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2022/11/30
お題「オペ紙は全然波乱なし/帰属家賃のCPI問題という大変刺激的な研究ペーパーが金融研究所から登場しています」
明日から12月ですねえ。毎年同じこと言うけど無茶苦茶時間が早い。
〇オペ紙等は変更なしでSLFとネクストチーペの指値オペ
・輪番
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel221129c.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定
(2022年10〜12月)[一部変更]
今回は変更なしで、まあ1−3月がどう出るか楽しみですね、と思ったら『―― 2023年1〜3月分の公表は、2022年12月27日17時を予定。』とあって、その時間帯空白時間だと思ってたのにまさかのイベント発生になってしまいましたな。3営業日前倒しは結構な前倒しで、年末年始が4連休しか無い人が休みをその前に取りやすくしよう、という働き方改革の一環かと思いました。
なお、年末は月末だから出勤派の皆様におかれましては、MPMのあと27日の当たりって休み時のような感じだったのにそこにイベントがぶち込まれてしまいましたねって感じですがqqq
入札の日程と絡めてどうこうというのは本職の方が考察していると思いますので本職の方の考察をご確認ください(無責任)
・CPオペと社債買入
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel221129a.pdf
CP・社債等買入のオファー日程(2022年12月〜2023年1月)
今回は既に前回公表済みの12月分をそのまま右に引っ張りました、って感じですね。
・ネクストチーペの指値オペとSLF
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel221129f.pdf
チーペスト銘柄等の連続指値オペの実施について
前回スルーしてましたが、よく考えたら何で限月交代前からやるんだよという気はしますな。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel221129g.pdf
チーペスト銘柄等にかかる国債補完供給の要件緩和措置について
・・・・・・えーっとすいません、何でこのPDFだけテキストエディタ別のもんつかってるんですか??文字コードが違ってMS標準のテキストエディタに落とすとエンコードUTF−8にしてても完全に文字化けするんですけどそういうの勘弁してもらえますでしょうか??????
ちなみに金融システムレポートも何故か昔からテキストの文字コードが変で、一部の漢字(と言いたいのだが重要なもの(例えば銀行の「行」とか)がUTF−8だと一応大丈夫は大丈夫なのですが、あれも何でネタにしないかというと、文字化け問題が大きいのよね。
昔々、誰かの審議委員の講演がやはりそのMS標準じゃない文字コード使ってるエディタで作られててネタにするときに文字化け修正の為に夜なべ仕事して下準備する破目になったことがあります(複数回)のですが、別にアタクシもMS信者でも何でもないのですけど、お仕事で使うの基本的にMS標準物にどうしてもなるので、MS標準でフォロー出来ないようなテキストエディタ使うの勘弁して下さいお願いします。
あ、今回の施策自体は3か月前と同じです。発動タイミングとか終了タイミングって本当にこれで良いのか良く分からんのですが、まあこれはさすがに業者と相談して実務上意味のあるように作っているでしょうと思う(思いたい)ので気にしない事にします。そうじゃなかったら教えてちょんまげ。
〇日本銀行金融研究所がイタコ芸を駆使して主に総務省に盛大に喧嘩を売ったのではないかという件について
昨日話題になっていたかしらこれ。
https://www.boj.or.jp/research/imes/dps/dps22.htm/
金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ
2022年収録分
一番最初に
2022-J-10/経済 吉田二郎 限界家賃指数の推計:消費者物価指数の改善に向けて
/インフレーション、消費者物価、不動産、家賃、傾向スコア・マッチング、ヘドニック、経年減価
2022年11月29日 [PDF 3,318KB]
などという大変にお洒落な題名の物件がリリースされていた訳ですよ。題名に釣られてフラフラと食いついて見たら「え、えらいことや・・・・・・・せ、戦争じゃ・・・・・・(画像割愛)」という感想が思いっきり沸くものだし、そもそもこのタイミングで出すとはなんという狙撃兵って感じですが、ここで更にお洒落なのは狙撃兵が日銀の中の人ではなくて傭兵であることですね。
とか言ってる場合ではありませんで内容を。
HTMLの方は本文の冒頭にある要旨(いわゆるエグゼクティブサマリー)をご紹介していまして、この要旨を見た瞬間に「え、えらいことや・・・・・・・せ、戦争じゃ・・・・・・・・」になる訳ですよ。
https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/22-J-10.html
ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2022-J-10
限界家賃指数の推計:消費者物価指数の改善に向けて
吉田二郎
『本研究では、日本の消費者物価指数の主要項目である家賃指数が、現状では著しく平滑化されかつ上昇率を過小評価していることを示す。』
冒頭から真珠湾攻撃の風情を醸し出しております。
『まず現行の家賃指数に対する限界家賃指数の優位性を論じた後、東京都市圏、大阪都市圏、名古屋都市圏の住宅賃貸標本を用いて限界家賃指数を推計し現行の消費者物価指数との差を示す。指数構築に際して、賃貸物件と住宅ストックの属性分布の差異を傾向スコア・マッチングにより軽減したうえでヘドニック家賃関数を推計することで、標本特性を一定に保ち経年減価を排除した家賃指数を構築する。』
本文はこの後サラッと紹介します。分析項の所まで詳しくネタにするほどの知能はアタクシには無いのは何時もの通りなのですが、言っている事は定性的な話としては納得できるような分析になっていると思いました、定量は四則演算以上の算数が出来ないのでよくわからんけど。
『分析の結果、賃貸募集されている物件と住宅ストック全体とでは特性が大きく異なること、消費者物価の家賃指数とは異なり限界家賃指数には国民総生産と相関した上昇率変動が見られること、限界家賃は都市圏によらず平均的に上昇し一年あたり約1.3%ずつ消費者物価の家賃指数と乖離していること、乖離の主要要因は年率約1%の経年減価であること、民営家賃と持家帰属家賃がほぼ同様に変動すること、が明らかになった。』
築10年くらいの賃貸に住むとあまり意識しないけど築浅の賃貸に5年とか済むと「よく考えたら経年減価どうなってるんだ」と思ってしまったこともありますの。
『この結果は金融政策、経済統計の実質値の推計、年金受給者の厚生、将来の社会保障費の見積もりなど広範に含意をもつ。』
ではどういう含意を持つのか、というのはさすがにここにぶっこむのは刺激的なので回避したようですが、本文には堂々の砲撃が用意されています。お楽しみに。
では本文。
https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/22-J-10.pdf
限界家賃指数の推計:消費者物価指数の改善に向けて
吉田二郎
Discussion Paper No. 2022-J-10
ということで以下本文から引用しますね。
なお「せ、戦争じゃ・・・・・・・」などと面白おかしく申し上げていますが、あくまでも建付けとしては
『備考: 日本銀行金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズは、金融研究所スタッフおよび外部研究者による研究成果をとりまとめたもので、学界、研究機関等、関連する方々から幅広くコメントを頂戴することを意図している。ただし、ディスカッション・ペーパーの内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではない』
ですので日銀公式見解でも何でもありませんし、何なら「学界、研究機関等、関連する方々から幅広くコメントを頂戴することを意図している」のであって、アタクシのような金融市場のおこぼれを頂戴して生活しておるチンピラゴロツキの感想なんぞはシランガナと言った所のような気がだいぶしますがキニシナイキニシナイ。
そもそも著者の吉田先生は、『要旨(PDF3枚目)』にありますが、
* ペンシルベニア州立大学スミール経営学カレッジ准教授および東京大学大学院経済学研究科招聘准教授
とのことでして、
『本研究は、筆者が日本銀行金融研究所の海外客員研究員として行った研究をまとめたものである。本研究は、西村C彦、岡本千草、山岸敦、櫻川幸恵と共同で行っているプログラムの一部で、国立情報学研究所の
IDR データセット提供サービスにより株式会社 LIFULL から提供を受けた「LIFULL
HOME'S データセット」を利用した。日本銀行金融研究所、総務省、東京大学政策評価研究教育センター、東京大学金融教育研究センター、渡辺努研究室、ペンシルベニア州立大学ボレリ不動産研究所から多大な協力を得たことをここに謝する。ただし、本稿で示されている意見は、筆者個人に属し、日本銀行の公式見解を示すものではない。また、ありうべき誤りは筆者個人に属する。』
とのことですので別に日銀が戦争を吹っかけているわけではない、ということを改めてお断りしておきます(棒読み)。
ごく普通に『はじめに』って所から読むと面白いと思います。ECBもしばらく前にHICP指数の帰属家賃問題についてコメントしていましたように、インフレの話が動き出しますと、家賃の問題というのは議論の中で避けて通れないんですよね。
本文はここから1ぺージとふられますが、PDFだと4枚目になります。
『どの国においても家計消費に占める住居費の割合は大きいが、日本においては約
21%に達する。住居のうち借家は全住戸数の約 36%、全住戸延べ床面積の 24%でしかなく、より主要な形態は持家で、住戸数で全体の約
61%、延べ床面積で約 79%を占める(平成 30年住宅・土地統計調査)1。』(1
住戸数の残り3%は所有形態不詳。)
なるほど。
『したがって持家の帰属家賃をどう扱うかは極めて重要である。Cecchetti (2007)は,中央銀行によるインフレターゲットの重要性が増していることを指摘し,「インフレ測定
に残る問題は,住宅をどう扱うかである」 と述べている。特に、持家の価格と帰属家賃の比率は、利用費用率と呼ばれ物価と資産価格をつなぐ重要な指標となる。』
キタコレ!
『図1は、消費者物価指数における民営家賃指数と持家の帰属家賃指数、およびこれらの指数を構築する際に用いられる小売物価統計調査の家賃を、本研究の対象期間である2015
年 7 月から 2017 年 6 月までの 24 か月間についてグラフ化したものである。』
図1は本文の同じところにありますので上記URL先をみてくらはい。
『第一の特徴は、対象期間を通じて家賃が下落していることである。』
ほうほう。
『例えば、当初 100 であった消費者物価指数の持家の帰属家賃は、2 年後には 99.2 まで下落している。』
なるほど。
『第二の特徴は、民営家賃と帰属家賃には大きな差がないことである。』
『第三には、小売物価統計調査の結果に比べて消費者物価指数では月ごとの変動が小さいことである。消費者物価指数は、ほぼ直線的に低下している。』
『上記の第三の特徴は、金融政策に大きな意味を持っている。』
ほうほうほう。
『ケインジアンあるいはニュー・ケインジアンモデルを前提とすると、金融政策が短期的に雇用などの実態経済に影響するのは、価格が硬直的な場合である。言い換えると、仮に価格が完全に伸縮的であれば、実体経済の分析に金融政策を考慮する必要がない。』
なるほど。
『消費者物価の家賃指数が大きく変動しないのが、硬直的な家賃設定(Shimizu,
Nishimura, and Watanabe, 2010)を反映するためだとすると、住宅消費は金融政策が実態経済に影響する際の重要な経路になりうる。』
で???
『しかし、消費者物価の家賃が調査標本の特性や指数構築方法により実態よりも平滑化されており、実際の家賃も指数から示唆されるものよりも伸縮的であるとすると、金融政策上の含意も異なったものになる。』
ということで、実は今のCPIコンポーネントとして出ている家賃が実力と合ってないんでネーノという問題提起が以下行われます。
『計測される家賃指数が適切かを検討するのに重要な視点が二つある。一つ目は、どの標本の調査を行いどのような集計を行うかである。むろん、消費者物価指数の目的からは、高頻度の全数調査が理想であるが、それができない以上、調査の対象と頻度を適切に設定しなくてはならない。』
『二つ目は、異なる調査間で物件の品質調整をどう行うかである。脱落や新規の調査対象の追加なしに調査を繰り返すことはできない。したがって、異時点の調査では対象となる住宅属性が変化したり、継続的に対象となる住宅が選択的に調査されたりする問題がある。』
『更に、同一住宅であっても時間が経過すると建物劣化や機能陳腐化により家賃が経年減価するため、単純に家賃の変化を比較しただけでは同一品質の住宅を比較していることにならない。』
ということで、
『本研究では、まず現行の消費者物価指数における家賃の取り扱いと比べて、限界家賃指数が民営家賃にも持家の帰属家賃にも適切であることを論じた後、上記の二つの視点から新たな家賃指数を推計し現行の消費者物価指数との差を示す。』
ということで、以下どういう分析してますか、という話がありますが、その辺はこの部分よりもその後に出て来る分析の話を見た方が腑に落ちると思います。正しいのか正しくないのかはアタシャ頭悪いからアレですが、少なくとも行っている分析と、その間に展開された説明には納得のいく話があったと思いますよ(個人の感想です)。
序論の結論部分までワープしますね。(本文3ページの真ん中あたりから)
『分析により以下の点が明らかになった。』
はい。
『第一に、賃貸募集されている物件と住宅ストック全体とでは特性が大きく異なることである。したがって、募集賃料の単純な平均値や中央値に該当する賃貸物件は、住宅ストックの代表的な物件とはならない。』
『特に、持家の属性と賃貸物件の属性には大きな開きがある。賃貸物件は住宅ストックに比べて、都市圏によらず、鉄骨造の比率が高いこと、築浅(0-12
年)の比率が高いこと、駅から中距離(200m−1,000m)の比率が高いこと、40
u以下の小規模物件の比率が高いこと、共同住宅の比率が高いこと、平屋建てが少なく
10 階建以上の比率が高いこと、が確認される。』
ほうほう。
『第二に、消費者物価の家賃指数がほぼ一定の比率で(直線的に)推移するのに対し、限界家賃指数の変化率には上下変動が見られる。』
へー。
『都市圏によらず概ね 2015 年 7 月から 12月までは限界家賃指数は横ばいで推移したあと、一旦
3−4 ヶ月間上昇する。その後2016 年の下半期まで停滞あるいは低下局面に入ったあと、上昇局面に入る。』
『これらの変動は、季節性のような定期的な変動ではなく、国民総生産(名目および実質)とおおむね同様の動態を示している。したがって、限界家賃指数は同時期の国内総生産と比較的高い相関を持つことが示唆される。』
おー。
『第三に、2年間の分析期間を通した家賃累積変化率が、都市圏によらず消費者物価指数では約−0.6%から−0.7%なのに対し、限界家賃指数では2年間でおおよそ+2%である。一年あたり凡そ
1.3%ほどの乖離であり、仮に 10 年間同じ乖離が続けば家賃指数には約14%の乖離が生じることとなり、無視できない差異である。』
もりあがってまいりました!!!!!!
『第四に、消費者物価指数と限界家賃指数の変化率の差をもたらす主要な要因は賃料の経年減価である。』
なるほど。
『限界家賃指数では、経年減価を排除して同一築年数の家賃変化率を推計しているが、消費者物価指数では同一物件の経年減価を含んだ家賃変化率だからである。家賃変化率の差約
1.3%のうち 0.9%から 1.1%が、経年減価によって説明できる。』
このあたりは最後の結論部分と合わせて含意を確認しましょう。
『第五に、2年間の家賃累積変化率には、マッチングの有無の影響はさほど大きくないことである。』
『これは、民営借家の平均的な特性を有する物件の家賃も、持家の平均的特性を有する物件の家賃も、分析期間においてはほぼ同様の変動をしていることを意味する。住宅賃貸市場の需給が専有面積や建て方によって分断されているのではなく、共通の要因(例えば国内総生産に代表されるような住宅需要要因)が幅広い住宅の家賃を動かす主要因となっていると考えられる。ただし、より短期間の変動、特に家賃が天井と底を付ける時期には推計方法の差が現れる。』
ということで序論の結論項になります。引用するのはここまでですが、この先の分析も最初の方とかオモロイ(だんだん数学チックになってムツカシヤなのですが、滝汗)ですよ是非読んでちょ。
『本研究は、日本の消費者物価指数の主要な項目である家賃指数が、現状では著しく平滑化されているために経済環境を反映した限界家賃指数と大きく乖離していること、および平均的インフレ率を過小評価していることを示している。』
>平均的インフレ率を過小評価していることを示している
>平均的インフレ率を過小評価していることを示している
>平均的インフレ率を過小評価していることを示している
『家賃上昇率の下方バイアス1.3%に住宅の重み 21%を乗じれば、消費者物価上昇率は平均して一年あたり
0.2−0.3%程度の過小に推計されていたことになる。』
アイヤー!
『この結果は金融政策のターゲットと効果の両方に大きな含意を持つ。』
ということで・・・・・・・・
『特にデフレ環境から安定的な2%の物価上昇率を実現しようとする日本の金融政策にとり、消費者物価指数の下方バイアスは重要な問題である。更に、家賃が消費者物価指数に基づき認識されていたのよりも経済環境に応じて大きく変動しているということは、金融政策運営においても重要な含意を与えるものである。』
これは!
『また、実質国内総生産は名目値を価格指数で割り引いて推計するため、価格指数の下方バイアスは、推計される実質国内総生産成長率の上方バイアスを示唆する。』
『また年金受給者の過去の実質所得は従来の認識よりも毎年 0.2-0.3%低い伸びで、また将来の社会保障費の見積もりは年間
0.2-0.3%過小であることになる。』
え、えらいことや・・・・・・・せ、戦争じゃ・・・・・・・・(画像割愛)
とまあそういう結論ですが、これどういう分析しているのか、というところで定性的にどういう事なのかというのを読んでるだけでも中々おもしろいと思う(個人の感想です)のでまあ読んで味噌という所であります。
2022/11/29
お題「ウィリアムズとブレイナードが喋っていたのでちょっと鑑賞してみました(米国ネタばっかりですいません)」
BOJの保有国債の含み損の額自体はどうでもよいのだが、インフレになって金融政策正常化する際に必要な施策が出来るかという問題(売れば損失、償還まで持ち続ければ期間損失)が起きることが問題、つまりは黒田後に問題が発生する訳なんですけどね、と某記事を見て思うのでした。
しかしまあ何ですな、今の政策がインフレ引き上げに効くって思ってるんだったら物価が上振れ続けてサーベイのインフレ期待とかも上がっている中で政策の手じまい方法を(表に出すかどうかは兎も角として)考えると思うんだが、もしかして黒ちゃん、最初から自分の政策効かないと思ってやってたんですかねえってくらいの意地っ張りにはあきれてもの言えません(言ってるけど)。
なお日銀の方はまあ本当にどうしようもなくなるまで何もしないのは明白なのでいつもの海外中銀発言ネタばっかりでスマンのだがそっちを。
〇米国ですが空気がまた喋っている件について&ブレイナード副議長とトーンがだいぶ違くねっていう件について
おやおやそうですかそうですか。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-williams-idJPKBN2SI1N8
2022年11月29日3:56 午前
FRB、一段の利上げ必要 失業率は上昇へ=NY連銀総裁
ということでここにきて空気だったウィリアムズさんが喋りだした感がある訳ですけれども。
https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2022/wil221128
SPEECH
Peeling the Inflation Onion
November 28, 2022
John C. Williams, President and Chief Executive Officer
Remarks at the Economic Club of New York (delivered via videoconference)
As prepared for delivery
そんなに長くないのですが、インフレの話にフォーカスして前半が現状認識、後半が先行き見通しと政策の話ですが、後半の話しだけちゃちゃっと読みます。
『A Multilayered Reality』って小見出しから。
『When examining where all these inflationary layers stand today, we are
seeing a multilayered reality. So, what can we expect to see in the future?』
物価の先行きなんですが、
『I'll start with the outer layer, where there have been positive developments
that point to some relief on this front. The prices of commodities have
come way down from peaks reached earlier this year. Absent further disruptions
to supply, I expect that slowing global growth, in part reflecting tighter
monetary policy here and abroad, will continue to reduce demand for these
products, putting downward pressure on their prices.』
インフレの分析で玉ねぎの皮をむくみたいな話をしてて、どういう例えなんだよというのがイマイチアレだったのですけれども(玉ねぎの皮って向いて見たら何も残らんって事のような気がするんだが、まあ多層的な要因があるとか言いたかったのだと思う)、まあ何はともあれまずは海外含む要因って事みたいです。
でもって商品価格は下がるでしょう、海外の経済も主要国の金融引き締めで減速するから海外要因での価格上昇圧力も軽減されるでしょう、だそうです。
『Core goods prices that make up the middle layer have yet to come down
from elevated levels, as demand continues to outstrip supply. But there
are signs that this is changing.』
コアの財やサービス価格という物価を構成する中央のレイヤー(玉ねぎの皮むいた内側ってことでしょう)も高水準から下がって来るサインが見られます。と来ていまして、ロイターさんの記事見出しだと政策金利を下げない方の話が目立ちますが、物価の分析という文脈で流れをみる(と言っても今までの話の部分はかっ飛ばして読んでますサーセン)と、怪しからん上昇から落ち着きだす傾向がみられてきているような話が主になってきていまして、まあこれは「利上げペースを緩めるよ」って話だからそうですよねというのもありますが、インフレ退治大正義モードのトーンダウンであることは確かですよね。
まあ後は結果次第って事になると思うのですが、今時点でインフレがピークアウトしてきた、という見立てをして、引き締めの強化をそろそろ打ち止めにします、って話になっている中ですけど、その後物価が思うようにピークアウトって感じになってくれればよいのですが、ならなかった場合には話が違ってくるというのを忘れてしまうのイクナイと思うんですけどね、さてどうなるやら。
『For one, we've seen significant improvement in global supply chains.
Unlike last year, there are no longer ships stalled at ports in California.
The Global Supply Chain Pressure Index, developed by economists at the
New York Fed, shows that global supply chain disruptions soared to unprecedented
levels late last year. Since then, this index has retraced about three
quarters of that rise, and I expect improvements in global supply chains
to continue.4』
サプライチェーン制約が改善してきているけど今後も改善が続くと見ている点、
『We have also seen wholesale used auto prices decline by more than 15
percent since the start of the year, and these decreases are starting to
pass through to consumer prices. New auto inventories are slowly edging
back up, which should in turn bring relief to new car prices.』
アホのように上昇した中古車価格が下がってきている点、
『Overall, the combination of waning global demand, improving supply, and
falling import prices from the strong dollar points to slowing core goods
inflation going forward.』
全体的には世界需要の減衰とサプライチェーンの復活とドル高による輸入価格の下落によって今後もコア財のインフレは落ち着いてくるでしょう。
『However, lower commodity prices and receding supply-chain issues will
not be enough to get inflation back to our 2 percent inflation goal-it's
the innermost layer where the hard work lies.』
とは言え財の価格落ち着くだけではインフレ率2%までは下がらんのでして、そこにはもっと内側(玉ねぎの内側ってむいて行くと最後は無くなるもんだと思うんだがまあそれはさておき)にあるものが居ましてですな、と来まして、
『 Overall demand for labor and services still far exceeds available supply,
resulting in broad-based inflation, which will take longer to bring back
down.』
労働需要とサービス需要が引き続き旺盛なのが高インフレを下げない要因として残っているそうな。
『That said, a few forward-looking indicators paint a more encouraging
picture. Growth in rents for new leases has slowed sharply recently, implying
that average rent growth and housing shelter price inflation should turn
back down. We're also seeing some signs that the heat of the labor market
is starting to cool, with quits and job openings declining from the high
levels of the spring, along with indicators of slowing wage growth.』
といってる割には「a few forward-looking indicators paint a more encouraging
picture」と言って以下例をあげている次第でして、このコーナーが物価の先行き(経済の先行きはこの次の政策対応の所で話がある)の話の部分になるんですけど、結局ウィリアムズの説明だと、物価が先行き落ち着いてくることに関しては割と楽観的(まあ元々ハト派に近い分類されていますからってのはあるけど)って話をしていまして、副議長にしてはなんかワシントンの皆さま(議長とかブレイナードとか理事連中)よりも物価に対するトーンが楽観的に設定されている感は思いっきりありますね。
でまあこのウィリアムズの物価先行きに対する定性的な部分での見方って、従来の中心的な見通しに比べますとやや楽観的な感じがするのですが、これが執行部の鉄砲玉として放たれたのか、単にウィリアムズ何も空気読まないでご自身の見解を暢気に披露しているのかが良く分からん所なのですが、どちらかというと従来はデーリー辺りを鉄砲玉として放っていて、このオッサン完全に空気状態だった(NY連銀総裁って実務家おぶ実務家の集団だからダドリーみたいな実務叩き上げ系だと座りが良いんですけどウィリアムズは座りが悪いってのも空気化してしまった要因にあるようですけどね)ので、この辺りの呼吸が今いち読みにくくて困ります(個人の感想です)。
でもって次の小見出しが現世利益の『The FOMC's Policy Actions』です。
『But there is still more work to do. This brings me to the FOMC's strong,
decisive policy actions in support of our steadfast commitment to price
stability.』
But there is still more work to do.ときまして、結局は「まだ金融政策でやらないといけない引き締めがある」という話に政策部分ではなるので、その辺は中心的な見解と同じなのですが、アタクシとしてはその前の物価の見通しの所が定性的に改善するってトーンが従来の中心的な見解よりも楽観的になっているのが気になった次第であります。さらにこの先の説明読むと、「ガンガンやらないといけないね」って感じはウケないんですよね。
『To help bring demand back to levels consistent with supply, and thereby
bring inflation back down to our 2 percent goal, the FOMC raised the target
range for the federal funds rate to 3-3/4 to 4 percent at our meeting earlier
this month, the sixth consecutive increase.5 The FOMC statement indicated
that "the Committee anticipates that ongoing increases in the target
range will be appropriate in order to attain a stance of monetary policy
that is sufficiently restrictive to return inflation to 2 percent over
time. In determining the pace of future increases in the target range,
the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary
policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and
inflation, and economic and financial developments. In addition, the FOMC
continues reducing its holdings of Treasury securities and agency debt
and agency mortgage-backed securities."6』
この辺りはどうでもよい(今やってる事の話だから)。
『Many other central banks are focused on taking strong steps to reduce
inflation in their economies as well. One concern that has arisen is that
large and rapid shifts in monetary policy across the globe could contribute
to stresses and expose vulnerabilities in global financial markets. And
heightened uncertainty can add to market volatility, resulting in diminished
market liquidity.』
ここで海外の中銀が〜って話をするから何だと思ったら引き締めの不確実性から市場のボラが高まっているという話になりまして、
『For example, measures of liquidity in the U.S. Treasury market have declined
this year, but this is largely in line with the historical relationship
between volatility and liquidity. Importantly, Treasury and funding markets
continue to function well, effectively transmitting monetary policy to
broader financial conditions.』
米国債市場の流動性が低下している、という話を始めていまして、何ちゅうかこのやっぱりハトっぽい話に持って行ってる感がある。
『Because many of the sources of inflation are global, these policy actions
from around the world should alleviate supply-chain issues, speed the process
of restoring balance to global supply and demand, and reduce global inflationary
pressures.』
これらの市場へのストレスは金融環境を引き締めて物価押し下げに効いている、という肯定的な話をしているのですけれども、何だろうなあちょっとこう話の持って行き方が「でも本当は市場の流動性があった方が良いし、金融政策の予見可能性があった方が良い」って言ってる感を行間から感じたんですけど個人の感想なので気にしないで下さい。
『There are other factors that work in our favor too. The Fed's commitment
to achieving and sustaining 2 percent inflation as a bedrock principle
has no doubt had a positive effect on the public's inflation expectations.7
The transparency about our objectives provides a "North Star"
for policy decisions and improves the public's understanding about our
goals and actions.』
話変わってインフレ期待に絡んでなんですが、FEDがインフレ抑制の姿勢を示すことでインフレ期待がアンカーされるのは北極星が動かんので星が安定する、的なことなので結構結構、とゆうてまして、
『The benefits are evident in the stability of longer-run inflation expectations.
Even during the current period of high and volatile inflation, longer-run
inflation expectations in the United States are very well anchored in the
past year and a half. They are at levels broadly consistent with the FOMC's
longer-run goal. Although inflation uncertainty has increased, it does
not appear to be due to unmoored longer-run expectations.8』
実際に今でもインフレ期待はアンカーされています、って話で締めていまして、何でしょうかねえこの説明だと最初にBut
there is still more work to doの所で申し上げましたように、「やらなければいけないことはまだあります」以下の説明が「先行き物価の落ち着きに向けて行けまっせ」の連呼になっていて、ガリガリと引き締めしないとアカンですバイって感じの話しじゃないんだよなーと思いますので、だいぶトーンがハトチックだと思うのよね、市場があんまり反応してないのはこのオッサンの扱いの軽さを示しているとは思うんだが。
よって最後の『Economic Outlook』ですがサラサラ流しますけど、
『We are already seeing some of the effects of tighter monetary policy.』
と最初に来ましてからの、
『Broad measures of financial conditions, including borrowing and mortgage
rates and equity prices, have become significantly less supportive of spending.
This has led to a decline in activity in the housing market and signs of
general slowing in consumer expenditures and business investment spending.
As this continues, I expect real GDP to increase only modestly this year
and in 2023.』
『The labor market remains remarkably tight: Hiring is robust, and we still
are seeing rapid wage gains. But with growth slowing, I anticipate that
the unemployment rate will climb from its current level of 3.7 percent
to between 4-1/2 and 5 percent by the end of next year.』
『Turning to inflation, I expect cooling global demand and steady supply
improvements to result in declining inflation for goods that rely heavily
on commodities, as well as for those that have been heavily affected by
supply chain bottlenecks. These factors should contribute importantly to
inflation slowing from its current rate to between 5 and 5-1/2 percent
at the end of this year, and to slow further to between 3 and 3-1/2 percent
for next year.』
全般的には先行き上手くいくって話をしていまして、例えばセントルイスの変態仮面とかの言いっぷりと比較しますと随分と楽観的なトーンで先行きの物価沈静化について自信ニキなのか只の楽観ニキなのかは謎ですが、トーンがとにかく「先行き大丈夫っぽいっス」って感じに読めるんですよね(個人の感想です)。
よって、
『Bringing down underlying inflation-the inner layer of the inflation onion-will
take longer. But further tightening of monetary policy should help restore
balance between demand and supply and bring inflation back to 2 percent
over the next few years.』
と最後にあって、物価のコア部分が2%にすぐ下がるかっていうとそうでもないんだが、とかファーザータイトニングが物価落ち着きに向けての助けになる、とはゆうとるのだが、明るい見通しの説明が並んでいるので、なんか頑張って利上げするぞエイエイオーな感じは全然受けないんですよねー、勿論質疑応答とかあってそこでは別トーンなのかも知れませんけど、少なくともこちらの講演原稿は「As
prepared for delivery」ってな事でちゃんと用意しているものなので、ウィリアムズの見解としてはこっちが残るので。
勢いで『Conclusion』も読みますが。
『When it comes to the complicated nature of inflation and assessing the
economic outlook, it's important to know your onions. Tighter monetary
policy has begun to cool demand and reduce inflationary pressures. It will
take some time, but I am fully confident we will return to a sustained
period of price stability.』
お時間かかるけど、のそのお時間がここから先の金融政策で重要だと思うのですが、そこの定量的な話はスルーして「きっとうまくいく」の方を強調している辺り、追加の金融引き締め必要と言ってるけどまあそんなにこの人追加引き締めガンガンやる気がねえな、ってアタクシは受け止めました。
・ブレイナード副議長もお話をしておりますな
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20221128a.htm
November 28, 2022
What Can We Learn from the Pandemic and the War about Supply Shocks, Inflation, and Monetary Policy?
