩盛り上がりに欠ける状況でありました。
ところが、入札当日には前場からしっかり5年債に買いが入っておまけにスワップ市場(スワップに関してはあたくしマーケットメーカーやっているわけではありませんので、又聞きの話になってしまいますが)では中短期中心にレシーブの動きが活発となりまして、結局入札はとっても堅調な結果になりました。落札業者の顔ぶれを拝見していると、あたくし的には「大手銀行さん随分やりますの〜」という感じでありますし、何せ最低落札価格が事前の市場予想の上限よりちょっと上になっているという入札。
ここのところの5年債入札、先月は市場の事前予想とまるっきり同じような入札で、落ち着いた結果。10月は非常に強い入札ではありましたが、入札前のプライストークの段階で既に強い入札になるという話になっていた状態。という感じでした。
で、今回の入札ですが、結果発表後も5年債が堅調に推移し、昨日にももう一発買いが入ったようでありまして、なおも5年債堅調という素晴らしい相場展開でありました。
一昨日のスワップの固定金利受け取引といい、入札前後の動きといい、どうも大手銀行様の動きが見えるわけなのですが、この動き方は(根拠レスなあたくし的な印象で恐縮なのですが・・・・・)久し振りの積極的な動き方という印象を強く致します。
何せ上期の債券相場大崩壊の第2弾においては、大手銀行勢が「あの〜その価格まで売るんですか〜??」と百万回位突っ込みたくなるような中短期債への大量売りをしておりました(元々が買いすぎだったのですが)のは記憶に新しい所ですが、それ以降めっきり大手銀行様はおとなしくなってしまいまして、まぁ「敢えて高値のものを更に買う」というようなパワーディーリング的な動きは見られなくなっておりました。高いところで買いに来るのはパッシブ系の資金だけって感じでしたな。
ところが、今回の5年国債入札前後での相場、というか5年国債を巡る動きは「大手銀行の相場参戦再開!」という感じを受けさせるものでございます。だからどうなると言われるとまだ良く判らないという話もありますが。
あたくしが勝手に思うに、株価指数の動きなんぞが頭打ちっぽくなってきて、そろそろまた金利部門に収益プレッシャーがかかってきたのか、それとも相変わらずアフォのように供給される流動性の処理に困っているのか。人の懐具合は良く判りませんが、とりあえず大手銀行さまが頑張り出す可能性も出てきたのではないかというのがあたくしの印象でございます。
○年末相場はあるのかな?
今月の相場テーマになりそうな「入札」「国債発行計画」も無事に消化。あとは20年入札が残ってますけど、国債市場懇談会や国債投資家懇談会で散々「超長期国債のニーズが高い」と言っている手前、入札が不調って事はあり得ません、つーかそれだけ言っておいて入札不調では何の為の懇談会かというお話でありますので、20年国債入札で相場が崩れると言う事はありうべからざる事でございますな。事前に割高になりすぎれば話は別かもしれませんけど。
てな訳でして、まぁ今月の入札も無事に終わったも同然という訳でして、材料は無事消化。来年度予算案という話もあるのですが、あれだけ「新規発行額30兆円」で大騒ぎしていた債券相場も、最近は「国債管理政策への信認」という理由なのか「財政構造改革は進んでいる」と信じているのか共同幻想の上に乗っているのか知りませんが、とにもかくにも予算案での国債発行額如きでは反応しないらしいです。
ま〜そんな状況ですので、年末に掛けては平穏な相場になりそうなのですが、大手銀行勢の動きが活発化しだしているというあたくしの想像が正解だったりすると、年末に掛けて思わぬ高値もあるかもしれませんな。
○「死人が出ます」
何で今年の流行語大賞にならなかったのかと思ってるんですけど(なる訳ないか)、道路公団前総裁の藤井さんが言った(と石原国土交通大臣が言った、というのが正しい)「死人が出ます」。道路公団がらみで何故か債券市場に飛び火するかもしれなくなっているのですが・・・・・
情報ベンダーの報道しか見ておりませんので詳しくは書きませんが、どうも道路公団民営化に関して公明党の案というのが出てきたようでして、その中では「本四や首都高などを分離して民営化」「債権債務を全て継承して民営化」というお話があるようです。
債務超過の会社をそのまま民営化。おまけに不採算部門だけ独立させて民営化って実現性には乏しそうな話なのですが、何せ公明党の案ですので、今後の民営化論議に影響を与える事は必至かと思います。
で、その案、詳しく見てないから各公団の発行している債券がどうなるかという話については良く判らんのですが、国によるサポートを前提にした現在の各公団発行債券(政府保証つきは問題無いですが)については何らかの影響が出るものと推測されます。
というか既に特殊債(政府保証のないやつ)の対国債スプレッドは急速に拡大しているようでございますな。道路だけにまさに「死人が出ます」といったところでありまして、ホルダーの皆様におかれましては暫く試練の日々となりそうです。合掌。
と言うことで簡単な雑談3題って感じでした。