Vice Chair Lael Brainard
At the 21st BIS Annual Conference Central Banking after the Pandemic: Challenges
Ahead, Bank for International Settlements, Basel, Switzerland
こちらはBISのカンファレンスでの講演というかスピーチのようです。これネタにするには中途半端な長さで、全部ネタにするには長いし、かといって話のフォーカスポイントがこれってのも微妙な所でございますが、適当につまみ食いして読んでみます。
前半は目下のインフレの動向とその要因の話がありますが、第6パラグラフに政策対応的な話があります。
『The standard monetary policy prescription is to "look through"
supply shocks, such as commodities price shocks or shutdowns of ports or
semiconductor plants, that are not assessed to leave a lasting imprint
on potential output.5 In contrast, if supply shocks durably lower potential
output such that the economy is operating above potential, monetary policy
tightening is necessary to bring demand into alignment with the economy's
reduced productive capacity. Importantly, and separately from the implications
for potential output, monetary policy should respond strongly if supply
shocks risk de-anchoring inflation expectations.6』
標準的な金融政策の考え方によれば一時的な供給ショックについてはスルーする、というのが正しいとなっているものの、足元のように状況が長引いてポテンシャルな生産力に対して持続的な供給不足に陥ってしまうような場合においては、金融政策を引き締めて需要をさげて対処しないとインフレ期待のアンカーが上方に外れてしまうリスクが高まります、という話をしておりまして、さっきのウィリアムズのように「我々のファイティングポーズでインフレ期待はアンカーされてまっせ(ニッコリ)」というのとトーンが違うのが感じられるかと思います。
でもってそこから10パラグラフまでの4パラグラフの間が「ポテンシャルアウトプットと供給不足のギャップをどう計測しますか」って話から始まって、「インフレ期待の動学」「インフレ期待をどうやって見ていくのか」みたいな説明が続いていまして、全体でこのスピーチ14パラグラフという短い物件になるのですけれども、そのうちの3分の1が「供給ショックという本来は金融政策で対処するものではない物件に対して、インフレ期待のアンカリングというもう一つの重要な面から見た時にどうあるべきなのよ」って話をしておりまして、もちろん話をしている相手がウィリアムズはNYエコノミッククラブだから「きっとうまくいく」の話をするインセンティブがあるし、ブレイナードはBISのカンファレンスだから「インフレ期待のアンカリング」という欧州も今まさに問題視している部分についてフォーカスするというインセンティブがあるので、その点は斟酌して比較しないと行けないとは思うのですが、まあ同じ時期に副議長同士がトーン大分違うものを出してくるってのに今回はほっほーって思いました。
7パラ以下のインフレ期待の話、ネタにすると時間が無くなるのですが、後で自分で駄文を見直す時用に引用だけしておきます長くなってスイマセン。
『Although these tenets of monetary policy sound relatively straightforward
in theory, they are challenging to assess and implement in practice. It
is difficult to assess potential output and the output gap in real time,
as has been extensively documented by research.7 This is especially true
in an environment of high uncertainty. The level of uncertainty around
the output gap varies considerably over time, and research suggests that
more muted policy reactions are warranted when uncertainty about the output
gap is high.8 The unexpectedly long-lasting global pandemic and the sharp
disruptions to commodities associated with Russia's war against Ukraine
have contributed to substantial uncertainty (figure 5).』
そもそも「ポテンシャルな生産力」ってのがどんだけあるのか、供給と需要のギャップがどのくらいあるのかってのをリアルタイムで計測するのはムツカシアルねって話をしています。
『Even so, the drawn-out sequence of shocks to the supply of labor, commodities,
and key intermediate inputs, such as semiconductors, blurred the lines
about what constitutes a temporary shock as opposed to a persistent shock
to potential output. Even when each individual supply shock fades over
time and behaves like a temporary shock on its own, a drawn-out sequence
of adverse supply shocks that has the cumulative effect of constraining
potential output for an extended period is likely to call for monetary
policy tightening to restore balance between demand and supply.』
そうは言いましてもそのあたりのギャップってのは経済のデータのいろんなもので間接的にはみれますよね、って話で、その結果として金融政策の引き締めが必要ですよって話になっただよ、ってな感じの話をしております。
『In addition, a protracted series of supply shocks associated with an
extended period of high inflation-as with the pandemic and the war-risks
pushing the inflation expectations of households and businesses above levels
consistent with the central bank's long-run inflation objective.9 It is
vital for monetary policy to keep inflation expectations anchored, because
inflation expectations shape the behavior of households, businesses, and
workers and enter directly into the inflation process. In the presence
of a protracted series of supply shocks and high inflation, it is important
for monetary policy to take a risk-management posture to avoid the risk
of inflation expectations drifting above target. Even in the presence of
pandemics and wars, central bankers have the responsibility to ensure that
inflation expectations remain firmly anchored at levels consistent with
our target.』
でもって高インフレが続く中で供給ショックが長引くと最終的にはインフレ期待のアンカリングが外れてアカンですたい、って感じの話をしてて、そうなるとあばばばばーになるのでリスクマネジメントの観点から金融引き締めをする訳ヨ、ってお話をしています。
『In monitoring inflation expectations for purposes of risk management,
not only the median but also the distribution of inflation expectations
can provide important information about how inflation expectations may
be changing.10 Survey measures suggest that the median of longer-term inflation
has remained within pre-pandemic ranges consistent with 2 percent inflation
(figure 6). However, starting in 2021, there has been a greater dispersion
than usual of views about future inflation in survey responses, as shown
in figure 6. Although initially the increased dispersion reflected a rise
in expectations for significantly above-target inflation, more recently,
following substantial cumulative monetary policy tightening, the increased
dispersion has also reflected increased expectations of no inflation or
even disinflation. About one-fourth of respondents to the most recent University
of Michigan Surveys of Consumers anticipate that prices are likely to be
the same or below their current level 5 to 10 years in the future-roughly
three times the average fraction that reported such expectations before
the pandemic.』
でもってやや長めのパラになっていますが、インフレ期待の計測って話をしていまして、ブレイナード(だけじゃなくて他の人も言ってるけど)この前もその話をしていましたが「概ねアンカーされているんだが、気になるのはサーベイデータにおける分散の拡大」という点で、これって実はサーベイベースのインフレ期待の話で割と良く言われる話の割にはサーベイの結果の所で詳しく出てこないデータ(当然ですが中央銀行ではどこもこの分散部分を分析の中で見ている筈です為念)なんですけど、インフレ期待のアンカリングが大丈夫なのって話の際にはこれ重要なんですよねー(マーケットデータだと価格が収斂しちゃうから分散が見れないのよね)という話でございますな。
とまあそんな感じで今朝はご勘弁。
2022/11/28
お題「東京都区部CPI見ますと益々言い逃れ出来ないと思うのだが/レーン理事が欧州のインフレを要因分解してると聞きまして」
うーん何ですかこの結果は(なお観戦はしなかったんですけどねえ)。
〇東京都区部CPI更に来てますなあ
はい。
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/kubu.pdf
2020年基準 消費者物価指数
東京都区部 2022年(令和4年)11月分(中旬速報値)
『◎ 概況
(1) 総合指数は2020年を100として103.8
前年同月比は3.8%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇
(2) 生鮮食品を除く総合指数は103.6
前年同月比は3.6%の上昇 前月比(季節調整値)は0.4%の上昇
(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は102.1
前年同月比は2.5%の上昇 前月比(季節調整値)は0.3%の上昇』
きょえーーーーって感じですが、何が凄いって1ページ目下段にある、
『表2 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前月比(季節調整値)』
ってもう前月比の季節調整値がずーっと+0.5%で上がっている訳で、ここから更に円安の価格転嫁と大型財政が来るんですから、これって日銀どう見てもビハインドになってないですかって感じなのですが、何で「目標達成がやっと見えてきましたやったね良かったね」にしないのかが不思議でしょうがないし、この調子だとビハインドした日銀という結果を持って金融政策事実上召し上げられても不思議ではないのですが、召し上げられてしまえば政治的にややこしい事も起きないし丁度いいですかね(ゲス顔)。
この調子ですと年内でCPIって4%とかになりゃせんですかと思うのですけれども、そうなるとついこの前出した展望レポートの物価見通しの2023年度の見通しが明らかにおかしいという話になりますし、しかも2023年度の見通しがかなり狭い範囲に揃っているところが悲しいボンクラ集団ということで、まあ何ちゅうか日銀政策委員全員切腹もんじゃろという流れになって参りましたな。
ま、どうせ12月決定会合で物価の事言われても「来年になったら下がります」しか言わないんでしょうけれども、「見通しが外れた場合は当然政策についても再検討されると思いますがどうでしょうか」って話がどうなるかですよね。何せ今までって物価見通し外し続けているのに、その状況を受けて政策について検討した形跡すらない訳ですよ。これでまだ「物価が想定以上に大きく上振れしている事を踏まえ、現在の政策の妥当性について検討した」ってな記述でもあったら検討しているって思える(「検討した結果現状維持」だから)のですが、なーーーーーーーーんも物価上振れを理由にした検討してないんですから、もう結論先にあり、しかもその結論ってのが黒田様のお気持ちという科学的根拠皆無の老害ジジイの思い込みと意地だけ、ってんですからまあ酷い話ではあります。
12月のMPMには11月全国CPIは・・・・・・・
https://www.stat.go.jp/data/kouhyou/e-stat_cpi.xml
統計結果の公表情報
【消費者物価指数】
2022年11月分
公表日: 2022年 12月 23日 8時 30分
間に合わないのか、チッキショーーーーーーー(MPMは19〜20日)。
〇いつものようにECBはレーンさんとシュナーベルさんを鉄砲玉にして説明する訳ですな
あとはパネッタさんのトリオ・ザ・鉄砲玉が何か出すのですが、しかしこのECBブログって方式も何ちゅうか使う方としては便利なツールなんですけど、ガバナンス的に機関決定じゃない物件なのにそれっぽい物件が出てきてしまうという建付けもどうなのかって感じですけどぬー。
直近ではこの2本である。
シュナーベル理事
https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2022/html/ecb.sp221124~fa733bc432.en.html
SPEECH
Finding the right mix: monetary-fiscal interaction at times of high inflation
Keynote speech by Isabel Schnabel, Member of the Executive Board of the ECB, at the Bank of England Watchers’ Conference
London, 24 November 2022
レーン理事
https://www.ecb.europa.eu/press/blog/date/2022/html/ecb.blog221125~d34babdf3e.en.html
THE ECB BLOG
Inflation Diagnostics
Frankfurt am Main, 25 November 2022
Blog post by Philip R. Lane, Member of the Executive Board of the ECB
・シュナーベルさんの方は財政とのバランスがどうのこうのなんだが日本ではこの当たり前の話が出ない訳で(ただのメモ)
https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2022/html/ecb.sp221124~fa733bc432.en.html
単にメモなんですけど最後の結論『Conclusion』の所ね。
『In the current environment, there is a risk that monetary and fiscal
policies may pull in opposite directions, leading to a suboptimal policy
mix. Many fiscal measures that are popular among the electorate, such as
tight price caps or broad-based subsidies, risk fuelling medium-term inflation
further, which could ultimately force monetary policy to raise interest
rates beyond the level that would be seen as appropriate without fiscal
stimulus.』
>such as tight price caps or broad-based subsidies, risk fuelling medium-term inflation further
一方日本ではCPIを1.2%下げると言って大型財政を打つのであった。しかも打つ内容が電力などの料金引き下げの為の補助金とかどこからどう見ても幅広バラマキですわな。
『Governments need to internalise the effects of their actions on future
inflation and monetary policy. They should support fiscal sustainability
and price stability by targeting their measures to the most vulnerable
parts of society, fostering potential growth and accelerating the green
transition. Such measures would dampen inflationary pressures over the
medium to long run.』
>by targeting their measures to the most vulnerable parts of society,
>fostering potential growth and accelerating the green transition
まるでやってることが逆なのが日本。
『Monetary policy can best contribute to macroeconomic stability and social
welfare by ensuring a timely return of inflation to target, thereby preserving
people’s purchasing power, and supporting investment by reducing uncertainty.』
金融政策で急速な円安を煽って「preserving people’s purchasing power」に反することをしていますな日本は。
・・・・と日本に置き換えて悲しくなったのでメモにしてみただけですすいませんすいません。
ところで、確か置物一派の皆様は「世界標準の金融政策ガー」とか言ってた筈ですが、このような点についてはどのようにお考えなのでしょうか、まあ別に置物一派の場合は理論なんてのは便所紙みたいなもんなんでしょうけどね。
・それはさておきレーンさんのECBブログで「インフレに対する見立て」だそうですよ
これがまたクッソ長いので全部を一気に紹介できるような代物ではないのですが、
https://www.ecb.europa.eu/press/blog/date/2022/html/ecb.blog221125~d34babdf3e.en.html
THE ECB BLOG
Inflation Diagnostics
Frankfurt am Main, 25 November 2022
Blog post by Philip R. Lane, Member of the Executive Board of the ECB
何せお題が「インフレの診断」(診断とか徴候とか特徴とか手元の辞書には書いてあった)なので読んで置いて損はないと思います。
最初に何かお言葉みたいなのがイタリックで出ています(ので元ページはこの部分イタリックになっています)。
『Identifying the medium-term inflation path in the current environment
of high inflation, ongoing energy and pandemic-related shocks and the Russian
invasion of Ukraine is a diagnostic challenge. In his ECB Blog post Philip
R. Lane, Member of the ECB’s Executive Board, describes some of the key
analytical issues involved.』
ということで、こちらはただの番宣みたいなもんですが、その次から本チャンでして、最初にサマリーがついているのが親切設計。
『Summary』
『This blog post describes the diagnostic challenges in identifying the
medium-term inflation path in the current environment of high inflation,
ongoing energy and pandemic-related shocks and the Russian invasion of
Ukraine.[1]』
最近の高インフレ、ウクライナ戦争によるエネルギーショックの影響も含めて分析しています、ってことなんですがこれがまた図表見ているだけでも結構長いです。細々説明する余裕が無いのでアレですが、純粋な需要要因、供給制約要因、エネルギー価格ショックの要因、という感じで財やサービスのインフレについて分解している図表が途中に幾つもあって(それを見ますと単純な需要要因だと2%近辺まで上昇している、みたいな図に見えないでもない)オモロイです。
『It interprets the surge in inflation since the middle of 2021 as the
result of extraordinary relative price shocks that, in the presence of
downward nominal price and wage rigidities, initially translate into an
increase in the inflation rate. These relative price shocks reflect the
scale and breadth of the energy shock and the pandemic- and war-related
shocks. 』
2021年の中盤以降に物価が無駄に上昇した要因は、名目価格押し下げと賃金が上がらん事によって起きていた中で、エネルギーショックとパンデミックの影響(の物価を上げる方の供給制約要因)とウクライナ戦争による相対価格ショックが撒き戻されたことによるものですと。
『Under such circumstances, standard measures of contemporaneous underlying
inflation may not accurately signal the persistent component of inflation,
while forward-looking wage growth trackers may play a useful supplementary
role in identifying the medium-term inflation dynamics. 』
という環境でありますので、(さっき申し上げました途中の図表もそういう見せ方になっています)基調的な物価というのは持続的に無駄に高い水準で推移する、というのではない(=供給制約要因と相対価格ショックの要因で需要サイドによる物価上昇圧力に上乗せされている、という意味ですな)ですよ、ということで中期的なインフレの動きに関しては「forward-looking
wage growth trackers」ってのが良い指標になるそうです。
『Long-term inflation expectations currently appear well anchored at the
two per cent target, but a prolonged phase of above-target inflation poses
a de-anchoring risk that is addressed by raising interest rates to the
levels required to make sure that inflation returns to target in a timely
manner.』
でもって長期的なインフレ期待に関しては今の所は十分に2%にアンカーされているのですが、ただ物価が目標よりも高い水準でいる時間帯が長くなると、インフレ期待のアンカーが外れてしまいますので、そうならんようにタイムリーに物価が2%水準に戻るようになると信用され得る水準まで政策金利を引き上げないといけません、って話をしております。
まあ何ですな、これ「インフレ期待をアンカーさせるため」という言い方をしている場合って、結局の所は「がっつり金利上げますよ」というポーズは示しておかないと行けない(実際にガッツリ上げるかどうかはともかくとして)のであって、「景気にも配慮」とか言い出すと、その時点でインフレ期待のアンカーが外れるリスクを政策として背負う事になっていまいますから、こういう説明をするってのは基本的に(いまのFEDみたいな)やや微温的な態度に出るって訳にはいかないと思うんですよね。
実は最後の所にまとめ、ってのがあってそれをネタにすればよい説はあるのですが、それをやっていると時間が足りないということに今気が付いたアタクシは、強引ですけどチャートの方のご紹介をします、と言っても別にURLとかを示すわけでは無いので結局上記の元ページをスクロールしてってちょという話なのですが。
話の中での「物価の要因分解」なのですが、まずチャート11と12ってのがありまして、
Chart 11
Goods inflation - decomposition into energy sensitive items
(annual percentage change and percentage point contributions)
財のインフレが6%なのですが、そのうち「エネルギーにセンシティブじゃない部分」の寄与度が3%ちょい、「エネルギーにセンシティブな部分」の寄与度が3%弱くらいになっています。
Chart 12
Services inflation - decomposition into energy sensitive items
(annual percentage change and percentage point contributions)
サービスのインフレが4%台前半なのですが、そのうち「エネルギーにセンシティブじゃない部分」の寄与度が2%で、「エネルギーにセンシティブな部分」の寄与度が2%ちょいくらいになっています。
Chart 21
Goods inflation - decomposition into supply and demand-driven contributions
(annual percentage change and percentage point contributions)
チャート21ってんで結構下の方になるのですが、今度は要因分解を「需要要因、供給要因、どっちとも取れる項」にわけて計算しているんですけど、これを見ますと、こちらの分解は若干遅れるようで最初の分析は10月の物価まで出てるのですが、こっちは8月までの数字になってまして、財のインフレ8月時点で4%台後半なのですが、需要項目で1%台後半、誤差項目と合わせてで概ね2%、残りは供給要因となっていて、
Chart 22
Services inflation - decomposition into supply and demand-driven contributions
(annual percentage change and percentage point contributions)
サービス価格は全体が3%台前半となっている中で需要項目が2%近く、誤差項目と合わせて2%台半ばでして、残りが供給要因、となっています。
まあ何か話がうまく出来過ぎている感はあって、ホンマカイナという感じもすると思いますが、ああだこうだといろんな話をしておりますので、ご興味ありましたら読んでちょという感じですけど、まー米国の物価の分析をしてた方が現世利益に繋がりそうなので趣味の世界って感じになりそうですけど。
ということで何かただの頭出しっぽくて恐縮ですが本日はこんな所で勘弁して頂きとうございます。
2022/11/25
お題「11月FOMC議事要旨は景気への警戒トーンがハトっぽく見える主因ですかね」
米国感謝祭だしヘロヘロと昨日の続きで議事要旨でも読みますか。
なお欧州に関しては色々と面白そうなのだがちゃんと読むもの読んでからじゃないと急にネタにしても話についていけそうなので要勉強ですわ(滝汗)。
〇引き続き11月FOMC議事要旨を読んでみましょう
そういや昨日は13パラ以降の逐語読みしましたが、途中でパラ番号が飛んでしまってました。本当はあれ18パラまでしかないのに最後19パラとかになってて自分でもナンヤソラと思ったのですが推敲している暇がなくて後でナンバリング飛ばしている事に気が付きましたサーセン。
ということでして、昨日読んだ部分変なすっ飛ばしとかはしてませんので悪しからず。
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20221102.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
November 1-2, 2022
A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors
of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors
on Tuesday, November 1, 2022, at 10:30 a.m. and continued on Wednesday,
November 2, 2022, at 9:00 a.m.1
『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の前半をマターリと鑑賞。
1パラと2パラは全体観の話しなんですが、既に声明文で言及されている内容になるのですっ飛ばして3パラから参ります。
・3パラ:家計のウェルスは依然として強いってのがしれっと入っていますね
『In their discussion of the household sector, participants noted that
growth in consumer spending had softened recently.』
消費者支出の伸びが最近鈍化している件ですが、
『Several participants remarked that there had been a reduction in discretionary
expenditures, especially among lower- and middle-income households, whose
purchases were shifting toward lower-cost options.』
数名の参加者の指摘に寄れば中低位所得の家計はより安いものを選ぶことによって裁量的支出を減らしている。
『Participants observed that, in aggregate, household-sector balance sheets
were still strong and that this factor would continue to support consumer
spending. A few participants noted that some households had been running
down the additional savings they had accumulated during the pandemic and
that there were reports of a rise in the number of households experiencing
financial strains.』
とは言え家計のウェルスは依然として強い、という認識を持っていまして、ただまあその中でも数名の参加者の指摘によれば、幾分かの家計はパンデミックの時期に積み上げた貯蓄の取り崩しを行っており、そういう一部の家計においては金融制約の掛かってきているところもある、との指摘があります。
『Participants commented that higher mortgage interest rates had notably restrained housing activity.』
家計の最後の部分はモーゲージ金利の上昇で住宅市場への購入の動きが弱まっているという指摘、ということで基本的には「引き締め的な金融政策スタンスによって家計の過剰消費が弱まりつつある」という話の流れになっておりまして、まあ結局のところFEDちゃんとしてはモーゲージの金利がヒャッホウといって下がるとか、株価がヒャッホウといって上がるとか、そういうのが起きると折角過剰消費の沈静化が進んできたというのにまたリバーサルで家計がヒャッハーしだすのでイクナイって認識はあると思うの。
つまりですな、ミニッツがハト派だヒャッハーとか言ってるとどうせ誰かが水をオリャーとぶっかけに回る、という流れがくるのまあだいたい見え見えの展開ではなかろうか、と斯様にアタクシなんぞは思う訳なのでございますが、さてどうなるでしょうかね。
・4パラ:企業の所は見解まちまちですが供給制約の緩和に関しての字数が多い
『With regard to the business sector, participants noted that growth in investment spending was modest.』
企業の投資の伸びは緩やかである。
『Several participants observed that business investment was being weighed
down by tighter financial conditions, although a few participants reported
that some business contacts indicated that their investment spending had
been resilient.』
企業の投資支出に関する参加者の見解はまちまちですね。
『Some participants mentioned reports received from business contacts of
easing supply bottlenecks, reflected in declines in shipping costs and
delivery times, although the reported extent of these improvements varied
across contacts. A few participants remarked that, in instances in which
supply constraints had eased, their business contacts found it easier to
plan production or had diminished needs to maintain precautionary inventories.』
このパラグラフ中で一番字数を使っているのが供給制約の話でして、工業製品における供給制約については緩和されていますよって話だし、確かに最近その話が前面に出なくなっていますよね。
『A couple of participants noted that drought conditions in the Midwest
were making some waterways, notably the Mississippi River System, less
navigable. These conditions were creating new supply constraints and putting
upward pressures on transportation costs and prices for farm products.』
ミシシッピ川の干ばつによる河川輸送の問題が新しく供給制約になっている、という2名の指摘がありました。
・5パラ:世界的な金融環境のタイト化に関して米国の輸出を通して悪影響があるんでネーノという議論
『Participants observed that, with inflation elevated globally, many central
banks were tightening monetary policy simultaneously, contributing to an
overall tightening of global financial conditions.』
グローバルに中央銀行による金融引き締めが行われ、金融環境はタイト化している、という認識から始まるこのパラグラフですが、
『Participants further noted that the overall tightening of global financial
conditions, along with energy prices and other headwinds, was contributing
to a slowdown in the growth rate of global real GDP. Participants remarked
that the foreign economic slowdown, in combination with a strong U.S. dollar,
was likely to weigh on the U.S. export sector, and several participants
commented that there could be wider spillovers to the U.S. economy.』
海外の金融タイト化に加えてエネルギー価格その他の要因で海外経済のスローダウンとドル高進行が起きますと、米国の輸出に影響あるわなーって話になって、それが米国経済に悪影響与えるかもね、って指摘がわざわざここにはいっておりまして(ちょっと過去毎回必ずこの辺の部分細かくみてるわけでは無いのでアレですが)、経済に関する部分ってまちまちだったり弱い先行きの話しだったり、という感じで経済に対しては少なくともコーシャスに書かれていますので、まあこの辺りも「インフレ退治大正義一辺倒じゃないトーンダウンを感じる」って読み方になったんでしょうな、とは思いました。
ここで「私言いましたよね」攻撃で恐縮ですが、アタクシも今回のFOMC出た時に「声明文は穏やかだけとオープニングリマークからパウエル会見QAに向けてタカというか釘差し度が上がっている」というのを申し上げたつもりだったのでございまして、まあ全般的にこの手の警戒トーン、というか日和見モードへの緩やかなシフト、というものがあるわなというのをより分かりやすく示したのが今回の議事要旨だったんでしょうかね。
・6パラ;労働市場の話になるとクソ長い記述と共に強い強い強いという話になる
ここから労働市場、インフレーションとなるのだが。
『Participants observed that the labor market had remained very tight,
with the unemployment rate near a historically low level, the number of
job vacancies very high, a low pace of layoffs, robust employment gains,
and elevated nominal wage growth.』
出だしから無茶苦茶強い労働市場ってのをこれでもかと表現していますが、
『Some participants remarked that employers in certain sectors, such as
health care, leisure and hospitality, or construction, faced particularly
acute labor shortages and that these shortages were contributing to especially
strong wage pressures in those sectors.』
人手が超足りてないセクターが賃金ガシガシ上げとりますなーという話。
『Participants commented on the labor market having remained strong to
date, even alongside the slowing in economic activity.』
経済がスローになってきているのに労働市場がめっちゃ強い点について参加者はコメントした。
『A number of participants remarked that some businesses were keen to retain
workers after their recent experiences of labor shortages and hiring challenges.
These participants noted that this consideration had limited layoffs even
as the broader economy had softened or that this behavior could limit layoffs
if aggregate economic activity were to soften further.』
今次回復における労働者確保の困難さが履歴効果になってて、多少の減速があったからと言ってホイホイと雇用調整をしなくなっている、という企業側のスタンス変化について指摘されています。
『Nevertheless, many participants noted tentative signs that the labor
market might be moving slowly toward a better balance of supply and demand;
these signs included a lower rate of job turnover and a moderation in nominal
wage growth. Participants anticipated that imbalances in the labor market
would gradually diminish and that the unemployment rate would likely rise
somewhat from its current very low level, while vacancies would likely
fall.』
とは言いましても、このクッソ強い労働市場に若干の軟化の兆しも見えていますので、今後は労働市場のインバランスは徐々に弱まっていくでしょうと見ている、という結論でしたが、まあその前に字数使ってああだこうだと強い労働市場の話をしておりますので、依然として労働市場のクッソタイト状況に関しては警戒してるでしょうな。
・7パラ:物価はこれ以上の加速はしないと思うが減速にも時間かかるという話
『Participants agreed that inflation was unacceptably high and was well
above the Committee's longer-run goal of 2 percent.』
という訳で7パラは物価。
『Some participants noted that the burden of high inflation was falling
disproportionally on low-income households, for whom necessities like food,
energy, and shelter make up a larger share of expenditures. Many participants
observed that price pressures had increased in the services sector and
that, historically, price pressures in this sector had been more persistent
than those in the goods sector. 』
生活必需品、家賃のインフレが特に強いのは低所得者層を直撃して遺憾なのだがこのセクターの物価が特に強いと。
『Some participants noted that the recent high pace of nominal wage growth,
taken together with the recent low pace of productivity growth, would,
if sustained, be inconsistent with achievement of the 2 percent inflation
objective. Several participants, however, commented on signs of a moderation
in nominal wage growth.』
賃金に関しては「このままの状況を看過しているのはアカン」派と「いやまあ落ち着くんじゃねえの」派がいるようですな。
『Participants agreed that near-term inflation pressures were high, but
some noted that lower commodity prices or the expected reduced pressure
on goods prices due to an easing of supply constraints should contribute
to lower inflation in the medium term. Several participants remarked that
rent increases on new leases had been slowing in recent months, but participants
also noted that it would take some time for this development to show up
in PCE inflation.』
近いタームのインフレに関しての話ですが、引き続き物価上昇圧力は高いけど、エネルギーとか供給制約とかその手の要因は軽減されてくるので中期的にはやや緩和するっしょ、という話です。レントに関しては賃貸価格上昇の勢いが弱まっている指摘もありますが、ただまあ全般的には物価が落ち着くには時間が必要という話。
『Several participants summarized reports provided by business contacts
about their firms' ability to pass on higher input costs to their customers.
These reports suggested that some firms continued to have solid pricing
power, while in other cases cost pass-through had become more difficult.』
物価のラストは投入コストの価格転嫁に関する企業の話。一部に価格転嫁がムツカシイって向きもあるけど、まとめてしまえば引き続きパススルーは置きますね、と全体的に「これ以上加速はせんと思うが減速するには時間が掛かる」という話ですね。
・8パラ:インフレ期待に関する記述や指摘は従来通りで変化ないです
『Participants remarked that, overall, measures of medium- and longer-term
inflation expectations obtained from surveys of households and businesses
as well as from financial markets quotes appeared to have remained well
anchored.』
インフレ期待ですが、まあこれはremain well anchoredの認識にしておかないとランボー怒りのボルカーショックになってしまいますからこれはこうなるのが仕様。
『A couple of participants observed that longer-term inflation expectations
were stable even as measures of near-term inflation expectations responded
to realized inflation in line with historical patterns. Participants noted
that longer-term inflation expectations were an important influence on
inflation's behavior and stressed that the Committee's ongoing monetary
policy tightening would be essential for ensuring that these expectations
remained well anchored.』
我々のインフレ退治大正義スタンスによって長期のインフレ期待はアンカーされている(キリッ)。
『Several participants expressed the concern that the longer inflation
remained well above the 2 percent goal, the greater the risk that longer-term
inflation expectations could become unanchored. Such a development, if
it materialized, would make it much more costly to bring inflation down
and to achieve the Committee's statutory objectives of maximum employment
and price stability.』
とは言え物価が高いのが続くとインフレ期待が適合的に上がるんでネーノ、とか
『A couple of participants discussed the high dispersion of longer-term
inflation expectations across respondents in various surveys: These participants
noted that the higher dispersion may signal increased uncertainty about
the inflation outlook and was a reason not to be complacent about longer-term
inflation expectations remaining well anchored.』
インフレ期待に関するサーベイの中身を見ると期待値の分散が広がっている点などはインフレ期待の上振れのリスクを示すもんじゃないの、という指摘も従来通りでこの辺の言ってることは毎度同じって感じですな。
・9パラ:金融政策の効果のラグの話
『Participants discussed the length of the lags in the response of the
economy to monetary policy actions, taking into account historical experience
and the various estimates of timing relationships provided in economic
research, as well as the high degree of uncertainty involved in applying
the evidence on lags to the current situation.』
はい来た重要部分の「金融政策効果のラグについて」ですよ。
『They noted that monetary policy tightening typically produced rapid effects
on financial conditions but that the full effects of changes in financial
conditions on aggregate spending and the labor market, and then on inflation,
likely took longer to materialize.』
金融引き締めは金融環境には速攻で効くけど実体経済への波及には時間が掛かるよ。
『With regard to current circumstances, many participants remarked that,
even though the tightening of monetary policy had clearly influenced financial
conditions and had had notable effects in some interest rate-sensitive
sectors, the timing of the effects on overall economic activity, the labor
market, and inflation was still quite uncertain, with the full extent of
the effects yet to be realized.』
『Several participants observed that, because of the difficulties in isolating
the effects of monetary policy, changes in economic structure, or increasing
transparency over time regarding monetary policy decisions, the historical
record did not provide definitive evidence on the length of these lags.』
『In addition, some participants noted that the post-pandemic dynamics
of the economy may differ from those prevailing prior to the pandemic.』
はいきた重要部分、と思って読んだものの(昨日も目を泳がせるだけはしたんですけどね)、言ってる話自体は既に複数の連銀幹部の講演によって示されている話から特に変わりは無くて、「現状では金利感応度の高い部門ですでに引き締めの影響が出ているが、実体経済や労働市場や物価などへの波及が来てるかというとまだワカランチ会長状態だし顕在化もしてない」「そもそもどこからどこまでが金融引き締めの効果とか分離して分析できるもんじゃないので、過去の経験を持ってラグには何か月、みたいな決め打ちするのはアカンじゃろ」「だいたいからしてポストパンデミックの世界で経済の構造に変化が生じている可能性もあるから過去の経験すらあてにならんかもね」という話で、この辺は最近の理事や地区連銀総裁も指摘していた話。
つまり要は「波及がどの位の期間でどの位で出るのかとか分からんから出たとこ勝負じゃ」という話になるのでありました。
やっべー時間が無くなってしまった。以下はリスクに関して3パラほど残ってしまったんですが、アタクシが時間配分間違えてしまって時間が無くなったので勘弁してつかあさい(一応月曜に残りはやりますけど)。
ということで、インフレとか労働市場とかの話自体は特にトーンダウンしていないのですが、やはり今回は経済に対するトーンダウン部分がそれなりに目立つような作りになっていまして、これまでの「とにかくインフレ退治が大正義だから金融政策を速く引き締め的な領域にしなければ」という焦燥感は文面から感じなくなった、というところでありまして、特に中立金利まで持って行く辺りは髪振り乱しての追い込みって感じだったので、まあここから先はある種「余裕を持った対応」をしながらインフレ動向を見ていく、ってことになるとは思うのですけれども、ゆうて労働市場とインフレに関してはメインシナリオは今後落ち着く、だけど中身を見ると全然楽観視していないので、物価が一段高だの賃金上昇率が更にヒャッハーだのというのが出て来ると、FEDちゃんまたケツに火が点くって感じではなかろうかと思うのですがどうっすかね。
2022/11/24
お題「基調的なインフレが強すぎますけど/FOMC議事要旨より」
南関東での勤労感謝の日は勤労の感謝を意味する冷たい雨が1日降りしきったのでしたorzorz
〇基調的なインフレがどう見ても目標達成過ぎている件について
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf
消費者物価の基調的な変動
エライコッチャエライコッチャヨイヨイヨイヨイ(白目)
という図ですが、エクセルのデータを淡々と貼ってみましょう。
いつものように左から
刈込平均値、加重中央値、最頻値の(前年比、%)ですな。
Jan-21 -0.3 0.0 0.0
Feb-21 -0.2 0.1 0.1
Mar-21 -0.1 0.1 0.1
Apr-21 -0.3 0.1 0.1
May-21 -0.1 0.1 0.1
Jun-21 0.0 0.1 0.1
Jul-21 0.2 0.1 0.1
Aug-21 0.3 0.1 0.2
Sep-21 0.6 0.2 0.2
Oct-21 0.6 0.1 0.2
Nov-21 0.8 0.1 0.2
Dec-21 0.9 0.1 0.3
Jan-22 0.8 0.2 0.3
Feb-22 1.0 0.1 0.3
Mar-22 1.1 0.2 0.3
Apr-22 1.4 0.3 0.4
May-22 1.5 0.4 0.5
Jun-22 1.6 0.5 0.5
Jul-22 1.8 0.3 0.7
Aug-22 1.9 0.5 0.8
Sep-22 2.0 0.5 0.9
Oct-22 2.7 1.1 1.3
ひえええええええええええええ!!!!!!!!!!!!
ということで、加重中央値とか最頻値とかまでが比叡山案件と化しておるわけですが、麿ドクトリンの「中間目標1%」って意味では加重中央とか最頻値とかまさにふさわしい数字になっているんだしもう十分なんじゃネーノという位の数字だし、刈込2.7ってどう見てもぶち抜け案件だろという数字になっています。
コアコアも強いわけですし、日銀のいう基調的な部分までかなり強くなっている中でありますが、一方でCPIを下げるとか言ってる馬鹿が物価対策(なお特定品目の物価対策で財政を数兆円のオーダーで出したら一般物価は上がる模様)とか出しているという脳味噌の造りに欠陥があるんじゃないかという連携を行っているわけでして、もうなんなんでしょうねというところです。
しかしまあ何ですな、1月の展望レポートは「年度末に向けて下がる」で誤魔化す気なのかも知れませんけど、コアコアも基調的な物価も、おまけに今まで動いてなかった加重中央とか最頻値まで上がってきて、もはや言い逃れできない筈なんですけど、黒ちゃん仮面はフニャ子フニャ夫先生の如くライオン仮面が光線銃を食らったらオシシ仮面を出してくるというスキームで逃げ回っている(しかも露骨すぎて草も生えない)状況でございますので、やっぱりここは黒ちゃんに再任してもらって、オカメ仮面もそろそろ光線銃のようですから次は何を出すのかを楽しみに見て行きたいと思います(白目)。
しかしまあ笑ってしまうのですが、加重中央とか最頻値の上昇がここまで来た中で、10月くらいから繰り出している「粘着性のある品目の価格の上昇ガー」に関してはどういう話をするのかなーって(たぶん財とサービスの価格を分けてだしますよ)思うのであります。
例によって左から、上昇品目比率、下落品目比率、上昇品目比率−下落品目比率、でありんす。
Jan-21 46.7 44.6 2.1
Feb-21 49.0 42.7 6.3
Mar-21 51.0 41.0 10.0
Apr-21 50.2 41.8 8.4
May-21 51.1 41.4 9.8
Jun-21 50.6 42.0 8.6
Jul-21 51.9 41.0 10.9
Aug-21 56.1 36.2 19.9
Sep-21 57.1 35.1 22.0
Oct-21 58.4 34.1 24.3
Nov-21 59.2 33.3 25.9
Dec-21 58.8 34.3 24.5
Jan-22 61.5 31.0 30.5
Feb-22 64.0 28.9 35.1
Mar-22 63.2 29.7 33.5
Apr-22 68.8 24.9 43.9
May-22 69.2 24.5 44.6
Jun-22 71.3 22.2 49.0
Jul-22 73.2 20.7 52.5
Aug-22 72.6 21.5 51.1
Sep-22 74.9 18.6 56.3
Oct-22 78.9 14.6 64.4
いやースゴイスゴイ。上昇品目80%超えが見えてきたじゃないですか圧勝じゃないですか。なお、ワイの給料(以下の記載は内務省検閲によって削除されました)。
〇11月(事実上10月)FOMC議事要旨を例によって寝起き手抜き読み(市場の反応は見てない)
ニュースを一切確認していないので(なんならワールドカップサッカーの結果も今の時点では知らん)どういう反応を示したのか良く分からんのですが、先行きの利上げに関しては「ペースを落としながら着地点がどこかを探すステージに入った」というのは示されたと思うのですが、意見は両建てというかどっちもあるっぽいなあって感じですかねえ、決め打ちがしにくい書き方になっているような気がします(個人の感想です)けど、これは先行きの話に関しては意見が割と割れてて、そうは言っても結局出たとこ勝負じゃんなので意見分かれながらもどっちにも決め手がない、ということで微妙にフニャフニャしか感じ(個人の感想です)になったきがせんでもない。うーん難しい。
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20221102.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
November 1-2, 2022
A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors
of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors
on Tuesday, November 1, 2022, at 10:30 a.m. and continued on Wednesday,
November 2, 2022, at 9:00 a.m.1
例によって『Committee Policy Action』の手前から逆順読みしてみましたが、ゆうてさすがに逆順読みはアレなので今回は「今回の決定と今後の金融政策運営」のパートとなります『Participants'
Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の13パラ〜19パラを先に見ます。でもって例によって逆順読みしてたらその前の9パラと12パラでそれぞれ「これまでの金融政策の効果がラグをもって効いてきている件」と「ファイナンシャルスタビリティ」の話、という13パラ以降で出て来る話の論点となっている部分の現状アセスメントがあるので、時間が間に合えば9パラ12パラもネタにしますが間に合わなければ明日経済物価(ポイントは物価と労働市場)に関する説明部分も含めてネタにしましょうず、という計画を今立てました。
一応寝起き斜め読みによりますと、今回の『Participants' Views on Current
Conditions and the Economic Outlook』ですけど、こんな構成になっています。ご参考になれば幸いです(なおアタクシの知能に問題がある場合はスットコドッコイな見出しになっている可能性がありますのでよろしく)
1〜2パラ:現状判断の概況ですけど、これは基本的に声明文で示されているのと同じことが書かれます
3パラ:家計部門
4パラ:企業部門
5パラ:世界的な金融引き締めによる金融環境のタイト化
6パラ:労働市場
7〜8パラ:物価動向と期待インフレの動向
9パラ:これまでの金融政策が経済にどのようなラグを伴って効果をだしてきているかの考察
10〜11パラ:先行きの不確実要因とリスクの上下についてのアセスメント
12パラ:ファイナンシャルスタビリティ
ということで13パラに入ります。
・第13パラ:今回の決定についても「all participants」(メンバーだけではない)が75上げに賛成
『In their consideration of appropriate monetary policy actions at this
meeting, participants concurred that inflation remained well above the
Committee's longer-run goal of 2 percent and the recent data on inflation
provided very few signs that inflation pressures were abating. The economic
expansion had slowed significantly from last year's rapid pace, and recent
indicators pointed to modest growth in spending and production in the current
quarter.』
『Despite the slowdown in growth, the labor market remained extremely tight,
and nominal wage growth remained elevated. Against this backdrop, all participants
agreed that it was appropriate to raise the target range for the federal
funds rate 75 basis points at this meeting and to continue the process
of reducing the Federal Reserve's securities holdings, as described in
the Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet
that the Committee issued in May. 』
経済状況の話をしながら、結論の手前が「Despite the slowdown in growth, the
labor market remained extremely tight, and nominal wage growth remained
elevated.」ってなってて、結局は労働市場が強くて賃金がホイホイと上がっているとインフレ圧力がトマランチ会長になるから引き締めじゃあ、という話で今回もまたすべてのパーティシパントが賛成となっているので、投票権の無い地区連銀総裁も賛成した、ということを意味しますね。
『Participants observed that the policy rate hike at this meeting was another
step toward making the Committee's monetary policy stance sufficiently
restrictive to help ease supply and demand imbalances and to return inflation
to 2 percent over time.』
でもって今回の決定は「物価目標達成のために十分に必要な水準の金融引き締めへの新たな第一歩」って扱いになっている、ということですが、この伏線は後の方で回収されます。要は「適切な引き締め水準を探っていく」というのが今後のポイントという話になります。
・第14パラ:金融政策のタイト化とその間のコミュニケーションの効果
『In their discussion of the effects of monetary policy actions and communications
to date, participants concurred that the Committee had taken forceful steps
to moderate aggregate demand in order to bring it into better alignment
with aggregate supply.』
これまでの金融政策およびコミュニケーションの効果という話がここにも出てきていまして、これまでの政策によって需要をモデレートできましたなって話。
『Financial conditions had tightened significantly in response to the Committee's
policy actions, and their effects were clearly evident in the most interest
rate-sensitive sectors of the economy, including residential investment
and some components of business investment.』
引き締めによって金融環境がタイト化して金利感応度の高い住宅とかの需要が軟化した、というのも連銀高官から指摘が既に入っていますね。
『Several participants commented that monetary policy actions and communications
had helped keep longer-term inflation expectations well anchored-a situation
that would help facilitate the return of inflation to the Committee's longer-run
goal of 2 percent.』
数名の参加者は金融引き締め姿勢とコミュニケーションによってインフレ期待がアンカーされているという指摘
『Nevertheless, with realized inflation well above that goal and the labor
market still very tight, participants agreed that ongoing increases in
the target range for the federal funds rate would be appropriate and would
help keep longer-term inflation expectations well anchored.』
といは言え物価は極めて高いし労働市場は極めてタイトなので、今後もFF金利の引き上げを行うのが適切で、それによってインフレ期待のアンカーも可能になりますよという認識で参加者は同意したと。
『Participants noted that, with regard to both real economic activity and
inflation, it would take time for the full effects of monetary restraint
to be realized and that these lags complicated an assessment of the effects
of monetary policy.』
で、ノートしましたってのが金融政策効果が実体経済とインフレに効くのに時間が掛かるという話、で締めてますね。
・第15パラ:はいお待ちかね今後の金融政策の話が始まるよ〜と言っても最初の所は概ねパウエル会見などで言われた話
『In discussing potential policy actions at upcoming meetings, participants
reaffirmed their strong commitment to returning inflation to the Committee's
2 percent objective, and they continued to anticipate that ongoing increases
in the target range for the federal funds rate would be appropriate in
order to attain a sufficiently restrictive stance of policy to bring inflation
down over time.』
今後も利上げは必要で、それによって「a sufficiently restrictive stance of
policy to bring inflation down over time」とするのが必要だよということなのでまだ利上げ足り申さんでごわす、というのは順当に示されていますね。
『Many participants commented that there was significant uncertainty about
the ultimate level of the federal funds rate needed to achieve the Committee's
goals and that their assessment of that level would depend, in part, on
incoming data.』
といえどの水準が適切なのか、というのは色々と不確実性が無茶苦茶ありますわな、という話からの、
『Even so, various participants noted that, with inflation showing little
sign thus far of abating, and with supply and demand imbalances in the
economy persisting, their assessment of the ultimate level of the federal
funds rate that would be necessary to achieve the Committee's goals was
somewhat higher than they had previously expected.』
ここで「various participants」という謎表現の色々な参加者の意見として、不確実性云々はありますが、足元までの時点において、物価減速の兆しはあんまり見られないし、需給バランスは相変わらずだし、そういうのを勘案すると以前考えていた(=これは常識的に読めば9月SEPのドットチャートという意味ですよね)水準よりも幾分か高い水準が「十分に引き締め的な水準」になるんジャマイカ、という意見があったということで、この点についてはパウエル会見でも言われてましてあらあらあらって感じでしたよね。
・第17パラ:今後の利上げペースについてのはなし
『Participants mentioned a number of considerations that would likely influence
the pace of future increases in the target range for the federal funds
rate.』
今後の利上げペース検討の際に考慮することについての議論です。
『These considerations included the cumulative tightening of monetary policy
to date, the lags between monetary policy actions and the behavior of economic
activity and inflation, and economic and financial developments.』
ここで政策波及ラグの話がでました。
『A number of participants observed that, as monetary policy approached
a stance that was sufficiently restrictive to achieve the Committee's goals,
it would become appropriate to slow the pace of increase in the target
range for the federal funds rate. In addition, a substantial majority of
participants judged that a slowing in the pace of increase would likely
soon be appropriate. A slower pace in these circumstances would better
allow the Committee to assess progress toward its goals of maximum employment
and price stability. 』
ゴール地点が近づいてきたら利上げペース落とすのが適切、という話ですが、ペースを落として政策効果の様子を見ながら、って話をしていまして、まあ「ガンガン上げて物価がどどーんと下がったらガンガン下げる」みたいな過激派思想にはならず、日和見ちゃあ日和見ですが、チマチマ上げながら物価に効いてるかを確認していく作業をする、って感じなのではないしょうか(個人の感想です)。
『The uncertain lags and magnitudes associated with the effects of monetary
policy actions on economic activity and inflation were among the reasons
cited regarding why such an assessment was important.』
ラグがあるからバカバカ上げていくと気が付いたらやり過ぎになっちゃいますもんね、というお話っすね。
『A few participants commented that slowing the pace of increase could
reduce the risk of instability in the financial system. A few other participants
noted that, before slowing the pace of policy rate increases, it could
be advantageous to wait until the stance of policy was more clearly in
restrictive territory and there were more concrete signs that inflation
pressures were receding significantly.』
その他の意見として、ガリガリ利上げを継続するのは金融システムへの負荷が掛かるのでペースダウンはイイネって話をする人達と、(これはナンヤソラと思いますが)ペースを落とすことは「金融政策が十分に引き締め的であり、物価上昇圧力も顕著に下がってきている、という我々からのサインになる」という指摘があります。後者のはナンノコッチャでございますけどね。
・第18パラ:金融政策のステージが「十分な引き締め的スタンスの位置を探る時期」に来たとのご認識のようで
『With monetary policy approaching a sufficiently restrictive stance, participants
emphasized that the level to which the Committee ultimately raised the
target range for the federal funds rate, and the evolution of the policy
stance thereafter, had become more important considerations for achieving
the Committee's goals than the pace of further increases in the target
range. Participants agreed that communicating this distinction to the public
was important in order to reinforce the Committee's strong commitment to
returning inflation to the 2 percent objective.』
今後は「more important considerations for achieving the Committee's goals
than the pace of further increases」ってことで、利上げペースがどうのこうのよりも「十分に必要な引き締め的スタンスとなる金利水準はどこなのか」という議論が重要になるでしょう、というお話をしております。この辺り、タカタカ期待にはがっかりの香り(バンバン上げるぞーって話が無い)だし、ハトハト期待にもがっかりの香り(利下げの話は全然ない)って感じですかね。まあ利上げペースをチンタラとしながら引き締め水準を引っ張る時間帯が長くなるんとチャイマスノ(個人の感想です)。
・第19パラ:リスクマネジメント云々は物価上振れに警戒としながらも華麗にコウモリの両建て来ました
『Participants discussed a number of risk-management considerations related to the conduct of monetary policy.』
リスクマネジメントの考察とは?
『In light of the continuing broad-based and unacceptably high level of
inflation and upside risks to the inflation outlook, participants remarked
that purposefully moving to a more restrictive policy stance was consistent
with risk-management considerations.』
最初に来るのは「物価が高いしアップサイドリスクがあるでよ」の方のリスクでしたハト期待の人残念でした。
『Some participants observed that there had been an increase in the risk
that the cumulative policy restraint would exceed what was required to
bring inflation back to 2 percent.
『Several participants commented that continued rapid policy tightening
increased the risk of instability or dislocations in the financial system.
』
さっきのは「participants remarked」でこの2つは数名のparticipantsの指摘、という所に違いがあるのですが、この二つはオーバーキルのリスクと金融システムへの悪影響の話をしていて、タカタカでもない、というのをアピっている格好です。ただし人数の重みは若干違うのには要注意。
『There was wide agreement that heightened uncertainty regarding the outlooks
for both inflation and real activity underscored the importance of taking
into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with
which monetary policy affected economic activity and inflation, and economic
and financial developments.』
数名の意見、を二つ挟んでまた「There was wide agreement」なのですが、「金融政策の累積的な引き締め効果の実体経済や物価に現れる時間的波及ラグを考えて金融政策を運営しましょうね」って話を最後に入れて締めているので、結局はコウモリっぽい締め方になっていますなという感じで、これバイアス掛けて読むとどっちとも取れる書き方にしやがったな今回は、という感じです。ただまあタカタカ大爆発というのはさすがに抑制しているので、そういう意味ではトーンダウンちゃあトーンダウンではありますな。
ということで今朝はこれで勘弁。
2022/11/22
お題「SF連銀デーリー総裁は12月は利上げするんでしょうがその先は日和見洞ヶ峠モードのようですな」
今日って221122じゃん(だからどうした)。
〇西海岸の鉄砲玉先生が利上げの到達点よりもその先の話をしているのはどういう判じ物なのでしょうか
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-december-idJPL6N32H0EB?il=0
2022年11月22日5:40 午前
FRB、インフレ抑制なければ5%超まで利上げも=SF連銀総裁
デーリー総裁の昨晩のスピーチなんですが、読んでて結局金利上げサイクルのゴールがどこにあるのかさっぱり分からんという謎講演だったのですが、読みながら唸っているうちにこんな記事が出てきましたアリガタヤアリガタヤ。
『[ニューヨーク 21日 ロイター] - 米サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は21日、インフレが抑制されなければ連邦準備理事会(FRB)は政策金利を5%を超える水準まで引き上げる可能性があるとの見方を示した。ただ自身はこうした結果になるとは予想していないとした。』(上記URL先より、以下同様)
なのはいいんですけど・・・・・・・・・
『デイリー総裁は記者団に対し、自身はタカ派的に傾く傾向があるとした上で、現在3.75─4.00%のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標が来年に5%に達した時点でFRBは利上げを一旦停止する公算が大きいが、インフレが緩和しなければ、これよりも高い水準に引き上げられる可能性もあると述べた。』
何ですかこの両建て。全文引用になっちゃうので次の1行飛ばしてその後も、
『12月の連邦公開市場委員会(FOMC)については、0.75%ポイントの利上げが必要になるのか、これ以外の幅での金利変更が必要になるのかは分からないとし、「いかなる選択肢も除外するのは時期尚早」と述べた。』
ちょwwwwwwおまwwwwwwwwww
という驚異の両建てキタコレなのですが、実は今回の講演って「その先の話」の方がメインでして、利上げの到達点については、講演テキストでは(アドリブとかその他のセッションでの話は知らんけど)今次利上げのゴールの話は物凄くヌエのような説明であっさり味でした。
SF連銀のトップページからいつものデイリー姐さんのサムネを見ると
https://www.frbsf.org/our-district/events/mary-c-daly-orange-county-business-council-keynote-2022/
Resolute and Mindful: The Path to Price Stability
Mary C. Daly’s Keynote at the Orange County Business Council
オレンジカウンティ、という文字列を見ると債券村老人会が何か言いたそうになりますが割愛しまして、最初ビデオがあるのかと思ったら50分以上もあるので絶望したんですがテキストが無事にありました。
(URLがクソ長いので途中のところまででハイパーリンク貼ってます)
https://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/mary-c-daly/2022/november/resolute-and-mindful-the-path-to-price-stability/
Resolute and Mindful: The Path to Price Stability
Mary C. Daly, President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of San Francisco
Speech to Orange County Business Council
Irvine, California
November 21, 2022
10:00 AM PST
最初の『From Low to High Inflation』という小見出しは利上げ開始前の話をしているので全部すっ飛ばしまして、『Policy
Rebalancing』という小見出しの途中から参りますけど。
・金融環境がタイト化したながれについて
上記小見出しも最初の方は利上げ着手する頃の話をああだこうだとしておりまして、でもって利上げしたらこのように金融環境がタイト化しました、ってのが文章の途中に挟み込まれているグラフの『Figure
1 Effective federal funds rate, 30-year mortgage rate, and GSFCI』って辺りからになりますので、上記小見出しの3パラグラフめから引用致します。
『This and other forward guidance provided throughout that fall had an
immediate impact. Almost overnight, financial conditions tightened. Market
participants began pricing in expected future rate hikes, and businesses
and households started readying themselves for a new interest rate landscape,
pulling forward real estate purchases, restructuring debt obligations,
and locking in longer-term fixed-rate loans. In other words, before we
ever raised the federal funds rate, tighter financial conditions were already
working their way through the system (Figure 1). Indeed, by the time of
the first official rate hike of 25 basis points in March 2022, mortgage
interest rates had risen three-quarters of a percentage point and broader
financial conditions had tightened almost a full percentage point.』
というのの次に図表1が貼られていて、30年固定金利方式のモーゲージ金利、実効FF金利、ゴールドマンサックス謹製のファイナンシャルコンディション指数ってのが並んでまして、これがタイト化しましたよという話ですが、
『The responsiveness of financial conditions to our communications was
notable and helpful. It gave us a head start on adjusting policy and mitigated
the costs of an abrupt and unexpected change to the policy rate.』
最初は「利上げ開始するぞー」って頃のタイト化の話をして、
『But of course, the job was far from done. Inflation was still on a troubling
upward climb, and businesses and families were feeling the pain. Left untamed,
inflation can also distort investment decisions, exacerbate economic inequalities,
and reduce confidence in the Fed’s ability to achieve its goals, all of
which can bridle longer run growth.8 The pain of so many Americans coupled
with the potential for long-term damage to the economy prompted the Fed
to take aggressive action.』
インフレの高進が進んでしまったので更に急速な利上げが必要と判断しましたので、
『We began raising rates more quickly-expeditiously-moving the fed funds
rate up in 75 basis point increments. This allowed us to swiftly withdraw
accommodation and bring policy more in line with prevailing economic conditions.
As of our last meeting just a few weeks ago, the target range of the federal
funds rate stands at 3.75 to 4 percent, modestly restrictive relative to
the neutral rate of interest. And we have signaled that there is more work
to do.』
毎回75bpというとっても早い勢いの利上げをして、やっと中立金利に対して「modestly
restrictive」な水準になりましたよ、という評価をしております。で今までのがまあマクラなのでこの次からネタにしても良かったのですが何ぼ何でもすっ飛ばし過ぎかと思って材料にしました。現世利益パートはここからですサーセン。
・景気をぶち殺してでもインフレ抑制大正義とは言わない辺りに洞ヶ峠の香りを感じるのですけど
『This resolve has some people worried. They are concerned that resolute
means unwilling to stop until the economy breaks or inflation hits 2 percent.』
『But that is not how I think about policy, nor is it the path communicated
by the FOMC in its last statement.9 Resolute does not mean heedless. This
is especially important as we move into the next-and in many ways more
difficult-phase of policy tightening.』
でもってこれがさっきの小見出しの最後の所になるのですが、この断固たる措置によって景気が死ぬんでネーノというご懸念を持つ無味もあるようすが、ワイもFOMCも別に何も考えずに断固たる引き締め大突撃をしているわけではありません、と来まして、「This
is especially important as we move into the next-and in many ways more
difficult-phase of policy tightening.」と言ってるんですから、この次の利上げの辺りからは次のフェーズに入るでしょう、って話をしています、って読める次第。
そして次の小見出し『Finding Sufficiently Restrictive』に向かう。
「Finding Sufficiently Restrictive」って時点で「十分に引き締め的な水準に来たら今回の利上げ局面のゴールだよ」って言ってるわけで、先般にネタにしましたSF連銀のエコノミックレター(今月の頭に出たやつ)でも「FF金利が示唆する以上に金融政策は引き締め的(主な理由はQTやってるから)」っての出してきてますし、まあ基本的にこの辺りからデーリーさんが日和って来たのか、鉄砲玉だけに実はFEDのセントラルビュー(じゃあウォーラーの講演ネタ先にやれと言われそうですが)がそっちに寄っててまずは斥候隊を送っているのかが微妙に謎ではありますが、まあそういう事だぞって感じのようには見受けられます(個人の感想です)。
『As we work to bring policy to a sufficiently restrictive stance-the level
required to bring inflation down and restore price stability-we will need
to be mindful. Adjusting too little will leave inflation too high. Adjusting
too much could lead to an unnecessarily painful downturn.』
適性な引き締め水準に政策を持って行くのは大変に良く考えないと行けません、なぜなら引き締め足りないとインフレがtoo
highになりますし、やり過ぎると経済が不必要な落ち込みunnecessarily painful
downturnをしますよ、ってことでして、この辺り「何があってもインフレ放置はダメで、総ての事は不必要な高インフレを成敗してからの事です」とぶっこんでいるFED公式の話から見るとトーンダウンの香りは漂ってくると思う訳ですよ。まあデーリーここもとそんな感じはありますが、今回の方がよりその辺りきっちりと説明している感はありますな。
『So, what specifically do we need to be mindful of? Many things, of course.
But in our November FOMC statement, we mention three in particular: the
cumulative tightening in place, the lags in monetary policy, and the evolution
of the data.』
政策の累積的な効果、政策の波及ラグ、経済指標の進展、がポイントだよ(11月声明文にもあった奴ね)。
・政策の累積的効果についての評価
『Let’s start with cumulative tightening.』
ってなことでアセスメントのコーナーが始まる。
『Historically, we’ve used progress on the federal funds rate and where
it stands relative to its neutral value as a gauge for policy restrictiveness.
But in today’s world, that is only part of the picture. The funds rate
does not capture the impact of the other tools in our tool kit, including
the reduced asset holdings associated with balance sheet roll-off and the
forward guidance we’ve provided about the future path of policy. It also
misses the fact that central banks across the globe are tightening policy
as well, likely amplifying the effects of our own rate hikes.』
FF金利水準以外の政策ツールの効果も考えながら、って話でAPPの件とか来るのってまさに今月頭に出てたSF連銀のエコノミックレター話じゃんとか思いながら読み進める。
『A more comprehensive way to gauge the actual level of tightening is to
look at financial market conditions.10 Several researchers have done this
and found that the level of financial tightening in the economy is much
higher than what the funds rate tells us. As the figure shows, this has
been true for a while now (Figure 2). In fact today, while the funds rate
is between 3.75 and 4 percent, financial markets are acting like it is
around 6 percent.』
さっきのロイターさんの記事ですが、アップデート前の記事の方でこの部分をネタにしていましたね。図表2ってのが、『Figure
2 Effective federal funds rate and proxy rate』ってことで何だよそのproxy
rateって感じですけど、まあそれが6%なんだそうです。何か怪しい感じはしますし、だいたいからして金融市場の見通しが「FEDはもう利上げしないわな」ってなって、「この先はもう横ばいか利下げのどっちかだよね」ってなったらそのプロキシレートとやらって実際のFFと同じか下手したらそれより下になりゃーせんかと思うのですけどね。
しかしながら・・・・・・・・・・
・これは言ってることは尤もらしいが金融市場に振り回される結果になりそうでヤバみしか感じない一節
『As we make decisions about further rate adjustments, it will be important
to remain conscious of this gap between the federal funds rate and the
tightening in financial markets. Ignoring it raises the chances of tightening
too much.』
ちょwwwww
「金融市場のタイトニング状況とFF金利のギャップについて考えながら先行きの金融政策運営をしないといけなくて、それを無視してしまうとタイトニングのやり過ぎになる」というのは理屈としては一理くらいはあるのですが、そもそも論として金融市場は先行きを含めて価格形成するんだから、目先金融市場がタイトだから日和り、それを見た金融市場がゴルディロックスヒャッハーとか言い出すと今度は引き締め姿勢を強化し、というのをやってると、まさしくアラン・ブラインダーが喝破した「自分の尾を追う犬」になってしまうんですが大丈夫かよという気がだいぶするので、アタクシとしては今回のデーリーさんが鉄砲玉ではなくて独自路線(デーリーさんの場合は鉄砲玉の時と独自路線の時があるのでそこは判断ムツカシイ所だったりする)なのかもしれません。
・と思ったらさすがに中和されているのですけど
さて気を取り直して次に行きますと、
『Of course, we also have to account for the fact that, while financial
markets react quickly to policy changes, the real economy takes longer
to adjust.』
というのを見てちょっとホッとはするのですが、金融市場は政策の変化に即座に反応する、という事を忘れてはいけません、リアルな経済はアジャストにもっと時間が掛かります、とは言ってるので、そこまでのスカポンタンではないようですが(当たり前か)、やっぱり先に上記の部分が出てしまうのがちょっとねえとは思います。
・政策ラグに関しては物価の落ち着きが見られるようになってから数四半期は様子見が必要なんでネーノってことかしら
『Overlooking this lag can make us think we have further to go when, in
reality, we just have to wait for earlier actions to work their way through
the economy. There is a large literature on the lags in monetary policy.
And while there is no clear consensus on exactly how long they are, there
is broad agreement that it’s not immediate and likely takes at least several
quarters.11』
「we have further to go when, in reality, we just have to wait for earlier
actions to work their way through the economy.」ということで早期の政策アクション(この場合は中立姿勢への政策変化)に持って行くのは物価の落ち着きをみたらすぐではなくて、ある程度待つ必要があるよ、ときて、どの程度のラグとかについてのコンセンサスは無いけど、少なくとも数四半期のラグはあるんでネーノって話をしてますな。
『This is consistent with what we have seen in the data.』
という話はデータの評価にも繋がるということで。まあ単月データでは反応はせんわなというのは明らかですけど、データの改善も多少改善したからと言ってホイホイと引き締めを緩めるという訳ではないって話はしているのよね。
『The Fed started tightening policy close to a year ago. Interest-sensitive
sectors like housing started to cool very quickly. As mortgage rates rose,
home sales, construction activity, and the pace of house price gains slowed.
Labor markets remain solid but are showing early signs of cooling. Job
openings are down about 10 percent from their March high and job growth
is slowing from its rapid pace last year. And although one month of data
does not a victory make, the latest inflation report had some encouraging
numbers, including a long awaited decline in goods price inflation.』
『Looking ahead, I will be watching for further calming in these areas,
as well as signs that pandemic-related imbalances between supply and demand
are continuing to subside. I will also be in continuous dialogue with business
leaders, workers, and community members in my District. Policy decisions
also require that we look forward. Real-time conversations yield insights
about how people are faring and how the economy is changing before they
ever show up in the published data.』
うだうだと話をしていますが、ここまでのデータの改善と先行きの見通しで、まあここからも徐々に改善していくでしょうってお話ですね。
『As we navigate back to price stability, we will need to pay attention
to all of these things and adjust policy accordingly. And because the economy
is dynamic, we will need to do this on an ongoing basis. We have to constantly
calibrate our stance of policy to meet evolving conditions.』
という状況をよく見ながら適切に調整しますよ、って話をしているので、そこまで何ちゅうかこのタカタカインフレ退治大正義モードのトーンじゃないよねってのが読み取れますが、ここまで利上げの到達点の話無し、というのも中々アレでございまして、最後に数行だけある部分でやっとその話が出ます。
・断固として実施するけど注意深く実施するんですよという驚異の両建てで話が締まる
『A Job Fully Done』って小見出しで、小見出しだけ見ると利上げ打ち止めかよとビビりますがさすがにそうではありません。
『While resolute and mindful are not in conflict, there is a tension. And that’s what we want in policymaking.』
講演のお題にもなってましたが「断固として注意深く」政策をするというテンションのコンフリクトはありません、とか言ってるけどどう見ても驚異の両建てです本当にありがとうございました。
『We want to go far enough that we get the job done. That’s the resolute
part. But not so far that we overdo it. And that’s the mindful part.』
まだ利上げはやりますよ、ということで「We want to go far enough that we
get the job done.」と仰せなのですけど、返す刀で「But not so far that we
overdo it」という両建てキタコレである。
『So, we will march unwaveringly toward our goals. Resolute and mindful, until the job is fully done.
Thank you.』
というので終わってて、最後の部分は結局12月の利上げをするというのは把握したが、その先に関してはコウモリもいいとこの両建て攻撃で終わっている、ということでして、うーんこのSF連銀の日和見洞ヶ峠・・・・・・という感じはしましたです。はい。
2022/11/21
お題「10月全国CPIがどこをどう見ても言い逃れが出来ない強さですが/米国FED高官発言を今日も拾っておく」
安倍ちゃんの後始末ではない辞任ですね!!!!!
https://jp.reuters.com/article/japan-politics-idJPKBN2SA04U
2022年11月20日6:48 午後
寺田総務相が辞任、岸田首相「任命責任重く受け止める」
そしてこの7並びェ・・・・・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221120/k10013897711000.html
東京都 新型コロナ 7人死亡7777人感染確認 16日連続前週上回る
2022年11月20日 16時15分
全然ラッキーじゃない7並びというのは初めて見たわorzorz
〇全国CPIがまた上振れているんだが
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
2020年基準 消費者物価指数 全国 2022年(令和4年)10月分(2022年11月18日公表)
≪ポイント≫
(1) 総合指数は2020年を100として103.7
前年同月比は3.7%の上昇
(2) 生鮮食品を除く総合指数は103.4
前年同月比は3.6%の上昇
(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は101.7
前年同月比は2.5%の上昇
詳しくはこちら。
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
◎ 概 況
(1) 総合指数は2020年を100として103.7
前年同月比は3.7%の上昇 前月比(季節調整値)は0.6%の上昇
(2) 生鮮食品を除く総合指数は103.4
前年同月比は3.6%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇
(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は101.7
前年同月比は2.5%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇
ということで、10月は携帯要因があったのでアレですけど、季節調整済みの前月比もがっつりと加速しておられまして、どっからどう見ても日銀ちゃんとしては「苦節10年、ようやく物価目標の達成が視野に入って参りました。これも粘り強く量的・質的金融緩和政策を継続したことによるものでる」って威張って勝ち逃げすれば良いのに何やってるんだか。
まあしかし笑えるのはこのコアコアでして、
『(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は101.7
前年同月比は2.5%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇』
ここで4月展望レポートを出した時の総裁記者会見でのやりとりを確認してみましょう。今年の4月末ですのでほんの7カ月前ですね。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220502a.pdf
2022年4月28日黒田総裁記者会見要旨より。
要旨の6ページと7ページになります。
『(問) 二点お願いします。(途中割愛)二点目ですが、そうした長期的には望ましい形での物価上昇で、中長期的な予想インフレも高まっていくというのが展望レポートの見通しだと思うのですけれども、2024
年度、仮に今想定しているように、基調的にみて 1.5%まで物価が上昇する姿になる頃には、今のようなコストプッシュのインフレではないので、今の緩和的な金融政策、イールドカーブ・コントロールの修正を議論する余地が生まれるのでしょうか。』
『(答) (前半割愛)二点目はそれに関連するわけですが、エネルギー価格は大きく変動していますので、それを除いたところでみた趨勢という意味では、今回お示しした生鮮食品・エネルギーを除いた消費者物価指数で、2022
年度は+0.9%、2023年度が+1.2%、2024 年度が+1.5%ということで、確かに基調としての消費者物価指数が緩やかに上昇していくという見通しであることは事実です。けれども、1.5%でも
2%にはまだ届いていませんし、除く生鮮食品の物価上昇率で言いますと、2024
年度でも 1.1%という見通しであり、今のところ、こういう見通しの通りであれば、金融緩和の出口を早急に探るということにはなっていないと思います。そういう意味では、粘り強く金融緩和政策を続けていく必要があると考えています。』(この部分のみ直上URL先2022年4月28日総裁会見より)
コアコアが行かないから政策修正はしません。という話を4月末の時点で言ってたのに、というのはいつもの悪態。
・・・・・・それはそれとしまして、今回の全国CPIって市場の事前予想よりも少々強めに出ていた筈でして、アタクシはエコノミストじゃないから詳しい分析とかする能が無いのですけど、ちゃんとしたエコノミストに聞いてみると(変な主張のある人は統計の解釈するときに色が入るので聞く人を間違えると指標の勉強するつもりが電波浴になる場合があるのでマジで注意した方が良いですよどこの誰が電波浴とかは申しませんけど)やはりエコノミストの多くの人が考えている以上に価格上昇が広範囲になっていて、どれが大きなファクターとかいうよりも全体的に強いって状況のようですな。
まあこれってどっからどう見ても「物価上昇の広がりが増している」ということで基調的な強さを示しておる訳でありまして、普通に出口政策に着手すべきタイミングではないか、と別にポジトーとか関係なく思う次第で、何でここで黒ちゃんの意地と面目の為に出口着手を躊躇するのか分からん、と言いたいのですが、自分たちが広げ捲った風呂敷を畳むときの惨劇をみたくない、ってそれだけの事でしょ黒田さん、と申し上げたいところでありますな。
ということで、事実から追い詰められる日銀なのですが、ここで幸か不幸か岸田さん閣僚辞任祭り(で色々と言われますがよく考えたら安倍内閣(最初の方じゃない)の時はもっと凄いことでも辞任しなかったんですからこれ改善は改善なのよね、ゲロとゴミ位の差しかないけど)なので、日銀をどないかせんといかんとかそういう話には死んでもならなさそうなので、まあこのまますっとぼけ続けるんでしょうね。
〇例によって例の如く米国であるが
まあ日本の場合はポンコツ審議委員(特にT1にはガッカリだが)がポンコツなだけにつまらんのだが、FEDは金曜にネタにした変態仮面を始めとしてフリーダムで実に楽しい。いやまあ日本でも置物とかジンバブエというフリーダムが居たが、あれは低次元さでのフリーダムですから意味は無い。
・変態仮面の例の図表のもう一つの重要な点は「FEDは思いっきり利上げ着手が遅れた」でもある(金曜の補足)
金曜日にネタにして変態仮面の講演、やはり5%−7%というスペシフィック(無茶苦茶広いレンジですが)な数字を出したというのにインパクトがあって、変態仮面なんだから変態クオリティの外れ値だと思って読むのがお作法としては適切、と思うのですが、金曜は結構話題をさらっておりましたな。なんか知らんけど変態仮面って見せ方がお上手(変態仮面の見せ方とか放送禁止状態ですねすいませんすいません)だなあと毎度その点は感心しますし、なんだかんだいってこのおっちゃんも長くセントルイス連銀総裁やってるけど、こういうの出すタイミングとかも良く考えてるよな、って見せ方とタイミングが兎に角上手ですわ。
というのは兎も角として、金曜日に読者の皆様数名様から指摘いただいて、全くその通りだと思ったので追記がてらなんですけど例の5%−7%の図表があるじゃないですか。
https://www.stlouisfed.org/-/media/project/frbstl/stlouisfed/files/pdfs/bullard/remarks/2022/nov/bullard-louisville-17-nov-2022.pdf
Getting into the Zone
Regional Economic Development Update
Greater Louisville Inc.
Nov. 17, 2022
Louisville, Ky
例の図表は上記URL先の紙芝居の6枚目(表紙含む)の『The sufficiently
restrictive zone』になるのですけれども、変態仮面の説明(らしきものとしてセントルイス連銀が出してたサマリー)ではそっちの話が無かったので、寝起きでネタにしながら結構オモロイじゃんと読んでたあたくし、完全に見落としておったのがあるんです。
それはですねこの図表のもう一つ(というかもしかしたらそっちの方が重要かも知れん)のポイントなんですけど、
「FEDは遅くとも昨年の夏には利上げに着手すべきであった」
というのが実はこの図表が示すところの重要なインプリケーションでして、緩和的な推計(generous
assumption)であっても21年の(図表に補助目盛があんまりついてないので目の子で読むと)9月あたり、緩和的ではない推計(less
generous assumption)で見ると2021年の4月辺りには利上げを開始しておくべきであった、という図表になっている訳でして、つまりはFEDはビハインド・ザ・カーブをしているんだから、そらがっつりと引き締めをしないと行けませんよという話になる、ちゅうことでありました。
確かに、説明文抜きにして図表みたら今の金利云々よりもリフトオフのタイミングのずれの方に先に目が行きますよね、と思う訳でして、変態おじさんブラード仮面の講演って毎度サマリー読んで図表を後から見るという感じで読む(その方が速読できるから)のですが、落ち着いて図表を見てから文章を読むほうが図表のインプリケーションとして自分が思う事と、プレゼンターのポイントの差異を感じたりしながら読めるのでどう見ても有効だよなーって改めて自省することしきりでございました。
という補足でした。
・アトランタ連銀ボスティック総裁は「あと75−100の利上げをすれば打ち止め」のようです。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-bostic-idJPKBN2SA02Y
2022年11月20日3:29 午後
米アトランタ連銀総裁、12月FOMCで大幅利上げ「脱却」の用意
題名だけ見るとハトかと思うのですが、上記記事にもありますように75−100は利上げするようですし、直ぐに引き締めスタンスを引っ込める訳ではありません。
講演はこちら。
https://www.atlantafed.org/news/speeches/2022/11/19/bostic-from-academia-to-the-fomc
From Academia to the FOMC: The Journey of One Fed President
Raphael Bostic
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta
Southern Economic Association Annual Meeting, Distinguished Guest Lecture
Fort Lauderdale, Florida
November 19, 2022, 1:45 p.m. (ET)
アトランタ連銀の講演原稿には最初に『Key Points』ってのがある。
『・On November 19, Atlanta Fed president Raphael Bostic delivers the Distinguished
Guest Lecture at the 92nd annual meeting of the Southern Economic Association.』
『・Bostic shares his views on today's extremely challenging economic and
monetary policy environment. He also describes how he moved from academia
to policymaking.』
これは今回こんな講演やりましたよという話なのでマクラ。
『・Bostic believes that 75 to 100 basis points of additional tightening
will be warranted, and he would be comfortable starting the move away from
75-basis-point increases at the next Federal Open Market Committee meeting.』
ロイターさんの記事でもリファーされていました。
『・He warns against a stop-and-go approach, with abrupt shifts, before
inflation is firmly on a trajectory back to the longer run target of 2
percent as measured by the Personal Consumption Expenditures price index,』
この「a stop-and-go approach」というのが一瞬「様子見ながら利上げするのはイクナイ」って言ってるのかと思ってしまうのですが、これは講演本文の『Staying
the policy course』の7パラグラフ目に説明があるんですが、『I am in no way
suggesting that we reverse course at that point and loosen policy.』と言ってまして、打ち止めレートに達したあとに、物価上昇率がすこし改善したからと言ってそうホイホイと引き締めスタンスを緩める訳ではありません、って話です。
むしろ打ち止めレートがそこまで高くない(FEDの中心的な今時点でのビューと比べれば低いと思う)分だけ引き締め期間が長くなると思うのですが、同じく先ほどの8パラグラフ目と9パラグラフ目にこんな説明があるんですよね。
『In hindsight, in the 1970s, the Fed reacted too quickly to changes in
the real economy, such as rising unemployment. Policy reversals never allowed
inflation to fully recede to the 1 to 3 percent range that was the norm
after the Korean War. Hence, instead of fading from the American psyche,
inflation remained an ever-present concern. Business leaders and workers
anticipated higher future inflation rates as they set prices and bargained
for wages. In other words, inflation expectations became unanchored. Consequently,
elevated inflation itself took root, and the Volcker Fed ripped it out
of the economy only after a pair of painful recessions in the early 1980s.
Failure to promptly restore price stability led to worse suffering later.』
『I take this lesson from the Great Inflation to heart. I am firmly committed
to the fight against inflation and will remain purposeful and resolute
until the job is done.』
とありまして、金融引き締めをする中でインフレが十分に落ち着かないうち(当時のノルムは1−3%であるべきだった)に経済指標(この時は失業率)の悪化に反応して引き締めスタンスを緩めてしまう事によって、将来に渡ってインフレリスクを経済に残すことになり、グレートインフレーションからのボルカーショックに繋がった、ってな話をしていますので、ババーンと利上げして押さえたらジャジャーンと中立に戻せば良いじゃない、というアプローチの対極にある、ということではなかろうかとは思います。まあ市場は「あと75−100」の方に反応しそうですけど。
キーポイントの残りはキャリアパスとかの話しですので並べるだけ並べます。
『・Bostic also discusses the path he took to become a central banker,
noting that his grounding in arenas that are at the heart of economic mobility
and resilience informed his thinking about how critical it is in advancing
the macroeconomy.』
『・Bostic says that part of the quest to make sound economic research
useful is grounding it in real, lived experience, so the field of economics
needs people who have lived the lives of those for whom the economy is
not working.』
『・Bostic is proud to be associated with the Fed System's Federal Reserve
Education Fellows Program, which is training teachers at the fifth through
eighth grade levels in economics and monetary policy to reach kids early
in their lives to give them positive reinforcement that economics is important,
interesting, and something they can be good at.』
・一方で水ぶっかけに回るのは貫禄のボストン連銀でした
ローゼングレンの跡目もきっちりぶっこんできますな
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-collins-cnbc-idJPKBN2S81J2
2022年11月19日1:27 午前
FRB、0.75%利上げなお選択肢=ボストン連銀総裁
『[18日 ロイター] - 米ボストン地区連銀のコリンズ総裁は18日、物価上昇圧力が弱まっている証拠はほとんどなく、インフレ抑制に一段と取り組む必要があるとした上で、0.75%ポイントの利上げがなお検討されていると述べた。』(上記URL先より)
CNBCの場合たぶんフルテキスト(というか一問一答文字起こし)がCNBCのページに転がっていると思うのですが、ここで今朝は時間切れなので勘弁してつかあさいという事で。
2022/11/18
お題「変態仮面先生、テイラールールで適正政策金利水準のバンドを示すの巻」
結局こういう事になったというのにどっかの国と来たら・・・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221118/k10013895461000.html
英スナク政権 財政再建計画を発表 大幅増税と歳出削減が柱
2022年11月18日 5時16分
〇テイラールールネタにホイホイと釣られて予定を変更してブラード講演ネタを投下します
クソワロタ
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-bullard-idJPL6N32D0B5
2022年11月17日11:35 午後
FRB、ハト派的仮定でも追加利上げ必要=セントルイス連銀総裁
『[ワシントン 17日 ロイター] - ブラード米セントルイス地区連銀総裁は17日、金融政策について「寛大な」分析の下でも、連邦準備理事会(FRB)は少なくともおそらく合計1%ポイントの追加利上げを実施する必要があるとし、これまでの利上げは「観測されるインフレに対して限られた効果しかない」と主張した。』(上記URL先より)
ということでいつものFOMC Speakを見るとセントルイス連銀謹製だけのことはあって早速変態仮面のネタは更新されておりますな。
https://www.stlouisfed.org/fomcspeak
https://www.stlouisfed.org/from-the-president/speeches-and-presentations/2022/getting-into-the-zone-louisville
“Getting into the Zone” (Presented in Louisville, Ky.)
November 17, 2022
Presentation (PDF) | Press Release
Presentationが紙芝居のPDFでしてPress Releaseがざっくり説明、でもって上述のロイターさんの記事で書かれてた(引用割愛しましたが)話を上記URL先のところで書いてあるのですが、セントルイス連銀の場合はPress
Releaseを見るのが一番便利です。
まあいずれにしましてもブラードおじちゃん貫禄の水ぶっかけ攻撃ですけど、そらまあ「利上げペースが鈍化する」で債券買いたくなるのはわかるけど、何も3%半ばまで買わなくてもエエヤロと思いますし、市場金利がバンバン下がると引き締め効果を減殺するんだからそりゃ水ぶっかけがくるよなというお話だが、わざわざ変態仮面が執行部の鉄砲玉になるとは珍しい、って感じですな。
いやまあ多分変態仮面は執行部の鉄砲玉を買って出たわけではなくて、米国長期金利が下がっているので水ぶっかけ発言でこれは目立ててラッキーとか思いながら講演してたんじゃないか(良くも悪くも目立ちたがりなのは間違いないと思うのよねこの変態仮面は)という感じですな。
という無駄口は兎も角。
https://www.stlouisfed.org/news-releases/2022/11/17/bullard-presents-getting-into-the-zone
St. Louis Fed’s Bullard Presents “Getting into the Zone”
November 17, 2022
『LOUISVILLE, Ky. - Federal Reserve Bank of St. Louis President James Bullard
presented “Getting into the Zone” (PDF) on Thursday at an event hosted
by Greater Louisville Inc.』
どうでもよいがこのイベントの主催者名「Greater Louisville Inc」ってなんかパワーワードですね。
『Inflation remains unacceptably high, Bullard said, well in excess of
the Federal Open Market Committee’s target of 2%. During 2022, the FOMC
has been moving toward policy settings that will put meaningful downward
pressure on inflation to return it to the target, he said.』
で???
『“This approach has included significant increases in the policy rate
as well as a program of balance sheet reduction,” Bullard said. “Thus
far, the change in the monetary policy stance appears to have had only
limited effects on observed inflation, but market pricing suggests disinflation
is expected in 2023.”』
ということで、「まだ引き締めスタンスによる物価抑制効果があんまり出ていないというのに、市場のアホ共は来年にはディスインフレーションになるとか言って価格形成をしてやがるんだが」とご機嫌斜め。
『Bullard noted that the most recent FOMC statement refers to ongoing increases
in the policy rate to reach a level that is “sufficiently restrictive.”
He then gave his views on the question of what would be a sufficiently
restrictive policy rate for the current macroeconomic environment.』
“sufficiently restrictive.”に金利を持って行くべきだと変態仮面は仰せになっておりますな。まあここは恐らく他のパーティシパントには賛成しない人もいるでしょ、とは思いますし、昨日も申しあげたようにECBとFEDの風潮としてはやはりオーバーキル怖いでごわすって感じのコメントが多くなっているようには見えますので、一々反応する米国債券市場も何なんとは思いますが、ゆうて10年の金利水準が3.6%台とかだったからその前の金利低下の方も何なのよって感じではあるんですけど。
『“My approach to this question is based on ‘generous’ assumptions-assumptions
that tend to favor a more dovish policy over a more hawkish one,” he said.
“Even under these generous assumptions, the policy rate is not yet in
a zone that may be considered sufficiently restrictive.”』
ということでですね、まあ変態仮面が水ぶっかけ、というのはそれ自体は平常運転の一環なのですが、今回は「利上げの到達点をどう計測するか」という点でオモシロ理論を出してきた感があるので、まあそれもネタにという感じです。
紙芝居なんですけどね
https://www.stlouisfed.org/-/media/project/frbstl/stlouisfed/files/pdfs/bullard/remarks/2022/nov/bullard-louisville-17-nov-2022.pdf
こちらの5枚目の紙芝居
The argument in one chart
というのと6枚目の紙芝居
The sufficiently restrictive zone
の辺りが今回おっちゃんの出してきた数字の話でして、先ほどのロイターさんの記事にもありますように、6枚目の紙芝居によりますと、テイラールールをgenerous
assumption(ってどういう訳語になるんだよという感じですが、出来上がりの図表とこの先の説明を読みますと、要は「緩和的バイアスを掛けて計算しました」って意味のようです)およびless
generous assumptionで適用して計算した「推奨される政策金利水準」が足もと(ただしテイラールールなので計算の為に必要なマクロ経済データが足元の数字取れないから数か月前の数字になってしまいますが)で5%(generous
assumptionの時)〜7%ちょい(less generous assumption)の間だよ、って図表を出してきているんですよね。まあ上記のURL先の紙芝居を見て下さいませ。
パウエルさんって基本的にこういう「テイラールールでどうこう」みたいなのは信用しない人とお見受けしますので、この変態仮面の出しているものが今後FEDの議論の主流になるには相当のハードルがあるとは思うのですが、何せずーっとここもとの利上げ到達点金利の議論って「出たとこ勝負でデータディペンデントですわガハハ」ってのしか無いので、まあこういうのは早速何とかストとかも食いつくかもしれませんね、とは思いますし、この手の何とかスト分析が出てきたら、元ネタはこれですよってのは頭の片隅に入れておいて損はないと思います(個人の感想です)。
ただまあ何ですな、長年にわたって変態仮面が面白理論を繰り出してくるのを見てますと、だいたいこのおっちゃん定量的な話は何か謎なものが出て来ることが多くて、定性的な話(スマッシュヒットは複数均衡論でしたな、と今でも思う)になると冴えわたるってのがあるので、まあこういう定量の話を変態仮面がしている時ははあそうですかと言って聞いておけばよい、というのは念押ししておきますね。
さてそれを踏まえて変態理論の説明コーナーになるのですが(紙芝居を並行して読むと分かり良いとは思いますです、というかブラードおっちゃんの講演についてのセントルイス連銀の出し方って毎回このパターンになるので両方に目を泳がせながら読むのが本来の読み方になります。
スライドの7枚目のお題が『This talk』ってなっていまして、ここだけプレゼン紙芝居から引用しますけど、
『・The remainder of this talk will give the details behind this chart:
o A brief overview of monetary policy rules
o What is the value of the short-term real interest rate? (Answer: low)
o How large is the inflation gap? (Answer: large)
o How large is the output gap? (Answer: small)
o Putting it all together
o Caveats and related issues』
となっていまして、アンサーってのにあるように、現状は「短期の実質金利は低い」「望ましいインフレとのギャップは大きい」「生産ギャップが小さい」と来ておりまして、まあ結論は利上げしやがれコノヤローという話になる訳ですな。
プレスリリースの方に戻りまして、『Monetary Policy Rules』って小見出し。
『Bullard used Taylor-type monetary policy rules to obtain recommendations
for the value of the policy rate given current macroeconomic conditions.
He noted that a Taylor-type policy rule with generous assumptions will
give a minimal recommended value for the policy rate, while less generous
assumptions will give an upper bound for a desirable target range for the
policy rate. The recommended “zone” is the area between the two bounds,
he said.』
スライドの6枚目のさっきの表で示されている訳ですが。5−7%くらいが適正ではないかって話。
『He discussed four values that are needed for a Taylor-type rule:
1) a value for the short-term safe real rate of interest that would prevail
if economic output was at potential and inflation was at target (which
is commonly called R-star, or R*);
2) a value for the size of the inflation gap;
3) a value describing how strongly the central bank should react to deviations of inflation from target; and
4) a value for the size of the output gap.
Given that real output is currently above potential, the output gap didn’t
factor into his calculations, Bullard noted.』
まあこの辺は興味のある方向けって感じですが、
『For the generous Taylor-type rule specification, Bullard used assumptions
that tend to recommend a lower policy rate value. In particular, he used
the Dallas Fed trimmed-mean personal consumption expenditures (PCE) inflation
rate in the inflation gap measure, an approximate pre-pandemic value for
R* of -50 basis points, and a relatively low value of 1.25 for the parameter
describing the policymaker reaction to deviations of inflation from target.』
『For the less generous specification, Bullard used core PCE inflation
(which excludes food and energy prices), a higher value for R* of +50 basis
points, and a value of 1.5 for the parameter describing the reaction of
the policymaker to deviations of inflation from target.』
ナンジャソラって感じはしますが、テイラールールで適正金利計算するときのパラメーターを、緩和的(というか寛大なというか)な方法ですと、物価を(低めに出る方の)ダラス連銀の刈込平均コアPCE物価指数を使ってて、厳しめな方法ですと物価をコアCPIで見るとか、(あとは政策金利の適正水準についてRスターからの乖離を設定するとかやってる)なんかインチキっぽいパラメーターいじりをしているのは変態クオリティなので仕方ありません。
『Bullard illustrated the results of his calculations in a chart, which
showed that the policy rate remains below what could be considered a sufficiently
restrictive zone.』
で、それによって示される「a sufficiently restrictive zone」がさっきのスライド6枚目のチャートにある網掛けゾーンでっせというお話になっていまして、ここで目出度く講演のお題「“Getting
into the Zone”」が回収されましたって事ですな。
『“The chart suggests that while the policy rate has increased substantially
this year, it has not yet reached a level that could be justified as sufficiently
restrictive, according to this analysis, even with the generous assumptions,”
he said. “To attain a sufficiently restrictive level, the policy rate
will need to be increased further.”』
よってロイター記事にもなっていたように金利をもっとあげやがれって結論だ、ということになるのですが、そもそも論としてテイラールールって(パラメーターの置き方にもよるんですが)マクロ経済数値が目標値と乖離した場合に、その乖離を是正すべき方向(今なら引き締めだし一昔前なら緩和)に大きめの数字が出るよねって傾向があるように見受けられる(個人の感想です)次第でございまして、ちょっと過激な主張(今なら引き締め方向の過激な主張)をするのには使い勝手が大変に宜しい政策ルール(とかいうと見も蓋も無いんだがまあそうなんだから仕方ない)でございます(個人の感想です)。
でもってこのプレスリリースでは細かいのがすっ飛ばされているのですが、紙芝居の中ではテイラールールに適用する各経済データに関して現状どういう状況なのか、って話をしている(ので紙芝居は今回そこそこの大部になっています)ので、マニアの方はご覧あれ。
『Related Issues』って小見出しが続きます。紙芝居だと27枚目〜31枚目かな。
『Bullard then discussed some caveats and related issues. One he discussed
is whether the recommended zone for the policy rate could decline. That
zone could decline as new data arrive, particularly if inflation decreases
in the months and quarters ahead, he noted, adding that market expectations
are for declining inflation in 2023.』
今後インフレが下がってきたらこの適正ゾーンも下がるでしょう、って当たり前の話ですが。
『Caution is warranted, however, as both financial markets and the FOMC’s
Summary of Economic Projections have been predicting declining inflation
just around the corner for the past 18 months, Bullard said.』
ここで「Caution is warranted」って言って何を仰せなのかと思ったら「この1年半の間、FOMCのSEPでの見通しもそうだし、金融市場もそうなんだが、暫くするとインフレは落ち着いてくるって見通しを出し続けていた(つまりは見通しを外し続けていた、って事ですな)ことには注意が必要」とかぶちこんでおりまして、タカ派キタコレという所であります。
『He also discussed financial stability risks. He noted that the policy
rate has been increased by 75 basis points per meeting at the last four
meetings, as part of a front-loading strategy.
“It is possible that increased financial stress could develop in such
an environment,” he said. “However, the transparency with which these
[policy rate] increases have been delivered, along with forward guidance,
seems to have allowed for a relatively orderly transition to a higher level
of interest rates so far.”
He noted that the St. Louis Fed’s financial stress index is so far indicating
a relatively low level of financial stress despite the higher policy rate
this year.』
金融市場のストレスについての話が最後にありますが、不透明な形での利上げパスを示さないで、フォワードガイダンスのような透明性の高いパスを示すことによって(でもって透明性云々はさっきのテイラールールもそうですよ、ってことでしょうけど)金融市場に変なストレスって掛かりにくいし、セントルイス連銀の推計している金融市場のストレス指数に関してもこの利上げ局面で上昇はしているけど相対的には低い(ので無問題)としていますな。
ということで、ウォーラー理事の講演をするつもりがテイラールールに釣られて変態仮面ネタになってしまいました汗。
2022/11/17
お題「色々と要人発言がバカスカ出て追いつかいのですが・・・・・・・」
いやーちょっと皆さん何でそう同時にぶっこんでくるんですか勘弁して下さい。
〇相変わらず色々と出ておりますが米国はとりあえず・・・・・・
いやちょっとお前らタイミング分散して下さいお願いしますって感じですが。
・ウォーラー理事の講演があったのだが(汗)
ぐぬぬ・・・・・・・・・
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/waller20221116a.htm
November 16, 2022
The Economic Outlook and a Word of Caution on Inflation
Governor Christopher J. Waller
At the 59th Annual Economic Forecast Luncheon, Phoenix, Arizona
しまったウォーラー理事の講演テキストが出てるの見落としたつうこんのいちげき。というか朝一見た時にアップされてましたっけ問題があるのだが(なにせアナログおじさんなので人力巡回しているから見たか見てないか忘れておる)、これは後で読んでおきます、ネタになりそうならネタに。
でまあそっちではなくて今日はその前の日のハーカー総裁講演から。
・ハーカー総裁
https://www.philadelphiafed.org/the-economy/monetary-policy/221115-inflation-monetary-policy-and-the-anchor-economy-initiative
Inflation, Monetary Policy, and the Anchor Economy Initiative
Patrick T. Harker
by Patrick T. Harker President and Chief Executive Officer
15 Nov ’22
Global Interdependence Center | Philadelphia, PA
物凄く手抜きで『Monetary Policy』という小見出しの部分を丸々読んでみますが。
『And finally, expansive monetary policy - that’s us - kept the cost of capital low, which stoked demand.』
ファイナリーってあるくらいですからその前に経済物価の話があるが飛ばして結論だけ読みに行く手抜きおじさん。
最初のうちはそもそも論の話をしているのでどうでもよいから引用だけしておくけど次にあたくしが合いの手を入れるところまで読み飛ばし推奨。
『Throughout most of the COVID-19 pandemic, we kept rates near zero and enacted a major asset-buying program.
As a central bank, the Federal Reserve can do little to affect the supply
constraints pushing up inflation. And as I have indicated, those problems,
unfortunately, will take time to resolve.』
『But the Federal Reserve can absolutely affect demand, and that is what
we are doing. We want to see inflation coming down steadily and consistently,
and we also want to see it abating across a wide array of goods and services.
The goal is to adjust conditions so that demand better matches supply.』
『We have two primary tools for implementing monetary policy: the federal funds rate and our balance sheet.』
『Since last fall, we have been tightening financial conditions. That process,
at least as the market interpreted it, started last September, even before
we began to move the federal funds rate or taper our asset purchases. Instead,
simply announcing that we would soon begin to taper our asset purchases
caused two-year Treasury yields to rise.』
『The taper began in earnest last November and is now complete. In fact,
we are now reducing our balance sheet. We are shedding $60 billion in Treasuries
and $35 billion of agency debt and mortgage-backed securities each month.
Which is to say, we are removing a significant amount of financial accommodation
quite rapidly.』
『We have also raised the federal funds rate 375 basis points since the
start of the year. Granted, we started from zero, but we have raised rates
significantly - and very quickly.』
はいここまでは別に読み飛ばしても構わん所です。まあ強いて言うなら「供給制約でインフレが高くてそっちは制御できないけど需要ならワシら制御できるもんね」の話くらいですけど、これも既にほかのFED高官が揃って説明している話なので気にしなくて良いでしょう。
ここからが本番(何の?)
『In the upcoming months, in light of the cumulative tightening we have
achieved, I expect we will slow the pace of our rate hikes as we approach
a sufficiently restrictive stance.』
まず、ハーカー総裁は金融政策が引き締め的な水準に達したので、利上げのペースを鈍化させましょうと言ってます。
『But I want to be clear: A rate hike of 50 basis points would still be significant.』
で、ここでハーカーさん「そもそも50bpの利上げというのは利上げ幅としては大幅利上げの分類に属するということを強調したい」とぶっこんでおります。ほうほうそうですかそうですか。
『Since 1983, the FOMC has increased the target a total of 88 times, and
of those, 75 of the hikes were less than 50 basis points.』
ただまあ根拠を1983年以降の利上げ幅がどうのこうのゆうてるのが弱くて、物価を規定する経済構造が過去から変化しちまっていたら話は違うよね(だってその前はもっと政策金利の上げ下げって大きくて50は別に普通か小幅の世界だったんですから)って言われたときに反論できんじゃろというお話ですな。
『At some point next year, I expect we will hold at a restrictive rate
for a while to let monetary policy do its work. It will take a while for
the higher cost of capital to work its way through the economy.』
ま。そんな話は兎も角、来年のどこかで政策を「引き締め的な水準で暫くの間ホールドする」のが適切と来ておりまして、
『After that, if we have to, we can always tighten further, based on the
data. But we should let the system work itself out. And we also need to
recognize that this will take time.』
その後は下げる話なのかと思えば「さらに必要なら上げる」という話をしているのがお茶目なんですが、まあ変に利下げ期待を煽らないようにということでFEDの高官が結構皆さん気を使っているなあと思います。と申しますのは、ハーカーさんが言うかどうかは別にしても、本来こんな判断の難しい所ですと誰かが外れ値発言をするのがFEDの仕様、と思っているのですが、今回は基本的に見事に統制とってる感じでして、もちろん意見が一致している可能性ってのはあるんですけど、あの癖のある集団のFED高官が本当の本当に一枚岩にならんじゃろ、という抜きがたい偏見(笑)があるのですよあたしゃ。
でまあ毎度申し上げておりますけど、やっぱり家計のウェルスの状態が良すぎて労働市場の参加率が上がってこない(それ自体はよく考えてみれば国民厚生的には幸せな話です(サステイナブルなのかというとそれは知らん)けど、とは思いますけどにゃー)のがあって、資産市場(株と住宅)が強いと家計のウェルスが向上して、「よーしパパ働かなくてメシが食えちゃうぞー」ってなってしまって労働市場の過熱が止まらない、というアメリカンな事情を抱えているので、金融市場に如何にしてヒャッハー相場を起こさせないようにしながらも、経済ぶっ殺すような引き締めをしないで済ませるか、というのはコンセンサスビューで、ただまあその大枠の中で金利どの位考えるのかとか、まだ勢いをつけておくべきなのかとか、その辺りの方法論の違いはあるんじゃないかな、とか何とか思うのでございます。
『Above all, I want to stress that we must remain data dependent and flexible
on policy. What we really need to see is a sustained decline in a number
of inflation indicators before we let up on tightening monetary policy.
And again, we need to make sure inflation expectations don’t become unanchored.』
物価の数値が安定的に落ち着いてくるまではタイトニングを継続するしインフレ期待の上昇は望まんとの事だが。
『So what does all of this mean for the economy? I expect that economic
growth will moderate this year as both inflation and tightening financial
conditions begin to crimp consumption. Overall, I forecast flat GDP growth
for 2022, 1.5 percent growth in 2023, and around 2 percent growth in 2024.』
それによって経済はモデレートされる、とは言ってるけど成長率見通し23年で1.5%なので、トレンドグロースよりは1%ほど下って話だが、リセッションでも何でもない見通しになっていますね。
『Inflation will come down, but it will take some time to get to our target.
I expect core PCE inflation to come in around 4.8 percent in 2022, around
3.5 percent next year, and 2.5 percent in 2024.』
物価の見通しは24年末で2.5%、23年末では3.5%程度なので、利下げまでは距離があると。
・・・・・という見通しは良いんだが、じゃあそこからブレたらどうするのという話、特に成長と物価が見通しと外れてコンフリクト(成長が予想よりも下がっているのに物価がサガランチ会長)した時にどうするねん、という話が気になるのですが、そこは華麗に回避して最後は労働市場の話になってしまっている。
『Turning to the job market, the unemployment rate should peak at 4.5 percent
next year as financial conditions bite. It should then fall to 4 percent
in 2024, which suggests that, even as we tighten monetary policy, labor
markets will stay quite healthy. We’ve heard from contacts in manufacturing
that, given how hard they have worked to staff up, they will be extremely
reluctant to cut jobs even as the economy slows.』
『That gives me confidence that we can bring inflation under control without
doing unnecessary damage to the labor market. Our resolve is strong, and
our goal of stable prices and maximum employment is achievable.』
労働市場に関しては「引き締め的な金融政策でインフレを抑制する間に労働市場には顕著なダメージを与えることをしなくて済む」という言い方で、これもよくFED公式でも使っていますね。いやまあ何でしょう一般の方々も見るこういう発言の場でそういう言い方をするのは政治的に好ましくない、ってえのは何となくわかるのですが、米国の場合は物価が中々下がらん、のかどうかはこれからもうちょっと見ないとアレですが、少なくともここまで強くなっちゃった背景に、労働需給がどこまで行ってもクッソタイトで賃金上昇圧力が強いってのがある、というのは多くのFED高官が指摘している話だし、一般的にもその見立てが多いと思うんですけど、「労働市場が強すぎて賃金が高止まりするのでインフレが中々さがりにくくなっているので、要因の一つである家計の含み益を減らす必要がありますねん」とか言ったらお前はキングボンビーかと言われるから言えないんでしょうね、それはまあシャーナイか。
まあいずれにせよ、FED高官の足並みがここまで綺麗に揃っているので、12月の利上げは50bp(この後の指標が順調に物価上昇抑制になったら25だってあるかも知れんで)で、その後は1月3月に25bp上げて様子見モードってのかなり見えてきた感じがしますけどどうでしょうかね。
ただまあその後って物価次第だし、恐らく労働市場のタイトさ次第でもあるのと、逆にバンバン落ち着いてくるというのであればもっとマイルドになるかもしれないし、まあ結局の所出たところ勝負でシランガナではあるのですけれども、ここまでのFED高官の発言をああだこうだと適宜拾って並べてみたら、目先政策のコンセンサスビューは決まっているし、インフレ退治大正義は言っておかないと直ぐに金融市場がヒャッハーするから言うけど、さすがに引き締め領域に入ってきたので段々ビビリンチョになってもう75だ100だグレートインフレーションのリスクだーとは言わなくなりましたな。
なお、この場合、思惑通りに引き締めがバンバン効いてるんだったら良いのですが、普通に考えると物価が落ち着くペースが弱くなってしまいますので、常識的には手前の金利の上昇余地が下がるけど長い方の金利ってのは本来は上昇圧力が掛かりやすくなるんじゃないかと思うのですけどそうはならんですね。
・この前SF連銀がだしてたじゃないですか、あれって・・・・・・・・・・・・・
別に出し惜しみしてたわけでは無いのですが出すタイミングが無くて。
この前出ていた例のアレ。
https://www.frbsf.org/wp-content/uploads/sites/4/el2022-30.pdf
FRBSF Economic Letter
2022-30 | November 7, 2022
Research from
the Federal Reserve
Bank of San Francisco
Monetary Policy Stance Is Tighter than Federal Funds Rate
Jason Choi, Taeyoung Doh, Andrew Foerster, and Zinnia Martinez
SF連銀が「Monetary Policy Stance Is Tighter than Federal Funds Rate」ってのをこの前だしていたのですよね。
でまあこれ自体のご紹介をと思って読んだ(ページ自体はそんなにないです)のですが、要するに「今次引き締め局面においてはバランスシート政策の引き締め(バランスシートの縮小)をしていることによって、金融市場がよりタイトになっているので、過去の引き締め局面(ではその前にQEをしてなかった(前回の正常化の話は別ですけど)ので)とは違う!!!って趣旨です。
・・・・・・・つまりですね、この考察って別になんか新たな視点から斬り込んでいる話でも何でもなくて、従来の話をしているに過ぎない物件でして、これを出すタイミングが何故このタイミングだったか、という事の方が重要である、とまあそういう陰謀論になる訳ですね。
でもってちょうどこの時期ってのはデーリーさんもそうですけど、あちこちの地区連銀総裁や理事から「利上げペースはそろそろ鈍化しましょうだって金融政策引き締め的になったもん」って話がバカスカと出てきた時期でありまして、他の連銀ならいざ知らず、イエレンウイリアムズを輩出して、いまのデーリーさんも割と執行部の鉄砲玉的な役割を演じている時が多い(前任2名は完全に鉄砲玉でしたが、デーリーさんは時々執行部の統制を離れて好き勝手言ってる面はある)というサンフランシスコ連銀だけに、まあこれは出すタイミング狙いやがったな、という感じだと思うのですよね。
ということで肝心の中身の紹介しないで陰謀論を展開してて恐縮なのですが、まあそういうことでして、FEDについては12月以降のムーブの基本線は分かったなという感じです。ただまあ問題はこの基本線で想定している物価パス、つまり物価水準が上または下に想定以上にぶれる、というのはどの辺の数字になった時なのか、というのが悲しい事に現状では皆目見当がつかないですし、その点についてはFEDの高官も決め打ち数字を出すのは後で自分の首を締める、とばかりに完全に黙っている(SEPの数字とかは別だけど)のがオシャンティーな訳でして、結局の所わからんって話になってしまうんですよねー、いやはや。
#本当はECB高官発言クリップの積りだったのですが時間が無くなってしまいましたサーセン
2022/11/16
お題「黒田総裁名古屋講演での質疑応答だが都合の悪い質問に対して全然答えないのはちょっとさすがに」
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/ko221115a.htm/
【挨拶】
新たな実行フェーズへと移るサステナブル・ファイナンス
パリ・ユーロプラス主催「東京・インターナショナル・ファイナンシャル・フォーラム 2022」における挨拶の邦訳
日本銀行総裁 黒田 東彦
2022年11月15日
短期決戦で達成すると言ってた物価目標の為の短期決戦の政策を無理矢理継ぎはぎした挙句に今度は出口政策が困難になってしまって本来なら大勝利宣言と共に出口に向かうタイミングになって更に継ぎはぎの上塗りをして収拾がつかなくなっている人にサステナブルとか言われてもヘソが茶を沸かすというものです。なお中身は1ミリも読んでないwww
〇またFSBか
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel221115a.htm/
金融安定理事会による「ノンバンク金融仲介(NBFI)の強靭性向上:進捗報告書」の公表について
2022年11月15日
日本銀行
まあアレです、毎回学習効果というものが無くてちょっと金融市場にストレス掛かると流動性資産を思いっきりファイヤーセールして市場を壊してしまう米国のアホウどものせいで何とかショック(今回はコロナショック)が起きるたびに強靭化向上とか言ってるんだが、これって勿論程度問題の話ではあるにせよ、強靭性向上って基本的にやってることリスクていくするな流動性厚くしろの方向になって、そらまあ金融機関や金融仲介機能やってる方は強靭化されるんですが、それによって金融を必要とするサイドのニーズが充足されるのですか、って話がある訳で、何でもかんでも規制すりゃ良いってもんじゃないだろと思うし、一方で米国って取引所の小銭稼ぎに(個人の偏見です)何でもかんでもETFにして上場させて、実はその仕組みはレバレッジを内包してるんですが(かつてのVIX何とかみたいな物件)ってのをホイホイとださせたりしてて、いまいち何をしたいのか分からんお国ではあるのですが、まあ何せアメリカ様がこういうのをやらかすと全世界的に強靭性向上というお題で規制強化になるのは何だかなと。
しかしまあ何ですな、日本以外はそもそもリスクフリーレートも上昇してきた訳ですけど、利回り追求の動機によって妙なレバレッジが掛かったり、本来あるべきリスクプレミアムが潰れたりしていた、という面は多々あると思いますので(個人の感想です)、このままある程度金利のついている状態が続いてくれれば、自然と適正なリスクプレミアムというのが形成されるようになってくれませんかねー、と思う今日この頃(日本では金利がこれなので無理な相談)。
というだけのメモでした、邦訳ないっぽいのでちょっと読むのはパス(年末年始位に暇だったら、と思ったら今年の年末年始ってただの4連休であることに今気が付いた)
〇黒田総裁の名古屋での会見ですがやはりこの方式の方が断然面白いですね
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk221115a.pdf
2022年11月15日
日本銀行
総裁記者会見
――2022年11月14日(月)午後1時10分から約35分
於 名古屋市
前回の定例記者会見でようつべ放送が始まりまして、総裁会見「要旨」じゃなくて発言したのをそのまま文字起こしする格好(てにをは程度は直すのかな?)になったのですが、文字起こしになると中々おもしろいじゃないですか(悪い意味で)、と今回も思いました。
通常、大阪や名古屋の講演での会見ってそんなにややこしくはならんものだと思ってたのですが、これは記者の皆さんのツッコミも割とブスブスと入っていますし、なにせ「要旨」じゃないだけに黒ちゃんの説明がアレであるのが分かりやすくて大変に結構。
・為替に関する質問に回答しないという荒業キタコレ
最初は幹事社からの質問です。地方金懇の場合幹事社は地元紙になるからこの回だと中日新聞になるんでしょうかね。
『(問)
幹事社からは大きく二点質問をさせて頂きます。まず一点目なんですが、午前中の金融経済懇談会についてです。午前中の懇談会では、地元経済界から様々な声がありました。為替相場が金融政策の直接コントロールの対象でないとしたうえでの、安定した為替相場の早期実現などをお願いする声がありました。』
「為替相場が金融政策の直接コントロールの対象でないとしたうえでの、安定した為替相場の早期実現などをお願いする声がありました。」とは中々味わいが深い要望の仕方ではあります。
『為替の過度な変動は企業の事業計画の策定にですね、やっぱり大きな不確実性をもたらして、足元の円安はレベル感にも厳しいものがあるという印象が拭えないといった声も結構目立ちました。』
それなりの企業の経営者が来て、かつ平場での意見交換の結果が幹事社からこのように表現されているっていう時点で、まあ結構厳しく色々と質問や要望があった、というのが想像できますよね。
『こういった出席者との意見交換の内容を踏まえまして、懇談会の感想をお聞かせ頂ければと思います。(後半部分は割愛します)』
後半はカーボンニュートラル関連の話なので割愛します。で、黒ちゃんの回答ですが、今日の懇談会のまとめも混じっているので長い。
『(答)
本日の懇談会では、当地の経済界、金融界を代表する方々から、金融経済の現状や直面する課題に関する貴重なお話をお伺いするとともに、日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見、ご要望を頂きました。大変有意義な意見交換ができたと思っております。この場をお借りして、改めて御礼を申し上げたいと思います。席上、様々なご意見を頂きましたので、私なりに整理して、三点ご紹介させて頂きます。』
ということで懇談会のまとめなんだが。
『第一に、当地の経済情勢について、持ち直しの動きが一服しているとの見方が聞かれました。自動車の供給制約の影響が大きいため、日本経済全体の評価と比べていくぶん慎重な見方になっていると感じました。また、エネルギー価格や原材料価格が高騰する中、中小企業を中心に十分な価格転嫁ができていないという声が聞かれました。こうしたもとで、経済の好循環を実現するためには適正な価格転嫁を実現する環境整備が重要であるとの見方も示されました。また、最近の急速な円安進行は企業の事業計画の策定に大きな不確実性をもたらすとの見方が示され、為替相場の安定を望む声が聞かれました。日本銀行としては、引き続き、政府とも緊密に連携しつつ、金融・為替市場の動向やそのわが国経済への影響を十分に注視してまいります。』
為替市場の事に関してかなり質問されたし要望があった、と幹事社質問では読み取れて、でもってそれに対する所感を質問されているのですが、今日の懇談のまとめ、という形での回答の中でですと、為替の話が見ればわかるように一番後の方のネタになっておりますね、しかも日銀シランガナみたいな他人事回答。
『第二に、金融面については、感染症が拡大した当初に比べると資金需要は落ち着いているものの、業種毎のばらつきが大きいと伺いました。製造業では、脱炭素化やデジタル化への対応といった前向きな資金需要がある一方、飲食・宿泊などの一部の企業では、引き続き金融機関からの金融支援を必要としている先もあるとの声が聞かれました。日本銀行の金融政策運営については、引き続き円滑な資金供給と金融市場の安定維持に努めてほしいとの意見を頂きました。』
で??
『最後に、カーボンニュートラルの実現とスタートアップの強化といった、わが国経済全体にとって大変重要な課題について、当地の経済団体がしっかりと支援されていくとの心強い声が聞かれました。カーボンニュートラルの実現などに向けた提言や産学官の連携を行ったり、イノベーターたちがコミュニティを形成するための場を提供したりといった具体的な取り組みを伺いました。当地の皆さまには、引き続きわが国経済の持続的な成長をリードして頂くことを期待しております。』
これは質問の方で割愛したカーボンニュートラル関連の話。
『東海経済の現状については、先ほど申し上げた通り、持ち直しの動きが一服しているというふうに判断をしております。生産や輸出については、車載半導体などの不足により足踏み状態にあります。原材料価格やエネルギー価格の高騰もあって、企業収益は下押し圧力を受けています。他方、設備投資は、脱炭素化、電動化、デジタル化などへの対応から、積極的なスタンスが維持されているようにみえます。個人消費については、最近の物価上昇は家計の消費マインドを慎重化させているものの、ペントアップ需要の顕在化や全国旅行支援など、感染抑制と経済活動の両立が進むことで持ち直しの動きがみられているように思いました。先行きにつきましては、景気は緩やかに回復するとみられますが、やはり海外経済や資源価格を巡る不確実性は大きいため、引き続き、当地経済に及ぼす影響を丹念に点検してまいりたいと思います。以上です。』
いやあのですね、今日のまとめについてお話するのはそらそれで良いんですけど、為替市場の動きに対して多くの意見や要望が寄せられててどうなんですかって質問されてるのに答えないの酷くないですか総裁??????
・特に為替になると質問に全く答えない黒田さんですが文字起こしになると非常に分かりやすくなりましたね
『(問)
総裁に二点お伺いします。まず一点目、為替相場についてお伺いします。総裁、本日の挨拶の中で、現在の経済の下押し要因の一つに物価上昇を挙げられまして、その背景として、為替円安を一因とした輸入物価の上昇ということについても触れられました。一方で、先週後半にですね、アメリカの物価指標の公表をきっかけにして急激な円高が進みまして、この
2 日間でおよそ 8 円も円高が進行しています。今回の足元のこの急激な円高の大きな要因ですとか、あるいはこれが日本の経済・物価に与える影響について、どう評価されていらっしゃいますでしょうか。(後半割愛)』
前半と後半の質問が完全に論旨分裂してて質問が支離滅裂になっていますね。まあ文字起こしにしちゃうとこういう質問に関しても「趣旨を綺麗に丸める」ってのが無くなるから、聞く方の能力も求められますよねいやマジで。
『(答)まず、第一の点につきましては、為替レートにつきましては、何といっても、経済・金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいということが最も重要な点でありまして、』
黒ちゃんの会見が他の主要中銀トップの会見よりも時間が長いのに全然内容が充実していないのは、この手の何回も聞いてるし、しかもそれ自体どうでもよい内容を毎度毎度延々と説明して時間を稼いでいる事に尽きます。
そもそも論として会見で時間を切る、というのが意味不明だし、もっと悪態つきだすと、例えば直近MPM後の総裁の定例会見では冒頭で幹事社から「今日は総裁に次の予定がありますので」という形で時間厳守を言われておりましたが、そもそも金融政策決定会合というのは結論が出るまでは時間に制限を設けずに討議を行うものであって、大昔のように1日制だった時は重要な決定を行うに際して(1日制だったこともあって)14時過ぎだの極端な時は16時過ぎだのまで引っ張ったことだってあった訳でして、金融政策決定会合当日に「次の予定」とか入れてる時点で金融政策決定を何だと思ってるんだという話で、あの「次の予定がありますので」は結構頭に来るし、いずれ「なんで時間を切るのか」と「時間を切っている会見なのに何度も言ってて皆知っている事について言及するのは時間稼ぎではないか」とか噛みつく人がそろそろ出てきても良いころ(ようつべ会見になったことだし)だと思いますので、想定問答係の方におかれましてもちょっとその辺注意した方が良いと思うんですけどねえ老婆心ながら。
と、話がそれてしまいましたっが、
『最近進んでいた円安は一方的で急速で、企業の事業計画の確実性を損ない、経済にとってマイナスであるということを申し上げてまいりました。』
おまえのせいだおまえのせい。
『政府は、こういった状況も踏まえつつ、何度か為替市場に介入されたということもあって、異常な、一方的で急速な円安の傾向は、いったん止まっているように思います。』
その要因じゃないような気がしますが。
『それ自体は大変結構なことであるというふうに思っております。』
で、急速な円高に関しての所管は無いんですか??????????という話だが、為替介入という意図的に行う急速な円高は勿論意図してるから良いんですけど、そうじゃないのにいきなり円高になるのはやっぱりまずいんじゃないですかねえ、と筋論からしたら思うのですが、まあそれは死んでも口に出さないようです。
『今後の為替相場の動向につきましては、何とも申し上げかねますけれども、』
という事で、質問の「急速な円高に対する所感」は言わずじまいという事です。さっきの幹事社質問でもそうですし、先日の金融政策決定会合での総裁記者会見でもそうなのですが、質問されたことが都合悪いと回答しないというのが文字起こしになると非常に分かりやすくなりましたので、ようつべチャンネルで放送するようになって、会見が要旨じゃなくて文字起こしになったの意義があるなーって思います。
でもってですね、質問に対して回答しない、という技を使うために、聞かれてもいない話を延々とそもそも論からおっぱじめることによって、相手の質問が何だったっけっていうのを主にオーディエンスの皆様が忘れてしまう、という効果を狙って、しかも時間稼ぎまで出来てしまう、という事でこのメソッドで黒田さん回答している訳でございます(というのは会見ライブ聞いてて思うようになった(当初はこうではなかったのだが、政策延命の目眩ましをするようになってからこの傾向が強まった、と耳では思っていたが文字にすると分かりやすいわ)ですね。
『最近まで円安ドル高が進んできた背景には、一つには、資源価格がロシアのウクライナ侵攻以降、急激に上昇して、わが国の場合は、石油や天然ガスを含めて、エネルギーの類はほとんど輸入に頼っておりまして、それらはしかもドル建てで取引されていますので、ドルの実需が増えて、ドル高円安になったということがあった後に、米国のFRBが、金利を急速かつ大幅に引き上げるということを始めたこともあって、これは、実は円だけでなくて、世界中の主要通貨が、ほとんどドルに対して弱くなって減価して、いわばドルの独歩高になっていたわけです。』
このドルの独歩高って説明もインチキ成分が相当強いので大概に止めた方が良いし、大体からしてこの説明って質問に対して何の意味のある説明しているんだよって話ですよね。これも結局質問の筋を外して時間を稼ぐためのプレイなんですが、やっぱり「要旨」じゃなくなってしまうと露骨な遅延行為をしているのが分かりやすくなるので、これ早期に改善しないと印象ドンドン悪くなると思うんだけどなあ。ああまあもうすぐ退任ですけどね。
『そういう状況から、来年以降どういうふうになるかというのは、なかなか難しいところですけれども、』
全く質問されていない事を延々と話す黒ちゃん。
『米国が金利をそれだけ大幅に上げてきたということは、インフレの懸念があるということで上げてきているわけですから、そういう国の通貨が、日本のようにインフレ率の低い国の通貨に対してどんどん上昇していくということは、あまり想像しがたいわけですし、また、わが国の経済は、今年度、来年度、再来年度と、潜在成長率を上回る成長が見通されているわけですけれども、やはりアメリカの場合は、金融の急速な引き締めもありまして、来年は成長率がかなり大幅に減速するという見通しが、これはIMFも含めてされているわけでして、そういう中で、ドルの独歩高がいつまでも続くということは想像しがたいというふうに思っております。』
お前の見通しはどうでも良い。
『いずれに致しましても、為替相場は、経済・金融のファンダメンタルズを反映して、安定的に推移するということが望ましいということに尽きると思います。(後半割愛)』
安定的に推移するのが望ましいなら先日の急速な円高はどうなのか???という質問だったんですけどねえ・・・・・・・・
・上振れリスクが顕在化した時についての話は死んでもしないという意気込みを感じました
『(問)
総裁、午前中の講演の中で、今後の政策運営について、上下双方のリスクを丹念に点検し、適切にそれに応じて政策を運営されていくというご発言をされていましたが、これは、上振れリスクはどんなかたちで顕現化するかにもよるとは思うんですけれど、上振れリスクが顕現化した場合には正常化の方向の動きもする用意があるという理解でよろしいんでしょうか。』
イイシツモンダナー。
『それと関連して、この文言だけをみるとですね、緩和バイアスを今、日銀は今金利に対して維持してきていると思うんですけれども、そことの整合性について、要するに、金利については現在の水準か、それより低い水準で動くことを想定しているという緩和バイアスとですね、上下双方向というと、何かそこに齟齬はないのかというところについてお願いします。』
後半は蛇足。「上下にリスクがあるのは確かだが現時点では下方リスクの方を大きく見ているから緩和バイアスがある」でおしまいなので、こういう質問は余計なんだよなー。
『(答)
そこは、従来から申し上げていることを今回の展望レポートでも繰り返しているわけでして、経済・物価見通し自体は少し変わっていまして、足元の成長率は少し下方修正して、他方で、足元の物価上昇率は上方修正しているわけですけれども、来年度、再来年度の成長見通し、あるいは物価見通しについても若干の修正はしています。』
何で一々余計な事を話すんでしょこのおじいちゃん。まあ回答考えるための時間稼ぎなのかもしれないけど、素直に黙って数秒考えてから回答すれば良いだけの話だと思うんですけどね。会見のライブ前から聞いてると、最近の黒ちゃんこのパターンばっかりで、聞いてる方とすると「真面目に答える気あるのかゴルァ」ってやっぱり思ってしまって印象良くないし、恐らく記者の皆様の当たりがだんだん厳しくなってきているのって、この質問に対する回答の頭で余計な事を言い出すプレイにより「質問に対して正面から向き合っていない」印象を与えているから反発食らってる面があるんじゃないかと思うんですよね。あくまでも個人の感想ですけど。
『基本的なリスクに対する見方としては、成長率についてはやはり下方リスクが大きいかなと。それから、物価上昇率については、上方リスクの方が大きいかなと。これは、政策委員(注)の経済成長、物価見通しのそれぞれのリスク分布について、お示しになっていることを総括したところであります。』
その結果足元では下振れリスクが大きいと判断しているから緩和バイアスがあります。なお将来において上方リスクが具現化した場合にはご指摘のように上方リスクに対応した政策を行うかもしれませんが、現時点でそのような対応が必要になるとは考えておりません、で話を締めるのかと思えばこの先また余計な回答をする黒ちゃん。
『そういったもとで、メインシナリオとしてはやはり、今年度の物価上昇率というのは上方修正して、年度全体で
2.9%くらいになると見通しているわけですけれども、来年度は輸入物価の影響がだんだん減衰していって、1.6%上昇ぐらいになると。再来年度もそのくらいだという見通しですので、当然そういうことを踏まえて金融緩和を続けるということにしたわけです。』
この場面の黒田さん、質問されていることじゃなくて展望レポートの公式見解の説明を延々としているんですけど、いや質問で聞いてるのそうじゃないんですけど、って思いますし、わざと「上振れリスクの対応」の話を避けるにしたってもうちょっとまともに回避する方法あると思うのだが、これじゃあ蒟蒻問答も裸足で逃げ出す会話になっているように見えるんですよね。
『もちろん、常に、年に 8 回、金融政策決定会合がありますので、その都度、前回の会合からの新たな情報や統計、それを踏まえて、次の会合までの金融政策について決定するという仕組みになっていますので、色々な状況に応じて機動的に政策運営ができるようにはなっていますが、今のところ、先ほど来申し上げている展望レポートという、足元だけでなくて来年度、再来年度を見通すと、物価上昇率は
2%以下にとどまるということであり、そういうことを踏まえた金融政策をしていると。もちろん、様々な状況は、毎回、毎回の金融政策決定会合で十分議論して対応していくということに尽きると思います。』
という回答なのですが、これ「上下リスクへの対応」に関するバイアス文言に対して質問しているのに、完全に回答の方が「今の見通しはこうなので現状の政策を継続するのが適切」って回答で返していて、質問の意味がそもそも分かっていないんじゃないかという疑惑が生じてしまいます。
まあ何ですな、好意的(????)に解釈しますと、黒田さんは上記の質問を受けた時に「上振れリスクへの適切な対応」という政策修正を想定させるワードに死んでも言及しない、というスイッチがオンされてしまった結果、リスク認識の話をほんのちょっとだけしかしないで、延々とメインシナリオの話をするだけにした方が安全、と危険回避装置(??)が働いた、ってな事なんでしょうね、とでも解釈しないとさすがにこれは黒ちゃん人の話ちゃんと聞いてるのか問題に発展しかねません驚異の蒟蒻問答でございました。
・珍タゲに関して
『(問)
賃上げについて伺います。午前中の会合で、黒田総裁、賃上げに来年春の賃金交渉では期待しているというふうにおっしゃっていました。今、日銀としては、大規模緩和を、賃上げを伴うかたちでの物価上昇を実現するまで続けるんだというふうにおっしゃっているわけですけれど、ということであれば、金融政策運営のステートメントにもですね、単に
2%物価安定目標の実現を目指すと書くのではなく、賃上げを伴うかたちでの物価上昇を実現するまで続けるというふうに書いた方がより分かりやすいのではないかというふうに思うんですが、その辺りいかがでしょうか。』
これはご尤であるがイヤガラセ質問でしょ。
『(答)
この点は、賃金は、足元で経済活動全体の持ち直しを反映して緩やかに増加をしておりますし、先行きも、経済活動や労働需給が改善していくもとで、労使間の賃金交渉において、物価上昇率の高まりも勘案されることを映じて、賃上げ率も高まっていくというふうに予想をしております。』
質問に対して一々何でこういう回答するんでしょうねえ(今に始まった事では無いのですが、文字にすると非常に目立ちますねやっぱり)。
『そのうえで、賃金の動向については、表面的な数字だけでなく、その背後にあるメカニズムも含めて、物価安定の目標の持続的・安定的な達成につながっていくものかどうかということを評価していくということになると思います。』
これは何を意味するかと言いますと、春闘の賃上げ率が想定以上に強かったりしたときに3月決定会合で政策変更に対するプレッシャー掛かるのを防ごうということで「メカニズム」とか言い出している訳でして、「達成しそうになるとゴールを変える」というのをしているのですが、ゆうてこれが「出口政策をするのが怖いからとにかく問題の先送りをしている」だと救いようがない話なのですが、「黒田さんの在任期間中は政策変えないで粘ることによって、後任にはフリーハンドを与えつつ、その間に何でもかんでも「総合的判断」にしてやりやすくする」という意図が裏にあるのであれば、まあこっちも4月までの辛抱と割り切れるのですが、はてさてどっちなんでしょうかね???
『そういう意味で、賃金の動向、構造的な要因といったことには最も注意を払っているわけですが、他方で、賃金の動向につきましては、様々なファクターによって影響されますので、今申し上げたような足元の経済活動、労働需給ということも影響しますし、それから、労働生産性の上昇率といった、これはなかなか金融政策によって左右しがたい色々な要件によって変わってくる労働生産性の上昇率ということも賃金上昇率に影響しますので、先ほど来申し上げているように、賃金の上昇を伴うかたちで物価が上昇するという、安定的・持続的な物価の上昇を目指すということは繰り返し申し上げている通りでありますけれども、具体的に賃金の上昇率とか、そういうことを何か金融政策の一環としてというか、目標として掲げるというのは、あまり適切なものではないんじゃないかと。』
結局数字を出すと達成した時にマズいし、かといって行きそうもない数字を出すと今度は科学的におかしくなるので数字は出さん、というのが良く分かりますね。しかし7月会合の時に急に何か変なもん食ったかのように賃金賃金の連呼が始まって4か月で今度は賃金は連呼するけど急に総合的判断とか言い出すの、さすがに節操なさ過ぎにも程がありますよね。
『諸外国でも、物価安定目標というのは様々なかたちで提示して、金融政策運営の最も重要なメルクマールになっていますけれども、賃金上昇率をメルクマールにしている中央銀行というのはありません。』
都合のよいときだけ諸外国を持ち出す屁理屈クオリティ。
『それはさっき言ったように、様々な要因で決まるし、そして労働生産性の上昇率のような金融政策から直接影響を受けにくいファクターも影響しますので、』
だったらそもそも金融政策で賃上げをする、って標榜するの誇大広告じゃないでしょうかこれは公取案件ですね(違)。
『何回も申し上げるように、賃上げ、賃金の上昇を伴ったかたちで物価が上がっていかないと持続的・安定的にはならないということは繰り返し申し上げている通りで、その点を強調しているわけですけれども、だからといって、賃金上昇率の目標とか数値とか、そういうものを提示するということは必ずしも適当でないというふうに思っております。』
要するに数字は出さん、といってるのですが、「じゃあどういう事なんだ」という質問が以下2問ほど続いて、ひたすら蒟蒻問答が続くのですが、時間が無くなって来ましたので今朝はここで勘弁してつかあさい。
2022/11/15
お題「FED高官発言メモとか展望レポートネタとか黒ちゃん名古屋講演ネタとか」
日本農業新聞を巡回するとこういうのが拾えるので面白いです
https://www.agrinews.co.jp/news/index/116614
2022年11月12日
「米ぬか」から代替肉 山形大チーム、世界初
『山形大農学部の渡辺昌規教授らの研究チームは、脱脂米ぬかを原料にした肉代替食品(代替肉)を世界で初めて作った。脱脂米ぬかから抽出したタンパク質に糖類などを加えた。国内で自給可能な米が原料にできるとして期待されている。』(上記URL先より)
〇ウォーラー理事が水ぶっかけに来てましたね(ブレイナード含めてメモだけ)
・ランボー怒りのタカ派発言キタコレである(ウォーラー理事)
昨日東京時間から金利上がったのこのせいでしたが。
https://jp.reuters.com/article/frb-waller-idJPKBN2S402B
2022年11月14日10:08 午前
米利上げ減速も、インフレ抑制姿勢は変わらず=ウォラーFRB理事
『[ワシントン 13日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のウォラー理事は13日、FRBは次回政策会合で利上げペースの減速を検討する可能性があるが、インフレ抑制に向けたFRBの取り組みが弱まったと受け止めるべきではないと述べた。』
『UBSがオーストラリアで開催した会合で「われわれは(利上げ)ペースの鈍化を考え始めることができる段階にある」としつつ、「軟化ではない。ペースに注目するのをやめ、最終着地点に注目し始めるべきだ。インフレ率を低下させるまで着地点は依然として遠い」と述べた。』(上記URL先より)
ということで、何といいましても金融市場がヒャッハーして資産価格が上がってしまうのはインフレが鎮静化してからにしてくれ、って所でしょうから順当に水をぶっかけに来まして、少なくとも債券市場の熱を冷まさないと、って感じでしょうね。
順当というか絵に描いたような展開で、市場も含めて米国の全員で仕込み芝居でもやってるんじゃないかっておもってしまいました。今回は記事にあるようにUBSのセミナーでの発言のようなので、とりあえず今朝の時点ではFEDのページに講演内容出ていませんな。残念。
まあ何ですな、この辺りに関してもさすがに米国市場の中の人達だって、資産価格がソイヤソイヤと上がると消費を刺激してしまうから牽制球飛んでくる、ということくらいは把握していると思うので、そこまでの反動にならんかったというか、その前のCPIショックの戻りは何だったのかという所ですが、中間選挙も含めポジションの偏在でもあったんですかねえ、としか考えようがない。
・ブレイナード理事はBBGとのインタビュー
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-brainard-idJPL6N32A0D0
2022年11月15日2:03 午前
FRB、利上げペース鈍化が近く適切に=ブレイナード副議長
『[14日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のブレイナード副議長は14日、利上げペースを鈍化させることが近く適切になると述べた。ブルームバーグとのインタビューで「利上げペースを鈍化させることが近いうちにおそらく適切になると思うが、本当に強調すべきことは、われわれにはさらにやるべきことがあるということだ」と語った。』(上記URL先より)
ブルームバーグのインタビューなのでこちらも残念ながらFRBのサイトの方には出てこないと思います(現時点で出ていない)。ブルームバーグだから記事か映像で細かいのは読めると思いますけれども、こちらでも「利上げペース鈍化」「でもまだまだ高インフレ絶賛退治モードは変わらないよ」という話でして、まあこの辺皆さんの発言が見事に揃っています。
FEDって変態仮面ブラード先生をもちだすまでもなく、結構な勢いで意見がバラバラになることは多々あるのですが、今回の利上げペース鈍化トークに関しては基本的な線をみな同じ理屈でもっていっているのがアタクシ的には特徴的かな、と思う訳でして、基本的にこの人達、やはり政策金利水準が「引き締め的」と衆目の一致する水準まで上がって来た事を受けまして、この引き締めは効く、って割と確信度高く思っているんだなあって感じでして(個人の感想です)、さらに言えばここからバカスカ利上げするのはオーバーキルに成り兼ねないとは思っている感じですし(個人の感想です)、おっかなびっくり利上げしていく、って感じになるんでしょうねえというのは把握した。
ただ、そのことは基本的には引き締め的な期間を長くしてしまう可能性があるんで、と思うんだが、米国債券市場、話はあんまりそういう方向にはいきませんね。まあ良いんだけど。
〇展望レポートのハイライトが3回目にして早くも手抜きになっている件についてwwwwwwwwwwwww
ECBのあれを真似っ子するという日銀にしては割と面の皮の厚い企画がこの前から始まっていますが。
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/index.htm/
展望レポート・ハイライト
『日本銀行は、年4回(通常1月、4月、7月、10月)、「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)を公表しています。ここでは、展望レポートのハイライトをご紹介します。』
10月
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202210.htm/
7月
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202207.htm/
4月
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202204.htm/
何かね、4月と7月だとイラストとか変えてて「ほっほー」と思った(アタクシネタにするタイミングを逸してしまってネタにしなかったのと、物がイラストなので貼り付けスキルの無いアタクシとしてネタにしにくかったのがある)のですが、この企画第3回目となる10月にして「7月とイラストが同じ」という大変にやる気のない物件になってしまいました。どういうことでしょうもう飽きたんでしょうか。
そもそもですね、2番目の「物価は上昇率を高めたあと減速する」だって、4月→7月で上方修正してイラストが変わりましたが、7月→10月って更に足元を上方修正しているんですから、四半期展開を道路の行程(イラスト見てね)に直したら前回と同じ図にするのおかしくね????????
つまりですね、7月の時の見通しだと22年度の年度平均が+2.3%で期末時点の発射台って2%そこそこって感じのスタートから、23年度平均+1.4で翌年度が+1.5となって、1回やや落ちてから徐々に上がるって図だったんですね。
しかるに、今回の展望レポートの見通しってどういう物価パスなんだよって話で、23年度は期初の発射台が3%近いところから始まる筈だと思うのだが、そこから下がって上がって年度平均+1.6%って予想になっている訳で、しかも23年度の途中で下がって上がってという動きをしているのに、なぜか24年度は23年度と年度平均同じって、これ四半期展開するとどういう動きをすると整合的なんだよ、ということで、寧ろ今回は大きく下がってまた上がって、みたいなイラストになっていないとおかしいですよね!!!!!!!!!!!!!
ま、そもそも今回の物価見通しが「政策修正を黒田さんの居るうちは絶対にしたくない」という結論から出した見通しになっておりまして(個人の偏見です)経済物価情勢を客観的に分析して出したものとは到底思えない四半期展開不可能な見通しを出しておられます。
更に申しますと、リスク要因の所だって要因の内容は同じでもウェイト変えているのにイラスト同じになっていて、このイラストをどこが作っているのか分からんのですが、これわざと「前回と同じ」を出したんじゃないのかって感じがしてきますわ。7月に変えたのに何で今回変えないのって話だし、海外経済の現状を下方修正したのも何も反映しないのね、とかなんか色々と味わいがあります。
でもまあこれは「いいですか皆さん、黒田総裁の間は死んでも政策を修正する気はありませんから、文章で何を書いていようとも結局何も変わらないんですよ」という強硬なメッセージが秘められている(これは大本営寄りの陰謀論)とか、「こんな恥ずかしい物価見通しパス本当はだしとうなかったんじゃ」ということで物価のパスのイラストをあえて変えないことによってツッコミを受けさせるというささやかな抵抗勢力(これはアンチ大本営の陰謀)の動きなど、「イラストが何も変わっていない」のでかえって下らない妄想が沸いてきて楽しめました。
〇黒田総裁名古屋での講演
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko221114a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 名古屋での経済界代表者との懇談における挨拶 ──
日本銀行総裁 黒田 東彦
大阪の講演とか経団連での講演と違って名古屋の講演ってお題は毎回上記のお題ですし、内容自体も割と淡々とした内容になっているので今回も淡々としている訳ですが。
・だいたいからして経済見通しが強気なのに何で強力な緩和を継続するんじゃろ
『2.経済情勢』の所でああだこうだ話をしていますが、海外に対してデカップリングするという話をしているんですよね。それはそれでそういう見通しなら良いんだが、だったら何で海外の経済をリスクの筆頭にあげてるんでしょ。よくわからんですよね。
『なお、先ほど触れたIMFの世界経済見通しをみますと、来年、わが国は、G7諸国の中で最も高い成長率が見込まれています(図表6)。このように海外経済が減速する一方、わが国経済が回復を続けるという違いの背景には、2つの点を指摘することができます。』
『第一に、経済活動の再開のタイミングの違いです。わが国の場合、海外に比べ感染症への警戒感が長引いてきた結果、外食や旅行などのペントアップ需要は、今後顕在化していく局面に入ります(図表7)。先月開始された政府の全国旅行支援も、そうした動きを後押しするものです。同じく先月から入国制限が一段と緩和されたことで、インバウンド需要の回復も期待されます。今般策定された「総合経済対策」も経済成長に寄与するものと考えられます。』
とまあ物凄く威勢の良い話をしているのですが、このあと物価情勢の話をする中で、日本は米国みたいな物価上昇しませんよーって言いきっていますけど、経済活動再開のタイミングで物凄い勢いで金融緩和をしている中で大型経済対策で財政支出します、ってそれまんま米国でやってた事じゃないんですかねえと思うのですが、そういう点は一切スルーするのが黒田日銀クオリティ。
『第二に、海外では急ピッチで金融引き締めが進められる一方で、わが国では、金融緩和の継続により、きわめて緩和的な金融環境が維持されている点です(図表8)。海外金利が大幅に上昇するもとでも、わが国企業の資金調達コストは、きわめて低い水準で推移しています。このところ、経済活動の再開や原材料コストの上昇を受けて、企業の運転資金需要は高まっていますが、金融機関は積極的な貸出姿勢を続けており、企業の資金繰りも、中小企業を含めて改善傾向が続いています。』
何ちゅうか同じ話をわざわざ2つに分けている感があるがまあいっか。何はともあれそれで物価の話なんですけど・・・・・・・・・・・
・このメインシナリオを普通に読むと物価が何で来年度に盛大に下がるのかが全く意味不明なんですけどねえ
まあどうせ金融政策の話はゴミなので問題は物価よ物価、ということで『3.物価情勢』に進む、
『次に、わが国の物価情勢についてお話しします。生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、直近9月は
3.0%となっています(図表9)。年度下期に入った 10 月に、幅広い商品の値上げが行われたこともあって、今後、年末にかけてプラス幅はさらに拡大する見込みです。』
よって展望レポートの見通しについて今年度の数字はさすがに外すのが嫌になったようでまともっぽい数字が出てきたのですが・・・・・・・・・・
『物価が上昇率を高めている背景には、国際的な資源高や為替円安を背景に輸入物価が上昇し、そうしたコスト高の価格転嫁が進展していることが挙げられます。』
と来た後にいつもの大本営になって、
『もっとも、先行きをみますと、物価上昇率は、年明け以降、徐々に低下していくとみています。』
となってその理由の説明をするんだが、
『国際商品市況はひと頃に比べて下落しており、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響は、減衰していくと見込まれます。今年度の消費者物価の上昇率は3%程度の伸びになると予想していますが、来年度以降は、1%台半ばの伸びになるとみています。このように先行き2%を下回っていくという見方は、日本銀行だけでなく、IMFや民間エコノミストなどにも共通しています(図表
10)。』
そもそもこういうプロフェッショナルフォーキャスターが外しまくっているのが今次物価上昇の特徴でして、日銀としては先日総裁会見でも某大江さん(あ、言っちゃった)に「日銀は最近の展望レポートで物価見通しを悉く外して大幅上方修正を余儀なくされていますが」みたいなツッコミを食らっておりましたが、そらまあ日銀もそれを言われるのは琴線に触れますので、「日本銀行だけでなく、IMFや民間エコノミストなどにも共通しています」という「皆外しているので仕方ない」理論を持ち出しているのがチャーミングですね。
『もちろん、経済の先行き見通しと同様、物価見通しについても、これまでコストプッシュ圧力をもたらしてきた国際商品市況や為替相場の動向など、不確実性は大きい状況です。』
『また、わが国企業は、長らく値上げに慎重な姿勢をとり続けてきましたが、このところ、幅広い商品で値上げが実施されています。今後の企業の価格設定行動を、注視していく必要があります。』
ということで、この辺から大本営メインシナリオではこうなっていますけど、まあそれはそれとしまして・・・・・ってコーナーが始まるのであります。
『加えて、企業の賃金設定行動がどう展開していくか、という点も重要です。』
価格設定行動と賃金設定行動の変化についてはちゃんと認識してるじゃん(って認識してなかったらさすがにおかしいから当たり前だけど)。
・賃金の話だが春闘一発ネタではない話をしれっとしていまして中々味わいがある
・・・・・でですね、ここから賃金ネタになるんですが、普通の普通に構造的に労働需給がタイトな状態が続くんじゃないでしょうか、っていう米国ほどじゃない(米国の場合は家計資産大杉問題で労働参加が進まないという更に大ネタがあるが日本はそんな威勢の良い話は無い)ですけど、構造的な話までしております。直上部分の続きになりますけどね。
『この点、労働市場では、先行き、需給ギャップの改善に伴って労働需給のタイト化が進むことが予想されます(図表
11)。とくに、サービス業では、感染症の影響が和らぐもとで、需要の回復が見込まれます。このため、サービス業に多い非正規労働者の賃金の上昇が見込まれるほか、これが中小企業などの正規労働者の賃金にも徐々に波及していくことが予想されます。さらに、労働需給のタイト化が進むなかで、より生産性が高い分野への労働力の移動などに伴って、賃金が上昇する可能性もあります。』
ということでして、物価上昇を受けた生活給要請に伴う賃金上昇、という春闘の話ではなくて、構造的に賃金上がって行かないかという話にこの先なるのよ。つまり上記の部分では需給ギャップの改善に伴う賃金上昇の話しなんですが、この直後に、
『また、やや長い目でみますと、生産年齢人口が減るなかでも、雇用者数は2013
年以降の約 10 年間で 400 万人以上増加してきました。これは、主に女性と高齢者の労働参加によるものです。今では、女性の労働参加率は、米国を超える水準まで上昇しています。ただ、逆に言えば、このことは、追加的な労働力の供給余地が徐々に小さくなっていることも意味しています。』
米国の場合は賃金の上昇に対して労働参加率が上がらないので労働供給が逼迫したままという状態ですが、日本の場合はこの説明にあるように、使えそうな労働力人口を使いまくっているのだが、追加的な労働供給が進まん、(何か日本の方が貧乏臭がただようのだがそこはキニシナイ)という話ですけど、いずれにしましても労働供給の方が構造的に逼迫しやすいという話をしている訳でして、これってまさに持続的な賃金上昇に資する話な訳ですよね。
『こうしたなかで、今後、労働供給面からも、賃金上昇が促されていく可能性が高いと考えられます。』
『来年春の賃金交渉では、こうした労働需給の引き締まりに加え、これまでの物価上昇が相応に賃金に反映されると考えられます。今後の賃金動向については、内外経済の動向等に左右される面もありますので、丁寧に点検していく必要があると考えています。』
ということで、メインシナリオ修正待ったなしみたいな説明になっているんですが、来春の賃金交渉を受けてシナリオを変えるのは次の総裁の初回展望レポートだから黒ちゃん関係ないですね!!!!!!!!!!!!
・・・・・・とは思ったけど、まあ後任用の理屈が出たのに関してはちょっとだけ味わいがあるかも知れませんと思いましたですわよ奥様。
・日本と海外の物価のステージが違うとの事だが
『4.日本銀行の金融政策運営』ですが、
『今年の4月以降、消費者物価の前年比は2%を超えており、直近は3%程度となっています。物価上昇に対する金融政策面の対応は、物価上昇の程度に加えて、物価上昇がどのような背景により生じているかによっても異なります。』
と言って米国と欧州の話をしているんですけどね。その米国を見ますと・・・・・・・・・
『例えば、米国の場合、コロナ禍以降、早期に経済が再開し、旺盛な消費活動が続いてきました。他方で、高齢者を中心に、労働供給の回復は遅れています。需要が供給を大きく上回ることで、労働市場がタイト化しており、インフレ率だけでなく、賃金上昇率も大きく上昇しています。こうしたもとで、賃金上昇率の影響を受けやすいサービス価格は物価全体を押し上げており、賃金と物価が相乗的に上昇するかたちで、物価目標を大きく上回る水準のインフレ率が続いています(図表
12)。このため、FRBは、急速な金融引き締めを通じて需要を抑制し、インフレ率の低下に努めています。』
とまあこれはその通りでして、一方の日本は
『この点、わが国の場合は、いずれのケースとも事情が異なっています。経済は、依然としてコロナ禍からの回復途上にあり、マクロ経済の需給ギャップはなおマイナス圏内です。経済の回復に伴って、今年度後半のいずれかの時点では、需給ギャップがプラスに転じるとみていますが、現時点で、需要面から物価上昇率が高まっているわけではありません。現在、輸入物価の上昇を起点とするコスト高の価格転嫁によって、2%を上回る物価上昇率となっていますが、先ほど申し上げたとおり、この影響が減衰していくにしたがって、来年度以降、物価は2%を下回る見通しです。』
ってなってるんですけど、経済の再開ステージの中で大規模緩和はそのまま、財政は盛大に追加で出す、挙句に家計には強制貯蓄などもあり多少の耐性はある、って米国のまんまとは言わないけど、色々と後追い面があるし、おまけに雇用情勢だって労働供給逼迫の可能性をさっき指摘している訳でして、何ちゅうかそういうのを並べた挙句に何で「インフレ率は1%程度まで下がる」といいきれるのか、という方が不思議なんですよねその前までに出している理屈だと・・・・・・・・・・・・・・
とまあそんな感じですので、早ければ1月展望ですが、まあ黒ちゃん交代のタイミングでは少なくても経済物価見通しのシナリオ修正必要になって来るんじゃないですかねえさすがにこうやって伏線を貼りだしてくると、と思いましたが希望的観測のような気もしますのでそこは悪しからずご了承ください。
2022/11/14
お題「10日に行われた地区連銀総裁講演ですがいずれも利上げペースの鈍化で様子見ていきましょうですわな」
あらあらそうですかそうですか。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221113/k10013889671000.html
米中間選挙 民主党 上院で半数獲得が確実 主導権維持へ
2022年11月13日 15時07分
〇先週の高官発言(の物価と政策部分)をチラ確認してみます(ジョージさんとローガンさん)
10日の日に高官発言出てましたが、カンザスシティ連銀とダラス連銀でこんな共同イベントがありましたんですよね。
https://www.kansascityfed.org/events/energy-and-the-economy-the-new-energy-landscape/
Energy and the Economy: The New Energy Landscape
THURSDAY, NOVEMBER 10, 2022
Federal Reserve Bank of Dallas, Houston Branch: 1801 Allen Parkway Houston,
The Federal Reserve Banks of Dallas and Kansas City will host their seventh
joint energy conference on November 10 in Houston. The conference will
focus on geopolitics as well the outlook for global energy markets and
the U.S. energy sector. Participants will include business leaders, central
bankers, government officials, academics and financial market representatives
というお題からお分かりのように、本来の話はエネルギーに関する話なのですが、まあそこはそこで金融政策とインフレの話もありましたぜ、ということで講演テキストが出ているジョージ総裁とローガン総裁の講演の現世利益コーナーを読んでみる。
https://www.kansascityfed.org/Speeches/documents/9244/2022-George-EnergyConference-11-10.pdf
Energy and the Outlook for the Economy and Monetary Policy
Remarks by
Esther L. George
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Kansas City
November 10, 2022
Delivered at “Energy and the Economy: The New Energy Landscape,” a conference
hosted by the Federal Reserve Banks of Kansas City and Dallas
Houston, Texas
思いっきり手抜きで『Outlook for Monetary Policy』の小見出し、という物価の話の小見出しすらすっ飛ばして拝読します。7枚ある講演の最後の2枚だけな。
・方向性はクリアだが問題は政策金利の引き上げの「how far and how quickly」だそうな
『Over the past year, the Federal Reserve has aggressively tightened monetary
policy. The policy rate has increased 375 basis points, the fastest pace
since the Fed began to explicitly target interest rates. After more than
doubling the size of its balance sheet during the pandemic, the Fed is
now allowing up to $95 billion in Treasuries and mortgage-backed securities
to mature every month, shrinking its asset holdings and putting further
upward pressure on interest rates.』
ここは今までこのようにタイトニングしましたよって話。
『More broadly, tighter monetary policy has fed through to tighter financial
conditions. And tighter financial conditions are showing through to the
real economy as demand eases, especially in interest rate sensitive sectors,
such as housing and durable goods.』
引き締めで金融環境がタイトになって住宅や耐久財といった金利感応度の高い財への需要が落ちてきました、とこの辺は先般のブレイナードなど以来皆が言ってる話と同じ。
『Still, imbalances in the economy and the labor market persist, and inflation
pressures have yet to let up, suggesting monetary policy and financial
conditions must continue to tighten.』
でも他の経済や労働市場の需給インバランスは残っていてインフレ圧力は(インフレの話はその前にあるが今日はすっ飛ばしてしまいましたサーセン)強いので、金融政策や金融環境は引き締めを続けるべきと。
『With the direction of policy clear, the key questions are how far and
how quickly will interest rates have to rise?』
ということで「方向性はクリアだが問題は政策金利の引き上げの「how far and
how quickly」だ」と来ましてまあここからが現世利益。
・今後起きて来る事象を見て判断するしかないしパンデミック前のセオリーは当てにならないそうです
『While it is tempting to speculate on how high rates might need to go,
the degree of tightening necessary will only be determined by observing
the dynamics of the economy and inflation and cannot be predetermined by
theory or pre-pandemic benchmarks.』
どの程度引き上げるか、に関しては「状況をみないと分からんしパンデミック前のベンチマークを見ても決まらんよ」とまあそう来るだろうなあって説明。
『For example, the sensitivity of the economy to interest rates can shift
for any number of reasons, and judging sufficiently restrictive policy
could well mean seeing the economy and inflation begin to respond in convincing
ways.』
経済の物価に対するセンシティビティが過去と違いますよって端無をしていまして、
『Some have argued that a minimum standard for a restrictive policy is
a positive inflation-adjusted, or real, rate of interest. Currently, survey
evidence indicates that consumers expect inflation to run at about 5 percent
over the next year, above the current 3-3/4 to 4 percent target range for
the policy interest rate, suggesting that the real interest rate remains
negative. This measure would point to considerably higher rates than current
levels.』
まずは実質金利的な話をしてて、足元の物価だけみたら実質金利大変なマイナスということになりますのでそうすると大変な利上げが必要になるって話になってしまいます。
『One factor complicating the determination of how high rates will have
to go is the large stock of liquid savings on household balance sheets.
During the pandemic, fiscal policy transferred a tremendous amount of balance
sheet capacity from the government to households and business. The government’s
borrowing was the private sector’s saving. How households treat this accumulation
of saving will be important for shaping the outlook for output, inflation,
and interest rates. 』
が、そこで話を複雑にするのはパンデミックによって増えた家計の貯蓄とか、財政政策によって給付された家計の貯蓄とかの話しだったりしまして、この貯蓄を家計が今のインフレや金利に対してどう扱うのかがポイントになります。
『It could very well require a higher interest rate for some time to convince
households to hold onto this saving rather than to spend it down and add
to the inflationary impulse.』
家計の貯蓄を使って消費じゃーとさせないためには金利をドーンと挙げる必要がある、とも言えますよね。ということで結局金利上げろって話ばっかりして次の「速度」の話になる。
・では利上げのペースはどうなるかと言えば「着実に熟考しながら」だそうです
『With inflation and a tight economy suggesting further increases in interest
rates are necessary, at what pace should rates be increased? With a firm
commitment to return inflation to target, the pace of hikes is less important
than the strength and communication of this commitment.』
利上げ速度についての話になる。
『I continue to see several advantages for a steady and deliberate approach to raising the policy rate.』
出オチのように書かれていますが、ペースダウンするのが良い!と言ってますね。
『A more measured approached to rate increases may be particularly useful
as policymakers judge the economy’s response to higher rates.』
よりメジャードペースで利上げしていくことによって、金融引き締めの効果を判断しながら調整が可能になるよ、ということで、まあそらそうでしょうなあという話。
『Already, the Federal Open Market Committee’s policy actions have led
to a sharp tightening of financial conditions. The yield on the 10-year
Treasury bond has increased 260 basis points since January, the fastest
increase in almost 40 years. Mortgage rates have more than doubled. The
dollar has appreciated 10 percent against a wide range of currencies, and
stock market indices have declined by about 20 precent. These are big moves
in financial markets, seen previously in only the most extraordinary times.』
今年に入ってからの金融環境のタイト化がこのように異例の速度で進行をしていますが・・・・・・・、
・中銀の引き締めスタイルが政策反応関数何だか分からん状態は怪しからんので改めるべきとな
『The speed at which rates have increased has likely contributed to the
marked increase in policy rate uncertainty, if only by widening the range
of possible action. Uncertainty around the policy rate is currently very
high, in part reflecting an unsettled outlook, but also importantly, uncertainty
over the central bank’s reaction function. I expect some of the increase
in uncertainty can be attributed to an aggressive front-loading strategy
of policy tightening. As the tightening cycle continues, now is a particularly
important time to avoid unduly contributing to financial market volatility,
especially as volatility stresses market liquidity with the potential to
complicate balance sheet run-off plans.』
この金融環境の大幅かつ急速なタイト化は、先行き見通しの不透明感もさることながら、金融政策当局の政策反応関数が不透明になっている(ちなみにジョージ総裁は最初の75利上げの時、直前に強引な地均しをして利上げ幅を拡大したことに反対して50利上げすべきと反対票を投じています、タカ派なんですけど「政策反応関数の筋を通せ」ってことで)のがありますよ、ということで、「now
is a particularly important time to avoid unduly contributing to financial
market volatility, especially as volatility stresses market liquidity with
the potential to complicate balance sheet run-off plans.」よいうことで、変な不透明性を無くせ、特にランオフプランにおいて、とぶっこんでおりますな。うんうん。
『Restoring price stability is essential to the nation’s long-run economic
growth prospects. Without question, monetary policy must respond decisively
to high inflation to avoid embedding expectations of future inflation.
In my view, a steadfast commitment to returning inflation to the Committee’s
target is important. So is the pace of rate increases. Navigating the path
ahead in this time of uncertainty and volatility will require attention
to both』
ということで結論になりましたが、ここから先の金融引き締め強化においては「ペースを緩め」かつ「政策反応関数が事前に分かる形で」運営すべきである、という話をしております。
ただですね、ここれもう一つ忘れてはならんのは、ゆうて今の高インフレは下げないと行けないって言ってるんですから、隙あらばゴルディロックスヒャッハーをやりたがるアメリカン金融市場ですが、別に利下げに転じる話はしてないし、寧ろここで利上げペースをガタンと減らされると、高金利の時間帯が長くなるって事になる筈なんですよね。なぜか一足飛びに利下げの話をしたがるのは何なんでしょうかねあれ。
・ローガン総裁の金融政策に関するお話
https://www.dallasfed.org/news/speeches/logan/2022/lkl221110
Speech by President Lorie K. Logan
Opening Remarks for 'Energy and the Economy: The New Energy Landscape' Conference
Dallas Fed President Lorie Logan delivered this address to open the conference hosted by the Federal Reserve Banks of Dallas and Kansas City in Houston.
November 10, 2022
前半は本題のお題のエネルギーの話ですが、途中から政策の話になります。
・「インフレが物凄く大変高い」に集約されてて本日のCPIは結構でしたが「still a long way to go」
『Today’s economic conditions are complex, but they can be summarized in five words: Inflation is much too high.』
ワロタ。
『Not only is inflation far above the FOMC’s 2 percent target, but with
aggregate demand continuing to outstrip supply, inflation has repeatedly
come in higher than forecasters expected. This morning’s CPI [Consumer
Price Index] data were a welcome relief, but there is still a long way
to go.』
ということで、こちらは木曜に出たCPIを反映したお話をしています。でもって以下は高インフレ抑制大正義理論についてああでもないこうでもないと説明していまして・・・・・・・・・・・
・以下高インフレ抑制大正義の話だが実質金利の話をしていて視点がジョージさんとはちょっと違うのは覚えておきます
『Price stability is foundational for a healthy labor market and economy over time.』
物価安定は持続的な健全な労働市場や健全な経済にとっての基礎ですよ、と来ましたので後の話はお察しかと思いますが、
『When inflation is high, it is difficult for families and companies to
plan for the future and difficult for financial markets to allocate capital
to the most productive uses. High inflation leaves many workers falling
further and further behind, as their wages fail to keep pace with the cost
of food, gas and other necessities. High inflation makes the business cycle
more volatile, undermining the long and stable expansions that particularly
benefit the most vulnerable in society.』
高インフレイクナイ!って例ね。
『In short, high inflation is a drag on our economy. The longer it continues,
the worse the drag gets, the greater the risk that high inflation becomes
entrenched and the greater the cost that must be paid to bring inflation
down.』
『The Federal Reserve has a dual mandate for monetary policy?maximum employment
and price stability-but to achieve the maximum employment part of the mandate
in a sustainable way, I believe monetary policy must focus now on promptly
restoring price stability.』
高インフレの期間が長くなること、インフレが上振れしまくるのどっちもダメだから政策対応してるよ。
『The FOMC has raised its target range for the federal funds rate by 3.75
percentage points since the start of the year, including with historically
large 75-basis-point hikes at each of the past four meetings. Financial
markets are pricing in the expectation of substantial further increases,
and the FOMC is also removing monetary accommodation by reducing our asset
holdings as described in the plans that the FOMC issued in May. As a result,
broad financial conditions have tightened significantly. The 10-year Treasury
yield has risen to more than 4 percent, compared with 1.51 percent at the
start of the year, and option-adjusted yields have reached nearly 6 percent
on investment-grade corporate debt and about 9 percent on high-yield debt.
Thirty-year fixed mortgage rates have climbed to 7.32 percent from 3.27
percent. Importantly, real-or inflation-adjusted-interest rates, as measured
by yields on Treasury Inflation-Protected Securities, are significantly
above zero across the yield curve.』
引き締めでこんなタイトニングが進みました、って話ですけど、最後のところで「TIPSのBEIで見た実質金利がプラス水準になっているのダイジダイジネー」と言ってるのはちょっと注目しておいて良いと思います。
・ファイナンシャルコンディションの引き締まりで需要を減退させましょうの件について
『These tighter financial conditions are beginning to bring demand back
into balance with supply, particularly in interest-rate-sensitive sectors
such as housing.』
同じ会場で(話をした時間はローガンさんの方が早い)すから同じこと言うってのもありますが、金融環境のタイト化で住宅などの金利感応度の高い需要が下がって来ました、ってもう判で押したように全員言うね。
『Sufficient cooling of the economy will eventually bring inflation back
to our target. But this process is just getting started. The labor market
remains very tight, and wages continue to grow considerably faster than
the rate that would be consistent with 2 percent inflation.』
とは言え全体的に効いてくるのはこれから「this process is just getting started」の話で需給のインバランスはまだまだ強いと。
・金融市場の反応に配慮するどころか本来はこうあるべきなんですが、という感じで金融市場にはお厳しいですな
『You may have heard debate about whether tighter policy will imperil the
financial system. It’s important to remember that higher interest rates
should cause pressures. As you are likely well aware, some investments
that had a positive net present value at last year’s interest rates do
not make sense at today’s higher rates. Some projects will have to shut
down. Financial markets, businesses and the economy will have to adjust
after so many years of near-zero rates. Such adjustments are expected and
appropriate to moderate demand and reduce inflation.』
金融引き締めは金融システムの財産を奪う、という議論がありますけど、この1年の利上げによって投資収益率の低い事業を行わなくなって来る、という動きが出ることは需要の調整から物価上昇圧力を下げます、とぶっこんでいまして、つまりはこれは金融市場に配慮して利上げ止めるとか下げるとかそういう話じゃねえよバーカって所でしょうか。
『So far, I believe we are seeing a normal financial market response to
tighter monetary policy. Although the cost of credit continues to rise
and issuance continues to slow, credit markets remain open for most borrowers.
And while liquidity conditions in key financial markets have been strained,
those strains appear so far to result primarily from high economic uncertainty
and volatility that raises the costs of market-making, rather than the
other way around.』
だそうで、ゼロ金利前提の市場はあると思うなよって話だし、それが通常の姿だよ、と水を掛けて下さいますな。
・とは言え短期的なインフレのコストを無駄に上げないという妥協的なお話も入って来る
『Although inflation poses hardships in the near term and damages the economy’s
long-run strength, falling house prices, a cooling labor market and tighter
financial conditions create hardships of their own.』
『I believe that the FOMC must do everything we can to restore the price
stability that will support a healthy economy in the long run, but we should
also try, if we can, to avoid incurring costs that are higher than necessary.』
インフレ抑制大正義、とは言え必要以上に引き締めのコストを経済に掛けるべきではないキタコレ。
・ということで利上げペース鈍化の話だが「今後の指標次第」ではあるものの鈍化させる気は満々っぽい
『In my career in financial markets, I’ve learned that financial conditions
usually evolve smoothly but sometimes deteriorate abruptly, with severe
consequences for the economic well-being of households and businesses.
As financial conditions become more restrictive, I am attentive to the
potential for nonlinear and unexpected responses to further policy tightening.』
『While I believe it may soon be appropriate to slow the pace of rate increases
so we can better assess how financial and economic conditions are evolving,
I also believe a slower pace should not be taken to represent easier policy.
I don’t see the decision about slowing the pace as being particularly
closely related to the incoming data.
『The restrictiveness of policy comes from the entire policy strategy-not
just how fast rates rise, but the level they reach, the time spent at that
level, and, importantly, the factors that determine further increases or
decreases. The FOMC can and should adjust other elements of policy to deliver
appropriately tight conditions even as the pace slows. We must remain firmly
committed to our 2 percent inflation goal.』
金融市場は突如一気に動くこともありますが、今後バカスカ引き締めをしていくとそのリスク高まりますので、そういうのは回避しましょうよ、という話をしてさっきの話しとのバランス取ってますね。でもってだからこそ利上げペースは緩くして、今後の指標をみましょうとなりますが、
・重要指標は労働市場、経済、実質金利(フォーキャスターの物価見通しに基づく)だそうです
『I will look to a wide range of information to assess whether policy is
sufficiently restrictive. For example, I’ll be watching the evolution
of the labor market and economy, as well as thinking about real yields
and about the accuracy of inflation forecasts, among other factors. 』
小見出しに書いた通りですが、重要指標は労働市場、経済、実質金利(フォーキャスターの物価見通しに基づく)を特に見て行きます、だそうです。
『Real interest rates remaining significantly above zero would contribute
to the slowing of demand that I expect will reduce inflation. By contrast,
inflation forecasts that consistently miss on the low side do not foster
confidence that we understand the inflation process well enough to predict
success.』
ふーん。
・最後はご挨拶
『That is a lot of words to explain a five-word economic situation. So
let me sum up. Inflation is much too high. The FOMC must restore price
stability-but must also proceed in a way that allows us to better assess
how financial and economic conditions are evolving. That is how we can
deliver the healthier economy, with stable prices and maximum employment,
which is the Federal Reserve’s responsibility.
Thank you. I look forward to learning from all of you today, and especially
to hearing President George’s keynote remarks over lunch.』
でもって昼飯の後にさっきのジョージ総裁の基調講演があったという流れですな。
2022/11/11
お題「米国CPIを受けた値動きにビビって備忘メモ大会になってしまいました(すいませんすいません)」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB102N30Q2A111C2000000/
日銀総裁、続投「希望は全くない」 23年春の任期満了後
金融政策
2022年11月10日 12:50 [有料会員限定]
数か月前までははよ辞めろやと思ってたが、無茶苦茶なオペで更に債券市場を焼け野原にしてしまって、これどうやって収拾するんだ状態にまでし、物価見通しとかも完全に「自分の退任までに政策変更と言われないように逆算して作成」というようなハチャメチャなことまで最後にやっているのに、これで逃げ切りとかあり得んでしょ。
つまりね、ここまでいろんなものを破壊しまくった黒ちゃんは出口まで責任取って政策遂行する義務があると思う訳ですし、何なら次の副総裁置物師匠にしていただいて、この政策の収拾にご一緒に苦しみ抜いて頂きたいわけですわ。収拾しなければ一生総裁続けるということで。
指値オペで市場は変な状態にされるわ、政策ロジックは完全崩壊しているわと、最低でも今年に入ってからの無茶苦茶は全部責任もって収拾しないと、黒田さんの後任の人達、ガースー状態になってしまって前任のケツ拭きやってるのに非難轟轟という話になるんでございますけどねえ・・・・・・・・・・・・・
〇米国CPIキタコレということで
・米債30毛強ワロタがドル円もそうなるわな
おおおおおおおおお!
https://jp.reuters.com/article/global-markets-dollarindex-idJPKBN2S01UJ
2022年11月11日1:44 午前
ドル一時3%安の141円台、下げ幅16年6月以来最大 米CPI受け
この前の海外金利低下は8月でしたけど、海外金利低下して0.25%が遠くなってくれないとYCCの柔軟化って出来ないから、ある意味チャンスなんですよね、と思ったが良く考えたら12月の後ろの方までMPMが無いのでありましたorzorz
まあ単発なのか継続的なのかとか次を見ないと分からんってことなんでしょうけど、一々全部の材料に派手に反応してて、いやだから米国債券市場はどういうのをメインに置いて考えているのか、ってのがさっぱりワカランチ会長状態になっておりますですよね。
以下要人発言内容全部確認している余裕は無いがとりあえずロイターニュースをクリップクリップ
・もうすぐ退任ですけど今回の利上げ局面で一番筋を通してたジョージ総裁
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-george-idJPKBN2S027Y
2022年11月11日5:44 午前
米利上げ、「着実かつ慎重な」アプローチに利点=カンザスシティー連銀総裁
『[10日 ロイター] - 米カンザスシティー地区連銀のジョージ総裁は10日、「政策金利の引き上げには着実かつ慎重なアプローチにいくつかの利点があると引き続き考えている」とし、米利上げペースの鈍化に改めて支持を表明した。』
『カンザスシティー地区連銀とダラス地区連銀が共催したエネルギー会議で「将来のインフレ期待が刻み込まれることを避けるため、金融政策は高インフレに断固として対応しなければならない」と指摘。ただ、大幅な利上げは金融市場のストレスを増大させるとし、「金利上昇に対する経済の反応を政策当局者が判断するために、利上げへのより慎重なアプローチが特に有効だ」とした。』
『また「引き締めサイクルが続く中、今は金融市場のボラティリティーを過度に助長しないようにすることが特に重要だ。ボラティリティーが市場の流動性にストレスを与え、バランスシートの縮小計画を複雑にする可能性がある」とした。』(以上上記URL先より)
ということですけど、このアプローチだとそれこそ25bpづつチンタラと利上げしていくコースとかになってしまう可能性があるんで、確かに中短期債はニッコリなのですが、長期とかの金利をそんなにヤッホーと押し下げてよいものかどうか、ってのは実は悩ましいんジャマイカと思うのよ。
・お馴染み鉄砲玉のデーリー総裁
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-daly-idJPKBN2S01US
2022年11月11日1:49 午前
CPI伸び鈍化、単月では勝利宣言できず=サンフランシスコ連銀総裁
『[10日 ロイター] - デイリー米サンフランシスコ地区連銀総裁は10日、同日発表された10月の消費者物価指数(CPI)が予想ほど上昇しなかったことは「よいニュース」だが、単月の結果ではインフレとの戦いに勝利したとは言えないと述べた。目標である2%達成に向け「断固とした姿勢」で臨む方針を示した。』(上記URL先より、以下同様)
まあ単月では誤射かもしれない、って奴ですし、大体からしてこの前の米国の金利低下もそれでしたからねえ。しかし何故か弱めのインフレの数字出るときって次のFOMCまでそこそこ時間のあるタイミングになるのがオシャンティーなんですよね米国様。
『また同総裁は、利上げペースを鈍化させる時期に来たと感じているとしながらも、最終的には、利上げが不十分となるよりも少し行き過ぎる方を支持すると表明。FRBが引き締めを早期に停止してインフレ期待の高まりを長期化させるようなことがあってはならず、1970年代の失敗を繰り返すべきではないとした。それでも、経済が不必要なほど深刻な不況に陥る可能性を減らすために、利上げについて「注意深く」「思慮深く」あることが重要だと述べた。』
「FRBが引き締めを早期に停止してインフレ期待の高まりを長期化させるようなことがあってはならず」って辺りですけど、元々の発言を直接あたっている訳ではないので多少そこは割り引いていただきながらになりますけど、昨日ネタにした空気副総裁のインフレ期待云々の話がありましたが、インフレ期待のアンカーが外れる例としては「長い期間における物価の上振れ」を挙げていましたけど、ここでもデーリー総裁(なお付け加えるとウィリアムズNY連銀総裁はその前にSF連銀総裁やっててデーリーさんはウィリアムズさんの後任です)が「長期間の高インフレを放置しているとインフレ期待の上振れ定着化リスクがある」という認識を示していますな。
まあ何ですかね、つまり現水準で長々と物価が止まってしまうと困るので、減速して欲しいというのがあるんだが、(この次のローガンさんの発言も含めて)明確に引き締め領域に入ったFF金利という状況になって、やっぱり「引き締め的政策」なんて無茶苦茶久しぶりだし、さらに構造的な変化がパンデミックとグローバルな政治環境の変化によって起きている可能性があるので、おそらく過去の理論とかあんまり役に立たないだろうなーってことなので、「中立金利」までは威勢よく行けたけど、ここに来てさすがに強烈な引き締めをするのは躊躇されますってことなんでしょうね。
となると12月は高くて50、もしかしたら12月以降急に「メジャードペース」とか言い出して1会合毎に25bpとかになったらそれはそれで笑えますな。
ということででさっきのデーリーさんの発言の多分ポイントを再掲すると、「最終的には、利上げが不十分となるよりも少し行き過ぎる方を支持すると表明。」って辺りで、これって「高インフレが長期化するのはインフレ期待のアンカーの意味から望ましくないので、物価が下がりだすのに十分な水準までは政策金利の引き上げを行うべきである」って話なのですが、一方で行き過ぎに関しても「少し」行き過ぎくらいで寸止めできませんか、という風に考えている訳ですから、そうなりますともはや75みたいな豪快な利上げは無くて、次回50するにしてもその後は25とかしか上げてこないって感じでやっていく(ただし物価が明確に下がってこないとそう簡単に旗は降ろさん)という話になりそうですよね。
そこで声明文の「金融政策の波及ラグを考えて」云々という話につながると思うのですが、つまりここからは利上げペースを落としておかないと、高インフレの鎮静化がある程度見えた時点で利上げ停止するにしたって、政策の波及効果のラグ(一般的には短くて半年とか言われる)があるんだから、威勢よく利上げしてたらその「行き過ぎ」がエライコッチャになるのに対して、1会合で25bpなら、半年間での利上げが100bpなのでまだ傷は浅い、って発想になるでしょうから、これうっかりしたら12月から毎会合25bpでインフレの落ち着きを確認したらいったん利上げ停止、みたいな話になるのかなって思ってしまいました。それが債券の買い材料なのか売り材料なのかは結構難しい所ですが、ついこの前まで「ターミナルレート6%とかリスクシナリオで考えなきゃ」みたいな、どうしてお前らそんなに極端から極端に振れるんやというあれもあったので、まあ昨日は総合的にああいう反応になったんでしょうかね、よー知らんけど。
・ダラス連銀ローガン総裁
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-logan-idJPKBN2S01UW
2022年11月11日1:49 午前
米利上げペース鈍化が適切の公算、10月CPIを歓迎=ダラス連銀総裁
『[10日 ロイター] - 米ダラス地区連銀のローガン総裁は10日、連邦準備理事会(FRB)のインフレとの戦いはまだ終わっていないとしながらも、10月の消費者物価指数(CPI)が予想ほど上昇しなかったのは「歓迎すべきこと」とし、利上げペースの鈍化が近く適切になる可能性があるとの認識を示した。』(上記URL先より、以下同様)
ということで。
『ローガン総裁はダラス地区連銀とカンザスシティ地区連銀がヒューストンで開いたエネルギー関連の経済会議で、インフレ率はなお高すぎるとし、「まだ長い道のりが残されている」と指摘。ただ「10月のCPIは歓迎すべきものだった」とし、「金融、経済情勢の展開を見極めるため、利上げペースを減速させることが近く適切になる可能性がある」と述べた。』
ジョージさんとローガンさんは同じイベントお話をしているのね。
『ただ、金融引き締めペースの鈍化が金融政策の緩和と混同されることがあってはならないとも指摘。』
ってのが直後にありまして(以下引用すると全部引用になってしまって申し訳ないので割愛な)、この辺の話も何かストーリーとしては良く出来てるなって感じです(個人の感想です)。
と申しますのは、やはりここ30年くらいでは前代未聞の利上げペースをぶっこんで、引き締め的な領域に政策金利水準を持って来ただけに、さすがにここから先の利上げについては威勢よくやるのは怖いけど、どこまで上げると効くのかも謎なので、そうなると現時点でいきなりステイとも行かず、今後はおっかなびっくり利上げしていく(物価がホイホイとまた上がりだすなら利上げが明らかに足りないということになるのでペース再加速とか起きるんでしょうけど)ってなシナリオがFOMC参加者のコンセンサスビューになっていますよ、って事なんじゃないかと思います。
とは言いましても、何せ市場ちゃんの方は「その先」を織り込みに行くので、「金融引き締めペースの鈍化が金融政策の緩和と混同されることがあってはならないとも指摘」というのはひたすら強調しないと、資産価格ヒャッハーからの家計資産ヒャッハーでわざわざ働きに行くかよヴォケ状態からの労働需給のクソ逼迫、というのがオワランチ会長になって賃金物価スパイラルのリスクを高めるから、そっちは口頭で釘をブズブスと刺しておく、というのが基本的な戦略なんでしょうな、ってのは割とアタクシ的には見えてきたと思いますが、アタクシがみているものが実は砂漠の蜃気楼である、というのはよくあるオチなので話10分の1くらいに聞いて下さいね。
・一連の(CPIがちょっと軟化したから発言とは言え)発言とFOMCの関係ですが
FOMCネタをやった時に、声明文は割と金融市場喜びそうだけどオープニングリマークは金融市場(ノ∀`)アチャーで、その後出てきた会見ではパウエルさんタカオブタカみたいな感じの発言を前半の政策絡みの質問でぶっぱなしていましたが、この一連の地区連銀総裁発言(がどこまでFOMCの大勢見解に近いのか、という問題はもちろんあるので全部真に受けれるのかは別なんですけど)を拝読するに、やはり原則的にはここから先はおっかなびっくり利上げを実施して行って(ただしCPIが一段高になるなら話は別)、とは言え先読みして直ぐに緩和だゴルディロックスヒャッハーだと言い出す驚異の金融市場があるので、そこに対してはとにかく落ち着けと水をぶっかけまくって、というのをやっていくのがメインなんだろうなあ、ってまあ思った次第です。
なのであんまり派手にヒャッハーヒャッハーやってるとメスターかブラード辺りから水ぶっかけ祭りがおこなわれるんじゃねーのと思いながら米国債券市場の超ジャイアントスイングを目をまん丸くして眺める今朝のアタクシなのでございましたですわよ。
とか何とか書いてたら時間が中途半端になってしまったので、米債市場のレビューがロイターさんにアップされてたのでそれも備忘で貼っておきます、なんか備忘メモ大会になってしまいましたが、一連の発言に関しては拾えるものは週末に拾う努力をしますね。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N3264OS
2022年11月11日5:44 午前
米金融・債券市場=利回り急低下、CPI受け利上げペース鈍化観測
『[ニューヨーク 10日 ロイター] - 米金融・債券市場では、国債利回りが急低下した。10月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが予想を下回ったことで、連邦準備理事会(FRB)の利上げペースが鈍化するとの観測が高まったことが背景。
10年債利回りは一時3.824%まで低下し、5週間ぶりの低水準を更新。その後は29.8ベーシスポイント(bp)低下の3.844%。一日の下げ幅としては2009年3月以来の大きさとなる見通し。2年債利回りは一時4.29%と、約1週間ぶりの低水準を付けた。その後は29.6bp低下の4.334%。一日の下げ幅としては08年9月以来の大きさとなるもよう。
』(上記URL先より)
30年債 15時37分 4.0758% 前営業日終値 4.3190%
10年債 15時37分 3.8349% 前営業日終値 4.1420%
5年債 15時37分 3.9532% 前営業日終値 4.2830%
2年債 15時37分 4.3384% 前営業日終値 4.6280%
単月の指標でこんなにジャイアントスイングするなよって思いますけどね・・・・・・・・・・・・・
#CPIでビックラこいて備忘メモ大会になってしまって誠に相済みません
2022/11/10
お題「置物化著しいウィリアムズ副総裁がインフレ期待の話をしていたので講演を読んでみた件について」
中間選挙ってこんなに接戦になるんでしたっけ(不勉強)。
〇ウィリアムズ副議長の長期インフレ期待はアンカー理論が味わいのある屁理屈な件について
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-williams-idJPL6N3250DT?il=0
2022年11月10日5:14
米長期インフレ期待安定、見通し不確実性は高い=NY連銀総裁
直近にアップデートされたのこれですが、チューリッヒでの講演だったので確か昨日の日本時間の夕方にもヘッドライン出てた気がする。
まあウィリアムズ自体は貫禄の置物あるいは空気状態になっておられるので、そんなにシャカリキになってみるほどのものでもない(ダドリーの時は真面目に見てたんですけどねえNY連銀総裁の発言を)のですが、若干無理筋じゃないのって屁理屈があったのでちょっとネタに。
https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2022/wil221109
SPEECH
A Steady Anchor in a Stormy Sea
November 09, 2022
John C. Williams, President and Chief Executive Officer
Remarks at SNB-FRB-BIS High-Level Conference on Global Risk, Uncertainty,
and Volatility, Zurich, Switzerland
As prepared for delivery
冒頭に、
『It is a pleasure to be here today to discuss a timely and important topic:
the anchoring of inflation expectations.』
ってことで、インフレ期待をアンカーさせる云々というのがお題ですよって話をして、
『Against the backdrop of the stormy seas of the global inflation of the
past year and a half, a steady anchor is more critical than ever. But,
what does it mean for inflation expectations to be well anchored, and how
would we know if they are? 』
こういう時代だからこそインフレ期待がアンカーされている事が重要であるがじゃあどうやって計測するのかそのメカニズムは何ですか、というお話でして、
『In my remarks, I will describe three criteria for well-anchored inflation
expectations. I will then provide an initial assessment of the behavior
of inflation expectations in the United States against these three criteria
since inflation surged in the spring of last year. I should emphasize the
word “initial,” since we are still in the midst of the storm, and definitive
conclusions on the anchoring of expectations will await the ship’s safe
return.』
ということで、十分にアンカーするインフレ期待、というものに3つの判断基準があるって話と、その判断基準に沿った場合に現状がどうで今後がどうなのかって話をするのが今回のお題。
ちょっと飛ばして『Theory』って小見出しの所に行きますが。
・物価の数年間にわたる上振れ、大きな幅の上振れ、先行きの不透明感の拡大はインフレ期待のアンカーの敵だそうです
『It is one thing to say that anchored inflation expectations are important,
but what do we mean by well-anchored expectations, and how would we know
if they are well anchored? I will start by describing some theoretical
implications of well-anchored inflation expectations, and then turn to
an empirical assessment based on U.S. data from the past few years.』
まあそもそもがインフレ期待がアンカーされてるかどうかってのがフワッとした概念なのに「theoretical
implications」もへったくれもない気がするのですが(無学ですいません)3つの判断基準があるんですと。
『My thinking on this issue is based largely on a series of research papers
I wrote with Athanasios Orphanides. We used models with adaptive learning
to contrast the predicted behavior of inflation and inflation expectations
in two environments: when the public anchors its expectations on the central
bank’s long-run target and when the public’s perception of the central
bank’s target evolves depending on incoming data.3』
脚注見ますと、『3 See Orphanides and Williams (2004, 2005, and 2007). There
is a large theoretical and empirical literature on the formation of expectations.
See, for example, Evans and Honkapohja (2001), Malmendier and Nagel (2016),
Coiboin et al (2022), and references therein.』
何ちゅうかまあ2022年のは良いんだけど大昔過ぎてどうなのって気はしますけど、まあ次に参りましょう。
『This analysis and related studies imply three criteria for well-anchored
inflation expectations: “sensitivity,” “level,” and “uncertainty.”
Let me take each in turn.』
センシティビティ、レベル、不確実性、をもって十分にアンカーされたインフレ期待かどうかってのを見分けるようですよ。
『The sensitivity criterion states that although near- and medium-term
inflation expectations may respond to economic shocks, expectations of
inflation far in the future should not.』
センシティビティの面で見た場合、経済のショックに対してショートタームやミディアムタームのインフレ期待は反応するけれども、ロンガーランのインフレ期待はそうではないですよね、って分析になっています。
『Well-designed monetary policy will generally allow for some response
to shocks of short- and medium-term inflation expectations in order to
balance competing objectives, but long-run inflation expectations should
not be affected. In a formal sense, this criterion is about the very long-run
response of inflation to shocks, but as shown in my research with Orphanides,
the beneficial effects of anchored expectations on macroeconomic performance
only occur when the inflation response to a shock is not expected to extend
over many years. As Keynes admonishes us, in the long run we are all dead,
and the notion of long-run expectations cannot be too long.』
ロンガーランのインフレ期待は、インフレが「extend over many years」じゃなければ反応しません、ってのがおっちゃんの研究によって示されているそうなのだが、そもそもおっちゃん研究だしたのグレートモデレーション時代じゃんというツッコミがあるのと、そもそも中銀のクレディビリティ問題を捨象してねえかという気はする。
『This sensitivity criterion requires long-run inflation expectations to
be invariant to shocks. In contrast, the level criterion applies the more
stringent standard that the rate of long-run inflation expectations be
consistent with the central bank’s long-run inflation target.』
経済ショックよりもレベルの方が重要な点だという話をしておられるようでして、
『In other words, it demands that expectations not just be anchored, but
anchored to the right spot. These first two criteria are present in the
FOMC’s statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy, which
stresses the anchoring of longer-run inflation expectations at the target
level and recognizes that short-run trade-offs between inflation and economic
activity may arise.』
インフレの水準の目標に対するずれが長期間にわたって上振れることと、水準自体が大きく上振れることについてはいずれも問題である、という結論のようで、だからこそFEDのロンガーランゴール&ストラテジーでも「一時的な乖離」はOKしているし、平均的な物価が2%であれば良いということは、多少の上振れは容認するという話をしております、とまあ言ってることは一応理屈としては通っている。
『The third criterion-uncertainty-requires that uncertainty about future
inflation increases less than linearly with the forecast horizon.』
最後の不確実性ってのは将来の物価見通しへの不確実性だそうで。
『Transitory responses of inflation to shocks imply uncertainty about future
inflation, even far in the future. The uncertainty criterion is about the
relationship between the magnitude of uncertainty and the forecast horizon.
It is closely related to the sensitivity criterion, in that permanent shocks
to inflation are ruled out. The counterexample is if inflation follows
a random walk process, whereby shocks have permanent effects on inflation,
then uncertainty, as measured by the standard deviation from the distribution
of future outcomes, rises linearly with the forecast horizon.』
何かわかったようなわからんような説明ですが、アタクシの解読した感じですと(すいませんテキトーで)先行きのインフレに関して今の延長線上で想定できるのか、それともなんか訳分らん不確実なものがあってよー分からん状態になる(=ノンリニアな変化が生じるリスクって話ですな)のか、というのがポイントで、わけわからんとインフレ期待のアンカー的にはマイナスって話をしているっぽいでありますが、まあこういう話を今こういう時期におっぱじめている時点でウィリアムズの微妙感が分かるなあと意地悪く解釈しました。
・今はどうなのかという話になるのですが・・・・・・・・・・・・
じゃあ今はどうなのかというのが『Applying Theory to the Real World』というこの次にある小見出しから始まりますが。
『In the years up to and including the first year of the pandemic, inflation
had been running consistently below the FOMC’s 2 percent longer-run target.
Then, in the spring of 2021, inflation readings surged, bringing the personal
consumption expenditures (PCE) inflation rate to around 6 percent, where
it has remained through the first nine months of 2022. Consumer price index
(CPI) inflation rose by even more. This episode represents a unique opportunity
to assess the three criteria of well-anchored expectations during a period
of high and volatile inflation.4』
最初はここまでの物価推移の説明で、じゃあこれはウィリアムズのいうインフレ期待のアンカーに関してどう影響するのか、という話です。結論はさっきのロイター記事にある通りですけどね。
・ロンガーランのインフレ期待というものが絶対的に存在するという話になっていねえかこれ????
ということで説明がおっぱじまるのですが、のっけから怪しげな(個人の感想です)話が始まります。
『In empirically assessing the sensitivity and level of longer-run inflation
expectations, one must specify what forecast horizon corresponds to the
“long run.” Surveys don’t typically ask about inflation in the “long
run,” but rather the inflation rate over a specific period of time. A
reasonable and oft-used benchmark of longer-run inflation expectations
is to look at inflation five or more years in the future. Such a forecast
horizon is sufficiently long enough for typical business cycle dynamics
and the effects of monetary policy on inflation to have played out, although
under some circumstances, this may fall short of the “long run” implied
by theory.』
いきなり斬新な説明(個人の感想です)が始まっている気がするのは「Such a
forecast horizon is sufficiently long enough for typical business cycle
dynamics and the effects of monetary policy on inflation to have played
out, although under some circumstances, this may fall short of the “long
run” implied by theory.」って部分でして、サーベイなどでは「ロングランのインフレについてどう予想しますか」という設問は存在しなくて、「何年先のインフレは」というような形で調査していますよね、という事実の指摘から上記の結論になるところであります。
何ですねんという話なんですが、ウィリアムズ大先生の説明によりますと、「ロングランのインフレ期待」というのはあくまでも「ザ・ロングランのインフレ期待」みたいなのが存在しており、サーベイ調査による「〇年後のインフレ期待」というのは、確かに人々の経済活動のサイクルとして見た場合には長期間のもの(5年とか8年とか)について質問しているのですが、それは「ザ・ロングランのインフレ期待」から見たら十分な期間が無い、という説明をしているようですな。
いやいやいやそこは何なのとアタクシとか思う訳で、そもそも「インフレ期待の安定」ってのは社会における経済主体の行動が経済サイクルの中で物価の多少の上下に対して安定的に反応することによって、経済のスタビライザーとして機能して、その結果経済サイクルの過剰な上下とか、ひいては物価水準の極端な上下や、過剰なインフレによる社会厚生の低下を避けられる、ってコンセプトの筈で、経済主体の中長期的な行動判断の1つの基準となる期間のインフレ期待は「セオリーとしてのロングランに対して期間の長さが不十分である(キリリッ)」ってのさすがにそれの理屈はおかしくないの????って思ってしまうのですがどうっすかねえ。いやまあ無学なんでよくわからないですけど。
・フォーキャスターズサーベイとBEIとミシガン大学サーベイの話が出て来るのですが・・・・・・・・・
という?????な理屈から始まりましたが、現在の状況についてのアセスメントとして以下こうではないかという話が始まります。まあ流し読みしてちょんまげ。
『Over the past year and a half, measures of longer-run inflation expectations
have been insensitive to the rapid rise in inflation. Figure 1 shows the
time series of these measures of longer-run inflation expectations.』
まず結論があって、この1年半ほどの間、「ロンガーランのインフレ期待は足元の急激な物価上昇に対してセンシティブではありませんでした」とぶっこんできました。でもってその根拠は以下の通りでプロフェッショナルフォーキャスターサーベイと米国物価連動国債市場におけるブレークイーブンインフレ率の推移だそうです。
『This includes median expectations from the Survey of Professional Forecasters
(SPF) for inflation measured by the PCE price index 6-10 years in the future;
breakeven inflation rates 6-10 years in the future as implied by nominal
and inflation-protected U.S. Treasury securities; and the University of
Michigan survey of inflation expected over the next 5-10 years.5 Realized
12-month CPI inflation is also shown in the figure for reference.』
で、そのチャートが別にあるんで、図表1だの2だのという話がこの後おっぱじまるのでチャートのページつけておきます。
https://www.newyorkfed.org/medialibrary/media/newsevents/speeches/2022/wil221109/charts
『As seen in Figure 1, SPF longer-run inflation expectations have remained
remarkably stable over the past year and a half, while the market-based
measure and the Michigan survey rose modestly during 2021 before retracing
some of those gains this year.』
参考までに、とかいってミシガン大学のサーベイ調査結果も一緒に出してて、上記チャートページの最初と次の辺りになるのですが、テーブル1と図表1を見ると、プロフェッショナルフォーキャスターの6−10年先の物価見通しは極めて安定しているけれども、一方でミシガン大学のサーベイだと5−10年先の物価見通しは今年に入って徐々に上がっていますよね、というのを示しています。
・この屁理屈は中々斬新である(プロフェッショナルフォーキャスターサーベイがロングランのインフレ期待を良く示しているそうな)
でもってここでまた斬新な屁理屈が出てくるのですが、
『Because the Michigan survey asks about inflation over the next 5-10 years,
it is a mixture of short-run and longer-run expectations, which may be
related to its modest sensitivity to inflation.
ちょwwwwwwwwおまwwwwwwwwwwww
・・・・・えーっとですね、ミシガン大学の「この先5〜10年の物価見通し」というサーベイってのは、足元の物価見通しとロングランの物価見通しが混ざっている(手前からの積算になるから、って意味でしょうね)ので、足もとの物価動向に対する緩やかなセンシティビティがありますよ。と来まして、いやまあ理屈はそうなんだが、その理解でエエノンカという点に関しては、「長期のインフレ期待はアンカーされている(キリッ)」という結論が先にあって屁理屈を捏ねているようにしか見えない(個人の偏見です)のですけどねえ。
『Market-based measures include a time-varying risk premium that may explain the modest movements in that measure.6』
さっきまで話の無かった物価連動国債市場のBEIについては、その時の状況によって変化し得るリスクプレミアを含んでおりまして、BEIに関しても長期の部分では緩やかに上昇しています、ということですが、そもそも物価見通しをプロフェッショナルフォーキャスターの皆さんが(米国においても)外しまくって(そもそもフォーキャスターの総本山のFEDが外してるんだし)いるから今があるのであって、何ちゅうかこのプロフェッショナルフォーキャスターのロンガーラン見通しが安定しているからロンガーランの見通しが安定しています!っていうの話に無理が相当ねえか????って思ってしまいました。
『In contrast to longer-run expectations, short-run and, to a lesser extent,
medium-run inflation expectations responded to the sharp rise in inflation.
The lower portion of Table 1 reports summary statistics for one-year-ahead
inflation expectations from the Michigan survey and one- and three-year-ahead
expectations from the New York Fed’s Survey of Consumer Expectations (SCE).
Consistent with past experience, one-year-ahead inflation expectations
have been highly sensitive to incoming inflation during the recent period.
The sensitivity of three-year-ahead inflation expectations is far less
than that for one-year-ahead expectations. And they have been significantly
less sensitive to incoming information during this period of high inflation
than during the period before the pandemic. This suggests households view
the run-up in inflation in 2021 as likely being less persistent than in
prior episodes.7』
でもって一方で短いタームや、中期でも短い部分に関するインフレ期待は色々な計測を見ても物価の急激な上昇に対してセンシティブに反応しましたよ、って話をうだうだと色んな数字を並べて述べてます。
・・・・・ということで、以下延々と先ほどの所で説明したセンシティビティとレベルと不確実性に関して説明があるのですが、まあお話としてはこの辺りを見た時点でナンジャコリャ間の強い説明(個人の偏見です)になっていまして、うーんこのって感じでございました。
というので終わりにするのもさすがにアレなので最後の『Conclusion』をば。
『The importance of maintaining well-anchored inflation expectations is
a bedrock principle of modern central banking, but its precise meaning
and validation has been open to interpretation.』
「its precise meaning and validation has been open to interpretation」なのに安定してるとか言いきってるのかよw
『My goal today has been to use economic theory to identify empirical criteria
that can be used to assess the anchoring of inflation expectations during
the ongoing episode of high inflation.』
で???
『The news is mostly good-longer-run inflation expectations in the United
States have remained remarkably stable at levels broadly consistent with
the FOMC’s longer-run goal.』
うーんこの。
『Inflation uncertainty has increased, but this does not appear to be due
to unmoored longer-run expectations. The one surprising wrinkle worth further
study is the increasing divergence in views about future inflation, including
the high share of those expecting deflation, and what this portends for
the future.』
ということで、別に政策インプリケーションはなさそうなものを朝っぱらから鑑賞しましたが、一応副議長なんで読んでみたものの、なるほどこれじゃあウィリアムズは空気だわなというのが分かったであります。
・・・・・とは言え、一応これはこれでインプリケーション無い訳ではなくて、ウィリアムズの言ってるのがFEDの大勢なのかどうかは怪しいものがある(多分ハト寄り)ものの、元々FEDの今回のFOMCでの認識でもそうですが、「ロンガータームのインフレ期待は2%目標に整合的な所で安定的に推移している」という説明はFEDの公式見解になっているように、FEDって今の所インフレ退治ホーキッシュポーズは出しているものの、じゃあボルカーショックをぶっこむかと言えばそういう事は無くて、資産価格ヒャッハーを抑制するために会見などではやや強めにホーキッシュ出しているけど、そこまでゴリゴリと利上げをバカスカぶっこんでいく、という訳ではないって空気感なのかな(そうじゃなかったらウィリアムズもうちょっとタカに寄せた説明するじゃろ)と思ったのと、そもそも論として「長期のインフレ期待が安定的である」という根拠は割と薄弱なので、逆に物価がサガランチ会長で推移するとFEDの背中がかちかち山のぼうぼう鳥になってしまう可能性もあるでよ、って話なんじゃないかと思いました。よー知らんけど。
2022/11/09
お題「10月会合主な意見:なんか物価が上がる話が多いですね&市場金利の状況への言及皆無かよ!」
それを指摘されると割とぐうの音も出ない。
https://jp.reuters.com/article/climate-un-ukraine-idJPKBN2RY1R0
2022年11月9日3:52 午前
ウクライナ大統領「平和なくして気候政策ありえず」、COP27で呼びかけ
〇10月会合主な意見の物価情勢に関する話と金融政策運営に関する話を鑑賞するの巻
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2022/opi221028.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2022 年 10 月 27、28 日開催分)
・物価見通しの話ですが何気に強い話が多いんですよね
『T.金融経済情勢に関する意見』ですがまあ経済の方はどうでもよいのでパス(といいつつあとで1個ネタにするよ)しまして物価の方を見るのだが・・・・・・・・・・・
『・欧米でのインフレ圧力が継続しているほか、既往の原材料価格上昇の影響からわが国の企業物価は高水準で推移している。今後しばらくは、価格転嫁が進む中で、消費者物価は上昇を続けると考えられる。』
まあそうですねというか問題は持続力があるかどうかという話が金融政策の論点で合って別にこんなのどうでもよいんですけどねえとは思いますけど、下がる話では無いのがまあまあ。
『・サービス価格やエネルギー以外の公共料金にも上昇の兆しが見られ、比較的高めの物価上昇率が続く公算が大きい。』
これね、10月の都区部でもそうでしたけど、最近しれっとサービス価格が上がってきている(ゆうて外食とかなので原材料コストプッシュ系の意味合いが強いと思いますけど)訳でして、この前「粘着性の高い品目の価格が上がらないと云々」という言い訳を新たに繰り出してきて、賃金話の後継ネタにしようとしていた日銀としては頭が痛い訳ですよ、というか素直に物価2%目標に向けて進展してるって認めれば良いだけの話しなんですけどね。
でもってこの部分見て思い出しましたが、そういや今回の総裁記者会見では粘着性のある品目の価格上昇が弱いという話をしなくなっていまして、日銀ちゃんにおかれましても、「政策を1ミクロンも変更しない」というのは変えないにしても、繰り出す屁理屈をまた構築しないと行けなくなりそうですね!!!!!!!
『・ 生鮮食品を除く消費者物価の前年比は3%程度となっている。予想物価上昇率は上昇している。先行きの消費者物価は、本年末にかけて上昇率を高めたあと、来年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していくと予想される。』
これは大本営なのだが、そもそも予想インフレが上がっているのに何で素直に物価が下がってくれるという話になるんでしょうかねえ。
『・ 消費者物価上昇率は3%となっているが、最近の消費者物価の上振れは輸入財価格上昇を起点とする販売価格への転嫁の影響によるものである。こうした傾向は当面続くとみられるが、来年度にはこうした要因が一巡し、2%を下回るとみている。』
これ字数の関係で仕方ないのですが、「サービス価格の上昇に関しても外食や住宅関連などの輸入材価格上昇によるもの」って書いてくれないと、ちゃんとわかって言ってるのかが伝わりにくいんで、書く人も少し考えていただきたいんですよね。まあ恐らくは「輸入材価格上昇」云々ってそういう意味での話をしたいんだと解釈しました。まあそれ自体は分かるのだが、ただ明らかに従来よりも幅広い品目で上昇しているのですから、それだけとは言えないんじゃないですかね。
『・来年度以降、消費者物価の前年比は、世界経済の減速の影響なども踏まえると、プラス幅を縮小し、2%を下回る可能性が高いとみられる。』
内生的な物価上昇へのシフトに関する考察が無い、やりなおし。
『・ 来年度後半以降は、需給ギャップの改善や予想物価上昇率、賃金上昇率も高まっていくもとで、物価の基調が強まっていく姿を想定している。こうした見通しの鍵となるのが春季労使交渉における賃金の動向である。』
でもって物価に関する賃金の話しですが、今回8つある意見の中で「賃金」を物価に絡めた話は1個なんですが、いつものように金融政策運営の方では賃金賃金の連呼になっているんですよ。ご案内の通り、7月会合から急に賃金賃金言い出しているのですが、そこから3か月経過して賃金動向どうなのとか、それこそ連合が5%の賃上げ要求を目標とか、そういうのって色々とあるはずなのに、賃金を絡めた話を物価見通しの中でしているのって相変わらず1人しかいないってのも何かおまいらそんなに賃金が大事ならもっと物価見通しに最新時点の話入れてくれよって感じではあります。
ちなみにかっ飛ばした経済の所では賃金に対する威勢の良い意見は1個ありましたですよ。
『・ コスト・プッシュとはいえ、実際に川上から川下へ価格転嫁が拡がる中、物価が上がらないことを前提とした企業の行動原理が変わりつつある可能性がある。』
もう変わってる気がしますがまあ指摘があるだけマシ。
『・ ディスインフレの世界が長年続いた後の物価上昇局面であり、また、グローバル化の逆回転等の構造的変化もあるため、過去の経験がそのまま当てはまらず、物価が大きく上振れするリスクも否定できない。』
んだんだ。
ということで、まあ適宜悪態ついてるけど、何気に物価に関しても強い話が多くなっているというのに、総裁会見の方ではご案内の通りで「物価は上がらん」という話を強硬に主張しておりますな。
もちろん、そこを突っ張っておかないとYCCの金利水準見直しとかそういう方面に話が発展するから裸単騎になっても全ツッパリをする、ということなんですけど、物価に関して既にこれだけ「上昇が定着するんじゃね?」の意見が出てくる中で、全く変わらずに全ツッパリをしている、というのは明らかに政策が先にあって情勢判断をそれにあてはめる、という大日本帝国大本営もビックリの展開になっておるし、既に10月でこの調子だと来年1月の展望レポートどうまとめる気だよ、というのは面白くなってきているような気がします(個人の願望成分入りです)。
・政策の話をするのは良いんだが何でお前ら10月のあのイールドカーブの話をしないの???????
9月議事要旨ネタを昨日書いた時に予告編で申し上げましたが、まあ期待していなかった通り、というか期待通り、というべきかアレでございますが、10月の「10年カレント3銘柄だけ置いてけぼりのイールドカーブ形成」について主な意見で誰も意見を出さないという大変素敵な事案が発生しておりました。
いやね、短期金利だけの操作を金融政策運営でやってるんだったら、まあゆうてイールドカーブがどうのこうの言わんでもエエジャロ(なお最近はパウエル会見でもイールドカーブ動向やクレジットスプレッド動向について聞かれる模様)と思いますが、おまいら「長短金利操作付き」の政策をやってて、YCCを標榜しているんだから、イールドカーブの形状について政策運営の議論において話題にしろやこのスットコドッコイと思いました。
では拝読。『U.金融政策運営に関する意見』ですね。
『・ わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にある。企業の資金繰りの改善傾向は続いているほか、外部資金の調達環境も総じてみれば良好である。そのうえで、金融市場調節方針、資産買入れ方針、先行きの政策運営方針は、現在の方針を維持することが適当である。』
『・ 当面、感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるべきである。政策金利のフォワードガイダンスも、前回会合で決定した方針を維持することが適当である。』
はいはい大本営大本営、ってかこんなの書く意味あるのかよ、といつも思うのでした。
『・「物価安定の目標」が実現するうえでは、賃金が持続的・安定的に上昇することが重要である。また、賃金が上昇するためには、企業の成長期待が高まることが重要と考えられる。』
マネタリーベースの拡大と大規模な金融緩和政策によってインフレ期待を引き上げて物価目標を達成する、という話は何処に逝ったのでしょうか?????
『・ 賃金上昇の実現可能性を高めつつ、「物価安定の目標」を実現するため、現在の金融緩和を継続することが適当である。』
別に現在の金融緩和じゃなくたって別の形の金融緩和でもいいんじゃないでしょうか???今の程度である必要がどこにあるのか説明してくれませんかねえ。
『・ 企業業績が全体として高水準で推移していること、賃金上昇の動きがみられていることを踏まえると、わが国経済には好循環の兆しが出てきており、当面の金融政策運営に関しては、現状維持が適当である。』
まだこっちの方が言ってる話の筋があるけど、じゃあ良くなったら緩和縮小から正常化するんだろうな。
『・ 今年度は物価上昇に拡がりがみられ、上振れる可能性もあるが、今後の持続性にはまだ確信が持てない。現在の企業の価格設定行動や賃上げの動きが定着し、物価と賃金の好循環が起きれば、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な達成が視野に入ってくる。』
もうね、この辺の話って思いっきりジャッジメンタルな言い方になっているじゃないですか。もともとインフレ目標やれやれ言ってた置物一派ってそういう「恣意的な基準による政策運営を排除する」というのもインフレーションターゲッティングの政策をやれやれ言ってたわけですよ。今更お前ら何を言うって感じでして、まあこの辺に関しては後程過去の良い参考物件があるのでご参照賜りたいと思います。
『・「物価安定の目標」を持続的・安定的に達成するうえで、中途半端な政策の変更は、物価と賃金の好循環を妨げるリスクがあり、望ましくない。』
もはや何を言ってるのかよくわかりません。急に極端な変更をする方がリスクが大きいんじゃないでしょうか。普通加速減速するときに徐々に加速減速するし、そうしないと中の人達ケガするんじゃなですか???????
『・金融緩和を粘り強く続けるもとで中長期の予想物価上昇率は緩やかに上昇しており、実質金利の低下を通じて、わが国経済への一段の緩和効果が顕現化する兆しが生じている。』
あ、やっと普通に近い意見が。
『・ 2%の「物価安定の目標」を安定的に達成するうえでは、名目賃金の上昇が必要不可欠である。金融緩和は、労働需給の引き締まりのほか、物価上昇によるインフレ予想の高まりという経路を通じて、名目賃金の上昇に作用する。』
金融緩和から労働需給の引き締まりねえ・・・・・・・・・
『・ 欧米では賃金と物価のスパイラル的な上昇が懸念される一方、わが国では賃金と物価の好循環は実現していない。こうした、内外の金融政策の方向性が異なる背景を丁寧に説明する必要がある。』
まあ全然丁寧に説明していないですけどね。
しかしお前ら物価情勢についてもうちょっと真面目に点検しろよと思うのですが、何故かこいつら金融政策運営に関する意見ばっかり言ってるの何なんでしょうかね。クッソ長いんですよ。
『・「人への投資」や事業ポートフォリオ改革など供給サイドの変革により、生産性や賃金水準を高め、所得から支出への好循環につなげるために、金融緩和継続が必要であり、これを分かりやすく情報発信する必要がある。』
何でもかんでも延命政策すると本来整理されるべき過剰が残ってデフレ圧力になるっての前世紀からやってる日本の問題だったと思うのだが、そっちとの関係は如何??
『・ インフレ目標政策は物価見通しに基づくもので、一時的な物価よりも先行きの見通しを見ながら、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な達成を目指して運営している。このことを丁寧に説明する必要がある。』
でもその「先行きの見通し」が政策先にありきで設定されて、わずか半年の間に物凄い勢いで上方修正されているんですけれども、その点についての考察がありませんね、赤点再履修。
『・ 金融システムは全体として安定性を維持している。ただし、グローバルな金融環境のタイト化の影響には警戒が怠れない。』
よくわからんのだがそもそも高インフレを下げようとしている国では金融環境をタイト化させるんだから警戒もへったくれもないような気がするんだが。
『・ 為替水準はファンダメンタルズに沿って決まるべきものである。こうした考え方に即して市場と対話することは、金融政策運営への理解を得るうえでも重要である。』
意見に書かないで総裁に言え。
『・ 債券市場の安定性確保は重要であり、引き続き、モニタリング等を通じて市場の状況をきめ細かく把握する必要がある。』
やっと債券市場の話が出てきましたが、イールドカーブの形状に関する言及ではないですね。
『・ 金融政策を直ちに変更する必要はないが、副作用に目を配るとともに、物価高が家計の行動や賃金にどのような影響を与えるのか、謙虚に予断なく検証していく必要がある。』
まあこの辺が辛うじてぶっこんでいる新審議委員様のイヤミっすね。
『・ 将来の出口戦略が市場にどのような影響を与えるのか、市場参加者の備えが十分なのか、確認を続けることも重要である。』
前半は良いけど後半の話しなんぞシランガナにも程があるし、まさかこいつら「市場参加者が備えていないから出口政策やらない」とか言い出すんじゃねえだろうなと思いました。
・・・・・・ということで、恐ろしい話なのですが、10月ってそここそ超長期はビュンビュン動いたし、チーペの指値オペがある横綱だってそこそこ動いたのに、その間10年368は1bp位の値幅で止まってて、そこだけ見れば10年国債金利の0.25%上限は守れているのですが、いやそこだけ守ったって意味ねえだろ、というようなイールドカーブ形成が行われ続けていた事に関して、物の見事に意見が無い、という恐ろしい事態。
まああ9月の議事要旨見た時点でこりゃダメっぽいなとは思っていましたが、10月の主な意見でもこれかよと思いますと、まあおじちゃん情けなくて涙がちょちょ切れるたあこの事でございますな。
・そういえば今回も謎の株式市場で資産形成推し来ました
『(経済情勢)』の所にまたこれがあったんだが、何なんスかこの推しは。
『・経済成長が家計の可処分所得の増加につながるよう、生涯を見据えた長期・安定的な資産形成を推進することが重要である。』
さすがに「給与が上がらないなら株式投資をすればいいじゃない」ではなくなったのですが・・・・・・・・・・
・おまけ:ここで2012年(13年ではない)の「中長期的な物価安定の目途」を出した時の麿の会見を鑑賞しましょう
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1202b.pdf
総裁記者会見要旨
―― 2012年2月14日(火)
午後3時半から約1時間
以下『』の引用部分は直上の2012年2月14日における白川総裁(当時)の発言の引用になります。
3ページの下から2行目、白川総裁の発言の途中から引用します。
『わが国では、「インフレ目標」という言葉が、目標物価上昇率との関係で金融政策を機械的に運用することと同義に使われることが――もちろんそれだけではありませんが――多いように思います。しかし、実際の金融政策運営は、いわゆるインフレーション・ターゲティングを採用している国を含めて、物価の変動と目標との関係で機械的に金融政策を運営するのではなく、今は、中長期的にみた物価や経済の安定を重視した政策運営をするようになっています。日本銀行は、そうした金融政策の運営の仕方を表すのに最も相応しい言葉は何かを考え、「中長期的な物価安定の目途」という言葉を今回使いました。』
7ページの下から1行目、同じく白川総裁の発言の途中から引用します。
『しかし、現在問われている問題は、今の日本経済、物価の上昇率が概ねゼロ近傍という世界で、中央銀行がお金の量を供給することだけで直ちに物価上昇率がゼロから
1%、1%から 2%へ上がっていくかという問いであるとすれば、それは必ずしもそうではないと思います。先程申し上げた、日本経済が直面している様々な構造的な問題、これらへの取組みが必要であると思います。これは決して中央銀行の役割が小さいということではなく、むしろ、中央銀行の役割はしっかりあると思っていますが、成長力を引き上げていく努力と、それを支える金融面の支援、その両方が相俟って、デフレからの脱却は実現していくものだと考えています。』
結局白川ドクトリンをもろに使って言い訳してますね、というのが良く分かるかと思いまして、おまけに引用させて頂きました。ということで今朝はこの辺で。
2022/11/08
お題「本業(?)回帰で9月MPM議事要旨を拝読してコロナオペ議論部分を見ながら泣くアタクシ」
最初の小見出しのネタ、マクラで済ます予定だったのですがマクラにしてはメモが長くなりましたんで備忘に置いておきます。
〇という話の前にSF連銀が何かスタッフペーパーだしたのがあったのでネタ用備忘メモ
ほうほう
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-proxy-rate-idJPKBN2RX1MA
2022年11月8日5:01 午前
米金融政策、政策金利が示す以上に引き締まっている可能性=調査
ちなみに物はこれだが(URLがクソ長すぎ)
https://www.frbsf.org/economic-research/publications/economic-letter/2022/november/monetary-policy-stance-is-tighter-than-federal-funds-rate/
FRBSF Economic Letter
Monetary Policy Stance Is Tighter than Federal Funds Rate
Jason Choi, Taeyoung Doh, Andrew Foerster, and Zinnia Martinez
『The Federal Reserve’s use of forward guidance and balance sheet policy
means that monetary policy consists of more than changing the federal funds
rate target. A proxy federal funds rate that incorporates data from financial
markets can help assess the broader stance of monetary policy. This proxy
measure shows that, since late 2021, monetary policy has been substantially
tighter than the federal funds rate indicates. Tightening financial conditions
are similar to what would be expected if the funds rate had exceeded 5-1/4%
by September 2022.』
目を泳がせただけなのでネタにするかどうかは後で読んでみてからですが、SF連銀というのは何度も申し上げている通りイエレンやウィリアムズを輩出している所でして、ここのエコノミックレターという名前のスタッフペーパーって提灯レポート成分が強め(個人の偏見です)に出来ている事が多いのですが、これって「引き締まっているので利上げサイクルのゴールが近い」って読みたくはなると思うのですが、ちょっと微妙な所でして、ちょうど昨日ネタにしたパウエル会見でのWSJのニック記者の質問にありましたが「こんなに物価が上がってて中々下がろうとしないのに、FEDの政策金利水準低くねえか」というツッコミ(ニックの場合は回答を引き出すために敢えて聞いているって感じはプンプンと漂う(個人の妄想です)ので、そこは割り引く必要があるけど)が世間様から来ているのに対して「いや我々は結構な引き締めをしているんですよ」って言い訳をするためにぶち込んでいる可能性もこれまたあるなあ、とは思いましたがどうでしょうか。
いずれにせよ、提灯組がこういうのを出すのはそろそろ物凄い勢いで利上げするステージから、とりあえず引き締め維持しながら物価の状況を見て、下がらなかったらおっかなびっくり利上げをしていく、ということになって、それがどう出るのかは分からん(やっぱりそれでもオーバーキルになってしまうのか、それとも引き締め足りずに物価がサガランチ会長になってインフレ長期化して最終的にボルカーショックコースになるのか、とかソフトランディングの絵を考えないワイ)のですけど、まあ会合毎に75bpバッカンバッカン利上げするのは流石に終了っぽいなあというのを感じました。
というのが寝起きで入ってきたネタなのですが、最初のリンク先(あの文字列全部にハイパーリンクを引っ掛けるとブラウザーの表示が乱れると思うので途中の文字列までにしかハイパーリンクをつけておりませんですわよ、ちゃんと飛ぶはずだけど)の物件をもうちょっと真面目に読んでから改めて考えますです、はい。
〇9月会合議事要旨をつらつら拝読しながら本日出る予定の10月会合主な意見に思いを馳せるのでした
はい。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2022/g220922.pdf
政策委員会金融政策決定会合議事要旨
(2022年9月21、22日開催分)
・「日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている」とは?????
『T.金融経済情勢に関する執行部からの報告の概要』ってのは議事要旨で見てもしょうがなくて、議事録で見ると面白い場合があるのですけど・・・・・・・・・・・
『1.最近の金融市場調節の運営実績』の部分ですけどね、
『金融市場調節は、前回会合(7月 20、21 日)で決定された短期政策金利(−
0.1%)および長期金利操作目標(注)に従って、国債買入れを行った。また、前回会合で決定された連続指値オペの運営方針に従って、10
年物国債を対象とする固定利回り( 0.25%)方式による国債買入れ(指値オペ)を毎営業日実施した。このほか、チーペスト銘柄を対象とする指値オペを毎営業日実施した。なお、チーペスト銘柄の指値オペおよびチーペスト銘柄等にかかる国債補完供給の要件緩和措置については、長期国債先物の限月交代を踏まえて、対象銘柄の追加・入れ替えを実施した。そのもとで、10
年物国債金利はゼロ%程度で推移し、日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている。』
ほーん。ちなみに7月会合という債券市場が色々と大変だった会合の時ですけど、
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2022/g220721.pdf
『金融市場調節は、前回会合(6月 16、17 日)で決定された短期政策金利(−
0.1%)および長期金利操作目標(注)に従って、国債買入れを行った。また、前回会合で決定された連続指値オペの運営方針に従って、10
年物国債を対象とする固定利回り( 0.25%)方式による国債買入れ(指値オペ)を毎営業日実施した。このほか、チーペスト銘柄を対象とする指値オペを毎営業日実施した。合わせて、レポ市場における国債需給が過度に引き締まることを抑制し、市場の安定を確保する観点から、チーペスト銘柄等にかかる国債補完供給の要件緩和措置を実施した。そのもとで、10
年物国債金利はゼロ%程度で推移し、日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている。』(この引用文だけ直上URL先の7月会合議事要旨)
だそうです。
ここで10月会合前の債券市場というのを思い出しますと、10月は何せ10年カレントのカーブが指値3銘柄だけ別世界にして形成される、という大変に素敵なイールドカーブ形成がより一層進んだわけですけれども、10月会合議事要旨でも同じような文章になるんですかねえ、と今からイヤミを入れておきますし、だいたいからして今日の朝出る予定の「主な意見」で10月における債券市場(10年カレント3銘柄はMPMまでの間他の金利が動いても不動の0.25%(というか引け変わらず)攻撃をしてましたが、カーブは勝手に動いていた)に関して何らかの見解を示す人がいるのかどうか、ってのは楽しみにしています(超棒読み)。
いやまあ指値3銘柄だけ勝手に低い所に置き去りにしたままイールドカーブが形成される、という事態が「金融市場調節方針と整合的な形状」というのでしたら別にそれはそれで結構なのですが、そうなって来ますと、そもそも論としての「金融市場調節方針と整合的な形状」とは何のことですかという話だし、カレント3銘柄だけ突出して低い金利になっていて、実際のスワップとか残存10年の20年利付国債とかがカレントを無視した利回りつけて、社債とかの価格形成に関してもカレント3銘柄丸無視(というかその分がスプレッド調整される形)で形成される状況だし、そういや昨日追加発行あった物価連動国債でもカレントの27回って、BEI計算する基準になる2032年3月償還の10年利付が366という異常値銘柄になっているので、27回って最近はBEIが26回よりも安くなる(基準の10年国債利回りが26回対比逆イールドだから)んですよね。でまあそういうような状況を「金融市場調節方針と整合的な形状」というのでしたら、何のために指値してるんだよという話になるんですよねー。
結局一時が万事なのですが、「導入したあとちょっと上手くいくと調子にのってドンドン政策をエスカレートしてしまい、出口のタイミングを逸して更に倍プッシュとか始めてしまい、引くのが怖いレベルまでやっちゃいました」という流れなんですよね毎度毎度。何なんでしょうねえこの人達。
・経済物価情勢の検討部分は全部飛ばして政策の話だがコロナオペの話が何か無茶苦茶変な事になってるな
まあそれは兎も角としまして、執行部の報告の後に経済物価情勢の議論パートがあるのですが、カボチャの皆さまの話を読んでも時間の無駄(読んだけど)なので飛ばしまして、政策云々の所なんだがちょっと色々とみてらんないのでツッコミを。
『V.金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』に入りますが最初がコロナオペの話。
『委員は、9月末に期限を迎えるコロナオペの取り扱いについて議論を行った。委員は、金融環境が全体として緩和した状態にあり、感染症の影響が残る中小企業等の資金繰りも改善方向にあることや、コロナオペの利用ニーズが減少していることを踏まえると、コロナオペは基本的に終了していくことが適当であるとの認識を共有した。』
まあこれはいいんですけどね、
『ある委員は、本来緊急対応的な措置であるコロナオペへの過度な依存が生じ、これが資源配分への歪みをもたらすことがないよう、コロナオペは終了していく必要があると述べた。』
????????????????????????
コロナオペって別に企業に貸出をする訳じゃないですし、そもそも金融機関はコロナオペに依存して貸出を行っていないし、だいたいからしてその直前で「コロナオペの利用ニーズが減少している」って「認識を共有」しているのにお前は何を言ってるんだと小一時間問い詰めたい。
それに「本来緊急対応的な措置であるコロナオペへの過度な依存が生じ、これが資源配分への歪みをもたらすことがないよう」って言うならCP・社債・ETF・JーREITの買入はどうなってるんだという話で、突如何を言い出してるんだこの委員、って感じで冒頭からこんなのがあるので我釣られクマーにも程がある。
『別の一人の委員は、地域金融機関が金融仲介機能を発揮するうえで重要な経営基盤強化は進展しており、コロナオペは終了することが適当であるが、一部に厳しさも残る状況を考慮し、段階的に終了することが適当であると述べた。更に別の一人の委員は、これから年末・年度末を迎えることも踏まえ、慎重を期して段階的に終了することが望ましいとの見解を示した。』
なんか政策金融やってるわけでもないのに凄い事やってる積りになってないかこいつら??????
『この間、複数の委員は、政府の中小企業金融対応について言及し、政府系金融機関の実質無利子・無担保融資は期限通り今月末で受付を終了する一方、一部のコロナ対応の資金繰り支援策は延長することが決定されていると述べた。』
政策金融の措置と平仄をそろえるってんだったらまだ理屈として分かりやすいですな。
『こうした議論を経て、委員は、感染症の不確実性がなお高いことも踏まえ、仮にコロナオペを終了する場合でも、段階的に縮小していくことが望ましいとの認識を共有した。』
となったのですが、この後の理屈も何か色々とガバガバでして・・・・・・・・・・・
『その場合の扱いについて、複数の委員は、コロナオペのうちプロパー融資分は、利用ニーズが相応に残っていることや、金融機関が自ら審査・リスクテイクをするため、資源配分の歪みにつながるというデメリットが相対的に小さいことなどを踏まえると、制度融資分よりも少し長めの経過措置を講じ得るのではないかとの意見を述べた。』
おいこらちょっと待て、「金融機関が自ら審査・リスクテイクをする」融資に対してバックファイナンスを付けて奨励することってそれはまさに「資源配分の歪みにつながる」行為だろお前何言ってるんだよという話でして、政策金融部分に関して言えば政策的に資源配分を行おうとしている中で、それを奨励する措置なんだから「意図した資源配分」になるけど、金融機関がリスク取って行う融資に対してインセンティブ付与する方がリスクテイク判断を歪めるって話になる訳でしょ何言ってるのこの人達。
単に「プロパー融資に対するインセンティブを付与する方が政策的に重要度が高い」ってんだったら話は分かるんですけど、資源配分の歪み云々を言うならプロパー融資にインセンティブ与えるのダメだろうよと思うのだが、何をどうひねくり回すとそういう理屈になるのか小一時間問い詰めたい。
#なお、そもそもこれがあるからプロパー融資するというようなインセンティブがある訳ではない、というそもそもの話が台無しになる前提は今回は置いておきますね!!!!!!
『また、複数の委員は、現行の期限の9月末が迫っているため、実務的に必要な対応時間を確保することも重要であると述べた。』
じゃあ7月に決めておけよ馬鹿かと思うし、コロナオペ延長に関しての議案だけ決定する会合です、って最初に断ってから8月の終わりにでも臨時会合実施すれば良かっただけの話しなんですが、この人たちは何を言ってるのでしょうか?????????
・・・・・・とまあこのようなガバガバな議論というよりもこれお前ら茶飲み話じゃねえのっていうガバガバな話をしておるのですが、もうちょっとまともな会話が展開されていたら、当然ながら議事「要旨」なんだから茶飲み話は華麗に割愛されている筈でして、まあこれとりまとめてる中の人もこの程度しか書くことない中で議事要旨纏めるの大変ですよねーって思ったりするのでありました。
・インターバンク市場における資金需給調整手段である共通担保オペに企業金融云々の意味合いをつける点について
さて、この議論ですが、このあと例の「インターバンク市場の資金需給の調節手段というテクニカルなオペ」であるところの共通担保オペに企業金融支援の意味合いをつける、というこの回の無茶苦茶な決定に関する部分へと繋がっていきます。
『ある委員は、仮に段階的に縮小させる場合、利用ニーズの低下などを踏まえて、資金供給期間などの条件面を見直すことも考えられると付け加えた。この間、何人かの委員は、コロナオペ終了後も、感染症の影響や、原材料価格上昇を背景とした運転資金需要など、幅広い資金繰りニーズがみられる可能性があると指摘したうえで、こうした幅広い資金繰りニーズに応える観点から、どのような対応が考えられるか、検討が必要ではないかとの見解を示した。』
必要ねえわ、とツッコミを入れつつ次に行く。
『この点に関して、複数の委員は、特別なファシリティを設ける必要はなく、汎用的な枠組みである共通担保資金供給オペを活用することが適切であるとの意見を述べた。』
これは酷い・・・・・・・・・・・・
そもそも共通担保オペは「インターバンク市場の資金需給調整を行うことによってインターバンク取引金利、即ち政策金利水準を目標値に誘導するために使われるもの」であるので、これに企業金融云々とかいう意味合いを付けると当然ながら話がおかしくなるわけで、金利政策の時代に戻った時にインターバンク市場の資金需給調整をやるツールが無くなるんですけど馬鹿なんじゃないでしょうかこの人達。
しかもですよ、
『委員は、コロナオペのような急性の危機への対応は、段階的に役割を後退させつつ、幅広い資金繰りニーズへの対応に軸足を移すことで、企業等にとって緩和的な金融環境を引き続きしっかりと維持していくことが適切であるとの認識を共有した。』
ということで、共通担保オペを全然別の用途に使ってしまい、しかも企業金融支援という名目を入れてしまいますと、本来はこのオペは季節性などのあるインターバンク市場の資金需給にリアクティブに対応してコール市場などの金利を誘導するためのものなのに、その季節性によって増えたり減ったりする共通担保オペが日銀による企業金融支援とひもついたら物凄く面倒な対外説明をしないといけなくなるんですけど、ここのカボチャ(ただし通常のカボチャではなくハロウィーン用に加工されているので中身は蝋燭か電球ですので念のため申し添えます)の皆さま、いまいまの時点でのことしか考えてないですよねってのが明らかに分かるし、だれも共通担保オペの本来の使い方からしたら後々ややこしいことになる、って反論してないのがもう情けないにも程があるけどカボチャなので致し方ありませんね!!!!!!!!
ティンバーゲンルールを持ち出すまでもなく、ちゃんとした企業金融支援のファシリティを設けないとダメだろとしか言いようがないんですが、どうせまあ今回の措置も3本の鉛筆で突然「量」をアピールしたのと同じようなもん位の扱いで、ただの目くらましでやっているだけ、というのは黒田日銀(というよりも誰かさん)のキャラからしてまあそうだろうなあとは愚考するのですが、そういう筋の通らない小手先の変なテクニックみたいな目くらましというのは、やっぱりやっちゃいけないとおもうんですよね中央銀行ってのは。
ということでこの会合ではまさかの「共通担保オペフルアロットメント化」という無茶苦茶な施策がぶっこまれていくのでありましたが、どうせこの人達、プラス金利で金利誘導の時代に戻るころには「共通担保オペのフルアロットメント化は企業金融支援を目的とした施策です」って話を皆が忘れているからしれっと元に戻せるだろ、とタカを括っているんだろうなあというのは極めて確からしい推測としてアタクシは思うのでありましたが、とにかくそういうインチキは止めて頂きたいんですよね、特にポスト黒田になったらインチキで誤魔化すってのを真っ先に封印して欲しいです。
なお、後半の議論は別にどうでもよいし、そもそもカボチャの会話なのでどうでもよいと思います。どうせ黒ちゃんのいるうちは日銀が自分から黒ちゃんの寝首を掻いて政策正常化する訳ないんですから。
2022/11/07
お題「流れるように政策運営に関する重要な論点の質疑応答が行われるパウエル記者会見(その2)」
しかしまあ何ですな、パウエルの会見って45分で黒ちゃんの会見って1時間なのに何で中身がこんなに違うんでしょうかねえ。
〇FOMCパウエル会見Q&A(その2)論点の質疑がよくまとまっておる
という訳でパウエル会見の続きです。
https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20221102.pdf
・実質金利とかイールドカーブの水準とかいう話になると数字はとにかく出さない攻撃
先日見通し記事で名をはせたWSJのニック・ティミィラスさんの質問。
『NICK TIMIRAOS. Nick Timiraos of the Wall Street Journal. Chair Powell,
core PCE inflation on a 3 or 6-month annualized basis and on a 12-month
basis has been running in the high 4's, close to 5 percent. Is there any
reason to think you won't have to raise rates at least above that level
to be confident that you are imparting enough restraint to bring inflation
down?』
インフレよりも低い政策金利でエエンカイナ、という質問だがこれは仕込みかよって感じでパウエルの回答は実質金利の話しから入る(いやまあ聞いている方もそういう答え期待してるとは思うのですがあまりにも阿吽の呼吸過ぎてどっかの会見と大違い)のでした。
『CHAIR POWELL. So, this is the question of [inaudible] does the policy
rate need to get above the inflation rate? And I would say, there are a
range of view on it. That's the classic Taylor principle view. But I would
think you'd look more at a forward, a forward-looking measure of inflation
to look at that.』
まず最初に初期テイラールール的な「足もとの物価水準によって運営するのではなくて」フォワードルッキングで
政策をしますよ、という話を入れてから、
『But, I think the answer is, we'll want to get the policy rate to a level
where it is, where the real interest rate is positive. We will want to
do that. I do not think of it as the single and only touchstone though.
I think you put some weight on that, you also put some weight on rates
across the curve. Very few people borrow at the short end, at the federal
funds rate for example, so households and businesses, if they're very meaningfully
positive interest rates all across the curve for them, credit spreads are
larger so borrowing rates are significantly higher and I think financial
conditions have tightened quite a bit. 』
実質金利が(物価抑制に対して十分に)プラスであることが必要である、という説明をするのですが、そこですかさず「実際に企業や家計が借入を行う際にはFF金利で借り入れが行われるわけでは無いですよね」という話をはじめまして、実際に借入のコストとなる金利はイールドカーブのどこかの金利がベースになり、それにクレジットスプレッドがオンされたものになりますよね。という説明をして、イールドカーブの状況、クレジットスプレッド、ファイナンシャルコンディションを見て行きます、というお話をしています。
まあ理屈としては良く出来ていますし、10年の特定3銘柄(と7年チーペスト銘柄)の金利だけを上限つけてなんの意味があるんですかという政策をしているどこぞの中銀と比較して言ってることがまともというか、確か10年前はどこぞの中銀の方がまともな話をしてたんですけどねえ。
とは言いましても、
『So, I would look at that as an important feature. I'd put some weight
on it but I wouldn't say it's something that is the single dominant thing
to look at.』
てな回答で締めてますので、当然更問が飛んでくるんですけど、
『NICK TIMIRAOS. If I could follow-up, what is your best assessment or
the staff's best assessment right now of the current rate of underlying
inflation?』
じゃあ今の基調的な物価水準に対して適切な金利ってどの程度ですか?と聞いてくるのですが、
『CHAIR POWELL. I don't have a specific number for you there.』
まあこれニックもどうせこういう回答が来るのは分かってるでしょうけど、更問はしておかないと行けませんよね。
『There are many, many models that look at that and I mean one way to look
at it is that it's a pretty stationary object and that when inflation runs
above that level for sure, substantially above for some time, you'll see
it move up, but the movement will be fairly gradual. So I think that's
what the principle models would tend to say but I wouldn't want to land
on any one assessment. There are many different, as you know, many different
people publishing assessment of underlying inflation.』
『NICK TIMIRAOS. Thank you.』
まあこれはお約束って感じの更問になっていますが、そもそも中立金利(今回は適切な金利水準のはなしだけどそれは中立金利がまずある話ですから)自体が計測方法によって幅のある概念ですから、特定のモデルに依存するのではなくて経済物価状況を見ながら測っていきますよ、ってまあ順当と言えば順当の説明で締めています。
金曜に引用したように、先行きの金融政策の話に関する最初の辺りの質疑応答とか、金曜にネタにしましたオープニングリマークにありますように、声明文ではどちらかというと「ここから先はバカスカ利上げするのではなくてチンタラと利上げしながら効果を見ていくステージだよ」って感じを受ける表現になっていましたが、まあオープニングリマークと最初の政策金利への質疑で市場のゴルディロックスヒャッハーを叩き潰しているんですよね今回の会見って。
ただ、ここの説明とか見ますと、やはり12月以降は基本的には利上げペースを落として(そらまあ毎回75やってたらどっかで急にやりすぎゾーンにワープしますから)インフレの鎮静化を待ちたいって姿勢になるんだろうなあというのはまあ読める展開で、12月50でその後1-3では25を2回上げて、って感じなのがメインなのかなとは思うの。ただし、その間に少なくともインフレの上昇が悪くても前月比ヨコに下がらんと利上げはまだまだ続くって感じですかね。
ただFEDの悩みどころは「高インフレの時間帯が長いとマズーのリスク」であって、今みたいにオラオラオラと利上げしてて、それが一般の皆さんにも分かるような威勢の良い金融引き締めですと、そらまあ人々のインフレ期待が上に大きくぶれることはない筈なのですが・・・・・・・・・・・・
・インフレ期待の状況の説明だが「短期のインフレ期待も大事だよ」という説明
今回の会見って最初の数人示し合わせてたんじゃないかと思う位に重要論点を次々だしているのと、しかも最初の政策金利の今後の動向について以降の質疑が流れるようなストーリーになっていまして、非常に美しいのですが、ここまで美しいと仕込みなんじゃないかと思う程度にはアタクシの心は汚れておるのが悲しいです、アイヤー。
『JEANNA SMIALEK. Hi Chair Powell, thank you for taking our questions.
Jeanna Smialek with the New York Times. I wondered, do you see any evidence
at this stage that inflation is or is at risk of becoming entrenched?』
物価が高いまま定着するリスクはどうなのか、という質問です。
『CHAIR POWELL. Is inflation becoming entrenched? So, I guess I would start
by pointing to expectations, so if we saw longer term expectations moving
up, that would be very troubling, and they were moving up a little bit
at the middle part of this year, and they've moved now back down, that's
one piece of data. 』
インフレがbecoming entrenchedとなるのは「もし仮に(仮定法過去)長期のインフレ期待が上昇するならば、我々は大変に困ります」という回答をして長期のインフレ期待が高まると物価が高止まりしたままになってしまうよ、という何時もの説明をしたあと、「一部のデータを見ますと、長期のインフレ期待は今年の半ばごろに若干上昇したものの、足元では戻ってきている」という状況説明をしています。
『Shorter term inflation expectations moved up between the last, this meeting,
the last meeting and this meeting, and we don't think those are as indicative,
but they may be important in the wage setting process. There's a school
of thought that believes that. So that's very concerning.』
ショータータームのインフレ期待に関してはここの所上昇しておりまして、それ自体が直接的に長期のインフレ期待にどうのこうのという話では無いのですが、これはこれで重要って話をしているのが結構興味深いです。というのも、一般的に中銀ってショータータームのインフレ期待は長期インフレ期待に影響を大して与えないからまあそんなに気にせんでええよって話をしますから。
じゃあ何でここでパウエルは「短期のインフレ期待も重要ではなかろうか」って言ってるのかと言えば、それは「短期のインフレ期待は賃金設定のプロセスに影響を与える」ということで、賃金物価スパイラルに影響を与えるってな話をしておりまして、ちょっと前回のQAぶっ飛ばしまくったから詳しく覚えてないけど、まあこういう言い方をして短期のインフレ期待の話をするのはほぼ初見っぽい気がする(違ってたらゴメン)。
『I guess the other thing I would say is that the longer we have, we're
now 18 months into this episode of high inflation and we don't have a clearly
identified scientific way of understanding at what point inflation becomes
entrenched. And so, the thing we need to do from a risk management standpoint
is to use our tools forcefully but thoughtfully, and get inflation under
control, get it down to 2 percent, get it behind us. That's what we really
need to do and what we're strongly committed to doing』
既に18か月間にわたって物価が目標よりもだいぶ高いインフレになっているけれども、じゃあどの時点になったらインフレがbecomes
entrenchedになった、というような科学的な定義とかは無いですけど、リスクマネジメントの考えから物価を早期にアンダーコントロールにするべきで、だから威勢の良い引き締めをしてまっせ、という説明ですな。
まあこれを勝手にアタクシが脳内補足すると、上記のように短期のインフレ期待が賃金設定行動に影響を与えるということから、長期間の高インフレってのは適合的な期待形成によって少なくとも短期のインフレ期待を押し上げる効果があるし実際に短期のインフレ期待が上昇しており、これによって賃金設定行動に影響、すなわち賃金の上振れからの賃金と物価のスパイラルが起きるリスクを高めることになる、って説明をしている訳でして、そう考えますと、まあ金融市場が期待するような「景気に配慮」とかそういうのはまるでナッシング、と考えて差し支えなくて、あくまでも物価の上昇の勢いが下がるかどうか、というのがFEDの判断だし、この間の賃金設定に関しては従来以上にナーバスになっていますよ、って説明をしている、という風に読み取れました。
・政策の波及までのラグがどうのこうのという部分に関してだがここで再度のタカぶっこみ
レイチェル記者から更問が入ります。
『RACHEL SIEGEL. And if I could follow-up, should we interpret the addition
to the statement to mean that more weight is put into those lag affects
than they would have been after previous rate hikes? 』
ステートメントに「In determining the pace of future increases in the target
range, the Committee will take into account the cumulative tightening of
monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity
and inflation, and economic and financial developments.」ってのが今回ぶっこまれた件について更問が来ました。
『CHAIR POWELL. Well I think as we move now into restrictive territory,
as we make these ongoing rate hikes and policy becomes more restrictive,
it'll be appropriate now to be thinking more about lag.』
金融政策が引き締め的になったので、ここから先は政策波及効果の時間的ラグを考えながら運営しないと行けませんよね、という説明なんですが、
『Of course, we think about lag-- the lags are just sort of a basic part
of monetary policy, but we will be thinking about them, but we won't be,
I think we'll be considering them but because it's appropriate to do so.
Let me say this, it is very premature to be thinking about pausing.』
政策の波及効果のラグについては教科書的なお話であって、「Let me say this,
it is very premature to be thinking about pausing.」とかまた盛大にタカ成分をぶっこんでおりまして、利上げ停止する検討をするのは「it
is very premature」とご丁寧にveryと強調してとっても先の話だよとタカタカ発言を投下。
『So people, when they hear lags, they think about a pause. It's very premature
in my view to think about or be talking about pausing our rate hike.』
念を押すかのように、「金融政策の波及ラグ、と言われると利上げの停止を想定するかもしれませんが、いま利上げ停止について考えるのは非常に時期尚早である」って再度言ってます。
この辺はやはり利上げ停止だのの話が起きると金融市場が先走ってヒャッハーしてしまい、金融市場がまたぞろソイヤソイヤとおっぱじめるのに対して水ぶっかけるどころか機関銃ぶっ放してでもソイヤソイヤを許さん、という強い意志を感じました。(個人の感想です)
『We have a ways to go, our policy, we need ongoing rate hikes to get to
that level of sufficiently restrictive. And we don't, of course we don't
really know exactly where that is. We have a sense and we'll write down
in September-- sorry, in the December meeting, a new summary of economic
projections which updates that. But I would expect just to continue updated
based on what we are seeing with incoming data. Thanks,』
ということで、政策運営に関する一連の質疑はいったんここで終わって次は経済情勢の質問になりますのでキリが若干よろしいのと、アタクシのお家の事情により本日は時間があんまり無いので、今朝はここ(ちなみに会見の23ページ中10ページ目が終わった所で、質疑応答自体は4ページの前半から開始なので、まだ全然最初のうちなんですが勘弁してつかあさい)でご勘弁頂きたく存じます。
2022/11/04
お題「日銀保有残高で368が発行額以上保有クソワロタ/パウエル会見:QA冒頭からタカっぽくぶっこんでいますね」
結局昨日は朝更新して終わってしまいましたな(汗)
〇日銀保有残高ェ・・・・・・・・・・・・・・・
最近もう無茶苦茶になってしまって保有残高見なくなっていましたのと、個別銘柄需給の話はまあいいかと思っておったのですが、さすがにこれは備忘して置かざるを得ません。
https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/index.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高
10月末の日銀保有国債残高で既に皆様もご案内の通りですが、
10年債
366 78,089
367 61,568
368 31,141
ということで、各ベンダーともさすがに気が付いて早速記事に。
https://jp.reuters.com/article/boj-bond-idJPKBN2RS0Q6
2022年11月2日6:41 午後
訂正日銀、10年368回債の保有比率が異例の100%超に=市場推計
『[東京 2日 ロイター] - 日銀が2日発表した10月31日時点の銘柄別の保有国債残高によると、10年368回債の保有額は3兆1141億円だった。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介・債券アナリストの推計では、市中発行額に対する比率は108.6%となる。比率が100%超になるのはきわめて異例。10年物金利を0.25%で抑えるため、日銀が積極的に国債を買い入れる中、流動性の低下を改めて示すものとなった。』(上記URL先より)
・・・・・・・・ちょwwwwwwwwww
不肖このアタクシ、幸か不幸かRTGSになる前の国債決済とか、登録債の移転登録請求を紙でやるとか、そういうのをやってたことがありますので(ジジイ語りモード)、ループ取引が容認されている時じゃないとこういうの起きない(逆に国債決済が時点の時は業者のショートの量を全部足すと発行額とは言わないけど、ポートに沈んで出てレポにも出てこない分を除けば普通に市中流通玉以上の支配残ベースの残高があった(なにせ当時は「レポ付きバイライト」とかいような取引は普通に出来ましたからぬー)のですけどね、まあ基本的に4年6年とか指標とかだと思うけど)筈なんですよね。
然るに日銀の所でこうなるのは、他に無いからこれしか考えられないですけど、補完供給取引において、一種のループみたいなのが発生しているじゃなかろうかという話ですけど(間違ってたらゴメンチャイなので誰か正誤ご指摘プリーズプリーズミーでございますわよ)、うーんまあそれなしにしちゃうと多分今でも流動性が無いんですけど、もっと流動性が無くなってしまうからアカンじゃろというのはあるんだが、ループOKにしちゃうのって時点決済からRTGS決済に変更した制度変更の趣旨としては如何なものか(フェイルとかバイインとかの制度はあるとは言え)という気もするんで、日銀も発行額以上に買うなよなとは思いました。
でもまあこれって本来国債決済制度の建付け上ループはアカンがなという風になっていたものに穴開けちゃってる形なので、あんまり良い事とは思えない(既に日銀がこんなに買ってしまっているので今ループ無しにすると日銀大量保有銘柄がエライことになるかもしれないので急に止める訳にもいかないのが困りもんだが)んですよねー。
とまあこれもまた日銀のオペレーションの限界を示すものとして、YCC限界論にまた一つあたらしいネタができましたな、という所なのですが、この件については10月27日の金融決定会合1日目(事務方による状況報告を行う筈の日)の時点で判明していた筈で(27日以降指値は連日坊主だし輪番は無かった)すが、今回の決定会合では何かこの件について問題視する人っていたんでしょうかねえー、特にお前だよお前、T1だよ円債村の期待を一身に背負って政策委員会に入ったら置物かよおどりゃなにしよんなら。
・・・・すいませんつい血圧がwwwww
まあ何ですな、こんなことまでしてYCCの10年3銘柄の0.25%を維持しても結局他の銘柄でイールドカーブ作って、スプレッド計算するときだけはこの3銘柄起点の場合はカーブ上のずれを補正して各種スプレッドが出るんだったら、なんかもう掛けるエネルギーと市場機能破壊という副作用に対しての効果は何なのか、って世界だと思うんですけどねえ。
だいたいからして今10年の0.25%外したからって言って10年金利が1%とかに跳ねますかってな話だし、こっちの0.25%外れる過程では後ろの売り圧力が手前に戻って来るんじゃないですかねえとも思うし(個人の感想です)、却ってこの無理矢理措置で超長期都下の金利を無駄に上げているようにしか見えませんのですが、何せもう「変えると死んじゃう」という謎の状況で頭が凝り固まってしまっているので、こうやってドンドンと問題を大きくさせてしまって爆発するときの想定被害を大きくしてしまうしか能がなく、更にはそうやって問題を自分で大きくしてしまって最早ガス抜きすら出来ない状態になっているので益々何もできずに問題はさらに拡大する、という地獄の黙示録みたいな状況に進展中ですがさていつまで持つんでしょうかねえ、って感じです。
〇声明文とオープニングリマークと会見Q&Aでまたバランス調整してますなパウエルさん
ボンクラの議事要旨とか見ててもしょうがない(土日に読みますわ、というか昨日読むの忘れてたw)ので早速文字起こしも出てきたパウエル会見から。
https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20221102.pdf
November 2, 2022 Chair Powell’s Press Conference
PRELIMINARY
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
November 2, 2022
質疑応答も全部出てきましたので、もう先走って質疑応答から参ります。ちょっと全体までカバーできないと思いますがそこは勘弁。
・のっけから今後の利上げペースの質問が連発しますわなそりゃ
最初の質問。
『COLBY SMITH. Thank you. Colby Smith with The Financial Times. On the
need to slow the pace of rate increases at some point, is a downshift contingent
on a string of better inflation data specifically between now and let's
say the December meeting? Or is that something that the Fed could potentially
proceed with independent of that data, given the lag affect that you mentioned?』
利上げペースを鈍化させるトリガーはインフレのどのような動向なのか、あるいはほかに判断するためのデータはあるんですか、と来まして、
『CHAIR POWELL. So a couple things on that; we do need to see inflation
coming down decisively and good evidence of that would be a series of down
monthly readings. Of course that's what we'd all love to see but that's,
I've never thought of that as the appropriate test for slowing the pace
of increases or for identifying the appropriately restrictive level that
we're aiming for. We need to bring our policy stance down to a level that's
sufficiently restrictive to bring inflation down to our 2 percent objective
over the medium term.』
物価が2%に向けて落ち着くために必要なレベルになるといいですし、そういう流れになって欲しいですよねー、とはいうのですが、じゃあ何がどうなると、という話は中々しませんで、次に
『How will we know that we've reached that level?』
ということでじゃあどうやって判断するのか?というのがあるのですが、これがまた概ねそう来るでしょうなという「あんじょうよう考えますわ」状態の説明になっていまして、
『Well, we'll take into account the full range of analysis and data that
bear on that question guided by our assessment of how much financial conditions
have tightened, the effects that that tightening is actually having on
the real economy and on inflation, taking into consideration lags, as I
mentioned. We will be looking at real rates, for example, all across the
yield curve and all other financial conditions as we make that assessment.』
ひたすらああでもないこうでもないとは言うのですが、「これがこうなったらインフレ圧力が収まって物価が2%に向けて落ち着いていくでしょうという判断ができるんです」という閾値については何の言質も与えないですし、物価動向だけで判断する訳ではない、みたいな説明もしていて、要するに全く決め打ちができませんですよ(実際そうなんでしょうし)という話をしているのでした。
・利上げに関しては論点整理をして説明しているのが大したもんですパウエルさん
2番打者は12月の利上げ幅についての質問。
『HOWARD SCHNEIDER. Howard. Hi, Howard Schneider with Reuters. I'm sure
there's going to be tons of confusion out there about whether this means
you're going to slow in December or not. Would you say that the bias right
now is not for another 75 basis point increase?』
おまえの説明だと結局12月にペースダウンするかどうかわからんのじゃがどうなっとるんなら、という質問ですな。
これに対して1ページ半にわたる回答をおっぱじめるパウエルさんなのですが・・・・・・・
『CHAIR POWELL. So, what I want to do is put that question of pace in the
context of our broader tightening program if I may, and talk about the
statement language along the way. So I think you can think about our tightening
program as really addressing three questions;』
相手の質問の論点を3つに分けて回答、とか相手の質問の論点じゃない回答ばかりするどこぞの島国の中央銀行総裁に爪の垢を煎じて飲ませたいですね。
『the first of which was and has been, how fast to go,』
『the second is how high to raise our policy rate,』
『and then third will be, eventually, how long to remain at a restrictive level.』
論点整理アリガタヤアリガタヤ。
『So, on the first question, how fast to tighten policy, it's been very
important that we move expeditiously and we have clearly done so, we've
moved 3-3/4 percent since March, admittedly from a base of zero. It's a
historically fast pace and that's certainly appropriate given the persistence
and strength in inflation and the low level from which we started.』
しかし論点整理のその1「速度について」は「重要ですよねー」と言いつつしれっと言ってるのは過去のペースがとても速かったことだったりして次に行く。
『So now we come to the second question, which is how high to raise our
policy rate, and we're saying that we'd raise that rate to a level that's
sufficiently restrictive to bring inflation to our 2 percent target over
time and we put that into our post-meeting statement because that really
does become the important question we think now, is how far to go and I'll
talk more about that.』
論点その2の「水準について」ですがここまではまあ前置きでその次にキタコレがある。
『We think there's some ground to cover but before we meet that test and
that's why we say that ongoing rate increases will be appropriate, and
as I mentioned, incoming data between the meetings, both a strong labor
market report but particularly the CPI report, do suggest to me that we
may ultimately move to higher levels than we thought at the time of the
September meeting.』
はい、ここで昨日ネタにしたオープニングリマークの例の部分が出てきましたが、リマークの方では「incoming
data since our last meeting suggest that the ultimate level of interest
rates will be higher than previously expected.」となっていた「previously」を「we
thought at the time of the September meeting」と明言しまして「9月のSEPで掲載した金利水準よりも利上げのゴール地点は高くなっていると考えている」と明確にぶっこんできましたな。そらまあ債券売られるわ(答えは木曜の朝の駄文書き後にまったりと見ました)と思いますが、ゆうて米債市場既にゴールが5%超えるかも状態で動いてたような気もするんですけどね。
『That level is very uncertain though, and I would say we're going to find
it over time. Of course, with the lags between policy and economic activity,
there's a lot of uncertainty so we note that in determining the pace of
future increases, we'll take into account the cumulative tightening of
monetary policy as well as the lags with which monetary policy affects
economic activity and inflation.』
とは言えそのレベルは決め打ちできませんよ、ということでペースを考える際にこれまでの引き締めの累積的効果を考えて行きますとかそういう話をしまして、
『 So, I would say, as we come closer to that level, move more into restrictive
territory, the question of speed become less important than the second
and third questions, and that's why I've said it the last two press conferences,
that at some point it will become appropriate to slow the pace of increases.』
ということで、徐々にペースよりも水準とか、引き締め的な状況をどこまで維持するのかが大事になってくるでしょうという説明でして、まあこれさすがにペースは落とすけど、引き締め効果が出て来るのが見えてくるまではそのかわりステイとなりそうですし、ゆうて利上げのゴール地点は上とか言ってて、中々判じ物のような感じになっていますけど、まあこういう時はこれまでのパウエルFEDがそうだったように、声明文>オープニングリマーク>>会見というのを考えますと、なんか利上げがダラダラとゆっくり行われて、そのかわり期間が伸びそう、って考える方が順当だと思うんだけどどうですかねえ。
『So that time is coming, and it may come as soon as the next meeting or
the one after that. No decision has been made. It is likely we'll have
a discussion about this at the next meeting, a discussion. To be clear,
let me say again, the question of when to moderate the pace of increases
is now much less important than the question of how high to raise rates
and how long to keep monetary policy restricted, which really will be our
principal focus. 』
この言い方だとまあ12月の75は無いけど、その代わり1月も割とサックリ上げるし、もしかしたら1−3は25bp2回とかそんな感じかねと思ってしまいました、よーわからんけど。
ハワード記者の更問。
『HOWARD SCHNEIDER. If I could follow-up on that; to what degree was there
an importance or weight given to a need
to signal this possibility now, given all the concerns really around the
globe about fed policy sort of driving ahead and everybody else dealing
with their own stress as a result? 』
『CHAIR POWELL. Well, I think I'm pleased that we have moved as fast as
we have, I don't think we've over-tightened, I think there's very difficult
to make a case that our current level is too tight, given that inflation
still runs well above the federal funds rate. So I think that at this meeting,
as in the last two meetings, as I've mentioned, I've said that we, that
there would come a point, and this was a meeting at which we had a discussion
about what that might mean and we did discuss this and as I mentioned,
we'll discuss it again in December. But there's no, I don't have any sense
that we've over-tightened or moved too fast. I think it's been good and
a successful program that we've gotten this far this fast. Remember though
that we still think there's a need for ongoing rate increases and we have
some ground left to cover here and cover it we will. 』
ハワードさん、(世界的に金融市場が市場が先行きの減速を織り込んでいるのを念頭に、だと思うのですが)FEDって前のめり過ぎんか???って聞いているのですが、それに対しては全然そうじゃないよって回答しております。何かこの辺り、仕込み質問かよって言いたくなるくらいに良い感じで「会見ではタカ派色を出します」って流れが作られていますな、と思いました(個人の妄想です)。
この次がこの前署名記事によって市場がヒャッハーとなったWSJのニック・ティモラス記者の質疑になるのですが、時間が無くなってしまいましたので(なくは無いが更問まで入れた質疑応答全部やってると時間が足りないのが明白)本日はここでご勘弁させて頂きとうございますが、大体最初の2名の所でかなりの出オチをやってるな、とは思いました。
2022/11/03
お題「FOMCは声明文よりもオープニングリマークをタカにするという調整をしていますよねこれ(会見はこれから聞く、かもしれない)」
ということで寝起きでFOMCである。祝日だ〜と思うとどうもいかんのでBGMを流して気合気合。
〇声明文:今次利上げ局面のゴールについての言及が入りましたよ
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20221102a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220921a.htm(前回)
(ちなみにPDFはhttps://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/monetary20221102a1.pdf)
・第1パラグラフ:現状認識は前回と文言一致
『Recent indicators point to modest growth in spending and production.』(今回)
『Recent indicators point to modest growth in spending and production.』(前回)
全体観同じでして、
『Job gains have been robust in recent months, and the unemployment rate
has remained low. Inflation remains elevated, reflecting supply and demand
imbalances related to the pandemic, higher food and energy prices, and
broader price pressures.』(今回)
『Job gains have been robust in recent months, and the unemployment rate
has remained low. Inflation remains elevated, reflecting supply and demand
imbalances related to the pandemic, higher food and energy prices, and
broader price pressures.』(前回)
雇用、物価に関する認識も前回と全文一致ですな。
・第2パラグラフ:ウクライナ戦争がどうのこうのも文言一致
『Russia's war against Ukraine is causing tremendous human and economic
hardship. The war and related events are creating additional upward pressure
on inflation and are weighing on global economic activity. The Committee
is highly attentive to inflation risks.』(今回)
『Russia's war against Ukraine is causing tremendous human and economic
hardship. The war and related events are creating additional upward pressure
on inflation and are weighing on global economic activity. The Committee
is highly attentive to inflation risks.』(前回)
ここは大体同じになるものなのですが今回も全部一致、ということで基本的な経済物価認識は変わらず、なのですけれども・・・・・・・
・第3パラグラフ:利上げ局面のゴールに関する記述がズラズラとぶっこまれましたよ!
実は今回文言変化があったのはこのパラグラフだけですが、ここでは「今回の利上げ局面のゴール」というアメリカン金融市場の皆さんがアリガタヤ節を歌いながら踊りたくなるような物件があります。
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回)
3パラの頭の部分はいつもの呪文。
『In support of these goals, the Committee decided to raise the target
range for the federal funds rate to 3-3/4 to 4 percent.』(今回)
『In support of these goals, the Committee decided to raise the target
range for the federal funds rate to 3 to 3-1/4 percent』(前回)
市場の皆さん予想通りだし大体予告通りの75bp引き上げ。で、ここで前回はカンマ区切りのあとand〜と文章が続くのですが、今回はピリオドで文章を切っています、ナンデジャロと思いながら先を読みますと(ってここだけ話の構成上前回を先に載せますね)・・・・・・・・・・・
『and anticipates that ongoing increases in the target range will be appropriate.』(前回)
ということで、従来は「もっと利上げしますよ」で次の話(バランスシート縮小の話)に進むのですが、今回はここからが重要文言並べるの巻になります。
『The Committee anticipates that ongoing increases in the target range
will be appropriate in order to attain a stance of monetary policy that
is sufficiently restrictive to return inflation to 2 percent over time.』(今回)
in order to〜以下がニュー文言な訳ですが、「2%物価目標に戻るのに十分に引き締め的な金融政策スタンスを達成するために」というような文言を加えましたので、これはつまり「今次利上げ局面のゴールが近くなったよ」という話をしてる、というメッセージと読みましたよアタシャ(そらまあ今回3.75-4.00なんですから75を3回とかよー上げんじゃろうよ)。
更に今回の追加文言は続く。
『In determining the pace of future increases in the target range, the
Committee will take into account the cumulative tightening of monetary
policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and
inflation, and economic and financial developments.』(今回)
ここも同じく先行きの金融政策というか今回の引き締めの到達点に関する話でして、「今後のFF誘導金利目標の引き上げペースを決定するにあたっては、FOMCは金融政策引き締め政策の累積的な効果、金融政策が経済や物価に影響を与えるまでの時間的ラグ、そして経済動向や金融環境の動向を考慮に入れます」と入れて来ました。
ちょっと前から金融引き締めの効果がどうのこうのという話が出るようになっていますし、まあここの文言を素直に読めば、そろそろ金融引き締めの効果も出て来るでしょうから、そうバカスカ利上げしていくのもいい加減にしますわ、ということではあるのですが、ここでムツカシイのは金融市場ちゃんは直ぐにヒャッハーしたがるのでありまして、そうなってしまうと元も子もない訳ですよ。
つまりですね、こういう書き方の時って「financial developments」に注意するっていうのは普通の読み方では「金融引き締めによって金融環境がタイトになり過ぎてオーバーキルをする点に注意しましょう」って読むものということになる筈なんですけれども、ここにはその逆側、即ち金融引き締め局面のゴールが近いと言って金融市場がイヤッホウとなって資産価格がソイヤソイヤとなってしまうと、結局個人セクターの需要が落ちなくなる(寧ろ上がる)ので、それも回避しないと行けない、というアメリカンなオモシロ事情ありまして、そういう点ではダブルミーニングだと思うの(個人の感想です)
でもってこの後はAPP縮小の話になって以下文言一緒になりますが、今回挿入された文言って、まあ素直に読みますと「そろそろ利上げ局面も最終コーナーっすな」「引き締め効果も出てきますから最終局面の後は様子見しながら考えまっさ」という話なんですけど、会見冒頭のオープニングリマーク(この先でネタにします)ではしれっと「利上げのゴールの金利がちと上がっちゃいましたわテヘペロ」とか「当分は利上げしたあとステイだよ」とかきちんと金融市場に水をぶっかける作業をしているので、そこまで聞いてませんし文字起こし出てませんが、QAでもあまり金融市場がヒャッハーしないようにというのは考えてたんじゃないかなあと妄想します、ただの当て推量だけど。
3パラの残りは資産買入縮小の話になりますが全文一致です。
『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury
securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described
in the Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet
that were issued in May. The Committee is strongly committed to returning
inflation to its 2 percent objective.』(今回)
『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury
securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described
in the Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet
that were issued in May. The Committee is strongly committed to returning
inflation to its 2 percent objective.』(前回)
・第4パラフラフ:今後のスタンスは状況に応じて適切に実施します云々も全文一致
『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee
will continue to monitor the implications of incoming information for the
economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance
of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the
attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take
into account a wide range of information, including readings on public
health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations,
and financial and international developments.』(今回)
『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee
will continue to monitor the implications of incoming information for the
economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance
of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the
attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take
into account a wide range of information, including readings on public
health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations,
and financial and international developments.』(前回)
・第5パラグラフ:今回も全員一致ですね
『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John
C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lael Brainard;
James Bullard; Susan M. Collins; Lisa D. Cook; Esther L. George; Philip
N. Jefferson; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller.』(今回)
『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John
C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lael Brainard;
James Bullard; Susan M. Collins; Lisa D. Cook; Esther L. George; Philip
N. Jefferson; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller.』(前回)
全員一致が続きます。
・インプリメンテーションノート:金利回廊の幅に変化なくすべてフルスライド、各種オペの応札限度額などに変化なし
PDFだとそのまま声明文の後に表示されますが、HTMLの場合は別ページになります。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20221102a1.htm
November 02, 2022
Implementation Note issued November 2, 2022
Decisions Regarding Monetary Policy Implementation
前回はこちら
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220921a1.htm
こちらですが、一々引用すると長くなるのでまあリンク先見てちょという感じですが、当座預金付利金利(3.9%)、翌日物システムレポ金利(4.0%)、翌日物リバースレポ金利(3.8%)、ディスカウントウィンドウのプライマリークレジット適用金利(4.0%)は全て0.75%のフルスライド引き上げ、資産買入縮小ペースは先月と同じ、各種オペの応札限度額も先月と同じとなっています。
〇パウエル会見オープニングリマークの今後の金融政策運営の所だけ先に読んでアップするよ!
朝更新すると昨日啖呵切りましたんで遅くらないように。
https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20221102.pdf
November 2, 2022 Chair Powell’s Press Conference
PRELIMINARY
Transcript of Chair Powell’s Press Conference Opening Statement
November 2, 2022
いつもだと最初から逐次全文とかのうのうとやるのですが、まあ今朝は(あとで更に全文読みしようかなあとは思ってますが)現世利益にも程がある先行きの金利引き上げに関する部分をピックアップします。最初はいつものご挨拶で本題は1ページ目第2パラグラフから入ります。
・1ページ目第2パラグラフ:声明文3パラの説明に上乗せ措置として「直ぐに利下げ局面にはならんよ」と入れるの巻
『Today, the FOMC raised our policy interest rate by 75 basis points, and
we continue to anticipate that ongoing increases will be appropriate. We
are moving our policy stance purposefully to a level that will be sufficiently
restrictive to return inflation to 2 percent. In addition, we are continuing
the process of significantly reducing the size of our balance sheet.』
ってのは声明文第3パラグラフにあった通りですね。問題はこの次。
『Restoring price stability will likely require maintaining a restrictive stance of policy for some time.』
物価安定を取り戻すには、恐らく暫くの間(for some time)引き締め的な金融政策スタンスを意地する事が求められるでしょう。
ということでですね、これ何言ってるかと言えば、声明文を受けてどうせ金融市場はすかさず「じゃあ次は利下げだヒャッハー」とびっくりするほどユーフォリアになってしまいますので(だいたいFOMC前の米国市場の動きが「隙あらばゴルディロックスヒャッハー」に見えましたもんね)、このように「利上げ局面止めたからと言ってすぐに金利下げ局面にはいかねえんだよヴォケ」というのを入れておりますな。まあこれfor
some timeなのでそこまで過激ではない(extended period of timeとか言い出したら爆笑する予定でしたがさすがにそれはなかったようで)という感じですが、いずれにしても「直ぐに利下げ局面とか言ってヒャッハーするんじゃねえぞ」という釘差しを行っている訳です。
例によって今朝もFRBのページだけ見て書いててニュースも見も聞いてもいないので、実際にどういう挙動を市場がしたのかは知らんのですけど、さてどうだったのやら(これアップしてから答えみる)。
でもってこのパラは、
『I will have more to say about today’s monetary policy actions after briefly reviewing economic developments. 』
とあって、経済物価情勢に関する話の後に金融政策の話になりますが、何せ先ほど申し上げた通り、声明文文言上経済物価のアセスメントに変化はないっぽいのでそっちはとりあえず全部飛ばす。
・3ページ目第2パラグラフ:今後の金利パスについての話であるが利上げ最終レートがSEPで出したのより高いかもよ攻めが来ました!!!
3ページ目1パラグラフから引用しますと、
『At today’s meeting the Committee raised the target range for the federal
funds rate by 75 basis points. And we are continuing the process of significantly
reducing the size of our balance sheet, which plays an important role in
firming the stance of monetary policy.』
いつの間にバランスシート縮小が重要になっとるねん、というのはさて置き、この20行弱ある結構長い第3パラが重要になりますわな今回は。ぶつ切りにしながら引用しますけど。
『With today’s action, we have raised interest rates by 3-3/4 percentage points this year.』
はいそうですね。
『We anticipate that ongoing increases in the target range for the federal
funds rate will be appropriate in order to attain a stance of monetary
policy that is sufficiently restrictive to return inflation to 2 percent
over time.』
声明文、さっきの1ぺージ2パラでも出ています。
『Financial conditions have tightened significantly in response to our
policy actions, and we are seeing the effects on demand in the most interest-rate-sensitive
sectors of the economy, such as housing.』
金融引き締めの効果が金融市場経由で金利センシティブな需要、例えば住宅などに出てきている、という認識ですが、これは先般来複数のFOMC参加者からも言及があった話ですし、前回の会見(そういや質疑応答をあんまりネタにしなかった記憶がががが)でも、オープニングリマークの中じゃなかったですけど、ブルームバーグのクレイグ・トレス記者の質問に答える形(14ページ目にあります)で上記のような点を議長が回答していました。
『It will take time, however, for the full effects of monetary restraint to be realized, especially on inflation.』
金利敏感セクターには影響が出てるけど、経済全体に関してはまだ波及に時間が掛かりますよ。
『That’s why we say in our statement that in determining the pace of future
increases in the target range, we will take into account the cumulative
tightening of monetary policy and the lags with which monetary policy affects
economic activity and inflation.』
ということで、声明文第3パラの中で「In determining the pace of future increases
in the target range,〜」ってのを入れたんですよ、としています。
『At some point, as I’ve said in the last 2 press conferences, it will
become appropriate to slow the pace of increases, as we approach the level
of interest rates that will be sufficiently restrictive to bring inflation
down to our 2 percent goal.』
で、金融市場待望(かどうか知らんが)の金利引き上げペースの減速がどっかで必要ですよね、という話をするのでありますが、
『There is significant uncertainty around that level of interest rates.』
そもそも「2%達成のために十分な引き締め的金利水準」というのが決め打ちできませんとっても不確実です、と来ましたあとに何を言うのかと思えば、
『Even so, we still have some ways to go, and incoming data since our last
meeting suggest that the ultimate level of interest rates will be higher
than previously expected.』
なんとここで「前回のFOMCから得られているデータは示唆します、最終的な政策金利水準は以前想定していたものよりも高いかもしれませんということを」というのをぶっこみやがりまして、「since
our last meeting」のデータをみたら「will be higher than previously expected」って何ですか9月のSEPよりも最終ゴール金利高いかもって言ってますよねこれ、ということで、声明文で利上げ最終コーナーという話をして喜ばせる返す刀で「でもその最終金利この前想定してたのよりも高いかもねテヘペロ」とかぶっこんできているの巻という流れ。
『Our decisions will depend on the totality of incoming data and their
implications for the outlook for economic activity and inflation. And we
will continue to make our decisions meeting by meeting and communicate
our thinking as clearly as possible.』
ま、最後のここは毒にも薬にもならない文言です。
ということで、声明文よりもオープニングリマークの方がタカ度を高くしている、という調節が入っているから、これ会見もタカっぽいのかなあ、とか思いながらここまでの駄文を(想定よりもちょっと遅れてしまったスマン)アップするのでありました。他のネタ含めて続きは後でやるかもしれません。
2022/11/02
お題「黒田総裁会見(その2)まあどの説明も最早整合性とか全然取ろうとしない中銀とは思えん仕草です」
FOMC前の注目指標でしたな
https://jp.reuters.com/article/usa-economy-jobs-idJPKBN2RR3EB
2022年11月2日2:00 午前
米9月求人件数は43.7万件増の1070万件、労働需要の堅調さ示唆
ここもと利上げペースの鈍化がどうのこうのでやたらと毎日ヒャッハーヒャッハーとジャイアントスイングするんだが、結局物価上昇率が明確に失速してこない限りそう簡単に引き締めバイアスが引っ込まないんだから、利上げペース鈍化して金融市場がヒャッハーしだすと却ってインフレの鎮静化が遅れて引き締めの時間が長くなるだけだとおもうんですけどね、なんかもう良く分からんです最近の相場は。(最近じゃなくて昔から分かっていないだろうというツッコミは却下^^)
〇政府の経済対策+物価対策と日銀の政策って整合性おかしいだろ
まあ何というかですね、そもそも展望レポートだした日の夕方にこんなの出されてしまいますと、展望レポートの上乗せ措置がじゃあどういう影響を与えるのか、ってお話になるんですけど。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221028/k10013873941000.html
【詳細】岸田首相が会見 新たな総合経済対策を閣議決定
2022年10月28日 19時23分
ということで皆様とっくの昔にご案内のネタで恐縮ですがアタクシの備忘も兼ねて。
『物価高や円安に対応するため、政府は、家庭や企業の電気料金の負担緩和策などを盛り込んだ財政支出の総額が39兆円程度となる新たな総合経済対策を決定しました。岸田総理大臣の記者会見の内容です。』
『“GDPを4.6%押し上げる”
岸田総理大臣は新しい総合経済対策について、「対策は、財政支出が39兆円、事業規模はおよそ72兆円で、これによりGDPを4.6%押し上げる。また、電気代の2割引き下げやガソリン価格の抑制などにより、来年にかけて消費者物価を1.2%以上引き下げていく」と意義を強調しました。』(以上上記URL先より)
いやあのGDP4.6%って無茶苦茶な押し上げなんですけど大丈夫なんですかという話もそうですし、2%物価目標達成に向けて日銀が頑張っているのに「CPIを1.2%押し下げる」のを意義として強調って、あなた方期待インフレ率を2%にアンカーさせる気あるんですかってお話でございますわな。
というかですね、潜在成長率が0%台前半とかいう国でGDPを4.6%も押し上げたら物価に無茶苦茶効いてくる話だし、個別物価の押し下げを財政支出で行ったら、ごくごく普通にこの財政支出が創出する需要によって物価上昇圧力が高まるだけなんですが、何がどうなってこういう政策が出たのか、もう政府と日銀の連携が支離滅裂としか申し上げようがなくて頭がクラクラしてまいります。
しかしまあ何ですな、展望レポート基本的見解によりますと、2022年度のコアCPIが+2.9%で2023年度のコアCPIが+1.6%になる筈なのですが、今回のプレイによりまして、22年度に仮に1%の物価押し下げ効果が出た場合、23年度にはその裏が出て23年度のコアCPIが目出度く2%を超えるという事になりまして、やったじゃん目標達成ですよ日銀さん(棒読み)となるというこの訳分らんモード。
実際問題、GDP4.6%はねえだろと思うので、話半分位に聞けばよいのかもしれませんですけれども、いずれにしてもここで財政ドバーとか、諸外国のあばばばばーを今から全力で追いかけに行くという珍しい自爆芸をみせてくれているようにしか見えないし、まだ物価上がるのかよこちとら給(以下の部分は内務省検閲によって削除されました)。
〇総裁記者会見ネタの続き:まあ見事に整合性とかそういうのは無いですな
・賃金の質疑がもう一つあったのを引用し忘れていましたサーセン
昨日ネタにした賃金上昇の話しですが、最後の方にもこういう質問がありまして、結局3名の方から「どの位の賃金上昇があると物価目標達成に整合的なのか」という質問が飛んだんですよ。そら当たり前で、ずーっと「賃金上昇を伴う好循環」って連呼してるんですから、そら賃金上昇がどの程度か、メルクマールを示さないと物価安定目標に向けて経済物価情勢が今どこの位置にいるのか、というのが分からんですからね。
ということでこれもまた直球質問で中々よろしい訳ですが。
『(問)賃金についての質問なんですが、今の代表的な賃金指標である毎月勤労統計によりますと、今年の1月以降、1%から
2%で推移して、直近 8 月ですと前年比 1.7%、比較的高い伸びが実現していて、意外にも賃金上昇の兆しがあるということも観察されているというエコノミストの分析もあるんですが、』
うんうん。
『そういった中で、総裁は、先ほどから繰り返している賃金上昇を伴うかたちで物価安定目標を実現するまでは、今の金融緩和を続ける必要があるとご説明されていますが、』
と来てから火の玉ストレートが飛ぶ。
『それではこういった賃金上昇の兆しもみえる中で、具体的に賃金がどれくらい上昇して、どういった物価上昇のメカニズムになれば、日本銀行としても今の金融政策の修正・変更を本格的に検討することができるのか、総裁のお考えを聞かせてください。』
イイハナシダナー。
『また、そういったタイミングが来るのは遅くとも大体いつぐらいになるのではと予想されているのか、総裁のお考えをお聞かせください。』
これは痛恨の蛇足でして、黒ちゃんの回答は・・・・・・・・・・
『(答)何度も申し上げている通り、賃金の上昇を伴って 2%の物価安定目標が持続的・安定的に達成されるということが私どもの目的でありますので、今のところ、2024
年[度]でもそういう状況になるという見込みでないということでありますけれども、先ほど来申し上げている通り、従来よりも少し、23
年[度]、24 年[度]の物価上昇率も上昇してきているということは、そういうものにより近づいてきているということは事実ですけれども、まだ
2024 年[度]でもそれが見通せる状況にはないということであります。』
蛇足の質問にだけ回答している、という中々のドイヒー回答でして、これは質問者失敗の巻というか、黒ちゃんは答えられない質問をされた場合、質問の本旨じゃなくて片言隻句を捕まえて、そっちの回答をすることによって誤魔化す、というのをやたらと得意とする、という点では詭弁術は得意なんですね。
でまあ前回の会見まではこれを仏頂面で、おまけに想定問答棒読み調で話をしてたので大変にトサカにくる回答って感じでしたが、さすがにようつべ中継初回を意識したか、黒ちゃん今回の会見は上記のように回答の内容はアレだが仏頂面とかそういうのはしてなかったので、なんとなく普通に回答しているような雰囲気は醸しだせていたかもしれません。
と言ってもまあ会見の後半の方に来たら「いつもの詭弁節に完全に戻ってるわ」って感じは受けたんで、そういう意味ではこの時間帯(これ13枚中12枚目部分になる)にはいつもの黒ちゃんだったかなって気もしますが。
ま。この蛇足部分に噛みついてそっちの説明しかしないムーブというのは、これはもう明らかに言えることですし、昨日も申し上げました通り、「賃金が想定以上に堅調に推移しそうで、この調子だと黒ちゃんの任期切れの前に賃金の上昇を伴う物価上昇、と言われてしまうので、その前に賃金上昇の定義を誤魔化してしまえ」というゴールポストを動かすどころかゴールポストを無くしてしまう位のインチキ大作戦に出ている、という事が良く分かるかと思います。
しっかしまあ何ですな、最近の流れって、結局のところは1月ごろ出ていた「日本もそろそろ極端な金融緩和を見直すのアリじゃね??」論に対して黒ちゃんが殆ど感情的になって真っ向から全否定してしまった、という所でボタンの掛け違いが発生し、その後は次々と「今の政策の緩和の程度を見直すことすらしませんという理屈」を繰り出すという事になっているのですが、4月の展望レポートの時には「コアコア消費者物価指数の見通し」を出して、これがチンタラとしか上がらない、即ち基調的な物価は中々上がらんので政策を見直すのは時期尚早、としたのですが、だんだん物価上昇が広範囲に拡大してきたもんだからその説明がだんだん苦しくなってきた、と思ったら今度は7月展望レポートの時期になって急に「賃金の上昇ガー」を政策委員含めて皆で大連湖を開始した、というのは7月の黒ちゃん会見とその後に出た「主な意見」で如実に示された訳です。でもってこの賃金が意外に上がりそうじゃん、と来たのですが、遂に誤魔化す他のネタも無いもんだから「賃金上昇のメカニズム」とか兎に角ゴールポストをひたすら動かしまくることになっておりまして、もとはと言えば今年の頭に全力で政策見直しを完全否定した黒ちゃんが悪いし、その顔を立てるために本邦最高峰の頭脳集団をただひたすら屁理屈作成作業に使ってるとか社会的損失としか申し上げようが在りません。
・・・・・すいません愚痴が長くなりました、
・10年0.25%を意地でも死守する強硬な姿勢を見せても円安とは関係ないと言い張り続けるの巻
いやこれ聞く方もうんざりするだろうな、って思いますよ。
『(問)二問お願い致します。円安について、中央銀行総裁と市場とのコミュニケーションという観点からお尋ねします。円安の主因はFRBの大幅な利上げかと思いますが、財務省は投機的な動きへの懸念を強め、為替介入に踏み切りました。一方、市場では、総裁が金融緩和の維持を強調する発言が材料になり、円が売られているという指摘もあります。金融政策は為替レートをターゲットにするものではないということは理解しますが、こうした状況で、あえて緩和の維持を強調される意図をお聞かせ頂けますでしょうか。(後半割愛)』
『(答)まず、先ほど来申し上げている通り、わが国経済はコロナ禍からの回復途上にあるうえ、海外の経済・物価情勢、あるいはウクライナ情勢、感染症の影響、その他不確実性がきわめて大きいもとで、消費者物価の先行きにつきましては、来年度以降は
2%を下回る水準まで低下していくというふうに考えておりまして、現在は、経済をしっかりと支え、賃金の上昇を伴うかたちで、物価安定の目標を持続的・安定的に実現するために、金融緩和を継続することが適当であるというふうに考えております。』
前置きがなげえよ。
『為替変動の要因として、市場では資源高に伴う需給要因に加えまして、内外金利差に市場参加者の注目が集まり、それが影響していると指摘されていることは承知しております。もっとも、内外金利差の背景にあるインフレ率の違いや、利上げによる米国経済の減速などは、むしろドル安方向の要因でありまして、日米の金利差だけに着目して最近の為替動向を説明することは、一面的ではないかというふうに思っております。(後半割愛)』
そういうドル安要因を打ち倒すくらいにあんたの強硬な姿勢が円安招いてるんですけどねえ。
別の質疑。
『(問)春先から円安が進んで、前回の会見の会合の際は、急速に会見中に進んだということで、先ほどYCCが円安の原因ではないとおっしゃいましたけれども、改めてなぜYCCが原因じゃないかというのをご教示頂けますでしょうか。(後半割愛)』
まあこの会見でも最後の方になったら円安進行してましたけどね!!!
『(答)YCCは金融緩和のやり方でありまして、それが特に量的緩和と違って、特に円安に影響するとか、そういうことはないと思います。』
これはまた無茶苦茶な詭弁ですね。
『市場で言われているのも、基本的にはその量的[緩和]であれ、YCCであれ、何であれ、金利格差が為替に影響しているという議論であります。ただこれについては、先ほど申し上げたように、そもそも各国の米国との金利格差と各国の為替の状況とはきれいに相関していません。それから、日本にとっても、過去の日米金利差と対ドルレートの変動と、グラフを描いてみても、ほとんど関係がないということで、最近それが非常に広くいわれていることは事実なんですけれども、それが経済理論的に正しいのかどうかも分かりませんし、ましてやそのYCCと特に関係しているというふうには、誰も考えていないと思います。(後半割愛)』
短期的な話の質問に長期的な説明で返した挙句に、「ましてやそのYCCと特に関係しているというふうには、誰も考えていないと思います。」とか質問者の頭がおかしいのではないかというような回答をしているのは、まあいつもの黒ちゃんクオリティ(ちなみにこの質疑は13ページ中11ページの部分)ですが、どうも黒ちゃんの世界線によりますと黒ちゃん以外の頭がおかしい、ということになっているようですね為替市場の皆様!!!!!!
・物価見通しを外しまくっている件については無回答キタコレ&年度明けの物価に関する説明にも予防線の用意が登場
というか大体の質問が実質無回答なのが黒田クオリティなのですが、物価見通しに関しては「政策先にありき」で作っているんですから見通しを外すことに関して別に黒ちゃん1ミリも痛痒を感じてないでしょ。
昨日もネタにした事実上のトップバッターによるもう一つの質問、ということでこちらは3ページになります。
『(問)今年度の物価見通しについてなんですが、7 月時点の 2.3%から 2.9%ということで、かなりジャンプアップをしています。最近の展望レポートで見てみますと、常にその物価見通しが、前の回の見通しよりも上振れるということが続いている状況ですが、これは、日銀が思っているよりも実際の物価上昇圧力というのが強いということなんでしょうか。これが一問目です。(後半割愛)』
これが連続下方修正だと「追加金融緩和をなぜしないのか」とツッコまれるわけですから、逆に「4月から見て物凄い上方修正をしているのであれば、金融緩和政策の程度もそれに応じて見直しが行われて然るべきというように思えますが何故そうならないのでしょうか」って質問があってもいいようには思えますな。想定のオンラインの改善だったら別に見直しは不要でしょうけど、想定からの上振れ上振れなんですからねー。
という訳で回答、と言っても上記のように無回答なんですが。
『(答)ご指摘の通り、2022 年度の物価見通しは、段階的に上方修正しておりまして、今回の展望レポートでは+2.9%という見通しになっております。こうした上振れの背景として、輸入物価の上昇や、その価格転嫁の広がりなどが挙げられております。もっとも年明け以降、こうしたコストプッシュ要因による押し上げ寄与は徐々に減衰していくため、年度ベースの消費者物価の前年比は、来年度以降
2%を下回る水準になるというふうに考えております。こうした見通しを巡っては、企業の価格・賃金設定行動、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向など、上下双方向に様々な不確実性があるため、引き続き丹念に検討してまいりたいというふうに考えております。(後半割愛)』
まあ見事に無回答ですよね。
・・・・・でまあ無回答さらになのですが、今回物価の見通しの説明がしらっと変わっているのにお気づきになられたかと思います。展望レポートの方でもそうなのですが、今回の物価の説明って、
「もっとも年明け以降、こうしたコストプッシュ要因による押し上げ寄与は徐々に減衰していくため、”年度ベースの”消費者物価の前年比は、来年度以降
2%を下回る水準になる」
という言い方になっていますが、ここで9月22日の決定会合における黒ちゃんの説明を確認してみましょう。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220926a.pdf
4ページ
『年明け以降、コスト高の押上げ要因が一巡してくるため、来年度以降の消費者物価は、2%を下回る水準まで低下していくと予想しています。』(直上URL先9月22日MPM後の総裁定例記者会見より、以下暫く同様)
9ページ
『今年度の物価上昇率は、おそらく前回の展望レポートのときよりも高くなると思うのですが、基本的なメカニズムは同様であって、やはり来年度以降、物価上昇率が今年度よりも下がって、2%を割るということはほぼ確実だと思います。』
ということで、「年度ベースの」ってのを入れたのは何ですかと言えば、これはつまり来年の4月辺りにそこまで物価上昇率が鈍化しなかった場合に向けての言い訳を作っている、ということです。
ちなみに9月会見と言えば極めつけは12ページにある黒ちゃんの説明でして、
『現在の消費者物価の上昇は、2.8%と相当高くなっていますし、年内に更に上昇する可能性もありますが、先ほど来申し上げている通り、来年度以降はまた
2%を割る水準まで落ちていくとみています。』
なるほど。
『それはなぜかといえば、需給ギャップがなくなって更にプラスに転化し、賃金が上がっていくという中で物価が上がっていくというかたちになれば、持続的・安定的に
2%を達成できるということになると思います。』
あれれ??
『けれども、現時点では基本的に輸入物価の上昇が消費者物価の上昇に反映され、そしてその影響は来年度以降減衰していって
2%を割るということで、いわゆる好循環、賃金が上がり物価も安定的に上がっていくというかたちには今はなっていません。』
ほほう。
『このままでは来年もまだならない、再来年もなかなか難しいという状況ですので、現時点で金融政策として経済の回復を支援しています。』(以上、9月22日黒田総裁定例記者会見より)
ほっほー!!!!!!
ということでですね、9月22日の説明だと、来年の賃金改定時期に賃金がきっちり上がれば、まさに総裁の説明する「賃金が上がっていくという中で物価が上がっていくというかたちになれば」というのが具現化すると思うのですが、わずか1か月の間に黒ちゃん豹変しまして、賃金の上昇についての定義を誤魔化して「俺様が賃金の上昇と思わなければ賃金の上昇ではない」という必殺インチキ屁理屈ビームを繰り出している、という訳でして、まあ酷いゴールポストの動かし方をしていますよね。
ま、昨日申し上げたので十分満腹だとは思うのですが、このような感じでもう整合性も何もあったもんじゃないし、しかもゴールポストをジャンジャン変えて整合性全くない(ただし「政策を死んでも動かさない」というのだけは動かないので、悪い意味での政策予見性は高いんだが、笑)説明に終始する、という中央銀行としてかなり恥ずかしい事を平然とする日銀!そこにシビれない憧れない!!と言ったところでございますが、まあロジックが一切通じないというのを鮮明にした今回の会見だったんじゃないでしょうかね、とは思います。昨日も言ったけど。
2022/11/01
お題「黒ちゃんの任期中さえ逃げ切れればあとは野となれ山となれ・・・・・ですな」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221031/k10013875691000.html
首相 健康保険証一体化 カードない場合でも受診仕組み検討急ぐ
2022年10月31日 12時48分
『健康保険証とマイナンバーカードの一体化に向けて、岸田総理大臣は関係閣僚と協議し、紛失などでカードがない場合でも保険診療を受けられる仕組み作りなどの検討を急ぐことを確認しました。』(上記URL先より)
・・・・・・・ごく単純に今ある保険証を今後も使えるようにすればよいだけのような気がするんだが。
さてまあFOMC待ち(さすがに3日はちゃんと起きてFOMCネタを投下予定です、と言い切ってしまったので3日は目覚まし目覚まし)ですので決定会合レビューの続きで。
〇展望レポート基本的見解を見るに黒ちゃん逃げ切り体制は勝手にしやがれだがその後どうするんでしょうね
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2210a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2207a.pdf(前回7月)
展望レポートの鏡の部分を比較してみますね。鏡とか言ってるけど正式には『<概要>』です。
・物価が下がる時期を後ずれさせていって来年4月の展望レポートまで問題を先送りですかそうですか
1ポツ目。
『日本経済の先行きを展望すると、見通し期間の中盤にかけては、資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、新型コロナウイルス感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回)
『日本経済の先行きを展望すると、見通し期間の中盤にかけては、ウクライナ情勢等を受けた資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、新型コロナウイルス感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(前回7月)
そもそも論として今回の現状認識において供給制約が緩和されてきていて、新型コロナの影響も緩和されている、という認識が示されているので、海外経済減速をやたらネタにしないと緩和継続の理由が作れない、という面がありますな。一応基本的な話は同じになっているんですけど、感染症や供給制約の話を本文中で変えているのに見通し文言の中で表現が不変なのは正直言って雑なんだが、そもそもがお題に書いた通りで、今回は前回を遥かに上回る勢いで整合性もなんも真面目に取っていない作品に仕上がっているという全体が雑なお造りになっておりますのが特徴です。
2ポツ目。
『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、これらの押し上げ寄与の減衰に伴い、来年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していくと予想される。その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(今回)
『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。この間、変動の大きいエネルギーを除いた消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、プラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(前回7月)
前回との違いは「押し上げ要因の減衰」部分でエネルギー以外も含めるようにしているのが1点目。これは既にエネルギー価格が総じてみれば押し上げにならなくなっているというのがありますわな。でもって最近の価格上昇要因ってエネルギー一発芸じゃないのですけれども、エネルギー価格と違って耐久財とか食料品の値上げってもうちょっと後から始まっているから、この押し上げ要因の減衰ってすぐ来るのかね問題があって、前回との違いの2点目になる。
つまり、今回しれっと「プラス幅縮小」の時期に関して「来年度半ばにかけて」という文言を入れてきて(前回はそれに関する文言は無い)いまして、後でネタに出来る時間があるかどうか微妙な総裁会見ちゃんでも物価が「下がりだす」のは年滅年始位がピークですよという話はしているものの、じゃあそれがどどーんと下がってやっぱり2%行きませんねえとなるのが何時なのか、という話を「来年度半ば」という形で、明白に黒田総裁の任期以降に持って行っているのがチャーミング。
いやまあもちろんなのですが、足もとでは10月の東京都区部CPIに見られるように各種値上げも継続してて、この値上げって(値下げして元に戻らん限り)前年比で見たら1年間はプラスに寄与するんですし、為替円安の影響だってこれから来るし、これまた前年比ベースでみたら押し上げ要因続きますよね、とか何とかを勘案すれば、来年度前半って直近まで来ておられる物価(ノ∀`)アチャーの影響が前年比ベースで続くじゃん、と考えますと、一応言ってることはその通りではあるんですが、今度はそうなりますと昨日申し上げました物価見通し2023年度平均+1.6%ってのは、年度途中に物凄い落ち込みをしないと平均+1.6%にならんじゃん、という話になりますわな。
これがですね、来年度入った所で今年頭辺りにあった要因の前年比効果がバサッと剥落してくれるから伸び率がギャップダウンする、という形で2023年度の頭からCPIが2%割れで推移するとかいう想定でパスを組んで居れば、まあ年度平均+1.6%でもそこまでおかしいパスにはならんのですが、ご案内の通り2022年度後半は半期平均で+3.3〜+3.4%の物価をみているんですから、どっからどう見ても1%を超えるギャップダウンが必要で、そんな要因どこにありましたっけ????という話。
つまりこの見通しと出来上がりの+1.6%という数字が全然話として一致していないという碌でもない作品になっておりまして、こんなの来年4月の展望レポートの時点で2023年度のCPI見通し出すときに「お前は何を言ってるんだ」というツッコミに耐えられる数字が出せないと思うのですけど、その時には黒ちゃんは逃げ切っている、ということですので苦労するのは次の総裁のお仕事になりますね、南無阿弥陀仏。
はいスイマセン、何度読んでもこの物価見通しに納得がいかないので今日も書いてしまいましたが3ポツ目に進みます。
『前回の見通しと比べると、成長率については、夏場の感染拡大や海外経済の減速の影響から、2022
年度を中心に幾分下振れている。物価は、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、2022
年度を中心に上振れている。』(今回)
『前回の見通しと比べると、成長率については、2022 年度が、海外経済の減速や供給制約の強まりの影響などから下振れているが、その後は、その反動もあって幾分上振れている。物価は、輸入物価の上昇やその価格転嫁の影響から、足もとを中心に上振れている。』(前回7月)
前回も輸入物価のせいで上振れ、今回も輸入物価のせいで上振れ、となっておりますね物価見通し。それって単純にあんさんらの物価見通しが甘甘だってことじゃないですかねえ。
4ポツ目は昨日感染症紐付けの金利フォワードガイダンス文言の時にネタにしましたが再掲します。
『リスク要因をみると、引き続き、海外の経済・物価動向、今後のウクライナ情勢の展開や資源価格の動向、内外の感染症の動向やその影響など、わが国経済を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(今回)
『リスク要因をみると、引き続き、内外の感染症の動向やその影響、今後のウクライナ情勢の展開、資源価格や海外の経済・物価動向など、わが国経済を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(前回7月)
ということで、今回って先行きのリスクの中で一番大きいのが海外経済になりました。先行き見通しの中でも海外経済の減速が押し下げ要因として認定されていますし、一方で昨日も引用したように、リスク認識の中で感染症の影響とそれに関連する供給制約要因については現状の時点でも改善している、という認識を示しているのですから、先行きリスクに関してどうこう言うのであれば「海外経済の減速」になりますわな。
しかしながら、政策金利のフォワードガイダンスは相変わらずの「感染症」になっている訳ですが、今までの日銀だったら今回のMPMの時点で金利のフォワードガイダンスについて、「当面、海外経済の動向や新型コロナウイルス感染症の影響を注視し」みたいな感じで海外経済の話を新たに入れ込んでいって、コロナ感染症の話以外を出すことによって、コロナ感染症云々をいつまでも置いてられない事態に備える、という動きをすると思うんですよね、本当に海外がヤバいとおもってるんなら。
しかしながら、今回金利のフォワードガイダンス文言に「海外経済」を入れに行かなかったのは割と不自然な動きでして、これはまあそんなもん入れなくても黒ちゃんの任期中くらいは逃げ切れるだろうと思っているとか、海外経済入れたのは良いけど、海外経済がそれほど落ちなかった場合に言い訳に困るので、そこはやっぱり入れない方が無難と思っているのか、その両方かって感じなんでしょうねとは思います(個人の感想です)。
5ポツ目はリスクバランス。
『リスクバランスをみると、経済の見通しについては、下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、上振れリスクの方が大きい。』(今回)
『リスクバランスをみると、経済の見通しについては、当面は下振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、当面は上振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。』(前回7月)
このリスクバランスに関してですが、シナリオに関係あるのかというとそうでもなくて、実際には基本的見解の最後にあるリスクバランスチャート(正式な名前は『政策委員の経済・物価見通しとリスク評価』)の上向き下向きの傾向を反映させただけのもの、すなわちカボチャが9個集まって適当に付けた上向き下向きを単純に反映させているという物件になるのですが、カボチャのついている上下の矢印って「見通し数値に対する上振れ下振れリスク」になりまして、基本的見解でシナリオとかメカニズムとか書いている定性的な文脈での上振れ下振れとある種別物になっている、という作りになっていますが、これって却って分かりにくい気がするんで、このリスクバランスの話は「メインシナリオに対するリスクは定性的にどっちにバランスしているか」を記載した方がコミュニケーション上分かりやすいと思うんですがどうでしょうかね。
本文行く前に会見を先に成敗しますわよ。
〇黒田総裁記者会見:ようつべ中継があったせいか前回よりは愛想よかったじゃん(その1)
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk221031a.pdf
まあ「黒田総裁任期逃げ切り体制で理屈も整合性もキニシナイ」というスタンスが明確になって聞く方もドッチラケになっている、という面は多々あろうかと思いますが、今回はそんなに吊るし上げにならなかったですな、うんうん。
あとですね、
10/31(月)公表資料・広報活動 【記者会見】黒田総裁(10月28日分) [PDF 314KB]
9/26(月)公表資料・広報活動 【記者会見要旨】黒田総裁(9月22日分) [PDF 337KB]
ということで、今回から総裁会見が文字起こし風になって、会見「要旨」じゃなくなったのって、これまたようつべ中継があったから丸めない方が却って安全、という事になったのだと思うのですが、いやー福井の俊ちゃんの頃にようつべ中継やってたらエライコッチャになっていたかも知れませんねえと思うと、色々とオモロイ味わいもあります。
でもって「その1」と書いたのは今朝は時間の都合で全部ネタに出来ないので、今回アタクシが質疑応答の中で特にオモロイと思ったあたりを今朝はピックアップして参ります。
・賃金賃金言うのは変わらないのだが春闘の水準の話を誤魔化しだしました!!!!!!!!!!
幹事社(日経新聞)の次に華麗に登場した実質先頭打者突撃隊長はO江さん(仮名)でした。質問の前半も実に結構でしたが、ネタの構成の都合上質問の後半を先にネタにします。
『(問)(前半割愛というか後で)そして二問目としては、その物価のリスク要因のところに、今回は賃金と物価が想定以上に上昇する可能性があるという表記があります。これは、来年の春闘で高い賃上げとなった場合に、2%に手が届くこともあり得るように見えるんですが、ただ来年度の物価見通しは
1.6%ということになっています。こういう状況、その賃上げが進んでいった状況になっても、来年度
2%というのは、なかなか難しいことなんでしょうか。以上、お願い致します。』
春闘上振れしたらどうするの、という黒ちゃんの任期中に逃げ切れない(何で目標達成するのに逃げ切れなくなるという事になるのか、よく考えたら本末転倒にも程があるのですが・・・・・・・)ケースについての質問でございますが、驚異の回答で逃げる黒ちゃんの図を見てみましょう。
『(答)(前半割愛)次の賃金との関係ですが、賃金動向につきましては、ご承知の通り今年の夏のボーナスは、かなり良かったわけですね。これは大企業のみならず中小企業も含めて良かったわけですが、そういうことで確かに賃金は経済活動全体の持ち直しを反映して、緩やかに増加しておりますし、先行きも経済活動や労働需給が改善していくもとで、労使間の賃金交渉において、物価上昇率の高まりも勘案されることを映じて賃上げ率も高まっていくというふうに予想しております。』
しかし「会見要旨」じゃなくて「文字起こし」にすると質問に対して簡潔に回答していないのがモロバレしてしまいますな。こんな前置きする必要1ミリもないじゃん。
『そのうえで賃金の動向につきましては、表面的な数字だけではなく、その背後にあるメカニズムを含めて物価安定の目標の持続的・安定的な達成につながっていくかということを評価してまいりたいというふうに考えておりまして、』
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)
まあこの部分聞いた瞬間に爆笑しましたけど、春闘が上振れそうになってきて、今までは「来年度に向けた賃金交渉を見て行かないと賃金と物価の好循環かどうか見極めがつきませんのでそれまでは政策動かさないもんねー」という言い訳を使っていた(ちなみにその前は「基調的物価は低いのでまだまだ物価目標達成には時間が掛かる」でした)のですが、これがうっかりすると黒ちゃんの任期中に決着がでそうになったので、ついに「賃金の背後にあるメカニズム」とか最早ヤケクソとしか申し上げようがないインチキ道具を繰り出してまいりました。これ言い出したら何とでも屁理屈がつけられるという意味では最強の道具。
・・・・・・・しかしですよ、そもそも「インフレターゲット」っていうのは、中央銀行が総合的判断とか言いながら変な裁量を入れることによって政策上手くいかなくなることを排除するために入れるって意味合いもあるし、だいたいからして置物一派はそういう言い方して白川さんを口汚く罵倒していた訳ですからして、もはやなにがなんだかわからない「賃金のメカニズム」とか言い出して判断するとか、完全に恣意的な世界としか言いようがなくて、それってインフレターゲットの意味あるのかよって話ですな。
まあでもこれは答えは一つしか無くて、「黒ちゃんの任期中に決着は絶対につけない」という日銀の強い意思表示であることはわかったんですが、黒ちゃん後どうするつもりなんでしょうねえ、黒ちゃんが逃げ切っても日銀は継続するんだけどなー。
で、まあ上記の部分が白眉で以下はひたすらその蛇足説明が続きますが引用だけしておきます。
『今申し上げているように、賃金が高まっていくと、賃上げ率が高まっていくと予想はしておりますけれども、現在のところ、そういうことも含めても、先ほど申し上げたように海外のコストプッシュ要因が減衰していくという中で、1%台半ばぐらいの、1.6%ぐらいの物価上昇率に、来年度あるいは再来年度もなるというふうにみているということであります。もちろん、先ほども申し上げたように、賃金や、それからそれを反映した物価の上昇率が、今考えられている以上に上昇していくということもあり得るとは思うんですけれども、今の時点の見込みでは、やはり来年度でも
2%を安定的に達成できるような状況にはならないのではないかというふうにみているわけであります。』
なげーよ。
後の方でもう一度春闘の質問があったんですけどね。
『(問)賃金についてお尋ねします。連合が、来年の春闘で 5%の賃上げを要求する方針を示しました。内訳でいいますと、ベースアップが
3%、定期昇給が 2%といったかたちになっています。今年の春闘を翻ってみますと、賃上げ率
2%強で、ほとんどが定期昇給というものでありました。先日、5 月ですかね、総裁、講演の中で、2%の物価安定目標を続けるうえで、労働生産性を加味すると、持続可能な名目賃金の上昇率というのは
3%程度であるというお話をされていたかと思います。』
イイシテキダナー
『この 3%という数字なんですが、ベアというふうにとらえたらよろしいんでしょうか。日銀が望ましいと考えていらっしゃる賃金のかたちというのは、どういったものなんでしょうか。』
当然このような数値の明記を今すると任期中の逃げ切りが出来なくなりますから・・・・・・・・・
『(答)もちろん、定期昇給部分は個々の人にとっては賃金が上がりますけれども、総体としては変わらないわけですから、やはり基本的にはベアというものが重要な要素になるということはいえると思います。そういう意味で、ある意味で、図式的にいえば、1%程度の労働生産性の上昇率が見込めるもとでは、3%ぐらいの実質的な賃上げがないと、2%の物価安定目標を持続的・安定的に達成できないということはその通りなんですけれども、』
と言いながらこの後の回答が凄い。
『ご承知のように、正規・非正規の人とか、それからボーナスとか、様々な要素がありますので、連合がおっしゃっている
5%、うちベアが 3%というものが、即、2%の物価安定目標を賃上げとともに実現できるというふうに決めてしまうのは、そもそも春闘が来年どういうふうになるかまだ分かりませんし、何とも言えないんですけれど、』
仮定の質問してるのに何で何も言えないってなるんだよだったらそもそも展望レポートとか出す意味ねえだろアホが。
『基本的にそういったことはきわめて重要であり、何回も申し上げる通り、現在のような輸入物価の上昇によって、これが転嫁されていくということは必要なことであり、転嫁が進んでいるということは好ましいことではあるんですけれども、』
完全に話を誤魔化している。
『それによって持続的・安定的な物価の上昇が、2%の目標の達成ができるということにはならないと思いますので、』
いやお前何で輸入価格の転嫁の話にすり替えてるの誰もそんな事聞いてねえだろ。
『あくまでもやはり、賃金の上昇を伴うかたちで、2%の物価安定の目標を持続的・安定的に達成することが望ましいと。そういう意味で、賃金の上昇というのは、きわめて重要なファクターであり、そこは今後ともしっかり注視していきたいと。』
だからその賃金について質問してるんじゃん尾前は何を誤魔化してるんだよ。
『そもそも 2%の物価安定の目標というのは、単に 2%の数字が出ればいいということではなくて、あくまでも国民の生活が向上していくという中で実現していくべきものでありますので、そういう意味でも賃金の上昇というのは、今後とも、十分注目していきたいというふうに考えております。』
完全に答えになっていないというすさまじい回答でして、まあ要するに「逃げ切りの為に賃金上昇の定義まで誤魔化しに掛かっている」というのが分かると思いますが、これは結局「黒田さんの任期中は絶対に現状維持のままで逃げ切る」という強い意志をしめしたもの、というのが強いインプリケーションとして得られたし、そのためにはもはや理屈も整合性も何もない、というのが明らかになったかと思います。要は「ロジカルに考えても黒ちゃんの任期中の政策は予想できません」ということです、ひでー話だ。
#案の定時間が無いので本日はこれだけで勘弁して下さい